説明

缶体の嵌合蓋用緊締バンドとその製造方法

【課題】缶体の嵌合蓋用緊締バンドとして、本来の性能を低下させることなく大幅なコストダウンを可能にする手段を提供する。
【解決手段】缶本体7の開口部周縁7aと蓋板8周縁8aとを重合状態で抱持する断面山形で開環状のバンド本体1と、バンド本体1の両端部を引き付ける緊締具とを有し、バンド本体11がメッキ鋼板を裁断した帯板材10aのロール成形物からなり、バンド本体11の両側縁の縁端面11a,11aに防錆被膜が形成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所謂オープン缶として上端側が全面的に開放する缶体において、その缶本体の開口部に嵌合した蓋板を固定するのに使用される金属製の嵌合蓋用緊締バンドと、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1及び図2は、この種の緊締バンドの代表的な一つであるボルト締付型のものを示す。このボルト締付型緊締バンド1は、断面山形で開環状のバンド本体11の両端部に、側面視δ形の締付具取付金具12,12が固着され、両取付金具12,12の筒部12a,12aにボルト13を挿通してナット14に螺合するようになっている。その使用においては、例えば図6(A)(B)に示すように、オープン式ドラム缶Dの缶本体7の開口部周縁7aと、その開口部に嵌合した蓋板8の周縁8aとの重合部分をバンド本体11で鉢巻き状に抱持し、その両端部の締付具取付金具12,12に通した締付ボルト13とナット14を螺合緊締することにより、両端の接近で縮径したバンド本体11で該重合部分を締付け固定する。なお、図6(B)において、符号9は、缶本体7の開口部周縁7aと蓋板8の周縁8aとの間に介在させたゴム等よりなるガスケットである。
【0003】
しかして、この種の緊締バンドとしては、図1,図2及び図6で例示したボルト締付型の他に、内レバー式や外レバー式のものも多用される。図3で示す内レバー式緊締バンド2は、前記同様のバンド本体21の両端部に側面視鉤形の締付具取付金具22,23が固着されると共に、該バンド本体21の締付具取付金具22寄りの位置に掛止金具24が固着され、一方の取付金具22の内向き突出片22aに円弧状の操作レバー25が枢着され、この操作レバー25の基部側と、他方の取付金具23の内向き突出片23aとの間にリンク片26が枢着連結されており、操作レバー25をバンド本体21側へ引き付けて掛止金具24に掛止することにより、バンド本体21を縮径して緊締する。また、図4の外レバー式緊締バンド3は、同様のバンド本体31の両端部の外周側にブラケット型の締付具取付金具32,33が固着され、一方の取付金具32に枢着した断面コ字形の操作レバー34の基部側と、他方の取付金具33との間にリンク片35が枢着連結されており、操作レバー34をバンド本体31側へ引き付けて取付金具32の係止凸部32aに係嵌することにより、バンド本体31を縮径して緊締する。
【0004】
ところで、この種の緊締バンドとしては、屋外での使用や長期間の反復使用に対応する防錆性能が必要であることから,バンド本体11〜31を始めとする各部材にステンレス鋼を用いたものも市販されているが、その反面で安価な缶体の付属品として製造コストを抑えることも重要であるため、一般的には鋼製の部材を使用して組立製作後に電気亜鉛メッキを施したものが多用されている。しかしながら、このような嵌合蓋用緊締バンドとして、従来より細部構造の改良に関する様々な提案(例えば、特許文献1〜3)がなされているが、コストダウンの観点からの有用な提案は殆ど見受けられない。
【特許文献1】実開昭56−10004号公報
【特許文献2】実開昭57−177961号公報
【特許文献3】特開平6−298267号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述の情況に鑑み、缶体の嵌合蓋用緊締バンドとして、本来の性能を低下させることなく大幅なコストダウンを可能にする手段を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための手段を図面の参照符号を付して示せば、本発明の請求項1に係る缶体の嵌合蓋用緊締バンド1は、缶本体7の開口部周縁7aと該開口部に嵌合した蓋板8周縁8aとを重合状態で抱持する断面山形で開環状のバンド本体1と、該バンド本体1の両端部間に介在して当該両端部を引き付けて緊締する締付具(ボルト13,ナット14)とを有し、バンド本体11がメッキ鋼板を裁断した帯板材10aのロール成形物からなり、少なくとも該バンド本体11の両側縁の縁端面11a,11aに防錆被膜が形成されてなるものとしている。
【0007】
請求項2の発明は、上記請求項1の嵌合蓋用緊締バンド1において、バンド本体11の両端部に、メッキ鋼板から打ち抜いて曲げ加工した締付具取付金具12,12が固着され、バンド本体11の長手方向両端面11b,11bと該締付具取付金具12,12の端面12b,12bとに防錆被膜が形成されてなる構成としている。
【0008】
請求項3の発明は、上記請求項1又は2の嵌合蓋用緊締バンド1において、メッキ鋼板が溶融亜鉛メッキ鋼板である構成としている。
【0009】
請求項4の発明は、上記請求項1〜3のいずれかの嵌合蓋用緊締バンド1において、防錆被膜がワックス系水性エマルジョン型の防錆コーティング剤の塗膜からなるものとしている。
【0010】
請求項5の発明は、上記請求項4の嵌合蓋用緊締バンド1において、防錆コーティング剤がワックスエマルジョン及びアクリル系樹脂エマルジョンを含有してなるものとしている。
【0011】
請求項6の発明に係る嵌合蓋用緊締バンド1の製造方法は、メッキ鋼板からスリット裁断された長尺帯板材10aの巻回コイル10の両側面に、防錆コーティング剤を塗布乾燥して防錆被膜を形成したのち、この巻回コイルから帯板材10aを連続的に繰り出しつつ、ロール成形によって該帯状材10aを断面山形に成形し、次いで円環状にカール成形すると共に、このカール成形の一定長さごとに該帯板材10bを切断して開環状のバンド本体11を製作し、このバンド本体11の両端部に抵抗溶接によって締付具取付金具12,12を固着することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
次に、本発明による作用効果を図面の参照符号を付して説明する。まず、請求項1の発明に係る嵌合蓋用緊締バンド1は、そのバンド本体1にメッキ鋼板を裁断した帯板材10aを用いているから、組立製作後のメッキ処理を必要とせず、もって製作コストを大幅に低減できる上、メッキ鋼板の裁断によって帯板材10aの両側縁の縁端面11a,11aが非メッキ面となるが、これら非メッキ面に防錆被膜を形成するため、充分な防錆性能が確保される。
【0013】
請求項2の発明によれば、バンド本体の両側部に加え、該バンド本体11の長手方向両端面11b,11bと、該バンド本体11の両端部に固着した締付具取付金具12,12の周端面12b,12bとにも防錆被膜が形成されているから、緊締バンドの缶体Dに対する着脱操作時に作業者が軍手で触れる部位についても高い防錆性能が得られる。
【0014】
請求項3の発明によれば、バンド本体1に用いるメッキ鋼板が溶融亜鉛メッキ鋼板であるため、入手容易で材料コストをより低減できると共に、メッキ鋼板としての充分な防錆性能が得られる。
【0015】
請求項4の発明によれば、上記の防錆被膜をワックス系水性エマルジョン型の防錆コーティング剤の塗膜にて構成するから、より優れた防錆性能が発揮される。
【0016】
請求項5の発明によれば、上記の防錆コーティング剤がワックスエマルジョン及びアクリル系樹脂エマルジョンを含有することから、特に優れた防錆性能が発揮される。
【0017】
請求項6の発明に係る嵌合蓋用緊締バンド1の製造方法では、メッキ鋼板からスリット裁断された長尺帯板材10aからバンド本体11を製作すると共に、該スリット裁断によって非メッキ面となる両側縁の縁端面11a,11aに防錆被膜を形成することから、該バンド本体11を組立製作後にメッキ処理を施す場合に比較して、製作コストを大幅に低減できる上、特に前記防錆被膜の形成をロール成形前の長尺帯板材10aの巻回ロール10の段階で行うことから、当該バンド本体11に極めて優れた防錆性能を付与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の適用対象とする嵌合蓋用緊締バンドは、図6に示すオープン式ドラム缶Dのように所謂オープン缶として上端側が全面的に開放する缶体において、その缶本体の開口部に嵌合した蓋板を固定するのに使用されるものであり、缶本体の開口部周縁と蓋板周縁とを重合状態で抱持する断面山形で開環状のバンド本体と、該バンド本体の両端部間に介在して当該両端部を引き付けて緊締する締付具とを有しておればよく、その締付方式には制約はなく、図1及び図2で示すようなボルト締付型、図3で示すような内レバー式、図4で示すような外レバー式のいずれでもよいし、これら以外の締付方式のものも包含する。なお、バンド本体の断面山形とは、一方側へ開くような断面形状の総称であり、V字形、U字形、C字形、くの字形、半円形、底辺側が開いた台形等を含む。
【0019】
しかして、本発明の嵌合蓋用緊締バンドは、バンド本体がメッキ鋼板を裁断した帯板材のロール成形物からなり、少なくとも該バンド本体の両側縁の非メッキ面となる縁端面に防錆被膜が形成されていることを特徴としており、組立製作後の電気亜鉛メッキが不要であるために製作コストを大幅に低減できる上、非メッキ面となるバンド本体の両側部に防錆被膜を有するので、全体として充分な防錆性能を発揮する。
【0020】
バンド本体に用いる前記メッキ鋼板としては、特に制約されないが、経済性と防錆性能から溶融亜鉛メッキ鋼板が推奨される。また、締付具の構成部材と、該締付具をバンド本体に取り付けるための締付具取付金具、掛止金具等についても、形態的に金属板の打ち抜きや曲げ加工によって製作し得る部材では、溶融亜鉛メッキ鋼板を原材とし、打ち抜きや切断によって生じる非メッキ面に同様の防錆被膜を設けることが望ましい。
【0021】
上記防錆被膜の形成に用いる防錆コーティング剤としては、特に限定されないが、メッキ鋼板の非メッキ面に対する親和性と防錆性能より、ワックス系水性エマルジョン型のものが好ましく、とりわけワックスエマルジョンとアクリル系樹脂エマルジョンを含有する水性エマルジョン型のものが好適である。また、防錆被膜中には、充填材として炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、アルミナ、シリカ、雲母、タルク、珪藻土、カオリン等を含有してもよい。しかして、防錆被膜の厚さは、乾燥膜厚で1〜50μm程度の範囲とするのがよい。なお、ジンクリッチペイントは、亜鉛粉末を高濃度で含むために防錆能力は高いが、高価である上、塗料中で亜鉛粉末が沈降し易いことから、バンド本体の側端面のような狭い領域に均一な被膜を形成しにくいという難点がある。
【0022】
ワックスエマルジョンとアクリル系樹脂エマルジョンを含有する水性エマルジョン型の防錆コーティング剤では、固形分として、ワックスエマルジョンを5〜30重量%、アクリル系樹脂エマルジョンを30〜70重量%、充填材を10〜50重量%の範囲で含む組成を有するものが好ましい。そのワックスエマルジョンとしては、ワックス成分の融点が40〜80℃程度のものがよい。また、アクリル系樹脂エマルジョンとしては、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体又は共重合体、もしくは(メタ)アクリル酸エステルと他のエチレン性モノマーとの共重合体であって、ガラス転移点が0℃以下、エマルジョン粒子の平均粒子径が10〜100nm程度のものが推奨される。しかして、このようなワックス系水性エマルジョン型の防錆コーティング剤の好適な市販品として、パーカー興産社製の商品名NOX−RUST W−134がある。
【0023】
このような嵌合蓋用緊締バンドを製造するには、まず図5に示すように、メッキ鋼板からスリット裁断された長尺帯板材10aの巻回コイル(アンコイラ)10から、ピンチロール40…を介して該帯板材10aを連続的に繰り出し、ロール成形部4のロール対4a…間を通過させることにより、該帯板材10aを断面山形に成形し、次いでカール成形部5の成形ロール5aによって所要径の略円形状にカール成形すると共に、そのカール成形物10bが閉環する直前の長さごとにカッター6で切断してバンド本体を製作するが、その巻回コイル10の段階、該巻回コイル10の帯板材10aからカール成形物10bとするまでの成形段階、あるいは前記切断後のカール成形物10bに、バンド本体の両側縁となる非メッキ面に防錆コーティング剤を塗布して防錆被膜を形成する。
【0024】
そして、製作したバンド本体の両端部に締付具取付金具を固着し、更に外レバー式や内レバー式の緊締バンドでは締付具の各部材や掛止金具等を取り付けるが、これら部材としてメッキ鋼板製で打ち抜きや切断による非メッキ面がある場合は、バンド本体の前記カール成形後の切断による両端の非メッキ面も併せて、これら非メッキ面に防錆コーティング剤を塗布して防錆被膜を形成する。すなわち、バンド本体の両端、締付具取付金具、締付具の各部材、掛止金具等は、缶体Dへの着脱操作の際に作業者が軍手で触れる部位であるから、これらの非メッキ面が優れた防錆性能を有することは高い商品価値に繋がる。
【0025】
バンド本体の両側縁となる非メッキ面への防錆コーティング剤の塗布は既述のいずれの段階でも行えるが、良好な防錆被膜とするには、予め巻回コイル10の段階で塗布して塗膜乾燥後に成形を行うか、当該バンド本体の作製後に塗布することが推奨される。これは、成形段階で防錆コーティング剤を塗布した場合、以降に未硬化の防錆被膜に対して形成油が大量にかかったり、強力なエアー噴射圧が加わるため、防錆被膜の定着が阻害され易いことによる。
【0026】
なお、バンド本体に対する締付具取付金具、締付具の各部材、掛止金具等の取り付けは、プロジエクション溶接の如き抵抗溶接によって行うことが推奨される。これは、抵抗溶接では発熱がごく短い時間で部材同士の接触部のみに集中するため、溶接部の変色を殆ど生じずに効率よく溶接できることによる。しかして、防錆塗料等による厚い塗膜を設けた面では抵抗溶接は適用できないが、本発明のようにバンド本体がメッキ鋼板であれば支障なく抵抗溶接を行える。
【実施例】
【0027】
以下、図1及び図2で示すボルト締付型緊締バンド1を対象として、本発明の実施例及び比較例を説明する。
【0028】
実施例1
厚さ2mmの溶融亜鉛メッキ鋼板(規格SGHC,目付Z08=80g/m2 Min)からスリット裁断した幅44mmの長尺帯状材の巻回ロールの両側面に、ワックス系水性エマルジョン型の防錆コーティング剤(前出、NOX−RUST W−134)を刷毛塗りで塗布して常温下で12時間乾燥し、乾燥膜厚が約5μmの防錆被膜を形成した。そして、この巻回ロールをアンコイラとしてセットし、図5で示すように、該巻回ロール10より該帯状材10aを連続的に繰出しながら、ロール成形部4で断面略V字状にロール成形し、次いでカール成形部5で約600mm径の円形状にカール成形してカッター6で切断し、得られたバンド本体11の両端部に同様の溶融亜鉛メッキ鋼板から打ち抜いて曲げ加工した締付具取付金具12(展開長さ115mm、幅24mm、筒状部12aの内径16mm)をプロジエクション溶接で固着したのち、該バンド本体11の長手方向両端面11bと該取付金具12の周端面12bとに同様に防錆コーティング剤を塗布して防錆塗膜を形成し、ボルト締付型緊締バンドを製造した。
【0029】
実施例2
実施例1と同様に溶融亜鉛メッキ鋼板からスリット裁断した長尺帯状材の巻回ロール10をそのままアンコイラとしてセットし、実施例1と同様にしてロール成形及びカール成形と切断を経て得られるバンド本体11の両端部に締付具取付金具12にプロジエクション溶接で固着したのち、該バンド本体11の両側縁の縁端面11a,11aと長手方向両端面11b,11bならびに締付具取付金具12の周端面12bに、実施例1と同様の防錆コーティング剤を塗布して乾燥膜厚が約5μmの防錆塗膜を形成し、ボルト締付型緊締バンドを製造した。
【0030】
実施例3
防錆コーティング剤としてパーカー興産社製の商品名NOX・RUST X−194(農業ビニールハウスのパイプ端面用防錆油として市販)を用い、乾燥膜厚が約1μmの防錆被膜を形成した以外は、実施例1と同様にしてボルト締付型緊締バンドを製造した。
【0031】
実施例4
防錆コーティング剤としてジンクリッチペイント(株式会社トウペ製の商品名ケイギンコート、亜鉛メッキ缶胴体溶接部外部補修用塗料として市販)を用い、乾燥膜厚が約20μmの防錆被膜を形成した以外は、実施例1と同様にしてボルト締付型緊締バンドを製造した。
【0032】
比較例
防錆コーティング剤の塗布を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてボルト締付型緊締バンドを製造した。
【0033】
参考例
締付具取付金具12として鋼板から打抜き・曲げ加工したのちに電気亜鉛メッキを施したものを使用した以外は、比較例と同様にしてボルト締付型緊締バンドを製造した。
【0034】
〔防錆性能試験1〕
次に、上記実施例1〜4と比較例及び参考例のボルト締付型緊締バンドについて、バンド本体11の長手方向中間部を100mmの長さで切り取って試験片とし、発錆促進試験として湿潤試験(48℃,95%RH)と塩水噴霧試験(35℃,5%食塩水)を行い、それぞれ所定時間置きに発錆状況を調べ、側端面11aにおける発錆面積比率によって防錆性能を次の5段階で評価した。その結果を防錆処理におけるコストパフォーマンスの下記4段階の評価と共に後記表1に示す。なお、防錆性能評価は多数個の試験片の平均値に基づいている。
【0035】
〔防錆性能評価〕
××・・・発錆面積50%以上
×・・・発錆面積20%以上〜50%未満
△・・・発錆面積5%以上〜20%未満
○・・・発錆面積5%未満
◎・・・発錆なし
【0036】
〔コストパフォーマンス〕
×・・・かなりコスト高
△・・・ややコスト高
○・・・比較的に低コスト
◎・・・極めて低コスト
【0037】
【表1】

【0038】
表1から明らかなように、バンド本体の原材に溶融亜鉛メッキ鋼板からスリット裁断した帯状材を用いた緊締バンドにおいて、実施例1〜4のように該バンド本体の両側の側端面に防錆被膜を設けることにより、該防錆被膜を設けない比較例1に対して防錆性能が向上している。しかして、この防錆被膜の形成に際し、ワックスエマルジョンとアクリル系樹脂エマルジョンを含有する水性エマルジョン型の防錆コーティング剤を用いた場合(実施例1,2)に、処理コストがやや高く付くジンクリッチペイントを用いた場合(実施例4)と同等で、また処理コストの高い後メッキによって非メッキ面のない締付具取付金具を用いた緊締バンド(参考例)に比べても殆ど遜色のない非常に優れた防錆性能が得られることが判る。
【0039】
〔防錆性能試験2〕
次に、上記実施例1と比較例及び参考例のボルト締付型緊締バンドについて、軍手を嵌めた作業者がオープン式ドラム缶D(図6参照)に対する着脱操作を5回行ったのち、バンド本体11の締付具取付金具12が固着した一端側を切り取って試験片とし、発錆促進試験として前記防錆性能試験1と同様の湿潤試験(48℃,95%RH)及び塩水噴霧試験(35℃,5%食塩水)、ならびに屋外(工場地帯)及び屋内(実験室内)での暴露試験を行い、それぞれ所定日数置きに締付具取付金具12の周端面12bにおける長手方向に沿う外縁側(バンド本体11の端面側)の発錆状況を調べ、その外縁側の発錆面積比率によって防錆性能を既述の5段階で評価した。その結果を後記表2及び表3に示すが、表3には該締付具取付金具12の防錆処理におけるコストパフォーマンスの前記4段階の評価を共に表記した。なお、防錆性能評価は多数個の試験片の平均値に基づいている。
【0040】
【表2】







【0041】
【表3】

【0042】
一般的に、この種緊締バンドにおける締付具取付金具の周端面は、オープン式ドラム缶D等の缶体に対する着脱操作時に作業者の軍手を嵌めた手が触れるため、何らかの防錆処理を施していても、その防錆処理面が元来より荒らされ易い部位である。しかるに、表2及び表3で示すように、該締付具取付金具12の非メッキ面(周端面12b)に防錆コーティングを施した本発明の緊締バンド(実施例1)では、処理コストの高い後メッキによって非メッキ面のない締付具取付金具を用いた緊締バンド(参考例)に比べ、湿潤試験及び塩水噴霧試験と屋内暴露試験のいずれにおいても締付具取付金具の防食性能に差がなく、屋外暴露試験においても該防食性能の差は僅かで実用上問題のないレベルであることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明を適用するボルト締付型緊締バンドの一例を示す斜視図。
【図2】同ボルト締付型緊締バンドの要部を拡大して示す斜視図。
【図3】本発明を適用する内レバー式緊締バンドの一例を示す斜視図。
【図4】本発明を適用する外レバー式緊締バンドの一例の要部を示す斜視図。
【図5】本発明の緊締バンドのバンド本体を製造工程を示す模式図。
【図6】ボルト締付型緊締バンドの使用状態を示し、(A)はオープン式ドラム缶における嵌合蓋の緊締状態を示す斜視図、(B)は(A)のB−B線の断面矢視図。
【符号の説明】
【0044】
1〜3 緊締バンド(嵌合蓋用緊締バンド)
4 ロール成形部
5 カール成形部
6 カッター
7 缶本体
7a 開口部周縁
8 蓋板
8a 蓋板周縁
10 巻回ロール
10a 帯状材
11 バンド本体
11a 縁端面
11b 端面
12 締付具取付金具
12b 周端面
13 ボルト(締付具)
14 ナット(締付具)
21 バンド本体
22 締付具取付金具
25 操作レバー(締付具)
26 リンク片(締付具)
31 バンド本体
32 締付具取付金具
34 レバー(締付具)
35 リンク片(締付具)
D オープン式ドラム缶(缶体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶本体の開口部周縁と該開口部に嵌合した蓋板周縁とを重合状態で抱持する断面山形で開環状のバンド本体と、該バンド本体の両端部間に介在して当該両端部を引き付けて緊締する締付具とを有し、
前記バンド本体がメッキ鋼板を裁断した帯板材のロール成形物からなり、少なくとも該バンド本体の両側縁の縁端面に防錆被膜が形成されてなる缶体の嵌合蓋用緊締バンド。
【請求項2】
前記バンド本体の両端部に、メッキ鋼板から打ち抜いて曲げ加工した締付具取付金具が固着され、バンド本体の長手方向両端面と該締付具取付金具の端面とに防錆被膜が形成されてなる請求項1に記載の嵌合蓋用緊締バンド。
【請求項3】
前記メッキ鋼板が溶融亜鉛メッキ鋼板である請求項1又は2に記載の嵌合蓋用緊締バンド。
【請求項4】
前記防錆被膜がワックス系水性エマルジョン型の防錆コーティング剤の塗膜からなる請求項1〜3のいずれかに記載の嵌合蓋用緊締バンド。
【請求項5】
前記防錆コーティング剤がワックスエマルジョン及びアクリル系樹脂エマルジョンを含有してなる請求項4に記載の嵌合蓋用緊締バンド。
【請求項6】
メッキ鋼板からスリット裁断された長尺帯板材の巻回コイルの両側面に、防錆コーティング剤を塗布乾燥して防錆被膜を形成したのち、この巻回コイルから帯板材を連続的に繰り出しつつ、ロール成形によって該帯状材を断面山形に成形し、次いで円環状にカール成形すると共に、このカール成形の一定長さごとに該帯板材を切断して開環状のバンド本体を製作し、このバンド本体の両端部に抵抗溶接によって締付具取付金具を固着することを特徴とする缶体の嵌合蓋用緊締バンドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−137620(P2009−137620A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316180(P2007−316180)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000233675)日鐵ドラム株式会社 (12)
【出願人】(596018908)株式会社城内製作所 (1)
【Fターム(参考)】