説明

織編物及び粘着テープ用基布

【課題】本発明は、従来のアセテート織編物と変わらぬ風合い、物理特性、加工性を保持し、有害ガスを発生することがない優れた難燃性能を有した織編物が得られ、特に粘着テープ基布として好適な織編物を提供するものである。
【解決手段】本発明は、非ハロゲン系縮合リン酸エステルを40質量%以下含有し、かつ繊維中のリン元素濃度が0.4質量%以上であるセルロースアセテート繊維を含む織編物、及び該織編物を用いた粘着テープ用基布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性に優れたセルロースアセテート繊維を含む織編物に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースアセテート織編物は、絶縁性、柔軟性、消音性に優れているという特徴を有しているため、電気機器や自動車などの配線結束用粘着テープの基布用途として広く利用されている。これらの用途では、使用上の環境から難燃性能が要求される場合が多い。
【0003】
このため、セルロースアセテート繊維に難燃性を付与する技術として、特許文献1には難燃剤として、ハロゲンを含有するリン酸エステルを混合したアセテート繊維が記載されている。
【0004】
また、特許文献2では、粘着テープに難燃性を付与する技術として、粘着テープの粘着剤に非ハロゲン系難燃剤を添加する方法が記載されている。
【特許文献1】特開昭54−59420号公報
【特許文献2】特開平11−323268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の方法では、ハロゲンを含有する化合物は燃焼時にダイオキシン類などの有害ガスを発生するという問題があった。
【0006】
また、特許文献2の方法では、粘着剤層への難燃剤の添加は粘着力低下といったテープ特性の低下や加工性の低下を招くという問題があった。
【0007】
本発明はこのような従来技術における問題点を解決するものであり、ダイオキシン類などの有害ガスを発生することがない優れた難燃性能を有し、特に粘着テープ用基布として好適な織編物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の要旨は、非ハロゲン系縮合リン酸エステルを40質量%以下含有し、かつ繊維中のリン元素濃度が0.4質量%以上であるセルロースアセテート繊維を含む織編物にある。
【0009】
また本発明の第2の要旨は、該織編物を用いた粘着テープ用基布にある。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、従来のアセテート織編物と変わらぬ風合い、物理特性、加工性を保持し、有害ガスを発生することがない優れた難燃性能を有した織編物が得られ、特に粘着テープ用基布として好適な織編物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の織編物は、非ハロゲン系縮合リン酸エステルを40質量%以下含有し、かつ繊維中のリン元素濃度が0.4質量%以上であるアセテート繊維を含むことが必要である。
【0012】
セルロースアセテート繊維は、熱分解により炭化水素ガスなどの可燃性ガスが発生し、これが燃えることにより燃焼するため、該繊維の難燃化には、加熱すると炭素と水に分解する炭化促進反応を起こすリン系化合物が有効である。
【0013】
また、織編物への加工段階において水を使用する工程を通過するため、難水溶性であることが望ましい。この条件を満たす非ハロゲン系縮合リン酸エステルとしては、例えば、丸菱油化工業(株)社製の商品名ノンネンR039−16等があげられる。
【0014】
また本発明では、非ハロゲン系縮合リン酸エステルの含有量は40質量%以下であることが必要である。該リン酸エステルの添加量が40質量%を超えると、紡糸安定性に問題が生じる上に繊維強度が低下し、織編物への加工時の工程通過性が著しく低下する。
【0015】
さらに本発明では、繊維中のリン元素濃度が0.4質量%以上であることが必要である。リン元素濃度が0.4質量%未満では難燃性が不十分となる。
【0016】
なお本発明のセルロースアセテート繊維は、水酸基の74%以上が酢酸化されているものをいう。
また本発明では、織編物の限界酸素指数が21以上であることが好ましい。
【0017】
限界酸素指数が21未満の場合は、織編物は可燃性となり自己消化性も低下しやすくなる。
【0018】
さらに、織編物に含まれるセルロースアセテート繊維の繊維強度が0.8〜2.0cN/dtex、伸度が8〜30%であることが好ましい。繊維強度が0.8cN/dtex未満もしくは伸度が8%未満では織編物への加工時に糸切れが多発しやすく工程上問題となりやすい。また、経糸の強度が2.0cN/dtexを超えるとき、もしくは経糸の伸度が35%を超えるときは、粘着テープとしての使用時に手切れ性が悪くなりやすい。
【0019】
また、本発明では、織編物として限界酸素指数が21以上であり、かつ手切れ性を阻害しなければ織編物に該セルロースアセテート繊維以外の繊維が含まれていてもなんら問題はない。
【0020】
次に、本発明の織編物の製造方法の一例を説明する
本発明に用いるセルロースアセテート繊維は、公知の乾式紡糸方法によって得られる。例えば、セルロースアセテートをアセトン、塩化メチレン等の単独溶剤或いは塩化メチレン/メタノール等の混合溶剤に溶解し、セルロースアセテート濃度15〜35重量%、このましくは18〜30重量%とした紡糸原液を調整する。この原液に非ハロゲン系縮合リン酸エステルを添加混合するか、或いは非ハロゲン系縮合リン酸エステルをアセトン、塩化メチレン、メタノール等の単独溶剤或いは塩化メチレン/メタノール等の混合溶剤に溶解した溶液を前記原液に添加、混合し、非ハロゲン縮合リン酸エステルを所定濃度に調整する。この際の非ハロゲン縮合リン酸エステル添加量は紡糸原液の全固形分に対して5〜40重量%、好ましくは10〜35重量%となるようにする。
【0021】
紡糸は、紡糸原液を紡糸口金装置に供給し、紡糸ノズルより高温雰囲気中に吐出する。また、紡糸の際、紡糸原液として非ハロゲン系縮合リン酸エステルの無添加紡糸原液や添加量の異なる紡糸原液、あるいは置換度が異なるアセテート紡糸原液や固形分濃度の異なる紡糸原液などを併用し、芯鞘型に複合紡糸してもよい。また、繊維の断面形状は円形、異形のいずれであってもよい。
【0022】
次に、本発明の粘着テープ基布について製造方法の一例を説明する。
【0023】
まず、経糸として84dtex/20フィラメントの前記アセテート繊維を公知の方法により整経、サイジングを行い、ビームを作成する。次に、緯糸として167dtex/40フィラメントの前記アセテート繊維を用い、公知の方法により製織、精練され、粘着テープ用の基布が得られる。なお該基布は、自由に染色・加工して使用することができる。
以下、実施例をあげて本発明を説明する。なお各評価は以下の方法に従った。
(限界酸素指数の測定)
JIS−L1091(繊維製品の燃焼性試験方法)のE法(酸素指数法試験)により求めた。
【0024】
(強伸度の測定)
JIS−L1013−8.5(引っ張り強さ及び伸び率)に準拠して求めた。測定は、ORIENTEC社製RTA−500を用いて測定した。
【実施例】
【0025】
(実施例1〜2、比較例1〜2)
水酸基の80%が酢酸化されているセルロースアセテートを塩化メチレンとメタノールの混合溶剤に溶解し、濃度を22.1質量%の溶液を調製した。この溶液に、全体の固形分に対する縮合リン酸エステルの含有率及び繊維中のリン元素濃度が表1の値となるように、非ハロゲン系縮合リン酸エステル(丸菱油化工業(株)社製、商品名:ノンネンR039−16)を混合攪拌し、紡糸原液を作成した。
【0026】
この紡糸原液を用い、乾式紡糸で、紡速500m/分で巻き取り、84dtex/20フィラメントの難燃性セルロースアセテート繊維を得た。これら繊維の強度、伸度について測定し結果を表1に示した。次に得られたこの繊維を用いて筒編を作成し、非イオン性界面活性剤を1g/リットル添加した温度80〜90℃の熱水浴中にて30分間精練した後に、これらの試験布について限界酸素指数を評価し、結果を表1に示した。
【0027】
尚、難燃剤を50質量%添加したときは、紡糸性が不良であり繊維を得ることができなかった。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
非ハロゲン系縮合リン酸エステルを40質量%以下含有し、かつ繊維中のリン元素濃度が0.4質量%以上であるセルロースアセテート繊維を含む織編物。
【請求項2】
織編物の限界酸素指数が21以上、セルロースアセテート繊維の繊維強度が0.8〜2.0cN/dtex、伸度が8〜30%である請求項1記載の織編物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の織編物を用いた粘着テープ用基布。

【公開番号】特開2007−77535(P2007−77535A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−266172(P2005−266172)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【出願人】(301067416)三菱レイヨン・テキスタイル株式会社 (102)
【Fターム(参考)】