説明

耐湿性コーティング

本発明のいくつかの実施形態は、一般に生分解性で、堆肥化できる湿気バリアコーティングに関する。いくつかの実施形態はまた、二方式オーブン調理可能なコーティングに関する。生分解性で堆肥化できる使い捨ての食品包装及び食品事業品目に塗布された場合、そのようなコーティングは、耐湿性を向上させ非粘着性又は離型特性を提供するために使用することができる。いくつかの実施形態において、可塑剤、アミドワックス及び、場合によってロジンを、セルロースエステル系コーティングに添加し耐湿性を向上させる。他の実施形態においては、生分解性ポリマー、アミドワックス、場合によって、可塑剤、また場合によって、ロジンをセルロースエステル系コーティングに添加して、劇的に耐湿性を向上させる。さらに別の実施形態において、リン脂質又は中程度の鎖のトリグリセリド、又はアミドワックスの追加量を、上記実施形態のいずれかに添加して、離型特性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本出願は、1)2009年1月21日に出願された米国特許仮出願第61/146,280号明細書;2)2009年7月22日に出願された米国特許仮出願第61/227,744号明細書;及び3)2009年11月5日に出願された米国特許仮出願第61/258,537号明細書の利益を主張し、これらはすべて、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
プラスチック及び紙の汚染が地域的な広がりの水準に達しており、海洋を汚染し、利用可能な埋立地容量は急速に塞がりつつある。従来の使い捨ての食品事業品目はこの汚染の一例である。これらは一般に、ポリマー防水材料、例えばワックスポリエチレン又はポリエステルフィルムを用いて被覆、含浸、又は積層された紙又は板紙から製造されるか、又は様々なプラスチック(ポリスチレンが最も一般的なものである)の1つから製造されている。これらの材料は、湿気に対し良好ないし優秀な耐性を有し、絶縁性があり(例えば発泡ポリスチレン又は「スタイロフォーム」)、安価で耐久性がある。加えて、オーブン調理可能な使い捨て商品は、アルミニウム又は二方式のオーブン調理が可能な(dual ovenable)プラスチックとして知られるCPETから製造される。
【0003】
工業化社会へ到達しようという現在の動向によって、家で食事を用意するための、又は特製品を作り出すための、勤労者層が有する自由に使える時間が大幅に減少した。このような傾向が加速し続けるにつれて、使い捨て包装に対する需要は指数関数的に増大しつつある。さらに、これらの「安い」材料を使用する環境コスト(生産から処分までの)が、生分解性の及び/又は堆肥化できる天然物と比較して極めて高くなり得るという認識が高まりつつある。ポリスチレンカップの予想寿命は、例えば、500年にまでなる可能性があり、各アメリカ人はこれらのカップを1年当たり平均約100個使い捨てしている。さらに、ポリスチレンはベンゼン及びエチレンの化学的処理によって製造され、これらのどちらもが環境問題を有すると認識されている石油産業の副生物である。世界中の政府が実行不可能でコストがかかりすぎるとしてリサイクル計画を実行することにほとんど見切りをつけているものの、それでもなお解決するべきごみの蓄積問題を有し、多くの政府が非分解性包装に課税し始めた。使い捨ての食品事業及び食品包装品目に関して環境問題に取り組む必要がある。
【0004】
上に論じた、環境問題に取り組む、耐久性のある、使い捨ての食品事業及び包装物品を製造することにおける最も大きな難問は、耐湿性の本質的な欠如である。有機材料の分解を引き起こすすべての生物学的プロセスは、作用する水に依存する。その結果、生分解性で、堆肥化可能でもある材料を高度に耐湿性にするのは非常に困難である。
【0005】
従来の使い捨ての食品容器製品に関して環境問題に取り組むために現在使用されている1つの方法は、デンプン及び/又はセルロース系の使い捨ての食品事業品目、例えばトレー、プレート及びボウルの製造である。多くのデンプン及び/又はセルロース系の包装材料にはいくつかの欠点があり、最も重要なのは、容器が水の影響を受けやすいことである。未改質デンプンは、通常、調理すると水溶性になる。現在製造されている、デンプン系の生分解性食品事業品目はすべて加熱鋳型で形成されるので、これらの品目のデンプンの多く又はすべては調理され、このようにして形成された製品は、湿気に敏感である。セルロース繊維(例えば、紙及び板紙又はパルプ)及びセルロース誘導体(例えば、セロハン及びセルロースエステル、エーテルなど)もまた、極めて透水性である。水、他の水性流体又は著しい量の水蒸気にさらされると、これらの品目は、非常に柔らかくなり形態安定性を失い、刃物(例えばナイフ及びフォーク)によって穴があきやすくなり得る。
【0006】
セルロース系の生分解性物品の改良は、それらをよりさらに耐湿性にするためになされてもよい。改良はまた、化学的及び物理的性質の増強によりマトリックス材料を強くする役目をしてもよく、また、ワックス若しくはワックスエマルション、繊維サイジング剤、可塑剤、ポリマー又はこれらの組合せの添加を含む。これらの物品は、食品及び食品以外の用途で同様に、低湿度状態の下で最も良好に機能する。前記生分解性容器の例は、2009年6月30日に特許された米国特許第7,553,363号明細書;2005年11月21日に出願された米国特許出願第11/285,508号明細書;2008年7月3日に出願された米国特許出願第12/168,049号明細書;及び2008年10月23日に出願された米国特許出願第12/257,289号明細書に見出され、これらは参照により、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0007】
いくつかの用途は耐湿性の向上をさらに必要とする。例えば、高温又は沸騰水の添加を必要とするいくつかのコンビニエンス食品及び飲料、例えばスープ又はインスタントコーヒーは、固体食品、例えば1切れの残りの鶏肉を加熱するために使用されている皿より吸湿に耐えることができる容器を備えなければならない。耐湿性の向上を必要とし得る要求の厳しい用途の型のさらなる例は、学校、刑務所及び他の施設用の予備調理されたすぐに食べられる食品、パン品目、冷凍又は冷蔵された調理済み食品、スープ及びヌードルのボウル、コーヒー、ホットチョコレート及び他の飲料用のカップ、シリアルボウル、アイスクリーム及びヨーグルトのカップ、並びに他の類似した高湿度の用途である。様々な生分解性材料の耐湿性を改善する1つの方法は、製品にコーティングを施すことによる。耐湿性に加えて、いくつかの用途には非粘着性又は離型特性を必要とする。そのような用途はパン品目、例えばパイ、パン、マフィン、ピザ、ケーキなどを包含する。
【0008】
生分解性で堆肥化できる容器を製造する要望に合わせて、それはまた、耐湿性を向上させるコーティングが生分解性で、かつ堆肥化できることが望ましい。セルロースエステルは、生分解性であり、コーティング及びインクに使用される基本ポリマーとして当業界で公知である。セルロースエステルは単独では非常に高い水蒸気透過速度(MVTR)を有しており、したがって短期の耐水性のみを提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
経済的に効率的で、完全に生分解性で堆肥化できるだけでなく、上記のような高湿度の用途に対して十分な耐湿性があるコーティングは、まだ完成されていない。
【0010】
したがって、水蒸気透過速度(MVTR)が著しく減少し、それにより、高湿の用途での使用を可能にするような、十分に生分解性で堆肥化できる耐湿性の向上したコーティングを提供することが、本発明のいくつかの態様の目的である。
【0011】
さらに、MVTRを最小にするために、ワックスを含有させて、高温で食品事業又は包装の品目を被覆する、又は長時間の乾燥/ワックスの融点を超える加熱にそのような品目をさらす必要性を減らすかなくすことが、本発明のいくつかの実施形態の目的である。
【0012】
また、コスト効率の良い高度に耐湿性のコーティングを提供することが、本発明のいくつかの実施形態のさらなる目的である。
【0013】
二方式のオーブン調理が可能で、熱封止でき、高度に耐湿性のコーティングを提供し、また、パン製造の用途において製品の離型を提供することが、本発明のいくつかの実施形態のさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(本発明の概要)
本発明のいくつかの態様は、高い吸収性及び/又は浸透性の様々な基材への使用に適した、耐湿性が向上した、生分解性で堆肥化できるコーティングのための新規な配合物を提供する。一態様は、機能的な包装として役に立つことができる生分解性で堆肥化できる使い捨ての品目及び/又は、高湿度の用途に使用する事業品目のための生分解性で堆肥化できるコーティングを提供する。そのような用途は、例えば、アイスクリーム及び他の冷凍デザート製品;予備調理されてすぐに食べられる新鮮な又は冷凍の調理済み食品;スープ及び/又はヌードル;コーヒー、ホットチョコレート及び他の飲料;シリアル;ヨーグルト;焼いた製品、例えばケーキ、マフィン、クッキー及びパン;果物、肉及び野菜のパイ;ピザパイ、キャンディー製品;及びヒト又は動物によって食べられるようにデザインした他の高湿度の製品を包含する。別の態様は、二方式のオーブン調理が可能である(すなわち、マイクロ波及び従来式のオーブンの両方で使用することができる)生分解性で堆肥化できる使い捨ての品目のための生分解性で堆肥化できるコーティングを提供し、パン製造の用途において改良した製品の離型を提供する。別の態様は、生分解性で堆肥化できる使い捨ての品目のための、生分解性で堆肥化でき、熱封止できるコーティングを提供する。別の態様は、生分解性で堆肥化できる使い捨ての品目を高湿度の用途で使用可能にするために、生分解性で堆肥化でき、耐湿性が向上したコーティングを提供する。別の態様は、生分解性で堆肥化できる使い捨ての品目のための、生分解性で堆肥化でき、耐湿性が向上したコーティングを製造する方法を提供する。ワックスを含む他の態様は、向上した防湿特性が、高温で被覆する必要がなく、又は長時間の乾燥若しくはワックスの融点を超える加熱をすることなく得られるような、生分解性で堆肥化できる使い捨ての品目を被覆する方法を提供する。
【0015】
本発明の他の特色及び利点は以下の詳細な説明から明白になるであろう。しかしながら、本発明の趣旨及び範囲内の様々な変更及び修正が、この詳細な説明から当業者にとって明白になるので、詳細な説明及び特定の実施例は、本発明の好ましい態様を示すが、単に例証のみとして与えられることは理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】カルナバワックスの耐湿性(MVTRによって測定して)への効果を、アミドワックス、オレイン酸アミドのMVTRへの効果と比較して示す図である。
【図2】2種の異なるアミドワックス、N−N’−エチレン−ビス−オレアミド(W20)及びオレイン酸アミドの、耐湿性(MVTRによって測定して)への効果を示す図である。
【図3】3種の生分解性のポリマー:固体又は水性エマルションとして溶媒系コーティング溶液に導入されたポリビニルブチラール(PVB)、ポリ乳酸(PLA)及びポリ酢酸ビニル−エチレン(VAE)の、耐湿性(MVTRによって測定して)への効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(詳細な説明)
本発明による上記の詳細並びに他の利点及び目的を得る手法を十分に理解するために、本発明のさらに詳細な説明をその特定の態様に言及することによって行う。
【0018】
一態様において、容器の耐水性及び熱封止特性を向上させて、品目(複数可)の外側及び/又は内側の面に部分的に又は完全に浸透するように、生分解性で堆肥化できるコーティングを生分解性で堆肥化できる使い捨ての物品に適用することができる。
【0019】
コーティングは、紙、板紙、プラスチック、フィルム、ポリスチレン、板金、ガラス又は他の包装材料をコーティングする、ブレード、パドル、エアナイフ、印刷、ダールグレン(Dahlgren)、グラビア、カーテン、浸漬及び粉体塗装を包含する当業界で公知の任意の手段を使用して、物品に適用することができる。コーティングはまた、本発明の態様のいずれかによって記載されるように、生分解性で堆肥化できるコーティング配合物を、物品に吹付するか、又は該コーティング配合物を含有する大桶に物品を浸漬するか、又は該コーティング配合物のカーテンに物品を通過させることにより適用することができる。物品を被覆するために使用される装置は、物品の形状に依存する。例えば、平坦な物品は、カップ、ボウル及びなどとは違ったやり方で被覆することができる。
【0020】
下記の成分の選択に応じて、いくつかの態様は、二方式のオーブン調理が可能で及び/又は熱封止でき、パン製造の用途において製品の離型特性を包含してもよい。
【0021】
生分解性で堆肥化できる使い捨ての品目のための、生分解性で堆肥化できるコーティングを製造することができる本発明の態様による1つの配合物は、セルロースエステル、1種又は複数の可塑剤、ワックス及び場合によって、ロジンの添加を提供する。
【0022】
生分解性で堆肥化できるコーティングを製造することができる本発明の態様による別の配合物は、セルロースエステル、1種又は複数の生分解性のポリマー又はコポリマー、ワックス、場合によって、ロジン及び場合によって、1種又は複数の可塑剤を提供する。
【0023】
生分解性で堆肥化できるコーティングを製造することができる本発明の態様による別の配合物は、セルロースエステル、1種又は複数の離型剤、場合によって1種又は複数の生分解性ポリマー又はコポリマー、場合によって1種又は複数のワックス、及び場合によって1種又は複数の可塑剤を提供する。
(セルロースエステル)
【0024】
多種類の型のセルロースエステルが、生分解性で堆肥化できるコーティングに基剤として使用することができる。本発明のいくつかの態様において使用される好ましいセルロースエステルは、酢酸プロピオン酸セルロース(CAP)、酢酸酪酸セルロース(CAB)、酢酸セルロース(CA)及びニトロセルロース(NC)を包含する。オーブン調理可能なコーティングが所望されるいくつかの態様において、好ましいセルロースエステルはCAP、CAB及びCAである。
(可塑剤)
【0025】
これらのコーティングとともに使用される可塑剤は環境にやさしく、例えば、本質的に生分解性及び/又は天然及び/又は生物由来の炭素化合物に基づかなければならない。一部の可塑剤は生分解の望ましくない減速の原因となることがあるので、生分解を促進する可塑剤を選択することが好ましい。したがって、本発明で使用される好ましい可塑剤は、クエン酸エステル、例えばクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル及びアセチル化クエン酸トリブチル、トリアセチン(三酢酸グリセリル)及びトリブチリン(三酪酸グリセリル)である。特に好ましいのはトリアセチンであり、これが米国及び欧州連合において安全である(GRAS)と一般に見なされているからである。いくつかの態様において、コーティング中の可塑剤の濃度は、配合物の乾燥質量の約0%から約30%、約5%から約20%、又はより好ましくは約10%である。
(ワックス)
【0026】
ワックスは、生分解性の製品において、耐湿性を向上させ、摩擦係数を減少させ、またコーティングにある程度の離型特性を提供するために使用される。そのような使用に典型的なワックスは、例えばカルナウバ、キャンデリア、蜜ろう及びパラフィンである。しかし先行技術においては、ワックスを含有するセルロースエステルバリアコーティングは一般に、防湿特性を最大にするためにワックスの融点を超える被覆及び/又は乾燥に依存していた。本発明のいくつかの態様において、可溶性アミドワックスを使用すると、コーティングの防湿特性が3倍を超えて改善され、また、最良の防湿層を得るために、ワックスの融点を超えて被覆する及び/又はコーティングを乾燥する必要性が回避されることが見出された。様々なワックスが使用されてもよいが、溶媒可溶性アミドワックスを使用することが望ましい。その理由は、耐湿特性だけでなくこれらがカルナウバなどのワックスほど高価ではないからである。例としてはオレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、オレイルパルミチン酸アミド、N,N’−エチレン−ビス−ステアラミドなどが挙げられる。N,N’−エチレン−ビス−オレアミド、特にオレイン酸アミドを使用することが特に望ましい。これらの可溶性アミドワックス、及びステアリン酸アミド系のワックスはより程度が低いが、これらのコーティングに有利に使用される、HAPS(有害大気汚染物)ではないエステル/アルコール/ケトン及び炭化水素溶媒ブレンドに可溶である。いくつかの態様において、コーティング中のワックスの濃度は、配合物の乾燥質量の約0%から約15%、約5%から約10%、又は約5−8%である。
(離型剤)
【0027】
例えばパン製造の用途(パイ、パン、マフィン、ケーキなど)において優れた離型特性を提供することがコーティングに望まれる場合、1種又は複数の離型剤を組み込むことが有利である。適切な離型剤は、リン脂質、例えばレシチン、及びリン酸エステル化したモノ及びジグリセリド、ポリジメチルシロキサン及びトリグリセリドを包含する。離型性の提供に加えて、トリグリセリドはまた、レシチンの担体として働くことができる。アルコール溶媒中の混和性が望まれる用途において、中程度の鎖のトリグリセリド(MCT)を使用することができる。中程度の鎖のトリグリセリドは、グリセリンでエステル化された6−12の炭素原子の脂肪酸を有するものと定義される。
(生分解性ポリマー)
【0028】
セルロースエステル系コーティングと共に生分解性ポリマーを使用して、低コストを提供し、ある場合には、防湿層特性が劇的に向上させることができることが見出された。適切な生分解性のポリマーの例は、限定されずに、ポリ酢酸ビニルポリマー、ポリ乳酸ポリマー(PLA)又はポリビニルブチラールコポリマー(PVB)を包含する。いくつかの態様において、生分解性のポリ酢酸ビニルポリマーは、ポリ(酢酸ビニル)(PVA)、ポリ(酢酸ビニル−エチレン)(VAE)コポリマー及びポリ(エチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーからなる群から選択されるポリマーである。EVAは、50質量%未満の酢酸ビニルを含む、エチレン及び酢酸ビニルのコポリマーとして定義されるが、VAEは50質量%を超える酢酸ビニルを含む、エチレン及び酢酸ビニルのコポリマーとして定義され、通常、明確な融点を持たない非晶性高分子である。いくつかの態様において、セルロースエステルと生分解性ポリマーの比は1:3である。他の態様において、セルロースエステルと生分解性ポリマーの比は1:1から3:1である。好ましくは、セルロースエステルと生分解性ポリマーの比は1:2から1:1である。
【0029】
セルロースエステル系のコーティングに添加された場合、これらのポリマーは組成物の耐湿性を向上させ、基材に対する接着性を改善し、熱封止性を改善することができる。驚いたことに、溶媒を含む均一なコーティング組成物においてPVA及びVAEの水性ラテックスを使用するとコーティング性能全般を改善することができることが見出された。防湿層への効果は、個々の成分より良好なバリアを与え、相乗効果がある。ある場合には、生分解性ポリマーを添加するとコーティングのコスト効率をより良くすることができる。一態様において、ポリ乳酸は、MVTRを向上させつつコーティングのコストを低下させることができる。好ましい態様において、ポリ酢酸ビニルポリマー、特に酢酸ビニル/エチレンコポリマーがCAPと著しく適合し、高分子可塑剤として働き、かつ水性ラテックスから溶媒を含む均一なコーティング溶液を提供することが明らかになることが見出された。最終結果は劇的に耐湿性が向上した著しく透明なコーティングである。少なくともある種の等級のVAEが、ASTM D6400−04において規定されるような、生分解性であることは実験室の試験によって実証された。
(ロジン)
【0030】
一般に、任意のロジン、ロジン誘導体又は天然ゴムをコーティングと共に使用することができる。二量化ロジン及び部分的に二量化したロジンのグリセリンエステルを使用することは、これらの添加が他の種類のロジンより相当に低いMVTRのコーティングをもたらすので、好ましい。ロジン及び他の天然ゴムは、基材、及び、任意の追加のフィルム又は耐湿性コーティング層に接着したコーティングに対するコーティングの接着性を改善するために使用される。いくつかの態様において、コーティング中のロジンの濃度は、配合物の乾燥質量の約0%から約50%、又は約0%から約35%である。
(溶媒)
【0031】
コーティングは溶媒を含むのが好ましい。適切な溶媒は、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、エタノール、プロパノール、アセトン、水、炭化水素などを、成分の溶解性及び塗工性のために必要とされる様々な比率で、包含する。溶媒は有害大気汚染物質(HAP)ではなく、非石油供給源から入手可能であることが好ましい。特に、エタノール/酢酸n‐プロピル及びi−プロパノール/酢酸メチルが好ましい。アセトン、酢酸メチル及び酢酸t−ブチルはまた、VOC規制から通常免れているので、好ましい。
実施例1
セルロースエステル系コーティングへの添加剤は耐湿性を向上させる
【0032】
自立性フィルムでの水蒸気透過速度(MVTR)によって測定される、セルロースエステル系コーティングの耐湿性を向上させるいくつかの添加剤が見出された。MVTR値は、試料材料の薄いフィルムで水を含有するセルを覆い、温度を制御した環境にセルを置き、次いで特定の時間(日)で一定の表面積(m2)を通してセルから失われた液体水の質量(g)を測定することにより求めた。値は、厚さ1mil(0.001インチ)のフィルムに規格化した。これらの実験に関しては、セルの温度を40℃に保持した(内側は100%のRH、外側は周囲湿度)。ASTM E96/E96M−05は、材料の水蒸気透過率の標準試験法を記載している。MVTRの減少は、コーティング配合物の耐湿性の向上を示す。
【0033】
表1は、様々なコーティング組成物の自立フィルムについて測定した40℃(g−mil/m2−日)でのMVTRデータの要約を示す。自立性フィルムはガラス又はテフロン(登録商標)被覆板に溶媒からキャストし、通常60℃で2分間乾燥した。配合物は、1種の又は複数の以下の組成物:酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、トリアセチン、A4(アセチルクエン酸トリブチル)、C4(クエン酸トリブチル)、エポキシ化亜麻仁油、N,N’−エチレン−ビス−オレアミド、オレイン酸アミド、カルナバワックス、ディメレックス(Dymerex)、ペンタリン(Pentalyn) C、ポリペイルエステル(Poly Pale Ester) 10、ポリ酢酸ビニル−エチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸アクリル酸ビニル、ポリビニルブチラールポリマー及びポリ乳酸ポリマーを包含する。その配合物は以下のカテゴリーにあてはめることができる。
1)可塑剤を含むセルロースエステル、
2)可塑剤及びロジンを含むセルロースエステル、
3)可塑剤及びワックスを含むセルロースエステル、
4)可塑剤、ワックス及びロジンを含むセルロースエステル、
5)生分解性ポリマーを含むセルロースエステル、
6)生分解性ポリマー及び可塑剤を含むセルロースエステル、
7)生分解性ポリマー、可塑剤及びワックスを含むセルロースエステル、
8)生分解性ポリマー及びワックスを含むセルロースエステル、
9)生分解性ポリマー、ワックス及びロジンを含むセルロースエステル、
10)生分解性ポリマー、可塑剤、ワックス及びロジンを含むセルロースエステル、
11)生分解性ポリマー単独、及び
12)ワックスを含む生分解性ポリマー。
【0034】
これらのカテゴリーの試料を、CAP単独(又は可塑剤を含むCAP)の効果と比較し、添加剤又は添加剤の組合せの、耐湿性への相対的な効果を求める。群3、4、8及び9は耐湿性に最も劇的な効果を有していた。表1に記載されたフィルムは、典型的には、アルコール/エステル溶媒ブレンドに材料を溶解し、フィルムをガラス又はテフロン(登録商標)板上にキャストすることにより、調製した。キャストフィルムは60℃で数分間乾燥した。いくつかの溶媒混合物はアセトン及び水をさらに包含した。PLAに対して、典型的には、純アセトンを最低粘度を得るために使用した。特に断らない限り、ロジンの質量はポリマーの質量により、可塑剤及びワックスの質量は、ポリマー、ポリマーブレンド又はポリマー/ロジン固形分の質量による。可塑剤、ワックス及び場合によって、ロジン(カテゴリー1−4)を含むセルロースエステルブレンドのフィルムをキャストするための典型的な配合は、以下のとおりである:
変性エタノール 59.5g
CAP 15g
酢酸n‐プロピル 25.5g
トリアセチン 1.5g
オレイン酸アミド 0.75g
【0035】
生分解性ポリマー、ワックス及び場合によって、可塑剤及びロジンを含むセルロースエステルブレンド(カテゴリー5−10)のフィルムをキャストするための典型的な配合は、以下のとおりである:
変性エタノール 9.38g
CAP 2.5g
酢酸n‐プロピル 4.02g
アセトン 9g
AF100 4.5g
オレイン酸アミド 0.25g。
【表1】





凡例:



【0036】
紙及び板紙の水分吸収を測定する標準試験はコブ(Cobb)試験(ASTM D3285−93を参照)として知られている。コブ試験は2分又は20分などの設定時間の間行われ、その後、材料の既知面積の水分の吸収が、質量測定で測定される。表2は、被覆した及び被覆していないデンプン/繊維系トレーに対するコブ試験の要約を示す。このトレーをバイオスフェア(Biosphere) 18P002(PPM100材料、9インチのパイ焼き皿)と表す。コーティングはノードソン(Nordson)エアレス液体吹付システムを使用して、トレーに塗布した。
【表2】

a 初期の水温82℃(180°F)
【0037】
表2のデータは、コーティングがデンプン/繊維トレーなどの吸収性基材の水分取り込みを実質的に減少させることができることを示す。
実施例2
アミドワックスは天然ワックスより耐湿性を向上させる
【0038】
ワックスはコーティングの耐湿性を改善するために使用することができる。例えば、図1に見られるように、27%のA4可塑剤及び10%のカルナバワックスと共に、酢酸プロピオン酸セルロース(CAP)、及び二量化ロジン(PPE10)のエステルを1.6:1の比で含むコーティング組成物は、1275(g−mil/m2−日)のMVTRを有していた。これは、3758(g−mil/m2−日)のMVTRを有するCAPを単独で使用するコーティングより2.9倍の耐湿性の改善を表す。
【0039】
しかし、27%のA4可塑剤及び10%のオレイン酸アミド(可溶性アミドワックス)と共に、酢酸プロピオン酸セルロース(CAP)及び二量化ロジン(PPE10)のエステルを1.6:1の比で含むコーティング組成物を作り出すことによって、驚いたことに、MVTRは、288(g−mil/m2−日)に低下した。(図1)これは、カルナバワックスより4.4倍の耐湿性の改善、及びCAP単独より13倍の耐湿性の改善を表す。
【0040】
2種のアミドワックスが本明細書において記載されたコーティング組成物の態様において、耐湿性を改善するために使用することができる。図2は、耐湿性へのそれらの影響を示す。10%のトリアセチン可塑剤と共に酢酸プロピオン酸セルロース(CAP482−0.5)の基剤を含むコーティング組成物は、2323(g−mil/m2−日)のMVTR、すなわち、CAP単独より耐湿性の小幅の改善を与えた。CAP及びトリアセチンに加えて、5%のW20(N−N’−エチレン−ビス−オレアミド、可溶性アミドワックス)を添加した場合、MVTRは1776(g−mil/m2−日)に低下し、これはCAP単独より2.1倍の耐湿性の改善である。最終的に、CAP及びトリアセチンにW20を添加する代わりに、5%のオレイン酸アミドを添加した場合、MVTRは991(g−mil/m2−日)にさらに低下し、これはCAP単独より3.8倍の改善である。したがって、両方のアミドワックス、W20及びオレイン酸アミドが耐湿性を改善するのに有効であるが、この事例においては、オレイン酸アミドはW20より優れた耐湿性を与えた。しかしながら、高温の用途において、融点がオレイン酸アミドより高いW20の方が有利であることがある。
実施例3
アミドワックスを含む、PVB、PLA又はVAEとのCAPの組合せは、耐湿性を著しく改善する
【0041】
実施例2で論じたように、アミドワックスが天然ワックスより耐湿性を改善するのに驚くほど有効であったが、図3に示すように、コーティング組成物の耐湿性は、生分解性ポリマー、例えばポリビニルブチラール(PVB)及びポリ乳酸(PLA)ポリマー、及び生分解性のポリ(酢酸ビニル−エチレン)(VAE)の添加によってはるかに劇的に影響を受けた。
【0042】
上述のように、CAP単独では3758(g−mil/m2−日)のMVTRを有する。10%のトリアセチン可塑剤と共に、PLAを1:1の比で添加すると、1148(g−mil/m2−日)のMVTRを結果として生じ、これは3.3倍の耐湿性の改善である。B79、すなわちButvar(登録商標)ポリビナールブチラール(PVB)のみを1:1の比で添加すると、883(g−mil/m2−日)のMVTRが得られ、これは4.3倍の耐湿性の改善である。生分解性ポリマーに加えてアミドワックスを添加するとさらに大きい改善が得られた。5%のオレイン酸アミドと共に、CAP及び固体樹脂ペレットのポリ(酢酸ビニル−エチレン)(VAE)L900を1:1の比で含むコーティング組成物は、MVTRをわずか236(g−mil/m2−日)に低下させた。これは、CAPとPVBより3.7、可塑剤を含むCAPとPLAより4.9倍の耐湿性の改善、及び、CAP単独より15倍を超える耐湿性の改善である。
【0043】
さらに、5%のオレイン酸アミドと共に、CAP及び水性乳濁液のポリ(酢酸ビニル−エチレン)(VAE)Airflex(登録商標)100HSを1:1の比で含むコーティング組成物は、MVTRをわずか84(g−mil/m2−日)に低下させた。これは、CAPとPVBより湿気低下において10.5倍の改善、可塑剤を含むCAPとPLAより湿気低下において13.7倍の改善、オレイン酸アミドを含むCAPと固体VAEより2.8倍の耐湿性の改善、また、CAP単独より44.7倍の耐湿性の改善である。したがって、PVB、PLA及びVAEポリマーはすべてCAPと相乗的に作用するが、VAEがこの事例において最も有効である。溶媒系CAPコーティングにおいて、VAEの水性乳濁液を添加してもまた、固体樹脂の添加より優れた耐湿性能を提供する。VAE材料は、柔軟化において可塑剤のような作用をし、CAP系コーティング組成物の耐湿性を劇的に改善するように見える。
【0044】
CAP及びVAEを1:1の比で、並びに5%のオレイン酸アミドを含有するコーティングのMVTRは、さらに組成物を添加する順序を修正することにより低下させることができる。混合物にAF100を最後に添加することによって、43(g−mil/m2−日)にMVTRは降下する。この配合物において使用される溶媒はまた、VOC放出を削減するために調整することができる。2−プロパノール/酢酸メチルの使用は、MVTRを47(g−mil/m2−日)に維持する。これらの修正は両方とも、CAP単独と比較して、80倍を超える率の耐湿性の改善を表す。
実施例4
【0045】
バイオスフェアインダストリー製の11P001Aと称する小さい調理済み食品トレー(PPM100デンプン/繊維系材料)を、CAP及び10%トリアセチン(CAPの乾燥質量に基づく添加量)で内側に吹付被覆した。コーティングは対流オーブン内で75℃で2分間乾燥した。乾燥したコーティング質量は10−12g/m2であった。水切りした緑サヤインゲン、褐色グレービーをかけた調理済み卵入麺又はマリナラソースをかけた調理済み卵入麺の一人前を、被覆トレー及び被覆していない対照トレーに入れた。トレーはすべてアルミ箔で覆っており、24時間冷蔵、保持し、次いで、177℃(350°F)オーブンで25分間再加熱した。すべての場合において、被覆していないトレーは柔らかく、食品がトレーに接していたところはどこでもスプーンで容易に剥離することができた。被覆トレーはより堅固で適切であった。被覆トレーのうち、スプーンを使用して、褐色グレービーを保持するトレーのいくらかのみ剥離することができた。また、被覆していないトレーと比較して、はるかに大きい労力が被覆トレーを剥離するために必要であった。
【0046】
上記の試験を、褐色グレービーのみを使用して繰り返した。試験したコーティングは、10%のトリアセチン及び5%のオレイン酸アミド(CAPの乾燥質量に基づく添加量)を含むCAP、及び5%のオレイン酸アミド(固形分の乾燥質量に基づく添加量)を含む1/1のCAP/AF100であった。これらのコーティングを用いると、トレーは、再加熱後に極めて堅固であり、スプーンを使用して、妥当な労力を払ってもコーティングを除去したり、損傷したりすることはできなかった。実際、フォーク及び食卓用ナイフを使用して、コーティングを損傷するのは非常に困難であった。
実施例5
離型コーティング
【0047】
2種の離型性を高めたコーティングを調製し、最上の耐湿性コーティングを対照として使用した。
【0048】
耐湿コーティング1:変性エタノール20部に、CAP6.6部、続いてアセトン45部及び酢酸n‐プロピル11部を添加した。その混合物は40℃に暖め、オレイン酸アミド0.66部を添加した。オレイン酸アミドが溶解した後、12部のAF100及び4.74部の水の混合物を、撹拌しながら添加した。
【0049】
離型コーティング1:変性エタノール18.5部に、CAP9.9部、続いてアセトン45.5部及び酢酸n‐ブチル12部を添加した。その混合物は40℃に暖め、オレイン酸アミド1.32部及びMCT1.32部を添加した。オレイン酸アミドが溶解した後、6部のAF100及び5.46部の水の混合物を撹拌しながら添加した。
【0050】
離型コーティング2:変性エタノール12.5部に、CAP9.9部、続いてアセトン44.5部及び酢酸n‐ブチル11部を添加した。その混合物は、オレイン酸アミド0.64部とともに、溶解するまで40℃に暖めた。6部のAF100及び4.46部の水の混合物を添加した。AF100が溶解したら、レシチン1.5部、MCT1.5部及びイソパール(Isopar)8部の混合物を添加し、コーティング溶液中にレシチンの微細分散を作り出した。
実施例6
離型コーティング性能
【0051】
バイオスフェアインダストリー製の11P004Aと称する小さいパン型トレー(PPM100デンプン/繊維系材料)を、ノードソンエアレス液体吹付システムを使用して、いくつかの異なるコーティング配合物を用いて内側に吹付被覆した。コーティングは対流オーブン内で75℃で2分間乾燥した。乾燥したコーティング質量は12−15g/m2であった。これらのコーティングは耐湿コーティング1、離型コーティング1及び2として実施例5に記載されている。いくつかのパン製造品目の離型性能を被覆パン型で試験した。ベティクッカー(Betty Crocker)パウンドケーキミックスを箱の説明によって調製し、被覆パン型中で177℃(350°F)で対流オーブン内で30分間焼いた。ピルスバリークイックナットブレッド(Pillsbury Quick Nut Bread)をまた箱の説明によって調製し、被覆パン型中で191℃(375°F)で対流オーブン内で30−40分間焼いた。離型性能を次の1−3の尺度で採点した。1はパン型に製品を残さない完全な離型を表す。2は、パン型にいくらかの製品が残るが、製品は無傷で除去できることを表す。また、3は、パン型に製品がひどく粘着し、製品をパン型から除去すると、必ず製品を破壊することを表す。被覆パン型からのパウンドケーキのパン製造の離型性能は表3において示す。表3からわかるように、ワックス、好ましくはレシチンを含むワックス及び/又は中程度の鎖のトリグリセリドを含有する配合物は離型性能が改善された。
【表3】

実施例7
離型コーティング性能−ピザ
【0052】
バイオスフェアインダストリー製の16P004Aと称する10インチピザ円形トレー(PPM100デンプン/繊維系材料)を、いくつかの異なるコーティング配合物を用いて片面に吹付被覆した。コーティングは対流オーブン内で75℃で2分間乾燥した。乾燥したコーティング質量は12−15g/m2であった。これらのコーティングは耐湿コーティング1、離型コーティング1及び2として実施例5に記載されている。トレー上に広げ、ソース、チーズ及びペパローニで覆った新鮮なパブリックス(Publix)ピザ生地の離型性能を、被覆ピザ円盤で試験した。新鮮なピザを調製し、従来式オーブン内で193−204℃(380−400°F)で20−25分間焼いた。離型性能を次の1−3の尺度で採点した。1はピザ円盤に外皮を残さない完全な離型を表す。2はピザ円盤にいくらかの外皮が残るが、ピザは無傷で除去できることを表す。また、3は、ピザ円盤に外皮がひどく粘着し、ピザをピザ円盤から除去すると、必ずピザを破壊することを表す。被覆ピザ円盤からのピザのパン製造の離型性能を表4に示す。表4でわかるように、レシチン及び/又は中程度の鎖のトリグリセリドと組み合わせたワックスを含有する配合物のみ、離型性能が改善された。
【表4】

実施例8
被覆トレー及び被覆していないトレーのMVTR
【0053】
4部のCAP2、14.55部のAF100、0.96部のオレイン酸アミド、46.5部のアセトン、9.6部の水、21.66部のエタノール及び10部の酢酸n‐プロピルから、耐水性コーティングを調製した。バイオスフェアインダストリー製の18P002と称するパイ皿(PPM100デンプン/繊維系材料)を吹付被覆した。乾燥したコーティング質量は約12g/m2であった。被覆トレー及び被覆していないトレーのMVTRを上記のように測定した。被覆していないPPM100材料のMVTRは121,800gmil/m2−日であった。耐湿被覆PPM100材料は、50,580gmil/m2−日のMVTRであった。
実施例9
熱封止
【0054】
6.6部のCAP、12部のAF100、0.66部のオレイン酸アミド、45部のアセトン、4.74部の水、20部のエタノール及び11部の酢酸n‐プロピルから、耐湿性コーティングを調製した。バイオスフェアインダストリー製の16P004と称するピザ円盤(PPM100デンプン/繊維系材料)を吹付被覆した。乾燥コーティング質量は約15.3g/m2であった。センコープシーラー(Sencorp Sealer)を用いて、160℃(320°F)の温度、4.2Kg/cm2(60psi)の圧力及び2秒の滞留時間に設定した条件下で2.54cm(1インチ)幅の封止ヘッドを形成して、トレーを蓋するフィルムとして一般に使用されている様々な包装フィルムで、耐湿被覆した16P004円盤を封止した。熱封止した耐湿被覆16P004円盤のフィルムの2.54cm(1インチ)ストリップを切断し、ASTM F88に従ってインストロン(Instron)で、25.4cm/分(10インチ/分)の速度及び2.54cm(1インチの掴み具分離で試験した。試験中に達成された最大応力N/cm(lbf/in)が記録された。様々な非生分解性のPETフィルム(デュポンメイラー(DuPont Mylar)、OL及びECO等級は非晶質封止層を有し、RL等級はEVA封止層を有する)及び生分解性の/堆肥化できるセロハン(イノビアネイチャーフレックス(Innovia NatureFlex)、NE及びNVS等級は両面に熱封止コーティングを有する)及び、PLA(SKCスカイウェル(SKC Skywel)、TE90等級は片面に非晶質熱封止層を有している)フィルムのデータは、表5に示されている。比較のために、従来の非生分解性の結晶化PETトレーに対する包装フィルムの封止強度も示されている。表に見られるように、耐水性コーティングは、多くの種類の蓋をするフィルムを用いて熱封止し、ある範囲のシール強度を提供することができる。
【表5】

実施例10
【0055】
7部のCAP2、12.95部のAF100、1.12部のオレイン酸アミド、44部のアセトン、3.87部の水、21.28部のエタノール及び10部の酢酸n‐プロピルから、耐湿性コーティングを調製した。湿気に敏感ないくつかの基材に、このコーティングを約13.7g/m2の乾燥コーティング質量で吹付した。基材は、普通のコピー紙(ステープルズ(Staples)、坪量=75g/m2)特別高耐久性ボール紙(Paper Accents(商標)、酸非含有、リグニン非含有、坪量=877g/m2)被覆していないセロハンフィルム(イノビアネイチャーフレックス(Innovia NatureFlex) 110 ゲージ NP)、及びPLAフィルム(SKCスカイウェル(SKC Skywel) 80 ゲージ TE90、非熱封止面で被覆)を包含した。
【0056】
Cobb試験(ASTM D3285−93を参照)を数種の湿気に敏感な基材で実施した。Cobb試験を2分又は20分間で行い、その後、水分吸収を材料の既知面積での質量測定で測定した。表6は、被覆した及び被覆していない湿気に敏感な基材のCobb試験の要約を示す。
【表6】

【0057】
耐湿被覆した湿気に敏感な基材及び被覆していない湿気に敏感な基材について、MVTRを測定した。実施例1で用いたMVTR測定手順を使用した。結果は表7に示す。
【表7】

【0058】
被覆した湿気に敏感な基材の熱封止性能を測定した。実施例9で用いた熱封止法を使用した。耐湿被覆したセロハン及びPLAフィルムについて、被覆フィルムで、バイオスフェアインダストリー製の18P002と称するパイ皿(PPM100デンプン/繊維系材料)を熱封止し、第2の耐湿コーティングで被覆した。第2のコーティングは、4部のCAP2、14.5部のAF100、0.3部オレイン酸アミド、46.5部のアセトン、3.08部の水、21.6部のエタノール及び10部の酢酸n‐プロピルを含んでいた。熱封止測定の結果は表8に見られる。表8に示すように、耐湿コーティングは耐湿性を改善するだけでなく、湿気に敏感な基材を熱封止する能力を高める。
【表8】

NT:試験せず
【0059】
本発明は特定の実施形態及び実施例に関して記載されたが、本発明の修正及び改作が本発明の趣旨及び範囲から乖離しないで可能であることは当業者によって容易に認識されるであろう。したがって、本発明の範囲は以下の特許請求の範囲のみによって限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースエステル;
ワックス;
可塑剤;及び
溶媒
を含む、デンプン系組成物と共に用いるためのコーティング組成物。
【請求項2】
セルロースエステルが酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸セルロース又はニトロセルロースを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ワックスがオレイン酸アミド又はN,N’−エチレン−ビス−オレアミドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
可塑剤がクエン酸エステル、トリアセチン又はトリブチリンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
溶媒が酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、エタノール、プロパノール、アセトン、水、炭化水素を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
さらにロジンを含み、ロジンが二量化ロジン又は部分的に二量化したロジンのグリセリンエステルを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
セルロースエステル;
ワックス;
生分解性ポリマー;及び
溶媒
を含む、デンプン系組成物と共に用いるためのコーティング組成物。
【請求項8】
セルロースエステルが酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸セルロース又はニトロセルロースを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
ワックスがオレイン酸アミド又はN,N’−エチレン−ビス−オレアミドである、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
生分解性ポリマーがポリ酢酸ビニルポリマー、ポリ乳酸ポリマー又はポリビニルブチラールコポリマーを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
生分解性ポリマーがポリ(酢酸ビニル−エチレン)コポリマーを含み、セルロースエステル成分が酢酸プロピオン酸セルロースを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
溶媒が酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、エタノール、プロパノール、アセトン、水、炭化水素を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
溶媒が酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、エタノール、プロパノール、アセトン、水、炭化水素を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項14】
さらに可塑剤を含み、可塑剤はクエン酸エステル、トリアセチン又はトリブチリンを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項15】
さらにロジンを含み、ロジンは二量化ロジン又は部分的に二量化したロジンのグリセリンエステルを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項16】
セルロースエステルであって、該セルロースエステルが酢酸プロピオン酸セルロースを含む;
アミドワックスであって、該アミドワックスがオレイン酸アミドを含む;
生分解性ポリマーであって、該生分解性ポリマーがポリ酢酸ビニルポリマー、ポリ乳酸ポリマー又はポリビニルブチラールポリマーを含む;及び
溶媒であって、該溶媒が酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、エタノール、プロパノール、アセトン、水、炭化水素を含む
を含む、デンプン系組成物と共に用いるためのコーティング組成物。
【請求項17】
生分解性ポリマーが、ポリ(酢酸ビニル)ポリマー又はポリ(酢酸ビニル−エチレン)の水性ラテックスを含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
生分解性ポリマーがポリ乳酸ポリマーを含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
生分解性ポリマーが最後に添加される、請求項16に記載の組成物を製造する方法。
【請求項20】
組成物がアミドワックスの融点を超えて加熱されない、請求項16に記載のコーティング組成物を製造する方法。
【請求項21】
セルロースエステル;
生分解性ポリマー;
離型剤;
溶媒;及び
場合によって、ワックス
を含む、デンプン系組成物と共に用いるためのコーティング組成物。
【請求項22】
セルロースエステルが酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸セルロース又はニトロセルロースを含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
ワックスがオレイン酸アミド又はN,N’−エチレン−ビス−オレアミドである、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
生分解性ポリマーがポリ酢酸ビニルポリマー、ポリ乳酸ポリマー又はポリビニルブチラールコポリマーを含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項25】
生分解性ポリマーがポリ(酢酸ビニル−エチレン)コポリマーを含み、セルロースエステル成分が酢酸プロピオン酸セルロースを含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項26】
離型剤がリン脂質又は中程度の鎖のトリグリセリドを含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項27】
コーティング;及び
デンプン、セルロース、セルロース誘導体及びPLAからなる群から選択される基材
を含み、
コーティングは
セルロースエステル;
ワックス;
可塑剤;及び
溶媒
を含む物品。
【請求項28】
セルロースエステルが酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸セルロース又はニトロセルロースを含む、請求項27に記載の物品。
【請求項29】
ワックスがオレイン酸アミド又はN,N’−エチレン−ビス−オレアミドを含む、請求項27に記載の物品。
【請求項30】
可塑剤がクエン酸エステル、トリアセチン又はトリブチリンを含む、請求項27に記載の物品。
【請求項31】
溶媒が酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、エタノール、プロパノール、アセトン、水、炭化水素を含む、請求項27に記載の物品。
【請求項32】
コーティングがロジンをさらに含み、ロジンは二量化ロジン又は部分的に二量化したロジンのグリセリンエステルを含む、請求項27に記載の物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−515835(P2012−515835A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548103(P2011−548103)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/021668
【国際公開番号】WO2010/085569
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(309042347)バイオスフィア・インダストリーズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (3)
【氏名又は名称原語表記】Biosphere Industries, LLC
【Fターム(参考)】