説明

繰返し応力センサ

【課題】 繰返し荷重を受ける構造物などを構成する部材に貼付して、それら部材の疲労損傷度を推定することができる疲労センサ、特に、特に対象部材の如何に限らず1個のセンサを適用することにより繰返し応力が評価対象部材の疲労限界を超えているか否かを検知する汎用性の高い繰返し応力センサを供給する。
【解決手段】 応力集中形状に基づき互いに異なる応力集中度を有する複数の短冊状の金属片11を、基板12上に応力集中度の大きさの順に並列に配置し、金属片の両端部14同士を固着して、この固着した両端部14をさらに基板12に固着したもので、対象部材表面に貼付して一定期間観察すると、金属片11は応力集中度が高い順に破断するので、どの金属片11まで破断したかにより対象部材の繰返し応力さらに寿命などを推定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繰返し荷重を受ける構造物で疲労損傷するおそれがある各種の部位において実地条件下で発生している繰返し応力を簡便に検知する貼付け型の繰返し応力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
現実に供用に付されている橋梁その他の構造物、機械装置、車両、航空機、船舶などの現状の強度や残りの寿命を正確に推定することにより、余寿命が十分あるのに造り直したり大幅な改修工事をしたりする無駄を省くことができ、メンテナンス計画を的確に作成することができる。しかし、構造物や車両などの強度や余寿命を正確に推定するためには、実際の環境下で構成する部材に発生する繰返し応力の状態を把握する必要がある。
【0003】
材料における応力状態を推定するために従来から利用される方法に、測定対象とする部位に歪みゲージを貼付して、その部位に発生する実際の応力を測定する方法がある。
この方法は、変換器など精密な計測装置を用いなければならないので、一度に多数の部位について計測することは難しいため、大型の構造物等について全体的に応力状態を把握することが難しい。
【0004】
特許文献1には、実構造物に犠牲試験片を貼付して犠牲試験片に生じた疲労損傷状況から構造物の疲労損傷を予知する方法が開示されている。開示方法に使用する犠牲試験片は、疲労損傷を予知しようとする構造物と同じ材料で作られ、長さ方向中央部に人工亀裂を設けた長さ70mm幅20mm厚さ約0.25mmの薄板状の試験片で、2枚の樹脂製薄板の間に挟んで構成したものである。
【0005】
事前に構造部材と犠牲試験片のS−N線図を求めておいて、部材に設置した犠牲試験片に損傷が生じたときの荷重繰返し数を求めてS−N線図に当て嵌めるとその時の応力振幅、もしくは分布のある応力振幅を1つの応力振幅値で代表した代表応力振幅が求まるので、これを構造部材のS−N線図に代入すると、溶接部端部などのホットスポット部における寿命が推定できる。
しかし、特許文献1に記載された犠牲試験片は、評価対象物と1対1対応する代替計測用センサで、試験結果は破断あるいは亀裂が発生するまで待たなければならないので、試験期間は不定期間になる。
【0006】
また、特許文献2には、長さ13mm幅6mm厚さ0.05mmの金属箔基板の上に中央部に幅2mm厚さ0.02mmの亀裂進展部を有する長さ12mm幅5mm厚さ0.1mmの破断片を形成した、極めて小型で薄いクラック型疲労センサが開示されている。例示された実施例には、亀裂進展部には側端から先端が鋭く加工されたスリットが形成されていて、被測定部材にわずかな歪みが生じても直ぐにスリット先端から亀裂が生じて進展するような感度の高いセンサが記載されている。
【0007】
特許文献2に開示された疲労センサは、小型で感度が高いため、対象部位の極めて近傍に貼付して貼付部分における繰返し応力により疲労センサの疲労損傷度を測定して対象部位の疲労損傷度を推定したり実寿命を推定することができる。
特に、溶接部におけるホットスポットのように極めて応力集中率が大きく亀裂発生期間が殆ど無いものについて疲労損傷度を推定する場合は、スリット最奥に鋭い先端部を形成したものを利用して亀裂発生期間を無くすことによりホットスポットのよい先行指標として機能し、十分信頼できる推定値を得ることができる。
【0008】
しかし、構造物や輸送機械など測定対象には各種の部材が溶接ばかりでなく機械加工、押出し成型、鋳造など様々な形態で使用されており、これらの部材についてそれぞれ疲労損傷度や寿命を推定しようとすると、測定対象部材によって応力集中率が異なるので、溶接部の測定に適した疲労センサをそのまま使用しても十分正しい結果を得ることができない。
【0009】
そこで、本願出願人は別途、溶接部に限らず各種形状の部材や機械加工面、押出し成型面、鋳造面などの金属加工面についても疲労評価ができる疲労センサとして、図8に示すように、中央部を横断して両側のベース部より薄く形成された疲労検出部を有しこの疲労検出部に先端が亀裂の始点となるスリットを設けた破断片と、この破断片の両端部を固定する箔状の基板を備えたセンサで、疲労検出部が亀裂進展度合いに従って選択された厚さを持ち、スリットの先端形状が応力集中率と亀裂発生期間を調整するように選択された曲率を有する疲労センサを開示しようとしている。
【0010】
この疲労センサは、基板面を被検体表面に貼付して適当期間後に観察して疲労検出部の破断あるいは亀裂進展度を検知し、得られた疲労センサの疲労損傷から被検体の実際の応力状態を知り、被検体の寿命などを推定するために利用する。
【特許文献1】特開平9−304240号公報
【特許文献2】特開2001−281120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、これら従来の疲労センサ等は、測定対象毎に適当な性能を満たすものを設計製作して、あるいは選択して適用しなければならない。このように、センサとして汎用性がなく、使用する疲労センサの仕様を整えることに専門的知識や高度な技術が要求される。
【0012】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、繰返し荷重を受ける、橋梁などの構造物、機械装置、車両、航空機、船舶などを構成する部材に貼付して、それら部材に生成する繰返し応力の程度を推定する繰返し応力センサを供給することであり、特に対象部材の如何に限らず1個のセンサを適用することにより繰返し応力が評価対象部材の疲労限界を超えているか否かを検知する汎用性の高い繰返し応力センサを供給することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明に係る繰返し応力センサは、応力集中形状に基づき互いに異なる応力集中度を有する複数の短冊状の金属片を、基板上に応力集中度の大きさの順に並列に配置されるもので、金属片の両端部同士が固着され、この固着した両端部がさらに基板に固着されたものである。
繰返し応力センサは、応力集中係数が異なる金属片を応力集中係数の大きさの順に配置したものである。金属片は箔状の基板の上に固定されているので、基板を被検体に貼付すれば金属片に余分な応力を与えることが無く、金属片は被検体の歪みを正確に反映することができる。
【0014】
この繰返し応力センサを対象部材の表面に貼付して一定期間観察すると、基板を介してその部位に発生する歪みを伝達して、応力集中係数の大きい順に強い応力が働くので金属片は順番に破断する。
そこで、所定の期間が経過した後にセンサのどの金属片までが破断したかを知れば、予め解析あるいは実験により作成したS−N線図を用いて、センサを貼付した部位の応力状態におけるその部材の寿命を推定することができる。
【0015】
金属片毎の疲労限界は、肉厚や応力集中形状により変化し、一般に、応力集中率が大きいほど疲労限界も低い。
本発明の繰返し応力センサを応力場に置くと、端部間に作用する応力振幅が形状等の条件に従って決まる疲労限界より低ければ、金属片は永久的に疲労損傷を来さず破断しない。また、金属片は細いので、応力振幅が疲労限界より高ければ、比較的短期間で金属片は破断する。
【0016】
すなわち、金属片の感度が十分高ければ、部材に働く主要な応力振幅の上限値は、破断した金属片と破断しなかった金属片の疲労限界の中間にある。
部材の疲労限界が知れているときは、部材の応力振幅が部材の疲労限界より上にあるか下にあるかが判明し、恒久的に破損しないか、将来的には損傷を受けるかが推定できる。さらに、金属片の各々のS−N曲線を用いて、金属片破断する時期を基に、部材の疲労寿命を推定することが可能である。
【0017】
センサの基板上に配列される複数の金属片は、互いに等長で、端部で相互に固着され、ベース箔部と亀裂箔部がそれぞれ同じ幅を有し、亀裂箔部の長さが異なることにより各金属片の応力集中度が異なるように調整されるようにしてもよい。
応力集中係数は、ベース箔部と亀裂箔部の断面積の比にほぼ比例するが、ベース箔部の長さに対する亀裂箔部の長さの比に反比例する。
そこで、ベース箔部と亀裂箔部を合わせた長さは変えずに、亀裂箔部の長さが順に大きくなるように金属片を並べると、応力集中係数の大きさに従って金属片が並ぶことになる。また、これは同時に疲労限界の高さの順に並んでいることになる。
【0018】
この繰返し応力センサを部材に貼付して観察すると、経時に従って亀裂箔部の長さが短い方から破断していき、やがていくら時間が経ってもそれ以上金属片が破断しないようになる。疲労限界が部材の応力振幅より大きい金属片まで到達したことを意味する。
このデータから、部材に働く主要な応力振幅の上限値を簡単に知ることができ、部材の寿命が推定できる。測定した応力振幅値を部材の疲労限界と比較することにより、将来的に部材に疲労損傷を生じるか否かを判定することができる。
【0019】
また、センサの基板上に配列される複数の金属片は、亀裂箔部が金属片毎に先端の曲率半径が異なるスリットを備えることにより各金属片の応力集中度が異なるように調整されるようにしてもよい。
亀裂箔部全体がスリットで構成されるようにしても良い。また、亀裂箔部をベース箔部より薄く形成してもよい。
スリットの深さにより応力伝達の断面積が減少するので応力集中係数が調整できる。また、スリット先端部の曲率半径が小さくなれば先端部の応力が集中することは周知である。このように、他の条件を変えずに、スリットの形状、特に先端部の曲率半径によって簡単に応力集中係数を調整することができる。
【0020】
金属片の幅方向が基板面に垂直になるように金属片を配置することが好ましい。金属片の厚みは極めて小さいので、幅方向が基板面に垂直になるように配列することで、繰返し応力センサ全体が十分小型に形成され、各金属片が互いに極く近辺の応力状態を受けることができる。繰返し応力センサを対象部位に貼付する場合にも、全ての金属片をより的確に測定部位近傍に当るようにして、的確な測定をすることができる。
【0021】
なお、ベース箔部と亀裂箔部の形状差によって複数の金属片にそれぞれ異なる応力集中度を生じさせるようにしてもよい。スリットの形状によって応力集中度を調整することは簡単にかつ論理的に隣同士の金属片がわずかずつ異なる応力集中度を有するように形成することができる。しかし、より大きなレンジで応力集中度を変化させようとすると、スリットの先端曲率の調整では不足することもある。したがって、たとえば、ベース箔部の幅を変えたりすることも含めて応力集中度を調整することが効果的である。
【0022】
また、亀裂箔部とベース箔部の長さの比を調整することによって各金属片に互いに異なる応力集中度を生じさせるようにしてもよい。また、亀裂箔部の長さを変化させずに亀裂箔部とベース箔部の長さの比を調整するようにしてもよい。
亀裂箔部とベース箔部では亀裂箔部の方が歪みやすい。すなわち、金属片全体に生ずる歪みは、亀裂箔部の長さが小さいほど亀裂箔部に多くの歪みが集中する。さらに、応力センサ全体の大きさが一定で亀裂箔部の長さが同じである場合、ベース箔部の長さが小さいほど亀裂箔部に多くの歪みが集中する。
【0023】
したがって、亀裂箔部とベース箔部の長さの比を調整することによって金属片に生ずる応力集中度を大きく調整することができる。
なお、亀裂箔部の形状をそれぞれ変化させる場合はセンサの製造上困難が多い。これに対して、ベース箔部は単純な形状をしているので、ベース箔部の長さを変化させることにより亀裂箔部とベース箔部の長さ比を調整することは簡単であり、製造コストも低廉化する。
【0024】
本発明の繰返し応力センサは、評価対象部材にただ1個を貼付することにより、応力集中係数の異なる複数の金属片を簡単に適用することができ、所定期間経過後に一度金属片の破断状況を観察することにより、部材に生ずる応力振幅を推定することができ、また部材の寿命や将来の疲労損傷の有無を予測することができる、簡単で取扱いも簡便な繰返し応力センサである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明について実施例に基づき図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0026】
図1は本発明の第1実施例に係る繰返し応力センサの斜視図、図2は正面断面図、図3は一部平面断面図、図4は本実施例の別の態様に係るに係る繰返し応力センサの正面断面図である。
図1,2,3から分かるように、本実施例の繰返し応力センサ10は、検出素子ブロック18の端部を接合部13を介して基板12の表面に固定したものである。検出素子ブロック18は、短冊状の金属片11を並列に多数並べて、金属片11の端部14で金属片同士を固定したものである。
【0027】
金属片11は、図2に表示されているように、厚みの小さいベース箔部15が両側の端部14から中央に向かって延出し、中央部が幅の小さい亀裂箔部16を形成している。
検出素子ブロック18の金属片11は、亀裂箔部16が短い方から長い方に順に並んでいる。
検出素子ブロック18は、ベース箔部15と亀裂箔部16、さらに端部14に延長した部分を同じ厚さで形成した短冊状の金属片11の端部14の位置を、金属片11の間隔分の厚さを持つスペーサを挟んで固定することにより形成することができる。
また、図3に表示されるように、微細加工技術により直方体ブロックから切り出して形成することも可能である。
【0028】
評価対象部材19に生ずる繰返し応力に伴い発生する歪みは、薄い基板12と接合部13を介して検出素子ブロック18に伝達する。金属片11の端部14は金属片同士が互いに接合された部分で殆ど歪みを生じないので、対象部材19から伝達された歪みはベース箔部15と亀裂箔部16に分配される。
両箔部15,16が同じ厚さの同じ材料で形成されている場合は応力の強さは箔部の幅にほぼ反比例して亀裂箔部16に応力集中し、箔部15,16の伸びは箔部の長さと箔部における応力の積に比例するから、部材の伸びδmは亀裂箔部16とベース箔部15に亀裂箔部の長さLsと応力集中係数αの積αLsとベース箔部の長さLbの比(αLs:Lb)で配分される。
したがって、亀裂箔部16の伸びをδs、kを定数としたとき、亀裂箔部の伸びδsに対応する応力σs=kδs/Lsは、誤差を恐れず表現すれば
σs=kαδm/(αLs+Lb)
とすることができ、亀裂箔部に作用する応力は、亀裂箔部16の長さが短いほど強く現れることが分かる。
【0029】
繰返し応力センサ10は基板12の裏面を評価対象部材19の表面に貼付して、対象部材19における実際の繰返し応力の状態を検査するために使用される。
繰返し応力センサ10を貼付した後、十分な試験期間が経過したところで、センサの金属片11のうちで亀裂箔部16が破断したもののうち最大の長さを有するものを確認する。繰返しセンサ10の感度は十分高いので、試験期間が十分長ければ、対象部材19における実際の繰返し負荷が疲労限界を超えている金属片は全て破断している。そこで、破断した金属片の疲労限界を調べることにより、実際の応力振幅Δσmを知ることができる。ただし、実際の繰返し負荷は1値でなく分布するので、ここで求められるのは代表的な応力振幅である。
【0030】
こうして得られた代表応力振幅Δσmが評価対象部材の疲労限界を超えていれば、対象部材はいずれ疲労損傷を表わすことが確実であり、疲労限界より低ければ永久的に疲労障害を表わさないということができる。
また、繰返し応力センサ10の金属片11のS−N曲線が対象部材のS−N曲線とほぼ同等の傾きを持っている場合は、センサを使用した測定で部材の寿命を推定することができる。
【0031】
なお、本実施例における金属片は、本願出願人が別途開示しようとする図8に示した疲労センサの構造に倣って、図4に示すような構成を有するものであっても良い。図4の金属片21は、中央部を横断して両側のベース部25より薄く形成された疲労検出部26を有しこの疲労検出部に先端が亀裂の始点となるスリット27を設けたもので、端部24同士を金属片21相互間で固定し、金属片21の両端部24を接合部23で箔状の基板22に固定したものである。
【0032】
スリット27の形状と先端曲率が応力集中率と亀裂発生期間を調整し、隣の金属片21とわずかずつ異なるようになっている。金属片21は、図1に表示された繰返し応力センサ10と同様、応力集中率の大きさの順に配列されている。
図4に示した実施態様の繰返し応力センサも、図1のものと同じ機能を有し、同様に評価対象部材29の表面に貼付して利用することができる。
【実施例2】
【0033】
図5は本発明の第2実施例に係る繰返し応力センサの一部を表わす平面図である。
第2実施例の繰返し応力センサは、金属片毎に応力集中率が順に変化するように応力集中形状を変化させたものを、応力集中率の大きさ順に配列したセンサである。
【0034】
図5に示した繰返し応力センサ30は、多数の金属片31を並列に形成した1枚の金属膜の両端部34を基板32に固定したもので、金属片31はそれぞれ中央部に等長の亀裂箔部36を備え、亀裂箔部の両側にベース箔部35を備える。亀裂箔部36は両側から円弧状に切り欠きを有する応力集中形状を持ち、切り欠きの曲率は配列された順に大きくなり、これに従って応力集中係数が順に大きくなるようになっている。また、ベース箔部35は、順に幅wが大きくなるように配列されている。
【0035】
ベース箔部35の幅の変化と亀裂箔部36の応力集中形状の変化が相俟って、1枚の金属膜中に形成する金属片31の間で、大きな範囲に亘って応力集中係数を変化させることができる。
なお、図5に表示した金属片31の1枚ずつをそれぞれ分離した形で形成して、図1に示したように、各金属片の幅方向が基板に垂直になるように配列して端部で固定する構成の高密度な繰返し応力センサとしても良いことはいうまでもない。
【実施例3】
【0036】
図6は本発明の第3実施例に係る繰返し応力センサの一部を表わす平面図である。
第3実施例の繰返し応力センサは、評価対象部材の歪みに対して金属片毎に発生する応力を変化させるため金属片の長さを調整したものを、長さ順に配列したセンサである。
図6に示した繰返し応力センサ40は、多数の金属片41を並列に形成した1枚の金属膜の両端部44を基板42に固定したもので、金属片41はそれぞれ中央部に両側から円弧状に切り欠きを有する同じ形状の亀裂箔部46を備える。亀裂箔部46の両側のベース箔部45は、順に長さLが小さくなるように配列されている。
【0037】
評価対象部材に貼付したときは、対象部材と密着する基板42を介して基板42に固結された金属片41の両端部44に歪みが伝達されるが、端部44は殆ど変形しないので、ベース箔部45と亀裂箔部46の部分でこの歪みを分配する。したがって、金属片41に発生する応力は、ベース箔部45と亀裂箔部46の部分の長さLが短いほど大きくなる。
第3実施例の繰返し応力センサ40も第1実施例のものと同じ機能を有し、評価対象部材の表面に貼付して経時後観察して破断した金属片の番号を知ることにより、対象部材の疲労損傷の可能性を予測したり、寿命を推定したりすることができる。
【実施例4】
【0038】
図7は本発明の第4実施例に係る繰返し応力センサの一部を表わす平面図である。
第4実施例の繰返し応力センサは、第1実施例のセンサにおける亀裂箔部の長さによる応力集中係数変化と第3実施例のセンサにおける金属片の有効長による応力調整の技術的思想を複合して、計測範囲を拡大したところに特徴を有する。
本実施例の繰返し応力センサ50は、検出素子ブロック58の端部54を接合部を介して基板52の表面に固定して形成する。検出素子ブロック58は、短冊状の金属片51を並列に多数並べて、金属片51を端部54で互いに固定したものである。
【0039】
金属片51は中央に亀裂箔部56を備え、亀裂箔部56の両側にベース箔部55を備える。亀裂箔部56はベース箔部55より幅が狭く、応力集中が生じるようになっている。
本実施例の繰返し応力センサ50では、金属片51を亀裂箔部56が短い方から長い方に順に並べている。なお、亀裂箔部56と両側のベース箔部55を合わせた金属片の長さLは、亀裂箔部が短いほど短くなるようにして、応力集中度の変化を大きくして広い測定範囲を確保している。
【0040】
したがって、本実施例の繰返し応力センサ50における亀裂箔部56の長さと金属片の有効長さLの比率は、第1実施例および第3実施例の繰返し応力センサより広い範囲で変化し、金属片51における応力集中度もしくは応力の増加率は、第1および第3実施例のものより大きく変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施例に係る繰返し応力疲労センサの斜視図である。
【図2】本実施例の繰返し応力疲労センサの正面断面図である。
【図3】本実施例の繰返し応力疲労センサの平面断面図である。
【図4】本実施例の別の態様に係るに係る繰返し応力センサの正面断面図である。
【図5】本発明の第2実施例に係る繰返し応力疲労センサの一部平面図である。
【図6】本発明の第3実施例に係る繰返し応力疲労センサの一部平面図である。
【図7】本発明の第4実施例に係る繰返し応力疲労センサの一部平面図である。
【図8】別途開示される疲労センサの斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
10 繰返し応力センサ
11 金属片
12 基板
13 接合部
14 端部
15 ベース箔部
16 亀裂箔部
18 検出素子ブロック
19 評価対象部材
21 金属片
22 基板
23 接合部
24 端部
25 ベース部
26 疲労検出部
27 スリット
29 評価対象部材
30 繰返し応力センサ
31 金属片
32 基板
34 端部
35 ベース箔部
36 亀裂箔部
40 繰返し応力センサ
41 金属片
42 基板
44 端部
45 ベース箔部
46 亀裂箔部
50 繰返し応力センサ
52 基板
54 端部
55 ベース箔部
56 亀裂箔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
応力集中形状に基づき互いに異なる応力集中度を有する複数の短冊状の金属片を基板上に並列に前記応力集中度の大きさの順に配置され、該金属片の両端部同士が固着され、該固着した両端部がさらに前記基板に固着された繰返し応力センサ。
【請求項2】
前記複数の金属片が互いに等長で、相互に固着される端部とベース箔部と亀裂箔部からなり、該ベース箔部と亀裂箔部がそれぞれ金属片同士で同じ幅を有し該亀裂箔部の長さが異なることにより各金属片の応力集中度が異なるようにされることを特徴とする請求項1記載の繰返し応力センサ。
【請求項3】
前記複数の金属片が互いに等長で、相互に固着される端部とベース箔部と亀裂箔部からなり、該亀裂箔部が金属片毎に先端の曲率半径が異なるスリットを備えることにより各金属片の応力集中度が異なるようにされることを特徴とする請求項1記載の繰返し応力センサ。
【請求項4】
前記金属片の幅方向が前記基板面に垂直になるように該金属片が配置されることを特徴とする請求項2または3記載の繰返し応力センサ。
【請求項5】
前記複数の金属片が互いに等長で、相互に固着される端部とベース箔部と亀裂箔部からなり、前記応力集中形状が前記ベース箔部と亀裂箔部の形状差によって前記複数の金属片にそれぞれ異なる応力集中度を生じさせることを特徴とする請求項1記載の繰返し応力センサ。
【請求項6】
前記複数の金属片が相互に固着される端部とベース箔部と亀裂箔部からなり、前記亀裂箔部と前記ベース箔部の長さの比によって前記複数の金属片にそれぞれ異なる応力集中度を生じさせることを特徴とする請求項1記載の繰返し応力センサ。
【請求項7】
前記亀裂箔部が前記金属片同士同じ長さであることを特徴とする請求項6記載の繰返し応力センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−315810(P2007−315810A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−143279(P2006−143279)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】