説明

羊水内環境の非侵襲性評価

胎児の健康状態および成熟度、ならびに羊膜の完全性および健康状態の評価は、膣液のタンパク質プロファイリングによって行い、それにより妊娠中の各種の異常状態が識別される。本手法は、妊娠中に発生する羊膜内/胎児炎症の期間および/規模を測定する手段も提供する。本発明は、羊膜内環境を評価するための非侵襲的方法を提供し、該方法は実施するのが簡単および迅速であり、正確である。本発明の1つの実施形態において、方法は、通例、膣を綿棒で拭取ることによって妊娠被験体から膣サンプルを得ることを含む。綿棒は液体、通例は緩衝溶液に挿入して、分析用サンプルを供給させる。サンプル中での複数のバイオマーカーの存在または非存在が羊膜内環境の状態を示すかどうかを判定するために、サンプルを分析する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、胎児の健康状態および成熟度ならびに羊膜の完全性および健康状態を評価する分野に関する。さらに詳細には、それは妊娠中の各種の異常状態を識別する非侵襲性方法に関し、妊娠中に発生する羊膜内/胎児炎症の期間および/規模を測定する手段も提供する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
破水(ROM)は、臨月の妊娠女性の約10%で分娩の開始に先行する。自然歴は、これらの女性の大半、約60%が破裂の24時間以内に自発的に分娩を開始し、95%超が72時間以内に出生することである。他方、前期破水(PROM)を有する患者は通例、漏出液、おりもの、膣からの出血、または骨盤圧迫の訴えを示すが、頚部展退または拡張を生じさせる子宮収縮がないため、分娩状態にない。
【0003】
臨月または臨月近くの、そして肺成熟を有する胎児の状況では、PROMを持つ女性の管理に関する重要な臨床上の問題は、自発分娩を待つか、分娩を誘発するかということである。母親と胎児の両者にとっての主な危険は、子宮内感染であり、リスクの規模はROMの期間と共に増大する。経膣分娩の見込みは通常、分娩開始が自発的であるが、待機的管理とは対照的に、分娩誘発が帝王切開分娩率を上昇させることなく、絨毛羊膜炎のリスクを減少させる証拠があるときに最大である。臨床上無症候性の感染を有する患者が識別できる場合、これらの症例においてさらになお帝王切開率を低下させることが可能でありうる。
【0004】
早期前期破水(PPROM)は、妊娠37週未満の胎膜の破裂を指す。PPROMは、すべての早期分娩の約30%、28週未満の自発的早期分娩の70%、そして周産期死亡の10%に関連している。広範囲に及ぶヒトおよび基本研究にもかかわらず、早期出生の原因論は未知のままであり、無数の非標的化療法にもかかわらず、過去20年間に渡って頻度は実際に上昇している。臨床レベルでは、早期出生の後に、無傷膜を有する早期分娩、またはPPROMが先行する後産が起こる。
【0005】
子宮収縮および無傷膜を示す女性の早期出生を防止するための現在の治療成果は、子宮収縮を抑制しようとするいわゆる子宮収縮抑制薬に限定されているが、この手法の効力は無作為化試験においては期待外れであり、プラセボと比較して約48時間のみの妊娠延長をもたらした。早期分娩の管理は、膜が無傷であり、臨床的な絨毛羊膜炎がない場合、PPROMおよび/または絨毛羊膜炎を伴う早期分娩の管理よりも、産科医にとってはるかに困難でない。両方の例における目標は、新生児罹患率および死亡率が最低である時点まで妊娠を延長させることであるが、潜伏間隔(破水から分娩の時間)が長くなればなるほど、胎児および母体の合併症、特に感染の危険がより高くなるため、PPROMを持つ女性にとっての意思決定プロセスは、ファウスト的なスタンスを取ることがある。
【0006】
PPROMは、子宮内羊膜腔の前から存在する微生物感染の徴候であることが多く、微生物感染は破水時のPPROMの全症例の38%に見られ、おそらく70%には妊娠28週以前にPPROMが発生している。PPROMにおける臨床的に明らかな絨毛羊膜炎の出現率は、8〜28%の範囲であるが、母体の敗血症のリスクはわずか2%である。PPROMは、子宮内膜炎、敗血症性血栓性静脈炎および創傷感染などの母体の分娩後感染のリスクも上昇させる。
【0007】
未熟、感染、臍帯脱出、骨格奇形、肺形成不全および周産期死亡率全体の上昇を含む、PPROMによる重大な胎児に与える影響がある。分娩が25−28週、29−32週および33−34週でそれぞれ起こったときに、周産期死亡率は、44%、11%および5%に近づく。主に母体および胎児感染に対する懸念から、PPROMはわずか20年前までは、妊娠期間とは無関係に応急分娩の徴候と決まって見なされた。さらに最近では、32週以前のPPROMの管理は、さらに強力な抗生剤の入手可能性および未熟のリスクと比較した感染の真のリスクの理解改善によって、分娩を開始する感染のサインを待つ期待手法に進化してきた。産科医の目標はなお、感染のリスクを最小限にしながら妊娠を延長させるリスク:便益比の最適化である。
【0008】
PPROMを有する患者を管理する産科医にとっての主要なフラストレーションおよび制限は、感染または炎症のサインについて子宮内環境を直接および縦方向に評価できないことである。多くの臨床現場において、PPROMを有する女性は、特に胎児が生存度限度以下である場合(23−24週)には入院していない。むしろ女性は、体温を毎日3回監視して、体温が38℃を超えた場合に病院に報告するように指導される。絨毛羊膜炎の現在の診断は、疾患(たとえば38℃を超える母体体温、胎児頻脈、基底部圧痛、悪臭性または膿性のおりもの、母体頻脈)の自然な発展の後期に発生する、臨床的なサインおよび症状のみに基づいている。
【0009】
一部の三次医療センターにおいて、羊水分析の経腹壁羊水穿刺は、管理上の意思決定を行う前に羊膜内感染を調べるために提唱されている。羊水サンプルに対して、通常、2群の試験が実施される。第一の種類は、ほぼすべての病院で利用可能であり、短時間で結果を与えるグラム染色、羊水グルコースおよび白血球カウントなどの迅速試験を含む。結果としてこれらの試験は、臨床状況での管理上の意思決定に影響を及ぼす最大の可能性を有する。未遠心分離羊水に対する陽性グラム染色結果、20mg/dL未満のグルコース濃度、およびWBCの上昇はすべて、羊膜内感染を示唆すると見なされる。
【0010】
しかしながらこれらの試験は、羊膜腔の微生物侵入の検出と組合せたときでさえ、感受性および特異性に乏しい。グラム染色で検出されず、グルコース濃度を低下させないマイコプラズマおよびウレアプラズマによる子宮内感染の高い出現率がある。
【0011】
臨床試験の第二の種類は、好気性または嫌気性生物あるいはマイコプラズマ種についての羊水培養より成る。これらの試験は、最終結果まで1週間以上かかる。遅延のために、それらが管理を変化させることはめったにない。遅延を回避するために、炎症メディエータ、たとえばインターロイキン6(IL−6)および好中球コラゲナーゼ(MMP−8)の測定についてELISAによってしばしば実施された羊水に対する複数の迅速試験の1つを提案したものがいた。しかしながら、これらの試験は、特殊な訓練および困難な実験手順を必要とし、それでも臨床管理に影響を及ぼす時間的に十分な方法で完了されないため、いずれも臨床慣行では通常使用されていない。これらの試験結果が矛盾することは珍しくなく、そのことは最良の臨床上の意思決定を選択することに混乱をもたらす。その上、早期PROMのために実施された約20%の羊水穿刺が臨床的に有用なサンプルを得ることに失敗している。これらの制限の結果として、大半の産科医は、結果が管理に影響を及ぼしにくいと理由付けて、羊水穿刺を実施しない。
【0012】
破水の診断を確認または論破することは、毎日の、各分娩群に対する重要な行為である。膣の評価はなお、高価であり、冗長な、再現性が乏しい試験の成果である。存在する場合は、子宮口から出た透明液の描出(貯留)が破水の最も信頼できるサインである。貯留が明確でない場合、あるいは妊娠が羊水過少または無羊水によって悪化している場合、一滴の膣液をスライドガラスに塗抹して、スライドガラス上で乾燥させ、光学顕微鏡で検分する(シダ試験)。塩化ナトリウム、タンパク質、および炭水化物の高い相対濃度によって、羊水は結晶化して「シダ様」のパターンを形成することができる。あるいは、または加えて、一滴の羊水をニトラジン紙の乾燥片に置くことができる(ニトラジン試験)。ニトラジン試験は、羊水が正常な酸性膣液よりはるかに高い7−7.5のpHを有するという事実に基づくpH測定である。羊水の存在は、ニトラジン紙を青色に変化させる。慎重な履歴は、ニトラジンおよびシダ試験の結果と共に破水の診断時に91%の感受性および96%の特異性を有すると言われているが、判断基準はない。さらに早期PROMでは、偽陰性試験が一般的である。
【0013】
シダ試験およびニトラジン試験の両方は迅速および安価であるが、偽陽性結果は重度のおりもの、血液、頚管粘液、精液、アルカリ尿または石鹸による汚染の結果として発生する。偽陰性結果は、少量の液体が漏出したときに発生し、長期破水に共通する(24時間以上)。診断が問題でとどまっている場合、羊水指数(AFI)が場合により考慮されるが、低羊水のその他の多くの理由があり、間欠性漏出は正常な液体積と関連している。
【0014】
疑いがなお存在する場合、滅菌食塩水で希釈したインジゴカルミン染料5mLを羊膜腔内に経腹壁点滴して、膣タンポンまたは生理用ナプキンの染色が液の漏出を示す(羊水染料試験)。この決定的試験は侵襲性であり、母体の不快感、臍帯の偶発的な穿刺および以前は無傷であった膜の破裂も引き起こすことがある。偽陽性結果は、インジゴカルミンが腎臓によって排出されたときに生理用ナプキンの尿による汚染の次に発生して、尿の青色の変色も引き起こすことがある。
【0015】
PROMが疑われる女性の膣液における、羊水中に大量に存在するあるタンパク質の高濃度を示す値は、PROMの存在を評価する試験の基準を成す。免疫反応性胎児フィブロネクチン、インスリン様成長因子結合タンパク質1、α−フェトプロテイン、プロラクチン、およびヒトプラセンタラクトゲンはもちろんのこと、ジアミノオキシダーゼ酵素活性もすべて膣液中で混合結果によって診断ツールとして試験を行った。
【0016】
PROMを予測する能力に加えて、羊膜内環境にて炎症を評価できることはきわめて有用である。長年にわたり内科医らは、早期分娩に関連する罹患率および死亡率が早期妊娠期間の直接的な結果であると仮定していた。しかしながら、多くの早期分娩が胎児の疾病のために発生し、罹患率の主因であるのは脳性麻痺などの疾病であることが今や既知である。これらの疾病の多くは、共通経路として炎症を共有し、本発明者らは、分娩を引き起こすのが炎症であることを発見した。
【0017】
利用可能なすべての子宮収縮抑制剤が、プラセボと比較して妊娠を2、3日以上延長させることができない。ある側面において、胎児が疾病の場合に子宮内での時間を延長することは一層悪いことであるため、これは特質でありうる。
【0018】
胎児がもし耐えられるとして、炎症反応をどれくらいの時間耐えられるかは不明である。おそらく胎児は、炎症からの損傷が発生する前に分娩されれば、生存の可能性が高まるであろう。このことは、炎症の臨床サインが存在する前の、非常に早期段階での炎症の測定手段を必要とする。子宮外で胎児が生存可能である前に炎症が発生した場合、炎症の早期検出は、酸素フリーラジカル毒性を低減するためにフリーラジカルトラップを投与することなどによって、子宮内の胎児の処置を可能にする。これらの物質の一部は胎盤を通過し、それゆえ胎児の処置は、薬剤を妊娠女性に投与することによって実施できる。胎児を分娩する決定がなされた場合、炎症に関する幼児の処置は、炎症を起こした早期新生児がもはやリスクにさらされていないと信じる理由がないため、ただちに開始することができる。実際に、複数の手法の研究が、刺激が進行中の炎症プロセスを、刺激を除去したときでさえ引き起こしうるということを示している。早期識別は出生後療法の時宜を得た開始を可能にするにもかかわらず、現在、新生児の炎症の証拠を識別する容易な試験はない。
【0019】
他方、炎症がある時間進行しているか、慢性である場合、特に胎児がすでに損傷を受けている場合には、未熟はより大きなリスクである。しかしながら現在、胎児の炎症を判定する試験はなく、さらに詳細には、短期または現在の炎症および長期または慢性の炎症を区別できる試験がない。どの胎児に炎症が起きているか、そしてどの胎児に起きていないか、炎症の期間および規模を識別する手段がないため、早期介入は可能ではない。
【0020】
産科医は、妊娠の結果について考えられる法的責任を取る。知識がなかったため、産科医は悪い結果について決まって責められてきた。それゆえ産科医による分娩前に存在するハイリスク状況を識別する手段が、非常に望ましい。
【0021】
PROMおよび他の羊膜内異常を評価できる試験、特に羊膜内/胎児炎症の期間および/または規模を評価できる試験を提供することが非常に望ましい。試験は、高度に正確であると共に、サンプルを離れた試験所に送付する必要なしに、病院にて簡単および迅速に実施できるべきである。シダ試験およびニトラジン試験はPROMの迅速および安価な指標であるが、他の羊膜内異常の指標ではなく、高度に正確ではない。αフェトプロテインまたはインスリン様成長因子結合タンパク質−1に対する固定化抗体を含浸させた紙片を使用した迅速な試験が開発されている。それらはニトラジン試験およびシダ試験と比較してより高価であるが、診断の精度を改善せず、臨床的に使用されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
(発明の要約)
この分野における従来手法の上記の欠点に対処するために、本発明は、羊膜内環境を評価するための非侵襲的方法を提供し、該方法は実施するのが簡単および迅速であり、正確である。本発明の1つの実施形態において、方法は、通例、膣を綿棒で拭取ることによって妊娠被験体から膣サンプルを得ることを含む。綿棒は液体、通例は緩衝溶液に挿入して、分析用サンプルを供給させる。サンプル中での複数のバイオマーカーの存在または非存在が羊膜内環境の状態を示すかどうかを判定するために、サンプルを分析する。膣サンプルの評価による結果は、被験体に関する診断または予後判定を通知する。別の実施形態において、サンプルを入手および分析するステップは、少なくとも2回反復される。
【0023】
本発明の方法は、ELISAを含んでもよいが、さらに好ましくは、表面増強レーザー/脱離イオン化(SELDI)によって実施される質量分析を含む。脱離イオン化の技法は、複数のバイオマーカーを評価する場合に特に好ましい。SELDIを使用する場合、方法は、膣サンプルを少なくとも1つの吸収材、たとえば疎水性吸着材またはカチオン交換吸収材を含むバイオチップに塗布することを含む。バイオチップは質量分析にかけて、膣サンプルの質量分析マイクログロブリンのデータを得る。これらのデータは、スペクトルから抽出した情報を解析するアルゴリズムを含むソフトウェアによって処理する。それゆえソフトウェアアルゴリズムは、本発明に従って、バイオマーカーの少なくとも1つに関するデータに対して調節されたパターン認識解析を実施する。
【0024】
各種の状態を示すバイオマーカーを決定できる。たとえば胎膜の破裂、羊膜内感染、羊膜内炎症、胎児肺成熟を示すバイオマーカーの存在または非存在が判定できる。1つの実施形態において、バイオマーカーは、αフェトプロテイン、胎児フィブロネクチン、インスリン様成長因子結合タンパク質−1、プロラクチンおよびヒトプラセンタラクトゲン、およびその断片からなる群より選択される。他のバイオマーカーは、β−2−マイクログロブリンおよびシスタチン−C、ならびにその断片を含む。なお他のバイオマーカーは、カルグラヌリンまたはディフェンシン、またはその断片である。
【0025】
次の膣サンプルを比較するベースラインを提供するために、妊娠中の早期に第一の膣サンプルを収集および解析することが好ましい。異常な臨床状態は、PROM、羊膜内感染、および羊膜内炎症を含む。次のサンプルが異常な臨床状態が存在することを示す場合、評価は処置のための勧告を含むことができる。処置は処置中に少なくとも1つの膣サンプルを評価することによって監視して、羊膜内環境の状態を示すバイオマーカーの膣サンプル内での存在または非存在を判定できる。結果に基づいて、抗生物質処置、早産防止薬処置、抗炎症剤処置、または抗酸化剤処置が推奨できる。あるいは分娩の誘発または帝王切開は、結果に基づいて推奨できる。この場合、膣サンプルは、胎児の健康状態および成熟度、特に胎児肺成熟を示すバイオマーカーについて分析できる。
【0026】
炎症を起こしている胎児と起こしていない胎児を識別するための、そして炎症の期間または規模を測定するための手段がなくては、早期介入は不可能である。したがって、本発明は、特に短期または最近の炎症と長期または慢性の炎症を区別するための、胎児炎症を判定する試験も提供する。
【0027】
それゆえ本発明の別の実施形態は、羊膜内または胎児炎症の期間および/または規模を評価することを含む。これは固体から膣サンプルを取得して、サンプルに、炎症を示す1つ以上の酸化またはカルボニル化タンパク質またはペプチドのサンプル中での存在または非存在を判定する分析を受けさせることによって決定できる。膣サンプルの評価による結果は再び、被験体に関する診断または予後判定を通知する。本発明のこの側面を実施するために、膣サンプルは、酸化またはカルボニル化タンパク質またはペプチドに含まれるジニトロフェノールによって処置できる。ELISAまたはSELDIによって実施した質量分析のどちらかを使用して、酸化またはカルボニル化タンパク質またはペプチドの存在を検出できる。たとえば酸化ペプチドまたはカルボニル化ペプチドのカルボニル総含有量は、本発明に従って、ペプチドをジニトロフェニルヒドラジンを用いて誘導体化することによって測定できる。
【0028】
上述の他の実施形態のように、この状況で利用できるSELDI分析は、バイオチップの使用を含み、分析は、膣サンプルについて入手した質量分析マイクログロブリンデータを、1つ以上の酸化またはカルボニル化タンパク質またはペプチドに関するデータに適合したパターン認識解析を実施する、スペクトルから抽出したデータを解析するアルゴリズムより成るソフトウェア解析にかけることを含む。好ましくは、第一の膣サンプルは、妊娠中の早期に収集され、次の膣サンプルを比較するベースラインを与える。
【0029】
炎症の存在の判定は、臨床医が処置勧告を計画するための重要なインプットを与える。処置は、前述に加え、これらの状況において適切である。炎症の臨床サインが存在する以前の非常に早期段階での炎症の検出は、適切な処置が実施される見込みを向上させる。胎児が子宮外で生存できる前に炎症が発生した場合、炎症の早期検出は、酸素フリーラジカル毒性を低減するためにフリーラジカルトラップを投与することなどによる、子宮内での胎児の処置を可能にする。これらの物質の一部は胎盤を通過するため、胎児の処置は、薬剤を妊娠女性に投与することによって実施できる。胎児を分娩する決定がなされた場合、炎症に関する幼児の処置は、ただちに開始できる。他方、炎症がある時間進行しているか、慢性である場合、特に胎児がすでに損傷を受けている場合には、未熟はより大きなリスクであり、妊娠を維持することが推奨されやすい。
【0030】
SELDI分析を使用して、酸化またはカルボニル化タンパク質またはペプチドの存在または非存在を検出する場合、膣サンプルはジニトロフェノールによって処置し、次に抗ジニトロフェノール抗体を含むバイオチップに塗布して、含まれたジニトロフェノール基に相当する、ジニトロフェノールによって処置していないサンプルと比較した分子量の変化に対して調節した質量分析を受けさせる。あるいはジニトロフェノール処置膣サンプルは、抗ジニトロフェノール抗体を含むバイオチップに塗布して、酸素の分子量に相当する、ジニトロフェノールによって処置していないサンプルと比較した変化すなわち約16Daに対して調節した質量分析を受けさせる。
【0031】
別の実施形態により、本発明は、時間に対して被験体の羊膜内環境の状態を調節する方法を提供する。この手法は、(i)被験体から採取した少なくとも2つの膣サンプルの質量分析によって生成されたスペクトルを提供することと、(ii)スペクトルからデータを抽出し、スペクトル中の少なくとも2つのマイクログロブリンに対して調節したパターン認識解析をデータに受けさせることと、を包含する。
【0032】
本発明のなお別の実施形態は、膣液サンプルから羊膜内環境の状態を示す少なくとも2つのバイオマーカーの存在を検出するためのキットに関し、キットは(a)分析のために質量分析計に挿入するのに適した基材と、(b)膣液サンプルを基材に塗布して、基材に質量分析を受けさせるための説明書とを含む。基材は、たとえば疎水性吸着材、カチオン交換吸着材、または抗ジニトロフェノール吸収材を有するバイオチップでもよい。キットは別の容器内に、標準として使用される純粋形態のある量のバイオマーカーをさらに含む。キットは、未結合物質を基材から除去するための洗浄溶液も含むことができる。
【0033】
本発明のさらなる実施形態は、膣液サンプルから羊膜内環境の状態を示す少なくとも1つの酸化ペプチドまたはカルボニル化ペプチドの存在を検出するためのキットである。このキットは、(a)ペプチドに結合する基材と、(b)膣液サンプルを基材に塗布して、基材に分析を受けさせるための説明書とを含む。基材はELISA基材でもよく、または分析のために質量分析計への挿入に適した基材でもよい。キットは別の容器に、標準として使用される純粋形態のある量の酸化ペプチドまたはカルボニル化ペプチドをさらに含む。キットは、未結合物質を基材から除去するための洗浄溶液も含むことができる。
【0034】
なお別の実施形態において、本発明は、膣液中に存在し、羊膜内環境の状態を示すバイオマーカーの同定を規定する。この点で方法は、(a)質量分光分析によって膣液サンプルをプロファイリングすることと、(b)質量分光分析によって羊水のサンプルをプロファイリングすることと、(c)(a)および(b)で得たプロファイルを比較して、羊水にも見出される膣液中のバイオマーカーを同定することとを含む。方法はまた、臨床状態への、羊水にも見出される膣液中のバイオマーカーの存在または非存在の相関も含む。この点での相関する臨床状態を例証するのは、破水、羊膜内感染、および羊膜内炎症である。
【0035】
また本発明の実施形態は、膣液中に存在し、羊膜内環境の状態を示すバイオマーカーを同定する代わりの方法である。この手法は、(a)正常妊娠を有する被験体からの第一の膣液サンプルを、質量分光分析によってプロファイリングすることと、(b)異常な臨床状態を特徴とする妊娠を有する被験体からの第二の膣液サンプルを、質量分光分析によってプロファイリングすることと、(c)膣液中のバイオマーカーの存在または非存在を、妊娠の臨床状態に相関させることとを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
定義
「気相イオン分析計」は、気相イオンを検出する装置を指す。気相イオン分析計は、気相イオンを供給するイオン源を含む。気相イオン分析計はたとえば、質量分析計、イオン移動度分光計、および総イオン電流測定装置を含む。「気相イオン分光法」は、気相イオンを検出するための、気相イオン分析計の使用を指す。
【0037】
「質量分析計」は、気相イオンの質量−電荷比に転換できるパラメータを測定する気相イオン分析計を指す。質量分析計は一般に、イオン源および質量分析器を含む。質量分析計の例は、飛行時間、磁場セクタ型、四重極フィルタ、イオントラップ、イオンサイクロトロン共鳴、静電セクタ型分析器およびこれらの混合である。「質量分析法」は、気相イオンを検出するための質量分析計の使用を指す。
【0038】
「レーザー脱離質量分析計」は、検体を脱着、揮発およびイオン化する手段としてレーザーを使用する質量分析計を指す。
【0039】
「タンデム質量分析計」は、イオン混合物中のイオンを含む、イオンのm/zベース同定または測定の2つの連続する段階を実施できる質量分析計を指す。この表現は、tandem−in−spaceでのイオンのm/zベース同定または測定の2つの連続する段階を実施することができる2つの質量分析器を有する質量分析計を含む。この表現は、tandem−in−timeでのイオンのm/zベース同定または測定の2つの連続する段階を実施することができる単一の質量分析器を有する質量分析計をさらに含む。この表現はそれゆえ、Qq−TOF質量分析計、イオントラップ質量分析計、イオントラップ−TOF質量分析計、TOF−TOF質量分析計、およびフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計、静電セクタ型−磁気セクタ型質量分析計、およびその組合せを明示的に含む。
【0040】
「質量分析器」は、気相イオンの質量−電荷比に転換できるパラメータを測定する手段を含む質量分析計のサブアセンブリを指す。飛行時間型質量分析計では、質量分析器は、イオン光学アセンブリ、フライトチューブ、およびイオン検出器を含む。
【0041】
「イオン源」は、気相イオンを提供する気相イオン分析計のサブアセンブリを指す。1つの実施形態において、イオン源は、脱離/イオン化プロセスを介してイオンを提供する。そのような実施形態は一般に、イオン化エネルギー源(たとえばレーザー脱離/イオン化源)と問合せ可能な関係にあり、大気圧またはそれより低い大気圧にて、気相イオン分析計の検出器と同時連通しているプローブを位置的に係合するプローブインタフェースを含む。
【0042】
固相からの検体を脱着/イオン化するためのイオン化エネルギーの形はたとえば、:(1)レーザーエネルギー;(2)高速原子(高速原子衝撃で使用);(3)放射性核種のβ崩壊によって生成した高エネルギー粒子(プラズマ脱離で使用);および(4)二次イオンを生成する一次イオン(二次イオン質量分析法で使用)を含む。固相検体のイオン化エネルギーの好ましい形は、レーザー(レーザー脱離/イオン化で使用)、特に窒素レーザー、Nd−Yagレーザーおよび他のパルスレーザー源である。「フルエンス」は、問合せ画像の単位面積あたりに送達されたレーザーエネルギーを指す。通例、サンプルはプローブの表面に配置し、プローブはプローブインタフェースに係合され、プローブ表面にイオン化エネルギーが衝突する。エネルギーは、表面から気相中に検体分子を脱着し、それらをイオン化する。
【0043】
検体に対するイオン化エネルギーの他の形はたとえば:(1)気相中性をイオン化する電子;(2)気相、固相、または液相中性からのイオン化を誘発する強力な電場;および(3)イオン化粒子または電場と、固相、気相、および液相中性の化学イオン化を誘発する中性化学物質との組合せを利用する供給源を含む。
【0044】
本発明の状況における「プローブ」は、プローブインタフェースに係合して、イオン化および気相イオン分析計、たとえば質量分析計への導入のために、検体をイオン化エネルギーに提示するのに適した器具を指す。「プローブ」は一般に、その上で検体がイオン化エネルギー源に提示される表面を提示するサンプルを含む固体基材(可撓性または剛性のどちらか)を含む。
【0045】
「表面増強レーザー脱離/イオン化」すなわち「SELDI」は、検体をエネルギー源に提示するプローブの表面が、検体分子の脱離/イオン化において積極的な役割を果たす気相イオン分光法(たとえば質量分析法)の方法である。SELDI技術はたとえば、米国特許第5,719,060号(Hutchens and Yip)および米国特許第6,225,047号(Hutchens and Yip)に述べられている。
「表面増強親和性捕捉」すなわち「SEAC」と呼ばれるSELDIの1つの形式は、化学選択性表面を含むプローブ(SELDIプローブ」)の使用を含む。「化学選択性表面」は、たとえば共有または配位共有結合を形成する反応によって、吸着材(「捕捉試薬」とも呼ばれる)または捕捉試薬を結合できる反応性基のどちらかに結合された表面を指す。
【0046】
「反応性基」は、捕捉試薬を結合できる化学基を指す。エポキシドおよびカルボジイミジゾールは、ポリペプチド捕捉試薬、たとえば抗体または細胞レセプターに共有結合するのに有用な反応性基である。ニトリロ酢酸およびイミノジ酢酸は、ヒスチジン含有ペプチドと非共有結合的に相互作用する金属イオンを結合するキレート剤として機能する有用な反応性基である。「反応性表面」は、反応性基が結合する表面を指す。
【0047】
「吸着材」または「捕捉試薬」は、検体(たとえば標的ポリペプチド)を結合可能な物質を指す。「クロマトグラフィー吸着材」は、通例クロマトグラフィーで使用される材料を指す。クロマトグラフィー吸着材はたとえば、イオン交換材料、金属キレーター、固定化金属キレート、疎水性相互作用吸着材、親水性相互作用吸着材、染料、混合方式吸着材(たとえば疎水性引力/静電反発力吸着材)を含む。「生体特異性吸着材」は、生体分子、たとえばヌクレオチド、核酸分子、アミノ酸、ポリペプチド、単糖、多糖、脂肪酸、脂質、ステロイドまたはこれらの複合物(たとえば糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質)を含む吸着材を指す。ある例において、生体特異性吸着材は、巨大分子構造、たとえば多タンパク質複合体、生体膜またはウィルスでもよい。生体特異性吸着材の例は、抗体、レセプタータンパク質および核酸である。生体特異性吸着材は通例、標的検体に対して、クロマトグラフィー吸着材よりも高い特異性を有する。SELDIで使用する吸着材のさらなる例は、米国特許第6,225,047号(Hutchens and Yip,“Use of retentate chromatography to generate difference maps,”May 1,2001)に見出すことができる。「吸着材表面」は、吸着材が結合する表面を指す。
【0048】
「表面増強ニート脱離」または「SEND」と呼ばれる、SELDIの別の形は、プローブ表面に化学的に結合されるエネルギー吸収分子を含むプローブの使用を包含する(「SENDプローブ」)。「エネルギー吸収分子」(「EAM」)は、レーザー脱離イオン化源からエネルギーを吸収して、その後、それに接触した検体分子の脱離およびイオン化に寄与できる分子を指す。この表現は、頻繁に「マトリクス」と呼ばれるMALDIで使用される分子を含み、桂皮酸誘導体、シナピン酸(「SPA」)、シアノ−ヒドロキシ−桂皮酸(「CHCA」)およびジヒドロキシ安息香酸、フェルラ酸、ヒドロキシアセトフェノン誘導体はもちろんのこと、その他も明示的に含む。SELDIで使用されるEAMも含む。SENDは、米国特許第5,719,060号および2002年9月4日に提出された米国特許出願第60/408,255号(Kitagawa,“Monomers And Polymers Having Energy Absorbing Moieties Of Use In Desorption/lonization Of Analytes”)でさらに述べられている。
【0049】
「表面増強感光性付着および遊離」すなわち「SEPAR」と呼ばれるSELDIの別の形は、検体を共有結合可能であり、次に光、たとえばレーザー光への暴露後に基内の感光性結合を破壊することによって検体を遊離する表面に結合された基を有するプローブの使用を含む。
【0050】
「吸着」は、検体の吸着材または捕捉試薬への検出可能な非共有結合を指す。
【0051】
「溶離液」または「洗浄溶液」は、吸着材表面への検体の吸着に影響を及ぼすか、吸着を改善するためにおよび/または表面から未結合物質を除去するために使用される薬剤、通例は溶液を指す。溶離液の溶離特性はたとえば、pH、イオン強度、疎水性、カオトロピズムの程度、洗剤の強度および温度によって変わることがある。
【0052】
「検体」は、検出されることが望ましいサンプルの成分を指す。この用語は、サンプル中の単一の成分または複数の成分を指すことができる。
【0053】
親和性捕捉プローブの吸着表面に吸着されたサンプルの「複雑性」は、吸着される各種のタンパク質種の数を意味する。
【0054】
「分子結合パートナー」および「特異性結合パートナー」は、分子の対、通例、特異結合性を示す生体分子の対を指す。分子結合パートナーは制限なく、レセプターおよびリガンド、抗体および抗原、ビオチンおよびアビジン、ならびにビオチンおよびストレプトアビジンを含む。
【0055】
「監視」は、連続変化パラメータの変化を記録することを指す。
【0056】
「バイオチップ」は、捕捉試薬(吸着材)が付着する一般に平面を有する固体基材を指す。バイオチップの表面は頻繁に、複数のアドレス可能な位置を含み、その位置はそれぞれに結合した捕捉試薬を有する。バイオチップは、プローブインタフェースに係合するのに適しており、したがってプローブとして機能することができる。
【0057】
「タンパク質バイオチップ」は、ポリペプチドの捕捉に適したバイオチップを指す。多くのタンパク質バイオチップは当業界で述べられている。これらはたとえばCiphergen Biosystems(カリフォルニア州フレモント)、Packard BioScience Company(コネチカット州、メリデン)、Zyomyx(カリフォルニア州、ヘイワード)およびPhylos(マサチューセッツ州、レキシントン)によって生産されたタンパク質バイオチップを含む。そのようなタンパク質バイオチップの例は、以下の特許または特許出願に述べられている:米国特許第6,225,047号(Hutchens and Yip,“Use of retentate chromatography to generate difference maps, ”May 1,2001);国際公開公報WO 99/51773(Kuimelis and Wagner,“Addressable protein arrays,”October 14,1999);米国特許第6,329,209号(Wagneret al.,“Arrays of protein−capture agents and methods of use thereof,”December 11,2001)および国際公開公報WO 00/56934(Englertet al.,“Continuous porous matrix arrays,”September 28,2000)。
【0058】
Ciphergen Biosystemによって生産されたタンパク質バイオチップは、アドレス可能な位置にクロマトグラフィーまたは生体特異性吸着材が付着した表面を有する。Ciphergen ProteinChip(登録商標)アレイは、NP20、H4、H50、SAX−2、WCX−2、IMAC−3、LSAX−30、LWCX−30、IMAC−40、PS−10、PS−20およびPG−20を含む。これらのタンパク質バイオチップは、ストリップの形のアルミニウム基材を含む。ストリップの表面は二酸化ケイ素によってコーティングされている。
【0059】
NP−20バイオチップの場合、二酸化ケイ素は、親水性タンパク質を捕捉する親水性吸着材として機能する。
【0060】
H4、H50、SAX−2、WCX−2、IMAC−3、PS−10およびPS−20バイオチップは、バイオチップの表面に物理的に付着された、またはバイオチップの表面にシランを介して共有結合されたハイドロゲルの形の、官能基化架橋ポリマーをさらに含む。H4バイオチップは、疎水性結合のためのイソプロピル官能基を有する。H50バイオチップは、疎水性結合のためにノニルフェノキシポリ(エチレングリコール)メタクリレートを有する。SAX−2バイオチップは、アニオン交換のために第四級アンモニウム官能基を有する。WCX−2バイオチップは、カチオン交換のためにカルボキシラート官能基を有する。IMAC−3バイオチップは、遷移金属イオン、たとえばCu++およびNi++をキレート化によって吸収するニトリロ酢酸官能基を有する。これらの固定化金属イオンは、配位結合によってペプチドおよびタンパク質の吸着を可能にする。PS−10バイオチップは、共有結合のためにタンパク質の基と反応できるカルボイミジゾール官能基を有する。PS−20バイオチップは、タンパク質との共有結合のためのエポキシド官能基を有する。PS−シリーズバイオチップは、生体特異性吸着材、たとえば抗体、レセプター、レクチン、ヘパリン、タンパク質A、ビオチン/ストレプトアビジンなどを、それらがサンプルからの検体を特異的に捕捉するよう機能するチップ表面に結合するために有用である。PG−20バイオチップは、タンパク質Gが付着されるPS−20チップである。LSAX−30(アニオン交換);LWCX−30(カチオン交換)およびIMAC−40(金属キレート)バイオチップは、その表面に官能基化ラテックスビーズを有する。そのようなバイオチップは:WO00/66265(Rich et al.,“Probes for a Gas Phase Ion Spectrometer,“November 9,2000);WO00/67293(Beecher et al.,“Sample Holder with Hydrophobic Coating for Gas Phase Mass Spectrometer,”November 9,2000);米国特許第出願第09/908,518号(Pohl et al.“Latex Based Adsorbent Chip,”July 16,2002)および米国特許出願第60/350,110号(Um et al.,“Hydrophobic Surface Chip,”November 8,2001)にさらに述べられている。
【0061】
バイオチップへの捕捉時に、検体は、たとえば気相イオン分光法、光学法、電気化学法、原子間力顕微鏡法および無線周波数法を含む各種の検出方法によって検出できる。気相イオン分光法は本明細書で述べられている。特に興味深いのは、質量分析法、特にSELDIの使用である。光学法はたとえば蛍光、ルミネセンス、化学ルミネセンス、吸収、反射率、透過率、複屈折または屈折率の検出(たとえば表面プラズモン共鳴、偏光解析法、共鳴ミラー法、格子カプラー導波管法または干渉分光法)を含む。光学法は、顕微鏡法(共焦点および非共焦点の両方)、撮像法および非撮像法を含む。各種の形式のイムノアッセイ(たとえばELISA)固相に捕捉された検体の検出の普及した方法である。電気化学法は、ボルタンメトリーおよびアンペロメトリー法を含む。無線周波数法は、多極共鳴分光法を含む。
【0062】
(発明の説明)
本発明により、膣環境は、胎児および羊膜内環境の状態を評価するために監視される。これは胎児の健康状態および成熟度ならびに羊膜の完全性および健康状態の両方を評価する非侵襲性手段を提供する。特に本発明は、前期破水(PROM)を識別する非侵襲性手段を提供する。PROMおよび他の症状は未処置のまま放置すると、未熟分娩を引き起こすことがある。
【0063】
さらに詳細には、本発明は、胎児の健康状態および成熟度および/または羊膜環境の状態を示す特異性バイオマーカーまたはバイオマーカーの組合せの存在または非存在に関する。本状況において、バイオマーカーは有機生体分子、特にペプチドまたはタンパク質であり、異常な臨床状態を持たない「正常な」被験体から採取した比較サンプルと比べて、羊膜環境に特に異常な臨床状態を有する被験体から採取したサンプル中に異なって存在する。異常な臨床状態は、羊膜内炎症または感染、およびPROMなどの症状を含む。母親の血液サンプル中に羊水塞栓症を示すバイオマーカーを検出することも可能である。バイオマーカーは、胎児の健康状態または成熟度を示す生体分子でもよい。
【0064】
本発明は、異常な臨床状態を有する患者に対して、正常な患者から採取したサンプル中に異なって存在するバイオマーカーを検出する。バイオマーカーが正常な患者のサンプルと比較して、異常な臨床状態を有する患者のサンプル中に上昇レベルまたは下降レベルで存在する場合、バイオマーカーは正常な患者および異常な臨床状態を有する患者から採取したサンプル中に「異なって存在する」。好ましい実施形態において、バイオマーカーは、気相イオン分光法によって決定された見かけの分子量を特徴とし、正常被験体と比べて異常な臨床状態を有する被験体によるサンプル中に上昇または下降レベルで存在するポリペプチドである。
【0065】
膣液中に存在し、胎児の健康状態および/または羊膜の健康状態または完全性を示す新規なバイオマーカーは、質量分光分析によって膣液サンプルをプロファイリングすることと、羊水の同時に採取したサンプルを質量分光分析によってプロファイリングすることと、羊水にも見出された膣液中のバイオマーカーを同定するために得られたプロファイルを比較することとによって同定できる。好ましい実施形態において、方法は、羊水にも見出された膣液中のバイオマーカーの存在または非存在を臨床状態に相関させることをさらに含む。あるいは新規なバイオマーカーは、正常妊娠を有する被験体による第一の膣液サンプルを質量分光分析によってプロファイリングすることと、異常な臨床状態を特徴とする妊娠を有する被験体による第二の膣液サンプルを質量分光分析によってプロファイリングすることと、膣液中のバイオマーカーの存在または非存在を妊娠の臨床状態に相関させることとによって同定できる。この後者の手法は、羊水中に見出されないバイオマーカー、たとえば羊膜タンパク質の分解生成物であるバイオマーカー、または羊水の存在に反応して膣により生成されるバイオマーカーを同定できる。
【0066】
本発明のバイオマーカーは、PROM、羊膜内炎症および/または感染、胎児肺成熟、羊水塞栓症を識別することができる。単一のバイオマーカーまたはバイオマーカーの組合せが使用できるが、複数のバイオマーカーが好ましい。それゆえバイオマーカーおよびバイオマーカーの組合せは、患者の早期分娩のリスクを限定するために利用できる。
【0067】
異常な臨床状態として羊膜内炎症を示すバイオマーカーの例は、その内容の全体が参照により本明細書に組み入れられている、同時係属出願第60/426,096号に開示されたディフェンシンおよびカルグラヌリンを含む。カルグラヌリンは、2つの基準EFハンド構造モチーフを含有するカルシウム結合タンパク質である、タンパク質のS100グループのメンバーである。それらは、アルツハイマー、癌、心筋症、乾癬、関節リウマチ、および他の炎症性障害などの疾患への関与の可能性のために、ますます注目を集めている。S100 A8(カルグラヌリンA)およびS100 A9(カルグラヌリンB)は結合して、抗菌特性も有するホモダイマーおよびヘテロダイマーを形成することができる。3つの主なヒト好中球ディフェンシンHNP 1−3は、好中球に特有であり、これらの細胞においてディフェンシンの99パーセントを占めるファミリーに属する。HNP−1、−2および−3は、カチオン性のトリスルフィド含有殺菌性ペプチドのファミリーに属する。その生成および放出は、サイトカインおよび微生物生成物、たとえばグラム陰性細菌の細胞壁成分である、リポポリサッカライドによって誘発される。好ましい実施形態において、カルグラヌリンはカルグラヌリンAまたはカルグラヌリンCであり、ディフェンシンはHNP−1(アルファディフェンシン1)またはHNP−2(アルファディフェンシン2)である。他のバイオマーカー例は、β−2−マイクログロブリンおよびシスタチン−Cである。
【0068】
好ましい実施形態において、バイオマーカーは酸化ペプチドまたはカルボニル化ペプチドである。炎症に関連する早期分娩において、生成とフリーラジカルに対する防御との間に不均衡があることと、これらのフリーラジカルが酸化またはカルボニル化タンパク質を生成することが発見されている。それゆえ羊水中での酸化またはカルボニル化タンパク質の存在は、慢性の指標である。
【0069】
本発明によるすべてのバイオマーカーは胎児の1つ以上の様相ならびに羊膜の健康状態および完全性の信頼できる予測材料であるが、酸化およびカルボニル化タンパク質は、傷害の強度および/または期間に関する情報をさらに提供する。この理由は、タンパク質酸化を発生させるために、傷害が抗酸化性蓄積物を消耗させるのに十分な時間にわたって、または十分な強度で存在しなければならないことである。このことは、2,2’アゾビス−2−メチルプロピオンアミジンジヒドロクロライド(ABPA)の自発的分解によって試験管内で産生されるペルオキシルフリーラジカルに羊水を暴露させる実験によって確認されてきた。タンパク質のカルボニル化およびタンパク質の断片化は、フリーラジカル損傷の指標として評価され、カルボニル総含有量は、ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)を用いた誘導体化によって測定し、ABPAの前後に抗ジニトロフェニルDNP抗体を使用してDNPH誘導体化タンパク質についてのウェスタンブロッティングを続けた。ABPAに反応した羊水中でのタンパク質カルボニル化の用量および時間依存性の増加が明らかになった。タンパク質カルボニル化は、胎児血漿中よりも羊水中のほうが実質的に高い、実質的なタンパク質分解に関連していた。
【0070】
それゆえ羊水におけるタンパク質酸化またはカルボニル化は、羊膜内炎症の存在の予測材料であるだけでなく、この症状の強度および期間の予測材料でもある。羊膜内炎症の結果として膣液で見出されるジニトロフェノール(DNP)基の酸化およびカルボニル化タンパク質への包含は、カルボニル総含有量の、それゆえ傷害の強度および/または期間の測定手段を提供する。DNPの中央量は、羊膜内炎症のない群においてよりも、羊膜内炎症を有する患者で著しく大きい。それゆえ羊膜内炎症を有する母親の早期胎児は、高度の酸化性環境にさらされている。さらに本明細書で定義するように、羊膜内炎症をMRスコアによって評価した場合、タンパク質酸化は、MRスコア>2を有する羊水のサンプルよりも著しく高かった。最小レベルのタンパク質カルボニル化の欠如は、低いMRスコアと共存する場合には炎症の欠如を、あるいは高いMRスコアと共存する場合には、長期にわたって存在している炎症の欠如のどちらかを示す。
【0071】
これらのデータは、膣液におけるタンパク質酸化またはカルボニル化の測定が、炎症自体の存在よりも、胎児の結果により高い信頼性で相関する炎症性傷害の程度および重大性に関する貴重な情報源であることを示している。今説明したDNP包含およびイムノアッセイ法は、これらのタンパク質におけるカルボニル総含有量を測定するために使用できるが、タンパク質酸化またはカルボニル化の存在または程度も、本明細書で述べたSELDI分析を使用して追跡することができる。この状況において、DNP捕捉抗体によってコーティングしたバイオチップが使用される。
【0072】
本発明は、早期分娩を引き起こしうる症状、たとえば羊膜内炎症および/または感染を識別するための迅速で信頼性のプロテオミック手法を提供する。これは、膣液中の羊膜状態の複数の予測材料の存在に基づく第一のプロテオミックキャラクタリゼーションである。バイオマーカーの詳細な解析により、含まれる変化のキャラクタリゼーションおよび定量的検証を可能にする。
【0073】
本発明は、胎児が子宮外で生存するために十分な肺機能を持つかどうかを判定するための迅速および信頼性のプロテオミック手法も提供する。妊娠の第二期の間、胎児の肺液が、羊膜腔への主要な流入物を構成する。胎児肺成熟を示すバイオマーカーの同定は、未熟分娩の妥当性に関する決定を通知することができる。
【0074】
羊膜内炎症によって悪化した妊娠において、羊水中に存在する炎症細胞は、通例、胎児起源であり、母親起源ではない。この状況において、羊水は、胎児起源の好中球を含有する。膣へ到達する羊水中の炎症メディエータの濃度は、切迫早期分娩の見込みおよび新生児の不利な結果を、羊膜内炎症によって悪化した妊娠による母親の血液よりもうまく予測することができる。結果として、羊水は、羊膜内および胎児炎症の診断バイオマーカーとして作用できる多数のタンパク質を含有する。
【0075】
それゆえ羊水のタンパク質組成物のプロテオミック解析は、胎児の健康状態の様相ならびに羊膜の完全性および健康状態を診断するための基準を提供する。現在利用可能な技術は、本発明を実施するための広範囲にわたる操作なしで利用できる。1つの実施形態において、本発明はマルチトラックイムノアッセイ、たとえばマルチトラックELISAを使用して、1つ以上の異常臨床状態の存在と相関する情報を得る。別の実施形態において、膣液のSELDI分析を使用してこの情報を得る。本発明は、膣液中の酸化またはカルボニル化タンパク質のレベルを評価することによって、一部の異常臨床状態の程度および/または期間を評価する手段、およびこの側面も提供する。ここで再度、従来のイムノアッセイ形式またはSELDI分析を利用できる。それゆえ本発明によって識別されたタンパク質プロファイルは、炎症の存在または非存在、ならびにその期間および/または強度を確実に指摘し、そのことは上で示したように、羊膜内炎症が早期分娩、未熟の短期合併症、および長期続発症、たとえば脳性麻痺および慢性肺疾患のリスク因子であるため、極めて重要である。
【0076】
タンパク質プロファイルは、処置のための勧告の基準を作成できる。たとえば生成されたタンパク質プロファイルは、分子微生物学的技法と組合せて、検出された炎症の原因である微生物を識別し、それにより抗菌剤療法の選択を通知することができる。特に羊膜内液を膣に有すると判定された患者からの羊水のサンプルは、炎症の原因である病原微生物を識別するために培養できる。次に、識別された微生物に対して有効である抗生物質を決定するために、培養物を試験できる。ある状況におけるプロファイルは、抗生、子宮収縮、抗炎症、または抗酸化剤処置を示すが、他の状況では、プロファイルは分娩を誘発するか、または帝王切開術を実施する決定を通知する。たとえばマウスモデルにおいて、母体による抗酸化剤の摂取は、感染に続発する早期分娩のリスクを低下させることが証明されている。カルボニル化タンパク質の存在は、併用療法への要求を示す。異常臨床状態がいったん確認されると、膣サンプルの継続分析は、いずれかの処置の状態の進行および効力の両方を評価するために実施できる。
【0077】
異常な羊膜内臨床状態がいったん確認されれば、異常臨床状態の監視に加えて、胎児の健康状態および成熟度のバイオマーカーの試験も行われる。これらの試験の結果は、胎児生存能力に基づいて妊娠を延長させるかどうかの判定を通知するのに役立つ。
【0078】
本発明により、羊水のプロテオミック分析は、切迫早期分娩の危険に瀕している、羊膜内炎症を伴う未熟分娩の患者を識別する迅速で簡単な信頼できる手段を提供する。そのように識別されたこの患者群は、感染を根絶するための、および/または有害な結果に関連する炎症反応を調節するための特定の介入を試験するために選択される。
【0079】
被験体における胎児の健康状態および成熟度ならびに羊膜の完全性および健康状態の評価のためのバイオマーカーの検出は、患者からの膣液サンプルに上に吸着材を有する基材を、バイオマーカーと吸着材との結合を可能にする条件下で接触させることと、次に吸着材に結合したバイオマーカーを検出することとを含む。バイオマーカーが酸化またはカルボニル化タンパク質である場合、タンパク質は第一に、タンパク質でのカルボニル基の存在を調節および/または定量化するために測定できるジニトロフェノールなどの基を用いて誘導体化する必要がある。
【0080】
イムノアッセイは、本発明によるバイオマーカーのいずれかを、単独でまたは他のバイオマーカーと組合せて検出するために使用できる。バイオマーカーを含有することが疑われる膣サンプルはバイオマーカーに対する抗体と混合して、バイオマーカー−抗体結合を監視する。バイオマーカーは、放射性または酵素ラベルによって標識される。好ましい実施形態において、バイオマーカーの抗体は固体マトリクスに固定化され、マトリクスの表面に接触しているバイオマーカーに触れられるようになっている。次にサンプルをマトリクスの表面に接触させ、表面をバイオマーカー−抗体結合について監視する。
【0081】
たとえば複数のバイオマーカーは、マルチトラック酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって識別可能であり、各トラックは固相に結合されたバイオマーカーの1つに対する抗体を含有する。酵素−バイオマーカー複合物は、サンプル中に存在するバイオマーカーを調節および/または定量するために使用される。あるいは可溶化および分離バイオマーカーがニトロセルロース紙に結合されたウェスタンブロットアッセイを使用することができる。次にバイオマーカーは、酵素またはラベル結合抗免疫グロブリン(Ig)、たとえばホースラディッシュペルオキシダーゼIg複合物により、沈殿可能または検出可能な基材の存在下で濾紙をインキュベートすることによって検出される。ウェスタンブロットアッセイは、所望のバイオマーカーについて50%を超える純度を必要としない利点を有する。ELISAおよびウェスタンブロット技法の説明は、Ausubel,et al.(eds.),CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,JohnWiley and Sons(1988)の10および11章に見出される。
【0082】
あるいはバイオマーカーは、気相イオン分光法を使用して、好ましくは質量分析法によって、特に表面増強レーザー脱離およびイオン化(SELDI)によって調節および/または定量できる。SELDIは、イムノアッセイ法に勝るある利点を提供する。たとえばSELDIは、特に複数のバイオマーカーを評価する場合に、より少量のサンプル液で実施できる。サンプル中の複数のバイオマーカーをELISAまたは他のイムノアッセイ法を用いてプロファイルするためには、異なるイムノアッセイを用いた複数のサンプルを必要とし、各イムノアッセイは、バイオマーカーの1つに特異性である抗体を必要とする。他方、SELDIは、単一の小型サンプルによって複数のバイオマーカーのプロファイルを生成するために使用できる。バイオマーカーの検出は、ある選択性条件、たとえば吸着材または洗浄溶液を使用することにより向上させることができる。適切な吸収材を含む基材は、気相イオン分析計、好ましくは質量分析計に挿入できるプローブの形が可能であるか、または吸着材を含む基材を別の基材に取付けて、分光計に挿入されるプローブを作成することができる。
【0083】
吸着材を有する基材は、バイオマーカーを吸着材に結合させるのに十分な期間にわたってサンプルに接触させる。インキュベーション期間の後、基材を洗浄して、未結合物質を除去する。どの適切な洗浄溶液も使用できる。好ましくは水溶液が使用される。洗浄溶液は、当業者によって決定できる。
【0084】
次にエネルギー吸収分子を結合バイオマーカーを有する基材に施す。エネルギー吸収分子は、気相イオン分析計内でエネルギー源からエネルギーを吸収し、それにより基材からのバイオマーカーの脱離を補助する分子である。エネルギー吸収分子の例は、桂皮酸誘導体、シナピン酸およびジヒドロキシ安息香酸を含む。好ましくはシナピン酸が使用される。
【0085】
基材に結合されたバイオマーカーは、気相イオン分析計で検出される。バイオマーカーは、イオン化源、たとえばレーザーによってイオン化され、生成されたイオンは、イオン光学アセンブリによって収集され、次に質量分析器が通過するイオンを分散および分析する。次に検出器は、検出されたイオンの情報を質量−電荷比に変換する。バイオマーカーの検出は通例、信号強度の検出を含むであろう。それゆえバイオマーカーの量および質量の両方が決定できる。
【0086】
マーカーの脱離および検出によって生成されたデータは、プログラム可能なデジタルコンピュータの使用によって分析できる。コンピュータプログラムは、検出されたマーカーの数を示すデータ、そして場合により検出された各バイオマーカーについて、信号の強度およびの決定された分子量を解析する。データ解析は、バイオマーカーの信号強度を決定するステップおよび規定の統計的分布から逸脱するデータを除去するステップを含むことができる。たとえば観測したマイクログロブリンは、一部の基準に対して各マイクログロブリンの高さを計算することによって正規化できる。基準は、スケールにおいてゼロに設定される、器具および化学薬品、たとえばエネルギー吸収分子によって生成されたバックグラウンドノイズでもよい。
【0087】
コンピュータは、得られたデータを表示用の各種の形式に変換できる。標準スペクトルは表示できるが、1つの有用な形式では、マイクログロブリン高さおよび質量情報のみがスペクトル表示から得られ、より明瞭な画像が生成され、ほぼ同一の分子量を有するバイオマーカーがより容易に見られるようになる。別の有用な形式では、2つ以上のスペクトルが比較され、好都合なことに特有のバイオマーカーおよびサンプル間でアップレギュレートまたはダウンレギュレートされるバイオマーカーが強調される。これらの形式のいずれかを使用すると、特定のバイオマーカーがサンプル中に存在するかどうかをただちに判定することができる。
【0088】
データを分析するために使用されるソフトウェアは、信号が本発明によるバイオマーカーに対応する信号のマイクログロブリンを示すかどうかを判定するために、アルゴリズムを信号の解析に利用するコードを含むことができる。ソフトウェアは、観測されたバイオマーカーマイクログロブリンに関するデータを分類ツリーまたはANN解析にかけて、羊膜内炎症の診断を示すバイオマーカーマイクログロブリンまたはバイオマーカーマイクログロブリンの組合せが存在するかどうかを判定することができる。
【0089】
別の側面において、本発明は胎児の健康状態および成熟度ならびに羊膜の完全性および健康状態の評価を補助するためのキットを提供し、該キットは本発明によるバイオマーカーを検出するのに使用される。キットは、正常な被験体および異常臨床状態を有する被験体によるサンプル中に異なって存在するバイオマーカーおよびバイオマーカーの組合せをスクリーニングする。キットは、胎児の健康状態または成熟度を示すバイオマーカーの存在もスクリーニングできる。
【0090】
キットは、その上に吸着材を有する少なくとも1つの基材を含み、そこで吸着材は本発明によるバイオマーカーを結合するのに適切である。キットはさらに、洗浄溶液、または洗浄溶液を作成するための説明書を含有し、吸着材および洗浄溶液の組合せが気相イオン分光法を用いたバイオマーカーの検出を可能にする。キットは、ラベルまたは独立した挿入物の形の適切な操作パラメータ用の説明書も含む。たとえば説明書は、消費者にサンプルを収集する方法およびプローブを洗浄する方法を通知する。キットはさらに、標準として使用するためのバイオマーカーの純粋形態を含む。酸化またはカルボニル化タンパク質の存在または量を測定するために使用されるキットはさらに、ジニトロフェニルヒドラジンの独立した容器の含むことができる。
【0091】
1つの実施形態において、キットは、羊膜内環境の状態あるいは胎児の健康状態または成熟度を示す少なくとも2つのバイオマーカーを検出するために、その上に吸着材を有する少なくとも2つの基材を含む。2つの基材は、同じまたは異なる吸着材を有することができる。たとえばキットは、カチオン交換バイオチップおよび疎水性吸着材バイオチップを含むことができる。
【0092】
別の実施形態において、本発明のキットは、その上に吸着材を含む第一の基材と、第一の基材が上に配置されて、気相イオン分析計に挿入できるプローブを形成する第二の基材とを含む。別の実施形態において、本発明のキットは、分光計に挿入できる単一の基材を含むことができる。
【0093】
PROMおよび/または早期分娩の症状を示す患者のプロテオミック評価は、以下を明らかにする:胎膜の完全性、羊膜内環境の健康状態、胎児の健康状態、および胎児の成熟度。好ましい実施形態において、1個のバイオチップが破水、羊膜内炎症、胎児肺成熟度を示すバイオマーカーを結合する。微生物を識別し、各種の抗生物質に対するその感受性を評価するための、超音波および液体サンプルの培養などの臨床試験と組合せると、患者および胎児の予後が大きく改善できる。
【0094】
本発明は、以下の例証となる実施例を参照してさらに説明する。
【実施例1】
【0095】
正常および異常臨床状態を有する患者からの膣サンプルを比較することによる、バイオマーカーの発見
本発明によるバイオマーカーは、2つの群の妊娠被験体、すなわち異常な臨床状態を有する被験体および正常対照による膣液に由来するサンプルの質量スペクトルを比較することによって同定した。被験体は、標準臨床基準に従って診断した。2つの異なるサンプルのプールは、示差分析を可能にする。あるいは代理サンプルを試験管内で作成した。たとえば羊膜内出血を確認するために、5000細胞/mmを超える羊水赤血球数を有する患者の羊水プロファイルは、臍帯血から得た希釈赤血球溶解物(胎児起源)と交差した。
【0096】
2つのサンプルプールを最適の識別性能のために、逆相H4、C−16長鎖脂肪族残基を有する疎水性表面;SAX 2、強力なアニオン交換体;WCX2、四級アンモニウム、弱カチオン交換体;IMAC、カルボキシラート残基;金属親和性)を含む、カリフォルニア州フレモントのCiphergen Biosystemsによって製造された試験各種のバイオチップ表面への広範囲の希釈物で使用した。H4バイオチップ表面では、最適化は、アセトニトリル勾配(10%〜75%)の追加の疎水性勾配を含んでいた。膣液2μlをリン酸緩衝生理的食塩水(PBS)で10倍に希釈し、24スポットH4のスポットまたはWCXアレイに配置し、乾燥を避けるために湿潤ボックス中でインキュベートする手順が、β−2−マイクログロブリンおよびシスタチンCそれぞれのマイクログロブリンの検出に最適であることが見出された。しかしながら他のバイオチップは、興味のあるマーカーの結合に適切である結合特性を有する限り使用できる。β−2−マイクログロブリンおよびシスタチンCでは、好ましい親和性表面は、疎水性吸着材またはカチオン交換吸着材をそれぞれ含む。カルグラヌリンおよびディフェンシンでは、好ましい親和性表面は疎水性吸着材、たとえばCiphergen H4プローブまたはH50プローブである。HCGでは、好ましい親和性表面はイオン交換チップ、たとえばSAXである。
【0097】
図1は、膣から非侵襲的に採取した羊水におけるバイオマーカープロファイルを同定するために使用した一般化モデルである。この例では、レベル0はレベル1に含まれる。しかしながら無傷膜を有する女性の膣分泌物(レベル1)とPBS(レベル0)との間の示差プロファイルは、正常な膣プロテオームを提供するであろう。
【0098】
レベル1、すなわち無傷膜を有する妊娠患者の膣プロテオームを定義するために、膣分泌物は、無傷膜を有する患者から綿棒を使用して収集した。綿棒は後膣円蓋に挿入し、次に滅菌リン酸緩衝生理的食塩水(PBS)0.5mlを含有する遠心管に浸漬した。1分後、バイアル内の溶液を遠心分離にかけ、上澄みを分析した。
【0099】
破水後、膣内に漏出した羊水を収集して、次にそれを溶液内に入れることによって1:10に希釈できた。β−2−マイクログロブリン、シスタチンCおよびアルファ−フェトプロテインの濃度は、特異的ELISAアッセイを使用して決定した。β−2−マイクログロブリン、シスタチンCおよびαフェトプロテインは、それらが羊水中に高濃度で存在するという以前の判定に基づいて選択される。
【0100】
H4表面での膣液のSELDI分析は、β−2−マイクログロブリンが分析したすべての液体に存在する明確なマイクログロブリンを有することを示し、これは最初にマイクログロブリン基準として使用した(Rマイクログロブリンと呼ぶ)。Rマイクログロブリンは、切除したゲルバンドのゲル内トリプシン消化およびLC/MS/MS分析を使用して、β−2−マイクログロブリンに一致した。
【0101】
WCX表面での膣液のSELDI分析は、シスタチンCはすべてのサンプルで明確なマイクログロブリンを有することを示した。シスタチンCは、システインプロテイナーゼのインヒビターである。それは分子量13,347Daおよび等電点8.75を有する。
【0102】
β−2−マイクログロブリンマイクログロブリンも、シスタチンCマイクログロブリンも無傷膜を有する女性または妊娠していない女性には見られなかった。それゆえ膣綿棒でのこれらのタンパク質の存在は、破裂膜の証拠であるのに対して、その非存在は無傷膜の証拠である。
【0103】
バイオチップは以前に60/426,096で詳細に述べられたプロトコルに従って分析し、MおよびMRスコアを計算する。Mスコアを計算するために、明確なマイクログロブリンを手作業で選択し、各患者からのスペクトルをマイクログロブリン同定の精度に関して検証する。選択したマイクログロブリンのm/z値、正規化強度、および信号対雑音比(S/N)を抽出する。ブール論理に基づく段階的方法において、診断プロテオミックプロファイルが確立される。目視検査プロセスから得たマイクログロブリンのみに対して段階的解析を行った。
【0104】
段階的解析の基準は以下を含んでいた:(1)「罹患」患者のみに存在するマイクログロブリンが、「非罹患」患者に通常存在するマイクログロブリンの消失または減少よりも、潜在的なバイオマーカー候補であった;(2)少なくとも2つの異なるレーザー強度またはマトリクスプロトコルで検出されたプロファイルのマイクログロブリンのみが潜在的なバイオマーカー候補であった;(3)著しく異なるプロファイルのマイクログロブリンのみが潜在的なバイオマーカー候補であった(「罹患」群と「非罹患」群との間の、少なくともp<0.0001のレベルにて、正規化強度の対数によって測定したように);(4)親マイクログロブリンのみが潜在的なバイオマーカー候補であった(単独でイオン化、少なくとも酸化された);(5)「非罹患」個体の「ノイズ」が著しく上昇したエリアに発生したマイクログロブリンは、候補として削除した;(6)最終診断プロファイルのマイクログロブリンの数は最小限に維持した。
【0105】
第一の4つの基準を適用した後、潜在的な識別値を有する13個の候補バイオマーカーマイクログロブリンが出現した。マイクログロブリンを存在または非存在として客観的に評価するために、S/N比の評価を行った。選択に使用したカットオフは、「非罹患」群の対応する質量それぞれのS/N比の平均+2標準偏差であった。次にブール指標を割り当てた:マイクログロブリンが非存在であるか、カットオフ以下の場合には値0を使用し、マイクログロブリンがカットオフを超える場合には値1を割り当てた。ブール指標の合計を患者ごとに計算して、Mスコアと呼んだ(質量スコア)。
【0106】
各マイクログロブリンの0または1値の合計は、MRスコア(質量制限スコア)を生じる。2つのマイクログロブリン、たとえばβ−2−マイクログロブリンおよびシスタチンCをプロファイルすると、MRスコアは、2つのタンパク質バイオマーカーの存在または非存在によって、0から2の範囲で変化する。特定のマイクログロブリンが存在する場合にはカテゴリ値1が割り当てられ、存在しない場合には0が割り当てられる。マイクログロブリンの存在または非存在は、主観的に解釈されるか、または予測質量値における信号/雑音比からのPBSスポットの読取り値に対して客観的に計算できる。最終MRスコアは、全指標の合計である(0=どちらのマイクログロブリンも存在しない、2=両方のマイクログロブリンが存在する)。研究前に我々が検証したように、MRスコア自体は、異常な羊膜内状態の存在または非存在に関する定性的情報を提供する。スコア2は、羊膜内異常の存在を示すが、スコア0は正常な羊膜内環境を示す。それゆえMRスコアを構成する定義されたマイクログロブリンの非存在または存在についての迅速な目視検査によって、MRスコアを計算し、診断を確立することができる。
【0107】
他のバイオマーカーは、本明細書の教示に従って同定可能であり、これらの他のバイオマーカーは他のバイオチップ表面を使用して最も良くプロファイルできる。β−2−マイクログロブリンおよびシスタチンC以外のバイオマーカーは、各種のバイオチップ表面で広範囲に渡る希釈物を試験することによって簡単に判定される他のバイオチップ形式を用いてより容易に検出できる。上述したようにカルグラヌリンおよびディフェンシンは、H4バイオチップまたは同様の疎水性吸着材形式のバイオチップで最も良く同定される。
【実施例2】
【0108】
正常および異常な臨床状態を有する患者からの膣サンプルと、羊水穿刺による羊水の同時採取サンプルを比較することによるバイオマーカーの発見
無傷膜または破裂膜を有する患者の膣綿棒によって採取したサンプルおよび同じ患者からの羊水穿刺により同時に採取した羊水のサンプルを、特異的ELISAアッセイを使用して比較した。結果を図2に示す。羊水によって飽和させた綿棒をPBS 0.5mlに浸漬すると、β−2−マイクログロブリンの綿棒液の濃度は、純粋液の濃度の10%である。これは、破裂膜を有する女性では、膣環境が羊膜腔起源のバイオマーカー、たとえばβ−2−マイクログロブリンおよびシスタチンCを羊水穿刺によって採取した羊水で見出されるのと同様の濃度で含有することを示している。これらのバイオマーカーは、無傷膜を有する女性の膣には存在しない。SELDIプラットフォームによる結果は、ELISA研究で認められた同様の密接な関係を示し、SELDIプラットフォームでの膣プールの分析は、破裂膜を有する患者を無傷膜を有する患者から容易に識別できることを確認した。
【0109】
羊膜内炎症がPROMを有する女性に存在する場合、特徴的なプロファイルが膣プールに見られる。図3は、PPROMおよび羊膜内炎症を有する女性2人からの4つのタンパク質プロファイルを示す。発見は、膣に存在する羊水を使用して、PROMを有する女性から炎症プロファイルを非侵襲的に得る可能性を確認している。無傷膜を有する女性の膣液の綿棒によるタンパク質プロファイルは、炎症バイオマーカーマイクログロブリンを明らかにする。
【実施例3】
【0110】
羊膜内炎症の連続監視
妊娠女性からの膣液の連続サンプルを採取し、SELDIによってプロファイルした。この連続サンプリングは、臨床的な徴候が存在する前に、初期羊膜内炎症を示す炎症バイオマーカーの出現をうまく認識した。破水前に患者の膣から得た正常なプロファイルは、炎症に特徴的な羊水マイクログロブリン、たとえばβ−2−マイクログロブリン、シスタチンC、αフェトプロテインの同定を可能にするために減じた。時間の経過と共に液が希薄となり(無羊水)、膣液がさらに粘性となっても、SELDIによるサンプルのプロファイリングは、可能である。この場合、サンプルはサンプリングに使用した注射器をPBSで洗浄することによって得た。
【0111】
図4は、連続して監視した患者の膣液から得たタンパク質プロファイルを示す。入院日に、患者の正常なプロファイルは高いβ−2−マイクログロブリンマイクログロブリンが優勢であった(上のトレーシング)。破水の3日後、患者の膣タンパク質プロファイルは劇的に変化して、S100タンパク質の優勢な炎症ピークおよび抑制されたβ−2−マイクログロブリンピークを示した。この患者は、複数の抗生剤(アンピシリン、ゲンタマイシン、およびアジスロマイシン)による処置にもかからわらず、臨床的に明らかな絨毛羊膜炎のために、破水の6日後分娩を誘発された。それゆえ胎児炎症と一致する病的変化が、絨毛羊膜炎の臨床サインの3日前にSELDIによって識別された。その上、この患者では、入院時の羊水穿刺の試みが、無羊水のために液が吸引されず不成功であったことに注目すべきである。これは、20%もの早期前期破水の女性で発生する。それゆえ本発明による非侵襲性膣サンプルのプロファイリングは、羊水穿刺のない場合に成功であった。
【実施例4】
【0112】
膣液のサンプル中での酸化またはカルボニル化タンパク質の検出
実験は、羊水中のタンパク質カルボニル化によって概算されるオキシダントの量と、暴露時間と、タンパク質酸化の程度との間の相関を評価するために実施した。本実験において、羊水は2,2’アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン字ヒドロクロライドの自発的分解によって試験管内で生成されるペルオキシルフリーラジカルに暴露される(ABPA 30、60、90、120、150mM)。タンパク質カルボニル化およびタンパク質断片化は、フリーラジカル損傷の指標として評価される。カルボニル総含有量は、ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)を用いた誘導体化と、ABPAへの暴露の1、3、6、24時間前および1、3、6、24時間後のDNPH−誘導体化タンパク質についての抗ジニトロフェニルDNP抗体を使用したウェスタンブロッティングによって測定した。タンパク質断片化は、同様の量のタンパク質を装填したCoomasieまたは銀染色ゲルに対する血清アルブミンバンドの強度の低下によって定量した。ABPAに反応した羊水中のタンパク質カルボニル化の用量依存性および時間依存性の増加が観測された。タンパク質カルボニル化は、実質的なタンパク質分解に関連しており、これは胎児血漿中よりも羊水中のほうが実質的に高かった。
【0113】
羊水でのタンパク質酸化またはカルボニル化は、羊膜内炎症で存在する。DNPの中央量は、タンパク質カルボニル化の程度の指標である。これは羊膜内炎症のない患者群よりも、羊膜内炎症を有する患者群で著しく大きかった(中央羊膜内炎症:62.5[5−95%パーセンタイル:15−112]fmols DNP/μgタンパク質対早期炎症なし20.5[8−42]fmols DNP/μgタンパク質対期C/S:27[12−44]fmols DNP/μgタンパク質)。それゆえ羊膜内炎症を有する母親の早期胎児は、高い酸化性環境に暴露されている。その上、羊膜内炎症がMRスコアにより予測された場合、タンパク質酸化は、2より大のMRスコアを有する羊水において著しく高かった。これらのデータは、タンパク質酸化が、炎症自体の存在よりも、胎児の結果に強く関連する炎症傷害の程度および重大性に関する貴重な情報源であることを示している。それゆえDNP抗体取込みアッセイまたは酸化またはカルボニル化タンパク質のバイオマーカーのSELDI分析は、炎症の存在を示すバイオマーカーの同定を補完するために使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】膣液サンプルからの羊膜内炎症(IAI)を診断するためのバイオマーカープロファイルを同定するための、モデルの図表示である。
【図2】PROMを有する患者の羊水および膣液のサンプル中のβ−2−マイクログロブリンおよびシスタチンCの濃度を比較する棒グラフである。
【図3】羊膜内炎症を有する2人の女性からの羊水および膣液の一連のプロファイルである。
【図4】破水日(A)および3日後(B)に採取した、PROMを有する患者の膣タンパク質プロファイルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
羊膜内環境の評価のための方法であって、(A)被験体から膣サンプルを採取する工程、(B)該膣サンプルの評価からの結果が該被験体に関する診断または予後判定を通知するように、羊膜内環境の状態を示す複数のバイオマーカーのサンプル中での存在または非存在を判定するために、該サンプルを分析に供する工程、を包含する方法。
【請求項2】
(A)および(B)が少なくとも二度目に反復される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バイオマーカーが胚膜の破裂を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記バイオマーカーが羊膜内感染を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記バイオマーカーが羊膜内炎症を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記バイオマーカーが胎児肺成熟を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記バイオマーカーがαフェトプロテイン、胎児フィブロネクチン、インスリン様成長因子結合タンパク質−1、プロラクチンおよびヒトプラセンタラクトゲン、ならびにその断片からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記バイオマーカーがβ−2−マイクログロブリンおよびシスタチンC、ならびにその断片からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記複数のバイオマーカーをパターン認識分析に供する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ELISAである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
SELDIによって実施される質量分析を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記膣サンプルを、疎水性吸着材およびカチオン交換吸着材からなる群より選択される少なくとも1つの吸収材を含むバイオチップに塗布する工程を包含する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記質量分析が、膣サンプルで得られた質量分析法ピークデータを、スペクトルから抽出したデータを解析するアルゴリズムより構成されるソフトウェア解析に供する工程を包含する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記アルゴリズムが、前記バイオマーカーの少なくとも1つに関連するデータにに対して調節されたパターン認識解析を実施する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
第一の膣サンプルが妊娠中の早期に収集され、次の膣サンプルを比較するベースラインを与える、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記判定が処置のための勧告を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
処置中に少なくとも1つの膣サンプルを評価することによって処置を監視して、羊膜内環境の状態を示すバイオマーカーの膣サンプル内での存在または非存在を判定する工程をさらに包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記判定が、抗生物質処置、早産防止薬処置、抗炎症剤処置、または抗酸化剤処置を含む処置の勧告を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記判定が分娩の誘発を含む処置の勧告を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記判定が帝王切開術を含む処置の勧告を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
羊膜内環境の評価のための方法であって、(a)被験体から膣サンプルを採取する工程、(b)該膣サンプルの評価からの結果が該被験体に関する診断または予後判定を通知するように、羊膜内環境の状態を示す1つ以上の酸化ペプチドまたはカルボニル化ペプチドのサンプル中での存在または非存在を判定するために、該サンプルを分析に供する工程、を包含する方法。
【請求項22】
前記膣サンプルが、酸化ペプチドまたはカルボニル化ペプチド中に組み込まれるジニトロフェノールによって処置される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ELISAである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
SELDIによって実施される質量分析を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記膣サンプルを、疎水性吸着材およびカチオン交換吸着材からなる群より選択される少なくとも1つの吸収材を含むバイオチップに塗布する工程を包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記質量分析が、前記膣サンプルで得られた質量分析法ピークデータを、スペクトルから抽出したデータを解析するアルゴリズムより構成されるソフトウェア解析に供する工程を包含する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記アルゴリズムが、複数の酸化ペプチドまたはカルボニル化ペプチドに関連するデータに対して調節されたパターン認識解析を実施する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記複数の酸化ペプチドまたはカルボニル化ペプチドがパターン認識解析に供される、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
第一の膣サンプルが妊娠中の早期に収集され、次の膣サンプルを比較するベースラインを与える、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
判定が処置のための勧告を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
処置中に少なくとも1つの膣サンプルを評価することによって処置を監視して、1つ以上の酸化ペプチドまたはカルボニル化ペプチドの膣サンプル内での存在または非存在を判定する工程をさらに包含する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記判定が抗生物質処置、早産防止薬処置、抗炎症剤処置、または抗酸化剤処置を含む処置の勧告を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記判定が分娩の誘発を含む処置の勧告を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記判定が帝王切開術を含む処置の勧告を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
抗ジニトロフェノール抗体を含むバイオチップに処置膣サンプルを塗布して、組み込まれたジニトロフェノール基に相当する、ジニトロフェノールによって処置していないサンプルと比較した分子量の変化に対して調節した質量分析に該サンプルを供する、請求項22に記載の方法。
【請求項36】
抗ジニトロフェノール抗体を含むバイオチップに処置膣サンプルを塗布して、酸素の分子量に相当する、ジニトロフェノールによって処置していないサンプルと比較した変化すなわち約16Daに対して調節した質量分析に該サンプルを供する、請求項22に記載の方法。
【請求項37】
前記酸化ペプチドまたはカルボニル化ペプチドの全カルボニル含有量を、ジニトロフェニルヒドラジンを用いてペプチドを誘導体化することによって測定する、請求項21に記載の方法。
【請求項38】
時間に対する被験体の羊膜内環境の状態を調節する方法であって、(i)該被験体から採取した少なくとも2つの膣サンプルの質量分析によって生成されたスペクトルを提供する工程、(ii)該スペクトルからデータを抽出し、該スペクトル中の少なくとも2つのピークに対して調節したパターン認識解析に該データを供する工程、を包含する方法。
【請求項39】
膣液サンプルから羊膜内環境の状態を示す少なくとも2つのバイオマーカーの存在を検出するためのキットであって、(a)分析のために質量分析計に挿入するのに適した基材、(b)該膣液サンプルを基材に塗布して、該基材を質量分析に供するための説明書を備える、キット。
【請求項40】
前記基材がバイオチップである、請求項39に記載のキット。
【請求項41】
前記バイオチップが疎水性吸着材およびカチオン交換吸着材から選択される少なくとも1つの吸収材を含む、請求項40に記載のキット。
【請求項42】
前記バイオチップが抗ジニトロフェノール吸収材を備える、請求項40に記載のキット。
【請求項43】
別の容器内に、標準として使用される純粋形態のある量のバイオマーカーをさらに備える請求項39に記載のキット。
【請求項44】
未結合物質を前記基材から除去するための洗浄溶液を含む、請求項43に記載のキット。
【請求項45】
膣液サンプルから羊膜内環境の状態を示す少なくとも1つの酸化ペプチドまたはカルボニル化ペプチドの存在を検出するためのキットであって、(a)ペプチドに結合する基材と、(b)膣液サンプルを基材に塗布して、基材を分析に供するための説明書とを含む、キット。
【請求項46】
ELISA基材を含む、請求項45に記載のキット。
【請求項47】
分析のために質量分析計への挿入に適した基材を備える、請求項45に記載のキット。
【請求項48】
別の容器に、標準として使用される純粋形態のある量の酸化ペプチドまたはカルボニル化ペプチドをさらに備える、請求項45に記載のキット。
【請求項49】
未結合物質を基材から除去するための洗浄溶液を備える、請求項48に記載のキット。
【請求項50】
膣液中に存在し、羊膜内環境の状態を示すバイオマーカーを同定する方法であって:
(a)質量分光分析によって膣液サンプルをプロファイリングする工程、
(b)質量分光分析によって羊水のサンプルをプロファイリングする工程、ならびに
(c)(a)および(b)で得たプロファイルを比較して、羊水にも見出される膣液中のバイオマーカーを同定する工程、
を備える方法。
【請求項51】
臨床状態に、羊水にも見出される膣液中のバイオマーカーの存在または非存在を相関させることをさらに含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記臨床状態が胚膜の破裂である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記臨床状態が羊膜内感染である、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記臨床状態が羊膜内炎症である、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
膣液中に存在し、羊膜内環境の状態を示すバイオマーカーを同定する方法であって:
(a)正常妊娠を有する被験体からの第一の膣液サンプルを、質量分光分析によってプロファイリングする工程、
(b)異常な臨床状態を特徴とする妊娠を有する被験体からの第二の膣液サンプルを、質量分光分析によってプロファイリングする工程、ならびに
(c)膣液中のバイオマーカーの存在または非存在を、妊娠の臨床状態に相関させる工程、
を包含する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−514284(P2006−514284A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−568314(P2004−568314)
【出願日】平成15年11月13日(2003.11.13)
【国際出願番号】PCT/US2003/036118
【国際公開番号】WO2004/072638
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(501497253)サイファージェン バイオシステムズ インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】