説明

美爪料

【課題】 耐光性の向上(褪色防止)に優れ、黄味方向への色味変化のない、美爪料を提供する。
【解決手段】 没食子酸プロピル、フェルラ酸、トコトリエノールの中から選ばれる1種または2種以上の耐光性成分を0.001〜1.0質量%含有し、さらに皮膜形成剤(ニトロセルロース等)を5〜25質量%、色材(有機顔料、無機顔料、金属酸化物、金属水酸化物、パール光沢材、ラメ剤等)を0.00001〜5質量%含有し、所望によりさらには溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルアルコール等)を含有する、美爪料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネールエナメル、ネールエナメルベースコート、ネールエナメルオーバーコート等に代表される美爪料に関する。さらに詳しくは、耐光性の向上(褪色防止)効果に優れる美爪料に関する。
【背景技術】
【0002】
美爪料には、通常、着色成分として有機顔料、無機顔料、パール剤などが配合されているが、中でも、色相が豊富かつ鮮明で、透明性や着色力の大きな有機顔料が汎用されている。しかし、この有機顔料は、光、熱、湿気等の外的要因により褪色しやすいという問題があり、特に光(紫外線)による褪色は大きな問題となっている。
【0003】
この対応策として従来、メトキシケイ皮酸オクチル、t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤が用いられていた。また、淡色系のネールエナメルに塩酸、硝酸、リン酸等の無機酸、または酢酸、クエン酸、酒石酸等の有機酸を少量添加することによって色調を安定化し、ネールエナメルの退色を防止する方法などが検討されていた(例えば特許文献1参照)。
【0004】
しかしながらこの場合、有機顔料を用いて整色した色味によっては、十分な褪色防止効果が得られない、あるいは褪色防止効果が全く得られない、等の不具合があり、意図した通りの色味をつくることができないことがしばしばあった。さらに、紫外線吸収剤を多量に配合すると基剤の黄変色がみられるなど、黄味方向への色味変化がみられるという不具合があった。
【0005】
【特許文献1】特開平6−100416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、耐光性の向上(褪色防止)効果に優れる美爪料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、没食子酸プロピル、フェルラ酸、トコトリエノールの中から選ばれる1種または2種以上の耐光性成分を0.001〜1.0質量%含有する美爪料を提供する。
【0008】
また本発明は、さらに皮膜形成剤5〜25質量%を含有する、上記美爪料を提供する。
【0009】
また本発明は、さらに色材を0.00001〜5質量%含有する、上記美爪料を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、特に耐光性の向上(褪色防止)に優れる美爪料が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳述する。
【0012】
本発明の美爪料は、没食子酸プロピル、フェルラ酸(=4−ヒドロキシ−3−メトキシケイ皮酸)、トコトリエノールの中から選ばれる1種または2種以上の耐光性成分を含有する。なおトコトリエノールはα−、β−、γ−、δ−型の4タイプのものがあるが、本発明では上記のいずれも用いることができる。上記耐光性成分の中でも、没食子酸プロピル、フェルラ酸がより好ましく用いられ、特には没食子酸プロピルが最も好ましく用いられる。
【0013】
上記耐光性成分の配合量は、美爪料中に0.001〜1.0質量%であり、好ましくは0.01〜0.2質量%である。0.001質量%未満では本願発明効果である褪色性防止効果が得られず、一方、1.0質量%を超えて配合した場合、基剤の褐変色の要因となる。
【0014】
本発明の美爪料には、通常、さらに皮膜形成剤が配合される。皮膜形成剤としては、ニトロセルロース、アクリル樹脂など、通常、化粧品に用いられている公知のものを使用することができるが、特に溶剤系美爪料では、好ましくはニトロセルロースである。具体的には、ニトロセルロースRS1/2秒、ニトロセルロースLIG1/2秒、ニトロセルロースHIG1/2秒、ニトロセルロースSS1/2秒、ニトロセルロースHIG1秒、ニトロセルロースHIG2秒、ニトロセルロースHIG7秒、ニトロセルロースHIG20秒、ニトロセルロースLIG1/4秒、ニトロセルロースHIG1/4秒、ニトロセルロースLIG1/8秒、ニトロセルロースHIG1/8秒、ニトロセルロースHIG1/16秒等が挙げられるが、これら例示に限定されるものではない。皮膜形成剤は1種または2種以上を用いることができる。
【0015】
皮膜形成剤の配合量は、美爪料全量に対し、5〜25質量%が好ましく、特には10〜20質量%である。5質量%未満では配合による効果の発現が十分でない場合があり、一方、25質量%を超えると塗布しにくくなる傾向にある。
【0016】
また本発明の美爪料には、通常、さらに色材が配合される。色材としては、有機顔料、無機顔料、金属酸化物および金属水酸化物、パール光沢材、ラメ剤等が挙げられる。
【0017】
有機顔料としては、例えば赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色305号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号および青色404号や、さらに赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号および青色1号等が挙げられ、さらにこれらの有機顔料がジルコニウムレーキ、バリウムレーキまたはアルミニウムレーキ等のものでもよい。
【0018】
無機顔料としては、例えば紺青、群青、マンガンバイオレット、(酸化)チタン被覆マイカおよびオキシ塩化ビスマス等が挙げられる。
【0019】
金属酸化物および金属水酸化物としては、例えば酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、シリカ、酸化鉄(α−Fe、γ−Fe、Fe、FeO等)、黄色酸化鉄(特に棒状のもの)、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、水酸化鉄、酸化チタン(特に粒径0.001〜0.1μmの二酸化チタン)、低次酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化クロム、水酸化クロム、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ニッケルや、これらの2種以上の組み合わせによる複合酸化物および複合水酸化物、例えばシリカアルミナ、チタン酸鉄、チタン酸コバルト、リチウムコバルトチタネート、アルミン酸コバルト等が挙げられる。
【0020】
パール光沢材料としては、例えば雲母チタン系複合材料、雲母酸化鉄系複合材料、ビスマスオキシクロライド、グアニンや、さらに、酸化窒化チタンおよび/または低次酸化チタンを含有するチタン化合物で被覆された雲母等が挙げられる。雲母チタン系複合材料のチタンについては二酸化チタン、低次酸化チタン、酸化窒化チタンのいずれでもよい。また雲母チタン系複合材料またはビスマスオキシクロライドに、例えば酸化鉄、紺青、酸化クロム、カーボンブラック、カーミンあるいは群青等をさらに混合したものであってもかまわない。
【0021】
またラメ剤としては、例えば酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、着色酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等のパール顔料、酸化チタン被覆合成マイカ、エポキシ樹脂被覆アルミ蒸着ポリエチレンテレフタレート(PET)、アルミ蒸着PET、アクリル樹脂コートアルミニウム、色材含有樹脂被覆アルミニウム、色材含有樹脂被覆アルミ蒸着PET、ポリメチルメタクリレート/PET積層末、色材含有ポリメチルメタクリレート/PET積層末、ベンガラ・シリカ被覆アルミニウム、酸化チタン被覆ガラスフレーク等が挙げられる。
【0022】
本発明では、色材として有機顔料を配合した場合であっても、従来問題となっていた光、熱、湿気等の外的要因による褪色という不具合を解消することができた。また、従来、紫外線吸収剤を多配合することにより生じていた基剤の黄変色、褐変色等など、黄味方向への色味変化という不具合も解消できた。
【0023】
色材の配合量は、特に限定されるものでないが、通常0.00001〜5質量%程度配合される。より好ましくは0.0001〜2.0質量%である。
【0024】
本願発明では、色材の中でも特に有機顔料を0.0001〜0.1質量%程度配合した場合であっても、褪色防止効果に極めて優れる。
【0025】
本発明美爪料ではさらに、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲内で、通常化粧料に用いられる樹脂(例えばアルキッド樹脂など)、可塑剤、溶剤、香料、薬剤、有機変性ベントナイト、水性成分、油性成分、艶消剤、充填剤、界面活性剤、金属石鹸、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の一般に美爪料に配合される原料を配合することができる。ただしこれら例示に限定されるものでない。
【0026】
なお上記溶剤としては、従来用いられているエステル系、アルコール系、炭化水素系等の公知のものを使用することができる。例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、乳酸ブチル、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、トルエン、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、プロピルアルコール等が挙げられる。中でも酢酸ブチル、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、エチルアルコール等が好ましく用いられる。溶剤は1種または2種以上を用いることができる。溶剤の配合量は使用性、色等によっても異なるが、一般に美爪料全量に対し50〜85重量%程度が好ましい。
【0027】
本発明の美爪料は、化粧品業界において一般にマニキュア類、美爪用製品等として用いられている爪被覆剤を広く含むものであり、例えば、ベースコート、ネールエナメル、トップコート(オーバーコート)の他、ネールガード等のネールケア製品等が挙げられるが、これら例示に限定されるものでない。
【実施例】
【0028】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれによってなんら限定されるものではない。配合量は特記しない限りすべて質量%である。
【0029】
まず、本発明に用いた評価方法について説明する。
【0030】
[耐光性試験]
各試料を、キセノンフェードメーターにより50℃で、30時間で放射照度30MJ/mのエネルギーを照射した前後の色味変化をΔEとして評価した。ΔEの値が小さいほど耐光性(褪色防止効果)に優れる。
【0031】
(実施例1〜6、比較例1〜6)
下記表1〜2に示す配合組成からなる試料を調製し、上記評価基準により、耐光性(褪色防止効果)について評価した。結果を表1〜2に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】

【0034】
上記表1〜2の結果から明らかなように、本願発明に用いられる耐光性成分を配合した実施例1〜6では、いずれもΔEの値が約5以下に抑えられ、耐光性に優れ、黄味方向への色味変化もみられないことがわかった。中でも耐光性成分として没食子酸プロピルを配合した実施例1、2は耐光性に特に優れる。一方、本願発明に用いられる耐光性向上成分を配合しない比較例1〜6では、ΔE値の値が大きく、耐光性に劣ることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
没食子酸プロピル、フェルラ酸、トコトリエノールの中から選ばれる1種または2種以上の耐光性成分を0.001〜1.0質量%含有する、美爪料。
【請求項2】
さらに皮膜形成剤5〜25質量%を含有する、請求項1記載の美爪料。
【請求項3】
さらに色材を0.00001〜5質量%含有する、請求項1または2記載の美爪料。

【公開番号】特開2006−160657(P2006−160657A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−353712(P2004−353712)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】