説明

耐候性鋼の防食法

【課題】防錆性及び耐候性を長期間保持し、任意の着色を可能にした、省工程の耐候性鋼の防食方法を提供する。
【解決手段】耐候性鋼表面に、(a)湿気硬化型樹脂、(b)防錆顔料、(c)腐食イオン固定化剤、及び(d)カップリング剤を含有する付着性付与塗膜(A)を乾燥塗布量0.03〜2.00Kg/m2で形成し、次いで、促進耐候性試験サンシャインウェザーメーター照射300時間後の光沢保持率が85%以上の塗膜を形成する着色上塗塗膜(B)を、乾燥膜厚50〜90μmで形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候性鋼の新規な塗装方法に関し、更に詳しくは、耐候性鋼の流れ錆(赤錆)を防止し、環境に調和した様々な着色の付与を可能にし、更に省工程で長期耐候性及び防錆性を付与する耐候性鋼の防食方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に鋼構造物は、そのコストが安いということもあって炭素鋼を使用する場合が多い。
しかしながら、炭素鋼は、空気中の水分(降雨、湿気等)や、酸素が鋼材表面に接触して、短期間で赤錆が発生する。この赤錆発生を防止する方法としては、塗料を塗装する方法が一般的である。この方法は、塗装の塗替を極力減らすため、耐久性の良好な塗装を施すことが一般的である。例えば、無機ジンクリッチペイント塗装→エポキシ樹脂塗料ミストコート→エポキシ樹脂塗料下塗塗装(2回)→エポキシ樹脂塗料中塗塗装→ポリウレタン樹脂塗料上塗塗装は、耐久性15年以上有する代表的な鋼材の塗装システムである。
【0003】
この塗装システムは、環境と調和した色彩を付与した美観及び長期の防錆性が維持できる長所があるが、一方では、この塗装システムは膜厚が厚く、更に6回塗りが必要なので、完成までに時間とコストがかかる。そこで、最近では鋼構造物に耐食性の良い耐候性鋼を使用する場合が増加してきている。
【0004】
耐候性鋼は、一般的にP、Cu、Cr、Ni等の元素を添加した低合金鋼である。この鋼材は、屋外において十数年で腐食に対して保護作用のある錆(以下、「保護錆」という。)を形成し、以後防錆処理作業を不要とする、いわゆるメンテナンスフリーになるといった特性を有している。
この腐食に対する保護作用は、いわゆる錆をもって錆を制すものであって、この保護錆は、結晶水を多量に含む無定型オキシ水酸化鉄が主体であり、これが緻密で密着性の良い保護錆の形成に寄与するものと考えられている。既設鋼構造物の塗替え時期になると、通常鋼材表面には多くの赤錆が発生しており、そのような表面に塗料を塗り替え塗装しても塗膜にふくれや剥離が生じ、鋼材を長期間錆から保護できない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、耐候性鋼の鋼材を無処理のままで使用すると、保護錆が形成されるまでの期間中に、赤錆や黄錆等の浮き錆や、流れ錆を生じてしまい、外見的に好ましくないばかりでなく、周囲環境の汚染原因にもなると云う問題点を有している。
また、従来例において、耐候性鋼の表面に保護錆を得るための塗装による表面処理法があるが、それでも保護錆が形成されるまでに数年間の長い期間を要し、この間に塗膜自体の白化、ふくれ、剥離といった問題点を引き起こしている。また、発生した錆を目立たなくするため色調はさび色に統一されており、炭素鋼への塗装のように環境と調和した様々な色彩を付与する配慮が全くなされていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、耐候性鋼表面に、防錆性を長期維持し、更に、耐候性の良好な樹脂と着色剤を含む着色上塗塗料を塗装することにより、耐候性を長期間維持し、更に任意の着色を可能にした、省工程の耐候性鋼の防食方法を完成したものである。
即ち、本発明は、耐候性鋼表面に、(a)湿気硬化型樹脂、(b)防錆顔料、(c)腐食イオン固定化剤、及び(d)カップリング剤を含有する付着性付与塗膜(A)を乾燥塗布量0.03〜2.00Kg/m2の範囲で形成し、次いで、促進耐候性試験サンシャインウェザーメーター照射300時間後の光沢保持率が85%以上の塗膜を形成する着色上塗塗膜(B)を、乾燥膜厚50〜90μmで形成することを特徴とする耐候性鋼の防食法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に用いる耐候性鋼は、SPA材、SMA材と言われ、JISに規定されているものであり、錆等が付着している場合は、前処理としてブラストや酸洗を行ったものが好ましい。
次に、本発明の付着性付与塗膜について説明する。
(a)成分について
(a)成分は、鋼材表面の水分や、大気中の水分により反応硬化し、鋼材との付着性を強化させるとともに、後述する防錆顔料や、腐食性イオン固定化剤、カップリング剤等を固着化させるための結合剤である。このような機能を有するものであれば、従来から塗料用に使用されている各種湿気硬化型樹脂が使用可能であり、具体的には、例えば、ウレタン樹脂(ポリイソシアネートポリマー)系や、エポキシ樹脂−ケチミン硬化系、アルキルシリケート樹脂系、アルキルアルコキシシラン樹脂系等が代表的なものとして挙げられる。特に耐水性に優れた湿気硬化型ウレタン樹脂が好ましい。
【0008】
湿気硬化型ウレタン樹脂としては、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られる遊離イソシアネート基を有するウレタンポリマーを好適に用いることが出来る。ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール等を用いることが出来る。ポリエーテルポリオールとしては、エチレングリコールやプロピレングリコール、ブタンジオールジエチレングリコール、グリセリン、ヘキサンジオールヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の水酸基を2個以上、好ましくは、2〜6個有する炭素数2〜8個のポリオールに、エチレンオキサイドや、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の、好ましくは、炭素数2〜8のアルキレンオキサイドをアルカリ触媒等の存在下で付加重合して得た分子中に2〜4個の水酸基を持つポリアルキレンポリオールなどを用いることが適当である。
【0009】
ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、ブタジエンや、イソプレンなどのジエン系化合物に、例えば、エチレンオキサイドや、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等のアルキレンオキサイドを付加重合して得た分子量中に、2〜4個の水酸基を持つポリジエンポリオールを用いることが適当である。
ポリイソシアネートとしては、1分子中に2個以上、好ましくは、2〜3個のイソシアネート基を有する化合物が適当である。具体的には、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−フェニルメタンジフェニルジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化トルイレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネートイソホロンジイソシアネート等のイソシアネート化合物、ビュレットポリイソシアネート化合物、イソシアネート環を有するポリイソシアネート化合物、アダクトポリイソシアネート化合物を挙げることが出来る。これらのポリイソシアネートは、単独で、又は2種以上の混合物として使用できる。
【0010】
湿気硬化型ウレタン樹脂の製造方法は、特に限定されず、従来公知の各種の方法を利用できる。具体的には、例えば、ポリオールと過剰のポリイソシアネートを重合させる事により製造される。過剰のポリイソシアネートは、ポリオールの水酸基当量よりもイソシアネート当量が過剰であることを意味し、その当量関係をNCO/OHで表すことが出来る。特に、液状で低粘度の湿気硬化型ウレタン樹脂を形成するためには、ポリオールの種類や、官能基数、分子量等を考慮するとともに、NCO/OHを、例えば、2〜10、好ましくは、5〜10に調整することが好ましい。重合温度、重合時間も特に制限されないが、通常水分の影響を避けるために、窒素気流下で、ポリオールとイソシアネートを混合した後、例えば、50〜100℃にて3〜8時間反応させるのが適当である。
反応前、反応途中及び反応終了後有機金属塩系ウレタン重合触媒や安定剤、脱水剤、重合調整剤等を適量随時添加しても良い。
【0011】
(b)成分について
(b)成分は、鋼材の腐食を防止するための防錆顔料である。防錆顔料としては、従来から防食塗料に利用されているものが特に制限なく使用可能であるが、代表的には、例えば、リン酸アルミニウム、縮合リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、亜リン酸アルミニウム、亜リン酸亜鉛、亜リン酸カルシウム等の(亜)リン酸塩、モリブデン酸亜鉛やモリブデン酸カルシウム、モリブデン酸マンガン等のモリブデン酸塩、その他ステアリン酸やタンニン酸、クエン酸、イタコン酸、硼酸、タングステン酸等の各種酸の金属塩やポリアニリン等が挙げられる。
【0012】
(c)成分について
(c)成分は、塗膜中に透過したCl-やSO42-等の腐食性イオン物質を捕集するとともに化学反応し、水不溶性の複塩を形成し、腐食性イオンを固定化し、不活性化するための腐食性イオン固定化剤である。このような固定化剤の例としては、代表的にはハイドロカルマイトや、ハイドロタルサイト等が挙げられる。
ハイドロカルマイトは、式、
3CaO・Al2O3・CaX2/m・nH2O
(式中、Xは、1価又は2価のアニオンであり、mは、アニオンの価数を表し、nは、20以下を示す。)で示される層状構造を持つ含水結晶性粉末である。アニオン(X)としては、NO3-や、NO2-、OH-、CH3COO-、CO32-等が代表的なものとして挙げられる。これらアニオンは、塩素イオンや、硫酸イオン等と接触すると、アニオン交換し、XであるNO3-やNO2-等を遊離するとともに、腐食性イオン物質をハイドロカルマイト中に固定化し、不活性化する。
【0013】
また、遊離した上記アニオンは、耐候性鋼材表面に不働態皮膜を形成し、防食性を更に向上させる効果を有する。
ハイドロタルサイトは、式、
Mg4.5Al2(OH)13CO3・nH2O
(式中、nは、4以下、好ましくは、3.5を示す。)
で示される層状構造を持つ含水結晶性粉末である。これらアニオンは、塩素イオンや、硫酸イオン等と接触すると、アニオン交換し、XであるNO3-やNO2-等を遊離するとともに、腐食性イオン物質をハイドロタルサイト中に固定化し、不活性化する。
【0014】
(d)カップリング剤
(d)成分は、鋼材との付着性を向上させ、また、その上に塗装する着色上塗塗料との密着性を向上させるためのものである。カップリング剤としては、具体的には、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、等のシランカップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、テトラオクチルビス(ジドデシル)ホスファイトチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート等のチタンカップリング剤、その他アルミニウム系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤などが代表的なものとして挙げられる。
【0015】
本発明の付着性付与塗膜は、以上説明した(a)成分〜(d)成分を必須成分として含む付着性付与組成物から形成される。付着性付与組成物は、必要に応じて、活性水素を含まない炭化水素系や、エステル系、ケトン系等の各種塗料用有機溶剤、消泡剤や分散剤、脱水剤等の各種添加剤を配合されたものから構成される。
付着性付与組成物において、各成分の配合割合は、(a)成分である湿気硬化型樹脂100質量部に対して、(b)成分である防錆顔料は、例えば、1〜95質量部、好ましくは、10〜50質量部、(c)成分である腐食性イオン固定化剤は、例えば、1〜95質量部、好ましくは、10〜50質量部、(d)成分であるカップリング剤は、例えば、0.1〜10質量部、好ましくは、1〜5質量部であり、(b)成分と(c)成分の合計が、例えば、5〜100質量部、好ましくは、15〜70質量部であることが適当である。
【0016】
使用される有機溶剤の量は、付着性付与組成物の固形分が、例えば、20〜80質量%、好ましくは、30〜70質量%になる程度が適当である。また、各種添加剤は、付着性付与組成物の固形分中、例えば、0.1〜10質量%、好ましくは、1〜5質量%配合するのが適当である。
なお、(b)成分が、前記範囲より少ないと、十分な防錆力を発揮できず、逆に多すぎると、相対的に(a)成分の量が少なくなり、塗膜の凝集力が不十分となりやすい。また、(c)成分の量が、前記範囲より少ないと、腐食性イオン物質の捕集、固定化が不十分となり、逆に多すぎると、相対的に(a)成分の量が少なくなり、塗膜の強化が不十分となりやすい。また、(d)成分の量が、前記範囲より少ないと、鋼材表面との付着性やその上に塗装する着色上塗塗料との密着性が不十分となり、逆に多すぎても前記効果の向上は認められず、経済的にも不利である。
【0017】
本発明においては、付着性付与組成物は、例えば、刷毛や、ローラー、スプレー等の手段で、耐候性鋼の表面に、塗布量(固形分換算)0.03〜2.00Kg/m2、好ましくは、0.05〜1.50Kg/m2程度塗布し、乾燥させる。
乾燥は、自然乾燥でも、強制的な乾燥でもよい。耐候性鋼の表面は、予め、ブラスト処理してもよい。付着性付与塗膜を形成した耐候性鋼表面に着色上塗塗料を塗装すると、長期間フクレや剥離しにくい塗膜が得られ、そのため耐候性鋼は、長期防食性に優れたものとなる。
【0018】
次に、着色上塗塗料について説明する。
着色上塗塗料は、樹脂、着色剤、必要に応じて配合される防錆顔料、シランカップリング剤、溶媒、分散剤、紫外線吸収剤、抗菌剤などの各種添加剤を含有する。着色上塗塗料の形態は溶剤系や水系、無溶剤を問わない。
着色上塗塗料に配合される結合剤としての樹脂は、耐候性の良好な樹脂を使用することが必要である。即ち、配合される樹脂は、促進耐候性試験、サンシャインウェザーメーター照射300時間後の光沢保持率が、85%以上、好ましくは、90%以上を有する塗膜を形成する樹脂である。光沢保持率が85%未満であると、着色上塗塗膜に、白化や、フクレ、剥離等が生じるので好ましくない。
【0019】
このような光沢保持率を有する耐候性の良い樹脂としては、有機樹脂や、有機無機複合樹脂、無機樹脂等が好適に挙げられる。
有機樹脂の具体例としては、例えば、塩化ゴム樹脂や、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、及びこれら樹脂に硬化剤を併用したものであり、更に好ましくは、湿気硬化型ウレタン樹脂、フッ素樹脂である。
【0020】
有機無機複合樹脂の例としては、例えば、加水分解性シリル基を有する有機樹脂と、一般式、
1nSi(OR24-n
〔式中、R1は、炭素数1〜8の有機基であり、R2は、炭素数1〜5のアルキル基であり、nは、1又は2である。〕で示されるオルガノシラン又はその部分加水分解物とを含有するものが挙げられる。
有機無機複合樹脂に使用される、加水分解性シリル基を有する有機樹脂の例としては、例えば、フッ素樹脂や、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等が好適に挙げられる。
【0021】
フッ素樹脂や、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等に加水分解性シリル基を導入するオルガノシランとしては、一般式、
1nSi(OR24-n
〔式中、R1は、炭素数1〜8の有機基であり、R2は、炭素数1〜5のアルキル基であり、nは1又は2である。〕
で示されるオルガノシランが好適に挙げることができる。
上記式において、R1としての有機基としては、例えば、アルキル基や、シクロアルキル基、アリール基、ビニル基等が挙げられる。
【0022】
ここで、アルキル基は、直鎖でも分岐したものでもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基や、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基が挙げられる。好ましいアルキル基は、炭素数が、1〜4個のものである。
シクロアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル基や、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が好適に挙げられる。
【0023】
アリール基としては、例えば、フェニル基等が挙げられる。
上記各官能基は、任意に置換基を有してもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、塩素原子や、臭素原子、フッ素原子等)や、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、脂環式基等が挙げられる。
2としてのアルキル基は、直鎖でも分岐したものでもよい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基や、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基等が挙げられ、好ましいアルキル基は、炭素数が、1〜2個のものである。
【0024】
上記式で示されるオルガノシランの具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシランや、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、
【0025】
γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジメチルジプロポキシシランなどが挙げられる。好ましくは、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシランである。
【0026】
本発明の着色上塗塗料に使用される有機無機複合樹脂においては、加水分解性シリル基を有するフッ素樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂が使用され、塗膜形成過程において反応するオルガノシランとしては、式、
1nSi(OR24-n
〔式中、R1は、炭素数1〜8の有機基であり、R2は、炭素数1〜5のアルキル基であり、nは1又は2である。〕
で示されるオルガノシラン/又はその部分加水分解縮合物を好適に挙げることができる。
オルガノシランは、単独で使用してもよく、2種以上の混合物であってもよい。オルガノシランの部分加水分解縮合物は、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mn)が、例えば、300〜5000、好ましくは、500〜4200のものが適当である。このような部分加水分解縮合物を使用することにより、貯蔵安定性がよく、密着性のよい塗膜が得られる。
【0027】
このような部分加水分解縮合物の具体例としては、市販品として東レ・ダウコーニング社製のSR2402や、DC3037、DC3074;信越化学工業社製のKR−211や、KR−212、KR−213、KR−214、KR−216、KR−218;東芝シリコーン社製のTSR−145や、TSR−160、TSR−165、YR−3187等が挙げられる。
有機無機複合樹脂における加水分解縮合反応は、上記成分の混合物を、水場合によれば、触媒の存在下で、40〜80℃、好ましくは、45〜65℃で、例えば、2〜10時間撹拌しながら反応させる方法が適当であるが、この方法に限定されるものではない。
【0028】
上記加水分解縮合反応に使用される反応触媒としては、例えば、トリメトキシボラン、トリエトキシボラン等のトリアルコキシボラン;トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシジ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等のジルコニウムキレート化合物、ジイソプロポキシビス(アセチルアセテート)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン等のチタンキレート化合物、モノアセチルアセテートビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム等のアルミニウムキレート化合物などの有機金属化合物が挙げられる。
【0029】
なお、加水分解縮合反応物は、その反応で生成するアルコール分により、又はそのアルコール分と必要に応じて添加した後記する有機溶媒とにより溶液状態のメルカプト基を持つポリオルガノシロキサン樹脂溶液を合成することができる。
本発明の着色上塗塗料に使用される無機樹脂としては、一般式、
1nSi(OR24-n
〔式中、R1は、炭素数1〜8の有機基であり、R2は、炭素数1〜5のアルキル基であり、nは、1又は2である。〕で示されるアルキルシリケートの加水分解縮合物を好適に挙げることができる。
【0030】
前記一般式中のR1としての有機基としては、例えば、アルキル基や、シクロアルキル基、アリール基、ビニル基等が挙げられる。
ここで、アルキル基は、直鎖でも分岐したものでもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基や、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基が挙げられる。好ましいアルキル基は、炭素数が、1〜4個のものである。
【0031】
シクロアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル基や、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が好適に挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル基等が挙げられる。
上記各官能基は、任意に置換基を有してもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、塩素原子や、臭素原子、フッ素原子等)や、アミノ基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、グリシジル基、脂環式基等が挙げられる。
【0032】
一般式中のR2は、炭素数1〜5のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、i−ブチル基、n−ペンチル基などが挙げられる。
また、nは0又は1である。
このようなアルキルシリケートの具体例としては、例えば、テトラメチルシリケート、テトラエチルシリケート、テトラ−n−プロピルシリケート、テトラ−i−プロピルシリケート、テトラ−n−ブチルシリケートなどのnが0の場合のアルキルシリケート;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、
【0033】
γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシランなどのnが1の場合のアルキルシリケート等が挙げられる。また、これらアルキルシリケートの部分加水分解縮合物は、塗装作業性等の観点から縮合度、例えば、30以下、好ましくは、10以下のものが好ましい。
【0034】
なお、オルガノシランの加水分解を促進させ、シロキサン結合で硬化させるのに使用する硬化触媒の具体例として、例えば、ジブチルスズジラウレートや、ジブチルスズジマレエート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジマレエート、ジオクチルスズマレエート、オクチル酸スズなどの有機スズ化合物;リン酸、モノメチルホスフェート、モノエチルホスフェート、モノブチルホスフェート、モノオクチルホスフェート、モノデシルホスフェート、ジメチルホスフェート、ジエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジデシルホスフェートなどのリン酸又はリン酸エステル;ジイソプロポキシビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタニウムなどの有機チタネート化合物;トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウムなどの有機アルミニウム化合物;テトラブチルジルコネート、テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、テトライソブチルジルコネート、ブトキシトリス(アセチルアセトナート)ジルコニウムなどの有機ジルコニウム化合物等が代表的なものとして挙げられる。
【0035】
促進耐候性試験サンシャインウェザーメーターは、JIS K5400で規定されるサンシャインカーボンアーク灯式の、実際の屋外暴露と相関のある促進耐候性試験機であり、光沢保持率とは、JIS K5400で規定される60度鏡面光沢度から下記の式で計算された、光沢の残存の程度をいう。
光沢保持率=(サンシャインウェザーメーター照射300時間後の光沢)×100/初期光沢 (%)
また、着色上塗塗料に配合される防錆顔料としては、無公害防錆顔料が好適に使用される。このような無公害防錆顔料としては、例えば、リン酸アルミニウムや、トリポリリン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、亜リン酸カリウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛カルシウム、リン酸亜鉛アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、リンモリブデン酸亜鉛、リンモリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウム、ハイドロカルマイト等の防錆顔料が挙げられる。防錆顔料は、単独で使用してもよく、又は、二種以上の混合物として使用することができる。但し、クロム系、鉛系は、毒性の観点から好ましくない。
【0036】
着色上塗塗料に配合される着色顔料としては、具体的には、二酸化チタンや、酸化亜鉛等の白色顔料、カーボンブラック、黒鉛等の黒色顔料、モリブデートオレンジ、パーマネントカーミン、キナクリドンレッド等の赤色顔料、キノフタレンイエロー、パーマネントイエロー等の黄色顔料、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー等の緑、青顔料等の、通常塗料用に使用されている各色の顔料が代表的なものとして挙げられる。更に、体質顔料も併用してもよい。着色顔料は、その種類によっても異なるが、樹脂100質量部に対して、例えば、0.1〜70質量部、好ましくは、0.8〜50質量部添加するのが適当である。
【0037】
また、着色上塗塗料に配合されるシランカップリング剤としては、例えば、γ−クロロプロピルトリメトキシシランや、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン等が代表的なものとして挙げられる。
【0038】
シランカップリング剤は、着色上塗塗料塗膜と、付着性付与塗膜との密着性を向上させるため配合するものであり、その配合量は、樹脂100質量部に対して、例えば、0〜20質量部、好ましくは、1〜5質量部添加するのが望ましい。
なお、配合量が20質量部越えると、塗料安定性が低下する傾向にある。
着色上塗塗料は、乾燥膜厚50〜90μm、好ましくは、60〜80μmとなるように塗装することが適当である。50μm未満であると、隠蔽性や耐候性が不充分となる。一方、90μm越えると、発泡や硬化不良が生じやすくなり、また垂直面に塗装した場合、塗料がたれる等の不具合が生じる。
着色上塗塗料は、例えば、ハケや、スプレー、ローラー等の手段で、付着性付与塗膜の上に、乾燥膜厚50〜90μm、好ましくは、55〜80μmとなるように塗装し、自然乾燥もしくは100℃以下の温度で強制乾燥させる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明について、実施例及び比較例により、更に詳細に説明する。
なお、実施例中「部」、「%」は、質量基準で示す。
【0040】
付着性付与組成物の調製
以下の表1に示す成分を混合分散し、付着性付与組成物を調製し、密閉容器に貯蔵した。
【0041】
【表1】

【0042】
注1)芳香族ポリイソシアネートプレポリマー;
「スミジュールE21-1」(住友バイエルウレタン社製商品名)
注2)リン酸アルミニウム系防錆顔料;
「Kホワイト#94」(テイカ社製商品名)
注3)実施例1〜3、比較例3ではハイドロタルサイト;「DHT−4A」(協和化学社製商品名)
実施例4〜6では、亜硝酸型ハイドロカルマイト;「ソルカット」(日本化学工業社製商品名)
注4)「KBM403」(信越シリコン社製商品名)(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
注5)「アディティブTI」(住友バイエルウレタン社製商品名)
注6)「BYK354」(BYKケミー社製商品名)
【0043】
(ロ)有機無機複合樹脂の合成
合成例1
還流冷却器及び撹拌器を備えた反応器に、フッ素樹脂(ダイキン工業社製商品名ゼッフルGK550、固形分60%)190gを仕込み、撹拌しながらγ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン42gとジブチルスズジラウレート0.05gとを加え、40℃で4時間撹拌し、固形分67%の加水分解性シリル基を有するフッ素樹脂(v)を合成した。
【0044】
合成例2
還流冷却器及び撹拌器を備えた反応器に、キシレン55部、及びイソブタノール40部を加え、混合した後、撹拌しながら85℃に加熱した。次にイソブチルメタクリレート50部、2−エチルヘキシルメタクリレート35部、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン15部及びアゾビスイソバレロニトリル1.5部の混合溶液を85℃で3時間かけて滴下し、その後90℃に昇温し、2時間維持して反応を終了させた。固形分50%の加水分解性シリル基を有するアクリル樹脂(vi)を合成した。
【0045】
(ハ)無機樹脂の合成例
合成例3
還流冷却器及び撹拌器を備えた反応器に、下記シリコーン中間体を添加し、60℃で3時間撹拌してアルコキシシリケート加水分解物(vii)(ポリスチレン換算質量平均分子量(Mn)1500)を得た。
信越シリコン社製 KBM13 45.0部
信越シリコン社製 KBM103 25.0部
東芝ダウコーニング社製 SH6018 25.0部
【0046】
合成例4
還流冷却器及び撹拌器を備えた反応器に、下記シリコーン中間体を添加し、60℃で3時間撹拌してアルコキシシリケート加水分解物(viii)(Mn1800)を得た。
信越シリコン社製 KBM14 13.5部
信越シリコン社製 KBM103 11.5部
東芝ダウコーニング社製SR2402 75.0部
【0047】
実施例1
平均表面粗さ30μmのアルミナブラスト処理をした3×100×300(mm)のJIS G3141に規定された耐候性鋼(SMA400)表面に、表1に示す付着性付与組成物(i)を、乾燥塗布量0.1Kg/m2となるよう塗装し、乾燥して、付着性付与塗膜を形成し、その上に、下記フッ素樹脂上塗塗料を、乾燥膜厚が60μmになるよう一回塗装し、乾燥した後、裏面及び側面をエポキシ樹脂塗料でシールし、7日間自然乾燥させた。その塗装鋼の耐候性及び防食性を評価した結果を以下の表2に示す。
【0048】
〔主剤成分〕
フッ素樹脂溶液注7) 154.0部
トリポリリン酸アルミニウム 18.0部
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 6.4部
二酸化チタン 55.4部
キシレン 61.6部
注7)樹脂の水酸基価45mgKOH/g、数平均分子量7000、固形分65%
【0049】
〔硬化剤成分〕
ヘキサメチレンジイソシアネート 17.6部
酢酸ブチル 53.6部
【0050】
実施例2
平均表面粗さ30μmのアルミナブラスト処理をした3×100×300(mm)のJIS G3141に規定された耐候性鋼(SMA400)表面に、表1に示す付着性付与組成物(i)を、乾燥塗布量0.1Kg/m2となるよう塗装し、乾燥して、付着性付与塗膜を形成し、その上に、下記ウレタン樹脂上塗塗料を、乾燥膜厚が60μmになるよう一回塗装し、乾燥した後、裏面及び側面をエポキシ樹脂塗料でシールし、7日間自然乾燥させた。その塗装鋼の耐候性及び防食性を評価した結果を表2に示す。
【0051】
〔主剤成分〕
アクリル樹脂溶液注8) 154.0部
モリブデン酸亜鉛 9.9部
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 4.9部
キナクリドンレッド 30.8部
キシレン 43.1部
注8)樹脂の水酸基価80mgKOH/g、数平均分子量12000、固形分65%
【0052】
〔硬化剤成分〕
ヘキサメチレンジイソシアネート 27.7部
酢酸ブチル 75.8部
【0053】
実施例3
平均表面粗さ30μmのアルミナブラスト処理をした3×100×300(mm)のJIS G3141に規定された耐候性鋼(SMA400)表面に、表1に示す付着性付与組成物(ii)を、乾燥塗布量0.1Kg/m2となるよう塗装し、乾燥して、付着性付与塗膜を形成し、その上に、合成例1で作製した加水分解性シリル基を有するフッ素樹脂(v)及び合成例3で作製したアルコキシシリケート加水分解物(vii)を含有しかつ下記組成を有する着色上塗塗料を、乾燥膜厚が60μmになるよう一回塗装し、乾燥した後、裏面及び側面をエポキシ樹脂塗料でシールし、7日間自然乾燥させた。その塗装鋼の耐候性及び防食性を評価した結果を以下の表2に示す。
【0054】
加水分解性シリル基を有するフッ素樹脂(v) 130.0部
アルコキシシリケート加水分解物(vii) 40.0部
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 2.5部
トリポリリン酸アルミニウム 18.0部
キナクリドンレッド 32.3部
【0055】
実施例4
平均表面粗さ30μmのアルミナブラスト処理をした3×100×300(mm)のJIS G3141に規定された耐候性鋼(SMA400)表面に、表1に示す付着性付与組成物(ii)を、乾燥塗布量0.1Kg/m2となるよう塗装し、乾燥して、付着性付与塗膜を形成し、その上に、合成例2で作製した加水分解性シリル基を有するアクリル樹脂(vi)及び合成例3で作製したアルコキシシリケート加水分解物(vii)を含有しかつ下記組成を有する着色上塗塗料を、乾燥膜厚が60μmになるよう一回塗装し、乾燥した後、裏面及び側面をエポキシ樹脂塗料でシールし、7日間自然乾燥させた。その塗装鋼の耐候性及び防食性を評価した結果を以下の表2に示す。
【0056】
加水分解性シリル基を有するアクリル樹脂(vi) 125.0部
アルコキシシリケート加水分解物(vii) 30.0部
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 1.8部
シアナミド亜鉛 21.5部
キナクリドンレッド 32.3部
【0057】
実施例5
平均表面粗さ30μmのアルミナブラスト処理をした3×100×300(mm)のJIS G3141に規定された耐候性鋼(SMA400)表面に、表1に示す付着性付与組成物(iii)を、乾燥塗布量0.1Kg/m2となるよう塗装し、乾燥して、付着性付与塗膜を形成し、その上に、合成例3で作製したアルコキシシリケート加水分解物(vii)を含有しかつ下記組成を有する着色上塗塗料を、乾燥膜厚が60μmになるよう一回塗装し、乾燥した後、裏面及び側面をエポキシ樹脂塗料でシールし、7日間自然乾燥させた。その塗装鋼の耐候性及び防食性を評価した結果を以下の表2に示す。
【0058】
アルコキシシリケート加水分解物(vii) 125.0部
亜リン酸亜鉛 8.0部
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 10.5部
キノフタレンイエロー 32.0部
【0059】
実施例6
平均表面粗さ30μmのアルミナブラスト処理をした3×100×300(mm)のJIS G3141に規定された耐候性鋼(SMA400)表面に、表1に示す付着性付与組成物(iii)を、乾燥塗布量0.1Kg/m2となるよう塗装し、乾燥して、付着性付与塗膜を形成し、この上に、合成例4で作製したアルコキシシリケート加水分解物(viii)を含有しかつ下記組成を有する着色上塗塗料を、乾燥膜厚60μmになるよう一回塗装し、乾燥した後、裏面及び側面をエポキシ樹脂塗料でシールし、7日間自然乾燥させた。その塗装鋼の耐候性及び防食性を評価した結果を以下の表2に示す。
【0060】
アルコキシシリケート加水分解物(viii) 125.0部
トリポリリン酸アルミニウム 18.4部
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 10.5部
二酸化チタン 32.0部
【0061】
比較例1
実施例1と同じブラスト処理した耐候性鋼を、全く塗装しないで、耐候性及び防食性を評価した結果を以下の表2に示す。
【0062】
比較例2
実施例1において、付着性付与組成物を塗装しないで、着色フッ素樹脂系上塗塗料を塗装し、その塗装鋼の耐候性及び防食性を評価した結果を以下の表2に示す。
【0063】
比較例3
平均表面粗さ30μmのアルミナブラスト処理をした3×100×300(mm)のJIS G3141に規定された耐候性鋼(SMA400)表面に、表1に示す付着性付与組成物(iv)を、乾燥塗布量0.1Kg/m2となるよう塗装し、乾燥して、付着性付与塗膜を形成し、その上に、着色上塗塗料を塗装しないで、裏面及び側面をエポキシ樹脂塗料でシールし、7日間自然乾燥させた。その塗装鋼の耐候性及び防食性を評価した結果を以下の表2に示す。
【0064】
【表2】

【0065】
注9) サンシャインウェザーメーター300時間後の光沢保持率(%)
注10) 屋外暴露2年
注11) 複合サイクル試験900C
注12) 複合サイクル試験900C後の2mm碁盤目試験
【0066】
表2からも明らかな通り、本発明の実施例においては、塗装鋼に対して、任意の色に着色でき、また塗装鋼に、優れた耐候性、防食性を付与できる。一方、無塗装の比較例1、付着性付与塗膜を形成しない比較例2、及び付着性付与塗膜のみ形成した比較例3では、いずれも赤錆が発生した。
【0067】
本発明の方法により、防錆性及び耐候性を長期間保持し、更に任意の着色を可能にした、省工程の耐候性鋼の防食方法が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐候性鋼表面に、(a)湿気硬化型樹脂、(b)防錆顔料、(c)腐食イオン固定化剤、及び(d)カップリング剤を含有する付着性付与塗膜(A)を乾燥塗布量0.03〜2.00Kg/m2の範囲で形成し、次いで、促進耐候性試験サンシャインウェザーメーター照射300時間後の光沢保持率が85%以上でアルコキシシリケート加水分解物、シランカップリング剤及び防錆顔料を含有する着色上塗塗膜(B)を乾燥膜厚50〜90μmで形成することを特徴とする耐候性鋼の防食法。
【請求項2】
前記(a)成分100質量部に対して、(b)成分を1〜95質量部、(c)成分を1〜95質量部、(d)成分を0.1〜10質量部含有し、かつ(b)成分と(c)成分の合計が、5〜100質量部である請求項1記載の防食法。
【請求項3】
前記(a)成分が、湿気硬化型ウレタン樹脂である請求項1記載の防食法。
【請求項4】
前記(c)成分が、ハイドロカルマイト及び/又はハイドロタルサイトである請求項1又は請求項2記載の防食法。
【請求項5】
前記着色上塗塗膜(B)が、更に、フッ素樹脂を含有する請求項1〜請求項4のいずれかに記載の防食法。

【公開番号】特開2008−260018(P2008−260018A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177230(P2008−177230)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【分割の表示】特願2001−278640(P2001−278640)の分割
【原出願日】平成13年9月13日(2001.9.13)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【Fターム(参考)】