説明

耐性デンプンとしての、直鎖ポリ−α−1,4−グルカンの使用

本発明は、耐性デンプン(RS)として、水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンの使用に、その外にサッカロースを、アミロスクラーゼの酵素活性を有するタンパク質と反応させることを特徴とする耐性デンプンの製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐性デンプン(RS)としての、直鎖α−1,4−グルカンの使用に、その外にサッカロースを、アミロスクラーゼの酵素活性を有するタンパク質と反応させることを特徴とする、耐性デンプンの製造方法に関するものである。
【0002】
基本的に、α−アミラーゼ耐性デンプン構造物は、「耐性デンプン」(RS)として公知である。RSは、α−アミラーゼによって減成されない。その減少される代謝感受性のため、耐性デンプンは、食品または食品組成物中のバラストの意味で、低エネルギー性大量生産成分を表す。
【0003】
耐性デンプン(RS)の使用は、食品産業において、ますます重要度を増している。その物質はは、RS含有製品の減成から、ほんの僅かなエネルギーを得る。このエネルギー供給分は、もっぱら結腸(colon)から吸収される短鎖脂肪酸の酸化的減成にのみ影響する。これらの短鎖脂肪酸は、腸内ミクロフローラ(腸内細菌叢)の炭水化物代謝の最終産生物である。RS含有食品の消費に伴って、腸内ミクロフローラおよび結腸上皮細胞のエネルギー代謝のための基質が利用できるようになる。後者は、その構造および機能を維持するために、短鎖脂肪酸、特にブチラートの内腔供給に依存している。結腸内の高い内腔ブチラートレベルは、結腸疾患に対する保護因子を表す。
【0004】
耐性デンプンは、以下のタイプに類別される:
RSタイプ1:消化が物理的に可能でないデンプン、例えば、部分圧搾される(milled)植物細胞(例:ミューズリ(ムエスリ)中)。
RSタイプ2:不消化性の細粒デンプン(デンプン粒)、例えば、生ジョガイモ、未熟バナナなど由来のもの。
RSタイプ3:不消化性の、もとの性質に戻る(retrograded)デンプン、例えば、熱的及び/又は酵素的処理により、ついで、もとの性質に戻って、得られるもの。
RSタイプ4:不消化性の、化学的に修飾されるデンプン、例えば、架橋またはエステル化(アセチル化など)によって形成されるもの。
【0005】
RSタイプ3の特徴は、もとの性質に戻ることによって形成される、耐性デンプンであるということである。ゼリー状のデンプンの、もとの性質に戻ること(また、再結晶化)の間に、α−アミラーゼによる酵素的加水分解の影響を受けにくい微結晶構造が形成される。
【0006】
米国特許第3,729,380号から、高度に枝分かれするアミロペクチン画分は、枝切り酵素を用いる酵素処理によって減少され得、そしてこのような枝切りされるデンプンは、天然デンプンよりも高い、もとの性質に戻る傾向を有していることが知られている。
【0007】
EP−A1−0 564 893は、RS含有生成物の製造のための方法を記述し、そこでは、最低40%のアミロースからなるデンプンの約15%水性懸濁液をゼラチン化させ、枝切り酵素で処理し、その後、生成する中間物をもとの性質に戻す。この生成物は、少なくとも、RS15%を含有する。この方法において、アミロース画分100%のデンプンを用いれば、生成物は、約50%RSを含有する。
【0008】
EP−A1−0 688 872は、いわゆる「部分減成され」、ゼラチン化させるデンプンまたは酵素的に枝切られ、もとの性質に戻されているマルトデキストリンの約20%水性懸濁液から、25〜50%RS含有生成物の製造方法を記述している。この方法においては、40%未満のアミロース画分のあるデンプンを出発物資として用いている。
【0009】
EP−A1−0 688 872において、「部分減成される」と定義されているデンプンは、適切な物理的または化学的処理によって分子量が減少されているデンプンであり、それにより、鎖長の短化は、アミロースおよびアミロペクチンの両方に影響を及す。鎖長の短化は、加水分解法(酸または酵素的に触媒される)と、押出し、酸化または熱分解の両方によって実施され得る。減成される産生物の、もとの性質に戻ることによって得られる生成物は、噴霧乾燥によって乾燥される。この粉末生成物は、50%RSを超えるRS分画を含有する。
【0010】
もとの性質に戻るデンプンは、EP−A−0846704に記述され、55%超のRS含量および115℃以下のDSC融解温度を有する。
【0011】
国際特許出願WO 00/02926−A1は、α−アミラーゼ耐性ポリサッカリドの製造方法を記述し、そこでは、水不溶性ポリ−α−1,4−D−グルカンを水中に懸濁又は分散させ、得られる懸濁又は分散液を温め、このように得られるペーストを冷し、そのペーストを加熱温度より低い温度で、もとの性質に戻す。このやり方において、65%超のRS含量を有するRS生成物が得られる。
【0012】
Schmiedlら(Carbohydrate Polymers 43, (2000), 183-193)は、さらに、α−1,4−グルカンから製造したタイプ3の耐性デンプン(Schmiedlらの刊行物中では、「耐性デンプン タイプIII」と呼称される)の酪酸様(butyrogenic)作用を記述している。
【0013】
国際特許出願WO 00/38537−A1の開示は、WO 00/02926−A1を基礎とする。WO 00/38573−A1は、なかでも、WO 00/02926−A1中の開示により記述されるように製造される耐性デンプンを含有する組成物を記述している。WO 00/38537−A1は、組成物中に用いられる耐性デンプンの形成が、「非耐性の」水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンのもとの性質に戻ることによって行われることおよびこの「非耐性の」水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンが、もとの性質に戻る後にのみ、耐性デンプンを製造することを記述している。
【0014】
結局、非粒状の、非化学修飾耐性デンプン製造のための、技術水準は、耐性デンプン構造物が、ポリサッカリドを、通常時間多消費型で高コストである、追加的なもとの性質に戻す工程に付される場合に形成されることを教示すると見て取れる。
【0015】
本発明の課題は、費用効果のよいやり方で、耐性デンプンとして使用され得るポリサッカリドを利用できるようにすることである。
【0016】
この課題は、本出願の特許請求の範囲に記述されている実施態様の提供によって解決される。
【0017】
したがって、本発明は、耐性デンプン(RS)として、水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンの使用に関する。
【0018】
驚くべきことに、水不溶性直鎖α−1,4−D−グルカンは、一以上の追加的なもとの性質に戻す工程なしに、耐性デンプンとしても使用され得ることが見出された。
【0019】
国際特許出願WO 00/38537−A1は、水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−グルカンから得られ得る耐性デンプンが、「非耐性の」水不溶性直鎖α−1,4−D−グルカンのもとの性質に戻すことを通してのみ得られ得ることを教示している。
【0020】
今や驚くべきことに、WO 00/38537−A1に記載され、そこで、もとの性質に戻すことにより、耐性デンプンの製造のための出発物質として用いられ、そこで、明確に「非耐性グルカン」として記述されている水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−グルカン自身が、驚くことに、すでに耐性デンプンを表すことが確立された。すなわち、本発明は、製造に時間やコストのかかるもとの性質に戻す工程を要さない耐性デンプンを、費用効果のよいやり方で、入手できるようにする。もとの性質に戻す工程の省略は、WO 00/02926−A1に記載される耐性デンプンの製造方法、すなわち、その水不溶性のため、ポリ−α−1,4−グルカンは、後に続くもとの性質に戻すことにかけられるようにする前には、先ず高温および/または高圧によって可溶化しなければならない方法とは対立的に、著しい有利な点を表す。高温および/または高圧の使用は、高エネルギー的であり、したがって、コストが非常にかかる。
【0021】
本発明に関連して、用語「耐性デンプン」または「RS」は、水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−グルカンからなるポリサッカリドであると理解され、そしてα−アミラーゼによる減成を受けない。本発明に従って使用される「耐性デンプン」は、RSタイプ2の粒子状デンプンではなく、また、もとの性質に戻される(RSタイプ3)でも、化学修飾されるデンプン(RSタイプ4)でもないものであり、したがって、耐性デンプンの新規なタイプを表し、よって、以後はRSタイプ5と呼ぶことにする。
【0022】
本発明記載の使用のさらなる態様において、水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンは、酵素的に製造される。
【0023】
本発明の使用の特に好ましい態様において、水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンは、アミロスクラーゼの酵素活性を有する酵素でのサッカロース水溶液の転化によって得られる。
【0024】
本発明に関連して、用語「水不溶性」は、ドイツ薬局方(Deutsches Arzneimittelbuch)(Wissenschaftliche Verlagsgesellschaft mbH, Stuttgart, Gori-Verlag GmbH, Frankfurt, 9.Edition (1987))の定義に従い、クラス4〜7に関連する、「低溶解性」、「貧溶解性」、「極貧溶解性」および「実質的不溶性」の部類に入る、ポリ−α−1,4−D−グルカンであると理解される。
【0025】
本発明に従って使用されるポリ−α−1,4−D−グルカンの水不溶解性は、好ましくは、用いられるポリサッカリドの少なくとも98%、特には、少なくとも99.5%が、標準状態(温度=25℃±20%;圧力=101,325Pa±20%)において水に不溶である(ドイツ薬局方の定義の少なくともクラス4および5に相当する)。
【0026】
ポリ−α−1,4−D−グルカンの溶解性の測定方法は、当業者に知られている。
【0027】
本発明に関連して、用語「直鎖」は、分枝を示さないか、またはそれの分枝が、通常の方法、たとえば、13C NMRスペクトル法で検出できないほど少ない、ポリ−α−1,4−D−グルカンであると理解される。
【0028】
本発明に関連して、「サッカロース水溶液」は、緩衝塩を含まなくてもよいが、好ましくは、緩衝塩を含み、サッカロース濃度が0.5〜80重量%の範囲内、好ましくは、5〜60重量%の範囲内、さらに好ましくは10〜50重量%の範囲内、特に好ましくは、20〜30重量%の範囲内にある水性溶液であると理解される。
【0029】
本発明に関連して、「アミロスクラーゼの活性を有する酵素」は、以下の反応を触媒する酵素であると理解される:
1.サッカロース+サッカロース←→オリゴ(α−1,4−グルカン)+フルクトース
2.オリゴ(α−1,4−グルカン)+サッカロース←→ポリ−(α−1,4−グルカン)n+1+フルクトース
【0030】
この反応スキーム構成から出発して、直鎖のオリゴマー状またはポリマー状のα−1,4−グルカンは、鎖延長反応のアクセプターとして働き、この反応で、本発明に従って使用される水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンに導かれ、そのグルコース残基はα−1,4−グリコシド結合によって連結され、そして、0.75×10〜10g/molの範囲、好ましくは、1×10〜10g/molの範囲、そしてより好ましくは、1×10〜3×10g/molの範囲、もっとも好ましくは、2×10〜1.2×10g/molの範囲の平均分子量を示す。
【0031】
これら直鎖のオリゴマー状またはポリマー状のα−1,4−グルカン・アクセプターは、しかしながら、外部から加えられ得るが、実施例1に記述するように、好ましくは、アミロスクラーゼ自体によって、サッカロースから製造される。
【0032】
分枝、たとえば、α−1,6−グリコシド結合は、サッカロース水溶液とアミロスクラーゼの酵素活性を有する酵素との反応で得られた生成物中では、13C NMRによって検出されない(Remaud-Simeonら、「Carbohydrate Bioengineering(炭水化物の生物工学)」(S.B.Petersen編纂), Elsevier Science B.V.(1995),313-320)。
【0033】
本発明に関連して、任意のいかなるアミロスクラーゼも、原則的には使用可能である。アミロスクラーゼの酵素活性を有するタンパク質は、当業者に公知である。好ましくは、本発明に従って用いられるアミロスクラーゼは、微生物由来、好ましくは、ナイセリア属(genus Neisseria)の細菌由来、より好ましくは、ナイセリア・ポリサッカレア(Neisseria polysaccharea)由来である。
【0034】
米国特許US6265635−B1、国際特許出願WO 00/14249−A1およびPotocki de Montalkら(Journal of Bacteriology 181(2),(1999),375-381)は、たとえば、本発明との関連で好ましい、ナイセリア・ポリサッカレア由来のアミロスクラーゼタンパク質をコードするDNA配列を記述している。さらには、アミロスクラーゼ活性を有するタンパク質の存在は、さらなるナイセリア種系列、たとえば、ナイセリア・ペルフラバ(Neisseria perflava)(OkadaおよびHehre,J.Biol.Chem.249(1974),126-135、MacKenzieら,Can.J.Microbiol.23,(1977),1303-1307)、ナイセリア・カニス(Neisseria canis)、ナイセリア・シネレア(Neisseria cinerea)、ナイセリア・デニトリフィカンス(Neisseria denitrificans)、ナイセリア・シッカ(Neisseria sicca)、ナイセリア・スブフラバ(Neisseria subflava)(MacKenzieら,Can.J.Microbiol.24,(1978),357-362)について記述されてきている。
【0035】
カウロバクター・クレセンタス(Caulobacter crescentus)CB15由来のアミロスクラーゼタンパク質をコードするDNA配列は、Complete genome sequence of Caulobacter crescentus(カウロバクター・クレセンタスの完全ゲノム配列)(2001)Proc.Natl.Acad. Sci.U.S.A. 98:4136-4141に記述され、そのDNAおよびタンパク質配列情報は、EMBLデータバンク(http://srs.ebi.ac.uk)において、ID番号AE005791およびProtein_id AAK23119.1のもとで入手可能である。
【0036】
ナイセリア・メニンジチジス(Neisseria meningitidis)93246株由来のアミロスクラーゼも公知であり、それのDNAおよびアミノ酸配列は、EMBLデータバンクのID AY099334およびProtein_id AAM51152.1でアクセス可能である。
【0037】
さらに、デイノコッカス・ラジオデュランス(Deinococcus radiodurans)R1由来のDNA配列は、公知であり(NCBI遺伝子バンクのアクセス番号NP_294657;そこではα−アミラーゼとして知られている)、それは、アミロスクラーゼ酵素活性を有するタンパク質をコードする。
【0038】
アミロスクラーゼのこのDNAおよびアミノ酸配列情報の助けを借り、好ましくは、WO 00/14249−A1に記載される配列情報の助けを借りることで、今や、当業者が、他の生物、好ましくは、微生物からの相同配列を単離することが可能である。このことは、たとえば、慣用の方法を助けにして、たとえば、適切なハイブリッド形成プローブを用いる、ゲノムバンクスクリーニングによって実行され得る。相同配列の単離が、(減成)オリゴヌクレオチドの助けを借り、そしてPCRに基づく方法の使用でも実行可能なことは、当業者に公知である。
【0039】
たとえば、EMBL(http://www.ebi.ac.uk/Tools/ index/htm)またはNCBI(National Center for Biotechnology Information(国立バイオテクノロジーインフォメーションセンター),http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)により入手され得るようなデータバンクのスクリーニングは、アミロスクラーゼの酵素活性を有するタンパク質をコードする相同配列を同定するのに役立つ。ここで、1以上の配列は、いわゆるクエリー(問合せ)としてあらかじめ設定されている。このクエリー配列は、この後、統計的なコンピュータープログラムによって、選択されるデータバンクに含まれている配列と比較される。このようなデータバンク審問(たとえば、BLASTまたはFASTA検索)は当業者に公知であり、様々なプロバイダーで実行され得る。
【0040】
このようなデータバンク審問が、たとえば、NCBI(National Center for Biotechnology Information, http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)で実行されると、それぞれの比較クエリー用にあらかじめ設定されている標準設定が当然用いられる。
【0041】
タンパク質配列比較のための設定がある(blastp):Limit Entrez(アントレ・クエリーの限定条件)=起動しない;Filter(マスキング対象)=低複雑的に起動する;Expect Value(期待値)=10;Word Size(配列断片数)=3;Matrix(マトリックス)=BLOSUM62;Gap Costs(ギャップコスト):Existence(存在)=11、Extension(範囲)=1。
【0042】
以下のパラメーターは、核酸配列比較のためのものである(blastn):Limit Entrez:起動しない;Filter=低複雑的に起動する;Expect(期待値)=10;Word Size(配列断片数)=11。
【0043】
このような、アミロスクラーゼのDNAおよびアミノ酸配列情報のデータバンク検索においては、WO 00/14249−A1に記載される配列情報は、たとえば、アミロスクラーゼの酵素活性を有するタンパク質をコードする、さらなる核酸分子および/またはタンパク質を同定するために、クエリーとして使用され得る。
【0044】
アミロスクラーゼ活性を有するタンパク質の酵素活性は、たとえば、国際特許出願WO 95/31553−A1の実施例6に記載されているように、E.coli(大腸菌)中のアミロスクラーゼ遺伝子の発現およびそれに続くE.coli細胞のヨウ素による青い発色によって、極めて簡単に検出され得る。
【0045】
本特許による使用の好ましい態様において、サッカロース水溶液の転化は、インビトロでアミロスクラーゼの酵素活性を有する酵素によって実行される。
【0046】
国際特許出願WO 99/67412−A1(実施例3)(米国特許出願US20020052029−A1に相当)、WO 00/38537−A1(実施例1)およびde Montalkら(FEBS letters 471,(2000),219-223)は、たとえば、アミロスクラーゼによるポリ−α−1,4−D−グルカンのインビトロ製造方法を開示している。これらの文書類の開示について、明示的な参照が本明細書にされる。さらに、本特許出願の実施例1に、ポリ−α−1,4−D−グルカンのインビトロ製造方法が記述されている。
【0047】
本発明の特に好ましい態様において、ポリ−α−1,4−D−グルカンのインビトロ製造が、精製アミロスクラーゼを用いて実行される。本発明に関連して、精製アミロスクラーゼは、タンパク質が合成される細胞成分が本質的に存在しない酵素であると理解される。好ましくは、用語「精製アミロスクラーゼ」は、妨害的な酵素活性(たとえば、分枝酵素活性)を有しないアミロスクラーゼを意味する。優先的に、「精製アミロスクラーゼ」は、少なくとも80%、好ましくは、少なくとも90%、より好ましくは少なくとも、95%の純度レベルを有する。
【0048】
アミロスクラーゼの精製方法は、当業者に公知であり、そして、たとえば、国際特許出願WO 99/67412−A1(実施例1)に記述されている。
【0049】
本発明のさらなる態様において、アミロスクラーゼを用いる、ポリ−α−1,4−D−グルカンのインビトロ製造は、外部の直鎖グルコシル基アクセプターの存在下でおこる。本発明の状況において、用語「外部の直鎖グルコシル基アクセプター」は、直鎖状のオリゴ−またはポリサッカリド、たとえば、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、マルトヘプタオースであって、インビトロ系に外部から加えられると理解され、そしてアミロスクラーゼによるサッカロース転化の初期速度を増大させる立場にある。
【0050】
本発明のさらなる特に好ましい態様において、アミロスクラーゼによるポリ−α−1,4−D−グルカンのインビトロ製造は、外部の分枝状グルコシル基アクセプターの非存在下で起こる。本発明の状況において、用語「外部の分枝状グルコシル基アクセプター」は、分枝状の炭水化物分子、たとえば、グリコーゲンまたはアミロペクチンであって、インビトロ系に外部から加えられるか、または、たとえば、アミロスクラーゼ酵素抽出物の成分として、すでに反応混合物中に存在していて、アミロスクラーゼによるサッカロース転化の初期速度を増大させる立場にあることを理解される。
【0051】
本発明による使用のさらなる態様において、サッカロース水溶液の転化は、アミロスクラーゼ酵素活性を有する酵素と、インプランタで起こる。
【0052】
国際特許出願WO 95/31553−A1および相当する米国特許、US6265635−B1は、アミロスクラーゼによって、ポリ−α−1,4−D−グルカンのインプランタ製造方法を開示している。この特許出願および特許明細書に、明示的な参照が本明細書でなされる。
【0053】
本発明の出願のさらなる態様において、ポリ−α−1,4−D−グルカンの酵素的製造は、アミロマルターゼ酵素活性を有する酵素により行われる。
【0054】
本発明に関連して、「アミロマルターゼ」は、酵素[E.C.2.4.1.3.]であって、マルトースの、マルトトリオースおよびグルコースへの転化を触媒し、そして反応平衡からのグルコースの除去により、たとえば、グルコースの酸化によって、ポリ−α−1,4−D−グルカン合成を触媒するものと理解される(Palmerら、FEBS Letters 1,(1968), 1-3)。
【0055】
水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンであって、本明細書に記述される性質(水に不溶、分枝なし、10〜10g/molの間の分子量)を示すが、しかし異なる方法で製造されるものも、本発明に従う使用の出発物質であり得る。
【0056】
本発明による使用のさらなる態様において、水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンは、Englystらの方法(European Journal of Clinical Nutrition 46,(Supp.23),(1992), S33-50)に従って、決定される、70重量%以上のRS含量を表す。本発明に関連して、RS含量を決定するために、好ましく使用されるEnglystらの方法は、実施例1に記述される。
【0057】
本発明のさらなる態様において、本発明に従って用いられる水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンは、Englystらの方法によって決定される、75重量%以上、好ましくは、80重量%以上、より好ましくは85重量%以上のRS含量を表す。
【0058】
発明に従って用いられるポリ−α−1,4−D−グルカンは、高RS含量を表す。このことは、当業者にとってはまったくの驚きであるが、そのわけは、WO 00/38537−A1の開示内容を基にすると、当業者(he)は、本発明に従って使用されるポリ−α−1,4−D−グルカンは、「非耐性」構造物、すなわち、α−アミラーゼによって減成されやすい構造物を形成するであろうと仮定であるからである。
【0059】
今や驚くべきことに、WO 00/38537−A1の開示に反して、本発明に従って用いられるポリ−α−1,4−D−グルカンは、追加的なもとの性質に戻す工程に付されることなしに、すでに、70重量%以上の、好ましくは、80重量%以上の、より好ましくは、85重量%以上のRS含量を表すことが見いだされた。
【0060】
本発明に関連して、「もとの性質に戻すこと」(また、再結晶)は、ポリサッカリド懸濁液またはポリサッカリド分散液を、少なくとも1回の加熱する工程および少なくとも1回の冷却する工程からなる方法を意味するものと理解される。加熱工程の間に、ポリサッカリド懸濁液またはポリサッカリド分散液はゼラチン化し、冷却段階中に、α−アミラーゼによる酵素的加水分解を受けない微結晶構造物が形成される。
【0061】
さらに、本発明に従って使用されるポリ−α−1,4−D−グルカンは、結腸中で、短鎖脂肪酸、特にブチラート形成を促進させ、従って、結腸疾患予防のための栄養補足剤として使用するのに適していることが見いだされた。
【0062】
本発明による使用のさらなる態様において、水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンは、95〜125℃の間、好ましくは、100〜120℃の間、より好ましくは、105〜116℃の間のDSCピーク温度を表す。
【0063】
「示差走査熱量測定」(DSC)法は、当業者に公知である。DSC測定の結果は、RS生成物の熱安定性の評価に用いられる。本発明に関連して、好ましく用いられるDSC法は、本特許出願の実施例3に記述されている。
【0064】
DSC測定曲線の吸熱ピークは、種々のパラメーター(T、T、TおよびdH)によって、より密接に特徴づけられる。開始温度Tは、熱転移の始まりを特徴づける。T値(T=DSCピーク温度)において、結晶物質の最大熱転移が起こる温度が読み取られ、一方、Tは、転移過程が完結する温度(終点温度)を表す。
【0065】
転移エネルギーdH(転移エンタルピー)は、ピーク面積の算定によって決定される。これは、転移に必要な全エネルギーを表す。
【0066】
本発明による使用のさらなる態様において、水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンは、10〜30J/g、好ましくは、11〜25J/g、そしてより好ましくは、20〜24J/gの相転移エネルギーdHのDSCエネルギーを表す。
【0067】
本発明による使用のさらなる好ましい態様において、水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンは、修飾されておらず、好ましくは、もとの性質に戻らない。
【0068】
本発明に関連して、用語「修飾されない」は、本発明に従って使用されるポリ−α−1,4−グルカンが、酵素反応により、好ましくは、アミロスクラーゼによるサッカロース水溶液の転化により製造され、そしてポリ−α−1,4−D−グルカンの製造および単離の後、それにつづく化学的および/または物理的修飾をされず、好ましくは、もとの性質に戻さないことを意味する。
【0069】
この手法は、先行技術に記述されている耐性デンプン、特に、RSタイプ3の製造方法とは異なり、コストや時間のかかるもとの性質に戻す工程を除外されるという有利な点を提供する。
【0070】
本発明のさらなる態様において、耐性デンプンとして、わずかに分枝する水不溶性ポリ−α−1,4−D−グルカンの使用に関する。
【0071】
本発明に関連して、用語「わずかに分枝する」は、1%未満、好ましくは、0.5%未満、そしてより好ましくは、0.25未満の分枝度であると理解される。
【0072】
分枝度の測定は、13C NMRスペクトル法によって実施される。
【0073】
分枝は、位置2および3において、好ましくは、位置6において起こりうる。これは、化学修飾、たとえば、エーテル形成もしくはエステル化によって、または酵素による修飾、たとえば、分枝酵素を用いるものによって起こりうる。
【0074】
このわずかに分枝する水不溶性ポリ−α−1,4−D−グルカンは、好ましくは、修飾されていず、より好ましくは、もとの性質に戻されない。
【0075】
さらなる態様において、本発明は以下の工程を包含する、耐性デンプンの製造方法に関する:
a)サッカロース水溶液の製造;
b)アミロスクラーゼの酵素特性を有するタンパク質とサッカロース水溶液の、水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンへの転化;そして、場合により、
c)水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンの単離。
【0076】
サッカロース水溶液の製造は、当業者に公知である。適切なサッカロース水溶液は、本発明に従う使用に関連して、すでに記述してある。
【0077】
工程b)に従う転化も、また、本発明に従う使用に関連して、すでに前述してある。
【0078】
耐性デンプンRSタイプ5である、水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンをいかにして単離し得るかの方法も、また、当業者には公知である。本発明に従って用いられる、水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンの性質は、本発明に従う使用に関連して、すでに前述してある。
【0079】
本発明のさらなる態様において、水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンは、単離の後、乾燥され得る。それらは、たとえば、凍結乾燥、空気乾燥または噴霧乾燥であり得る。
【0080】
さらなる態様において、本発明は、耐性デンプン製造のための、本発明の方法の使用が関る。
【0081】
以下の実施例は、本発明をその実施例に限定することなく、本発明をより念入りに説明するためのものである。
【0082】
一般共通方法
1.水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンの製造
水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンの製造は、たとえば、WO 00 44492、WO 00 02926、WO 00 38537、WO 99 67412またはWO 01 42309に記述されている。
2.アミロスクラーゼの精製
アミロスクラーゼの酵素活性を有するタンパク質の精製試験計画表(protocol)は、WO 99 67412に記述されている。
3.アミロスクラーゼの酵素活性を有するタンパク質の発現
細菌細胞内におけるアミロスクラーゼ酵素活性を有するタンパク質の発現は、すなわち(i.a.)、Potocki de Montalkら(2000,FEMS Microbiology Letters 186,103-10)およびPotocki de Montalkら(1999, J. of Bacteriology 181,357-381)によって記述されている。
【0083】
実施例1
水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンのRS含量の決定
アミロスクラーゼの酵素活性を有するタンパク質によるサッカロースの転化によって製造された、水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンのRS含量は、耐性デンプン タイプIIIの決定のためのEnglystの方法(European Journal of Clinical Nutrition (1992)46,(Suppl.2),p33-50)に基づいた。同時に、Englystの方法は、WO 00 02926におけるRS含量の決定情報に従って、修正された。
【0084】
a)パンクレアチン/アミログルコシダーゼ(AGS)処理
使用したパンクレアチン/アミログルコシダーゼ消化緩衝液:
0.1M 酢酸ナトリウム pH5.2
4mM CaCl
酵素溶液の製造
パンクレアチン(Merck, 製品番号 1.07130.1000)12gを、脱ミネラル水(電気伝導度:約18MΩ)80mL中で、37℃において10分間撹拌し、その後、3,000rpmで10分間、遠心分離した。
遠心分離後に得られた上澄み液54mLを、脱ミネラル水9.86mLおよびアミログルコシダーゼ(6,000u/mL、Sigma、製品番号 A−3042)0.14mLで処理した。
【0085】
パンクレアチン/アミログルコシダーゼ(AGS)消化手順
測定される水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンの各バッチに、パンクレアチン/アミログルコシダーゼ(AGS)消化の検体5個を、それぞれ製造した。これらの検体各5個のうちの2個には、のちに、酵素溶液の添加をしない。酵素溶液を添加しない検体を対照と称し、回収率の決定に使用される。残りの検体3個を試料と称し、後に、酵素溶液で処理し、そして、それぞれの、水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンのRS含量の決定に用いる。
【0086】
水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンを含まない多数の反応容器を並行に並べた(ブランク試料)。水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンを含まないこれらのブランク試料は、共沈物質(タンパク質、塩類)の量を決定するために使用される。
【0087】
50mL反応容器(Falconチューブ)の風袋重量を決定し、その後、それぞれの場合に、水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカン約200mgを量り入れる。
【0088】
酢酸ナトリウム緩衝液15mLを、水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカン試料およびブランク試料のそれぞれに加え、そして、酢酸ナトリウム緩衝液20mLを対照試料(前記を参照)のそれぞれに加えた。これらの試料を、37℃に予備加温した。
【0089】
試料およびブランク試料の個々の反応容器に、それぞれ、酵素溶液5mLを加えることによって反応を開始させ、ついで、これらを37℃で2時間、振り混ぜた(200rpm)。
【0090】
試料、ブランク試料および対照試料に、氷酢酸5mL(pH3.0に平衡化)および技術級エタノール80mLを加えることによって、反応を停止させた。
【0091】
反応混合物からの水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンの沈殿は、反応停止させた検体を、室温での1時間インキュベイションによって達成させた。
【0092】
沈澱化(2,500×gで10分間遠心分離)の後、得られた個々の検体の沈澱物を、80%エタノールで2回洗浄して、短鎖グルカンを除去し、そして、−70℃に冷却した後、凍結乾燥した。試料を再秤量し、その重量差を「重量測定の」RS含量の算定に用いた。
【0093】
b)RS含量の決定
水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンの個々のバッチのRS含量の決定には、以下の手順を用いた:
a)直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンの、個々の試料バッチの水含量の決定(HO重量)。
b)それぞれの試料(RGP重量)、対照試料(RGR重量)およびブランク試料(RGB重量)についての、個々の反応容器の風袋重量の決定。
c)試料用(P重量)および対照試料用(R重量)個々の反応容器中への、水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカン約200mgの量り入れ。
d)試料(Ptr重量=P重量−HO重量)および対照試料(Rtr重量=R重量−HO重量)についての、乾燥部分の重量の算定。
e)それぞれの試料およびブランク試料の酵素的消化。対照試料は、酵素溶液を添加しない以外は、同様に処理される。
f)e)に記載される処理の後、試料、対照試料およびブランク試料の反応容器中の残留物質の、沈殿、沈降、洗浄および凍結乾燥。
【0094】
g)f)に記載されるの処理の後、反応容器も含めて、反応容器中の、試料(PRG重量)、対照試料(RRG重量)およびブランク試料(BRG重量)の残留物質の秤量。
h)f)に記載される処理の後、反応容器中の、試料(Pnv重量=PRG重量−RGP重量)、
対照試料(Rnv重量=RRG重量−RGR重量)および
ブランク試料(Bnv重量=BRG重量−RGB重量)の残留物質の重量の算定。
i)f)に記載される処理の後、反応容器中の、
試料(HOPnv重量)、
対照試料(HORnv重量)および
ブランク試料(HOBnv重量)の残留物質の水含量の算定。
j)f)に記載される処理の後、反応容器中の、
試料(Pnvtr重量=Pnv重量−HOPnv重量)、
対照試料(Rnvtr重量=Rnv重量−HORnv重量)および
ブランク試料(Bnvtr重量=Bnv重量−HOBnv重量)の残留物質の乾燥部分の算定。
【0095】
k)
試料(Pnvkorr重量=Pnvtr重量−Bnvtr重量)および
対照試料(Rnvkorr重量=Bnvtr重量−Bnvtr重量)の補正重量の決定。
【0096】
l)酵素消化後に残留している,水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンの補正重量の、試料(RSaP=Pnvkorr重量/Ptr重量×100)の出発量の乾燥重量に対するパーセントフラクションの算定および
対照試料の残留、水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンの補正重量の、対照試料の出発量の乾燥重量(RSaR=Rnvkorr重量/Rtr重量×100)に対するパーセントフラクションの算定。
m)試料の酵素消化(RSaPMW=n×RSaP/n)後に、残留している水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンのパーセントフラクションの平均値の決定および対照試料の、残留している水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカン(回収率:RSaRMW=n×RSaR/n)のパーセントフラクションの平均値の決定、ここで、nは、水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンのそれぞれのバッチについて実施される、試料および対照試料の数である。
【0097】
n)回収速度に伴う酵素消化後に残留している水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンのパーセントフラクションの平均値の補正による、水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンの個々のバッチにおけるRS含量パーセントの決定(RS=RSaPMW/RSaRMW×100)。
【0098】
c)水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンのRS含量
アミロスクラーゼの酵素活性を有するタンパク質によるサッカロースの転化によって製造される水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンのRS含量は、実施例2b)に記載される方法に従って、決定された。ナイセリア・ポリサッカレア(Potocki de Montalkら、1999, J. of Bacteriology 181,375-381)由来のアミロスクラーゼをコードする核酸配列を発現する、E.Coli菌株DH5αからの粗タンパク質抽出物が、水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンの製造に使用された場合、水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンのRS含量は、75±2%であった。
【0099】
ナイセリア・ポリサッカレア(Potocki de Montalkら、1999, J. of Bacteriology 181,375-381)由来のアミロスクラーゼをコードする核酸配列を発現する、E.Coli菌株KV832(Kielら、1987, Mol.Gen.Genet.207:294-301)の粗タンパク質抽出物が、水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンの製造に使用された場合、水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンのRS含量は、91%b±2%であった。
【0100】
実施例2
水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンの分子量の決定
アミロスクラーゼの酵素活性を有するタンパク質によるサッカロースの転化によって製造される、水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により決定された。
【0101】
a)GPCを実施するための試料の製造
1.DMSO+90mM NaNO(GPC分析に使用される溶離液に相当する)中の、水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンの1%溶液を製造
2.60℃で約30分間振とうして溶解
3.ベンチ遠心分離機上の、8,000rpmで約1分間遠心分離
4.溶離液中1:10に希釈
5.1:10希釈液24μLを注入
【0102】
b)GPC分析
使用されるGPC系の構成:
ポンプ:Dionex, P580
オートサンプラー:Dionex, AS50
カラム:PSS(プレカラム:PSS GRAM,10μm;分離カラム:PSS GRAM3000,10μおよびPSS GRAM100,10μ)
カラムオーブン:Dionex, model 585
検出器:Shodex R171
【0103】
GPC分析は、以下の条件で実施した:
オートサンプラーおよびカラムオーブン:60℃
溶離液:DMSO+90mM NaNO
溶離液の流速:0.7mL/min
制御は、ソフトウエアChromeleon(Dionex)を用い、データ評価はソフトウエアPSS WinGPCcompact V.6.20を用いて実施された。
【0104】
c)水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンの分子量
詳細に調査される水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンは、1,500〜55,000ダルトンの分子量を示した。ピークの最大は9,000ダルトンにある。
【0105】
実施例3
DSC分析による、水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンの熱安定性の決定
RS生成物の熱安定性は、Perkin Elmer製のPyris Diamond DSCを用いて決定された。各測定時にRS生成物10mgを測定皿(鋼製皿、Perkin Elmer製品番号 03190029)に量り入れ、脱イオン水(Millipore)30μLで処理し、そしてその測定皿をメーカーの指示に従って封じた。試料は、すべて12時間以内に測定した。空の測定皿を対照として使用した。インジウム標準を用いて校正を実施した。DSC測定は、20〜150℃の温度範囲にわたって、加熱速度10℃/minで実施した。T、TおよびΔHの測定は、Pyrusソフトウエア(vers.5)を用いて実施した。ΔHのデータは、加熱される天秤を用いて決定された試料の乾燥重量に関係する。各試料をこの方法で2回測定した。
【0106】
【表1】

【0107】
水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンは、ナイセリア・ポリサッカレア(Potocki de Montalkら、1999, J. Bacteriology 181,375-381)由来のアミロスクラーゼをコードする核酸配列を発現する、E.Coli菌株DH5αの粗タンパク質抽出物、またはナイセリア・ポリサッカレア(Potocki de Montalkら、1999, J. Bacteriology 181,375-381)由来のアミロスクラーゼをコードする核酸配列を発現する、E.Coli菌株KV832(Kielら、1987, Mol.Gen.Genet.207:294-301)の粗タンパク質抽出物のいずれかを用いて製造した。得られた水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンは、凍結乾燥または空気乾燥のいずれかをした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐性デンプン(RS)としての、水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンの使用。
【請求項2】
水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンが、サッカロース水溶液とアミロスクラーゼの酵素活性を有する酵素との反応により得られたものであることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項3】
サッカロース水溶液の反応が、インビトロで、アミロスクラーゼの酵素活性を有する酵素を用いて実施されることを特徴とする、請求項2記載の使用。
【請求項4】
サッカロース水溶液の反応が、インプランタで、アミロスクラーゼの酵素活性を有する酵素を用いて実施されることを特徴とする、請求項2記載の使用。
【請求項5】
水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンが、70重量%超える、Englystらの方法により決定されるRS含量を示すことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンが、95〜125℃の間の、DSCピーク温度を示すことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンが、1×10〜10g/molの平均分子量を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンが、1×10〜3×10g/molの平均分子量を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンが、2×10〜1.2×10g/molの平均分子量を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
水不溶性直鎖ポリ−α−1,4−D−グルカンが、もとの性質に戻らないもの(not retrograded)であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の使用。

【公表番号】特表2007−508832(P2007−508832A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536070(P2006−536070)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012090
【国際公開番号】WO2005/040223
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(500137954)バイエル クロップサイエンス ゲーエムベーハー (31)
【Fターム(参考)】