説明

耐水性石膏系物品の製造方法

耐湿性石膏系物品、例えば石膏ボードを、石膏系物品を作製するために使用する水性スラリーに、少量のシロキサンを、シロキサンの硬化を強化するための少量の硬焼酸化マグネシウム触媒と共に加えることにより作製する。好ましい実施形態においては、化学的乳化剤を使用せずに、その場でシロキサンから水性エマルジョンを生成させる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、石膏系製品を作製するために使用する水性スラリーに少量のシロキサンを添加することにより、耐湿性石膏系製品、例えば石膏ボード、強化石膏複合体ボード、漆喰、被削性材料、接合処理材料および防音タイルなどを製造する方法に関する。より詳細には、本発明は、シロキサンの硬化を強化するために少量の硬焼酸化マグネシウム触媒を水性スラリーに添加することに関する。
【0002】
[背景]
石膏は、典型的には往時の塩湖床、火山堆積物および粘土床に見出される天然産鉱物である。化学名で、石膏は硫酸カルシウム二水和物(CaSO・2HO)である。この物質は種々の工業プロセスにおける副産物としても製造される。
【0003】
硫酸カルシウム二水和物が十分に加熱されたとき(焼成と呼ばれる工程)、水和水は追い出され、曝露温度および時間に依存して硫酸カルシウム半水和物(CaSO・1/2HO)または硫酸カルシウム無水物(CaSO)のいずれかが生成し得る。本出願で使用する「焼き石膏」という用語は、硫酸カルシウムの半水和物および無水物の両者を指す。
【0004】
焼き石膏は水と反応して、かなり堅くて変形し難い生成物である硫酸カルシウム二水和物を生成することができ、この生成物を本出願では「凝結石膏」と称する。
【0005】
一般的な石膏製品の一例は石膏ボードであり、建築構造パネルとして広く使用されている。一般的に、石膏ボードは、水和して凝結石膏を生成する焼き石膏の水性スラリーから作製した芯を含む。通常、石膏ボードはその両面に接着した紙シートのライニングを有する。
【0006】
凝結石膏の特徴は水を吸収する傾向があることである。例示すると、耐水性添加物を含まない石膏芯は、70°Fの温度で水中に約2時間浸漬したとき、40から50重量%もの水を吸収し得る。石膏製品が水または高湿度に曝される用途において、この特徴は望ましくない。石膏のよる水の吸収は、製品の強度を低下させ、製品に微生物が増殖し易くし、また仕上げ面の離層を惹き起こす傾向がある。
【0007】
石膏ボードはプラスチックまたはセラミックタイルで覆われた内在面として浴室で使用することもでき、この目的ではしばしば「タイル裏打ちボード」と称される。これらのような用途では、石膏ボードが良好な耐水性を示すことが重要である。
【0008】
これらの先行技術製品は、通常の石膏壁板、石膏タイル、石膏ブロック、石膏ギブス等のように、耐水性が比較的低い。例えば、通常の石膏壁板が水に浸漬されたとき、壁板は相当量の水を急速に吸収して強度を大きく失う。実際の試験で、ASTM試験1396により石膏ボード芯材料を約70°Fで2時間水に浸漬したとき、40%を超える水分吸収が普通であることが示された。過去において石膏製品の耐水性を改良するために多くの試みが為された。これらの試みには、金属石鹸、アスファルト、シロキサン、樹脂その他などの耐水性材料を硫酸カルシウム半水和物スラリー内に導入することが含まれる。それらの試みには、完成した石膏製品を耐水性のフィルムまたはコーティングでコートする試みも含まれる。撥水性物質の添加により石膏全体に防水処理する過去の試みの具体的な一例がKingおよびCampへの特許第2,198,776号に開示されている。この特許は、パラフィン、シロキサン、アスファルト等を、溶融した材料としてスラリー中に噴霧することにより、水性スラリー中に導入することを示している。
【0009】
本発明は、凝結石膏製品に耐水性を付与するために、シロキサンをその中に導入した耐水性石膏組成物を製造する改良法に関する。
【0010】
「耐水性」という表現は、上で規定した予め製作した構造要素の、漆喰基材による水の取込みを制限する一方で、なおも問題の構造要素の寸法安定性および機械的欠陥のないことを維持する性能を意味すると理解すべきである。
【0011】
国により、この耐水性は固有の基準によって法制化または規制されている。具体的には、ASTM630/630M−96aおよびASTM1398基準は、そのような石膏系物品を水に2時間浸漬したときに、その漆喰基材による水の取込みが5%未満であること、および表面における吸水(Cobb当量と呼ばれる)が1.60g/m未満であることを求めている。
【0012】
この撥水性は、一般的に少なくとも次のステップを含む任意のプロセスを使用することにより得られる。
(a)主として少なくとも1種類の水和し得る硫酸カルシウムと、上記の撥水剤を含む乾燥材料と、水とを均一に混合して、前記基材を含水状態で予備成形するステップ;
(b)予備成形した基材を固体のおよび乾燥した状態で得る目的で、前記基材を乾燥するステップ。
【0013】
そのようなプロセスにあっては、漆喰基材に、例えばシリコーン油の形で、導入される撥水剤の量を制御することは困難であり、それ故撥水剤の能力は活用されていない。
【0014】
石膏壁板などの耐湿性石膏系製品を作製するためにシロキサンを使用することは、よく知られている。一般に、石膏系製品を作製するために使用される水性スラリーに、少量のシロキサンを加えて、製品を成形し、乾燥させる。そのような耐湿性石膏系製品の製造は、特に米国特許第3,455,710;第4,643,771号;第5,135,805号;第5,330,762号;第5,366,810号;第5,626,605号;第5,626,668号;第6,100,607号および第6,569,541号に記載されている。しかしながら、ある場合には、石膏系製品を耐水性にするために使用したシロキサンが適当な時間で完全には硬化せず、または全く完全には硬化しないことが見出されている。いずれの場合にも、耐水性は満足なレベルに発現しない。
【0015】
石膏系物品における耐水性の発現を促進し、改良するためにシロキサンの硬化を強化する触媒と共にシロキサンをスラリーに導入する方法を提供することが、本発明の目的である。
【0016】
[発明の概要]
本発明は、石膏系製品を作製するために使用する水性スラリーに少量のシロキサンおよびシロキサンの硬化を強化する触媒を添加することにより、耐湿性石膏系製品、例えば石膏ボード、強化石膏複合体ボード、漆喰、被削性材料、接合処理材料および防音タイルなどを製造する方法に関する。前記の方法は、シロキサンエマルジョンを前記石膏系物品を作製するために使用する量水と混合するステップ、硬焼酸化マグネシウム触媒を焼き石膏と混合するステップ、シロキサンエマルジョン/水混合物を焼き石膏/酸化マグネシウム混合物と混合して、水性スラリーを形成させるステップ、およびスラリーを所望の形状に成形して、前記成形したスラリーを凝結させて、凝結石膏系耐水性物品を形成させるステップを含む。
【0017】
本発明は、焼き石膏と他の乾燥成分との重量を基準にして、約0.4から1.0%のシロキサンの使用を企図している。好ましいプロセスにおいては、シロキサンを量水の一部と強力ミキサーで数秒間混合させることにより、シロキサン/水エマルジョンをその場で生成させる。
【0018】
好ましい実施形態において、触媒は硬焼酸化マグネシウムである。好ましくは、石膏の重量を基準にして約0.1から約0.5重量%の酸化マグネシウムを使用する。
【0019】
[好ましい実施形態の説明]
壁板などの石膏系構造物を作製する従来のプロセスにおいては、計量した水(量水と呼ぶ)および任意の他の液体成分を連続的に「ピンミキサー」に供給する。壁板を作製するために使用される焼き石膏および他の乾燥成分は、通常、乾燥状態でブレンドし、次いでピンミキサーに連続的に供給し、その中で数秒間量水と混合して水性スラリーを生成させる。壁板密度を下げるために使用する発泡体をピンミキサーに加えることもできる。次にピンミキサー中で生成させたスラリーを壁板などの物品に成形してから、成形した物品を乾燥する。最高の耐水性を得るためには、シロキサンを石膏上に均一に分布させることが必要である。比較的少量のシロキサンが使用されるので、シロキサンをエマルジョンの形態で量水と混合したときに、石膏上に最も均一なシロキサン分布が提供されることが見出された。この方法は、石膏スラリーを生成させるために使用する量水全体にシロキサンを均一に分布させる。量水をシロキサンと予め混合して、ピンミキサー中で石膏および他の乾燥材料と混合し、スラリーを生成させる。
【0020】
(シロキサン)
本発明は、石膏系物品を作製するために使用するスラリーに、重合可能なシロキサンを安定なエマルジョンの形態で加えることにより、石膏系物品の耐水性を改良することを広く企図している。次に、スラリーを成形し、シロキサンの重合を促進して高度に架橋したシリコーン樹脂を生成させる条件下に乾燥させる。好ましくは、シロキサンの重合を促進して高度に架橋したシリコーン樹脂を生成させる触媒を、石膏スラリーに添加する。
【0021】
前記シロキサンは通常液状の鎖状水素修飾シロキサンであるが、環状水素修飾シロキサンであってもよい。そのようなシロキサンは、高度に架橋したシリコーン樹脂を生成することができる。そのような液体は当業者によく知られていて、市販されており、特許文献に記載されている。本発明の実施に役立つ鎖状水素修飾シロキサンは、典型的には、次の一般式のシロキサン:
RHSiO2/2
を含み、式中、Rは飽和または不飽和の1価の炭化水素基である。好ましい実施形態において、Rはアルキル基を表わし、最も好ましくは、Rはメチルである。
【0022】
シロキサンエマルジョンがスラリーを生成させるために使用する水と十分に混合する時間をとるために、スラリーが生成する前に、シロキサンエマルジョンを量水に加えることが好ましい。
【0023】
シロキサンエマルジョンはピンミキサーに到達するまで安定であること、およびスラリーの条件下でよく分散したままであることが必須である。すなわち、シロキサンエマルジョンは、スラリー中に存在する促進剤などの添加剤の存在下でよく分散したままでなければならない。シロキサンエマルジョンは、石膏系物品が形成されるステップを通して同様に安定でなければならない。
【0024】
本発明の石膏系耐水性物品は、好ましくは、シロキサンとしてWacker−Chemie GmbHによりSILRES BS−94という名前で販売されているメチル水素ポリシロキサン液を用いて作製される。前記メーカーはこの製品が水または溶媒を含まないシロキサン液であると表示している。乾燥成分の重量を基準にして約0.3から1.0%のBS−94シロキサンを使用できることが企図される。約0.4から約0.8%のシロキサンを使用することが好ましい。
【0025】
(シロキサンエマルジョン)
本発明は、耐水性を改良するために、広範囲のシロキサンエマルジョンを使用することを企図している。好ましいプロセスにおいては、シロキサン流体を少量の水と強力ミキサーで数秒間混合することにより、シロキサン/水エマルジョンをその場で生成させる。化学的乳化剤は使用しない。このプロセスは、量水と混合してシロキサンが量水全体に均一に分布することができる十分安定なエマルジョンを生成させることが見出された。このシロキサン/水エマルジョンはピンミキサーに入り、焼き石膏および他の乾燥材料と混合されてスラリーを生成させる。
【0026】
本発明の好ましい実施形態によれば、量水の一部を量水配管から連続的に抜き出して強力ミキサー中に供給する。必要量のシロキサン油を強力ミキサー中に連続的に計量して入れ、その中でシロキサンは量水と1〜2秒間混合されて水中油エマルジョンをその場で形成する。シロキサン各1部に対して約25部の比で水を混合することができる。水のシロキサンに対する比は、それほど重要ではない。化学的乳化剤は石膏の再水和反応、系に加える発泡体の安定性および石膏芯に面する紙の接着に悪影響を及ぼし得るので、乳化剤を使用しないことが好ましい。その場で生成させたシロキサン/水エマルジョンは如何なる化学的乳化剤もなしで十分安定であることが見出された。
【0027】
予め作製したシロキサンエマルジョンも使用できる。しかしながら、予め作製したシロキサンエマルジョンは、しばしば、貯蔵中の安定性に問題があり、予め作製したエマルジョンに使用した乳化剤が、紙接着の問題および石膏再水和プロセス中の問題など、石膏物品作製における問題を惹起する傾向がある。好ましい実施形態において、強力ミキサー中で生成させたシロキサン/水エマルジョンは、直ちに量水の残分と混合し、続いてそれをピンミキサーに計量して入れる。このシロキサン/水エマルジョンは十分安定で、ピンミキサーに入るときエマルジョンとしての特徴を保持している。このプロセスの結果として、シロキサンは水系石膏スラリー全体に均一に分布し、その結果作製される石膏物品全体に均一に分布する。
【0028】
(触媒)
上記のシロキサン製品は水素ポリシロキサンである。これは反応性シラノール中間体(OH化合物)を生成してポリメチルケイ酸を生ずることにより硬化する。耐水性を発現するためにはシロキサンが壁板内で硬化することが必要であるとされている。シロキサンが石膏スラリーに加えられたとき、硬化反応は非常に緩慢に開始する。多くの場合、先行のプロセスによって作製された壁板の耐水性は1または2週間の間発現しない。他の場合、先行プロセスにより作製された壁板の耐水性は全く発現しない。シロキサンの硬化が緩慢で耐水性が直ちに発現しないとき、壁板を出荷できる前に、耐水性が発現するために十分な期間保存しなければならない。
【0029】
壁板に吸水抵抗性を与えるシロキサンの硬化を向上させるために、ある触媒を石膏スラリーに添加することができることが見出された。触媒は比較的水不溶性でかつ石膏スラリーの成分に対して非反応性であることが重要である。例えば、先行技術によって提案されているアルカリ土類酸化物および水酸化物は比較的水溶性で、結果としてアルカリ土類酸化物および水酸化物はスラリーのpHを上昇させる。高めのpHは焼き石膏水和物の再水和に干渉する。その上、アルカリ土類酸化物および水酸化物はシロキサンと急速に反応して水素の急激な発生を惹起する。
【0030】
好ましい触媒は硬焼酸化マグネシウムであり、その理由は水に殆ど完全に不溶性でしかもシロキサン以外のスラリー成分と非反応性であることである。硬焼酸化マグネシウムはシロキサンの硬化を促進して、ある場合には、シロキサンをさらに完全に硬化させる。硬焼酸化マグネシウムは大量の水素発生を起こさずにシロキサン硬化の触媒となる。その上、硬焼MgOはバラツキのない組成で市販されている。
【0031】
前記触媒は乾燥材料であり、焼き石膏全体に触媒を均一に分布させる目的で、焼き石膏および他の乾燥成分と好ましくはドライブレンドする。それから、触媒を含むこの乾燥混合物をピンミキサーに加える。
【0032】
比較的少量の触媒を使用すればよい。焼き石膏の重量を基準にして約0.1から約0.5重量%の硬焼酸化マグネシウムを使用すればよいことが見出された。好ましくは、焼き石膏の重量を基準にして約0.2から0.4重量%の硬焼酸化マグネシウムを使用する。
【0033】
好ましい触媒は、カナダのアルバータ州CalgaryのBaymag社から「Baymag 96」という名前で販売されている硬焼酸化マグネシウムである。それはBETにより測定して1グラム当り少なくとも0.3平方メートルの表面積を有する。その強熱減量は0.1重量%未満である。
【0034】
本発明で使用する硬焼酸化マグネシウムと従来の酸化マグネシウムと間の相違は、それぞれの材料を水と混合したときの温度上昇を比較することにより示すことができる。
【0035】
水中における硬焼酸化マグネシウム(Baymag 96)および従来の酸化マグネシウム(Baymag 30)の発熱反応速度はTemperature Rise System(TRS)を使用して定量した。TRSユニットは、MgOの水との発熱反応から発生する熱を測定する電子サーモスターである。各試料は50グラムの酸化マグネシウムおよび100mlの水を含み、10秒浸漬して10秒間手で混合した。酸化マグネシウムおよび水混合物を流し込んであるカップにサーモスターを入れる。このカップは準温度安定環境にある(発泡スチロール容器)。データをデータ取得系によって収集する。収集したデータを下の表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
結果は、従来の酸化マグネシウムの水との反応が硬焼酸化マグネシウムの水との反応と明らかに相違することを示す。従来の酸化マグネシウムの水との反応の方が発熱的であり、温度をおよそ5°F上昇させ、それに対して硬焼酸化マグネシウムの水との反応は僅かな温度変化(約0.8°F)を示したのみであった。この試験は、硬焼酸化マグネシウムと他の従来の酸化マグネシウムとの間を識別することに使用できる。
【0038】
好ましい触媒は、Baymag社から「Baymag 96」の名前で販売されている硬焼酸化マグネシウムであって、何故ならそれが起こす温度上昇はTemperature Rise Systemで1°F未満だからである。惹起する温度上昇が約2°F以下の酸化マグネシウムが本発明における使用に適している。これより大きい温度上昇を生ずるBaymag 30などの酸化マグネシウムは、シロキサンの適当な触媒にはなるが、そのような酸化マグネシウムは、この石膏再水和プロセスを遅延させ、しかも紙の結合の低下の原因になるので、好ましくない。
【実施例】
【0039】
次の実施例は本発明の範囲内の幾つかの壁板組成物の作製を例示するために役立つであろう。これらの実施例は例示の目的で説明するもので、多くの他の組成物が本発明の範囲内にあることは理解される。当業者は、下に例示するもの以外の他の多数の材料および同等の種類の材料を含めて、他の石膏系物品のための同様な組成物を作製することができることを認めるであろう。
【0040】
(実施例1)
紙被覆発泡石膏ボードを、工業用石膏ボード製造施設における典型的なフルスケール生産ライン上で作製した。成分およびそれらの概略の重量百分率(使用した焼き石膏の重量を基準にして比較的狭い範囲で表わした)を表2に掲載する。量水の一部は量水配管から連続的に取り出して強力ミキサー中に供給する。ミキサーはVertifloPump Co.のモデルNo1420−2x−2x8であった。必要量のシロキサン液を連続的に計量しながら強力ミキサーへ入れ、そこで量水と1〜2秒間混合して、その場で水中油エマルジョンを生成させる。シロキサン各1部に対して約25部の比で水を混合する。次に、シロキサン/水エマルジョンを量水配管に戻して量水の残分と混合した。酸化マグネシウムを焼き石膏および他の乾燥成分とドライブレンドしてからピンミキサーにかけた。製作中にシロキサンおよび酸化マグネシウムを含むことを除き、先行技術の石膏ボード製造方法および成分に典型的な方法および成分を使用してボードを作製した。ボードは種々の濃度のシロキサンおよび種々の量の酸化マグネシウムで作製し、ASTM試験1396に従って、対照ボードと比較し耐水性を試験した。
【0041】
【表2】

【0042】
表2において:凝結促進剤は、米国特許第3,573,947号に記載されているように、硫酸カルシウム脱水物の細かく粉砕した糖被覆粒子を含むものであったが、その作製中に加熱しない;デンプンはLauhoff Grain Co.から入手した市販の乾燥製粉酸修飾HI−BONDデンプンであった;分散剤は、ペンシルバニア州AmblerのGEO Specialty Chemicalsから入手した市販のナフタレンスルホネートDILOFLOであった;紙繊維はハンマー粉砕の細い紙繊維であった;凝結遅延剤はワシントン州KirklandのVan Walters & Rogersから入手した市販のキレート剤VERSENEX80であった;発泡剤はコネティカット州GreenwichのWitco Corp.から入手した市販のWITCOLATE1276であった;トリメタリン酸ナトリウムはミズーリ州St.LouisのAstaras Co.から供給される市販品であった;再焼成阻止剤は、乾燥中のボードの端の再焼成を減少させるために使用したデキストロースCERELOSE 2001であった。シロキサンはWacker−Chemie GmbHによりSILRES BS−94の名前で販売されている液体であった。酸化マグネシウムはカナダのアルバータ州CalgaryのBaymag,Inc.から「Baymag 96」の名前で販売されている硬焼酸化マグネシウムであった。
【0043】
ボードは幅4フィートの生産ライン上で次のステップにより製造した。成分をミキサーに連続的に導入し、混合して水性スラリーを生成させるステップ(別々の泡発生系で水性泡を発生させるために発泡剤を使用した;それに続いてミキサーを通して泡沫をスラリーに導入した);移動ベルト上の紙の被覆シート(表面紙)上にスラリーを連続的に付着させるステップ;付着したスラリー上にもう1つの紙被覆シート(裏紙)を置いて厚さ‘hインチのボードを形成させるステップ;硫酸カルシウム二水和物を生成させる硫酸カルシウム半水和物の水和が十分に進行してスラリーが精密に切断するのに十分なほど硬くなったときに、移動するボードを切断して約12×4フィートおよび厚さ1/2インチの個々のボードを作製するステップ;および加熱した多段キルン中でボードを乾燥するステップ。
【0044】
そのような製品の、ASTM試験1396に従って試験したときの代表的な吸湿値を下記表3に示す。
【0045】
【表3】

【0046】
(実施例2)
石膏系物品におけるシロキサンにより発現する耐水性に対する硬焼酸化マグネシウムの効果を示すために実験室試験を実施した。0.7%のBS−94シロキサンおよび550グラムの水を高せん断ミキサー中7500rpmで2.5分間混合することにより、エマルジョンを生成させた。試験1〜3においては、それに続いてエマルジョンを500グラムの焼成した天然石膏、0.1グラムのCSAおよび選択した量のBaymag 96酸化マグネシウムとWaring Blender中で10秒間混合して、立方体に成形し、それを1夜加熱した。試験4は、焼成した合成石膏を使用した以外は同様にして実施した。全ての試験において、0.7重量%のシロキサンを使用した。試験1〜4で使用したBaymag 96の選択した量を下記表4に示す。ASTM試験1396に従って、製造24時間以内に、立方体を水中に2時間吸収のため浸漬した。各水準で3つの試験を実施した。3つの試験に対する平均水分レベルを表3に示す。
【0047】
【表4】

【0048】
合成石膏で作製した試験4の試料は、天然石膏で作製した試験2の試料よりも、両方の試験で同量のBaymag 96を使用したにもかかわらず、吸水が少なかった。この相違は合成石膏に一般的に見られる飛灰などの不純物に帰せられる。
【0049】
本明細書で示して説明した本発明の形態は、単なる例示と見なすべきである。当業者には、本発明の趣旨および前述の特許請求の範囲の範囲から離れることなく、多くの改良をその中で為し得ることが明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐水性石膏系物品の製造方法であって、
a)シロキサンエマルジョンを、前記石膏系物品を製作するために使用する量水と混合するステップと、
b)少量の硬焼酸化マグネシウムを焼き石膏と混合するステップと、
c)前記シロキサンエマルジョン/量水混合物を前記焼き石膏/酸化マグネシウム混合物と混合して、水性スラリーを形成させるステップと、
d)前記スラリーを成形して、前記成形したスラリーを凝結させて、凝結石膏系耐水性物品を形成させるステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記酸化マグネシウムが、Temperature Rise Systemにおいて華氏1度以内の温度上昇を生ずる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸化マグネシウムが、BETにより測定して1グラム当り少なくとも0.3平方メートルの表面積を有する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記酸化マグネシウムが、0.1重量%未満の強熱減量を有する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
酸化マグネシウムの量が石膏の約0.1から約0.5重量%である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記シロキサンがポリ(メチル水素シロキサン)である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリ(メチル水素シロキサン)が凝結石膏物品の乾燥成分の約0.3から約1.0重量%を構成する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリ(メチル水素シロキサン)の量が凝結石膏物品の乾燥成分の約0.4から約0.8重量%である請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記物品が耐水性凝結石膏ボードである請求項1に記載の方法。
【請求項10】
耐水性石膏系物品の製造方法であって、
a)ある量のシロキサン流体を、前記石膏系物品を作製するために使用する量水の一部と強力ミキサー中で混合して、シロキサン/水エマルジョンをその場で形成させるステップと、
b)少量の酸化マグネシウムを焼き石膏と混合するステップと、
c)前記シロキサン/水エマルジョンを量水の残分と混合するステップと、
d)前記石膏/酸化マグネシウム混合物をステップ(C)のシロキサン/水混合物と混合して水性スラリーを生成させるステップと、
e)前記スラリーを成形し、前記成形したスラリーを凝結させて、凝結石膏系耐水性物品を形成させるステップと
を含む方法。
【請求項11】
前記シロキサン/水エマルジョンを乳化剤の非存在下に生成させる請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(A)において約25重量部の量水を各1重量部のシロキサンと混合する請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記酸化マグネシウムが硬焼酸化マグネシウムである請求項10に記載の方法。
【請求項14】
酸化マグネシウムの量が、石膏の約0.1から約0.5重量%である請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記物品が耐水性凝結石膏ボードである請求項10に記載の方法。
【請求項16】
耐水性石膏系物品を形成させる間にシロキサンを導入する方法であって、
a)ある量のシロキサン流体を、前記石膏系物品を作製するために使用する量水の一部と強力ミキサー中で混合して、シロキサンエマルジョンを生成させるステップと、
b)前記シロキサンエマルジョンを、量水の残分、焼き石膏および少量の硬焼酸化マグネシウムと混合して水性スラリーを生成させるステップと
c)前記スラリーを成形して凝結させ、ASTM規格1396に従って24時間以内に70°Fで2時間浸漬したときに、水中で自重の約10%未満を吸収する凝結石膏系耐水性物品を形成させるステップと
を含む方法。
【請求項17】
実質的な量の石膏二水和物を含み、ASTM規格1396に従って24時間以内に70°Fで2時間浸漬したときの吸水が自重の約10%未満であるような高度の耐水性をボードに付与するように、凝結混合物の前駆体である石膏スラリーに加える量水の一部と強力ミキサーでプレミックスされた十分な量の実質的にシロキサンの流体、量水の残分および少量の硬焼酸化マグネシウムで作製された凝結混合物を含む石膏含有ボード。

【公表番号】特表2008−509824(P2008−509824A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525637(P2007−525637)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【国際出願番号】PCT/US2005/026345
【国際公開番号】WO2006/020369
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(596172325)ユナイテッド・ステイツ・ジプサム・カンパニー (100)
【Fターム(参考)】