説明

耐火外断熱外壁仕上工法

【課題】 従来の複雑な工程を簡略化して、可撓性のある不燃性断熱材の上に直接に外壁仕上部材を貼ることができるとともに、熱変化や経時変化にも強い外壁の施工方法を提供する。
【解決手段】 可撓性を有する板状の不燃断熱材2を用いる、外断熱による外壁仕上工法であって、コンクリートと一体化した該不燃断熱材の表面に直接外壁仕上材3を貼り付け、もしくは塗布する外壁仕上工程を行うことを特徴とする外壁仕上施工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不燃性断熱材を用いる外断熱の外壁仕上施工方法に関し、更に詳しくは施工に際して煩雑な工程が簡略化された廉価で耐火性、耐候性の高い外壁を提供できる耐火外断熱外壁仕上工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築の断熱には内断熱工法と外断熱工法とが有り、特にコンクリート建築については内断熱より外断熱の方が室内の結露防止による衛生面、建築躯体保護、長寿命化、省エネルギーの点で優れていることは周知であり、最近では外断熱が主流となりつつあるが、都市計画法の防火地域での建築の外壁外側に使用する材料は、不燃性か耐火性であることが建築基準法で要求されている。
図2に、従来の外断熱工法による外壁の断面図を示す。
【0003】
従来、不燃性、耐火性のある断熱材5には、ガラス繊維系、ロックウール系、発泡ガラスがあり、これらを用いて外断熱を施す。この際には先ず、建築躯体外壁1の外側面に断熱材5の厚みと通気層7を確保する寸法と仕上下地8と仕上材3の重量に耐える支持金物6、支持ボルト4を必要数取り付ける。すなわち、該断熱材5を、該支持ボルト4が貫通した状態で外壁面に貼り付けてから、該支持ボルト4に支持金属の桟木6等(チャンネル6)を取り付け、該桟木に通気層7を設け、仕上パネル8を取り付ける。またはタイル仕上とするならば、タイル3で仕上した乾式タイルパネル8を取り付ける。前記工法に併せて、断熱材5に発泡ガラスを使用した場合、支持ボルト4が貫通した状態で、該断熱材5を外壁面に貼り付け、ボルトに金網やガラスメッシュ等を締結、または熔接し、モルタルを塗り、該断熱材に負荷負担をかけないパネル状の仕上下地8を構成してからタイル3等の仕上を施すこともある。
【0004】
これまで外断熱工法で、該断熱材に直接仕上としてのタイル貼り、モルタル塗りが施されなかったのは、ガラス繊維系断熱材やロックウール系断熱材には仕上材を支持するだけの接着力と支持力が無いからである。
また、発泡ガラス断熱材に直接タイル等を貼る工法を採ると、該断熱材の外側に貼られたタイルは、断熱材に直接貼られているため、下地や躯体コンクリートとの間の熱移動が行われず、その温度は日射を受けると急激に上昇し高温となりやすく、降雨時には急速に下降するというように、気象変化に影響されやすくその温度変化は急激で温度差も大きい。該断熱材は可撓性が極めて小さいので、気温や日射に因る仕上タイル等の温度変化に伴う伸縮に、接着面で該断熱材はその伸縮に追従出来ず、界面破壊が発生し、やがてタイル等の剥離、脱落につながると懸念されるからである。さらに、外部から衝撃が加わると該断熱材とタイル等の接着面での剥離破壊ではなく、亀裂した線に囲まれた部分がドーム状に仕上タイル等とともに、削り取られるような形態で脱落し、外壁仕上の補修は該断熱材の補修と同時に困難となっていた。
【0005】
上記のことから、従来の外断熱工法に於いて、断熱材に直接仕上タイル等を施す工法は採用されず、前記に示すように外壁躯体に貼られた断熱材の外側に、更に金物やボルトで支持された外壁仕上下地を構成してから、仕上が施された。このような工法では工事工程が煩雑になり、資材も必要となり、結果建設費が嵩むので、コンクリート建築での断熱方法で、最良と周知されている、外断熱の普及をはばんできた。また、タイル仕上とする前記工法では、タイル3で仕上した乾式タイルパネル8自体が剥離,脱落すると、人命に係わるような大事故を生じる危険性もあり、複雑な工程と共に安全性の観点からも、より簡易な構造による外壁仕上工法が待望されていた。
【0006】
外断熱工法は、コンクリート建築にとって、冬期における室内結露防止に極めて有効であり、構造体に日射や気温の変化による熱ストレスを直接及ぼさないのでコンクリートの構造クラックの発生が抑えられることは周知である。また構造体外部を断熱材で覆うことは、外部からのコンクリートにとって有害な雨水や有害ガス等のコンクリート内部への浸入をより防ぐこととなり、建築の構造体の寿命を更に延ばす効果もある。また、コンクリート構造体外部を断熱材で覆う外断熱は、室内側に断熱層を設けないので、室内の空気が、比較的大きい熱容量を持つコンクリート躯体に、直接、熱的に接触することになる。このことは、コンクリート躯体の温度より室内の気温が低くなったり高くなれば、該躯体と室内空気間で熱移動が起こり、室内気温をより安定させ、冷暖房の最大負荷を軽減させるので、省エネルギーにも効果がある。
【0007】
該外断熱仕上工法の断熱材として必要とされる条件、性質は
(1) 屋根や外壁外側といった部位で用いられるので、雨水、有害ガス等の浸入、含水性、経年による断熱性能の劣化が極めて小さい、独立した気泡体で構成されていること。
(2) タイルの直貼り、モルタル等の直塗り、コンクリート打ち込み工法が可能な形状維持性と耐圧性が有ること。
(3) 建築基準法による耐火性、不燃性を持つこと。
(4) タイルの直貼り、モルタル等の直塗りをしても、温度変化等で剥離や脱落現象が起きないような可撓性が有ること。
断熱材が上記(2)の形状維持性と上記(3)の耐火性と上記(4)の可撓性を併せ持つことは、外断熱外壁仕上のための特別な下地を不必要として、外断熱工事費のローコスト化が図れ、外断熱建築の普及につながるため重要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、不燃、耐火性のある外断熱工法においては、不燃断熱材として形状維持性の低いガラス繊維系、ロックウール系と、可撓性が極めて小さく脆い発泡ガラスが用いられてきたので、前記したように躯体外壁から支持金物や支持ボルト等を介して、該断熱材に力がかからないよう該断熱材類を挟む形で、仕上のための下地を構成してからタイル貼り等の仕上を施すという煩雑な工程を踏み、施工中は該断熱材の破損や雨水からの保護、すなわち養生が必要となり、それらの分、工事期間が必要で、工事費も嵩んでいた。
本発明は、かかる従来の耐火外断熱の普及を阻んできた問題点を解消するためになされたものであり、その目的とするところは、可撓性を有する不燃性断熱材に直接タイル等の仕上を施すことで、仕上のための下地工程を簡略化し、工事期間の短縮、工事費の低廉化が計れる耐火外断熱仕上工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、可撓性のある板状の該不燃性断熱材をコンクリート型枠内の必要面に予め配置して、コンクリートの打設を行いコンクリートと一体化させる打ち込み工法等により、強固な外壁仕上基盤を構成し、該断熱材の表面に直接タイル用接着モルタルを介してタイル仕上を施す。あるいは該断熱材の表面にモルタル等を直塗りする。したがって、外壁仕上のための支持金物、支持ボルト、下地パネル等の部材や工事を必要とせず、従来の工法に比べ、廉価で工期も短縮できる。
【0010】
すなわち、本発明は、コンクリート打込み工法で、コンクリートと一体化させた該不燃断熱材、又は、既存の外壁に接着剤で該不燃断熱材を貼り付けて一体化した、可撓性を有する板状の不燃断熱材を用いる、外断熱による外壁仕上工法であって、該不燃断熱材の表面に直接外壁仕上材を貼り付け、もしくは塗布する外壁仕上工程を行うことを特徴とする外壁仕上施工方法を提供するものである。ここで、前記不燃性断熱材は、独立気泡の発泡体で構成されていることが必要であり、また、雨水等が侵入しても含水せず、吸水性が極めて小さいことが必要である。前記外壁仕上工程において、具体的には不燃性断熱材の表面に直接仕上タイルを接着モルタル等で貼り付けること、あるいは、不燃性断熱材の表面にモルタルを直塗りすることができる。
【0011】
前記打込み工法による外壁仕上基盤形成においては、通常、一対の型枠によって形成される空間の内側に、不燃性断熱材を型枠の一方(外壁の外面を構成する側)に密着させた状態に配置してから、コンクリートを流し込む。外壁仕上基盤形成では、コンクリートを硬化させた後、型枠を外すことにより、不燃性断熱材とコンクリートとが接着して一体化した外壁仕上基盤、または既存の外壁面に接着剤で該不燃断熱材を貼り付けて一体化した外壁仕上基盤を形成する。この施工方法によれば、タイル等の外壁仕上部材を断熱材へ直接取り付けることが可能になるので、下地工程などが一切不要になり、材料的にも時間的にも有利に、また熱変化や経時変化にも強い強固な外壁が得られる。
このように、可撓性を有する該不燃性断熱材の粘り強い性質によって、直貼りタイルあるいはモルタル自体のひび割れを防止し、該外壁仕上部材の剥離脱落等を効果的に防止できる。
【0012】
本発明では、可撓性のある不燃断熱材、例えば炭酸カルシウム系発泡断熱材(商品名:ロックセルボード)等に、セメント、砂、水で構成されるモルタル等を接着剤として用い、必要に応じて例えば梅彦(株)UMボンドフィラー等を使用して、直接タイル等の外壁仕上部材を貼り付ける、あるいはモルタル直塗りする。本発明によれば、経時変化による躯体コンクリートの収縮などにより、躯体にヒビ割れが生じても、可撓性がある断熱材がその変化を吸収するため、仕上面まで亀裂が伝達されず、よってタイル等の外壁仕上部材の剥落脱落などが起きにくい。これにより、断熱工法の理想とされている外断熱工法を、断熱材に直接タイルを貼り付ける、またはモルタルを直接塗るという簡単な施工方法で行うことが可能となり、建造物の外壁を施工することができる。
以下、本発明の実施の形態について、説明する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、断熱工法の理想とされている外断熱工法を、複雑な工程を経ることなく材料的にも時間的にも有利に、外断熱用の断熱材に直接タイル等を貼り付けるという簡単な方法で、建物の外壁を断熱性と耐火性のある仕上にすることができる。
また、本発明の仕上施工方法による外壁は、可撓性のある断熱材を用いているので、コンクリート躯体が長期間経過して収縮などの経時変化があった場合にも、断熱材がその変位を吸収するため、仕上表面に躯体亀裂(ボディークラック)が及ばず、外壁仕上材の剥落などが生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、可撓性のある板状不燃断熱材によって形成された外壁基盤表面に、タイルなどの外壁仕上材を直接貼り付けもしくは塗布する外壁仕上施工方法である。外壁仕上基盤は、板状の該不燃性断熱材をコンクリート型枠内の必要面に予め配置して、コンクリートの打設を行いコンクリートと一体化させる打ち込み工法によって、または既存の外壁に接着剤を全面に塗布して該不燃断熱材を貼り付けて一体化することによって、形成することができる。可撓性のある板状不燃性断熱材を用いることにより、断熱材に直接外壁仕上部材を施した耐火性のある外断熱構造とするものであり、省エネルギー化を図ることができる。
【0015】
本発明には可撓性のある不燃性断熱材として、例えば炭酸カルシウム系発泡断熱板が好適に用いられる。成分ついては特に限定されないが、例えば炭酸カルシウムを主成分とした無機質充填剤55〜75重量部、有機系バインダー樹脂5〜10重量部、水酸化マグネシウム20〜30重量部、および適量の発泡剤を混合した混合物を発泡させてなる炭酸カルシウム系発泡断熱板が適している。
該発泡断熱板の大きさは任意であるが、厚さは通常5mm〜50mm程度、好ましくは25mm〜50mmである。密度は通常80〜100kg/m3程度であり、圧縮強度は通常1.5〜2.0kgf/cm2程度である。
該発泡断熱板の製造方法としても特に限定されないが、例えば以下のような方法が挙げられる。炭酸カルシウム等の無機充填剤と有機系バインダー樹脂と水酸化マグネシウムと発泡剤とを加え、さらに一次可塑剤を加えて混練する。得られたペースト状の混合物を高圧プレスの金型内において加熱し、発泡剤を分解して気化するガスで発泡させる。該発泡体から一次可塑剤を除去して、本発明の不燃性断熱材が得られる。
以下、このような断熱材を用いる本発明の仕上施工方法について、図1を用いて詳細に説明する。
【0016】
本発明の仕上施工を行う場合、板状の不燃断熱材2をコンクリート型枠内の必要面に予め配置して、コンクリート1の打設を行いコンクリートと一体化させる打ち込み工法等によって、または既存の外壁に接着剤を全面に塗布して該不燃断熱材を貼り付けて一体化することによって、強固な外壁仕上基盤を形成しておく。該打込み工程による外壁基盤形成においては、通常、一対の型枠によって形成される空間の内側に、不燃性断熱材2を型枠の一方(外壁外面を構成する側)に密着させた状態に配置してから、コンクリート1を流し込む。流し込んだコンクリートは硬化のため、通常1日〜1週間、好ましくは3〜4日間、常温で放置する。外壁基盤形成では、コンクリート1を硬化させた後、一対の型枠を外すことにより、不燃性断熱材2とコンクリート1とが接着して一体化した外壁仕上基盤を形成する。可撓性のある該不燃断熱材は、コンクリートとの接着性に優れているので剥離等の問題は生じなく、打ち込み工法に極めて適している。
【0017】
次いで、本発明の仕上施工方法は、外壁仕上工程として、不燃性断熱材の表面にモルタル等の接着剤を用いてタイル等の外壁仕上部材を直接貼り付けるか、あるいは、直塗りする工法である。
従来法では、図2に示すように、ガラス繊維系等の断熱材5を用いて外断熱を施した後、建築躯体外壁外側面に断熱厚と通気層7を確保する寸法と仕上下地8と仕上材3の重量に耐える支持金物、支持ボルト4を必要数取り付けていた。該断熱材5を、該金物ボルト類4が貫通した状態で外壁面に貼り付けてから、該金物、ボルトに金属の桟木等(チャンネル6)を取り付け、下地を構成し、通気層7を設け、仕上パネル8を取り付け、その上にタイル3を施していた。
本発明では、従来法の複雑な工程は不要となり、不燃性断熱材の表面に直接外壁部材を貼り付けることができる。接着剤としては特に限定されるものではないが、通常、セメント、砂、水の混合されたモルタルや、必要に応じて樹脂が混入された樹脂モルタルなどが用いられる。また、この外壁仕上工程においては、不燃性断熱材の表面にモルタルを直塗りすることもできる。
【0018】
なお、外壁仕上材として用いるタイルとしては、例えばコンクリート圧着用タイルなどが挙げられる。また、外壁仕上材として用いるモルタルとしては、セメント:砂が1:1〜3の範囲、特に好ましくは1:1のものを例示できる。水の重量比は特に限定されないが、通常の堅練モルタルの範囲20〜40重量%が好適である。
このように本実施の形態によれば、不燃性断熱材の上に直接に外壁仕上材を貼ることができるとともに、熱変化や経時変化にも強い外壁を提供できる。特に、耐火性および不燃性を有するとともに、仕上のための特別な下地を不必要とし、タイルの直貼りやモルタルの直塗りが可能で剥離脱落がない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の外壁仕上施工方法を行った際の外壁断面図を示すものである。
【図2】従来の外断熱工法による外壁の断面図を示すものである。
【符号の説明】
【0020】
1 コンクリート
2 可撓性不燃断熱材
3 タイル(外壁仕上材)
4 支持ボルト
5 耐火、耐熱断熱材(フォームグラス、グラスウール等)
6 チャンネル
7 通気層
8 仕上下地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する板状の不燃性断熱材を用いる、外断熱による外壁仕上工法であって、
該不燃性断熱材が、独立した発泡体で構成され、建築基準法で要求される不燃性を持ち、
該不燃性断熱材の表面に、直接外壁仕上材を塗布する外壁仕上工程を行うことを特徴とする外壁仕上施工方法。
【請求項2】
前記外壁仕上材が、モルタルである請求項1に記載の外壁仕上施工方法。
【請求項3】
前記不燃性断熱材が、可塑剤を除去したものである請求項1に記載の外壁仕上施工方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−2667(P2007−2667A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−281322(P2006−281322)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【分割の表示】特願2001−222461(P2001−222461)の分割
【原出願日】平成13年7月24日(2001.7.24)
【出願人】(391046872)有限会社近藤勝設計事務所 (1)
【出願人】(000112772)フジ化成工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】