説明

耐汚染性粉体塗料及び基材表面の汚れ防止方法

【課題】 耐汚染性粉体塗料を提供する。
【解決手段】硬化型粉体塗料中にメルカプト基、エポキシ基及び不飽和基から選ばれる1種もしくは2種以上の官能基を含有するアルコキシシラン化合物を含有してなることを特徴とする耐汚染性粉体塗料、及び金属、木材、プラスチック、コンクリート、ガラスなどの基材表面に、該耐汚染性粉体塗料を静電粉体塗装、流動浸漬塗装、摩擦帯電塗装等の塗装手段を用いて、塗装膜厚は平均30〜200μmに塗装し、次いで焼付けて耐汚染性粉体塗膜を形成することを特徴とする基材表面の汚れ防止方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐汚染性粉体塗料及び基材表面の汚れ防止に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塗膜を親水化させることにより塗膜の汚染を防止する塗料については公知(特許文献1など)であり、このような塗料は本出願人が最初に提案を行っている。
【0003】
【特許文献1】WO94/06870
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のものには、熱硬化型粉体塗料に、オルガノシリケートの低縮合物を配合してなる上塗り塗料が記載されている。該オルガノシリケートの低縮合物はそれ自体液状物であることから、通常、該液状物を粉体樹脂や顔料等とドライブレンドし、次いで溶融ブレンド、粗粉砕、微粉砕、濾過を行って製造される。
しかしながら、オルガノシリケートの低縮合物と粉体樹脂とは相溶性が悪いため、オルガノシリケート低縮合成分が貯蔵中に粉体粒子表面に析出して粉体粒子同士が凝集するため、凝集した粉体塗料をもとの粉体粒子に解すための作業や、またこのような凝集粉体を解した粉体塗料を使用しても静電粉体塗装膜にぶつなどの塗膜欠陥を発生するといった問題点があった。
【0005】
また、オルガノシリケートの低縮合物を含有する粉体塗膜は耐水性、耐アルカリ性などの塗膜性能が十分でなく、且つ、長期間耐汚染性に優れた効果を発揮することができないといった問題点があった。
本発明は、上記した問題点を解決した耐汚染性、耐久性などの塗膜性能に優れた粉体塗料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係わる耐汚染性粉体塗料は、硬化型粉体塗料中にメルカプト基、エポキシ基及び不飽和基から選ばれる1種もしくは2種以上の官能基を含有するアルコキシシラン化合物(以下、このものを単に「官能性アルコキシシラン化合物」と略すことがある。)を含有してなることを特徴としている。
本発明に係わる基材表面の汚れ防止方法は、基材表面に、上記の耐汚染性粉体塗料を粉体塗装し、次いで焼付けて耐汚染性粉体塗膜を形成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明において、硬化型粉体に配合されるメルカプト基、エポキシ基、不飽和基などの官能基を含有するアルコキシシラン化合物は、それ自体メルカプト基、エポキシ基、不飽和基のような有機官能基を有するので粉体塗料用樹脂と相溶性が良いので、粉体塗料の貯蔵中に該成分が粉体粒子表面に分離、析出する恐れがないので貯蔵安定性(耐ブロッキング性など)が優れること、該官能基は熱硬化型粉体塗料の種類によっては粉体塗料で使用される樹脂の官能基と反応して樹脂中に結合させることができるので塗膜性能が低下しないことなどの効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明耐汚染性粉体塗料は、硬化型粉体塗料中にメルカプト基、エポキシ基、不飽和基を含有するアルコキシシラン化合物を含有してなるものである。
使用される硬化型粉体塗料としては、従来から公知の熱硬化型粉体塗料が特に制限なしに使用することができる。
具体的には、好ましくはそれ自体加熱により溶融、流動する熱硬化性粉体基体樹脂(融点約40〜100℃)に硬化剤を配合してなる熱硬化性粉体塗料を使用することができる。該熱硬化性粉体基体樹脂としては、熱により硬化剤と反応する官能基を有する樹脂が使用できる。具体的には、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂及びこれらのハイブリッド系樹脂などが好適である。官能基としては、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、ブロックされたイソシアネート基等が挙げられる。
【0009】
本明細書において、 融点は、DSC(昇温10℃/分)で求めた値である。
また、硬化剤としては、該硬化剤に含まれる官能基が該基体樹脂中に官能基と反応し硬化塗膜を形成するものであり、例えば、水酸基を含有する基体樹脂ではブロックポリイソシアネート基を含有するブロックイソシアネート化合物(カプロラクタムブロックジイソシアネート等)等の硬化剤、カルボキシル基含有基体樹脂ではエポキシ基を含有するポリエポキシド及びβ−ヒドロキシエチルアルキルアミド等の硬化剤、エポキシ基含有基体樹脂ではカルボキシル基を含有するポリカルボン酸(ドデカン二酸、トリメリット酸等)等の硬化剤、ブロックされたイソシアネート基含有基体樹脂では水酸基を含有するポリオール(トリメチロールプロパン等)の硬化剤及びベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート重合開始剤等が挙げられる。
【0010】
上記した熱硬化型粉体塗料以外に公知の活性エネルギー線硬化型粉体塗料も使用することができる。具体的には、好ましくはそれ自体加熱により溶融、流動する活性エネルギー線硬化型粉体基体樹脂(融点約40〜100℃)に必要に応じて紫外線重合開始剤や光増感色素などを配合したものが使用できる。
【0011】
また、活性エネルギー線硬化型粉体塗料の官能基として、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、スチリル基などの光重合性基が挙げられる。
本発明硬化型粉体塗料中に含まれるメルカプト基、エポキシ基、不飽和基を含有するアルコキシシラン化合物としては、下記のものが挙げられる。
メルカプト官能基を含有するアルコキシシラン化合物(A)としては、特にメルカプト官能基を含有するアルコキシシラン化合物(a)とテトラアルコキシシラン(b)との共加水分解縮合した化合物を使用することが好ましい。
【0012】
アルコキシシラン化合物(a)としては、メルカプト官能基が直接ケイ素原子に結合していても、また、炭素1〜10の2価の炭化水素基を介してケイ素原子に結合していてもかまわない、該化合物としては、従来から公知のものを使用することができ、具体的には、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリブトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、β−メルカプトメチルフェニルエチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、6−メルカプトヘキシルトリメトキシシラン、10−メルカプトデシルトリメトキシシランなどが挙げられる。
これらのメルカプト官能基を含有するアルコキシシラン化合物(a)は、単独で使用しても良く、また複数種を混合して使用しても良い。これらの化合物の中でも、耐汚れ性、耐久性などの塗膜性能が得られることから、特にγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランを使用するのが好ましい。
【0013】
上記テトラアルコキシシラン化合物(b)としては、具体的には、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどが挙げられる。これらの化合物は、1種もしくは2種以上組合わせて使用することができる。これらの中でもメトキシ基又はエトキシ基が容易に加水分解してシラノール基を生成し、耐汚れ性に優れた塗膜を形成することから、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランを使用することが、特に好ましい。また、必要に応じて3官能アルコキシアルキルシラン(例えば、トリメトキメチルシラン、トリエトキエチルシラン、トリプロポキシプロピルシラン等)、2官能アルコキシジアルキルシラン(例えば、ジメトキジメチルシラン、ジエトキジエチルシラン、ジプロポキシジプロピルシラン等)、1官能アルコキシアルキルシラン(例えば、メトキトリメチルシラン、エトキトリエチルシラン、プロポキシトリプロピルシラン等)が使用できる。
【0014】
上記メルカプト基を含有するシリコーン化合物及びテトラアルコキシシラン化合物の配合割合は、メルカプト官能基を含有するアルコキシシラン100重量部に対して、テトラアルコキシシランは20〜2000重量部の範囲を満たす比率で使用するのが好ましい。20重量部未満では、この共加水分解縮合物の親水性が低下する結果、目的の耐汚れ性、耐酸性等が劣り好ましくない。また、2000重量部を超えると、有機樹脂との親和性、反応性が乏しくなり、塗膜中に本シラン化合物を固定する能力が不足し、加水分解後塗膜から脱落しやすくなるため好ましくない。更に、50〜1000重量部の範囲を満たすのが、特に好ましい。
【0015】
上記エポキシ官能基を含有するアルコキシシラン化合物(B)としては、特にエポキシ官能基を含有するアルコキシシラン化合物(c)と上記テトラアルコキシシラン(b)との共加水分解縮合した化合物を使用することが好ましい。また、必要に応じて上記3官能アルコキシアルキルシラン、上記2官能アルコキシジアルキルシラン、上記1官能アルコキシアルキルシランが使用できる。
【0016】
アルコキシシラン化合物(C)は、エポキシ基が直接ケイ素原子に結合していても、また、炭素1〜10の2価の炭化水素基を介してケイ素原子に結合していてもかまわない、該化合物としては、従来から公知のものを使用することができ、具体的には、例えば、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
これらのエポキシ官能基を含有するアルコキシシラン化合物(C)は、単独で使用しても良く、また複数種を混合して使用しても良い。
【0017】
上記不飽和基を含有するアルコキシシラン化合物(C)としては、特に不飽和基を含有するアルコキシシラン化合物(d)と上記テトラアルコキシシラン(b)との共加水分解縮合した化合物を使用することが好ましい。また、必要に応じて上記3官能アルコキシアルキルシラン、上記2官能アルコキシジアルキルシラン、上記1官能アルコキシアルキルシランが使用できる。
【0018】
アルコキシシラン化合物(d)は、不飽和基が直接ケイ素原子に結合していても、また、炭素1〜10の2価の炭化水素基を介してケイ素原子に結合していてもかまわない、該化合物としては、従来から公知のものを使用することができ、具体的には、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−スチリルエチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
これらのエポキシ官能基を含有するアルコキシシラン化合物は、単独で使用しても良く、また複数種を混合して使用しても良い。
【0019】
本発明で使用する官能性アルコキシシラン化合物は平均重合度3〜100の範囲であることが好ましい。重合度が3未満では、揮発したり、塗膜表面に十分な親水性を付与できず、耐汚染性が発揮できなかったり、或いは塗膜中から溶出し易くなるので好ましくない。一方、重合度が100を超えると、本官能性アルコキシシラン化合物は塗膜中で分散が悪く、均一な塗膜の形成が難しくなるため好ましくない。更に、重合度は5〜80の範囲内にあることが好ましい。
本発明で使用する官能性アルコキシシラン化合物は、従来から公知の方法に基づき、例えば、加水分解触媒存在下、上記アルコキシシラン化合物(a)、(c)、(d)の少なくとも1種のアルコキシシラン化合物及びテトラアルコキシシラン化合物(b)の混合物中に、水を加え部分共加水分解縮合反応をおこなうことにより得ることが出来る。
【0020】
使用される加水分解縮合触媒としては、従来から公知の種々のものを使用することができる。具体例としては、例えば、酢酸、酪酸、マレイン酸、クエン酸などの有機酸類、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸などの無機酸類、トリエチルアミンなどの塩基性化合物類、テトラブチルチタネート、ジブチル錫ジラウレートなどの有機金属塩類、KF、NHFなどの含F化合物類などを挙げることが出来る。上記触媒は単独で使用しても良く、或いは複数種を併用しても良い。触媒の使用量は、0.0001〜1モル%の範囲が好ましい。
本発明で使用する官能性アルコキシシラン化合物の配合割合は、硬化型粉体塗料の樹脂(基体樹脂と硬化剤との合計量)固形分100重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは1〜10重量部の範囲である。配合割合が0.1重量部未満の場合には、耐汚染性、耐久性が低下し、一方、20重量部を超えると塗膜の加工性などの機械的性質が低下するので好ましくない。
【0021】
本発明で使用する硬化型粉体塗料において、必要に応じて顔料(例えば、有機顔料(例えば、キナクリドン等のキナクリドン系、ピグメントレッド等のアゾ系、フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー等のフタロシアニン系等)、無機顔料(例えば、酸化チタン、炭酸カルシウム、バリタ、クレー、タルク、シリカ等)、炭素系顔料(例えば、カーボンブラック、グラファイト等)、メタリック粉末(例えば、雲母状酸化鉄、アルミニウム等)及び防錆顔料(例えば、ベンガラ、ストロンチウムクロメート、リン酸亜鉛など等)など)、硬化触媒(ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、トリエチルアミン、又はジエタノ−ルアミン等)、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリシレート系化合物、蓚酸アニリド系化合物など)、紫外線安定剤(ヒンダードアミン系化合物など)、酸化防止剤(フェノール系化合物、有機イオウ系化合物、ホスファイト系化合物など)、表面調整剤、ワキ防止剤等の添加剤を配合することができる。
【0022】
また、上記した以外に必要に応じて、上記した以外の通常のオルガノシリケートの加水分解物を配合することができる。具体的には、例えば、MKCシリケートMS56、MKCシリケートMS51(以上、三菱化学社製、商品名、メチルシリケート化合物)、エチルシリケート40、エチルシリケートES48(コルコート社製、商品名、エチルシリケート化合物)、X−41−1805、X−41−1053(以上、信越化学工業社製、メチルシリケート化合物)等の市販品が挙げられる。
【0023】
本発明で使用する硬化型粉体塗料は、従来からの方法、例えば、基体樹脂、硬化剤、上記した官能性アルコキシシラン化合物及び必要に応じてその他の成分を配合しミキサーでドライブレンドした後、加熱溶融混練、冷却、粗粉砕、微粉砕、濾過を行って製造することができる。
【0024】
また、官能性アルコキシシラン化合物はそれ自体液状であることから、このものと粉体塗料で配合される粉末原料とを混合して予め粉末化処理しておくことも可能である。このように粉末化処理された粉末は、取扱いが容易なこと、塗料中に均一分散されること、塗膜性能が安定化することなどの効果がある。
【0025】
上記した粉体塗料の製造方法として、例えば、配合される基体樹脂の1部もしくは全部と必要に応じて硬化剤や顔料(着色顔料、体質顔料など)などを予めドライブレンド、加熱溶融混合、冷却及び粗粉砕して官能性アルコキシシラン化合物の粉末化処理を行い、得られたマスターバッチ(予備分散化物)と残りの粉体塗料の原料とを配合し、ドライブレンド、加熱溶融混合、冷却、粗粉砕、微粉砕、濾過を行って製造する方法が特に好ましい。
【0026】
また、本発明の粉体塗料の製造方法として、例えば、スプレードライ方式(上記した配合物を溶剤に溶解もしくは分散し溶液をスプレーして溶剤を除去し残りを粉体塗料として取り出す方式)で製造することができる。
【0027】
本発明の硬化型粉体塗料は、例えば、クリヤー塗料、カラークリヤー塗料、着色塗料として使用することができる。
【0028】
本発明の硬化型粉体塗料は、官能性アルコキシシラン化合物を含有しない通常の熱硬化型粉体塗料とドライブレンドして混合粉体塗料として使用することができる。混合粉体として使用する場合は、例えば、本発明の塗料をクリヤー塗料、カラークリヤー塗料、着色塗料とし、そして混合される官能性アルコキシシラン化合物を含有しない通常の熱硬化型粉体塗料をクリヤー塗料、カラークリヤー塗料、着色塗料として使用することができる。これらの塗料の組合や配合割合などは、要求される塗膜色相、性能、仕上がり性などに応じて適宜決定すればよい。
【0029】
本発明の硬化型粉体塗料は、上塗り塗料として使用される。上塗り塗料としては、例えば、金属、木材、プラスチック、コンクリート、ガラスなどの材質に塗装される上塗り塗料、これらの材質に必要に応じて、プライマー塗装、中塗り塗装が施された塗装塗装材質の上塗り塗料として使用することができる。また、上塗り塗料として、例えば、着色ベースコート(メタリックベースコート、着色パールベースコート、ソリッドコートなど)のクリヤー上塗り塗料(カラークリヤーも含む)として使用することができる。
【0030】
本発明の基材表面の汚れ防止方法は、基材表面に、上記の耐汚染性粉体塗料を静電粉体塗装し、次いで焼付けて耐汚染性粉体塗膜を形成する方法である。
【0031】
基材として、耐汚染性を必要とする基材であれば特に制限なしに使用することができる。具体的には、金属、木材、プラスチック、コンクリート、ガラスなどの材質が挙げられる。また、これらの材質が1種もしくは2種以上が組合わさっていても構わない。
【0032】
塗装は、従来から公知の粉体塗装、例えば、静電粉体塗装、流動浸漬塗装、摩擦帯電塗装等の塗装手段を用いて、塗装膜厚は平均30〜200μm、好ましくは40〜150μmの範囲内になるように塗装することができる。
【0033】
塗装後の塗膜の硬化条件は、部材などの種類に応じて適宜決めればよいが、通常、部材温度が160℃の場合には20分以上、特に20分〜40分間が好ましい。また、赤外線や近赤外線などによる熱線も使用することができる。
【0034】
活性エネルギー線に使用される光源としては、例えば特に制限なしに超高圧、高圧、中圧、低圧の水銀灯、ケミカルランプ灯、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯、タングステン灯等やアルゴンレーザー(488nm)、YAGーSHGレーザー(532nm)、UVレーザー(351〜364nm)に発振線を持つレーザーも使用できる。
【0035】
活性エネルギー線としては、例えば紫外線、可視光線、レーザー光(近赤外線、可視光レーザー、紫外線レーザー等)が挙げられる。その照射量は、通常0.5〜2000mJ/cm、好ましくは1〜1000mJ/cmの範囲内が好ましい。
【実施例】
【0036】
以下に実施例を示し、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
メルカプト官能基及びアルコキシル基含有シリコーン化合物Aの調製例
γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン196g(1.00mol)、テトラメトキシシラン152g(1.00mol)、メタノール320g(10mol)とKF0.06g(0.001mol)を仕込み撹拌下室温で水28.8g(1.60mol)を滴下した。滴下終了後室温で3時間撹拌した後、メタノール還溜下2時間加熱撹拌した。この後、低沸分を減圧留去、濾過することにより無色透明液体を231g得た。このようにして得た物質をGPC測定した結果、平均重合度は5.4であった。また、メチルグリニャール試薬による活性水素を定量したところ、3.51×10−3mol/g(メルカプト基由来の活性水素量(設定値)=3.64×10−3 mol/g)であった。
【0037】
エポキシ官能基及びアルコキシル基含有シリコーン化合物Bの調製例
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン47.3g(0.20mol)、テトラメトキシシラン114.0g(0.75mol)、メチルトリメトキシシラン6.8g(0.05mol)、メタノール160g(5mol)とKF0.06g(0.001mol)を仕込み、撹拌下室温で水17.1g(0.95mol)をゆっくり滴下した。滴下終了後室温で3時間撹拌した後、メタノール還溜下2時間加熱撹拌した。この後、低沸分を減圧留去、濾過することにより無色透明液体を113g得た。このようにして得た物質をGPC測定した結果、平均重合度は20.5であった。また、塩酸によるエポキシ開環法でエポキシ当量を測定したところ、625g/molであった。アルコキシ基量をアルカリクラッキング法で定量したところ、45.5%であった。
【0038】
メタクリロイル官能基及びアルコキシル基含有シリコーン化合物Cの調製例
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン248g(1.00mol)、テトラメトキシシラン152g(1.00mol)、メタノール320g(10mol)とNH↓4 ↓F0.04g(0.001mol)を仕込み攪拌下室温で水28.8g(1.60mol)をゆっくり滴下した。滴下終了後室温で3時間攪拌した後、メタノール還溜下2時間加熱攪拌した。この後、低沸分を減圧留去、濾過することにより無色透明液体を266g得た。このようにして得た物質をGPC測定した結果、平均重合度は5.3であった。アルコキシ基量をアルカリクラッキング法で定量したところ、35.7重量%であった。
【0039】
実施例1
アクリル粉体樹脂(ファインディック A207S、大日本インキ化学工業株式会社製、商品名、エポキシ基含有アクリル樹脂)800g、ドデカン二酸200g、2酸化チタン 100g、上記シリコーン化合物A 10gを室温でヘンシェルミキサーでドライブレンドした後、エクストルーダーで溶融混練した。次に冷却した後、微粉砕、濾過を行い平均粒子径が約20ミクロンの粉体塗料を得た。
【0040】
実施例2
実施例1において、シリコーン化合物Aに代えてシリコーン化合物Bを同量使用した以外は実施例1と同様にして実施例2の塗料を製造した。
実施例3
実施例1において、シリコーン化合物Aに代えてシリコーン化合物Cを同量使用した以外は実施例1と同様にして実施例3の塗料を製造した。
【0041】
実施例4
材料として、ファインデックM8032(大日本インキ株式会社製、商品名、軟化温度70℃、水酸基価30mgKOH/g)100g、ε−カプロラクタムブロック化イソホロンジイソシアネ−ト(ブロック化ポリイソシアネ−ト架橋剤)30g、2酸化チタン 100g、シリコーン化合物A 10gを室温でヘンシェルミキサーでドライブレンドした後、エクストルーダーで溶融混練した。次に冷却した後、微粉砕、濾過を行い平均粒子径が約20ミクロンの実施例4の粉体塗料を得た。
【0042】
実施例5
実施例4において、シリコーン化合物Aに代えてシリコーン化合物Bを同量使用した以外は実施例4と同様にして実施例5の塗料を製造した。
【0043】
実施例6
実施例4において、シリコーン化合物Aに代えてシリコーン化合物Cを同量使用した以外は実施例4と同様にして実施例6の塗料を製造した。
【0044】
実施例7
ファインデックM8032(大日本インキ株式会社製、商品名、軟化温度70℃、水酸基価30mgKOH/g)100g、シリコーン化合物A 10gを室温でヘンシェルミキサーでドライブレンドした後、ニーダ−で溶融混練した。次に冷却した後、適宜粗粉砕してマスターバッチを製造した。
次に、該マスターバッチ110g、ε−カプロラクタムブロック化イソホロンジイソシアネ−ト(ブロック化ポリイソシアネ−ト架橋剤)30g、2酸化チタン 100gを室温でヘンシェルミキサーでドライブレンドした後、エクストルーダーで溶融混練した。次に冷却した後、微粉砕、濾過を行い平均粒子径が約20ミクロンの実施例7の粉体塗料を得た。
【0045】
実施例8
実施例7において、シリコーン化合物Aに代えてシリコーン化合物Bを同量使用した以外は実施例7と同様にして実施例8の塗料を製造した。
【0046】
実施例9
実施例7において、シリコーン化合物Aに代えてシリコーン化合物Cを同量使用した以外は実施例7と同様にして実施例9の塗料を製造した。
【0047】
比較例1
実施例1において、シリコーン化合物(A)を配合しないもの。
【0048】
比較例2
実施例4において、シリコーン化合物(A)を配合しないもの。
耐ブロッキング性:
粉体塗料を30℃の雰囲気下に7日間貯蔵した後、ブロッキング性を下記基準で評価した。○は粉体の融着が全くなく耐ブロッキング性が良いことを、△は粉体が融着するが指でほぐれることを、×は粉体が融着し指でほぐれず耐ブロッキング性が悪いことを示す。
【0049】
塗膜作成条件:
燐酸亜鉛化処理を施した厚さ0.8mmのダル鋼板に実施例及び比較例の粉体塗料を膜厚が約80ミクロンとなるように静電粉体塗装し、加熱炉で170℃で30分間加熱硬化させた。得られた塗板について次の試験を行った。
【0050】
仕上り性:
塗膜の仕上がり外観をツヤ感、平滑感から次の基準で評価した。
○:良好なもの。△:ツヤ感、平滑感が劣るもの、×:ツヤ感、平滑感が著しく劣るもの。
【0051】
耐汚染性:
実施例及び比較例の塗装板を3ヶ月屋外暴露したのち、その汚れ度合いを初期との明度差(ΔL値)で評価し、○はΔL値が0〜-2、ΔはΔL値が-3〜-5、×はΔL値が-5を越えるもので評価した。
【0052】
ΔL値は次の式で求めた。ΔL=ΔL暴露後値 ― ΔL初期値
このΔLが0に近い値ほど、汚れの付着が少ない事を示しており、降雨等で付着した汚れが落ちている事を示している。尚ここでの明度差は、ミノルタカメラ社製の色彩色差計 CR−200を用いて測定を行なった。
試験結果
表1
【0053】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の粉体塗料は、耐汚染性が必要とされる塗装製品に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化型粉体塗料中にメルカプト基、エポキシ基及び不飽和基から選ばれる1種もしくは2種以上の官能基を含有するアルコキシシラン化合物を含有してなることを特徴とする耐汚染性粉体塗料。
【請求項2】
基材表面に、請求項1に記載の耐汚染性粉体塗料を粉体塗装し、次いで焼付けて耐汚染性粉体塗膜を形成することを特徴とする基材表面の汚れ防止方法。

【公開番号】特開2006−36797(P2006−36797A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−213839(P2004−213839)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】