説明

耐久性のある表皮層を備えた炭素フォーム成形用具

複合材の成形用具品が、炭素フォームと、一体式の微細粒グラファイト様の表面を形成するように炭素フォームに取付けた封止剤と、表面板材の表皮層とを含む。表面板材は、溶射付着した金属の被覆層、更に好適には、熱又はプラズマ溶射付着した金属で、最適には、プラズマ溶射したインバー金属である。表面板材は、場合により、フラッシュ被覆材を含んでも良い。表面板材は、代わりに、プラスチック材、樹脂材及び炭素−炭素複合材を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、下記米国特許出願の一部継続で、同時係属及び同一出願人による優先権を主張するものである。米国特許出願(出願番号:11/137,111号、出願日:2005年5月25日、発明の名称:高強度炭素フォームの封止剤)及び米国特許出願(出願番号:10/970,352号、出願日:2004年10月21日、発明の名称:高強度モノリシック炭素フォーム)で、引例として本願に取込んでいる。
【0002】
本発明は、複合材の加工に有用な被覆炭素フォーム成形用具品に関し、更に好適には、耐久性の有る表面板材で被覆された高強度炭素フォームブロックから成る成形用具品に関する。更に、本発明は、硬化した炭素質接合剤で封止され、 熱的に適合する耐久性のある表面板材で被覆された高強度一体型炭素フォームブロックから成る成形用具品に関し、成形用具品を形成する工程及び材料にも関連する。
【背景技術】
【0003】
高強度で軽量な炭素材が、成形用具品に有用であることは従来技術で提言されてきた。特に、炭素フォームは、非常に高い又は低い熱伝導率と併せて、低密度のため相当の活動を最近引き付けている。残念ながら、従来技術の工程で生産される炭素フォームは、多くの高温用途(複合材成形用具)には適切でない。これらの炭素フォームは一体式でなく、強度及び強度/密度比が高温用途の要求に適合しない。加えて、非常に相互接続した気孔を有する開放気泡炭素フォームは、高温用途に不適な気孔を有している。気孔及び気泡の用語は、前駆材内の気体の移動で形成される炭素フォーム内の小さな空隙を同義的に使用している。
【0004】
炭素フォームの被覆は、従来技術でも、成形用具品の有用性向上に適合すると提案されてきた。米国特許6,849,098で、JosephとRogersは、「表面板材」で被覆した非常に相互接続した開放気泡の気孔構造の炭素フォーム生産物を記述している。ここでの「表面板材」の用語は、製品(特に、成形用具品)の表皮層、被服層又は外層を意味し、製品の加工面又は加工表面となる。JosephとRogersが記載する工程による炭素フォームに適用する表面板材は、気泡容積を完全に又は部分的に充填している。しかし、表面板材による気泡の充填は、フォーム密度を増加させ、複合材用具での使用の軽量材としての適切さを低減する。JosephとRogersによる表面板材被覆炭素フォームは、固有の構造問題を示す。表面板材を直接に炭素フォームに接着させる難しさと、熱膨張の不適合に由来する表面板材の内部応力及び亀裂が問題となる。JosephとRogersのフォーム生産物は、成形用具又は他の構造用途に要求される強度/密度の比を備えていない。JosephとRogersで製造するフォームは、成形用具には十分に大きいブロックが得られず、幾つかのブロックを互いに接合する必要がある。首尾よく互いに接続したブロックは、構造の結合性を低減し、最終品に継ぎ目となる。
【0005】
最近、炭素フォームが開発され商品化された。商品は、GRAFOAM(商標:UCAR Carbon Company Inc. of Parma, Ohio)の商標名で入手できる。本発明が優先権を主張する米国特許出願2006−0086043A1に記載している。この新フォームは、一体式で、複合材用具又は他の用途に適する気泡構造、強度及び強度/密度比を備える制御可能な気泡構造を有している。事実、従来技術よりも高い強度/密度比を含め、GRAFOAMに見られる特性の組合せは、複合材用具の用途での炭素フォームの使用に必要であることが判明した。
【0006】
GRAFOAM炭素フォームは、市場で入手できる開放気泡炭素フォームと比較し、低ガス浸透率をもたらす気孔構造を備えるが、その炭素フォームの表面は、尚も多孔質で、炭素フォームを成形用具等の用途の実用には封止を必要とする。フォーム表面が、適切に封止されていない場合、複合材の製造工程(例、樹脂注入及び真空補助樹脂移送成形)で、樹脂がフォームブロックに浸潤する可能性が有る。複合材成形用具材としての炭素フォームは、約0.05〜約0.8g/cm3の密度を有し、約2000psi(約1.41kg/mm2)以上の圧縮強度(例、ASTM C695準拠で測定)を備えている。芯材は、低密度材である。複合材成形用具等の高温用途での使用を意図した炭素フォームは、強度/密度の比を7000psi(4.91kg/mm2)/(g/cm3)とするように形成している。
【0007】
新炭素フォームは、相互接続が低い気泡構造を有している。二つの明確な気孔寸法の分布が、複合材成形用具の適用に、新炭素フォームの適合性を非常に向上させる。一方の気孔寸法は、ミクロン範囲で、他方は数10〜数100ミクロン範囲である。しかし、従来の市販封止剤では、所望の程度に気孔の封止が出来ない。低粘度の市販封止剤は、単にフォーム内に逃げ、多数の塗布後でも表面の封止はできない。高粘度の市販封止剤/接着剤(例、Loctite 9394及び9396:商標)は、フォーム表面に封止表皮層を形成する。この様な表皮層は、硬化中に収縮して亀裂し、フォームから封止剤の層間剥離となる。
【0008】
一体式グラファイト又は他の固体カーボンブラックを封止する接合封止剤は、従来技術では既知である。以前開示した炭素質接合剤は、微細に分割した固体の炭素質粒子を有する接合糊成分を含んでいる。接合糊成分は、例えば、グラファイト粉、コークス粉、カーボンブラック、ピッチコークス粉、及び、か焼ランプブラック紛で、約20%〜約85重量%存在している。従来技術の接合剤は、樹脂結合剤系、溶媒及び触媒を含むこともある。接合剤同様に有効であるが、特に従来技術には、複合材成形用具等の用途使用に適した気孔構造を備えた多孔性炭素フォームを封止又はそのブロックを互いに接合する炭素質接合剤使用の開示は無い。
【0009】
最近、異なる寸法分布の粒子を有する2つの充填材部分から成る新封止剤が、UCAR Carbon Company Inc. of Wilmington, Delawareで開発された。米国特許出願11/137,111に記載されており、本発明は、それに優先権を主張している。第1充填材部分は、新封止剤の約12%〜約50重量%から成り、その粒子寸法分布では、約80%以上の粒子が、約2μm〜約500μmの直径で、平均直径が約120μm未満である。第2充填材部分は、新封止剤の約8%〜約35重量%から成り、約0.2〜約10μmの平均粒子寸法を有している。充填材粒子は、材料を問わず、所望の粒子寸法及び分布で用意できれば良い。材料は、金属及びセラミックス(例、炭化ケイ素)で、充填材部分は、異なる材料でも良い。充填材粒子は、新炭素フォームの熱膨張係数(CTE)に一層一致させるために炭素質材から形成しても良い。
【0010】
新封止剤は、大きい球状及び小さい球状気孔の組合せから成る新炭素フォームの比較的に小さな気泡及び双峰性分布の気泡構造を効果的に充填する。双峰性分布の気孔構造は、炭素フォームの複合材成形用具の適用に使用する場合に要求される。新封止剤は、硬化後又は低温炭化後、フォーム表面に薄い層を形成する。表面層は、約1000μm以下の程度で、多孔性の炭素フォーム表面に十分に結合している。新封止剤の適用は、炭素フォーム表面形態を、一体式の微細粒グラファイト様の表面に変換する。薄い層が炭素フォームに完全に結合するのは、充填材粒子が、構造安定性を与え、樹脂成分の比較的に高い熱膨張係数(CTE)を緩和し、封止剤に炭素フォームの熱膨張係数に適合する熱膨張係数を与えるからである。充填材粒子は、炭素フォームに浸潤する封止剤中の液体成分の量の制限にも役立つ。封止層の改変した表面形態は、その表面に充填材無しの通常の成形封止剤の更なる封止を可能にし、真空気密表面をもたらす。表面板材及び類似物を使用しない新炭素フォームに塗布する封止剤は、限定された複合材成形用具の用途には有用である。プロトタイプとして、成形用具表面の耐久性に大きな関心が無い場合である。しかし、大きな成形用具表面の耐久性及び平滑性が、製造用途には通常要求される。
【0011】
炭素フォームの被覆は、従来技術の引例及び特許でも提言されている。JosephとRogersは、Kevlar強化炭素質フォーム(商標)及び積層E-glas強化ビニルエステル(商標)を含む表面板材を示唆している。JosephとRogersは、炭素フォーム生産物への金属被覆の熱溶射塗布も示唆し、更に、アルミニウム又はインコネルニッケルクロム合金を使用し、炭素フォームの芯に適合する熱伝導及び熱膨張特性を表面に実現することを示唆している。しかし、その様な成形用具は、明示されていない。
【0012】
開放気泡炭素フォーム表面に溶射した金属の付着の予備調査では、熱又はプラズマ溶射の金属表皮層の従来技術の用途の欠点を種々現した。プラズマ溶射のインバー鉄ニッケル合金断面の微視的検査では、インバー粉被覆の不完全な付着を示した。炭素フォームの開放気泡構造に存在する開放気泡及びピン穴を区別した付着及び充填に失敗し、その結果、複合材の成形用具に不適切な粗いあばた状表面になった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
複合材成形用具品に要求されるのは、平滑で耐久性があり強力に付着した表皮層と、高温用途で使用され得る封止炭素フォーム表面を与える封止剤と、複合材成形の用途の使用に適する気孔構造、強度、強度/密度比の炭素フォーム自身とである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、双峰性分布の新炭素フォームに付着している新炭素質封止剤の薄い層に付着されている選択した表面板材の表皮層を備える成形用具品で、表面板材の表皮層が、複合材成形用具の用途に適した平滑で耐久性のある真空気密の成形用具表面を与える。炭素フォームは、一体式で、複合材成形用具に適した気泡構造、強度及び強度/密度の比を与える制御可能な双峰性分布の気泡構造を備えている。封止剤は、異なる粒子寸法分布を有する2つの充填材部分から成る。封止剤は、炭素フォームの比較的小さな気泡及び双峰性分布構造を効率良く充填し、炭素フォームの表面形態を、一体式の微細粒グラファイト様の表面に変える。好ましくは、表面板材の適用に際し、硬化した封止剤に紙やすり、研磨、又は場合により機械加工して、成形用具に用途に適する平滑性を有する表面を与えても良い。成形用具表面は、63μm−インチ標準の二乗平均平方根(RMS)に適合又は越えるのが好ましい。
【0015】
封止剤の薄い層は、炭素フォームに十分に結合している。これは、充填材粒子が、構造の安定性を与え、樹脂成分の比較的高い熱膨張係数(CTE)を緩和するからである。熱膨張の緩和で、封止剤の熱膨張係数を、炭素フォームの熱膨張係数に適合させている。充填材粒子は、封止剤の液体成分の炭素フォームへの浸潤する量を制限もする。
【0016】
表面板材及び封止剤の選択は、表面板材、封止剤及び双峰性分布炭素フォームの全てが、適合する熱膨張係数となるようにする。場合により、表面板材の成分及び封止剤の成分の選択は、表面板材、封止剤及び双峰性分布炭素フォームの全てが、適合する電気伝導率及び熱伝達特性と成るようにする。
【0017】
成形用具品の実施形態は、炭素フォーム、表皮層、及び/又は、未硬化予備状態の封止剤の成分から成る。表面板材成分、封止剤成分及び双峰性分布炭素フォーム成分は、硬化状態で、成形用具品が意図する用途の温度まで安定である。これら成分が、硬化状態で、少なくとも約300℃まで安定で、更には、少なくとも約400℃まで安定が好ましい。
【0018】
本発明の成形用具品の実施形態の表面板材は、金属の表皮層(例、インバー金属の表皮層)を備えている。表面板材が、金属表皮層の形成に溶射付着被覆を含むのが好ましい。更に好適には、表面板材が、熱又はプラズマ溶射被覆の金属表皮層である。プラズマ溶射インバー金属の表皮層が最も好ましい。
【0019】
発明の成形用具品は、場合により、金属表皮層の表面に付着させたフラッシュ被覆材を備えても良い。好ましくは、フラッシュ被覆材は、金属表皮層に付着する電解メッキを含む。メッキは、鏡面様仕上げの成形用具表面を形成する。電解メッキは、ニッケル、銅、銀及びこれらの合金を含む郡から選択するのが好ましい。
【0020】
成形用具品の実施形態として、炭素質封止剤の薄い層に付着するプラスチック材、樹脂材又は炭素−炭素複合材の表面板材を含む。本発明の選択肢として、炭素質封止剤の薄い層を、上記双峰性分布の炭素フォームに付着させているが、成形封止剤での更なる封止はしない。プラスチック材、樹脂材又は炭素−炭素複合材の表面板材の屈曲性板を、真空形成工程で封止剤層に付着させる。真空は、炭素フォーム及び封止剤層から引き抜く。プラスチック材、樹脂材又は炭素−炭素複合材の表面板材の選択は、表面板材及び双峰性分布炭素フォームの熱膨張係数を適合させ、平滑で耐久性のある成形用具表面を与えるようにする。
【0021】
プラスチック材、樹脂材又は炭素−炭素複合材の表面板材は、硬化状態で、成形用具品を意図する用途の温度よりも高い温度で安定である。プラスチック材、樹脂材又は炭素−炭素複合材の表面板材は、硬化状態で、少なくとも約300℃まで安定で、少なくとも約400℃まで安定が更に好ましい。
【0022】
成形用具品の封止剤は、封止剤の約20%〜約85重量%、更に好ましくは、約50%〜約85重量%の充填材を含む樹脂封止剤から成る。充填材は、異なる寸法の粒子分布を有する2つの充填材部分から成る。第1充填材部分の粒子は、第2充填材部分の粒子の2倍以上、更に好適には、4倍以上の平均直径を有している。
【0023】
第1充填材部分は、80%以上の粒子が、約2μm〜約500μmで、好ましくは、約2μm〜約300μmの直径の粒子寸法分布を有する。第1充填材部分の粒子は、約120μm未満の平均直径で、好ましくは、約100μm未満の平均直径を有している。最適には、第1充填材部分の粒子の平均直径は、約10μm〜約90μmである。第1充填材部分は、封止剤の約12%〜約50重量%、より好適には、約34%〜約50重量%から成る。
【0024】
第2充填材部分は、約0.2μm〜約10μm、より好適には、約0.5μm〜約5μmの直径の平均粒子寸法から成る。第2充填材部分の最適な平均粒子寸法は、約0.5μm〜約2μmである。第2充填材部分は、封止剤の約8%〜約35重量%、より好適には、約20%〜約35重量%を占める。
【0025】
2つの充填材部分を作成する材料は、同一又は異なっていても良い。実施形態の充填材粒子の縦横比は、約10又はそれ以上でも使用可能である。好ましくは、充填材粒子の縦横比が10未満で、更には5未満が好ましく、約2未満が最も好ましい。事実、球状に近い粒子(1.4以下の縦横比)は、高い縦横比の粒子と比較して、比較的低い表面積の粒子となり、封止剤溶液内での湿潤性を向上する。充填材粒子は、如何なる材料でも良く、金属及びセラミックス(例、炭化ケイ素)で、所望の粒子寸法及び分布で準備できる。充填材粒子を炭素質材で形成するのが最も好ましく、フォームの熱膨張係数(CTE)に更に近く一致できる。第1充填材部分は、コークス、石炭及び/又はグラファイトの粒子から成り、第2充填材部分は、カーボンブラックの粒子から成るのが好ましい。
【0026】
封止剤の形成には、充填材部分を、フォーム表面の被覆を可能にする低粘度の硬化材に混合する。硬化剤は、液体樹脂又は適切な溶媒に溶かした固体樹脂を使用した樹脂系である。樹脂系は、好ましくは、熱硬化性又は熱硬化可能が好ましい。樹脂系は、硬化後、使用される用途の温度まで又はそれ以上で安定である。複合材成形用具の用途の場合、樹脂系は、硬化後で、約300℃まで又はそれ以上、好ましくは、約400℃まで又はそれ以上で安定である。
【0027】
本発明の実施形態の封止剤は、上記したように、炭素質の2成分熱硬化系に取り込んでいる2つの部分から成る充填材を含む。熱硬化系は、室温で硬化し、約750psi(約0.53kg/mm2)以上の平均強度を持つ頑丈な封止剤を与える。この封止剤は、150℃で完全な硬化で強度を増し、850℃までの焼成後で高い強度を維持する。
【0028】
本発明の封止剤の使用は、炭素フォームの気孔性の理解を必要とする。炭素フォームの表面気孔は、表面板材の貼り付け前に、適宜、封止する必要が有る。発明の封止剤は、基本的には、高粘性の摩擦材である。封止剤を、緩やかな回転運動で、フォーム表面に塗布し、封止剤の充填材粒子を、開放された表面気泡に作用させ、可能な限り完全に気泡を充填させる。気孔内の充填材は、実質的に気孔を塞ぐ。材料の少ない液体分が、浸潤量を制限すると考えられる。余剰分を拭き取り、フォームに最適な表面状態を与える。硬化後、表面を市販されている通常の粘性の低い成形封止剤で更に封止し、必要に応じて、真空気密を得ることも可能である。
【0029】
発明の封止剤の塗布後、封止された炭素フォームは、封止表面に硬化封止剤(又は、樹脂)の薄い層を有する。硬化した封止剤の薄い層は、約1000μmの厚み、好ましくは約300μm以下で、更に好ましくは約200μmn以下である。フォームの独特な気泡構造で、封止剤が、フォーム構造に深く侵入しない。侵入する場合、フォーム密度を不利に増加させ、封止を困難にする。
【0030】
本発明の成形用具品の炭素フォームは、約0.05〜約0.8g/cm3の密度を有し、約2000psi(約1.41kg/mm2)以上の圧縮強度(例、ASTM C695準拠の測定)を備えている。高温用途での使用の場合、炭素フォームの重要な特性は、強度/密度の比である。複合材成形用具品の用途には、炭素フォームの強度/密度の比を、約7000psi(約4.92kg/mm2)/(g/cm3)以上、より好適には、約8000psi(約5.62kg/mm2)/(g/cm3)以上とする。
【0031】
炭素フォームは、複合材成形用具の用途に要求される高い圧縮強度を与える均一な気孔分布が必要である。加えて、気孔は等方性を必要とする。これは気孔が比較的に球状であり、平均して、縦横比(気孔の最長寸法/気孔の最短寸法の比)が、約1.0(完全な球形状)〜約1.5である。
【0032】
フォームの気孔率は、全体で、約50%〜約95%、より好適には、約60%〜約95%である。加えて、双峰性の気孔分布を有するのが非常に有利であることが判明した。大きい寸法の気孔である主要気孔部と、小さい寸法の気孔である少数気孔部から成る2つの平均気孔寸法の組合せである。気孔体積の約90%以上、更に好適には、約95%以上が、大きい寸法の部分で、気孔体積の約1%以上、更に好適には、約2%〜約10%が、小さい寸法の部分である。
【0033】
炭素フォームの双峰性気孔分布の大きい気孔部分は、直径で約10μm〜約150μm、より好適には、約15μm〜約95μm、最適には、約25μm〜約95μmである。小さい気孔部分は、直径で約0.8μm〜約3.5μm、より好適には、約1μm〜約2μmである。主題の炭素フォームの双峰性分布が、開放気泡と独立気泡間に中間構造を与え、フォーム構造の維持で液体の浸透を制限する。事実、発明の炭素フォームは、10.0ダルシー以下、好適には2.0ダルシー以下の浸透率となる(例、ASTM C577準拠で測定)。
【0034】
フォームの製造には、ポリマーフォームブロック、特にフェノールフォームブロックを、不活性又は空気を排除した雰囲気で、約500℃(より好適には、約800℃以上)から約3200℃に到る温度で炭化させ、高温用途に有用な炭素フォームを作成する。
【0035】
本発明の目的は、成形用具品を提供するものである。成形用具品は、平滑で耐久性があり真空気密の成形用具表面を与える精選した表面板材の表皮層と、双峰性分布の炭素フォームに付着している封止剤の層に付着している表面板材とを備えている。双峰性分布の炭素フォームは、複合材成形用具の高温用途への使用を可能にしている。
【0036】
本発明の成形用具品は、封止剤の層に付着する精選された表面板材の表皮層を含む。表皮層は、多孔性炭素フォーム表面の形態を、一体式の微細粒グラファイト様の表面に変える。表面板材の貼付けに際し、表面を紙やすり、研磨又は機械加工して、成形用具用途に適する平滑性を持つ成形用具表面にする。
【0037】
発明の成形用具品では、表面板材、封止剤及び双峰性分布炭素フォームの全てが、適合する熱膨張係数を有している。
【0038】
発明の成形用具品では、表面板材成分、封止剤成分及び双峰性分布炭素フォーム成分が、硬化状態で、少なくとも約300℃まで、更に好適には、少なくとも約400℃まで安定である。
【0039】
発明の成形用具品では、表面板材が、金属表皮層、好適には、金属表皮層を形成する溶射付着被覆、より好適には、熱又はプラズマ溶射付着被覆で、最適には、プラズマ溶射インバー金属表皮層である。機械的、化学的、電気化学的又は熱的方法又はこれらの組合せで金属表皮層を付着しても良い。
【0040】
発明の成形用具品では、表面板材は、プラスチック材、樹脂材又は炭素−炭素複合材の表面板材となる屈曲性の板を含み、表面板材を真空成形工程で封止剤層に接着する。
【0041】
前記一般的な記載及び下記詳細な記載は、発明の実施形態を与え、主張する発明の性質及び特性を理解する概観又は構成を与えることを意図している。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の封止剤と表面板材との組合せで有用となる炭素フォームは、ポリマーフォーム(例、ポリウレタンフォーム又はフェノール樹脂フォーム)で作成するが、フェノールフォームが好適である。フェノール樹脂は、ポリマー及びオリゴマーの大きな系統で、フェノールのホルムアルデヒドとの反応生成物を基にした広範囲の構造から成る。フェノール樹脂は、酸性又は塩基性触媒下で、フェノール又は置換フェノールをアルデヒド、特に、ホルムアルデヒドとの反応で作成する。フェノール樹脂フォームは、主として独立気泡から成る硬化系である。樹脂は、一般的には、ホルムアルデヒド:フェノールの比を変化させ、好適には約2:1とし、水酸化ナトリウムで触媒作用させた水性レゾールである。ウレアをホルムアルデヒド捕集剤としての使用も良いが、フェノールフォームの遊離フェノール及びホルムアルデヒド量は低いのが好ましい。
【0043】
好適なフェノール樹脂フォームは、樹脂の水量を調整し、表面活性剤(例、エトキシ化非イオン)、発泡剤(例、ペンタン、塩化メチレン又はクロロフルオロカーボン)、及び、触媒(例、トルエンスルホン酸又はフェノールスルホン酸)を添加する。スルホン酸は、反応を触媒し、発熱反応で、樹脂内で乳化している発泡剤が蒸発し、フォームを膨脹させる。表面活性剤は、開放/独立気泡の単位の比だけでなく気泡寸法も制御する。バッチ及び連続工程の双方が採用できる。連続工程の場合、機械装置は、連続ポリウレタンフォームに使用される装置に類似している。フォームの特性は、主として密度及び気泡構造に依存する。
【0044】
一つの好適なフェノールは、レゾルシノールで、アルデヒドとの縮合生成物が形成できる他種類のフェノールの使用も可能である。このようなフェノール類は、一価及び多価フェノール、ピロカテコール、ハイドロキノン、アルキル置換フェノール(例えば、クレゾールやキシレノール酸)、多核一価又は多価フェノール等(例えば、ナフトール、p,p’−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン又はヒドロキシアントラセン)がある。
【0045】
フェノールフォーム開始材を作るフェノールは、フェノール同様にアルデヒドと反応する非フェノール化合物との混合で使用しても良い。
【0046】
溶液内で使用する1つの好適なアルデヒドは、ホルムアルデヒドである。他の適当なアルデヒド類は、同じ方法でフェノールと反応するものである。これらは、例えば、アセトアルデヒド及びベンズアルデヒドである。
【0047】
一般的に、本発明の工程で使用するフェノール及びアルデヒドは、米国特許3,960,761及び5,047,225に記載されており、内容は言及して取込んでいる。
【0048】
本発明の炭素フォーム製造で開始材として使用するポリマーフォームは、形成される炭素フォームの所望の最終密度を反映する初期密度を有するのが好ましい。換言すれば、ポリマーフォームが、約0.1〜約0.8g/cc、一層好適には、約0.1〜約0.6g/ccである。ポリマーフォームの気泡構造は、独立気泡構造で、約65%〜約95%の気孔率と、約100psi(約0.07kg/mm2)以上、より好適には、約300psi(約0.21kg/mm2)以上の圧縮強度とを備えている。
【0049】
ポリマーフォームの炭素フォームへの変換は、不活性又は空気を排除した雰囲気下(例、窒素)で、ポリマーフォームを約500℃〜約3200℃の温度、より好適には、約800℃〜約3200℃の温度の加熱で炭化させて行なう。加熱速度を制御し、ポリマーフォームを数日間かけて所望の温度に到らす。これは、ポリマーフォームが、炭化中に、約50%程度又はそれ以上に収縮するからである。留意する点は、効果的な炭化のために、ポリマーフォーム片の均一な加熱を確実にすることである。
【0050】
不活性又は空気を排除した雰囲気で加熱されたポリマーフォームの使用で、新しい黒鉛化していないガラス状の炭素フォームが得られる。高温用途で使用される炭素フォームの重要な特性は、強度/密度の比である。有利なことに、発明の炭素フォームは、平均で約1.0〜約1.5の縦横比の比較的均一な等方性の気孔を有している。発明の好適例の炭素フォームは、約0.1〜約0.8g/cc、更に好適には、約0.1〜約0.6g/ccの密度と、約2000psi(約1.41kg/mm2)以上の圧縮強度(例、ASTM C695準拠で測定)とを備えている。従って、好適な本発明の炭素フォームは、強度/密度の比が、約7000psi(約4.92kg/mm2)/(g/cm3)以上、更に好適には、約8000psi(約5.62kg/mm2)/(g/cm3)以上である。
【0051】
新炭素フォームは、約50%〜約95%、更に好適には、約70%〜約95%の全気孔率を備えている。炭素フォームは、双峰性分布の気孔を持つのが有利である。本発明の1つの実施形態では、主要気孔部分は、より大きな平均気孔寸法で、少数気孔部分は、より小さい平均気孔寸法を有している。主要気孔部分は、約90%以上の気孔体積、更には、約95%以上の気孔体積を占めるのが好ましい。一方、少数気孔部分は、約1%以上の気孔体積、更には、約2%〜約10%の気孔体積を占めるのが好ましい。主要気孔部分の気孔の平均直径は、約10〜約150μm、更には、約15〜約95μm、最適には約25〜約95μmである。少数気孔部分の気孔の平均直径は、約0.8〜約3.5μm、更には、約1〜約2μmが好ましい。主題の炭素フォームの双峰性分布は、開放気泡フォームと独立気泡フォームとの中間構造をもたらし、フォーム構造を維持する限り、フォームの液体の浸透率を制限する。事実、本発明の炭素フォームは、約10.0ダルシー以下の浸透率を示し、更には、約2.0ダルシー以下の浸透率となる(例、ASTM C577準拠で測定)。
【0052】
気孔率及び個別の気孔寸法・形状の性質は、通常、光学的に測定する。明視野照明を使用してエポキシ固定で測定し、市販で入手できるImage-Pro Software (商標:MediaCybernetic of Silver Springs, Maryland)のようなソフトウェアを使用して測定する。
【0053】
炭素フォームと表面板材との組合せで有用な新封止剤は、充填材(好ましくは、炭素質の充填材)を有する樹脂性の封止剤を含む。充填材は、封止剤の約20〜約85重量%、更に好適には、約50〜約85重量%で存在する。発明の実施形態での封止剤の充填材は、異なる寸法分布を有する2つの部分の充填材粒子を含む。第1充填材部分の粒子の平均直径は、第2充填材部分の粒子の平均直径に対し、2倍以上、更には、4倍以上が好ましい。
【0054】
第1充填材部分の粒子寸法分布では、粒子の80%以上が、約2μm〜約500μmの直径で、更には、約2μm〜約300μmの直径が好ましい。第1充填材部分の粒子は、約120μm未満、更には約100μm未満の平均直径が好ましい。最も好ましい第1充填材部分の粒子の平均直径は、約10μm〜約90μmである。第1充填材部分は、本発明の封止剤に対し、約12%〜約50重量%、更には、約34%〜約50重量%で占めるが好ましい。
【0055】
第2充填材部分の粒子は、約0.2μm〜約10μm、更には、約0.5μm〜約5μmの平均直径が好ましい。最適には、第2充填材部分の粒子の平均直径は、約0.5μm〜約2μmである。第2充填材部分は、本発明の封止剤に対し、約8%〜約35重量%、更には約20%〜約35重量%で占めるのが好ましい。
【0056】
本発明では、2つの充填材部分は、同一又は異なる材料でも良い。充填材粒子は、可能な限り球状に近いのが好ましい。粒子を比較的低い表面積にして、(高い縦横比の粒子と比較して)封止剤溶液内での湿潤性を向上させるためである。本発明では、充填材粒子は、約1.0〜約10の平均縦横比を有している。充填材粒子が、約1.0〜約1.4の平均縦横比を有しているのが更に好ましい。充填材粒子は、如何なる材料でも可能で、所望の粒子寸法、形状及び分布が作成できれば、金属及びセラミックス(例、炭化ケイ素)を含む。充填材粒子を炭素質材で形成し、フォームの熱膨張係数(CTE)に一層合わせる。第1充填材部分は、カーボン及び/又はグラファイトの粒子、特にコークス又はグラファイト粉(又は、粉末)を含むのが好ましい。第2充填材部分は、カーボンブラックを含むのが好ましい。適切なカーボンブラックは、THERMAX(商標:Cancarb Company of Medicine Hat, Alberta, Canada)で入手できる。
【0057】
本発明の炭素質の封止剤は、2又は3成分系としても良い。本発明の好適な実施形態では、炭素質封止剤は、固体成分と液体成分とを有する2成分系から成る。固体成分は、固体フェノール樹脂、上記記載の2つの炭素質充填材部分、及び、固体触媒の混合物を含むのが好ましい。固体酸触媒は、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリクロロ酢酸、ナフタレンジスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、トリフルロアセチック酸、硫酸、及び、メタンスルホン酸から成る群から選択される。固体フェノール樹脂は、固体成分から除外しても良いが、封止強度が低下する場合がある。
【0058】
本発明の実施形態では、液体成分は、フルフルアルデヒドのフェノール樹脂の溶液から成る。通常の何れのフェノール樹脂を本発明の炭素質封止剤の固体又は液体成分に用いても良いが、レゾール型が好ましい。しかし、フェノール樹脂は、樹脂の酸触媒の中和を防ぐために、多量のアミン又は塩基性触媒成分を含むべきでない。酸触媒は、フルフルアルデヒド液の重合及び炭化を触媒する。溶解したフェノール樹脂を含む液体は、固体成分の触媒と処理すると、40%以上の乾燥炭素収率をもたらす。場合により、フェノール樹脂を液体成分から除外しても良く、フルフラールの触媒による室温硬化を尚も可能にする。しかし、結果として、液体炭素収率は約半分となり、硬化乾燥強度も減少する。
【0059】
好適な実施形態で、封止剤は、液体部分及び固体部分から成る2成分系から成り、固体部分は、ノボラックフェノール樹脂及び触媒を含む。触媒は、ノボラックフェノール樹脂に対し4%〜12重量%のヘキサメチレンテトラミンを含む。固体部分の残成分は、上記記載の炭素質の固体である。液体部分は、熱硬化性のフラン(例、フルフリルアルコール)を含み、ノボラックの溶媒として作用し、ヘキサメチレンテトラミン触媒で部分的に熱硬化する。他の塩基性触媒(例、トリエチレントリアミン及びエチレンジアミン)を加えてフルフリルアルコールの硬化を促進しても良い。しかし、ノボラックの硬化に要するヘキサメチレンテトラミン触媒の中和を防ぐために、触媒は、酸触媒成分を顕著に含むべきでない。
【0060】
本発明の実施形態では、封止剤は、3成分系で形成している。3成分は、2成分系の固体及び液体成分と、水又はアルコール中の流体溶液となる酸触媒を与える個別の第3成分とから成る。
【0061】
室温での硬化を実現する触媒の最小濃度は、触媒の選択による。p−トルエンスルホン酸を酸触媒として使用する本実施形態では、室温硬化が、24時間未満で達成でき、封止剤の重量に対し、可能な限り少なく約2.0重量%で良い。
【0062】
別の実施形態として、鉄粉又は鋼粉を封止剤の固体部分に含め、電気伝導度を向上させても良い。鉄又は鋼の粒子の適切な量は、封止剤の10%〜40重量%、好適には、20%〜30重量%とする。鉄又は鋼粒子が存在する場合、p−トルエンスルホン酸は、室温硬化には多量必要とする。この実施形態の場合、触媒はp−トルエンスルホン酸で、鉄を添加しない場合に対し、封止剤に要する重量は約2倍となる。
【0063】
本発明の他の実施形態として、封止剤は、知られた充填材部分及び硬化状態で500℃まで熱的に安定している高温熱硬化性ポリマー樹脂と、フルフラール及びフルフリルアルコールから成る群から選択される熱硬化性フランと、熱硬化性フランの加熱活性化触媒とを含む。
【0064】
記載したように、本発明の封止剤の樹脂は、硬化状態で、意図している炭素フォームを適用する温度まで安定している。封止剤の樹脂は、硬化状態で、少なくとも約500℃まで安定しているのが好ましい。好適には、硬化前の高温樹脂は、通常、溶媒に溶解し、比較的均質な液体を形成し、高温樹脂と他成分の組合せで封止剤の形成を可能にしている。
【0065】
適切な高温樹脂は、例えば、ポリイミド、ポリベンゾイミダゾール、ビスマレイミド、ポリアリールケトン、及び 、ポリフェニレン硫化物、及び、芳香族テトラカルボン酸、芳香族ジアミン及びモノアルキルエステルから成る重合性単量体系がある。高温樹脂は、上記したフッ素化ポリイミド及び重合性単量体系を含むのが好ましい。本発明の実施形態では、新封止剤は、約5%〜約30重量%、好適には、約10%〜約20重量%の高温樹脂を含む。
【0066】
液体の熱硬化性フランは、フルフラール又はフルフリルアルコールを含み、封止剤に、約20%〜約45重量%、好適には、約30%〜約40重量%程度を占める。熱硬化性フランは、封止剤の形成促進には液体が好ましい。加えて、熱硬化性フランは、高温樹脂の溶媒として作用し、本発明の封止剤形成を促進する。フルフリルアルコールは、高温樹脂の高溶解度及びカーボン及びグラファイトとの知られた適合性の理由で、更に適した熱硬化性フランである。
【0067】
本発明の実施形態の充填材含有封止剤は、封止剤が加熱された時に、熱硬化性フランを触媒する加熱活性化触媒も含む。フラン成分が、フルフリルアルコールの場合、最適な触媒は、弱酸性触媒で、例として、塩化亜鉛、無水マレイン酸、クエン酸、酒石酸、無水フタル酸及び硝酸亜鉛がある。硫酸及び塩酸のような強酸の使用も可能だが、高い発熱反応を避ける注意が必要である。
【0068】
本発明の実施形態の封止剤は、各成分を互いに混合し、同様の材料を混合する既知の装置の使用で製造される。成分の混合順序は重要でない。例外は、熱硬化性フランの加熱活性化触媒を最後に添加するのが好ましい。全ての成分を混合し、最後に触媒を添加するか、個別に触媒とフランの触媒活性化した熱硬化性フラン混合物を形成後、この混合物を、封止剤の他成分の予備混合物に添加しても良い。
【0069】
触媒活性化された加熱硬化フランは、主要部のフルフリルアルコール(例として)と、小数部の加熱活性化触媒と、水とを室温で混合して作成する。通常、水性の塩化亜鉛溶液触媒(50重量%のZnCl2)を、フルフリルアルコールの重量を基準にして、約2%〜約10重量%の触媒溶液とする。
【0070】
本発明の実施に関して、熱又はプラズマ溶射金属の表皮層又は他の表面板材を適用する前に、本発明の封止剤で、新炭素フォームの表面気孔を適切に封止する必要がある。適切な封止をしない場合、金属表皮層の熱又はプラズマ溶射の適用は、複合材の成形用具に好ましくない粗いあばた状の表面になる。同様に、金属でない表面板材を炭素フォームに直接貼り付ける場合、成形用具に不適切な固有の構造問題を示す。
【0071】
本発明の実施形態で使用する新封止剤は、高粘性の研磨材に類似している。封止剤を、穏やかな回転運動で、双峰性分布の炭素フォームの表面に塗布し、封止剤の充填材粒子を、開放表面気泡内に作用させ、可能な限り完全に気泡を充填させる。発明の封止剤を塗布する他の方法は、当業者には明白である。実施形態では、充填材は、炭素フォームの気孔を十分に埋める。封止剤の少量の液体は、封止剤の炭素フォームへの侵入を制限する。過剰な封止剤を拭き取り除去し、フォームに可能な限りの最適な表面状態を与えるのが好ましい。
【0072】
塗布した封止剤を上記記載のように硬化、又は、約850℃に到る温度で焼成して炭化させる。硬化又は低温炭化後、封止剤は、双峰性分布の炭素フォーム表面に薄い層を形成する。封止剤層の厚みは、約1000μm以下で、多孔性の炭素フォーム表面に完全に結合している。この封止剤の層は、炭素フォーム表面形態を、一体式の微細粒グラファイト様の表面に効率的に変換する。薄い層は、炭素フォームに完全に結合している。これは、充填材粒子が、構造の安定性を与え、樹脂成分の比較的高い熱膨張係数(CTE)を緩和するからである。熱膨脹係数の緩和で、封止剤と双峰性分布の炭素フォームが、適合する熱膨張係数を有する。充填材粒子は、封止剤内の液体成分の炭素フォームへの浸潤量を制限する。封止層で改変した表面形態は、所望の炭素フォーム上に、相対的な真空気密表面を形成する典型的な成形封止剤での封止が可能である。双峰性分布の炭素フォームの封止した表面を、紙やすり、研磨又は機械加工し、表面板材を貼り付ける前に所望の平滑度を得る。
【0073】
本発明の実施に関しては、複合材の成形用具品を、精選した表面板材の表皮層を双峰性分布の炭素フォームの封止表面に貼り付けて形成する。本発明の成形用具品は、炭素質封止剤の薄い層に接着される精選した表面板材の表皮層を含む。封止剤は、双峰性分布の炭素フォームに付着している。表面板材の成分及び封止剤の成分の選択は、表面板材、封止剤及び双峰性分布炭素フォームが、適合した熱膨張係数を有し、表面板材の表皮層が、平滑で耐久性のある成形用具表面を与えるようにする。場合により、表面板材成分及び封止剤成分を、表面板材、封止剤及び双峰性分布炭素フォームが、適合した電気伝導度及び熱伝導特性を有するように選択しても良い。
【0074】
本発明の実施形態の成分は、成形用具品で意図している適用温度まで、硬化状態で安定している。成分は、硬化状態で、少なくとも約300℃までの温度において安定で、更には、少なくとも約400℃まで安定が好ましい。
【0075】
成形用具品の実施形態の表面板材は、金属表皮層(例、インバー金属表皮層)を含む。好適には、表面板材は、金属表皮層を形成する金属の溶射付着被覆を含む。更に好適には、表面板材は、金属表皮層を形成する金属の熱又はプラズマ溶射付着被覆を含む。表面板材が、プラズマ溶射したインバー金属表皮層を含むのが最も好ましい。
【0076】
任意の実施形態として、成形用具品は、表面板材の表面に付着させたフラッシュ被覆材を更に含む。フラッシュ被覆材は、金属表皮層に付着する電解メッキが好ましく、メッキで鏡面状仕上げを有する成形用具表面を形成する。電解メッキは、ニッケル、クロム、鉄及びそれらの合金の群から選択するのが好ましい。
【0077】
成形用具品の別の実施形態は、炭素質封止剤の薄い層に付着するプラスチック材、樹脂材、又は、炭素−炭素複合材の表面板材を含む。任意であるが、炭素質の封止剤の薄い層を、上記記載の双峰性分布の炭素フォームに付着させているが、成形封止剤で更に封止されていない。プラスチック材、樹脂材、又は、炭素−炭素複合材の屈曲性の板である表面板材を、真空形成工程で封止剤層に付着させる。真空は、炭素フォーム及び封止剤層から抜く。プラスチック材、樹脂材、又は、炭素−炭素複合材の表面板材は、表面板材及び双峰性分布炭素フォームが、適合した熱膨張係数を有し、平滑で耐久性の有る成形用具表面を与えるように選択する。本発明の別の実施形態のプラスチック材、樹脂材、又は、炭素−炭素複合材の表面板材は、硬化状態で、成形用具品が意図する用途の温度に到るまで安定である。プラスチック材、樹脂材、又は、炭素−炭素複合材の表面板材は、硬化状態で、少なくとも約300℃まで、更には、少なくとも約400℃まで安定が好ましい。
【0078】
種々の実施形態は下記を含む。
・複合材を成形する用具品が、気孔体積の約90% 以上が、約10μm〜約150μmの直径で、気孔体積の約1% 以上が、約0.8μm〜約3.5μmの直径を有する気孔蒸留を備える炭素フォームと、炭素フォームに付着された封止剤の層と、封止剤の層に付着されて成形用具表面となる表皮層とを備えている。
・金属表皮層は、熱又はプラズマ溶射付着金属、又は、プラズマ溶射付着インバー金属で構成しても良い。
・フラッシュ被覆は、電解で付着させた金属で構成しても良い。
・表皮層は、真空気密の成形用具表面を形成しても良い。
・表皮層及び炭素フォームは、適合した熱膨張係数を有する。
・封止剤の層は、一体式の微細粒グラファイト様の表面を構成しても良い。
・封止剤の層の厚みは、約1000μm以下とするのが良い。
・炭素フォームは、通常、一体式である。
・第1充填材部分の粒子は、約120μm未満の平均直径を有しても良い。
・第2充填材部分の粒子は、約0.2μm〜約10μmの平均直径を有しても良い。
・第1充填材部分は、封止剤の約12%〜約50重量%を構成する。
・第2充填材部分は、封止剤の約8%〜約35重量%を構成する。
・第1充填材部分の粒子の80%以上が、約2μm〜約500μmの直径である。
・第1充填材部分及び第2充填材部分は、各々が炭素質粒子を含み、及び/又は、
・第1充填材部分は、コークス、石炭又はグラファイトの粒子から成り、第2充填材部分は、カーボンブラックの粒子から成る。
【0079】
本願で引用している全ての特許及び刊行物の開示は、全て引用している。
【0080】
上記記載は、当業者が発明の実施可能を意図している。当業者が明細書を見て明白となる可能な変更及び改良の全ての詳述は意図していない。全ての変更及び改良は、発明の範囲内に含まれるものとする。内容が特に不利な点を示唆しない限り、発明に意図する目的に適合する有効な如何なる配置又は順序での記載する要素及び工程を保護する請求を意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材を成形する用具品であって、前記用具品が、
気孔体積の約90%以上が約10μm〜約150μmの直径の気孔と気孔体積の約1%以上が約0.8μm〜約3.5μmの直径の気孔から成る気孔分布を有する炭素フォームと、
前記炭素フォームに付着されている封止剤の層と、
前記封止剤の層に付着され、前記成形用具表面となる表皮層と、を備えていることを特徴とする成形用具品。
【請求項2】
前記表皮層が、インバー金属から成ることを特徴とする請求項1記載の成形用具品。
【請求項3】
前記表皮層が、金属表皮層から成ることを特徴とする請求項1記載の成形用具品。
【請求項4】
前記表皮層が、成型用具表面を形成するフラッシュ被覆材を更に含むことを特徴とする請求項3記載の成形用具品。
【請求項5】
前記成形用具品が、未硬化前駆状態であり、前記表皮層、前記封止剤及び前記炭素フォームの少なくとも一つを構成する炭素質成分を含み、硬化の後で、全ての炭素質成分が、少なくとも約300℃まで安定であることを特徴とする請求項1記載の成形用具品。
【請求項6】
前記炭素質成分が、硬化後で、少なくとも約400℃までの温度に安定であることを特徴とする請求項5記載の成形用具品。
【請求項7】
前記表皮層が、プラスチック材、樹脂材及び炭素−炭素複合材の群から選択される平滑で耐久性のある表面を有する表面板材の屈曲自在の板で、前記屈曲自在の板は、真空成形工程で前記封止剤の層に付着させ、平滑で耐久性のある成形用具表面となることを特徴とする請求項1記載の成形用具品。
【請求項8】
前記封止剤の層が、異なる粒子寸法分布を有する第1充填材部分と第2充填材部分の2組の充填材から成ることを特徴とする請求項1記載の成形用具品。
【請求項9】
複合材を成形する用具品であって、前記用具品が、
気孔体積の約90%以上が約10μm〜約150μmの直径の気孔と気孔体積の約1%以上が約0.8μm〜約3.5μmの直径の気孔とから成る気孔分布を有する炭素フォームと、
前記炭素フォームに付着されている封止剤と、
前記封止剤に付着され、成形用具表面となる表皮層とを備え、
前記封止剤が、異なる粒子寸法分布を有する第1充填材部分と第2充填材部分の2組の充填材から成ることを特徴とする成形用具品。
【請求項10】
前記表皮層が、金属から成ることを特徴とする請求項9記載の成形用具品。
【請求項11】
前記金属表皮層が、インバー金属のプラズマ溶射付着被覆から成ることを特徴とする請求項10記載の成形用具品。
【請求項12】
前記第1充填材部分の粒子の平均直径が、前記第2充填材部分の粒子の平均直径に対し2倍以上であることを特徴とする請求項9記載の成形用具品。

【公表番号】特表2010−528979(P2010−528979A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512292(P2010−512292)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/066382
【国際公開番号】WO2008/154529
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(507393218)グラフテック インターナショナル ホールディングス インコーポレーテッド (22)
【氏名又は名称原語表記】GrafTech International Holdings Inc.
【Fターム(参考)】