説明

缶成形装置及び缶の成形方法

【課題】パンチの駆動機構を簡単な構成として、長時間にわたって精度良く缶を成形できるとともに、生産効率の高い缶成形装置及びこの缶成形装置を用いた缶の成形方法を提供する。
【解決手段】往復直線運動するシャンク部11の端部にパンチ13が備えられるとともに、筒状のダイス24がパンチ13と同軸上に配置され、ダイス24の内周孔24Aにパンチ13を挿脱させることにより、ダイス24に配置されたカップ材Wに深絞り・しごき加工を施して缶体Cを成形する缶成形装置10において、シャンク部11は、リニアモータ17によって駆動されて往復直線運動させられることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイスの内周孔に対してパンチを往復直線移動させることにより、深絞り・しごき加工(DI加工:Drawing and Ironing加工)を施してアルミニウム、鋼等の金属製の缶体を成形する缶成形装置及びこの缶成形装置を用いた缶の成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、アルミニウム、鋼等で構成された有底円筒状の缶体は、アルミニウム、鋼等の板材にカッピングプレスを施してカップ材を成形した後に、このカップ材を、筒状をなすダイスの内周孔に配置した状態で、往復直線移動可能なパンチにより深絞り・しごき加工を施すことにより成形されている。
【0003】
ここで、従来の缶成形装置においてパンチを往復直線移動させる機構としては、回転機の回転軸にクランクと連接棒を介してパンチを連結し、回転機の回転運動をクランク及び連接棒により直線運動に変えてパンチを駆動するものが提供されている。しかしながら、このような従来の駆動機構にあっては、回転機を高速回転させた際にパンチの実際の移動軌跡が所定の往復運動の軸線に直交する方向にばらつくために、パンチの移動速度に限界があり、缶成形装置の生産効率の向上を妨げる要因となっていた。また、パンチと連接棒とを摺動可能に支持している軸受部が長期にわたる連続運転に耐えることができず、この缶成形装置の生産効率が低下してしまうといった問題があった。
【0004】
そこで、特許文献1〜3においては、パンチの駆動機構として、内周歯が形成された大歯車と、この大歯車のピッチ円半径と同径のピッチ円直径を有し、かつ前記大歯車の内周歯に噛み合ってこの大歯車に沿って移動する小歯車と、この小歯車に連結され、かつ小歯車の軸線を中心として公転させる駆動機構と、前記小歯車のピッチ円上に回転自在に設けられたパンチとを備えるとともに、この小歯車を公転させる駆動手段としてモータとモータの主軸端にベルトを介して接続されたフライホイールとを備えた缶成形装置が提案されている。
【0005】
この構成の缶成形装置においては、モータとフライホイールとによって、大歯車のピッチ円半径と同径のピッチ円直径を有する小歯車を、前記大歯車の内周歯に噛み合わせた状態で前記大歯車の軸線を中心として公転させると、この小歯車が公転とともに自転して、前記小歯車のピッチ円上の一点が前記大歯車のピッチ円上の直径上を往復運動する軌跡を描き、この結果、前記小歯車のピッチ円上の一点に回転自在に設けられたパンチが往復直線運動するため、パンチを円滑にかつ迅速に往復直線移動させることができるものとされている。
【特許文献1】特開平06−71350号公報
【特許文献2】特許第3158312号公報
【特許文献3】特許第3158313号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述の缶成形装置におけるパンチの駆動機構では、フライホイール、小歯車、大歯車と多くの伝達部材を備えており、構成が非常に複雑となって缶成形装置自体が大型化してしまうという問題があった。
また、モータの動力をパンチに伝達するために多くの伝達部材が互いに係合して作動することになり、それぞれの機械的負荷(動力ロス)が大きくなり、パンチを直線往復移動させるのに大きな動力が必要であった。さらに、これらの伝達部材が長期間の使用によって摩耗した場合には、伝達部材同士が作動する際にがたつきが生じてパンチの移動にばらつきが生じるとともに、騒音や振動が大きくなってしまうといった問題があった。また、駆動機構に不具合が生じた場合には、これら多くの伝達部材をすべて確認する必要があり、不具合の復旧に多くの時間と労力を要した。
【0007】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、パンチの駆動機構を簡単な構成として、長時間にわたって精度良く缶を成形できるとともに、生産効率の高い缶成形装置及びこの缶成形装置を用いた缶の成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の課題を解決するために、本発明の缶成形装置は、往復直線運動するシャンク部の端部にパンチが備えられるとともに、筒状のダイスが前記パンチと同軸上に配置され、前記ダイスの内周孔に前記パンチを挿脱させることにより、前記ダイスに配置されたカップ材に深絞り・しごき加工を施して缶体を成形する缶成形装置において、前記シャンク部は、リニアモータによって駆動されて往復直線運動させられることを特徴としている。
【0009】
この構成の缶成形装置では、端部にパンチを備えたシャンク部をリニアモータによって直接駆動(ダイレクトドライブ)させて往復直線移動させることができるので、多くの伝達部材を介することなく、ダイスの内周孔にパンチを挿脱させてダイスの内周孔に配置されたカップ材にDI加工を施して缶を成形することができる。よって、多くの伝達部材が不要となり、これら伝達部材のがたつき等によるパンチの移動のばらつきや騒音、振動の発生を確実に防止することができる。また、パンチの駆動機構が簡単となり、この駆動機構にトラブルが発生した場合でも、原因の特定が比較的容易で早期に復旧することができる。
さらに、パンチを直接駆動させることができるので、動力ロスを小さく抑えることができるとともに、缶成形装置自体を小型化することが可能となる。
【0010】
ここで、前記シャンク部の両端に前記パンチを備え、前記シャンク部の両端側に、前記ダイスをそれぞれ配置することにより、シャンク部をリニアモータで往復直線移動させることで、シャンク部を一方側に移動した際に、一方側端部に備えられたパンチとダイスとで缶を成形するとともに、シャンク部を他方側に向けて戻した際にも、他方側端部に備えられたパンチとダイスとで缶を成形することができる。ここで、従来の缶成形装置では、フライホイールによって小歯車を駆動させていたため、パンチを他方側に移動する際にはパンチをダイスへと挿入してDI加工を施すだけの推力が不足し、一方側に配置したパンチとダイスとでのみDI加工可能とされていた。これに対し、本発明によれば、一方側及び他方側においてそれぞれ缶成形を行うことができ、従来の缶成形装置に比べて生産効率を大幅に向上させることができる。
【0011】
また、前記リニアモータが備えられた前記シャンク部に並列して、前記シャンク部の往復直線運動と逆位相で往復直線運動するカウンターバランス部を配置することにより、リニアモータの移動による反力を打ち消すことができ、缶成形装置の振動を防止できる。つまり、リニアモータでは、リニアモータを構成するコイルあるいはマグネットが直接移動することになるため、シャンク部とともに移動する部分の重量が大きくなって、シャンク部を移動させた際の反力が大きくなる傾向にあるが、リニアモータによって駆動されるシャンク部と逆位相に往復直線運動するカウンターバランス部を設けることでこの反力を打ち消して、缶成形装置自体の振動を防止することができるのである。
【0012】
また、前記カウンターバランス部に、リニアモータによって駆動される第2シャンク部を有し、該第2シャンク部の端部にパンチを備えるとともに、筒状のダイスを前記第2シャンク部と同軸上に配置することにより、缶成形装置に一対のシャンク部を配置してそれぞれのシャンク部の端部に備えられたパンチとダイスとで缶の成形を行うことができるとともに、それぞれのリニアモータを互いに逆位相で往復直線運動させることで缶成形装置の振動を防止することができる。
【0013】
さらに、前記第2シャンク部の両端に前記パンチを備えて、前記第2シャンク部の両端側に、前記ダイスをそれぞれ配置することにより、缶成形装置の振動を防止しながら、さらに効率良く缶の成形を行うことができる。
【0014】
また、前記カップ材を前記ダイスの端面に押し付けるカップホルダが前記軸線方向に移動可能に配置され、該カップホルダをリニアモータによって駆動する構成とすることにより、カップホルダとパンチとを同期させて軸線方向に移動させることができ、缶の成形を寸法精度良く行うことができる。
【0015】
また、本発明の缶の成形方法は、前述した缶成形装置による缶の成形方法であって、前記シャンク部を駆動する前記リニアモータは、一の方向に対する推力が加速される加速モードと減速される減速モードとを繰り返すことにより前記シャンク部を往復直線運動させており、前記減速モードにおいて前記パンチを前記一の方向に配置された前記ダイスの前記内周孔へと挿入することを特徴としている。
【0016】
一般に、リニアモータは推力が小さいために、カップ材のDI加工に適用する際には推力の不足が問題となる。DI加工に必要な加工荷重をリニアモータの推力のみで得るためには大型のリニアモータを使用せざるを得ず実現性が乏しくなる。そこで、本発明の缶の成形方法では、リニアモータが一の方向に対する推力が加速される加速モードと減速される減速モードとを繰り返すことにより往復直線移動させ、この減速モードにおいて一の方向に配置されたダイスの内周孔へとパンチを挿入してDI加工を施すこととしている。
【0017】
ここで、一の方向に向けて減速モードとなっている際には、リニアモータ(シャンク部)の一の方向に向かう速度が大きくなっており、この状態でパンチをダイスの内周孔に挿入することでパンチ(シャンク部)には他の方向に対して力が加わることになり、リニアモータの推力以上の力でカップ材をDI加工することができるのである。よって、比較的小型のリニアモータによってDI加工を確実に行うことができ、缶成形装置を小型化することができる。
【0018】
また、DI加工の場合、比較的加工長さが長くなるために、カップ材をダイスに配置して即座にパンチで押す必要がある。そこで、一の方向に向けてパンチを移動させる際に減速モードとしてDI加工に必要な加工荷重を与える必要があるが、リニアモータでは加速モードと減速モードの切替制御が簡単であり、減速モードで確実にパンチをダイスの内周孔へと挿入させて缶の成形を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、パンチの駆動機構を簡単な構成として、長時間にわたって精度良く缶を成形できるとともに、生産効率の高い缶成形装置及びこの缶成形装置を用いた缶の成形方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態について添付した図面を参照して説明する。図1に本発明の第1の実施形態である缶成形装置の概略図を示す。
この缶成形装置10は、図1に示すように、軸線Lに沿って延びる長尺状のシャンク部11が設けられた本体部12を有し、このシャンク部11の一方側(図1において左側)端部にシャンク部11と同軸上に延びるパンチ13が形成されている。このパンチ13の外径は、成形する缶Cの内径と略同一径とされている。
【0021】
本体部12には、前記シャンク部11と平行に配置された棒状のマグネット14が設けられており、このマグネット14を挟んで一対のガイドロッド15が、前記マグネット14と平行に配置されている。つまり、本体部12は、互いに平行に軸線Lに沿って延びるシャンク部11とマグネット14と一対のガイドロッド15とを備えている。
そして、シャンク部11の他方側(図1において右側)端部には、シャンク用コイル16がガイドロッド15に案内されて軸線L方向に進退可能に配置されており、マグネット14とシャンク用コイル16とでシャンク用リニアモータ17が構成されている。
また、シャンク用コイル16にはシャンク用検出ヘッド18が設けられており、このシャンク用検出ヘッド18には、前記マグネット14と平行、つまり軸線Lに平行に配置されたリニアスケール19が挿通されている。シャンク用コイル16とマグネット14とで構成されたシャンク用リニアモータ17は、シャンク用検出ヘッド18とリニアスケール19とによってその位置が検出され、図示しない制御手段によって動作が制御される。
【0022】
さらに、本体部12の一方側には、筒状をなして外径がカップ材Wの内径と略同一径とされるとともに、内径がパンチ13の外径と略同一径とされたカップホルダ20が配置されており、このカップホルダ20には、ホルダ用コイル21が接続されている。このホルダ用コイル21は、シャンク用コイル16を案内するのと共用の前記ガイドロッド15により案内されて軸線L方向に進退可能に配置されており、マグネット14とホルダ用コイル21とでカップホルダ21を駆動するためのホルダ用リニアモータ22が構成されている。
【0023】
また、このホルダ用コイル21にはホルダ用検出ヘッド23が設けられており、このホルダ用検出ヘッド23には、前述のリニアスケール19が挿通されている。ホルダ用コイル21とマグネット14とで構成されたホルダ用リニアモータ22は、ホルダ用検出ヘッド23とリニアスケール19とによってその位置が検出され、図示しない制御手段によって動作が制御される。これにより、カップホルダ20は、シャンク部11とは独立してシャンク部11の軸線Lに沿った方向に往復直線運動可能とされている。
なお、本実施形態では、図1に示すように、シャンク用リニアモータ17とホルダ用リニアモータ22とで共通のマグネット14、ガイドロッド15、リニアスケール19を使用しており、缶成形装置10の小型化が図られている。
【0024】
そして、本体部12の一方側部分には、筒状をなすダイス24が、ダイス24の内周孔24Aの中心軸とシャンク部11及びパンチ13の軸線Lとが同軸状になるように配置されている。ここで、前記内周孔24Aの内径は、成形する缶Cの外径と略同一径とされている。このダイス24と本体部12との間には、カップ材Wを缶成形装置10へと供給する供給手段(図示なし)が設けられている。
また、このダイス24よりもさらに一方側には、缶Cの底部を成形するためのボトムフォーマー26が配置されており、このボトムフォーマー26とダイス24との間に、成形した缶Cを排出する排出手段(図示なし)が設けられている。
【0025】
このような構成とされた缶成形装置10によって缶Cを製造する方法について説明する。まず、アルミニウムの板材を図示しないカッピングプレスによってプレスしてカップ材Wを成形する。このカップ材Wを、供給手段を介してダイス24と本体部12との間に設けられたカップステーショナー(図示なし)内に搬入する。カップステーショナーによって、カップ材Wは、その軸心がダイス24の内周孔24Aの中心軸と一致するようにしてダイス24の他方側端面に配置される。ここで、ホルダ用コイル21を一方側へと移動させて、カップホルダ20をダイス24の他方側端面に配置されたカップ材Wの内部に挿入し、カップ材WをDI加工に適した力でダイス24の他方側端面に押し付ける。この状態で、シャンク用コイル16を駆動してシャンク部11を一方側に向けて移動し、パンチ13をダイス24の内周孔24Aへと挿入して、カップ材WにDI加工を施す。
【0026】
図2に、シャンク部11を駆動するシャンク用リニアモータ17の推力103の変化を示す。シャンク用リニアモータ17は、一方側に向けて加速する加速モード101と減速する減速モード102とを繰り返すことによって往復直線運動を行っており、推力103は図2に示すように周期的に変化することになる。なお、図2において+側が一方側とされ、−側が他方側とされている。ここで、シャンク用リニアモータ17の推力103が減速モード102の状態で、パンチ13をダイス24の内周孔24Aに挿入するように制御することにより、シャンク部11及びパンチ13が一方側に向けて高速で移動している状態でダイス24内に挿入されて、図2に示すように、シャンク用リニアモータ17自体の推力103よりも大きな加工荷重104がカップ材Wに作用する。ここで、この加工荷重104とシャンク用リニアモータ17とを合わせた合成推力105は、図2に示すように変化することになる。
このようにしてカップ材WにDI加工を施した後に、ボトムフォーマー26に当接させて缶Cの底部を加工して缶Cを完成させ、成形した缶Cを排出手段を通じて缶成形装置10から外部へと排出する
【0027】
この構成の缶成形装置10によれば、一方側端部にパンチ13が備えられたシャンク部11が、他方側端部に配置されたシャンク用コイル16とマグネット14とで構成されたシャンク用リニアモータ17によって直接駆動(ダイレクトドライブ)されるので、パンチ13の駆動機構として伝達部材を設ける必要がなく、パンチ13の駆動機構を簡単に構成できてパンチ13を精度良く往復直線移動させることができ、缶Cを寸法精度良く成形することができる。また、伝達部材を備える必要がないので、例えば歯車同士の係合時のがたつきによる騒音や振動が発生することがない。
【0028】
また、パンチ13を直接駆動させているので動力ロスを小さく抑えることができるとともに、缶成形装置10自体を小型化することが可能となる。さらに、パンチ13の駆動機構にトラブルが発生した場合であっても、原因の特定が比較的容易であり、早期に復旧することができる。
さらに、ダイス24の他方側端面に配置されたカップ材Wを押し付けるカップホルダ20が、シャンク部11と同じ方向に移動可能に配置されるとともに、このカップホルダ20を直線運動させるホルダ用リニアモータ22が備えられているので、カップホルダ20とパンチ13とを同期させて往復直線運動させることができ、缶Cの成形を寸法精度良く行うことができる。
【0029】
また、本実施形態では、シャンク用リニアモータ17を制御手段によって制御することができるので、シャンク用リニアモータ17の推力103が一方側に向けて減速する減速モード102の状態でパンチ13をダイス24の内周孔24Aに挿入してカップ材WにDI加工を施すように制御することで、シャンク用リニアモータ17の推力103以上の荷重によってカップ材Wを加工することができる。よって、比較的小型のリニアモータによってDI加工を行うことができ、缶成形装置10の小型化を図ることができる。
【0030】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と同一の部材には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。図3に第2の実施形態である缶成形装置10を示す。この缶成形装置10においては、シャンク部11の中央にシャンク用コイル16が配置されており、シャンク部11の一方側(図3において左側)及び他方側(図3において右側)にパンチ13がそれぞれ形成されている。
【0031】
また、本体部12の一方側及び他方側にそれぞれカップホルダ20が配置され、カップホルダ20の駆動手段としてホルダ用コイル21がそれぞれのカップホルダ20に備えられている。
さらに、カップホルダ20よりもさらに一方側及び他方側にそれぞれダイス24、ボトムフォーマー26が配置されるとともに、本体部12とダイス24との間にカップ材Wの供給手段が、ダイス24とボトムフォーマー26との間に缶Cの排出手段がそれぞれ設けられている。
【0032】
図4に、この缶成形装置10によって缶Cを成形する場合のシャンク用リニアモータ17の推力103の変化を示す。シャンク用リニアモータ17の推力103が一方側に向けて減速モード102(他方側に向けて加速モード101´)の状態で、一方側に配置されたダイス24の内周孔24Aにパンチ13を挿入し、シャンク用リニアモータ17の推力103が一方側に向けて加速モード101の状態、つまり他方側に向けては減速モード102´の状態で、他方側に配置されたダイス24の内周孔24Aにパンチ13を挿入するように制御されている。このように制御することで、図4に示すように、一方側のダイス24とパンチ13及び他方側のダイス24とパンチ13とで、シャンク用リニアモータ17自体の推力103よりも大きな加工荷重104で缶Cの成形を行うことができる。ここで、加工荷重104とシャンク用リニアモータ17とを合わせた合成推力105は、図4に示すように変化することになる。
【0033】
この構成の缶成形装置10によれば、シャンク部11を一方側に移動した際に、一方側端部に備えられたパンチ13とダイス24とで缶を成形するとともに、シャンク部11を他方側に向けて戻した際に、他方側端部に備えられたパンチ13とダイス24とで缶を成形することができ、缶Cの生産効率を大幅に向上させることができる。
【0034】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。なお、第1、第2の実施形態と同一の部材には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。図5に第3の実施形態である缶成形装置10を示す。この缶成形装置10においては、シャンク部11と並列に、つまり本体部12と平行にカウンターバランス部30が配置されている。本実施形態では、カウンターバランス部30は、本体部12と同様にマグネット31とカウンター用コイル32とによって構成されたカウンター用リニアモータ33を有しており、カウンタ用コイル32は、マグネット31と平行に配置されたガイドロッド34によって案内されて、軸線Lに平行な軸線L´方向にシャンク用コイル16と等しいストロークで進退可能とされている。このカウンター用コイル32にはカウンター用検出ヘッド35が設けられ、カウンター用検出ヘッド35にリニアスケール36が挿通されている。なお、このカウンター用コイル32の重量は、前記シャンク用コイル16の重量にシャンク部11の重量を加えたものと同等とされている。
【0035】
さらに、このカウンターバランス部30には、第2カウンター用コイル37が配置されている。第2カウンター用コイル37の重量は、前記ホルダ用コイル21の重量にカップホルダ20の重量を加えたものと同等とされている。また、第2カウンター用コイル37には、第2カウンター用検出ヘッド38が設けられ、カウンター用コイル32とマグネット31、ガイドロッド34及びリニアスケール36を共用して、軸線L´方向にホルダ用コイル21と等しいストロークで進退加工とされている。
【0036】
この構成の缶成形装置10においては、シャンク用コイル16を駆動する際に、このシャンク用コイル16に対して逆位相にカウンター用コイル32を移動させることにより、シャンク用コイル16の移動による反力をカウンター用コイル32の移動によって打ち消すことができる。また、第2カウンター用コイル37をホルダ用コイル21に対して逆位相に移動させることにより、ホルダ用コイル21の移動による反力を打ち消すことができる。したがって、この缶成形装置10の振動を防止して、缶Cを寸法精度良く成形することができる。
【0037】
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。なお、第1〜3の実施形態と同一の部材には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。図6に第4の実施形態である缶成形装置10を示す。この缶成形装置10においては、シャンク部11の中央にシャンク用コイル16が配置されており、シャンク部11の一方側(図6において左側)及び他方側(図6において右側)にパンチ13がそれぞれ形成されるとともに、本体部12と平行にカウンターバランス部30が配置されている。このカウンターバランス部30には、一方側及び他方側にそれぞれ第2カウンター用コイル37が配置されている。
【0038】
この構成の缶成形装置10においては、カウンターバランス部30によってシャンク用コイル16の移動による反力及びホルダ用コイル21の移動による反力を打ち消して、缶成形装置10の振動を防止することができるとともに、シャンクの一方側に配置されたパンチ13とダイス24、及び、他方側に配置されたパンチ13とダイス24とでそれぞれ缶Cを成形することができる。よって、缶Cを寸法精度良く、かつ、効率良く成形することができる。
【0039】
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。なお、第1〜4の実施形態と同一の部材には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。図7に第5の実施形態である缶成形装置10を示す。この缶成形装置10においては、本体部12と平行に第2シャンク部41が配置され、この第2シャンク部41の他方側(図7において右側)端部にパンチ13が形成され、さらに他方側にダイス24とボトムフォーマー26が配置されている。つまり、この第5の実施形態においては、一対の本体部12,12を有してそれぞれの本体部12で缶を成形することができるものであり、他方の本体部12が一方の本体部12のカウンターバランス部として作用するように構成されている。
【0040】
この構成の缶成形装置10においては、一方側端部にパンチ13が形成されたシャンク部11を駆動させる際に、他方側端部にパンチ13が形成された第2シャンク部41を前記シャンク部11と対向する側に移動させることで、それぞれのパンチ13によって缶Cを成形するとともに、互いの反力を打ち消し合うことになり、缶成形装置10の振動を確実に防止できる。よって、缶Cを寸法精度良く、かつ、効率良く成形することができる。
【0041】
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。なお、第1〜5の実施形態と同一の部材には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。図8に第6の実施形態である缶成形装置10を示す。この缶成形装置10においては、本体部12と平行に第2シャンク部41が配置されている。そして、本体部12に備えられたシャンク部11の両端にそれぞれパンチ13が形成され、これらパンチ13に対応するようにダイス24とボトムフォーマー26が配置されている。また、第2シャンク部41の両端にもそれぞれパンチ13が形成され、これらパンチ13に対応するようにダイス24とボトムフォーマー26が配置されている。つまり、この缶成形装置10には、4つのパンチ13と4つのダイス24とが配置されているのである。
【0042】
この構成の缶成形装置10においては、シャンク部11を駆動させる際に第2シャンク部41を前記シャンク部11と対向する側に移動させることで、互いの反力を打ち消し合って缶成形装置10の振動を確実に防止できる。さらに、4つのパンチ13及びダイス24によって缶Cを成形することができるため、缶成形装置10の生産効率を大幅に向上させることができる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、アルミニウムの板材からカップ材を成形して、これをDI加工する缶成形装置として説明したが、これに限定されることはなく、鋼材等の他の金属缶を成形するものであっても良い。
【0044】
また、シャンク部を移動させるシャンク用リニアモータとして、マグネットを固定してコイルを移動させる構成のものとして説明したが、これに限定されることはなく、コイルを固定しておいてマグネットを移動させる構成のものであっても良い。
さらに、カップホルダを移動させるホルダ用リニアモータとシャンク用リニアモータとでマグネットを共有するものとして説明したが、それぞれ独立に構成したものであってもよいし、カップホルダの駆動手段をリニアモータ以外のものとしても良い。
【0045】
また、カウンターバランス部に、カウンター用リニアモータを備えたものとして説明したが、これに限定させることはなく、他の駆動手段によってカウンターバランスを取ってもよい。ただし、リニアモータで駆動することにより、シャンク部の動作に同期して制御することが容易となるため好ましい。
【0046】
さらに、図2において、加速モードと減速モードとが同じ間隔で発生するものとて説明したが、これに限定されることはなく、例えば一方側にのみパンチが形成されている場合には、一方側に対する加速モードを短くしてシャンク部を短時間で加速させて、減速モードへの切替を即座にすることにより、パンチ及びシャンク部のストロークを有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1の実施形態である缶成形装置の概略図である。
【図2】図1に示す缶成形装置におけるシャンク用リニアモータの推力の変化を示すグラフである。
【図3】本発明の第2の実施形態である缶成形装置の概略図である。
【図4】図3に示す缶成形装置におけるシャンク用リニアモータの推力の変化を示すグラフである。
【図5】本発明の第3の実施形態である缶成形装置の概略図である。
【図6】本発明の第4の実施形態である缶成形装置の概略図である。
【図7】本発明の第5の実施形態である缶成形装置の概略図である。
【図8】本発明の第6の実施形態である缶成形装置の概略図である。
【符号の説明】
【0048】
10 缶成形装置
11 シャンク部
13 パンチ
17 シャンク用リニアモータ(リニアモータ)
20 カップホルダ
22 ホルダ用リニアモータ
24 ダイス
24A 内周孔
30 カウンターバランス部
41 第2シャンク部
101 加速モード
102 減速モード
103 推力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復直線運動するシャンク部の端部にパンチが備えられるとともに、筒状のダイスが前記パンチと同軸上に配置され、前記ダイスの内周孔に前記パンチを挿脱させることにより、前記ダイスに配置されたカップ材に深絞り・しごき加工を施して缶体を成形する缶成形装置において、
前記シャンク部は、リニアモータによって駆動されて往復直線運動させられることを特徴とする缶成形装置。
【請求項2】
前記シャンク部には、その両端に前記パンチが備えられており、前記シャンク部の両端側に、前記ダイスがそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1に記載の缶成形装置。
【請求項3】
前記リニアモータが備えられた前記シャンク部に並列して、前記シャンク部の往復直線運動と逆位相で往復直線運動するカウンターバランス部を配置したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の缶成形装置。
【請求項4】
前記カウンターバランス部は、リニアモータによって駆動される第2シャンク部を有し、該第2シャンク部の端部にパンチが備えられるとともに、筒状のダイスが前記第2シャンク部と同軸上に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の缶成形装置。
【請求項5】
前記第2シャンク部には、その両端に前記パンチが備えられており、前記第2シャンク部の両端側に、前記ダイスがそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項4に記載の缶成形装置。
【請求項6】
前記カップ材を前記ダイスの端面に押し付けるカップホルダが前記軸線方向に移動可能に配置されており、該カップホルダがリニアモータによって駆動されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の缶成形装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の缶成形装置による缶の成形方法であって、
前記シャンク部を駆動する前記リニアモータは、一の方向に対する推力が加速される加速モードと減速される減速モードとを繰り返すことにより前記シャンク部を往復直線運動させており、前記減速モードにおいて前記パンチを前記一の方向に配置された前記ダイスの前記内周孔へと挿入することを特徴とする缶の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−307605(P2007−307605A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−141591(P2006−141591)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【出願人】(390004879)三菱マテリアルテクノ株式会社 (201)
【Fターム(参考)】