説明

置き敷き床構造、置き敷き床暖房構造およびその施工方法

【課題】床表装材に軽量素材を用いた場合でも、床暖房パネルあるいは夏季の気温上昇等による熱によって可撓性床下地材が浮き上がることを抑制することができる、置き敷き床構造、置き敷き床暖房構造およびその施工方法を提供する。
【解決手段】置き敷き床構造10は、可撓性床下地材30と、床表装材40と、を有しており、可撓性床下地材30は、複数の基材シート50、50、…からなり、その端部52aは隣り合う基材シートの端部52bと重ね合わせて互いに接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の既存床面、床下地あるいは床暖房パネルの上に、該既存床面等に固定されることなく載置される可撓性床下地材を用いた置き敷き床構造、置き敷き床暖房構造およびその施工方法に関する。より詳しくは、建造物の既存床面、床下地あるいは床暖房パネルを傷つけることなく施工および撤去可能な置き敷き床構造、置き敷き床暖房構造およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
賃貸住宅や貸室では、多くの場合、賃貸期間終了時に住宅・貸室を原状回復して家主に明け渡す義務が課せられている。また、このような義務が課せられていない場合であっても、汚れのない美麗な床面のまま明け渡すことが、家主側から望まれており、明け渡し時に、床面に剥離し難い接着剤等汚れや、ビス穴、釘穴が残っていることは許されない。
【0003】
この他にも、売却物件あるいは自家用物件であっても、将来の改装や転居を考慮すると、床面を美麗で清潔なものとするためのリフォームを行うことが、しばしば望まれる。
【0004】
リフォームは、タイルやカーペットのような床表装材のみを取り替える方法を採ることが、工期短縮と低コストの観点から有利である。上記床表装材の下に床下地だけでなく、床暖房パネルが配置されているときも同様に、床表装材のみを取り替えることが望ましい。換言すれば、床表装材が床下地や床暖房パネルに接着剤やビス等により固定されていると、これらを撤去する大掛かりな改装工事が必要となるが、上記のように、床表装材のみを取り替えればよい場合、そのような必要はない。
【0005】
特許文献1は、建造物の既存床面に配置された暖房パネルと、当該暖房パネルの上側に貼着された可撓性薄板と、を有しており、この可撓性薄板の上から、既存床面に対する位置ずれおよび浮き上がりを規制し得る程度の荷重が加えられていることを特徴とする暖房可能な床構造を開示している。この発明によれば、暖房パネルの上側に貼着された可撓性薄板は、その上に載置されるタイル等の表装材により荷重が加えられるため、可撓性薄板が暖房パネルの熱によって延びても浮き上がり等が抑制され、仕上がり感のよい床構造とすることができる。
【特許文献1】特開2005−330792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、床表装材がタイルのように重量が重くないとき、すなわち、床表装材が重量の軽いカーペットや防音床材等であるとき、暖房パネル上の可撓性薄板は下向きの荷重をあまり受けないため、既存床面に対する位置ずれおよび浮き上がりを生じさせるという問題があった。
【0007】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、床表装材に軽量素材を用いた場合でも、床暖房パネルあるいは夏季の気温上昇による熱によって可撓性床下地材(特許文献1の、「可撓性薄板」に対応する。)が浮き上がることを抑制することができる、置き敷き床構造、置き敷き床暖房構造およびその施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0009】
請求項1の発明は、可撓性床下地材(30)と、床表装材(40)と、を有する置き敷き床構造(10)であって、可撓性床下地材は、複数の基材シート(50、50、…)からなり、該複数の基材シートの端部(52a、52b、52c、…)は隣り合う基材シートの端部(53b、53c、53d、…)と重ね合わせて互いに接合されていることを特徴とする置き敷き床構造により、上記課題を解決しようとするものである。
【0010】
「基材シート」とは、一定の可撓性を有する薄型のシートのことをいう。基材シートと床表装材とを接着剤等で接着することにより、基材シートと床表装材とを一体化した床構造とすることができる。「床表装材」とは、例えば、タイル、カーペット、および防音床材等をいうが、本発明は、特にカーペットおよび防音床材等のように、重量が軽い床表装材を用いるときに、効果的である。可撓性床下地材を構成する複数の「基材シート」は、必ずしも長方形でなくてもよく、正方形であってもよい。また、その大きさは、小さい方が好ましい。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載の置き敷き床構造(10)において、基材シート(50)の厚さは1mm以下であることを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の置き敷き床構造(10)において、可撓性床下地材(30)と、該可撓性床下地材を囲っている壁との間に隙間を設けていることを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の置き敷き床構造(10)において、基材シート(50)は、ポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の置き敷き床構造(10)が、床暖房パネル(20)の上面に設けられたことを特徴とする置き敷き床暖房構造である。
【0015】
請求項6の発明は、床暖房パネル(20)と、可撓性床下地材(30)と、床表装材(40)と、を有するとともに、可撓性床下地材は、複数の基材シート(50、50、…)からなり、複数の基材シートの端部(52a、52b、52c、…)は隣り合う基材シートの端部(53b、53c、53d、…)と重ね合わせて互いに接合されている、置き敷き床暖房構造(60)の施工方法であって、床暖房パネルを床面上に敷設する工程と、基材シートを壁から離れるように、隣り合う基材シートの端部を重ね合わせて床暖房パネルの上に敷設する工程と、隣り合う基材シートの端部同士を接合する工程と、端部を接合した可撓性床下地材上に、床表装材を敷設する工程と、を有する、置き敷き床暖房構造の施工方法により、上記課題を解決しようとするものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、床暖房パネルあるいは夏季の気温上昇等による熱に起因する基材シートの伸びにより発生する上下方向の歪みや皺を抑制することが可能な、置き敷き床構造を提供することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、可撓性床下地材が所定の厚さを有することで、良好な熱伝導性および作業性を確保しつつ、熱に起因する可撓性床下地材の伸びによる上下方向の歪み等を抑制することが可能な可撓性床下地材を用いた、置き敷き床構造を提供することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、可撓性床下地材が床暖房パネルあるいは夏季の気温上昇による熱で延びても、その端部が部屋の壁に突き当たって可撓性床下地材の端部や中央部が浮き上がることを抑制し得る、置き敷き床構造を提供することができる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、基材シートとしてポリエチレンテレフタレートを用いることにより、コシがあって仕上がりが美麗であり、且つ、低コストとすることを可能とする、置き敷き床構造を提供することができる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、可撓性床下地材を床暖房パネルと接着していないため、可撓性床下地材および床表装材だけを取り替えることができて容易にリフォームすることが可能な、置き敷き床暖房構造を提供することができる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、可撓性床下地材を床暖房パネルと接着していないため、可撓性床下地材および床表装材だけを取り替えることができて容易にリフォームすることが可能な、置き敷き床暖房構造の施工方法を提供することができる。
【0022】
本発明のこのような作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明するが、以下に説明するものは本発明の実施形態の一例であって、本発明はその要旨を超えない限り以下の説明になんら限定されるものではない。
【0024】
ここでは、置き敷き床構造を床暖房パネルの上面に設けた場合を例に説明する。
<置き敷き床構造>
まず、本発明の置き敷き床構造について説明する。図1は、本発明の置き敷き床構造の積層状態を示す断面図である。以下の説明において、置き敷き床構造10の構成要素のうち、基材シートを一般的に説明する場合は参照符号50を用い、複数の基材シートの端部が重なり合う構造を説明する場合には参照符号50a、50b、50c、50dを用いる。
本発明の置き敷き床構造10は、可撓性床下地材30と、床表装材40と、を有してなるものであって、この可撓性床下地材30は、さらに複数の基材シート50、50、…からなっている。基材シート50、50、…(50a、50b、50c、…)の端部52a、52b、52c、…は、隣り合う基材シート50、50、…(50b、50c、50d、…)の端部53b、53c、53d、…と重ね合わせて互いに接合されて、一枚の可撓性床下地材30となっている。本発明の置き敷き床構造は、基材シート50、50、…を互いに接合した可撓性床下地材30、および床表装材40を、この順番に建物の床暖房パネル20の上に積層されてなる。しかし、簡単にリフォームができるように、床暖房パネル20と可撓性床下地材30とは、接着剤等により接着されていない。
【0025】
次に、図2を参照しながら、可撓性床下地材30の平面構造を説明する。図2は、可撓性床下地材30を敷設した床面の状態を示す平面図である。ここで、図2の最外部に表した矩形は部屋の床面であり、この床面の外側に壁91、92、93、94が隣接している。図2で示すように、可撓性床下地材30は、壁91、92、93、94から所定の隙間だけ離した床面上の領域に敷設されている。すなわち、壁から、床面であって壁91、92、93、94と境界を接する領域71、72、73、74(以下、「部屋周辺部」という。)分の隙間を設け、それ以外のところに複数の基材シート50を敷設して可撓性床下地材30とすればよい。しかし、可撓性床下地材30は必ずしも部屋いっぱいに敷設されている必要はなく、必要に応じて部屋の一部に敷設されていてもよい。
【0026】
壁91、92、93、94と可撓性床下地材30との間の隙間は、通常3〜10cm、好ましくは5〜8cmである。壁91、92、93、94と可撓性床下地材30との間の隙間がこれらの範囲よりも小さい場合、床暖房パネル20の熱によって可撓性床下地材30が延伸したとき、床面において可撓性床下地材30の延伸分の行き場がなくなる。可撓性床下地材30の延伸分が行き場を失って壁91、92、93、94と位置的に干渉すると、その端部がめくれあがったり、又はその中央部が浮き上がったりする。その結果、置き敷き床構造の表面に凹凸ができ、仕上り感が好ましくない。
【0027】
本発明の置き敷き床構造において、複数の小片の基材シート50、50、…を互いに接合した可撓性床下地材30を用いると、床暖房パネルの熱によっても、個々の基材シート50、50、…ごとに小幅な上下方向の歪みが生じるに留まり、可撓性床下地材30全体が微小な凹凸を有することになる。この上下方向の歪みの大きさは、従来用いられていた可撓性床下地材、すなわち一枚からなる大判の基材シートのそれよりも小さい。したがって、可撓性床下地材30全体の上下方向の歪みや、これに伴ってできる皺の発生を抑制することができ、結果的に、置き敷き床構造10の表面仕上がりを向上させることができる。
【0028】
以下、本発明の置き敷き床構造の構成要素である、可撓性床下地材30、基材シート50、および床表装材40、並びに置き敷き床暖房構造の構成要素である、床暖房パネル20、可撓性床下地材30、基材シート50、および床表装材40について詳述する。
【0029】
(床暖房パネル20)
床暖房パネルは、表面に熱媒管が埋設されるように溝が形成された基材と、この溝に埋設される熱媒管と、この基材の表面に貼り付けられた表面材とを具備した構造を有しており、熱源機で加熱した温水を、床面上に設置した温水マット等の放熱パネルと熱源機との間で循環させるような、一般的なものであれば、特に限定されない。
【0030】
(可撓性床下地材30)
図2で示すように、可撓性床下地材30は、複数の矩形の基材シート50、50、…からなり、図1の例で示す基材シート50、50、…(50a、50b、50c、…)の端部52a、52b、52c、…が、隣り合う基材シート50、50、…(50b、50c、50d、…)の端部53b、53c、53d、…と重ね合わせて互いに接合されて、一枚の可撓性床下地材30となっている。
【0031】
基材シート50の重なり部の幅は、通常3〜10cm、好ましくは3〜8cm、さらに好ましくは3〜5cmである。この重なり部55の幅が狭すぎると、端部52a、52b、52c、…および53b、53c、53d、…を接合する接合代が小さくなり、接着剤等が接合代からはみ出て基材シート50、50、…(可撓性床下地材30)の下に設けられている床暖房パネル20、または床面に付着するおそれがある。可撓性床下地材30が床暖房パネル20、または床面に固着されてしまうと、床材のリフォームをする際に、床表装材40と基材シート50、50、…からなる可撓性床下地材30だけでなく、その下に敷設されている床暖房パネル20、または床面まで同時に取り換えなければならなくなり、好ましくない。一方、重なり部55の幅が必要以上に広い場合、発明の目的は達成するものの、基材シート50、50、…に無駄が生じ、材料コストが嵩むため、好ましくない。本発明で用いる基材シート50、50、…は、軽量のシート材であり、作業中にずれやすくもあるため、上記の範囲内で重なり部55を設けることが好ましい。
なお、可撓性床下地材30は、基材シート50、50、…を上記条件で重ね合わせて接合されたものであれば特に限定はされないが、全体的な厚さの均衡を図るべく、重なり部が多数重なり合わないように、図2のようにある程度ずらして重ねることが好ましい。
【0032】
また、上記可撓性床下地材30は、通常、接着剤等により床表装材と接合される。接合は、接着剤等を可撓性床下地材30の下側にはみ出さないように塗布してなされることが好ましい。接着剤等が可撓性床下地材30の下側にはみ出ると、床暖房パネル20、または床面に付着して、可撓性床下地材30と床暖房パネル20、または床面とが固着するため、上記のように、床材のリフォームにおける不都合が生じるからである。
【0033】
(基材シート50)
可撓性床下地材30を構成する基材シート50は、厚さが1mm以下の薄いシート状の部材である。より好ましくは、0.1〜0.3mmである。基材シート50は、その厚さが厚すぎると、重なり部分が厚くなって平面性が損なわれる。また、厚さが厚すぎると、それ自体を切断したり巻回したりしにくくなるため作業性が劣り、さらに、可撓性床下地材の下側に配置される床暖房パネルの熱の上方向への伝導率が低下する。一方、基材シートが薄すぎると、シートのコシや強度が低下し、斯かるシートを敷設する意味がなくなり、その結果、可撓性床下地材の上面に敷設する床表装材の隅や中央が浮き上がる等する。
【0034】
基材シート50の形状は、特に限定されないが、円形、楕円形、矩形、多角形、不定形等が挙げられる。中でも長方形のものが施工性の観点から好ましい。
【0035】
基材シート50の大きさは、小さい方が好ましく、通常、一辺の長さが0.5〜5mのものをいう。より好ましくは、1〜4m、さらに好ましくは、1.5〜3mである。このように、一辺がある程度小さい基材シートを用いれば、これらを重ね合わせてできた一枚の可撓性床下地材30に対して床暖房パネルの熱が加えられても、個々の基材シート50、50、…ごとに小幅な上下方向の歪みが発生するに留まり、可撓性床下地材30全体としては微小な凹凸を有しつつも、浮き上がり等が極めて少ない平面的で美麗な仕上り感を実現することができる。尚、基材シート50、50、…は、本発明の効果を損なわない範囲で、基材シート50同士が部分的に結合されたものであっても良く、あるいは、複数の基材シート50同士を予め一体化したものでも良い。
【0036】
基材シート50の材質は、薄いシート状の素材であって、所定の熱伝導性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタンなどのプラスチックフィルムが好ましい。中でも、ポリエチレンテレフタレートは、ポリエチレンやポリプロピレンよりも硬度が高く、コシがあるため、平面性や収まり感等の仕上り感がよく、また低コストでもあるため、更に、床表装材40と基材シート50との接着性が良いため、好適に用いられる。特に一軸や二軸の延伸シートであることが好ましい。
【0037】
(床表装材40)
床表装材40は、可撓性床下地材30の上側に敷設され、本発明の置き敷き床構造の最上部に位置する部材である。床表装材40には、目付けが通常0.1〜30kg/m、好ましくは0.5〜25kg/m、更に好ましくは1〜10kg/mのものが使用される。例えば、カーペット、防音床材、およびタイル等が挙げられる。中でも、特に、カーペットおよび防音床材を用いることが好ましい。本発明は、床表装材に軽量素材を用いた場合でも、床暖房パネルの熱によって可撓性床下地材が浮き上がることを抑制することができる置き敷き床構造および、置き敷き床暖房構造だからである。
【0038】
次に、図1および図2を参照しながら、上記置き敷き床暖房構造60の施工方法について、以下詳述する。
<置き敷き床暖房構造の施工方法>
第一工程では、まず、床面上に床暖房パネル20を隙間なく敷設する。床暖房パネル20は、床面上に直接敷設してもよいが、通常、床暖房パネルの熱効率を高めるために、例えば、マンションなどのスラブ床面に敷く下地合板、または一戸建ての住宅の居室の床に敷く下地合板などの上面に敷設することが好ましい。床暖房パネル20の下にこのような下地合板を敷設すると、床暖房パネルの熱が下方向に逃げるのを抑制することができる。
【0039】
第二工程では、基材シート50、50、…を壁91、92、93、94から隙間を空けながら、隣り合う端部52aと53b、52bと53c、52cと53d(図1参照)をそれぞれ重ね合わせて床暖房パネルの上に敷設する。
まず、任意ではあるが、可撓性床下地材30を壁から所定の隙間を採りつつ、ずれを生じさせることなく敷設することを目的として、第一工程で敷設した暖房パネルの上面であって部屋周辺部71、72、73、74に、所定の幅を有する紙テープを仮留めする。紙テープの幅は、壁91、92、93、94と基材シート50との間の隙間が通常3〜10cmであることから、少なくとも3cm以上を必要とする。
【0040】
この紙テープ上であって、四方の壁から上記範囲内の距離をおいた地点に、壁と平行になるように、複数の基材シート50、50、…を敷設する。
【0041】
基材シート50a、50b、50c、…の端部52a、52b、52c、…と、隣り合う基材シート50b、50c、50d、…の端部53b、53c、53d、…と、の重ね合わせ方は、特に限定されないが、互いに接合して可撓性床下地材30とするときに、可撓性床下地材30全体の厚さのばらつきが少なくなるように重ねることが望ましい。可撓性床下地材30に厚さのばらつきから生じる凹凸が最初から存在すると、床暖房パネルの熱が加わったときに、熱による可撓性床下地材30の延伸で、さらに上下方向の歪みが増加して、本発明の置き敷き床構造の表面が浮き上がってしまうからである。
【0042】
重ね合わせ方には、例えば、図1で示すような方法を採ることができる。まず、一の基材シート50aの端部52aの上に、所定幅の重なり部55を設けつつ他の基材シート50bの端部53bを載置する。一方、この基材シート50bの他端部52bの下には、所定幅の重なり部55を設けつつさらに他の基材シート50cの端部53cを配置し、この基材シート50cの他端部52cの上に、他の基材シート50dの端部53dを載置する。そして、基材シート50a〜50dの延長上に基材シート50、50、…が上下交互になるように横一列に敷設する。この他にも、図1の端部52a、52b、52c、…が常に下側に配置され、他端部53b、53c、53d、…が常に上側に配置されるような配列方法であってもよい。
【0043】
隣接する列を敷設する際、図2で示すように、隣接する列の重なり部55y、55y、…と、上記最初の列の重なり部55x、55x、…とが重なり合わないように、互いに位置をずらして配置すると、表面の凹凸がより少ない可撓性床下地材30を作製することができる。
【0044】
第三工程では、隣り合う端部52a、52b、52c、…と端部53b、53c、53d、…同士を上下左右に接合して可撓性床下地材30を完成させる。接合には、例えば接着剤、粘着剤、あるいは粘着テープ等を用いることができる。接合部は、隣接する基材シート50、50、…が互いに離れることなく接合されていれば、端部52a、52b、52c、…と端部53b、53c、53d、…の重なり部55全面であっても、その一部であってもよい。しかし、接着剤等が基材シート50、50、…の重なり部をはみ出して、その下側に到達することはあってはならない。基材シート50、50、…の接着剤が床暖房パネル20に付着して可撓性床下地材30が床暖房パネル20に固着されると、床表装材40のリフォームで床暖房パネルも取り替えるという大掛かりなものとなってしまい、好ましくない。尚、本発明においては、基材シート50、50、…の端部同士を融着させることによって、予め一体化したシートとしてもよい。このような予め一体化したシートを用いると、施工をより簡便にできる点で好ましい。あるいは、隣接する基材シート50、50、…同士を接合する方法としては、後述する第四工程において可撓性床下地材30の上に、床表装材40を敷設する際、可撓性床下地材30の上面に塗布する接着剤によって行なってもよい。
【0045】
第四工程では、第三工程で完成させた可撓性床下地材30の上に、床表装材40を敷設する。この際、可撓性床下地材30の上面に接着剤を塗布し、床表装材40をしっかりと接着する。尚、前記接着剤の塗布は、可撓性床下地材上面の全面、あるいは部分的に設けられていてもよい。
【0046】
上述の、第一工程から第四工程までの本発明の施工方法にしたがって施工を行うことにより、本発明の置き敷き床暖房構造を作製することができる。
【0047】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う置き敷き床構造、置き敷き床暖房構造およびその施工方法もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の置き敷き床構造、および置き敷き床暖房構造の積層状態を示す断面図である。
【図2】本発明の置き敷き床構造に用いる可撓性床下地材を敷設した状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0049】
10 置き敷き床構造
20 床暖房パネル
30 可撓性床下地材
40 床表装材
50、50a、50b、50c、50d 基材シート
52a、52b、52c、… 端部
53b、53c、53d、… 端部
55、55x、55y 重なり部
60 置き敷き床暖房構造
71、72、73、74 部屋周辺部
91、92、93、94 壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性床下地材と、床表装材と、を有する置き敷き床構造であって、
前記可撓性床下地材は、複数の基材シートからなり、該複数の基材シートの端部は隣り合う前記基材シートの端部と重ね合わせて互いに接合されていることを特徴とする、置き敷き床構造。
【請求項2】
前記基材シートの厚さは、1mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の置き敷き床構造。
【請求項3】
前記可撓性床下地材と、該可撓性床下地材を囲っている壁との間に隙間を設けることを特徴とする、請求項1又は2に記載の置き敷き床構造。
【請求項4】
前記基材シートは、ポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の置き敷き床構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の置き敷き床構造が、床暖房パネルの上面に設けられたことを特徴とする置き敷き床暖房構造。
【請求項6】
床暖房パネルと、可撓性床下地材と、床表装材と、を有するとともに、前記可撓性床下地材は、複数の基材シートからなり、該複数の基材シートの端部は隣り合う前記基材シートの端部と重ね合わせて互いに接合されている、置き敷き床暖房構造の施工方法であって、
前記床暖房パネルを床面上に敷設する工程と、
前記基材シートを壁から離れるように、隣り合う前記基材シートの端部を重ね合わせて前記床暖房パネルの上に敷設する工程と、
隣り合う前記基材シートの端部同士を接合する工程と、
前記端部を接合した可撓性床下地材上に、床表装材を敷設する工程と、
を有する、置き敷き床暖房構造の施工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−261178(P2008−261178A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−105975(P2007−105975)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】