説明

缶蓋

【課題】天面シール材における皺の発生を防止して良好な外観が得られると共に高い密封性が維持でき、しかも、腐食を確実に防止することができて、レトルト処理等において内圧が変化する缶容器に好適に用いることができる缶蓋を提供する。
【解決手段】金属製の蓋枠体2のパネル部5に、開口部6を閉塞する天面シール材3を設ける。開口部6の内周の端縁12をパネル部5の上面側に複数折返してその端縁12が非露出状態で内部に収納された折返し部7を開口部6の全周に設ける。天面シール材3は、折返し部7を除くパネル部5上に開口部6の全周に沿って接着されて開口部6を気密状態に封止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天面シール材を剥離することにより開口される容器に好適に採用される缶蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外周が缶容器に巻締められ、パネル部に形成された開口部を剥離自在に封止するフィルム状の天面シール材を備える缶蓋が知られている(例えば、特許文献1参照)。天面シール材は開口部に沿ってその外周全周のみが接着されているので、食品を内容物とする缶容器に採用することにより天面シール材を剥離させるだけで開口でき、食品の取り出しを容易に行うことができる。また、開口部の形状を所望の形状に形成しても天面シール材によって容易且つ確実に缶容器を封止できる。特に、この種の缶蓋においては、内容物に応じて比較的大きな開口部を設けることができるので、固形食品や半固形食品だけでなく固形物入り飲料等を内容物とする缶容器に採用して内容物の取出しが容易となる。しかも、大きな開口部を設けることにより、内容物が取出された後にも缶容器の内部の洗浄が容易に行えるため、リサイクル処理が容易となる利点がある。
【0003】
しかし、この種の缶蓋において比較的大きな開口部を設けると、その開口部全部を覆うための天面シール材の形状も大きくなる。そして、天面シール材はフィルム状であるために撓みや伸展が生じ易く、比較的大きな開口部を封止したときには、開口部を覆う部分の撓み量や伸展量が大きくなる。このため、内容物である食品を加熱殺菌する所謂レトルト処理を行うと、加熱による缶容器の内圧の上昇によって天面シール材が外側に伸展して膨出する。そして、その後冷却によって缶容器の内圧が低下すると、伸展した状態の天面シール材が緩むために開口部に沿った天面シール材の外周に皺が生じて外観上醜くなり、或いは、亀裂や部分剥離が生じて密封性が得られなくなる不都合がある。
【0004】
また、この種の缶蓋は、パネル部が金属製であることにより、開口部の端縁角部が鋭利に形成されていることが考えられ、レトルト処理後の冷却時に缶容器の内圧低下により天面シール材が缶容器の内部方向に引っ張られると、開口部の端縁に天面シール材が押し付けられて天面シール材が損傷し、天面シール材による密封性が維持できなくなるおそれがある。それだけでなく、開口部の端縁が缶容器内部側に露出していると、内容物の影響により開口部の端縁に腐食が生じるおそれがある。
【特許文献1】特開2005−154015号公報(図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる不都合を解消して、本発明は、天面シール材における皺の発生を防止して良好な外観が得られると共に高い密封性が維持でき、しかも、腐食を確実に防止することができて、レトルト処理等において内圧が変化する缶容器に好適に用いることができる缶蓋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、本発明は、缶容器に巻締めるための巻締部を外周縁部に備えて、該外周縁部に囲繞されたパネル部に開口部を形成した金属製の蓋枠体と、前記開口部をその上面側から覆って開封自在に閉塞するフィルム状の天面シール材とを備える缶蓋であって、前記開口部の内周の端縁をパネル部の上面側に複数折返してその端縁が非露出状態で内部に収納された折返し部を該開口部の全周に設け、前記天面シール材は、前記折返し部を除くパネル部上に前記開口部の全周に沿って接着されて前記開口部を気密状態に封止することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、前記折返し部が前記パネル部の上面側に複数折返して形成されており、該折返し部の内部に開口部の内周の端縁が収納されているので、開口部の内周の端縁への内容物の付着がなく、開口部の内周の端縁における腐食を確実に防止することができる。また、天面シール材が、折返し部を除くパネル部上に接着されているので、例えば、本発明の缶蓋を缶容器に取り付けてレトルト処理を施した場合に、缶容器の内圧上昇により天面シール材が外方に膨出した後、内圧減少により缶容器の内方に引っ張られても、天面シール材が折返し部に当接してその引っ張りに対抗し、天面シール材の接着部分に沿った皺の発生を抑制することができる。
【0008】
また、本発明の缶蓋においては、前記折返し部の上端面と前記パネル部の上面とは断面視において同一直線上に位置することを特徴とする。これによれば、パネル部に接着された天面シール材を折返し部の上端面に平坦に密着させることができ、折返し部と天面シール材との間への内容物の侵入を抑制することができる。しかも、天面シール材とパネル部との接着部分の皺も平坦に伸ばされて良好な外観を得ることができる。
【0009】
また、本発明の缶蓋において、前記パネル部及び前記折返し部は、前記パネル部の外周を基端として前記開口部の中央に向かって缶容器の外方に傾斜して設けられていることを特徴とする。これによれば、缶容器の内圧上昇により天面シール材が外方に膨出したとき、パネル部及び折返し部が天面シール材の膨出方向に略一致するので、天面シール材の膨出量を小とすることができる。しかも、天面シール材の膨出時にパネル部への接着部分に張力が付与されても、接着部分となるパネル部が傾斜していることによって接着部分の剥離方向に交差する面方向に張力が付与されるので、天面シール材とパネル部との接着状態を確実に維持することができ、高い密封性を得ることができる。
【0010】
また、本発明の缶蓋において、前記天面シール材は、前記折返し部の内周縁から缶容器の内方に向かって前記開口部に凹入されていることを特徴とする。これにより、缶容器の内圧変化に伴う天面シール材の撓み量を比較的大きくすることができ、天面シール材の伸展を抑えて皺の発生を防止することができる。しかも、天面シール材とパネル部との接着部分に付与される張力を弱めて接着状態を確実に維持することができるので、高い密封性を得ることができる。
【0011】
また、本発明の缶蓋において、前記折返し部は、パネル部の上面側に端縁を折り返して形成された第1屈曲部と、該第1屈曲部をパネル部の上面側に折り返して形成された第2屈曲部と、該第2屈曲部をパネル部の上面側に折り返して前記第1屈曲部を内部に巻き込んだ第3屈曲部とによって構成され、パネル部の上面及び各屈曲部間が互いに密着して、該折返し部の内部に端縁が密封されていることが好ましい。これにより、折返し部と天面シール材との間に缶容器の内容物が侵入しても、その内容物が折返し部の内部に侵入することが防止される。しかも、第1乃至第3屈曲部が設けられ、且つ、パネル部の上面及び各屈曲部間が互いに密着していることにより、例えば、折返し部と天面シール材との間に缶容器の内容物が侵入した状態でレトルト処理時の缶容器の内圧上昇が生じても、内容物が折返し部の内部に侵入することが強固に阻止され、開口部の内周の端縁の腐食を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本実施形態の缶蓋を示す平面図、図2は図1の缶蓋の一部を破断して示す説明図、図3はパネル部及び折返し部を示す部分拡大図、図4は天面シール材の作用を示す説明図、図5は天面シール材の他の例を示す説明図、図6はパネル部及び折返し部の他の形態を示す部分拡大図、図7は図6示の形態における天面シール材の作用を示す説明図、図8は図6示の形態における天面シール材の他の例を示す説明図である。
【0013】
缶蓋1は、図1に示すように、金属製の蓋枠体2と、該蓋枠体2上に剥離自在に設けられた開口用の天面シール材3とによって構成されている。天面シール材3は、本実施形態においては、厚み45〜80μのアルミニウム箔を基材としてその内面側に厚み約30μのポリプロピレンフィルムが貼着され、基材の外面側に厚み約12μのポリエチレンテレフタレートフィルムが貼着されたものが採用されている。
【0014】
蓋枠体2はスチール等の金属製板材から打抜き成形され、図2に示すように、缶容器Xに巻締めるための巻締部4と、該巻締部4から内方に向かって延びるパネル部5と、該パネル部5に形成された円形の開口部6とを備えている。更に、開口部6の周縁部には折返し部7が形成されている。
【0015】
また、巻締部4の外周端縁から開口部6の内周端に至る蓋枠体2上面(外面)には、塗膜が施されている。該塗膜は、例えば、エポキシフェノール系塗料を塗布した後、190℃で10分間焼付け硬化させ、更に、その上層にポリプロピレン分散型エポキシフェノール系塗料を塗布した後、180℃で10分間焼付け硬化させることによって形成されている。なお、蓋枠体2の下面(内面)にも塗膜が設けられるが、その塗料は内容物に応じて適宜決定される。
【0016】
前記折返し部7を除くパネル部5の上面、即ち、巻締部4と折返し部7との間のパネル部5の上面には、天面シール材3の周縁部が加熱によって塗膜に剥離可能に接着され、これによって、天面シール材3の全周が接着されて開口部6が閉塞されている。なお、天面シール材3は、例えば、高周波加熱によって蓋枠体2上面に接着される。
【0017】
前記天面シール材3は、その周縁の一部から外方に延出する剥離開口用のタブ8と、開口部6を覆って閉塞する閉塞部9とによって構成され、図3に示すように、パネル部5の上面に接着された接着部10を周縁部に備えている。また、接着部10と閉塞部9との間の全周には、折返し部7の上面に当接する当接部11が設けられている。図1及び図2に示すように、タブ8は、閉塞部9の上面側に折返して設けられている。これにより、タブ8の大きさを比較的大きく形成することができ、巻締等の作業時に邪魔になることなく、更に、開封作業の際に把持し易くすることができる。
【0018】
また、前記折返し部7は、図2に示すように、開口部6の全周の端縁12をパネル部5の上面側に複数折返して形成されている。更に詳しくは、折返し部7は、図3に示すように、パネル部5の上面側に端縁12を折り返して形成された第1屈曲部13と、該第1屈曲部13をパネル部5の上面側に折り返して形成された第2屈曲部14と、該第2屈曲部14をパネル部5の上面側に折り返して前記第1屈曲部13を内部に巻き込んだ第3屈曲部15とによって構成され、パネル部5の上面及び各屈曲部13,14,15の間は互いに密着して形成されている。更に、折返し部7の上端面とパネル部5の上面とは断面視において同一直線上に位置して平坦に形成されている。このように、折返し部7がパネル部5の上面側に複数折返されると共に、端縁12が非露出状態で折返し部7の内部に収納されて各屈曲部13,14,15の間の密着により密封されているので、例えば缶容器X内部の内容物が端縁12に接触することがなく、端縁12における錆び等の腐食の発生を確実に防止することができる。また、折返し部7の上端面とパネル部5の上面とに段差がないので、折返し部7の上面に当接部11を密着させることができるので、折返し部7と当接部11との間への内容物の侵入を抑制することができる。
【0019】
ここで、以上の構成の缶蓋1により内容物として食品が収容された缶容器Xを封止し、食品を加熱殺菌するためのレトルト処理を行ったときには、加熱により缶容器Xの内圧が上昇して、図4(a)に示すように、天面シール材3の閉塞部9が上方に膨出する。このとき同時に折返し部7の上端面から天面シール材3の当接部11が離反して接着部10を除く天面シール材3が僅かに伸展する。その後、冷却により缶容器Xの内圧が低下すると、図4(b)に示すように、天面シール材3の閉塞部9が開口部6から缶容器Xの内方に落ち込むように変形する。このとき、当接部11が折返し部7の上端面に当接し、更に、開口部6の内縁から缶容器Xの内方に向かう閉塞部9に対して閉塞部9の外周縁部と接着部10の内周縁部との間に開口部6の中心に向かう水平方向の張力が発生する。これにより、接着部10の内周縁における皺の発生が抑えられ、天面シール材3の外周部の外観低下が防止される。
【0020】
また、天面シール材3は、図5に示すように、折返し部7の内周縁から缶容器Xの内方に向かって前記開口部6に凹入された形状に予め形成しておいてもよい。即ち、閉塞部9の周縁部に折返し部7の内周縁に沿った段差16を形成しておき、段差16の内方の閉塞部9を略平坦に形成しておいてもよい。これによれば、レトルト処理時の加熱により缶容器Xの内圧が上昇して閉塞部9が上方に膨出しても、閉塞部9の撓み量が大であるので天面シール材3の伸展が極めて小さく、接着部10の内周縁における皺の発生を一層確実に抑えることができる。しかも、缶容器Xの内圧変化に応じて接着部10に付与される張力を十分に弱めることができるので、接着部10の剥離を確実に防止することができ、高い密封性を確実に維持することができる。更に、常温で閉塞部9が開口部6に凹入された形状であるので、凹入された空間に、例えば、缶容器Xの内部の食品を取り出すためのスプーン等を収容することができる。
【0021】
また、他の形態として、図6に示すように、パネル部5及び折返し部7を開口部6の中央に向かって上方(缶容器Xの外方)に傾斜させてもよい。このときにも、天面シール材3の接着部10は、折返し部7を除くパネル部5の上面に接着され、接着部10と閉塞部9との間の当接部11は折返し部7の上面に当接するように設けられる。
【0022】
これによれば、レトルト処理時の加熱により缶容器Xの内圧が上昇したときには、図7(a)に示すように、天面シール材3の閉塞部9が上方に膨出しても、折返し部7の上端面からの天面シール材3の当接部11の離反が無く或いは極めて少なく、折返し部7と当接部11との間への内容物の侵入を抑制することができる。それだけでなく、天面シール材3の閉塞部9が上方に膨出したときに接着部10に作用する張力が接着部10の面方向に付与されることにより、接着部10におけるパネル部5からの剥離を確実に防止できる。また、レトルト処理後の冷却により缶容器Xの内圧が低下したときには、図7(b)に示すように、天面シール材3の閉塞部9が開口部6から缶容器Xの内方に落ち込むように変形するが、折返し部7の上端面に当接する当接部11が閉塞部9の外周縁部と接着部10の内周縁部との間に突っ張り力を発生させて、接着部10の内周縁における皺の発生を確実に抑えることができる。
【0023】
更にまた、パネル部5及び折返し部7を開口部6の中央に向かって上方に傾斜させた場合にも、図8に示すように、天面シール材3においては、閉塞部9の周縁部に折返し部7の内周縁に沿った段差16を形成しておき、段差16の内方の閉塞部9を略平坦に形成してもよい。これによれば、閉塞部9の撓み量を大として天面シール材3の伸展を抑制することができ、接着部10の内周縁における皺の発生や接着部10の剥離のを一層確実に抑えることができる。しかも、閉塞部9が開口部6に凹入された空間に、例えば、缶容器Xの内部の食品を取り出すためのスプーン等を収容することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態の缶蓋を示す平面図。
【図2】図1の缶蓋の一部を破断して示す説明図。
【図3】パネル部及び折返し部を示す部分拡大図。
【図4】天面シール材の作用を示す説明図。
【図5】天面シール材の他の例を示す説明図。
【図6】パネル部及び折返し部の他の形態を示す部分拡大図。
【図7】図6示の形態における天面シール材の作用を示す説明図。
【図8】図6示の形態における天面シール材の他の例を示す説明図。
【符号の説明】
【0025】
X…缶容器、1…缶蓋、2…蓋枠体、3…天面シール材、4…巻締部、5…パネル部、6…開口部、7…折返し部、12…端縁、13…第1屈曲部、14…第2屈曲部、15…第3屈曲部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶容器に巻締めるための巻締部を外周縁部に備えて、該外周縁部に囲繞されたパネル部に開口部を形成した金属製の蓋枠体と、前記開口部をその上面側から覆って開封自在に閉塞するフィルム状の天面シール材とを備える缶蓋であって、
前記開口部の内周の端縁をパネル部の上面側に複数折返してその端縁が非露出状態で内部に収納された折返し部を該開口部の全周に設け、
前記天面シール材は、前記折返し部を除くパネル部上に前記開口部の全周に沿って接着されて前記開口部を気密状態に封止することを特徴とする缶蓋。
【請求項2】
前記折返し部の上端面と前記パネル部の上面とは断面視において同一直線上に位置することを特徴とする請求項1記載の缶蓋。
【請求項3】
前記パネル部及び前記折返し部は、前記パネル部の外周を基端として前記開口部の中央に向かって缶容器の外方に傾斜して設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の缶蓋。
【請求項4】
前記天面シール材は、前記折返し部の内周縁から缶容器の内方に向かって前記開口部に凹入されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の缶蓋。
【請求項5】
前記折返し部は、パネル部の上面側に端縁を折り返して形成された第1屈曲部と、該第1屈曲部をパネル部の上面側に折り返して形成された第2屈曲部と、該第2屈曲部をパネル部の上面側に折り返して前記第1屈曲部を内部に巻き込んだ第3屈曲部とによって構成され、パネル部の上面及び各屈曲部間が互いに密着して、該折返し部の内部に端縁が密封されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の缶蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−137711(P2008−137711A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−327165(P2006−327165)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【出願人】(505440295)北海製罐株式会社 (58)
【Fターム(参考)】