説明

美白用組成物。

【課題】 本発明は微生物由来の新規な美白作用を有する成分を開発することを目的とする。
【解決手段】 本発明は紅麹菌による発酵物を含有することを特徴とする美白用組成物に関するものであり、好ましくは前記発酵物が紅麹菌により大豆を発酵させた発酵物である美白用組成物に関するものであり、さらに好ましくは紅麹菌による発酵物のエタノール抽出物を有効成分として含む美白用組成物に関する。さらには前記の美白用組成物を含有する美白用化粧料および美白用食品に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紅麹菌による発酵物を含有する新規な美白用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
古来より日本においては「色の白いは七難隠す」といわれ、肌が白いことは美しいとされてきた。しかしながら、近年オゾン層の破壊などにより、地表に到達する紫外線の量が増え、白い肌を維持することが以前より困難になっている。このような状況を鑑み、現在では様々な美白成分が開発され、それらを配合した化粧料や食品、医薬品などが市場に流通している。
【0003】
このように美白を目的として添加される成分としては、例えばコウジ酸(特許文献1および2)、アルブチン(特許文献3)、ビタミンC(特許文献3および4)、ハイドロキノン(特許文献5)などが挙げられる。しかしながら、コウジ酸には発ガン性が疑われ、アルブチンはメラニン色素を淡色化する還元作用がないため即効性が弱く、ビタミンCはそのままでは安定性に欠け浸透力が弱い、ハイドロキノンは還元作用を有するため即効性には優れるものの安定性に欠けるといった難点が存在していた。このため、現在も美白作用を有する新規な成分の探索が行われている。
【0004】
また、麹菌からコウジ酸が得られたように、様々な微生物由来の美白成分を得ようとする試みが行われている。例えば乳酸菌由来のリン酸化多糖類を有効成分とした美白剤が挙げられる(特許文献6)。
【特許文献1】特開2005−336113号公報
【特許文献2】特開2008−50292号公報
【特許文献3】特開2005−289880号公報
【特許文献4】特開2005−120051号公報
【特許文献5】特許第3747053号公報
【特許文献6】特開平9−249524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような需要を鑑み、本発明は微生物由来の新規な美白作用を有する成分を開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は紅麹菌による発酵物を含有することを特徴とする美白用組成物に関するものであり、好ましくは前記発酵物が紅麹菌により大豆を発酵させた発酵物である美白用組成物に関するものであり、さらに好ましくは紅麹菌による発酵物のエタノール抽出物を有効成分として含む美白用組成物に関する。さらには前記の美白用組成物を含有する美白用化粧料および美白用食品に関するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、紅麹菌による発酵物を含有する新規な美白用組成物を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は、下記実施形態の記載により限定して解釈するべきでなく、特許請求の範囲における記載の範囲内で種々の変更が可能である。
【0009】
本発明の発酵に用いられる紅麹菌は、Monascus属に属する紅麹菌であれば良く、Monascus pilosus、Monascus ankaやMonascus purpureusなどを用いることが出来る。好ましくはMonascus pilosusを用いるのが良い。
【0010】
紅麹菌により発酵させる原料(以後「発酵原料」という)は、紅麹菌の発酵に適した素材であれば制限されるものではないが、好ましくは大豆、蕎麦、米、小麦から選ばれるものである。
【0011】
紅麹菌による発酵の条件としては特段の制限はなく、発酵原料と紅麹菌の組み合わせ毎に、加水条件、温度、pH、発酵時間、好気条件や嫌気条件といった発酵条件などを適宜調整することが出来る。
【0012】
本発明に用いる美白用組成物は皮膚美白効果を有し、本発明に用いる美白用組成物を有効成分とする化粧料や食品を提供することが出来る。
【0013】
本発明の美白用組成物を化粧料に添加して用いる場合、その配合量は美白効果を発揮する範囲であれば特に制限されるものではなく、本願の目的とする美白効果が得られる範囲であれば良い。
【0014】
本発明の美白用組成物を化粧料に用いる場合、その他に配合する成分としては特段の制限はなく、一般に化粧料の原料として用いられる成分を配合して化粧料を製造することが出来る。
【0015】
本発明の美白用組成物を含有する化粧料に配合しうる成分としては無機顔料や有機顔料などの粉末成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル類、シリコーン、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子化合物、増粘剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖類、アミノ酸類、有機アミン類、合成樹脂エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン類、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料、動植物由来の素材、水等の1種または2種以上が挙げられ、これらを必要に応じて適宜配合することができる。
【0016】
本発明の美白用組成物を含有する化粧料の剤形としては特段の制限はなく、常法により調整される化粧水、乳液、クリーム、軟膏、ゲル、ローション、スティック、パック、有機溶媒による溶液など、通常化粧料、医薬品、医薬部外品として外皮に用いられうる剤形が挙げられる。
【0017】
本発明の美白用組成物を食品に添加して用いる場合、その配合量は美白効果を発揮する範囲であれば特に制限されるものではなく、本願の目的とする美白効果が得られる範囲であれば良い。
【0018】
本発明の美白用組成物を食品に用いる場合、その他に配合する成分としては特段の制限はなく、一般に食品の原料として用いられる成分を配合して食品を製造することが出来る。
【0019】
本発明の美白用組成物を含有する食品に配合しうる成分としては賦形剤、甘味料、酸味料、pH調整剤、増粘剤、滑沢剤、香辛料、動植物由来の素材、コーティング剤、結合剤、水等の1種または2種以上が挙げられ、これらを必要に応じて適宜配合することができる。
【0020】
本発明の美白用組成物を含有する食品の剤形としては特段の制限はなく、固形状および液状、ゲル状、カプセル状、タブレット状、顆粒状、ゼリー状、など、通常の食品、医薬品、医薬部外品、機能性食品、特定保健用食品などとして服用される剤形が挙げられる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定して解釈すべきではなく、特許請求の範囲における記載の範囲内で種々の変更が可能である。
【0022】
(実施例1:大豆紅麹発酵物の調製)
原料大豆を洗浄し、加水した後、水切りを行い、オートクレーブにて滅菌を行った。滅菌後、大豆の表面温度が30℃程度になるまで放熱し、紅麹菌Monascus pilosusを植菌、30℃の温度条件で14日間培養を行った。
【0023】
培養から14日間経過後、紅麹菌を加熱により失活させ、さらに乾燥させて、大豆紅麹発酵物を得た。
【0024】
得られた大豆紅麹発酵物100gに対して、50%EtOH/水を100ml添加し抽出を行った。上清を回収し、残渣に対して前記の抽出を計3回繰り返し、大豆紅麹発酵物の抽出上清を得た。得られた上清をエバポレーターで乾燥し、被験大豆紅麹乾固物を得た。
【0025】
(実施例2:B16メラノーマ細胞を用いたメラニン産生抑制作用評価試験)
本試験では、独立行政法人理化学研究所より入手したB16メラノーマ細胞を使用した。
【0026】
B16メラノーマ細胞をCOインキュベーター内で、75cmフラスコを用いて、通常培地により培養した。
【0027】
75cmフラスコから6wellプレートの各wellに0.5×10cells/mlの細胞浮遊液を2mlずつ播種し、COインキュベーター内で24時間前培養を行った。
【0028】
各wellより培地を除去後、被験大豆紅麹乾固物を含んだ0.5%Dimethyl sulfoxide(和光純薬工業製;以下、DMSOとする)含有培地を1.5ml/wellで添加、更に0.5%DMSO/0.667mMテオフィリン(Sigma製)含有培地を1.5ml/wellで添加し、72時間培養した。72時間経過後、各wellから細胞培養上清を除去し、2mlPhosphate Buffered Salts Tablets without Magnesium And Calcium溶液(以下、オープンPBS(−)とする)で細胞を1回洗浄した。
【0029】
オープンPBS(−)で3倍に希釈したトリプシン−EDTA(Sigma社製)を500μl/wellずつ添加し、細胞全体が浸漬させ、室温で5分静置。検鏡により細胞の剥離の有無を観察し、剥離開始が観察された後タッピングを行った。10%熱非働化したFetal Bovine Serum(以下、FBSという)含有オープンPBS(−)を500μl/wellずつ添加し、トリプシンを中和、数回ピペッティングし細胞を均一化した後、1.7mlエッペンドルフチューブに細胞を回収した。更に300μlのオープンPBS(−)で洗いこみ回収した。
【0030】
回収した細胞を入れた1.7mlエッペンドルフチューブを、2,000rpmで5分間遠心を行い、上清を除去しタッピングを行った後、1mlのオープンPBS(−)を添加し、懸濁させ60μlをサンプリングし細胞計数を行った。サンプリングに用いた細胞以外も同様に遠心し、上清を除去後、3,000rpmで1分間遠心を行い、再度上清の除去を行った。
【0031】
サンプリングした60μlの細胞を、180μlの通常培地を入れた1.7mlエッペンドルフチューブに添加し、懸濁させた後細胞計数を行った。血球計算板の5区画において計数を行い、5区画の平均数から総細胞数を算出した。
【0032】
サンプリングに用いなかった細胞をタッピングにより分散させ、1%Triton X−100/1N NaOH水溶液を250μl/tubeずつ添加し、voltex(IWAKI製、TM−2000)で懸濁後、65℃で1時間加温し、再度voltexを用い溶解、細胞溶解液とした。
【0033】
細胞溶解液を96wellプレートに200μl/wellずつ添加し、VARIOSKAN(Thermo electron製)により、490nmの吸光度を測定した。ブランクとしては1%Triton X−100/1N NaOH水溶液を用い、コントロールとしては被験大豆紅麹乾固物を含まず上記の処理を行った細胞溶解液を用いた。
【0034】
メラニン産生抑制作用は、下記の式を用いて評価した。
%of control=(被験大豆紅麹乾固物の吸光度のΔ値)/(コントロールの吸光度のΔ値)×100
【0035】
被験大豆紅麹乾固物の濃度は表1に示す各濃度を調整し、吸光度を測定した。
【0036】
メラニン産生抑制作用の陽性対照として表1に記載の濃度のコウジ酸を用いた。なお、メラニン産生抑制効果は、細胞数当たりの吸光度に補正したデータである。
【0037】
メラニン産生抑制試験の結果を表1に示す。

【0038】
(実施例3:被験大豆紅麹乾固物の成分分析)
一般に麹菌による発酵物には、コウジ酸が含まれることが知られているが、本願の大豆紅麹発酵物の有効性がコウジ酸によるものではないことを確認するため、以下の成分分析を行った。
【0039】
コウジ酸(和光純薬製)約100mgを正確に量り、50%EtOHで100mLに定容した。これを50%EtOHで10倍、100倍に希釈した後、0.45μmのフィルターでろ過、コントロールコウジ酸液とした。
【0040】
被験大豆紅麹乾固物約20mgを正確に量り、50%EtOHで20mLに定容した。これを50%EtOHで10倍、100倍に希釈した後、0.45μmのフィルターでろ過、被験液とした。
【0041】
得られたコントロールコウジ酸液および被験液の各濃度をそれぞれHPLC(Agilent製;1100series)で分析を行った。HPLCの分析条件は、検出器;UV、測定波長;245nm、カラム(waters製;Atlantis HILIC Silicaカラム、4.6×150.3μm)及びガードカラム、注入量;2μl、カラム温度:30℃、流量;1mL/min、移動相;10mmolクエン酸緩衝液:アセトニトリル=3:7であった。
【0042】
HPLCによる分析の結果、被験液に含まれるコウジ酸の含量は0.11%であった。
【0043】
以上のことから、本願発明の紅麹発酵物は、コウジ酸を微量にしか含まないながらも、美白作用が知られたコウジ酸と同程度のメラニン産生抑制作用を有していることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本願発明の紅麹発酵物は、美白作用を知られながらも健康被害が懸念されるコウジ酸と同程度のメラニン生成抑制作用を有しており、美白作用を有する新規素材として化粧料や食品などに添加して用いることが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紅麹菌による発酵物を含有することを特徴とする美白用組成物。
【請求項2】
紅麹菌による発酵物が、大豆を発酵させた発酵物である請求項1に記載の美白用組成物。
【請求項3】
請求項1または2の発酵物のエタノール抽出物を有効成分として含むことを特徴とする美白用組成物。
【請求項4】
請求項1から3に記載の組成物を含有する美白用化粧料および美白用食品。


【公開番号】特開2010−150217(P2010−150217A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332633(P2008−332633)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(398028503)株式会社東洋新薬 (182)
【Fターム(参考)】