説明

缶蓋および飲料缶

【課題】スコア線により囲まれている領域が大きい場合やタブが小さい場合に生じうるタブの操作荷重の増大を抑制可能な缶蓋等を提供する。
【解決手段】パネル400の表面には、第1スコア線430が形成されている。第1スコア線430は、パネル400のうちのタブにより押圧される領域RAを囲むように形成されている。また第1スコア線430は、パネル400の外周縁410側に向かって膨らむように形成され略U字状に形成されている。また、パネル400の表面であって第1スコア線430により囲まれた領域内には、第2スコア線450が形成されている。第2スコア線450は、一端部451および他端部452を有している。第2スコア線450の一端部451は、第1スコア線430により囲まれた領域内に位置し、他端部452は第1スコア線430に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶蓋および飲料缶に関する。
【背景技術】
【0002】
タブによってパネルの一部が押圧されることでスコア線にてパネルの破断が起こり、飲み口として機能する開口が形成される飲料缶が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭51−82188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
飲料缶に用いられる缶蓋には、一般的にスコア線が設けられており、このスコア線により囲まれている領域がタブにより押圧されることで、スコア線に沿ってパネルの破断が起こり、パネルに開口が形成される。
ここで、パネルのうちのスコア線により囲まれている領域(開口となる領域)が大きい場合や、タブが小さい場合、パネルのうちのタブにより押圧される部位とスコア線との距離が大きくなり、タブからの荷重がスコア線に伝わりにくくなる。そしてこの場合、スコア線の破断が生じにくくなり、パネルに開口を形成する際に要するタブの操作荷重が増大しやすくなる。
本発明の目的は、スコア線により囲まれている領域が大きい場合やタブが小さい場合に生じうるタブの操作荷重の増大を抑制可能な缶蓋等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が適用される缶蓋は、缶胴の開口に取り付けられるパネルと、前記パネルに設けられたリベットと、前記パネルの周縁部から前記リベットに向かう一方向に沿って配置されるとともに当該リベットによって当該パネルに固定され、当該パネルを押圧するタブと、前記パネルに形成され、当該パネルのうちの前記タブにより押圧される押圧部位を囲むように形成された第1のスコア線と、前記パネルのうちの前記第1のスコア線により囲まれている領域内に形成され、当該領域内に位置する一端を始点として前記一方向と交差する方向に向かって延びるように設けられ他端が当該第1のスコア線に接続された第2のスコア線と、を有する缶蓋である。
【0006】
ここで、前記第2のスコア線は、前記押圧部位以外の箇所を通るように形成されていることを特徴とすることができる。
また、前記第2のスコア線の前記一端側は、前記押圧部位の近傍に配置されていることを特徴とすることができる。
さらに、前記第2のスコア線は、前記押圧部位よりも前記リベットが設けられている側を通るように形成されていることを特徴とすることができる。
また、前記第2のスコア線は、前記押圧部位と前記リベットとの間を通過するように設けられていることを特徴とすることができる。
さらに、前記第2のスコア線は、前記一端から前記他端に向かうに従い、前記リベットを通る直線であって前記一方向と直交する方向に向かう直線から次第に離れることを特徴とすることができる。
また、前記第1のスコア線は、前記パネルの中央部側および前記周縁部側のうちの当該中央部側に一端および他端を有するとともに当該パネルの当該周縁部側に向かって膨らむように形成され、且つ、当該周縁部側に頂部を有し、前記第2のスコア線の前記他端は、前記第1のスコア線のうちの前記一端と前記頂部との間に位置する部位、または、当該第1のスコア線のうちの前記他端と当該頂部との間に位置する部位に接続していることを特徴とすることができる。
【0007】
また本発明を飲料缶と捉えた場合、本発明が適用される飲料缶は、開口を有し飲料を内部に収容した缶胴と、当該缶胴の当該開口を塞ぐ缶蓋とを有し、前記缶蓋は、前記缶胴の前記開口に取り付けられるパネルと、前記パネルに設けられたリベットと、前記パネルの周縁部から前記リベットに向かう一方向に沿って配置されるとともに当該リベットによって当該パネルに固定され、当該パネルを押圧するタブと、前記パネルに形成され、当該パネルのうちの前記タブにより押圧される押圧部位を囲むように形成された第1のスコア線と、前記パネルのうちの前記第1のスコア線により囲まれている領域内に形成され、当該領域内に位置する一端を始点として前記一方向と交差する方向に向かって延びるように設けられ他端が当該第1のスコア線に接続された第2のスコア線と、を備えていることを特徴とする飲料缶である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スコア線により囲まれている領域が大きい場合やタブが小さい場合に生じうるタブの操作荷重の増大を抑制可能な缶蓋等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施の形態が適用される飲料缶の上面図である。
【図2−1】タブが取り付けられる前のパネルの状態を示した正面図である。
【図2−2】パネルの比較例を示した図である。
【図3】パネルの状態を説明するための図である。
【図4】パネルにて生じる破断を説明するための図である。
【図5】タブが取り付けられた状態のパネルの状態を示した図である。
【図6】パネルの他の構成例を示した図である。
【図7】タブを説明するための図である。
【図8】タブを説明するための図である。
【図9】ユーザによりタブが操作されパネルに開口が形成された際の状態を示した図である。
【図10】缶蓋の他の構成例を示した図である。
【図11】溝の形状の一例を示した図である。
【図12】パネルの比較例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態が適用される飲料缶100の上面図である。この飲料缶100は、同図(A)に示すように、上部に開口を有するとともに下部に底部を有し且つ筒状に形成された容器本体(缶胴)200と、容器本体200の開口に取り付けられ容器本体200の開口を塞ぐ缶蓋300とを有している。なお飲料缶100の内部には、清涼飲料、炭酸飲料、アルコール飲料などの飲料が充填(収容)されている。
【0011】
缶蓋300は、円盤状に形成され基板として機能するパネル400を有している。また缶蓋300は、ユーザにより操作されるタブ500を有している。ここで、タブ500は、パネル400に取り付けられている。また、タブ500は、一端部および他端部を有し、ユーザにより他端部が操作されることで、パネル400のうちの予め定められた箇所に対して一端部を押し付け、パネル400を押圧する。なお本実施形態における缶蓋300は、飲み口として機能する開口がパネル400に形成された後もタブ500がパネル400に取り付けられた状態を維持するいわゆるステイオンタイプの缶蓋である。
【0012】
ここで本実施形態では、タブ500は、パネル400の中央部(中心)からずれた位置に設けられたリベット900によってパネル400に固定されている。付言すると、タブ500は、パネル400に対して偏心した状態で設けられたリベット900によってパネル400に固定されている。さらに説明すると、パネル400のうちのタブ500により押圧される部位よりもパネル400の中央部側に設けられたリベット900によって、タブ500はパネル400に固定されている。さらにタブ500は、タブ500のうちの一端部(先端部510)と他端部との間に位置する部位がリベット900によってパネル400に固定されている。また本実施形態では、タブ500は、パネル400の周縁部からリベット900に向かう一方向に沿って配置されている。付言すると、タブ500は第1仮想線CL1(図2−1参照)に沿うように配置されている。
【0013】
なお本実施形態では、タブ500が、パネル400の中央部からずれた位置に設けられたリベット900によってパネル400に固定されている場合を一例に説明するが、タブ500は、パネル400の中央部に設けられたリベット900によってパネル400に固定することもできる。また、図1(A)では、先端部(タブノーズ)510が円弧状に形成されたタブ500(先端部510に曲率が付与され先端部510が丸みを帯びたタブ500)を一例に説明したが、同図(B)に示すように、タブ500は略矩形状に形成することもできる。
【0014】
図2−1は、タブ500が取り付けられる前のパネル400の状態を示した正面図である。
パネル400は、上記のとおり円盤状に形成されている。またパネル400は、曲げ加工が施された外周縁410を有している。本実施形態では、この外周縁410と容器本体200の上縁部(不図示)とが互いに接触した状態で、この外周縁410および上縁部に対しいわゆる巻き締め加工が施される。これにより、パネル400が容器本体200の上縁部に固定される。またパネル400には、タブ500がパネル400に固定される際に押しつぶされ上述したリベット900となる突出部(ニップル)420が形成されている。ここでこの突出部420は、パネル400の中心部CPから外れた箇所に設けられている。
【0015】
また本実施形態では、パネル400の表面に、第1スコア線430が形成されている。この第1スコア線430は、パネル400のうちのタブ500により押圧される領域RA(タブ500により押圧される押圧部位)を囲むように形成されている。付言すると、第1スコア線430は、領域RAの周囲に形成されている。また第1スコア線430は、パネル400の表面に形成された溝により構成されており、パネル400の破断を誘導する役割を果たす。付言すると、第1スコア線430は、パネル400の破断が予定されている破断予定線として捉えることができる。また第1スコア線430は、パネル400の外周縁(周縁)410側に向かって膨らむように形成され、パネル400を正面から眺めた場合に略U字状に形成されている。さらに第1スコア線430は、パネル400の中心部CP側に一端部431および他端部432を有し、パネル400の外周縁(周縁)410側に頂部433Aを有している。
【0016】
ここで、第1スコア線430の一端部431は、パネル400の中心部CPとパネル400に形成された突出部420とを結ぶ第1仮想線CL1の一方側に配置されている。また他端部432は、第1仮想線CL1を挟み上記一端部431が設けられている側とは反対側に設けられている。また、一端部431および他端部432が互いに離れた状態で設けられることによって、一端部431と他端部432との間には、第1スコア線430が設けられていない不連続部が設けられた状態となっている。この不連続部が設けられることによって、第1スコア線430にて生じるパネル400の破断により形成される舌片部がパネル400から離脱せず舌片部がパネル400に取り付いたままの状態となる。
【0017】
また、上記第1仮想線CL1と直交する仮想線であって突出部420を通る第2仮想線CL2を想定した場合に、上記一端部431および他端部432は、この第2仮想線CL2よりもパネル400の中心部CP側に設けられている。付言すると、図1において、一端部431および他端部432は、リベット900よりも上方に設けられている。また上記第1仮想線CL1と直交する仮想線であってパネル400の中心部CPを通る第3仮想線CL3を挟んで相対する2つの領域のうちの一方の領域内に頂部433Aが設けられ、他方の領域内に一端部431および他端部432が設けられている。さらに、この一方の領域内に、突出部420が設けられている。突出部420をこのように一方の領域内に設けた場合、突出部420をパネル400の中心部CPに設ける場合に比べ、上記舌片部を曲げる際に要する操作荷重が小さくなる。
【0018】
さらに説明すると、リベット900となる突出部420は、パネル400のうちの第1スコア線430により囲まれている部位であって、第1スコア線430の一端部431および他端部432よりも頂部433A側に位置する部位に設けられている。また第1スコア線430は、図2−1に示すように湾曲部433を有している。この湾曲部433は、一端部431と他端部432とを結ぶとともに突出部420が設けられている側に膨らみ且つ突出部420よりもパネル400の外周縁410側を通るように設けられている。
【0019】
また湾曲部433は、第1仮想線CL1と交わる箇所に頂部433Aを有している。また本実施形態における缶蓋300では、パネル400のうち第1スコア線430により囲まれた領域内に、この第1スコア線430により囲まれた領域の剛性を高める補強用ビードHBが形成されている。また補強用ビードHBの一端部には、上方(飲料缶100の外側)に向かって突出しタブ500の先端により押圧されるエンボスEBが設けられている。このエンボスEBが設けられることによって、エンボスEBがない場合に比べ、第2スコア線450(詳細は後述)におけるパネル400の破断が生じやすくなる。
【0020】
ここで本実施形態では、ユーザによりタブ500が操作されることで、第1スコア線430により囲まれた領域がタブ500により押圧され、第1スコア線430が形成されている箇所にてパネル400の破断が生じる。これにより、第1スコア線430が形成されている領域が舌片状となり、且つ、この領域が飲料缶100の内部に向かって折れ曲がる。これにより、飲料缶100に飲み口としての役割を果たす開口が形成される。なお本明細書では、第1スコア線430にて生じる破断により形成される上記舌片状の部位を舌片部と称する場合がある。また本実施形態では、第2スコア線450(詳細は後述)の湾曲部454(パネル400の破断が最初に生じる箇所)がパネル400の中心部CP側に寄せられて配置されている。このような場合、使用者は、飲用時、缶蓋300に開口を形成するため、タブ500を引き上げなければならない。そのため片手に缶体を持ち、他方の手でタブ500を引き起こすことになる。このとき、タブ500に力がかかるため、缶体を持つ手が不安定になり、缶体が傾いてしまうことがある。一般的に、缶内の内容物は、缶内に一部空間を空けて充填されている。内容物が液体の場合において、一定範囲内で缶体を傾けると、缶蓋外周縁に液面は到達するが、缶蓋中央には液面は到達しない。仮に、缶蓋中央に液面が到達するほど傾けたとしても、缶蓋中央における液面からの深さは、缶蓋外周縁における液面の深さより浅い。このため、パネル400の外周縁410側にてパネル400の破断が最初に生じる場合に比べ、パネル400の中心部CP側にて破断が最初に生じる場合は、内部の飲料がこぼれにくくなる。
【0021】
また本実施形態では、パネル400の表面であって第1スコア線430により囲まれた領域内に、第2スコア線450が形成されている。なおこの第2スコア線450も、パネル400の表面に形成された溝により構成されており、パネル400の破断を誘導する役割を果たす。第2スコア線450は、第2仮想線CL2を挟み相対する2つの領域のうちの、頂部433A(第1スコア線430の頂部433A)が設けられている領域内に設けられている。
【0022】
また第2スコア線450は、一端部451および他端部452を有している。ここで第2スコア線450の他端部452は、第1スコア線430の湾曲部433に接続されている。このため、本実施形態では、第1スコア線430と第2スコア線450とが接続する箇所にて、スコア線が分岐するようになっている。なお本実施形態では、一端部431、他端部432、一端部451の3つの端部がスコア線に設けられた状態となっている。
【0023】
第2スコア線450についてさらに説明すると、第2スコア線450の他端部452は、第1スコア線430の湾曲部433のうちの第1仮想線CL1と第2仮想線CL2との間に位置する部位に接続されている。さらに詳細に説明すると、第2スコア線450の他端部452は、第1スコア線430のうちの頂部433Aと他端部432との間に位置する部位に接続されている。また第2スコア線450は、第1スコア線430との接続部から、第1スコア線430により囲まれている領域内に向かうように設けられている。
【0024】
また本実施形態では、第1スコア線430と第2スコア線450との接続部と第1スコア線430の一端部431との距離の方が、接続部と第1スコア線430の他端部432との距離よりも長くなっている。付言すると、第1スコア線430のうちの一端部431と上記接続部との間に位置する部位の長さの方が、第1スコア線430のうちの他端部432と上記接続部との間に位置する部位の長さよりも長くなっている。なお本実施形態では、図中右下方向に向かうように第2スコア線450が設けられている場合を説明したが、第2スコア線450は、図中左下方向に向かうように設けてもよい。この場合、第2スコア線450は、第1スコア線430のうちの頂部433Aと一端部431との間に位置する部位に接続されることになる。
【0025】
一方、第2スコア線450の一端部451は、突出部420の近傍に設けられている。さらに説明すると、第2スコア線450の一端部451は、第1仮想線CL1を挟んで相対する2つの領域のうちの一方の領域側に配置され、第2スコア線450の他端部452はこの2つの領域のうちの他方の領域側に配置されている。さらに説明すると、第2スコア線450は、他端部452から突出部420に向かう直線部453を有している。さらに、この直線部453に接続されるとともに円柱状に形成された突出部420との間に距離を有して配置され且つ突出部420に沿うように設けられた湾曲部454を有している。
【0026】
ここで湾曲部454は、突出部420と第1スコア線430との間に形成されている。より詳細には、第1スコア線430の頂部433Aと突出部420との間に形成されている。付言すると、第1仮想線CL1上において、突出部420と第1スコア線430との間に、第2スコア線450の湾曲部454が配置されている。
【0027】
また湾曲部454は、上記領域RAと突出部420との間を通過するように設けられている。付言すると、本実施形態では、上記領域RAよりも突出部420(リベット900)が設けられている側を通るように第2スコア線450が設けられるとともに、この第2スコア線450は、上記領域RAと突出部420との間を通過するように設けられている。
【0028】
また本実施形態では、第2スコア線450の湾曲部454は、タブ500により押圧される領域RAと突出部420とを通る第1仮想線CL1(領域RAと突出部420とを通る直線)と交差するように設けられている。さらに説明すると、本実施形態における第2スコア線450は、領域RAと突出部420との間を通過した後、第1仮想線CL1と交差する方向に向かって進行し、第1スコア線430に接続される。付言すると、本実施形態における第2スコア線450は、第1仮想線CL1の配設方向と交差する方向に延びるように形成されている。さらに説明すると、第2スコア線450は、タブ500(図1参照)の配設方向である一方向と交差する方向に向かって延びるように形成されている。
【0029】
さらに説明すると、第1仮想線CL1と交差する方向に向かって進行する第2スコア線450は、領域RAが位置する側および突出部420が設けられている側のうちの領域RAが位置する側に次第に近づくように進行を行う。より具体的には、領域RAが位置する側に、第2スコア線450の直線部453が次第に近づくように、第2スコア線450は第1スコア線430に向かって進んでいく。
【0030】
さらに説明すると、第2スコア線450は、領域RAと突出部420との間を通過した後、第2仮想線CL2から次第に離れるように進行し、第1スコア線430に接続される。付言すると、第2スコア線450は、領域RAと突出部420との間を通過した後、第1スコア線430の頂部433Aとパネル400の中心部CPとを通る直線に直交する直線であって突出部420を通る直線である第2仮想線CL2から次第に離れるように進行し、第1スコア線430に接続される。さらに説明すると、第2スコア線450は、突出部420(リベット900)を通る直線であってタブ500(図1参照)の配設方向である一方向と直交する方向に向かう直線である第2仮想線CL2から次第に離れるように進行し、第1スコア線430に接続される。
【0031】
ここで図3(パネル400の状態を説明するための図)も参照しながら、タブ500が操作された際のパネル400の状態を説明する。なお、図3では、パネル400を正面から眺めた場合の状態、および、パネル400を側方から眺めた場合の状態を図示している。
【0032】
本実施形態では、タブ500の後端部がユーザにより持ちあげられた際、タブ500の先端部(タブノーズ)510(図1参照)が、第2スコア線450の湾曲部454と第1スコア線430の頂部433Aとの間に位置する上記領域RA(図2−1参照)を押圧する。そして領域RAがタブ500により押圧されると、まず、この領域RAとリベット900(突出部420)との間を通過するように設けられた第2スコア線450の湾曲部454にてパネル400が破断する(図3の(B)参照)。なお本実施形態では、タブ500とパネル400とのなす角度が約15°となったときに湾曲部454にて破断が生じるようになっている。その後、第2スコア線450に沿ってパネル400の破断が進行し、第1スコア線430と第2スコア線450との接続部まで、パネル400が破断した状態となる。
【0033】
ここで本実施形態では、第1スコア線430と第2スコア線450との上記接続部にて、スコア線が分岐した状態となっている。このため、第2スコア線450の上記湾曲部454から上記接続部までパネル400の破断が進行した後、本実施形態では、図3の(C)に示すように、接続部から第1スコア線430の一端部431に向かう破断が進行する。また、図3の(D)に示すように、接続部から第1スコア線430の他端部432に向かう破断も進行する。なお本実施形態では、接続部から一端部431に向かう上記破断は、タブ500とパネル400とのなす角度が約50°となったときに生じるようになっている。また、接続部から他端部432に向かう上記破断は、タブ500とパネル400とのなす角度が約60°となったときに生じるようになっている。
【0034】
その後、タブ500の後端部がユーザにより更に持ち上げられることで、第1スコア線430の一端部431および他端部432までパネル400の破断がさらに進行する。これにより、第1スコア線430により囲まれていた領域が上述した舌片部となる。また、舌片部の根元(第1スコア線430の一端部431と他端部432との間に位置する箇所)にて舌片部は折り曲げられ、図3(E)に示すように、舌片部は飲料缶100の内部に進入する。これにより飲料缶100には飲み口として機能する開口が形成される。なお詳細は後述するが、引き起こされたタブ500が元の状態に戻される際には、図3(F)に示すように、タブ500が折れ曲がる。
【0035】
ここで、第1スコア線430および第2スコア線450にて生じるパネル400の破断について、図4(パネル400にて生じる破断を説明するための図)を参照しながら更に説明する。本実施形態では、上記のとおり、タブ500の後端部がユーザにより持ちあげられることにより、第2スコア線450の湾曲部454と第1スコア線430の頂部433Aとの間に位置する上記領域RA(図2−1参照)がタブ500により押圧される。付言すると、第1スコア線430により囲まれている領域のうち、第2スコア線450よりも第1スコア線430の頂部433A側の位置する領域がタブ500に押圧される。これにより、まず、第2スコア線450の湾曲部454にてパネル400が破断する。その後、第2スコア線450に沿ってパネル400の破断が進行し、第1スコア線430と第2スコア線450との接続部(交点)まで破断が進行する。
【0036】
その後、タブ500の先端部510がパネル400のうちの領域RA(図2−1参照)を更に押圧することで、第1スコア線430に沿ってパネル400の破断が進行し、図4の符号4Cに示す箇所までパネル400の破断が生じた状態となる。付言すると、突出部420を通る第2仮想線CL2(図2−1参照)と第1スコア線430とが交わる箇所あたりまで、パネル400の破断が生じた状態となる。これにより、図4における領域4Aに、開口が形成される。付言すると、第2スコア線450におけるパネル400の破断、および、第1スコア線430のうちの上記接続部よりも一端部431側に位置する部位におけるパネル400の破断により、パネル400の一部に小さい開口(以下、「小開口」と称する)が形成される。
【0037】
次いで本実施形態では、タブ500の後端部がユーザによりさらに持ちあげられることで、タブ500の先端部510が上記小開口を通じ、飲料缶100の内部に進入するようになる。そしてこのとき、タブ500が、図4の符号4Eに示す箇所を押圧するようになる。付言すると、小開口の縁部を押圧するようになる。さらに説明すると、パネル400のうち、第2スコア線450が存在していた箇所の上方に位置する領域4Bを押圧するようになる。さらに説明すると、第1スコア線430のうち上記接続部よりも他端部432側に位置する部位と、第2スコア線450との間に位置する領域がタブ500により押圧されるようになる。
【0038】
これにより本実施形態では、第1スコア線430に沿ってパネル400の破断が進行し、符号4Dに示す箇所までパネル400が破断するようになる。付言すると、突出部420を通る第2仮想線CL2(図2−1参照)と第1スコア線430とが交わる箇所あたりまで、パネル400の破断が生じた状態となる。さらに説明すると、第1スコア線430のうちの上記接続部よりも他端部432側に位置する部位にてパネル400の破断が起こり、符号4Dに示す箇所までパネル400が破断するようになる。なおユーザによるタブ500の操作が開始されてから符号4Dに示す箇所までパネル400の破断が進行するまでの間、後述する伸長部560は伸長途中にある。
【0039】
その後、本実施形態では、タブ500の後端部がユーザによりさらに持ちあげられることで、上記伸長部560が延びきった状態となり(伸長限に達し)、上記にて説明した舌片部に対して回転モーメントが作用するようになり(詳細は後述)、第1スコア線430にてパネル400の破断がさらに生じるようになる。具体的には、第1スコア線430のうちの上記符号4Cに示す箇所と一端部431との間に位置する第1部位、および、第1スコア線430のうちの上記符号4Dに示す箇所と他端部432との間に位置する第2部位の両部位にて、パネル400の破断が発生する。その後、上記のとおり、舌片部の根元(第1スコア線430の一端部431と他端部432との間に位置する箇所)にて舌片部は折り曲げられ、図3(E)に示したように、舌片部は飲料缶100の内部に進入する。これにより飲料缶100に開口が形成される。
【0040】
なお本実施形態では、第1仮想線CL1を中心線として第1スコア線430は線対象となる関係で配置されている。このため、符号4Cに示す箇所から一端部431へ向かってのパネル400の破断、および、符号4Dに示す箇所から他端部432へ向かってのパネル400の破断は、ほぼ同じタイミングが発生する。付言すると、符号4Cに示す箇所から一端部431へ向かうパネル400の破断、および、符号4Dに示す箇所から他端部432へ向かうパネル400の破断が同時に進行していく。
【0041】
ここで本実施形態では、上記のとおり、第2スコア線450にてパネル400の破断がまず発生する。次いで、本実施形態では、第1スコア線430のうち、上記接続部と符号4Cに示す箇所との間に位置する部位にてパネル400の破断が発生する。その後、第1スコア線430のうち、上記接続部と符号4Dに示す箇所との間に位置する部位にてパネル400の破断が発生する。付言すると、本実施形態では、上記接続部から第1スコア線430の一端部431に向かってのパネル400の破断、および、上記接続部から第1スコア線430の他端部432に向かってのパネル400の破断が同時におこらず、時間的にずれた状態でパネル400の破断が起こる。このため本実施形態では、タブ500を引き上げ開口をパネル400に形成する際のタブ500の操作荷重が小さくなる。
【0042】
さらに説明すると、本実施形態では、ユーザによりタブ500が操作され、タブ500の先端部510がパネル400を押圧する際、この先端部510は、第2スコア線450よりも下方に位置する部位(第2スコア線450よりも頂部433A側に位置する部位)を押圧し、第2スコア線450より上方に位置する部位を押圧しない。付言すると、本実施形態では、第2スコア線450よりも下方に位置する部位、および、第2スコア線450よりも上方に位置する部位の両者がタブ500により同時に押圧される構成ではなく、第2スコア線450よりも下方に位置する部位のみにタブ500が接触しこの部位のみがタブ500により押圧される構成となっている。さらに説明すると、本実施形態では、上記領域4Bとタブ500との接触が、パネル400に対して上記小開口が形成された後に起こるようになっている。
【0043】
このため本実施形態では、上記接続部から第1スコア線430の一端部431に向かってのパネル400の破断、上記接続部から第1スコア線430の他端部432に向かってのパネル400の破断が同時におこらず、時間的にずれた状態でパネル400の破断が起こる。これにより、パネル400の破断が同時に起こる場合に比べ、タブ500を引き上げる際のタブ500の操作荷重が小さくなる。
【0044】
なお本実施形態では、符号4Cに示す箇所から一端部431へ向かってのパネル400の破断、および、符号4Dに示す箇所から他端部432へ向かってのパネル400の破断は、ほぼ同じタイミングが発生する。しかし、この場合の破断は、これ以前の破断とはプロセスが違っている。つまり、符号4C、符号4Dの破断は、タブ500の先端部がパネル400を缶内に押込むことにより、作用点であるタブ500の先端部から一定の距離を置くスコアで破断を進行させている。しかし、符号4C、符号4Dの破断以降は、タブ500に設けた伸長部560により、リベット900を缶内に押込むモーメントを発生させることにより(詳細は後述)、一端部431及び他端部432に向って破断を進行させている。言い換えれば、リベット900を作用点として、一端部431と他端部432の間の領域を屈曲部として破断を進行させている。さらに言えば、既に、符号4C及び符号4Dは破断しているため、リベット900をこれから破断する領域の先端部と見ることもできる。つまり、破断しようとする領域の先端に荷重をかけて破断させるため、これまでより容易に破断を進行させることができる。このためこの場合は、タブ500の操作荷重はあまり大きくならずタブ500の操作性の低下は抑えられる。
【0045】
なおパネル400は、図2−2のように構成することもできる。
図2−2は、パネル400の比較例を示した図である。
同図に示すように、比較例におけるパネル400では、第1スコア線430の頂部433Aに対して、第2スコア線450の他端部452が接続されている。また、第2スコア線450は、第1スコア線430の頂部433Aから突出部420に向かうように形成されている。付言すると、第2スコア線450は、第1仮想線CL1に重なるように設けられている。さらに説明すると、第2スコア線450は、タブ500の配設方向と交差する方向ではなくタブ500の配設方向に沿った状態で形成されている。
【0046】
ところでこのパネル400においても、領域RAがタブ500により押圧されることとなるが、この比較例では、領域RAから突出部420(リベット900)にかけて第2スコア線450が設けられているため、タブ500がパネル400を押圧する際の押圧荷重が第2スコア線450の全体に亘って作用しやすくなる。そしてこの場合、ある一点に押圧荷重が集中して作用する場合に比べパネル400の破断が生じにくくなり、破断を生じさせるのに要するタブ500の操作荷重が増大しやすくなる。
【0047】
一方で本実施形態における構成では、上記のとおり、第2スコア線450は、第1仮想線CL1の配設方向と交差するように設けられている。付言すると、第2スコア線450は、タブ500の配設方向と交差する方向に向かうように形成されている。この結果、本実施形態では、図2−1に示したとおり、第2スコア線450の一端部451側が領域RAの近傍に配置されるが、他端部452側は、領域RAから離れた箇所に位置するようになる。このため本実施形態では、第2スコア線450の一端部451側に対して荷重が集中的に作用しやすくなり、パネル400に破断を生じさせるのに要するタブ500の操作荷重が、上記比較例の場合よりも小さくなる。
また、図2−2に示した比較例では、スコア線の破断は、他端部452に達した後、一方は一端部431に向う第1スコア線430の破断を進行させ、他方は他端部432に向う第1スコア線430の破断を進行させる。つまり、第1スコア線430の破断が同時に2個所で進行することになる。これは、1箇所で第1スコア線430の破断を進行させる場合に比べ荷重は2倍必要になる。そしてこの場合、1箇所で破断を進行させる場合に比べ、パネル400の破断が生じにくくなり、破断を生じさせるのに要するタブ500の操作荷重が増大しやすくなる。
【0048】
なお上記では説明を省略したが、本実施形態では、図2−1に示したように、領域RAから外れた箇所(領域RA以外の箇所)を通るように第2スコア線450が設けられている。より具体的には、領域RAと突出部420(リベット900)との間を通過するように第2スコア線450が設けられている。この場合、第2スコア線450に対してせん断力が作用するようになり、パネル400の破断が生じやすくなる。なおこのような形態に限られず、領域RA内を通過するように第2スコア線450を設けることもできる。この場合は、第2スコア線450がタブ500により直接押圧されパネル400が屈曲することでパネル400の破断が生じる。
【0049】
図5は、タブ500が取り付けられた状態のパネル400の状態を示した図である。なお本図では、図1(A)にて示したタブ500が取り付けられた際の状態を示している。同図に示すように、本実施形態では、符号4Eに示す箇所(第2スコア線450よりも上方に位置する部位を破断するときにタブ500により押圧される箇所)と上記接続部との距離が小さくなっている。付言すると、タブ500からの荷重が作用する荷重作用点と上記接続部との距離が小さくなっている。このため本実施形態では、符号4Eに示す箇所と上記接続部との距離が大きい場合に比べ、接続部から上方(他端部432)に向かってのパネル400の破断が生じやすくなる。そしてこの場合、タブ500の操作荷重が小さくなる。
【0050】
なお上記では説明を省略したが、本実施形態では、図2−1に示すように、第1スコア線430の一端部431と他端部432との間に位置する領域に、溝600が設けられている。この溝600は、円弧を描き湾曲して形成されるとともに第1スコア線430の一端部431が設けられている側から他端部432が設けられている側に向かうように設けられている。付言すると、第2仮想線CL2(第3仮想線CL3)に沿うように設けられている。このため本実施形態における飲料缶100では、舌片部の折れ曲がりが生じやすくなっている。また本実施形態では、溝600が湾曲して形成されているため、曲がった舌片部が元の状態に戻りにくくなっている。なお溝600は必ずしも必要ではなく溝600は省略することもできる。
【0051】
また上記では、パネル400のうちのタブ500により押圧される領域RAと突出部420との間を通過するように第2スコア線450が設けられている場合を例示したが、第2スコア線450の配置態様はこのような態様に限られない。例えば、図6(パネル400の他の構成例を示した図)に示すように、領域RAと突出部420との間を通過しない第2スコア線450を設けることもできる。さらに上記では、第2スコア線450が略直線で記載されているが、直線に限定されるものではなく、曲線その他の線であっても構わない。
【0052】
次にタブ500について詳細に説明する。
図7および図8は、タブ500を説明するための図である。また図9は、ユーザによりタブ500が操作されパネル400に開口が形成された際の状態を示した図である。なお図7(A)はタブ500の正面図であり、同図(B)は同図(A)の矢印VIIB方向からタブ500を眺めた場合の図である。また、同図(C)はタブ500の背面図である。付言すると、パネル400と対向する対向面側からタブ500を眺めた場合の図である。また同図(D)は、同図(A)の矢印VIID方向からタブ500を眺めた場合の図である。また図8(A)はタブ500に設けられた伸長部560を説明するための図であり、同図(B)はタブ500が引き起こされた際の状態を示した図である。
【0053】
本実施形態におけるタブ500は、図7(A)に示すように、板状に形成され且つ矩形状に形成されたタブ本体部520を有している。なお本実施形態では、同図(D)に示すように、このタブ本体部520の外周縁に対して曲げ加工(カール加工)が施され、タブ本体部520の外周縁が内側にカールした状態となっている。付言すると、タブ本体部520に四方に設けられている縁部には、カール部が形成されている。これにより本実施形態のタブ500は曲げ剛性が高められている。さらにタブ500には、パネル400を押圧する先端部510が設けられている側とは反対側(タブテール側)に、ユーザの指が引っ掛けられる貫通孔(フィンガーホール)530が形成されている。
【0054】
またタブ500には、タブ500の先端部510側に、パネル400に設けられた突出部420(図2−1参照)が挿入される挿入孔540が形成されている。さらに、タブ500の長手方向に沿った長穴550が、タブ500の先端部510側に形成されている。ここで、この長穴550は、タブ500の幅方向(長手方向と直交する方向)において、2つ並んだ状態で設けられている。なお本実施形態では、この2つの長穴550の間に挿入孔540が設けられている。また、挿入孔540よりもタブ500の後端側であって、上記2つの長穴550の間に位置する領域には、伸長部560が形成されている。
【0055】
ここで伸長部560では、図8(A)に示すように、板状に形成された上記タブ本体部520(図7(A)参照)に対して曲げ加工が施されており、伸長部560には、互いに交差する関係の第1片部561および第2片部562が設けられている。付言すると、伸長部560には、タブ本体部520を構成する板部材が屈曲した屈曲部が形成された状態となっている。ここで第1片部561は、タブ500の後端部に向かうに従いパネル400から離れるように配置されている。また第2片部562は、第1片部561に前端部が接続されタブ500の後端部に向かうに従いパネル400に接近するように配置されている。
【0056】
また図7(A)を参照してタブ500についてさらに説明を行うと、タブ本体部520の四方に設けられた4つのカール部のうちタブ500の長手方向に沿って設けられたカール部には第1スリット521が形成されている。また4つのカール部のうちタブ500の長手方向に沿って設けられたもう一つのカール部には、第2スリット522が形成されている。さらに、タブ本体部520のうち第1スリット521と第2スリット522との間に位置する部位には、溝523が形成されている。
【0057】
ここで、第1スリット521、第2スリット522、溝523は、互いに接続され連続した状態で設けられている。また、第1スリット521、第2スリット522、溝523は、タブ500の幅方向に沿って設けられている。また、第1スリット521、第2スリット522、溝523は、挿入孔540と貫通孔530との間に配置されている。ここで本実施形態では、このように第1スリット521、第2スリット522、溝523が形成されており、これらが形成された部分の剛性(曲げ剛性)が低下している。
【0058】
このため、図7(B)に示すように、タブ500の後端部側に荷重を加えるとタブ500が折れ曲がるようになる。付言するとタブ500が屈曲するようになる。なお本実施形態では、第1スリット521と第2スリット522との間に溝523を形成してこの部分の剛性を低下させたが、このような溝523に限らず、例えば曲げ加工を施すことで剛性を低下させることができる。また溝523は必ずしも必要ではなく溝523は省略することもできる。
【0059】
次にタブ500が操作された際の各部の状態を説明する。
ユーザによりタブ500が操作される際には、タブ500の後端部とパネル400との間にユーザの指が挿入され、図8(B)に示すように、タブ500が引き起こされる。ここでこの際、まず、第1片部561と第2片部562とにより形成された伸長部560が延びるようになる。付言すると、第1片部561と第2片部562とによって折れ曲がった状態にあった伸長部560が直線状となり、伸長部560が伸びるようになる。そして、伸長部560が伸びきると、伸長部560からリベット900に荷重が伝わるようになり、リベット900を上方に引っ張り上げようとする力がリベット900に作用する。
【0060】
その一方で、タブ500の先端部510がパネル400に接触しており、パネル400を下方に向かって押圧する力がパネル400に作用する。これにより、タブ500の先端部510とリベット900との間に位置する、第2スコア線450の湾曲部454(図2−1参照)にて、パネル400の破断が発生する。その後、上記にて説明したように、第2スコア線450に沿って破断が進行し、次いで、第1スコア線430に沿って破断が進行する。これにより、第1スコア線430により囲まれていた領域に舌片部が形成される。また、第1スコア線430により囲まれていた領域に開口が形成される。
【0061】
また上記のように、伸長部560が伸び伸長部560からリベット900に荷重が伝わるようになると、図8(B)の矢印4Aに示すような回転モーメントが舌片部に作用する。これにより、舌片部の根元を中心として舌片部が回転し、この根元にて舌片部の折れ曲がりが生じる。また、この折れ曲がりによって舌片部が飲料缶100の内部に進入していく。さらに、舌片部の飲料缶100の内部への進入により、図9(A)に示すように、タブ500の先端部側が飲料缶100の内部へ入り込む。
【0062】
なお図9(A)は、タブ500が起立しパネル400とタブ500とが直交している状態を示している。その後、引き起こされたタブ500がユーザにより元の状態に戻されることとなるが、この際、上記にて説明した、第1スリット521、第2スリット522、および溝523にて、タブ500の折れ曲がりが生じるようになる。この結果、図9(B)に示すように、タブ500の後端部側がパネル400に沿うようになる。その一方で、タブ500の先端部側は飲料缶100の内部に入り込んだ状態となる。
【0063】
ここで飲料缶100の直径を小さくしたい場合(パネル400が小さくなる場合)、第1スコア線430により囲まれた領域(開口となる領域、舌片部となる領域)とタブ500とを接近させて配置する必要が生じる。ところでこの場合、第1スコア線430により囲まれた領域とタブ500とが重なる領域の面積が大きくなる。また開口(飲み口)を大きくした場合にも、第1スコア線430により囲まれた領域とタブ500とが重なる領域の面積が大きくなる。ところでこの場合、第1スコア線430と重なったタブ500の一部が開口の一部を塞いでしまうため、内部の飲料が出にくくなったりしユーザは飲料を飲みにくくなる。このため本実施形態では、上記のように、タブ500のうち飲み口と重なる部分(舌片部と重なる部分)を開口後の飲用時でも飲料缶100の内部に入り込ませた状態を保持する構成としている。この場合、開口の面積が大きくなり、タブ500の先端側が飲料缶100の内部に入り込まない構成に比べ、ユーザは内部の飲料を飲みやすくなる。
【0064】
なお図10(缶蓋300の他の構成例を示した図)に示すように、リベット900により固定される部位の周囲にスリット700が設けられたタブ500が使用されることも多い。ところでこのようなタブ500を図2−1にて示したパネル400に取り付けた場合、スリット700が設けられているためにリベット900を上方に引き上げる力(引っ張る力)(図8(B)の符号4B参照)はリベット900に働かず、図8(B)の矢印4Aで示した回転モーメントはかからなくなる。そしてこの場合、舌片部の根元での舌片部の折れ曲がりが生じにくくなる。付言するとリベット900が設けられている箇所にて舌片部の折れ曲がりが生じるようになるが、舌片部の根元での舌片部の折れ曲がりは生じにくくなる。そしてこの場合、パネル400に形成される開口が小さいものとなってしまう。
【0065】
このため本実施形態では、タブ500のうちリベット900の後方に位置する部位と、このリベット900とを伸長部560で接続する構成としている。この構成によって、リベット900を上方に引き上げる力が大きくなり、舌片部に作用する回転モーメントが大きくなる。これにより、舌片部の根元にて舌片部の曲がりが生じ舌片部の全体が飲料缶100の内部に進入するようになる。
【0066】
なお伸長部560を設けない構成であっても上記回転モーメントを大きくすることができる。例えば、タブ500のうちのリベット900の後方に位置する部位と、このリベット900とを、上記伸長部560を設けないで、単に接続するだけでも、回転モーメントは大きくなる。しかしながらこの場合、タブ500を引き起こす際の操作性が低下してしまう。
【0067】
より具体的に説明すると、通常、タブ500を引き起こす際には、タブ500とパネル400との間に指が入れられたうえでタブ500の引き起こしが行われる。ところで、上記のように、リベット900の後方に位置する部位とリベット900とを接続した場合、タブ500の変位(タブ500の後端部の上方への変位)がリベット900により規制され、タブ500の変位が起こりにくくなってしまう。そしてこの場合、ユーザの指がパネル400とタブ500との間に入りこみにくくなり、タブ500を引き起こす際の操作性が低下する。
【0068】
このため本実施形態では、伸長部560を設ける構成としている。このように伸長部560を設けた場合、タブ500が予め定められた所定の角度(例えば60°)となるまでは伸長部560が伸びるようになり、タブ500がこの予め定められた所定の角度となるまで、タブ500の変位のリベット900による規制がなされにくくなる。そしてこのように規制がなされにくくなると、タブ500とパネル400との間に指が入りやすくなる。この結果、本実施形態の構成では、タブ500を引き起こす際の操作性の低下が抑制される。
【0069】
なお図2−1にて示した溝600の形状に特に制限はないが、溝600は、図11に示す形状で形成することができる。図11は、溝600の形状の一例を示した図である。溝600は、例えば、同図(A)に示すように、パネル400の表面と略直交する関係を有する第1側面621、第2側面622、および、第1側面621と第2側面622とを接続する平坦な底面623とを有する形状で形成することができる。なお溝600の底部には、同図(B)に示すように曲率を付与してもよい。また溝600は、同図(C)に示すように、断面が三角形となる形状で形成することもできる。なお、上記では、溝600を形成することで、舌片部の根元の剛性を低下させたが、同図(D)に示すように、曲げ加工を舌片部の根元に対して施すことで、剛性を低下させることもできる。
【0070】
図12は、パネル400の比較例を示した図である。
図12に示すパネル400では、上記にて説明した第2スコア線450は設けられていない。また本パネル400では、上記第1スコア線430に相当するスコア線460が設けられている。ここで、図2−1にて示した第1スコア線430は、第1仮想線CL1を中心として線対象となる関係で形成されていたが、本実施形態におけるスコア線460は、線対象となる関係で配置されていない。
【0071】
ここでスコア線460は、上記第1スコア線430と同様に、一端部461および他端部462を有している。また、一端部461からスコア線460の頂部460Aにかけての形状は、上記第1スコア線430における一端部431から頂部433A(図2−1参照)にかけての形状と同じとなっている。その一方で、頂部460Aから他端部462にかけての形状は、第1スコア線430の頂部433Aから他端部432にかけての形状とは異なっている。
【0072】
より具体的に説明すると、スコア線460の他端部462は、突出部420の近傍に設けられている。またこの他端部462は、第1仮想線CL1を挟んで相対する2つの領域のうち、一端部461が設けられている領域内に設けられている。そして本実施形態では、この他端部462を始点とし一端部461を終点としてスコア線460が延びている。より詳細に説明すると、他端部462を出発点として、スコア線460は、まず、突出部420と頂部460Aとの間を通過する。
【0073】
その後、スコア線460は、突出部420の周囲を且つスコア線460の頂部460Aが設けられている側とは反対側に向かって進行していく。その後、スコア線460は、屈曲し、その進行方向を逆転する。より詳細に説明すると、突出部420から離れる方向且つパネル400の外周縁410に向かう方向に向かって円弧を描きながら進行する。さらにスコア線460は、スコア線460の頂部460Aに向かって進行していく。そして最後に、スコア線460は一端部461に到達する。なお、スコア線460のうち上記屈曲する部位を、本明細書では、以下「屈曲部」と称する。
【0074】
ここでタブ500が操作され飲料缶100に開口が形成される際には、上記と同様、スコア線460のうち突出部420とスコア線460の頂部460Aとの間に位置する部位にて、パネル400の破断が生じる。その後、パネル400の破断が、スコア線460の頂部460Aを経由してスコア線460の上記一端部461まで進行していく。これにより上記と同様、舌片部が形成され、飲み口となる開口がパネル400に形成される。ここで図12にて示したスコア線460では、上記のとおり屈曲部が形成されている。このため、上記図2−1にて示したパネル400の方が、図12で示したパネル400よりも、パネル400の破断が進行しやすくなっている。
【0075】
さらに説明すると、パネル400とタブ500を大きくしないで、開口を大きくするには、突出部420を通る第2仮想線CL2に対し、スコア線460の頂部460Aが設けられている側と反対側にまでスコア線460を延ばすことになる。例えば、図12のように、突出部420が舌片部の根元ではなく舌片部の中央部に設けられ、且つ、第2スコア線450を設けず上記スコア線460のように一つのスコア線のみが設けられる場合、上記のように屈曲部が形成されてしまう。そしてこのように屈曲部が形成されると、パネル400の破断が進行しにくい状況となる。一方、図2−1に示した本実施形態の構成では、図12と同様、突出部420が舌片部の中央部に設けられているが、第2スコア線450が設けられているために、上記のような屈曲部が形成されないようになっている。このため本実施形態の構成では、突出部420が舌片部の中央部に設けられているにも関わらず、パネル400の破断が進行しやすくなっている。
【0076】
また図12に示した態様では、タブ500からの荷重がパネル400に作用する荷重作用点(上記領域RAに相当)と、スコア線460との離間距離が、他端部462から上記屈曲部に向けてスコア線460が進行するのに従い大きくなる。そしてこのように離間距離が大きくなると、スコア線460に対して荷重が作用しにくくなり、パネル400の破断が生じにくくなる。そしてこの場合、パネル400に開口を形成する際のタブ500の操作荷重が増大することとなる。
【0077】
一方で、本実施形態における構成では、図2−1に示すように、第1スコア線430の一端部431や他端部432に対して第2スコア線450が接続せず、第1スコア線430のうちの一端部431と他端部432との間に位置する部位に対して、第2スコア線450が接続する構成となっており、図12に示した態様に比べ、上記荷重作用点とスコア線との離間距離が小さくなる。このため本実施形態の構成では、図12にて示した態様に比して、パネル400に開口を形成する際のタブ500の操作荷重が小さくなる。
【0078】
なお本実施形態では、図2−1にて示したように、第2仮想線CL2から次第に離れるように第2スコア線450が設けられた場合を一例に説明したが、第1スコア線430のうちの一端部431と他端部432との間に位置する部位に第2スコア線450が接続する構成であれば、図12の態様に比べ、スコア線の破断は進行しやすくなり、パネル400に開口を形成する際のタブ500の操作荷重は小さくなる。
【0079】
例えば、突出部420が設けられている側に第2スコア線450が次第に近づくように第2スコア線450が進行を行う場合(第3仮想線CL3に次第に近づくように進行を行う場合)であっても、一端部431と他端部432との間に位置する上記部位に第2スコア線450が接続する構成であれば、図12の態様に比べ、スコア線の破断は進行しやすくなる。そしてこの場合、図12の態様に比べタブ500の操作荷重は小さくなる。
【0080】
なおスコア線の破断をより円滑に進行させタブの500の操作荷重をより低減させる場合には、図2−1に示したように、第2仮想線CL2から次第に離れるように第2スコア線450を設けることが好ましくなる。付言すると、図2−1に示したように、第2仮想線CL2から次第に離れるように第2スコア線450を設けた場合、第3仮想線CL3に次第に近づくように第2スコア線450を設けた場合に比べ、パネル400のうちのタブ500により押圧される領域RAに対して、第2スコア線450がより近づくようになる。そしてこの場合、第3仮想線CL3に次第に近づくように第2スコア線450を設けた場合に比べ、スコア線の破断は進行しやすくなり、タブ500の操作荷重が小さくなる。
【符号の説明】
【0081】
100…飲料缶、200…容器本体(缶胴)、300…缶蓋、400…パネル、430…第1スコア線、431…一端部、432…他端部、433A…頂部、450…第2スコア線、451…一端部、452…他端部、500…タブ、900…リベット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶胴の開口に取り付けられるパネルと、
前記パネルに設けられたリベットと、
前記パネルの周縁部から前記リベットに向かう一方向に沿って配置されるとともに当該リベットによって当該パネルに固定され、当該パネルを押圧するタブと、
前記パネルに形成され、当該パネルのうちの前記タブにより押圧される押圧部位を囲むように形成された第1のスコア線と、
前記パネルのうちの前記第1のスコア線により囲まれている領域内に形成され、当該領域内に位置する一端を始点として前記一方向と交差する方向に向かって延びるように設けられ他端が当該第1のスコア線に接続された第2のスコア線と、
を有する缶蓋。
【請求項2】
前記第2のスコア線は、前記押圧部位以外の箇所を通るように形成されていることを特徴とする請求項1記載の缶蓋。
【請求項3】
前記第2のスコア線の前記一端側は、前記押圧部位の近傍に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の缶蓋。
【請求項4】
前記第2のスコア線は、前記押圧部位よりも前記リベットが設けられている側を通るように形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の缶蓋。
【請求項5】
前記第2のスコア線は、前記押圧部位と前記リベットとの間を通過するように設けられていることを特徴とする請求項4記載の缶蓋。
【請求項6】
前記第2のスコア線は、前記一端から前記他端に向かうに従い、前記リベットを通る直線であって前記一方向と直交する方向に向かう直線から次第に離れることを特徴とする請求項4又は5に記載の缶蓋。
【請求項7】
前記第1のスコア線は、前記パネルの中央部側および前記周縁部側のうちの当該中央部側に一端および他端を有するとともに当該パネルの当該周縁部側に向かって膨らむように形成され、且つ、当該周縁部側に頂部を有し、
前記第2のスコア線の前記他端は、前記第1のスコア線のうちの前記一端と前記頂部との間に位置する部位、または、当該第1のスコア線のうちの前記他端と当該頂部との間に位置する部位に接続していることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の缶蓋。
【請求項8】
開口を有し飲料を内部に収容した缶胴と、当該缶胴の当該開口を塞ぐ缶蓋とを有し、
前記缶蓋は、
前記缶胴の前記開口に取り付けられるパネルと、
前記パネルに設けられたリベットと、
前記パネルの周縁部から前記リベットに向かう一方向に沿って配置されるとともに当該リベットによって当該パネルに固定され、当該パネルを押圧するタブと、
前記パネルに形成され、当該パネルのうちの前記タブにより押圧される押圧部位を囲むように形成された第1のスコア線と、
前記パネルのうちの前記第1のスコア線により囲まれている領域内に形成され、当該領域内に位置する一端を始点として前記一方向と交差する方向に向かって延びるように設けられ他端が当該第1のスコア線に接続された第2のスコア線と、
を備えていることを特徴とする飲料缶。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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