説明

置換されたプロパンホスフィン酸エステル

本発明は、本願で開示された式Iの置換された3−アミノプロパンホスフィン酸誘導体の、特定のエステルに関する。本発明の化合物は、それには限定されないが、鬱病、不安症、特定の精神性症状、認識障害および統合失調症を含む各種の疾患の治療において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置換された3-アミノプロパンホスフィン酸誘導体の特定のエステルに関する。より特定すれば、本発明は式Iの3-アミノ-2-プロパン-シクロアルキル(アリール)メチルホスフィン酸誘導体のエステルに関する。本発明はまたこれらの化合物を製造する方法にも関する。本発明の化合物はインビボで生物学的に活性な化合物へと変換され、そしてそれゆえに、薬剤として、特に、中枢神経系に関連する疾患を含む各種の疾患の治療および/または予防において、有用である。
【背景技術】
【0002】
米国特許番号5,190,933号は、認識および記憶障害、不安症および鬱病を含む各種の障害の治療において、治療的有用性を有する、特定の置換されたプロパンホスフィン化合物を開示している。しかしながら、これらの化合物にみられる問題はそれらの乏しい生体吸収性である。文献にも、ビスホスホネートのような特定の化合物の胃腸管からの吸収が悪いことが報告されてきている。実際、経口投与量のたったの1%だけしか吸収されない。その結果、これらのビスホスホネートの一連のペプチジル化プロドラッグが作成され、そして薬物吸収を改善することが示されてきた。Ezra, et al., J. Med. Chem. 2000, 43, 3641を参照されたい。
【0003】
これらの構造タイプの化合物に伴う他の問題点は、それらの経口投与である。一般に、そうした化合物は投与の直後に患者の病訴をもたらし:その病訴は通常、患者により、胸焼け、食道のむかつき、疼痛および/または嚥下困難、および/または胸骨の背後および/または中央部に存在する疼痛として特徴つけられる。これらの病訴は、食道炎もしくは糜爛による食道の炎症、潰瘍、または、他の上部胃腸管、一般的に口から食道の、最も一般的には食道の、上皮および粘膜組織の似た炎症に原因を有すると信じられている。
【0004】
これらのホスフィン酸化合物に関する他の問題点は、それにより血漿中の最大濃度への到達までの時間を長引かせるような、高い極性による、それらの遅延する経口吸収である。その結果、化合物の濃度は脳でも低い。しかしながら、より早い活性の発現を有するためには、脳での薬物レベルが高いことが必要となる。
【0005】
文献からは、ホスホン酸を誘導体化してプロドラッグを作成できることが報告されており、ここでリン酸素結合から離れたところで加水分解(遠位加水分解)できる基が、より優れた経口吸収、および、血漿中で薬物のより高いレベルを有することからのより迅速な作用発現を含む、より優れた薬理学的プロフィルを提供することが見出された。
本願で記載された参考文献は全て、それらの全体が参照により本願に組み込まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、生理的条件下で容易に加水分解しそして改善された薬理学的性質を与える、一連の置換された3-アミノプロパンホスフィン酸誘導体を提供することである。
本発明の、他の目的およびさらなる応用性の範囲は、以下の詳細な説明から明白になるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明にしたがって、式I:
【化1】

(式中、
Rは、C1-8アルキル、C3-8シクロアルキルC1-4アルキル、アリールC1-4アルキル、または式CnHxFyのフルオロアルキルであり、ここでnは1〜4の整数、xは0〜8の整数、yは1〜9の整数であり、そしてxとyの合計は2n+1であり;
R1は、水素またはヒドロキシであり;
R2は、置換もしくは非置換のアリール、アリールC1-4アルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキル、またはCHWOCOXであり;ここで、
Wは、水素またはC1-4アルキルであり;
Xは、C1-4アルキル、C3-8シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、NHYまたはOYであり;そして、ここで
Yは、C1-4アルキル、C3-8シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)
で示される一般式を有する化合物(その化合物の光学異性体、立体異性体、および互変異性体、ならびにそれらの製薬的に許容しうる塩、溶媒和物または誘導体を含む)が提供される。
【0008】
本発明の化合物は医薬組成物へと製剤化でき、そして、それには限定されないが、鬱病、双極性障害、不安障害、精神性症状、認識障害または記憶障害、統合失調症、神経障害性疼痛および線維筋肉痛を含む各種の疾患状態の治療において有用である。
【0009】
本願中で用いられる表現は以下の意味を有する:
本願中で用いられる、「C1-6アルキル」という表現は、メチルおよびエチル基、ならびに直鎖または分枝鎖のプロピル、ブチル、ペンチルおよびヘキシル基を含む。特に、アルキル基は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピルおよびtert-ブチルである。派生する表現、例えば「C1-4アルコキシ」、「C1-4チオアルキル」、「C1-4アルコキシC1-4アルキル」、「ヒドロキシC1-4アルキル」、「C1-4アルキルカルボニル」、「C1-4アルコキシカルボニルC1-4アルキル」、「C1-4アルコキシカルボニル」、「アミノC1-4アルキル」、「C1-4アルキルアミノ」、「C1-4アルキルカルバモイルC1-6アルキル」、「C1-4ジアルキルカルバモイルC1-4アルキル」、「モノ-またはジ-C1-4アルキルアミノC1-4アルキル」、「アミノC1-4アルキルカルボニル」、「ジフェニルC1-4アルキル」、「フェニルC1-4アルキル」、「フェニルカルボイルC1-4アルキル」および「フェノキシC1-4アルキル」は、それに沿って解釈されるべきである。
【0010】
本願中で用いられる、「シクロアルキル」という表現は、全ての公知の環状基を包含する。「シクロアルキル」の代表的な例には、それに限定されることなく、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等が包含される。派生する表現、例えば「シクロアルコキシ」、「シクロアルキルアルキル」、「シクロアルキルアリール」、「シクロアルキルカルボニル」は、それに沿って解釈されるべきである。
【0011】
本願中で用いられる、「C1-4アシル」という表現は、「C1-6アルカノイル」と同じ意味を有し、構造式では「R-CO-」と表すことができ、ここでRは本願で定義されたC1-3アルキルである。さらに「C1-3アルキルカルボニル」はC1-4アシルと同じ意味である。特に、「C1-4アシル」は、ホルミル、アセチルまたはエタノイル、プロパノイル、n-ブタノイル等を意味するだろう。派生する表現、例えば「C1-4アシルオキシ」および「C1-4アシルオキシアルキル」は、それに沿って解釈されるべきである。
【0012】
本願中で用いられる、「C1-6パーフルオロアルキル」という表現は、該アルキル基中の全ての水素原子がフッ素原子で置き換えられていることを意味する。それを説明するための例には、トリフルオロメチルおよびペンタフルオロエチル、ならびに直鎖もしくは分枝鎖のヘプタフルオロプロピル、ノナフルオロブチル、ウンデカフルオロペンチルおよびトリデカフルオロヘキシル基が含まれる。派生する表現、例えば「C1-6パーフルオロアルコキシ」は、それに沿って解釈されるべきである。
【0013】
本願中で用いられる、「C6-12アリール」という表現は、置換されたまたは非置換のフェニルまたはナフチルを意味する。置換されたフェニルまたはナフチルの特定の例には、o−、p−、m−トリル、1,2-、1,3-、1,4-キシリル、1-メチルナフチル、2-メチルナフチル等が含まれる。「置換されたフェニル」または「置換されたナフチル」はまた、本願中でさらに定義されるかまたは当業者に公知の可能な全ての置換基を包含する。派生する表現、例えば「C6-12アリールスルホニル」は、それに沿って解釈されるべきである。
【0014】
本願中で用いられる、「C6-12アリールC1-4アルキル」という表現は、本願で定義されたC6-12アリールが本願で定義されたC1-4アルキルにさらに結合したことを意味する。代表的な例には、ベンジル、フェニルエチル、2-フェニルプロピル、1-ナフチルメチル、2-ナフチルメチル等が含まれる。
【0015】
本願中で用いられる、「ヘテロアリール」という表現は、全ての公知のヘテロ原子を含む芳香族基を包含する。代表的な5員ヘテロアリール基には、フラニル、チエニルまたはチオフェニル、ピロリル、イソピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル等が含まれる。代表的な6員ヘテロアリール基には、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル等の基が含まれる。代表的な二環式ヘテロアリール基には、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリル、ベンズイミダゾリル、インダゾリル、ピリドフラニル、ピリドチエニル等の基が含まれる。本発明の目的のための他の適切な「ヘテロアリール」には、オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラニル、5-メチル-[1,3]ジオキソール-2-オン-メチル等が含まれる。
【0016】
「ハロゲン」または「ハロ」は、クロロ、フルオロ、ブロモおよびヨードを意味する。
本願中で用いられる、「患者」という表現は、温血動物、例えばラット、マウス、イヌ、ネコ、モルモット、および、ヒトのような霊長類を意味する。
【0017】
本願中で用いられる、「製薬的に許容しうる担体」という表現は、医薬組成物、すなわち患者への投与ができる投与剤形の製造を可能にする、非毒性の溶媒、分散剤、賦形剤、補助剤、または他の本発明の化合物と混合される材料を意味する。そうした担体の1つの例は、非経口投与で典型的に使用される製薬的に許容しうる油である。
【0018】
本願中で用いられる、「製薬的に許容しうる塩」という表現は、医薬用製剤で使用できる本発明の化合物の塩を意味する。しかしながら、他の塩も、本発明の化合物またはそれらの製薬的に許容しうる塩の製造において、使用できる可能性がある。本発明の化合物の適切な製薬的に許容しうる塩には、本発明の化合物の溶液を、塩酸、臭化水素酸、硫酸、メタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、酢酸、サリチル酸、ケイヒ酸、2-フェノキシ安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、安息香酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、炭酸またはリン酸のような製薬的に許容しうる酸の溶液と混合して生成される、酸付加塩が包含される。オルトリン酸一水素ナトリウムおよび硫酸水素カリウムのような酸金属塩もまた生成させることができる。また、そのようにして生成した塩は一酸塩または二酸塩のいずれかで存在することができ、そして実質的に無水物で存在でき、または水和化されることもできる。さらに、本発明の化合物が酸性部分を有している場合は、それらの適切な製薬的に許容しうる塩は、アルカリ金属塩、例えばナトリウムまたはカリウム塩;アルカリ土類金属塩、例えばカルシウムまたはマグネシウム塩;および適切な有機リガンドを用いて形成される塩、例えば第四級アンモニウム塩を含むことができる。
【0019】
本願中で用いられる、「プロドラッグ」という表現は、当該技術分野で一般的に受け入れられている意味を有する。そうした定義の一つは、哺乳動物系のような生物系により代謝されまたは化学的に変換された場合に、薬理的に活性な物質に変換する、薬理的に不活性な化学的実体を含む。
【0020】
「立体異性体」という表現は、空間中でそれらの原子の方向性のみが異なっている個々の分子の全ての異性体に関して用いられる一般的な表現である。典型的には、少なくとも1つの不斉中心により通常形成される鏡像異性体を含む(光学異性体)。本発明の化合物が2またはそれ以上の不斉中心を有する場合は、それらはさらにジアステレオアイソマーとして存在することができ、また特定の個別の分子は幾何異性体(シス/トランス)として存在することもできる。同様に、本発明の特定の化合物は、2またはそれ以上の構造的に異なった形態の混合物として存在することができ、その形態は急速な平衡下にあり、一般に互変異性体として知られている。代表的な互変異性体の例には、ケト−エノール互変異性体、フェノール−ケト互変異性体、ニトロソ−オキシム互変異性体、イミン−エナミン互変異性体等が含まれる。全てのそうした異性体およびそれらのあらゆる比率での混合物は本発明の範囲内に含まれることを理解すべきである。
【0021】
本願中で用いられる、「溶媒和物」という表現は、1またはそれ以上の溶媒分子と1つの溶質イオンまたは分子から成る集合体を意味する。同様に、「水和物」は、1またはそれ以上の水分子を伴う1つの溶質イオンまたは分子を意味する。
【0022】
広範な意味では、「置換された」という表現は、有機化合物の全ての許容できる置換基を含むものと理解される。本願中で開示された特定の実施態様のいくつかにおいて、「置換された」という表現は、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C1-6パーフルオロアルキル、フェニル、ヒドロキシ、-CO2H、エステル、アミド、C1-C6アルコキシ、C1-C6チオアルキル、C1-C6パーフルオロアルコキシ、-NH2、Cl、Br、I、F、-NH-低級アルキル、および−N(低級アルキル)2から成る群から独立して選択された1またはそれ以上の置換基によって置換されたことを意味する。しかしながら、当業者に知られた他の適切な置換基のいずれもまた、これらの実施態様において使用できる。
【0023】
「治療的な有効量」という表現は、指定された疾患、障害または症状の治療において有効である化合物の量を意味する。
【0024】
「治療すること」という表現は、以下の意味を有している:
(i)疾患、障害および/または症状に罹る素因を有するが、未だその診断を受けていない患者において、それらの疾患、障害および/または症状を予防すること;
(ii)疾患、障害および/または症状を抑制すること、すなわちその進行を阻止すること;ならびに
(iii)疾患、障害および/または症状を取り除くこと、すなわち、疾患、障害および/または症状を軽減させること。
【0025】
したがって、本発明の実施に基づいて、式I:
【化2】

(式中、
Rは、C1-8アルキル、C3-8シクロアルキルC1-4アルキル、アリールC1-4アルキル、または式CnHxFyのフルオロアルキルであり、ここでnは1〜4の整数、xは0〜8の整数、yは1〜9の整数であり、そしてxとyの合計は2n+1であり;
R1は、水素またはヒドロキシであり;
R2は、置換もしくは非置換のアリール、アリールC1-4アルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキル、またはCHWOCOXであり;ここで、
Wは、水素またはC1-4アルキルであり;
Xは、C1-4アルキル、C3-8シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、NHYまたはOYであり;そして、ここで
Yは、C1-4アルキル、C3-8シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)
で示される一般式を有する化合物(その化合物の光学異性体、立体異性体、および互変異性体、ならびにそれらの製薬的に許容しうる塩、溶媒和物または誘導体を含む)が提供される。
【0026】
本発明の一つの局面では、以下の置換基を有する式(I)の化合物が好ましい:
Rは、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘプチルメチル、シクロヘキシルエチル、シクロヘキシルプロピル、ベンジル、およびフェニルエチルであり;
R1は、ヒドロキシであり;
R2は、置換もしくは非置換のフェニル、ベンジル、オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラニル、5-メチル-[1,3]ジオキソール-2-オン-メチル,ガンマ-ブチロラクトン-4-イル、またはCHWOCOXであり;ここで、
Wは、水素、メチル、エチル、n-プロピルまたはsec-ブチルであり;
Xは、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、シクロヘキシルまたはOYであり; そして、ここで
Yは、メチル、エチルまたはn-プロピルである。
【0027】
本発明の特定の実施態様において、RがC3-8シクロアルキルC1-4アルキルおよびR1がヒドロキシである、式(I)の化合物が好ましい。本発明のこの局面の他の実施態様では、RがアリールC1-4アルキルおよびR1がヒドロキシである、式(I)の化合物が好ましい。本発明のさらに他の実施態様では、RがC5-7シクロアルキルC1-4アルキルおよびR1がヒドロキシである、式(I)の化合物もまた好ましい。最後に、本発明の他の実施態様では、RがフェニルC1-4アルキルおよびR1がヒドロキシである、式(I)の化合物が好ましい。
【0028】
一実施態様において、本発明の化合物は式IA:
【化3】

で表される。
【0029】
本発明の他の実施態様において、本発明の化合物は、式IB:
【化4】

(式中、
R2は、置換されたまたは非置換のフェニル、ベンジル、オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラニルもしくは5-メチル-[1,3]ジオキソール-2-オン-メチル、またはCHWOCOXであり;ここで
Wは、水素、メチル、エチル、n-プロピルまたはsec-ブチルであり;
Xは、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、シクロヘキシルまたはOYであり;そして、ここで
Yは、メチル、エチルまたはn-プロピルである)
の立体異性体である。
【0030】
本発明の式Iの化合物の代表的な例には、それには限定されないが、以下の化合物が挙げられる:
((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸3-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソベンゾフラン-1-イルエステル;
2,2-ジメチル-プロピオン酸((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィノイルオキシメチルエステル;
((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸エトキシカルボニルオキシメチルエステル;
((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸フェニルエステル;
((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸ベンジルエステル;
(3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸5-メチル-2-オキソ-[1,3]ジオキソール-4-イルメチルエステル;または
それらの製薬的に許容しうる塩、水和物もしくは溶媒和物。
【0031】
本発明の他の好ましい実施態様において、式Iの範囲内の以下の特定の化合物を述べることができる:2,2-ジメチル-プロピオン酸((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィノイルオキシメチルエステル、またはそれらの製薬的に許容しうる塩、水和物もしくは溶媒和物。
【0032】
本発明の他の好ましい実施態様において、式Iの範囲内の以下の特定の化合物を述べることができる:((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸ベンジルエステル、またはそれらの製薬的に許容しうる塩、水和物もしくは溶媒和物。
【0033】
本発明の化合物は、当業者に知られたいかなる方法によっても合成できる。特に、本発明の化合物の製造において使用されるいくつかの出発物質は知られており、そしてそれ自体購入可能である。本発明の化合物およびいくつかの前駆体化合物はまた、文献に記載されたように、および本願中でさらに特定の実施例を通して記載されたように、類似の化合物を製造するために用いられた方法により製造することができる。
【0034】
より特定すれば、出発物質の化合物1は知られた化合物であり、そして文献に記載されたどのような方法によっても合成することができる。例えば、その合成は米国特許番号5,300,679号ならびにFroestl等、J. Med. Chem. 1995, 38, 3297-3312、およびFroestl等、J. Med. Chem. 1995, 38, 3313-3331で報告されており、これらは全て参照によりそれらの全体が本願に組み込まれる。本願で開示された式IAまたは式IBの化合物はまた、以下のスキーム1の方法により合成することもでき、ここでR、R1およびR2は、他に指示がなければ、式Iで定義されたとおりである。式Iの範囲内に包含される様々な化合物が以下のスキーム1の方法および適切な出発物質を用いて合成できることを理解すべきである。
【0035】
スキーム1は本発明の化合物の製造の方法を説明する。再度、各種の修正が、当業者に容易に理解される当該分野で知られた他の方法を用いて行うことができる。スキーム1の工程1において、化合物1のアミノ基は公知のアミノ保護基のどれを用いても適切に保護され化合物2を形成し、ここでPgは適切なアミノ保護基である。例えば、化合物1のアミノ基は、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)によりジ-tert-ブチル-ジカルボネート(Boc2O)と、炭酸カリウムのような適切な塩基の存在下で反応させることにより、保護され、アミノ保護された化合物2を与える。この反応は一般に、適切な有機溶媒または、THFと水のような溶媒の混合物中で、周囲反応温度で行うことができる。様々な他のアミノ官能基が同様にこの反応において使用することができる。例えば、T. W. Greene, Protective Groups in Organic Synthesis, J. Wiley-Interscience Publication (1991) を参照されたい。
【0036】
【化5】

【0037】
スキーム1の工程2において、アミノ保護化合物2は、R2-X'のような適切なエステル誘導体と反応させ、ここでX'はハロゲンまたは適切な脱離基、例えばメタンスルホネート(メシレート)、トリフルオロメタンスルホネート(トリフレート)もしくはp-トルエンスルホネート(トシレート)等のようなスルホネート、またはアセテートのようなカルボキシレートである。この反応は一般に、トルエンのような適切な不活性有機溶媒中で行われるが、この反応を行うために適切などのような他の溶媒もまた、溶媒の混合物を含んで使用することができる。さらに、反応は一般に、周囲以下、周囲または周囲を超える温度で行われる。通常、周囲を超える温度が、反応速度を高めるので好ましい。
【0038】
スキーム1の工程3において、化合物3は、アミノ基を脱保護化するために適切な反応条件に付される。一般に、そうした脱保護化反応は、酢酸エチルのような適切な有機溶媒中で塩酸のような酸の存在下で、周囲より低い温度、例えば約0℃で行われ、塩酸アミンとしての化合物Iを与える。
【0039】
この実施態様の他の局面では、本発明の式Iの化合物により治療できる特定の疾患、障害または症状には、それには限定されないが、鬱病、双極性障害、不安障害、精神的症状、認識障害もしくは記憶障害、統合失調症、神経障害性疼痛および線維筋肉痛が含まれる。再度、本発明のこの実施態様において、上記の式Iの化合物には、該化合物の光学異性体、立体異性体、および互変異性体、ならびにそれらの製薬的に許容しうる塩、溶媒和物または誘導体が、場合によっては、1またはそれ以上の製薬的に許容しうる担体、希釈剤または賦形剤と組み合わせて、含まれる。上記の式Iの化合物の様々な実施態様は、本発明のこの方法で使用することができる。
【0040】
当業者は、本願で明示的に述べられた病理および疾患状態は制限的なものではなくむしろ本発明の化合物の有効性を説明するためであることを、容易に理解する。したがって、本発明の化合物がγ-アミノ酪酸(GABA)の作用により引き起こされるあらゆる疾患を治療するために用いられることを理解すべきである。すなわち、本発明の化合物の活性代謝物はGABABアンタゴニストであり、したがって本発明の化合物はGABABアンタゴニストにより全部または部分的に媒介されるあらゆる疾患状態を治療するために効果的に投与することができる。
【0041】
本発明の好ましい一実施態様において、本発明の化合物は特に鬱病の治療のために適している。本発明の化合物により治療できる様々なタイプの鬱的障害には、それに限定はされないが、大鬱病エピソード、気分変調、憂鬱病、季節性情動障害、ならびに月経前緊張症および思春期に起因する鬱病を包含する。
【0042】
鬱病または鬱病性障害(「単極性鬱病」)の様相は、躁病型、混合型または軽症躁病型エピソードの病歴のない、1またはそれ以上の大鬱病エピソードである。米国精神医学会の「心的障害の診断および統計的マニュアル」第4版(「DSM-IV」)、1995、を参照し、これは参照によって本願に組み込まれる。鬱病性障害の各サブクラスは、患者により示される症状により識別される。例えば、大鬱病性障害は、1またはそれ以上の大鬱病エピソード(すなわち、少なくとも4つのさらなる鬱病の症状を伴った、抑鬱的気分または興味の欠如が、少なくとも2週間)により特徴つけられる。一方、気分変調または気分変調性障害は、大鬱病エピソードの規準に合わない追加の鬱病の症状を伴う、数日間続くがそれ以上にはならないような鬱的気分が少なくとも2年間存在することで特徴づけられる。かくして、気分変調性障害と大鬱病障害とは、その重篤さ、慢性的性および執ようさを根拠にして差別化される。大鬱病性障害においては、鬱的気分は少なくとも2週間の期間中に一日の大部分、ほとんど毎日、存在しなければならず、他方、気分変調性障害は少なくとも2年間の期間にわたって、数日間続くがそれ以上ではない態様で存在しなければならない。
【0043】
憂鬱な様相とは、全ての、もしくはほぼ全ての活動における興味もしくは喜びの欠如、または普通は喜ばしい刺激に対する反応性の欠如である。個人の抑鬱された気分は、何か良いことが生じた場合でも、一時的にでさえも、改善されない。さらに、以下の症状の少なくとも3つが存在する:抑鬱された気分の明瞭な特質、朝に定期的に悪化する抑鬱、早朝の目覚め、精神的活動の遅滞もしくは動揺、顕著な食欲不振もしくは体重低下、または過剰もしくは不適切な罪悪感。
【0044】
季節性情動障害の様相は、一年の特徴的な時期の大鬱病エピソードの発症および寛解である。多くの場合に、このエピソードは秋または冬に始まり、春に寛解する。より少ないが、再発性の夏の鬱病エピソードも存在する可能性がある。DSM-IVまたはE. M. Tam等、Can. J. Psychiatry 1995, 40, 457-466を参照されたい。
【0045】
双極性障害はさらに4つの小分類に細分類される:双極性I型障害、双極性II型障害、気分循環性障害および他の特定されない双極性障害である。一般に、双極性障害は、躁型エピソード、混合型エピソード、または軽度躁型エピソードの存在を伴い、通常大鬱病エピソードの存在(または病歴)を伴っている。双極性I型障害は、1またはそれ以上の躁型または混合型エピソードにより特徴づけられ、通常は大鬱病エピソードを伴う。双極性II型障害は、1またはそれ以上の大鬱病エピソードにより特徴付けられ、少なくとも1つの軽度躁型エピソードを伴う。気分循環性障害は、少なくとも2年間の、躁的エピソードの規準には合わない軽度躁型の多数の期間、および、大鬱病エピソードの規準に合わない鬱的症状の多数の期間によって特徴付けられる。
【0046】
本発明の他の局面では、本発明の化合物は、各種の不安障害の治療において特に有用である。治療可能な各種の不安障害には、制限することなく以下のものが含まれる:パニック発作、社会恐怖症、強迫神経症、心的外傷後ストレス障害および全般性不安障害。
【0047】
パニック発作またはパニック障害は、激しい心配、怖れまたは恐怖が、多くの場合切迫した運命の感情を伴って突然生じる不連続の期間である。これらの発作の間、息切れ、動悸、胸痛または不快感、息詰まるようなまたは息が止まるような感覚、および「発狂する」または制御を失う怖れが存在する。
社会恐怖症または社会不安障害は、特定の型の社会的達成状況にさらされることにより引き起こされる、しばしば回避行動につながる、臨床的に顕著な不安症である。
強迫神経症は、強迫観念(大きな不安または苦悩を引き起こす)および/または抑えがたい衝動(不安を緩和するために働く)により特徴付けられる。
心的外傷後ストレス障害は、増大する喚起刺激の症状および外傷に関連する刺激を回避することを伴う、極端な外傷的事象の再体験によって特徴付けられる。
全般性不安障害は、少なくとも6ヶ月間持続する過剰な不安および苦悩により特徴付けられる。
【0048】
本発明の方法のさらなる局面において、式Iの化合物は特に精神性症状の治療において有用である。本発明の化合物により治療できる各種の精神性症状各種には、それに限定されることなく、以下のものが含まれる:憤怒、拒絶過敏症および心的または身体的エネルギーの欠如。
【0049】
本発明の方法のさらなる局面において、本発明の化合物は月経前障害と関連している精神性症状の治療においても有用である。月経前障害と関連している特定の精神性症状は、憤怒、拒絶過敏症および心的または身体的エネルギーの欠如から成る群から選択される。
【0050】
認識障害または記憶障害は、「記憶の欠損」、すなわち学習および記憶に関するあらゆる欠陥により特徴付けられる。「学習および記憶に関連するあらゆる欠陥」とは、記憶の形成および/または記憶の再生に関連するあらゆる欠陥を意味する。「記憶」は、例えば、短期間の記憶、長期間の記憶、系統だった記憶、すなわち意識的な事実の記憶、例えば特定の事象の記憶、または暗黙のもしくは手続き的な記憶、すなわち「無意識的に」達成された仕事に関する記憶、例えば自転車に乗ることであってよい。
【0051】
「統合失調症」は、少なくとも6ヶ月間続き、少なくとも1ヶ月間の活動相の症状を含む障害である。すなわち、以下の2またはそれ以上のものである:妄想、幻覚、でたらめな話し方、ひどくでたらめな話し方、ひどくばらばらなまたは緊張性の行動、および消極的な症状。本発明の化合物はまた、統合失調症の様々なサブタイプの治療にも使用できる。統合失調症の様々なサブタイプおよびそれらの定義は以下に記載している。
【0052】
統合失調症型(schizophreniform)障害は、その持続期間(すなわち、障害が1〜6ヶ月持続する)および機能低下の必要性がないことを除いて、統合失調症と等しい症状の存在によって特徴付けられる。
統合失調感情(schizoaffective)障害は、気分エピソードおよび統合失調症の活性相症状が一緒に生じ、目立った気分症状なしに、妄想または幻覚が先行するか、または少なくともその後2週間持続する障害である。
妄想障害は、少なくとも1ヶ月間の、統合失調症の他の活性相症状のない、奇抜ではない妄想により特徴付けられる。
軽度精神性障害は、1日以上続き1ヶ月のうちには回復する精神性障害である。
共有性精神性障害(shared psychotic disorder)は、類似の内容により確立された妄想を有する他の人により影響された個人で発症する障害である。
全般的な医学的症状による精神性障害において、精神性症状は、全般的な医学的症状の直接の生理的帰結であると判断される。
物質誘導型精神性障害において、精神性症状は、乱用薬物、医療行為、または毒物汚染の直接の生理的帰結であると判断される。
【0053】
本願で用いられる「神経障害性疼痛」という表現は、神経傷害に関連する疼痛の症状を意味する。特定の症候群により、疼痛は、脳もしくは脊髄の変性による可能性があるし、または神経それ自体の異常による可能性もある。神経障害性疼痛は、特発性でもあり、または、疾患(例えば、アミロイド症、アルコール障害、HIV、梅毒、ウイルス、自己免疫性障害、癌、ポルフィリン症、クモ膜炎、ヘルペス後神経痛、ギリアン・バール症候群、およびI型およびII型糖尿病を含む糖尿病)、化学物質(例えば、毒物、鉛、ダプソーン、ビタミン、パクリタキセル化学療法、およびHAART療法)ならびに、特定の神経または神経叢に対する物理的傷害(例えば、外傷、圧迫、および緊縮)を含むあらゆる原因により誘発されるものもある。
【0054】
本発明の方法は、特に、HIV、化学物質(例えば、毒物、鉛、ダプソーン、ビタミン、パクリタキセル化学療法、およびHAART療法)またはI型およびII型糖尿病のような糖尿病によって引き起こされる末梢性神経障害または神経障害性疼痛のような、末梢性神経障害または神経障害性疼痛の治療のために有用である。
【0055】
本発明の化合物が本願で記載された各種の疾患を治療において有用であることを示すための多くの方法、例えば動物モデルを用いたものが存在する。例えば、Paul Willner による“Animal Models as Simulations of Depression”, TiPS 12:131-136 (April 1991); Paul Willner による“Animal Models of Depression: An overview”, Pharmac. Ther. 45:425-455 (1990)を参照し、これらは両方とも参照によって本願に組み込まれる。鬱病を治療するために本発明の化合物の有効性を示すそうしたモデルの一つは、鬱病の持続的軽度ストレスモデル(「CMS」)である。
【0056】
CMSは、食餌および水の制限、ケージの傾斜、ケージで一緒に飼う動物の交換等のような軽度のストレス因子を用いる。軽度のストレス因子への暴露を数週間にわたって続けると、動物は(非処置動物において)強く好むショ糖溶液の消費を徐々に減少させ、これはストレス停止後数週間継続する。報酬(ショ糖溶液)に対する感受性の減少は、大鬱病エピソードの症状である快感消失症を反映している(例えば、リチウム、カルバマゼピンおよびケトコナゾールをCMSで評価しているBehavioral Pharmacol. 5: Suppl.1, p. 86 (1994);三環形抗鬱剤をCMSで評価している Psychopharmacology 93:358-364 (1987);カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ阻害剤をCMSで評価しているBehavioral Pharmacology: 5:344-350 (1994) を参照する)。
【0057】
同様に、鬱病の治療における本発明の化合物の有効性を示すために用いることができる、適切な他のインビボ動物モデルには、強制的水泳試験および/または社会的葛藤試験が含まれる。後者の試験はまた、特定の不安障害の治療における本発明の化合物の有効性を示すためにも用いることができる。他の、不安障害の治療における本発明の化合物の有効性を示すためにも用いることができる、動物モデルは社会恐怖症試験である。
【0058】
対象物認識試験は、各種の認識障害に関与する疾患の治療において化合物の有効性を調べるための、他の一般的に用いられている動物モデルである。例えば、Ennaceur等、Behav. Brain Res., 1988, 31, 47-59を参照のこと。この試験は動物の自発的探求活動に基づきヒトのエピソード的な記憶の性質を有している。この記憶試験は加齢に対して(Scali et al., Eur. J. Pharmacol., 1997, 325, 173-180)およびコリン作用性機能障害に対して(Bartolini et al., Pharm. Biochem. Behav. 1996, 53(2), 277-283)感受性が高く、そして2つの非常に良く似た形態、一つは良く知っているもので他は新規なもの、の対象物の探求における差異に基づいている。
【0059】
もちろん、ヒトでの臨床試験もまた、鬱病の治療における本発明の化合物の有用性を示すために、例えば鬱病の簡略式ハミルトン精神的評価規準を用いて、利用できる。これは、個別に評価された一連の17のカテゴリー、例えば鬱的気分、罪悪感、自殺傾向、不眠症、不安等を含んでおり、患者が鬱病に罹っているかどうかを医師に示すスコアを与える。
【0060】
最後に、本願で記載された式Iおよび/またはIBの化合物の様々な好ましい実施態様は、本願で論じた様々の疾患の治療に使用できる。すなわち、上記の特定の化合物を含む様々な好ましい実施態様は、本発明の方法において使用できる。
【0061】
本発明の方法の他の実施態様において、本発明の化合物は、当該分野で知られたいかなる方法によっても投与できる。特に、本発明の化合物は経口、筋内、皮下、直腸、気管内、鼻内、腹腔内または局所経路で投与できる。より好ましくは、本発明の化合物は経口経路で投与される。
【0062】
最後に、本発明のさらに他の実施態様において、また、製薬的に許容しうる担体と、上記の式Iで示される一般式を有する化合物(その化合物の光学異性体、立体異性体、および互変体、ならびにそれらの製薬的に許容しうる塩、溶媒和物または誘導体を含む)とを含む、医薬組成物を提供する。再度、上記の式Iの化合物の様々な実施態様が本発明のこの組成物で用いることができる。
【0063】
本願で記載されたように、本発明の医薬組成物はGABABアンタゴニスト活性を有する特色があり、そのために、患者においてGABABの作用により引き起こされるいかなる疾患、症状または障害においても有用である。再度、上記のように、上記の本発明の化合物の好ましい実施態様は全て、本願で記載された医薬組成物を製造する場合に使用できる。
【0064】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、経口、非経口、鼻内、舌下または直腸投与、または吸入による投与のための、錠剤、ピル、カプセル、粉剤、顆粒剤、無菌非経口用溶液もしくは懸濁液、計量エアロゾルもしくは液体スプレー、点滴剤、アンプル、自動注入装置、または座薬のような単位投与剤形である。その代わりに、組成物は、週1回または月1回投与に適した形態で存在でき、その例として、デカン酸塩のような活性化合物の不溶性の塩が、筋肉内注入のためのデポ製剤を提供するために適合しているだろう。活性成分を含む侵食性ポリマーも考えられる。錠剤のような固形組成物を製造するために、主活性成分を、製剤用担体、例えばコーンスターチ、乳糖、ショ糖、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウムまたはゴムのような慣用の錠剤用成分、および他の製剤用希釈剤、例えば水と混合し、本発明の化合物またはその製薬的に受容できる塩の均質な混合物を含む固形予備製剤組成物を形成する。これらの予備製剤組成物が均質である場合は、活性成分が組成物中に均等に分散し、この組成物が容易に等しく有効な、錠剤、ピルおよびカプセルのような単位投与剤形に分割できることを意味する。この固形予備製剤組成物は次に上記の型の単位投与剤形に分割され、それらは本発明の活性成分を0.1〜約500 mg含んでいる。矯味矯臭化した単位投与剤形は1〜100 mg、例えば1、2、5、10、25、50または100 mgの活性成分を含む。新規な組成物の錠剤またはピルは被覆化でき、そうでなければ遅延型活性の利点を与える投与剤形を提供するために混合できる。例えば、錠剤またはピルは内部投与成分および外部投与成分を含むことができ、後者は前者の上を包み込む形態である。2つの成分は腸溶性層により分離でき、この層は胃内での崩壊に抵抗し内部成分が壊れずに十二指腸へと通過し、放出を遅らせるために働く。様々な材料を、そうした腸溶性層または被覆のために使用することができ、そうした材料には、いくつかのポリマー性酸およびポリマー性酸と、セラック、セチルアルコールおよび酢酸セルロースのような材料との混合物が含まれる。
【0065】
本発明の新規な組成物を、経口または注射で投与するために組み込むことができる液体形態には、水性溶液、適切に矯味矯臭化されたシロップ、水性もしくは油性懸濁液、および綿実油、ゴマ油、ココナッツ油またはピーナッツ油のような食用油を用いた矯味矯臭化された乳剤、ならびにエリキシルおよび類似の製剤用ビークルが含まれる。水性懸濁液のための適切な分散剤または懸濁剤には、タラガカント、アカシア、アルギネート、デキストラン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニル−ピロリドンまたはゼラチンのような合成および天然ゴムが含まれる。
【0066】
本発明の医薬組成物は、当該分野で知られたどのような方法でも投与できる。一般に、本発明の医薬組成物は経口、筋内、皮下、直腸内、気管内、鼻内、腹腔内または局所的に投与できる。本発明の医薬組成物の好ましい投与は、経口および鼻内経路である。経口および鼻内経路で医薬組成物を投与する知られた方法は全て、本発明の組成物を投与するために使用できる。
【0067】
本願で記載された各種の疾患の治療において、適切な投与量は、約0.01〜250 mg/kg/日、好ましくは約0.05〜100 mg/kg/日、および特に好ましくは約0.05〜20 mg/kg/日である。化合物は一日当り1〜4回のレジュメで投与できる。
【0068】
本発明は、説明の目的で提供され、そして決して本発明の範囲を限定することのない、以下の実施例によりさらに説明される。
【実施例】
【0069】
反応は一般に窒素環境下で行う。溶媒は硫酸マグネシウム上で乾燥させ、そしてロータリーエバポレータ上で減圧下蒸発させる。TLC分析をEMサイエンスのシリカゲル60 F254プレートを用いて、UV照射で可視化して行う。フラッシュクロマトグラフィーをアルテックの充填済みシリカゲルカートリッジを用いて行う。1H NMRスペクトルは、他に記載がなければ、300 MHzで、ジェミニ300またはバリアンVXR 300分光計上で行い、DMSO-D6またはCDCl3のような重水素化溶媒中で測定する。化学シフト値は、内部標準のテトラメチルシラン(TMS)を参照して百万分の一(ppm)単位で示す。LC/MSは、マイクロマスプラットフォームLCZ上で行う。
【0070】
以下の実施例および製造例で用いられるように、そこで使用される表現は示された意味を有する:「kg」はキログラムを意味し、「g」はグラムを意味し、「mg」はミリグラムを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、「pg」はピコグラムを意味し、「lb」はポンドを意味し、「oz」はオンスを意味し、「mol」はモルを意味し、「mmol」はミリモルを意味し、「μmol」はマイクロモルを意味し、「nmole」はナノモルを意味し、「L」はリットルを意味し、「mL」または「ml」はミリリットルを意味し、「μL」はマイクロリットルを意味し、「gal」はガロンを意味し、「℃」は摂氏の温度を意味し、「Rf」は保持係数を意味し、「mp」または「m.p.」は融点を意味し、「dec」は分解を意味し、「bp」または「b.p.」は沸点を意味し、「mm of Hg」は水銀ミリメーター単位での圧力を意味し、「cm」はセンチメーターを意味し、「nm」はナノメーターを意味し、「abs.」は絶対を意味し、「conc.」は濃度を意味し、「c」はg/mL での濃度を意味し、「THF」はテトラヒドロフランを意味し、「DMF」はジメチルホルムアミドを意味し、「NMP」は1-メチル-2-ピロリジノンを意味し、「ブライン」は飽和塩化ナトリウム水溶液を意味し、「M」はモル濃度を意味し、「mM」はミリモル濃度を意味し、「μM」はマイクロモル濃度を意味し、「nM」はナノモル濃度を意味し、「N」は正常を意味し、「TLC」は薄層クロマトグラフィーを意味し、「HPLC」は高速液体クロマトグラフィーを意味し、「HRMS」は高解像質量分析を意味し、「L.O.D.」は乾燥による消失を意味し、「μCi」はマイクロキュリーを意味し、「i.p.」は腹腔内を意味し、「i.v.」は静脈内を意味し、「anhyd」は無水物;「aq」は水性;「min」は分;「hr」は時間;「d」は日;「sat.」は飽和した;「s」は一重項;「d」は二重項;「t」は三重項;「q」は四重項;「m」は多重項;「dd」は二重項の二重項;「br」は幅広;「LC」は液体クロマトグラフィー;「MS」は質量分析器;「ESI/MS」は電子スプレーイオン化/質量分析器;「RT」は保持時間;「M」は分子イオンを意味する。
【0071】
以下の実施例は、本発明の化合物の製造用の様々な出発物質の製造のために用いられる方法を記載する。
【0072】
[実施例1]
((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸3-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソベンゾフラン-1-イルエステル塩酸塩
【化6】

【0073】
工程1:((R)-3-tert-ブトキシカルボニルアミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸:
((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸(20.2 g, 86 mmol)を、炭酸カルシウムの水溶液(35.6 g, 258 mmol、水270 mL中)中に溶解し、THF (90 mL) 中のジ-t-ブチル-ジカルボン酸(24.36 g, 112 mmol)の溶液をゆっくり加えながら室温で撹拌した。反応混合物を室温で4時間放置し、その後酢酸エチル(200 mL)を加えた。水相を分離し、1N HCl (〜450mL)でpH2に注意深く酸性化する前に、酢酸エチルの第二の部分(200 mL)で洗浄した。酢酸エチル(総量で500 mL)中に抽出し、乾燥し(MgSO4)透明で無色の溶液を得た。静置してこの溶液から生成物の結晶化を開始した。ヘプタン(300 mL)を加える前に、総体積を〜150 mLまで減少させた(減圧下)。溶液を室温で30分間放置し、冷却し結晶化させた。固形生成物を濾過で分け、30%酢酸エチル/ヘプタン(2×100 mL)で洗浄し、そして高減圧下に乾燥させた。((R)-3-tert-ブトキシカルボニルアミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸(26.54 g, 92%)が、無色の針状物として分離できた。1H-NMR(CDCl3, 300 MHz):δ4.75 (s, H), 4.18 (br s, H), 3.4-3.24 (m, H), 3.21-3.09 (m, H), 2.01-1.58 (m, 10H), 1.43 (s, 9H), 1.37-0.95 (m, 6H)。 LC/MS m/z: [M+H]+=336.4。
【0074】
工程2:((R)-3-tert-ブトキシカルボニルアミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸3-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソベンゾフラン-1-イルエステル:
30 mLのトルエン中の((R)-3-tert-ブトキシカルボニルアミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸(0.5 g, 1.49 mmol)の溶液に3-ブロモ-3H-イソベンゾフラン-1-オン(952 mg, 4.47 mmol)および炭酸銀(1.23 g, 4.47 mmol)を加えた。反応混合物を2時間加熱して120℃にした。熱いまま濾過し、減圧下濃縮した後、粗生成物を、35 gレジセップ使い捨てカラム上での勾配フラッシュクロマトグラフィー(メタノール/塩化メチレン)で精製し、((R)-3-tert-ブトキシカルボニルアミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸3-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソベンゾフラン-1-イルエステル(150 mg, 0.32 mmol)を得た。1H NMR (CDCl3, 300 MHz): δ7.92 (m, 1H), 7.73 (m, 2H), 7.12 (m, 1H), 5.1 (m, 1H), 4.40 (m, 1H), 4.2 (m, 1H), 3.4-3.22 (m, 1H), 3.20-3.04 (m, 1H), 2.01-1.58 (m, 10H), 1.48 (s, 9H), 1.40-0.95 (m, 6H)。LC/MS m/z: [M+H]+=468。
【0075】
工程3:((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸3-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソベンゾフラン-1-イルエステル塩酸塩:
2mLのジオキサン中の((R)-3-tert-ブトキシカルボニルアミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸3-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソベンゾフラン-1-イルエステル(140 mg, 0.3 mmol)の溶液に4N HCl/ジオキサン溶液(5.0 mL, 20 mmol)を加えた。2時間後、反応混合物を減圧下濃縮し、そして得られた残留物を酢酸エチル中に回収し、減圧下濃縮し、((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸3-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソベンゾフラン-1-イルエステル塩酸塩(120 mg, 0.3 mmol)を得た。1H NMR (CD3OD, 300 MHz): δ7.92(m, 1H), 7.73(m, 2H), 7.15(m, 1H), 4.40(m, 1H), 3.4-3.22(m, 1H), 3.20-3.04(m, 1H), 2.01-1.8(m, 6H), 1.75-1.60(m, 4H), 1.50-1.0(m, 7H)。31P NMR (CD3OD, 300 MHz):δ61.4, 60.6。LC/MS m/z: [M+H]+= 368。
【0076】
[実施例2]
2,2-ジメチル-プロピオン酸((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィノイルオキシメチルエステル:
【化7】

【0077】
工程1:((R)-3-ベンジルオキシカルボニルアミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸:
水(90 mL)およびTHF(30 mL)中の((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸(7.05g、30mmol)および炭酸カリウム(12.42 g, 90 mmol)の混合物にクロロギ酸ベンジル(7.65 g, 45 mmol)を加えた。室温で3時間攪拌した後、反応混合物を酢酸エチル(150 mL)および2N HCl(90 mL)で希釈した。10分間激しく攪拌した後、水相を除き、有機相をヘプタン(200 mL)で希釈した。得られた白色沈殿物を回収し、((R)-3-ベンジルオキシカルボニルアミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸(10.5 g, 28 mmol)を得た。1H NMR (CDCl3, 300 MHz): δ7.32 (m, 5H), 5.45 (br s, 1H), 5.10 (s, 2H), 4.2 (m, 1H), 3.4 (dd, 1H), 3.20 (dd, 1H), 2.01-1.55 (m, 10H), 1.40-0.95 (m, 5H)。31P NMR (CDCl3, 300 MHz): δ57.3。LC/MS m/z: [M+H]+=370。
【0078】
工程2:2,2-ジメチル-プロピオン酸((R)-3-ベンジルオキシカルボニルアミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィノイルオキシメチルエステル:
クロロホルム(50 mL)中の((R)-3-ベンジルオキシカルボニルアミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸(1.0 g, 2.71 mmol)およびピバリン酸クロロメチル(407 mg, 2.71 mmol)の溶液に60℃で酸化銀(754 mg, 3.25 mmol)を加えた。3時間後、反応混合物を減圧下濃縮し、次に残留物をエーテル(20 mL)中に回収し、そしてセライトを通して濾過した。有機層を酢酸エチル(100 mL)で希釈し、1N HCl(15 mL)、飽和重炭酸ナトリウム溶液(15 mL)およびブライン(20 mL)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、そして減圧下濃縮し、粗生成物を得た。35 gレジセップ使い捨てカラム上での勾配フラッシュクロマトグラフィー(メタノール/塩化メチレン)で精製し、2,2-ジメチル-プロピオン酸((R)-3-ベンジルオキシカルボニルアミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィノイルオキシメチルエステル(190 mg, 0.39 mmol)を得た。1H NMR (CDCl3, 300 MHz): δ7.32 (m, 5H), 5.65 (m, 1H), 5.10 (s, 2H), 4.2 (m, 1H), 3.4 (m, 1H), 3.20 (m, 1H), 2.01-1.55 (m, 14H), 1.40-0.95 (m, 11H)。31P NMR (CDCl3, 300 MHz):δ57.3。LC/MS m/z: [M+H]+=484。
【0079】
工程3:2,2-ジメチル-プロピオン酸((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィノイルオキシメチルエステル:
2,2-ジメチル-プロピオン酸((R)-3-ベンジルオキシカルボニルアミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィノイルオキシメチルエステル(0.90 g, 0.39 mmol)をエタノール(35 mL)中に溶解し、次に、10%Pd/C (0.09 g)を触媒として用いて、50 psiで3時間、水素パール(par)振盪機により水素化した。反応物はセライトを通して濾過し、減圧下濃縮して、2,2-ジメチル-プロピオン酸((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィノイルオキシメチルエステル(130 mg, 0.37 mmol)を得た。1H NMR (CDCl3, 300 MHz): δ5.65 (m, 1H), 4.2 (m, 1H), 3.8 (m, 1H), 3.60 (m, 1H), 2.01-1.55 (m, 14H), 1.40-0.95 (m, 11H)。 31P NMR (CDCl3, 300 MHz): δ60.65, 59.20。LC/MS m/z: [M+H]+=350。
【0080】
[実施例3]
((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸エトキシカルボニルオキシメチルエステル:
【化8】

【0081】
工程1:(3-ベンジルオキシカルボニルアミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸エトキシカルボニルオキシメチルエステル:
トルエン(60 mL)中の((R)-3-ベンジルオキシカルボニルアミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸(1.0 g, 2.71 mmol)およびカルボン酸クロロメチルエステルエチルエステル(1.13 g, 8.16 mmol)の溶液に炭酸銀(2.26 g, 8.16 mmol)を加えた。反応混合物を3時間還流下加熱した。次に、反応混合物を濾過し、ついで減圧下濃縮した。35 gレジセップ使い捨てカラム上での勾配フラッシュクロマトグラフィー(メタノール/塩化メチレン)で精製し、(3-ベンジルオキシカルボニルアミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸エトキシカルボニルオキシメチルエステル(300 mg, 0.63 mmol)を得た。1H-NMR(CDCl3, 300 MHz): δ7.35 (m, 5H), 5.65 (m,2H), 5.45 (br s, 1H), 5.10 (s, 2H), 4.2 (m, 2H), 3.45 (dd, 1H), 3.20 (dd, 1H), 2.01-1.55 (m, 11H), 1.40-0.95 (m, 8H)。
【0082】
上記で使用したカルボン酸クロロメチルエステルエチルエステルは、Boehme, Horst; Budde, Juergen;“Chloromethyl, Mercaptomethyl, and Imidomethyl Carbonates”Synthesis, 1971, (11), 588-90に記載された方法に従って調製する。
【0083】
工程2:((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸エトキシカルボニルオキシメチルエステル:
(3-ベンジルオキシカルボニルアミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸エトキシカルボニルオキシメチルエステル(0.263 g, 0.56 mmol)を無水エタノール(28 mL)中に溶解し、そして10% Pd/C (0.127 g)を用いて、55 psiで1時間、室温で水素パール(Paar)振盪機により水素化した。反応物はセライトを通して濾過し、減圧下濃縮して、表記の化合物(187 mg, 0.56 mmol)を泡状白色固形物として得た。1H NMR (CDCl3, 300 MHz): δ7.90 (bs, 2H), 5.69 (m, 2H), 4.51 (bs, 1H), 4.23 (q, 2H), 3.27 (m, 1H), 3.17 (m, 1H), 2.20 (m, 2H), 1.88-1.64 (m, 8H), 1.34-1.00 (m, 6H), 1.32 (t, 3H)。31P NMR (CDCl3, 300 MHz): δ61.14, 59.63。LC/MS m/z: [M+H]+=338。
【0084】
[実施例4]
((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸フェニルエステル塩酸塩:
【化9】

【0085】
工程1:((R)-3-tert-ブトキシカルボニルアミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸フェニルエステル:
10 mL THF中の((R)-3-tert-ブトキシカルボニルアミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸(0.67 g, 2.0 mmol)の溶液に0℃で1-クロロ-N,N-2-トリメチル-1-プロペニルアミン(319 mg, 2.4 mmol)を加えた。0℃で10分間攪拌後、THF(3 mL)中のフェノール(188 mg, 2.0 mmol)およびトリエチルアミン(243 mg, 2.4 mmol)の溶液を滴下により加えた。添加後、反応混合物を0℃で2時間次いで室温で16時間攪拌した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、そして水およびブラインで洗浄した。有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過しそして減圧下濃縮して粗生成物を得た。35 gレジセップ使い捨てカラム上での勾配フラッシュクロマトグラフィー(メタノール/塩化メチレン)で精製し、((R)-3-tert-ブトキシカルボニルアミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸フェニルエステル(500 mg, 1.22 mmol)を得た。1H-NMR(CDCl3, 300 MHz): δ7.35 (m, 2H), 7.18 (m, 3H), 4.18 (br s, H), -33.21-3.09 (m, 2H), 2.01-1.58 (m, 10H), 1.43-0.95 (m, 15H)。31P NMR (CD3OD, 300 MHz):δ57.90, 58.65。
【0086】
工程2:((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸フェニルエステル塩酸塩:
酢酸エチル中(10 mL)の((R)-3-tert-ブトキシカルボニルアミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸フェニルエステル(495 mg, 1.2 mmol)の0℃の溶液に、ピペットを通して温度が10℃を超えないような速度で、HClガスを飽和になるまで泡立てて加えた。飽和後、反応混合物を室温で2時間攪拌し、そして減圧下濃縮した。得られた残留物をエーテル(100 mL)で粉砕し、そして得られた固形物を回収して、((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸フェニルエステル塩酸塩(248 mg, 0.71 mmol)を得た。1H-NMR(CD3OD, 300 MHz): δ7.35 (m, 2H), 7.18 (m, 3H), 4.18 (br s, H), 3.21-3.09 (m, 2H), 2.01-1.58 (m, 10H), 1.43-0.95 (m, 9H)。31P NMR (CD3OD, 300 MHz): δ57.12, 57.47。LC/MS m/z: [M+H]+=312。
【0087】
[実施例5]
((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸ベンジルエステル塩酸塩:
【化10】

【0088】
工程1:((R)-3-tert-ブトキシカルボニルアミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸は実施例1の工程1で記載した方法に従って調製した。
【0089】
工程2:((R)-3-tert-ブトキシカルボニルアミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸ベンジルエステル:
((R)-3-tert-ブトキシカルボニルアミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸(8.0 g, 23.8 mmol)を炭酸カリウム(3.30 g, 23.8 mmol)と水(33mL)の溶液に溶解し、そして穏やかに暖めながら攪拌した。水を減圧により除去しそして残留物を、五酸化リンの存在下、75℃で24時間減圧乾燥し、白色固形物としてカリウム塩を得た。窒素環境下、このカリウム塩に、アセトニトリル(200 mL)、臭化ベンジル(4.08 g, 23.8 mmol)および18-クラウン-6(0.03 g, 0.120 mmol)を加え、混合物を80℃で攪拌しながら終夜還流した。反応を室温まで冷却し、濾過し、濾過液を減圧下濃縮して泡状の粗生成物(10.2 g)を得た。粗生成物を勾配フラッシュクロマトグラフィー(25%酢酸エチル/塩化メチレンから100%酢酸エチルへ)により精製し、生成物を白色固形物として得た(6.43 g, 15.05 mmol)。1H NMR (CDCl3, 300 MHz): δ7.42-7.31 (m, 5H), 5.05 (t, 3H), 4.48-4.40 (m, 1H), 4.18-4.02 (m, 1H), 3.42-3.22 (m, 1H), 3.20-3.04 (m, 1H), 2.01-1.58 (m, 10H), 1.48 (s, 9H), 1.40-0.95 (m, 5H)。 LC/MS m/z: [M+H]+= 426.2。
【0090】
工程3:((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸ベンジルエステル塩酸塩:
((R)-3-tert-ブトキシカルボニルアミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸ベンジルエステル(300 mg, 0.7 mmol)を酢酸エチル(7 mL)に溶解し、氷浴中で攪拌しながら冷却した。HClガスを、ピペットを通して温度が10℃を超えないような速度で、飽和になるまで溶液に泡立てて加えた。この反応を0℃で攪拌しそして進行をHPLCでモニターした。完了(3〜4時間)後、反応を室温で減圧下濃縮し、そして残留物を数時間高減圧下に置き、粘着性の泡状物を得た(215 mg, 0.6 mmol)。1H NMR (CDCl3, 300 MHz): δ8.26 (br s, 3H), 7.51-7.23 (m, 5H), 5.38-4.93 (br.m, 3H), 4.58 (br.s, 1H), 3.48-3.03 (m, 2H), 2.40-2.02 (m, 2H), 1.98-1.52 (m, 8H), 1.38-0.85 (m, 5H)。LC/MS m/z: [M+H]+= 326.1。
【0091】
生物学的実施例
[実施例6]
この実施例6は、本発明の化合物の改善されたおよび/または同等の生物学的利用率を証明する。
動物:雄性CD1マウス(チャールズ・リバー)、体重約25g、食餌と水は自由に与えた。
投与群:本発明の化合物を、親化合物の((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸の10mg/kgとモル当量の投与量で、試験動物に投与した。各試験化合物をこの投与量レベルで10mL/kgの投与体積になるように製剤化し、そして各試験群の一時点につき3匹のマウスの群に経口チューブで投与した。
製剤:本発明の化合物を、約1mg/mLの濃度で0.2%ツィーン80および0.5%メチルセルロース(MC)のビークル中に溶解した。
試料:血液試料(血漿用に)を以下の時点で採取した:投与前5、15、30および45分;ならびに投与後1、2、3、4、5、および7時間。脳は、投与後2、4、および7時間目に採取した。
【0092】
血液の取り扱い:血液試料を、10mg/mLフッ化ナトリウム保存溶液の20μLを含む試験管に入れた。次に血液試験管を約4℃で冷蔵庫中に保存した。これらの各試料の血液の体積は約0.4mLであった。次に試料を、冷却遠心機中で遠心分離した。次に血漿試料を約−20℃に保たれた冷凍庫中で保存した。
脳の取り扱い:脳を、特定した時間間隔で動物解剖した後取り出し、ドライアイス上に保管し、そして約−20℃に保たれた冷凍庫中に移した。各マウス脳は、下記のように生物学的分析に用いる前に最初25%アセトニトリルの3.0mLでホモジナイズした。
生物学的分析:次に、全ての血漿および脳試料を、試験化合物ならびに親化合物の((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸の濃度について、LC/MS/MSで分析した。本発明の各試験化合物に関して、血漿中で観察された、親化合物の((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸との相対量を表1にまとめた。
【表1】

【0093】
脳試料のLC/MS/MSによる分析は、脳内の親化合物の濃度が血漿中の親化合物の濃度に比例することを示した。一方、多くの場合、試験化合物のレベルはあまりに少なくて分析した試験化合物の全てにおいて検出できなかった。
【0094】
[実施例7]
ポーソルトの強制水泳試験
このモデルで測定できる効果は薬物の抗鬱性効果と相関している。このモデルのパラダイムは、ビークルのみ与えられたラットに比べて、有効な抗鬱性化合物は、ラットに水充満円筒から逃れようとする、より強い試みを起こさせるだろうということである。
この試験で用いられた動物は、体重が225〜350グラムの、実験で使用された経験のある(non-naive)雄性スプレーグ・ドーリー・ラットである。試験装置は、40cmの高さと19cmの幅を有する6個の透明なプレキシガラス(R)円筒からなっている。円筒には18cmまで25℃の水が満たされている。各ラットは15分間の訓練セッションの間、円筒内に置かれる。ビークル(0.5%メチルセルロース)または化合物のいずれかを亜慢性投与または急性投与した後、動物を24時間後、5分間の試験セッションに戻す。これらの試験セッションを後の評点のためにビデオテープで記録する。
【0095】
亜慢性投与は訓練と試験の間の24時間に3回薬物を投与することからなる。薬物は試験セッション前24時間、5時間および1時間に投与される。急性投与は、試験セッション前1時間に1回薬物を投与することからなる。評価は、時間−サンプリングコンピュータープログラムを用いて行う。5秒ごとに、動物は3つの行動、不動、緩和な水泳、または登攀、の一つを示した場合評点を付けられる。これらの集められた評点を次に試験セッションのパーセントに変換する。
【0096】
[実施例8]
社会的葛藤試験
このモデルで測定できる効果は薬物の抗鬱性効果および/または不安効果のいずれかと相関している。この試験は、行動的に異なった動物の群における薬物の不安解消および不安形成活性の予測のための複合的な手段を提供する。
体重が18〜20gの、無作為交配した雄性アルビノマウスを本試験で使用する。これらは自動洗浄ケージで単独でまたは10匹の群で飼育される。個別飼育用のケージは金網床(8×17 cm)付の13cmの高さの硬い金属壁からできており、トレイの上3cmまで木の切屑が敷かれている。この金網床は個別飼いの動物が個別飼育期間中に触れられないことを保証する。群で維持されたマウスは木の切屑で覆った床の付いた大型標準プラスチックケージ(26×42×15 cm)で飼われる。全てのマウスは室内灯(午前6時〜午後6時まで点灯)で、22℃〜24℃の温度範囲で飼われる。食餌と水は自由に与える。
【0097】
マウスは、床に木の切屑を敷き、天井が空気穴の付いた透明な覆いでカバーされた透明ケージ(20×30×20 cm)中で観察される。観察は中程度の室内灯の下で午前8時〜午後1時まで行われる。
【0098】
社会的相互交渉試験は分離してから3週間後に開始し、1匹の個別飼育マウスと同じ群飼育マウスとを対にさせる。群飼育相手マウスを導入する前に、個別飼育マウスを15分間観察ケージ中で慣らし、相互交渉は4分後に終了する。この方法は、群飼育マウスの攻撃性を抑制しそれらの社会的行動を減少させ、個別飼育マウスの活動的な社会的行動を促進する。各相互交渉の後、観察ケージは洗浄されそして床に新しい木の切屑を敷き詰める。
【0099】
試験動物は全て1週間の間隔をあけて4回の社会的相互交渉試験を受ける。個別飼育マウスには本発明の化合物の特定量(通常、約1mg/kg)またはビークルが無作為順で与えられ、一方、群飼育相手マウスは未処置のままである。群飼育マウスはもっぱら個別飼育マウスの社会的行動を刺激するために用いられた。群飼育「刺激用」マウスが個別飼育マウスを攻撃した場合は、この対は実験から除外する。
【0100】
相互交渉の間の動物の行動をビデオテープで記録する。このテープは後に、薬物治療について知らされていない観察者により分析される。攻撃数、防御的回避(物怖じする)、社会的および移動的活動の頻度、総持続時間および潜伏時間を記録する。次に、社会的相互交渉時間および総活動の変化を、試験化合物投与群とビークル対照群の平均値を比較して決定する。
【0101】
社会的活動には、社会的な嗅ぐ行為、すなわち相手の頭部、体躯、生殖器または尻尾を嗅ぐこと;登攀、すなわちマウスがその前肢を相手の背中に置くことであり、ほとんどの場合は肩の周辺で、そして通常同時にこの領域を嗅ぐ;および、追尾、すなわち静かな歩行による相手の追尾、を含む。
【0102】
攻撃的活動には、攻撃、すなわち多くの場合咬む行動を伴う相手に向けられた激しい突っ込み;脅迫、すなわち相手に向かって頭および体躯前部の動きを伴った横向きまたは直立の姿勢、および相手を咬もうとすること(攻撃的側方または直立姿勢);ならびに尻尾を震わすこと、すなわち尻尾の速い振動、を含む。
【0103】
臆病な活動には、防御、すなわちマウスが、相手の社会的行動に対して、前肢を上げ、背を丸めること(防御的直立姿勢)で、または体躯をいくらか回転させ、肢を床から上げて他の動物に最も近い位置に持っていく(防御的側方姿勢)ことにより応答すること;回避、すなわち相手から離れようと速く走るか跳ね上がること;および、警告姿勢、すなわち相手に目および耳を向けて全ての動きを突然中断すること、を含む。
【0104】
移動的活動には、歩行、すなわち相手に明らかな関連性のないケージを横切る全ての歩行;および、後肢立ち、すなわちマウスがその後肢だけで立って、そして通常、空気または壁を同時に嗅ぐ行為、を含む。
【0105】
[実施例9]
持続的軽度ストレスモデル(CMS)
以下のCMS試験を、親化合物の((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸(以下、「化合物」)を用いて、公知の抗鬱剤であるイミプラミンと比較して行った。
【0106】
雄性ウイスターラットを実験開始の2ヶ月前に研究室に搬入し、この時点でそれらの体重は約300グラムであった。下記の場合以外は、動物は個別に飼育し、食餌と水は自由に与え、そして12時間の明/暗サイクル(点灯午前8時)、温度は約22℃で維持した。
【0107】
動物は最初1%ショ糖溶液を摂取するように訓練し;これは8回の1時間のショ糖を与える、ホームケージでのベースラインの試験、それに続く14時間の食餌および水の剥奪からなる訓練であり;摂取量は、あらかじめ秤量しているショ糖溶液を入れた瓶を、試験終了時評量することで測定する。続いて、ショ糖の消費を、類似の条件下で、全実験を通して1週間の間隔でモニターする。
【0108】
最終的なベースライン試験でのそれらのショ糖摂取量を基にして、動物を2つの同等の群に分ける。一群の動物は、連続する9週間の一期間、持続的軽度ストレス処置に付する。各週のストレスレジュメは、以下の:二期間の食餌または水の剥奪(12および14時間)、二期間の45度傾けたケージ(12および14時間+)、二期間の一夜にわたる断続的な照明(2時間毎の照明の消燈)、2回の14時間の汚れたケージの期間(おが屑床に200mLの水)、2回の14時間の対での飼育期間、2回の14時間の低強度のストロボ照明(150フラッシュ/分)からなる。ストレス因子は連続的に日中および夜間を通して適用され、そして無作為にスケジュールを組む。コントロール動物を別の部屋で飼育し、そしてストレスを与えられる動物とは接触させない。これらの動物は、各ショ糖試験の14時間、食餌と水を与えられないが、それ以外ではホームケージで食餌と水は自由に摂取できる。3週間のストレスに続くそれらのショ糖摂取スコアを基にして、ストレス負荷およびコントロール動物の両方をそれぞれ同等のサブグループ(n=8)に分け、そして続く5週間、それらの動物に、ビークル(1mL/kg、腹腔内 (ip))、イミプラミン(10mg/kg, ip)または化合物(3および30 mg/kgを経口で)を毎日投与する。全ての薬物投与は1mL/kg体重の体積である。薬物は午前10時に投与し、そしてショ糖試験を最後の薬物処置から24時間後に行う。5週間後、処置は終了し、1週間の無投与期間の後最後のショ糖試験を行う。ストレスは処置および無投与期間を通して継続する。
【0109】
結果は変動の複合分析により、そしてそれに続いてこの後に平均を比較するためのフィッシャーのLSD試験により、分析する。3および30mg/kgの試験投与量レベルでの化合物の活性はイミプラミンのものと等しい。
【0110】
[実施例10]
対象物認識試験
対象物認識試験は記憶の試験である。これはマウス(およびラット)の、知っている対象物と未知の対象物との間を識別する能力を測定し、それゆえに本発明の化合物の記憶改善作用を測定するために適している。
試験は、一般に、文献に記載されているように行うことができる。(Blokland et al. NeuroReport 1998, 9, 4205-4208; Ennaceur, A., Delacour, J., Behav. Brain Res. 1988, 31, 47-59; Ennaceur, A., Meliani, K., Psychopharmacology 1992, 109, 321-330; Prickaerts, et al. Eur. J. Pharmacol. 1997, 337, 125-136)
【0111】
最初の経過において、マウスは他には何もない比較的大きな観察アリーナで2つの同一の対象物に直面する。マウスは熱心に両方の対象物を調べる、すなわち嗅ぎそして触るだろう。第二の経過では、24時間の間隔の後に、マウスを再度観察アリーナ中で試験をする。知っている対象物の1つを今度は新しい、未知の対象物と置き換える。マウスが知っている対象物を認めた場合、それは特に未知の対象物を調べるだろう。しかし、24時間後、マウスは通常、最初の経過でどちらの対象物を既に調べたのかを忘れており、それゆえに両方の対象物を等しい頻度で調べるだろう。学習改善および記憶改善作用を有する物質の投与により、マウスに、最初の経過で知っていたように、24時間前に既に見た対象物を識別するように導くだろう。この動物は新しい、未知の対象物を既に知っているものよりさらに詳しく調べるだろう。この記憶力は識別インデックスで表される。識別インデックスのゼロは、マウスが両方の対象物、古いものと新しいものを、同じ長さの時間調べること;すなわち、マウスは古い対象物を認識せずそして両方の対象物をあたかもそれらがいずれも未知で新しいもののように反応することを意味する。ゼロを超える識別インデックスは、マウスが新しい対象物を古い対象物より長く調べていること、すなわち、マウスが古い対象物を認識したことを意味する。
【0112】
本発明は特定の上記の実施例で説明されているが、それにより限定されるものと解釈すべきではなく、それよりむしろ、本発明は本願で先に開示したような一般的な領域を包含するものである。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、さまざまな修正および実施態様をなすことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

(式中、
Rは、C1-8アルキル、C3-8シクロアルキルC1-4アルキル、アリールC1-4アルキル、または式CnHxFyのフルオロアルキルであり、ここでnは1〜4の整数、xは0〜8の整数、yは1〜9の整数であり、そしてxとyの合計は2n+1であり;
R1は、水素またはヒドロキシであり;
R2は、置換もしくは非置換のアリール、アリールC1-4アルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキル、またはCHWOCOXであり;ここで、
Wは、水素またはC1-4アルキルであり;
Xは、C1-4アルキル、C3-8シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、NHYまたはOYであり;そして、ここで
Yは、C1-4アルキル、C3-8シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)
で示される一般式を有する化合物、その光学異性体、立体異性体、および互変異性体、ならびにそれらの製薬的に許容しうる塩、溶媒和物または誘導体。
【請求項2】
Rは、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘプチルメチル、シクロヘキシルエチル、シクロヘキシルプロピル、ベンジル、およびフェニルエチルであり;
R1は、ヒドロキシであり;
R2は、置換もしくは非置換のフェニル、ベンジル、オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラニル、5-メチル-[1,3]ジオキソール-2-オン-メチル,ガンマ-ブチロラクトン-4-イル、またはCHWOCOXであり;ここで、
Wは、水素、メチル、エチル、n-プロピルまたはsec-ブチルであり;
Xは、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、シクロヘキシルまたはOYであり;そして、ここで
Yは、メチル、エチルまたはn-プロピルである、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
RはC3-8シクロアルキルC1-4アルキル、および、R1はヒドロキシである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
RはアリールC1-4アルキル、および、R1はヒドロキシである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
RはC5-7シクロアルキルC1-4アルキル、および、R1はヒドロキシである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
RはフェニルC1-4アルキル、および、R1はヒドロキシである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
化合物が、式IB:
【化2】

(式中、
R2は、置換もしくは非置換のフェニル、ベンジル、オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラニル、5-メチル-[1,3]ジオキソール-2-オン-メチル、またはCHWOCOXであり;ここで、
Wは、水素、メチル、エチル、n-プロピルまたはsec-ブチルであり;
Xは、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、シクロヘキシルまたはOYであり;そして、ここで
Yは、メチル、エチルまたはn-プロピルである)
で表される、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
以下の化合物:
((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸3-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソベンゾフラン-1-イルエステル;
2,2-ジメチル-プロピオン酸((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィノイルオキシメチルエステル;
((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸エトキシカルボニルオキシメチルエステル;
((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸フェニルエステル;
((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸ベンジルエステル;
(3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸5-メチル-2-オキソ-[1,3]ジオキソール-4-イルメチルエステル;または
それらの製薬的に許容しうる塩、水和物もしくは溶媒和物から成る群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
2,2-ジメチル-プロピオン酸((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィノイルオキシメチルエステル、またはその製薬的に許容しうる塩、水和物もしくは溶媒和物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸ベンジルエステル、またはその製薬的に許容しうる塩、水和物もしくは溶媒和物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
1またはそれ以上の、式I:
【化3】

(式中、
Rは、C1-8アルキル、C3-8シクロアルキルC1-4アルキル、アリールC1-4アルキルまたは式CnHxFyのフルオロアルキルであり、ここでnは1〜4の整数、xは0〜8の整数、yは1〜9の整数であり、そしてxとyの合計は2n+1であり;
R1は、水素またはヒドロキシであり;
R2は、置換もしくは非置換のアリール、アリールC1-4アルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキル、またはCHWOCOXであり;ここで、
Wは、水素またはC1-4アルキルであり;
Xは、C1-4アルキル、C3-8シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、NHYまたはOYであり;そして、ここで
Yは、C1-4アルキル、C3-8シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)
の化合物、その光学異性体、立体異性体、および互変異性体、ならびにそれらの製薬的に許容しうる塩、溶媒和物または誘導体と、1またはそれ以上の製薬的に許容しうる担体、希釈剤または賦形剤とを組み合わせて含む、医薬組成物。
【請求項12】
式Iの化合物が、
Rは、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘプチルメチル、シクロヘキシルエチル、シクロヘキシルプロピル、ベンジル、およびフェニルエチルであり;
R1は、ヒドロキシであり;
R2は、置換もしくは非置換のフェニル、ベンジル、オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラニル、5-メチル-[1,3]ジオキソール-2-オン-メチル、またはCHWOCOXであり;ここで、
Wは、水素、メチル、エチル、n-プロピルまたはsec-ブチルであり;
Xは、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、シクロヘキシルまたはOYであり;そして、ここで
Yは、メチル、エチルまたはn-プロピルである、
請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
化合物が、
((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸3-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソベンゾフラン-1-イルエステル;
2,2-ジメチル-プロピオン酸((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィノイルオキシメチルエステル;
((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸エトキシカルボニルオキシメチルエステル;
((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸フェニルエステル;
((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸ベンジルエステル;
(3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸5-メチル-2-オキソ-[1,3]ジオキソール-4-イルメチルエステル;または
それらの製薬的に許容しうる塩、水和物もしくは溶媒和物から成る群から選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
治療有効量の、式I:
【化4】

(式中、
Rは、C1-8アルキル、C3-8シクロアルキルC1-4アルキル、アリールC1-4アルキルまたは式CnHxFyのフルオロアルキルであり、ここでnは1〜4の整数、xは0〜8の整数、yは1〜9の整数であり、そしてxとyの合計は2n+1であり;
R1は、水素またはヒドロキシであり;
R2は、置換もしくは非置換のアリール、アリールC1-4アルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキル、またはCHWOCOXであり;ここで、
Wは、水素またはC1-4アルキルであり;
Xは、C1-4アルキル、C3-8シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、NHYまたはOYであり;そして、ここで
Yは、C1-4アルキル、C3-8シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)
の化合物、その光学異性体、立体異性体、および互変異性体、ならびにそれらの製薬的に許容しうる塩、溶媒和物または誘導体と、場合によって1またはそれ以上の製薬的に許容しうる担体、希釈剤または賦形剤と組み合わせて患者に投与することを含む患者の、鬱病、双極性障害、不安障害、精神性症状、認識障害、統合失調症、神経障害性疼痛および線維筋肉痛から成る群から選択される、疾患を治療する方法。
【請求項15】
式Iの化合物が、
Rは、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘプチルメチル、シクロヘキシルエチル、シクロヘキシルプロピル、ベンジル、およびフェニルエチルであり;
R1は、ヒドロキシであり;
R2は、置換もしくは非置換のフェニル、ベンジル、オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラニル、5-メチル-[1,3]ジオキソール-2-オン-メチル、またはCHWOCOXであり;ここで、
Wは、水素、メチル、エチル、n-プロピルまたはsec-ブチルであり;
Xは、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、シクロヘキシルまたはOYであり;そして、ここで
Yは、メチル、エチルまたはn-プロピルである、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
疾患が鬱病である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
鬱病が、大鬱病エピソード、気分変調、憂鬱病、季節性情動障害、ならびに月経前緊張症および思春期に起因する鬱病から成る群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
疾患が不安障害である、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
不安障害が、パニック発作、社会恐怖症、強迫神経症、心的外傷後ストレス障害および全般性不安障害から成る群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
疾患が精神性症状である、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
精神性症状が、憤怒、拒絶過敏症および心的または身体的エネルギーの欠如から成る群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
精神性症状が、月経前障害と関連している、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
月経障害と関連している精神性症状が、憤怒、拒絶過敏症および心的または身体的エネルギーの欠如から成る群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
疾患が、神経障害性疼痛である、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
疾患が、線維筋肉痛である、請求項14に記載の方法。
【請求項26】
化合物が、
((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸3-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソベンゾフラン-1-イルエステル;
2,2-ジメチル-プロピオン酸((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィノイルオキシメチルエステル;
((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸エトキシカルボニルオキシメチルエステル;
((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸フェニルエステル;
((R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸ベンジルエステル;
(3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル)-シクロヘキシルメチル-ホスフィン酸5-メチル-2-オキソ-[1,3]ジオキソール-4-イルメチルエステル;または
それらの製薬的に許容しうる塩、水和物もしくは溶媒和物から成る群から選択される、請求項14に記載の方法。

【公表番号】特表2008−530125(P2008−530125A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555299(P2007−555299)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/004938
【国際公開番号】WO2006/086734
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(500137976)アベンティス・ファーマスーティカルズ・インコーポレイテツド (76)
【Fターム(参考)】