耐圧ホース
【課題】 ホースの引き回しが簡単に行えるよう高い柔軟性と軽量化を実現し、且つホース断面形状を常に円形に維持することができる耐圧ホースを提供する。
【解決手段】 軟質合成樹脂からなり補強糸が編み込まれた内層管2と、この内層管2の外周面に管軸方向に所定のピッチで設けられる硬質合成樹脂からなる中空または溝付き補強材3と、この補強材3の外周部を架け渡すようにその補強材3を被覆する軟質合成樹脂からなる外管4とから構成される耐圧ホース1を特徴とする。
【解決手段】 軟質合成樹脂からなり補強糸が編み込まれた内層管2と、この内層管2の外周面に管軸方向に所定のピッチで設けられる硬質合成樹脂からなる中空または溝付き補強材3と、この補強材3の外周部を架け渡すようにその補強材3を被覆する軟質合成樹脂からなる外管4とから構成される耐圧ホース1を特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水、油、樹脂ペレット、穀物等の流体の吸圧送用に使用される耐圧ホースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、耐圧性能を有し且つ可撓性を備えているホースとして、内層管の外側に樹脂繊維を編み込んで補強層とし、さらにその外側に外層管を形成した断面多層構造からなる耐圧ホースが知られている。ところがこの種の耐圧ホースは、内層管と補強層と外層管とが接着されて一体化されて厚肉に構成されているため剛性が高い反面、配管が容易に行えるほどの柔軟性がなく、ホースを引き回しする場合に作業性が悪いという不都合がある。
【0003】
そこで可撓性を高めた耐圧ホースとして、図14に示す構成のものが提案されている。
【0004】
同図に示す耐圧ホース50は、軟質合成樹脂からなる内層管51の外周に硬質合成樹脂からなる補強線材52を螺旋状に巻き付けており、この補強線材52の外周に非接着状態でモノフィラメントをクロス状に編んだ補強外層53が備えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この耐圧ホース50によれば、ホース内部が高圧になると、内層管51における補強線材52の間の部分51aが外側に膨らんで補強外層53と一体になり、その補強外層53によって補強されることになり耐圧に耐えることができるようになっている。
【特許文献1】特開平11−201341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した後者の耐圧ホース50は前者の耐圧ホースに比べ、可撓性が向上しているもののホースの断面形状を円形を維持しているのは専ら補強線材52のみであるため、おのずと補強線材52は中実で剛性が高い素材を選択しなければならず、結果として重量が重くなるという欠点がある。しかも、ホース内が高圧になると内層管51の内面が波打った状態となり流路の抵抗が大きくなるという問題もある。
【0007】
本発明は以上のような従来の耐圧ホースにおける課題を考慮してなされたものであり、ホースの引き回しが簡単に行えるよう高い柔軟性と軽量化を実現し、且つホース断面形状を常に円形に維持することができる耐圧ホースを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の形態は、軟質合成樹脂からなり補強糸が編み込まれた内層管と、この内層管の外周面に管軸方向に所定のピッチで設けられる硬質合成樹脂からなる中空または溝付き補強材と、この補強材の外周部を架け渡すようにその補強材を被覆する軟質合成樹脂からなる外層管とから構成される耐圧ホースを要旨とする。
【0009】
本発明の第一の形態に従えば、内層管と外層管が軟質合成樹脂で構成されているため、容易に撓ますことができ、内層管が加圧または減圧された場合には、補強材と編み込まれた補強糸からなる耐圧構造によって内層管の断面形状が円形に保持される。
【0010】
なお、本発明における編み込まれた補強糸とは、配糸盤より複数の補強糸を供給することによって耐圧ホース製造時に編み込まれたものであってもよく、予め編み状に成形された補強糸であってもよい。補強糸としてはポリエステル、ポリアミド、ビニロン、アラミド等を使用することができる。
【0011】
また、本発明の第一の形態における補強材としては、筒状管を内層管の外周面に螺旋状に巻回したもので構成することができ、また、溝付き帯材を内層管の外周面に螺旋状に巻回したもので構成することもできる。
【0012】
また、補強材を筒状管で構成する場合の断面形状としては、矩形、多角形、円形、楕円形が含まれる。また、溝付き帯材を螺旋状に巻回することによって形成される断面形状としては、角波状(矩形、正方形、台形を含む)、半円状の丸波、三角状の波が含まれる。
【0013】
また、本発明の第一の形態において、内層管および外層管を構成する軟質合成樹脂素材としては、軟質塩化ビニル樹脂、熱可塑性エラストマー等を使用することができ、補強材を構成する硬質合成樹脂素材としては、硬質塩化ビニル樹脂、オレフィン系樹脂等を使用することができる。軟質合成樹脂と硬質合成樹脂の具体的な組み合わせとしては、例えば、軟質塩化ビニル樹脂と硬質塩化ビニル樹脂、オレフィン系樹脂とスチレン系エラストマー等が示される。
【0014】
本発明の第二の形態は、帯状成形材を螺旋状に巻回することにより平滑な外層管とすることを要旨とする。
【0015】
本発明の第二の形態に従えば、補強材が硬化する際の熱収縮の影響を受けて外層管が撓むことがなく、外層管の表面をフラットにすることができる。
【0016】
本発明の第三の形態は、軟質合成樹脂からなり補強糸が編み込まれた管と、この管の外周面に管軸方向に所定のピッチで螺旋状に巻回されることによってその管外周面上に突条を形成する硬質合成樹脂からなる蛇腹チューブと、巻回された蛇腹チューブと少なくともその蛇腹チューブ近傍の管外周面とを被覆する軟質合成樹脂からなる被覆材とから構成される耐圧ホースを要旨とする。
【0017】
本発明の第三の形態に従えば、管外周面に硬質合成樹脂からなる蛇腹チューブを巻き付けることにより突条を有する耐圧ホースとしたため、耐圧ホースの断面形状を円形に保持しつつさらに軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第一〜第三の形態によれば、ホースの引き回しが簡単に行えるよう高い柔軟性と軽量化を実現し、且つホース断面形状を常に円形に維持することができる耐圧ホースを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に示した実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0020】
本発明に係る耐圧ホースの第一の形態を図1〜図4に、第二の形態を図5〜図8に、第三の形態を図9〜図13にそれぞれ示す。
【0021】
図1において耐圧ホース1は、内層管2と、この内層管2に埋設される補強糸(後述する)と、内層管2の外面に螺旋状に巻回される補強材3と、その補強材3の外面を被覆する外層管4とから主として構成されている。
【0022】
内層管2は軟質合成樹脂、例えば軟質塩化ビニル樹脂からなる二層構造からなり、図1のA部を拡大した図2に示すように、内側に配置される第一層2aは、押出機から帯状に押し出して成形軸に対し螺旋状に巻き付ける周知の方法によって管状に成形される。
【0023】
この第一層2aの外面には、配糸盤の複数のボビンから供給される補強糸5が第一層2aの回転速度よりも速い速度と遅い速度で巻回され、それにより、第一層2aの外面に補強糸5がネット状に編み込まれる。
【0024】
このようにネット状に編み込まれた補強糸5の上からさらに第一層2aの成形方法と同じ方法で軟質塩化ビニル樹脂からなる第二層2bが巻回され、その結果、補強糸5を第一層2aおよび第二層2bで挟み込んだサンドイッチ構造の内層管2が形成される。
【0025】
このようにして形成された内層管2の外面に、補強材3が管軸方向に所定のピッチP(図1参照)で螺旋状に巻回される。
【0026】
なお、内層管2は上記実施形態では第一層2aおよび第二層2bからなる2層を有するもので構成したが、これに限らず、単独の内層外面に、断面の一部が埋設される状態で補強糸5を付設したものであってもよい。
【0027】
補強材3は硬質合成樹脂、例えば硬質ポリ塩化ビニル樹脂を凸状に押し出し成形した溝付き帯材を螺旋状に巻回したものからなり、角波の頂部に位置する外周側胴部3aと、その外周側胴部3aのチューブ長手方向両端からチューブ直径方向に平行に延設された一対の円環状板部3b,3bを有し、各円環状板部3bの内周側縁部からは互いに外向き(チューブ長手方向)に折り曲げられた固定用板部3c,3cが形成されている。これらの固定用板部3c,3cは、内層管2の外側に融着または接着され、それにより、内層管2と一体化されるようになっている。
【0028】
さらに、補強材3の外周側胴部3a同士を連絡するようにして軟質合成樹脂、例えば、軟質塩化ビニルからなる外層管4が螺旋状に巻回される。
【0029】
このようにして形成された耐圧ホース1は、内層管2と外層管4との間に補強材3が介設されることによって補強材3間に空気室Saが独立して形成されることになり、補強材3内にも空気室Sbが独立して形成される。その結果、耐圧ホース1内の各独立した空気室Sa,Sbは遮音効果並びに断熱効果をもたらすことになる。
【0030】
また、内層管2、補強材3、外層管4及び補強糸5をそれぞれ透明のもので構成すれば、耐圧ホース内を流れる流体を目視で確認することができ、例えば食品製造ラインでも好適に使用することができる。
【0031】
図1に戻って説明する。
【0032】
同図において、補強材3の巻回ピッチPが大きくなればなるほどは耐圧ホース1の柔軟性は向上するが、内層管2内が高圧、または負圧になった場合にその断面を円形に保持することが難しくなってくる。これとは逆に、巻回ピッチPを小さくしすぎると、補強材3同士が接近して軟質合成樹脂からなる内層管2と外層管4の折れ曲がりを規制してしまうことになる。このことから、補強材3の巻回ピッチPは耐圧ホースの口径に応じて決定することが好ましい。
【0033】
図3は耐圧ホースにおける補強材の第二実施例を示したものである。
【0034】
なお、以下の説明において図2と同じ構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0035】
同図に示す耐圧ホース10において図2の構成と異なるところは、補強材11が中空の角筒状に構成されている点にある。
【0036】
この補強材11は硬質塩化ビニル樹脂からなり、成形ダイから予め筒状に押し出し成形されたものを内層管2の外面に螺旋状に巻回することにより形成されている。
【0037】
この角筒状の補強材11を用いた構成によれば、補強材11の断面が箱状に形成されており、しかも補強材11と内層管2との接合において底板部11a分、厚みが増やされることになるため、図2に示した補強材3に比べ柔軟性は低くなるが剛性を高めることができるという利点がある。
【0038】
また、図4は耐圧ホースにおける補強材の第三実施例を示したものである。
【0039】
同図に示す耐圧ホース20では補強材21を円筒状に構成している。この中空の補強材21も成形ダイから押し出し成形したものである。
【0040】
この円筒状の補強材20を用いた構成によれば、補強材21と内層管2との接合面積Raが小さいため、内層管2および外層管4は補強材21による拘束度合いが小さくなり、図3に示した構成に比べると、ほぼ同等の剛性を確保しながら柔軟性を高めることができる。
【0041】
上記した各実施形態による耐圧ホースによれば、外層管4の断面が蛇腹状になっているため、耐圧ホース1を曲げやすくなる。また、耐圧ホース1同士を接続する場合に、ネジタイプの外抱き継ぎ手を使用することができるという利点がある。
【0042】
図5は本発明に係る耐圧ホースの第二の形態を示したものである。
【0043】
上述した実施形態では補強材3,11,21の外面に帯状の樹脂材を同時に螺旋状に巻き付けることによって外層管4を構成したが、これに限らず、予め冷却し帯状に成形したものを接着剤を介して補強材3,11,21の外面に固着し外層管とすることもできる。この構成によれば補強材が硬化する際の熱収縮の影響を受けて外層管4が変形する虞れがなく、図5に示すように外層管31の表面をフラットにすることができる。
【0044】
なお、外層管31の表面をフラットにする別の方法として、予め補強材3が巻回されている内層管2を、別途成形されている外層管内に遊嵌状態で挿入し、外層管を熱収縮させて中空補強材3と接合させる方法もある。ただし、この方法は耐圧ホースの径が小さい場合に限られる。
【0045】
図6は図5のB部を拡大して示したものである。
【0046】
同図に示されるように、外層管31がフラットに形成されているため、特に食料品の輸送に使用する場合、清掃が容易に行えるという利点がある。また、外面がフラットであるため配管する場合に引っ掛かりにくい。
【0047】
また、外層管31がフラットな耐圧ホースは、内層管2と外層管4との間の空気室Saの容積が図2のそれに比べて大きくなるため、断熱効果および遮音効果が向上するという利点がある。それにより、保温する必要のある流体を吸圧送する場合に適し、粉粒体の吸圧送時に使用する場合には輸送時に発生する摩擦音も抑制することができる。
【0048】
図7は図5に示した耐圧ホースにおける補強材の第二実施例を示したものであり、補強材11をフラットな外層管31で被覆したものである。
【0049】
図8は同じく補強材の第三実施例を示したものであり、補強材21をフラットな外層管31で被覆したものである。
【0050】
次に、図9〜図12は、本発明に係る耐圧ホースの第三の形態についてその構成を示したものである。
【0051】
まず図9において、耐圧ホース40は、管41と、この管41に埋設される補強糸5と、管41の外面に螺旋状に巻回されることによって管41の外周面に突条を形成する蛇腹チューブ43と、この蛇腹チューブ43の外側から被覆される被覆材44とから主として構成されている。
【0052】
管41は例えばEVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)に柔軟性を持たせる目的でゴムを所定量添加したものからなり、第一層41aと第二層41bとの間に補強糸5がネット状に編み込まれている。この補強糸5は先に説明したようにポリエステル、ポリアミド、ビニロン、アラミド等を使用することができる。
【0053】
上記管41は本実施形態では、外径:127.4mm、内径:101.6mm、突条45のピッチP3:17.9mm、肉厚:1.5mm、単位質量1250g/mのものを使用している。
【0054】
また、蛇腹チューブ43は、図10(a)の側面図およびそのC部拡大図としての図10(b)に示すように、凸部43aと凹部43bが交互に連続して角波を形成する硬質合成樹脂管からなり、チューブ全体をフレキシブルに曲げることができるようになっている。なお、蛇腹チューブ43に適用できる硬質合成樹脂としてはポリプロピレンやポリエチレン等のオレフィン系樹脂が示される。なお、蛇腹チューブ43の波形状は上記角波に限らず、三角状の波または丸波であってもよい。
【0055】
本実施形態で使用した蛇腹チューブ43は、外径:10.2mm、内径:7.2mm、凸部43aの巻回ピッチP4:2.7mm、凸部43aの山部肉厚:0.25mm、単位質量11g/mのものを使用したが、この種の蛇腹チューブ43は、電装用ハーネスを収納する際に使用されているハーネス蛇腹と同種である。
【0056】
このような構成の蛇腹チューブ43が、図9に示した管41の外周面に所定のピッチP3で螺旋状に巻回されている。
【0057】
蛇腹チューブ43はそれ自身、フレキシブル性を備えているため、管41の外周面にぴったり沿わせた状態で巻き付けることが可能である。
【0058】
また、角波断面構造の蛇腹チューブ43は肉厚が薄くとも偏平強度が高いという特性を持っているため、その蛇腹チューブ43を管41の外周面に何度も巻き付けて固定することにより形成された耐圧ホースは、外力が作用しても耐圧ホースの断面形状を常に円形に保持することができる。
【0059】
次に、図11(a)に示す断面形状d1がフラットなストレート管D1と同図(b)に示す断面形状d2が角波の蛇腹チューブD2との強度を比較する。
【0060】
比較対象は外径:10.2mm、内径:9.41mm、肉厚:0.393mmのストレート管D1と、外径:10.2mm、内径:7.2mm、肉厚:0.250mm、凸部のピッチP5:2.75mmの蛇腹チューブD2である。ただし、ストレート管D1と蛇腹チューブD2の質量は同じである。
【0061】
ストレート管D1の断面二次モーメントI1は0.139×10−5であり、蛇腹チューブD2の断面二次モーメントI2は2.356×10−5である。
【0062】
パイプの偏平強度Wは、下記式
W=(Y×E×I)/(0.1488×R3)
で求められる。
【0063】
ただし、W:偏平強度(単位長さ当たりの荷重)[N/cm]、Y:変形量[cm]、E:パイプ材のヤング率[N/cm2]、I:パイプ壁の断面二次モーメント[cm4/cm]、R:パイプの平均直径[cm]
【0064】
ストレート管D1と蛇腹チューブD2の断面二次モーメントを上記式に代入してそれぞれの偏平強度Wを求めると、
ストレート管D1の偏平強度W1は
W1=(Y×E×0.139×10−5)/(0.1488×0.493)=0.000079YE
【0065】
一方、蛇腹チューブD2の偏平強度W2は、
W2=(Y×E×2.356×10−5)/(0.1488×0.4353)=0.00192YEとして求められる。蛇腹チューブD2の偏平強度W2をストレート管D1の偏平強度W1で除算すると、
W2/W1≒24
【0066】
すなわち、蛇腹チューブD2は同じ質量のストレート管D1に比べ偏平強度が約24倍高くなる。このことは換言すれば、同じ偏平強度を得る場合、蛇腹チューブはストレート管に比べ大幅に軽量化を図ることができることになる。
【0067】
また、被覆材44は、厚さ0.7mmのテープ状の軟質合成樹脂からなり、蛇腹チューブ43が巻回された後、蛇腹チューブ43に沿ってその外面を覆うようにして巻回されることにより、蛇腹チューブ43を管41の外面に固定するようになっている。
【0068】
被覆材44用の軟質合成樹脂としては例えばEVA等を使用することができるが、蛇腹チューブ43を覆うことができる柔軟性を損なわない限り、強度を高めることを目的として軟質合成樹脂以外にポリプロピレンやポリエチレン等を含むことができ、また、補強や増量を目的としてポリプロピレン(またはポリエチレンン)にフィラーを含むこともできる。
【0069】
上記被覆材44は互いに隙間wを確保した状態で巻回されるようになっており、このように巻回した場合は管41の柔軟性を低下させることがない。
【0070】
被覆材44は、上記実施形態では隙間wを空けて巻回したが、これに限らず、図12に示す耐圧ホース46のように被覆材47の縁部を重ね合わせた状態で巻回することもできる。
【0071】
以下、具体的に説明するが、図12において図9と同じ構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0072】
図12に示す被覆材47は、蛇腹チューブ43と管41の外面全体を被覆するようにして巻回される。
【0073】
この場合の被覆材47は、図13に示すように、管41の外周面に沿って蛇腹チューブ43が巻き付けられた後、その蛇腹チューブ43に沿って且つその蛇腹チューブ43を覆うようにして巻き付けられるが、被覆材47の巻付方向下流側の縁部47aは次に巻回される蛇腹チューブ43の近傍まで延設されている。したがって、次の蛇腹チューブ43が巻回された後、次の被覆材47が巻き付けられると、次の被覆材47の巻付方向上流側の端部47bと上記した巻付方向下流側の端部47aとが重ね合わされる。それにより、被覆材47は、蛇腹チューブ43および隣接する蛇腹チューブ43の間に位置する管41の外面とを連続して被覆することになる。
【0074】
このような構成の耐圧ホース46によれば、被覆材47が連続して巻き付けられ一体化されると、蛇腹チューブ43の外側にさらに外層管が形成されることにより蛇腹チューブ43の配置が安定し、図9に示した耐圧ホース40に比べ柔軟性は若干低下するものの偏平強度を高めることができるようになる。
【0075】
なお、上記各実施形態に示される耐圧ホースは、土木工事における泥水の吸圧送用として、水、食料品、油、製造中間物である流体の輸送用として、樹脂ペレットやセメント等の粉粒体の吸圧送用として、また、穀物の吸圧送用として適用することができる。
【0076】
また、本実施形態の中空補強材は上記実施形態では内層管に対し螺旋状に巻き付けることによって構成したが、ホース長手方向にリング状に独立したものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係る耐圧ホースの第一の形態について一部切欠きを有する状態で示した側面図である。
【図2】図1のA部拡大断面図である。
【図3】中空補強材の第二実施例を示す図2相当図である。
【図4】中空補強材の第三実施例を示す図2相当図である。
【図5】本発明に係る耐圧ホースの第二の形態について一部切欠きを有する状態で示した側面図である。
【図6】図5のB部拡大断面図である。
【図7】中空補強材の第二実施例を示す図6相当図である。
【図8】中空補強材の第三実施例を示す図6相当図である。
【図9】本発明に係る耐圧ホースの第三の形態について一部切欠きを有する状態で示した側面図である。
【図10】(a)は図9に示す蛇腹チューブの一部切欠きを有する側面図、(b)はそのC部拡大断面図である。
【図11】(a)は偏平強度の比較例としてのストレートパイプの説明図、(b)は蛇腹チューブの説明図である。
【図12】蛇腹チューブを被覆する被覆材が耐圧ホースの外層を構成している一部切欠きを有する側面図である。
【図13】図12の被覆材の巻き付け状態を示す要部拡大断面図である。
【図14】従来の耐圧ホースの構成を示す一部切欠きを有する側面図である。
【符号の説明】
【0078】
1 耐圧ホース
2 内層管
2a 第一層
2b 第二層
3 補強材
3a 外周側胴部
3b 円環状板部
3c 固定用板部
4 外層管
5 補強糸
10 耐圧ホース
11 補強材
21 補強材
31 外層管
40 耐圧ホース
41 管
43 蛇腹チューブ
44 被覆材
【技術分野】
【0001】
本発明は水、油、樹脂ペレット、穀物等の流体の吸圧送用に使用される耐圧ホースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、耐圧性能を有し且つ可撓性を備えているホースとして、内層管の外側に樹脂繊維を編み込んで補強層とし、さらにその外側に外層管を形成した断面多層構造からなる耐圧ホースが知られている。ところがこの種の耐圧ホースは、内層管と補強層と外層管とが接着されて一体化されて厚肉に構成されているため剛性が高い反面、配管が容易に行えるほどの柔軟性がなく、ホースを引き回しする場合に作業性が悪いという不都合がある。
【0003】
そこで可撓性を高めた耐圧ホースとして、図14に示す構成のものが提案されている。
【0004】
同図に示す耐圧ホース50は、軟質合成樹脂からなる内層管51の外周に硬質合成樹脂からなる補強線材52を螺旋状に巻き付けており、この補強線材52の外周に非接着状態でモノフィラメントをクロス状に編んだ補強外層53が備えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この耐圧ホース50によれば、ホース内部が高圧になると、内層管51における補強線材52の間の部分51aが外側に膨らんで補強外層53と一体になり、その補強外層53によって補強されることになり耐圧に耐えることができるようになっている。
【特許文献1】特開平11−201341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した後者の耐圧ホース50は前者の耐圧ホースに比べ、可撓性が向上しているもののホースの断面形状を円形を維持しているのは専ら補強線材52のみであるため、おのずと補強線材52は中実で剛性が高い素材を選択しなければならず、結果として重量が重くなるという欠点がある。しかも、ホース内が高圧になると内層管51の内面が波打った状態となり流路の抵抗が大きくなるという問題もある。
【0007】
本発明は以上のような従来の耐圧ホースにおける課題を考慮してなされたものであり、ホースの引き回しが簡単に行えるよう高い柔軟性と軽量化を実現し、且つホース断面形状を常に円形に維持することができる耐圧ホースを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の形態は、軟質合成樹脂からなり補強糸が編み込まれた内層管と、この内層管の外周面に管軸方向に所定のピッチで設けられる硬質合成樹脂からなる中空または溝付き補強材と、この補強材の外周部を架け渡すようにその補強材を被覆する軟質合成樹脂からなる外層管とから構成される耐圧ホースを要旨とする。
【0009】
本発明の第一の形態に従えば、内層管と外層管が軟質合成樹脂で構成されているため、容易に撓ますことができ、内層管が加圧または減圧された場合には、補強材と編み込まれた補強糸からなる耐圧構造によって内層管の断面形状が円形に保持される。
【0010】
なお、本発明における編み込まれた補強糸とは、配糸盤より複数の補強糸を供給することによって耐圧ホース製造時に編み込まれたものであってもよく、予め編み状に成形された補強糸であってもよい。補強糸としてはポリエステル、ポリアミド、ビニロン、アラミド等を使用することができる。
【0011】
また、本発明の第一の形態における補強材としては、筒状管を内層管の外周面に螺旋状に巻回したもので構成することができ、また、溝付き帯材を内層管の外周面に螺旋状に巻回したもので構成することもできる。
【0012】
また、補強材を筒状管で構成する場合の断面形状としては、矩形、多角形、円形、楕円形が含まれる。また、溝付き帯材を螺旋状に巻回することによって形成される断面形状としては、角波状(矩形、正方形、台形を含む)、半円状の丸波、三角状の波が含まれる。
【0013】
また、本発明の第一の形態において、内層管および外層管を構成する軟質合成樹脂素材としては、軟質塩化ビニル樹脂、熱可塑性エラストマー等を使用することができ、補強材を構成する硬質合成樹脂素材としては、硬質塩化ビニル樹脂、オレフィン系樹脂等を使用することができる。軟質合成樹脂と硬質合成樹脂の具体的な組み合わせとしては、例えば、軟質塩化ビニル樹脂と硬質塩化ビニル樹脂、オレフィン系樹脂とスチレン系エラストマー等が示される。
【0014】
本発明の第二の形態は、帯状成形材を螺旋状に巻回することにより平滑な外層管とすることを要旨とする。
【0015】
本発明の第二の形態に従えば、補強材が硬化する際の熱収縮の影響を受けて外層管が撓むことがなく、外層管の表面をフラットにすることができる。
【0016】
本発明の第三の形態は、軟質合成樹脂からなり補強糸が編み込まれた管と、この管の外周面に管軸方向に所定のピッチで螺旋状に巻回されることによってその管外周面上に突条を形成する硬質合成樹脂からなる蛇腹チューブと、巻回された蛇腹チューブと少なくともその蛇腹チューブ近傍の管外周面とを被覆する軟質合成樹脂からなる被覆材とから構成される耐圧ホースを要旨とする。
【0017】
本発明の第三の形態に従えば、管外周面に硬質合成樹脂からなる蛇腹チューブを巻き付けることにより突条を有する耐圧ホースとしたため、耐圧ホースの断面形状を円形に保持しつつさらに軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第一〜第三の形態によれば、ホースの引き回しが簡単に行えるよう高い柔軟性と軽量化を実現し、且つホース断面形状を常に円形に維持することができる耐圧ホースを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に示した実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0020】
本発明に係る耐圧ホースの第一の形態を図1〜図4に、第二の形態を図5〜図8に、第三の形態を図9〜図13にそれぞれ示す。
【0021】
図1において耐圧ホース1は、内層管2と、この内層管2に埋設される補強糸(後述する)と、内層管2の外面に螺旋状に巻回される補強材3と、その補強材3の外面を被覆する外層管4とから主として構成されている。
【0022】
内層管2は軟質合成樹脂、例えば軟質塩化ビニル樹脂からなる二層構造からなり、図1のA部を拡大した図2に示すように、内側に配置される第一層2aは、押出機から帯状に押し出して成形軸に対し螺旋状に巻き付ける周知の方法によって管状に成形される。
【0023】
この第一層2aの外面には、配糸盤の複数のボビンから供給される補強糸5が第一層2aの回転速度よりも速い速度と遅い速度で巻回され、それにより、第一層2aの外面に補強糸5がネット状に編み込まれる。
【0024】
このようにネット状に編み込まれた補強糸5の上からさらに第一層2aの成形方法と同じ方法で軟質塩化ビニル樹脂からなる第二層2bが巻回され、その結果、補強糸5を第一層2aおよび第二層2bで挟み込んだサンドイッチ構造の内層管2が形成される。
【0025】
このようにして形成された内層管2の外面に、補強材3が管軸方向に所定のピッチP(図1参照)で螺旋状に巻回される。
【0026】
なお、内層管2は上記実施形態では第一層2aおよび第二層2bからなる2層を有するもので構成したが、これに限らず、単独の内層外面に、断面の一部が埋設される状態で補強糸5を付設したものであってもよい。
【0027】
補強材3は硬質合成樹脂、例えば硬質ポリ塩化ビニル樹脂を凸状に押し出し成形した溝付き帯材を螺旋状に巻回したものからなり、角波の頂部に位置する外周側胴部3aと、その外周側胴部3aのチューブ長手方向両端からチューブ直径方向に平行に延設された一対の円環状板部3b,3bを有し、各円環状板部3bの内周側縁部からは互いに外向き(チューブ長手方向)に折り曲げられた固定用板部3c,3cが形成されている。これらの固定用板部3c,3cは、内層管2の外側に融着または接着され、それにより、内層管2と一体化されるようになっている。
【0028】
さらに、補強材3の外周側胴部3a同士を連絡するようにして軟質合成樹脂、例えば、軟質塩化ビニルからなる外層管4が螺旋状に巻回される。
【0029】
このようにして形成された耐圧ホース1は、内層管2と外層管4との間に補強材3が介設されることによって補強材3間に空気室Saが独立して形成されることになり、補強材3内にも空気室Sbが独立して形成される。その結果、耐圧ホース1内の各独立した空気室Sa,Sbは遮音効果並びに断熱効果をもたらすことになる。
【0030】
また、内層管2、補強材3、外層管4及び補強糸5をそれぞれ透明のもので構成すれば、耐圧ホース内を流れる流体を目視で確認することができ、例えば食品製造ラインでも好適に使用することができる。
【0031】
図1に戻って説明する。
【0032】
同図において、補強材3の巻回ピッチPが大きくなればなるほどは耐圧ホース1の柔軟性は向上するが、内層管2内が高圧、または負圧になった場合にその断面を円形に保持することが難しくなってくる。これとは逆に、巻回ピッチPを小さくしすぎると、補強材3同士が接近して軟質合成樹脂からなる内層管2と外層管4の折れ曲がりを規制してしまうことになる。このことから、補強材3の巻回ピッチPは耐圧ホースの口径に応じて決定することが好ましい。
【0033】
図3は耐圧ホースにおける補強材の第二実施例を示したものである。
【0034】
なお、以下の説明において図2と同じ構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0035】
同図に示す耐圧ホース10において図2の構成と異なるところは、補強材11が中空の角筒状に構成されている点にある。
【0036】
この補強材11は硬質塩化ビニル樹脂からなり、成形ダイから予め筒状に押し出し成形されたものを内層管2の外面に螺旋状に巻回することにより形成されている。
【0037】
この角筒状の補強材11を用いた構成によれば、補強材11の断面が箱状に形成されており、しかも補強材11と内層管2との接合において底板部11a分、厚みが増やされることになるため、図2に示した補強材3に比べ柔軟性は低くなるが剛性を高めることができるという利点がある。
【0038】
また、図4は耐圧ホースにおける補強材の第三実施例を示したものである。
【0039】
同図に示す耐圧ホース20では補強材21を円筒状に構成している。この中空の補強材21も成形ダイから押し出し成形したものである。
【0040】
この円筒状の補強材20を用いた構成によれば、補強材21と内層管2との接合面積Raが小さいため、内層管2および外層管4は補強材21による拘束度合いが小さくなり、図3に示した構成に比べると、ほぼ同等の剛性を確保しながら柔軟性を高めることができる。
【0041】
上記した各実施形態による耐圧ホースによれば、外層管4の断面が蛇腹状になっているため、耐圧ホース1を曲げやすくなる。また、耐圧ホース1同士を接続する場合に、ネジタイプの外抱き継ぎ手を使用することができるという利点がある。
【0042】
図5は本発明に係る耐圧ホースの第二の形態を示したものである。
【0043】
上述した実施形態では補強材3,11,21の外面に帯状の樹脂材を同時に螺旋状に巻き付けることによって外層管4を構成したが、これに限らず、予め冷却し帯状に成形したものを接着剤を介して補強材3,11,21の外面に固着し外層管とすることもできる。この構成によれば補強材が硬化する際の熱収縮の影響を受けて外層管4が変形する虞れがなく、図5に示すように外層管31の表面をフラットにすることができる。
【0044】
なお、外層管31の表面をフラットにする別の方法として、予め補強材3が巻回されている内層管2を、別途成形されている外層管内に遊嵌状態で挿入し、外層管を熱収縮させて中空補強材3と接合させる方法もある。ただし、この方法は耐圧ホースの径が小さい場合に限られる。
【0045】
図6は図5のB部を拡大して示したものである。
【0046】
同図に示されるように、外層管31がフラットに形成されているため、特に食料品の輸送に使用する場合、清掃が容易に行えるという利点がある。また、外面がフラットであるため配管する場合に引っ掛かりにくい。
【0047】
また、外層管31がフラットな耐圧ホースは、内層管2と外層管4との間の空気室Saの容積が図2のそれに比べて大きくなるため、断熱効果および遮音効果が向上するという利点がある。それにより、保温する必要のある流体を吸圧送する場合に適し、粉粒体の吸圧送時に使用する場合には輸送時に発生する摩擦音も抑制することができる。
【0048】
図7は図5に示した耐圧ホースにおける補強材の第二実施例を示したものであり、補強材11をフラットな外層管31で被覆したものである。
【0049】
図8は同じく補強材の第三実施例を示したものであり、補強材21をフラットな外層管31で被覆したものである。
【0050】
次に、図9〜図12は、本発明に係る耐圧ホースの第三の形態についてその構成を示したものである。
【0051】
まず図9において、耐圧ホース40は、管41と、この管41に埋設される補強糸5と、管41の外面に螺旋状に巻回されることによって管41の外周面に突条を形成する蛇腹チューブ43と、この蛇腹チューブ43の外側から被覆される被覆材44とから主として構成されている。
【0052】
管41は例えばEVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)に柔軟性を持たせる目的でゴムを所定量添加したものからなり、第一層41aと第二層41bとの間に補強糸5がネット状に編み込まれている。この補強糸5は先に説明したようにポリエステル、ポリアミド、ビニロン、アラミド等を使用することができる。
【0053】
上記管41は本実施形態では、外径:127.4mm、内径:101.6mm、突条45のピッチP3:17.9mm、肉厚:1.5mm、単位質量1250g/mのものを使用している。
【0054】
また、蛇腹チューブ43は、図10(a)の側面図およびそのC部拡大図としての図10(b)に示すように、凸部43aと凹部43bが交互に連続して角波を形成する硬質合成樹脂管からなり、チューブ全体をフレキシブルに曲げることができるようになっている。なお、蛇腹チューブ43に適用できる硬質合成樹脂としてはポリプロピレンやポリエチレン等のオレフィン系樹脂が示される。なお、蛇腹チューブ43の波形状は上記角波に限らず、三角状の波または丸波であってもよい。
【0055】
本実施形態で使用した蛇腹チューブ43は、外径:10.2mm、内径:7.2mm、凸部43aの巻回ピッチP4:2.7mm、凸部43aの山部肉厚:0.25mm、単位質量11g/mのものを使用したが、この種の蛇腹チューブ43は、電装用ハーネスを収納する際に使用されているハーネス蛇腹と同種である。
【0056】
このような構成の蛇腹チューブ43が、図9に示した管41の外周面に所定のピッチP3で螺旋状に巻回されている。
【0057】
蛇腹チューブ43はそれ自身、フレキシブル性を備えているため、管41の外周面にぴったり沿わせた状態で巻き付けることが可能である。
【0058】
また、角波断面構造の蛇腹チューブ43は肉厚が薄くとも偏平強度が高いという特性を持っているため、その蛇腹チューブ43を管41の外周面に何度も巻き付けて固定することにより形成された耐圧ホースは、外力が作用しても耐圧ホースの断面形状を常に円形に保持することができる。
【0059】
次に、図11(a)に示す断面形状d1がフラットなストレート管D1と同図(b)に示す断面形状d2が角波の蛇腹チューブD2との強度を比較する。
【0060】
比較対象は外径:10.2mm、内径:9.41mm、肉厚:0.393mmのストレート管D1と、外径:10.2mm、内径:7.2mm、肉厚:0.250mm、凸部のピッチP5:2.75mmの蛇腹チューブD2である。ただし、ストレート管D1と蛇腹チューブD2の質量は同じである。
【0061】
ストレート管D1の断面二次モーメントI1は0.139×10−5であり、蛇腹チューブD2の断面二次モーメントI2は2.356×10−5である。
【0062】
パイプの偏平強度Wは、下記式
W=(Y×E×I)/(0.1488×R3)
で求められる。
【0063】
ただし、W:偏平強度(単位長さ当たりの荷重)[N/cm]、Y:変形量[cm]、E:パイプ材のヤング率[N/cm2]、I:パイプ壁の断面二次モーメント[cm4/cm]、R:パイプの平均直径[cm]
【0064】
ストレート管D1と蛇腹チューブD2の断面二次モーメントを上記式に代入してそれぞれの偏平強度Wを求めると、
ストレート管D1の偏平強度W1は
W1=(Y×E×0.139×10−5)/(0.1488×0.493)=0.000079YE
【0065】
一方、蛇腹チューブD2の偏平強度W2は、
W2=(Y×E×2.356×10−5)/(0.1488×0.4353)=0.00192YEとして求められる。蛇腹チューブD2の偏平強度W2をストレート管D1の偏平強度W1で除算すると、
W2/W1≒24
【0066】
すなわち、蛇腹チューブD2は同じ質量のストレート管D1に比べ偏平強度が約24倍高くなる。このことは換言すれば、同じ偏平強度を得る場合、蛇腹チューブはストレート管に比べ大幅に軽量化を図ることができることになる。
【0067】
また、被覆材44は、厚さ0.7mmのテープ状の軟質合成樹脂からなり、蛇腹チューブ43が巻回された後、蛇腹チューブ43に沿ってその外面を覆うようにして巻回されることにより、蛇腹チューブ43を管41の外面に固定するようになっている。
【0068】
被覆材44用の軟質合成樹脂としては例えばEVA等を使用することができるが、蛇腹チューブ43を覆うことができる柔軟性を損なわない限り、強度を高めることを目的として軟質合成樹脂以外にポリプロピレンやポリエチレン等を含むことができ、また、補強や増量を目的としてポリプロピレン(またはポリエチレンン)にフィラーを含むこともできる。
【0069】
上記被覆材44は互いに隙間wを確保した状態で巻回されるようになっており、このように巻回した場合は管41の柔軟性を低下させることがない。
【0070】
被覆材44は、上記実施形態では隙間wを空けて巻回したが、これに限らず、図12に示す耐圧ホース46のように被覆材47の縁部を重ね合わせた状態で巻回することもできる。
【0071】
以下、具体的に説明するが、図12において図9と同じ構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0072】
図12に示す被覆材47は、蛇腹チューブ43と管41の外面全体を被覆するようにして巻回される。
【0073】
この場合の被覆材47は、図13に示すように、管41の外周面に沿って蛇腹チューブ43が巻き付けられた後、その蛇腹チューブ43に沿って且つその蛇腹チューブ43を覆うようにして巻き付けられるが、被覆材47の巻付方向下流側の縁部47aは次に巻回される蛇腹チューブ43の近傍まで延設されている。したがって、次の蛇腹チューブ43が巻回された後、次の被覆材47が巻き付けられると、次の被覆材47の巻付方向上流側の端部47bと上記した巻付方向下流側の端部47aとが重ね合わされる。それにより、被覆材47は、蛇腹チューブ43および隣接する蛇腹チューブ43の間に位置する管41の外面とを連続して被覆することになる。
【0074】
このような構成の耐圧ホース46によれば、被覆材47が連続して巻き付けられ一体化されると、蛇腹チューブ43の外側にさらに外層管が形成されることにより蛇腹チューブ43の配置が安定し、図9に示した耐圧ホース40に比べ柔軟性は若干低下するものの偏平強度を高めることができるようになる。
【0075】
なお、上記各実施形態に示される耐圧ホースは、土木工事における泥水の吸圧送用として、水、食料品、油、製造中間物である流体の輸送用として、樹脂ペレットやセメント等の粉粒体の吸圧送用として、また、穀物の吸圧送用として適用することができる。
【0076】
また、本実施形態の中空補強材は上記実施形態では内層管に対し螺旋状に巻き付けることによって構成したが、ホース長手方向にリング状に独立したものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係る耐圧ホースの第一の形態について一部切欠きを有する状態で示した側面図である。
【図2】図1のA部拡大断面図である。
【図3】中空補強材の第二実施例を示す図2相当図である。
【図4】中空補強材の第三実施例を示す図2相当図である。
【図5】本発明に係る耐圧ホースの第二の形態について一部切欠きを有する状態で示した側面図である。
【図6】図5のB部拡大断面図である。
【図7】中空補強材の第二実施例を示す図6相当図である。
【図8】中空補強材の第三実施例を示す図6相当図である。
【図9】本発明に係る耐圧ホースの第三の形態について一部切欠きを有する状態で示した側面図である。
【図10】(a)は図9に示す蛇腹チューブの一部切欠きを有する側面図、(b)はそのC部拡大断面図である。
【図11】(a)は偏平強度の比較例としてのストレートパイプの説明図、(b)は蛇腹チューブの説明図である。
【図12】蛇腹チューブを被覆する被覆材が耐圧ホースの外層を構成している一部切欠きを有する側面図である。
【図13】図12の被覆材の巻き付け状態を示す要部拡大断面図である。
【図14】従来の耐圧ホースの構成を示す一部切欠きを有する側面図である。
【符号の説明】
【0078】
1 耐圧ホース
2 内層管
2a 第一層
2b 第二層
3 補強材
3a 外周側胴部
3b 円環状板部
3c 固定用板部
4 外層管
5 補強糸
10 耐圧ホース
11 補強材
21 補強材
31 外層管
40 耐圧ホース
41 管
43 蛇腹チューブ
44 被覆材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質合成樹脂からなり補強糸が編み込まれた内層管と、この内層管の外周面に管軸方向に所定のピッチで設けられる硬質合成樹脂からなる中空または溝付き補強材と、この補強材の外周部を架け渡すようにその補強材を被覆する軟質合成樹脂からなる外層管とから構成されることを特徴とする耐圧ホース。
【請求項2】
上記補強材は、筒状管を上記内層管の外周面に螺旋状に巻回したものである請求項1記載の耐圧ホース。
【請求項3】
上記補強材は、溝付き帯材を上記内層管の外周面に螺旋状に巻回したものである請求項1記載の耐圧ホース。
【請求項4】
帯状成形材を螺旋状に巻回することにより平滑な上記外層管とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐圧ホース。
【請求項5】
軟質合成樹脂からなり補強糸が編み込まれた管と、この管の外周面に管軸方向に所定のピッチで螺旋状に巻回されることによってその管外周面上に突条を形成する硬質合成樹脂からなる蛇腹チューブと、巻回された上記蛇腹チューブと少なくともその蛇腹チューブ近傍の上記管外周面とを被覆する軟質合成樹脂からなる被覆材とから構成されることを特徴とする耐圧ホース。
【請求項1】
軟質合成樹脂からなり補強糸が編み込まれた内層管と、この内層管の外周面に管軸方向に所定のピッチで設けられる硬質合成樹脂からなる中空または溝付き補強材と、この補強材の外周部を架け渡すようにその補強材を被覆する軟質合成樹脂からなる外層管とから構成されることを特徴とする耐圧ホース。
【請求項2】
上記補強材は、筒状管を上記内層管の外周面に螺旋状に巻回したものである請求項1記載の耐圧ホース。
【請求項3】
上記補強材は、溝付き帯材を上記内層管の外周面に螺旋状に巻回したものである請求項1記載の耐圧ホース。
【請求項4】
帯状成形材を螺旋状に巻回することにより平滑な上記外層管とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐圧ホース。
【請求項5】
軟質合成樹脂からなり補強糸が編み込まれた管と、この管の外周面に管軸方向に所定のピッチで螺旋状に巻回されることによってその管外周面上に突条を形成する硬質合成樹脂からなる蛇腹チューブと、巻回された上記蛇腹チューブと少なくともその蛇腹チューブ近傍の上記管外周面とを被覆する軟質合成樹脂からなる被覆材とから構成されることを特徴とする耐圧ホース。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−194430(P2006−194430A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−258290(P2005−258290)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(398062574)カナフレックスコーポレーション株式会社 (62)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(398062574)カナフレックスコーポレーション株式会社 (62)
【Fターム(参考)】
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