説明

耐火成形体の製造方法

本発明は、粒度が100μm未満の微粒子成分と粒度が100μmを超える粗粒子成分とを有する、耐火材料を製造するための材料組成物に関する。前記微粒子成分は、微粒子成分の総重量に対して重量含有率が少なくとも90%の、粒度が50nm〜100μmの、酸化アルミニウムと、微粒子成分の総重量に対して重量含有率が5%までの、粒度が50nm〜20μmの、酸化ジルコニウムと、酸化ジルコニウムのための安定剤と、微粒子成分の総重量に対して重量含有率が5%までの、粒度が50nm〜20μmの、酸化チタン粉末とを含有してなる。前記粗粒子成分は、材料組成物の30%以上の重量含有率を占め、酸化アルミニウムに基づく破砕粒及び/又は酸化アルミニウムに基づく中空球構造から成っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火材料を製造するための材料組成物及びその材料組成物の利用に関する。また、本発明は、高温ガス反応器における耐火成形体、特にガスタービンにおける遮熱要素、及び耐火成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高温ガスを案内する高温ガス反応器の壁、例えばガスタービン設備における燃焼器の壁、は、その支持構造物を高温ガスの攻撃から熱遮蔽する必要がある。その熱遮蔽は、例えば本来の燃焼器壁に内張りされた、例えばセラミック遮熱体の形の、高温ガスライニングによって実現できる。かかる高温ガスライニングは、一般に、燃焼器壁を平面的に内張りする多数の、金属の又はセラミックの、遮熱要素で構成されている。セラミックス材料は、その大きな耐熱性、耐食性及び低い熱伝導性により、金属材料に比べて、高温ガスライニングの構成に対して理想的である。セラミック遮熱要素は、例えば特許文献1に、記載されている。
【0003】
材料特有の熱膨張特性及び運転の枠内で典型的に生ずる(例えばガスタービン設備の停止時における周辺温度と全負荷時における最大温度との)温度差を考慮して、その温度による膨張が阻止されることによって遮熱要素を損傷する熱応力が発生しないようにするために、温度による膨張に対応する、特にセラミック熱遮蔽の、熱的可動性が保証されねばならない。従って、遮熱要素の熱膨張を可能とするために、個々の遮熱要素間に膨張のための隙間(膨張遊び)が存在している。この膨張遊びは、安全上から、高温ガスの最高温度時でも、決して完全には塞がらないように、設計されている。従って、確実に、高温ガスが膨張遊びを通して燃焼器の支持壁構造物に到達しないようにされなければならない。膨張遊びへの高温ガスの侵入を阻止するために、膨張遊びは、通常、燃焼器内部の方向に流れる封鎖空気流で洗流されている。その封鎖空気として、一般に、遮熱要素を保持する保持要素を冷却するために同時に冷却空気として作用する空気が利用されるが、これにより、とりわけ遮熱要素の縁部領域に温度勾配が生じる。封鎖空気による膨張遊びの洗流によって、その遊び部を境界づける周囲面が遮熱要素の低温側面と同様に冷却される。他方、遮熱要素の高温側面では、高温ガスによる大きな入熱が生ずる。従って、遮熱要素の内部に三次元的温度分布が生じ、この温度分布は、高温側面から低温側面への温度降下及び遮熱要素の中心から縁に向かって生ずる温度降下によって形づけられている。従って、特にセラミック遮熱要素において、隣り合う遮熱要素間の接触がなくとも、高温側面に応力が生じ、この応力はクラックを生じさせ、このために、遮熱要素の寿命が不利な影響を受ける。
【0004】
典型的には、ガスタービン燃焼器における遮熱要素は、平面的に形成され、支持構造物に対して平行に配置されている。支持構造物の表面に対して垂直に延びる温度勾配は、セラミック遮熱要素が、組立状態において燃焼器の内部の方向に支障なしに曲がり得る限りにおいて、比較的僅かな熱応力しか生じない。
【0005】
支持構造物に対して平行に延びる温度勾配は、遮熱要素の周囲面から出発して遮熱要素の中心に延びる温度勾配のように、板状形状の剛性の故に、その最大投影面に対して平行な変形に関して急速に増大する熱応力をもたらす。これにより、周囲面の低温縁部が、その比較的僅かな熱膨張のために、大きな熱膨張を受けている高温の中央部位から引っ張られる。この引張りは、材料強度を超えた際に、遮熱要素の縁部から出発して遮熱要素の中央部の方向に延びるクラックを生じさせる。
【0006】
クラックは、遮熱要素がカバーする断面積を減少する。クラックが長くなればなるほど、遮熱要素がカバーする断面積は小さくなる。熱の影響によるクラックは、ガスタービン設備の運転中に生ずる機械的負荷によって延長され、これは残留断面積を更に減少させ、これにより遮熱要素の交換が必要となる。かかる機械的負荷は、例えば、燃焼振動、即ち燃焼排ガスにおける振動、で引き起こされる燃焼器壁の振動加速時に生ずる。
【0007】
特許文献2には、封鎖空気の必要量(及びこれによって生じる熱の影響による遮熱要素における応力)を減少するために、膨張遊びに流れバリヤを配置することが、提案されている。これは縁部における温度勾配も減少させる。しかし、流れバリヤの組込みは、いつでも簡単にできるものではなく、また、遮熱要素の複雑性を高める。
【0008】
また、遮熱要素は、強い腐食負荷に曝され、これにより、寿命を制限する材料損耗が生じる。セラミック遮熱要素の場合に生ずる材料損耗は、腐食、これに引き続く表面再焼結及び高温ガスの大きな質量流量による浸食負荷の複合作用に、起因する。その材料損耗は、一般に、高温ガスの最高流速が生ずる箇所で最も大きい。現在、通常利用されている、ガラス相を有するコランダムとムライトとから成るセラミック遮熱要素の場合、材料損耗は、主に2つの反応、即ち、第一にムライト分解、第二に粒子成長及び再焼結、に起因する。高温ガス内に存在する水蒸気は、ムライト(3Al23*2SiO2又は2Al23*1SiO2)及びガラス相を、コランダム(Al23)と酸化シリコン(SiOx)とに分解する。このとき、遮熱要素の表面に存在するコランダムは、遮熱要素の母材及びムライト粒子の腐食層における粒子成長及び焼結を示している。その成長及び焼結は、運転期間が長くなるにつれて増大する。これにより、ガスタービンの始動回数の増加に伴って、微小クラック発生により表面が弱化する。次に、大きな質量流量によって表面粒子に亀裂が生じ、これは浸食を生じさせる。この結果、遮熱要素の寿命が腐食によって制限され、これにより早期の交換が必要となる。更に加えて、ガスタービンの重油運転時に酸化マグネシウムが抑制剤として供給され、これにより、同様に遮熱要素の腐食損耗が生じる。その原因は、遮熱要素中のコランダムが抑制剤中の酸化マグネシウムと反応して反応生成物としてスピネルを生ずることにある。これにより、また、寿命が短縮され、遮熱要素の早期の交換が必要となる。
【0009】
特許文献3には、二酸化ジルコニウムを含有しない粒度が1〜150μmの、重量含有率が少なくとも90%の、耐火酸化物粉末に、重量含有率が5%までの、酸化マグネシウムで部分安定化又は完全安定化された、粒度が1〜20μmの二酸化ジルコニウム粉末及び重量含有率が5%までの、粒度が50nm〜20μmの二酸化チタン粉末が添加された材料が記載されている。また、この混合物に、重量含有率が5%までの、粒度が1μm〜20μmの耐火酸化物粉末が添加される。その場合、前記他の耐火酸化物粉末は、好適には、酸化アルミニウム及び/又は酸化マグネシウム及び/又は酸化イットリウム及び/又は酸化セリウムである。1,550℃を超える焼結時又はセラミックス材料の使用中、二酸化ジルコニウムの酸化マグネシウム安定剤は、スピネル相及び/又はアルミン酸マグネシウムを形成し、二酸化ジルコニウムが不安定化される。その代わりに又はそれに加えて、チタン酸ジルコニウム及び/又はチタン酸アルミニウムが形成され、これは、結果的に、セラミックス母材中に、危険のない程度の、クラックを発生させ、耐熱衝撃性を向上する。上述の材料組成物からは、主に、収縮率が10重量%を超える焼結が生じてしまうので、薄肉の小容積の中空部品しか製造できない。
【0010】
特許文献4には、スピネル含有成形部品の製造方法が記載されている。石灰含有アルミナケイ酸ガラス粉末に、酸化マグネシウムが添加されている。この混合物は、成形され、続いて加熱され焼結され、これによって、この混合物の成分は、ガラスの焼結温度での長時間保持によって反応させられ失透させられる。かかる成形品の化学的特性、特に熱機械的特性、は、1,550℃を超える温度に適応するが、しかし、例えば今日のガスタービンに課せられているような要件に適応しない。
【0011】
特許文献5には、金属溶融物を含む容器のための消耗品が記載されている。その消耗品は、水硬性結合するアルミナ高含有耐火コンクリートを利用して、製造されている。この耐火コンクリートは、スピネル形成添加物を含んでいてもよい。
【0012】
特許文献6には、炭素とケイ素とを含有し、スピネルを形成する酸化物に添加することができる耐火セラミックス材料が記載されている。
【0013】
特許文献7には、主に酸化マグネシウムとかなりの量のマグネシウム含有スピネル形成剤とから成る耐火材料が記載されている。しかし、かかる材料の取り扱い及び成形は、酸化マグネシウムが水和して水酸化マグネシウムなるので、批判的に格付けされねばならない。
【0014】
特許文献8には、金属溶融物を収容するための冶金工業容器に採用される空洞レンガ(Lochstein)が記載されている。これは、その全体又は一部が、セラミック繊維、中空球又は発泡セラミックスで形成されている。また、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、好適には安定化二酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム及びスピネルからなる群から選ばれる少なくとも95%の純度の材料から、全部又は一部が、形成されたセラミック空洞レンガが記載されている。
【0015】
特許文献9には、酸化アルミニウム・スピネル型のモノリシック耐火材料が記載されている。
【0016】
特許文献10には、結合剤を添加したスピネル製品が記載されている。
【0017】
特許文献11には、炭素と、MgO−焼結物、MgO−スピネル及びMgO−焼灼剤(Kauster)からなる群からの少なくとも1つの物質と、から成る、スライド板のための環状インサートが記載されている。
【0018】
セラミック遮熱要素の利用に代わる方式は、金属から成る遮熱要素を利用することにある。金属遮熱要素は、セラミック遮熱要素に比べて温度変化及び機械的負荷に対する大きな抵抗力を有するが、セラミック遮熱要素より高い熱伝導性を有するので、例えばガスタービン燃焼器において、遮熱要素の経費のかかる冷却を必要とする。また、金属遮熱要素は、腐食し易く、温度安定性がより低いので、セラミック遮熱要素のようには高い温度に曝すことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】欧州特許出願公告第0558540号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1302723号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102005036394号明細書
【特許文献4】スイス国特許第469641号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第2624299号明細書
【特許文献6】独国特許出願公告第2459601号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第1571393号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第1820586号明細書
【特許文献9】欧州特許出願公告第0535233号明細書
【特許文献10】国際公開第2005/031046号パンフレット
【特許文献11】国際公開第01/60761号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上述の従来技術に対して、本発明の第1の課題は、酸化アルミニウムに基づく耐熱衝撃性及び耐食性を有する耐火材料を製造するための有利な材料組成物並びにその材料の利用を提供することにある。本発明の第2の課題は、耐火成形体、特に高温ガス反応器における遮熱要素、の有利な製造方法を提供することにある。本発明の第3の課題は、耐熱衝撃性及び耐食性を有する酸化アルミニウムに基づく有利な耐火成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
第1の課題は、請求項1による材料組成物又は請求項16による利用によって解決され、第2の課題は、請求項9による耐火成形体の製造方法によって解決され、第3の課題は、請求項14による耐火成形体によって解決される。従属請求項が本発明の有利な実施態様を含んでいる。
【0022】
耐火材料を製造するための本発明に基づく材料組成物は、粒度が100μm未満、好適には10μm未満、特に0.01μm〜10μm、の範囲の、微粒子成分と、粒度が100μm超、特に100μm〜6mm、の粗粒子成分とを有している。
【0023】
本発明に基づく材料組成物の微粒子成分は、微粒子成分の総重量に対して重量含有率が少なくとも90%の、粒度が50nm〜100μmの、酸化アルミニウム(Al23)と、微粒子成分の総重量に対して重量含有率が5%までの、粒度が50nm〜20μmの、酸化ジルコニウム(ZrO2)と、酸化ジルコニウムのための安定剤と、微粒子成分の総重量に対して重量含有率が5%までの、粒度が50nm〜20μmの、酸化チタン(TiO2)とを、含んでいる。特に微粒子成分の酸化ジルコニウムは、前もって、安定剤で部分的に又は完全に安定化状態とされる。或いは、また、微粒子成分における酸化ジルコニウムとして単斜晶酸化ジルコニウム(バデレー石)が利用され、安定剤が微粒子成分の固有成分として存在することもできる。酸化ジルコニウムに対する適当な安定剤は、例えば酸化マグネシウム(MgO)及び/又は酸化イットリウム(Y23)及び/又は酸化セリウム(CeO)及び/又は酸化カルシウム(CaO)である。
【0024】
本発明に基づく材料組成物の粗粒子成分は、材料組成物の総重量に対して30%より多い、特に60〜80%の、重量含有率を占め、主に酸化アルミニウムに基づく破砕粒及び/又は酸化アルミニウムに基づく中空球構造を含んでいるか、かかる破砕粒及び/又はかかる中空球構造から成っている。これは、特に微粒子成分と同じ組成を有し、例えば少なくとも一部は、微粒子成分に基づいて、溶融物から凝固した又は事前合成された焼結破砕粒として製造され、このとき、焼結破砕粒は、1,300℃を超える、好適には1,550℃を超える、温度で焼結されている。また、粗粒子成分は、破砕粒及び/又は中空球構造に加えて、他の酸化物、例えばAl23、ZrO2、TiO2等、を含むことができる。
【0025】
本発明に基づく材料組成物中に存在する粗粒子成分は、特に耐熱衝撃性及び耐食性を有するアルミニウム材料に基づく、大容積の密実部品及び中空部品の製造を可能とする。これに対して、例えば上述の特許文献3に記載されているような微粒子状軟泥(Schlicker)からは、収縮率が10重量%を超える焼結が生じてしまうので、主に薄肉の小容積の中空部品しか製造できない。更に、本発明に基づく材料組成物には、先に従来技術に関連して述べたセメント結合剤又はリン酸塩結合剤又は水酸化アルミニウム結合剤の添加に起因する問題は存在せず、従って、本発明に基づいて結合剤が存在しない耐熱衝撃性材料が提供される。
【0026】
材料組成物は、特に前もって分散媒体及び/又は液化剤、例えば水、で調製しておくこともできる。
【0027】
耐火体、特にガスタービン燃焼器のような高温ガス反応器のための遮熱要素、を製造するための本発明に基づく方法において、本発明に基づく材料組成物が使われる。その材料組成物には、それが、まだ分散媒体及び/又は液化剤を、含んでいない場合には、分散媒体及び/又は液化剤、例えば水、が添加される。続いて、その材料組成物は、成形体に成形され、この成形体は1,300℃を超える温度で焼結される。焼結後に、初めて、耐火成形体の耐熱衝撃性複合材が生ずる。セラミックス材料の焼結時又は使用中に、微粒子成分における酸化ジルコニウムから安定剤が取り除かれ、母材材料と共に安定剤のスピネル相及び/又はチタン酸塩相が生ずる。また、チタン酸ジルコニウム及び/又はチタン酸アルミニウムが形成される。酸化ジルコニウムの不安定化及び新たな相の形成は、結果的に、セラミックス母材中に、製造された耐火成形体の耐熱衝撃性を著しく向上させる、危険のない程度の、クラックを生じさせる。
【0028】
材料組成物がまだ分散媒体及び/又は液化剤を含んでいない場合に、始めに分散媒体及び/又は液化剤と微粒子成分との混合物が調製され、次いで、この混合物に粗粒子成分が混合されることによって、材料組成物への分散媒体及び/又は液化剤の添加が行われる。換言すれば、始めに微粒子成分の分散体が製造され、続いて、この分散体に粗粒子成分が混合される。
【0029】
特に粗粒子成分の少なくとも一部は、微粒子成分が焼結され又は溶融物から凝固され続いて破砕されることによって、微粒子成分に応じた材料組成物から生成することができる。
【0030】
成形するために、分散媒体及び/又は液化剤を含む材料組成物が、好適には多孔性型、例えば石膏型、に入れられる。
【0031】
材料組成物には、分散媒体及び/又は液化剤のほかに少なくとも1つの他の無機又は有機補助物質、例えば焼結促進補助相としてカ焼スピネル、が、成形前に混合される。
【0032】
また、本発明に基づく方法により、本発明に基づく組成に関して述べた利点を耐火成形体において実現することができる。
【0033】
例えば高温ガス反応器における耐火成形体、冶金工業における浸漬注ぎ口、スライダ板、流出ノズル等として形成できる本発明に基づく耐火成形体は、本発明に基づく材料組成物から製造され、本発明に基づく材料組成物に基づいて得られる利点を有する。これは、特にガスタービン燃焼器のための遮熱要素である。即ち、本発明に基づく耐火成形体によって、従来技術に比べて長い寿命の高温ガスライニングが製造できる。
【0034】
本発明に基づいて、材料組成物は、耐火成形体の製造のほかに、例えば冶金工業における大釜や分配機の耐火内張り材料としても利用できる。
【0035】
本発明の他の特徴、特性及び利点は、以下の添付図を参照した実施例の詳細から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に基づく耐火成形体の概略図。
【図2】耐火成形体の本発明に基づく製造方法の工程図。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0037】
図1は、本発明に基づく耐火成形体の実施例として、ガスタービン燃焼器のための遮熱要素を概略的に示している。図1に示された遮熱要素1は、燃焼器内部の側に面する高温側面3、燃焼器の支持構造物の側に面する低温側面5及び4つの周囲面7を有している。周囲面7のうちの2つに、遮熱要素1を支持構造物に保持する保持クランプのかみ合いを可能とする溝9が、存在している。溝9を必要としない、異なった保持方式を利用することも勿論できる。例えば、遮熱要素1の低温側面5は、支持構造物にねじ止めすることができる。
【0038】
次に、本発明に基づく材料組成物を利用した、図1に示された遮熱要素の製造方法を、その方法の概略工程図を示した図2を参照して、説明する。
【0039】
図2に示された方法の出発点は、微粒子成分と粗粒子成分とを有する材料組成物にある。この実施例において、微粒子成分は0.1μm〜10μmの範囲の粒度を有している。これは、基本的には100μmまでの粒度でもよい。粗粒子成分は、100μm〜6mmの範囲の粒度を有している。
【0040】
この実施例の微粒子成分は、主に3つの酸化物、即ち、酸化アルミニウム(Al23)、酸化ジルコニウム(ZrO2)及び二酸化チタン(TiO2)、から成り、この実施例2において、酸化アルミニウムは、微粒子成分の95%の重量含有率を占めている。残りの2つの酸化物は、微粒子成分において、それぞれ2.5%の重量含有率を占めている。この実施例において、二酸化ジルコニウムは、その結晶構造が酸化マグネシウム(MgO)で部分安定化されている。この部分安定化は、酸化マグネシウムに基づく代わりに又はそれに加えて、酸化イットリウム(Y23)、酸化セリウム(CeO2)又は酸化カルシウム(CaO)に基づいて、生じさせることができる。なお、必ずしも、前もって完全に又は部分的に安定化された二酸化ジルコニウムを利用する必要がないことを指摘しておく。その代わりに単斜晶二酸化ジルコニウムを利用すること及び安定剤材料を微粒子成分の固有成分として考慮することもできる。安定剤が固有成分として添加されるか二酸化ジルコニウムが安定剤で前もって完全に又は部分的に安定化されているかとは無関係に、微粒子成分における安定剤の重量含有率は、0.01〜0.1%である。
【0041】
この実施例の枠内で、特に粗粒子成分を微粒子成分から製造することができる。そのために、微粒子成分に応じた組成物を溶融することができる。その溶融物は、凝固後に破砕して粗粒子成分にされる。代わりに、混合物を焼結し、生成された焼結体を破砕して粗粒子成分にすることによって、粗粒子成分を微粒子成分に相応した混合物から製造することもできる。溶融工程又は焼結工程で製造された粗粒子成分は、また、事前合成粗粒子成分と呼ばれる。粗粒子成分は、これが微粒子成分から製造されたときに、重量含有率において微粒子成分と同じ組成を有するので、この重量含有率は、総材料組成物、即ち、微粒子成分及び粗粒子成分、における重量含有率に相当する。
【0042】
所定の組成の事前合成粗粒子成分を利用する代わりに、微粒子成分と同じ組成又は異なった組成の酸化アルミニウムに基づく粗粒子成分を利用することもできる。例えば、微粒子成分の組成に相応するか異なった組成の、事前製造された、酸化アルミニウムに基づく中空球構造を、粗粒子成分として利用することができる。本発明に基づく材料組成物の枠内で、事前合成粗粒子成分と、例えば中空球構造と、の混合物の利用も可能である。
【0043】
新たに開発されたセラミックス材料は、本発明に基づいて、成形製品又は未成形製品として、冶金工業、自動車工業、ガラス・セメント工業及び化学工業に採用できる。そのセラミックス材料は、例えば冶金工業において、浸漬注ぎ口、流出ノズル又はスライダ板として、採用でき、又は大釜や分配機における内張り材料として、採用できる。また、そのセラミックス材料は、本発明に基づいて、高温ガスろ過における多孔性フィルタ体として採用できる。
【0044】
次に上述した微粒子成分を有する本発明に基づく材料組成物に対する3つの具体例を説明する。
【0045】
1.事前焼結された粗粒子成分(破砕粒子)を有する材料組成物
この具体例において粗粒子成分として事前合成粗粒子成分が利用され、その材料組成物は、種類及び重量含有率において微粒子成分のそれに相当する。その材料組成物は、以下の組成を有する(重量含有率で表示)。
微粒子成分:粒度0.8μm〜3μm=20%;
粗粒子成分:粒度0.2mm〜5mm=40%;
粒度0.5mm〜1mm=13%;
粒度1mm〜2mm=14%;
粒度2mm〜3mm=12%;
液化剤: 1%。
【0046】
耐火成形体に対する製造工程の枠内における分散媒体の添加後、発生軟泥は(本来の材料組成物の総重量に対して)4〜8%の含水率を有する。
【0047】
2.粗粒子成分として中空球コランダムを有する材料組成物
第2例において事前合成粗粒子成分の代わりに中空球コランダム、即ち、酸化アルミニウムから成る中空球構造が利用される。その材料組成物は、以下の組成を有する(重量含有率で表示)。
微粒子成分: 粒度0.8μm〜3μm=39%;
中空球コランダム: 粒度0.5mmまで=30%;
粒度0.5mm〜1mm=15%;
粒度1mm〜2mm=15%;
液化剤: 1%。
【0048】
耐火成形体の製造工程の枠内における分散媒体の添加後、発生した軟泥は(本来の材料組成物の総重量に対して)4〜10%の含水率を有する。
【0049】
3.事前合成粗粒子成分と板状アルミナとを有する材料組成物
この例において材料組成物は、微粒子成分及び事前合成粗粒子成分のほかに、他の粗粒子成分として板状アルミナを有する。その材料組成物は、以下のとおりである(重量含有率で表示)。
微粒子成分: 粒度0.8μm〜3μm=20%;
事前合成粗粒子成分: 粒度0.2mm〜0.5mm=5%;
粒度0.5mm〜1mm=10%;
粒度1mm〜2mm=14%;
粒度2mm〜3mm=12%;
板状アルミナ: 粒度0.2mm〜0.6mm=34%;
粒度0.5mm〜1mm=5%;
液化剤: 1%。
【0050】
耐火成形体の製造工程の枠内における分散媒体の添加後、これは微粒子成分と粗粒子成分(事前合成粗粒子成分と板状アルミナとを含む)とから成る本来の材料組成物に対して4〜8%の含水率を有する。
【0051】
微粒子成分、事前合成粗粒子成分及び板状アルミナに基づく材料組成物の異なった組成は、次のとおりである(重量含有率で表示)。
微粒子成分: 粒度0.8μm〜3mm=30%;
事前合成粗粒子成分: 粒度0.2mm〜0.5mm=5%;
粒度0.5mm〜1mm=10%;
粒度1mm〜2mm=10%;
粒度2mm〜3mm=10%;
板状アルミナ: 粒度0.2mm〜0.6mm=10%;
粒度0.5mm〜1mm=24%;
液化剤: 1%。
【0052】
この組成物も耐火成形体の製造工程の枠内における分散媒体の添加による軟泥の製造後、微粒子成分及び粗粒子成分(事前合成粗粒子成分と板状アルミナを含む)に対して4〜8%の含水率を有する。
【0053】
なお注記するに、全ての具体例において材料組成物が液化剤を含んでいる必要はない。これは耐火成形体の製造方法の枠内で添加され得る。材料組成物が既に液化剤を含んでいる場合、これは、それぞれの材料組成物の総質量に対して0.1〜1%の重量含有率を有している。
【0054】
本発明に基づく材料組成物は、本発明に基づく方法に応じて耐火成形体に次のように加工される。
【0055】
図2に示された方法の始めに、微粒子成分が、これに分散媒体、例えば水、が添加されることによって調製される(工程11)。調製された微粒子成分に続いて粗粒子成分が添加される(工程13)。更に、この工程において利用材料組成物がまだ液化剤を含んでいない場合には、液化剤を添加することができる。無機質/有機質の他の補助物質を添加することもできる。その生成物は、成形工程に送られる軟泥又は造形し易い素地又は粒子である。
【0056】
成形法(工程15)としては、成形体の製造を可能とする、特に注型成形法、射出成形法又はプレス成形法が、考えられる。好適には、微粒子成分と粗粒子成分とを効果的に混合するため、及び、薄肉又は厚肉の複雑な形状を製造するために適した無結合剤成形法として、例えば石膏に基づく、多孔性型における圧力下若しくは負圧下又は無圧下での軟泥注型成形法が使われる。
【0057】
成形体は、続いて1,550℃を超える温度で焼結される(工程17)。焼結時又はセラミックス材料の使用中、微粒子成分の粒子から二酸化ジルコニウムの安定剤(即ち、この実施例では酸化マグネシウム)が取り除かれる。その結果、母材材料と共にスピネル相及び/又はチタン酸マグネシウムが生ずる。更には、チタン酸ジルコニウム相及び/又はチタン酸アルミニウム相が形成される。二酸化ジルコニウムの不安定化及び新たな相の形成は、結果的に、セラミックス母材に、耐熱衝撃性を著しく向上させる、危険のない程度の、クラックを生じさせる。
【0058】
上述した方法は、特に図1に関連して述べた遮熱要素を製造するために、利用できる。
【0059】
本発明は、大容積の密実部品又は中空部品の製造に関して、上述した微粒子粉末問題及びセメント−、リン酸塩−、又は水酸化アルミニウム−結合剤の添加により生ずる化学的欠点を解消した耐食性の酸化アルミニウム材料を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒度が100μm未満の微粒子成分と粒度が100μmを超える粗粒子成分とを有する、耐火材料を製造するための材料組成物であって、
前記微粒子成分が、
−微粒子成分の総重量に対する重量含有率が少なくとも90%の、粒度が50nm〜100μmの、酸化アルミニウムと、
−微粒子成分の総重量に対する重量含有率が5%までの、粒度が50nm〜20μmの、酸化ジルコニウムと、
−酸化ジルコニウムのための安定剤と、
−微粒子成分の総重量に対する重量含有率が5%までの、粒度が50nm〜20μmの、酸化チタン粉末と、
を含有してなり、
前記粗粒子成分が材料組成物に対して30%以上の重量含有率を占め、酸化アルミニウムに基づく破砕粒子及び/又は酸化アルミニウムに基づく中空球構造を含有している、
材料組成物。
【請求項2】
前記酸化ジルコニウムが安定剤で部分的に又は完全に安定化されている請求項1に記載の材料組成物。
【請求項3】
前記酸化ジルコニウムが単斜晶酸化ジルコニウムであり、前記安定剤が前記微粒子成分の固有成分として存在している請求項1に記載の材料組成物。
【請求項4】
前記安定剤として酸化マグネシウム及び/又は酸化イットリウム及び/又は酸化セリウム及び/又は酸化カルシウムが存在している請求項1から3のいずれか1項に記載の材料組成物。
【請求項5】
前記粗粒子成分が材料組成物の60〜80%の重量含有率を占めている請求項1から4のいずれか1項に記載の材料組成物。
【請求項6】
前記粗粒子成分が前記微粒子成分と同じ組成を有している請求項1から5のいずれか1項に記載の材料組成物。
【請求項7】
前記破砕粒として溶融物から凝固し破砕され又は焼結され破砕された微粒子成分に基づく破砕粒が存在し、その焼結された破砕粒が1,300℃を超える温度で焼結されている請求項6に記載の材料組成物。
【請求項8】
分散媒体及び/又は液化剤を含んでいる請求項1から7のいずれか1項に記載の材料組成物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の材料組成物を利用する耐火成形体(1)の製造方法であって、
−前記材料組成物がまだ分散媒体及び/又は液化剤を含んでいない場合に、該材料組成物に分散媒体及び/又は液化剤が添加され、
−該材料組成物が成形体に成形され、
−該成形体が1,300℃を超える温度で焼結される、
耐火成形体の製造方法。
【請求項10】
始めに分散媒体及び/又は液化剤と微粒子成分との混合物が調製され、次いで、この混合物に粗粒子成分が混合されることによって、材料組成物への分散媒体及び/又は液化剤の添加が行われる請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記粗粒子成分の少なくとも一部が、前記微粒子成分が焼結され又は溶融物から凝固され続いて破砕されることによって、予め微粒子成分から製造されている請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記成形体を成形するために、分散媒体を含有する材料組成物が多孔性型に入れられる請求項9から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
材料組成物の成形前に、分散媒体のほかに少なくとも1つの他の無機又は有機補助物質が混合される請求項9から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から8のいずれか1項に記載の材料組成物から製造されている耐火成形体(1)。
【請求項15】
遮熱要素(1)、冶金工業における浸漬注ぎ口、スライダ板、流出ノズルのいずれかの要素として形成されている請求項14に記載の耐火成形体。
【請求項16】
請求項1から8のいずれか1項に記載の材料組成物が耐火内張り材料として利用されている材料の利用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−504087(P2012−504087A)
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−528263(P2011−528263)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055828
【国際公開番号】WO2010/034529
【国際公開日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】