説明

耐エロージョン短絡電流経路を備えたヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカ

ヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカであって、軸(A)を有し、この軸は、軸に対して平行な軸方向座標(z)及び軸に対して垂直な径方向座標(r)を規定し;且つ、アーキング・コンタクト・ピース(1)と、電流移送要素(2)と、エロージョン防止要素(3a)と、を有し;前記アーキング・コンタクト・ピース(1)は、前記アーキング・コンタクト・ピース(1)から発生することがあるアーク(5)によって加熱されたガス(4)の、実質的に軸方向の流れ(4)を運ぶための開口(6)を有し、且つ、前記アーク(5)が生じている間、前記アーキング・コンタクト・ピース(1)及び前記電流移送要素(2)の中を流れる短絡電流(I)を運ぶためのフラットなコンタクト(F)を、前記電流移送要素(2)と共に形成し;また、前記エロージョン防止要素(3a)は、前記電流移送要素(2)を、前記フラットなコンタクト(F)の近傍の流れ(4)から実質的に遮蔽する;ヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカにおいて、前記電流移送要素(2)は、軸(A)に対して平行に前記フラットなコンタクト(F)から測定された距離が増大するに従い、前記電流移送要素の径方向内側の寸法(d2)が段階的にまたは連続的に増大する軸方向領域(2a)を有している。前記軸方向領域(2a)は、好ましくは、前記エロージョン防止要素(3a)を保持するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカ技術の分野に係り、特に、請求項1の前提部分に記載されているようなヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカに係る。
【背景技術】
【0002】
ヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカは、先行技術から知られている。そのヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカは、アーキング・コンタクト・ピースとしてコンタクト・チューリップを有し、それが、短絡電流を運ぶために、電流移送要素とフラットなコンタクトを形成する。耐エロージョン材料からなるチューブが、コンタクト・チューリップの中に設けられ、電流移送要素の中に伸び、コンタクト・チューリップの内側を高温のガスに対して保護するように構成されている。その高温ガスは、アーキング・コンタクト・ピースから伸びるアークにより加熱されたものであって、且つその高温ガスは、コンタクト・チューリップの中を通って、電流移送要素を超えて流れる。
【0003】
適切な保護が設けられていない場合には、このような高温ガスの流れが、電流移送要素から、および/または、コンタクト・チューリップから、材料を奪い去ることがある。その結果として、このことは、コンタクト・チューリップと電流移送要素の間の、電気的接触の劣化をもたらすことがある。このことはまた、接触抵抗の増大をもたらし、更には、接点の故障さえももたらす可能性がある。
【0004】
耐エロージョン材料からなるチューブが、電流移送要素の中にねじ込まれ、このチューブは、コンタクト・チューリップの中に配置される部分において、各ポイントで、コンタクト・チューリップの内径よりも大きい外径を有している。
【0005】
耐エロージョン材料からなるこのようなチューブを設けることは、ガスがその中を流れるために使用される断面積をかなり減少させることになる。もし、同様な放出流れの速度を維持するために、この断面積がほぼ一定に保たれるように構成される場合、より大きなコンタクト・チューリップ及びより大きな電流移送要素が、設けられなければならない(短絡電流のために使用されるものと同じ断面に対して)。このようにして、全体としてより大きいヘビーデューティ・サーキット・ブレーカがもたらされる。
【0006】
欧州特許出願第 EP 0 642 145 A 号明細書には、オスのコンタクト・ピン及びコンタクト・チューリップを有するサーキット・ブレーカが開示されている。この中において、チューリップのコンタクト・フィンガーズは、その中にチューブを保持するために、軸方向の切除部を有しており、この切除部は、コンタクト・フィンガーズのための径方向の移動のリミッターとして使用される。高温のガスに対する保護のための更なる保護チューブが、エロージョンに対する熱的保護のために、コンタクト・チューリップの内側に設けられている。
【0007】
欧州特許出願第 EP 0 290 950 A 号明細書には、ガス・ブラスト・サーキット・ブレーカが開示されている。このサーキット・ブレーカは、アーキング・コンタクト・ピースとしてチューリップの形態のコンタクト・フィンガーズを有している。このコンタクト・フィンガーズは、円筒状のエロージョン・コンタクトと共に、アーキング・コンタクトを構成している。軸方向に移動されることが可能な管状のボディが、コンタクト・チューリップの中でガイドされ、切り離しのプロセスの間、スプリングによりエロージョン・コンタクトの方向に押される。
【0008】
更に、欧州特許出願第 EP 0 932 172 A2 号明細書には、チューリップ・コンタクト・ピースを有するサーキット・ブレーカが開示されている。そのバネ状のアーキング・コンタクト及びその上に配置された管状の部材は、アーク・レジスタント・インサートにより、エロージョンに対して保護されている。このチューリップ・コンタクト・ピースの中の流れの断面は、不都合なことに、減少されている。その理由は、インサートが、アーキング・コンタクト及び管状の部材の内側に、取り付けられているからである。
【0009】
従って、可能な限りコンパクトであって、しかしそれにも拘らず、先に述べた高温ガスにより引き起こされるコンタクトの劣化に対する保護を実現するヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカを提供することが望まれている。
【特許文献1】欧州特許出願第 EP 0 642 145 A 号明細書
【特許文献2】欧州特許出願第 EP 0 290 950 A 号明細書
【特許文献3】欧州特許出願第 EP 0 932 172 A2 号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、従って、先に述べた弱点を有していない、最初に述べたタイプのヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカを提供することにある。一つの特別な狙いは、電気抵抗が小さいコンパクトなヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカ、即ち、小さな外形寸法を有するヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカを提供することにあり、ここで、その電気抵抗は、時間の経過に伴い高温ガスにより引き起こされるコンタクトの劣化の結果として、アーキング・コンタクト・ピースと、短絡電流を前記アーキング・コンタクト・ピースから運び去る電流移送要素との間で、増加することが無いものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項1の特徴を有する装置により実現される。
本発明に基づくヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカは、軸に対して平行な軸方向座標及びそれに対し垂直な径方向座標を規定する軸を有し、アーキング・コンタクト・ピース、電流移送要素、及びエロージョン防止要素を有している。前記アーキング・コンタクト・ピースは、前記アーキング・コンタクト・ピースから発生することがあるアークによって加熱されたガスの実質的に軸方向の流れを運ぶための開口を有している。アークが生じている間に、前記アーキング・コンタクト・ピース及び前記電流移送要素の中を流れる短絡電流を運ぶために、前記アーキング・コンタクト・ピースは、前記電流移送要素と共に、フラットなコンタクトを構成する。前記エロージョン防止要素は、前記電流移送要素を、フラットなコンタクトの近傍で、流れから実質的に遮蔽する。
【0012】
前記電流移送要素は、その中に、軸に対して平行に前記フラットなコンタクトから測定された距離が増大するに従って、前記電流移送要素の径方向内側の寸法が、段階的にまたは連続的に増加する軸方向領域を有している。
【0013】
本発明のヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカの特徴は、前記軸方向領域が前記エロージョン防止要素を保持するように構成されていることにある。このことは、ヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカの径方向外側の寸法を非常に小さく維持することを、可能にする。
【0014】
本発明はまた、次の点に見出されることも可能である;即ち、本発明のヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカの特徴は、前記電流移送要素が軸方向領域(即ち、その軸方向の範囲により規定される領域)を有し、前記フラットなコンタクトに向かい合う方の端部での、前記電流移送要素の径方向内側の寸法が、前記フラットなコンタクトと反対側の端部での寸法よりも小さいことにある。前記領域の、フラットなコンタクトに向かい合う方の端部は、好ましくは、前記フラットなコンタクト上に直接的にあり、または、前記フラットなコンタクトに隣接している。
【0015】
本発明は、前記アーキング・コンタクト・ピースと前記電流移送要素の間に、広い面積での接触(対応して低い接触抵抗)を与えることを可能にし、そして、高温ガスにより引き起こされるコンタクトの劣化に対する保護(広い面積での接触において)を、同時に実現することを可能にする。このことは、ヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカが非常にコンパクトになり、且つ長い寿命を有することを可能にする。
【0016】
前記電流移送要素は、好ましくは、傾斜していることが可能であり、好ましくは、前記アーキング・コンタクト・ピースとのフラットなコンタクトから、傾斜し始めることも可能である。
【0017】
前記軸方向領域は、好ましくは、前記フラットなコンタクトの、前記アーキング・コンタクト・ピースとは反対の側に、配置される。前記軸方向領域は、好ましくは、前記アーキング・コンタクト・ピースの近傍に配置される。
【0018】
一つの好ましい実施形態において、前記電流移送要素及び前記エロージョン防止要素は、実質的に回転対称である。ヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカの全体は、好ましくは回転対称である。径方向内側の寸法は、好ましくは、内径である。前記エロージョン防止要素の径方向外側の寸法は、好ましくは、その外径である。
【0019】
前記エロージョン防止要素の径方向外側の寸法、及び前記電流移送要素の径方向内側の寸法は、好ましくは、前記軸方向領域において互いに適合する。このことは、サーキット・ブレーカが物理的にコンパクトであることを可能にする。前記エロージョン防止要素は、好ましくは、前記電流移送要素の中にはめ込まれる。
【0020】
前記エロージョン防止要素は、好ましくは、前記アーキング・コンタクト・ピースまで伸びる。前記エロージョン防止要素は、前記アーキング・コンタクト・ピースまで正確に伸びていても良く(それにより、前記アーキング・コンタクト・ピースと前記エロージョン防止要素が互いに接触することになる)、あるいは、それを超えて伸びていても良い(即ち、前記エロージョン防止要素と前記アーキング・コンタクト・ピースが軸方向に重複する領域が生じるまで。前記エロージョン防止要素はまた、前記アーキング・コンタクト・ピースの軸方向の範囲まで、軸方向に(軸方向にのみ)伸ばされることも可能である。それによって、前記アーキング・コンタクト・ピース及び前記エロージョン防止要素の軸方向の範囲の領域が、重なり合うことなく、互いに接触することになる。
【0021】
前記エロージョン防止要素は、好ましくは、前記フラットなコンタクトの近傍の前記電流移送要素と比べて、より優れた耐エロージョン材料を有している。少なくとも、前記エロージョン防止要素の、高温ガスの流れに向かい合う方の側は、好ましくは、このような耐エロージョン材料からなり、そして、エロージョン防止要素の全体が、このような材料から、好ましくは作られる。前記電流移送要素の、もしそれが高温ガスの流れに曝された場合に、前記アーキング・コンタクト・ピースと前記電流移送要素の間での接点の劣化が特に早く生ずる部分は、前記フラットなコンタクトの近傍に位置している。この部分は、好ましくは、前記エロージョン防止要素より優れた前記耐エロージョン材料によって、高温のガスによる劣化に対して保護される。
【0022】
一つの好ましい実施形態において、前記エロージョン防止要素の径方向内側の寸法が前記アーキング・コンタクト・ピースの径方向内側の寸法と実質的に同一な、第二の軸方向領域がある。前記電流移送要素の径方向内側の寸法、及び前記エロージョン防止要素の径方向外側の寸法は、特に好ましくは、前記軸方向領域において同じ大きさである(製造上の許容差の範囲内で)。換言すれば、前記エロージョン防止要素の径方向内側の寸法は、フラットなコンタクトの近傍での前記アーキング・コンタクト・ピースの径方向内側の寸法と実質的に同じ大きさである。このことは、ヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカが物理的に特にコンパクトであることを可能にする。
【0023】
ヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカは、高温ガスの流れを運ぶための放出流れのチューブを有していても良い。この放出流れのチューブは、前記アーキング・コンタクト・ピースから発生することがあるアークによって加熱されたガスの流れを運ぶために使用される。このケースでは、前記エロージョン防止要素が前記放出流れのチューブに固く接続されていることが、大いに好ましい。前記放出流れのチューブと前記エロージョン防止要素が、一体的に形成されていることが、特に好ましい。このことは、ヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカの製作及び組み込みをより容易にする。前記エロージョン防止要素は、好ましくは、前記放出流れのチューブの中に一体化される。
【0024】
前記電流移送要素は、好ましくは、前記アーキング・コンタクト・ピースを取り囲む補助ノズルに固く接続されている。前記電流移送要素は、好ましくは、絶縁ノズル装置(少なくとも一つのメイン・ノズル及び少なくとも一つの補助ノズルを有している)を支持するために、あるいはそれを保持するために、使用される。または、前記電流移送要素は、このようにサポートまたはホルダーに固く接続され、あるいは、それと一体的に形成される。
【0025】
前記フラットなコンタクトは、好ましくは、実質的に径方向に一直線上に揃っている。少なくともフランジ・コンタクトは、水平座標に沿って排他的に伸びていない。
【0026】
前記電流移送要素および/または前記アーキング・コンタクト・ピースには、好ましくは、フラットなコンタクトに寄与する表面の接触抵抗を減少させるためのコーティングが設けられることが可能であり、好ましくは(各ケースにおいて)、フラットなコンタクトに寄与する表面の全体に設けられる。このようなコーティングは、例えば、銀のコーティングでも良い。
【0027】
一つの好ましい実施形態において、定格電流コンタクト・システムが、アーキング・コンタクト・ピースに加えて、設けられる。サーキット・ブレーカが閉じられた状態にあるとき、このシステムが定格電流を運び、これに対して、この定格電流コンタクト・ピースの切り離しの後には、電流は、アーキング・コンタクト・システム(前記アーキング・コンタクト・ピースを含む)上に電流の方向が変えられる。前記アーキング・コンタクト・ピースの切り離しの後、アークが飛び、そのアークは、クエンチされなければならず、そして短絡電流を運ぶ。前記アーキング・コンタクト・ピースが、更なるアーキング・コンタクト・ピースと共に、定格電流コンタクト・システムを構成することもまた可能である。
【0028】
ヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカは、典型的には、10kVと1000kV以上との間の定格電圧で、好ましくは30kVと550kVの間の定格電圧で、2kAと80kAの間の短絡電流を運ぶように、デザインされる。
【0029】
更なる好ましい実施形態及び利点は、従属請求項から及び図面から、明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の主題は、以下のテキストにおいて、好ましい代表的な実施形態を使用して、より詳細に説明される。それらの実施形態は、添付図面に示されている。
【0031】
図面の中で使用されている参照符号及びそれらの意味は、参照符号のリストの中にまとめの形式で挙げられている。原則として、同一の部分または同一の効果を有する部分には、これらの図の中で同一の参照符号が付与されている。本発明の理解のために重要でない部分は、一部のケースでは省略されている。ここに記載される代表的な実施形態は、本発明に基づく主題の例を表しており、本発明を限定する効果を有してはいない。
【0032】
図1に、本発明に基づくヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカの詳細であって、スイッチが開放された状態のものを、概略的に且つ断面図で示す。このヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカは、回転軸Aの回りで実質的に回転対称であって、この回転軸は、軸方向座標(“z”と記されている)、及び径方向座標(“r”と記されている)を規定している。スイッチを開放するために、二つの定格電流コンタクト9を有する定格電流コンタクト・システム9が、先ず第一に開かれ、それによって、サーキット・ブレーカの中を流れる電流が、アーキング・コンタクト・ピース・システムに方向が変えられる。そのアーキング・コンタクト・ピース・システムは、二つのアーキング・コンタクト・ピース1,1bを有している。これら二つのアーキング・コンタクト・ピース1,1bの切り離しの後、それらの間にアーク5が飛び、短絡電流I(細い白抜きの矢印で示されている)がこれら二つのアーキング・コンタクト・ピース1,1bの中を流れる。
【0033】
アーキング・コンタクト・ピース1は、複数のコンタクト・フィンガーズを有するコンタクト・チューリップの形態であり、開口6を有している。サーキット・ブレーカの中に供給されたクエンチング・ガス4(例えば、SF)は、アーク5により加熱され、そして恐らくは、更なるガス状の材料と共にガス流れ4(太い白抜きの矢印で示されている)を形成し、そのガスが開口6の中を流れる。
【0034】
短絡電流Iは、コンタクト・チューリップ1の端の、径方向に一直線上に揃えられたフラットなコンタクトFを通って、電流移送要素2の中へ流れ、そこから、サーキット・ブレーカの接続部へ流れる。エロージョン防止要素3aが、電流移送要素2とアーキング・コンタクト・ピース1の間に、電流移送要素2を保護するために、特に、フラットなコンタクトFをガス流れ4に対して保護するために、設けられている。このエロージョン防止要素3aは、このケースにおいては、放出流れのチューブ3と一体的に形成されている。
【0035】
電流移送要素2は、一般的に、エロージョン防止要素3aと比べて性能が劣る耐エロージョン(耐熱)材料からなり(例えば、アルミニウムまたは銅)、エロージョン防止要素3aは、例えば、鋼または炭素繊維の複合材料からなっていても良い。例として、アーキング・コンタクト・ピース1は、銅、鋼またはタングステン−銅から作られていても良い。
【0036】
アーキング・コンタクト・ピース1の底面の全体は、電流移送要素2のための接触表面Fとして使用され、そして、そこから、電流移送要素2が、エロージョン防止要素3aにより、ガス流れ4に対して保護される。もし、適切な材料が使用された場合には、アーキング・コンタクト・ピース1のために、エロージョンに対する更なる保護の必要はなく、その結果、エロージョン防止要素3aは、接触表面F、及び電流移送要素2の中で接触表面の近傍にある部分のみを、高温のガスに対して保護することが必要になる。
【0037】
図1に示されているように、コンタクト・チューリップ1は、電流移送要素2の中にねじ込まれることが可能である。無視し得る程度の電流のみが、アーキング・コンタクト・ピース1と電流移送要素2の間に、ネジを通って流れることが可能であり、それにより、コンタクト・チューリップの外側の表面は、接点領域に寄与しないことになる。
【0038】
電流移送要素2の内径d2は、接触表面Fの近傍から始まる、特に接触表面Fから始まる領域2aにおいて、連続的に増大する。エロージョン防止要素3aの外径も、同じ程度に増大する。エロージョン防止要素3aの内径は、軸方向領域2bで(または、少なくとも、接触表面Fの近傍で)、接触表面Fの近傍での、アーキング・コンタクト・ピース1の内径d1と同一である。
【0039】
このことは、アーキング・コンタクト・ピース1を通って流れ去るガス4に対して、広い放出流れの断面が与えられると言う結果をもたらし、それと同時に、サーキット・ブレーカの外形寸法は、小さく保たれ、且つ、短絡電流Iのために使用される断面積Fは、非常に広くなる。
【0040】
電流移送要素2は、このケースにおいて、絶縁補助ノズル7を保持する機能も有しており、そして、金属製チューブ(それはまた、定格電流コンタクト・ピース9の内の一方を支えている)を介して、絶縁メイン・ノズル8を保持する機能も有している。アーキング・コンタクト・ピース1,1bの双方、あるいは、それら二つの内の一方のみが、動くようにデザインされていても良い。アーキング・コンタクト・ピース1、放出流れのチューブ3、ガイド・支持要素2、絶縁ノズル装置7,8、及び絶縁ノズル側に配置された定格電流コンタクト9は、固く接続されることが可能である。
【0041】
他の図は、概略的に且つ断面図で、フラットなコンタクトFの近傍の領域の可能性のある改善を示しており、それらは、図1に示されているようなヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカにおいて、あるいは、アーキング・コンタクト・ピース1、電流移送要素2、及びエロージョン防止要素3aを有する他のサーキット・ブレーカにおいても、可能である。
【0042】
図2は、図1からの実施形態を示しており、ここでは、ネジがより明瞭に示されている。この図は、多少理想化されて描かれている。その理由は、一部の表面は、製造上の許容差のために、互いに近いことが有りうるからである。この問題については、図3に関係して、後に論ずることになる。
【0043】
図3に示されているように、コンタクト・ピース1は、ネジによって接続される代わりに、電流移送要素2の中に押し込まれていても良い。これは、インターロッキング接続の例である。更に、製造上の許容差の結果としての、エロージョン防止要素3aの電流移送要素2の中へのはめ込みに関連する問題を解決するために、図3に示されているように、エロージョン防止要素3a上の傾斜が、電流移送要素2上の傾斜と比べて緩やかであっても良い。その結果として、電流移送要素2の内径d2とエロージョン防止要素3aの外径D3は、同じ軸方向座標zに対して異なるサイズであることになる。
【0044】
図3にまた示されているように、コンタクト・チューリップ1が傾斜面を有していても良く、そのようにして、製造上の許容差によって引き起こされるエロージョン防止要素3aに関係するはめ合いの問題が解決される。更に、図3には、突き当て式の端部がエロージョン防止要素3aに設けられることが可能であることが示されている。
【0045】
図4に、具体化の更なる例を示す。この例は、低い接触抵抗をもたらす低い接触圧力が、接触表面6上で実現されることが可能であることを示している。アーキング・コンタクト・ピース1は、ユニオン・ナット10またはフランジ10により、電流移送要素に対して押し付けられる。図4はまた、エロージョン防止要素3aがまた、放出流れのチューブ3とは別に設けられていても良いことを示している。
【0046】
図5は、複数の傾斜面を、電流移送要素2および/またはエロージョン防止要素3aの上に設けることもまた可能であることを示している。
【0047】
図6は、エロージョン防止要素3aが、軸方向座標に関して、アーキング・コンタクト・ピース1の範囲まで伸びることもまた可能であることを示している。
【0048】
図7は、更なる実施形態を示しており、この実施形態においては、エロージョン防止要素3aは、放出流れのチューブ3とは別に設けられている。この図はまた、電流移送要素2の内径d2が複数のステップで増大されることもまた可能であることを示している(このケースにおいては、一つのステップであるが、しかしながら、二つ、三つ、またはそれ以上のステップもまた可能である(図7は、サーキット・ブレーカを、対称の軸Aまでのみを示しているので、内径の半分、即ちd2/2が示されている)。
【0049】
他の実施形態もまた、特に好ましい。この実施形態において、内径d2は、第一の領域においては、図7に示されているように複数のステップで増大され、第二の領域においては、図5に示されているように、傾斜面の形態で増大される。しかしながら、その反対に、内径d2が、第一の領域においては、傾斜面により増大され、第二の領域においては、複数のステップで増大されることもまた可能である。
【0050】
図8は、一つの実施形態を示す。この実施形態においては、エロージョン防止要素3a及び電流移送要素2が、先ず最初に、一定の外径または内径を適切に有し、それから、径方向座標がより大きい方向に傾斜した領域を有し、その領域は、フラットなコンタクトFから始まって、座標zで予め定められる方向に伸びている。このことにより、コンタクト領域Fが僅かに小さくなるが、エロージョンに対するより良い抵抗を確実にする。
【0051】
図9に示されている実施形態は、図8に示されたものとほぼ同様であり、但し、フラットなコンタクトFが、実質的に径方向に一直線上に揃っていなくても良いことを示している。それは、座標rに沿って伸びる軸に対して、ゼロからかなり異なる角度αを含んでいても良い。図9に示されているように、その角度αは、負であっても良いが、正の角度αもまた可能である。
【0052】
図10は、一つの実施形態を示す。この実施形態においては、エロージョン防止要素3aの内径d3は、アーキング・コンタクト・ピース1の内径d1と比べて多少小さい。更に、このエロージョン防止要素3aは、接触表面Fの、電流移送要素3に主として隣接する側から、接触表面Fの、アーキング・コンタクト・ピース1に主として隣接する側まで伸びている。このことは、接触表面Fでのエロージョンに対するより良い保護をもたらす。更に、領域2aの中にエロージョン防止要素3a及び電流移送要素2を形成することは、スナップ・アクションのメカニズムを与え、そのメカニズムは、二つの部分を互いに接続するために使用される。
【0053】
これらの図に示された特徴は、ここに説明されまたは図に示されたもの以外との組み合わせにおいてもまた、好ましいものであろう。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、本発明に基づくヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカの大きな範囲の詳細部を示す断面図である。
【図2】図2〜10は、それぞれ詳細を示しており、図2は、アーキング・コンタクト・ピース、電流移送要素、及びエロージョン防止要素の一つの可能性のある実施形態を示す断面図である。
【図3】アーキング・コンタクト・ピース、電流移送要素、及びエロージョン防止要素の一つの可能性のある実施形態を示す断面図。
【図4】アーキング・コンタクト・ピース、電流移送要素、及びエロージョン防止要素の一つの可能性のある実施形態を示す断面図。
【図5】アーキング・コンタクト・ピース、電流移送要素、及びエロージョン防止要素の一つの可能性のある実施形態を示す断面図。
【図6】アーキング・コンタクト・ピース、電流移送要素、及びエロージョン防止要素の一つの可能性のある実施形態を示す断面図。
【図7】アーキング・コンタクト・ピース、電流移送要素、及びエロージョン防止要素の一つの可能性のある実施形態を示す断面図。
【図8】アーキング・コンタクト・ピース、電流移送要素、及びエロージョン防止要素の一つの可能性のある実施形態を示す断面図。
【図9】アーキング・コンタクト・ピース、電流移送要素、及びエロージョン防止要素の一つの可能性のある実施形態を示す断面図。
【図10】アーキング・コンタクト・ピース、電流移送要素、及びエロージョン防止要素の一つの可能性のある実施形態を示す断面図。
【符号の説明】
【0055】
1…アーキング・コンタクト・ピース、コンタクト・チューリップ・コンタクト・チューブ、1b…アーキング・コンタクト・ピース、コンタクト・ピン、2…電流移送要素、ホルダー、2a,2b…領域、軸方向領域、3…放出流れのチューブ、3a…エロージョン防止要素、4…ガス、クエンチング・ガス、流れ、クエンチング・ガス流れ、5…アーク、6…アーキング・コンタクト・ピースの開口、7…補助ノズル、8…ノズル、メイン・ノズル、9…定格電流コンタクト、定格電流コンタクト・システム、10…ユニオン・ナット、フランジ;
A…軸、D3…エロージョン防止要素の径方向外側の寸法、外径、d1…アーキング・コンタクト・ピースの径方向内側の寸法、内径、d2…電流移送要素の径方向内側の寸法、内径、d3…エロージョン防止要素の径方向内側の寸法、内径、I…電流、短絡電流、アーキング電流、F…フラットなコンタクト、接触表面;
r…径方向、径方向座標、z…軸方向、軸方向座標、α…角度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカであって、
軸(A)を有し、この軸は、軸に対して平行な軸方向座標(z)及び軸に対して垂直な径方向座標(r)を規定し;
且つ、アーキング・コンタクト・ピース(1)と、電流移送要素(2)と、エロージョン防止要素(3a)とを有し;
前記アーキング・コンタクト・ピース(1)は、前記アーキング・コンタクト・ピース(1)から発生することがあるアーク(5)によって加熱されたガス(4)の実質的に軸方向の流れ(4)を運ぶための開口(6)を有し、且つ、アーク(5)が生じている間、前記アーキング・コンタクト・ピース(1)及び前記電流移送要素(2)の中を流れる短絡電流(I)を運ぶために、前記電流移送要素(2)と共に、フラットなコンタクト(F)を形成し;
また、前記エロージョン防止要素(3a)は、前記電流移送要素(2)を、前記フラットなコンタクト(F)の近傍の流れ(4)から、実質的に遮蔽し;
また、前記電流移送要素(2)は、軸(A)に対して平行にフラットなコンタクト(F)から測定された距離が増大するに従って、前記電流移送要素(2)の径方向内側の寸法(d2)が段階的にまたは連続的に増加する軸方向領域(2a)を有している;
ヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカにおいて、
前記軸方向領域(2a)が、前記エロージョン防止要素(3a)を保持するように構成されていること;
を特徴とするヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカ。
【請求項2】
下記特徴を有する請求項1に記載のヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカ:
前記電流移送要素(2)及び前記エロージョン防止要素(3a)は、実質的に回転対称であるようにデザインされ;且つ、
前記径方向内側の寸法(d2)は、その内径d2である。
【請求項3】
下記特徴を有する請求項1または2に記載のヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカ:
前記エロージョン防止要素(3a)の径方向外側の寸法(D3)が、前記軸方向領域(2a)において、前記電流移送要素(2)の径方向内側の寸法(d2)に適合している。
【請求項4】
下記特徴を有する請求項1から3のいずれか1項に記載のヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカ:
前記エロージョン防止要素(3a)は、前記アーキング・コンタクト・ピース(1)まで、軸方向に伸びている。
【請求項5】
下記特徴を有する請求項1から4のいずれか1項に記載のヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカ:
前記エロージョン防止要素(3a)は、前記フラットなコンタクト(F)の近傍で、前記電流移送要素(2)と比べて、より耐エロージョンに優れた材料を有している。
【請求項6】
下記特徴を有する請求項1から5のいずれか1項に記載のヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカ:
第二の軸方向領域(2b)において、前記エロージョン防止要素(3a)の径方向内側の寸法(d3)は、前記アーキング・コンタクト・ピース(1)の径方向内側の寸法(d1)と、実質的に同じである。
【請求項7】
下記特徴を有する請求項1から6のいずれか1項に記載のヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカ:
放出流れのチューブ(3)が、前記流れ(4)を運ぶために設けられ;且つ、
前記エロージョン防止要素(3a)が、前記放出流れのチューブ(3)に、固く接続されている。
【請求項8】
下記特徴を有する請求項1から7のいずれか1項に記載のヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカ:
前記電流移送要素(2)は、前記アーキング・コンタクト・ピース(1)を取り囲む補助ノズル(7)に固く接続されている。
【請求項9】
下記特徴を有する請求項1から8のいずれか1項に記載のヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカ:
前記フラットなコンタクト(F)は、実質的に径方向に一直線上に揃っている。
【請求項10】
下記特徴を有する請求項1から9のいずれか1項に記載のヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカ:
定格電流コンタクト・システム(9)が、前記アーキング・コンタクト・ピース(1)に加えて、設けられている。
【請求項11】
下記特徴を有する請求項1から10のいずれか1項に記載のヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカ:
前記電流移送要素(2)の内側の寸法(d2)は、前記接触表面(F)の近傍から始まる領域において、連続的に、または、一つの純粋なステップを持って連続的に、または、複数のステップで、増大する。
【請求項12】
下記特徴を有する請求項1から11のいずれか1項に記載のヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカ:
前記電流移送要素(2)の内側の寸法(d2)は、前記接触表面(F)の近傍から始まる領域において、複数の傾斜面で増大する。
【請求項13】
下記特徴を有する請求項1から12のいずれか1項に記載のヘビーデュ−ティ・サーキット・ブレーカ:
前記コンタクト・チューリップ(1)は、前記電流移送要素(2)にねじ込まれている。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−525945(P2008−525945A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547137(P2007−547137)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【国際出願番号】PCT/CH2005/000747
【国際公開番号】WO2006/066426
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(505063441)アーベーベー・テヒノロギー・アーゲー (96)
【Fターム(参考)】