説明

耐火被覆構造及び該耐火被覆構造の施工方法

【課題】長時間高温にさらされた場合であってもその形状保持性に優れ、燻りの発生及び
進行を抑制できる耐火被覆構造を提供すること。
【解決手段】
木質の構造体本体に、熱膨張性耐火被覆材を被覆する構造であって、
前記熱膨張性耐火被覆材は、無機繊維55〜85重量%、熱膨張性無機物5〜30重量
%、無機質バインダー5〜25重量%および有機質バインダー5〜15重量%からなり、
前記熱膨張性耐火被覆材に含まれる前記無機質バインダーは、融点が650〜1000
℃の範囲である焼結性無機質材からなることを特徴とする耐火被覆構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質構造体の耐火被覆構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等、木造建築物の耐火構造の設計では、「木質構造材の断面がある程度あれ
ば表層が炭化することによる断熱効果で芯まで燃えることがない」といういわゆる「燃え
代」を設けた設計が知られている。
このような従来の「燃え代」分を付加した断面積設計や、構造体の表面にさらに木材を
被覆させる2重構造による設計で構成された木造建築物をもってしても前記耐火構造は十
分とはいえない場合があった。
具体的には森林火災等における延焼においても観察される様に、実際の火災の際には木
造建築物本体に炭化が進行する際のいわゆる「燻り」の現象が発生することが問題となる。
この様な燻りの発生及び進行を抑制できる耐火被覆構造として、熱可塑性樹脂等を含有
する熱膨張性耐火被覆材を備えた耐火被覆構造が提案されている(特許文献1)。
【0003】
この一方、ロックウール50〜90重量%、熱膨張性無機粉末5〜25重量%、焼結性
無機質材5〜10重量%および有機質バインダー2〜10重量%の組成物の水分スラリー
を湿式抄造して得られる熱膨張性無機質繊維フェルトがこれまでに提案されている。
この熱膨張性無機質繊維フェルトは火災等による熱を受ける前と受けた後ではその形状
が大きく変化する。このため火災等の熱により前記熱膨張性無機質繊維フェルトが膨張し
た後であっても、膨張後の前記熱膨張性無機質繊維フェルトが容易に崩れ落ちたりしない
様に、前記熱膨張性無機質繊維フェルトには焼結性無機質材が必須の構成要素とされてい
る。
この焼結性無機質材は、前記ロックウールと火災等の熱により焼結一体化する。この焼
結一体化により膨張後の前記熱膨張性無機質繊維フェルトが短時間の間に崩れ落ちたりす
ることを防止することができる。
このことから前記熱膨張性無機質繊維フェルトを、耐火性シール材等に応用することが
できるとされる(特許文献2)。
【特許文献1】特開2003−293482号公報
【特許文献2】特開2000−199194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記に説明した熱可塑性樹脂等を含有する熱膨張性耐火被覆材に替えて、
単に前記熱膨張性無機質繊維フェルトを使用すると問題が生じた。
すなわち、前記熱膨張性無機質繊維フェルトの場合の様に、融点が75℃のホウ砂等や、あるいは融点が1300℃を超えるセピオライト等の焼結性無機質材を前記熱膨張性無機質繊維フェルトに使用した場合には、火災等の熱により前記熱膨張性無機質材料が十分に膨張する前に前記焼結性無機質材と前記無機繊維とが焼結一体化してしまったり、逆に前記熱膨張性無機質材料が十分に膨張した後になっても、前記焼結性無機質材と前記無機繊維とが十分に焼結一体化しないことがあり、長時間高温にさらされた場合の形状保持性が未だ十分ではないとの問題があった。
【0005】
本発明の目的は、長時間高温にさらされた場合であってもその形状保持性に優れ、燻り
の発生及び進行を抑制できる耐火被覆構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は前記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、融点が650〜1000℃
の範囲であるという、特定の融点を有する焼結性無機質材を含む下記の熱膨張性の耐火被
覆材を備えた耐火被覆構造が本発明の目的に適うことを見出し、本発明を完成するに至っ
た。
【0007】
すなわち本発明は、
[1]木質の構造体本体に、熱膨張性耐火被覆材を被覆する構造であって、
前記熱膨張性耐火被覆材は、無機繊維55〜85重量%、熱膨張性無機物5〜30重量
%、無機質バインダー5〜25重量%および有機質バインダー5〜15重量%からなり、
前記熱膨張性耐火被覆材に含まれる前記無機質バインダーは、融点が650〜1000
℃の範囲である焼結性無機質材からなることを特徴とする耐火被覆構造を提供するもので
あり、
[2]前記熱膨張性耐火被覆材に含まれる前記無機質バインダーは、二酸化ケイ素50〜
60重量%、酸化アルミニウム10〜20重量%、酸化カルシウム10〜20重量%、酸
化マグネシウム1〜10重量%および酸化ホウ素8〜13重量%を含有する焼結性無機質
材からなることを特徴とする、上記[1]に記載の耐火被覆構造を提供するものであり、
[3]前記熱膨張性耐火被覆材を、接着剤又は止め具のうち少なくともいずれか一方によって前記木質の構造体本体に固定することを特徴とする上記[1]または[2]に記載の耐火被覆構造の施工方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、長時間高温にさらされた場合であってもその形状保持性に優れ、燻り
の発生及び進行を抑制できる耐火被覆構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
最初に本発明の実施の形態1を図面を参照しながら説明する。
図1及び図2は、本発明の実施の形態1の耐火被覆構造を示すものである。なお、前記
従来例と同一乃至均等な部分については同一符号を付して説明する。
まず、構成から説明すると、この実施の形態1の耐火被覆構造では、木質の構造体本体
の施工例であって、前記構造体本体としての木質柱材3の周囲に、熱膨張性耐火被覆材2
が被覆されて耐火柱材1が構成されるものである。
【0010】
前記木質柱材3は、30cm×30cm角の木材からなり、前記熱膨張性耐火被覆材2
は、厚さが1.5〜3mmの範囲である。
【0011】
前記熱膨張性耐火被覆材2は、無機繊維、熱膨張性無機物、無機質バインダーおよび有
機質バインダーからなるものである。
最初に前記熱膨張性耐火被覆材に使用する無機繊維について説明する。
本発明に使用する無機繊維としては、例えば、セラミック繊維等を挙げることができる。
この様なセラミック繊維としては、例えば、具体的にはシリカアルミナ繊維、アルミナ
繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維等が挙げられる。
かかるセラミック繊維は、耐熱性の観点から融点が1300℃以上のものが好ましく、
1500℃以上のものであればさらに好ましい。
なお本発明において融点という場合、純物質等の様にその融点を明確に示す物質につい
てはその融点を意味し、混合物等の様にその融点を明確に示さないものについては、JI
S R3103−1に準じて測定された軟化点を意味するものとする。
【0012】
前記無機繊維は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0013】
本発明に使用する無機繊維の配合量は、前記熱膨張性耐火被覆材の重量を基準として、
55〜85重量%の範囲である。
前記無機繊維の配合量が55重量%未満の場合には断熱層の形状保持性が低下し、また
85重量%を超える場合には前記熱膨張性耐火被覆材の製造作業性が低下する。
本発明に使用する無機繊維の配合量は、60〜80重量%の範囲であれば好ましい。
【0014】
前記無機繊維の直径は、通常0.01〜100μmの範囲であり、好ましくは0.1〜
30μmの範囲である。また前記無機繊維はシランカップリング剤等の集束剤により複数
の繊維を一本にまとめたものを使用することができる。
【0015】
前記無機繊維を得るための製造方法に限定はないが、例えば、この無機繊維の原料を軟
化させて線引きして得られた繊維を巻き取るロッド法、溶融させた前記原料をノズルから
排出し、得られた繊維を巻き取るポット法、有機溶剤に溶かした前記原料の前駆体を繊維
状にし、これをプレカーサーとして焼結して得られた繊維を巻き取る前駆ポリマー法等の
方法等を挙げることができる。これらの無機繊維として市販品を入手することができる。
【0016】
本発明に使用する無機繊維は、例えば、直線状のセラミック繊維を切断して得られたも
の、直線状のセラミック繊維を粉砕して得られたもの等を挙げることができる。
上記の直線状のセラミック繊維を切断して得られたものはチョップド無機繊維として市
販品を入手することができ、上記の直線状のセラミック繊維を粉砕して得られたものはミ
ルド無機繊維として市販品を入手することができる。
これらの無機繊維は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0017】
次に本発明に使用する熱膨張性無機物について説明する。
前記熱膨張性無機化合物としては、加熱時に膨張するものであれば特に限定はないが、
例えば、バーミキュライト、カオリン、マイカ、熱膨張性黒鉛等が挙げられる。これらの
中でも発泡開始温度が低いことから熱膨張性黒鉛が好ましい。
【0018】
前記熱膨張性黒鉛とは、従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラフ
ァイト、キッシュグラファイト等の粉末を濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたもので、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物である。
【0019】
上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和したものを使用するのが好ましい。
【0020】
上記脂肪族低級アミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメ
チルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。
【0021】
上記アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物としては、例えば、カリウム、ナ
トリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
【0022】
前記熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュの範囲のものが好ましい。粒度が2
00メッシュより小さくなると、黒鉛の膨張度が小さく、十分な耐火断熱層が得られない
ことがあり、また、粒度が20メッシュより大きくなると、黒鉛の膨張度が大きいとい
う利点はあるが、前記熱膨張性耐火被覆材に保持されにくくなることがある。
【0023】
前記中和処理された熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、UCAR CARBON
社製「GRAF GUARD」、東ソー社製「GREP−EG」等が挙げられる。
【0024】
前記熱膨張性無機物は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0025】
本発明に使用する熱膨張性無機物の配合量は、本発明に使用する前記熱膨張性耐火被覆
材の重量を基準として、5〜30重量%の範囲である。
前記熱膨張性無機物の配合量が5重量%未満の場合には燃焼後の膨張体積が少なく、十
分な耐火断熱層が得られない。また30重量%を超える場合には膨張後の前記熱膨張性耐
火被覆材の強度が低下する。
本発明に使用する熱膨張性無機物の配合量は、10〜25重量%の範囲であれば好まし
い。
【0026】
次に本発明に使用する無機質バインダーについて説明する。
本発明に使用する無機質バインダーとしては、例えば、焼結性無機質材等を挙げること
ができる。
この焼結性無機質材の具体例としては、例えば、電気絶縁性ガラス等を例示することが
できる。
【0027】
前記電気絶縁性ガラスとしては、具体的には二酸化ケイ素が50〜60重量%、酸化ア
ルミニウムが10〜20重量%、酸化カルシウムが10〜20重量%、酸化マグネシウム
が1〜10重量%、酸化ホウ素が8〜13重量%等の範囲で含まれるEガラスと呼ばれる
もの等を挙げることができる。
【0028】
本発明に使用する焼結性無機質材は、鉛金属塩およびアルカリ金属酸化物含有量が前記
焼結性無機質材の重量に対してそれぞれ1重量%未満のものであれば好ましい。
前記鉛金属塩としては、例えば、PbO、PbO、Pb等を挙げることができ
る。
また前記アルカリ金属酸化物としては、例えば、NaO、KO等を挙げることがで
きる。
【0029】
本発明に使用する焼結性無機質材の中でも前記Eガラスは、アルカリ金属酸化物含有量
が少なく、防・耐火パネルからなる防火戸等に対する影響が少ないことから好ましい。
【0030】
本発明に使用する焼結性無機質材は、650〜1000℃の範囲の融点を有するもので
ある。
これにより、本発明に使用する前記熱膨張性耐火被覆材が火災等の熱により膨張した後
であっても前記熱膨張性耐火被覆材に含まれる無機繊維等を一体のまとまりのある形状に
保つことができることに加え、長時間高温にさらされた場合であってもその形状保持性が
維持される。
前記融点が650℃未満の場合には、火災等の熱により、前記熱膨張性耐火被覆材が十
分に膨張する前に前記焼結性無機質材と前記無機繊維とが焼結一体化するため、長時間高
温にさらされた場合の形状保持性に劣る。また前記融点が1000℃を超える場合には、
前記熱膨張性耐火被覆材が十分に膨張した後になっても、前記焼結性無機質材と前記無機
繊維とが十分焼結一体化しないことがあり、同様に長時間高温にさらされた場合の形状保
持性に劣る。
前記融点の範囲は700〜900℃であれば好ましく、750〜850℃の範囲であれ
ばさらに好ましい。
【0031】
所望の融点を有する前記焼結性無機質材は、前記焼結性無機質材に含まれる成分の調整
を行なうことにより得ることができる。
例えば、具体的には前記Eガラスの場合であれば、二酸化ケイ素が55重量%、酸化ア
ルミニウムが15重量%、酸化カルシウムが15重量%、酸化マグネシウムが5重量%、
酸化ホウ素が10重量%等含まれる場合、その融点は700℃である。
【0032】
このEガラスに対し、その中に含まれる酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の量を増
加させることにより、このEガラスに含まれる二酸化ケイ素等の共有結合の割合を減少さ
せることができることから、前記Eガラスの融点を700℃以下に下げることができる。
【0033】
逆に、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の量を減少させることにより、このEガラ
スに含まれる二酸化ケイ素等の共有結合の割合を増加させることができることから、前記
Eガラスの融点を700℃以上に上げることが可能となる。
【0034】
本発明に使用する焼結性無機質材の配合量は、本発明に使用する前記熱膨張性耐火被覆
材の重量を基準として、5〜25重量%の範囲である。
前記焼結性無機質材の配合量が5重量%未満の場合または25重量%を超える場合には、前記熱膨張性耐火被覆材が長時間高温にさらされた場合、その形状保持性が低下する。
本発明に使用する焼結性無機質材の配合量は、10〜15重量%の範囲であれば好まし
い。
【0035】
前記焼結性無機質材の形状には特に限定はないが、例えば、繊維形状体、繊維形状体が
絡み合ったウール形状体、粉体形状体等を挙げることができる。
【0036】
前記焼結性無機質材として繊維形状体を使用する場合には、前記繊維の直径は、通常0.01〜100μmの範囲であり、好ましくは0.1〜30μmの範囲である。この場合、前記繊維形状体はシランカップリング剤等の集束剤により複数の繊維を一本にまとめたものを使用することができる。
【0037】
この様な繊維形状体を得る方法としては特に限定はないが、例えば、この焼結性無機質
材の原料を軟化させて線引きして得られた繊維を巻き取るロッド法、溶融させた前記原料
をノズルから排出し、得られた繊維を巻き取るポット法等の方法等を挙げることができる。これらの方法により得られたもの等を市販品として入手することができる。
【0038】
また、前記焼結性無機質材として粉体形状体を使用する場合には、前記粉体状体の平均
粒径は、通常5〜500μmの範囲である。前記粉体状体は通常市販品として入手するこ
とができる。
【0039】
前記焼結性無機質材は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0040】
次に本発明に使用する有機質バインダーについて説明する。
本発明に使用する有機質バインダーに特に限定はないが、例えば、具体的にはポリプロ
ピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ(1−)ブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂等
のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレ
ン系樹脂、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹
脂、エチレン−プロピレン樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹
脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂類、
天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2−ポリ
ブタジエンゴム(1,2−BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレン
ゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン
ゴム(EPR、EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、アクリルゴム(
ACM、ANM)、エピクロルヒドリンゴム(CO、ECO)、多加硫ゴム(T)、シリ
コーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM、FZ)、ウレタンゴム(U)等のゴム類、
ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネート樹脂、ポリイソシアヌレート樹脂、フェノール
樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂類、
上記熱可塑性樹脂類、ゴム類等のラテックス類、
上記熱可塑性樹脂類、ゴム類等のエマルション類等を挙げることができる。
【0041】
中でも取り扱い性の面等から、ゴム類のラテックス類、エチレン−酢酸ビニル樹脂、ア
クリル系樹脂エマルション等が好ましい。
【0042】
前記有機質バインダーは一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0043】
本発明に使用する有機質バインダーの配合量は、本発明に使用する前記熱膨張性耐火被
覆材の重量を基準として、5〜15重量%の範囲である。
有機質バインダーの配合量が5重量%未満の場合、前記熱膨張性耐火被覆材を製造する
作業性が低下する。また15重量%を超える場合には、前記熱膨張性耐火被覆材が長時間
高温にさらされた場合、その形状保持性が低下する。
本発明に使用する有機質バインダーの配合量は、5〜10重量%の範囲であれば好まし
い。
【0044】
また前記熱膨張性耐火被覆材に対しては、本発明の目的を損なわない範囲で、着色剤、
酸化防止剤、難燃剤、無機充填材、粘着剤等の各種添加剤を使用することができる。
【0045】
次に本発明に使用する前記熱膨張性耐火被覆材を製造する方法について説明する。
前記熱膨張性耐火被覆材の製造方法については特に限定はないが、例えば、前記熱膨張
性耐火被覆材の各成分を抄造法により板状形状、シート状形状とする方法、前記熱膨張性
耐火被覆材の各成分と有機溶剤との混合物を成形した後、有機溶剤を除去することにより
板状形状、シート形状とする方法等が挙げられる。
【0046】
中でも、均質な前記熱膨張性耐火被覆材を製造する観点から、抄造法による製造方法が
好ましく、この抄造法による製造方法の中でも吸着成形法による製造方法がさらに好まし
い。
【0047】
代表的な抄造法による前記熱膨張性耐火被覆材の製造方法としては、例えば、次の工程
による製造方法を挙げることができる。
(1)先に説明した本発明に使用する前記熱膨張性耐火被覆材の各成分を、ミキサーやミ
ル等の装置を用いて溶剤に分散し、前記各成分の溶剤スラリーを調製する。
(2)前記溶剤スラリーをロートフォーマー等の抄造機により抄造し、所望の形状に成形
する。
(3)必要に応じて前記溶剤スラリーを吸引、圧縮、遠心、加熱、送風等の手段により溶
剤分を除去する。
以上の工程により、本発明に使用する前記熱膨張性耐火被覆材を得ることができる。
【0048】
次に吸着成形法による前記熱膨張性耐火被覆材の製造方法について説明する。
この吸着成形法の一実施態様について、図5を参照しつつ具体的な工程を挙げて例示す
ると次の通りである。
(1)例えば、前記熱膨張性耐火被覆材の各構成成分を溶解しない溶剤を準備しておき、
かかる溶剤中に前記熱膨張性耐火被覆材の各構成成分を懸濁させたスラリー8を準備して
おく。
(2)前記スラリー8を吸入するための枠体吸入口9と、前記枠体吸引口9の一方の側に
備えられた前記スラリー8から前記熱膨張性耐火被覆材の各構成成分を分離するための濾
過部材10と、前記濾過部材10を通して前記スラリー8から前記溶剤を回収するための
吸引装置11とを備えた吸着成形装置12により前記スラリーを吸引する。
(3)前記吸着成形装置12の前記枠体吸入口9から前記濾過部材10との間には、例え
ば、スラリー8に含まれる無機繊維を一方向に配向させるための仕切りを設けることがで
きる(図示せず。)。この仕切りは各区画の一辺が他辺に比べて十分に長く設けられてい
るため、吸引成形装置12の内部においてこの長い辺の方向に沿って無機繊維13が順次
前記濾過部材10側から堆積する。
なお説明の便宜上、図1においては無機繊維の長さは実際よりも長く描かれている。
前記仕切りは吸引操作終了後、もしくは吸引操作を行いながら前記枠体吸引口9から抜
き取ることにより、前記吸着成形装置12の内部には前記無機繊維が一定方向に略配向し
た濾過物が形成される。
(4)吸引後、得られた濾過物に含まれる溶剤を吸引、圧縮、遠心、加熱、送風等の手段
により除去する。
(5)続いて切断等の手段を用いて、所望の形状に成形することができる。
以上の工程により、本発明に使用する前記熱膨張性耐火被覆材を得ることができる。
【0049】
前記濾過部材としては、例えば、濾紙、濾布、フィルター、金属メッシュ等を有するも
の等を挙げることができる。
前記濾過部材は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0050】
前記枠体吸入口の形状を適宜選択することにより、所望の形状の前記熱膨張性耐火被覆
材を得ることができる。
【0051】
なお前記溶剤は、前記熱膨張性耐火被覆材の各種成分を溶解しないものが好ましく、例
えば、水、メタノール等を挙げることができる。これらの中でも取り扱い性の面から、前
記溶剤は水であることが好ましい。
【0052】
上記の操作により前記スラリーを吸引する際に、吸引方向に無機繊維の配向方向を揃え
ることができ、前記熱膨張性耐火被覆材中に含まれる無機繊維を、前記熱膨張性耐火被覆
材の表面に対する法線方向に略配向させることができる。
前記無機繊維が前記熱膨張性耐火被覆材の表面に対する法線方向に略配向することによ
り、前記熱膨張性耐火被覆材は、前記熱膨張性耐火被覆材の厚み方向に比べて、前記熱膨
張性耐火被覆材の表面方向に大きく膨張する。
【0053】
これにより、前記熱膨張性耐火被覆材の一部に開口部や、前記木質板等の一部分に前記
熱膨張性耐火被覆材により覆われていない箇所があったとしても、これらの開口部や覆わ
れていない箇所を火災等の熱に基づく膨張により閉塞させることができる。
【0054】
また、前記有機溶剤との混合物を成形する方法の具体例としては、例えば、有機質バイ
ンダーが溶解する有機溶剤に、無機繊維、熱膨張性無機物、焼結性無機質材および有機質
バインダーを混合してパテ状混合物を作製し、成形機にて各種形状に成形した後、有機溶
剤を除去する方法が挙げられる。この方法によっても前記熱膨張性耐火被覆材を得ること
ができる。
【0055】
本発明に使用する前記熱膨張性耐火被覆材は、不燃性繊維材料からなるネット、不燃性
繊維材料からなるシートなどの一種もしくは二種以上により覆われていることが好ましい。
この様な不燃性繊維材料からなるネット、不燃性繊維材料からなるシート等としては、
例えば、無機繊維若しくは金属繊維状材料からなるものが好ましく、具体的には、ガラス
繊維の織布(ガラスクロス、コンティニュアスストランドマット等)若しくは不織布(チ
ョップドストランドマット等)、セラミック繊維の織布(セラミッククロス等)若しくは
不織布(セラミックマット等)、炭素繊維の織布若しくは不織布、ラス又は金網から形成
されるネット又はシート等が好適に用いられる。
【0056】
前記不燃性繊維状材料からなるネット等の1平方メートル当たりの重量は、25〜20
00gである。
1平方メートル当たりの重量が25g未満であると、膨張断熱層の形状保持性を向上さ
せる効果が低下することがあり、2000gを超えるとエポキシ樹脂組成物中に挿入する
のが困難になることがある。
【0057】
前記不燃性繊維状材料からなるネット等の厚みは、4mm以下が好ましい。
厚さが4mmを超えると、耐火シートを施工する際曲げ等の変形が困難になることがあ
る。
【0058】
前記不燃性繊維状材料からなるネットの場合には、その開き目は0.1〜50mmであ
ることが好ましい。開き目が0.1mm未満であると、設置作業性が低下することがあり、50mmを超えると膨張断熱層の形状保持性を向上させる効果が低くなることがある。
【0059】
前記不燃性繊維状材料からなるネット等の厚みが前記熱膨張性耐火被覆材の厚みより薄
い場合は、ネット又はシートの位置は前記熱膨張性耐火被覆材の厚み方向のいずれの位置
であってもよいが、火炎に曝される表面側であることが好ましい。
【0060】
前記不燃性繊維状材料からなるネット等を備えた前記熱膨張性耐火被覆材は、前記熱膨
張性耐火被覆材と、不燃性繊維状材料からなるネット等と一体化して成形することにより
得られる。
【0061】
図1に例示される様に、前記熱膨張性耐火被覆材の一方の面または両方の面には、施工
性や燃焼残渣の強度を改善する目的で基材層4が積層されていてもよい。
【0062】
この基材層4に用いられる材料としては、例えば、布、不織布、クラフト紙、プラスチ
ックフィルム、割布、ガラスクロス、アルミガラスクロス、アルミ箔、アルミ蒸著フィル
ム、アルミクラフト紙、及び、これらの材料の積層体等が挙げられる。好ましくは、ポリ
エチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム等のプラスチックフ
ィルム、又は、アルミクラフト紙、アルミガラスクロスである。また、前記基材層4の厚
みは、0.25mm以下が好ましい。
【0063】
前記熱膨張性耐火被覆材を耐火用途に用いる場合には、前記熱膨張性耐火被覆材を各種
木材の周囲に沿わせるように接着剤等で接着させるか、ビス又はタッカー等金属製の止め
具6で固定するか、又はその併用によって耐火柱材1,11を形成することが好ましい。
ビスを用いて固定させる場合には、ワッシャーを併用して固定することが好ましい。
【0064】
又、タッカーを用いて固定させる場合は、木質柱材3の炭化進行によりタッカーの木質
柱材に対する固定力が弱まるため、針の長いものを使用するか、千鳥打ちにて固定するこ
とが望ましい。
【0065】
また前記熱膨張性耐火被覆材を被覆する際、前記熱膨張性耐火被覆材同士の目地部分を
補う意味で目地を互いにして複層被覆してもよい。
【0066】
例えば、矩形の構造体の場合、下層を平板状の前記熱膨張性耐火被覆材によって4面被
覆したのち、L型状の前記熱膨張性耐火被覆材によって上層を被覆する構造、又は、寸法
の異なる2種類のL型状の前記熱膨張性耐火被覆材によって上層と下層で目地互いになる
ように被覆する構造がある。
【0067】
上記の方法で前記熱膨張性耐火被覆材を木質の構造体本体に被覆した後、更にその目地
部7を保護する上で、例えば、前記シートの目地部7に不燃性繊維状材料からなるネット
又はシート、無機繊維若しくは金属繊維状材料からなるもの、例えば、ガラス繊維の織布
(ガラスクロス、コンティニュアスストランドマット等)若しくは不織布(チョップドス
トランドマット等)、セラミック繊維の織布(セラミッククロス等)若しくは不織布(セ
ラミックマット等)、炭素繊維の織布若しくは不織布、ラス又は金網から形成されるネッ
ト又はシートをタッカー等金属製の止め具又は接着剤又はその併用によって保護固定する
ことが望ましい。
【0068】
目地を保護する場合、隣接貼設される耐火被複材2,2間の目地部分を覆う形で保護す
る方法と、耐火被覆材2によって被覆された構造材本体3の全周を覆う方法がある。
【0069】
また、前記樹脂組成物からなる熱膨張性耐火材を、構造材本体3の周囲に注状加工によ
って被覆した後、さらにその全周を覆うように、ガラスクロス等からなる上記材料のネッ
ト又はシートを取り付けて施工してもよい。
【0070】
前記接着剤には、公知の接着剤を用いることができる。例えば、酢酸ビニル樹脂系、ア
クリル樹脂系、ゴム系、エポキシ樹脂系、合成ゴム系、α-シアノアクリレート系等が可
能であるが、特にエポキシ樹脂系の2液混合型の接着剤は本発明で用いられる熱膨張性耐
火材及び不燃性繊維材料と木との相性が良く使用する接着剤として好ましい。
【0071】
次に、この実施の形態1の作用について説明する。
本発明は、木材の最も弱点である燻りを根本的に解消し、木造建築物の耐火構造体を実
現させ、さらにその被覆材として、耐火性能に優れかつ軽量で厚みが薄く施工性及び生産
性に優れ、コストパフォーマンスの高い耐火被覆構造及びその施工方法を提供し、これら
の耐火被覆構造及びその施工方法による木造の耐火建築物を実現させることにある。
【0072】
すなわち、従来、一般に、発泡耐火材料を金属製の支持シートに積層し、支持シート側
を木材に面する様に設け、継ぎ目を重ね合わせて止め具で固定する方法、又は突き合わせ
てその目地部分を同じ発泡耐火材料を加温させながら押し当てて閉塞していくという方法
が知られている。
【0073】
しかしながら、この様な方法では、金属製の支持シートが木材に面するため、加熱によ
る木材の収縮や炭化の進行による木材のやせ等により支持シートと木構造体の隙間が発生
し、火炎及び酸素流入が発生するという問題点がある。
【0074】
また、継ぎ目を重ね合わせるという方法は、表面に段差ができ仕上げ材等を施工する際
の妨げとなる。
【0075】
更に、突き合わせて目地部分を同じ発泡耐火材料を加温させながら閉塞していくという
方法は、施工性も良いとは言えず、一定の品質を確保するには困難な施工方法であるとい
える。
【0076】
その他、無機質系の難燃化液剤(防火塗料、耐火塗料)を塗布するあるいは含浸させる
方法があるが、これは被熱時に燃えにくくするという防火性能については効果が認められ
るものの、耐火構造としては1000℃近くの高温下で耐え得る性能を付与することは極
めて困難である。
【0077】
更に、熱膨張性の耐火被覆材を構造体に被覆させる際、何らかの目地部分の保護処理を
しなければ、被熱時に被覆材が膨張する際に目地部に割れや開き等が発生し、やはりそこ
から火炎及び酸素流入が発生し、長時間高温に晒されると炭化が進行し、被熱を中止して
も長時間に置いて燻り続け構造耐力を著しく低下させる場合がある。
【0078】
本発明は、上記従来技術の想定される問題を解決するためになされたものであって、そ
の目的とするところは、耐火被覆施工の作業性が良好で、施工作業環境も良好であると共
に、木材の最も弱点である燻りの発生及び進行を抑制出来る耐火被覆構造及びその施工方
法を提供し、更には、実現性のある耐火木造建築物を提供することである。
【0079】
すなわち、前記柱材1の周囲が昇温すると、木質柱材3の表面側周囲に被覆された熱膨
張性の耐火被覆材2,2が、膨張して、これらの耐火被覆材2,2の突き合わせ部分であ
る留め具6で止められた目地部7が閉塞される。
【0080】
このため、前記木質の構造体本体である木質柱材3まで、煙及び炎が到達しにくくなり、前記木質柱材3が燻られる虞が減少する。
【0081】
その際、前記熱膨張性耐火被覆材2に用いられる焼結性無機質材は熱膨張後の形状保持
性が優れている。
【0082】
また、不燃性繊維状材料からなるネット又はマットは、前記熱膨張性耐火被覆材の形状
保持性の向上に寄与し、前記熱膨張性耐火被覆材の厚みが増大した場合でも前記熱膨張性
耐火被覆材の脱落が防止される。
【0083】
前記熱膨張性耐火被覆材に不燃性繊維材料からなるネット又はマットが積層、及び/又
は前記熱膨張性耐火被覆材の一方の面または両方の面に基材層4が積層することにより、
膨張後の残渣保持力を更に向上させ断熱性、耐火性能の効果が更に向上する。
【0084】
上記基材層4には、通常単体では溶融してしまう温度であっても、前記熱膨張性耐火被
覆材に積層することにより、溶融せずに残渣の中または表面でその形状を保持する特性の
ものがあり、膨張後の残渣保持力を更に向上させることができ、断熱性能、耐火性能を更
に向上させる効果がある。
【0085】
また、前記熱膨張性耐火被覆材が、所望の形状に切断加工されて、これらの前記熱膨張
性耐火被覆材又は、目地部が、接着剤又は止め具のうち少なくともいずれか一方によって
固定されるので、施工が容易である。
【0086】
前記熱膨張性耐火被覆材を所望の形状に切断加工する際には、従来用いられていた石膏
ボードや珪酸カルシウム板等のように粉塵が発生する虞が無い。このため、作業環境を良
好なものとすることが出来る。
【0087】
更に、予め耐火被覆された構造材を大量生産することが出来るので、製造コストを減少
させることが出来ると共に、建物施工時の施工作業工程から、耐火被覆工程を減少させて、施工作業性を良好なものとすることができる。
【0088】
以下の実施例1及び2は、木質の構造部材の施工例であって、各図面に示される様に、
耐火被覆材2が構造用材料の周囲に被覆されている。
【0089】
前記構造用材料としての木質柱材3は、30cm×30cm角の木材からなり、前記熱
膨張性耐火被覆材2及び上、下層熱膨張性耐火被覆材2a,2bは、厚さが3mm及び1.5mmである。
前記熱膨張性耐火被覆材2及び2a,2bには、後述する参考例にて得られたものが用
いられている。
【0090】
以下、実施例により本発明の実施態様をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実
施例に限定されるものではない。
【0091】
・参考例1〜3
表1に示した配合比のセラミック繊維(新日化サーマルセラミックス社製「SCバルク
」)、熱膨張性黒鉛(東ソー社製「GREP−EG」)、ガラス繊維(旭ファイバーグラ
ス社製「グラスロンチョップドストランド」、Eガラス長繊維、繊維径:約10μm、繊
維長:約3mm)、ガラスウール(旭ファイバーグラス社製「グラスロンウール」、繊維
径:約4〜7μm)、アクリル樹脂系ラテックス(日本ゼオン社製「LX874」)の水
分散液を調整し、抄造法にて表1に記載のかさ密度、厚みを有する熱膨張性耐火被覆材を
作製した。
作製した前記熱膨張性耐火被覆材について、下記の性能評価を行った。参考例2および
3についても、表1に示した配合比にて実施例1の場合と同様に実施した。結果を表1に
まとめた。
【0092】
[膨張倍率・破断点応力の測定]
参考例1〜3により得られたサンプルを用いて、電気炉にて1000℃の温度にて一時
間加熱し、膨張倍率を加熱後の厚みの、加熱前の厚みに対する比(加熱後の厚み/加熱前
の厚み)としてそれぞれ算出した。
【0093】
また加熱膨張後の前記熱膨張性耐火被覆材の形状保持性の指標として、加熱後のサンプ
ルを圧縮試験機(カトーテック社製「フィンガーフィーリングテスター」)を用いて、0
.25cmの圧子で0.1cm/sの圧縮速度にて破断点応力を測定した。
【0094】
結果を表1に示す。
【0095】
なお、前記サンプルの破断点応力が、0.05kgf/cm以上であると、垂直に保
持させた状態において耐火試験を行ったとしても、加熱膨張後の前記熱膨張性耐火被覆材
の形状が崩れることなく耐火性能を十分に発揮することができる。
【0096】
【表1】

【0097】
・参考例4〜5
熱膨張性材料の作製
セラミック繊維(新日化サーマルセラミックス社製「SCバルク」)、熱膨張性黒鉛(
東ソー社製「GREP−EG」)、ガラス繊維(旭ファイバーグラス社製「グラスロンチ
ョップドストランド」、Eガラス長繊維、繊維径:約10μm、繊維長:約3mm)、ガ
ラスウール(旭ファイバーグラス社製「グラスロンウール」、繊維径:約4〜7μm)、
アクリル樹脂系ラテックス(日本ゼオン社製「LX874」)を、表2に示した配合比に
て水に分散させスラリーを調製した。幅300mm×長さ450mm×厚み30mmの金
型を用い、抄造法にて厚み方向から吸引(吸着成形法)して、無機繊維が略一定方向に配向
した所定のかさ密度の前記熱膨張性耐火被覆材を作製した後、無機繊維の配向方法と垂直
方向にスライスして、所定厚みの前記熱膨張性耐火被覆材を得た。
【0098】
[得られたサンプルの評価]
作製した前記熱膨張性耐火被覆材について、体積膨張倍率の評価を行った。
50mm角の前記熱膨張性耐火被覆材を電気炉にて1000℃の温度にて一時間加熱し
、幅・長さ・厚みを測定して、体積膨張倍率を加熱後の体積の、加熱前の体積に対する比
(加熱後の体積/加熱前の体積)として算出した。
【0099】
加熱後のサンプルは、主として繊維方向と平行になる方向に優先的に膨張するが、繊維
方向、すなわち厚み方向にも膨張が見られた。
【0100】
【表2】

【実施例1】
【0101】
図1及び図2に示す実施例1では、前記参考例で得られるシート状の3mm厚の前記熱
膨張性耐火被覆材2を使用することができる。
このシート状の前記熱膨張性耐火被覆材2を木質柱材3の各面の大きさにカットし、そ
れをエポキシ系接着剤にて貼付し、さらにコーナー部の耐火被覆材2,2の突き合わせ部
分である目地部7の近傍をタッカー6にて木質柱材3に固定し、柱材1を得る。
この耐火被覆構造は優れた耐火性を示す。
【実施例2】
【0102】
図3及び図4に示す実施例2では、前記参考例で得られるシート状の1.5mm厚の前
記熱膨張性耐火被覆材を、L字状とした上、下層熱膨張性耐火被覆材2a,2bを使用す
ることができる。
このL型に成形加工した前記熱膨張性耐火被覆材2a,2bを、目地が互い違いになる
ように、木質柱材3に、エポキシ系接着剤にて2重積層させ、前記熱膨張性耐火被覆材2
a,2bのそれぞれの突き合わせ部分である目地部7a,7bの近傍をタッカー6にて木
質柱材3に固定し、柱材1を得る。
この耐火被覆構造は優れた耐火性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の実施の形態1の耐火被覆構造及び耐火被覆構造の施工方法で、実施例1の柱材の要部の構成を説明する水平断面図である。
【図2】実施の形態1の耐火被覆構造及び耐火被覆構造の施工方法で、実施例1の柱材の側面図である。
【図3】本発明の実施の形態1の耐火被覆構造及び耐火被覆構造の施工方法で、実施例2の柱材の要部の構成を説明する水平断面図である。
【図4】実施の形態1の耐火被覆構造及び耐火被覆構造の施工方法で、実施例2の柱材の側面図である。
【図5】吸着成形法による熱膨張性耐火被覆材を製造するための装置の概略を示す模式要部断面図である。
【符号の説明】
【0104】
1 柱材(構造体)
2 耐火被覆材
2a,2b 上,下層耐火被覆材
3 木質柱材(構造材本体)
4 接着剤層
6 止め具
7,7a,7b 目地部
7a,7b 上下層目地部
8 スラリー
9 枠体吸引口
10 濾過部材
11 吸引装置
12 吸着成形装置
13 無機繊維
14 配管
15 スラリー槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質の構造体本体に、熱膨張性耐火被覆材を被覆する構造であって、
前記熱膨張性耐火被覆材は、無機繊維55〜85重量%、熱膨張性無機物5〜30重量
%、無機質バインダー5〜25重量%および有機質バインダー5〜15重量%からなり、
前記熱膨張性耐火被覆材に含まれる前記無機質バインダーは、融点が650〜1000
℃の範囲である焼結性無機質材からなることを特徴とする耐火被覆構造。
【請求項2】
前記熱膨張性耐火被覆材に含まれる前記無機質バインダーは、二酸化ケイ素50〜60
重量%、酸化アルミニウム10〜20重量%、酸化カルシウム10〜20重量%、酸化マ
グネシウム1〜10重量%および酸化ホウ素8〜13重量%を含有する焼結性無機質材か
らなることを特徴とする、請求項1に記載の耐火被覆構造。
【請求項3】
前記熱膨張性耐火被覆材を、接着剤又は止め具のうち少なくともいずれか一方によって
前記木質の構造体本体に固定することを特徴とする、請求項1または2に記載の耐火被覆
構造の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−31802(P2008−31802A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−209130(P2006−209130)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】