説明

耐候性シート及びその製造方法

【課題】優れた耐候性を有し、かつブリードアウトによる性能低下を抑制した耐候性シートを提供すること。
【解決手段】基材シート、表面保護層A、及び表面保護層Bを順に有し、該表面保護層Aが電離放射線硬化性樹脂A、紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤を含む電離放射線硬化性樹脂組成物Aの硬化物からなり、該表面保護層Bが電離放射線硬化性樹脂B、反応性官能基αを有する紫外線吸収剤及び反応性官能基βを有するヒンダードアミン系光安定剤を含む電離放射線硬化性樹脂組成物Bの硬化物からなり、該表面保護層Bの厚さが10μm以上である耐候性シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候性シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般住居の玄関ドアや外装材、公共施設の床材や外壁などの内外装、あるいは建造物や屋外に設置される構造物は、日々直射日光や風雨に晒されるため、これらの内外装材や建造物の表面保護などに用いられるシートには、極めて厳しい耐候性が要求される。
【0003】
耐候性を向上させるためには、シートなどに紫外線吸収剤や光安定剤などの添加剤を含有させる、あるいはこれらの添加剤を含有させたコーティング剤でフィルムをコーティングすることが一般的である(例えば、特許文献1〜3参照)。しかし、耐候性を向上させるために、これらの添加剤の含有量を増加させると、シートを構成する樹脂、あるいはコーティング剤に含まれるバインダー樹脂との相溶性などに起因して、これらの添加剤がブリードアウトし、耐候性の低下はもちろんのこと、さらにはべたつきの原因になったり、また透明性の低下といった、シートの性能低下に関わる問題が生じてしまっていた。一方、このような問題を解消させるために添加剤の含有量を減らしてしまうと、これらの添加剤の十分な性能が得られず、耐候性の点で満足のいくものが得られないといった問題もあった。このように、内外装材や建造物の表面保護などに用いられるシートに耐候性を付与する場合、耐候性の性能とブリードアウトによる性能低下の抑制という、相反する性能を高いレベルで得ることは大きな課題となっている。この課題を解決するために耐候剤のブリードアウトを防止するバリア層を設ける方法が取られている(特許文献4参照)。しかし、バリア層への耐候剤の添加はブリードアウトの原因となってしまい、耐候剤を添加することはできないため、バリア層の耐候性は高いものではなく、結果として十分な耐候性は得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−245442号公報
【特許文献2】特開2009−66966号公報
【特許文献3】特開2009−66967号公報
【特許文献4】特開2002−120318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような課題に対して、優れた耐候性を有し、かつブリードアウトによる性能低下を抑制した耐候性シートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、下記の耐候性シート及びその製造方法が上記課題を解決し得ることを見出した。すなわち、本発明の要旨は、以下の通りである。
【0007】
1.基材シート、表面保護層A、及び表面保護層Bを順に有し、該表面保護層Aが電離放射線硬化性樹脂A、紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤を含む電離放射線硬化性樹脂組成物Aの硬化物からなり、該表面保護層Bが電離放射線硬化性樹脂B、反応性官能基αを有する紫外線吸収剤及び反応性官能基βを有するヒンダードアミン系光安定剤を含む電離放射線硬化性樹脂組成物Bの硬化物からなり、該表面保護層Bの厚さが10μm以上である耐候性シート。
2.下記の工程を順に有する耐候性シートの製造方法。
工程(1A):基材シート上に表面保護層A、及び表面保護層Bを順に有し、該表面保護層Aが電離放射線硬化性樹脂A、紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤を含む電離放射線硬化性樹脂組成物Aを塗布する工程
工程(2A):電離放射線硬化性樹脂組成物Aの未硬化樹脂層上に、電離放射線硬化性樹脂B、反応性官能基αを有する紫外線吸収剤及び反応性官能基βを有するヒンダードアミン系光安定剤を含む電離放射線硬化性樹脂組成物Bを塗布する工程
工程(3A):電離放射線を照射して、電離放射線硬化性樹脂組成物A及び電離放射線硬化性樹脂組成物Bを硬化させて、各々表面保護層A及び表面保護層Bを形成する工程
3.下記の工程を順に有する耐候性シートの製造方法。
工程(1B):基材シート上に、表面保護層A、及び表面保護層Bを順に有し、該表面保護層Aが電離放射線硬化性樹脂A、紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤を含む電離放射線硬化性樹脂組成物A、及び電離放射線硬化性樹脂B、反応性官能基αを有する紫外線吸収剤及び反応性官能基βを有するヒンダードアミン系光安定剤を含む電離放射線硬化性樹脂組成物Bを同時に塗布する工程
工程(2B):電離放射線を照射して、電離放射線硬化性樹脂組成物A及び電離放射線硬化性樹脂組成物Bを硬化させて、各々表面保護層A及び表面保護層Bを形成する工程
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた耐候性を有し、かつブリードアウトによる性能低下を抑制した耐候性シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のコーティングフィルムの断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[耐候性シート]
本発明の耐候性シートは、基材シート、表面保護層A、及び表面保護層Bを順に有し、該表面保護層Aが電離放射線硬化性樹脂A、紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤を含む電離放射線硬化性樹脂組成物Aの硬化物からなり、該表面保護層Bが電離放射線硬化性樹脂B、反応性官能基αを有する紫外線吸収剤及び反応性官能基βを有するヒンダードアミン系光安定剤を含む電離放射線硬化性樹脂組成物Bの硬化物からなり、該表面保護層Bの厚さが10μm以上であることを特徴とするものである。図1は、本発明の耐候性シートの態様の一つについて、その断面を示す模式図である。図1に示す態様は、基材シート2、表面保護層A及び表面保護層Bが順に積層する構成を有するものである。
【0011】
≪基材シート≫
本発明のコーティングフィルムで用いられる基材シートとしては、プラスチックシートが好ましく、ポリオレフィン樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂などからなるものが好ましく挙げられる。なかでも、可視光透過性や作業性などを考慮すると、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/プロピレン/ブテン共重合体、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーなどのポリオレフィン樹脂、あるいはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)などのセルロース樹脂などからなる基材シートが好ましい。
【0012】
<紫外線吸収剤>
本発明で用いられる基材シートは、耐候性を向上させる目的で、紫外線吸収剤を好ましく含有することができる。紫外線吸収剤としては、無機系、有機系のいずれでもよく、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系、サリチレート系、アクリロニトリル系などが好ましく挙げられる。なかでも、紫外線吸収能が高く、また紫外線などの高エネルギーに対しても劣化しにくい、トリアジン系、ベンゾトリアゾール系、及びベンゾフェノン系がより好ましい。
【0013】
トリアジン系としては、例えば2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2'−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンなどが好ましく挙げられる。
【0014】
ベンゾトリアゾール系としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコールの3−[3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステルなどが挙げられる。また、ベンゾフェノン系としては、例えば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0015】
基材シート中の紫外線吸収剤の含有量は、基材に用いられる樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、より好ましくは0.5〜3質量部である。紫外線吸収剤の含有量が上記範囲であれば、本発明の耐候性シートに対して効率的に優れた耐候性を付与することができる。
【0016】
基材シートは、その上に設けられる層との密着性を向上させるために、所望により、片面または両面にコロナ放電処理、クロム酸化処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などの酸化法や、サンドブラスト法、溶剤処理法などの凹凸化法といった、物理的または化学的表面処理を施すことができる。
また、基材シートは、該基材シートと表面保護層Aとの層間密着性や、各種の被着材との接着性の強化などのためのプライマー層や、裏面プライマー層を形成するなどの処理を施してもよい。プライマー層の形成に用いられる材料としては特に限定されず、アクリル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂などが挙げられる。なお、裏面プライマー層に用いられる材料は被着材によって、適宜選択される。
また、本発明の耐候性シートの性能を阻害しない範囲内であれば、用途によっては、色彩を整えるための塗装や、デザイン的な観点での模様があらかじめ形成されていてもよい。
【0017】
基材フィルムの厚さについては特に制限はないが、耐久性を確保し、かつ汎用性を考慮すると、通常20〜200μm程度、好ましくは30〜150μmの範囲である。
【0018】
≪表面保護層A≫
表面保護層Aは、電離放射線硬化性樹脂A、紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤を含む電離放射線硬化性樹脂組成物Aの硬化物からなる層であり、本発明の耐候性シートに耐候性をはじめとし、耐傷性などの表面特性を付与するものである。
【0019】
表面保護層Aの厚さは、1〜20μmであることが好ましく、より好ましくは1〜10μmである。表面保護層Aの厚さが上記範囲内であると、優れた耐候性が得られ、かつ優れた耐傷性などの表面特性も得られる。また、コスト的にも優位である。
【0020】
<電離放射線硬化性樹脂組成物A>
電離放射線硬化性樹脂組成物Aは、電離放射線硬化性樹脂A、紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤を含む組成物であり、電離放射線硬化性を有するものである。ここで、本明細書において電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他に、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も使用可能である。
【0021】
(電離放射線硬化性樹脂A)
電離放射線硬化性樹脂Aは、従来電離放射線硬化性の樹脂として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができるが、良好な硬化特性を得る観点から、ブリードアウトしにくく、固形分基準として95〜100%程度としても塗布性を有し、かつ硬化する際に硬化収縮を生じにくいものが好ましい。そのような電離放射線硬化性樹脂の代表例を以下に記載する。また、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
【0022】
重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート単量体が好適であり、なかでも分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有するような多官能性(メタ)アクリレートが好ましく、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。官能基数としては、2〜8が好ましく、2〜6がより好ましく、2〜4がさらに好ましい。また、表面保護層Aにおいて、後述する非反応性紫外線吸収剤を用いる場合、電離放射線硬化性樹脂と該非反応性紫外線吸収剤との相溶性を高め、該紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制する観点から、官能基数として2〜4が特に好ましい。
【0023】
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレートとともに、その粘度を調整するなどの目的で、メチル(メタ)アクリレートなどの単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
次に、重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えば、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、カプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマーなどが好ましく挙げられ、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、カプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーがより好ましい。これらのオリゴマーのうち、多官能性の重合性オリゴマーが好ましく、官能基数としては、優れた耐候性を得る観点から、2〜16が好ましく、2〜8がより好ましく、2〜6がさらに好ましく、特に2〜4が好ましい。
【0025】
ここで、カプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートは、通常カプロラクトン系ポリオールと有機イソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応により得ることができるものである。カプロラクトン系ポリオールとしては、市販されるものを使用することができ、好ましくは2個の水酸基を有し、重量平均分子量が好ましくは500〜3000、より好ましくは750〜2000のものが挙げられる。また、カプロラクトン系以外のポリオール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどのポリオールを1種又は複数種を任意の割合で混合して使用することもできる。
有機ポリイソシアネートとしては、2個のイソシアネート基を有するものが好ましく、黄変を抑制する観点から、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどが好ましく挙げられる。また、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどが好ましく挙げられる。
【0026】
カプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートは、これらのポリカプロラクトン系ポリオールと有機ポリイソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応で合成することができる。合成法としては、ポリカプロラクトン系ポリオールと有機ポリイソシアネートとを反応させて、両末端に−NCO基を含有するポリウレタンプレポリマーを生成させた後に、ヒドロキシ(メタ)アクリレートと反応させる方法が好ましい。反応の条件などは常法に従えばよい。
【0027】
本発明で好ましく用いられるカプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートは、その重量平均分子量(GPC法で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量)が、1000〜10000であることが好ましく、1000〜5000がより好ましい。すなわち、カプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートはオリゴマーであることが好ましい。重量平均分子量が上記範囲内(オリゴマー)であれば、加工性に優れ、コーティング剤組成物が適度なチキソ性が得られるので、表面保護層の形成が容易となる。
【0028】
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテルなどの分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマーなどがある。これらの重合性オリゴマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
電離放射線硬化性樹脂として紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、光重合用開始剤を紫外線硬化性樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定されない。
【0030】
(紫外線吸収剤)
表面保護層Aは、耐候性を向上させる目的で、紫外線吸収剤を含む。紫外線吸収剤としては、上記した無機系、有機系のものが好ましく挙げられ、なかでもトリアジン系、ベンゾトリアゾール系、及びベンゾフェノン系がより好ましい。また、表面保護層Aにおいては、ブリードアウトなどの軽減の観点から、反応性官能基を有する紫外線吸収剤も好ましく使用することができる。ここで、反応性官能基は、電離放射線硬化性樹脂Aと反応性を有する官能基であれば特に制限はなく、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基などが好ましく挙げられる。
本発明において、紫外線吸収剤は、要求される性能により適宜選択すればよい。例えば、より高い耐候性を要求される場合には反応性官能基を有しない非反応性紫外線吸収剤、すなわち上記した無機系、有機系のものを使用すればよく、またブリードアウトによる性能低下の抑制が特に問題になるような場合には、反応性官能基を有する紫外線吸収剤を使用すればよい。
これらの紫外線吸収剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
電離放射線硬化性樹脂組成物Aに含まれる紫外線吸収剤の含有量は、電離放射線硬化性樹脂A100質量部に対して、1〜20質量部が好ましく、2〜15質量部がより好ましい。紫外線吸収剤の含有量が上記範囲内であれば、該吸収剤がブリードアウトすることなく、また十分な紫外線吸収能が得られるので、優れた耐候性及び透明性が得られる。
【0032】
(ヒンダードアミン系光安定剤)
表面保護層Aは、耐候性を向上させる目的で、ヒンダードアミン系光安定剤を含むことが好ましい。本発明で用いられるヒンダードアミン系光安定剤は、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2’−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどが好ましく挙げられる。
【0033】
また、表面保護層Aにおいては、ブリードアウトなどの軽減の観点から、反応性官能基を有するヒンダードアミン系光安定剤を好ましく使用することができる。反応性官能基は、上記と同じである。反応性官能基を有するヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられる。
【0034】
本発明において、ヒンダードアミン系光安定剤は、要求される性能により適宜選択すればよい。例えば、より高い耐候性を要求される場合には反応性官能基を有しない非反応性ヒンダードアミン系光安定剤、すなわち上記した無機系、有機系のものを使用すればよく、またブリードアウトによる性能低下の抑制が特に問題になるような場合には、反応性官能基を有するヒンダードアミン系光安定剤を使用すればよい。
これらのヒンダードアミン系光安定剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
電離放射線硬化性樹脂組成物Aに含まれるヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、電離放射線硬化性樹脂A100質量部に対して、1〜20質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましい。ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が上記範囲内であれば、該光安定剤がブリードアウトすることがなく、十分な光安定性が得られるので、優れた耐候性が得られる。また、コスト的にも優位である。
【0036】
(各種添加剤)
本発明で用いられる電離放射線硬化性樹脂組成物Aにおいては、本発明の耐候性シートの表面保護層Aの所望物性に応じて、本発明の目的が損なわれない範囲で各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤などが挙げられる。
【0037】
≪表面保護層B≫
表面保護層Bは、電離放射線硬化性樹脂B、反応性官能基αを有する紫外線吸収剤及び反応性官能基βを有するヒンダードアミン系光安定剤を含む電離放射線硬化性樹脂組成物Bの硬化物からなる層であり、本発明の耐候性シートにおいて下層からのブリードを抑制し、かつ更なる耐候性と、耐傷性などの表面特性を付与するものである。
【0038】
表面保護層Bの厚さは、10μm以上であることを要し、好ましくは10〜20μmであり、より好ましくは10〜15μmである。表面保護層Bの厚さが上記範囲内であると、優れた耐候性が得られ、かつ優れた耐傷性などの表面特性も得られる。また、コスト的にも優位である。
【0039】
<電離放射線硬化性樹脂組成物B>
電離放射線硬化性樹脂組成物Bは、電離放射線硬化性樹脂B、反応性官能基αを有する紫外線吸収剤及び反応性官能基βを有するヒンダードアミン系光安定剤を含む組成物であり、電離放射線硬化性を有するものである。
【0040】
(電離放射線硬化性樹脂B)
電離放射線硬化性樹脂Bは、上記した電離放射線硬化性樹脂Aと同じものであり、上記した中でも、ウレタン(メタ)アクリレート系、及びカプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーであることが好ましい。また、これらのオリゴマーは、多官能性の重合性オリゴマーが好ましく、官能基数としては、2〜16が好ましく、2〜8がより好ましく、4〜8がさらに好ましい。これらの重合性オリゴマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、表面保護層Aに非反応性紫外線吸収剤を用いる場合、電離放射線硬化性樹脂Bは、電離放射線硬化性樹脂Aよりも高い官能基数を有することがブリードアウトを抑制する観点から好ましい。
電離放射線硬化性樹脂Bとしてこれらのオリゴマーを用いると、後述する反応性官能基を有する紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤との組合せにより、優れた耐候性、耐傷性などの表面特性も得られるので好ましい。また、表面保護層Bは本発明の耐候性シートにおいて最表面に設けられる層であることから、特にブリードアウトによる悪影響が生じやすい。そこで、これらの組合せとすることにより、該紫外線吸収剤と光安定剤が電離放射線の照射によって、それ自体が重合して高分子量化したり、あるいは共存する電離放射線硬化性樹脂と共重合することにより、ブリードアウトを抑制することが可能となる。
【0041】
(反応性官能基αを有する紫外線吸収剤)
本発明の電離放射線硬化性樹脂組成物Bで用いられる紫外線吸収剤は、反応性官能基αを有するものである。本発明において、最表面層となる表面保護層Bに反応性官能基αを有する紫外線吸収剤を含有することにより、特にブリードアウトが軽減され、ブリードアウトによる性能低下を効果的に抑制することが可能となる。
紫外線吸収剤としては、上記した無機系、有機系のものが好ましく挙げられ、なかでもトリアジン系、ベンゾトリアゾール系、及びベンゾフェノン系がより好ましく挙げられる。また、反応性官能基αとしては、上記の反応性官能基、すなわち、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基などが好ましく挙げられる。なお、これらの紫外線吸収剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
電離放射線硬化性樹脂組成物Bに含まれる紫外線吸収剤の含有量は、電離放射線硬化性樹脂B100質量部に対して、1〜20質量部が好ましく、1〜15質量部がより好ましく、1〜10質量部がさらに好ましい。紫外線吸収剤の含有量が上記範囲内であれば、該吸収剤がブリードアウトすることなく、また架橋阻害による表面物性の低下を抑制しつつ十分な紫外線吸収性能が得られるので、優れた表面物性、耐候性及び透明性が得られる。また、コスト的にも優位である。
【0043】
(反応性官能基βを有するヒンダードアミン系光安定剤)
本発明の電離放射線硬化性樹脂組成物Bで用いられるヒンダードアミン系光安定剤は、反応性官能基βを有するものである。本発明において、最表面層となる表面保護層Bに反応性官能基βを有するヒンダードアミン系光安定剤を含有することにより、特にブリードアウトが軽減され、ブリードアウトによる性能低下を効果的に抑制することが可能となる。
反応性官能基βを有するヒンダードアミン系光安定剤としては、上記した反応性官能基を有するヒンダードアミン系光安定剤が好ましく挙げられる。また、反応性官能基βとしては、上記の反応性官能基αとして例示したものが好ましく挙げられ、反応性官能基αとβとは同じでも異なっていてもよい。なお、これらの光安定剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
電離放射線硬化性樹脂組成物Bに含まれる反応性官能基βを有するヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、電離放射線硬化性樹脂B100質量部に対して、1〜20質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましい。ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が上記範囲内であれば、該光安定剤がブリードアウトすることなく、また架橋阻害による表面物性の低下を抑制しつつ十分な光安定性が得られるので、優れた表面物性、耐候性が得られる。また、コスト的にも優位である。
【0045】
(各種添加剤)
本発明で用いられる電離放射線硬化性樹脂組成物Bにおいては、本発明の耐候性シートの表面保護層Bの所望物性に応じて、本発明の目的が損なわれない範囲で各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、電離放射線硬化性樹脂組成物Aの各種添加剤と同じものが好ましく挙げられる。
【0046】
[耐候性シートの製造方法−1]
本発明の耐候性シートの製造方法の第一の態様は、工程(1A):基材シート上に表面保護層A、及び表面保護層Bを順に有し、該表面保護層Aが電離放射線硬化性樹脂A、紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤を含む電離放射線硬化性樹脂組成物Aを塗布する工程、工程(2A):電離放射線硬化性樹脂組成物Aの未硬化樹脂層上に、電離放射線硬化性樹脂B、反応性官能基αを有する紫外線吸収剤及び反応性官能基βを有するヒンダードアミン系光安定剤を含む電離放射線硬化性樹脂組成物Bを塗布する工程、及び工程(3A):電離放射線を照射して、電離放射線硬化性樹脂組成物A及び電離放射線硬化性樹脂組成物Bを硬化させて、各々表面保護層A及び表面保護層Bを形成する工程を有するものである。
【0047】
≪工程(1A)≫
工程(1A)は、基材シート上に表面保護層A、及び表面保護層Bを順に有し、該表面保護層Aが電離放射線硬化性樹脂A、紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤を含む電離放射線硬化性樹脂組成物Aを塗布する工程である。
電離放射線硬化性樹脂組成物Aの塗布は、硬化後の厚さが上記範囲内、すなわち好ましくは1〜20μm、より好ましくは1〜10μmとなるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート、ダイコートなどの公知の方式、好ましくはダイコートにより行う。
【0048】
≪工程(2A)≫
工程(2A)は、電離放射線硬化性樹脂組成物Aの未硬化樹脂層上に、電離放射線硬化性樹脂B、反応性官能基αを有する紫外線吸収剤及び反応性官能基βを有するヒンダードアミン系光安定剤を含む電離放射線硬化性樹脂組成物Bを塗布する工程である。電離放射線硬化性樹脂組成物Bの塗布は、上記した電離放射線硬化性樹脂組成物Aの硬化処理を行わない状態、すなわち未硬化の未硬化樹脂層を形成した状態で、該未硬化樹脂層上に行う。電離放射線硬化性樹脂組成物Bの塗布も、電離放射線硬化性樹脂組成物Aの塗布と同様に、硬化後の厚さが上記範囲内、すなわち10〜20μm、好ましくは10〜15μmとなるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート、ダイコートなどの公知の方式、好ましくはダイコートにより行う。
【0049】
本発明の耐候性シートは、従来のように、電離放射線硬化性樹脂組成物Aを塗布し、乾燥、硬化させた後に、電離放射線硬化性樹脂組成物Bを塗布し、乾燥、硬化させるという逐次的な層形成により製造することもできる。しかし、本発明の製造方法のように、電離放射線硬化性樹脂組成物Bを、電離放射線硬化性樹脂組成物Aの未硬化樹脂層上に塗布することで、該組成物A及びBの界面での適度な混合を生じさせることが可能となり、優れた層間密着性が得られる。
【0050】
≪工程(3A)≫
工程(3A)は、電離放射線を照射して、電離放射線硬化性樹脂組成物A及び電離放射線硬化性樹脂組成物Bを硬化させて、表面保護層A及び表面保護層Bを形成する工程である。すなわち、工程(3A)は、上記の工程(1A)及び(2A)で形成した、電離放射線硬化性樹脂組成物Aの未硬化樹脂層A及び電離放射線硬化性樹脂組成物Bの未硬化樹脂層Bを、電離放射線を照射して、各々表面保護層A及び表面保護層Bを形成する工程である。
【0051】
工程(1A)及び(2A)で形成した、未硬化樹脂層A及びBは、電子線、紫外線などの電離放射線を照射して架橋硬化することで、各々表面保護層A及びBとなる。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
【0052】
照射線量は、電離放射線硬化性樹脂A及びBの架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは50〜200kGy(5〜20Mrad)の範囲で選定される。
電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈などが用いられる。
【0053】
[耐候性シートの製造方法−2]
本発明の耐候性シートの製造方法の第二の態様は、工程(1B):基材シート上に、表面保護層A、及び表面保護層Bを順に有し、該表面保護層Aが電離放射線硬化性樹脂A、紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤を含む電離放射線硬化性樹脂組成物A、及び電離放射線硬化性樹脂B、反応性官能基αを有する紫外線吸収剤及び反応性官能基βを有するヒンダードアミン系光安定剤を含む電離放射線硬化性樹脂組成物Bを同時に塗布する工程、ならびに工程(2B):電離放射線を照射して、電離放射線硬化性樹脂組成物A及び電離放射線硬化性樹脂組成物Bを硬化させて、各々表面保護層A及び表面保護層Bを形成する工程を有するものである。
【0054】
≪工程(1B)≫
本発明の製造方法の第二の態様の工程(1B)は、上記した電離放射線硬化性樹脂組成物A及び電離放射線硬化性樹脂組成物Bを、同時に塗布する工程である。これら組成物A及びBを、同時に塗布することで、優れた層間密着性、作業効率が得られる。
このような同時に塗布する方法としては、スライド塗布法、エクストルージョン塗布法、カーテン塗布法などが好ましく挙げられ、これらの塗布法に用いられる塗布装置としては、スライド型ダイコータ、エクストルージョン型ダイコータ、カーテン型ダイコータが挙げられる。また、樹脂組成物の塗布量は、硬化後の各層の厚さが上記の範囲内となるように設定すればよい。
【0055】
≪工程(2B)≫
本発明の製造方法の第二の態様の工程(2B)は、電離放射線を照射して、電離放射線硬化性樹脂組成物A及びBを硬化させて、各々表面保護層A及び表面保護層Bを形成する工程である。すなわち、工程(2B)は、上記の工程(1B)により形成した電離放射線硬化性樹脂組成物A及びBの未硬化樹脂層に電離放射線を照射することで、これらの未硬化樹脂層を同時に硬化させて、各々表面保護層A及びBを形成する工程である。このように、同時に硬化させることで、優れた層間密着性及び作業効率が得られる。
これらの未硬化樹脂層の形成は、上記の工程(3A)と同じである。
【0056】
このようにして得られた耐候性シートは、優れた耐候性を有し、かつブリードアウトによる性能低下を抑制したシートであり、一般住居の玄関ドアや外装材、公共施設の床材や外壁などの内外装材として、あるいは建造物や屋外に設置される構造物に好適に用いられる。
【実施例】
【0057】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法)
(1)ブリードアウトの評価
実施例及び比較例で得られた耐候性シートを、80℃温水浸漬の条件下で放置した後の、該耐候性シートについて、そのブリードアウトの様子を下記の基準で評価した。
◎ :7日間放置しても、ブリードアウトは確認されなかった
○ :3日間放置しても、ブリードアウトは確認されなかった
× :3日間放置すると、ブリードアウトが確認された
(2)耐候性の評価(外観の評価)
実施例及び比較例で得られた耐候性シートを、スーパーUV試験(超促進耐候性試験)300時間後に、その外観を目視観察し、下記の基準で評価した。
○ :外観変化は確認されなかった
△ :外観変化は若干確認されるものの、実用上の問題はなかった
× :外観変化が確認された
(3)耐スチールウール性(耐傷性)
実施例及び比較例で得られた耐候性シートを、スチールウール(#0000)を用いて、1500g/cm2の荷重をかけて10往復擦った後、該耐候性シートの表面を、目視観察し、下記の基準で評価した。
○ :表面にほとんど変化がなかった
△ :表面に若干の傷付きや艶変化があったものの、実用上問題なかった
× :表面に著しい傷付きがあり、艶変化も顕著であった
(4)密着性
実施例及び比較例で得られた耐候性シートをクロスカットし、その表面にセロテープ(登録商標)ニチバン製を貼付けて急激に剥離する操作を5回行った。このときの、基材上に設けた各層が剥離するかどうかを目視観察し、下記の基準で評価した。
◎ :層の剥離は全く確認されなかった
○ :層の剥離はほとんど確認されなかった
△ :層の剥離は若干確認されたが、実用上問題なかった
× :層の著しい剥離が確認された
【0058】
実施例1
基材フィルムとして、透明PET(厚さ:100μm)からなる樹脂フィルムを準備した。該基材フィルムに下記の電離放射線硬化性樹脂組成物Aをダイコート法で5g/m2の塗布量で塗布して未硬化樹脂層Aを形成し、さらに下記の電離放射線硬化性樹脂組成物Bをダイコート法で12g/m2の塗布量で塗布して未硬化樹脂層Bを形成した。次いで、165keV及び15Mrad(150kGy)の条件で電子線を照射して上記未硬化樹脂層A及びBを架橋硬化させることにより、表面保護層A及びBを形成し、耐候性シートを得た。得られた表面保護層A及びBの厚さは、各々5μm及び12μmであった。
得られた耐候性シートについて、上記の評価を行った。その評価結果を第1表に示す。
【0059】
電離放射線硬化性樹脂組成物Aの組成
カプロラクトン系ウレタンアクリレートオリゴマー(3官能,重量平均分子量:1200):100質量部
紫外線吸収剤(非反応性UVA1,「チヌビン479(商品名)」,BASFジャパン株式会社製,ヒドロキシフェニルトリアジン系):10質量部
ヒンダードアミン系光安定剤(非反応性HALS,「チヌビン123(商品名)」,BASFジャパン株式会社製,ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート):3質量部
【0060】
電離放射線硬化性樹脂組成物Bの組成
カプロラクトン系ウレタンアクリレートオリゴマー(3官能,重量平均分子量:1200):100質量部
反応性官能基を有する紫外線吸収剤(反応性UVA,「RUVA−93(商品名)」,2−[2'−ヒドロキシ−5'−(メタクリロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール_,大塚化学株式会社製):3質量部
反応性官能基を有する光安定剤(反応性HALS,商品名「サノールLS−3410」,1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルメタクリレート,BASFジャパン株式会社製):3質量部
【0061】
実施例2〜5、及び比較例1〜4
実施例1において、表面保護層A及びBの形成を第1表に示される組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして耐候性シートを得た。
【0062】
実施例6
基材フィルムとして、透明PETフィルム(厚さ:100μm)からなる樹脂フィルムを準備した。この表面にコロナ放電処理を施した後、上記の電離放射線硬化性樹脂組成物A及び電離放射線硬化性組成物Bをエクストルージョン型ダイコータのスリットより同時に塗出して積層し、165keV及び15Mrad(150kGy)の条件で電子線を照射して、該電離放射線硬化性樹脂組成物Aおよび該電離放射線硬化性樹脂組成物Bを一括で硬化させることで表面保護層Aおよび表面保護層Bを形成し、耐候性シートを得た。得られた表面保護層A及びBの厚さは、各々5μm及び12μmであった。
得られた耐候性シートについて、上記の評価を行った。その評価結果を第1表に示す。
【0063】
比較例5及び6
実施例1及び2において、電離放射線硬化性樹脂組成物Bを塗布しなかった以外は実施例1及び2と同様にして、各々比較例5及び6の耐候性シートを得た。
【0064】
【表1】

(注)表中の組成物A及びBに関する単位の記載がない数値は、全て質量部である。
*1,カプロラクトン系ウレタンアクリレートオリゴマー(3官能,重量平均分子量:1200)
*2,ウレタンアクリレートオリゴマー(6官能,重量平均分子量:2000〜5000)
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明耐候性シートは、優れた耐候性を有し、かつブリードアウトによる性能低下を抑制したシートであることから、一般住居の玄関ドアや外装材、公共施設の床材や外壁などの内外装材として、あるいは建造物や屋外に設置される構造物に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0066】
1.耐候性シート
2.基材シート
3.表面保護層A
4.表面保護層B

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シート、表面保護層A、及び表面保護層Bを順に有し、該表面保護層Aが電離放射線硬化性樹脂A、紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤を含む電離放射線硬化性樹脂組成物Aの硬化物からなり、該表面保護層Bが電離放射線硬化性樹脂B、反応性官能基αを有する紫外線吸収剤及び反応性官能基βを有するヒンダードアミン系光安定剤を含む電離放射線硬化性樹脂組成物Bの硬化物からなり、該表面保護層Bの厚さが10μm以上である耐候性シート。
【請求項2】
電離放射線硬化性樹脂A及びBが、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及びカプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーから選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載の耐候性シート。
【請求項3】
電離放射線硬化性樹脂Aの官能基数が2〜4であり、かつ電離放射線硬化性樹脂Bの官能基数が4〜8である請求項1又は2に記載の耐候性シート。
【請求項4】
電離放射線硬化性樹脂B100質量部に対する紫外線吸収剤の含有量が、1〜20質量部である請求項1〜3のいずれかに記載の耐候性シート。
【請求項5】
電離放射線硬化性樹脂A100質量部に対する紫外線吸収剤の含有量が、1〜20質量部である請求項1〜4のいずれかに記載の耐候性シート。
【請求項6】
下記の工程を順に有する耐候性シートの製造方法。
工程(1A):基材シート上に表面保護層A、及び表面保護層Bを順に有し、該表面保護層Aが電離放射線硬化性樹脂A、紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤を含む電離放射線硬化性樹脂組成物Aを塗布する工程
工程(2A):電離放射線硬化性樹脂組成物Aの未硬化樹脂層上に、電離放射線硬化性樹脂B、反応性官能基αを有する紫外線吸収剤及び反応性官能基βを有するヒンダードアミン系光安定剤を含む電離放射線硬化性樹脂組成物Bを塗布する工程
工程(3A):電離放射線を照射して、電離放射線硬化性樹脂組成物A及び電離放射線硬化性樹脂組成物Bを硬化させて、各々表面保護層A及び表面保護層Bを形成する工程
【請求項7】
下記の工程を順に有する耐候性シートの製造方法。
工程(1B):基材シート上に、表面保護層A、及び表面保護層Bを順に有し、該表面保護層Aが電離放射線硬化性樹脂A、紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤を含む電離放射線硬化性樹脂組成物A、及び電離放射線硬化性樹脂B、反応性官能基αを有する紫外線吸収剤及び反応性官能基βを有するヒンダードアミン系光安定剤を含む電離放射線硬化性樹脂組成物Bを同時に塗布する工程
工程(2B):電離放射線を照射して、電離放射線硬化性樹脂組成物A及び電離放射線硬化性樹脂組成物Bを硬化させて、各々表面保護層A及び表面保護層Bを形成する工程
【請求項8】
電離放射線硬化性樹脂A及びBが、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及びカプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーから選ばれる少なくとも一種である請求項6又は7に記載の耐候性シートの製造方法。
【請求項9】
電離放射線硬化性樹脂Aの官能基数が2〜4であり、かつ電離放射線硬化性樹脂Bの官能基数が4〜8である請求項6〜8のいずれかに記載の耐候性シートの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−171193(P2012−171193A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35127(P2011−35127)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】