説明

美白剤

【課題】 安全かつ美白作用に優れた内用剤および外用剤を提供すること。
【解決手段】 本発明者らは、メラニン合成抑制作用の優れた機能性素材を見つけるため、マウス由来のB16メラノーマ細胞を用いメラニン合成抑制作用の評価を行なった。その結果、オプンティア・フィカス・インディカは強いメラニン合成抑制作用を有していた。すなわち、本発明のサボテン科オプンティア属植物はメラニン合成抑制作用を有しており、化粧料や食品のような形態で使用可能な美白剤として用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美白作用を持つサボテン科オプンティア属植物の粉末、抽出物または抽出物の乾燥粉末を含有する美白剤に関する。
【背景技術】
【0002】
シミやソバカスは、ホルモン分泌の異常や紫外線曝露に起因する皮膚症状である。そのメカニズムとしては、紫外線により色素細胞が活性化することでメラニンが生成され、皮膚組織に沈着することがあげられる。シミやソバカスのない美しい肌を保つには紫外線から皮膚を防御することが大切であるが、紫外線に全く曝露されない日常生活をおくることは現実的には不可能である。そのため、多くの人々に紫外線によるシミやソバカスの生成を緩和・軽減する素材が必要とされている。現在までに、上記のような機能性素材を見つけるため多くの研究がなされてきた。その結果、ある種の植物はメラニン合成抑制作用を有し、美白剤として有用であることが知られている。しかしながら、サボテン科オプンティア属植物がメラニン合成抑制作用を有することは知られていない。
【0003】
サボテン科オプンティア属に属するオプンティア・フィカス・インディカ(Opuntia ficus−indica)は中南米原産の植物であり、ウチワサボテンの一種である。砂漠地帯では水と食料を確保するために栽培されており、メキシコでは野菜として食用されている。
【0004】
オプンティア・フィカス・インディカは咳、熱、のどの痛み、肋膜炎、浮腫、やけどに対し有効であることが知られており、地上茎のとげを取り除き、すりおろして服用されている。
【非特許文献1】コンパクト13 原色薬草図鑑Ip.221 発行者:福田元次郎、出版所:株式会社 北隆館
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はサボテン科オプンティア属植物の粉末、抽出物または抽出物の乾燥粉末を含有することを特徴とする、安全かつ美白作用に優れた内用剤および外用剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はサボテン科オプンティア属植物の粉末、抽出物または抽出物の乾燥粉末を用いた美白剤に関するものであり、好ましくはサボテン科オプンティア属オプンティア・フィカス・インディカの粉末、抽出物または抽出物の乾燥粉末を用いた美白剤であり、更に好ましくはサボテン科オプンティア属オプンティア・フィカス・インディカの地上部の粉末、抽出物または抽出物の乾燥粉末を用いた美白剤に関する。また本発明の美白作用はメラニン合成抑制作用によるものであり、上記の美白剤を含有することを特徴とする化粧料および食品に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、サボテン科オプンティア属植物の粉末、抽出物または抽出物の乾燥粉末からなる美白剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は、下記実施形態の記載により限定して解釈するべきでなく、特許請求の範囲における記載の範囲内で種々の変更が可能である。
【0009】
本発明のサボテン科オプンティア属植物の粉末、抽出物または抽出物の乾燥粉末としては、オプンティア・フィカス・インディカ、オプンティア・バシラリス(Opuntia basilaris)、オプンティア・マキシマ(Opuntia maxima)、オプンティア・ポリアカンタ(Opuntia polyacantha)、オプンティア・ミクロダシス(Opuntia microdasys)等の植物の粉末、抽出物または抽出物の乾燥粉末が好ましく用いられる。中でも、オプンティア・フィカス・インディカの粉末、抽出物または抽出物の乾燥粉末が好ましく用いられる。
【0010】
本発明において、用いられるサボテン科オプンティア属植物の産地については特に制限はなく、適宜入手可能なものを使用することが出来る。
【0011】
本発明において、用いられるサボテン科オプンティア属植物の部位は特に制限はないが、好ましくは植物の地上部を用いるのが望ましい。
【0012】
本発明において、サボテン科オプンティア属植物の粉砕方法は特に制限はなく、常法により粉砕することが出来る。
【0013】
本発明において、サボテン科オプンティア属植物からの抽出方法は特に制限はなく、常法により抽出することが出来る。
【0014】
本発明において、サボテン科オプンティア属植物を抽出するために用いられる抽出溶媒としては特に制限はなく、適宜利用可能な溶媒を使用することが出来る。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定して解釈すべきではなく、特許請求の範囲における記載の範囲内で種々の変更が可能である。
【0016】
オプンティア・フィカス・インディカの乾燥した地上部を粉砕加工し、オプンティア・フィカス・インディカ乾燥粉末を得た。
【0017】
オプンティア・フィカス・インディカ乾燥粉末50gを50%エタノール/水を用いて抽出し、オプンティア・フィカス・インディカ抽出物(以下「OFI抽出物」という)9.53gを得た。
【0018】
(メラニン合成抑制作用の評価)
オプンティア・フィカス・インディカのメラニン合成抑制作用を、マウス由来のB16メラノーマ細胞(RCB1283:独立行政法人理化学研究所)を用い、以下のように評価した。
【0019】
(試験培地の調製)
テオフィリン(和光純薬工業株式会社製)を133.4mMとなるようにジメチルスルホキシド(和光純薬工業株式会社製)で溶解した。さらに、通常培地(10%ウシ胎児血清含有D−MEM:シグマ製)で希釈し試験培地とした。
【0020】
(実施例1)
OFI抽出物を濃度0.33mg/mlとなるように試験培地に溶解させ、0.2μmのフィルターで濾過滅菌を行ったものを実施例1とした。
【0021】
(実施例2)
OFI抽出物を濃度1mg/mlとなるように試験培地に溶解させ、0.2μmのフィルターで濾過滅菌を行ったものを実施例2とした。
【0022】
(実施例3)
OFI抽出物を濃度3mg/mlとなるように試験培地に溶解させ、0.2μmのフィルターで濾過滅菌を行ったものを実施例3とした。
【0023】
(比較例1:陽性コントール)
コウジ酸を蒸留水で溶解後、試験培地にて希釈し、0.15mg/mlに調製後、0.2μmのフィルターで無菌濾過を行ったものを比較例1とした。
【0024】
(比較例2:陰性コントール)
試験培地のみを0.2μmのフィルターで無菌濾過を行ったものを比較例2とした。
【0025】
(B16メラノーマ細胞の調製)
凍結B16メラノーマ細胞を通常培地(10%ウシ胎児血清含有D−MEM:シグマ製)を用い融解し、6ウェルプレートに播種後、炭酸ガスインキュベーター内で培養した。さらに6ウェルプレートから75cmフラスコへ継代して、炭酸ガスインキュベーターで培養を継続した。その後、75cmフラスコから細胞を回収して6ウェルプレートに播種し、炭酸ガスインキュベーター内で24時間培養を行った。上記6ウェルプレートより培地を除去後、被験物質を含んだ培地を添加し、3日間培養を行った。
【0026】
3日間培養を行った6ウェルプレートから細胞培養上清を除去し、2mlのリン酸緩衝液(PBS(−):シグマ製)で細胞を1回洗浄後、Trypsin−EDTA(シグマ製)を添加した。その後、室温で4〜5分処理後、10%ウシ胎児血清含有PBS(−)を添加してトリプシンの中和を行った。その後、ピペッティングにて細胞の剥離を行い、細胞を回収した。
【0027】
2,000rpmで5分間遠心分離を行い、上清を除去した後、1mlのPBS(−)を添加し懸濁させた。懸濁液から60μlをサンプリングし、細胞数を計測した。残りの細胞は同様に遠心分離を行い、上清を完全に除去した。
【0028】
細胞に1N水酸化ナトリウム溶液を250μlで添加し、65℃〜75℃の恒温槽で60分間加温後、振盪し完全に可溶化させた。
【0029】
細胞溶解液を96ウェルプレートへ200μl/wellで移し、バリオスキャン(サーモ製)にて生成メラニン量を490nmの波長で測定した。
【0030】
1N水酸化ナトリウム溶液をブランクとし、その値を差し引いたΔ値において、細胞数による補正を行い、実施例と比較例の比較を行った。比較例2の値を指標に被験物質のメラニン合成抑制作用を評価した。
【0031】
(メラニン合成抑制作用の測定)
メラニン合成抑制作用は次の式から求められる阻害率で表した。
【0032】
阻害率(%)=100−(被験物質の吸光度/比較例2の吸光度)×100
【0033】
結果を表1に示す。
【表1】

【0034】
表1に示すように、比較例1(陽性コントロール)の阻害率が65.2%であったのに対し、OFI抽出物の阻害率はそれぞれ0.33mg/mlで23.1%、1mg/mlで48.7%、3mg/mlの濃度で78%であり、強いメラニン合成抑制作用を有していた。
【0035】
以上の結果より、OFI抽出物が非常に有用な美白作用を有する素材であることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のサボテン科オプンティア属植物はメラニン合成抑制作用を有しており、化粧料や食品のような形態で使用可能な美白剤として用いることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
サボテン科オプンティア属植物の粉末、抽出物または抽出物の乾燥粉末からなる美白剤。
【請求項2】
上記サボテン科オプンティア属植物が、オプンティア・フィカス・インディカ(Opuntia ficus−indica)である請求項1に記載の美白剤。
【請求項3】
請求項1及び2に記載の美白剤を含む化粧料または食品。

【公開番号】特開2009−263254(P2009−263254A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112503(P2008−112503)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(398028503)株式会社東洋新薬 (182)
【Fターム(参考)】