説明

老年症候群の危険性の判定用装置

【課題】老年症候群の危険性の判定用装置、特には、歩行速度測定計、握力検査計、片足立ち検査計を提供する。
【解決手段】歩行速度測定計は、歩行速度を自動的に測定可能な手段を有する。握力検査計は、予め統計学的に決定した閾値に到達したことを表示する表示手段を有する。片足立ち検査計は、片足立ち時間の測定試験開始からの経過時間を計測するタイマーと、予め統計学的に決定した閾値(時間)まで、被験者が片足立ちの状態で到達した場合に、その到達を表示する正規到達表示手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老年症候群の危険性の判定用装置、特には、歩行速度測定計、握力検査計、片足立ち検査計に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、わが国では高齢者(65歳以上)が人口に占める割合は18%を超え、あと数年で20%を突破する。つまり、5人に1人は高齢者という、高齢社会が到来することになる。一方、平均寿命も80歳(男性77歳、女性85歳)を超え、今後しばらくは着実にこの平均寿命が伸びてゆくことが予想されている。このようなわが国の高齢化又は長寿化は、単に寿命が伸びただけでなく、高齢者の健康状態や日々の生活能力、あるいは社会との係わりなど、さまざまな面で大きな変化をもたらしている。
【0003】
例えば、65歳から74歳の比較的若い高齢者(前期高齢者)の健康度は極めて高く、社会的活力も健在で、もはや老人とは呼べない人たちが多くなってきているのが実情である。一方で、75歳を超える高齢者(後期高齢者)では、やはり老化が進み、いわば老化に伴う心身の機能や生活機能の低下が目立つようになる。特に平均寿命の長い女性では、生活機能が失われ、周囲の人々による支えや介護が必要な期間(これを「不健康寿命」と呼ぶ)が、男性よりもはるかに長いことが知られている。すなわち、女性の場合は、平均寿命が男性に比べ6年以上長く、不健康寿命もまた男性に比べて圧倒的に長いことが知られている。
【0004】
女性の不健康寿命が男性に比べて長い最大の理由は、筋骨格系での老化が男性よりも顕著であるからである。もともと女性は体格的にみて、男性よりも小柄であり、筋肉の量が少ないことが知られている。更に女性は50歳頃に訪れる更年期以降、骨の老化が進行する。これは女性ホルモン(エストロジェン)の枯渇により骨形成が低下し、「骨粗鬆症」と呼ばれる病態に移行することが原因である。従って女性の場合、50歳以降(平均寿命85歳として)30年以上も骨や筋肉が老化し衰えたまま過ごすことになり、結果として、容易に転倒し、その結果の骨折が急増し、それが不健康寿命を長くすることの原因となっている。
【0005】
老化が進み、身体的な能力や精神的な機能が或る程度低下するのはやむを得ないことである。しかし、このような老化に伴う心身の衰退には特徴があり、それらの特徴を挙げれば以下のとおりである。
(1)老化に伴う心身の機能低下は、必ずしも病気によるものではない。
(2)このような心身の機能低下の大部分は、適切な対処によって予防することが可能である。
(3)予防対策は70歳になってからでも、あるいは80歳になってからでも決して遅くはない。
【0006】
もちろん、高齢期を元気で活動的に過ごすためには、若い頃から、生活習慣病(脳卒中、心臓病、ガン、あるいは糖尿病など)を予防するために、検診などを活用して自分の身体に気をつけることは当然のことである。しかし、老化に伴って白内障で目が少しずつ不自由になったり、難聴が少しずつ進行したりする。また動脈硬化は確実に進んでいく。そのような場合、治療によって治せるものは治し、進行を防げるものはきちんとコントロールすることが大切なのは言うまでもない。
しかし、より重要なことは、高齢期にみられる心身の機能の衰退はこのような病気ではなく、実は知らず知らずのうちに進行し衰えていく体力や精神力にこそ大きな原因があることである。しかもそれは早期に対処することにより、そして自助努力により確実に予防することができるということである。
【0007】
このように、高齢者に特有にあらわれ、しかも必ずしも病気という訳でもないが、日々の「生活の質(QOL)」を障害するような状態を「老年症候群」と呼んでいる(非特許文献1)。この「老年症候群」のなかには、例えば転倒をはじめ、失禁(不意に尿が漏れること)、偏った食事からくる低栄養塵、極端に外出をしなくなる閉じこもり、うまく眠れなくなる睡眠障害、ウツや軽度のボケ(認知機能低下)、口腔不衛生、足のトラブル、そして生活体力の全体的な衰え(生活機能低下)などが代表的な状態である。
なお、本明細書においては、「老年症候群」に含まれる個々の状態に特に言及する場合には、それらを特に「機能低下状態」と称することにし、その「機能低下状態」が実際に現れることを「発現」と称することにする。
【0008】
これらの老年症候群は、日々の生活において健康度を低下させ、自立を阻害し、生活の質(QOL)を著しく損なうものである。高齢女性の転倒は容易に骨折を発生し、失禁は気分を滅入らせ、不快な状態となる。低栄養は抵抗力を減じ、さまざまな病気を引き起こす。痴呆は個人の尊厳を失わせ、睡眠障害では昼夜が逆転して生活のリズムが失われ、家庭内事故の原因となる。更に、生活機能低下あるいは虚弱化は自分の身の回りのことすら処理するのが困難となり、悔しい思いをしなければならない。
【0009】
従って、今日のような高齢社会にあっていつまでも元気に活き活きと過ごすためには、まず心身の健康の維持、すなわち老年症候群を確実に予防しておくことが最も大切なことである。
このように病気ではなく、老化に伴うさまざまな機能低下状態、すなわち老年症候群に対して早期にチェックを行い、或る特定の老年症候群に関して、未発現であっても発現可能性が高い高齢者を未然に把握することができれば、発現前に適正な対策を立てることによって、発現を遅らせることができる。
【0010】
例えば、身体虚弱の危険性があると判定された場合は、例えば、筋力向上プログラムの実施などの予防措置を行うことにより、その発現を遅らせることができる。また、転倒の危険性があると判定された場合は、例えば、転倒予防プログラムの実施などの予防措置を行うことにより、足腰の筋肉を強化して、その発現を遅らせることができる。更に、尿失禁の危険性があると判定された場合は、例えば、失禁予防プログラムの実施などの予防措置により、骨盤底筋を強化して、その発現を遅らせることができる。更にまた、低栄養の危険性があると判定された場合は、例えば、栄養改善プログラムの実施などの予防措置により、その発現を遅らせることができる。また、軽度の痴呆の危険性があると判定された場合は、例えば、痴呆予防プログラムの実施などの予防措置により、その発現を遅らせることができる。
このように、老年症候群の発現可能性を予測することによって、老年症候群の確実な予防を実現することが可能になり、高齢者特に後期高齢者の健康を維持し、要介護状態を予防し、生活の質を高めるために重要なことである。
【0011】
このような判定を可能にするために実施する検査は、それらの検査を受ける高齢者にとって負担とならない簡易なものであることが重要である。また、その検査を実行して判定する検査担当者にも、高度な医学的知識を要求せず、複雑な機械や器具を必要としない簡便な検査であることが求められている。
【0012】
これまで、老年症候群に含まれる各種の機能低下状態の判定方法として、例えば、MDS−HC(Minimum Data Set-Home Care)又は健康関連QOL尺度SF−36(MOS 36-Item Short-Form Health Survey)が公知である。しかしながら、MDS−HCは、実際に機能低下状態に陥った高齢者を対象とするものであり、発現危険性を予防的に判定するものではない。また、SF−36は、予防的な判定を実施することはできるものの、機能低下状態の判定は専門家の判断を必要としており、専門家なしで判定することができるものではない。このように、複数の機能低下状態を含む老年症候群について、それらの発現リスクが存在するか否かの予想を、包括的に且つ簡易に判定する方法は確立されておらず、また、老年症候群を包括的に判定する試み自体、全く新しいアプローチであり、これまで報告はなかった。
【0013】
【非特許文献1】東京都老人総合研究所介護予防緊急対策室編「お達者21:老年症候群リスクスクリーニングと介護予防事業評価」第1版,2003年7月15日,第1章「お達者健診」p.1−5
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明者は、前記のような種々の機能低下状態を含む老年症候群の発現リスクを簡易な方法で予測する手法を開発するために、5000人以上の高齢者に対して約500項目に亘る質問を行って回答を得た。それらの回答を統計学的に解析して、老年症候群の発現リスクを予測可能な21項目の健診項目群を選定した。一方、本発明者は、5000人以上の高齢者に関して、老年症候群の発現経緯を示すデータを有している。そこで、本発明者は、前記の21項目の健診項目群に関して、過去の老年症候群発現データによる検証を実施したところ、χ二乗検定によりp<0.001水準で有意であることが確認され、更に、個々の老年症候群(すなわち、身体虚弱、転倒、尿失禁、低栄養、及び軽度の痴呆)の発現リスクに関して、77%以上をリスク保有者として判定することができることを確認した。
従って、本発明の課題は、老年症候群について、その危険性を有するか否かを、包括的に且つ簡易に判定する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題は、本発明による、下記条件1〜21:
1.ふだん、自分は健康でないと思う。
2.現在、複数種類の薬を飲んでいる。
3.この1年間に入院したことがある。
4.この1年間に転んだことがある。
5.現在、転ぶのが怖いと感じる。
6.ひとりで外出又は遠出することができない。
7.不自由なくひとりで所定距離を続けて歩くことができない。
8.不自由なくひとりで階段の上り下りができない。
9.物につかまらないで、つま先立ちができない。
10.トイレに行くのに間に合わなくて、失敗することがある。
11.尿がもれることがある。
12.趣味や稽古ごとをしない。
13.肉類、卵、魚介類、又は牛乳のいずれも食べない日がある。
14.現在、食事づくりを行う日が、1週間に3日以下である。
15.これまでやってきたことや、興味があったことの多くを、最近やめてしまった。
16.貯金の出し入れや公共料金の支払い、家計のやりくりができない。
17.自分で電話番号を調べて、電話をかけることができない。
18.薬を決まった分量、決まった時間に、自分で飲むことができない。
19.握力が、予め統計学的に決定した閾値未満である。
20.目を開いて片足で立つことができる時間が、予め統計学的に決定した閾値未満である。
21.所定距離を普通に歩くときの所要時間が、予め統計学的に決定した閾値以上である。
からなる群から選択される条件の内、少なくとも2つを満足する場合に、老年症候群の危険性があると判定することを特徴とする、老年症候群の危険性を判定する方法により解決することができる。
【0016】
本発明の判定方法に含まれる身体虚弱の判定方法によれば、前記条件1、6、7、9、10、12〜14、16、17、及び19〜21からなる群から選択される条件の内、少なくとも2つを満足する場合に、身体虚弱の危険性があると判定する。
本発明による身体虚弱の判定方法における好ましい態様によれば、条件1、7、9、10、12〜14、及び17からなる群から選択される条件を満足する場合、満足した条件毎に点数aを与え、条件16、19、及び20からなる群から選択される条件を満足する場合、満足した条件毎に点数bを与え、条件6及び21からなる群から選択される条件を満足する場合、満足した条件毎に点数cを与え(但し、a<b<cであるものとする)、その合計点が予め設定した閾値以上である場合に、身体虚弱の危険性があると判定する。
【0017】
本発明の判定方法に含まれる転倒の判定方法によれば、前記条件2〜6、9、10、13、15、及び19〜21からなる群から選択される条件の内、少なくとも2つを満足する場合に、転倒の危険性があると判定する。
本発明による転倒の判定方法における好ましい態様によれば、条件2、3、6、9、10、13、及び15からなる群から選択される条件を満足する場合、満足した条件毎に点数aを与え、条件5、19、及び20からなる群から選択される条件を満足する場合、満足した条件毎に点数bを与え、条件4及び21からなる群から選択される条件を満足する場合、満足した条件毎に点数cを与え(但し、a<b<cであるものとする)、その合計点が予め設定した閾値以上である場合に、転倒の危険性があると判定する。
【0018】
本発明の判定方法に含まれる尿失禁の判定方法によれば、前記条件1、4〜6、8〜11、15〜17、19、及び21からなる群から選択される条件の内、少なくとも2つを満足する場合に、尿失禁の危険性があると判定する。
本発明による尿失禁の判定方法における好ましい態様によれば、条件1、4〜6、8、9、15、及び16からなる群から選択される条件を満足する場合、あるいは、条件11を満足し、且つ尿がもれる回数が1週間に1回未満である場合、満足した条件毎に点数aを与え、条件17、19、及び21からなる群から選択される条件を満足する場合、あるいは、条件11を満足し、且つ尿がもれる回数が1週間に1回以上である場合、満足した条件毎に点数bを与え、条件10を満足する場合、点数cを与え(但し、a<b<cであるものとする)、その合計点が予め設定した閾値以上である場合に、尿失禁の危険性があると判定する。
【0019】
本発明の判定方法に含まれる低栄養の判定方法によれば、前記条件3、4、12〜14、16、及び19〜21からなる群から選択される条件の内、少なくとも2つを満足する場合に、低栄養の危険性があると判定する。
本発明による低栄養の判定方法における好ましい態様によれば、条件13、14、及び16からなる群から選択される条件を満足する場合、満足した条件毎に点数aを与え、条件3、4、12、19、及び20からなる群から選択される条件を満足する場合、満足した条件毎に点数bを与え、条件21を満足する場合、点数cを与え(但し、a<b<cであるものとする)、その合計点が予め設定した閾値以上である場合に、低栄養の危険性があると判定する。
【0020】
本発明の判定方法に含まれる軽度の痴呆の判定方法によれば、前記条件6及び16〜18からなる群から選択される条件の内、少なくとも2つを満足する場合に、軽度の痴呆の危険性があると判定する。
本発明による軽度の痴呆の判定方法における好ましい態様によれば、条件6及び16〜18からなる群から選択される条件を満足する場合、満足した条件毎に点数aを与え、その合計点が予め設定した閾値以上である場合に、軽度の痴呆の危険性があると判定する。
【0021】
また、本発明は、(1)前記条件1〜21の全て又はそれらの一部に対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数を計数する工程、
(2)前記計数工程によって得られたYes回答数が2以上であるか否かを判定する工程、及び
(3)前記判定工程においてYes回答数が2以上であると判定した場合に、老年症候群の危険性があることを表示する工程
を含むことを特徴とする、老年症候群の危険性の判定をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。
【0022】
本発明のプログラムに含まれる、身体虚弱の危険性の判定をコンピュータに実行させるためのプログラムによれば、(1)前記条件1、6、7、9、10、12〜14、16、17、及び19〜21からなる群から選択される少なくとも2つの条件に対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数をカウントする工程、
(2)前記カウント工程によって得られたYes回答数が2以上であるか否かを判定する工程及び
(3)前記判定工程においてYes回答数が2以上であると判定した場合に、身体虚弱の危険性があることを表示する工程
を含む。
【0023】
本発明による、身体虚弱の危険性の判定をコンピュータに実行させるためのプログラムにおける好ましい態様によれば、(1)前記条件1、7、9、10、12〜14、及び17からなる群から選択される身体虚弱条件aに対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数をカウントする工程、
(2)身体虚弱条件aに対するYes回答数に点数aを乗算して積の和を得る工程、
(3)前記条件16、19、及び20からなる群から選択される身体虚弱条件bに対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数をカウントする工程、
(4)身体虚弱条件bに対するYes回答数に点数bを乗算して積の和を得る工程、
(5)前記条件6及び21からなる群から選択される身体虚弱条件cに対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数をカウントする工程、
(6)身体虚弱条件cに対するYes回答数に点数cを乗算して積の和を得る工程(但し、a<b<cであるものとする)、
(7)前記乗算工程(2)、(4)及び(6)のそれぞれの和を合計する工程、
(8)前記合計計算工程によって得られた和が予め設定した閾値以上であるか否かを判定する工程及び
(9)前記判定工程において閾値以上であると判定した場合に、身体虚弱の危険性があることを表示する工程
を含む。
【0024】
本発明のプログラムに含まれる、転倒の危険性の判定をコンピュータに実行させるためのプログラムによれば、(1)前記条件2〜6、9、10、13、15、及び19〜21からなる群から選択される少なくとも2つの条件に対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数をカウントする工程、
(2)前記カウント工程によって得られたYes回答数が2以上であるか否かを判定する工程及び
(3)前記判定工程においてYes回答数が2以上であると判定した場合に、転倒の危険性があることを表示する工程
を含む。
【0025】
本発明による、転倒の危険性の判定をコンピュータに実行させるためのプログラムにおける好ましい態様によれば、(1)前記条件2、3、6、9、10、13、及び15からなる群から選択される転倒条件aに対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数をカウントする工程、
(2)転倒条件aに対するYes回答数に点数aを乗算して積の和を得る工程、
(3)前記条件5、19、及び20からなる群から選択される転倒条件bに対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数をカウントする工程、
(4)転倒条件bに対するYes回答数に点数bを乗算して積の和を得る工程、
(5)前記条件4及び21からなる群から選択される転倒条件cに対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数をカウントする工程、
(6)転倒条件cに対するYes回答数に点数cを乗算して積の和を得る工程(但し、a<b<cであるものとする)、
(7)前記乗算工程(2)、(4)及び(6)のそれぞれの和を合計する工程、
(8)前記合計計算工程によって得られた和が予め設定した閾値以上であるか否かを判定する工程及び
(9)前記判定工程において閾値以上であると判定した場合に、転倒の危険性があることを表示する工程
を含む。
【0026】
本発明のプログラムに含まれる、尿失禁の危険性の判定をコンピュータに実行させるためのプログラムによれば、(1)前記条件1、4〜6、8〜11、15〜17、19、及び21からなる群から選択される少なくとも2つの条件に対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数をカウントする工程、
(2)前記カウント工程によって得られたYes回答数が2以上であるか否かを判定する工程及び
(3)前記判定工程においてYes回答数が2以上であると判定した場合に、尿失禁の危険性があることを表示する工程
を含む。
【0027】
本発明による、尿失禁の危険性の判定をコンピュータに実行させるためのプログラムにおける好ましい態様によれば、(1)前記条件1、4〜6、8、9、15、及び16、並びに条件11を満足し、且つ尿がもれる回数が1週間に1回未満であるとの条件からなる群から選択される尿失禁条件aに対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数をカウントする工程、
(2)尿失禁条件aに対するYes回答数に点数aを乗算して積の和を得る工程、
(3)前記条件17、19、及び21、並びに条件11を満足し、且つ尿がもれる回数が1週間に1回以上であるとの条件からなる群から選択される尿失禁条件bに対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数をカウントする工程、
(4)尿失禁条件bに対するYes回答数に点数bを乗算して積の和を得る工程、
(5)前記条件10からなる尿失禁条件cに対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数をカウントする工程、
(6)尿失禁条件cに対するYes回答数に点数cを乗算して積の和を得る工程(但し、a<b<cであるものとする)、
(7)前記乗算工程(2)、(4)及び(6)のそれぞれの和を合計する工程、
(8)前記合計計算工程によって得られた和が予め設定した閾値以上であるか否かを判定する工程及び
(9)前記判定工程において閾値以上であると判定した場合に、尿失禁の危険性があることを表示する工程
を含む。
【0028】
本発明のプログラムに含まれる、低栄養の危険性の判定をコンピュータに実行させるためのプログラムによれば、(1)前記条件3、4、12〜14、16、及び19〜21からなる群から選択される少なくとも2つの条件に対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数をカウントする工程、
(2)前記カウント工程によって得られたYes回答数が2以上であるか否かを判定する工程及び
(3)前記判定工程においてYes回答数が2以上であると判定した場合に、低栄養の危険性があることを表示する工程
を含む。
【0029】
本発明による、低栄養の危険性の判定をコンピュータに実行させるためのプログラムにおける好ましい態様によれば、(1)前記条件13、14、及び16からなる群から選択される低栄養条件aに対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数をカウントする工程、
(2)低栄養条件aに対するYes回答数に点数aを乗算して積の和を得る工程、
(3)前記条件3、4、12、19、及び20からなる群から選択される低栄養条件bに対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数をカウントする工程、
(4)低栄養条件bに対するYes回答数に点数bを乗算して積の和を得る工程、
(5)前記条件21からなる群から選択される低栄養条件cに対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数をカウントする工程、
(6)低栄養条件cに対するYes回答数に点数cを乗算して積の和を得る工程(但し、a<b<cであるものとする)、
(7)前記乗算工程(2)、(4)及び(6)のそれぞれの和を合計する工程、
(8)前記合計計算工程によって得られた和が予め設定した閾値以上であるか否かを判定する工程及び
(9)前記判定工程において閾値以上であると判定した場合に、低栄養の危険性があることを表示する工程
を含む。
【0030】
本発明のプログラムに含まれる、軽度の痴呆の危険性の判定をコンピュータに実行させるためのプログラムによれば、(1)前記条件6及び16〜18からなる群から選択される少なくとも2つの条件に対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数をカウントする工程、
(2)前記カウント工程によって得られたYes回答数が2以上であるか否かを判定する工程及び
(3)前記判定工程においてYes回答数が2以上であると判定した場合に、軽度の痴呆の危険性があることを表示する工程
を含む。
【0031】
本発明による、軽度の痴呆の危険性の判定をコンピュータに実行させるためのプログラムにおける好ましい態様によれば、(1)前記条件6及び16〜18からなる群から選択される軽度痴呆条件aに対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数をカウントする工程、
(2)軽度痴呆条件aに対するYes回答数に点数aを乗算して積の和を得る工程、
(3)前記計算工程によって得られた和が予め設定した閾値以上であるか否かを判定する工程及び
(4)前記判定工程において閾値以上であると判定した場合に、軽度痴呆の危険性があることを表示する工程
を含む。
【0032】
また、本発明は、(1)前記条件1〜21の全て又はそれらの一部を記憶する条件記憶手段、
(2)前記条件1〜21の全て又はそれらの一部を表示する条件表示手段、
(3)前記条件1〜21の全て又はそれらの一部に対する被験者のYes回答及び/又はNo回答を入力する回答入力手段、
(4)前記条件1〜21の全て又はそれらの一部に対するYes回答及び/又はNo回答の回答記憶手段、
(5)前記Yes回答の数を計数する回答数計数手段、
(6)Yes回答数に対して予め設定された基準値を記憶する基準値記憶手段、
(7)Yes回答数が前記基準値以上であるか否かを判定する基準値判定手段、及び
(8)前記基準値判定手段による判定結果を出力する判定結果出力手段
含むことを特徴とする、判定装置に関する。
【0033】
また、本発明は、前記条件1〜21の内、少なくとも2つの条件又はそれに対応する質問と老年症候群の危険性との関連性の有無又は程度が表示されていることを特徴とする、老年症候群の危険性判定シートに関する。
【0034】
また、本発明は予め統計学的に決定した閾値に到達したことを表示する表示手段を有することを特徴とする、握力検査計に関する。
また、本発明は、片足立ち時間の測定試験開始からの経過時間を計測するタイマーと、予め統計学的に決定した閾値(時間)まで、被験者が片足立ちの状態で到達した場合に、その到達を表示する正規到達表示手段とを有することを特徴とする、片足立ち検査計に関する。
また、本発明は、歩行速度を自動的に測定可能な手段を有することを特徴とする、歩行速度測定計に関する。
【発明の効果】
【0035】
本発明の判定方法によれば、老年症候群を未だ発現していない高齢者に関して、老年症候群に含まれる個々の機能低下状態(すなわち、身体虚弱、転倒、尿失禁、低栄養、及び軽度の痴呆)の発現リスクに関して、77%以上をリスク保有者として判定することができる。しかも、その健診項目は、検査を受ける高齢者の負担にならず、医学的知識を充分に有していない者でも検査の実行・判定者となることができ、更に、複雑で高価な機械や器具を必要としない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
最初に、本発明が対象とする「老年症候群」について説明し、続いて、本発明によるリスク判定方法とその判定方法に用いる条件(健診項目)の内容を説明し、次に本発明における前記条件(健診項目)の選定過程を説明し、更に、本発明のコンピュータプログラム及び判定シートについて説明する。
なお、本明細書において「高齢者」とは、65歳以上の人を意味する。
【0037】
[A]老年症候群
本明細書において「老年症候群」には、身体虚弱、転倒、尿失禁、低栄養、及び軽度の痴呆が含まれる。
ここで「身体虚弱」とは、IADL(Instrumental Activities of Daily Living;手段的日常生活能力)に含まれる5項目:
A.バスや電車を使って一人で外出できない。
B.日用品の買い物ができない。
C.自分で食事の用意ができない。
D.請求書の支払いができない。
E.銀行預金・郵便貯金の出し入れができない。
の内、少なくとも1つの項目に該当している状態を意味する。
「転倒」とは、自分の意志からではなく、地面またはより低い場所に、膝や手などが接触することを意味する。
「尿失禁」とは、尿がもれることを心配するために、生活に支障が生じている(例えば、外出を控える)状態を意味する。
「低栄養」とは、血清アルブミン量が3.8g/dL以下である状態を意味する。
「軽度の痴呆」とは、痴呆判定法の1つであるMMSE(Mini Mental State Examination)で23点以下(30点満点)である状態を意味する。
【0038】
[B]本発明の判定方法
本発明の判定方法では、21項目の条件(健診項目)の内、各老年症候群についてそれぞれ選定された所定の条件を少なくとも2つ満たすか否かにより、各老年症候群の危険性があるか否か、すなわち、各老年症候群のリスク保有者であるか否かを判定する。
本発明者が本発明において選定した21項目の条件、並びに各条件と各老年症候群との関連性は、後述するように、東京都老人総合研究所が保有する65歳以上の高齢者のべ5111名の調査から得られた膨大なデータを統計学的に詳細に解析することにより、初めて明らかにされたものである。これまでにも、老年症候群とその危険性を判定する項目については、個別の老年症候群毎に種々の報告がされてはいるが、本発明者は、公知の判定項目を含む500以上の候補項目の中から、複数の老年症候群を包括的に且つ簡易に判定することが可能な項目として、21項目を選定したものである。本発明の判定方法によれば、21項目の条件にそれぞれ対応するわずか21項目の健診項目により、複数の老年症候群、具体的には、身体虚弱、転倒、尿失禁、低栄養、及び軽度の痴呆の危険性を一度に判定することができる。あるいは、これらの少なくとも1つの機能低下状態の発現リスクを判定するのであれば、21項目よりも更に少ない健診項目により判定が可能である。
【0039】
本発明の判定方法における21項目の条件に該当するか否かは、例えば、下記の表1〜表3に示す21項目の質問に回答することにより判断することができる。表1〜表3に示す質問1〜21は、それぞれ、本発明における条件1〜21に対応する。表1〜表3には、各質問に対して、2つの回答(但し、質問11は3つ)が用意されており、1点が与えられている回答を選択した場合、その質問に対応する条件に該当するものと判断することができ、0点が与えられている回答を選択した場合、前記条件に該当しないものと判断することができる。なお、質問11については、1点又は2点が与えられている回答を選択した場合、その質問に対応する条件(すなわち、条件11)に該当するものと判断することができ、0点が与えられている回答を選択した場合、前記条件に該当しないものと判断することができる。
【0040】
《表1》
質問1.ふだん、ご自分で健康だと思われますか。
0点:非常に健康だと思う。または、健康な方だと思う。
1点:あまり健康ではない。または、健康ではない。
質問2.現在、3種類以上の薬を飲んでいますか。
0点:飲んでいない。または、1〜2種類の薬を飲んでいる。
1点:3種類以上の薬を飲んでいる。
質問3.この1年間に入院したことがありますか。
0点:入院したことがない。
1点:入院したことがある。
質問4.この1年間に転んだことがありますか。
0点:転んだことがない。
1点:転んだことがある。
質問5.現在、転ぶのがこわいと感じますか。
0点:こわくない。
1点:こわい。
質問6.日常の移動能力についてですが、おひとりで外出(遠出)できますか。
0点:自転車・車・バス・電車を使って、ひとりで外出できる。
1点:ひとりで遠出はできない。
質問7.ひとりで、1キロメートルぐらいの距離を、続けて歩くことができますか。
0点:不自由なく続けて歩ける。
1点:歩けるが難儀する。または、歩けない。
【0041】
《表2》
質問8.おひとりで階段の上り下りができますか。
0点:不自由なく階段の上り下りができる。
1点:階段の上り下りはできるが難儀する。または、階段の上り下りができない。
質問9.ものにつかまらないで、つま先立ちができますか。
0点:はい。
1点:いいえ。
質問10.トイレに行くのに間に合わなくて、失敗することがありますか。
0点:ない(トイレ、もしくは便器を使い、もらすことはない)。
1点:ときどきもらすことがある(下着を替える必要がある)。または、常時、おむつを使用。
質問11.尿がもれる回数は、1週間に1回以上ですか。
0点:全くない。
1点:1週間に1回未満。
2点:1週間に1回以上。
質問12.あなたは、趣味やけいこごとをしますか。
0点:よくする。
1点:ときどきする。または、ほとんどしない。
質問13.肉類、卵、魚介類、牛乳の内、いずれかを毎日1つ以上食べていますか。
0点:毎日、いずれか1つ以上食べる。
1点:毎日は食べていない。
質問14.現在、食事づくりを1週間にどのくらいしていますか。
0点:ほぼ毎日。または、1週間に4〜5日。
1点:1週間に1〜3日。または、ほとんどしない。
【0042】
《表3》
質問15.これまでやってきた事や、興味があった事の多くを、最近やめてしまいましたか。
0点:やめない。
1点:やめた。
質問16.貯金の出し入れや公共料金の支払い、家計のやりくりができますか。
0点:できる。
1点:できない。
質問17.自分で電話番号を調べて、電話をかけることができますか。
0点:できる。
1点:できない。
質問18.薬を決まった分量、決まった時間に自分で飲むことができますか。
0点:できる。
1点:できない。
質問19.利き手による1回の握力:
0点:男性で29kg以上。女性で19kg以上。
1点:男性で29kg未満。女性で19kg未満。
質問20.開眼での片足立ち時間(二回のうち長い方):
0点:男性で20秒以上。女性で10秒以上。
1点:男性で20秒未満。女性で10秒未満。
質問21.いつも歩いている速さの歩行5mの時間:
0点:男性で4.4秒未満。女性で5.0秒未満。
1点:男性で4.4秒以上。女性で5.0秒以上。
【0043】
本発明における条件1「ふだん、自分は健康でないと思う」に関して、表1に記載の質問1を行う場合、その回答は、被験者本人のもののみとする。
【0044】
本発明における条件2「現在、複数種類の薬を飲んでいる」に関して、薬の種類やその組み合わせについては特に限定されるものではなく、例えば、表1に記載の質問2を行う場合、薬の種類やその組み合わせについては問わない。条件2における薬の数は、3種類以上であることが好ましい。
【0045】
本発明における条件3「この1年間に入院したことがある」に関して、病名や入院期間などは特に限定されるものではなく、例えば、表1に記載の質問3を行う場合、病名や入院期間などは問わず、過去一年間の入院経験の有無について質問する。
【0046】
本発明における条件4「この1年間に転んだことがある」に関して、例えば、表1に記載の質問4を行う場合、転倒の定義は、物につまづいたり、すべったりして、足の裏以外が地面もしくはそれに類するもの(ちゃぶ台や長いすなど)に触れること、とする。その原因や怪我の程度は考慮しない。歩行時のほかに自転車に乗っていて倒れた場合も転倒に含む。ただし、交通事故は除外する(車、自転車にぶつけられた場合など)。
【0047】
本発明における条件5「この1年間に転んだことがある」に関して、例えば、表1に記載の質問5を行う場合、その回答は被験者本人のもののみとする。回答の選択に困った場合でも、どちらかより近い方を選んでもらう。
【0048】
本発明における条件6「ひとりで外出又は遠出することができない」に関して、例えば、表1に記載の質問6を行う場合、普段は行う機会がない又は少ないが、実行しようとすればできる能力がある場合は、できる(すなわち、0点が与えられている回答)でよい。補助具を使用する場合や、バス、電車、自転車、自家用車による外出も「自力で外出可能」に含める。
【0049】
本発明における条件7「不自由なくひとりで所定距離を続けて歩くことができない」に関して、前記「所定距離」は、通常生活を営む上で指標となる距離である限り、特に限定されるものではなく、例えば、0.5km〜2kmの範囲で選択することができ、特に好ましくは1kmである。
例えば、表1に記載の質問7を行う場合、前記所定距離(例えば、1km)を被験者が判断しにくい場合は、具体的な質問(例えば、「駅AからスーパーBくらいまでの距離を歩くことが出来ますか。」)に代えることができる。
【0050】
本発明における条件8「不自由なくひとりで階段の上り下りができない」に関して、建物の1階から2階に移動する程度の階段を上り下りできる能力を判断基準とする。例えば、表2に記載の質問8を行う場合、建物の1階から2階に移動する程度の階段を上り下りできる能力を問うこととし、自力で階段を上り下りできれば、「はい」(すなわち、0点が与えられている回答)とする(例:手すりを使っても良い)。普段行っていなくても(例えば、平屋に住んでいる)、行える能力がある場合は、「はい」でよい。
【0051】
本発明における条件9「物につかまらないで、つま先立ちができない」に関して、両踵が少しでも床から離すことができれば、つま先立ちができると判断し、踵を上げる高さや時間は問わない。例えば、表2に記載の質問9を行う場合、両踵が少しでも床から離すことができれば、「はい」(すなわち、0点が与えられている回答)とし、踵を上げる高さや時間は問わない。やる機会が少ないので回答に困る場合でも、やろうとすればできる(行う能力のある)場合は、「はい」でよい。実際にやってみる必要はない。
【0052】
本発明における条件10「トイレに行くのに間に合わなくて、失敗することがある」に関して、前記失敗は尿失禁に限定する。
【0053】
本発明における条件11「尿がもれることがある」に関して、例えば、表2に記載の質問11を行う場合、尿失禁の頻度を訊く。表2に記載の質間10の回答が「ない」(0点が与えられている回答)である場合は、質問11の回答は自動的に「全くない」(0点が与えられている回答)となり、質問11を省略することができる。
【0054】
本発明における条件12「趣味や稽古ごとをしない」に関して、趣味やけいこごとの種類については特に限定されるものではない。
【0055】
本発明における条件13「肉類、卵、魚介類、又は牛乳のいずれも食べない日がある」に関して、肉類とは、生鮮又は加工品を含む、全ての肉類である。卵は、鶏卵又はうずらなどの卵で、魚の卵は除く。魚介類とは、生鮮又は加工品、全ての魚や貝類のことである。コーヒー牛乳やフルーツ牛乳は、牛乳からは除く。例えば、表2に記載の質問13を行う場合、その日によって食べ物が違っていても、肉類、卵、魚介類、又は牛乳のうちいずれか1つでも毎日食べていれば「毎日、いずれか1つ以上食べる」(すなわち、0点が与えられている回答)とする。
【0056】
本発明における条件14「現在、食事づくりを行う日が、1週間に3日以下である」に関して、例えば、表2に記載の質問14を行う場合、食事づくりの頻度を問う。
【0057】
本発明における条件15「これまでやってきたことや、興味があったことの多くを、最近やめてしまった」に関して、やってきた事、興味があった事の内容や種類については特に限定されるものではない。
【0058】
本発明における条件16「貯金の出し入れや公共料金の支払い、家計のやりくりができない」に関して、例えば、表3に記載の質問16を行う場合、金銭管理できる能力の有無を問う。ATM、窓口でおろす場合でも、可能であれば「できる」(0点が与えられている回答)にする。「普段は本人以外(例えば旦那さん)がやるから分からない」等の答えの場合には、「ご自分でやるとしたらできますか?」と聞きなおす。
【0059】
本発明における条件17「自分で電話番号を調べて、電話をかけることができない」に関して、例えば、表3に記載の質問17を行う場合、電話番号を知らないところに電話をかけることのできる能力を問う。自力で電話番号を調べて(知人に尋ねる、番号案内にコールする、電話帳から調べるなどの手段を用いて)、なおかつ電話をかけることができれば「できる」(0点が与えられている回答)とする。普段はやることがなくても、できる能力を有していれば「できる」である。
【0060】
本発明における条件18「薬を決まった分量、決まった時間に、自分で飲むことができない」に関して、自分で飲むことができるとは、一人でも忘れずに(ほぼ)毎日、薬を飲み続けることができるということをいう。例えば、表3に記載の質問18を行う場合、薬を飲んでいない場合でも、指示を守って薬を服用することができる能力があれば「できる」(0点が与えられている回答)とする。
【0061】
本発明における条件19「握力が、予め統計学的に決定した閾値未満である」に関して、前記閾値は、種々条件、例えば、性別又は年齢により適宜、適当な値を選択することができる。一般的には、被験者に対応する適当な母集団において既に得られているデータを用いて統計学的処理を行い、低値から10〜25%の値を閾値として使用することができる。前記閾値は、時代の経過に従っても変化することが予想されるが、例えば、現在のところ、表3に記載の質問19に示すように、65歳以上の男性では29kgを用いることが好ましく、65歳以上の女性では19kgを用いることが好ましい。
【0062】
握力の測定は、例えば、以下の点に注意して実施することが好ましい。スメドレー式握力計を使用して、利き手で1回測定する。被験者毎に握力計の握り幅を調節する(人差し指の第二関節が直角になるように)。測定姿位は、両足を自然に開いて安定した直立姿勢とし、握力計の示針を外側にして体に触れないようにして力一杯握力計を握ってもらう。測定の際は腕を自然に伸ばし、握力計を身体から手を離し、握る際に手を振らないよう注意する。測定補助者は、被験者が力を入れるのに合わせてかけ声をかける。測定値は、小数点第一位を四捨五入し整数で記入する。測定した側(左右)を記入する。
【0063】
本発明における条件20「目を開いて片足で立つことができる時間が、予め統計学的に決定した閾値未満である」に関して、前記閾値は、種々条件、例えば、性別又は年齢により適宜、適当な値を選択することができる。一般的には、被験者に対応する適当な母集団において既に得られているデータを用いて統計学的処理を行い、低値から10〜25%の値を閾値として使用することができる。前記閾値は、時代の経過に従っても変化することが予想されるが、例えば、現在のところ、表3に記載の質問20に示すように、65歳以上の男性では20秒を用いることが好ましく、65歳以上の女性では10秒を用いることが好ましい。
【0064】
目を開いて片足で立つことができる時間は、例えば、以下の点に注意して実施することが好ましい。前記時間は、ストップウォッチを用いて測定する。測定は硬い床面で指定の運動靴を履いて行う。挙げる足は、好きな側でよい。足の挙げ方は最も安定する形でよいが、反対側の足に付けたり支えたりしてはならない測定は、片足を挙げたときからおろすまでの時間を測定する。軸足が動いた時(ずれたとき)はそこまでの時間を計測する。測定時間は60秒までとし、60秒を経過した者はそこで打ち切る。目標時間に達しなければ、2回の試行を行う。被験者が倒れる可能性があるので、測定補助者は被験者の前に立ち、よろけた時は保持できるようにする。目標時間に達しず2回試行した場合は、大きい値の方を採用する。立った(支持している)側の左右を記録する。片足で全く立てない(足が挙げられない)者は0秒、片足を一瞬しか挙げられない(1秒未満)の者は1秒と記入する。また、けがや障害などで測定が不能の場合や拒否した場合はブランクとする。読みとりは整数までとする。
【0065】
本発明における条件21「所定距離を普通に歩くときの所要時間が、予め統計学的に決定した閾値以上である」に関して、前記所定距離は、一定の歩行速度で測定を実施することができる距離であって、且つ被験者に疲労を与えない距離である限り、特に限定されるものではなく、例えば、1.5m〜10mであり、好ましくは3m〜7mであり、特に好ましくは5mである。
また、前記閾値は、種々条件、例えば、性別又は年齢により適宜、適当な値を選択することができる。一般的には、被験者に対応する適当な母集団において既に得られているデータを用いて統計学的処理を行い、低値から10〜25%の値を閾値として使用することができる。前記閾値は、時代の経過に従っても変化することが予想されるが、例えば、現在のところ、表3に記載の質問21に示すように、所定距離が5mである場合、65歳以上の男性では4.4秒を用いることが好ましく、65歳以上の女性では5秒を用いることが好ましい。また、所定距離を3mとする場合は、65歳以上の男性では2.6秒を用いることが好ましく、65歳以上の女性では3秒を用いることが好ましい。
【0066】
所定距離を普通に歩くときの所要時間は、例えば、以下の点に注意して実施することが好ましい。被験者は1名とする。被験者に、11mの歩行路上を教示に従い歩いてもらう。教示は、「いつも歩いている速さで歩いてください」に統一する。測定補助者は、被験者の身体の一部(腰または肩)が手前のテープ(3m地点)を超えた地点から8m地点のテープを身体の一部が越えるまでの所要時間をストップウォッチを用いて0.1秒単位で測定する。被験者との間隔は、あまり遠すぎず且つ被験者の歩行の邪魔にならない程度で、転倒しそうになったら即支えられる距離とする。1回実施する。明らかに通常歩行速度よりも達すぎると判断される場合は、本人確認した上で再度測定する。測定補助者はテスト中における被験者の転倒に気をつける。別の補助員を就けるとなお好ましい。歩行時間を用紙に記入し、測定終了後、歩行速度を算出する。
【0067】
本発明の判定方法において、表1〜表3に示す21項目の質問を利用する場合には、表1〜表3に示す21項目の質問に回答後、その回答結果を、例えば、表4に示す判定シートに記載の重み付けに沿って、老年症候群の状態毎に集計し、その合計点数が前記判定シートに記載の閾値以上であるか否かによって、状態毎の危険性を判定することができる。なお、表4における各記号(×1)、(×2)、及び(×3)は、それぞれ、表1〜表3の各質問で得られた基礎点数を「1倍」、「2倍」、及び「3倍」した後、合計点数に算入することを意味し、表4における空欄は、前記基礎点数を合計点数に算入しないことを意味する。
【0068】
《表4》
身体虚弱 転倒 尿失禁 低栄養 軽度痴呆
質問1. (×1) (×1)
質問2. (×1)
質問3. (×1) (×2)
質問4. (×3) (×1) (×2)
質問5. (×2) (×1)
質問6. (×3) (×1) (×1) (×2)
質問7. (×1)
質問8. (×1)
質問9. (×1) (×1) (×1)
質問10. (×1) (×1) (×3)
質問11. (×1)
質問12. (×1) (×2)
質問13. (×1) (×1) (×1)
質問14. (×1) (×1)
質問15. (×1) (×1)
質問16. (×2) (×1) (×1) (×2)
質問17. (×1) (×2) (×2)
質問18. (×2)
質問19. (×2) (×2) (×2) (×2)
質問20. (×2) (×2) (×2)
質問21. (×3) (×3) (×2) (×3)
判定用閾値 5 5 5 4 4
【0069】
表4に示す判定シートに記載の重み付けを用いた場合の判定手順の具体例を以下に示す。
例えば、表1〜表3に示す質問1〜21に対して、質問1、4、6、12、及び16について、基礎点数が1点である回答を行い、残る質問について、基礎点数が0点である回答を行った被験者の場合、身体虚弱の危険性に関する被験者の合計点数は、式:
1点(質問1の基礎点数)×1(重み付け)+1点(質問6の基礎点数)×3(重み付け)+1点(質問12の基礎点数)×1(重み付け)+1点(質問16の基礎点数)×2(重み付け)
で算出され、7点である。なお、質問4の基礎点数(1点)は、合計点数には算入しない。身体虚弱の判定用閾値は5点であるので、この被験者は、身体虚弱の危険性があると判定することができる。
【0070】
同様に、転倒の危険性に関するこの被験者の合計点数は、式:
1点(質問4の基礎点数)×3(重み付け)+1点(質問6の基礎点数)×1(重み付け)
で算出され、4点である。質問1及び12の各基礎点数(1点)は、合計点数には算入しない。この合計点数は判定用閾値(5点)未満であるので、この被験者は、転倒の危険性がないと判定することができる。
【0071】
尿失禁に関しては、合計点数は、式:
1点(質問1の基礎点数)×1(重み付け)+1点(質問4の基礎点数)×1(重み付け)+1点(質問6の基礎点数)×1(重み付け)+1点(質問16の基礎点数)×1(重み付け)
から4点(質問12の基礎点数は算入しない)であり、判定用閾値(5点)未満であるので、この被験者は、尿失禁の危険性がないと判定することができる。
【0072】
低栄養に関しては、合計点数は、式:
1点(質問4の基礎点数)×2(重み付け)+1点(質問12の基礎点数)×2(重み付け)+1点(質問16の基礎点数)×1(重み付け)
から5点(質問1及び6の各基礎点数は算入しない)であり、判定用閾値(4点)以上であるので、この被験者は、低栄養の危険性があると判定することができる。
【0073】
軽度の痴呆に関しては、合計点数は、式:
1点(質問6の基礎点数)×2(重み付け)+1点(質問16の基礎点数)×2(重み付け)
から4点(質問1、4、及び12の各基礎点数は算入しない)であり、判定用閾値(4点)以上であるので、この被験者は、軽度痴呆の危険性があると判定することができる。
これらの結果をまとめると、この被験者は、身体虚弱、低栄養、及び軽度の痴呆の危険性があり、転倒及び尿失禁の危険性がないと判定することができる。
【0074】
以上、表4に示す判定シートに記載の重み付けを用いた場合の判定手順を、具体例に沿って説明したが、本発明の判定方法を用いて身体虚弱の危険性を判定する場合には、条件1、6、7、9、10、12〜14、16、17、及び19〜21からなる群から選択される条件の内、少なくとも2つ(好ましくは3つ、より好ましくは4つ、更に好ましくは5つ)を満足する場合に、危険性有りと判定することができる。例えば、表1〜表3に示す質問1、6、7、9、10、12〜14、16、17、及び19〜21からなる群から選択される質問の内、少なくとも2つについて、1点を与えられた回答を選択した場合、身体虚弱の危険性有りと判定することができる。また、前記条件の内、条件6、16、19〜21が、身体虚弱との関連性がより高い項目である。
【0075】
本発明の判定方法では、単純に項目数のみで危険性を判定することもできるが、各項目の回答に与えられている基礎点数に重み付けをして、その合計点を判定用閾値と比較することにより、更に正確な判定を行うことができる。
例えば、本発明の判定方法を用いて身体虚弱の危険性を判定する場合には、条件1、7、9、10、12〜14、及び17からなる群から選択される条件を満足する場合、満足した条件毎に点数aを与え、条件16、19、及び20からなる群から選択される条件を満足する場合、満足した条件毎に点数bを与え、条件6及び21からなる群から選択される条件を満足する場合、満足した条件毎に点数cを与え(但し、a<b<cであるものとする)、その合計点が予め設定した閾値以上である場合に、身体虚弱の危険性有りと判定することができる。閾値は、種々条件、例えば、性別又は年齢により変化し、また、時代の経過に従っても変化することが予想されるため、被験者に対応する適当な母集団において既に得られているデータを用いて統計学的処理を行うことによって、適宜決定することができる。
例えば、前記点数a、b、及びcがn点、2n点、及び3n点である場合(nは正数)には、身体虚弱の危険性を判定するための閾値として「5n」を用いることができる。また、前記点数a、b、及びcが1点、2点、及び3点である場合(すなわち、表4に示す判定シートに記載した重み付けを採用する場合)には、身体虚弱の危険性を判定するための閾値として「5」を用いることができる。
【0076】
同様にして、本発明の判定方法を用いて転倒の危険性を判定する場合には、条件2〜6、9、10、13、15、及び19〜21からなる群から選択される条件の内、少なくとも2つ(好ましくは3つ、より好ましくは4つ、更に好ましくは5つ)を満足する場合に、危険性有りと判定することができる。例えば、表1〜表3に示す質問2〜6、9、10、13、15、及び19〜21からなる群から選択される質問の内、少なくとも2つについて、1点を与えられた回答を選択した場合、転倒の危険性有りと判定することができる。また、前記条件の内、条件4、5、19〜21が、転倒との関連性がより高い項目である。
【0077】
また、本発明の判定方法を用いて転倒の危険性を判定する場合には、条件2、3、6、9、10、13、及び15からなる群から選択される条件を満足する場合、満足した条件毎に点数aを与え、条件5、19、及び20からなる群から選択される条件を満足する場合、満足した条件毎に点数bを与え、条件4及び21からなる群から選択される条件を満足する場合、満足した条件毎に点数cを与え(但し、a<b<cであるものとする)、その合計点が予め設定した閾値以上である場合に、転倒の危険性有りと判定することができる。閾値は、種々条件、例えば、性別又は年齢により変化し、また、時代の経過に従っても変化することが予想されるため、被験者に対応する適当な母集団において既に得られているデータを用いて統計学的処理を行うことによって、適宜決定することができる。
例えば、前記点数a、b、及びcがn点、2n点、及び3n点である場合(nは正数)には、転倒の危険性を判定するための閾値として「5n」を用いることができる。また、前記点数a、b、及びcが1点、2点、及び3点である場合(すなわち、表4に示す判定シートに記載した重み付けを採用する場合)には、転倒の危険性を判定するための閾値として「5」を用いることができる。
【0078】
本発明の判定方法を用いて尿失禁の危険性を判定する場合には、条件1、4〜6、8〜11、15〜17、19、及び21からなる群から選択される条件の内、少なくとも2つ(好ましくは3つ、より好ましくは4つ、更に好ましくは5つ)を満足する場合に、危険性有りと判定することができる。例えば、表1〜表3に示す質問1、4〜6、8〜11、15〜17、19、及び21からなる群から選択される質問の内、少なくとも2つについて、1点を与えられた回答を選択した場合、尿失禁の危険性有りと判定することができる。また、前記条件の内、条件10、11、17、19、21が、尿失禁との関連性がより高い項目である。
【0079】
また、本発明の判定方法を用いて尿失禁の危険性を判定する場合には、条件1、4〜6、8、9、15、及び16からなる群から選択される条件を満足する場合、あるいは、条件11を満足し、且つ尿がもれる回数が1週間に1回未満である場合、満足した条件毎に点数aを与え、条件17、19、及び21からなる群から選択される条件を満足する場合、あるいは、条件11を満足し、且つ尿がもれる回数が1週間に1回以上である場合、満足した条件毎に点数bを与え、条件10を満足する場合、点数cを与え(但し、a<b<cであるものとする)、その合計点が予め設定した閾値以上である場合に、尿失禁の危険性有りと判定することができる。閾値は、種々条件、例えば、性別又は年齢により変化し、また、時代の経過に従っても変化することが予想されるため、被験者に対応する適当な母集団において既に得られているデータを用いて統計学的処理を行うことによって、適宜決定することができる。
例えば、前記点数a、b、及びcがn点、2n点、及び3n点である場合(nは正数)には、尿失禁の危険性を判定するための閾値として「5n」を用いることができる。また、前記点数a、b、及びcが1点、2点、及び3点である場合(すなわち、表4に示す判定シートに記載した重み付けを採用する場合)には、尿失禁の危険性を判定するための閾値として「5」を用いることができる。
【0080】
本発明の判定方法を用いて低栄養の危険性を判定する場合には、条件3、4、12〜14、16、及び19〜21からなる群から選択される条件の内、少なくとも2つ(好ましくは3つ、より好ましくは4つ)を満足する場合に、危険性有りと判定することができる。例えば、表1〜表3に示す質問3、4、12〜14、16、及び19〜21からなる群から選択される質問の内、少なくとも2つについて、1点を与えられた回答を選択した場合、低栄養の危険性有りと判定することができる。また、前記条件の内、条件3、4、12、19〜21が、低栄養との関連性がより高い項目である。
【0081】
また、本発明の判定方法を用いて低栄養の危険性を判定する場合には、条件13、14、及び16からなる群から選択される条件を満足する場合、満足した条件毎に点数aを与え、条件3、4、12、19、及び20からなる群から選択される条件を満足する場合、満足した条件毎に点数bを与え、条件21を満足する場合、点数cを与え(但し、a<b<cであるものとする)、その合計点が予め設定した閾値以上である場合に、低栄養の危険性有りと判定することができる。閾値は、種々条件、例えば、性別又は年齢により変化し、また、時代の経過に従っても変化することが予想されるため、被験者に対応する適当な母集団において既に得られているデータを用いて統計学的処理を行うことによって、適宜決定することができる。
例えば、前記点数a、b、及びcがn点、2n点、及び3n点である場合(nは正数)には、低栄養の危険性を判定するための閾値として「4n」を用いることができる。また、前記点数a、b、及びcが1点、2点、及び3点である場合(すなわち、表4に示す判定シートに記載した重み付けを採用する場合)には、低栄養の危険性を判定するための閾値として「4」を用いることができる。
【0082】
本発明の判定方法を用いて軽度の痴呆の危険性を判定する場合には、条件6及び16〜18からなる群から選択される条件の内、少なくとも2つ(好ましくは3つ、より好ましくは4つ)を満足する場合に、危険性有りと判定することができる。例えば、表1〜表3に示す質問6及び16〜18からなる群から選択される質問の内、少なくとも2つについて、1点を与えられた回答を選択した場合、軽度の痴呆の危険性有りと判定することができる。
【0083】
また、本発明の判定方法を用いて軽度の痴呆の危険性を判定する場合には、条件6及び16〜18からなる群から選択される条件を満足する場合、満足した条件毎に点数aを与え、その合計点が予め設定した閾値以上である場合に、軽度の痴呆の危険性有りと判定することができる。この場合には、閾値として「2a」を用いることができる。
前記点数aが2点である場合(すなわち、表4に示す判定シートに記載した重み付けを採用する場合)には、軽度の痴呆の危険性を判定するための閾値として「4」を用いることができる。
【0084】
[C]健診項目の選定手順
(1)リスク保有者の判定基準の決定
本発明が対象とする「老年症候群」、すなわち、身体虚弱、転倒、尿失禁、低栄養、及び軽度の痴呆のそれぞれに対して、それらの機能低下状態と極めて密接に関連していると考えられている公知の代表的な健診項目を、項目数の少ない尿失禁で約30項目、平均して約40〜50項目ずつ採集した。
【0085】
具体的には、東京都老人総合研究所所属の各分野の専門家に、従来公知の健診項目を列挙させた。「身体虚弱」については医学、老年学、運動学、及び体育学の専門家(計4名)から、「転倒」については医学、老年学、運動学、及び体育学の専門家(計4名)から、「尿失禁」については老年医学、地域保健学、看護学、及び体育学の専門家(計4名)から、「低栄養」については、栄養学の専門家(計1名)から、「軽度の痴呆」については、精神医学及び心理学の専門家(計2名)から、それぞれ採取した。
【0086】
これらの各健診項目に関し、高齢者(65歳以上)のべ5111名に質問を行い、「YES」(機能低下状態の進行又は発現)又は「NO」(機能低下状態の未進行又は未発現)の回答を得た。具体的には、東京都老人総合研究所が保存するデータの内、秋田県南外村で1992年〜2002年にわたって調査した高齢者のべ2861名のデータと、東京都板橋区で2001年〜2002年にわたって調査した高齢者のべ2250名のデータとを使用した。
得られた回答を使用して、各健診項目のそれぞれ単独について、あるいはそれらの組合せについて「YES」の通過率を調べ、「YES」通過率が10〜20%の範囲となる健診項目を選択したところ、各機能低下状態に関してそれぞれ1項目ずつの健診項目を選択することができた。
【0087】
具体的には、「身体虚弱」については、IADLに含まれる5項目の内、少なくとも1つの項目に該当していること、「転倒」については、過去一年間に転倒した経験があること、「尿失禁」については、尿がもれることを心配するために、生活に支障が生じている(例えば、外出を控える)状態であること、「低栄養」については、血清アルブミン量が3.8g/dL以下であること、「軽度の痴呆」については、MMSEで23点以下(30点満点)であることに関して、それぞれ、「YES」通過率が10〜17%の範囲となり、これらをそれぞれのリスク保有者の判定基準とした。
【0088】
前記の判定基準に基づいて、前記の高齢者(65歳以上)5111名を、それぞれ「身体虚弱」、「転倒」、「尿失禁」、「低栄養」、及び「軽度の痴呆」に関して、リスク保有者とリスク非保有者とに分類した。
【0089】
(2)健診項目の網羅的列挙
続いて、一般的に「老年症候群」に関連があると考えられる健診項目を、東京都老人総合研究所所属の各分野の専門家から網羅的に広く採集したところ、合計で500項目程度となった。この場合、上位尺度や下位尺度も区別することなく、採取した。
具体的には、各機能低下状態に共通する項目とし、例えば、身体計測値(例えば、身長、体重、BMI)、血圧、運動機能に関する各項目(例えば、筋力、バランス、歩行、手指巧緻性)、健康度自己評価、心理面(例えば、うつの指標)、老研式活動能力指標、または生活満足度などを採取した。
【0090】
また、各機能低下状態に特有の項目としては、「身体虚弱」及びその関連機能低下状態については、前記表1〜表3に記載の条件(健診項目)1、6、7、9、10、12〜14、16、17、及び19〜21を含め、それ以外に、例えば、運動項目に関する項目として脚筋力又は基本的ADLなどの項目を採取した。
「転倒」及びその関連機能低下状態については、前記表1〜表3に記載の条件(健診項目)2〜6、9、10、13、15、及び19〜21を含め、それ以外に、例えば、目又は耳の疾患の有無、脚筋力、バランス項目(例えば、タンデム歩行)、低血圧の既往などの項目を採取した。
「尿失禁」及びその関連機能低下状態については、前記表1〜表3に記載の条件(健診項目)1、4〜6、8〜11、15〜17、19、及び21を含め、それ以外に、例えば、失禁の頻度、失禁防止に対する処置などの項目を採取した。
「低栄養」及びその関連機能低下状態については、前記表1〜表3に記載の条件(健診項目)3、4、12〜14、16、及び19〜21を含め、それ以外に、例えば、食事内容、食欲の有無、入院の有無、一人で食べるか否か、間食の有無などの項目を採取した。
「軽度の痴呆」及びその関連機能低下状態については、前記表1〜表3に記載の条件(健診項目)6及び16〜18を含め、それ以外に、例えば、MMSE及びその各質問項目、意欲の低下、GDS、うつなどの項目を採取した。
こうして、およそ500項目の健診項目を採集した。
【0091】
(3)健診項目の取捨選択、重み付け、及びリスク保有値(判定基準)の決定
次に、これらの約500項目の各健診項目に関し、前記高齢者5111名に質問を行い、「YES」(機能低下状態の進行又は発現)又は「NO」(機能低下状態の未進行又は未発現)の回答を得た。
健診項目の選択には、主に、t検定、分散分析、χ二乗検定、因子分析、及びロジスティック回帰分析の各統計学的手法を用いて実施した。例えば、連続変数に関しては、項目毎に保有者と非保有者との差異の有無を、t検定又は分散分析により検定した。また、名義変数に関しては、χ二乗検定により検定した。
【0092】
まず、約500項目の中から、前記検定により統計学的に全く関係のない項目又は関連性の低い項目を除いた後、内容的に重複するものについては、因子分析により、より関連の強い方を取捨選択することにより絞り込み、また、専門的な知識及び技術を必要とされる項目についても除いた。100項目程度まで絞り込んだ後、更なる絞り込みを実施するために、ロジスティック回帰分析を用いて、各老年症候群毎に、関連性の強い項目のセットを選択した。統計的に各老年症候群と関連が強いとされた項目のセットを、リスク保有の判定に用いることとし、21項目の健診項目を選定した。21項目の健診項目を、表1〜表3に示す。
続いて、その関連の強さに応じて点数を2倍又は3倍にするという項目の重み付けを行い、更に、老年症候群毎のリスク保有判定に最もよい合計点の閾値(判定基準)を設定した。決定した重み付け及び判定基準を表4に示す。
なお、質問項目2及び18については、別の母集団データを使用して、同様の手法を用いて選定した。
【0093】
(4)健診項目の検証
のべ5111名の前記データには、「老年症候群」に含まれる個々の「機能低下状態」の発現状態の経過データが含まれているので、この各個人のデータを用いて、前記21項目の健診項目が各リスクの有無をどれくらい説明することができるかの確認を行った。
χ二乗検定によりp<0.001水準で有意であることが確認され、更に、各老年症候群リスク保有者の77%以上がリスク保有者として正しく判別される結果となった。より具体的には、リスク保有者を正しく判定することができる確率は、「身体虚弱」で77.4%であり、「転倒」で81.5%であり、「尿失禁」で95.2%であり、「低栄養」で77.3%であり、「軽度の痴呆」で92.5%であった。
【0094】
[D]本発明の判定装置
本発明は、老年症候群の危険性を判定する装置にも関する。その判定装置は、
(1)本発明の判定方法における前記条件(あるいは、前記表1〜表3に記載の健診項目)1〜21の全て又はそれらの一部を記憶する条件記憶手段、
(2)前記条件(健診項目)1〜21の全て又はそれらの一部を(被験者、検査担当者、又は測定補助者の少なくとも1者、好ましくは全ての者に)表示する条件表示手段、
(3)前記条件(健診項目)1〜21の全て又はそれらの一部に対する被験者のYes回答及び/又はNo回答を(被験者、検査担当者、又は測定補助者の少なくとも1者、好ましくは全ての者のいずれかが)入力することができる回答入力手段、
(4)前記条件(健診項目)1〜21の全て又はそれらの一部に対するYes回答及び/又はNo回答の回答記憶手段、
(5)前記Yes回答の数を計数する回答数計数手段、
(6)Yes回答数に対して予め設定された基準値を記憶する基準値記憶手段、
(7)Yes回答数が前記基準値以上であるか否かを判定する基準値判定手段、及び
(8)前記基準値判定手段による判定結果を出力する判定結果出力手段
を含むことができる。
【0095】
本発明による判定装置は、場合により、
(9)各老年症候群の機能低下状態(すなわち、身体虚弱、転倒、尿失禁、低栄養、及び軽度の痴呆)毎に定めた分類に従って、前記条件(健診項目)1〜21を分類別に記憶する分類別記憶手段
を、前記条件記憶手段(1)に代えて、あるいは前記条件記憶手段(1)に加えて、含むことができる。
また、本発明による判定装置は、場合により、
(10)前記の各老年症候群の機能低下状態毎に定めたYes回答数の基準値を記憶する手段、
(11)予め決定した設定値(例えば、予め設定した閾値、又は条件毎に付与する点数a、b、及びc)の入力手段、
(12)条件毎に付与された点数a、b、及びcを、該当する条件に対するYes回答に積算して積を算出する手段、及び
(13)前記設定値入力手段によって入力された設定値(例えば、予め設定した閾値、又は条件毎に付与する点数a、b、及びc)の記憶手段
を備えていることが好ましい。
なお、前記分類記憶手段(9)を備えている場合には、前記出力手段(8)によって、各老年症候群の機能低下状態毎に判定結果を出力することができる。また、前記積算手段(12)を備えている場合には、前記Yes回答計数手段(5)によって、各積算結果を合計することができ、その計算結果を基準値と比較して各老年症候群の機能低下状態を判定することができる。
【0096】
本発明の判定装置は、老年症候群の複数個の機能低下状態の任意の組合せのリスク判定が可能な装置であることも、あるいは、老年症候群の個々の機能低下状態のリスク判定を単独で行うことが可能な装置であることもできる。
本明細書において、老年症候群の複数個の機能低下状態の任意の組合せには、2つの機能低下状態の任意の組合せ、3つの機能低下状態の任意の組合せ、4つの機能低下状態の任意の組合せ、あるいは5つの機能低下状態の組合せが含まれる。
例えば、本発明の判定装置が、身体虚弱の危険性の判定装置である場合には、前記条件記憶手段(1)及び/又は前記分類別記憶手段(9)に、前記条件1、6、7、9、10、12〜14、16、17、及び19〜21からなる群から選択される条件の内、少なくとも2つ(好ましくは、条件6、16、19、20、及び21;より好ましくは、条件1、6、7、9、10、12〜14、16、17、及び19〜21の全て)を記憶させる。
また、前記の基準値記憶手段(6)には、前記判定方法欄の説明で述べた身体虚弱に関する基準値を記憶させる。
更に、前記の設定値入力手段(11)からは、前記判定方法欄の説明で述べた閾値や、条件毎に付与する点数a、b、及びcを入力し、前記の設定値記憶手段(13)に記憶させる。
【0097】
本発明の判定装置が、転倒の危険性の判定装置である場合には、前記条件記憶手段(1)及び/又は前記分類別記憶手段(9)に、前記条件2〜6、9、10、13、15、及び19〜21からなる群から選択される条件の内、少なくとも2つ(好ましくは、条件4、5、19、20、及び21;より好ましくは、条件2〜6、9、10、13、15、及び19〜21の全て)を記憶させる。
また、前記の基準値記憶手段(6)には、前記判定方法欄の説明で述べた転倒に関する基準値を記憶させる。
更に、前記の設定値入力手段(11)からは、前記判定方法欄の説明で述べた閾値や、条件毎に付与する点数a、b、及びcを入力し、前記の設定値記憶手段(13)に記憶させる。
【0098】
本発明の判定装置が、尿失禁の危険性の判定装置である場合には、前記条件1、4〜6、8〜11、15〜17、19、及び21からなる群から選択される条件の内、少なくとも2つ(好ましくは、条件10、11、17、19、及び21;より好ましくは、条件1、4〜6、8〜11、15〜17、19、及び21の全て)を記憶させる。
また、前記の基準値記憶手段(6)には、前記判定方法欄の説明で述べた尿失禁に関する基準値を記憶させる。
更に、前記の設定値入力手段(11)からは、前記判定方法欄の説明で述べた閾値や、条件毎に付与する点数a、b、及びcを入力し、前記の設定値記憶手段(13)に記憶させる。
【0099】
本発明の判定装置が、低栄養の危険性の判定装置である場合には、前記条件3、4、12〜14、16、及び19〜21からなる群から選択される条件の内、少なくとも2つ(好ましくは、条件3、4、12、19、20、及び21;より好ましくは、条件3、4、12〜14、16、及び19〜21の全て)を記憶させる。
また、前記の基準値記憶手段(6)には、前記判定方法欄の説明で述べた低栄養に関する基準値を記憶させる。
更に、前記の設定値入力手段(11)からは、前記判定方法欄の説明で述べた閾値や、条件毎に付与する点数a、b、及びcを入力し、前記の設定値記憶手段(13)に記憶させる。
【0100】
本発明の判定装置が、軽度痴呆の危険性の判定装置である場合には、前記条件6及び16〜18からなる群から選択される条件の内、少なくとも2つ(好ましくは、条件6及び16〜18の全て)を記憶させる。
また、前記の基準値記憶手段(6)には、前記判定方法欄の説明で述べた軽度痴呆に関する基準値を記憶させる。
更に、前記の設定値入力手段(11)からは、前記判定方法欄の説明で述べた閾値や、条件毎に付与する点数a、b、及びcを入力し、前記の設定値記憶手段(13)に記憶させる。
【0101】
[E]本発明のプログラム
本発明は、老年症候群の危険性の判定をコンピュータに実行させるためのプログラムにも関する。
本発明によるプログラムは、
(1)本発明の判定方法における前記条件(あるいは、前記表1〜表3に記載の健診項目)1〜21の全て又はそれらの一部に対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数を計数する工程、
(2)前記計数工程によって得られたYes回答数が2以上であるか否かを判定する工程、及び
(3)前記判定工程においてYes回答数が2以上であると判定した場合に、老年症候群の危険性があることを表示する工程
を含む。
【0102】
本発明によるプログラムは、前記工程(1)の前に、
(a)本発明の判定方法における前記条件(あるいは、前記表1〜表3に記載の健診項目)1〜21の全て又はそれらの一部を(被験者、検査担当者、又は測定補助者の少なくとも1者、好ましくは全ての者に対して)表示する工程、及び
(b)前記表示工程によって表示された条件(健診項目)1〜21の全て又はそれらの一部に対して、被験者、検査担当者、又は測定補助者の少なくとも1者(好ましくは全ての者のいずれか)に、被験者によるYes回答又はNo回答を入力させる工程
を含むのが好ましい。
【0103】
本発明のプログラムは、老年症候群の複数個の機能低下状態の任意の組合せのリスク判定が可能なプログラムであることも、あるいは、老年症候群の個々の機能低下状態のリスク判定を単独で行うことが可能なプログラムであることもできる。老年症候群の複数個の機能低下状態の任意の組合せには、前記の通り、2つの機能低下状態の任意の組合せ、3つの機能低下状態の任意の組合せ、4つの機能低下状態の任意の組合せ、あるいは5つの機能低下状態の組合せが含まれる。
【0104】
例えば、本発明のプログラムが、身体虚弱の危険性の判定用プログラムである場合には、
(1)前記条件1、6、7、9、10、12〜14、16、17、及び19〜21からなる群から選択される条件の内、少なくとも2つ(好ましくは、条件6、16、19、20、及び21;より好ましくは、条件1、6、7、9、10、12〜14、16、17、及び19〜21の全て)に対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数をカウントする工程、
(2)前記カウント工程によって得られたYes回答数が2以上であるか否かを判定する工程及び
(3)前記判定工程においてYes回答数が2以上であると判定した場合に、身体虚弱の危険性があることを表示する工程が含まれる。
【0105】
前記の身体虚弱の危険性の判定用プログラムの好ましい態様は、
(1)前記条件1、7、9、10、12〜14、及び17からなる群から選択される身体虚弱条件aに対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数をカウントする工程、
(2)身体虚弱条件aに対するYes回答数に点数aを乗算して積の和を得る工程、
(3)前記条件16、19、及び20からなる群から選択される身体虚弱条件bに対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数をカウントする工程、
(4)身体虚弱条件bに対するYes回答数に点数bを乗算して積の和を得る工程、
(5)前記条件6及び21からなる群から選択される身体虚弱条件cに対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数をカウントする工程、
(6)身体虚弱条件cに対するYes回答数に点数cを乗算して積の和を得る工程(但し、a<b<cであるものとする)、
(7)前記乗算工程(2)、(4)及び(6)のそれぞれの和を合計する工程、
(8)前記合計計算工程によって得られた和が予め設定した閾値以上であるか否かを判定する工程及び
(9)前記判定工程において閾値以上であると判定した場合に、身体虚弱の危険性があることを表示する工程
を含む。
ここで、点数a、点数b、及び点数c、並びに閾値は、それぞれ、前記判定方法欄の説明で述べたとおりに決定することができる。
【0106】
本発明のプログラムが、転倒の危険性の判定用プログラムである場合には、
(1)前記条件2〜6、9、10、13、15、及び19〜21からなる群から選択される条件の内、少なくとも2つ(好ましくは、条件4、5、19、20、及び21;より好ましくは、条件2〜6、9、10、13、15、及び19〜21の全て)に対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数をカウントする工程、
(2)前記カウント工程によって得られたYes回答数が2以上であるか否かを判定する工程及び
(3)前記判定工程においてYes回答数が2以上であると判定した場合に、転倒の危険性があることを表示する工程が含まれる。
【0107】
前記の転倒の危険性の判定用プログラムの好ましい態様は、
(1)前記条件2、3、6、9、10、13、及び15からなる群から選択される転倒条件aに対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数をカウントする工程、
(2)転倒条件aに対するYes回答数に点数aを乗算して積の和を得る工程、
(3)前記条件5、19、及び20からなる群から選択される転倒条件bに対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数をカウントする工程、
(4)転倒条件bに対するYes回答数に点数bを乗算して積の和を得る工程、
(5)前記条件4及び21からなる群から選択される転倒条件cに対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数をカウントする工程、
(6)転倒条件cに対するYes回答数に点数cを乗算して積の和を得る工程(但し、a<b<cであるものとする)、
(7)前記乗算工程(2)、(4)及び(6)のそれぞれの和を合計する工程、
(8)前記合計計算工程によって得られた和が予め設定した閾値以上であるか否かを判定する工程及び
(9)前記判定工程において閾値以上であると判定した場合に、転倒の危険性があることを表示する工程
を含む。
ここで、点数a、点数b、及び点数c、並びに閾値は、それぞれ、前記判定方法欄の説明で述べたとおりに決定することができる。
【0108】
本発明のプログラムが、尿失禁の危険性の判定用プログラムである場合には、
(1)前記条件1、4〜6、8〜11、15〜17、19、及び21からなる群から選択される条件の内、少なくとも2つ(好ましくは、条件10、11、17、19、及び21;より好ましくは、条件1、4〜6、8〜11、15〜17、19、及び21の全て)に対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数をカウントする工程、
(2)前記カウント工程によって得られたYes回答数が2以上であるか否かを判定する工程及び
(3)前記判定工程においてYes回答数が2以上であると判定した場合に、尿失禁の危険性があることを表示する工程
が含まれる。
【0109】
前記の尿失禁の危険性の判定用プログラムの好ましい態様は、
(1)前記の条件1、4〜6、8、9、15、及び16、並びに条件11を満足し、且つ尿がもれる回数が1週間に1回未満であるとの条件からなる群から選択される尿失禁条件aに対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数をカウントする工程、
(2)尿失禁条件aに対するYes回答数に点数aを乗算して積の和を得る工程、
(3)前記の条件17、19、及び21、並びに条件11を満足し、且つ尿がもれる回数が1週間に1回以上であるとの条件からなる群から選択される尿失禁条件bに対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数をカウントする工程、
(4)尿失禁条件bに対するYes回答数に点数bを乗算して積の和を得る工程、
(5)前記の条件10からなる尿失禁条件cに対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数をカウントする工程、
(6)尿失禁条件cに対するYes回答数に点数cを乗算して積の和を得る工程(但し、a<b<cであるものとする)、
(7)前記乗算工程(2)、(4)及び(6)のそれぞれの和を合計する工程、
(8)前記合計計算工程によって得られた和が予め設定した閾値以上であるか否かを判定する工程及び
(9)前記判定工程において閾値以上であると判定した場合に、尿失禁の危険性があることを表示する工程を含む。
ここで、点数a、点数b、及び点数c、並びに閾値は、それぞれ、前記判定方法欄の説明で述べたとおりに決定することができる。
【0110】
本発明のプログラムが、低栄養の危険性の判定用プログラムである場合には、
(1)前記条件3、4、12〜14、16、及び19〜21からなる群から選択される条件の内、少なくとも2つ(好ましくは、条件3、4、12、19、20、及び21;より好ましくは、条件3、4、12〜14、16、及び19〜21の全て)に対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数をカウントする工程、
(2)前記カウント工程によって得られたYes回答数が2以上であるか否かを判定する工程及び
(3)前記判定工程においてYes回答数が2以上であると判定した場合に、低栄養の危険性があることを表示する工程
が含まれる。
【0111】
前記の低栄養の危険性の判定用プログラムの好ましい態様は、
(1)前記の条件13、14、及び16からなる群から選択される低栄養条件aに対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数をカウントする工程、
(2)低栄養条件aに対するYes回答数に点数aを乗算して積の和を得る工程、
(3)前記の条件3、4、12、19、及び20からなる群から選択される低栄養条件bに対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数をカウントする工程、
(4)低栄養条件bに対するYes回答数に点数bを乗算して積の和を得る工程、
(5)前記の条件21からなる群から選択される低栄養条件cに対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数をカウントする工程、
(6)低栄養条件cに対するYes回答数に点数cを乗算して積の和を得る工程(但し、a<b<cであるものとする)、
(7)前記乗算工程(2)、(4)及び(6)のそれぞれの和を合計する工程、
(8)前記合計計算工程によって得られた和が予め設定した閾値以上であるか否かを判定する工程及び
(9)前記判定工程において閾値以上であると判定した場合に、低栄養の危険性があることを表示する工程
を含む。
ここで、点数a、点数b、及び点数c、並びに閾値は、それぞれ、前記判定方法欄の説明で述べたとおりに決定することができる。
【0112】
本発明のプログラムが、軽度痴呆の危険性の判定用プログラムである場合には、
(1)前記条件6及び16〜18からなる群から選択される条件の内、少なくとも2つ(好ましくは、条件6及び16〜18の全て)に対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数をカウントする工程、
(2)前記カウント工程によって得られたYes回答数が2以上であるか否かを判定する工程及び
(3)前記判定工程においてYes回答数が2以上であると判定した場合に、軽度の痴呆の危険性があることを表示する工程
が含まれる。
【0113】
前記の軽度痴呆の危険性の判定用プログラムの好ましい態様は、
(1)前記の条件6及び16〜18からなる群から選択される軽度痴呆条件aに対して被験者が入力したYes回答又はNo回答に関して、Yes回答の数をカウントする工程、(2)軽度痴呆条件aに対するYes回答数に点数aを乗算して積の和を得る工程、
(3)前記計算工程によって得られた和が予め設定した閾値以上であるか否かを判定する工程及び
(4)前記判定工程において閾値以上であると判定した場合に、軽度痴呆の危険性があることを表示する工程を含む。
ここで、点数a、点数b、及び点数c、並びに閾値は、それぞれ、前記判定方法欄の説明で述べたとおりに決定することができる。
【0114】
[F]本発明の判定シート
本発明の判定シートは、21項目の条件の内、少なくとも2つの条件又はそれに対応する質問と老年症候群の危険性との関連性(例えば、重み付け)の有無又は程度が表示されている限り、特に限定されるものではない。本発明の判定シートは、所望により、老年症候群に含まれる少なくとも1つの状態の危険性を示す判定用閾値、及び/又は条件若しくはそれに対応する質問が更に表示されていることもできる。
本発明の判定シートは、老年症候群の少なくとも1つを判定することができる判定シートであることもできるし、あるいは、2つ以上を判定することができる判定シートであることもできる。老年症候群の内、身体虚弱、転倒、尿失禁、低栄養、及び軽度の痴呆を全て判定可能な判定シートであることが好ましい。本発明の判定シートは、本発明の判定方法に用いることができる。
【0115】
老年症候群の内、身体虚弱、転倒、尿失禁、低栄養、及び軽度の痴呆を全て判定可能な本発明の判定シートの一態様を図1に示す。
図1に示す判定シート1では、その中央部に、質問項目欄10、重み付け表示欄11a〜11e、及び点数記載欄12が設けられており、更に、シート上部に被験者特定欄19及び重み付け定義欄20が、シート下部に判定基準記載欄13a及びリスク判定記載欄13b並びに合計点数記載欄14が設けられている。
【0116】
被験者特定欄19には、所望に応じて、被験者を特定するための項目、例えば、ID番号、名前、又は性別などを記載する欄を設けることができる。
重み付け定義欄20には、重み付け表示欄11a〜11eで使用する重み付け表示方法(例えば、幾何学的パターン又は色分け等)の定義を記載することができる。
【0117】
質問項目欄10には、21項目の条件又はそれに対応する質問の番号を記載することができる。質問項目欄には、質問番号と一緒に質問内容を記載することもできるが、その記載スペースを考慮すると、質問の番号のみを記載することが好ましい。また、質問項目欄には、21項目全てを記載することもできるし、その一部のみを適宜選択して記載することもできる。
図1に示す判定シートでは、「おたっしゃ21質問」における「問1」〜「問18」が、21項目の条件に対応する21項目の質問(例えば、表1〜表3に示す質問)の質問1〜18に対応し、「おたっしゃ21体力」における「運動1」〜「運動3」が、21項目の質問の質問19〜21に対応する。
【0118】
重み付け表示欄11a〜11eには、老年症候群に含まれる各状態毎に、質問項目欄10に記載の各質問に対する重み付け(すなわち、関連性)が、ます目の幾何学的パターンで表示されている。但し、質問11と尿失禁との関連性についてのみ、点数による重み付け「0点/1点/2点」により表示されている。
本発明の判定シートでは、各状態の危険性との関連性を表示する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ます目を幾何学的パターン又は色分けすることにより、あるいは、文字又は数字で直接表記することにより、表示することができる。
【0119】
図1に示す判定シートにおける点数記載欄12には、機能低下状態のいずれか1つに関して、各質問に対する点数を記載する。図1に示す判定シートでは、点数記載欄が一列設けられている態様であるので、機能低下状態の1つについて判定するものであるが、本発明の判定シートでは、複数列の点数記載欄を設けることにより、複数の機能低下状態を判定することができる。
【0120】
合計点数記載欄14には、点数記載欄12に記載した点数を合計したものを記載する。判定基準記載欄13aには、合計点数の閾値が記載されており、点数記載欄12に記載した合計点数と比較することにより、リスク判定を実施することができる。判定したリスクの有無は、リスク判定記載欄13bに結果を記載することができる。
【0121】
図1に示す判定シートでは、21項目の全ての質問に関して、身体虚弱、転倒、尿失禁、低栄養、及び軽度の痴呆を全て判定可能なように表示されているが、本発明の判定シートでは、老年症候群の少なくとも1つを判定することができる限り、21項目の全ての質問に関して関連性を表示する必要はなく、また、全ての状態に関して関連性を表示する必要もない。
例えば、老年症候群の内、身体虚弱の危険性を判定するための本発明の判定シートでは、身体虚弱の危険性を判定するのに使用される条件1、6、7、9、10、12〜14、16、17、及び19〜21からなる群から選択される条件、又はそれに対応する質問の内、少なくとも2つについて、身体虚弱との関連性を表示することにより、身体虚弱の危険性を判定することができる。
【0122】
同様に、転倒の危険性を判定するための本発明の判定シートでは、転倒の危険性を判定するのに使用される条件2〜6、9、10、13、15、及び19〜21からなる群から選択される条件、又はそれに対応する質問の内、少なくとも2つについて、転倒との関連性を表示することにより、転倒の危険性を判定することができる。
尿失禁の危険性を判定するための本発明の判定シートでは、尿失禁の危険性を判定するのに使用される条件1、4〜6、8〜11、15〜17、19、及び21からなる群から選択される条件、又はそれに対応する質問の内、少なくとも2つについて、尿失禁との関連性を表示することにより、尿失禁の危険性を判定することができる。
低栄養の危険性を判定するための本発明の判定シートでは、低栄養の危険性を判定するのに使用される条件3、4、12〜14、16、及び19〜21からなる群から選択される条件、又はそれに対応する質問の内、少なくとも2つについて、低栄養との関連性を表示することにより、低栄養の危険性を判定することができる。
軽度痴呆の危険性を判定するための本発明の判定シートでは、軽度痴呆の危険性を判定するのに使用される条件6及び16〜18からなる群から選択される条件、又はそれに対応する質問の内、少なくとも2つについて、軽度痴呆との関連性を表示することにより、軽度痴呆の危険性を判定することができる。
【0123】
[G]本発明の握力検査計
本発明において、前記条件(健診項目)19の握力測定は、予め統計学的に決定した閾値に到達したことを表示する握力到達表示手段を有する握力検査計を用いて実施するのが好ましい。
一般的な握力計は、握力の数値を測定することを目的としているため、被験者は、自己の限界まで強く握る傾向がある。特に高齢者の場合は、握力計を自己の限界まで強く握ると、手や腕の筋肉を痛め易い。一方、前記条件(健診項目)19の握力測定で予め統計学的に決定されている閾値は、健康な高齢者であれば、比較的容易に到達可能なレベルであるため、その閾値へ到達した段階で、握ることを停止することができれば、被験者への負担は大幅に軽減され、手や腕の筋肉を痛める危険性もなくなる。また、検査担当者や測定補助者の判定も容易になる。
【0124】
握力到達表示手段を有する前記の握力検査計は、更に、閾値の変更が可能な閾値変更手段を備えていることが好ましい。閾値変更手段としては、閾値それ自体の変更を行う手段だけでなく、男性被験者用の閾値と女性被験者用の閾値との変換を行うことができる手段とが含まれる。また、前記の握力検査計が、男性被験者用の閾値と女性被験者用の閾値との変換を行うことができる手段を備えている男女兼用検査計である場合には、設定されている閾値が男性被験者用であるか、女性被験者用であるかを表示する男女区別表示手段を同時に備えていることが好ましい。
【0125】
握力到達表示手段としては、被験者、検査担当者、あるいは測定補助者の視覚又は聴覚に感知される手段であれば特に限定されず、視覚感知手段と聴覚感知手段の両方を備えていることが好ましい。視覚感知手段としては、例えばランプがあり、聴覚感知手段としては、例えばブザーがある。
なお、一般の握力計は、握力の数値目盛りを示す文字盤と、針(握力の上昇に従って文字盤上を移動し、到達最高レベルで停止する針)を備えているか、あるいはデジタル数値の表示盤を備えているのに対し、握力到達表示手段を有する前記の握力検査計は、それらの文字盤及び針やデジタル数値表示盤を備えている必要はないが、備えていてもよい。
【0126】
本発明による握力検査計の一実施態様を図2に示す。図2は、本発明による握力検査計30の斜視図である。握力検査計30は、グリップ部30Aと表示盤部30Bとからなる。グリップ部30Aは、外側フレーム部31、内側把持部32、及び間隙調整ネジ部33を含む。一方、表示盤部30Bは、握力到達表示手段としての握力到達表示ランプ部21、男女区別表示手段としての男性モード表示ランプ22、女性モード表示ランプ23、ディスプレー部24、電源ボタン部25、セットボタン部26、男女モード切替ボタン部27、及び数値変更用ツマミ部28を備えている。数値変更用ツマミ部28の代わりに、テンキー入力手段を備えていることもできる。
【0127】
図2に示す握力検査計30を使用して、本発明における前記条件19「握力が、予め統計学的に決定した閾値未満である」に関する検査、例えば、「利き手による1回の握力」の測定検査を実施する前に、準備操作として、男性被験者用の閾値(例えば、29kg)及び女性被験者用の閾値(例えば、19kg)をそれぞれ設定する。この閾値設定には、電源ボタン部25をオンにし、そしてセットボタン部26をオンにした後、男女モード切替ボタン部27によって、男性モード又は女性モードのいずれかを選択し、続いて、数値変更用ツマミ部28を回転させてディスプレー部24に表示される数値を順次変更し、閾値の数値を選択し、セットボタン部26によって決定して設定することができる。設定時の男女モードを、男性モード表示ランプ22及び女性モード表示ランプ23によって表示することもできる。また、これらの設定操作の説明を、ディスプレー部24に表示させることもできる。
【0128】
男性モード及び女性モードの両方(又はいずれか一方)の閾値を設定した後に、握力検査計30を使用して、本発明における前記条件19に関する検査を実施することができる。具体的には、電源ボタン部25をオンにし、そして男女モード切替ボタン部27によって、男性モード又は女性モードのいずれかを選択し、男性モード表示ランプ22又は女性モード表示ランプ23を点灯させる。この際に、ディスプレー部24に、男性被験者用の設定閾値又は女性被験者用の設定閾値を表示させることもできる。続いて、被験者に外側フレーム部31の把持領域31a(親指側)と内側把持部32の把持領域32a(親指以外の4本指側)とを把持させ、両者の間隙を狭める方向(図2の矢印Aの方向)に握らせることによって握力が設定閾値を超えるか否かを判定することができる。外側フレーム部31の把持領域31aと内側把持部32の把持領域32aとの間隔は、間隙調整ネジ部33のよって調節することができる。握力が設定閾値を超えると、握力到達表示ランプ部21が点灯するので、被験者は、設定閾値を超えたことを認識し、検査を終了させることができる。なお、ディスプレー部24に、握力の測定値を表示させることもできる。
【0129】
[H]本発明の片足立ち検査計
本発明において、前記条件(健診項目)20の開眼での片足立ち時間の測定は、試験開始からの経過時間を計測するタイマーと、予め統計学的に決定した閾値(時間)まで、被験者が片足立ちの状態で到達した場合に、その到達を表示する正規到達表示手段とを有する片足立ち検査計を用いて実施するのが好ましい。
【0130】
前記条件(健診項目)20の開眼での片足立ち時間で予め統計学的に決定されている閾値は、健康な高齢者であれば、比較的容易に到達可能なレベルであるため、検査中に、その設定閾値までの残り時間や経過時間を表示して、被験者に検査終了時を予想させることができれば、被験者への心理的な負担が軽減される。従って、前記の片足立ち検査計は、設定閾値までの残り時間や経過時間を経時的に表示する手段(例えば、ディスプレー、点灯ランプ、信号音を発生するブザー)を備えていることが好ましい。
【0131】
更に、片足立ちの状態では、被験者の前方に目標となるマークを設けると、片足立ちの状態の維持が容易になるので、前記の片足立ち検査計に前記の固定マーク(視標、注視点、又は固視点などと称される)を設けるのが好ましい。この固定マークは、被験者の身長や被験者の好みに合わせて高さ調整機能を有していることが好ましく、被験者の前方の方向に約50cm離れた位置に設けるのが好ましい。
【0132】
前記タイマーの計測開始の起動は、被験者、検査担当者、あるいは測定補助者による手動によって行うこともできるが、被験者が乗って片足立ちの検査を行う基台に設けた計測開始検知センサーによって行うことが好ましい。前記の計測開始検知センサーは、前記の基台上の被験者が両足立ち状態にあるか、片足立ちの状態であるかを検知することができるセンサーであればよい。あるいは、被験者が両足立ち状態から片足立ちの状態に変化したことを検知することができるセンサーであることもできる。
【0133】
また、この片足立ち検査計は、被験者が前記の基台上で片足立ちを行っている際に、立ち足(軸足)がずれたり、移動したことを検知することのできるズレセンサーと、そのズレセンサーが立ち足(軸足)のズレや移動を検知したことを表示するズレ表示手段を備えていることが好ましい。更に、被験者が前記の基台上で片足立ちを行っている際に、挙げた方の足が基台に触れたことを検知することのできる接触センサーと、その接触センサーによる接触検知を表示する接触表示手段を同時に備えていることが好ましい。なお、前記のズレ表示手段と、接触表示手段とを同じ表示手段(ズレ接触表示手段)とすることもできる。
【0134】
更に、前記の片足立ち検査計は、閾値の変更が可能な閾値変更手段を備えていることが好ましい。閾値変更手段としては、閾値それ自体の変更を行う手段だけでなく、男性被験者用の閾値と女性被験者用の閾値との変換を行うことができる手段とが含まれる。また、前記の前記の片足立ち検査計が、男性被験者用の閾値と女性被験者用の閾値との変換を行うことができる手段を備えている男女兼用検査計である場合には、設定されている閾値が男性被験者用であるか、女性被験者用であるかを表示する男女区別表示手段を同時に備えていることが好ましい。
【0135】
前記の片足立ち検査計が備えていることができる前記の各種の表示手段としては、被験者、検査担当者、あるいは測定補助者の視覚又は聴覚に感知される手段であれば特に限定されず、視覚感知手段と聴覚感知手段の両方を備えていることが好ましい。視覚感知手段としては、例えばランプがあり、聴覚感知手段としては、例えばブザーがある。また、正規到達表示手段による表示と、ズレ表示手段又は接触表示手段による表示との区別を容易にするために、それらの表示を異なるものにするのが好ましい。
【0136】
本発明による片足立ち検査計の一実施態様を図3に示す。図3は、本発明による片足立ち検査計40の斜視図である。片足立ち検査計40は、検査台40A、表示盤部40B、支持フレーム部40C、及び操作盤40Dを含む。検査台40Aは、被験者が乗って検査を実施する台であり、被験者が右足を乗せる右足領域71及び左足を乗せる左足領域72を含む。更に、検査台40Aには、それらの右足領域71及び左足領域72の両方に足が乗った状態から、いずれか一方の領域から足が離れると、タイマーの計時を開始させることのできるセンサー(図示せず)が設けられている。
【0137】
表示盤部40Bは、被験者に対して検査に関する情報を表示する装置であり、具体的には、正規到達表示手段としての時間到達表示ランプ部41A、男女区別表示手段としての男性モード表示ランプ42A、女性モード表示ランプ43A、及びディスプレー部44Aを備えている。また、表示盤部40Bには、注視点表示板75を設けることができる。注視点表示板75は、注視点マーク76、その注視点マーク76の表示領域77、及び前記の注視点マーク76の高さ調節を行う調節レバー78を備えていることができる。
【0138】
検査台40Aの周囲に、被験者の転倒防止の目的で、支持フレーム部40Cを設けることが好ましい。また、検査台40Aから離れた位置に設ける操作盤40Dは、検査担当者又は測定補助者が、種々の設定を行う装置であり、例えば、男性被験者用の閾値及び/又は女性被験者用の閾値の設定又は変更、あるいは男女モードの切替などを実施することができる。更に、表示盤部40Bで示す情報を操作盤40Dにて表示することもできる。従って、操作盤40Dは、正規到達表示手段としての時間到達表示ランプ部41、男女区別表示手段としての男性モード表示ランプ42、女性モード表示ランプ43、ディスプレー部44、電源ボタン部45、セットボタン部46、男女モード切替ボタン部47、及び操作部48を備えている。
【0139】
図3に示す片足立ち検査計40を使用して、本発明における前記条件20「目を開いて片足で立つことができる時間が、予め統計学的に決定した閾値未満である」に関する検査として、例えば、「開眼での片足立ち時間(二回のうち長い方)」に関する検査を実施する前に、準備操作として、男性被験者用の閾値(例えば、20秒)及び女性被験者用の閾値(例えば、10秒)をそれぞれ設定する。この閾値設定には、操作盤40Dにおいて、電源ボタン部45をオンにし、そしてセットボタン部46をオンにした後、男女モード切替ボタン部47によって、男性モード又は女性モードのいずれかを選択し、続いて、操作部(例えば、テンキー)48から適切な数値を入力してディスプレー部44に表示させ、閾値の数値を選択し、セットボタン部46によって決定して設定することができる。設定時の男女モードを、男性モード表示ランプ42及び女性モード表示ランプ43によって表示することもできる。また、これらの設定操作の説明を、ディスプレー部44に表示させることもできる。
【0140】
男性モード及び女性モードの両方(又はいずれか一方)の閾値を設定した後に、片足立ち検査計40を使用して、本発明における前記条件20に関する検査を実施することができる。具体的には、まず、被験者を検査台40Aに乗せる。この際、被験者の右足が右足領域71を踏み、被験者の左足が左足領域72を踏むようにする。続いて、注視点表示板75の調節レバー78によって注視点マーク76の位置が、被験者の両眼の前になるように調整する。次に、電源ボタン部45をオンにし、そして男女モード切替ボタン部47によって、男性モード又は女性モードのいずれかを選択し、男性モード表示ランプ42,42A又は女性モード表示ランプ43,43Aを点灯させる。この際に、ディスプレー部44,44Aに、男性被験者用の設定閾値又は女性被験者用の設定閾値を表示させることもできる。なお、被験者を検査台40Aに乗せる前に、操作盤40Dの操作の全部を実施するか、あるいは被験者を検査台40Aに乗せる前に、操作盤40Dの操作の一部を実施し、被験者を検査台40Aに乗せてから残りの操作を実施することもできる。
【0141】
続いて、検査台40A上の被験者が、その右足又は左足のいずれか一方を上げると、右足領域71又は左足領域72の一方から足が離れたことを検知するセンサー(図示せず)から信号が発信させ、タイマー(図示せず)の計時が開始される。経過時間が設定閾値を超えると、時間到達表示ランプ部41,41Aが点灯するので、被験者、検査担当者、又は測定補助者は、設定閾値を超えたことを認識し、検査を終了させることができる。なお、ディスプレー部44,44Aに、設定閾値までの残り時間や検査経過時間を表示して、被験者、検査担当者、又は測定補助者に試験終了時を予想させることもできる。また、1秒ごとに信号音を発生させて、被験者、検査担当者、又は測定補助者に検査終了時を予想させることもできる。
【0142】
[I]本発明の歩行速度測定計
本発明において、前記条件(健診項目)21の歩行速度の測定は、歩行速度を自動的に測定可能な手段を有する歩行速度測定計を用いて実施するのが好ましい。
【0143】
前記条件(健診項目)21の歩行速度の測定を、例えば、測定用歩行路(例えば、11mの歩行路)上における測定開始地点(例えば、3m地点)から測定終了地点(例えば、8m地点)までの所定距離(例えば、5m)の歩行に要した時間を測定することによって実施する場合には、前記の測定開始地点と測定終了地点の両方にセンサーを設け、測定開始地点センサーによる被験者通過の検知によってタイマーを起動させ、測定終了地点センサーによる被験者通過の検知によってタイマーを終了させ、そのタイマーから歩行に要した時間を測定し、歩行時間と歩行所定距離とから演算手段によって速度を計算し、適当な出力手段によって、歩行速度を出力させることができる。
【0144】
また、前記と同様の歩行速度の測定において、測定用歩行路(例えば、11mの歩行路)に、間隔(好ましくは一定の間隔)を開けて多数の被験者検知センサーを配置し、最初の被験者検知センサーによってタイマーを起動させ、被験者の歩行に沿って被験者の位置を次々に検知センサーによって検知し、その時点での経過時間情報と検知センサーの位置情報とから演算手段によって、経時的に歩行速度を次々に(準連続的に)計算し、更に、一定速度を演算手段に判断させて、その一定速度を出力させることもできる。
【0145】
前記の歩行速度測定計は、回転可能なエンドレスのベルトコンベア式測定用歩行路を備えた測定計であることもできる。この自動回転型測定計を用いて、前記条件(健診項目)21の歩行速度の測定を実施する場合は、最初に、停止した状態の測定用歩行路上に被験者を乗せ、被験者の歩行開始準備が整った後に、被験者あるいは検査担当者又は測定補助者が、回転開始指示手段(例えば、スタートボタン)を押してエンドレスのベルトコンベア式測定用歩行路の回転を開始させる。回転速度は、連続的に変更可能であり、例えば、アクセルボタンによって連続的に回転速度を上昇させたり、ブレーキボタンによって連続的に回転速度を降下させることができる。被験者あるいは検査担当者又は測定補助者は、前記のアクセルボタンやブレーキボタンによって、エンドレスのベルトコンベア式測定用歩行路の回転速度を、被験者の普通の歩行速度に調整することができる。また、この測定計は、回転速度の情報を、歩行速度に換算する演算手段と、その演算手段によって計算された歩行速度を出力する出力手段を備えており、この出力手段によって、被験者の歩行速度を測定することができる。測定終了後に、ストップボタンによって回転を停止させる。
【0146】
歩行速度の準連続的又は連続的な測定が可能な前記の各歩行速度測定計は、(イ)予め統計学的に決定した閾値を記憶する閾値記憶手段と、(ロ)その記憶されている閾値と、得られた歩行速度とを比較して、歩行速度が閾値を超えているか否かを判定する判定手段と、(ハ)歩行速度が閾値を超えている場合に、その結果を表示する閾値到達表示手段とを備えていることもできる。これらの手段を備えた歩行速度測定計(検査計)を用いると、歩行速度測定検査を途中で停止させることが可能になり、被験者への負担を軽減させることができ、更に、検査担当者や測定補助者の判定も容易にすることができる。
【0147】
閾値到達表示手段を備えている前記の歩行速度測定計は、更に、閾値の変更が可能な閾値変更手段を備えていることが好ましい。閾値変更手段としては、閾値それ自体の変更を行う手段だけでなく、男性被験者用の閾値と女性被験者用の閾値との変換を行うことができる手段とが含まれる。また、前記の歩行速度測定計が、男性被験者用の閾値と女性被験者用の閾値との変換を行うことができる手段を備えている男女兼用検査計である場合には、設定されている閾値が男性被験者用であるか、女性被験者用であるかを表示する男女区別表示手段を同時に備えていることが好ましい。
【0148】
閾値到達表示手段としては、被験者、検査担当者、あるいは測定補助者の視覚又は聴覚に感知される手段であれば特に限定されず、視覚感知手段と聴覚感知手段の両方を備えていることが好ましい。視覚感知手段としては、例えばランプがあり、聴覚感知手段としては、例えばブザーがある。
【0149】
本発明において、前記条件(健診項目)21の歩行速度の検査は、設定閾値の速度で移動する伴走手段を備えた検査計を用いて実施することもできる。前記条件(健診項目)21の歩行速度で予め統計学的に決定されている閾値は、健康な高齢者であれば、比較的容易に到達可能なレベルであるため、その閾値の速度で移動する伴走手段と共に歩行することができれば、自己の限界の速度で歩行する必要がなくなり、被験者への負担は大幅に軽減され、足の筋肉などを痛める危険性もなくなる。
【0150】
前記の伴走手段を備えた検査計は、被験者の歩行速度を測定する際に、被験者の負担軽減に利用することができるだけでなく、被験者の歩行速度を測定せずに、被験者が一定の区間を伴走手段よりも速く歩行することが可能か否かを判定することで、本発明における前記条件(健診項目)21の歩行速度の検査に利用することもできる。すなわち、前記条件(健診項目)21の歩行速度の測定を、例えば、測定用歩行路(例えば、11mの歩行路)上における測定開始地点(例えば、3m地点)から測定終了地点(例えば、8m地点)までの所定距離(例えば、5m)の歩行に関して実施する場合には、測定開始地点を被験者が通過する際に、その測定開始地点から伴走手段を同時に設定閾値の速度で移動させ、被験者が測定終了地点に伴走手段よりも速く到着するか否かによって判定することができる。あるいは、特に測定開始地点を設けず、被験者と伴走手段とが並走した状態から所定の測定距離(例えば、5m)を、被験者が伴走手段よりも速く歩行するか否かによって判定することができる。この場合には、歩行路に目盛りを設けておき、所定の測定距離(例えば、5m)の判定に用いることができる。前記目盛りに代えて、所定間隔で設けたセンサーによって、被験者と伴走手段とが並走した地点を確定し、所定の測定距離(例えば、5m)の終了をそのセンサーによって判定することもできる。
【0151】
本発明による歩行速度測定計の一実施態様を図4に示す。図4は、本発明による歩行速度測定計50の模式的平面図である。歩行速度測定計50は、相互に平行に延びる右側境界ライン51aと左側境界ライン51bとに挟まれた歩行路領域52を含み、その歩行路領域52内を矢印Bの方向に向かって被験者を歩行させる。また、その歩行路領域52内には、歩行準備領域52A、歩行速度測定領域52B、及び歩行停止領域52Cを設ける。前記歩行準備領域52Aと前記歩行速度測定領域52Bとの間は、測定開始ライン53となり、前記歩行速度測定領域52Bと前記歩行停止領域52Cとの間は、測定終了ライン54となるが、測定開始ライン53及び測定終了ライン54の位置を被験者には認識させない方が好ましいので、特にラインを設ける必要はなく、むしろ、設けない方が好ましい。
【0152】
また、前記測定開始ライン53には、被験者の通過を感知することができる開始点センサー55a,55bを設け、前記測定終了ライン54にも、被験者の通過を感知することができる終了点センサー56a,56bを設ける。これらのセンサーは、光学的センサー又は圧力センサーであることができる。また、前記測定終了ライン54のそばに、表示盤部57を設ける。更に、歩行路領域52の内側に、歩行方向指示マーク58を設けることもできる。また、前記歩行路領域52の外側を、その前記歩行路領域52と平行に延びる案内レール61上を走行可能なペースメーカ62を備えていることができる。
【0153】
前記の歩行速度測定計50は、例えば、体育館などにラインを引いて歩行路領域52を形成することもできるが、専用の基台上に、歩行路領域52、各センサー55a,55b,56a,56b、表示盤部57、案内レール61及びペースメーカ62を設けるのが好ましい。
【0154】
前記条件(健診項目)21の歩行速度の測定を、例えば、測定用歩行路(11mの歩行路)上における測定開始地点(3m地点)から測定終了地点(8m地点)までの所定距離(5m)の歩行に要した時間を測定することによって実施する場合には、前記歩行準備領域52Aの長さを3m、歩行速度測定領域52Bの長さを5m、そして歩行停止領域52Cの長さを3mとする。
【0155】
図4には図示していないが、本発明による歩行速度測定計50は、例えば、前記表示盤部57内に、タイマー、予め統計学的に決定した閾値(時間)の入力設定手段、男女区別表示手段(例えば、男性モード表示ランプ又は女性モード表示ランプ)、及び閾値内到達表示手段(例えば、表示ランプ又はブザー)などを備えている。前記タイマーは、前記開始点センサー55a,55bが被験者の通過を感知してから、前記終了点センサー56a,56bが被験者の通過を感知するまでの時間を計時する。その通過時間が、予め統計学的に決定した閾値(時間)の範囲内であれば、前記閾値内到達表示手段としての表示ランプを点灯させる。
【0156】
試験を実施する際に、ペースメーカ62を閾値速度で伴走させ、被験者に閾値での歩行速度を認識させ、被験者が無理に速く走行して試験が過度に負担になることを防止することができる。ペースメーカ62の伴走は、被験者と平行して走行させることもできるが、被験者の若干前方を走行させるのが好ましい。なお、前記条件(健診項目)21の歩行速度の測定は、被験者の通常の歩行速度を測定する検査であるので、その目的に反する場合には、ペースメーカ62を用いないことが好ましい。
【0157】
図4に示す歩行速度測定計50を使用して、本発明における前記条件21「所定距離を普通に歩くときの所要時間が、予め統計学的に決定した閾値以上である」に関する検査として、例えば、「いつも歩いている速さの歩行5mの時間」に関する検査を実施する場合は、その前に、準備操作として、男性被験者用の閾値(例えば、4.4秒)及び女性被験者用の閾値(例えば、5.0秒)をそれぞれ設定する。続いて、被験者を、前記歩行準備領域52Aから、歩行速度測定領域52Bを経由して、歩行停止領域52Cまで通常の歩行速度で歩行させる。この際、ペースメーカ62を閾値で伴走させるのが好ましい。被験者の「歩行5mの時間」は、被験者が前記開始点センサー55a,55bを通過してから、前記終了点センサー56a,56bを通過するまでの時間であり、前記タイマーによって測定し、その結果は、前記表示盤部57に表示される。なお、ペースメーカ62の伴走との比較によって、閾値の範囲内であるか否かを判定することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明の判定方法は、老年症候群の危険性を有するか否かの判定の用途に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】本発明の判定シートの一態様を示す平面図である。
【図2】本発明による握力検査計の一実施態様の斜視図である。
【図3】本発明による片足立ち検査計の一実施態様の斜視図である。
【図4】本発明による歩行速度測定計の一実施態様の模式的平面図である。
【符号の説明】
【0160】
1・・・判定シート;
10・・・質問項目欄;11・・・重み付け表示欄;12・・・点数記載欄;
13a・・・判定基準記載欄;13b・・・リスク判定記載欄;
14・・・合計点数記載欄;19・・・被験者特定欄;
20・・・重み付け定義欄;21・・・握力到達表示ランプ部;
22・・・男性モード表示ランプ;23・・・女性モード表示ランプ;
24・・・ディスプレー部;25・・・電源ボタン部;
26・・・セットボタン部;27・・・男女モード切替ボタン部;
28・・・数値変更用ツマミ部;30・・・握力検査計;
30A・・・グリップ部;30B・・・表示盤部;
31・・・外側フレーム部;31a,32a・・・把持領域;
32・・・内側把持部;33・・・間隙調整ネジ部;
40・・・片足立ち検査計;40A・・・検査台;40B・・・表示盤部;
40C・・・支持フレーム部;41・・・時間到達表示ランプ部;
42・・・男性モード表示ランプ;43・・・女性モード表示ランプ;
44・・・ディスプレー部;45・・・電源ボタン部;
46・・・セットボタン部;47・・・男女モード切替ボタン部;
48・・・操作部;50・・・歩行速度測定計;
51a・・・右側境界ライン;51b・・・左側境界ライン;
52・・・歩行路領域;52A・・・歩行準備領域;
52B・・・歩行速度測定領域;52C・・・歩行停止領域;
53・・・測定開始ライン;54・・・測定終了ライン;
55a,55b・・・開始点センサー;
56a,56b・・・終了点センサー;57・・・表示盤部;
58・・・歩行方向指示マーク;61・・・案内レール;
62・・・ペースメーカ;71・・・右足領域;72・・・左足領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行速度を自動的に測定可能な手段を有することを特徴とする、歩行速度測定計。
【請求項2】
予め統計学的に決定した閾値を記憶する閾値記憶手段と、
その記憶されている閾値と、得られた歩行速度とを比較して、歩行速度が閾値を超えているか否かを判定する判定手段と、
歩行速度が閾値を超えている場合に、その結果を表示する閾値到達表示手段と
を更に備える、請求項1に記載の歩行速度測定計。
【請求項3】
予め統計学的に決定した閾値に到達したことを表示する表示手段を有することを特徴とする、握力検査計。
【請求項4】
片足立ち時間の測定試験開始からの経過時間を計測するタイマーと、予め統計学的に決定した閾値(時間)まで、被験者が片足立ちの状態で到達した場合に、その到達を表示する正規到達表示手段とを有することを特徴とする、片足立ち検査計。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−62071(P2008−62071A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263826(P2007−263826)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【分割の表示】特願2005−7299(P2005−7299)の分割
【原出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2003年(平成15年)7月15日発行の「お達者21:老年症候群リスクスクリーニングと介護予防事業評価」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2003年(平成15年)7月15日 インターネットアドレス「http://www.tmig.or.jp/kaigoyobou/kisodata2/cgi/otasha21.html?」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年1月14日 財団法人 東京高齢研究・福祉振興財団発行の「指導者のための 介護予防完全マニュアル 第1版第1刷」に発表
【出願人】(594053121)財団法人 東京都高齢者研究・福祉振興財団 (9)
【Fターム(参考)】