説明

置敷化粧床材用基材、置敷化粧床材および置敷化粧床材用基材の連結方法

【課題】隣接する置敷化粧床材との連結、分離が容易であるとともに、敷設面を加工する必要がない置敷化粧床材、その置敷化粧床材用基材および置敷化粧床材用基材の連結方法を提供することを目的としている。ことを特徴としている。
【解決手段】 非磁性材料からなり、周面の全ての面にそれぞれ少なくとも1つの凹部を有する平板状をした基材本体と、この凹部の少なくとも底部に沿って設けられた磁性材料層とを備える置敷化粧床材用基材と、この置敷化粧床材用基材の厚み方向の1面を覆うとともに、置敷化粧床材用基材の凹部に臨む部分が磁性材料で形成された表面化粧材と、前記凹部内に収容され、一端が凹部内の磁性材料層に磁着され、他端が前記表面化粧材の磁性材料形成部に磁着される磁性材料からなる連結部材とを少なくとも備える置敷化粧床材とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベランダ床や地面等に置き敷かれて化粧床構造を構築することができる置敷化粧床材、その置敷化粧床材用基材および置敷化粧床材用基材の連結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図5に示すように、従来の置敷化粧床材100は、例えば、床材本体110の隣接する2辺に沿って雌型嵌合部120が所定ピッチで設けられ、床材本体110の他の2辺に沿って雄型嵌合部(図では示されていない)が雌型嵌合部120と同じピッチで設けられ、隣接する置敷化粧床材100の雌型嵌合部120に雄型嵌合部を嵌合してつぎつぎに連結して建築物のベランダ床や地面等の敷設面に敷き並べられるようになっている。
【0003】
また、雄型嵌合部を雌型嵌合部120に嵌合させるだけでは、ベランダ床や地面等の敷設面から浮き上がる方向の力が置敷化粧床材100に作用すると、各置敷化粧床材100の位置を保持できず、意図しない一部の置敷化粧床材100の浮き上がりや連結部が分離する不具合が発生するため、多くの置敷床化粧材では、雄型嵌合部が雌型嵌合部120に一旦嵌合すると、抜けにくい形状の嵌合連結構造とされている。
【0004】
しかしながら、上記のように抜けにくい構造にすると、当然、連結作業時および分離作業時に相当の力を必要とするため、敷設作業は容易でない上、連結・分離を繰り返すと嵌合部分の磨耗や部材の変形により、連結不良や踏面の高さ不揃いなどの不具合を生じやすい。
【0005】
また、雌型嵌合部120と雄型嵌合部とが交互に組み合う方向性がある構造であるため、置敷作業前に置敷開始位置や置敷手順をあらかじめ決めておく必要があり、敷設作業を難しくしている。
【0006】
さらに、雄型嵌合部を雌型嵌合部120に上方から嵌合させるようになっているので、一部の床化粧材の取替えや取外しを行なう場合、連結部を分離するには隣接した置敷化粧床材100も同時に持ち上げて作業する必要がある。
【0007】
一方、床下地材の上面および床仕上げ材の下面のいずれか一方にゴム磁石等の永久磁石を固定し、他方にこの永久磁石が吸着する磁性体を固定しておき、床下地材上に床仕上げ材を敷き並べるとともに、永久磁石を磁性体に吸着させることによって床仕上げ材を床下地材上の所定位置に容易に固定できるとともに、容易に床仕上げ材をはがせるようにした床仕上げ材の敷設方法がすでに提案されている(特許文献1、2参照)。
【0008】
そこで、本発明の発明者は、置敷化粧床材においても、上記のような構造とすれば、敷設作業や取り外し取替え作業が容易になると考えられる。
しかし、置敷化粧床材は、施工済のベランダ床等の敷設面上に置いて使用するものであり、敷設された複数の置敷床化粧材相互の連結により置敷床化粧材が敷設された位置に保持されて、容易に化粧床を構築できるようになっている一方、撤去した後に、敷設面に傷や加工、改造、接着、粘着材の付着跡などが残ると不都合を生じる場所で使用することを目的としている。したがって、上記床仕上げ材の敷設方法のように、敷設面に永久磁石あるいは磁性体片を埋め込むことができないことは勿論、永久磁石あるいは磁性体片の基材または固定部材をねじ、釘や接着剤などを使用して敷設面に固定することは不具合の原因となる。
【0009】
【特許文献1】特開2000−336903号公報
【特許文献2】特開2006−57340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みて、隣接する置敷化粧床材との連結、分離が容易であるとともに、敷設面を加工する必要がない置敷化粧床材、その置敷化粧床材用基材および置敷化粧床材用基材の連結方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明にかかる置敷化粧床材用基材は、非磁性材料からなり、周面の全ての面にそれぞれ少なくとも1つの凹部を有する平板状をした基材本体と、この凹部の少なくとも底部に沿って設けられた磁性材料層とを備えることを特徴としている。
【0012】
本発明にかかる置敷化粧床材は、上記本発明の置敷化粧床材用基材と、この置敷化粧床材用基材の厚み方向の1面を覆うとともに、置敷化粧床材用基材の凹部に臨む部分が磁性材料で形成された表面化粧材と、前記凹部内に収容され、一端が凹部内の磁性材料層に磁着され、他端が前記表面化粧材の磁性材料形成部に磁着される磁性材料からなる連結部材とを少なくとも備えることを特徴としている。
【0013】
また、本発明の置敷化粧床材は、置敷化粧床材用基材の厚み方向に直交する1面を覆うとともに、置敷化粧床材用基材の凹部に臨む部分が磁性材料で形成された少なくとも1枚の側面化粧材と、前記凹部内に収容され、一端が凹部内の磁性材料層に磁着され、他端が前記側面化粧材の磁性材料形成部に磁着される磁性材料からなる連結部材とをさらに備えていても構わない。
【0014】
本発明にかかる置敷化粧床材用基材の連結方法は、本発明の置敷化粧床材用基材の凹部内に磁性材料からなる連結ロッドの一端部を挿入し、凹部内の磁性材料層に磁着させた状態で、凹部外に突出する連結ロッドの他端部を連結される置敷化粧床材用基材の対応する凹部内に挿入し、この凹部内の磁性材料層に連結ロッドの他端を磁着させることを特徴としている。
また、本発明において、磁性材料とは、永久磁石を含む鉄等の強磁性体を意味し、永久磁石はゴム磁石でも構わない。
置敷化粧床材用基材の基材本体の材質としては、特に限定されないが、たとえば、 ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルやその他の熱可塑性樹脂等の合成樹脂、タイル、木質材料等が挙げられ、合成樹脂が好ましい。
表面化粧材および側面化粧材は、少なくとも凹部に臨む部分が磁性材料で形成されていれば、その他の部分の材質は特に限定されない。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明にかかる置敷化粧床材用基材は、非磁性材料からなり、周面の全て面にそれぞれ少なくとも1つの凹部を有する平板状をした基材本体と、この凹部の少なくとも底部に沿って設けられた磁性材料層とを備えるので、置敷化粧床材用基材の凹部内に磁性材料からなる連結ロッドの一端部を挿入し、凹部内の磁性材料層に磁着させた状態で、凹部外に突出する連結ロッドの他端部を連結される置敷化粧床材用基材の対応する凹部内に挿入し、この凹部内の磁性材料層に連結ロッドの他端を磁着させることで隣接する
置敷化粧床材用基材同士を容易に連結することができる。また、連結された一方の置敷化粧床材用基材を他方の置敷化粧床材用基材から離れる方向に引っ張れば、容易に分離することができる。
【0016】
また、本発明にかかる置敷化粧床材は、上記本発明の置敷化粧床材用基材と、この置敷化粧床材用基材の厚み方向の1面を覆うとともに、置敷化粧床材用基材の凹部に臨む部分が磁性材料で形成された表面化粧材と、前記凹部内に収容され、一端が凹部内の磁性材料層に磁着され、他端が前記表面化粧材の磁性材料形成部に磁着される磁性材料からなる連結部材とを少なくとも備えるので、踏面である表面化粧材のみを容易に交換でき、模様替えや表面化粧材の劣化による取替え時に置敷化粧床材用基材の交換が不要となる。
さらに、置敷化粧床材が置敷化粧床材用基材の厚み方向に直交する1面を覆うとともに、置敷化粧床材用基材の凹部に臨む部分が磁性材料で形成された少なくとも1枚の側面化粧材と、前記凹部内に収容され、一端が凹部内の磁性材料層に磁着され、他端が前記側面化粧材の磁性材料形成部に磁着される磁性材料からなる連結部材とを備えていると、置敷化粧床材の側面部が外部に露出する場合でも見栄えのよい状態に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1および図2は、本発明にかかる置敷化粧床材の連結状態の1例をあらわし、図3は連結状態の他の例をあらわしている。
【0018】
図1および図2に示すように、置敷化粧床材1が、置敷化粧床材用基材(以下、「基材」とのみ記す)2と、連結部材3aと、連結ロッド3bと、表面化粧材4とを備えている。
【0019】
基材2は、基材本体21と磁性材料層22とを備えている。
基材本体21は、非磁性材料であるポリエチレン樹脂で形成されていて、平面視ほぼ正方形をしているとともに、厚み方向両面のコーナー部が全周にわたって切り欠かれ、この切欠部23に後述する表面化粧材4の係止部41aが入り込むようになっている。
また、基材本体21は、厚み方向の両面にそれぞれ9つの凹部24が縦横3つずつ碁盤の目状に穿設されているともに、厚み方向に直交する四方の側面にそれぞれ3つの凹部24が穿設されている。
【0020】
磁性材料層22は、鉄等の磁性材料からなる凹部24に嵌り込む大きさの有底筒状体が凹部24に嵌め込まれ接着一体化することによって形成されている。
表面化粧材4は、合成樹脂製の表面化粧材本体41と、磁性材料からなる磁性材料形成部としての9つの吸着板42とを備えている。
【0021】
表面化粧材本体41は、周縁部が基材2側に向かって折り返されて、係止部41aが形成されたほぼ正方形の皿状をしている。
吸着板42は、表面化粧材本体41の基材側の面と面一なるように、表面化粧材本体41に設けられた嵌合凹部にはめ込まれた状態で接着剤を介して表面化粧材本体41に一体化されている。
【0022】
連結部材3aは、図1および図4(a)に示すように、磁性材料からなる筒体31の内部に円柱状の永久磁石32が嵌め込まれて形成され、その高さh1が磁性材料層22の深さと同じ寸法になっている。
連結ロッド3bは、図1および図4(b)に示すように、磁性材料からなる筒体31の内部に円柱状の永久磁石32が嵌め込まれて形成され、その高さh2が磁性材料層22の深さの2倍の寸法になっている。
【0023】
そして、この置敷化粧床材1は、たとえば、以下のようにして、ベランダ床等の敷設面5上に敷設される。
すなわち、図1および図2に示すように、連結する一方の基材2の側面に設けられた凹部24の底の磁性材料層22部分に連結ロッド3bの端面が接するまで連結ロッド3bの一端部を凹部24内に挿入し、連結ロッド3bを永久磁石32の磁力によって、磁性材料層22に連結ロッド3bの他端部が基材2の側面から突出した状態に磁着させたのち、他方の基材2のいずれかの側面の凹部24内に連結ロッド3bの他端面が凹部24の底の磁性材料層22部分に接するように挿入し、連結ロッド3bに他端部を磁性材料層22に磁着させることによって隣接する2つの基材2を連結する。
【0024】
また、このとき、連結ロッド3bの高さh2が磁性材料層22の深さの2倍の寸法になっているので、この基材2の側面同士が当接状態となる。
基材2は、上記のようにしてベランダ床等の敷設面5上につぎつぎに連結された状態で敷設される。
【0025】
基材2に上面の全ての凹部24に、連結部材3aを、その一方の端面が磁性材料層22の底に当接するまで嵌め込む。連結部材3aの高さh1が磁性材料層22の深さと同じであるので、連結部材3aの他端は、この嵌め込みによって、基材2の上面と略面一になる。
こののち、表面化粧材4をその係止部41aが基材2の切欠部23に嵌り込むように基材2上に被せる。これにより表面化粧材4の吸着板42が連結部材3aの他端面に磁着される。すなわち、連結部材3aによって表面化粧材4が基材2に固定される。
【0026】
最後に、もっとも外側の基材2の側面の凹部24に連結ロッド3bの一端部を嵌め込み、基材の側面から突出した連結ロッド3bの他端部を連結された長尺の側面化粧材6の基材2と同様の凹部24にはめ込むことによって、側面化粧材6を固着する。
【0027】
また、この置敷化粧床材1は、図3に示すように、上下の基材2の積み重ね枚数を徐々に増やし、階段状の連結構造とすることもできる。なお、上下の基材2は、連結ロッド3bによって連結される。
【0028】
以上のように、この置敷化粧床材1は、基材2同士、表面化粧材4あるいは側面化粧材6と基材2とが永久磁石の力によって磁着されるだけであるので、連結・分離を容易に行える。
連結ロッド3bが連結される両方の基材2の凹部24に嵌り込むので、連結ロッド3bが位置決めピンとして作用し相互の位置ずれを防止できる。
【0029】
さらに、連結部材3aおよび連結ロッド3bは、磁性材料からなる筒体31内に永久磁石32がはめ込まれて形成されているので、永久磁石32の破損および永久磁石32単体で長時間放置した場合の磁力の減退を防止できる。
また、表面化粧材4および側面化粧材6が基材2に磁着されるだけであるので、表面化粧材4および側面化粧材6が傷んだりしても、基材2を交換する必要なく、表面化粧材4あるいは側面化粧材6のみを交換すればよいので、模様替えの必要が生じた場合でも着脱自在になっているので、廃棄物が少なくて済み、資源的、経済的に有利である。
【0030】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。たとえば、上記の実施の形態では、置敷化粧床材用基材が平面視ほぼ正方形であったが、長方形、三角形や五角形以上の多角形をしていても構わない。
上記の実施の形態では、隣接する基材がその側面同士を当接させた状態で連結されるようになっていたが、連結ロッドを長くして隙間が開くような連結構造とすることもできる。
【0031】
上記の実施の形態では、ベランダ床に基材を直接置いていたが、たとえば、連結ロッドを基材の下面側の凹部内に挿入して脚部とし、基材と敷設面との間に排水用の隙間を設けるようにしても構わない。
また、車両や船舶などで、床が磁性材で成形されている場合には、連結部材あるいは連結ロッドを基材の下面側の凹部内に挿入して、基材と敷設面を連結し、固定しても構わない。
上記の実施の形態では、凹部の内面全面に渡って磁性材料層が設けられていたが、凹部の底面のみでも構わない。
上記の実施の形態では全ての凹部に連結部材あるいは連結ロッドが挿入されていたが、間欠的に配置させるようにしても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明にかかる置敷化粧床材の連結状態の1例をあらわす断面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】本発明にかかる置敷化粧床材の連結状態の他の例をあらわす断面図である。
【図4】同図(a)は連結部材、同図(b)は連結ロッドの断面図である。
【図5】従来の置敷化粧床材の連結状態をあらわす斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1 置敷化粧床材
2 置敷化粧床材用基材
21 基材本体
22 磁性材料層
24 凹部
3a 連結部材
3b 連結ロッド
4 表面化粧材
42 吸着板(磁性材料形成部)
6 側面化粧材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性材料からなり、周面の全ての面にそれぞれ少なくとも1つの凹部を有する平板状をした基材本体と、この凹部の少なくとも底部に沿って設けられた磁性材料層とを備えることを特徴とする置敷化粧床材用基材。
【請求項2】
請求項1に記載の置敷化粧床材用基材と、
この置敷化粧床材用基材の厚み方向の1面を覆うとともに、置敷化粧床材用基材の凹部に臨む部分が磁性材料で形成された表面化粧材と、
前記凹部内に収容され、一端が凹部内の磁性材料層に磁着され、他端が前記表面化粧材の磁性材料形成部に磁着される磁性材料からなる連結部材と
を少なくとも備えることを特徴とする置敷化粧床材。
【請求項3】
置敷化粧床材用基材の厚み方向に直交する1面を覆うとともに、置敷化粧床材用基材の凹部に臨む部分が磁性材料で形成された少なくとも1枚の側面化粧材と、
前記凹部内に収容され、一端が凹部内の磁性材料層に磁着され、他端が前記側面化粧材の磁性材料形成部に磁着される磁性材料からなる連結部材と
を備える請求項2に記載の置敷化粧床材。
【請求項4】
置敷化粧床材用基材の凹部内に磁性材料からなる連結部材の一端部を挿入し、凹部内の磁性材料層に磁着させた状態で、凹部外に突出する連結部材の他端部を連結される置敷化粧床材用基材の対応する凹部内に挿入し、この凹部内の磁性材料層に連結部材の他端を磁着させる請求項1に記載の置敷化粧床材用基材の連結方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−114804(P2009−114804A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−291579(P2007−291579)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】