説明

耐摩耗粒子及び耐摩耗構造部材

【課題】溶融池に略均一に分散できる耐摩耗粒子を提供する。
【解決手段】本発明に係る耐摩耗粒子13は、母相金属に分散させて耐摩耗性を向上させる耐摩耗粒子において、芯部11と、前記芯部11に被覆された外層12と、を具備し、前記母相金属より小さい比重を有する第1硬質材料と、前記母相金属より大きい比重を有する第2硬質材料とを配合した材料からなることを特徴とする。比重が小さい第1硬質材料と比重が大きい第2硬質材料の配合比を調整することにより母相金属に略等しいかまたは近い比重の耐摩耗粒子とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐摩耗粒子及び耐摩耗構造部材に係わり、特に、溶融池に略均一に分散できる耐摩耗粒子に関し、また、本発明は、耐摩耗粒子が略均一に分散された肉盛層を備えた耐摩耗構造部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の耐摩耗粒子である硬質粒子を分散させた耐摩耗構造部材を作製するプロセスの例としては主に次の三つがある。一つは、消耗電極式アーク溶接、Tig溶接、ガス溶着、プラズマ粉体溶接などにより肉盛部に溶融池を形成し、この溶融池に硬質粒子である炭化物粒子を添加しながら肉盛することにより耐摩耗肉盛層を形成する方法である。二つ目は、予め被覆アーク溶接棒の被覆剤に炭化物粒子を埋め込んでおく、あるいはアーク棒を中空にし、この中に炭化物粒子を封入しておく方法がある。三つ目は、鋳型に炭化物粒子をセッティングして溶湯を注入する鋳ぐるみ法がある。
【0003】
(アーク溶接、ガス溶着の場合)
硬質粒子として最も性能が優れているのはタングステンカーバイド(WC、WC)系である。ところが、WC系は、どの母材と比べても比重が大きく粒径に関わらず耐摩耗肉盛層内で硬質粒子が沈下してしまい、図23に示すように下層に凝集してしまう。また、粒径の大きいものほど沈下しやすく、その結果、耐摩耗肉盛層の下層は耐摩耗性が高く、上層は低くなる。また、硬質粒子の凝集部は亀裂が発生し、その亀裂が進展しやすく、耐摩耗肉盛層の剥離箇所となりやすい。
【0004】
WCはFeに対して溶解しやすいため、耐摩耗肉盛層においてFe−Wの共晶炭化物が析出し脆くなり亀裂が発生しやすい上、耐衝撃性にも劣る。近年、タングステン鉱石が高騰しており、WCは硬質粒子の中でも非常に高価な粒子となっており、Kg単価が鋼板の百数十倍もするのでコスト面で不利であり、限定的な用途にしか使用できないという面もある。WCはFeに溶解しやすいので硬質粒子とマトリックスの界面に脆い化合物が生成しやすい。従って、WCを分散させた耐摩耗肉盛層を形成するときのポイントは、できるだけ硬質粒子を加熱しないこと、硬質粒子と溶融池との接触時間を短くすることである。少々WCがマトリックスに溶出してもその量が適切なものであれば、マトリックスは適度に硬化し耐摩耗性は向上する。また、長時間の加熱によって炭化物中にFe原子が進入して硬質粒子が変質し硬度が著しく低下することがある。
【0005】
クロムカーバイド(Cr)は安価なため、最も量的に使用される硬質粒子であるが、Feに対して比重が軽いため溶融池で浮いてしまい、図24に示すように上層に凝集してしまう。また、Feに容易に溶解してしまうので、大粒で未溶融の硬質粒子が残存しにくく、耐摩耗肉盛層の耐摩耗性が低くなることがある。
【0006】
炭化チタン(TiC)または炭化窒化チタン(TiCN)は、炭化タングステン(WC)についで耐摩耗性が優れているとされており、硬度も高く、熱的にも安定でFeと反応しにくいので、耐摩耗肉盛層に未溶融の高硬度高靭性の粒子として残し易い利点を持っている。しかし、比重が軽いため、溶融池内で浮いてしまい、図25に示すように耐摩耗肉盛層の表層のみに分布する傾向にある。未溶融で粒径の大きい硬質粒子であるほど浮力も大きくなるため浮く傾向にある。また、TiCまたはTiCNは濡れ性が悪いためマトリックスとの結合力が弱い場合がある。マトリックスに軟鋼を用いた場合、TiC成分は僅かにしか溶出しないためマトリックスが硬くならず耐摩耗性が低くなる。
【0007】
(被覆アーク溶接棒の場合)
ジュール熱によりアーク棒自体が加熱されることに加え、硬質粒子が直接アークに曝されるため硬質粒子の溶解が激しく未溶融の硬質粒子が残りにくい。TiCの硬質粒子を用いた場合、TiCはFeとの反応性が小さく、熱的にも安定であるが、スラグとして外部に排出されてしまう量が多いので、耐摩耗性向上に有効に働かないことがある。比重差に伴う未溶融粒子の分布が不均一になるのは上記と同様である。
【0008】
(鋳ぐるみの場合)
比重が異なる硬質粒子を固定する必要があるため、金網、水ガラスなどを用いて強制的に型に固定している。しかし、溶湯が注入される際の圧力に対してはこれらの物理的な固定も十分ではなく、硬質粒子の配置が崩れることがある。鋳ぐるみの場合は、硬質粒子が溶湯に長時間曝されるので溶出することが多い。この点では熱的に安定でFeと反応しにくいTiC系は有利である。
【0009】
図26は、他の従来の耐摩耗構造部材の製造方法を示す模式図である。この製造方法は、硬質粒子とマトリックスとの比重差によって硬質粒子の分布が不均一になる問題を解決しようとするものである。
【0010】
図26に示される肉盛層形成機構により母材2上に耐摩耗肉盛層が形成される。この機構において25mm突き出される溶接ワイヤからなるアーク電極1が、水平に配されている軟鋼の母材2の直角方向に対して角度θ1(トーチ角=30°)をなすように傾斜して配されている。このアーク電極1による溶接電流は280A、溶接電圧は28Vとされ、溶接ワイヤの供給速度は100g/分とされ、溶接領域にシールドガスとして二酸化炭素が毎分30リッター供給される。また、アーク電極1から発生されるアークによって形成される溶融池3には粒径1.2mmのWC−7%Co粒子(密度14.5g/cm)からなる硬質粒子4と粒径1.7mmの鋼球(密度7.8g/cm)からなる第2粒子5とが二股ノズル6を通して供給される。この二股ノズル6は1.5Hzの三角波により溶接進行に対して、すなわち図26において図面に対して前後方向にウィービング(振動幅30mm)され、そこに硬質粒子4と第2粒子5とがそれぞれ毎分172g,28gの割合(体積混合比1:0.3)で供給される。
【0011】
前述のような条件で溶接が図中の右方向に向かって毎分22cmの速度で行われる。なお、硬質粒子4および第2粒子5が供給される前の溶融池3の溶融金属の密度は7.06〜7.21g/cmである。
【0012】
図26に示されているように、硬質粒子4と第2粒子5とは、アーク電極1の延長上の直線と母材2の表面を通る平面とが交わる位置より溶接進行方向の後方(左)側に供給される。この供給される部分の溶融池3の溶融金属部分はアークの作用により押し上げられつつあるので、硬質粒子4が沈降することなくその溶融金属部分は固化してしまい、また押し上げられるうちに硬質粒子4、第2粒子が混合され、したがって硬化して得られる肉盛層7中には硬質粒子4が均一に分散されており、肉盛層7は好ましい耐摩耗性を有するものとなる(例えば特許文献1参照)。
【0013】
【特許文献1】特開平8−47774号公報(第39段落〜第41段落、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述したように従来の耐摩耗構造部材の製造方法では、肉盛層内に2種類の比重の異なる粒子である硬質粒子4と第2粒子5を溶融池に添加することによって、硬質粒子を肉盛層内に均一に分散させようとしている。
【0015】
しかし、上記従来の製造方法には次のような欠点がある。比重の小さい第2粒子5がタイミングよく添加されて比重の大きい硬質粒子4の下部に存在した場合には、比重の大きい硬質粒子の沈下を防止できるが、常にそのようなタイミングで粒子が添加されるとは限らず、必ず不均一に粒子が分散した部位が形成される。
【0016】
また、溶融池内で比重の重い硬質粒子4は下層に沈下し、比重の軽い第2粒子5は上層に浮上する傾向にある。このため、硬質粒子と第2粒子が下層と上層に分離して異なる性質の粒子の偏在が生じ、この偏在に耐摩耗性や耐衝撃性が依存することとなり、上層から下層まで均一な特性が得られない部位が形成される。
【0017】
本発明は上記のような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、溶融池に略均一に分散できる耐摩耗粒子を提供することにある。また、本発明の他の目的は、耐摩耗粒子が略均一に分散された肉盛層を備えた耐摩耗構造部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本発明に係る耐摩耗粒子は、母相金属に分散させて耐摩耗性を向上させる耐摩耗粒子において、
芯部と、
前記芯部を被覆する外層と、
を具備し、
前記母相金属より小さい比重を有する第1硬質材料と、前記母相金属より大きい比重を有する第2硬質材料とを配合した材料からなることを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る耐摩耗粒子において、前記外層の厚さが100μm超とすることが好ましい。
【0020】
また、本発明に係る耐摩耗粒子において、前記芯部と前記外層との間に配置された中間層をさらに具備することも可能である。
【0021】
また、本発明に係る耐摩耗粒子において、前記母相金属は、Fe系、Ni系、Co系及びCu系のいずれかであることが好ましい。
【0022】
また、本発明に係る耐摩耗粒子において、前記母相金属がFe系の材料であり、前記第1硬質材料が炭化チタン、炭化窒化チタン、炭化バナジウム、炭化窒化バナジウム、炭化ジルコニウム、炭化窒化ジルコニウム、炭化クロム、及び炭化窒化クロムのうち少なくとも1つを有し、前記第2硬質材料が炭化モリブデン、炭化窒化モリブデン、炭化タンタル、炭化窒化タンタル、炭化タングステン、及び炭化窒化タングステンのうち少なくとも1つを有することも可能である。
【0023】
また、本発明に係る耐摩耗粒子において、前記母相金属がCo系、Ni系、Cu系の材料のいずれかであり、前記第1硬質材料が炭化チタン、炭化窒化チタン、炭化バナジウム、炭化窒化バナジウム、炭化ジルコニウム、炭化窒化ジルコニウム、炭化クロム、炭化窒化クロム、炭化ニオブ、及び炭化窒化ニオブのうち少なくとも1つを有し、前記第2硬質材料が炭化モリブデン、炭化窒化モリブデン、炭化タンタル、炭化窒化タンタル、炭化タングステン、及び炭化窒化タングステンのうち少なくとも1つを有することも可能である。
【0024】
また、本発明に係る耐摩耗粒子において、前記母相金属が鋼であり、前記芯部の主成分が炭化チタンまたは炭化窒化チタンと炭化タングステンを配合したものであり、前記外層の主成分が炭化タングステンであることが好ましい。
【0025】
また、本発明に係る耐摩耗粒子において、前記母相金属の比重をTとし、前記母相金属との比重の差をtとすると、t/Tが20%〜−15%の範囲内であることが好ましい。
【0026】
本発明に係る耐摩耗構造部材は、母相金属と、
前記母相金属に分散された上述した耐摩耗粒子と、
を具備することを特徴とする。
【0027】
また、本発明に係る耐摩耗構造部材において、前記耐摩耗粒子が分散された母相金属は耐摩耗肉盛層であり、該耐摩耗肉盛層は母材に肉盛されていることも可能である。
【0028】
また、本発明に係る耐摩耗構造部材において、前記母相金属における略重力方向に沿った断面を、略重力方向に対して直交する線によって上下に1/2ずつの面積で分離し、前記断面の上層に存在する前記耐摩耗粒子の数をaとし、前記断面の下層に存在する前記耐摩耗粒子の数をbとした場合、a/bが0.38以上であることが好ましい。
【0029】
また、本発明に係る耐摩耗構造部材において、前記母相金属における前記上層及び前記下層それぞれの硬度がHv700〜1000であることが好ましい。
【0030】
また、本発明に係る耐摩耗構造部材は、破砕機の歯板、打撃子、せん断刃、チークプレート、ズリフィーダバー、ビット、ブルドーザのトラックブッシュ、スプロケットティース、シューラグ、油圧ショベルのバケット、ツースアダプタ、リップ、ツース間シュラウド、コーナーガード、GET(Ground Engaging Tool)部品のカッティングエッジ、エンドビット、ツース、リッパポイント、プロテクタ、ウエアプレート、シャンク、トラッシュコンパクタの鉄輪のチョッパのいずれかに用いられることも可能である。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように本発明によれば、溶融池に略均一に分散できる耐摩耗粒子を提供することができる。また、他の本発明によれば、耐摩耗粒子が略均一に分散された肉盛層を備えた耐摩耗構造部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
耐摩耗構造部材は以下の特性を有することが好ましい。
(耐摩耗性)
最も耐摩耗性に影響が大きいのは硬質粒子の硬度と靭性で、硬いほど耐摩耗性は高く、靭性が高いほど粒子の欠損脱落がないので耐摩耗性は向上する。従って、硬質粒子は高硬度で靭性が高いことが好ましい。
次に耐摩耗性に影響するのは硬質粒子を把持している母相金属部(以下、マトリックスという)の硬度と靭性である。従って、マトリックス中に脆弱な化合物の析出や亀裂の発生を避けることが好ましい。
【0033】
硬質粒子の含有量も耐摩耗性に大きく影響し、量が多いほど耐摩耗性は高いが、多すぎると耐摩耗材全体としても靭性が低下する。従って、多くの硬質粒子を含有させても靭性が低下しないことが好ましく、そのためには硬質粒子そのものが高い靭性を有し、硬質粒子が強固にマトリックスと結合することが好ましい。
また、硬質粒子とマトリックスとの親和性も重要で、濡れ性が悪くて冶金的に接合しない、あるいは脆弱な化合物を界面に形成するような材料の組み合わせでは硬質粒子が脱落するし、耐摩耗肉盛層に大きな亀裂等があれば、そこが起点となって欠損を生じる。従って、硬質粒子とマトリックスとの親和性、濡れ性が良く、冶金的に接合しやすく、脆弱な化合物が界面に形成されないような材料の組み合わせが好ましい。
【0034】
(耐衝撃性)
岩石が衝突したときの衝撃に耐えうる靭性を維持するには次のような特性を必要とする。靭性には、硬質粒子とマトリックスの靭性そのものに加え硬質粒子の分布が影響される。例えば、硬質粒子が肉盛層の下部に沈下凝集していると、この部分から剥離を生じることがある。硬質粒子が径0.1mm以下の微粒子の場合も粒子の凝集が生じるため同様に亀裂が発生しやすい。耐摩耗肉盛層の亀裂は耐衝撃性を劣化させる。従って、硬質粒子は均一に分散していることが好ましい。
また、マトリックスの浸透不良に伴う空隙も応力集中部となり耐衝撃性を劣化させる。従って、マトリックスと硬質粒子の濡れ性が優れていることが好ましい。
【0035】
(加工容易性)
耐摩耗肉盛層は、耐摩耗構造部材の必要な部位に必要な厚みと形状で容易に形成できることが好ましい。肉盛層の厚みを厚くするために多層盛を行うことが多いが、多層盛を行っても割れないこと、予熱や後熱を加えなくても割れないことなどの施工が容易なことが重要である。また、加工が容易であるとコスト面でも優位である。
【0036】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1による耐摩耗粒子を示す断面図である。
【0037】
耐摩耗粒子としての硬質粒子をマトリックスと略等しいか近い比重、マトリックスとの比重差が、20%〜−15%の範囲内に調整することにより、マトリックスに硬質粒子を略均一に分散させることが可能となる。このため、硬質粒子の凝集による耐摩耗性能の不均一を抑制でき、凝集部での亀裂の発生や剥離の発生を抑制でき、さらに耐衝撃性を向上させることができる。
【0038】
図1に示す耐摩耗粒子13は、球形状または球に近い形状であって多層構造からなり、芯部11とその芯部11を被覆する外層12とから構成されている。角張った粒子は融合不良を生じやすく、小さな穴を生じて強度低下を招いたり、また角があるとその角に応力が集中して亀裂の発生や耐摩耗粒子の欠けを生じるため、球形状または球に近い形状が望ましい。また、外層12の厚さは100μm超であるため、外層12がマトリックスに全て溶出することはなく、芯部11の表面に外層12が残される。これにより、芯部11がマトリックスと接触することを防止でき、芯部11の変質を抑制することができる。
【0039】
外層12は、Fe系のマトリックス(例えば鋼)に対して濡れ性の良い材料、例えばタングステンカーバイド系(WC系)を主成分とし、芯部11はマトリックスに対して濡れ性は悪いが高硬度の材料、例えばセラミックス系(TiCN系)を主成分とする。これにより、外層12は、マトリックスと馴染みが良いので、耐摩耗粒子13がマトリックスに良好に溶着し溶着強度を向上させるとともに芯部は高硬度を維持して耐摩耗性を向上させることができる。
【0040】
また、耐摩耗粒子の他の例としては、外層12をFe系のマトリックスに若干溶出する材料、例えばタングステンカーバイド系を主成分とすることにより、マトリックスの硬度を調整して耐摩耗構造部材全体の耐摩耗性を向上させることができる。
【0041】
また、耐摩耗粒子の他の例としては、高電流(溶接電流350A以上)に肉盛する場合、あるいは鋳ぐるみの場合は、WC系を主成分とする材料では溶出と変質が著しく、硬度の低下やマトリックス内に脆弱なFe−W−C共晶析出物を生じる。このような場合は、外層12を溶湯との反応性が小さく耐熱性の高いTiCN系、芯部11をWC系などの超硬とすることにより、外層12がマトリックスと芯部11との直接接触を妨げる。よって、超硬の芯部11が溶出や変質することを抑制し、マトリックスに脆弱な相が形成されることを抑制できる。
【0042】
また、耐摩耗粒子の他の例としては、外層12を溶湯との反応性が小さい炭化ニオブ系(NbC系)を主成分とし、芯部を溶湯への溶出が著しいクロム系(Cr系)を主成分とすることにより、外層12がマトリックスと芯部11との直接接触を妨げる。よって、芯部11が溶出や変質することを抑制し、未溶融の状態で分散される。また、Cr炭化物は安価なためコスト面でも有利である。
【0043】
上述したように芯部11と外層12の主成分の材料は種々の組み合わせを適用することが可能である。例えば芯部11をマトリックスより比重の小さい材料、例えばTiC(密度:4.85〜4.93g/m)、VC(密度:5.36〜5.77g/m)、ZrC(密度:6.66g/m)、Cr(密度:6.68〜6.74g/m)を主成分とし、外層12をマトリックスより比重の大きい材料、例えばMoC(密度:9.18g/m)、TaC(密度:14.4g/m)、WC(密度:15.6〜15.7g/m)、WC(密度:17.2g/m)を主成分にする。または、芯部11をマトリックスより比重の大きい材料を主成分とし、外層12をマトリックスより比重の小さい材料を主成分にする。または、芯部11と外層12のそれぞれの比重をマトリックスと略等しいか近い比重、例えばマトリックスとの比重差が、20%〜−15%の範囲内に調整する。これにより、耐摩耗粒子全体の比重をマトリックスの比重に略等しいか近い比重に調整することができる。さらに、外層12をマトリックスと相性の良い材料、例えばマトリックスに対して濡れ性が良い材料とし、芯部11をマトリックスと相性は悪いが安価な材料または硬質粒子化や比重調整に適した材料を主成分にすることにより、耐摩耗粒子の比重を調整するだけでなく耐摩耗粒子の機能性を高めることも可能である。
【0044】
例えば、芯部11にWCとTiC又はVCを混合した材料を用い、外層12にWCを用いることも可能である。これにより、外層12はマトリックスとの馴染みが良くなり、芯部11のTiC又はVCによって比重を調整することができる。
【0045】
上記の耐摩耗粒子は、炭化物のバインダとしてCo、Ni、Fe、Cr、Mo等の金属バインダを用い、改質剤としてMo、MoCやCrを添加し、焼結することによって高靭性の硬質粒子となる。このような硬質粒子を分散させて耐摩耗構造部材を作製した場合、硬質粒子が欠損脱落することが抑制される。例えば従来の硬質粒子の一例であるWCの単体を用いた場合、硬度は高いが靭性に乏しいので耐摩耗構造部材から欠損脱落し易いものとなるが、上記の高靭性の硬質粒子では欠損脱落が起こりにくい。
【0046】
また、耐摩耗粒子の材料としてTiC、TiCNを用いるとコスト面で有利である。タングステンは主に中国から産出する希少金属で非常に高価であるが、Tiは多量に存在する元素であり、また比重をタングステンと比べると小さいので体積比較すれば、安価だからである。
【0047】
次に、耐摩耗粒子に用いる材料成分の役割について説明する。
TiCNのNは炭化物結晶を微細化し、硬質粒子の強度を向上させるものである。TiCNは、Feに対して安定で溶出しにくいため未溶融の状態で粒子が残存しやすい。ただし、成分の溶出が少ないためにマトリックスの硬度がHv400程度しか上昇しない条件があり、マトリックスの耐摩耗性が劣る。Tiはマトリックスの結晶粒を微細にする効果があり、耐摩耗材の靭性向上に寄与している。TiCNは溶出は少ないものの微小結晶の状態でマトリックスに溶出しており、マトリックスはTiCN分散強化材料となっている。この点でも耐摩耗性と靭性が向上されていることが考えられる。
【0048】
WCは、焼結性を向上させて、硬質粒の強度を向上させる。また、WCは、マトリックスに適量溶出してマルテンサイトを生成し、マトリックスの硬度を上昇させ、耐摩耗性を向上させる。
【0049】
炭化物のバインダとして用いられるNiは、主成分の炭化物に対して非常に濡れ性が良く、焼結欠陥が発生しにくい。Ni量で硬度を調整できる。Niを増やすと硬度が低下する。適正なNi量としては8%程度である。
【0050】
炭化物のバインダとして用いられるCoは、主成分の炭化物に対して非常に濡れ性が良く、焼結欠陥が発生しにくい。
炭化物のバインダまたは改質剤として用いられるCrは添加により抗折力が向上する。
炭化物のバインダまたは改質剤として用いられるMoCは、微量の添加(3%)により焼結性が向上し、抗折力が向上し、硬度も上昇する。
【0051】
次に、図1に示す耐摩耗粒子13の製造方法について説明する。
まず、芯部11の原料となるWC、TiC、Co、Ni粉末にアセトンを加えてアトライタと称する低速回転翼を内蔵したミルで数十時間撹拌混合する。次いで、混合後乾燥させ、ケーキ状にした原料を砕いて、数%のパラフィン系潤滑剤とアセトンとの混合液を加えて、泥状にする。泥状にされた原料を乾燥させると造粒された原料粉ができる。これを核として振動させながら転がし、原料粉をふりかけることにより粒子を大きく成長させ、所望の粒径に形成する。そして、最終造粒工程で前記同様に混合した外層12の原料粉WC−Coをふりかけて外層を形成する。形成された耐摩耗粒子は、先ず500℃くらいまでしばらく保持し、潤滑剤を揮発させ、その後、液相が発生する温度まで昇温、保持し、焼結され耐摩耗粒子ができあがる。
【0052】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2による耐摩耗粒子を示す断面図である。
本実施の形態においても耐摩耗粒子としての硬質粒子をマトリックスと略等しいか近い比重に調整する点は実施の形態1と同様である。
【0053】
図2に示す耐摩耗粒子17は、球形状または球に近い形状であって多層構造からなり、芯部14とその芯部14を被覆する中間層15とその中間層15を被覆する外層16とから構成されている。例えば、外層16と芯部14については実施の形態1と同様の材料を用い、外層16と芯部14の中間的性質(例えば線膨張係数)を有する材料を中間層15に用いることにより、耐摩耗粒子の割れを抑制することができる。
【0054】
耐摩耗粒子の他の例としては、外層16に実施の形態1と同様の材料を用い、実施の形態1の芯部に用いた材料を芯部14又は中間層15に用いることもできる。
【0055】
例えば、芯部14にCrを用い、中間層15にTiCを用い、外層16にWCを用いることも可能である。外層16のWCによってFe系のマトリックスとの馴染みを良くすることができ、中間層15のTiCはマトリックスとの馴染みが悪く溶融しないが耐摩耗性に寄与し、芯部14のCrは耐摩耗性が良く安価で入手性が良い利点を有する。
【0056】
次に、図2に示す耐摩耗粒子17の製造方法について説明する。
前述と同様、芯部14の原料となるCr、Ni粉末、中間層15の原料となるTiC、Ni粉末、外層16の原料となるWC、Coを混合し原料粉を作製する。次いで、芯部14の核となる粒子を振動させ転がしながら芯部14の原料粉で粒径を成長させ、次に中間層15の原料粉をふりかけ中間層を形成させる。そして、最後に外層16の原料粉をふりかけて所望の粒径に形成する。形成された耐摩耗粒子は前述と同様に処理される。
【0057】
(実施の形態3)
図3は、本発明の実施の形態3による耐摩耗構造部材の製造方法を示す模式図である。図3には肉盛層形成機構が示されており、この機構により耐摩耗肉盛層が形成される。この機構において25mm突き出される溶接ワイヤからなるアーク電極1が、水平に配されているCrMo鋼の母材2の直角方向に対して角度θ1(トーチ角=30°)をなすように傾斜して配されている。このアーク電極1による溶接電流は230A、溶接電圧は17Vとされ、溶接ワイヤの供給速度は100g/分とされ、溶接領域にシールドガスとして100%アルゴンが毎分30リッター供給される。また、アーク電極1から発生されるアークによって形成される溶融池3には粒径が例えば0.25〜0.85mmの実施の形態1又は2からなる耐摩耗粒子(密度は母材の密度に略一致させている )13がノズル26を通して供給される。このノズル26は1.5Hzの三角波により溶接進行に対して、すなわち図3において図面に対して前後方向にウィービング(振動幅30mm)され、そこに耐摩耗粒子13が毎分70gで供給される。
【0058】
前述のような条件で溶接が図中の右方向に向かって毎分22cmの速度で行われる。なお、耐摩耗粒子13が供給される前の溶融池3の溶融金属の密度は7.8g/cmである。
【0059】
図3に示すように、耐摩耗粒子13は、アーク電極1の延長上の直線と母材2の表面を通る平面とが交わる位置より溶接進行方向の後方(左)側に供給される。略1800℃の溶融池3に供給された耐摩耗粒子13の外層12は、すべて溶融金属と反応し、耐摩耗粒子13の周りに合金層を形成し、芯部11は溶融金属中に残存する。
【0060】
上記実施の形態2によれば、母材2と略等しい比重に耐摩耗粒子13を調整しているため、耐摩耗粒子13の凝集を抑制でき、耐摩耗粒子13が偏って沈降することも偏って浮上することもなく、その溶融金属部分が固化される。従って、硬化して得られる肉盛層7中には耐摩耗粒子13が略均一に分散されており、肉盛層7は好ましい耐摩耗性及び耐衝撃性を有するものとなる。
なお、母材2と耐摩耗粒子13とで比重に差がある場合は、肉盛層7中に耐摩耗粒子13が略均一に分散されるようにアーク電極1のトーチ角θ1を調整する。
【0061】
上記のように耐摩耗構造部材の耐摩耗肉盛層に耐摩耗粒子を略均一に分散させた場合の粒子の分布状況について説明する。
耐摩耗粒子の比重をマトリックスのそれに合わせることにより均一に分散させるものであるから、耐摩耗粒子の上下方向(略重力方向)の分布によって均一性を確認することができる。
【0062】
耐摩耗肉盛層の上下方向(略重力方向)に切断した断面の面積をYとし、前記断面を略重力方向に対して直交する線によって上下に1/2ずつの面積で分離し、前記断面の上層(面積:Y/2)に存在する耐摩耗粒子の数をaとし、前記断面の下層(面積:Y/2)に存在する耐摩耗粒子の数をbとし、耐摩耗粒子の中央断面積をXとした場合、前記上層に対する耐摩耗粒子の含有面積率(上層面積率)Stop(略してSt)及び前記下層に対する耐摩耗粒子の含有面積率(下層面積率)Sbottom(略してSb)は下記式(1)、(2)によって求められる。均一分散を表わす指数は、St/Sbとし、1ならば完全に均一に分散しているとみなし、0ならば全て下層に沈下しているとみる。
【0063】
St=aX/(Y/2)=2aX/Y ・・・(1)
Sb=bX/(Y/2)=2bX/Y ・・・(2)
St/Sb=a/b ・・・(3)
【0064】
また、耐摩耗肉盛層に含有する耐摩耗粒子の量が少ない場合と多い場合とでは、少ない場合の方が均一に分散させること、即ち均一分散指数St/Sbを1に近づけることが難しい。従って、耐摩耗肉盛層の上下方向に切断した断面の全体に対する耐摩耗粒子の含有面積率(全面積率)Sは下記式(4)によって求められ、この全面積率Sが小さい場合は全面積率Sが大きい場合に比べて均一分散指数St/Sbが1から遠くても略均一に分散しているとみなすことができる。
【0065】
S=(a+b)X/Y ・・・(4)
【0066】
次に、直径1mmの耐摩耗粒子を分散させた場合の例について説明する。
図4は、耐摩耗肉盛層の上下方向に切断した断面を10mm角の断面とし、全面積率Sを10%〜60%にした場合において、略均一に分散しているとみなす最低(限界)の均一分散指数St/Sbと最高の均一分散指数St/Sb=1の耐摩耗粒子の分布状態を示す断面図である。なお、耐摩耗肉盛層の上下方向に切断した断面の面積の面積Yが100mmであり、粒子径φが1mmであり、耐摩耗粒子の中央断面積Xが0.785398163mmである。
【0067】
表1は、図4に示す限界の均一分散指数St/Sb及びそれを導出するための数値(全粒子数、全面積率S、上層粒子数、上層面積率St、下層面積率Sb)を記載したものである。
図5は、表1に示す全面積率Sと限界の均一分散指数St/Sbとの関係を示すグラフである。
【0068】
【表1】

【0069】
図4、図5及び表1に示すように、耐摩耗粒子の比重をマトリックスのそれに合わせても全面積率Sが小さいほど均一分散指数St/Sbは小さくなる。従って、均一分散指数が0.38以上または0.38〜0.85であれば耐摩耗粒子が均一に分散しているといえる。
【0070】
詳細には、全面積率Sが10%の場合、均一分散指数が0.38以上であれば耐摩耗粒子が略均一に分散しており、均一分散指数が0.38未満であれば耐摩耗粒子が均一に分散していないと判断できる。同様に、全面積率Sが20%、30%、40%、50%、60%それぞれの場合、均一分散指数がそれぞれ0.55以上、0.65以上、0.73以上、0.80以上、0.85以上であれば耐摩耗粒子が略均一に分散しており、均一分散指数がそれぞれ0.55未満、0.65未満、0.73未満、0.80未満、0.85未満であれば耐摩耗粒子が均一に分散していないと判断できる。
【0071】
より詳細には、全面積率Sに対して均一分散指数が図5に示す限界の均一分散指数のグラフより上であれば耐摩耗粒子が略均一に分散しており、均一分散指数が図5に示すグラフより下であれば耐摩耗粒子が均一に分散していないと判断できる。
なお、耐摩耗肉盛層のマトリックスにおける前記上層及び前記下層それぞれの硬度はHv700〜1000であることが好ましい。
【0072】
(実施の形態4)
図6には、本発明の実施の形態4に係るブルドーザの足回り装置の部分拡大断面図が示されている。本実施の形態では、硬質粒子は実施の形態1の耐摩耗粒子と同様のものを用いる。
【0073】
本実施の形態において、履帯31は、互いに対向する一対のリンク32,32の一端に設けられた孔にブッシュ33の端部を圧入し、このブッシュ33に挿通した履帯ピン34の両端を前後のリンク32,32に圧入することによってリンクチェーンとし、このリンクチェーンに履板35を固着することにより構成されている。こうして、履帯31がスプロケット36とアイドラ(図示せず)とに巻回され、スプロケット36を駆動することで、このスプロケット36の歯溝部37がブッシュ33に噛み合い、このブッシュ33がスプロケット36の歯面上を滑りを伴いながら移動することにより、履帯31が回転されてブルドーザが走行するようになっている。
【0074】
このブルドーザの走行時には、スプロケット36の歯面とブッシュ33との間に土砂や岩石を巻き込んで滑り接触を繰り返しながら使用され、これらスプロケット36およびブッシュ33の各表面は極めて摩耗し易い条件で使用されることになる。このようなことから、スプロケット36の歯部およびブッシュ33の外周面には所要箇所に肉盛溶接が施され、これによって耐摩耗性の向上が図られている。
【0075】
ここで、耐摩耗肉盛層の形成に際しては、図7に示されるように、溶接ワイヤ(例えば、KOBE・JFEウェルディング「KC−50」)からなるアーク電極38が、水平に配置されている母材39の表面に対して所定のトーチ角(=45°〜55°)をなすように傾斜して配され、溶接領域にシールドガスとして100%アルゴンが供給され、またアーク電極38と母材39との間に発生されるアークによって形成される溶融池40に硬質粒子41がノズル42を介して供給される。このような溶接を矢印Aの方向に向かって所定速度で行うことにより、母材39の表面に肉盛層43が形成される。この場合、硬質粒子41が肉盛層43の表面に出ないように、かつ肉盛層43の深部において密にかつ均一に分布させるために、この硬質粒子41の落下位置をアーク直上とし、アークの手前には落とさないようにするのが好ましい。
【0076】
次に、スプロケット36およびブッシュ33の各部品毎の肉盛層形成方法について詳述する。
【0077】
スプロケット36における肉盛層形成方法についてスプロケット36の歯部(スプロケットティース)に対して肉盛層を形成する際には、図8(a)に示されるように、スプロケット36の回転方向と交差する方向、好ましくは直交する方向(矢印B方向)に、ブッシュ33との当たり面および歯先が全面肉盛される。ここで、各歯面については、歯先部から歯元部に至る方向(矢印C方向)に順次並列に肉盛層を形成するのがビード外観を均一にする上でも、肉盛品質を安定化する上でも望ましい。なぜなら、もし、逆の方向、すなわち歯元部から歯先部に至る方向(矢印Cと反対の方向)に肉盛層を形成した場合、溶接の熱が母材に蓄積し、歯先部の温度が高温になり、溶け込み深さや粒子の含有量や分布、母相金属の組織が変化してしまうので、連続して肉盛層を形成することができないからである。また、図8(b)に示されるように、歯先部近傍(約30mm)の範囲においては、余盛り高さを他の箇所より低くし(3〜4mm)、また歯頂部には肉盛層の欠損防止のために硬質粒子を添加しないようにするのが望ましい。さらに、前記硬質粒子は、歯元部と歯先部との中間部の含有量を歯元部および歯先部のそれぞれの含有量よりも多くして供給するのが好ましい。
【0078】
前述のように肉盛層の分布並びに硬質粒子の分布を規定することで、歯元部と歯先部とには主として靭性を持たせ、歯元部と歯先部との中間部には主として耐摩耗性を持たせることができるので、歯先部の剥離、欠損を防止することができて肉盛層の耐久性を安定化させることができる。肉盛層形成時に肉盛層には図8(a)に示されるようにビードに直交する方向に亀裂が発生することがあるが、この亀裂発生方向が両者の噛合時における引張応力発生方向(矢印B'方向)と一致しているので、その亀裂の口が開くのを防ぐことができる。
【0079】
ブッシュ33における肉盛層形成方法についてブッシュ33の外周面に肉盛層を形成する際には、図9に示されるように、スプロケット36の回転方向(ブッシュ33の摺動方向(図9(a)の矢印D'方向))と交差する方向、好ましくは直交する方向(矢印D方向)に、スプロケット36との当たり面としてのブッシュ外周面の略半周にわたって肉盛される。この肉盛層形成範囲をブッシュ外周面の全周にした場合には、この肉盛層形成時等に発生する熱応力や変態応力の逃げ場がなく母材が変形を起こしたり、割れが発生したりするという欠点がある。これに対して、本実施の形態のように所要部のみに肉盛層を形成するようにすれば、肉盛層形成後のブッシュ母材の内径加工が不要になるなどの利点がある。なお、この肉盛層形成範囲は、本実施の形態のように略半周(180°)に限らず、必要最小限の角度範囲(例えば120°)とすることもできる。
【0080】
(実施の形態5)
図10は、本発明の実施の形態5による打撃子を示す正面図である。図11は、図10に示す破砕機用打撃子の背面図である。本実施の形態では、硬質粒子は実施の形態1の耐摩耗粒子と同様のものを用いる。
【0081】
打撃子は、主として木材等の産業廃棄物の破砕に使用されるものであり、図10及び図11中で梨地状に表わした部分は、耐摩耗性を向上させるため硬質粒子を肉盛りした肉盛層50である。また、先端部分には超硬体が嵌合されている。フランジの一部を切り欠いてフラットにした部分を下向きとして回転ハンマー等に取り付けられ、木材等を打撃して破砕する。
【0082】
(実施の形態6)
図12(A)は、本発明の実施の形態6による破砕機の歯板を示す図であり、図12(B)は、図12(A)に示す歯板の歯の断面組織である。本実施の形態では、耐摩耗材は実施の形態1の耐摩耗粒子と同様のものを用いる。
【0083】
破砕機は、主としてコンクリートガラ、アスファルトなどの産廃物を歯板によって破砕するものである。図12(B)に示すように歯板の歯の内部には耐摩耗材が埋め込まれ溶着されている。
【0084】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態1または2による耐摩耗粒子を鋳ぐるみ法に用いた場合でも、外層に濡れ性の良い材料を用いることにより溶湯の浸透が容易になる。
【0085】
また、上記実施の形態1または2による耐摩耗粒子を鋳物の製造に用いた場合、溶湯と略等しい比重の耐摩耗粒子を前記溶湯に添加して攪拌することにより耐摩耗粒子が均一に分散した鋳物を製作することができ、この鋳物をそのまま耐摩耗部品としても良いし、溶接やボルト締結によって必要部位に装着しても良い。
【0086】
また、上記実施の形態では、マトリックスにFe系の材料を用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、マトリックスに他の材料、例えばNi系(例えばコルモノイなど)、Co系(例えばステライトなど)及びCu系(例えばアルミ青銅、リン青銅など)のいずれかの材料を用いることも可能である。
【0087】
また、上記実施の形態4から6以外に、破砕機のせん断刃、チークプレート、ズリフィーダバー、ビット、ブルドーザーのシューラグ、油圧ショベルのバケット、ツースアダプタ、リップ、ツース間シュラウド、コーナーガード、GET(Ground Engaging Tool)部品のカッティングエッジ、エンドビット、ツース、リッパポイント、プロテクタ、ウエアプレート、シャンク、トラッシュコンパクタの鉄輪のチョッパ等に実施してもよい。
【実施例】
【0088】
(実施例1)
図13は、実施例1による耐摩耗構造部材を示す断面図である。この耐摩耗構造部材は、図1に示す実施の形態1と同様の耐摩耗粒子を用い、図3に示す実施の形態3と同様の製造方法によって耐摩耗肉盛層が形成されたものであるので、詳細な説明は省略する。
【0089】
母材2にCrMo鋼を用い、溶接ワイヤに軟鋼を用い、シールドガスにAr−20%COを用い、230Aの溶接電流、17Vの溶接電圧を用いた。耐摩耗粒子13としては、芯部11の材料にTiCNを用い、外層12の材料にWCを用いて作製した45TiCN−8Ni−47(WC−7Co)粒子を用いた。この粒子の粒径は0.25〜0.85mmであり、粒子の比重は7.82であった。
【0090】
上記実施例1によれば、母材2と略等しい比重に耐摩耗粒子13を調整することにより、耐摩耗粒子の凝集を抑制でき、硬化して得られる肉盛層中に耐摩耗粒子13を略均一に分散させることができることが確認された。
【0091】
図14は、実施例1に対する比較例としての耐摩耗構造部材を示す断面図である。この耐摩耗構造部材は、図3に示す実施の形態3と同様の製造方法によって耐摩耗肉盛層が形成されたものである。但し、耐摩耗粒子には従来の硬質粒子であるWC−8Co粒子を用い、この粒子の粒径は0.25〜0.85mmであり、粒子の比重は14.5であった。
【0092】
上記比較例では、硬質粒子が肉盛層の下部に沈下して凝集している。従って、硬質粒子の比重を母材に合わせていないと均一に分散させることができないことが確認された。
【0093】
図15は、図13に示す実施例1の耐摩耗構造部材の肉盛層における表面から深さ方向の硬度を測定した結果であり、深さ方向の距離と硬度との関係を示すグラフである。
図15によれば、肉盛層の硬度が上層から下層にわたりHv700〜1000であり、肉盛層が高硬度を維持していることが確認された。
【0094】
図16は、図14に示す比較例の耐摩耗構造部材の肉盛層における表面から深さ方向の硬度を測定した結果であり、深さ方向の距離と硬度との関係を示すグラフである。
図16によれば、肉盛層の上層の硬度がHv700より低く、実施例1の耐摩耗構造部材の肉盛層のような高硬度を上層において維持できないことが確認された。
【0095】
図17は、図13に示す実施例1の耐摩耗構造部材の肉盛層における結晶組織を示す写真である。この結晶組織は、残留オーステナイトとマルテンサイトを有し、TiCN炭化物(白い粒)が均一に分散したものである。この結晶組織の部分の硬度はHv800であった。図17においても、肉盛層中にTiCN炭化物からなる耐摩耗粒子を略均一に分散させることができることが確認された。
【0096】
図18は、図14に示す比較例の耐摩耗構造部材の肉盛層における結晶組織を示す写真である。この結晶組織は、残留オーステナイトとFe−W共晶析出物を有するものである。この結晶組織の部分の硬度はHv500程度であり、実施例1の肉盛層に比べて硬度が低いものであった。
【0097】
図19は、図13に示す実施例1及び図14に示す比較例それぞれの耐摩耗構造部材に対して抗折試験を行った結果を示すグラフである。実施例1の耐摩耗構造部材と同様の試料を4つ用意するとともに比較例の耐摩耗構造部材を用意し、それぞれについて抗折試験を行い、その結果を図19において新粒子(1)、新粒子(2)、新粒子(3)、新粒子(4)及び比較例と記載している。
【0098】
図19によれば、実施例1の耐摩耗構造部材には高い抗折力が保持されていることが確認され、比較例の耐摩耗構造部材の抗折力は低いことが確認された。
【0099】
上記抗折試験は、抗折試験装置を用いて次の方法によって行った(JIS H 5501参照)。
1.抗折試験装置の支点間距離は20mm又は30mmとし、それぞれの支点及び荷重点先端の丸味半径を約2mm及び3mmとし、支点及び荷重点には超硬合金を使用する。なお、荷重点は支点間の中央とする。また、この試験において試料の破断面に割れ・穴などがあってこれが試験成績に影響を及ぼしたと判定される場合は、その成績は無効とし、同時につくった他の試料について再試験する。
【0100】
2.各試料の製造単位ごとに次の試料をつくり、試料の表面は1.5−S程度に長さの方向に4面を平滑に研削する。ただし、この試料の厚さの偏差は0.1mm以下とする。
(1)支点間の距離20mmの場合
24mm(長さ)×8mm(幅)×4mm(厚さ)
(2)支点間の距離30mmの場合
35mm(長さ)×10mm(幅)×6mm(長さ)
【0101】
3.測定方法は、抗折試験装置の支点上に試料をのせ荷重を厚さの方向に加えて徐々に荷重を増し破断したときの荷重目盛を読む。
【0102】
4.抗折力の算出は、次の式による。
抗折力=3pl/2bt(kgf/mm{N/mm})
ここに p:破断したときの荷重(kgf{N})
b:試料の幅(mm)
t:試料の厚さ(mm)
l:両支点間の距離(mm)
【0103】
図20は、ノッチレスで実施したシャルピー衝撃試験の結果を示すグラフである。実施例1の耐摩耗構造部材と同様の試験片を4つ用意し、比較例の耐摩耗構造部材の試験片を3つ用意するとともに比較のための高Cr鋳鉄(28Cr−2.8C)の試験片を3つ用意し、それぞれについてシャルピー衝撃試験を行い、その結果を図20において(1)、(2)、(3)、(4)、比較例(1)、比較例(2)、比較例(3)及び高Cr鋳鉄(1)、高Cr鋳鉄(2)、高Cr鋳鉄(3)と記載している。
【0104】
上記シャルピー衝撃試験は、ノッチレスの試験片をその両端で支持し、一定の条件のもとで、ハンマーのひと振りによって試験片を破断し特性を求めるものである(JIS Z 2242参照)。
【0105】
試験片を破断するのに要したエネルギーは、次の式によって算出する。
K=M(cosβ−cosα)
ここに、K:試験片を破断するのに要したエネルギー(J)
M:ハンマーの回転軸の周りのモーメント(N・m)
M=W・r
W:ハンマーの質量による負荷(N)
r:ハンマーの回転軸中心から重心までの距離(m)
α:ハンマーの持上げ角度(°)
β:試験片破断後のハンマーの振上がり角度(°)
【0106】
図20によれば、実施例1の耐摩耗構造部材には高いエネルギーを加えなければ破断しないことが確認され、比較例及び高Cr鋳鉄の耐摩耗構造部材には低いエネルギーで破断することが確認された。
【0107】
図21は、試験片に対して摩耗試験を行う装置を概略的に示す図である。図22は、図21に示す装置で摩耗試験を行った結果を示すものであり、平均硬度と1/摩耗体積比との関係を示すグラフである。
【0108】
摩耗試験を行う試験片としては、実施例1の耐摩耗構造部材の試験片(発明品)及びそれと比較する試験片を用意した。比較する試験片としては、代表的な耐摩耗鋼板であるスウェーデン鋼のHARDOX500、JIS鋼材であるSKD11、SKH51、高Cr鋳鉄肉盛1層盛、高Cr鋳鉄肉盛2層盛、タングステンカーバイド粒子をガス溶着したもの、超硬粒分散材(従来型)を用意した。
【0109】
図21に示すように、ラバーホイールを回転させ、このラバーホイールに試験片を試験荷重によって押し付け、この試験片とラバーホイールとの間に珪砂を珪砂ホッパーから落下させ、1/摩耗体積比を測定する。試験条件は、以下のとおりである。
【0110】
(試験条件)
(1)使用珪砂 20〜48メッシュ
(2)試験荷重 13.26kg
(3)珪砂供給量 300g/min
(4)ラバーホイール周速 100m/min
(5)試験時間 20分
(6)試験片寸法12t×25w×75L
(7)ホイール厚み 12.7mm
【0111】
図22によれば、発明品である実施例1の耐摩耗構造部材は、比較例に比べて高い耐摩耗性を有していることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の実施の形態1による耐摩耗粒子を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態2による耐摩耗粒子を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態3による耐摩耗構造部材の製造方法を示す模式図である。
【図4】耐摩耗肉盛層の上下方向に切断した断面を10mm角の断面とし、全面積率Sを10%〜60%にした場合において、略均一に分散しているとみなす最低(限界)の均一分散指数St/Sbと最高の均一分散指数St/Sb=1の耐摩耗粒子の分布状態を示す断面図である。
【図5】表1に示す全面積率Sと限界の均一分散指数St/Sbとの関係を示すグラフである。
【図6】本発明の実施の形態4に係るブルドーザの足回り装置を示す部分拡大断面図である。
【図7】肉盛層の形成機構説明図である。
【図8】(a)、(b)は、スプロケットの肉盛層形成状態説明図である。
【図9】(a)(b)(c)は、ブッシュの肉盛層形成状態説明図である。
【図10】本発明の実施の形態5による破砕機用打撃子を示す正面図である。
【図11】図10に示す破砕機用打撃子の背面図である。
【図12】(A)は、本発明の実施の形態6による破砕機の歯板を示す図であり、(B)は、(A)に示す歯板の歯の断面組織である。
【図13】実施例1による耐摩耗構造部材を示す断面図である。
【図14】実施例1に対する比較例としての耐摩耗構造部材を示す断面図である。
【図15】図13に示す実施例1の耐摩耗構造部材の肉盛層における深さ方向の距離と硬度との関係を示すグラフである。
【図16】図14に示す比較例の耐摩耗構造部材の肉盛層における深さ方向の距離と硬度との関係を示すグラフである。
【図17】図13に示す実施例1の耐摩耗構造部材の肉盛層における結晶組織を示す写真である。
【図18】図14に示す比較例の耐摩耗構造部材の肉盛層における結晶組織を示す写真である。
【図19】図13に示す実施例1及び図14に示す比較例それぞれの耐摩耗構造部材に対して抗折試験を行った結果を示すグラフである。
【図20】ノッチレスで実施したシャルピー衝撃試験の結果を示すグラフである。
【図21】試験片に対して摩耗試験を行う装置を概略的に示す図である。
【図22】図21に示す装置で摩耗試験を行った結果を示すものであり、平均硬度と1/摩耗体積比との関係を示すグラフである。
【図23】WC粒子を分散させた肉盛合金の断面マクロ組織を示す図である。
【図24】Cr粒子を分散させた肉盛合金の断面マクロ組織を示す図である。
【図25】TiC粒子を分散させた肉盛合金の断面マクロ組織を示す図である。
【図26】他の従来の耐摩耗構造部材の製造方法を示す模式図である。
【符号の説明】
【0113】
1 アーク電極
2 母材
3 溶融池
4 硬質粒子
5 第2粒子
6 二股ノズル
7 肉盛層
11,14 芯部
12,16 外層
13 耐摩耗粒子
15 中間層
17 耐摩耗粒子
26 ノズル
31 履帯
32 リンク
33 ブッシュ
34 履帯ピン
35 履板
36 スプロケット
37 歯溝部
38 アーク電極
39,39' 母材
40 溶融池
41 超硬粒子
43,43'、50 肉盛層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
母相金属に分散させて耐摩耗性を向上させる耐摩耗粒子において、
芯部と、
前記芯部を被覆する外層と、
を具備し、
前記母相金属より小さい比重を有する第1硬質材料と、前記母相金属より大きい比重を有する第2硬質材料とを配合した材料からなることを特徴とする耐摩耗粒子。
【請求項2】
請求項1において、前記外層の厚さが100μm超とすることを特徴する耐摩耗粒子。
【請求項3】
請求項1または2において、前記芯部と前記外層との間に配置された中間層をさらに具備することを特徴とする耐摩耗粒子。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項において、前記母相金属は、Fe系、Ni系、Co系及びCu系のいずれかであることを特徴とする耐摩耗粒子。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項において、前記母相金属がFe系の材料であり、前記第1硬質材料が炭化チタン、炭化窒化チタン、炭化バナジウム、炭化窒化バナジウム、炭化ジルコニウム、炭化窒化ジルコニウム、炭化クロム、及び炭化窒化クロムのうち少なくとも1つを有し、前記第2硬質材料が炭化モリブデン、炭化窒化モリブデン、炭化タンタル、炭化窒化タンタル、炭化タングステン、及び炭化窒化タングステンのうち少なくとも1つを有することを特徴とする耐摩耗粒子。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか一項において、前記母相金属がCo系、Ni系、Cu系の材料のいずれかであり、前記第1硬質材料が炭化チタン、炭化窒化チタン、炭化バナジウム、炭化窒化バナジウム、炭化ジルコニウム、炭化窒化ジルコニウム、炭化クロム、炭化窒化クロム、炭化ニオブ、及び炭化窒化ニオブのうち少なくとも1つを有し、前記第2硬質材料が炭化モリブデン、炭化窒化モリブデン、炭化タンタル、炭化窒化タンタル、炭化タングステン、及び炭化窒化タングステンのうち少なくとも1つを有することを特徴とする耐摩耗粒子。
【請求項7】
請求項1または2において、前記母相金属が鋼であり、前記芯部の主成分が炭化チタンまたは炭化窒化チタンと炭化タングステンを配合したものであり、前記外層の主成分が炭化タングステンであることを特徴とする耐摩耗粒子。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項において、前記母相金属の比重をTとし、前記母相金属との比重の差をtとすると、t/Tが20%〜−15%の範囲内であることを特徴とする耐摩耗粒子。
【請求項9】
母相金属と、
前記母相金属に分散された請求項1乃至8のいずれか一項に記載の耐摩耗粒子と、
を具備することを特徴とする耐摩耗構造部材。
【請求項10】
請求項9において、前記耐摩耗粒子が分散された母相金属は耐摩耗肉盛層であり、該耐摩耗肉盛層は母材に肉盛されていることを特徴とする耐摩耗構造部材。
【請求項11】
請求項9または10において、前記母相金属における略重力方向に沿った断面を、略重力方向に対して直交する線によって上下に1/2ずつの面積で分離し、前記断面の上層に存在する前記耐摩耗粒子の数をaとし、前記断面の下層に存在する前記耐摩耗粒子の数をbとした場合、a/bが0.38以上であることを特徴とする耐摩耗構造部材。
【請求項12】
請求項11において、前記母相金属における前記上層及び前記下層それぞれの硬度がHv700〜1000であることを特徴とする耐摩耗構造部材。
【請求項13】
請求項9乃至12のいずれか一項の耐摩耗構造部材は、破砕機の歯板、打撃子、せん断刃、チークプレート、ズリフィーダバー、ビット、ブルドーザのトラックブッシュ、スプロケットティース、シューラグ、油圧ショベルのバケット、ツースアダプタ、リップ、ツース間シュラウド、コーナーガード、GET(Ground Engaging Tool)部品のカッティングエッジ、エンドビット、ツース、リッパポイント、プロテクタ、ウエアプレート、シャンク、トラッシュコンパクタの鉄輪のチョッパのいずれかに用いられることを特徴とする耐摩耗構造部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図15】
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【図16】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図26】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図17】
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【図18】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2007−268552(P2007−268552A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−95451(P2006−95451)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】