説明

耐候試験で低歪である透明成形部品を製造するためのコポリアミドを含むポリアミド成形材料

本発明は、制御された気候条件テストでの許容できる歪を有し、非常に高い透明性を有し、低ヘイズで、更に高い生物起源含有量を有する、特に射出成形法において、著しく良いプロセス可能性を特長とする、新規のポリアミド成形組成物を開示する。透明成形物、特に、制御された気候条件テストで、高靱性、低吸水性、低反りである射出成形物を製造するための透明コポリアミドをベースとするポリアミド成形組成物であって、成形組成物は、
(A)40〜100質量%の少なくとも1種の透明コポリアミド(80℃〜150℃のガラス転移温度(Tg)を有する)であって、
-互いに異なる少なくとも2種のジアミンで、
(a)50〜90mol%のビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン(MACM)、及び/又は、ビス(4-アミノ-3-エチルシクロヘキシル)メタン(EACM)、及び/又は、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン(TMACM)、及び、(b)10〜50mol%の9〜14個の炭素原子を有する脂肪族ジアミン、特に好ましくは少なくとも20mol%のデカンジアミン(いずれの場合にも、ジアミンの全量に基づく)
の混合物から選択されるジアミン及び
-1種以上の脂肪族ジカルボン酸(特に6〜36個の炭素原子を有する)から構成される透明コポリアミド、
(B)0〜60質量%の少なくとも1種の別のポリマー、及び、
(C)0〜10質量%の標準的な添加剤(ここで、構成要素(A)、(B)及び(C)の全体で100質量%となる)を含む、ポリアミド成形組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御された気候条件テストでの許容できる歪を有し、非常に高い透明性を有し、低ヘイズで、更に高い生物起源含有量(biocontent)を有する、特に射出成形法において、著しく良いプロセス可能性を特長とする、新規のポリアミド成形組成物に関する。
従って、本発明は、透明成形物、特に可視領域で、特に厳しい技術的要件を満たし、高品質表面を有する射出成形物を製造するために使用される透明コポリアミドをベースとする新規の成形組成物に特に関係する。更に、本発明の成形組成物は、制御された気候条件テストにおいて高靱性、低吸水性、及び、低反りという特徴を有する。本発明は、再生可能な原材料から得ることができるモノマーを主にベースとする透明コポリアミドをベースとする新規のポリアミド成形組成物に特に関係する。その上、本発明は、ポリアミド成形組成物の製造方法、及び、成形組成物から製造された成形品、例えば、携帯電話のケース材料、又は携帯電話のディスプレイ材料、GPSデバイス、MP3プレイヤー、メガネ、レンズ、カメラ、光学機器、及び望遠鏡にも関係する。
【0002】
本発明の成形組成物、および存在するコポリアミドは、夫々、ASTM D6866-06aに従って少なくとも50質量%の生物起源含有量で構成されることが特に好ましい(生物起源含有量:その文献で使用されるこの量の用語は、生物ベースの含有量を示す(すなわち例えば、チャプター3.3.9(非石油系含有量の測定方法を参照のこと)。言い換えると、再生可能な炭素(チャプター17も参照のこと)を示す)。生物起源含有量は、この中で、C12及びC14炭素アイソトープの比から誘導される。この比は、石油原材料、及び、再生可能な原材料により著しく異なるので、製品を明確に特徴付ける特性の形態で、本発明のポリアミド成形組成物の生物起源含有量の根拠を示す単純な測定技術を使用することができる。
「ハイエンド品質」の自動車装置、日用品、家庭用電化製品、スポーツ用品、及び掃除しやすい工業用表面の販売を促進するために、高品質な表面を利用する。このことは、高品質な外観を有するだけではなく、耐破損性であり、流動性があり、伸展性があり、低反りでなければならない材料への高い要求を設定する。このことは、結晶化による容積の変化が小さいことと、吸湿性が低いことを必要とする。優れた耐摩耗性及び耐動荷重特性も必要とされ、これらは伸張性のポリアミドの特異的性質である。従って、本発明のポリアミド成形組成物製の成形物は、優れた透明性、靱性、及び耐磨耗性を有する。これらの成形物は、高い化学的耐性、及び高い曲げ疲労耐性を有するので、要求の高い環境で使用されうる。
【0003】
本発明の成形組成物は、高品質成形品をもたらすために知られる製造システムで公知の製造方法で製造可能である。高品質成形品は、上述したように、携帯電話ケース材料又は携帯電話ディスプレイ材料、GPSデバイス、MP3プレイヤー、メガネ、レンズ、カメラ、光学機器、及び望遠鏡などとして使用されうる。
例として、ISO14000群での標準の認証を得ることを望む使用者は、経済的持続性の要件を受け入れなければならない。例として、それらは、製品のCO2バランスに関するライフサイクル解析(ライフサイクルアセスメント、LCA)を発行している。CO2(ソース)の放出及び再固定化(シンク)の間の短いインターバルは、この中で結果に影響するファクターであり、本発明の生物起源含有量に関しては、記載された値を有する生物学的に再生可能な原材料を使用することで達成されうる。従って、本分野の当業者は、環境学的に有利な材料を使用しなければならないという問題に直面しており、そして、これらの材料は、従来不利な特性に関係していた。このような点で、本発明の一つの態様は、前記問題をなくすことを目的とした教示を与える。なぜなら、その態様は、驚くことに予想外の高品質の透明コポリアミドであるにもかかわらず、それは、実質的に再生可能な原材料から構成されるので、環境へのリスクを実質的に引き起こすことない材料を提供するためである。
【背景技術】
【0004】
従来技術
プラスチックのモノマーの出発化合物は、現今一般的に化石燃料(石油)から得られている。しかしながら、これらは、限られた燃料であり、従って代替材料が求められている。従って、「バイオプラスチック」又は高い生物起源含有量を有するプラスチックを製造するのに使用されうる再生可能な原材料について関心が高まっている。現今、クラッキング及び再重合の化学的製造によって、石油をベースとする分子鎖に匹敵する特性を有しうる分子鎖を製造することが可能である。可能な植物燃料の例示は、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ヒマシ油、トールオイル脂肪酸を製造する植物であり、これらは、植物油の例である。エルカ酸は、例えば、ナタネ油、マスタード、アラセイトウ、又はカラシナの種から得られる。
従って、再生可能な原材料は、特に、石油価格の世界的高騰及びエネルギー不足のためだけではなく、石油産出国における政情不安のために、プラスチック工業での真の代替品となるだろう。
【0005】
バイオプラスチックは、多くの分野で、有利な特性を有するので、一般的な化石プラスチックへの真の代替品になる。従って、50%超過の生物起源含有量を有するポリアミドを想定することが合理的である。しかし、このとき、これらは、80℃未満のガラス転移温度を有する半晶質のポリアミド(透明性を有さない)である。一般的な半晶質ポリアミドは、現今、いまだに、石油ベースモノマー、例えば、ナイロン-6、ナイロン-11、ナイロン-6,6、ナイロン-6,9、ナイロン-6,10などから製造されるが、これらの原料においてほぼ100%生物起源含有量を達成することは、理論的に可能である。
内在する原材料に関係なく、透明ポリアミド成形組成物は、それにもかかわらず、消費者の厳しい要求、すなわち、非常によい光学特性だけでなく、高いレベルの機械的特性及び化学的耐性に応じなければならない。特定の制御された気候条件テスト(下記の後述するテスト参照)を合格することも要求される。
【0006】
DE 43 10 970 A1には、ストレス亀裂耐性及び耐衝撃性、及び、アルコール、エステル、ケトン及び沸騰水に対する高い耐性を有する透明の非晶質のポリアミド成形組成物が記載されており、ここで、これらは、脂肪族ジカルボン酸とトランス,トランス-ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)、及び、適切な場合、他のジアミンとの重縮合により得られる。しかしながら、DE 43 10 970 A1の加工実施例は、ホモポリアミドPACM10及びPACM12のみに関係する。第一ジアミンと異なる第二ジアミンを用いる理論的に可能なコポリアミドに関して記載されるジアミン構成は全く存在しない。理論上の構成が、有利な特性を有しうるといった示唆も全く存在しない。
DE 100 09 756 A1は、機械的特性に関して損失がなく、改善された透明性と化学的耐性を有するポリアミド混合物について記載している。この混合物は、非晶質又は微晶質のポリアミド、及び、半晶質ポリアミド、及び、2種の異なるリン添加剤から構成される。非晶質又は微晶質のポリアミドのために記載される式では、出発構成要素としてジアミン及び脂肪族ジカルボン酸の広い様々な起こりうる組合せを可能とする。しかしながら、2つの異なるジアミンのいずれかの特定の組合せ、及び、特定の性質を有する特定の構成(例えば、PA MACM10/1010)の記載は全くない。例としては、芳香族ジカルボン酸、イソフタル酸(IPS)及びラクタム-12と組み合わせて、1種のみのジアミン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン(MACM)を常にベースとする非晶質ポリアミドが存在する。
【0007】
DE2217016A1には、高温での改良可染性及び変形現象に対する改良耐性を有するポリアミドファイバーを製造するための、PACM-ベースのポリアミド成形組成物が記載されている。記載されたPACM 10-12ポリアミドは、微晶質又は濁った系(cloud system)となるが、これらは、ポリアミドファイバーを製造する際に例えば、ファイバーの要求される深絞り性のために、特に必要とされるものである。従って、DE2217016に記載されたポリアミド、特に、ポリアミドPACM 10-12は、制御された気候条件テストで高い歪を示すのと同時に、不十分な透明成形物をもたらす。
EP-A-0001039には、位置異性体のジアミノシクロヘキシルメタンの混合物、適切な場合、別のジアミン及びアゼライン酸、及び、適切な場合、イソフタル酸、及び/又はアジピン酸の重縮合によって得られる透明ポリアミドが記載されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の説明
従って、透明コポリアミドをベースとし、透明成形物を製造するために使用されうる成形組成物を提供することが本発明の目的であり、ここで、この透明成形物は、特に射出透明成形物であって、特に可視領域で、厳しい技術的要件を満たし、及び、高品質(「ハイエンドな質」)表面を有するが、公知の透明ホモポリアミドの高いガラス転移温度(これらの温度は製造に不利である)を有さない。成形組成物は、特に射出成形物において、制御された気候条件テストにおいて、高靱性、低吸水性、低反り、すなわち最大歪4mmで、改良されたプロセス可能性を有することを特徴とすることが意図される。更に、この材料が再生可能な原材料をベースとしうることが意図される。
【0009】
本発明は、透明成形物、特に、制御された気候条件テストで、高靱性、低吸水性、低反りであり、特に、制御された気候条件テストで、成形物の最大で4mmの歪、特に好ましくは最大で2mmの歪を有する射出成形物を製造するための透明コポリアミドをベースとするポリアミド成形物であって、ここで、寸法100×100×2 mmのシートのたわみは、温度55℃かつ相対湿度95%で、自重下での制御された気候条件テストで測定され、このテストでは、シートの一端が25mm高くされて、168 時間後にシートのたわみは真ん中で測定され(初期条件に対する位置の変化)、
成形組成物は、
(A)40〜100質量%の少なくとも1種の透明コポリアミド(80℃〜150℃のガラス転移温度(Tg)を有する)であって、
-互いに異なる少なくとも2種のジアミンで、
(a)50〜90mol%のビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン(MACM)、及び/又は、ビス(4-アミノ-3-エチルシクロヘキシル)メタン(EACM)、及び/又は、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン(TMACM)、及び、(b)10〜50mol%の9〜14個の炭素原子を有する脂肪族ジアミン、特に、デカンジアミン、特に好ましくは少なくとも20mol%のデカンジアミンの混合物から選択されるジアミン(いずれの場合にも、ジアミンの全量に基づく)及び
-1種以上の脂肪族ジカルボン酸(特に6〜36個の炭素原子を有する)から構成される透明コポリアミド、
(B)0〜60質量%の少なくとも1種の別のポリマー(非晶質又は半晶質のホモ-又はコポリアミド、ポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルアミド、ポリエステルアミド又はそれらの混合物からなる群から選択される)、及び、
(C)0〜10質量%の標準的な添加剤(紫外線安定剤、熱安定剤、フリーラジカル捕捉剤、及び/又は、加工助剤、混在防止剤(inclusion inhibitor)、潤滑剤、離型助剤、可塑剤、光学特性、特に屈折率に影響を与える機能性添加剤、衝撃改質剤、ナノスケールフィラー、及び/又は、別のナノスケール材料、光学的光沢剤、染料、及びそれらの混合物からなる群から選択される)
(ここで、構成要素(A)、(B)及び(C)の全体で100質量%となる)を含む、ポリアミド成形組成物によって前記目的を達成する。
【0010】
前記目的は、ポリマー構成要素(A)及び(B)が、公知の圧力容器で製造され、圧縮相が250℃〜320℃であり、その後の減圧が250℃〜320℃であり、その後の液化が260℃〜320℃であり、そして、らせん形でのポリアミド成形組成物の排出、冷却、ペレット化、及びペレットの乾燥も行われ、構成要素(A)、及び、適切な場合(B)、及び、適切な場合(C)(ペレット形)が混合され、らせん形になるように押出機で220℃〜350℃の融解温度で成形され、ペレットになるように好適なペレット製造機で切断され、ここで、混合工程の間、成形組成物を改良するために好適である添加剤、例えば、製造安定剤、着色顔料、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤、及び他の透明ポリアミド、又はナイロン-12が添加されても良い、請求項12に記載のポリアミド成形組成物の製造方法によっても達成されうる。
【0011】
最終的に、前記目的は、融解温度230℃〜320℃での射出成形法及び射出圧縮成形法によって、請求項1〜11のいずれかに記載のポリアミド成形組成物から得られうる請求項13〜16のいずれかに記載の成形物であって、ここで、成形温度は40℃〜130℃に設定され、適切な場合、モールドは、材料が空洞に装填された後に、40℃〜130℃の温度でホット成形物に圧力を加える、成形物により達成される。
独立項は、本発明の有利な態様を含む。
【0012】
本発明の成形組成物の一つの好ましい態様は、ASTM D6866-06に従って少なくとも50%の生物起源含有量を有し、80℃より高く、最大150℃ガラス転移温度を有する。ASTM D1003に従って光線透過率として測定される、厚み2 mmの透明成形組成物から製造されるシートの透明性は、85%超過であり、ヘイズは、最大10%である。高剛性(引張弾性係数が1300 MPaより大きい)及び高靱性(23℃での耐衝撃性:破砕なし)が、本発明の成形組成物の好適な使用で達成される。更に、制御された気候条件テストでの低反りは、本発明の成形組成物から製造される成形品で達成される。自重下での制御された気候条件テストにおける寸法100×100×2 mmのシートのたわみ(歪)(55℃/95%相対湿度/持続時間:168h)は、たわみをシートの真ん中で測定した場合に、最大4 mmであり、好ましくは最大3 mmであり、更に好ましくは最大2 mmである。
【0013】
天然原材料をベースとし、現在入手可能な唯一のモノマーは、脂肪族モノマーである。透明製品を得るために、それらを、脂環式、芳香族又は分岐モノマーユニットと混合しなければならない。しかしながら、少なくとも50%が必要とされる生物起源含有量は、大量の脂肪族フラクションを要求し、結果として、まず、ガラス転移温度(Tg)、剛性、及び光線透過率(透明度測定として)が減少し、次にヘイズが増加する。ここで示されうる例は、50%超過の生物起源含有量を有するPA10I/1010-タイプ構造である。10I系(I = イソフタル酸)の高濃度は、80℃より高いTg、及び90%を超える透明度を達成するが、ヘイズが20%であり、高品質の光学的応用に許容可能な範囲を超える。
50%を超える生物起源含有量を有するMACM10/1010-タイプ又はMACM14/1014-タイプ構造は、同様に、このタイプのコポリアミドの好ましい代替品である。透明度は非常に高く、ヘイズは許容可能である。達しうるTgは、本発明の構成の範囲内(80℃超過で150℃以下)である。
【0014】
驚くことに、本出願の発明者は、MACM 6-36/6-36 6-36 コポリアミド、MACM 9-18/9-14 9-18 コポリアミド、好ましくはMACM 9-18/10 9-18又はMACM 10-14/10 10-14 コポリアミドが、所望の特定を有することが分かった。例として、66〜46 mol%のMACM10含有量を有するMACM10/1010 コポリアミドは、ガラス転移温度が少なくとも89℃で、生物起源含有量が50〜75%である。厚み2mmのシートで測定されるヘイズは5%未満で、透過率値は高く、93%超過である。20°の角度で測定される光沢は、非常に高い値が得られ、約150%が達成される。高度の透明材料において、光沢値は、下部表面も上部表面からの光に加えられる光を反射するため、100%より高い。
本出願の目的において、透明度測定としてここで使用される光線透過率値は、常に、ASTM D1003法(CIE-C光源)によって測定される値である。ここで光線透過率は、ヘイズ-ガード プラス装置(BYK Gardner(DE)製)で以下に示す実験で、70×2 mmのディスク又は寸法60×60×2 mmのシートで測定される。透過率値は、CIE-Cで定義されたような可視波長領域で、すなわち、おおよそ400〜770 nmの実質的な強度で示される。ここで使用される70×2 mmディスクは、例えば、Arburg 射出成形物機(シリンダー温度が200℃〜340℃で、成形温度が20℃〜140℃である)の表面研磨モールドで製造される。
【0015】
従って、本発明の透明コポリアミドは、ここで定義される光線透過率を有し、非晶質又は微晶質形態を有する。本発明のコポリアミドは、好ましくは、更なる構成要素を含まない高分子量での製造が透明成形物をもたらすポリアミド系である(従って結晶寸法は可視光線の波長以下である)。
更に、本発明のMACM-、TMACM-、及びEACM-ベースのポリアミドは、構造の全体の請求された範囲を超える高い透明度であり、低ヘイズのみを有する。
本発明の透明コポリアミドは、好ましくは、低い融解エンタルピーであり、すなわち、融解エンタルピーが5 J/g未満である。
本発明の補強されていない成形組成物から製造された成形物は、1300〜2000 MPaの、好ましくは1500〜2000 MPaの曲げ剛性率(stiffness properties with modulii of elasticity)を示す。シャルピー衝撃値の測定用の試験片は、室温(23℃)及び-30℃で破砕がないことを示した。
【0016】
ポリアミド構成要素(A)は、50%より多い再生可能原材料をベースとすることが好ましい。これは、モノマー、例えば、アゼライン酸、セバシン酸、テトラデカン二酸、C36-ダイマー脂肪酸、アミノウンデカン酸、ノナンジアミン、デカンジアミン、及びテトラデカンジアミン(これらは、様々な植物油から得られる)を主として用いることによって達成される。
モノマー生成用の重要な植物油は、アフリカンワンダーツリー(African wonder tree)(Rizinus communis)の種から得られる、ヒマシ油である。ヒマシ油は、80〜90%リシノール酸のトリグリセリド、及び、様々なC18脂肪酸のほかのグリセリドで構成される。ヒマシ油は、薬剤として千年にわたって使用されているが、さらに、工業潤滑油、化粧品、コーティング及び油圧オイルでの使用で長い歴史がある。セバシン酸は、高温でヒマシ油のアルカリ開裂の後、塩酸処理によって得られる。リシノール酸のメチルエステルの熱分解は、ヘプタアルデヒド及び10-ウンデセン酸のメチルエステルをもたらし、後者は、複数の反応工程を通して、11-アミノウンデカン酸へ転換される。
【0017】
アゼライン酸及びブラシル酸(brassilic acid)は、同様に天然原材料をベースとし、これらは、夫々オレイン酸及びエルカ酸のオゾン分解によって、製造される。エルカ酸は、ナタネ油、マスタード、ニオイアラセイトウ、又は、コショウソウの種から得られる。
C36-ダイマー酸は、不飽和C18カルボン酸又はそれらのエステルの熱二量化によって製造される。出発材料の例は、トールオイル脂肪酸、及び、オレイン酸、又はリノレン酸である。
ノナンジアミン、デカンジアミン、及びトリデカンジアミンは同様に、それらが対応するジカルボン酸から、例えばジニトリルルートで製造されるので、天然原材料をベースとする。
工業上の重要性が増加している、例えば微生物発酵によって得られるほかの原材料があり、そして、それらは同様に使用されうる。
従って、特に好ましくは、透明コポリアミド(A)は、ASTM D6866-06aに従った生物起源含有量が少なくとも54質量%、又は少なくとも58質量%であることを特徴とする。生物起源含有量が少なくとも60質量%、又は少なくとも65質量%であることが非常に特に好ましく、特に、生物起源含有量は、50〜75質量%の範囲内である。
【0018】
本発明のポリアミド成形組成物が上記要求される特性を有するために、特に、脂環式ジアミンの濃度は、全ジアミン含有量に基づいて、50〜80 mol%の濃度範囲、好ましくは55〜75 mol%の範囲、特に好ましくは、60〜75 mol%の範囲でなければならない。脂肪族ジアミン、特に、1,10-デカンジアミンの濃度は、常に、本発明に従って、全ジアミン含有量に基づいて少なくとも20 mol%であり、好ましくは少なくとも32 mol%であり、好ましくは、全ジアミン含有量に基づいて、25〜45 mol%の範囲で、非常に好ましくは25〜40 mol%の範囲である。
本発明は、50〜90 mol%のビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン(MACM)、及び/又は、ビス(4-アミノ-3-エチルシクロヘキシル)メタン(EACM)、及び/又は、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン(TMACM)、及び/又は、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)プロパン、及び、10〜50 mol%の少なくとも1種の脂肪族ジアミン(9〜14個の炭素原子を有し、特に好ましくは10〜14個の炭素原子を有する)、特に、デカンジアミンの混合物から選択されるジアミン(いずれの場合にも、ジアミンの全量に基づく)の混合物を使用する。本発明は、好ましくは、脂肪族ジアミンとして、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1,13-トリデカンジアミン、又は、1,14-テトラデカンジアミンを使用し、脂肪族ジアミンとして、脂肪酸ジアミンの全含有量に基づいて、少なくとも20、30、50又は100 mol%の1,10-デカンジアミンを使用することが、特に好ましい。
【0019】
本出願で使用されるPACMという表現は、ISO名ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンを示し、Dicykan 4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン(CAS No. 1761-71-3)として、市場で入手可能である。MACMという表現は、ISO名ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタンを示し、Laromin C260 3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン (CAS No. 6864-37-5)として市場で入手可能である。EACM及びTMACMという表現は、ビス(4-アミノ-3-エチルシクロヘキシル)メタン(EACM)、及び/又は、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン(TMACM)を表す。
本発明の目的において、PACM、MACM、EACM及びTMACMという表現は、慣用名、商標名、又は、本分野の当業者に良く知られているほかの名前(これらは、上記化合物の化学構造に対応する)の全てを含むことを意図する。
【0020】
脂肪族ジカルボン酸は、好ましくは、10〜36個の炭素原子を有し、特に、10〜18個の炭素原子を有する。
使用される脂肪族二酸は、好ましくは、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、C36-ダイマー脂肪酸、及び、それらの混合物からなる群から選択される酸を含み、ここで、特に脂肪族二酸は、二酸の全量に基づいて少なくとも20mol%の、好ましくは少なくとも30mol%の、特に好ましくは少なくとも50mol%のセバシン酸で構成され、ここで、脂肪族二酸は、セバシン酸のみであることが特に好ましい。
【0021】
コポリアミド(A)は、特に、以下の式(I)を有する鎖で特徴付けられる:
(MACMX)x/(10Y)y/LCz (I)
(ここで、定義は以下のとおりである:
X及びY = 脂肪族ジカルボン酸(9〜18及び36個の炭素原子を有する)、
x = 25〜90mol%、
y = 5〜50mol%、
10 = 1,10-デカンジアミン、
LC = ラクタム、及び/又は、アミノカルボン酸(6〜12個の炭素原子を有する)、
z = 0〜50mol%、
x + y + z = 100mol%、
そして、X、10Y及びLCで表される要素の合計は、少なくとも50質量%である)
X、Y及びLC再生可能な原材料をベースとする場合に、X、10Y及びLCの全質量%値は、生物起源含有量である。
【0022】
式(I)の単独で又は混合物で使用される構成成分MACMXは、非晶質のユニット、例えば、MACM9、MACM10、MACM11、MACM12、MACM13、MACM14、MACM15、MACM16、MACM17、MACM18、MACM36タイプを含む。9〜18又は36個の炭素原子を有するジカルボン酸は、好ましくは、非石油依存の再生可能な原材料から製造される。ジアミンMACMは、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン又はビス(4-アミノ-3-エチルシクロヘキシル)プロパンの他のアルキル置換誘導体、特に、ビス(4-アミノ-3-エチルシクロヘキシル)メタン(EACM)、及び/又は、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン(TMACM)、及び/又は、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)プロパンで完全に又は一部で、置換されていてもよい。
式(I)で使用される構成要素10Yが、半晶質のユニット、例えば、PA 109、PA 1010、PA 1011、PA 1012、PA 1013、PA 1014、PA 1015、PA 1016、PA 1017、PA 1018、PA 1036タイプ(単独、又は、混合物)を含む。前記構成要素は、非石油依存の再生可能な原材料で製造されることが好ましい。
従って、本発明で特に好ましいコポリアミド(A)は、MACM9/109、MACM10/1010、MACM12/1012、及びMACM14/1014である。
【0023】
式(I)で使用される構成要素LCは、好ましくはラクタム 11、ラクタム 12、及び、α,ω-アミノカルボン酸(10〜12個の炭素原子を有する)及びそれらの混合物を含む。好ましくは、再生可能な原材料から誘導されるラクタム、及びアミノウンデカン酸である。
コポリアミド(A)のガラス転移温度(Tg)は、少なくとも80℃、好ましくは少なくとも85℃、特に少なくとも90℃又は100℃である。これに対し、コポリアミド(A)のガラス転移温度(Tg)は、最大150℃で、好ましくは最大135℃で、特に好ましくは最大125℃である。従って、好ましいコポリアミド(A)のガラス転移温度(Tg)は、80〜135℃又は90〜135℃又は100〜135℃の範囲であり、特に、85〜125℃の範囲である。
【0024】
上述のような十分に大きい割合のコポリアミド(A)が、脂肪族のフラクション、例えば、PA 1010又はPA 1012で置換される場合に、前記Tgの範囲は、脂環式系、例えば、MACM10又はMACM12と組み合わせて得られる。本発明におけるガラス転移温度(Tg)の低下によって、脂環式ジアミンをベースとするホモポリアミドと比較して、本発明におけるポリマー融解の高い流動性が得られるので、よりよいプロセス可能性が得られる。本発明のポリアミド成形組成物は、(ホモポリアミド成形組成物よりも)低速で凝固するので、動線又は他の人為構造(artifact)を避けて、射出成形により、一層良い表面の質(滑らかな表面)及び一層高い溶接線強度が得られる。更に、本発明のコポリアミドは、あまり激しくない条件下、すなわち、低い温度(10℃〜30℃)で製造され、処理されうるので、そこから製造される成形物は、混在物(重縮合工程から生じる)の量が著しく少なく、変色(diskoloration)も著しく少なく、このことは、透明材料及び光学分野におけるそれらの応用にとって、特に非常に重要である。
【0025】
使用される構成要素(B)は、別のポリマーを含み、それは好ましくは、下記の式(II)のような非晶質又は半晶質のポリアミド又はコポリアミドを含む:
(MACMX)x/(PACMY)y/(MXDV)v/LCz (II)
(ここで、定義は以下のとおりである:
X、Y及びV = 脂肪族ジカルボン酸(9〜18及び36個の炭素原子を有する)、及び、テレフタル酸(T)及びイソフタル酸(I)、及び、それらの混合物、
x = 0〜100質量%、
y = 0〜100質量%、
v = 0〜100質量%、
LC = ラクタム、及び/又は、アミノカルボン酸(6〜12個の炭素原子を有する)、
z = 0〜100質量%、
v + x + y + z = 100質量%)
【0026】
このタイプの構成要素(B)の好ましい代替品の例は、以下のポリアミド又はコポリアミドである:MACM10、MACM12、MACM14、MACMI/12、MACMI/MACMT/12、MACMI/PACMT/12、PA11、PA12(Iはイソフタル酸であり、Tはテレフタル酸である)。
更に、別のポリマー(構成要素 (B))は、ポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルアミド、ポリエステルアミド、及びこれらの混合物から構成される群から選択されうる。前記コポリマーは、ランダム構造、交互構造、又は、ブロック構造を有しうる。ここでのポリアミド要素は、好ましくは、PA6、PA66、PA69、PA610、PA612、PA99、PA1010、PA1012、PA1014、PA11、PA12 ポリアミド、又は、それらの混合物をベースとする。好ましくは、以下のタイプのポリアミドである:PA1010、PA11及びPA12。前記コポリマーのポリエーテル構成要素は、ポリエチレングリコールのジオール又はジアミン、及び/又は、ポリプロピレングリコール、及び/又は、ポリテトラメチレングリコールをベースとする。エステル構成要素又はポリエステル構成要素は、脂肪族及び/又は芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオール、好ましくはダイマー脂肪酸ジオールのポリエステルをベースとする。
【0027】
本発明のポリアミド成形組成物は、好ましくは、
55〜100質量%の構成要素(A)、
0〜45質量%の構成要素(B)、及び
0〜5質量%の構成要素(C)を含む。
特に好ましくは、
65〜90質量%の構成要素(A)、
10〜35質量%の構成要素(B)、
0〜5質量%の構成要素(C)を含む。
【0028】
しかしながら、本発明のポリアミド成形組成物は、通常の少ない割合(10質量%未満、好ましくは5質量%未満、特に好ましくは3質量%未満)の通常の添加剤(構成要素C)を含みうる。従って、添加剤(構成要素 C)の濃度は、好ましくは、0.01〜5質量%の範囲、特に0.3〜3質量%の範囲である。記載された添加剤は、安定剤、例えば、紫外線安定剤、熱安定剤、フリーラジカル捕捉剤、及び/又は、加工助剤、混在防止剤、潤滑剤、離型助剤、可塑剤、及び/又は、機能性添加剤、好ましくは光学特性、例えば特に屈折率に影響を与える機能性添加剤、及びそれらの混合物でありうる。更に、成形組成物は、(構成要素Cとして)ナノスケールフィラー、及び/又は、ナノスケール機能性材料、例えば、層状ミネラル又は酸化金属(これらは、屈折率を増加させる)、又は光学的光沢剤、又は、染料、例えばフォトクロミック染料を含みうる。
【0029】
本発明の目的において、また、成形組成物は、本分野の当業者に知られるフィラー及び/又は添加材料、例えば、ガラスファイバー、ガラスビーズ、カーボンファイバー、カーボンブラック、グラファイト、難燃剤、ミネラル、例えば、チタンジオキシド、カルシウムカルボナート又はバリウムスルファート、例えば、衝撃改質剤、例えば、機能性ポリオレフィンを含みうる。
好ましい衝撃改質剤は、酸修飾したエチレン-α-オレフィンコポリマー、エチレン-グリシジルメタクリル酸コポリマー、及び、メタクリラート-ブタジエン-スチレンコポリマーから選択される群から得られる。
しかしながら、本発明の成形組成物は、また、フィラー又は補強剤の添加を受けてもよい。この場合に、成形組成物から製造される成形物は、天然には透明性でない。使用されうる補強剤は、ガラスファイバー及びカーボンファイバーだけではなく、特に、再生可能な原材料をベースとし、50%超過の生物起源含有量の補強剤である。天然ファイバー、例えばセルロースファイバー、麻ファイバー、亜麻ファイバー、綿ファイバー、羊毛ファイバー、又は、木材ファイバーを使用することが特に好ましい。
【0030】
ポリマー構成要素(A)及び(B)は、公知の圧力容器で製造される。圧縮相は、まず、250℃〜320℃で行なわれる。これは、続いて、250℃〜320℃で減圧される。液化は、260℃〜320℃で行なわれる。次いで、ポリアミド成形組成物は、らせん形で排出され、5℃〜80℃に水浴で冷却され、ペレット化される。このペレットを12 時間80℃で、水含有量が0.06%未満になるまで乾燥させる。添加剤、例えば、潤滑剤、染料、安定剤又は他のものを乾燥工程の間に、同時にペレットを循環させながら、ペレット上に塗布、又は、焼結することができる。
0.5質量%濃度のm-クレゾール溶液で測定される、1.45〜2.30、好ましくは1.55〜2.00、特に好ましくは1.60〜1.90の所望の相対粘度(構成要素(A)及び(B))に調整するために、ジアミン又はジカルボン酸が0.01〜2 mol%のわずかの過剰量で使用されうる。0.01〜2.0質量%、好ましくは、0.05〜0.5質量%でモノアミン又はモノカルボン酸を使用することによって、好ましく調節が行なわれる。好適な調節剤は、安息香酸、酢酸、プロピオン酸、ステアリルアミン、又は、これらの混合物である。特に好ましくは、アミン基かカルボン酸基を有する調節剤であり、これらもHALSタイプ又はtert-ブチルフェノールタイプの群の安定剤、例えば、トリアセトンジアミン、又は、イソフタル酸のジトリアセトンジアミン誘導体を含む。
【0031】
重縮合反応を加速する好適な触媒は、リン含有酸、例えば、H3PO2、H3PO3又はH3PO4、これらの塩、又は、有機誘導体(ここで、これらは同時に、製造の間、変色(diskoloration)を低減する)である。触媒の添加量は、0.01〜0.5質量%の範囲、好ましくは0.03〜0.1質量%の範囲である。液化の間の泡立ちを避けるための好適な消泡剤は、10%濃度の乳剤に対して、0.01〜1.0質量%の範囲で、好ましくは0.01〜0.10のシリコン又はシリコン誘導体を含む液性乳剤である。
0.01〜0.5質量%の量の好適な熱安定剤又は好適な紫外線安定剤を、重縮合工程の前にこの混合物に添加することができる。高い融解点タイプを使用することが好ましい。Irganox 1098を使用することが特に好ましい。
以下の公知の混合法を用いて、本発明の透明成形組成物と添加剤をそなえることができ、添加剤は、例えば、安定剤、潤滑剤、例えば、パラフィンオイル、又はステアラート、染料、フィラー、衝撃改質剤、例えば、エチレン-グリシジル メタクリラートターポリマー(好ましくは、本発明の成形組成物の範囲の屈折率を有する)又は、無水マレイン酸-グラフトされたポリエチレン、又は、プロピレン、又は、補強剤、例えば、ガラスファイバー又はガラスビーズ、又はナノ粒子である。これらは、透明分散状態をもたらし、例えば、添加剤の混合、特に処理は、250℃〜350℃の融解温度で用いられるシングル又はマルチスクリュー押出機での押出である。
【0032】
本発明の透明ポリアミド成形組成物製の高透明度の成形物を製造するための好適な方法は、融解温度230℃〜320℃での射出成形法及び射出圧縮成形法であり、ここで、成形温度は40℃〜130℃に設定され、適切な場合、モールドは、材料が空洞に装填された後に、40℃〜130℃の温度でホット成形物に圧力を加える。発砲射出圧縮成形法は、特に本発明の透明ポリアミド成形組成物製の欠点のない低ストレス成形表面を製造するための好適な方法である。例は、メガネのレンズ、又は、高品質のケース部品である。この方法において、材料を、壁厚1〜5 mmの空洞に装填し、そして、モールドの空洞を拡張し、同時に材料の装填を続けて、壁厚をより大きくする。
本発明の透明ポリアミド成形組成物製の単層又は多層型のホイル、チューブ、及び、半製品を製造するための好適な方法は、250℃〜350℃の融解温度を用いるシングルスクリュー又はマルチスクリュー押出機での押出法であり、様々な層の安定性の機能として、好適なコポリマー又はブレンドの形態での好適な接着促進剤を使用することができる。
【0033】
本発明のポリアミド成形組成物で構成される成形物を、通常の方法、例えば、超音波溶接、白熱ワイヤ溶接、摩擦溶接、スピン溶接、又は、800nm〜2000nmの範囲で吸収するレーザーアクティブ染色の改質を用いたレーザー溶接によって、互いに結合できる。
本発明の透明ポリアミド成形組成物製の単層又は多層型の中空体及びボトルを製造するための好適な方法は、射出ブロー成形法、射出延伸ブロー成形法、及び押出ブロー成形法である。
本発明の成形組成物は、ホイル、例えば、フラットホイル、吹込ホイル、キャストホイル、又は多層ホイルになるように処理されうる。更なる好ましいホイルの処理方法は、ラミネーション、インモールドコーティング、伸張、配向、印刷、又は染色である。
【0034】
成形物は、水浴に入れるような、公知の方法を用いてその後の工程でバルク染色又は染色されうる。必要に応じて、成形物は、更に、製粉、掘削、粉砕、レーザーマーキング、レーザー切断、及び/又は、レーザー溶接によって更に操作を受ける。
本発明の透明ポリアミド組成物から構成される成形物のために好適な使用は、直接オイルと接触する加熱システムののぞき窓、飲料水処理用のフィルターカップ、哺乳瓶、カーボンボトル(carbonization bottle)、陶器、ガス用又は液体用のフローメーター、置時計ケース、腕時計ケース及び、自動車ランプ用のランプハウジング及び反射体である。
以下の例は、これから本発明を説明するために使用されるが、本発明を制限しない。
【実施例】
【0035】
本発明のポリアミド成形組成物は、最大容積130 Lの実験室の圧力オートクレーブで製造される。まず、290℃で圧縮相にした。この後に、280℃で減圧した。液化を280℃で行なった。次いで、ポリアミド成形組成物をらせん形状で排出し、水浴で冷却し、ペレットとした。このペレットを80℃で12時間、水含有量が0.06%未満になるまで乾燥させた。夫々の高透明成形物又は試験片を、Arburg420C Allrounder 1000-250 射出成形物機で、 250℃〜280℃の融解温度で、本発明の透明ポリアミド成形組成物から製造した。ここで、成形温度を60℃に調整した。スクリュー回転速度は、150〜400 rpmに設定した。
製造された材料又は成形物は、表1及び2に記載される性質を有する。
【0036】
[表1]

【0037】
[表2]

n.d.:データなし
【0038】
透明ホモポリアミドMACM10及びMACM12のガラス転移温度は、夫々、165℃及び155℃であり、それらの融解粘度は、15〜22 cm3/10分(MVR、275℃/5 kg)の範囲であり、融解粘度(相対粘度)は1.85〜1.80の範囲だった。本発明のコポリアミドは、公知のホモポリアミドと比較した場合に、それらは、従って、同一の相対粘度に対して、十分に低い融解粘度を有するので、製造しやすかった。更に、制御された気候条件テスト(0.6mm)での本発明の実施例1の成形物の歪は、ポリアミドMACM10(歪0.5mm)製の成形物の歪よりもほんのわずかに大きかった。
本発明のコポリアミドにおける脂肪族含有量(本発明の実施例1、4及び5)は、23℃、50%相対湿度で透明ホモポリアミドMACM10:1.20%と比較して、吸水率を更に減少させることができた。
【0039】
相対粘度(ηrel)を、20℃の温度で、0.5質量%濃度のm-クレゾール溶液中で、DIN EN ISO 307に従って測定した。
ガラス転移温度(Tg)、融解点(Tm)、及び融解エンタルピー(Hm)を、ISO 11357-1/2に従って測定した。差走査熱量測定法(DSC)を20K/分の加熱速度で行なった。
引張弾性係数、最大抗張力及び引張破壊歪みを、引張試験速度1 mm/分(引張弾性係数)又は50 mm/分(最大抗張力、引張破壊歪み)で、ISO引張試験片で(標準:ISO/CD 3167、タイプA1、170×20/10×4mm、23℃の温度)、ISO 527に従って測定した。
耐衝撃性及びノッチ付耐衝撃性法を、シャルピー法により、ISO 179/keUに従ってISO 試験片で(標準:ISO/CD 3167、タイプB1、80×10×4mm、-30℃及び23℃の温度)、測定した。
【0040】
光線透過率(透明度)及びヘイズを、ASTM D1003に従って、寸法2×60×60mmのシート又は2×70mmディスク測定で、23℃の温度で、ヘイズ-ガードプラス測定装置(Byk Gardner製)及びCIE 光源Cを用いて、測定した。光線透過率値を、入射光の量の%で記載される。
光沢度を、DIN EN ISO 2813に従って、寸法70×2mmのディスクで、23℃の温度で、Minolta Multi Gloss 268を用いて、20°及び60°の角度で測定した。
制御された気候条件テストを用いて、自重下で、温度55℃及び相対湿度95%で寸法100×100×2mmのシートのたわみを測定した。このために、シートの一端を25mm上げて、168時間後にたわみをシートの真ん中で測定した(初期条件に対する位置の変化)。
MVR(メルトボリュームレイト)をISO 1133に従って、275℃で、荷重5kgで測定した。
従って、本発明は、制御された気候条件テストで許容可能な歪、低ヘイズ、更に高い生物起源含有量を有するとともに、特に、射出成形法で、顕著に良いプロセス可能性を示すことを特徴とする新規のポリアミド成形組成物を提供した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明成形物、
特に、制御された気候条件テストで、高靱性、低吸水性、低反りであり、特に、制御された気候条件テストで、最大で4mmの歪、特に好ましくは最大で2mmの歪を有する射出成形物、
を製造するための透明コポリアミドをベースとするポリアミド成形組成物であって、
寸法100×100×2 mmのシートのたわみは、温度55℃かつ相対湿度95%で、自重下での制御された気候条件テストで測定され、このテストでは、シートの一端は25mm高くされて、168 時間後にシートのたわみが真ん中で測定され(初期条件に対する位置の変化)、
成形組成物は、
(A)40〜100質量%の少なくとも1種の透明コポリアミド(80℃〜150℃のガラス転移温度(Tg)を有する)であって、
-互いに異なる少なくとも2種のジアミンで、
(a)50〜90mol%のビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン(MACM)、及び/又は、ビス(4-アミノ-3-エチルシクロヘキシル)メタン(EACM)、及び/又は、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン(TMACM)、及び、(b)10〜50mol%の9〜14個の炭素原子を有する脂肪族ジアミン、特にデカンジアミン、特に好ましくは少なくとも20mol%のデカンジアミン(いずれの場合にも、ジアミンの全量に基づく)
の混合物から選択されるジアミン及び
-1種以上の脂肪族ジカルボン酸(特に6〜36個の炭素原子を有する)から構成される透明コポリアミド、
(B)0〜60質量%の少なくとも1種の別のポリマー(非晶質又は半晶質のホモ-又はコポリアミド、ポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルアミド、ポリエステルアミド及びそれらの混合物からなる群から選択される)、及び、
(C)0〜10質量%の標準的な添加剤(紫外線安定剤、熱安定剤、フリーラジカル捕捉剤、及び/又は、加工助剤、混在防止剤、潤滑剤、離型助剤、可塑剤、光学特性、特に屈折率に影響を与える機能性添加剤、衝撃改質剤、ナノスケールフィラー及び/又は別のナノスケール材料、光学的光沢剤、染料、及びそれらの混合物からなる群から選択される)
(ここで、構成要素(A)、(B)及び(C)の全体で100質量%となる)を含む、ポリアミド成形組成物。
【請求項2】
コポリアミドが、再生可能な原材料から得ることができるモノマーを主にベースとし、ここで、コポリアミド(A)及び/又は別の構成要素(B)のASTM D6866-068aに従った生物起源含有量は、少なくとも50質量%、特に50〜75質量%である、請求項1に記載の透明コポリアミドをベースとするポリアミド成形組成物。
【請求項3】
脂環式ジアミンの濃度は、全ジアミン含有量に基づいて、50〜80mol%、特に55〜75mol%の範囲内であり、脂肪族ジアミンは、全ジアミン含有量に基づいて25〜45mol%の濃度で使用される、請求項1又は2に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項4】
脂肪族二酸は、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、C36-ダイマー脂肪酸、及び、それらの混合物からなる群から選択され、ここで、特に脂肪族二酸は、二酸の全量に基づいて少なくとも20mol%の、好ましくは少なくとも30mol%の、特に好ましくは少なくとも50mol%のセバシン酸で構成され、ここで、脂肪族二酸は、セバシン酸のみであることが特に好ましい、請求項1又は2に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項5】
コポリアミド(A)は、以下の式(I)を有する鎖で特徴付けられる、請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド成形組成物。
(MACMX)x/(10Y)y/LCz (I)
(ここで、定義は以下のとおりである:
X及びY = 脂肪族ジカルボン酸(9〜18及び36個の炭素原子を有する)、
x = 25〜90mol%、
y = 5〜50mol%、
LC = ラクタム、及び/又は、アミノカルボン酸(6〜12個の炭素原子を有する)、
z = 0〜50mol%、
x + y + z = 100mol%、
そして、X、10Y及びLCで表される要素の合計は、少なくとも50質量%である)
【請求項6】
式(I)で使用される構成要素MACMXが、MACM9、MACM10、MACM11、MACM12、MACM13、MACM14、MACM15、MACM16、MACM17、MACM18、MACM36、及びそれらの混合物からなる群からの非晶質のユニットを含み、
ここで、ジアミンMACMが、ビス(4-アミノ-3-エチルシクロヘキシル)メタン(EACM)、及び/又は、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン(TMACM)、及び/又は、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)プロパンで完全に又は一部で、置換されていてもよい、請求項5に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項7】
式(I)で使用される構成要素10Yが、PA 109、PA 1010、PA 1011、PA 1012、PA 1013、PA 1014、PA 1015、PA 1016、PA 1017、PA 1018、PA 1036(単独、又は、混合物)の群から誘導されるタイプの半晶質のユニットを含む、請求項5に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項8】
式(I)の構成要素LCが、ラクタム 11、ラクタム 12、及び、α,ω-アミノカルボン酸(10〜12個の炭素原子を有する)、及び、それらの混合物から選択される、請求項5に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項9】
コポリアミド(A)のガラス転移温度が、少なくとも85℃、特に90℃〜135℃、特に好ましくは100℃〜135℃である、請求項1〜8のいずれかに記載のポリアミド成形組成物。
【請求項10】
コポリアミド(A)が、MACM9/109、MACM10/1010、MACM12/1012及びMACM14/1014からなる群から選択される、請求項1〜9のいずれかに記載のポリアミド成形組成物。
【請求項11】
ポリアミド成形組成物が、構成要素(A)と第二ポリマー(構成要素 (B))のブレンドを含み、使用される構成要素(B)が、非晶質又は半晶質のポリアミド又はコポリアミドであるポリマーを含み、
下記の式(II)を有する鎖で特徴付けられる、請求項1〜10のいずれかに記載のポリアミド成形組成物。
(MACMX)x/(PACMY)y/(MXDV)v/LCz (II)
(ここで、定義は以下のとおりである:
X、Y及びV = 脂肪族ジカルボン酸(9〜18及び36個の炭素原子を有する)、及び、テレフタル酸(T)及びイソフタル酸(I)、及び、それらの混合物、
x = 0〜100質量%、
y = 0〜100質量%、
v = 0〜100質量%、
LC = ラクタム、及び/又は、アミノカルボン酸(6〜12個の炭素原子を有する)、
z = 0〜100質量%、
v + x + y + z = 100質量%)
【請求項12】
ポリマー構成要素(A)及び(B)が、公知の圧力容器で製造され、圧縮相が250℃〜320℃であり、その後の減圧が250℃〜320℃であり、その後の液化が260℃〜320℃であり、
そして、らせん形でのポリアミド成形組成物の排出、冷却、ペレット化、及びペレットの乾燥も行われ、
構成要素(A)、及び、適切な場合(B)、及び、適切な場合(C)(ペレット形)が混合され、らせん形になるように押出機で220℃〜350℃の融解温度で成形され、ペレットになるように好適なペレット製造機で切断され、
ここで、混合プロセスの間、成形組成物を改良するために好適である添加剤、例えば、製造安定剤、着色顔料、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤、及び他の透明ポリアミド、又はナイロン-12が添加されても良い、
請求項1〜11のいずれかに記載のポリアミド成形組成物の製造方法。
【請求項13】
融解温度230℃〜320℃での射出成形法及び射出圧縮成形法によって、請求項1〜11のいずれかに記載のポリアミド成形組成物から得られうる成形物であって、
ここで、成形温度は40℃〜130℃に設定され、適切な場合、モールドは、材料が空洞に装填された後に、40℃〜130℃の温度でホット成形物に圧力を加える、成形物。
【請求項14】
CIE発光体Cを用いるByk Gardner製のヘイズガードプラス測定装置を利用して、温度23℃で、寸法2×60×60 mmのシート又は寸法2×70 mmのディスクで測られる、ASTM D1003に従って測定される光線透過率で特徴付けられ、
ここで光線透過率は少なくとも85%、好ましくは少なくとも88%、特に好ましくは少なくとも90%である、請求項13に記載の成形物。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれかに記載の透明ポリアミド成形組成物から製造された、厚み2 mmのシートについて、ASTM D1003に従って測定されたヘイズが、最大10%、好ましくは最大5%、更に特に好ましくは最大3%である、請求項13又は14に記載の成形物。
【請求項16】
制御された気候条件テストにおいて、最大で4mmの成形物の歪、好ましくは3mmの歪、特に好ましくは最大で2mmの歪で特徴付けられ、
ここで、制御された気候条件テストでの測定では、寸法100×100×2 mmのシートのたわみが、温度55℃かつ相対湿度95%で、自重下での制御された気候条件テストで測定され、このテストでは、シートの一端は25mm高くされて、168 時間後にシートのたわみが真ん中で測定される(初期条件に対する位置の変化)、
請求項1〜12のいずれかに記載の成形組成物から製造される、請求項13〜15のいずれかに記載の成形物。

【公表番号】特表2011−518932(P2011−518932A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506655(P2011−506655)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【国際出願番号】PCT/EP2009/054716
【国際公開番号】WO2009/132989
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(510022808)エーエムエス−パテント アクチェンゲゼルシャフト (12)
【Fターム(参考)】