説明

耐久性燃料電池

増加した耐久性を示す、酸化マンガンを含む燃料電池膜電極複合体および燃料電池ポリマー電解質膜が提供される。それらの作製方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増加した耐久性を示す、酸化マンガンを含む燃料電池膜電極複合体および燃料電池ポリマー電解質膜、およびそれらの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ラドヴィグソン(Ludvigson)著、J. Mater. Chem.、11(2001年)1269〜1276ページ、ミシャ(Michas)著、J.Membrane Sci.、29(1986年)239〜257ページおよび特開2001/118591号公報(モリモト(Morimoto))には、膜を金属塩の溶液に浸漬し、その後に、酸化して金属塩を完成製品中の金属酸化物に変換することとして一般に記載された方法によって作製されたポリマー電解質膜が開示されているとされる。ラドヴィグソンおよびミシャは、完成製品中の金属酸化物の得られた分布を説明している。金属には、Mn(ラドヴィグソンの場合)およびRu(ミシャおよびモリモトの場合)がある。
【0003】
米国特許第6,335,112号明細書(アスカベ(Asukabe))には、MnO2などのいくつかの触媒の1つであってもよい、触媒を含有する炭化水素ベースの固体ポリマー電解質を含むポリマー電解質膜が開示されているとされる。
【0004】
テトラフルオロエチレン(TFE)と式:FSO2−CF2−CF2−O−CF(CF3)−CF2−O−CF=CF2のコモノマーとのコポリマーが公知であり、スルホン酸の形で、すなわち、FSO2−末端基がHSO3−に加水分解されて、デラウェア州、ウィルミントンのデュポン・ケミカル・カンパニー(DuPont Chemical Company,Wilmington,Delaware)によって商品名ナフィオン(Nafion)(登録商標)として販売されている。ナフィオン(登録商標)は、燃料電池に使用するためのポリマー電解質膜の作製に一般に用いられる。
【0005】
テトラフルオロエチレン(TFE)と式:FSO2−CF2−CF2−O−CF=CF2のコモノマーとのコポリマーが、燃料電池に使用するためのポリマー電解質膜の作製において公知であり、スルホン酸の形で、すなわち、FSO2−末端基がHSO3−に加水分解されて、用いられている。
【0006】
2002年12月19日に出願された米国特許出願第10/325,278号明細書には、式:
YOSO2−CF2−CF2−CF2−CF2−O−[ポリマー主鎖]
[上式中、YがH+またはアルカリ金属カチオンなどの一価カチオンである]の高フッ素化主鎖および反復側基を含むポリマーを含む、90ミクロン以下の厚さを有するポリマー電解質膜が開示されている。典型的に、膜はキャスト膜である。典型的に、ポリマーは、22,000超の水和生成物を有する。典型的に、ポリマーは、800〜1200の当量を有する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
簡潔に言えば、本発明は、高フッ素化ポリマー電解質と少なくとも1つの酸化マンガンとを含むポリマー電解質膜を含む燃料電池膜電極複合体を提供し、ポリマー電解質膜の厚さにわたっての酸化マンガンの分布が均一である。典型的に、高フッ素化ポリマー電解質は過フッ素化される。典型的に酸化マンガンは、ポリマー電解質膜の全重量に対して0.01〜5重量パーセント、より典型的に0.1〜1重量パーセントおよび最も典型的に0.2〜0.3重量パーセントの量で存在する。酸化マンガンはMnO2であってもよい。酸化マンガンはMn23であってもよい。典型的に、ポリマー電解質は、1000以下、より典型的に900以下、より典型的に800以下の当量を有する。ポリマー電解質は、式:−O−CF2−CF2−CF2−CF2−SO3Hの側基または式:−O−CF2−CF(CF3)−O−CF2−CF2−SO3Hの側基を含んでもよい。
【0008】
別の態様において、本発明は、a)酸官能基を含む高フッ素化ポリマー電解質を提供する工程と、b)ポリマー電解質膜の全重量の0.01〜5パーセントを提供するような量で少なくとも1つの酸化マンガンを添加する工程と、c)その後、ポリマー電解質膜の厚さにわたっての各酸化マンガンの分布が均一である、前記ポリマー電解質を含むポリマー電解質膜を形成する工程とを含む、燃料電池ポリマー電解質膜を作製する方法を提供する。典型的に、高フッ素化ポリマー電解質は過フッ素化されている。典型的に酸化マンガンは、0.1〜1重量パーセントおよび最も典型的に0.2〜0.3重量パーセントの量で存在する。酸化マンガンはMnO2であってもよい。酸化マンガンはMn23であってもよい。典型的に、ポリマー電解質は、1000以下、より典型的に900以下、より典型的に800以下の当量を有する。ポリマー電解質は、式:−O−CF2−CF2−CF2−CF2−SO3Hの側基または式:−O−CF2−CF(CF3)−O−CF2−CF2−SO3Hの側基を含んでもよい。
【0009】
別の態様において、本発明は、ポリマー電解質膜を作製するための本明細書においてのいずれかの方法を含み、d)そのポリマー電解質膜を含む膜電極複合体を形成する工程をさらに含む、燃料電池膜電極複合体を作製する方法を提供する。
【0010】
本出願において、
ポリマー膜中の添加剤の「均一な」分布は、存在する添加剤の量が±90%を超えて変化せず、より典型的に±50%を超えて変化せず、およびより典型的に±20%を超えて変化しないことを意味する。
ポリマーの「当量」(EW)は、塩基の1当量を中和するポリマーの重量を意味する。
「高フッ素化」は、40重量%以上、典型的に50重量%以上およびより典型的に60重量%以上の量のフッ素を含有することを意味する。
【0011】
燃料電池膜電極複合体およびポリマー電解質膜、および増加された耐久性を提供するそれらの作製方法を提供することが本発明の利点である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、高フッ素化または過フッ素化ポリマー電解質とMnO2またはMn23などの少なくとも1つの酸化マンガンとを含むポリマー電解質膜を含む燃料電池膜電極複合体を提供し、ここでポリマー電解質膜の厚さにわたっての酸化マンガンの分布は均一である。
【0013】
本発明による膜電極複合体(MEA)およびポリマー電解質膜(PEM)は燃料電池において用いられてもよい。MEAは、水素燃料電池などのプロトン交換膜燃料電池の中心的要素である。燃料電池は、水素などの燃料と酸素などの酸化体との触媒組合せによって有用な電気を生じる電気化学電池である。代表的なMEAは、固体電解質として機能する、ポリマー電解質膜(PEM)(イオン導電性膜(ICM)としても知られている)を含む。PEMの一方の面は、アノード電極層と接触しており、反対側の面は、カソード電極層と接触している。代表的な使用において、水素の酸化によってプロトンがアノードに形成され、PEMを横切ってカソードに輸送されて酸素と反応し、電極に接続する外部回路に電流を流させる。各電極層は、典型的に白金金属などの電気化学触媒を含有する。PEMは反応体ガスの間に耐久性、非多孔性、電気非導電性機械的バリアを形成し、しかもそれはまた、H+イオンを容易に通過させる。気体拡散層(GDL)は、アノードおよびカソード電極材料へのおよびそれらからの気体輸送を容易にし、電流を伝導する。GDLは、多孔性かつ導電性であり、典型的に炭素繊維からなる。GDLはまた、流体輸送層(FTL)または拡散体/集電体(DCC)と呼ばれることがある。いくつかの実施形態において、アノードおよびカソード電極層はGDLに適用され、得られた触媒コーティングされたGDLをPEMで挟んで5層MEAを形成する。5層MEAの5層は、順に、アノードGDL、アノード電極層、PEM、カソード電極層、およびカソードGDLである。他の実施形態において、アノードおよびカソード電極層をPEMのどちらかの面に適用し、得られた触媒コーティングされた膜(CCM)を2つのGDLで挟んで5層MEAを形成する。
【0014】
本発明によるPEMは、任意の適したポリマー電解質を含んでもよい。本発明において有用なポリマー電解質は典型的に、典型的にスルホン酸基であるが同様にカルボン酸基、イミド基、アミド基、または他の酸官能基などであってもよい、共通の主鎖に結合したアニオン官能基を有する。本発明において有用なポリマー電解質は典型的に高フッ素化され、最も典型的に過フッ素化される。本発明において有用なポリマー電解質は典型的に、テトラフルオロエチレンと1つまたは複数のフッ素化された酸官能性コモノマーとのコポリマーである。代表的なポリマー電解質には、ナフィオン(Nafion)(登録商標)(デラウェア州、ウィルミントンのデュポン・ケミカルズ(DuPont Chemicals, Wilmington DE))およびフレミオン(Flemion)(登録商標)(日本、東京の旭硝子株式会社)などがある。ポリマー電解質は、米国特許出願第10/322,254号明細書、米国特許出願第10/322,226号明細書および10/325,278号明細書に記載された、テトラフルオロエチレン(TFE)とFSO2−CF2CF2CF2CF2−O−CF=CF2とのコポリマーであってもよい。ポリマーは典型的に、1200以下、より典型的に1100以下、より典型的に1000以下、より典型的に900以下、およびより典型的に800以下の当量(EW)を有する。
【0015】
ポリマーを任意の適した方法によって膜に形成することができる。ポリマーは典型的に、懸濁液からキャストされる。バーコーティング、吹付けコーティング、スリットコーティング、ブラシコーティングなどの任意の適したキャスティング方法を用いてもよい。代わりに、膜は、押出などの溶融方法でニートポリマーから形成されてもよい。形成した後、膜は、典型的に120℃以上、より典型的に130℃以上、最も典型的に150℃以上の温度においてアニールされてもよい。PEMは典型的に、50ミクロン未満、より典型的に40ミクロン未満、より典型的に30ミクロン未満、最も典型的に約25ミクロンの厚さを有する。
【0016】
本発明の1つの実施形態において、MnO2またはMn23などの1つまたは複数の酸化マンガンが膜の形成前にポリマー電解質に添加される。典型的に酸化物をポリマー電解質と十分に混合してほとんど均一な分布を達成する。混合は、ミル粉砕、混練などの任意の適した方法によって達成され、溶剤を含有してまたは含有せずに行われてもよい。添加された酸化物の量は典型的に、最終ポリマー電解質またはPEMの全重量を基準にして0.01〜5重量パーセント、より典型的に0.1〜2重量%、より典型的に0.2〜0.3重量%である。過度の酸化マンガンの含有に対して緩和する因子には、プロトン導電率の低下があり、0.25重量%超の酸化物において有意な因子になる場合がある。
【0017】
MEAまたはCCMを作製するために、ハンドブラッシング、ノッチバーコーティング、流体支持ダイコーティング、ワイヤー捲回ロッドコーティング、流体支持コーティング、スロット供給ナイフコーティング、三本ロールコーティング、またはデカルコマニア転写など、手作業および機械方法の両方を含める任意の適した手段によって触媒をPEMに適用してもよい。コーティングは、1回の適用で、または多数の適用で達成されてもよい。
【0018】
任意の適した触媒を本発明の実施において用いてもよい。典型的に、炭素担持触媒粒子を用いる。代表的な炭素担持触媒粒子は50〜90重量%の炭素および10〜50重量%の触媒金属であり、触媒金属は典型的に、カソードについてはPtを含み、アノードについては2:1の重量比のPtおよびRuを含む。典型的に、触媒は触媒インクの形でPEMまたはFTLに適用される。代わりに、触媒インクは転写基材に適用され、乾燥され、その後、PEMまたはFTLにデカルコマニアとして適用されてもよい。触媒インクは典型的に、PEMを含む同じポリマー電解質材料であってもなくてもよい、ポリマー電解質材料を含む。触媒インクは典型的に、ポリマー電解質の分散体中に触媒粒子の分散体を含む。インクは典型的に、固形分5〜30%(すなわちポリマーおよび触媒)およびより典型的に固形分10〜20%を含有する。電解質分散体は典型的に水性分散体であり、グリセリンおよびエチレングリコールなどのアルコールおよびポリアルコールをさらに含有してもよい。水、アルコール、およびポリアルコール含有量を調節してインクのレオロジー性質を変えてもよい。インクは典型的に、0〜50%のアルコールおよび0〜20%のポリアルコールを含有する。さらに、インクは、適した分散剤0〜2%を含有してもよい。インクは典型的に、加熱しながら攪拌し、その後に、塗布可能な稠度に希釈することによって作製される。
【0019】
本発明の1つの実施形態において、電極または触媒インクは、本発明によるPEMを含むポリマーについて本明細書に記載されたように、結合アニオン官能基と、マンガンカチオンからなる群から選択されたカチオンとを含むポリマーを含む。典型的に、本発明によるPEMを含むポリマーについて本明細書に記載されたようにアニオン官能基の少なくとも一部は酸の形であり、アニオン官能基の少なくとも一部はMnカチオンによって中和される。
【0020】
MEAを作製するために、GDLは、任意の適した手段によってCCMのどちらの面に適用されてもよい。任意の適したGDLを本発明の実施において用いてもよい。典型的にGDLは、炭素繊維を含むシート材料からなる。典型的にGDLは、織および不織炭素繊維構造物から選択された炭素繊維構造物である。本発明の実施において有用である場合がある炭素繊維構造物には、東レ(Toray)(登録商標)カーボン紙、スペクトラカーブ(SpectraCarb)(登録商標)カーボン紙、AFN(登録商標)不織カーボン布、ゾルテク(Zoltek)(登録商標)カーボン布などがある。GDLは、炭素粒子コーティング、親水化処理、および疎水化処理、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)によるコーティングなど、様々な材料でコーティングまたは含浸されてもよい。
【0021】
使用時に、本発明によるMEAは典型的に、分配プレートとして公知の、双極プレート(BPP)または単極プレートとしても公知の2つの硬質プレートの間に挟まれる。GDLのように、分配プレートは、導電性でなければならない。分配プレートは典型的に、炭素複合材、金属、またはめっきされた金属材料から作製される。分配プレートは、反応体または生成物流体をMEA電極表面におよびそれらから、典型的に、MEAに対向する表面に彫刻、ミル粉砕、成形またはスタンプされた1つまたは複数の流体伝導溝を通して分配する。これらの溝は、フローフィールドと呼ばれることがある。分配プレートは、流体を積層体中の2つの連続したMEAにおよびそれらから分配することができ、他方の面は酸化体を第1のMEAのカソードに向けたまま(そして生成水を除去する)、一方の面は燃料を第1のMEAのアノードに向け、したがって、用語「双極プレート」と呼ばれる。代わりに、分配プレートは、一方の面にだけ溝を有し、流体をその面にだけMEAにまたはそれから分配することができ、「単極プレート」と呼ばれてもよい。当該技術分野において用いられるとき双極プレートという用語は典型的に、単極プレートを同様に包含する。代表的な燃料電池積層体は、双極プレートと交互に積層された多数のMEAを含む。
【0022】
本発明は、燃料電池の製造および運転において有用である。
【0023】
本発明の目的および利点は以下の実施例においてさらに説明されるが、これらの実施例に記載された特定の材料およびそれらの量、ならびに他の条件および詳細は、本発明を不当に限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0024】
特に記載しない限り、全ての試薬はウィスコンシン州、ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Co.,Milwaukee,WI)から入手可能であり、または公知の方法によって合成されてもよい。
【0025】
イオノマー
記載された場合を除いて、以下の実施例の各々において用いられたイオノマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)とFSO2−CF2CF2CF2CF2−O−CF=CF2(コモノマーA)とのコポリマーである。コモノマーAは、米国特許出願第10/322,254号明細書および10/322,226号明細書に開示された手順によって製造された。重合は、米国特許出願第10/325,278号明細書に記載されたように水性乳化重合によって行われた。当量(EW)は1000であった。イオノマーは、70:30のn−プロパノール/水中に固形分16.7%を含有するキャスティング溶液において提供された。
【0026】
酸化マンガン
2つの異なった形の酸化マンガンの1つを以下の実施例の各々において用いた。MnO2は、アルドリッチ・ケミカル・カンパニーから購入され、受け取られたまま使用された。Mn23を合成するために、硝酸第一マンガンの溶液を水酸化アンモニウムで沈殿させ、その後に、900℃において乾燥およびカ焼した。
【0027】
安定化ポリマー電解質膜(PEM)の作製
イオノマーキャスティング溶液に、全固形分の重量のパーセントとして0.1、0.25、1.0、または2.0重量%の酸化マンガンの酸化マンガン配合量を提供するために十分な量で、選択された酸化マンガンを配合する。1cmの酸化ジルコニウムミル粉砕媒体(オハイオ州、ソロンのジルコア社(Zircoa,Inc.,Solon,Ohio))を添加し、混合物をポリエチレンビンに入れ、24時間回転して酸化マンガンを分散し、その後、ミル粉砕媒体から分離した。
【0028】
膜を作製するために、4インチのマルチプル・クリアランス・アプリケータ(Cat.No.PAR−5357、メリーランド州、コロンビアのBYK・ガードナー(BYK−Gardner,Columbia,Maryland))の0.020インチ(0.0508cm)間隙を用いて手塗り技術によって窓ガラス上に酸化マンガン配合分散体をキャスティングした。膜フィルムを10分間、80℃炉内で乾燥させ、次に10分間、160℃炉内で乾燥させた。
【0029】
標準ポリマー電解質膜(PEM)の作製
酸化マンガンおよびミル粉砕媒体を添加せず、溶液をミル粉砕しなかったことを除いて、標準PEMを安定化PEMと同じ手順によって作製した。
【0030】
実施例1C、2Cおよび3
1重量%のMn23を用いて(「安定化された」)および酸化マンガンを用いずに(「標準」)作製されたPEMを秤量し、次いで90℃において1M H22内に浸漬した。浸漬されたポリマーフィルムを、少なくとも1時間乾燥した後、指示された時間において除去し、秤量した。PEMの損失重量データが酸化分解の指標とされた。重量測定が中間時間に行われた場合、元の過酸化物溶液を秤量時間に新しい1M H22と取り換えた。比較のために、いくつかの標準PEMを水だけに浸漬した。
【0031】
図1は、水に浸漬された標準PEM(実施例1C、トレースA)、過酸化物に浸漬された標準PEM(実施例2C、トレースB)、および過酸化物に浸漬された安定化PEM(実施例3、トレースC)の損失重量データを示す。少量の酸化マンガンを連続して添加することによって、過酸化物中に浸漬されたPEMの損失重量の低減をもたらした。高温の過酸化物溶液に暴露した時の損失重量の減少は、改良された酸化安定度の指標とされる。
【0032】
実施例4C、5および6
酸化マンガンを用いない標準PEM(実施例4C)および0.25重量%および1重量%のMnO2を用いて作製された安定化PEM(それぞれ、実施例5および6)を実施例1C、2Cおよび3について上に記載されたように過酸化物中で試験した。図2は標準PEM(実施例4C、トレースA)および安定化PEM(実施例5、トレースB、および実施例6、トレースC)の損失重量データを示す。また、少量の酸化マンガンを連続して添加することによって、過酸化物中に浸漬されたPEMの損失重量の低減をもたらした。
【0033】
実施例7C、8、9および10
酸化マンガンを用いない標準PEM(実施例7C)および0.1重量%、0.25重量%および1重量%のMnO2を用いて作製された安定化PEM(それぞれ、実施例8、9および10)を実施例1C、2Cおよび3について上に記載されたように過酸化物中で試験した。図3は標準PEM(実施例7C、トレースA)および安定化PEM(実施例8、トレースB、実施例9、トレースC、および実施例10、トレースD)の損失重量データを示す。また、少量の酸化マンガンを連続して添加することによって、過酸化物中に浸漬されたPEMの損失重量の低減をもたらした。
【0034】
実施例11および12CのMEAの作製
50cm2の活性領域を有する燃料電池MEAを以下のように作製した。触媒分散体を国際公開第2002/061,871号パンフレットに記載された方法によって作製した。触媒のコーティングされた膜を作製するために、アノードおよびカソード層を同じ文献、国際公開第2002/061,871号パンフレットに記載されたデカルコマニア転写方法によって膜に適用した。PTFE処理カーボン紙ガス拡散層およびポリテトラフルオロエチレン/ガラス複合ガスケットを10分間132℃において13.4kNの力でカーバー・プレス(Carver Press)(インディアナ州、ウォーバッシュのフレッド・カーバー・カンパニー(Fred Carver Co.,Wabash,IN))内で加圧することによってCCMに適用した。
【0035】
実施例11および12CのMEA寿命試験
MEAをガス流、圧力、相対湿度、および電流または電圧の独立制御部を有する試験設備(ニューメキシコ州、アルバカーキのフュアル・セル・テクノロジーズ(Fuel Cell Technologies,Albuquerque,NM))で試験した。試験装置は、カッドサーペンタインフローフィールドを有する黒鉛集電体プレートを含んだ。MEAは、アノード過剰圧力を有する90℃の亜飽和条件下のH2/空気で作動された。MEAに、様々な電流密度値を課すことによって加速負荷サイクル寿命時間試験を実施した。各負荷サイクルの後に、電池の開放電圧(OCV)を測定し、記録した。このような試験プロトコルのための一般現象論は、OCVが単調に減衰することであるが、減衰率のはっきりした「屈折点」または著しい増加がある。減衰率が増加する点はMEAの寿命とされる。
【0036】
実施例11および12C
実施例11について、0.65cmの円筒状酸化ジルコニウムミル粉砕媒体(オハイオ州、ソロンのジルコア社)165gを125mlのプラスチックビン内に入れた。ミル粉砕媒体に、n−プロパノール30gおよびMnO2を1.58g添加した。混合物を24時間、ミルラック(オハイオ州、イースト・パレスチナのU.S.ストーンウェア(U.S.Stoneware,East Palestine,Ohio))上で回転し、次いでミル粉砕媒体から分離した。70:30のn−プロパノール/水中に固形分23重量%(すなわち、イオノマーポリマー、EW1000を46g)を含有するイオノマーキャスティング溶液200gを250mlのプラスチックビン内に計量分配した。上のn−プロパノールとMnO2との混合物1.66gをイオノマーキャスティング溶液に攪拌しながら添加した。上の量は、0.083gのMnO2を有するイオノマーキャスティング溶液、したがって乾燥イオノマーフィルム中0.18重量%のMnO2をもたらす。MnO2が添加されたイオノマーコーティング溶液を用いて、2001年4月18日出願された米国特許出願第09/837,771号明細書に記載された方法によってポリマー膜をキャストした。
【0037】
実施例12Cについて、ポリマー膜を実施例11について指示されたように、同じイオノマーキャスティング溶液を用いるがMnO2を添加せずにキャストした。
【0038】
MEAを実施例6および7Cについて上に記載された方法による膜から製造した。MEAを実施例6および7Cについて上に記載された寿命試験によって試験した。結果を表2に記載した。
【0039】
【表1】

【0040】
本発明の様々な変更及び改変が、本発明の範囲及び原理から逸脱することなく実施できることは、当業者には明らかであり、本発明は、上記の例示的な実施形態に不当に限定されるものではないことは理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例1C、2C、および3に記載されたように、本発明による膜(C)および比較用の膜(AとB)についての、残りの重量対過酸化物溶液または水への暴露時間のグラフである。
【図2】実施例4C、5、および6に記載されたように、本発明による膜(BとC)および比較用の膜(A)についての、残りの重量対過酸化物溶液への暴露時間のグラフである。
【図3】実施例7C、8、9および10に記載されたように、本発明による膜(B、CとD)および比較用の膜(A)についての、残りの重量対過酸化物溶液への暴露時間のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高フッ素化ポリマー電解質と少なくとも1つの酸化マンガンとを含むポリマー電解質膜を含み、前記ポリマー電解質膜の厚さにわたっての前記少なくとも1つの酸化マンガンの分布が均一である、燃料電池膜電極複合体。
【請求項2】
前記高フッ素化ポリマー電解質が過フッ素化されている、請求項1に記載の燃料電池膜電極複合体。
【請求項3】
前記少なくとも1つの酸化マンガンが、前記ポリマー電解質膜の全重量に対して0.01〜5重量パーセントの量で存在する、請求項1に記載の燃料電池膜電極複合体。
【請求項4】
前記少なくとも1つの酸化マンガンが、前記ポリマー電解質膜の全重量に対して0.1〜1重量パーセントの量で存在する、請求項1に記載の燃料電池膜電極複合体。
【請求項5】
前記少なくとも1つの酸化マンガンが、前記ポリマー電解質膜の全重量に対して0.2〜0.3重量パーセントの量で存在する、請求項1に記載の燃料電池膜電極複合体。
【請求項6】
前記少なくとも1つの酸化マンガンがMnO2である、請求項1に記載の燃料電池膜電極複合体。
【請求項7】
前記少なくとも1つの酸化マンガンがMn23である、請求項1に記載の燃料電池膜電極複合体。
【請求項8】
前記ポリマー電解質が1000以下の当量を有する、請求項1に記載の燃料電池膜電極複合体。
【請求項9】
前記ポリマー電解質が900以下の当量を有する、請求項1に記載の燃料電池膜電極複合体。
【請求項10】
前記ポリマー電解質が800以下の当量を有する、請求項1に記載の燃料電池膜電極複合体。
【請求項11】
前記ポリマー電解質が、式:
−O−CF2−CF2−CF2−CF2−SO3
の側基を含む、請求項1に記載の燃料電池膜電極複合体。
【請求項12】
前記ポリマー電解質が、式:
−O−CF2−CF(CF3)−O−CF2−CF2−SO3
の側基を含む、請求項1に記載の燃料電池膜電極複合体。
【請求項13】
a)酸官能基を含む高フッ素化ポリマー電解質を提供する工程と、
b)ポリマー電解質膜の全重量の0.01〜5パーセントを提供するような量で少なくとも1つの酸化マンガンを添加する工程と、
c)その後、ポリマー電解質膜の厚さにわたっての各酸化マンガンの分布が均一である、前記ポリマー電解質を含むポリマー電解質膜を形成する工程と、を含む、燃料電池ポリマー電解質膜を作製する方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法を含み、d)前記ポリマー電解質膜を含む膜電極複合体を形成する工程をさらに含む、燃料電池膜電極複合体を作製する方法。
【請求項15】
前記高フッ素化ポリマー電解質が過フッ素化されている、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの酸化マンガンが前記ポリマー電解質膜の全重量の0.1〜1パーセントを提供する、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの酸化マンガンが前記ポリマー電解質膜の全重量の0.2〜0.3パーセントを提供する、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの酸化マンガンがMnO2である、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの酸化マンガンがMn23である、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリマー電解質が1000以下の当量を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリマー電解質が900以下の当量を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリマー電解質が800以下の当量を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記ポリマー電解質が、式:
−O−CF2−CF2−CF2−CF2−SO3
の側基を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
前記ポリマー電解質が、式:
−O−CF2−CF(CF3)−O−CF2−CF2−SO3
の側基を含む、請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−513963(P2008−513963A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532489(P2007−532489)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/033117
【国際公開番号】WO2006/034014
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】