説明

羽毛袋用不織布及びこれを用いたダウンプルーフ構造体

【課題】 羽毛布団、ダウンジャケット、クッションなどのダウンプルーフ構造体の表生地と裏生地の間に用いる羽毛袋用の不織布に関して、羽毛の充填作業の能率向上に優れ、また羽毛の吹き出し防止効果に優れると共に、ダウンプルーフ構造体として用いた場合に形状回復性にも優れた、羽毛袋用不織布及びこれを用いたダウンプルーフ構造体を提供する。
【解決手段】 羽毛を充填する袋に用いる不織布であって、前記不織布は潜在捲縮性繊維の捲縮が発現した捲縮繊維を含み、前記不織布の面密度が40〜300g/mであり、通気量が100〜600(cm/cm・s)である羽毛袋用不織布。及び、前記羽毛袋用不織布が袋状に形成されてなる羽毛袋に羽毛が充填されており、さらに前記羽毛袋の外側に通気量が5〜100(cm/cm・s)である外生地が配置されているダウンプルーフ構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば羽毛布団、ダウンジャケット、クッションなどのダウンプルーフ構造体の表生地と裏生地の間に用いる羽毛を充填するための袋(以下、羽毛袋と称することがある。)に好適に使用される不織布に関するものであり、羽毛の充填作業の能率向上に優れ、また羽毛の吹き出し防止効果に優れると共に、ダウンプルーフ構造体として用いた場合に形状回復性にも優れた、羽毛袋用不織布及びこれを用いたダウンプルーフ構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
羽毛布団、ダウンジャケット、クッションなどのダウンプルーフ構造体は表生地と裏生地の間に羽毛が充填されて形成されており、羽毛が外に抜け出す現象を防止するため、表生地および裏生地に、羽毛の抜け出し防止の処置が施されている。このような処置としては、表生地および裏生地の織密度を高くして、通気量を極めて少なくする技術が採用されている。例えば、羽毛布団用の生地に関しては、「羽毛寝具要覧」(以下、非特許文献1)に記載されているように、「羽毛ふとん地流通協会基準」として、JIS L1096−1990に規定されたフラジール形試験機で測定した通気性(cm/cm・s)は綿織物としての平織、綾織では3以下、朱子織では2.5以下、合繊織物としてのフィラメント織物、スパン織物、綿混紡織物では2以下とされている。
【0003】
しかし、このような高密度の生地は、例えば120〜130(g/m)程度の比較的高い面密度が必要となり、その結果、硬く重い生地となってしまい、本来、軽量であるという羽毛の特性をダウンプルーフ構造体に十分に反映することが難しかった。また、通気量が極めて少ない上記生地の場合、使用に際しての蒸れや、ダウンプルーフ構造体を押圧変形した後の形状回復性を阻害するという問題もあった。また、洗濯時に洗液中に沈まないという問題もあった。
【0004】
このような問題に対して、特許文献1には、表生地と羽毛の間、および裏生地と羽毛の間にダウンパックと呼ばれる中生地が設けられた、羽毛入り衣服の技術が開示されている。この公報によれば、不織布からなる中生地を有する衣服において、この中生地不織布の通気量が5.0〜30.0cc/cm/secであるため、通気量が非常に少なく、羽毛の抜け出しを防止することが可能であることが記載されている。しかし、この中生地不織布の通気量は表生地に比べれば多いものの、やはり通気量は非常に少ないため、羽毛の吹き込み充填に時間がかかり作業効率が悪くなるという問題があった。また、この中生地不織布を用いたダウンプルーフ構造体では、中生地不織布からの空気の抜けが悪く、形状回復性に劣るという問題があった。
【0005】
また、特許文献2には、ダウンプルーフ構造体の表生地と裏生地の間に用いる羽毛用中袋用シートに関する技術が開示されている。この公報によれば、この羽毛用中袋用シートは、エレクトレット不織布の少なくとも片面に基材不織布を積層してなる積層不織布シートであって、該積層不織布シートのフラジール法による通気量が8cc/cm .sec以上であり、好ましくは、通気量が8〜100cc/cm.secであることによって、羽毛から発生する微細羽毛体の抜け防止性に優れることが記載されている。また、軽くて通気性がよく、収納性、着用時の嵩高回復性に優れるため、羽毛を保温材とした寝具や衣料を安定して提供できることが記載されている。
【0006】
しかし、この羽毛用中袋用シートの通気量は特許文献1の中生地に比べれば多いものの、やはり通気量は少ないため、羽毛の吹き込み充填に時間がかかり作業効率が悪くなるという問題があった。また、この羽毛用中袋用シートを構成するエレクトレット不織布は、洗濯後や使用後にエレクトレットの効果が低下することが予想され、微細羽毛体の抜け防止効果が長くは続かず、耐久性に劣るという問題があった。また、エレクトレット不織布の静電気のため、羽毛を中袋に充填し難いという問題があった。また、この羽毛用中袋用シートを用いた衣服を着用すると、表生地と羽毛用中袋用シートが部分的に貼り付いてしまい、ダウン衣料の外観を損ねてしまうという問題もあった。
【0007】
【特許文献1】特開2005−68571号公報
【特許文献2】特開2006−89865号公報
【非特許文献1】日本羽毛寝具製造業協同組合発行、1999年3月15日、p175
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題を解決することを目的としており、羽毛布団、ダウンジャケット、クッションなどのダウンプルーフ構造体の表生地と裏生地の間に用いる羽毛袋用の不織布に関して、羽毛の充填作業の能率向上に優れ、また羽毛の吹き出し防止効果に優れると共に、ダウンプルーフ構造体として用いた場合に形状回復性にも優れた、羽毛袋用不織布及びこれを用いたダウンプルーフ構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段は、請求項1に係る発明では、羽毛を充填する袋に用いる不織布であって、前記不織布は潜在捲縮性繊維の捲縮が発現した捲縮繊維を含み、前記不織布の面密度が40〜300g/mであり、通気量が100〜600(cm/cm・s)[JIS L1096に規定されるフラジール法による]であることを特徴とする羽毛袋用不織布である。この発明により、羽毛の充填作業の能率向上に優れ、また羽毛の吹き出し防止効果に優れると共に、ダウンプルーフ構造体として用いた場合に形状回復性にも優れた、羽毛袋用不織布及びこれを用いたダウンプルーフ構造体を提供することができる。具体的には、羽毛袋用不織布が潜在捲縮性繊維の捲縮が発現した捲縮繊維を含むため、羽毛の一部が外生地に到達しようとしても羽毛が羽毛袋用不織布に絡まり捕獲されてしまうので、羽毛が外生地に到達しなくなるか、或いは外生地に到達するまでの時間が極めて長くなり耐久性に優れるという利点がある。また、仮に外生地に到達して羽毛の先端が外生地に刺さっても、ダウンプルーフ構造体の使用時の外生地や羽毛袋用不織布の動きによって、一旦刺さった羽毛が羽毛袋用不織布によって引き戻されるという利点も考えられる。
【0010】
請求項2に係る発明では、請求項1記載の羽毛袋用不織布が袋状に形成されてなる羽毛袋に羽毛が充填されており、さらに前記羽毛袋の外側に通気量が5〜100(cm/cm・s)である外生地(表生地及び裏生地を含む)が配置されていることを特徴とするダウンプルーフ構造体であり、羽毛の吹き出し防止効果に優れると共に、形状回復性にも優れている。また、外生地が高密度の織物である必要はなく、ファッション性に優れたダウンプルーフ構造体になり得るという利点がある。
【0011】
請求項3に係る発明では、請求項1記載の羽毛袋用不織布又は請求項2記載のダウンプルーフ構造体から構成されていることを特徴とする衣料である。
【0012】
請求項4に係る発明では、請求項1記載の羽毛袋用不織布又は請求項2記載のダウンプルーフ構造体から構成されていることを特徴とする寝具である。
【発明の効果】
【0013】
上述した本発明の構成によれば、羽毛布団、ダウンジャケット、クッションなどのダウンプルーフ構造体の表生地と裏生地の間に用いる羽毛袋用の不織布に関して、羽毛の充填作業の能率向上に優れ、また羽毛の吹き出し防止効果に優れると共に、ダウンプルーフ構造体として用いた場合に形状回復性にも優れた、羽毛袋用不織布及びこれを用いたダウンプルーフ構造体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る羽毛袋用不織布及びこれを用いたダウンプルーフ構造体の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
本発明の羽毛袋用不織布は、羽毛を充填するための袋に用いる不織布である。前記羽毛は、ダウンやフェザーあるいはこれらを混合したものを適用することが可能であり、ダウンとしては、例えばカモ、アヒル、ガチョウなど、水鳥の胸部分に生えている柔らかい羽を挙げることができる。この羽は中央から柔らかい糸状の羽が放射線状に伸びた球形状をしており、そのため、非常に柔らかく、細い羽が互いに絡み合い、多くの空気層を構成するために、フェザーに比べて嵩高で、保温性にも優れている。また、フェザーとしては、例えば水鳥の体を覆う羽を挙げることができる。この羽は、羽軸があり、細い毛が木の枝のように生えており、木の葉のような形状をしており、ダウンと比較して風合いは硬く、また嵩高性には劣る傾向がある。
【0016】
前記羽毛袋としては、表地と裏地の間に介在可能である限りその形態は特に限定されず、例えば前記不織布を1つの袋状に形成した形態がある。また、例えば表地と裏地をそれぞれ前記不織布と重ね合わせ縫製などにより部分的に一体化させた表地複合シート及び裏地複合シートとしておき、これらの複合シートを、間隔を空けて縫製して、間隔をあけた部分が袋状になっている形態の羽毛袋がある。また、例えば裏地と前記不織布と重ね合わせ縫製などにより部分的に一体化させた裏地複合シートとしておき、この複合シートと前記不織布とを間隔を空けて縫製して、間隔をあけた部分が袋状になっている形態の羽毛袋がある。
【0017】
前記表地または裏地としては、通気性の布帛からなる生地にダウンプルーフ加工が施されていることが好ましい。当該生地としては、綿織物として平織、綾織、または朱子織や、合繊織物としてフィラメント織物、スパン織物、綿混紡織物などを適用することが可能である。なお、本発明の羽毛袋用不織布は、羽毛の吹き出し防止効果に優れるため、当該生地のダウンプルーフ加工は、通常の加工よりも通気量の多い粗い組織とすることができる。例えば、通常であれば、羽毛布団用の生地の通気量(cm/cm・s)は綿織物としての平織、綾織では3以下、朱子織では2.5以下、合繊織物としてのフィラメント織物、スパン織物、綿混紡織物では2以下とされているが、本発明では、通気量が5〜100(cm/cm・s)であることも可能であり、必要に応じて5〜50(cm/cm・s)であることも可能であり、5〜30(cm/cm・s)であることも可能である。また、当該生地は必ずしも高密度の織物である必要はなく、ファッション性に優れた粗い組織の生地を選択することが可能である。また、染色などの着色や意匠柄を付与した生地、或いは種々の難燃処理などの後加工を施した生地も可能である。また、より軽量化を図る上では、不織布であることも可能である。不織布の場合、ある程度の強度が必要であり、この点から前記生地が極細繊維で構成された不織布であることが好ましい。
【0018】
本発明では、前記羽毛袋用不織布の構造は、潜在捲縮性繊維の捲縮が発現した捲縮繊維を含み、面密度が40〜300g/mであり、通気量が100〜600(cm/cm・s)[JIS L1096に規定されるフラジール法による]である限り、特に限定されず、従来知られている不織布の製法である乾式法、スパンボンド法、メルトブロー法、または湿式法などによって得られる不織布を適用することが可能である。これらの製法の中でも、繊維長15〜100mmの、捲縮数5〜70個/インチを有する通常ステープル繊維と呼ばれる繊維をカード機やエアレイ装置などを使用して、繊維ウエブに形成した後、繊維ウエブにニードルパンチや水流によって交絡を施す方法を用いた一般的に乾式法と呼ばれる製法によって得られる不織布であることが好ましい。乾式法による不織布であれば、潜在捲縮性繊維の捲縮が発現し易く、また必要に応じて潜在捲縮性繊維と他の機能性を有する繊維とを均一に混合することが容易であるので、品質に優れた不織布を得ることができるという利点がある。
【0019】
前記羽毛袋用不織布は潜在捲縮性繊維の捲縮が発現した捲縮繊維を含んでいる。このような潜在捲縮繊維としては、熱による収縮特性の異なる2種類以上の樹脂成分が複合された複合繊維や、繊維の一部に特定の熱履歴を施した繊維が使用される。複合繊維には、例えば偏心型の芯鞘構造のものや、サイドバイサイド型の複合繊維が好適に用いられる。異なる樹脂成分の組み合わせとして、ポリエステル−変性ポリエステル、ポリアミド−変性ポリアミド、ポリエステル−ポリアミド、ポリエステル−ポリプロピレン、ポリプロピレン−変性ポリプロピレン、ポリプロピレン−ポリエチレンなど種々の合成樹脂を組み合わせたものが使用できる。特に、ポリエステル−変性ポリエステル若しくはポリプロピレン−変性ポリプロピレンの組み合わせからなる潜在捲縮繊維は、化学的な耐性と伸度特性の点で優れており好ましい。
【0020】
前記潜在捲縮繊維は、捲縮発現を効率的に実施し得る160〜240℃程度の捲縮発現温度で自由収縮させた場合に、初期捲縮数に較べて2倍以上の捲縮数にまで達するものが望ましい。具体的には、加熱処理によって、例えば50個/インチ以上の比較的高い捲縮数を発現することが望ましい。また、本発明に好適な前記潜在捲縮繊維の繊度範囲は、繊維ウエブ化する際の機械的強度から0.5デシテックスを下限とし、羽毛袋用不織布としての風合い若しくは緻密さを良好とするため、その上限を3.3デシテックス程度とし、さらに好ましくは、1.5デシテックス〜2.8デシテックス程度の範囲とするのが望ましい。また、好適な前記潜在捲縮繊維の繊維長範囲は、繊維ウエブ化する際の機械的強度から19mmを下限とし、羽毛袋用不織布としての風合い若しくは伸縮性を良好に保つため、その上限を152mm程度とし、さらに好ましくは、38mm〜102mm程度の範囲とするのが望ましい。
【0021】
本発明では、前記羽毛袋用不織布が潜在捲縮性繊維の捲縮が発現した捲縮繊維を含むため、羽毛の一部が外生地に到達しようとしても羽毛が羽毛袋用不織布に絡まり捕獲されてしまうので、羽毛が外生地に到達しなくなるか、或いは外生地に到達するまでの時間が極めて長くなり耐久性に優れるという効果を奏する。また、仮に外生地に到達して羽毛の先端が外生地に刺ささることがあっても、ダウンプルーフ構造体の使用時の外生地や羽毛袋用不織布の動きによって、一旦刺さった羽毛が羽毛袋用不織布によって引き戻されるという効果も考えられる。
【0022】
本発明では、潜在捲縮性繊維の捲縮が発現した捲縮繊維を50質量%以上含むことが好ましく、80質量%以上含むことがより好ましく、100質量%含むことが更に好ましい。
【0023】
前記羽毛袋用不織布に含まれる捲縮繊維以外の繊維としては、付加する機能に応じて適宜選択することが可能であり、例えば、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリウレタン繊維などの合成繊維を使用できる。
【0024】
次に、前記羽毛袋用不織布の乾式法による製造方法について説明する。当該乾式法では、前記潜在捲縮性繊維を含む短繊維を使用し、カード機またはエアレイ機等によってシート状に繊維ウエブを形成する。当該短繊維は、特にカード機の工程通過性を良好に保つため、繊維にクリンパーなどの機械的な手段によって予めジグザグ状の捲縮を付与し、例えばカード機投入前の捲縮数が20個/インチ以下程度に設計することが好ましい。このような捲縮数を上記設計値よりも大きく採ると、繊維ウエブの形成装置内で繊維同士が過度に絡み合い、均一な繊維ウエブを形成することが困難になる場合がある。
【0025】
前記繊維ウエブは、一台または複数台のカード機またはエアレイ機などから形成されるウエブを積層した繊維ウエブを使用することができる。この積層に際しては、カード機またはエアレイ機などにより繊維が一方向に配向したパラレルウエブを使用することが可能である。また、前記パラレルウエブを更にクロスレイヤーなどによって、交差するように配向させたクロスレイドウエブを使用することが可能である。また、たて方向とよこ方向の強度バランスを良くするために、或いはたて方向とよこ方向の伸縮性のバランスを良くするために、前記パラレルウエブと前記クロスレイドウエブとを積層させたクリスクロスウエブを使用することが可能である。また、前記クロスレイドウエブの構成繊維の配向状態については、構成繊維のたて方向となす交差角度(α:鋭角)は、15〜80度であるのが好ましい。交差角度が15度未満では、たて方向とよこ方向との強度差などが大きくなり、交差角度が80度を越えると、たて方向とよこ方向の強度差などが大きくなるばかりでなく、極端に生産性が悪くなるためであり、より好ましい交差角度は20〜65度である。この交差角度は、例えば、クロスレイヤーとクロスレイドウエブを受け取るコンベアの相対速度を調節することにより設定できる。
【0026】
本発明では、前記潜在捲縮性繊維を主体とする繊維ウエブを形成し、次いで前記繊維ウエブにニードルパンチまたは高圧水流を作用させることにより、前記繊維ウエブの構成繊維同士を交絡させ、次いで熱収縮処理を行い前記潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させることにより、伸縮性のある羽毛袋用不織布を製造することができる。このように、ニードルパンチまたは高圧水流を作用させることにより、繊維ウエブの構成繊維同士が交絡した本願発明の羽毛袋用不織布を得ることができる。なお、前記羽毛袋用不織布の面密度が40〜120g/mであれば高圧水流による絡合が好ましく、面密度が100〜300g/mであればニードルパンチによる絡合が好ましい。
【0027】
このニードルパンチの方法としては、ニードルパンチ法不織布の製造に適用される方法であれば、特に限定されることはなく、具体的には、例えば前記繊維ウエブに対して1cm当り15〜150本の針密度でニードルパンチを行うなどの方法により実施することができる。
【0028】
また、前記繊維ウエブに高圧水流を作用させて繊維同士を交絡させる方法としては、水流絡合法不織布の製造に適用される方法であれば、特に限定されることはなく、例えばドラム状やコンベアー状の金属性ネットやプラスチックネットなどの多孔性支持体上に前記繊維ウエブを載置して、その上方から繊維ウエブに向けて、高圧のノズルから水流を噴射する方法を適用することができる。
【0029】
前記水流の発生に用いる好ましいノズルとしては、例えばノズル孔が一列又は複数列に配置されたノズルがあり、ノズル孔の列は繊維ウエブの生産方向或いは繊維ウエブの処理方向(以下たて方向と称する場合がある。)と交差する方向に配置される。ノズル孔の孔径は直径0.05〜0.5mmが好ましく、0.1〜0.3mmがより好ましく、0.1〜0.18mmがさらに好ましい。また隣り合うノズル孔の間隔は0.2〜4mmが好ましく、0.3〜3mmが好ましく、0.4〜2mmがさらに好ましい。ノズルから噴射される水流の形状は柱状が好ましいが、ノズル孔から離れるほど水流の太さが広がるような円錐形状も可能である。円錐形状である場合は、円錐の垂線と円錐の斜面とがなす角度が10度以内が好ましく、5度以内がさらに好ましい。またノズル内の圧力は好ましくは0.1〜15MPaである。また前記ノズルを複数配置しておくことも可能であるが、エネルギー消費効率から考慮すると全て合わせて10台以内のノズル台数で噴射処理することが好ましい。
【0030】
本発明では、前記交絡シートに加熱によって熱収縮処理を行い前記繊維ウエブに含まれる潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させる。加熱方法としては、例えば交絡シートをコンベアーに載置して熱風吹き出し型の乾燥機に入れて前記潜在捲縮性繊維の捲縮発現温度以上の温度で連続的に乾燥と同時に捲縮を発現させる方法がある。また例えば交絡シートをエアースルー型の乾燥機に入れて捲縮発現温度以上の温度で連続的に乾燥と同時に捲縮を発現させる方法がある。また例えば交絡シートを捲縮発現温度未満の温度で任意の乾燥機で一旦乾燥させて乾燥交絡シートとしてから、乾燥交絡シートを乾燥機に入れて捲縮発現温度以上の温度で加熱処理する方法がある。
【0031】
また前記交絡シートに接着性繊維が含まれる場合、接着性繊維による繊維の接着を潜在捲縮性繊維の捲縮発現よりも優先させるならば、接着性繊維の融点温度を捲縮発現温度以下とする方法があり、逆に潜在捲縮性繊維の捲縮発現を接着性繊維による繊維の接着よりも優先させるならば、捲縮発現温度を接着性繊維の融点より低くする方法がある。
【0032】
このようにして形成される本発明の羽毛袋用不織布の面密度は、40〜300g/mであることが必要であり、目的とするダウンプルーフ構造体が衣料用であれば、40〜150g/mが好ましく、40〜120g/mがより好ましく、40〜100g/mが更に好ましい。また、目的とするダウンプルーフ構造体が寝具用であれば、70〜300g/mが好ましく、70〜250g/mがより好ましく、80〜200g/mが更に好ましい。面密度が上述の範囲よりも小さくなると、羽毛袋としての強度が不足して破損するという問題や、ダウンプルーフ構造体として用いると、羽毛が抜け出し易くなるという問題があり、面密度が上述の範囲よりも大きくなると、ダウンプルーフ構造体としての風合いが硬くなるという問題があり、例えば衣料として用いると着心地が低下するという問題がある。
【0033】
前記羽毛袋用不織布の厚さは、0.5〜3.8mmであることが好ましく、目的とするダウンプルーフ構造体が衣料用であれば、0.5〜1.9mmであることが好ましく、0.5〜1.5mmであることがより好ましく、0.5〜1.3mmであることが更に好ましい。また、目的とするダウンプルーフ構造体が寝具用であれば、0.88〜3.8mmであることが好ましく、0.88〜3.1mmであることがより好ましく、1.0〜2.5mmであることが更に好ましい。厚さが上述の範囲よりも小さくなると、ダウンプルーフ構造体として用いると、羽毛が抜け出し易くなるという場合があり、厚さが上述の範囲よりも大きくなると、ダウンプルーフ構造体としての風合いが硬くなり、例えば衣料として用いると着心地が低下するという場合がある。
【0034】
前記羽毛袋用不織布の通気量は100〜600(cm/cm・s)であることが必要であり、目的とするダウンプルーフ構造体が衣料用であれば、150〜500(cm/cm・s)が好ましく、200〜400(cm/cm・s)がより好ましく、250〜300(cm/cm・s)が更に好ましい。また、目的とするダウンプルーフ構造体が寝具用であれば、100〜400(cm/cm・s)が好ましく、100〜300(cm/cm・s)がより好ましく、100〜200(cm/cm・s)が更に好ましい。通気量が上述の範囲よりも小さくなると、ダウンプルーフ構造体として用いると、羽毛が抜け出し易くなるという問題があり、通気量が上述の範囲よりも大きくなると、羽毛を吹き込み難くなるという問題がある。
【0035】
また、前記羽毛袋用不織布の構成繊維の構成繊維の平均繊度が0.5〜3.3デシテックスであることが好ましく、1.5〜2.8デシテックスであることがより好ましい。平均繊度が上述の範囲にあることにより、通気量を確保しつつ柔軟性に優れるという利点がある。平均繊度が上述の範囲よりも小さくなると、通気量が少なくなり羽毛を吹き込み難くなる場合がある。また、平均繊度が上述の範囲よりも大きくなると、組織が粗くなり羽毛が抜け出し易くなる場合がある。なお、平均繊度の計算方法としては、各繊維の繊度をaデシテックス、bデシテックス、cデシテックス・・・として、各繊維の含有割合をそれぞれa’質量%、b’質量%、c’質量%・・・とすると、(a’/a)+(b’/b)+(c’/c)・・・=(100/x)の関係式が成り立ち、この関係式から平均繊度xを求めることができる。
【0036】
前記羽毛袋用不織布であれば、寝具用として羽毛布団やクッションなどのダウンプルーフ構造体の表生地と裏生地の間に好適に用いることができる。また衣料用としてダウンジャケット、ジャンパー、ブルゾンなどのダウンプルーフ構造体の表生地と裏生地の間に好適に用いることができる。そして、この羽毛袋用不織布は、羽毛の充填作業の能率向上に優れ、またこの羽毛袋用不織布から構成されたダウンプルーフ構造体は、羽毛の吹き出し防止効果に優れると共に、形状回復性にも優れる。
【0037】
以下、本発明の実施例につき説明するが、これは発明の理解を容易とするための好適例にすぎず、本発明はこれら実施例の内容に限定されるものではない。
【実施例】
【0038】
(通気量の評価)
JIS L1096「一般織物試験方法」に規定される8.27.1A法(フラジール形法)によって評価サンプルの通気量(cm/cm・s)を計測する。
【0039】
(羽毛の吹き出し試験)
15cm×30cmの外生地(表生地又は裏生地)に、15cm×30cmの羽毛袋用不織布を重ね、羽毛袋用不織布が外側になるように2つ折りにして、2辺をミシンで縫い合わせ袋状体を形成する。この袋状体を裏返して、中に1.5gの羽毛(ダウン80質量%及びフェザー20質量%からなる羽毛)を詰め、開いた残りの1辺を縫い込んで縫い合わせて、ミニ布団を形成する。
次いで、このミニ布団を50回叩いた後に、外生地表面の羽毛吹き出しの程度を以下の評価基準により判定する。
次いで、外生地だけを開き、羽毛袋用不織布の羽毛吹き出しの程度を、外生地表面の場合と同様に以下の評価基準により判定する。
【0040】
(評価基準)
○:羽毛吹き出しは認められず。
×:羽毛吹き出しが認められる。
【0041】
(原材料調整)
(1)表生地Aの準備
表生地として、面密度が73g/mであり、厚さが0.14mm、通気量が24(cm/cm・s)のポリエステルパレスを準備した。
(2)裏生地Aの準備
裏生地として、面密度が52g/mであり、厚さが0.08mm、通気量が45(cm/cm・s)のベンベルグを準備した。
【0042】
(実施例1)
潜在捲縮性繊維として2.2デシテックスの複合繊維(繊維長51mm、サイドバイサイド型で第1樹脂成分はポリエチレンテレフタレート樹脂、第2樹脂成分は変性ポリエステル樹脂)からなる潜在捲縮性繊維Aを準備した。
次いで、100質量%の潜在捲縮性繊維Aからなる原料繊維を、カード機を使用して、繊維ウエブに形成した。
次いで、この繊維ウエブを80メッシュの金網コンベアーの上に載置した。次いで、孔径が0.13mm、孔間隔が0.6mmで直線状にノズル孔が配列されたノズルを用いて、繊維ウエブの上方から繊維ウエブへ向けて、ノズル内圧力6MPaにて柱状水流を噴射した。次いで、繊維ウエブを反転して繊維ウエブの反対面にも同様にして、ノズル内圧力5MPaにて2回目の柱状水流を噴射して、その後、約100℃に保持された熱風循環型ドライヤーの中で乾燥させて交絡シートを形成した。
次いで、約200℃に保持された熱風循環型ドライヤーの中で加熱処理することによって、潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させて羽毛袋用不織布を得た。
得られた羽毛袋用不織布は、面密度が42g/m、厚さが0.73mm、通気量が439(cm/cm・s)であった。
次いで、この羽毛袋用不織布について、外生地として原料調整で準備した表生地A及び裏生地Aを用いて、前述の「羽毛吹き出し試験」を行なった結果を表1に示す。
【0043】
(実施例2〜4)
繊維ウエブの面密度を変えたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2〜4の羽毛袋用不織布を得た。
得られた実施例2の羽毛袋用不織布は、面密度が49g/m、厚さが0.87mm、通気量が394(cm/cm・s)であり、
実施例3の羽毛袋用不織布は、面密度が54g/m、厚さが0.54mm、通気量が265(cm/cm・s)であり、
実施例4の羽毛袋用不織布は、面密度が80g/m、厚さが0.63mm、通気量が167(cm/cm・s)であった。
次いで、実施例2〜4の羽毛袋用不織布について、外生地として原料調整で準備した表生地A及び裏生地Aを用いて、前述の「羽毛吹き出し試験」を行なった結果を表1に示す。
【0044】
(比較例1)
繊維ウエブの面密度を変えたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の羽毛袋用不織布を得た。
得られた比較例1の羽毛袋用不織布は、面密度が37g/m、厚さが0.52mm、通気量が447(cm/cm・s)であった。
次いで、この羽毛袋用不織布について、外生地として原料調整で準備した表生地A及び裏生地Aを用いて、前述の「羽毛吹き出し試験」を行なった結果を表2に示す。
【0045】
(比較例2〜3)
繊維ウエブの面密度を変えたこと、および交絡シートに加熱処理を施さず、潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させなかったこと以外は、実施例1と同様にして比較例2〜3の不織布を得た。
得られた比較例2の不織布は、面密度が40g/m、厚さが0.40mm、通気量が248(cm/cm・s)であり、
比較例3の不織布は、面密度が54g/m、厚さが0.49mm、通気量が168(cm/cm・s)であった。
次いで、比較例2〜3の不織布について、外生地として原料調整で準備した表生地A及び裏生地Aを用いて、前述の「羽毛吹き出し試験」を行なった結果を表2に示す。
【0046】
(表1)

【0047】
(表2)

【0048】
上記の表1および表2からも明らかなように、実施例1〜4に係る羽毛袋用不織布は、比較例1〜3の不織布と比較して、羽毛の吹き出し防止効果に優れると共に、通気性に優れるため、羽毛の充填作業の能率向上に優れ、またダウンプルーフ構造体として用いた場合に形状回復性にも優れることが理解できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽毛を充填する袋に用いる不織布であって、前記不織布は潜在捲縮性繊維の捲縮が発現した捲縮繊維を含み、前記不織布の面密度が40〜300g/mであり、通気量が100〜600(cm/cm・s)[JIS L1096に規定されるフラジール法による]であることを特徴とする羽毛袋用不織布。
【請求項2】
請求項1記載の羽毛袋用不織布が袋状に形成されてなる羽毛袋に羽毛が充填されており、さらに前記羽毛袋の外側に通気量が5〜100(cm/cm・s)である外生地が配置されていることを特徴とするダウンプルーフ構造体。
【請求項3】
請求項1記載の羽毛袋用不織布又は請求項2記載のダウンプルーフ構造体から構成されていることを特徴とする衣料。
【請求項4】
請求項1記載の羽毛袋用不織布又は請求項2記載のダウンプルーフ構造体から構成されていることを特徴とする寝具。

【公開番号】特開2010−47871(P2010−47871A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213509(P2008−213509)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】