耐熱性菌類の検出方法
【課題】耐熱性菌類を特異的にかつ迅速に検出、識別できる方法を提供する。
【解決手段】耐熱性菌類のβ−チューブリン遺伝子及び28S rDNAに含まれる、特定な配列からなる塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつ耐熱性菌類の検出に使用できる塩基配列で表される核酸を用いる耐熱性菌類の検出方法。
【解決手段】耐熱性菌類のβ−チューブリン遺伝子及び28S rDNAに含まれる、特定な配列からなる塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつ耐熱性菌類の検出に使用できる塩基配列で表される核酸を用いる耐熱性菌類の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性菌類の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
耐熱性の菌類(真菌類)は自然界に広く分布し、野菜、果物等の農作物で繁殖し、これらの農作物を原材料とした飲食品を汚染する。しかも、耐熱性の菌類は通常の他の菌類に比べて高い耐熱性を有する。例えば酸性飲料の加熱殺菌処理を行ったとしても耐熱性菌類が生存、増殖し、カビの発生原因となることがある。このため、耐熱性菌類は重大な事故を引き起こす重要危害菌として警戒されている。
【0003】
加熱殺菌処理後の飲食品からも検出されることがある汚染事故の原因菌の主な耐熱性菌類として、ビソクラミス(Byssochlamys)属、タラロマイセス(Talaromyces)属、ネオサルトリア(Neosartorya)属及びハミゲラ(Hamigera)属に属する耐熱性菌類が知られている。子のう胞子を形成する他の耐熱性菌類と比べ、上記4属に属する菌類は耐熱性が突出して高く、加熱殺菌後に生存する可能性が高い。一方、上記4属以外の耐熱性菌類は、通常の殺菌条件で殺滅できるため、殺菌不良などが無い限りは汚染事故を引き起こす可能性は低い。従って、飲食品及びこれらの原材料中の耐熱性菌類による事故防止のためには、これら4属に属する耐熱性菌類の検出、識別が特に重要である。
さらに、危害事故発生時における事故原因究明及び対策のためには、事故原因菌の同定が必要となる。従って、上記4属の耐熱性菌類を識別することができれば、より迅速な事故原因菌の検出、識別が可能となる。
【0004】
一方、従来の耐熱性の菌類を検出、識別する方法としては、検体をPDA培地等で培養して検出、識別する方法がある。しかし、この方法ではコロニーが確認されるまでに約7日間を要する。しかも、菌種の同定は、菌の特徴的な器官の形態に基づいて行うので、形態学的な特徴が認められるまでさらに約7日間の培養を必要としている。したがって、この方法によると、耐熱性菌類の検出、識別に約14日間もの時間を要する。このように耐熱性菌類の検出、識別に長期間を要することは飲食品の衛生管理、原材料の鮮度確保、流通上の制約など観点から、必ずしも満足できるものではない。そのため、より迅速な耐熱性菌類の検出、識別方法の確立が求められている。
【0005】
菌類の迅速な検出、識別方法としては、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法を利用した検出方法が知られている(例えば、特許文献1〜4参照)。しかし、これらの方法では特定の耐熱性菌類を特異的にかつ迅速に検出することが困難であるという問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平11−505728号公報
【特許文献2】特開2006−61152号公報
【特許文献3】特開2006−304763号公報
【特許文献4】特開2007−174903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、飲食品汚染の主な原因菌である耐熱性菌類を特異的にかつ迅速に検出、識別しうる方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述のように耐熱性菌類の検出を困難にしている一因として、従来の公知のプライマーを用いたPCR法では擬陽性や擬陰性の結果が出ることが挙げられる。
本発明者等は、この問題を克服し特定の耐熱性菌類を特異的に検出・識別しうる新たなDNA領域を探索すべく、鋭意検討を行った。その結果、耐熱性菌類のβ−チューブリン遺伝子及び28S rDNAに、他の菌類のものとは明確に区別しうる、特異的な塩基配列を有する領域(以下、「可変領域」ともいう)が存在し、この可変領域をターゲットとすることで、上記耐熱性菌類を特異的かつ迅速に検出・識別できることを見い出した。本発明はこの知見に基づき完成するに至った。
【0009】
本発明は、ビソクラミス(Byssochlamys)属、タラロマイセス(Talaromyces)属、ネオサルトリア(Neosartorya)属、アスペルギルス フミガタス(Aspergillus fumigatus)及びハミゲラ(Hamigera)属からなる群から選ばれる少なくとも2つの菌類を検出する方法において、下記1)〜4)からなる群から選ばれる少なくとも2つの工程を含んでなる、耐熱性菌類の検出方法に関するものである。
1)下記の(A)の塩基配列で表される核酸を用いてビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の同定を行う工程、
2)下記の(B)〜(D)のいずれかの塩基配列で表される核酸を用いてタラロマイセス(Talaromyces)属に属する菌類の同定を行う工程、
3)下記の(E)〜(J)のいずれかの塩基配列で表される核酸を用いてネオサルトリア(Neosartorya)属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタス(Aspergillus fumigatus)の同定を行う工程、
4)下記の(K)の塩基配列で表される核酸を用いてハミゲラ(Hamigera)属に属する菌類の同定を行う工程
(A)配列番号24に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつビソクラミス属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列
(B)配列番号25に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列
(C)配列番号26に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列
(D)配列番号27に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列
(E)配列番号28に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列
(F)配列番号29に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列
(G)配列番号30に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列
(H)配列番号31に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列
(I)配列番号32に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列
(J)配列番号33に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列
(K)配列番号34に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつハミゲラ属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列
【0010】
また、本発明は、下記の群(1)〜(4)のオリゴヌクレオチド対から選ばれ、かつ互いに異なる群から選ばれた少なくとも2対のオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして含む耐熱性菌類検出用キットに関する。
(1)下記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド対
(a)配列番号1に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(2)下記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対、下記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対、下記(i)及び(h)のオリゴヌクレオチド対、下記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対、並びに下記(j)及び(k)のオリゴヌクレオチド対からなる群
(c)配列番号3に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(d)配列番号4に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(e)配列番号5に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(f)配列番号6に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(g)配列番号7に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(h)配列番号8に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(i)配列番号9に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(j)配列番号10に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(k)配列番号11に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(3)下記(l)及び(m)のオリゴヌクレオチド対、下記(n)及び(o)のオリゴヌクレオチド対、並びに下記(v)及び(w)のオリゴヌクレオチド対からなる群
(l)配列番号12に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(m)配列番号13に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(n)配列番号14に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(o)配列番号15に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(v)配列番号22に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(w)配列番号23に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(4)下記(p)及び(q)のオリゴヌクレオチド対、下記(r)及び(s)のオリゴヌクレオチド対、並びに下記(t)及び(u)のオリゴヌクレオチド対からなる群
(p)配列番号16に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(q)配列番号17に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(r)配列番号18に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(s)配列番号19に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(t)配列番号20に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(u)配列番号21に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、飲食品の汚染事故の主な原因菌である耐熱性菌類を特異的にかつ迅速に検出、識別しうる方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】アスペルギルス フミガタス、ネオサルトリア フィシェリ フィシェリ及びネオサルトリア フィシェリ スピノサのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列の一部を比較した図である。
【図2】ハミゲラ アベラネア及びクラドスポリウム クラドスポロイデスのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列を示す図である。
【図3】実施例1(A−1)におけるビソクラミス属に属する菌類の識別結果を示す電気泳動図である。
【図4】実施例1(A−2)におけるビソクラミス ファルバの各菌株を用いた電気泳動図である。
【図5】実施例1(A−2)におけるビソクラミス ニベアの各菌株を用いた電気泳動図である。
【図6】実施例1(B−1)におけるタラロマイセス属に属する菌類の識別結果を示す電気泳動図である。
【図7】実施例1(B−2)におけるタラロマイセス属に属する菌類の識別結果を示す電気泳動図である。
【図8】実施例1(B−2)におけるタラロマイセス属に属する菌類の識別の結果を示す電気泳動図である。
【図9−1】実施例1(B−3)における電気泳動図である。
【図9−2】実施例1(B−4)における電気泳動図である。
【図10】実施例1(B−5)におけるタラロマイセス フラバスの各菌株を用いた電気泳動図である。
【図11】実施例1(B−5)におけるタラロマイセス マクロスポラスの各菌株を用いた電気泳動図である。
【図12】実施例1(C−1)におけるネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスの識別結果を示す電気泳動図である。
【図13】実施例1(C−2)におけるネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスの識別結果を示す電気泳動図である。
【図14】実施例1(C−3)におけるネオサルトリア属に属する菌類とアスペルギルス フミガタスとの識別結果を示す電気泳動図である。
【図15】実施例1(C−3)におけるネオサルトリア属に属する菌類とアスペルギルス フミガタスとの識別結果を示す電気泳動図である。
【図16】実施例1(C−4)におけるネオサルトリア フィシェリ フィシェリの各菌株を用いた電気泳動図である。
【図17】実施例1(C−4)におけるネオサルトリア フィシェリ グラブラの各菌株を用いた電気泳動図である。
【図18】実施例1(C−4)におけるネオサルトリア ヒラツカエの各菌株を用いた電気泳動図である。
【図19】実施例1(C−4)におけるネオサルトリア パウリステンシスの各菌株を用いた電気泳動図である。
【図20】実施例1(C−4)におけるネオサルトリア フィシェリ スピノサの各菌株を用いた電気泳動図である。
【図21】実施例1(D−1)におけるハミゲラ属に属する菌類の識別結果を示す電気泳動図である。
【図22】実施例1(D−2)におけるハミゲラ属に属する菌類の識別結果を示す電気泳動図である。
【図23】実施例1(D−3)におけるハミゲラ属に属する菌類の識別結果を示す電気泳動図である。
【図24】実施例1(D−4)におけるハミゲラ ストリアータの各菌株を用いた電気泳動図である。
【図25】実施例1(D−5)におけるハミゲラ アベラネアの各菌株を用いた電気泳動図である。
【図26】実施例1(D−6)におけるハミゲラ属及びビソクラミス属に属する菌類を用いた電気泳動図である。
【図27】実施例1(D−6)におけるハミゲラ属及びビソクラミス属に属する菌類を用いた電気泳動図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、耐熱性菌類のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列及び/又は28S rDNAのD1/D2領域の塩基配列、すなわち耐熱性菌類のβ−チューブリン遺伝子領域及び/又は28S rDNAのD1/D2領域中における耐熱性菌類の各属に特異的な領域又は種特異的領域(可変領域)の塩基配列で表される核酸を用いて耐熱性菌類の同定を行い、耐熱性菌類を特異的に識別・検出する方法である。
より詳細には、本発明は下記1)〜4)の同定・検出工程の少なくとも2つを包んでなる耐熱性菌類の検出方法である。
1)ビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子領域中におけるビソクラミス属に特異的な領域(可変領域)の塩基配列で表される核酸を用いてビソクラミス属に属する菌類の同定を行い、ビソクラミス属に属する菌類を特異的に識別・検出する工程。
2)タラロマイセス属(Talaromyces)に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子領域及び/又は28S rDNAのD1/D2領域中におけるタラロマイセス属に特異的な領域又は種特異的領域(可変領域)の塩基配列で表される核酸を用いてタラロマイセス属に属する菌類の同定を行い、タラロマイセス属に属する菌類を特異的に識別・検出する工程。
3)ネオサルトリア(Neosartorya)属に属する菌類又はアスペルギルス フミガタス(Aspergillus fumigatus)のβ−チューブリン遺伝子領域中におけるネオサルトリア属及び/又はアスペルギルス フミガタスに特異的な領域又は種特異的領域(可変領域)の塩基配列で表される核酸を用いてネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの同定を行い、ネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスを特異的に識別・検出する工程。
4)ハミゲラ属(Hamigera)に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子領域中におけるハミゲラ属に特異的な領域又は種特異的領域(可変領域)の塩基配列で表される核酸を用いてハミゲラ属に属する菌類の同定を行い、ハミゲラ属に属する菌類を特異的に識別・検出する工程。
本発明の検出方法は、上記1)〜4)の同定・検出工程のうち少なくとも2つの工程を含んでなり、好ましくは上記1)〜4)の同定・検出工程のうち少なくとも3つの工程を含んでなり、より好ましくは上記1)〜4)の同定・検出工程のすべての工程を含んでなるものである。
【0014】
本発明における「耐熱性菌類」とは、ビソクラミス属に属する菌類、タラロマイセス属に属する菌類、ネオサルトリア属に属する菌類、アスペルギルス フミガタス及びハミゲラ属に属する菌類を意味する。これらの菌類はマユハキタケ科(Trichocomaceae)に属する不整子嚢菌類であり、75℃、30分間の加熱処理後であっても生存可能な子のう胞子を形成する耐熱性菌類である。ビソクラミス属に属する菌類の例として、ビソクラミス ファルバ(Byssochlamys fulva)、ビソクラミス ニベア(Byssochlamys nivea)が挙げられる。タラロマイセス属に属する菌類の例として、タラロマイセス フラバス(Talaromyces flavus)、タラロマイセス ルテウス(Talaromyces luteus)、タラロマイセス トラキスペルムス(Talaromyces trachyspermus)、タラロマイセス ウォルトマンニー(Talaromyces wortmannii)、タラロマイセス バシリスポラス(Talaromyces bacillisporus)、タラロマイセス マクロスポラス(Talaromyces macrosporus)が挙げられる。ネオサルトリア属に属する菌類の例として、ネオサルトリア フィシェリ スピノサ(Neosartorya fischeri var. spinosa;以下ネオサルトリア スピノサとする)、ネオサルトリア フィシェリ フィシェリ(Neosartorya fischeri var. fischeri;以下ネオサルトリア フィシェリとする)、ネオサルトリア フィシェリ グラブラ(Neosartorya fischeri var. glabra;以下ネオサルトリア グラブラとする)、ネオサルトリア ヒラツカエ(Neosartorya hiratsukae)、ネオサルトリア パウリステンシス(Neosartorya paulistensis)、ネオサルトリア シュードフィシェリ(Neosartorya peudofischeri)が挙げられる。ハミゲラ属に属する菌類の例として、ハミゲラ アベラネア(Hamigera avellanea)、ハミゲラ ストリアータ(Hamigera striata)が挙げられる。
本発明における「アスペルギルス フミガタス」とは、ネオサルトリア フィシェリのアナモルフ(無性世代)と形態学的に極めて類似しているがテレオモルフ(有性世代)を有さない不完全菌類の一種である。
【0015】
「β−チューブリン」とは微小管を構成する蛋白質であり、「β−チューブリン遺伝子」とは、β−チューブリンをコードする遺伝子である。また、本発明において、「可変領域」とは、β−チューブリン遺伝子中又は28S rDNAのD1/D2領域中で塩基変異が蓄積しやすい領域であり、この領域の塩基配列は真菌の属又は種間で大きく異なる。これらの菌類のβ-チューブリン遺伝子又は28S rDNAのD1/D2領域の可変領域は、これらの菌類固有の塩基配列であるため、他の菌類のものとは明確に区別しうるものである。
【0016】
本発明の検出方法は、下記の(A)〜(K)の塩基配列で表される核酸、すなわち耐熱性菌類のβ−チューブリン遺伝子中又は28S rDNAのD1/D2領域中の特定領域(可変領域)の塩基配列に対応する核酸を用いることを特徴とする。
【0017】
本発明の検出方法において、ビソクラミス属に属する菌類を検出するために下記の(A)の塩基配列で表される核酸、すなわちビソクラミス属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子中の特定領域(可変領域)の塩基配列に対応する核酸を用いる。
(A)配列番号24に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつビソクラミス属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列
発明者らは、ビソクラミス属に属する菌類及びビソクラミス属に属する菌類に近縁な菌類から種々のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列を同定し、ビソクラミス属と近縁な属とビソクラミス属との間、及びビソクラミス属内での遺伝的距離の解析を行った。さらに、決定した各種のβ−チューブリン遺伝子配列の相同性解析をおこなった。その結果、当該配列中にビソクラミス属に属する菌類に固有の塩基配列を有する可変領域を見出した。この可変領域において、ビソクラミス属に属する菌類は固有の塩基配列を有しているため、ビソクラミス属に属する菌類を識別・同定することが可能となる。
【0018】
本発明の検出方法において、タラロマイセス属に属する菌類を検出するために下記の(B)〜(D)のいずれかの塩基配列で表される核酸、すなわちタラロマイセス属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子中及び/又は28S rDNAのD1/D2領域中の特定領域(可変領域)の塩基配列に対応する核酸を用いる。
(B)配列番号25に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列
(C)配列番号26に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列
(D)配列番号27に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列
発明者らは、タラロマイセス属に属する菌類及びタラロマイセス属に属する菌類に近縁な菌類から種々のβ−チューブリン遺伝子及び28S rDNAのD1/D2領域の塩基配列を同定し、タラロマイセス属と近縁な属とタラロマイセス属との間、及びタラロマイセス属内での遺伝的距離の解析を行った。さらに、決定した各種のβチューブリン遺伝子配列及び28S rDNAのD1/D2領域の塩基配列の相同性解析をおこなった。その結果、当該配列中にタラロマイセス属に属する菌類に固有の塩基配列を有する可変領域を見出した。この可変領域において、タラロマイセス属に属する菌類は固有の塩基配列を有しているため、タラロマイセス属に属する菌類を識別・同定することが可能となる。
【0019】
本発明の検出方法において、ネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスを検出するために下記(E)〜(J)のいずれかの塩基配列で表される核酸、すなわちネオサルトリア属に属する菌類又はアスペルギルス フミガタスのβ−チューブリン遺伝子中の特定領域(可変領域)の塩基配列に対応する核酸を用いる。
(E)配列番号28に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列
(F)配列番号29に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列
(G)配列番号30に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列
(H)配列番号31に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列
(I)配列番号32に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列
(J)配列番号33に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列
発明者らは、ネオサルトリア属に属する菌類、アスペルギルス フミガタス及びネオサルトリア属に属する菌類に近縁な菌類から種々のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列を同定し、ネオサルトリア属と近縁な属とネオサルトリア属との間、ネオサルトリア属内及び、ネオサルトリア属と近縁な属やネオサルトリア属とアスペルギルス フミガタスとの間での遺伝的距離の解析を行った。さらに、決定した各種のβチューブリン遺伝子配列の相同性解析をおこなった。その結果、当該配列中にネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスに固有の塩基配列を有する可変領域を見出した。この可変領域において、ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスは固有の塩基配列を有しているため、ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスを識別・同定することが可能となる。
【0020】
本発明の検出方法において、ハミゲラ属に属する菌類を検出するために下記(K)の塩基配列で表される核酸、すなわちハミゲラ属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子中の特定領域(可変領域)の塩基配列に対応する核酸を用いることを特徴とする。
(K)配列番号34に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつハミゲラ属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列
発明者らは、ハミゲラ属に属する菌類及びハミゲラ属に属する菌類に近縁な菌類から種々のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列を同定し、ハミゲラ属と近縁な属とハミゲラ属との間、及びハミゲラ属内での遺伝的距離の解析を行った。さらに、決定した各種のβチューブリン遺伝子配列の相同性解析をおこなった。その結果、当該配列中にハミゲラ属に属する菌類に固有の塩基配列を有する可変領域を見出した。この可変領域において、ハミゲラ属に属する菌類は固有の塩基配列を有しているため、ハミゲラ属に属する菌類を識別・同定することが可能となる。
本発明は、これらの可変領域及び可変領域に由来する核酸、オリゴヌクレオチドをターゲットとしたものである。
【0021】
本発明の検出方法に用いる前記(A)の塩基配列は、ビソクラミス属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列に対応する。
配列番号24に記載の塩基配列及びその相補配列は、ビソクラミス ニベアから単離、同定されたβ−チューブリン遺伝子の可変領域の塩基配列である。当該配列はビソクラミス属に属する菌類に特異的であり、被検体がこの塩基配列を有しているか否かを確認することで、ビソクラミス属に属する菌類を特異的に識別・同定することが可能である。また、配列番号24に記載の塩基配列若しくはその相補配列において、1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつビソクラミス属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列で表される核酸を用いても、同様にビソクラミス属に属する菌類を特異的に識別・同定することが可能である。これらの塩基配列で表される核酸は、特にビソクラミス ニベア及びビソクラミス ファルバを検出するために好適に用いられる。
【0022】
本発明の検出方法に用いる前記(B)又は(C)の塩基配列は、タラロマイセス属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配に対応する。また、前記(D)の塩基配列は、タラロマイセス属に属する菌類の28S rDNAのD1/D2領域の可変領域の塩基配列に対応する。
配列番号25に記載の塩基配列及びその相補配列は、タラロマイセス フラバスから単離、同定されたβ−チューブリン遺伝子の可変領域の塩基配列である。当該配列はタラロマイセス属に属する菌類に特異的であり、被検体がこの塩基配列を有しているか否かを確認することで、タラロマイセス属に属する菌類を特異的に識別・同定することが可能である。また、配列番号25に記載の塩基配列若しくはその相補配において、1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列で表される核酸を用いても、同様にタラロマイセス属に属する菌類を特異的に識別・同定することが可能である。これらの塩基配列で表される核酸は、タラロマイセス フラバス、タラロマイセス トラキスペルムスを検出するために好適に用いられる。
配列番号26に記載の塩基配列及びその相補配列は、タラロマイセス ルテウスから単離、同定されたβ−チューブリン遺伝子の可変領域の塩基配列である。当該配列はタラロマイセス属に属する菌類に特異的であり、被検体がこの塩基配列を有しているか否かを確認することで、タラロマイセス属に属する菌類を特異的に識別・同定することが可能である。また、配列番号26に記載の塩基配列若しくはその相補配において、1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列で表される核酸を用いても、同様にタラロマイセス属に属する菌類を特異的に識別・同定することが可能である。これらの塩基配列で表される核酸は、タラロマイセス ルテウス、タラロマイセス バシリスポラス、タラロマイセス ウォルトマンニーを検出するために好適に用いられる。
配列番号27に記載の塩基配列及びその相補配列は、タラロマイセス ウォルトマンニーから単離、同定された28S rDNAのD1/D2領域中の可変領域の塩基配列である。当該配列はタラロマイセス属に属する菌類に特異的であり、被検体がこの塩基配列を有しているか否かを確認することで、タラロマイセス属に属する菌類を特異的に識別・同定することが可能である。また、配列番号27に記載の塩基配列若しくはその相補配において、1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列で表される核酸を用いても、同様にタラロマイセス属に属する菌類を特異的に識別・同定することが可能である。これらの塩基配列で表される核酸は、タラロマイセス ウォルトマンニー、タラロマイセス フラバス、タラロマイセス トラキスペルムス、タラロマイセス マクロスポラスを検出するために好適に用いられる。
【0023】
本発明の検出方法に用いる前記(E)、(G)〜(J)の塩基配列は、ネオサルトリア属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列に対応する。また、前記(F)の塩基配列は、アスペルギルス フミガタスのβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列に対応する。
配列番号28に記載の塩基配列及びその相補配列は、ネオサルトリア グラブラから単離、同定されたβ−チューブリン遺伝子の可変領域の塩基配列である。配列番号30及び31に記載の塩基配列及びその相補配列は、ネオサルトリア フィシェリから単離、同定されたβ−チューブリン遺伝子の可変領域の部分塩基配列である。配列番号32及び33に記載の塩基配列及びその相補配列は、ネオサルトリア スピノサから単離、同定されたβ−チューブリン遺伝子の可変領域の部分塩基配列である。また、配列番号29に記載の塩基配列及びその相補配列は、アスペルギルス フミガタスから単離、同定されたβ−チューブリン遺伝子の可変領域の塩基配列である。当該配列はネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスに特異的であり、被検体がこの塩基配列を有しているか否かを確認することで、ネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスを特異的に識別・同定することが可能である。また、配列番号28〜33のいずれかに記載の塩基配列若しくはその相補配において、1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列で表される核酸を用いても、同様にネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスを特異的に識別・同定することが可能である。これらの塩基配列で表される核酸は、特にネオサルトリア グラブラ、ネオサルトリア フィシェリ、ネオサルトリア スピノサ、ネオサルトリア ヒラツカエ、ネオサルトリア パウリステンシス、ネオサルトリア シュードフィシェリ及びアスペルギルス フミガタスを検出するために好適に用いられる。
【0024】
本発明の検出方法に用いる前記(K)の塩基配列は、ハミゲラ属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列に対応する。
配列番号34に記載の塩基配列及びその相補配列は、ハミゲラ アベラネアから単離、同定されたβ−チューブリン遺伝子の可変領域の塩基配列である。当該配列はハミゲラ属に属する菌類に特異的であり、被検体がこの塩基配列を有しているか否かを確認することで、ハミゲラ属に属する菌類を特異的に識別・同定することが可能である。また、配列番号34に記載の塩基配列若しくはその相補配において、1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつハミゲラ属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列で表される核酸を用いても、同様にハミゲラ属に属する菌類を特異的に識別・同定することが可能である。これらの塩基配列で表される核酸は、特にハミゲラ アベラネア及びハミゲラ ストリアータを検出するために好適に用いられる。
以下、前記(A)〜(K)のいずれかの塩基配列をまとめて「本発明の可変領域の塩基配列」ともいう。
【0025】
上記本発明の可変領域の塩基配列で表される核酸を用いて耐熱性菌類を同定する方法として特に制限はなく、シークエンシング法、ハイブリダイゼンション法、PCR法など通常用いられる遺伝子工学的手法で行うことができる。
【0026】
本発明の検出方法において、前記本発明の可変領域の塩基配列で表される核酸を用いて耐熱性菌類の同定を行うためには、被検体のβ‐チューブリン遺伝子領域又は28S rDNAのD1/D2領域の塩基配列を決定し、該領域の塩基配列中に前記(A)〜(K)のいずれかの塩基配列が含まれるか否かを確認することが好ましい。
より詳細には、前記本発明の可変領域の塩基配列で表される核酸を用いてビソクラミス属に属する菌類の同定を行うには、被検体のβ−チューブリン遺伝子領域の塩基配列を決定し、該領域の塩基配列中に前記(A)の塩基配列が含まれるか否かを確認することが好ましい。すなわち、本発明の検出方法は、被検体の有するβ−チューブリン遺伝子の塩基配列を解析・決定し、決定した塩基配列と本発明の前記(A)記載のβ−チューブリン遺伝子の可変領域の塩基配列とを比較し、その一致又は相違に基づいてビソクラミス属に属する菌類の同定を行うことを好ましい態様として包含する。
前記本発明の可変領域の塩基配列で表される核酸を用いてタラロマイセス属に属する菌類の同定を行うには、被検体のβ−チューブリン遺伝子領域又は28S rDNAのD1/D2領域の塩基配列を決定し、該領域の塩基配列中に前記(B)〜(D)のいずれかの塩基配列が含まれるか否かを確認することが好ましい。すなわち、本発明の検出方法は、被検体の有するβ−チューブリン遺伝子又は28S rDNAのD1/D2領域の塩基配列を解析・決定し、決定した塩基配列と本発明の前記(B)〜(D)のいずれかに記載のβ−チューブリン遺伝子又は28S rDNAのD1/D2領域の可変領域の塩基配列とを比較し、その一致又は相違に基づいてタラロマイセス属に属する菌類の同定を行うことを好ましい態様として包含する。
前記本発明の可変領域の塩基配列で表される核酸を用いてネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの同定を行うには、被検体のβ−チューブリン遺伝子領域の塩基配列を決定し、該領域の塩基配列中に前記(E)〜(J)のいずれかの塩基配列が含まれるか否かを確認することが好ましい。すなわち、本発明の検出方法は、被検体の有するβ−チューブリン遺伝子の塩基配列を解析・決定し、決定した塩基配列と本発明の前記(E)〜(J)のいずれかに記載のβ−チューブリン遺伝子の可変領域の塩基配列とを比較し、その一致又は相違に基づいてネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの同定を行うことを好ましい態様として包含する。
前記本発明の可変領域の塩基配列で表される核酸を用いてハミゲラ属に属する菌類の同定を行うには、被検体のβ−チューブリン遺伝子領域の塩基配列を決定し、該領域の塩基配列中に前記(K)の塩基配列が含まれるか否かを確認することが好ましい。すなわち、本発明の検出方法は、被検体の有するβ−チューブリン遺伝子の塩基配列を解析・決定し、決定した塩基配列と本発明の前記(K)に記載のβ−チューブリン遺伝子の可変領域の塩基配列とを比較し、その一致又は相違に基づいてハミゲラ属に属する菌類の同定を行うことを好ましい態様として包含する。
塩基配列を解析・決定する方法としては特に限定されず、通常行われているRNA又はDNAシークエンシングの手法を用いることができる。
具体的には、マクサム−ギルバート法、サンガー法等の電気泳動法、質量分析法、ハイブリダイゼーション法等が挙げられる。サンガー法においては、放射線標識法、蛍光標識法等により、プライマー又は、ターミネーターを標識する方法が挙げられる。
【0027】
本発明においては、上記本発明の可変領域の塩基配列で表される核酸を用いて耐熱性菌類の検出・同定を行うために、前記本発明の可変領域の塩基配列、すなわち前記(A)〜(K)のいずれかの塩基配列で表される核酸にハイブリダイズすることができ、かつ耐熱性菌類を特異的に検出するための核酸プローブ又は核酸プライマーとして機能し得る検出用オリゴヌクレオチドを用いることができる。
より詳細には、ビソクラミス属に属する菌類の検出・同定を行うために、前記本発明の可変領域の塩基配列、すなわち前記(A)の塩基配列で表される核酸にハイブリダイズすることができ、かつビソクラミス属に属する菌類を特異的に検出するための核酸プローブ又は核酸プライマーとして機能し得る検出用オリゴヌクレオチドを用いることができる。
タラロマイセス属に属する菌類の検出・同定を行うために、前記本発明の可変領域の塩基配列、すなわち前記(B)〜(D)のいずれかの塩基配列で表される核酸にハイブリダイズすることができ、かつタラロマイセス属に属する菌類を特異的に検出するための核酸プローブ又は核酸プライマーとして機能し得る検出用オリゴヌクレオチドを用いることができる。
ネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出・同定を行うために、前記本発明の可変領域の塩基配列、すなわち前記(E)〜(J)のいずれかの塩基配列で表される核酸にハイブリダイズすることができ、かつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスを特異的に検出するための核酸プローブ又は核酸プライマーとして機能し得る検出用オリゴヌクレオチドを用いることができる。
ハミゲラ属に属する菌類の検出・同定を行うために、前記本発明の可変領域の塩基配列、すなわち前記(K)塩基配列で表される核酸にハイブリダイズすることができ、かつハミゲラ属に属する菌類を特異的に検出するための核酸プローブ又は核酸プライマーとして機能し得る検出用オリゴヌクレオチドを用いることができる。
本発明の検出用オリゴヌクレオチドは、上記耐熱性菌類の検出に使用できるものであればよい。すなわち、耐熱性菌類の検出のための核酸プライマーや核酸プローブとして使用できるものや、ストリンジェントな条件で耐熱性菌類のβ−チューブリン遺伝子又は28S rDNAのD1/D2領域の可変領域の塩基配列にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドであれば良い。なお、ここで、「ストリンジェントな条件」としては、例えば後述の条件が挙げられる。
【0028】
本発明の上記検出用オリゴヌクレオチドとしては、前記本発明のβ−チューブリン遺伝子又は28S rDNAのD1/D2領域の可変領域の塩基配列から選択される領域であって、(1)上記耐熱性菌類に固有の遺伝子の塩基配列が10塩基前後連続して現れる領域を含む、(2)オリゴヌクレオチドのGC含量がおよそ30%〜80%となる、(3)オリゴヌクレオチドの自己アニールの可能性が低い、(4)オリゴヌクレオチドのTm値(融解温度:melting temperature)がおよそ55℃〜65℃となる、の4つの条件を満たす領域にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドが好ましい。
より詳細には、ビソクラミス属に属する菌類を検出する場合、前記(A)の塩基配列で表される核酸中の領域であって、(1)ビソクラミス属に属する菌類に固有の遺伝子の塩基配列が10塩基前後連続して現れる領域を含む、(2)オリゴヌクレオチドのGC含量がおよそ30%〜80%となる、(3)オリゴヌクレオチドの自己アニールの可能性が低い、(4)オリゴヌクレオチドのTm値がおよそ55℃〜65℃となる、の4つの条件を満たす領域にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドが好ましい。
タラロマイセス属に属する菌類を検出する場合、前記(B)〜(D)のいずれかの塩基配列で表される核酸中の領域であって、(1)タラロマイセス属に属する菌類に固有の遺伝子の塩基配列が10塩基前後連続して現れる領域を含む、(2)オリゴヌクレオチドのGC含量がおよそ30%〜80%となる、(3)オリゴヌクレオチドの自己アニールの可能性が低い、(4)オリゴヌクレオチドのTm値がおよそ55℃〜65℃となる、の4つの条件を満たす領域にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドが好ましい。
ネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスを検出する場合、前記(E)〜(J)のいずれかの塩基配列で表される核酸中の領域であって、(1)ネオサルトリア及び/又はアスペルギルス フミガタスに固有の遺伝子の塩基配列が10塩基前後連続して現れる領域を含む、(2)オリゴヌクレオチドのGC含量がおよそ30%〜80%となる、(3)オリゴヌクレオチドの自己アニールの可能性が低い、(4)オリゴヌクレオチドのTm値がおよそ55℃〜65℃となる、の4つの条件を満たす領域にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドが好ましい。
ハミゲラ属に属する菌類を検出する場合、前記(K)の塩基配列で表される核酸中の領域であって、(1)ハミゲラ属に属する菌類に固有の遺伝子の塩基配列が10塩基前後連続して現れる領域を含む、(2)オリゴヌクレオチドのGC含量がおよそ30%〜80%となる、(3)オリゴヌクレオチドの自己アニールの可能性が低い、(4)オリゴヌクレオチドのTm値がおよそ55℃〜65℃となる、の4つの条件を満たす領域にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドが好ましい。
上記(1)において「ビソクラミス属に属する菌類に固有の遺伝子の塩基配列が10塩基前後連続して現れる領域」とは、前記本発明のβ−チューブリン遺伝子の可変領域の中でも、異なる属間での塩基配列の保存性が特に低く(すなわち、ビソクラミス属に属する菌類の特異性が特に高く)、10塩基前後にわたってビソクラミス属に属する菌類に固有の塩基配列が連続して現れる領域を意味する。また、「タラロマイセス属に属する菌類に固有の遺伝子の塩基配列が10塩基前後連続して現れる領域」とは、前記本発明のβ−チューブリン遺伝子又は28S rDNAのD1/D2領域の可変領域の中でも、異なる属間での塩基配列の保存性が特に低く(すなわち、タラロマイセス属に属する菌類の特異性が特に高く)、10塩基前後にわたってタラロマイセス属に属する菌類に固有の塩基配列が連続して現れる領域を意味する。また、「ネオサルトリア属に属する菌類又はアスペルギルス フミガタスに固有の遺伝子の塩基配列が10塩基前後連続して現れる領域」とは、前記本発明のβ−チューブリン遺伝子の可変領域の中でも、異なる属間での塩基配列の保存性が特に低く(すなわち、ネオサルトリア属に属する菌類又はアスペルギルス フミガタスの特異性が特に高く)、10塩基前後にわたってネオサルトリア属に属する菌類又はアスペルギルス フミガタスに固有の塩基配列が連続して現れる領域を意味する。また、「ハミゲラ属に属する菌類に固有の遺伝子の塩基配列が10塩基前後連続して現れる領域」とは、前記本発明のβ−チューブリン遺伝子の可変領域の中でも、異なる属間での塩基配列の保存性が特に低く(すなわち、ハミゲラ属に属する菌類の特異性が特に高く)、10塩基前後にわたってハミゲラ属に属する菌類に固有の塩基配列が連続して現れる領域を意味する。
また、上記(3)において「オリゴヌクレオチドの自己アニールの可能性が低い」とは、プライマーの塩基配列からプライマー同士が結合しないことが予想されることを言う。
本発明の検出用オリゴヌクレオチドの塩基数としては、特に限定されないが、13塩基〜30塩基であることが好ましく、18塩基〜23塩基であることがより好ましい。ハイブリダイズ時のオリゴヌクレオチドのTm値は、55℃〜65℃の範囲内であることが好ましく、59℃〜62℃の範囲内であることがより好ましい。オリゴヌクレオチドのGC含量は、30%〜80%が好ましく、45%〜65%がより好ましく、55%前後であることが最も好ましい。
【0029】
本発明の上記検出用オリゴヌクレオチドとしては、下記の(a)〜(w)のオリゴヌクレオチドがより好ましい。
下記(a)又は(b)で示されるオリゴヌクレオチドを用いることで、ビソクラミス属に属する菌類を検出することができる。
(a)配列番号1に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
【0030】
下記の(c)〜(k)のいずれかで示されるオリゴヌクレオチドを用いることで、タラロマイセス属に属する菌類を検出することができる。
(c)配列番号3に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(d)配列番号4に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(e)配列番号5に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(f)配列番号6に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(g)配列番号7に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(h)配列番号8に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(i)配列番号9に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(j)配列番号10に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(k)配列番号11に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
【0031】
下記の(l)〜(o)のいずれかのオリゴヌクレオチドを用いることで、ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスを検出することができる。
(l)配列番号12に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(m)配列番号13に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(n)配列番号14に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(o)配列番号15に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
さらに、下記の(v)と(w)のいずれかのオリゴヌクレオチドを用いることで、アスペルギルス フミガタスを特異的に検出できる。
(v)配列番号22に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(w)配列番号23に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
【0032】
下記の(p)〜(u)のいずれかのオリゴヌクレオチドを用いることで、ハミゲラ属に属する菌類を検出することができる。
(p)配列番号16に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(q)配列番号17に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(r)配列番号18に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(s)配列番号19に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(t)配列番号20に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(u)配列番号21に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
【0033】
すなわち、本発明の上記検出用オリゴヌクレオチドとしては、配列番号1〜23のいずれかに記載の塩基配列若しくはその相補配列で表されるオリゴヌクレオチド、配列番号1〜23のいずれかに記載の塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有する塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドであって、耐熱性菌類の検出に使用できるものが好ましい。耐熱性菌類の検出に使用できる塩基配列とは、配列番号1〜23のいずれかに記載の塩基配列に対して70%以上の相同性を有し、耐熱性菌類の検出のための核酸プライマーや核酸プローブとして耐熱性菌類の検出に使用できるものや、ストリンジェントな条件で各耐熱性菌類のβ−チューブリン遺伝子やタラロマイセス属に属する菌類の28SrDNAのD1/D2領域にハイブリダイズ可能な塩基配列でもよい。なお、ここで、「ストリンジェントな条件」としては、例えばMolecular Cloning−A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION[Joseph Sambrook, David W. Russell., Cold Spring Harbor Laboratory Press]記載の方法が挙げられ、例えば、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5% SDS、5×デンハート及び100mg/mLニシン精子DNAを含む溶液にプローブとともに65℃で8〜16時間恒温し、ハイブリダイズさせる条件が挙げられる。このような本発明で用いられるオリゴヌクレオチドは、前述するような耐熱性菌類の検出に使用できるものであれば、相同性が75%以上であることがさらに好ましく、相同性が80%以上であることがさらに好ましく、相同性が85%以上であることがさらに好ましく、相同性が90%以上であることがさらに好ましく、相同性が95%以上であることが特に好ましい。
また、本発明の検出用オリゴヌクレオチドには、耐熱性菌類の検出に使用できるものであれば、配列番号1から23のいずれかに記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドに対して、塩基の欠失、挿入あるいは置換といった変異や、修飾が施されたオリゴヌクレオチドも包含される。また、本発明のオリゴヌクレオチドには、配列番号1から23のいずれかに記載の塩基配列に対して、塩基の欠失、挿入あるいは置換といった変異や、修飾が施された塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドであり、耐熱性菌類の検出のためのプライマーやプローブとして耐熱性菌類の検出に使用できるものや、ストリンジェントな条件で各耐熱性菌類のβ−チューブリン遺伝子やタラロマイセス属に属する菌類の28SrDNAのD1/D2領域にハイブリダイズ可能な塩基配列でもよい。なお、ここで、「ストリンジェントな条件」としては、例えばMolecular Cloning−A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION[Joseph Sambrook, David W. Russell., Cold Spring Harbor Laboratory Press]記載の方法が挙げられ、例えば、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M 塩化ナトリウム、0.015M クエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5% SDS、5×デンハート及び100mg/mLニシン精子DNAを含む溶液にプローブとともに65℃で8〜16時間恒温し、ハイブリダイズさせる条件が挙げられる。そのような塩基の欠失、挿入あるいは置換といった変異や、修飾が施されたオリゴヌクレオチドとしては配列番号1から23のいずれかに記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドにおいて1又は数個、好ましくは1から5個、より好ましくは1から4個、さらに好ましくは1から3個、よりさらに好ましくは1から2個、特に好ましくは1個の塩基の欠失、挿入あるいは置換といった変異や、修飾されたオリゴヌクレオチドも包含される。また、配列番号1から23のいずれかに記載の塩基配列に、適当な塩基配列を付加してもよい。塩基配列の相同性については、Lipman−Pearson法(Science,227,1435,1985)等によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx−Win(ソフトウェア開発製)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、パラメーターであるUnit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出することができる。
【0034】
前記(a)及び(b)で示されるオリゴヌクレオチドは、ビソクラミス属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の可変領域と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドである。したがって、前記オリゴヌクレオチドを用いることによって、前記ビソクラミス属に属する菌類を特異的、迅速かつ簡便に検出することができる。
【0035】
配列番号1及び配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドは、β−チューブリン遺伝子領域に存在し、ビソクラミス属に属する菌類に特異的な塩基配列、すなわち可変領域の一部分に相補的なオリゴヌクレオチドである。配列番号1及び配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドは、ビソクラミス属に属する菌類のDNA及びRNAの一部分と特異的にハイブリダイズすることができる。
【0036】
ビソクラミス属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の可変領域をビソクラミス ニベアを例として詳細に説明する。上述のように、ビソクラミス ニベアのβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列は配列番号24で示される。このうち、ビソクラミス属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列の20位から175位までの領域は真菌の属間で塩基配列の保存性が特に低く、属固有の塩基配列を有する領域であることを本発明者らが見い出した。 前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドは、配列番号24に記載の塩基配列のうち、それぞれ33位から52位まで、159位から178位までの領域に対応する。したがって、前記オリゴヌクレオチドをビソクラミス属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子にハイブリダイズさせることによって、ビソクラミス属に属する菌類を特異的に検出することができる。
【0037】
前記(c)から(k)のオリゴヌクレオチドは、タラロマイセス属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子又は28S rDNAのD1/D2領域の可変領域と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドである。したがって、前記オリゴヌクレオチド対を用いることによって、前記タラロマイセス属に属する菌類を特異的、迅速かつ簡便に検出することができる。
【0038】
配列番号3及び配列番号4に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドは、β−チューブリン遺伝子領域に存在し、タラロマイセス属に属する菌類の内タラロマイセス フラバス、タラロマイセス トラキスペルムスに特異的な塩基配列、すなわち可変領域の一部分に相補的なオリゴヌクレオチドである。配列番号5〜6及び配列番号10〜11に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドは、β−チューブリン遺伝子領域に存在し、タラロマイセス属に属する菌類の内タラロマイセス ルテウス、タラロマイセス ウォルトマンニー、タラロマイセス バシリスポラスに特異的な塩基配列、すなわち可変領域の一部分に相補的なオリゴヌクレオチドである。配列番号7〜8及び配列番号9に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドは、28S rDNA中のD1/D2領域に存在し、タラロマイセス属に属する菌類の内タラロマイセス フラバス、タラロマイセス ウォルトマンニー、タラロマイセス トラキスペルムス、タラロマイセス マクロスポラスに特異的な塩基配列、すなわち可変領域中の一部分に相補的なオリゴヌクレオチドである。これらのオリゴヌクレオチドは、タラロマイセス属に属する菌類のDNA及びRNAの一部分に特異的にハイブリダイズすることができる。
【0039】
タラロマイセス属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の可変領域をタラロマイセス フラバス及びタラロマイセス ルテウスを例として詳細に説明する。上述のように、タラロマイセス フラバスのβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列は配列番号25、タラロマイセス ルテウスのβ―チューブリン遺伝子の部分塩基配列は配列番号26で示される。このうち、タラロマイセス フラバスのβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列の可変領域は10位から40位までの領域、及び70位から100位までの領域はタラロマイセス フラバス、タラロマイセス トラキスペルムスと特に保存性が高い配列であり、他の真菌で類似する配列がない領域であることを本発明者らが見出した。さらに、タラロマイセス ルテウスのβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列の可変領域は120から160位までの領域及び295位から325位までの領域は遺伝的に近縁なタラロマイセス ルテウス、タラロマイセス ウォルトマンニー、タラロマイセス バシリスポラスと保存性が高い配列であり、他の真菌で類似する配列がない領域であることを本発明者らが見い出した。
前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドは、配列番号25に記載の塩基配列のうち、それぞれ15位から34位まで、76位から98位までの可変領域に対応する。前記(e)及び(f)及び前記(j)及び(k)のオリゴヌクレオチドは、配列番号26に記載の塩基配列のうち、それぞれ133位から153位まで、304位から325位までの可変領域に対応する。したがって、前記オリゴヌクレオチドをタラロマイセス属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子にハイブリダイズさせることによって、タラロマイセス属に属する菌類を検出することができる。
【0040】
タラロマイセス属に属する菌類の28S rDNAのD1/D2領域の可変領域をタラロマイセス ウォルトマンニーを例として詳細に説明する。上述のように、タラロマイセス ウォルトマンニーの28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列は配列番号27で示される。このうち、タラロマイセス属に属する菌類の28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列の300位から350位まで、及び450位から510位までの領域はタラロマイセス ウォルトマニー、タラロマイセス トラキスペルムス、タラロマイセス フラバス、タラロマイセス マクロスポラスで特に保存性が高い配列であり、他の真菌で類似する配列がない領域であることを本発明者らが見い出した。
前記(g)、(h)及び(i)で示されるオリゴヌクレオチドは、配列番号27に記載の塩基配列のうち、それぞれ326位から345位まで、460位から478位までの可変領域に対応する。したがって、前記オリゴヌクレオチドをタラロマイセス属に属する菌類の28S rDNAのD1/D2領域にハイブリダイズさせることによって、タラロマイセス属に属する菌類を検出することができる。
【0041】
前記(l)〜(o)のオリゴヌクレオチドは、ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスのβ−チューブリン遺伝子の可変領域と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドである。したがって、前記(l)〜(o)のオリゴヌクレオチドを用いることによって、前記ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスを特異的、迅速かつ簡便に検出することができる。
【0042】
配列番号12〜15に記載の塩基配列で示されたオリゴヌクレオチドは、β−チューブリン遺伝子領域に存在し、ネオサルトリア フィシェリ、ネオサルトリア スピノサ、ネオサルトリア グラブラ、ネオサルトリア ヒラツカエ、ネオサルトリア パウリステンシス、ネオサルトリア シュードフィシェリ等のネオサルトリア属に属する菌類、及びアスペルギルス フミガタスに特異的な塩基配列、すなわち可変領域の一部分に相補的なオリゴヌクレオチドである。これらのオリゴヌクレオチドは、ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスのDNA及びRNAの一部分に特定的にハイブリダイズすることができる。
【0043】
ネオサルトリア属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の可変領域をネオサルトリア グラブラを例として詳細に説明する。上述のように、ネオサルトリア グラブラのβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列は配列番号28で示される。このうち、ネオサルトリア属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列の1位から110位までの領域、140位から210位までの領域、及び350位から380位までの領域は真菌間で塩基配列の保存性が特に低く、属間によって固有の塩基配列を有する領域であることを本発明者らが見い出した。また、アスペルギルス フミガタスのβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列は配列番号29で示される。このうち、アスペルギルス フミガタスのβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列の1位から110位までの領域、140位から210位までの領域、及び350位から380位までの領域は真菌間で塩基配列の保存性が特に低く、種間によって固有の塩基配列を有する領域であることを本発明者らが見い出した。
前記(l)及び(m)で示されるオリゴヌクレオチドは、配列番号28に記載の塩基配列のうち、それぞれ84位から103位まで、169位から188位までの領域、配列番号29に記載の塩基配列のうち、それぞれ83位から102位まで、166位から186位までの領域に対応する。前記(n)及び(o)で示されるオリゴヌクレオチドは、配列番号28に記載の塩基配列のうち、それぞれ144位から163位まで、358位から377位までの領域、配列番号29に記載の塩基配列のうち、それぞれ141位から160位まで、356位から376位までの領域に対応する。したがって、前記オリゴヌクレオチドをネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスのβ−チューブリン遺伝子にハイブリダイズさせることによって、ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスを特異的に検出することができる。
【0044】
前記(v)及び(w)で示されるオリゴヌクレオチドはアスペルギルス フミガタスのβ−チューブリン遺伝子の可変領域と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドである。
配列番号22及び配列番号23に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドは、β−チューブリン遺伝子領域に存在し、アスペルギルス フミガタスに特異的な塩基配列、すなわち可変領域の一部分に相補的なオリゴヌクレオチドである。これらのオリゴヌクレオチドは、アスペルギルス フミガタスのDNA及びRNAの一部分に特定的にハイブリダイズすることができるが、ネオサルトリア属に属する菌類のDNA及びRNAにはハイブリダイズすることができない。
【0045】
アスペルギルス フミガタスのβ−チューブリン遺伝子の別の可変領域について説明する。配列番号29に記載のアスペルギルス フミガタスのβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列の20位から50位までの領域、及び200位から230位までの領域は真菌、特にネオサルトリア属に属する菌類との間で塩基配列の保存性が特に低いことを本発明者らが見い出した。
前記(v)及び(w)で示されるオリゴヌクレオチドは、配列番号29に記載の塩基配列のうち、それぞれ23位から44位まで、200位から222位までの領域に対応する。前記オリゴヌクレオチドはアスペルギルス フミガタスのβ−チューブリン遺伝子にハイブリダイズさせることができるが、ネオサルトリア属に属する菌類のDNA及びRNAにはハイブリダイズさせることができない。これを図1に基づき詳しく説明する。図1は、配列番号29〜33に記載のアスペルギルス フミガタス、ネオサルトリア フィシェリ及びネオサルトリア スピノサのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列の一部を比較した図である。図1に示すように、アスペルギルス フミガタスのβ−チューブリン遺伝子における配列番号22及び23のオリゴヌクレオチドが認識する領域と、この領域に対応するネオサルトリア属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の領域とを比較すると、塩基配列の相同性が他の領域と比べて非常に低いことがわかる。したがって、前記(v)及び/又は(w)で示されるオリゴヌクレオチドを用いることにより、被検体に含まれる菌類がネオサルトリア属に属する菌類かアスペルギルス フミガタスかを識別することができる。
【0046】
例えば、前記(l)〜(o)のオリゴヌクレオチドを用いた検出方法により陽性反応を示した試料において、前記(v)及び/又は(w)のオリゴヌクレオチドを用いることにより、当該試料に含まれる菌種を識別・検出することができる。上述のように、前記(v)及び(w)で示されるオリゴヌクレオチドはアスペルギルス フミガタスのDNA及びRNAの一部分に特定的にハイブリダイズすることができるが、ネオサルトリア属に属する菌類のDNA及びRNAの一部分には、ハイブリダイズすることができない。したがって、被検体に含まれるDNA又はRNAに前記(v)及び/又は(w)で示されるオリゴヌクレオチドがハイブリダイズした場合は被検体に含まれる菌類はアスペルギルス フミガタス、ハイブリダイズしなかった場合は被検体に含まれる菌類はネオサルトリア属の菌類、と識別することができる。
【0047】
さらに本発明では、前記(l)〜(o)のオリゴヌクレオチドを用いた検出方法により陽性反応を示した試料において、ネオサルトリア属に属する菌類とアスペルギルス フミガタスの発育可能温度帯の違いを利用することにより、又は前記(v)及び/又は(w)のオリゴヌクレオチドを用いることにより、当該試料に含まれる菌種を識別・検出することもできる。
【0048】
ネオサルトリア属に属する菌類の発育可能温度の上限は約45℃である。これに対して、アスペルギルス フミガタスは50℃以上でも発育が可能である。この発育可能温度帯の違いを利用して、例えば以下のような操作を行うことで菌種を検出することができる。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明の前記(l)〜(o)のオリゴヌクレオチドを用いた検出方法により陽性反応を示した試料について、単一コロニーから菌糸をPDA培地やPDB培地(ポテトデキストロース液体培地)等に植付け、48〜52℃で培養を行う。1〜2日間培養後、菌糸の伸長を確認する。そして、上記発育可能温度帯の違いに基づき、増殖が確認された場合はアスペルギルス フミガタス、増殖が確認されなかった場合はネオサルトリア属に属する菌類と識別することができる。なお、増殖の確認方法に特に制限はないが、実体顕微鏡による菌糸の伸長、液体培地中での菌糸の伸長、菌塊の形成、分生子の形成が挙げられる。
【0049】
前記(p)〜(u)ので示されるオリゴヌクレオチドは、ハミゲラ属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の可変領域と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドである。したがって、前記オリゴヌクレオチドを用いることによって、前記ハミゲラ属に属する菌類を特異的、迅速かつ簡便に検出することができる。
【0050】
配列番号16〜21に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドは、β−チューブリン遺伝子領域に存在し、ハミゲラ属に属する菌類に特異的な塩基配列、すなわち可変領域の一部分に相補的なオリゴヌクレオチドである。これらのオリゴヌクレオチドは、ハミゲラ属に属する菌類のDNA及びRNAの一部分に特異的にハイブリダイズすることができる。
【0051】
ハミゲラ属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の可変領域をハミゲラ アベラネアを例として詳細に説明する。上述のように、ハミゲラ アベラネアのβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列は配列番号34で示される。このうち、ハミゲラ属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列の350位から480位までの領域、1位から25位までの領域、及び180位から200位までの領域は真菌の属間で塩基配列の保存性が特に低く、属間によって固有の塩基配列を有することを本発明者らが見い出した。
前記(p)及び(q)で示されるオリゴヌクレオチドは、配列番号34に記載の塩基配列のうち、それぞれ358位から377位まで、440位から459位までの領域に対応する。前記(r)及び(s)で示されるオリゴヌクレオチドは、配列番号34に記載の塩基配列のうち、それぞれ2位から22位まで、181位から200位までの領域に対応する。また、前記(t)及び(u)で示されたオリゴヌクレオチドは、配列番号34に記載の塩基配列のうち、それぞれ172位から191位まで、397位から416位までの領域に対応する。したがって、前記オリゴヌクレオチドをハミゲラ属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子にハイブリダイズさせることによって、ハミゲラ属に属する菌類を特異的に検出することができる。
【0052】
なお、図2に示すように、ハミゲラ アベラネアのβ−チューブリン遺伝子の358位から377位まで及び440位から459位までの領域と相同性の高い領域がクラドスポリウム クラドスポロイデス(Cladosporium cladosporioides)等のクラドスポリウム(Cladosporium)属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子にも存在する。しかし、ハミゲラ アベラネアのβ−チューブリン遺伝子の181位から200位までの領域と相同性の高い領域はクラドスポリウム属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子には存在しない。従って、前記(p)〜(u)のオリゴヌクレオチドを組み合わせて用いることで、ハミゲラ属に属する菌類とクラドスポリウム属に属する菌類とを検出することができる。
すなわち、前記(s)、(t)及び(u)のオリゴヌクレオチドは、ハミゲラ属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の可変領域とハイブリダイズすることができるが、クラドスポリウム属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の可変領域とハイブリダイズすることができない。そのため、例えば前記(p)及び(q)のオリゴヌクレオチドを用いた検出方法により陽性反応を示した試料について、前記(r)及び(s)で示されたオリゴヌクレオチド及び/又は前記(t)及び(u)で示されたオリゴヌクレオチドを用いることにより当該試料に含まれる菌種がハミゲラ属かクラドスポリウム属であるかを識別することができる。
【0053】
なお、「クラドスポリウム属に属する菌類」は糸状不完全菌類であり、耐熱性の高い子のう胞子を形成しない。また、住環境や食品工場などに広く分布し、メラニン色素を合成するため、黒色汚れの原因菌である。クラドスポリウム属に属する菌類の例として、クラドスポリウム クラドスポロイデス、クラドスポリウム スファエロスファーマム(Cladosporium sphaerospermum)が挙げられる。
【0054】
本発明の検出方法においては、上記(a)〜(w)の検出用オリゴヌクレオチドの内、下記の(a1)〜(w1)のオリゴヌクレオチドが好ましく、配列番号1〜23に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドがより好ましい。
(a1)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(b1)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(c1)配列番号3に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(d1)配列番号4に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(e1)配列番号5に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(f1)配列番号6に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(g1)配列番号7に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(h1)配列番号8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(i1)配列番号9に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(j1)配列番号10に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(k1)配列番号11に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(l1)配列番号12に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(m1)配列番号13に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(n1)配列番号14に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(o1)配列番号15に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(p1)配列番号16に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(q1)配列番号17に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(r1)配列番号18に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(s1)配列番号19に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(t1)配列番号20に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(u1)配列番号21に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(v1)配列番号22に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(w1)配列番号23に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
【0055】
後述するように、本発明の検出方法において、上記本発明の検出用オリゴヌクレオチドは核酸プローブ又は核酸プライマーとして好適に用いることができる。
上記検出用オリゴヌクレオチドの結合様式は、天然の核酸に存在するホスホジエステル結合だけでなく、例えばホスホロアミデート結合、ホスホロチオエート結合等であってもよい。
【0056】
本発明で用いられる検出用オリゴヌクレオチドは、例えばDNA自動合成機等を用いた化学合成等の通常の合成方法により調製することができる。また、耐熱性菌類の遺伝子から制限酵素等を用いて直接切り出したり、また遺伝子をクローニングして単離精製した後、制限酵素などを用いて切り出して調製することも可能である。操作の容易さ、大量かつ安価に一定品質のオリゴヌクレオチドを得られる点から化学合成により調製するのが好ましい。
【0057】
本発明においては、前記(a)のオリゴヌクレオチドと前記(b)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対をビソクラミス属に属する菌類検出用オリゴヌクレオチド対として用いることができる。なかでも、前記(a1)のオリゴヌクレオチドと前記(b1)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対を用いるのが好ましく、配列番号1及び配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を用いるのがより好ましい。
【0058】
本発明においては、前記(c)のオリゴヌクレオチドと前記(d)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対、(e)のオリゴヌクレオチドと前記(f)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対、前記(g)のオリゴヌクレオチドと前記(h)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対、前記(i)のオリゴヌクレオチドと前記(h)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対、及び前記(j)のオリゴヌクレオチドと前記(k)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対をタラロマイセス属に属する菌類検出用オリゴヌクレオチド対として用いることができる。なかでも、前記(c1)のオリゴヌクレオチドと前記(d1)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対、(e1)のオリゴヌクレオチドと前記(f1)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対、前記(g1)のオリゴヌクレオチドと前記(h1)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対、前記(i1)のオリゴヌクレオチドと前記(h1)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対、又は前記(j1)のオリゴヌクレオチドと前記(k1)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対を用いるのが好ましく、配列番号3及び配列番号4に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、配列番号5及び配列番号6に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、配列番号7及び配列番号8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、配列番号9及び配列番号8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、又は配列番号10及び配列番号11に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を用いるのがより好ましい。
前記(c)及び(d)で示されたオリゴヌクレオチド対を用いることで、タラロマイセス フラバス、タラロマイセス トラキスペルムスを特異的に検出することができる。また、前記(e)及び(f)で示されたオリゴヌクレオチド対又は前記(j)及び(k)で示されたオリゴヌクレオチド対を用いることで、タラロマイセス ルテウス、タラロマイセス ウォルトマンニー、タラロマイセス バシリスポラスを特異的に検出することができる。さらに、前記(g)及び(h)で示されたオリゴヌクレオチド対を用いることで、タラロマイセス フラバス、タラロマイセス ウォルトマンニー、タラロマイセス トラキスペルムス、タラロマイセス マクロスポラスを特異的に検出することができる。また、前記(i)及び(h)で示されたオリゴヌクレオチド対を用いることで、タラロマイセス フラバス、タラロマイセス トラキスペルムス、タラロマイセス マクロスポラスを特異的に検出することができる。
【0059】
本発明においては、前記(l)のオリゴヌクレオチドと前記(m)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対、前記(n)のオリゴヌクレオチドと前記(o)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対、及び前記(v)のオリゴヌクレオチドと前記(w)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対をネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタス検出用オリゴヌクレオチド対として用いることができる。
なかでも、ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスを検出するためには、前記(l)及び(m)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、又は前記(n)及び(o)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を用いるのが好ましく、前記(l1)及び(m1)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、又は前記(n1)及び(o1)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を用いるのがより好ましく、配列番号12及び配列番号13に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、又は配列番号14及び配列番号15に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を用いるのがさらに好ましい。 前記(l)のオリゴヌクレオチドと前記(m)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対及び前記(n)のオリゴヌクレオチドと前記(o)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対は、ネオサルトリア フィシェリ、ネオサルトリア スピノサ、ネオサルトリア グラブラ、ネオサルトリア ヒラツカエ、ネオサルトリア パウリステンシス、ネオサルトリア シュードフィシェリ等のネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスの検出に特に好適に用いられる。
また、アスペルギルス フミガタスを検出するためには、前記(v)及び(w)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を用いるのが好ましく、前記(v1)及び(w1)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を用いるのがより好ましく、配列番号22及び配列番号23に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を用いるのがさらに好ましい。前記(v)のオリゴヌクレオチドと前記(w)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対は、アスペルギルス フミガタスの検出に好適に用いられる。
【0060】
本発明においては、前記(p)のオリゴヌクレオチドと前記(q)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対、前記(r)のオリゴヌクレオチドと前記(s)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対、及び前記(t)のオリゴヌクレオチドと前記(u)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対をハミゲラ属に属する菌類検出用オリゴヌクレオチド対として用いることができる。なかでも、前記(p1)のオリゴヌクレオチドと前記(q1)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対、前記(r1)のオリゴヌクレオチドと前記(s1)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対、又は前記(t1)のオリゴヌクレオチドと前記(u1)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対を用いるのが好ましく、配列番号16及び配列番号17に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、配列番号18及び配列番号19に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、又は配列番号20及び配列番号21に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を用いるのがより好ましい。
前記(p)及び(q)で示されたオリゴヌクレオチド対、前記(r)及び(s)で示されたオリゴヌクレオチド対、及び前記(t)及び(u)で示されたオリゴヌクレオチド対は、ハミゲラ アベラネア、ハミゲラ ストリアータの検出に好適に用いられる。
【0061】
本発明の検出方法において、前記本発明の可変領域の塩基配列で表される核酸を用いて耐熱性菌類の同定を行うには、前記(A)〜(K)のいずれかの塩基配列で表される核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする検出用オリゴヌクレオチドを標識化し、得られた検出用オリゴヌクレオチドを検査対象物より抽出した核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズさせ、ハイブリダイズした検出用オリゴヌクレオチドの標識を測定することが好ましい。この場合、前記(A)〜(K)のいずれかの塩基配列で表される核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする検出用オリゴヌクレオチドとしては、上述した本発明の検出用オリゴヌクレオチド及びオリゴヌクレオチド対を用いることができ、好ましい範囲も同様である。
【0062】
本発明で用いられる検出用オリゴヌクレオチド及びオリゴヌクレオチド対は、核酸プローブとして用いることができる。核酸プローブは、前記オリゴヌクレオチドを標識物によって標識化することで調製することができる。前記標識物としては特に制限されず、放射性物質や酵素、蛍光物質、発光物質、抗原、ハプテン、酵素基質、不溶性担体などの通常の標識物を用いることができる。標識方法は、末端標識でも、配列の途中に標識してもよく、また、糖、リン酸基、塩基部分への標識であってもよい。上記核酸プローブは耐熱性菌類のβ−チューブリン遺伝子又は28S rDNAの可変領域の一部と特異的にハイブリダイズするので、被検体中の耐熱性菌類を迅速かつ簡便に検出することができる。かかる標識の検出手段としては、例えば核酸プローブが放射性同位元素で標識されている場合にはオートラジオグラフィー等、蛍光物質で標識されている場合には蛍光顕微鏡等、化学発光物質で標識されている場合には感光フィルムを用いた解析やCCDカメラを用いたデジタル解析等が挙げられる。
このようにして標識化された本発明の検出用オリゴヌクレオチドを、通常の方法により検査対象物から抽出された核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズさせた後、ハイブリダイズした検出用オリゴヌクレオチドの標識を測定することで耐熱性菌類を検出することができる。ここで、ストリンジェントな条件としては、前述した条件を挙げることができる。また、核酸とハイブリダイズした核酸プローブの標識を測定する方法としては、通常の方法(FISH法、ドットブロット法、サザンブロット法、ノーザンブロット法等)を用いることができる。
【0063】
例えば、前記(l)及び/若しくは(m)で示されるオリゴヌクレオチド、前記(n)及び/若しくは(o)で示されるオリゴヌクレオチド又は前記(v)及び/若しくは(w)で示されるオリゴヌクレオチドを標識化して核酸プローブとすることができる。上記前記(l)及び/若しくは(m)で示されるオリゴヌクレオチド又は前記(n)及び/若しくは(o)で示されるオリゴヌクレオチドからなる核酸プローブはネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスのβ−チューブリン遺伝子の可変領域の一部と特異的にハイブリダイズするので、被検体中のネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスを迅速かつ簡便に検出することができる。また、前記(v)及び/又は(w)で示されるオリゴヌクレオチドからなる核酸プローブは、アスペルギルス フミガタスのβ−チューブリン遺伝子の可変領域の一部と特異的にハイブリダイズするが、ネオサルトリア属に属する菌類のDNA及びRNAにはハイブリダイズできない。したがって、これらのオリゴヌクレオチドがハイブリダイズしたかを確認することで、被検体中の菌類がネオサルトリア属に属する菌類であるかアスペルギルス フミガタスであるかを迅速かつ簡便に識別することができる。
【0064】
また、本発明で用いられる検出用オリゴヌクレオチドは、固相担体に結合させて捕捉プローブとして用いることもできる。この場合、捕捉プローブと、標識核酸プローブの組み合わせでサンドイッチアッセイを行うこともできるし、標的核酸を標識して捕捉することもできる。
【0065】
本発明の検出方法において、前記本発明の可変領域の塩基配列で表される核酸を用いて耐熱性菌類の同定を行うには、前記(A)〜(K)のいずれかの塩基配列で表される核酸中の一部又は全部の領域からなる核酸を遺伝子増幅し、増幅産物の有無を確認することも好ましい態様である。この場合、本発明の検出用オリゴヌクレオチド及びオリゴヌクレオチド対を、核酸プライマー及び核酸プライマー対としても用いることができ、好ましい範囲も同様である。なかでも、本発明の検出用オリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いて遺伝子増幅処理を行い、遺伝子の増幅を確認することにより検出することが好ましい。
【0066】
より詳細には、ビソクラミス属に属する菌類の同定を行うには、前記(A)の塩基配列で表される核酸中の一部又は全部の領域からなる核酸を遺伝子増幅し、増幅産物の有無を確認することが好ましい。この場合、前記(A)の塩基配列で表される核酸中の領域であって、(1)ビソクラミス属に属する菌類に固有の遺伝子の塩基配列が10塩基前後連続して現れる領域を含む、(2)オリゴヌクレオチドのGC含量がおよそ30%〜80%となる、(3)オリゴヌクレオチドの自己アニールの可能性が低い、(4)オリゴヌクレオチドのTm値がおよそ55℃〜65℃となる、の4つの条件を満たす領域にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いることが好ましい。なかでも、前記(a)及び/又は(b)のオリゴヌクレオチド及びオリゴヌクレオチド対を、核酸プライマー及び核酸プライマー対として用いることが好ましく、前記(a1)及び/又は(b1)のオリゴヌクレオチド及びオリゴヌクレオチド対を、核酸プライマー及び核酸プライマー対として用いることがより好ましく、配列番号1及び2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドを核酸プライマー及び核酸プライマー対として用いるのがさらに好ましい。
【0067】
タラロマイセス属に属する菌類の同定を行うには、前記(B)〜(D)のいずれかの塩基配列で表される核酸中の一部又は全部の領域からなる核酸を遺伝子増幅し、増幅産物の有無を確認することが好ましい。この場合、前記(B)〜(D)のいずれかの塩基配列で表される核酸中の領域であって、(1)タラロマイセス属に属する菌類に固有の遺伝子の塩基配列が10塩基前後連続して現れる領域を含む、(2)オリゴヌクレオチドのGC含量がおよそ30%〜80%となる、(3)オリゴヌクレオチドの自己アニールの可能性が低い、(4)オリゴヌクレオチドのTm値がおよそ55℃〜65℃となる、の4つの条件を満たす領域にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いることが好ましい。なかでも、前記(c)〜(k)のいずれかのオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いることが好ましく、前記(c1)〜(k1)のいずれかのオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いることがより好ましく、配列番号3〜11に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いるのがさらに好ましい。また、前記(c)及び(d)で示されたオリゴヌクレオチド対、前記(e)及び(f)で示されたオリゴヌクレオチド対、前記(g)及び(h)で示されたオリゴヌクレオチド対、前記(i)及び(h)で示されたオリゴヌクレオチド対、又は前記(j)及び(k)で示されたオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いることが好ましく、前記(c1)及び(d1)で示されたオリゴヌクレオチド対、前記(e1)及び(f1)で示されたオリゴヌクレオチド対、前記(g1)及び(h1)で示されたオリゴヌクレオチド対、前記(i1)及び(h1)で示されたオリゴヌクレオチド対、又は前記(j1)及び(k1)で示されたオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いることがより好ましく、配列番号3及び配列番号4に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、配列番号5及び配列番号6に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、配列番号7及び配列番号8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、配列番号9及び配列番号8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、配列番号10及び配列番号11に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いるのがさらに好ましい。
また、検出特異性及び検出感度の点からは、前記(i)及び(h)で示されたオリゴヌクレオチド対、又は前記(j)及び(k)で示されたオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いることが好ましく、前記(i1)及び(h1)で示されたオリゴヌクレオチド対、又は前記(j1)及び(k1)で示されたオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いることがより好ましく、配列番号9及び配列番号8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、又は配列番号10及び配列番号11に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いることがさらに好ましい。
【0068】
ネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの同定を行うには、前記(E)〜(J)のいずれかの塩基配列で表される核酸中の一部又は全部の領域からなる核酸を遺伝子増幅し、増幅産物の有無を確認することが好ましい。この場合、前記(E)〜(J)のいずれかの塩基配列で表される核酸中の領域であって、(1)ネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスに固有の遺伝子の塩基配列が10塩基前後連続して現れる領域を含む、(2)オリゴヌクレオチドのGC含量がおよそ30%〜80%となる、(3)オリゴヌクレオチドの自己アニールの可能性が低い、(4)オリゴヌクレオチドのTm値がおよそ55℃〜65℃となる、の4つの条件を満たす領域にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いることが好ましい。なかでも、前記(l)〜(o)及び(v)〜(w)のいずれかのオリゴヌクレオチドを、核酸プライマーとして用いることが好ましく、前記(l1)〜(o1)又は(v1)〜(w1)のいずれかのオリゴヌクレオチドを、核酸プライマーとして用いることがより好ましく、配列番号12〜15及び22〜23に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いるのがさらに好ましい。例えば、前記(l)及び(m)のオリゴヌクレオチド又は前記(n)及び(o)のオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いて遺伝子増幅処理を行い、遺伝子の増幅を確認することで、ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスを検出することができる。食品事故で特に問題となるネオサルトリア属に属する菌類を検出するために、前記の方法によりこれらの菌が検出された試料について、さらに(v)及び(w)のオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いて遺伝子増幅処理を行い、遺伝子の増幅を確認することで、ネオサルトリア属に属する菌類かアスペルギルス フミガタスかを識別することができる。
また、前記(l)及び(m)で示されたオリゴヌクレオチド対、前記(n)及び(o)で示されたオリゴヌクレオチド対、又は前記(v)及び(w)で示されたオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いることが好ましく、前記(l1)及び(m1)で示されたオリゴヌクレオチド対、前記(n1)及び(o1)で示されたオリゴヌクレオチド対、又は前記(v1)及び(w1)で示されたオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いることが好ましく、配列番号12及び配列番号13に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、配列番号14及び配列番号15に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、配列番号22及び配列番号23に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いるのがさらに好ましい。
特に、ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスを検出する場合には、検出特異性及び検出感度の点からは、前記(n)及び(o)で示されたオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いることが好ましく、前記(n1)及び(o1)で示されたオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いることがより好ましく、配列番号14及び配列番号15に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いることがさらに好ましい。アスペルギルス フミガタスを検出する場合には、検出特異性及び検出感度の点からは、前記(v)及び(w)で示されたオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いることが好ましく、前記(v1)及び(w1)で示されたオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いることがより好ましく、配列番号22及び配列番号23に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いることがさらに好ましい。
【0069】
ハミゲラ属に属する菌類の同定を行うには、前記(K)の塩基配列で表される核酸中の一部又は全部の領域からなる核酸を遺伝子増幅し、増幅産物の有無を確認することが好ましい。この場合、前記(K)の塩基配列で表される核酸中の領域であって、(1)ハミゲラ属に属する菌類に固有の遺伝子の塩基配列が10塩基前後連続して現れる領域を含む、(2)オリゴヌクレオチドのGC含量がおよそ30%〜80%となる、(3)オリゴヌクレオチドの自己アニールの可能性が低い、(4)オリゴヌクレオチドのTm値がおよそ55℃〜65℃となる、の4つの条件を満たす領域にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いることが好ましい。なかでも、前記(p)〜(u)のいずれかのオリゴヌクレオチドを、核酸プライマー及び核酸プライマー対として用いることが好ましく、前記(p1)〜(u1)のいずれかのオリゴヌクレオチドを、核酸プライマー及び核酸プライマー対として用いることが好ましく、配列番号16〜21に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いるのがさらに好ましい。例えば、前記(p)及び(q)のオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いて遺伝子増幅処理を行い、遺伝子の増幅を確認することでハミゲラ(Hamigera)属に属する菌類及びクラドスポリウム属に属する菌類を検出することができる。食品事故で特に問題となるハミゲラ属に属する菌類を検出するために、前記の方法によりこれらの菌が検出された試料について、さらに前記(r)及び(s)のオリゴヌクレオチド又は前記(t)及び(u)のオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いて遺伝子増幅処理を行い、遺伝子の増幅を確認することで、ハミゲラ属に属する菌類かクラドスポリウム属に属する菌類かを識別することができる。
また、前記(p)及び(q)で示されたオリゴヌクレオチド対、前記(r)及び(s)で示されたオリゴヌクレオチド対、又は前記(t)及び(u)で示されたオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いることが好ましく、前記(p1)及び(q1)で示されたオリゴヌクレオチド対、前記(r1)及び(s1)で示されたオリゴヌクレオチド対、又は前記(t1)及び(u1)で示されたオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いることが好ましく、配列番号16及び配列番号17に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、配列番号18及び配列番号19に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、又は配列番号20及び配列番号21に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を用いるのがさらに好ましい。
特に、検出特異性の点からは、前記(r)及び(s)で示されたオリゴヌクレオチド対、又は前記(t)及び(u)で示されたオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いるのが好ましく、前記(r1)及び(s1)で示されたオリゴヌクレオチド対、又は前記(t1)及び(u1)で示されたオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いるのがより好ましく、配列番号18及び配列番号19に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、又は配列番号20及び配列番号21に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いることがさらに好ましい。検出感度の点からは、前記(t)及び(u)で示されたオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いるのが好ましく、前記(t1)及び(u1)で示されたオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いるのがより好ましく、配列番号20及び配列番号21に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いることがさらに好ましい。
【0070】
本発明の核酸プライマーは、前記オリゴヌクレオチドをそのまま核酸プライマーとして用いることもできるし、前記オリゴヌクレオチドを標識物で標識化して核酸プライマーとして用いることができる。標識物及び標識方法の例としては、核酸プローブの場合と同様のものが挙げられる。
【0071】
本発明において、遺伝子増幅処理はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法により行うことが好ましい。PCR反応の条件は、目的のDNA断片を検出可能な程度に増幅することができれば特に制限されない。PCRの反応条件の好ましい一例としては、ビソクラミス属に属する菌類を検出する場合には、例えば、2本鎖DNAを1本鎖にする熱変性反応を95〜98℃で10〜60秒間行い、プライマー対を1本鎖DNAにハイブリダイズさせるアニーリング反応を59〜61℃で約60秒間行い、DNAポリメラーゼを作用させる伸長反応を約72℃で約60秒間行い、これらを1サイクルとしたものを約30〜35サイクル行う。タラロマイセス属に属する菌類を検出する場合には、例えば、2本鎖DNAを1本鎖にする熱変性反応を95〜97℃で約10〜60秒間行い、プライマー対を1本鎖DNAにハイブリダイズさせるアニーリング反応を55〜61℃で約60秒間行い、DNAポリメラーゼを作用させる伸長反応を約72℃で約60秒間行い、これらを1サイクルとしたものを約30〜35サイクル行う。前記(l)及び(m)オリゴヌクレオチド又は前記(n)及び(o)のオリゴヌクレオチドを用いてネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスを検出する場合には、例えば、2本鎖DNAを1本鎖にする熱変性反応を95〜98℃で10〜60秒間行い、プライマー対を1本鎖DNAにハイブリダイズさせるアニーリング反応を59〜61℃で約60秒間行い、DNAポリメラーゼを作用させる伸長反応を約72℃で約60秒間行い、これらを1サイクルとしたものを約30〜35サイクル行う。前記(v)及び(w)のオリゴヌクレオチドを用いてネオサルトリア属に属する菌類かアスペルギルス フミガタスかを検出する場合は、2本鎖DNAを1本鎖にする熱変性反応を95〜98℃で10〜60秒間行い、プライマー対を1本鎖DNAにハイブリダイズさせるアニーリング反応を59〜61℃で約60秒間行い、DNAポリメラーゼを作用させる伸長反応を約72℃で約60秒間行い、これらを1サイクルとしたものを30〜35サイクル行う。前記(p)及び(q)で示されるオリゴヌクレオチドを用いてハミゲラ属に属する菌類を検出する場合には、例えば、2本鎖DNAを1本鎖にする熱変性反応を95〜98℃で10〜60秒間行い、プライマー対を1本鎖DNAにハイブリダイズさせるアニーリング反応を約59〜63℃で約60秒間行い、DNAポリメラーゼを作用させる伸長反応を約72℃で約60秒間行い、これらを1サイクルとしたものを約30〜35サイクル行う。前記(r)及び(s)で示されるオリゴヌクレオチド又は前記(t)及び(u)で示されるオリゴヌクレオチドを用いてハミゲラ属に属する菌類を検出する場合には、例えば、2本鎖DNAを1本鎖にする熱変性反応を95〜98℃で10〜60秒間行い、プライマー対を1本鎖DNAにハイブリダイズさせるアニーリング反応を約59〜63℃で約60秒間行い、DNAポリメラーゼを作用させる伸長反応を約72℃で約60秒間行い、これらを1サイクルとしたものを約30〜35サイクル行う。
【0072】
本発明において、遺伝子断片の増幅の確認は通常の方法で行うことができる。例えば遺伝子増幅反応時に放射性物質などの標識の結合したヌクレオチドを取り込ませる方法、PCR反応産物について電気泳動を行い増幅した遺伝子の大きさに対応するバンドの有無を確認する方法、PCR反応産物の塩基配列を解読する方法、増幅したDNA2本鎖の間に蛍光物質を入り込ませ発光させる方法等が挙げられるが、本発明はこれらの方法に限定されるものではない。本発明においては、遺伝子増幅処理後に電気泳動を行い、増幅した遺伝子の大きさに対応するバンドの有無を確認する方法が好ましい。
【0073】
配列番号24に記載の塩基配列において、33位から178位までの塩基数は146塩基である。したがって、被検体にビソクラミス属に属する菌類が含まれる場合、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド対をプライマーセットとして使用してPCR反応を行い、得られたPCR反応産物について電気泳動を行うと、ビソクラミス属に属する菌類に特異的な約150bpのDNA断片の増幅が認められる。この操作を行うことにより、ビソクラミス属に属する菌類を検出、識別することができる。
【0074】
配列番号25に記載の塩基配列において、15位から98位までの塩基数は83塩基、配列番号26に記載の塩基配列において133位から325位までの塩奇数は192塩基である。また、配列番号27に記載の塩基配列において、326位から478位までの塩基数は152塩基である。したがって、被検体にタラロマイセス フラバス及び/又はタラロマイセス トラキスペルムスが含まれる場合、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対をプライマーセットとして使用してPCR反応を行い、得られたPCR反応産物について電気泳動を行うと、これらの菌類に特異的な約80bpのDNA断片の増幅が認められる。また、被検体にタラロマイセス ルテウス、タラロマイセス ウォルトマンニー及び/又はタラロマイセス バシリスポラスが含まれる場合、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対又は前記(j)及び(k)のオリゴヌクレオチド対をプライマーセットとして使用してPCR反応を行い、得られたPCR反応産物について電気泳動を行うと、これらの菌類に特異的な約200bpのDNA断片の増幅が認められる。さらに、被検体にタラロマイセス マクロスポラス、タラロマイセス ウォルトマンニー、タラロマイセス フラバス及び/又はタラロマイセス トラキスペルムスが含まれる場合、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対をプライマーセットとして使用してPCR反応を行い、得られたPCR反応産物について電気泳動を行うと、これらの菌類に特異的な約150bpのDNA断片の増幅が認められる。被検体にタラロマイセス マクロスポラス、タラロマイセス フラバス及び/又はタラロマイセス トラキスペルムスが含まれる場合、前記(i)及び(h)のオリゴヌクレオチド対をプライマーセットとして使用してPCR反応を行い、得られたPCR反応産物について電気泳動を行うと、これらの菌類に特異的な約150bpのDNA断片の増幅が認められる。この操作を行うことにより、タラロマイセス属に属する菌類を検出、識別することができる。なお、被検体にタラロマイセス ウォルトマンニーが含まれる場合、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対又は前記(j)及び(k)のオリゴヌクレオチド対と、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対とを同時に用いると、約200bpと約150bpの2本のバンドが確認される。
【0075】
被検体にネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスが含まれる場合、前記(l)及び(m)のオリゴヌクレオチド対をプライマーセットとして使用してPCR反応を行い、得られたPCR反応産物について電気泳動を行うと、これらの菌類に特異的な約100bpのDNA断片の増幅が認められる。また、前記(n)及び(o)のオリゴヌクレオチド対をプライマーセットとして使用してPCR反応を行い、得られたPCR反応産物について電気泳動を行うと、これらの菌類に特異的な約200bpのDNA断片の増幅が認められる。この操作を行うことにより、ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスを検出、検出することができる。
さらに、被検体にアスペルギルス フミガタスが含まれる場合、前記(v)及び(w)のオリゴヌクレオチド対をプライマーセットとして使用してPCR反応を行い、得られたPCR反応産物について電気泳動を行うと、これらの菌類に特異的な約200bpのDNA断片の増幅が認められる。しかし、ネオサルトリア属に属する菌類が含まれる場合、前記(v)及び(w)のオリゴヌクレオチド対をプライマーセットとして使用してPCR反応を行っても、DNA断片の増幅が認められない。従って、前記(v)及び(w)のオリゴヌクレオチド対をプライマーセットとして使用してPCR反応を行うことにより、アスペルギルス フミガタスのみを検出することができる。
【0076】
遺伝子増幅の確認について、前記(p)及び(q)で示されたオリゴヌクレオチド対を用いた場合、配列番号34に記載の塩基配列において、358位から459位までの塩基数は約100塩基である。したがって、被検体にハミゲラ属に属する菌類が含まれる場合、前記(p)及び(q)のオリゴヌクレオチド対をプライマーセットとして使用してPCR反応を行い、得られたPCR反応産物について電気泳動を行うと、これらの菌類に特異的な約100bpのDNA断片の増幅が認められる。
配列番号34に記載の塩基配列において、2位から200位までの塩基数は約200塩基である。また、前記(t)及び(u)で示されたオリゴヌクレオチド対を用いた場合、配列番号34に記載の塩基配列において、172位から416位までの塩基数は245塩基である。したがって、被検体にハミゲラ属に属する菌類が含まれる場合、前記(r)及び(s)のオリゴヌクレオチド対又は前記(t)及び(u)のオリゴヌクレオチド対をプライマーセットとして使用してPCR反応を行い、得られたPCR反応産物について電気泳動を行うと、この菌類に特異的な約200bp又は約240bpのDNA断片の増幅が認められる。この操作を行うことにより、ハミゲラ属に属する菌類を検出、検出することができる。
【0077】
本発明の検出方法において、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対、又は前記(i)及び(h)のオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法と、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対又は前記(j)及び(k)のオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法とを同時に用いてタラロマイセス属に属する菌類を検出することも好ましい態様である。複数のオリゴヌクレオチド対を組み合わせて用いることで、タラロマイセス属に属する菌類を網羅的に検出することができる。なかでも、前記(c1)及び(d1)のオリゴヌクレオチド対、前記(g1)及び(h1)のオリゴヌクレオチド対、又は前記(i1)及び(h1)のオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法と、前記(e1)及び(f1)のオリゴヌクレオチド対又は前記(j1)及び(k1)のオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法とを組合わせて用いることがより好ましく、配列番号3及び4に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、配列番号7及び8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、又は配列番号9及び8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法と、配列番号5及び6に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、又は配列番号10及び11に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法とを組合わせて用いることがさらに好ましい。
具体的には、上述したように前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対を用いることで、タラロマイセス フラバス、タラロマイセス トラキスペルムスを特異的に検出することができる。また、前記(e)及び(f)、又は前記(j)及び(k)のオリゴヌクレオチド対を用いることで、タラロマイセス ウォルトマンニー、タラロマイセス ルテウス、タラロマイセス バシリスポラスを特異的に検出することができる。さらに、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対を用いることで、タラロマイセス フラバス、タラロマイセス トラキスペルムス、タラロマイセス ウォルトマンニー、タラロマイセス マクロスポラスを特異的に検出することができる。また、前記(i)及び(h)のオリゴヌクレオチド対を用いることで、タラロマイセス フラバス、タラロマイセス トラキスペルムス、タラロマイセス マクロスポラスを特異的に検出することができる。したがって、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対、又は前記(i)及び(h)のオリゴヌクレオチド対と、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対又は前記(j)及び(k)のオリゴヌクレオチド対とを組み合わせて用いることにより、食品事故で特に問題となるタラロマイセス属に属する菌類を網羅的に検出することができる。
特に、検出感度の点からは、前記(i)及び(h)のオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法と、前記(j)及び(k)のオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法とを組み合わせて用いることが好ましく、前記(i1)及び(h1)のオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法と前記(j1)及び(k1)のオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法とを組み合わせて用いることがより好ましく、配列番号9及び8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法と、配列番号10及び11に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法とを組合わせて用いることがさらに好ましい。
なお、本発明において、「同時に用いて遺伝子増幅処理工程を行う」とは、2つのオリゴヌクレオチド対を混合し、混合したものを1の反応系にプライマーとして添加して前述のような遺伝子増幅処理工程を行うことを意味する。2つのオリゴヌクレオチド対を同時に用いることで、タラロマイセス属に属する菌類をより迅速かつ網羅的に検出することができる。2つのオリゴヌクレオチド対の混合比は特に制限はないが、1:1〜1:2が好ましい。
【0078】
本発明の検出方法においては、前記(l)及び(m)で示されたオリゴヌクレオチド対並びに/又は前記(n)及び(o)で示されたオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法と、前記(v)及び(w)で示されたオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法とを組合わせて用いることも好ましい態様である。前述したように、前記(l)及び(m)で示されたオリゴヌクレオチド対、前記(n)及び(o)で示されたオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法はネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスを、前記(v)及び(w)で示されたオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法はアスペルギルス フミガタスをそれぞれ検出することができるため、これらの方法を組合わせることにより被検体から検出された菌類がネオサルトリア属に属する菌類かアスペルギルス フミガタスであるかを識別することができる。なかでも、前記(l1)及び(m1)で示されたオリゴヌクレオチド対並びに/又は前記(n1)及び(o1)で示されたオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法と、前記(v1)及び(w1)で示されたオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法とを組合わせて用いることがより好ましく、配列番号12及び13に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対並びに/又は配列番号14及び15に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法と、配列番号22及び23に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法とを組合わせて用いることがさらに好ましい。
特に、検出感度の点からは、前記(n)及び(o)のオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法と、前記(v)及び(w)のオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法とを組み合わせて用いることが好ましく、前記(n1)及び(o1)のオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法と、前記(v1)及び(w1)のオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法とを組み合わせて用いることがより好ましく、配列番号14及び15に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法と、配列番号22及び23に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法とを組合わせて用いることがさらに好ましい。
【0079】
本発明の検出方法においては、前記(p)及び(q)のオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法と、前記(r)及び(s)のオリゴヌクレオチド対又は前記(t)及び(u)で示されたオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法とを組合わせて用いることも好ましい態様である。これらの方法を組合わせることにより被検体からハミゲラ属に属する菌類のみを特異的に検出することができる。すなわち、これらの方法を組合わせることにより被検体から検出された菌類がハミゲラ属かクラドスポリウム属であるかを識別することができる。ハミゲラ属に属する菌類はマイコトキシン(カビ毒)を生産しないので、両属の検出によりマイコトキシンのリスク予測が可能となる。また、両属は耐熱性が異なるため、属の違いを検出することにより、菌体の混入が加熱前なのか否かの予想を立てることができるため、殺菌工程の見直しや容器の機密性の確認など原因解明に生かすことが出来る。なかでも、前記(p1)及び(q1)のオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法と、前記(r1)及び(s1)のオリゴヌクレオチド対又は前記(t1)及び(u1)で示されたオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法とを組合わせて用いることがより好ましく、配列番号16及び17に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法と、配列番号18及び19に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対又は配列番号20及び21に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法とを組合わせて用いることがさらに好ましい。
特に、検出感度の点からは、前記(p)及び(q)のオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法と、前記(t)及び(u)で示されたオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法とを組合わせて用いることが好ましく、前記(p1)及び(q1)のオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法と、前記(t1)及び(u1)で示されたオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法とを組合わせて用いることがより好ましく、配列番号16及び17に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法と、配列番号20及び21に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法とを組合わせて用いることがさらに好ましい。
【0080】
次に、本発明の耐熱性菌類の検出方法の一実施態様について具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0081】
1)事故原因菌解析
耐熱性菌により汚染事故を引き起こす可能性がある飲食品としては、糖類や蛋白質を含むために強い条件で殺菌ができない飲食品が挙げられる。このような飲食品としては、果実、果汁等の農産物や乳等の畜産物を原料等する飲食品が挙げられる。
事故を引き起こした飲料等より検出された菌糸からDNAを回収する。その後、耐熱性菌検出用プライマーを用いてPCR反応等の遺伝子増幅処理を行う。例えば、前記(a)及び(b)で示されるオリゴヌクレオチド対、前記(t)及び(u)で示されるオリゴヌクレオチド対、前記(n)及び(o)で示されるオリゴヌクレオチド対、前記(i)及び(h)で示されるオリゴヌクレオチド対並びに、前記(j)及び(k)で示されるオリゴヌクレオチド対を用いてPCR反応等の遺伝子増幅処理を行う。遺伝子増幅処理後電気泳動を行い、反応産物の有無を確認する。これと同時に、回収した菌体の一部をクロラムフェニコール加PDAに接種し、50℃で培養する。
ネオサルトリア属に属する菌類検出用プライマー(前記(n)及び(o)で示されるオリゴヌクレオチド対)を用いた系で反応産物が確認された場合、50℃で培養した菌糸の伸長を確認し、ネオサルトリアであるかアスペルギルス フミガタスであるのかを確認する。又は、ネオサルトリアとアスペルギルス フミガタス検出用オリゴヌクレオチドを用いて検出を行う。例えば、前記(v)及び(w)で示されるオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いてPCR反応を行い、約200bpの反応産物が認められた場合はアスペルギルス フミガタス、反応産物が認められなかった場合はネオサルトリア属に属する菌類が陽性であると判定する。
ビソクラミス属に属する菌類検出用プライマー(前記(a)及び(b)で示されるオリゴヌクレオチド対)を用いた系で反応産物が確認された場合、ビソクラミス属に属する菌類が陽性であると判定する。
ハミゲラ属に属する菌類検出用プライマー(前記(t)及び(u)で示されるオリゴヌクレオチド対)を用いた系で反応産物が確認された場合、ハミゲラ属に属する菌類が陽性であると判定する。
タラロマイセス属に属する菌類検出用プライマー(前記(j)及び(k)で示されるオリゴヌクレオチド対及び/又は前記(i)及び(h)で示されるオリゴヌクレオチド対)を用いた系で反応産物が確認された場合、タラロマイセス属に属する菌類が陽性であると判定する。
耐熱性菌類は熱殺菌条件でも生存することから、原料及び工程より耐熱性菌類が混入した可能性が極めて高い。そのため、耐熱性菌類陽性の場合は、原料及び製造環境の清浄度の精査が必要となる。逆に耐熱性菌類が陰性である場合は、殺菌不良あるいは殺菌後の混入が原因であるので、殺菌工程の見直しや容器の機密性の確認を行う必要がある(原因究明)。
【0082】
2)原料の微生物検査
通常の原料の菌類の検査は、一般菌類(検体をヒートショック処理しない)と耐熱性菌類(検体をヒートショックする)の2つの試験が必要となる。しかしながら、本発明によれば、検体をヒートショック処理する必要がなくなる。すなわち、一般菌類だけの検査を行い、菌糸が確認された場合はその菌糸を用いて上記1)の方法により耐熱性菌類であるか否かの判断を行うことができる。従来の方法では、通常耐熱性菌類検出に7日間程度が必要であったが、本発明によれば、通常3日間程度の菌糸確認後、2日以内での検出が可能であり、2日間検出を早めることが可能となる。また、従来の方法では、熱性菌類検出後菌種の同定に更に約7日間必要とするが、本発明の方法では、検出と同時に属レベルの同定を行うことができる。
【0083】
本発明の耐熱性菌類の検出方法において、被検体としては特に制限はなく、飲食品自体、飲食品の原材料、単離菌体、培養菌体等を用いることができる。
被検体からDNAを調製する方法としては、耐熱性菌類の検出を行うのに十分な精製度及び量のDNAが得られるのであれば特に制限されず、通常の方法や市販の調製用キットを用いることができる。また、被検体中のRNAを逆転写して得られるDNAを用いることもできる。
【0084】
本発明の耐熱性菌類の検出方法によれば、被検体の調製工程から菌類の検出工程までを約5〜12時間という短時間で行うことが可能である。
【0085】
また、本発明の耐熱性菌類識別用キットは、下記の区分(1)〜(4)のオリゴヌクレオチド対から選ばれ、かつ互いに異なる群から選ばれた少なくとも2対のオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして含有するものである。
(1)前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド対
(2)前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対、前記(i)及び(h)のオリゴヌクレオチド対、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対、並びに前記(j)及び(k)のオリゴヌクレオチド対からなる群
(3)前記(l)及び(m)のオリゴヌクレオチド対、前記(n)及び(o)のオリゴヌクレオチド対、並びに前記(v)及び(w)のオリゴヌクレオチド対からなる群
(4)前記(p)及び(q)のオリゴヌクレオチド対、前記(r)及び(s)のオリゴヌクレオチド対、並びに前記(t)及び(u)のオリゴヌクレオチド対からなる群
本発明の耐熱性菌類識別用キットは、前記(1)〜(4)の各区分から選ばれたオリゴヌクレオチド対を、各区分につき少なくとも1対ずつ含有するのが好ましい。また、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対又は前記(i)及び(h)のオリゴヌクレオチド対、並びに前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対又は前記(j)及び(k)のオリゴヌクレオチド対が核酸プライマーとして含まれていることも好ましい態様である。また、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド対、前記(i)及び(h)のオリゴヌクレオチド対、前記(j)及び(k)のオリゴヌクレオチド対、前記(n)及び(o)のオリゴヌクレオチド対、前記(t)及び(u)のオリゴヌクレオチド対、及び前記(v)及び(w)のオリゴヌクレオチド対が核酸プライマーとして含まれていることも好ましい態様である。
このキットは、耐熱性菌類の検出、識別方法に用いることができる。本発明のキットは、前記核酸プライマーの他に、目的に応じ、標識検出物質、緩衝液、核酸合成酵素(DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素等)、酵素基質(dNTP,rNTP等)等、菌類の検出、識別に通常用いられる物質を含有する。このキットには、本発明の検出用オリゴヌクレオチド対によって遺伝子増幅反応が正常に進行することを確認するための陽性対照(ポジティブコントロール)を含んでいてもよい。陽性対照としては、例えば、本発明の検出用オリゴヌクレオチドにより増幅される領域を含んだDNAが挙げられる。
【実施例】
【0086】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0087】
実施例1
(A−1)ビソクラミス属に属する菌類の検出、識別
1.βチューブリン部分長の塩基配列決定
下記の方法によりビソクラミス属各種のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列を決定した。ポテトデキストロース寒天斜面培地にて30℃、7日間、暗所培養したビソクラミス属菌体からGenとるくんTM(タカラバイオ(株)社製)を使用し、DNAを抽出した。目的とする部位のPCR増幅は、PuRe TaqTM Ready-To-Go PCR Beads(GE Health Care UK LTD製)を用いて、プライマーとしてBt2a(5’-GGTAACCAAATCGGTGCTGCTTTC-3’:配列番号35)、Bt2b(5’-ACCCTCAGTGTAGTGACCCTTGGC-3’:配列番号36)(Glass and Donaldson,Appl Environ Microbiol 61:1323−1330,1995)を使用した。増幅条件は、βチューブリン部分長は変性温度95℃、アニーリング温度59℃、伸長温度72℃、35サイクルで実施した。PCR産物は、Auto SegTM G−50(Amersham Pharmacia Biotech社製)を使用し精製した。PCR産物は、BigDye terminator Ver. 1.1(商品名:Applied Biosystems社製)を使用してラベル化し、ABI PRISM 3130 Genetic Analyzer(Applied Biosystems社製)で電気泳動を実施した。電気泳動時の蛍光シグナルからの塩基配列の決定には、ソフトウエアー“ATGC Ver.4”(Genetyx社製)を使用した。
シークエンシング法により決定したビソクラミス ニベアや各種菌類の公知のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列情報をもとに、DNA解析ソフトウエア(商品名:DNAsis pro、日立ソフトウエア社製)を用いてアライメント解析を行い、ビソクラミス属に属する菌類に特異的な塩基配列を含有するβ−チューブリン遺伝子の中の特定領域(配列番号24)を決定した。
【0088】
2.ビソクラミス属に属する菌類の検出及び属レベルでの同定
(1)プライマーの設計
上記で得られたビソクラミス属に属する菌類に特異的な塩基配列領域のうち、3’末端側でタラロマイセス属に属する菌類の特異性が特に高い領域から、1)属固有の塩基配列が数塩基前後存在している、2)GC含量が概ね30%〜80%となる、3)自己アニールの可能性が低い、4)Tm値が概ね55〜65℃程度となる、の4つの条件を満たす部分領域の検討を行った。この塩基配列を基にして1組のプライマー対を設計し、各種菌体から抽出したDNAを鋳型として用いてPCR反応によるビソクラミス属検出及び属同定の有効性を検討した。すなわち、ビソクラミス属DNAを鋳型とした反応では約150bpにDNA増幅反応が認められ、その他のカビのゲノムDNAを鋳型とした反応では増幅産物が認められないことの検討を行った。その結果、ビソクラミス ニベア及びビソクラミス ファルバで特異的に約150bpにDNA増幅が認められ、その他のカビのゲノムDNAを鋳型とした反応では増幅産物が認めらかった。この結果より、ビソクラミス属の網羅的な検出、すなわちビソクラミス属の属レベルでの同定が可能であることを確認した。有効性が確認できたプライマー対は、配列番号1及び2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー対である。なお、使用したプライマーはシグマ アルドリッチ ジャパン社に合成依頼し(脱塩精製品、0.02μmolスケール)、購入した。
【0089】
(2)検体の調製
設計したプライマーの有効性の評価に用いる真菌類、すなわちビソクラミス属とその他の耐熱性カビ及び一般カビとしては、表1及び表2に記載の菌を使用した。これらの菌類は千葉大学医学部真菌医学研究センターが保管し、IFMナンバーなどにより管理されているものを入手し、使用した。
各菌体を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて指摘温度、すなわち一般カビは25℃、耐熱性カビ及びアスペルギルス フミガタスは30℃で7日間培養した。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
(3)ゲノムDNAの調製
各菌体を寒天培地から白金耳を用いて回収した。
ゲノムDNA調製用キット(商品名 PrepMan ultra、アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、回収した菌体からゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は50ng/μlに調製した。
【0093】
(4)PCR反応
DNAテンプレートとして、上記で調製したゲノムDNA溶液1μl、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μl、無菌蒸留水10μlを混合し、配列番号1に記載の塩基配列で表されるプライマー(0.02pmol/μl)0.5μl及び配列番号2に記載の塩基配列で表されるプライマー(0.02pmol/μl)0.5μlを加え、25μlのPCR反応液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)95℃、1分間の熱変性反応、(ii)59℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを35サイクル行った。
【0094】
(5)増幅した遺伝子断片の確認
PCR反応後、PCR反応液から2μlを分取し、2%アガロースゲルで電気泳動を行い、SYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。アガロースゲルの電気泳動図を図3(a)及び図3(b)に示す。なお、図3(a)は表1に示す菌類の試料についての電気泳動図を示し、図3(b)は表2に示す菌類の試料についての電気泳動図を示す。図中の番号は表記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。
その結果、ビソクラミス属に属する菌類のゲノムDNAを含む試料(図3(b)の1〜4レーン)では、150bp程度の遺伝子断片の増幅が確認された。一方、ビソクラミス属に属する菌類のゲノムDNAを含まない試料では、遺伝子断片の増幅は確認されなかった。以上の結果から、本発明ののオリゴヌクレオチドを用いることによって、ビソクラミス属に属する菌類を特異的に検出することができる。
【0095】
(A−2)ビソクラミス属に属する菌類の検出、識別
(1)プライマーの調製
実施例1(A−1)で設計した、配列番号1及び2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマーを使用した。
【0096】
(2)検体の調製
前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドのビソクラミス属に属する菌類に対する検出特異性を確かめるために、図4に示すビソクラミス ファルバの各菌株及び図5に示すビソクラミス ニベアの各菌株を使用した。これらの菌類は独立行政法人製品製品評価技術基盤機構によりNBRC番号で管理されているもの及びThe Centraalbureau voor SchimmelculturesによりCBS番号で管理されているもの等を入手し、使用した。
各菌体を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて30℃で7日間培養した。
【0097】
(3)ゲノムDNAの調製
各菌体を寒天培地から白金耳を用いて回収した。
ゲノムDNA調製用キット(商品名 PrepMan ultra、アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、回収した菌体からゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は50ng/μlに調製した。
【0098】
(4)PCR反応
DNAテンプレートとして、上記で調製したゲノムDNA溶液1μl、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μl、無菌蒸留水10μlを混合し、配列番号1に記載の塩基配列で表されるプライマー(0.02pmol/μl)0.5μl及び配列番号2に記載の塩基配列で表されるプライマー(0.02pmol/μl)0.5μlを加え、25μlのPCR反応液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)95℃、1分間の熱変性反応、(ii)59℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを35サイクル行った。
【0099】
(5)増幅した遺伝子断片の確認
PCR反応後、PCR反応液から4μlを分取し、2%アガロースゲルで電気泳動を行い、SYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。アガロースゲルの電気泳動図を図4及び図5に示す。なお、図4はビソクラミス ファルバの各菌株の試料についての電気泳動図を示し、図5はビソクラミス ニベアの各菌株の試料についての電気泳動図を示す。
その結果、使用したビソクラミス ファルバ及びビソクラミス ニベアの全ての菌株において、特異的な増幅DNA断片が確認された。したがって、本発明のオリゴヌクレオチドを用いることによって、菌株の種類に左右されることなくビソクラミス属に属する菌類を高い精度で特異的に検出することができることがわかる。
【0100】
(B−1)タラロマイセス属に属する菌類の検出、識別
1.タラロマイセス属に属する菌類に特異的な塩基配列の解析
下記の方法によりタラロマイセス属各種のβ−チューブリン遺伝子及び28S rDNAのD1/D2領域の塩基配列を決定した。ポテトデキストロース寒天斜面培地にて25℃、7日間、暗所培養したタラロマイセス属菌体からGenとるくんTM(タカラバイオ(株)社製)を使用し、DNAを抽出した。目的とする部位のPCR増幅は、PuRe TaqTM Ready-To-Go PCR Beads(GE Health Care UK LTD製)を用いて、プライマーとして、βチューブリンの部分長に関してはBt2a(5’-GGTAACCAAATCGGTGCTGCTTTC-3’:配列番号35)、Bt2b(5’-ACCCTCAGTGTAGTGACCCTTGGC-3’:配列番号36)(Glass and Donaldson,Appl Environ Microbiol 61:1323−1330,1995)を使用し、28SrDNAのD1/D2領域はNL1(5’-GCATATCAATAAGCGGAGGAAAAG-3’:配列番号37)とNL4(5’-GGTCCGTGTTTCAAGACGG-3’:配列番号38)(The fungal homorph:Mitotic and plemorphic speciation in fungal systematics.,Wallingford:CAB international.)を用いた。増幅条件は、βチューブリン部分長は変性温度95℃、アニーリング温度59℃、伸長温度72℃、35サイクル、28S rDNAのD1/D2領域は編成温度95℃、アニーリング温度55℃、伸長温度72℃、35サイクルで実施した。PCR産物は、Auto SegTM G−50(Amersham Pharmacia Biotech社製)を使用し精製した。PCR産物は、BigDye terminator Ver. 1.1(商品名:Applied Biosystems社製)を使用してラベル化し、ABI PRISM 3130 Genetic Analyzer(Applied Biosystems社製)で電気泳動を実施した。電気泳動時の蛍光シグナルからの塩基配列の決定には、ソフトウエアー“ATGC Ver.4”(Genetyx社製)を使用した。
シークエンシング法により決定した各種菌類(タラロマイセス フラバス、タラロマイセス ルテウス、タラロマイセス ウォルトマンニー)のβ−チューブリン遺伝子及び28S rDNAのD1/D2領域の塩基配列情報、及び各種菌類の公知のβ−チューブリン遺伝子及び28S rDNAのD1/D2領域の塩基配列情報をもとに、DNA解析ソフトウエア(商品名:DNAsis pro、日立ソフトウエア社製)を用いてアライメント解析を行い、タラロマイセス属に属する菌類に特異的な塩基配列を含有するβ−チューブリン遺伝子及び28S rDNAのD1/D2領域の中の特定領域(配列番号25〜27)を決定した。
【0101】
2.タラロマイセス属に属する菌類の検出及び属レベルでの同定
(1)プライマーの設計
上記で得られたタラロマイセス属に属する菌類に特異的な塩基配列領域(配列番号25〜27)のうち、3’末端側でタラロマイセス属に属する菌類の特異性が特に高い領域から、1)属固有の塩基配列が数塩基前後存在している、2)GC含量が概ね30%〜80%となる、3)自己アニールの可能性が低い、4)Tm値が概ね55〜65℃程度となる、の4つの条件を満たす部分領域の検討を行った。この塩基配列を基にしてβチューブリン遺伝子に関しては5組のプライマー対を、28S rDNAのD1/D2領域に関しては5組のプライマー対を設計し、各種菌体から抽出したDNAを鋳型として用いてPCR反応によるタラロマイセス属検出及び属同定の有効性を検討した。その結果、βチューブリン遺伝子のプライマーのうち5組中1組でタラロマイセス フラバス(Talaromyces flavus)及びタラロマイセス トラキスペルムス(Talaromyces trachyspermus)で特異的に、設計したプライマー対から予想されるサイズにDNA増幅が認められた。有効性が確認できたプライマー対は配列番号3及び4である。
続いて複数のプライマー対を組み合わせることによりタラロマイセス属の網羅的な検出、すなわちタラロマイセス属DNAを鋳型とした反応では設計したプライマー対から予想されるサイズにDNA増幅反応が認められ、その他のカビのゲノムDNAを鋳型とした反応では増幅産物が認められないことの検討を行った。その結果、βチューブリンのプライマー5組中2組のプライマー対と28S rDNAのD1/D2領域のプライマー5組中2組のプライマー対を混合して用いることによりタラロマイセス属の網羅的な検出、すなわちタラロマイセス属の属レベルでの同定が可能であることを確認した。有効性が確認できたプライマー対は、配列番号5〜11に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー対である。なお、使用したプライマーはシグマ アルドリッチ ジャパン社に合成依頼し(脱塩精製品、0.02μmolスケール)、購入した。
【0102】
(2)検体の調製
設計したプライマーの特異性の評価に用いる真菌類、すなわちタラロマイセス属とその他の耐熱性カビ及び一般カビとしては、表3に記載の菌を使用した。これらの菌類は千葉大学医学部真菌医学研究センターが保管し、IFMナンバーなどにより管理されているものを入手し、使用した。
各菌体を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて指摘温度、すなわち一般カビは25℃、耐熱性カビは30℃で7日間培養した。
【0103】
【表3】
【0104】
(3)ゲノムDNAの調製
各菌体を寒天培地から白金耳を用いて回収した。
ゲノムDNA調製用キット(アプライドバイオシステムズ社製PrepMan ultra(商品名))を用いて、回収した菌体からゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は50ng/μlに調製した。
【0105】
(4)PCR反応
DNAテンプレートとして、上記で調製したゲノムDNA溶液1μl、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μl、無菌蒸留水10μlを混合し、配列番号3に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μl及び配列番号4に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μlを加え、25μlのPCR反応液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)95℃、10秒間の熱変性反応、(ii)59℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを30サイクル行った。
【0106】
(5)増幅した遺伝子断片の確認
PCR反応後、PCR反応液から10μlを分取し、2%アガロースゲルで電気泳動を行い、SYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。アガロースゲルの電気泳動図を図6に示す。
その結果、タラロマイセス フラバス及びタラロマイセス トラキスペルムスのゲノムDNAを含む試料(1レーン及び2レーン)では、80bp程度の遺伝子断片の増幅が確認された。一方、タラロマイセス属に属する菌のゲノムDNAを含まない試料では、遺伝子断片の増幅は確認されなかった。以上の結果から、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドを用いることによって、タラロマイセス属に属する菌類を特異的に検出することができる。
【0107】
(B−2)タラロマイセス属に属する菌類の検出、識別
(1)プライマーの調製
実施例1(B−1)で設計した、配列番号5から8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマーを使用した。
【0108】
(2)検体の調製
タラロマイセス属に属する菌類としては、タラロマイセス フラバス(Talaromyces flavus)、タラロマイセス トラキスペルムス(Talaromyces trachyspermus)、タラロマイセス ウォルトマンニー(Talaromyces wortmannii)、及びタラロマイセス ルテウス(Talaromyces luteus)を使用した。前記(e)から(h)のオリゴヌクレオチドのタラロマイセス属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子に対する特異性を確かめるために、表4及び表5に示す菌類も使用した。これらの菌類は千葉大学医学部真菌医学研究センターが保管し、IFMナンバーなどにより管理されているものを入手し、使用した。
各菌体を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて30℃で7日間培養した。
【0109】
【表4】
【0110】
【表5】
【0111】
(3)ゲノムDNAの調製
各菌体を寒天培地から白金耳を用いて回収した。
ゲノムDNA調製用キット(商品名 PrepMan ultra、アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、回収した菌体からゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は50ng/μlに調製した。
【0112】
(4)PCR反応
DNAテンプレートとして、上記で調製したゲノムDNA溶液1μl、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)25μl、無菌蒸留水20μlを混合し、配列番号5に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)1.0μl、配列番号6に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)1.0μl、配列番号7に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)1.0μl、及び配列番号8に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)1.0μlを加え、50μlのPCR反応液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)97℃、10秒間の熱変性反応、(ii)59℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを30サイクル行った。
【0113】
(5)増幅した遺伝子断片の確認
PCR反応後、PCR反応液から2μlを分取し、2%アガロースゲルで電気泳動を行い、SYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。アガロースゲルの電気泳動図を図7(a)、図7(b)及び図8に示す。なお、図7(a)は表4に示す菌類の試料についての電気泳動図を示し、図7(b)は表5に示す菌類の試料についての電気泳動図を示し、図中の番号は表記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。図8はタラロマイセス属に属する菌類の試料のみの電気泳動図を示す。
その結果、タラロマイセス属に属する菌類のうちタラロマイセス フラバス、タラロマイセス トラキスペルムス又はタラロマイセス ウォルトマンニーのゲノムDNAを含む試料(図7(a)の1〜2及び5〜8レーン、並びに図7(b)の1〜2及び5〜8レーン)では、150bp程度の遺伝子断片の増幅が確認された。この遺伝子断片は配列番号7及び配列番号8の塩基配列で表されるプライマーを用いたことで増幅されたものである。また、タラロマイセス ウォルトマンニー又はタラロマイセス ルテウスのゲノムDNAを含む試料(図7(a)の3〜4及び7〜8レーン、並びに図7(b)の3〜4及び7〜8レーン)では、200bp程度の遺伝子断片の増幅が確認された。この遺伝子断片は配列番号5及び配列番号6の塩基配列で表されるプライマーを用いたことで増幅されたものである。一方、タラロマイセス属に属する菌類のゲノムDNAを含まない試料では、遺伝子断片の増幅は確認されなかった。以上の結果から、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド及び前記(g)及び(h)を同時に用いることによって、タラロマイセス属に属する菌類を特異的にかつ網羅的に検出することができる。
【0114】
(B−3)タラロマイセス属に属する菌類の検出、識別
(1)プライマーの調製
実施例1(B−1)で設計した、配列番号8及び9に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマーを使用した。
【0115】
(2)検体の調製
前記(h)及び(i)のオリゴヌクレオチドの検出特異性を確かめるために、表6に示すタラロマイセス属に属する菌類及びその他の菌類を使用した。これらの菌類は独立行政法人製品製品評価技術基盤機構によりNBRC番号で管理されているもの及びThe Centraalbureau voor SchimmelculturesによりCBS番号で管理されているもの等、真菌の供託機関より分譲された株を入手し、使用した。
各菌体を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いてタラロマイセス属を含む耐熱性カビ及びアスペルギルス フミガタスは30℃で7日間、その他の一般カビは25℃で7日間培養した。
【0116】
【表6】
【0117】
(3)ゲノムDNAの調製
各菌体を寒天培地から白金耳を用いて回収した。
ゲノムDNA調製用キット(アプライドバイオシステムズ社製PrepMan ultra(商品名))を用いて、回収した菌体からゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は50ng/μlに調製した。
【0118】
(4)PCR反応
DNAテンプレートとして、上記で調製したゲノムDNA溶液1μl、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μl、無菌蒸留水10μlを混合し、配列番号8に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μl及び配列番号9に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μlを加え、25μlのPCR反応液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)95℃、1分間の熱変性反応、(ii)59℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを30サイクル行った。
【0119】
(5)増幅した遺伝子断片の確認
PCR反応後、PCR反応液から10μlを分取し、2%アガロースゲルで電気泳動を行い、SYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。アガロースゲルの電気泳動図を図9−1に示す。図中の番号は表6記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。
その結果、タラロマイセス属に属する菌類のうち、タラロマイセス フラバス、タラロマイセス マクロスポラス及びタラロマイセス トラキスペルムスのゲノムDNAを含む試料(1〜3レーン)についてのみ、150bp程度の遺伝子断片の増幅が確認された。一方、タラロマイセス属に属する菌のゲノムDNAを含まない試料では、遺伝子断片の増幅は確認されなかった。以上の結果から、本発明のオリゴヌクレオチドを用いることによって、タラロマイセス属に属する菌類のうち、特定の菌種のみを特異的に検出することができることがわかる。
【0120】
(B−4)タラロマイセス属に属する菌類の検出、識別
(1)プライマー
実施例1(B−1)で設計した、配列番号10及び11に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマーを使用した。
【0121】
(2)検体の調製
前記(j)及び(k)のオリゴヌクレオチドの検出特異性を確かめるために、実施例1(B−3)の表6と同様のタラロマイセス属に属する菌類及びその他の菌類を使用した。
各菌体を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いてタラロマイセス属を含む耐熱性カビ及びアスペルギルス フミガタスは30℃で7日間、その他の一般カビは25℃で7日間培養した。
【0122】
(3)ゲノムDNAの調製
各菌体を寒天培地から白金耳を用いて回収した。
ゲノムDNA調製用キット(アプライドバイオシステムズ社製PrepMan ultra(商品名))を用いて、回収した菌体からゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は50ng/μlに調製した。
【0123】
(4)PCR反応
DNAテンプレートとして、上記で調製したゲノムDNA溶液1μl、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μl、無菌蒸留水10μlを混合し、配列番号10に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μl及び配列番号11に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μlを加え、25μlのPCR反応液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)95℃、1分間の熱変性反応、(ii)55℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを35サイクル行った。
【0124】
(5)増幅した遺伝子断片の確認
PCR反応後、PCR反応液から10μlを分取し、2%アガロースゲルで電気泳動を行い、SYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。アガロースゲルの電気泳動図を図9−2に示す。図中の番号は表6記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。
その結果、タラロマイセス属に属する菌類のうち、タラロマイセス バシリスポラス、タラロマイセス ウォルトマンニー及びタラロマイセス ルテウスのゲノムDNAを含む試料(4〜6レーン)についてのみ、200bp程度の遺伝子断片の増幅が確認された。一方、タラロマイセス属に属する菌のゲノムDNAを含まない試料では、遺伝子断片の増幅は確認されなかった。以上の結果から、本発明のオリゴヌクレオチドを用いることによって、タラロマイセス属に属する菌類のうち、特定の菌種のみを特異的に検出することができることがわかる。
【0125】
(B−5)タラロマイセス属に属する菌類の検出、識別
(1)プライマーの調製
実施例1(B−1)で設計した、配列番号7及び8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマーを使用した。
【0126】
(2)検体の調製
前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドのタラロマイセス属に属する菌類に対する検出特異性を確かめるために、図10に示すタラロマイセス フラバスの各菌株及び図11に示すタラロマイセス マクロスポラスの各菌株を使用した。これらの菌類は独立行政法人製品製品評価技術基盤機構によりNBRC番号で管理されているもの及びThe Centraalbureau voor SchimmelculturesによりCBS番号で管理されているものを入手し、使用した。
各菌体を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて25℃で7日間培養した。
【0127】
(3)ゲノムDNAの調製
各菌体を寒天培地から白金耳を用いて回収した。
ゲノムDNA調製用キット(アプライドバイオシステムズ社製PrepMan ultra(商品名))を用いて、回収した菌体からゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は50ng/μlに調製した。
【0128】
(4)PCR反応
DNAテンプレートとして、上記で調製したゲノムDNA溶液1μl、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μl、無菌蒸留水10μlを混合し、配列番号7に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μl及び配列番号8に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μlを加え、25μlのPCR反応液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)95℃、1分間の熱変性反応、(ii)61℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを35サイクル行った。
【0129】
(5)増幅した遺伝子断片の確認
PCR反応後、PCR反応液から4μlを分取し、2%アガロースゲルで電気泳動を行い、SYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。アガロースゲルの電気泳動図を図10及び図11に示す。
その結果、使用したタラロマイセス フラバス及びタラロマイセス マクロスポラスの全ての菌株において、特異的な増幅DNA断片が確認された。したがって、本発明のオリゴヌクレオチドを用いることによって、菌株の種類に左右されることなくタラロマイセス属に属する菌類を高い精度で特異的に検出することができることがわかる。
【0130】
(C−1)ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスの検出、識別
1.βチューブリン部分長の塩基配列決定
下記の方法によりネオサルトリア グラブラ、ネオサルトリア フィシェリ、ネオサルトリア スピノサ及びアスペルギルス フミガタスのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列を決定した。ポテトデキストロース寒天斜面培地にて30℃で7日間、暗所培養した。菌体からGenとるくんTM(タカラバイオ(株)社製)を使用し、DNAを抽出した。目的とする部位のPCR増幅は、PuRe TaqTM Ready-To-Go PCR Beads(GE Health Care UK LTD製)を用いて、プライマーとしてBt2a(5’-GGTAACCAAATCGGTGCTGCTTTC-3’:配列番号35)、Bt2b(5’-ACCCTCAGTGTAGTGACCCTTGGC-3’:配列番号36)(Glass and Donaldson,Appl Environ Microbiol 61:1323−1330,1995)を使用した。増幅条件は、βチューブリン部分長は変性温度95℃、アニーリング温度59℃、伸長温度72℃、35サイクルで実施した。PCR産物は、Auto SegTM G−50(Amersham Pharmacia Biotech社製)を使用し精製した。PCR産物は、BigDye terminator Ver. 1.1(商品名:Applied Biosystems社製)を使用してラベル化し、ABI PRISM 3130 Genetic Analyzer(Applied Biosystems社製)で電気泳動を実施した。電気泳動時の蛍光シグナルからの塩基配列の決定には、ソフトウエアー“ATGC Ver.4”(Genetyx社製)を使用した。
シークエンシング法により決定したネオサルトリア グラブラ、ネオサルトリア フィシェリ、ネオサルトリア スピノサ及びアスペルギルス フミガタスのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列情報、及び各種菌類の公知のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列情報をもとに、DNA解析ソフトウエア(商品名:DNAsis pro、日立ソフトウエア社製)を用いてアライメント解析を行い、ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスに特異的な塩基配列を含有するβ−チューブリン遺伝子の中の特定領域(配列番号28〜33)を決定した。
【0131】
2.ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスの検出
(1)プライマーの設計
上記で得られたネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスに特異的な塩基配列領域のうち、3’末端側で両菌の保存性が特に高い領域から、1)属固有の塩基配列が数塩基前後存在している、2)GC含量が概ね30%〜80%となる、3)自己アニールの可能性が低い、4)Tm値が概ね55〜65℃程度となる、の4つの条件を満たす部分領域の検討を行った。この塩基配列を基にして4組のプライマー対を設計し、各種菌体から抽出したDNAを鋳型として用いてPCR反応によるネオサルトリア属とアスペルギルス フミガタスの一括検出の有効性を検討した。すなわち、ネオサルトリア属及びアスペルギルス フミガタスのDNAを鋳型とした反応では設計したプライマー対から予想されるサイズにDNA増幅反応が認められ、その他のカビのゲノムDNAを鋳型とした反応では増幅産物が認められないことの検討を行った。その結果、2組のプライマー対でネオサルトリア属及びアスペルギルス フミガタスに特異的にDNA増幅が認められ、その他のカビのゲノムDNAを鋳型とした反応では増幅産物が認めらかった。この結果より、2組のプライマー対がネオサルトリア属とアスペルギルス フミガタスの一括検出が可能であることを確認した。有効性が確認できたプライマー対は、配列番号12及び13に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー対及び配列番号14及び15に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー対である。なお、使用したプライマーはシグマ アルドリッチ ジャパン社に合成依頼し(脱塩精製品、0.02μmolスケール)、購入した。
【0132】
(2)検体の調製
ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスとしては、表7に記載の菌類を使用した。前記(l)及び(m)のオリゴヌクレオチドのこれらの菌類のβ−チューブリン遺伝子に対する特異性を確かめるために、表7に示す菌類も使用した。なお、これらの菌株は独立行政法人理化学研究所がJCMナンバーで管理する菌株や東京大学分子細胞生物学研究所がIAMナンバーで管理する菌株及び独立行政法人製品評価技術基盤機構がIFOナンバーで管理する財団法人醗酵研究所菌由来の株を入手し、評価に使用した。
各菌体を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:PDA培地(パールコア ポテトデキストロース寒天培地)、栄研化学株式会社製)を用いて耐熱性カビ及びアスペルギルス フミガタスは30℃、その他一般カビは25℃で7日間培養した。
【0133】
【表7】
【0134】
(3)ゲノムDNAの調製
各菌体を寒天培地から白金耳を用いて回収した。
ゲノムDNA調製用キット(アプライドバイオシステムズ社製PrepMan ultra(商品名))を用いて、回収した菌体からゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は50ng/μlに調製した。
【0135】
(4)PCR反応
DNAテンプレートとして、上記で調製したゲノムDNA溶液1μl、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μl、無菌蒸留水10μlを混合し、配列番号12に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μl及び配列番号13に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μlを加え、25μlのPCR反応液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)98℃、10秒間の熱変性反応、(ii)59℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを30サイクル行った。
【0136】
(5)増幅した遺伝子断片の確認
PCR反応後、PCR反応液から10μlを分取し、2%アガロースゲルで電気泳動を行い、SYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。アガロースゲルの電気泳動図を図12に示す。
その結果、ネオサルトリア属に属する菌類又はアスペルギルス フミガタスのゲノムDNAを含む試料(1、2及び7レーン)では、100bp程度の遺伝子断片の増幅が確認された。一方、ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスのいずれのゲノムDNAを含まない試料では、遺伝子断片の増幅は確認されなかった。以上の結果から、前記(l)及び(m)のオリゴヌクレオチドを用いることによって、ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスを特異的に検出することができる。
【0137】
(6)ネオサルトリア属に属する菌類とアスペルギルス フミガタスの発育温度差を用いた識別
上記方法により遺伝子断片の増幅が確認された検体について、単一コロニーから菌糸をPDA培地(商品名:ポテトデキストロース培地、栄研化学株式会社製)に植菌し、50℃で1日間培養し、実体顕微鏡による菌糸の確認法により観察した。その結果、アスペルギルス フミガタスを植菌した試料では活発な菌糸の成長が認められたが、ネオサルトリア属に属する菌類を植菌した試料では菌糸の成長が認められなかった。この結果から、発育可能温度帯の違いを利用して、ネオサルトリア属に属する菌類とアスペルギルス フミガタスとを識別することができた。
【0138】
(C−2)ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスの検出、識別
(1)プライマーの調製
実施例1(C−1)で設計した、配列番号14及び15に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマーを使用した。
【0139】
(2)検体の調製
ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスとしては、表8及び表9に記載の菌類を使用した。前記(n)及び(o)のオリゴヌクレオチドのネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスのβ−チューブリン遺伝子に対する特異性を確かめるために、表8及び表9に示すその他の菌類も使用した。これらの菌類は千葉大学医学部真菌医学研究センターが保管し、ナンバリングにより管理されているものを入手し、使用した。
各菌体を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて耐熱性カビ及びアスペルギルス フミガタスは30℃、その他一般カビは25℃で7日間培養した。
【0140】
【表8】
【0141】
【表9】
【0142】
(3)ゲノムDNAの調製
各菌体を寒天培地から白金耳を用いて回収した。
ゲノムDNA調製用キット(商品名 PrepMan ultra、アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、回収した菌体からゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は50ng/μlに調製した。
【0143】
(4)PCR反応
DNAテンプレートとして、上記で調製したゲノムDNA溶液1μl、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μl、無菌蒸留水10μlを混合し、配列番号14に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μl及び配列番号15に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μlを加え、25μlのPCR反応液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)97℃、10秒間の熱変性反応、(ii)59℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを30サイクル行った。
【0144】
(5)増幅した遺伝子断片の確認
PCR反応後、PCR反応液から2μlを分取し、2%アガロースゲルで電気泳動を行い、SYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。アガロースゲルの電気泳動図を図13(a)及び図13(b)に示す。なお、図13(a)は表8に示す菌類の試料についての電気泳動図を示し、図13(b)は表9に示す菌類の試料についての電気泳動図を示す。図中の番号は表記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。
その結果、ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスのゲノムDNAを含む試料では、200bp程度の遺伝子断片の増幅が確認された。一方、ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスのいずれのゲノムDNAを含まない試料では、遺伝子断片の増幅は確認されなかった。以上の結果から、前記(n)及び(o)のオリゴヌクレオチドを用いることによって、ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスを特異的に検出することができる。
【0145】
(6)ネオサルトリア属に属する菌類とアスペルギルス フミガタスの発育温度差を用いた識別
上記方法により遺伝子断片の増幅が確認された検体について、単一コロニーから菌糸をPDA培地(商品名:ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)に植菌し、50℃で1日間培養し、実体顕微鏡により菌糸の伸長を観察した。その結果、アスペルギルス フミガタスを植菌した試料では活発な菌糸の成長が認められたが、ネオサルトリア属に属する菌類を植菌した試料では菌糸の成長が認められなかった。この結果から、発育可能温度帯の違いを利用して、ネオサルトリア属に属する菌類とアスペルギルス フミガタスとを識別することができた。
【0146】
(C−3)前記(v)及び(w)のオリゴヌクレオチドを用いたネオサルトリア属に属する菌類とアスペルギルス フミガタスの識別
(1)アスペルギルス フミガタス検出用プライマーの設計
配列番号28〜33に示したネオサルトリア グラブラ、アスペルギルス フミガタス、ネオサルトリア フィシェリ及びネオサルトリア スピノサのβチューブリン遺伝子の塩基配列のアライメント解析(DNAsis Pro)を用いて両種の塩基配列の差が存在する領域を決定した。決定した領域の中でアスペルギルス フミガタスに特異的な塩基配列部位のうち、3’末端側で両菌の保存性が特に高い領域から、1)アスペルギルス フミガタス固有の塩基配列が数塩基前後存在している、2)GC含量が概ね30%〜80%となる、3)自己アニールの可能性が低い、4)Tm値が概ね55〜65℃程度となる、の4つの条件を満たす部分領域の検討を行った。この塩基配列を基にして2組のプライマー対を設計し、各種菌体から抽出したDNAを鋳型として用いてPCR反応によるネオサルトリア属とアスペルギルス フミガタスの識別の有効性を検討した。すなわち、アスペルギルス フミガタスのDNAを鋳型とした反応では設計したプライマー対から予想されるサイズにDNA増幅反応が認められ、ネオサルトリア属のゲノムDNAを鋳型とした反応では増幅産物が認められないことの検討を行った。その結果、1組のプライマー対でアスペルギルス フミガタスに特異的にDNA増幅が認められ、その他の菌類のゲノムDNAを鋳型とした反応では増幅産物が認められなかった。有効性が確認できたプライマー対は、配列番号22及び23に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー対である。なお、使用したプライマーはシグマ アルドリッチ ジャパン社に合成依頼し(脱塩精製品、0.02μmolスケール)、購入した。
【0147】
(2)検体の調製
ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスとしては、表10及び表11に記載の菌類を使用した。また、参考として、表10及び表11に示すネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタス以外の菌類も使用した。菌株は千葉大学真菌医学研究センターが保存し、ナンバリングにより管理をしている株を入手し、試験に用いた。
各菌体を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて耐熱性カビ及びアスペルギルス フミガタスは30℃、その他一般カビは25℃で7日間培養した。
【0148】
【表10】
【0149】
【表11】
【0150】
(3)ゲノムDNAの調製
各菌体を寒天培地から白金耳を用いて回収した。
ゲノムDNA調製用キット(商品名 PrepMan ultra、アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、回収した菌体からゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は50ng/μlに調製した。
【0151】
(4)PCR反応
DNAテンプレートとして、上記で調製したゲノムDNA溶液1μl、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μl、無菌蒸留水10μlを混合し、配列番号22に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μl及び配列番号23に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μlを加え、25μlのPCR反応液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)95℃、1分間の熱変性反応、(ii)59℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを35サイクル行った。
【0152】
(5)増幅した遺伝子断片の確認
PCR反応後、PCR反応液から2.5μlを分取し、2%アガロースゲルで電気泳動を行い、SYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。アガロースゲルの電気泳動図を図14及び図15に示す。なお、図14は表10に示す菌類の試料についての電気泳動図を示し、図15は表11に示す菌類の試料についての電気泳動図を示す。図中の番号は表記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。
図14及び図15で示すように、アスペルギルス フミガタスのゲノムDNAを含む試料でのみ約200bpの増幅断片がはっきりと確認された。これに対して、ネオサルトリア属の菌類を含む他の菌類のゲノムDNAを含む試料では、約200bpの増幅断片は確認されなかった。
この結果から、前記(v)及び(w)のオリゴヌクレオチドを用いて遺伝子増幅処理を行い、増幅産物の有無を確認することにより、アスペルギルス フミガタスを特異的に検出することができる。
【0153】
(C−4)ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスの検出、識別
(1)プライマーの調製
実施例(C−1)及び(C−3)で設計した、配列番号14〜15及び22〜23に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマーを使用した。
【0154】
(2)検体の調製
前記(n)及び(o)のオリゴヌクレオチドのネオサルトリア属に属する菌類に対する検出特異性、及び前記(v)及び(w)のオリゴヌクレオチドのアスペルギルス フミガタスに対する検出特異性を確かめるために、図16に示すネオサルトリア フィシェリの各菌株、図17に示すネオサルトリア グラブラの各菌株、図18に示すネオサルトリア ヒラツカエの各菌株、図19に示すネオサルトリア パウリステンシスの各菌株、及び図20に示すネオサルトリア スピノサの各菌株を使用した。また、前記(v)及び(w)のオリゴヌクレオチドを用いた反応系のポジティブコントロールとして、アスペルギルス フミガタスを使用した。なお、これらの菌類は独立行政法人製品製品評価技術基盤機構によりNBRC番号で管理されているもの及びThe Centraalbureau voor SchimmelculturesによりCBS番号で管理されているもの等、真菌の供託機関から入手したもの及び千葉大学真菌医学研究センターで保存しIFMナンバーで管理された株等を入手し、供試菌として使用した。
各菌体を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて耐熱性カビ及びアスペルギルス フミガタスは30℃、その他一般カビは25℃で14日間培養した。
【0155】
(3)ゲノムDNAの調製
各菌体を寒天培地から白金耳を用いて回収した。
ゲノムDNA調製用キット(商品名 PrepMan ultra、アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、回収した菌体からゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は50ng/μlに調製した。
【0156】
(4)PCR反応
DNAテンプレートとして、上記で調製したゲノムDNA溶液1μl、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μl、無菌蒸留水10μlを混合し、配列番号14に記載の塩基配列で表されるプライマー(0.02pmol/μl)0.5μl及び配列番号15に記載の塩基配列で表されるプライマー(0.02pmol/μl)0.5μlを加え、25μlのPCR反応液を調製した。同様に、プライマーを配列番号22に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μl及び配列番号23に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μlに変更した以外は上記と同様にしてPCR反応溶液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)95℃、1分間の熱変性反応、(ii)59℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを35サイクル行った。
【0157】
(5)増幅した遺伝子断片の確認
PCR反応後、PCR反応液から4μlを分取し、2%アガロースゲルで電気泳動を行い、SYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。アガロースゲルの電気泳動図を図16〜図20に示す。なお、図16はネオサルトリア フィシェリの各菌株の試料についての電気泳動図を示し、図17はネオサルトリア グラブラの各菌株の試料についての電気泳動図を示し、図18はネオサルトリア ヒラツカエの各菌株の試料についての電気泳動図を示し、図19はネオサルトリア パウリステンシスの各菌株の試料についての電気泳動図を示し、及び図20はネオサルトリア スピノサの各菌株の試料についての電気泳動図を示す。
その結果、配列番号14及び15に記載の塩基配列で表されるプライマーを用いた反応系においては、使用したネオサルトリア フィシェリ、ネオサルトリア グラブラ、ネオサルトリア ヒラツカエ、ネオサルトリア パウリステンシス及びネオサルトリア スピノサの全ての菌株において、特異的な増幅DNA断片が確認された(図16(a)、図17(a)、図18(a)、図19(a)、図20(a))。したがって、本発明のオリゴヌクレオチドを用いることによって、菌株の種類に左右されることなくネオサルトリア属に属する菌類を高い精度で特異的に検出することができることがわかる。
配列番号22及び23に記載の塩基配列で表されるプライマーを用いた反応系においては、アスペルギルス フミガタスのゲノムDNAをテンプレートとして用いた試料のみ特異的な増幅DNA断片が確認された。一方、ネオサルトリア属の各菌株を用いた試料では、いずれもDNA断片の増幅は確認されなかった(図16(b)、図17(b)、図18(b)、図19(b)、図20(b))。したがって、前記(v)及び(w)のオリゴヌクレオチドを用いて遺伝子増幅処理を行い、増幅産物の有無を確認することにより、アスペルギルス フミガタスを特異的に検出することができることがわかる。
【0158】
(D−1)ハミゲラ属に属する菌類の検出、識別
1.βチューブリン部分長の塩基配列決定
下記の方法によりハミゲラ アベラネア及びクラドスポリウム クラドスポロイデスのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列を決定した。ポテトデキストロース寒天斜面培地にてハミゲラ アベラネアは30℃、クラドスポリウム クラドスポロイデスは25℃で7日間、暗所培養した。菌体からGenとるくんTM(タカラバイオ(株)社製)を使用し、DNAを抽出した。目的とする部位のPCR増幅は、PuRe TaqTM Ready-To-Go PCR Beads(GE Health Care UK LTD製)を用いて、プライマーとしてBt2a(5’-GGTAACCAAATCGGTGCTGCTTTC-3’:配列番号35)、Bt2b(5’-ACCCTCAGTGTAGTGACCCTTGGC-3’:配列番号36)(Glass and Donaldson,Appl Environ Microbiol 61:1323−1330,1995)を使用した。増幅条件は、βチューブリン部分長は変性温度95℃、アニーリング温度59℃、伸長温度72℃、35サイクルで実施した。PCR産物は、Auto SegTM G−50(Amersham Pharmacia Biotech社製)を使用し精製した。PCR産物は、BigDye terminator Ver. 1.1(商品名:Applied Biosystems社製)を使用してラベル化し、ABI PRISM 3130 Genetic Analyzer(Applied Biosystems社製)で電気泳動を実施した。電気泳動時の蛍光シグナルからの塩基配列の決定には、ソフトウエアー“ATGC Ver.4”(Genetyx社製)を使用した。
シークエンシング法により決定したハミゲラ アベラネア及びクラドスポリウム クラドスポロイデスのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列情報、及び各種菌類の公知のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列情報をもとに、DNA解析ソフトウエア(商品名:DNAsis pro、日立ソフトウエア社製)を用いてアライメント解析を行い、ハミゲラ属に属するハミゲラ アベラネアに特異的な塩基配列を含有するβ−チューブリン遺伝子の中の特定領域(配列番号34)を決定した。
【0159】
2.ハミゲラ属に属する菌類に属する菌類の検出
(1)プライマーの設計
上記で得られたハミゲラ アベラネアに特異的な塩基配列領域のうち、3’末端側で両菌の保存性が特に高い領域から、1)属固有の塩基配列が数塩基前後存在している、2)GC含量が概ね30%〜80%となる、3)自己アニールの可能性が低い、4)Tm値が概ね55〜65℃程度となる、の4つの条件を満たす部分領域の検討を行った。この塩基配列を基にして5組のプライマー対を設計し、各種菌体から抽出したDNAを鋳型として用いてPCR反応によるハミゲラ属に属する菌類の検出の有効性を検討した。その結果、1対のプライマー対でハミゲラ アベラネア及びクラドスポリウム クラドスポロイデスで特異的にDNA増幅が認められ、その他のカビのゲノムDNAを鋳型とした反応では増幅産物が認められなかった。この結果より、ハミゲラ属の検出が可能であることを確認した。有効性が確認できたプライマー対は、配列番号16及び17に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー対である。なお、使用したプライマーはシグマ アルドリッチ ジャパン社に合成依頼し(脱塩精製品、0.02μmolスケール)、購入した。
【0160】
(2)検体の調製
設計したプライマーの有効性の評価に用いる真菌類、すなわちハミゲラ属とその他の耐熱性カビ及び一般カビとしては、表12に記載の菌を使用した。これらの菌類は千葉大学医学部真菌医学研究センターが保管し、IFMナンバーやTナンバーなどにより管理されているものを入手し、使用した。
各菌体を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて指摘温度、すなわち一般カビは25℃、耐熱性カビは30℃で7日間培養した。
【0161】
【表12】
【0162】
(3)ゲノムDNAの調製
各菌体を寒天培地から白金耳を用いて回収した。
ゲノムDNA調製用キット(アプライドバイオシステムズ社製PrepMan ultra(商品名))を用いて、回収した菌体からゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は50ng/μlに調製した。
【0163】
(4)PCR反応
DNAテンプレートとして、上記で調製したゲノムDNA溶液1μl、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μl、無菌蒸留水10μlを混合し、配列番号16に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μl及び配列番号17に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μlを加え、25μlのPCR反応液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)98℃、10秒間の熱変性反応、(ii)63℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを30サイクル行った。
【0164】
(5)増幅した遺伝子断片の確認
PCR反応後、PCR反応液から10μlを分取し、2%アガロースゲルで電気泳動を行い、SYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。アガロースゲルの電気泳動図を図21に示す。図中の番号は表12記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。
その結果、ハミゲラ属に属する菌類のゲノムDNAを含む試料(1レーン)では、100bp程度の遺伝子断片の増幅が確認された。一方、ハミゲラ属に属する菌類のゲノムDNAを含まない試料では、遺伝子断片の増幅は確認されなかった。以上の結果から、前記(p)及び(q)のオリゴヌクレオチドを用いることによって、ハミゲラ属に属する菌類を特異的に検出することができる。
【0165】
(D−2)ハミゲラ属に属する菌類の検出、識別
(a)プライマーの調製
実施例1(D−1)で設計した、配列番号16及び17に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマーを使用した。
【0166】
(b)検体の調製
ハミゲラ属に属する菌類及びクラドスポリウム属に属する菌類としては、表13に記載のハミゲラ アベラネア(Hamigera avellanea)及びクラドスポリウム クラドスポロイデス(Cladosporium cladosporioides)を使用した。前記(p)及び(q)のオリゴヌクレオチドのハミゲラ属に属する菌類及びクラドスポリウム属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子に対する特異性を示すために、表13に示すその他の菌類も使用した。これらの菌類は千葉大学医学部真菌医学研究センターが保管し、IFMナンバーやTナンバーなどにより管理されているものを入手し、使用した。なお、ポジティブコントロールとして、Hamigera avellanea(菌株名:T34)を鋳型DNAとして用いた。
各菌体を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて至適温度、すなわち一般カビは25℃、耐熱性カビ及びアスペルギルス フミガタスは30℃で7日間培養した。
【0167】
【表13】
【0168】
(c)ゲノムDNAの調製
各菌体を寒天培地から白金耳を用いて回収した。
ゲノムDNA調製用キット(商品名 PrepMan ultra、アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、回収した菌体からゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は50ng/μlに調製した。
【0169】
(d)PCR反応
DNAテンプレートとして、上記で調製したゲノムDNA溶液1μl、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μl、無菌蒸留水10μlを混合し、配列番号16に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μl及び配列番号17に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μlを加え、25μlのPCR反応液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)97℃、10秒間の熱変性反応、(ii)63℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを30サイクル行った。
【0170】
(e)増幅した遺伝子断片の確認
PCR反応後、PCR反応液から2μlを分取し、2%アガロースゲルで電気泳動を行い、SYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。アガロースゲルの電気泳動図を図22に示す。図中の番号は表13記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。
その結果、ハミゲラ属に属する菌類及びクラドスポリウム属に属する菌類のゲノムDNAを含む試料では、100bp程度の遺伝子断片の増幅が確認された。一方、ハミゲラ属に属する菌類及びクラドスポリウム属に属する菌類のいずれのゲノムDNAを含まない試料では、遺伝子断片の増幅は確認されなかった。以上の結果から、前記(p)及び(q)のオリゴヌクレオチドを用いることによって、ハミゲラ属に属する菌類及びクラドスポリウム属に属する菌類を特異的に検出することができる。
【0171】
(D−3)ハミゲラ属に属する菌類の検出、識別
(a)プライマーの調製
配列番号34記載のハミゲラ アベラネア及びクラドスポリウム クラドスポロイデスを含めたその他のカビのβ‐チューブリン塩基配列領域のアライメント解析(DNAsis Pro)を行い、有意な塩基配差の存在する部位を特定した。その部位の中で、3’末端側でハミゲラ アベラネアの特異性が特に高い領域から、1)属固有の塩基配列が数塩基前後存在している、2)GC含量が概ね30%〜80%となる、3)自己アニールの可能性が低い、4)Tm値が概ね55〜65℃程度となる、の4つの条件を満たす部分領域の検討を行った。この塩基配列を基にして7組のプライマー対を設計し、各種菌体から抽出したDNAを鋳型として用いてPCR反応によるハミゲラ属とクラドスポリウム クラドスポロイデスの識別法の有効性を検討した。すなわち、ハミゲラ属のDNAを鋳型とした反応では設計したプライマー対から予想されるサイズにDNA増幅反応が認められ、その他のカビDNAを鋳型とした反応では増幅産物が認められないことの検討を行った。その結果、2対のプライマー対でハミゲラ アベラネアを含むハミゲラ属で特異的にDNA増幅が認められ、その他のカビのゲノムDNAを鋳型とした反応では増幅産物が認めらかった。この結果より、ハミゲラ属とクラドスポリウム クラドスポロイデスの識別が可能であることを確認した。有効性が確認できたプライマー対は、配列番号18及び19に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー対及び配列番号20及び21に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー対である。なお、使用したプライマーはシグマ アルドリッチ ジャパン社に合成依頼し(脱塩精製品、0.02μmolスケール)、購入した。
【0172】
(b)検体の調製
設計したプライマーの有効性の評価に用いる真菌類、すなわちハミゲラ属とその他の耐熱性カビ及び一般カビとしては、表14に記載の菌を使用した。これらの菌類は千葉大学医学部真菌医学研究センターが保管し、IFMナンバーなどにより管理されているものを入手し、使用した。
各菌体を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて至適温度、すなわち一般カビは25℃、耐熱性カビは30℃で7日間培養した。
【0173】
【表14】
【0174】
(c)ゲノムDNAの調製
各菌体を寒天培地から白金耳を用いて回収した。
ゲノムDNA調製用キット(商品名 PrepMan ultra、アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、回収した菌体からゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は50ng/μlに調製した。
【0175】
(d)PCR反応
DNAテンプレートとして、上記で調製したハミゲラ アベラネア及びクラドスポリウム クラドスポロイデスのゲノムDNA溶液1μl、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μl、無菌蒸留水10μlを混合し、配列番号18に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μl及び配列番号19に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μlを加え、25μlのPCR反応液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)97℃、10秒間の熱変性反応、(ii)60℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを30サイクル行った。
【0176】
(e)増幅した遺伝子断片の確認
PCR反応後、PCR反応液から2μlを分取し、2%アガロースゲルで電気泳動を行い、SYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。アガロースゲルの電気泳動図を図23に示す。図中の番号は表14記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。
その結果、ハミゲラ属に属する菌類に属する菌類のゲノムDNAを含む試料(試料番号1〜3)では、200bp程度の遺伝子断片の増幅が確認された。一方、クラドスポリウム属に属する菌類のゲノムDNAを含む試料(試料番号17)及びその他のハミゲラ属に属する菌類のゲノムDNAを含まない試料では、遺伝子断片の増幅は確認されなかった。以上の結果から、前記(r)及び(s)のオリゴヌクレオチドを用いることによって、試料に含まれる菌類がハミゲラ属に属する菌類であるかクラドスポリウム属に属する菌類であるかを識別することができる。
【0177】
(D−4)ハミゲラ属に属する菌類の検出、識別
(a)プライマーの調製
実施例1(D−3)で設計した、配列番号18〜21に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマーを使用した。
【0178】
(b)検体の調製
前記(r)〜(u)のオリゴヌクレオチドのハミゲラ属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子に対する特異性を確認するために、ハミゲラ属に属する菌類として、図24に示すハミゲラ ストリアータ(Hamigera striata)の各菌株を使用した。
各菌体を上述の(D−1)と同様に培養した。
【0179】
(c)ゲノムDNAの調製
上述の(D−1)と同様の方法で、ゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は50ng/μlに調製した。
【0180】
(d)PCR反応
DNAテンプレートとして、上記で調製したゲノムDNA溶液1μl、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μl、無菌蒸留水10μlを混合し、配列番号18に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μl及び配列番号19に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μlを加え、25μlのPCR反応液を調製した。同様に、プライマーを配列番号20に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μl及び配列番号21に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μlに変更した以外は上記と同様にしてPCR反応溶液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)95℃、1分間の熱変性反応、(ii)61〜59℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを35サイクル行った。
【0181】
(e)増幅した遺伝子断片の確認
PCR反応後、PCR反応液から4μlを分取し、2%アガロースゲルで電気泳動を行い、SYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。アガロースゲルの電気泳動図を図24に示す。
その結果、配列番号18及び19に記載の塩基配列で表されるプライマーを用いた反応系及び配列番号20及び21に記載の塩基配列で表されるプライマーを用いた反応系のいずれにおいても、使用したハミゲラ ストリアータの全ての菌株において、特異的な増幅DNA断片が確認された(9〜16レーン)。また、配列番号20及び21に記載の塩基配列で表されるプライマーを用いた反応系の方が、検出されたバンドがより鮮明であった(9〜12レーン)。したがって、本発明のオリゴヌクレオチドを用いることによって、菌株の種類に左右されることなくハミゲラ属に属する菌類を高い精度で特異的に検出することができることがわかる。
【0182】
(D−5)ハミゲラ属に属する菌類の検出、識別
(a)プライマーの調製
実施例1(D−3)で設計した、配列番号18〜21に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマーを使用した。
【0183】
(b)検体の調製
前記(r)〜(u)のオリゴヌクレオチドのハミゲラ属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子に対する特異性を確認するために、ハミゲラ属に属する菌類として、図25に示すハミゲラ アベラネア(Hamigera avellanea)の各菌株を使用した。
各菌体を上述の(D−1)と同様に培養した。
【0184】
(c)ゲノムDNAの調製
上述の(D−1)と同様の方法で、ゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は50ng/μlに調製した。
【0185】
(d)PCR反応
DNAテンプレートとして、上記で調製したゲノムDNA溶液1μl、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μl、無菌蒸留水10μlを混合し、配列番号18に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μl及び配列番号19に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μlを加え、25μlのPCR反応液を調製した。同様に、プライマーを配列番号20に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μl及び配列番号21に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μlに変更した以外は上記と同様にしてPCR反応溶液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)95℃、1分間の熱変性反応、(ii)59℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを35サイクル行った。
【0186】
(e)増幅した遺伝子断片の確認
PCR反応後、PCR反応液から2μlを分取し、2%アガロースゲルで電気泳動を行い、SYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。アガロースゲルの電気泳動図を図25に示す。
その結果、配列番号18及び19に記載の塩基配列で表されるプライマーを用いた反応系及び配列番号20及び21に記載の塩基配列で表されるプライマーを用いた反応系のいずれにおいても、使用したハミゲラ アベラネアの全ての菌株において、特異的な増幅DNA断片が確認された(各1〜8レーン)。したがって、本発明のオリゴヌクレオチドを用いることによって、菌株の種類に左右されることなくハミゲラ属に属する菌類を高い精度で特異的に検出することができることがわかる。
【0187】
(D−6)ハミゲラ属に属する菌類の検出、識別
(a)プライマー
実施例1(D−3)で設計した、配列番号18〜21に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマーを使用した。
【0188】
(b)検体の調製
前記(r)〜(u)のオリゴヌクレオチドのハミゲラ属に対する特異性を確認するためにハミゲラ属に近縁なビソクラミス属の菌類として、図26及び図27に示すビソクラミス ニベア及びビソクラミス フルバの各菌株を使用した。なお、これらの菌類は独立行政法人製品製品評価技術基盤機構によりNBRC番号で管理されているもの及びThe Centraalbureau voor SchimmelculturesによりCBS番号で管理されているもの等を入手し、使用した。
各菌体を実施例1(D−1)と同様に培養した。
【0189】
(c)ゲノムDNAの調製
実施例1(D−1)と同様の方法で、ゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は50ng/μlに調製した。
【0190】
(d)PCR反応
DNAテンプレートとして、上記で調製したゲノムDNA溶液1μl、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μl、無菌蒸留水10μlを混合し、配列番号18に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μl及び配列番号19に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μlを加え、25μlのPCR反応液を調製した。同様に、プライマーを配列番号20に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μl及び配列番号21に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μlに変更した以外は上記と同様にしてPCR反応溶液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)95℃、1分間の熱変性反応、(ii)59℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを35サイクル行った。
【0191】
(e)増幅した遺伝子断片の確認
PCR反応後、PCR反応液から2μlを分取し、2%アガロースゲルで電気泳動を行い、SYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。アガロースゲルの電気泳動図を図26及び図27に示す。
その結果、図26に示すように、配列番号18及び19に記載の塩基配列で表されるプライマーを用いた反応系ではポジティブコントロールのハミゲラ アベラネア以外にもビソクラミス フルバの一部の菌株NBRC31877株及びNBRC31878株(レーン9、10)で200bpのサイズに遺伝子増幅が認められたものの、他のビソクラミス属に属する菌類に関しては遺伝子増幅が認められなかった。なお、NBRC31877株及び31878株で遺伝子増幅が認められた理由は、これらの株が他の株と比較して遺伝学的にハミゲラ属に近縁であるためと推測される。
一方、図27に示すように、配列番号20及び21に記載の塩基配列で表されるプライマーを用いた反応系では、ビソクラミス フルバNBRC31877株及びNBRC31878株では遺伝子増幅が認められなかった。したがって、配列番号20及び21に記載のオリゴヌクレオチドを用いることによって、ビソクラミス属に属する菌類を検出せずハミゲラ属に属する菌類のみを高い精度で特異的に検出することができることがわかる。
【0192】
以上のように、本発明で規定するオリゴヌクレオチドを用いることにより、耐熱性菌類の検出が可能であることがわかった。すなわち、配列番号1及び2のオリゴヌクレオチドを用いることでビソクラミス属に属する菌類を識別することが出来る。配列番号3〜11のオリゴヌクレオチドを用いることでタラロマイセス属に属する菌類を識別することが出来る。配列番号12〜15のオリゴヌクレオチドを用いることでネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスを検出することが出来る。なお、本発明によれば、ネオサルトリア属に属する菌類とアスペルギルス フミガタスとを識別することもできる。配列番号16〜21のオリゴヌクレオチドを用いることによりハミゲラ属に属する菌類を検出することが出来る。従って、本発明における特定のオリゴヌクレオチドを用いて耐熱性菌類を検出する工程の少なくとも2つ以上、好ましくはすべての工程、を行うことにより耐熱性菌類を識別することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性菌類の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
耐熱性の菌類(真菌類)は自然界に広く分布し、野菜、果物等の農作物で繁殖し、これらの農作物を原材料とした飲食品を汚染する。しかも、耐熱性の菌類は通常の他の菌類に比べて高い耐熱性を有する。例えば酸性飲料の加熱殺菌処理を行ったとしても耐熱性菌類が生存、増殖し、カビの発生原因となることがある。このため、耐熱性菌類は重大な事故を引き起こす重要危害菌として警戒されている。
【0003】
加熱殺菌処理後の飲食品からも検出されることがある汚染事故の原因菌の主な耐熱性菌類として、ビソクラミス(Byssochlamys)属、タラロマイセス(Talaromyces)属、ネオサルトリア(Neosartorya)属及びハミゲラ(Hamigera)属に属する耐熱性菌類が知られている。子のう胞子を形成する他の耐熱性菌類と比べ、上記4属に属する菌類は耐熱性が突出して高く、加熱殺菌後に生存する可能性が高い。一方、上記4属以外の耐熱性菌類は、通常の殺菌条件で殺滅できるため、殺菌不良などが無い限りは汚染事故を引き起こす可能性は低い。従って、飲食品及びこれらの原材料中の耐熱性菌類による事故防止のためには、これら4属に属する耐熱性菌類の検出、識別が特に重要である。
さらに、危害事故発生時における事故原因究明及び対策のためには、事故原因菌の同定が必要となる。従って、上記4属の耐熱性菌類を識別することができれば、より迅速な事故原因菌の検出、識別が可能となる。
【0004】
一方、従来の耐熱性の菌類を検出、識別する方法としては、検体をPDA培地等で培養して検出、識別する方法がある。しかし、この方法ではコロニーが確認されるまでに約7日間を要する。しかも、菌種の同定は、菌の特徴的な器官の形態に基づいて行うので、形態学的な特徴が認められるまでさらに約7日間の培養を必要としている。したがって、この方法によると、耐熱性菌類の検出、識別に約14日間もの時間を要する。このように耐熱性菌類の検出、識別に長期間を要することは飲食品の衛生管理、原材料の鮮度確保、流通上の制約など観点から、必ずしも満足できるものではない。そのため、より迅速な耐熱性菌類の検出、識別方法の確立が求められている。
【0005】
菌類の迅速な検出、識別方法としては、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法を利用した検出方法が知られている(例えば、特許文献1〜4参照)。しかし、これらの方法では特定の耐熱性菌類を特異的にかつ迅速に検出することが困難であるという問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平11−505728号公報
【特許文献2】特開2006−61152号公報
【特許文献3】特開2006−304763号公報
【特許文献4】特開2007−174903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、飲食品汚染の主な原因菌である耐熱性菌類を特異的にかつ迅速に検出、識別しうる方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述のように耐熱性菌類の検出を困難にしている一因として、従来の公知のプライマーを用いたPCR法では擬陽性や擬陰性の結果が出ることが挙げられる。
本発明者等は、この問題を克服し特定の耐熱性菌類を特異的に検出・識別しうる新たなDNA領域を探索すべく、鋭意検討を行った。その結果、耐熱性菌類のβ−チューブリン遺伝子及び28S rDNAに、他の菌類のものとは明確に区別しうる、特異的な塩基配列を有する領域(以下、「可変領域」ともいう)が存在し、この可変領域をターゲットとすることで、上記耐熱性菌類を特異的かつ迅速に検出・識別できることを見い出した。本発明はこの知見に基づき完成するに至った。
【0009】
本発明は、ビソクラミス(Byssochlamys)属、タラロマイセス(Talaromyces)属、ネオサルトリア(Neosartorya)属、アスペルギルス フミガタス(Aspergillus fumigatus)及びハミゲラ(Hamigera)属からなる群から選ばれる少なくとも2つの菌類を検出する方法において、下記1)〜4)からなる群から選ばれる少なくとも2つの工程を含んでなる、耐熱性菌類の検出方法に関するものである。
1)下記の(A)の塩基配列で表される核酸を用いてビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の同定を行う工程、
2)下記の(B)〜(D)のいずれかの塩基配列で表される核酸を用いてタラロマイセス(Talaromyces)属に属する菌類の同定を行う工程、
3)下記の(E)〜(J)のいずれかの塩基配列で表される核酸を用いてネオサルトリア(Neosartorya)属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタス(Aspergillus fumigatus)の同定を行う工程、
4)下記の(K)の塩基配列で表される核酸を用いてハミゲラ(Hamigera)属に属する菌類の同定を行う工程
(A)配列番号24に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつビソクラミス属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列
(B)配列番号25に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列
(C)配列番号26に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列
(D)配列番号27に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列
(E)配列番号28に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列
(F)配列番号29に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列
(G)配列番号30に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列
(H)配列番号31に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列
(I)配列番号32に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列
(J)配列番号33に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列
(K)配列番号34に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつハミゲラ属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列
【0010】
また、本発明は、下記の群(1)〜(4)のオリゴヌクレオチド対から選ばれ、かつ互いに異なる群から選ばれた少なくとも2対のオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして含む耐熱性菌類検出用キットに関する。
(1)下記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド対
(a)配列番号1に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(2)下記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対、下記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対、下記(i)及び(h)のオリゴヌクレオチド対、下記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対、並びに下記(j)及び(k)のオリゴヌクレオチド対からなる群
(c)配列番号3に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(d)配列番号4に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(e)配列番号5に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(f)配列番号6に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(g)配列番号7に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(h)配列番号8に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(i)配列番号9に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(j)配列番号10に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(k)配列番号11に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(3)下記(l)及び(m)のオリゴヌクレオチド対、下記(n)及び(o)のオリゴヌクレオチド対、並びに下記(v)及び(w)のオリゴヌクレオチド対からなる群
(l)配列番号12に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(m)配列番号13に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(n)配列番号14に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(o)配列番号15に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(v)配列番号22に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(w)配列番号23に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(4)下記(p)及び(q)のオリゴヌクレオチド対、下記(r)及び(s)のオリゴヌクレオチド対、並びに下記(t)及び(u)のオリゴヌクレオチド対からなる群
(p)配列番号16に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(q)配列番号17に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(r)配列番号18に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(s)配列番号19に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(t)配列番号20に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(u)配列番号21に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、飲食品の汚染事故の主な原因菌である耐熱性菌類を特異的にかつ迅速に検出、識別しうる方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】アスペルギルス フミガタス、ネオサルトリア フィシェリ フィシェリ及びネオサルトリア フィシェリ スピノサのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列の一部を比較した図である。
【図2】ハミゲラ アベラネア及びクラドスポリウム クラドスポロイデスのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列を示す図である。
【図3】実施例1(A−1)におけるビソクラミス属に属する菌類の識別結果を示す電気泳動図である。
【図4】実施例1(A−2)におけるビソクラミス ファルバの各菌株を用いた電気泳動図である。
【図5】実施例1(A−2)におけるビソクラミス ニベアの各菌株を用いた電気泳動図である。
【図6】実施例1(B−1)におけるタラロマイセス属に属する菌類の識別結果を示す電気泳動図である。
【図7】実施例1(B−2)におけるタラロマイセス属に属する菌類の識別結果を示す電気泳動図である。
【図8】実施例1(B−2)におけるタラロマイセス属に属する菌類の識別の結果を示す電気泳動図である。
【図9−1】実施例1(B−3)における電気泳動図である。
【図9−2】実施例1(B−4)における電気泳動図である。
【図10】実施例1(B−5)におけるタラロマイセス フラバスの各菌株を用いた電気泳動図である。
【図11】実施例1(B−5)におけるタラロマイセス マクロスポラスの各菌株を用いた電気泳動図である。
【図12】実施例1(C−1)におけるネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスの識別結果を示す電気泳動図である。
【図13】実施例1(C−2)におけるネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスの識別結果を示す電気泳動図である。
【図14】実施例1(C−3)におけるネオサルトリア属に属する菌類とアスペルギルス フミガタスとの識別結果を示す電気泳動図である。
【図15】実施例1(C−3)におけるネオサルトリア属に属する菌類とアスペルギルス フミガタスとの識別結果を示す電気泳動図である。
【図16】実施例1(C−4)におけるネオサルトリア フィシェリ フィシェリの各菌株を用いた電気泳動図である。
【図17】実施例1(C−4)におけるネオサルトリア フィシェリ グラブラの各菌株を用いた電気泳動図である。
【図18】実施例1(C−4)におけるネオサルトリア ヒラツカエの各菌株を用いた電気泳動図である。
【図19】実施例1(C−4)におけるネオサルトリア パウリステンシスの各菌株を用いた電気泳動図である。
【図20】実施例1(C−4)におけるネオサルトリア フィシェリ スピノサの各菌株を用いた電気泳動図である。
【図21】実施例1(D−1)におけるハミゲラ属に属する菌類の識別結果を示す電気泳動図である。
【図22】実施例1(D−2)におけるハミゲラ属に属する菌類の識別結果を示す電気泳動図である。
【図23】実施例1(D−3)におけるハミゲラ属に属する菌類の識別結果を示す電気泳動図である。
【図24】実施例1(D−4)におけるハミゲラ ストリアータの各菌株を用いた電気泳動図である。
【図25】実施例1(D−5)におけるハミゲラ アベラネアの各菌株を用いた電気泳動図である。
【図26】実施例1(D−6)におけるハミゲラ属及びビソクラミス属に属する菌類を用いた電気泳動図である。
【図27】実施例1(D−6)におけるハミゲラ属及びビソクラミス属に属する菌類を用いた電気泳動図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、耐熱性菌類のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列及び/又は28S rDNAのD1/D2領域の塩基配列、すなわち耐熱性菌類のβ−チューブリン遺伝子領域及び/又は28S rDNAのD1/D2領域中における耐熱性菌類の各属に特異的な領域又は種特異的領域(可変領域)の塩基配列で表される核酸を用いて耐熱性菌類の同定を行い、耐熱性菌類を特異的に識別・検出する方法である。
より詳細には、本発明は下記1)〜4)の同定・検出工程の少なくとも2つを包んでなる耐熱性菌類の検出方法である。
1)ビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子領域中におけるビソクラミス属に特異的な領域(可変領域)の塩基配列で表される核酸を用いてビソクラミス属に属する菌類の同定を行い、ビソクラミス属に属する菌類を特異的に識別・検出する工程。
2)タラロマイセス属(Talaromyces)に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子領域及び/又は28S rDNAのD1/D2領域中におけるタラロマイセス属に特異的な領域又は種特異的領域(可変領域)の塩基配列で表される核酸を用いてタラロマイセス属に属する菌類の同定を行い、タラロマイセス属に属する菌類を特異的に識別・検出する工程。
3)ネオサルトリア(Neosartorya)属に属する菌類又はアスペルギルス フミガタス(Aspergillus fumigatus)のβ−チューブリン遺伝子領域中におけるネオサルトリア属及び/又はアスペルギルス フミガタスに特異的な領域又は種特異的領域(可変領域)の塩基配列で表される核酸を用いてネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの同定を行い、ネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスを特異的に識別・検出する工程。
4)ハミゲラ属(Hamigera)に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子領域中におけるハミゲラ属に特異的な領域又は種特異的領域(可変領域)の塩基配列で表される核酸を用いてハミゲラ属に属する菌類の同定を行い、ハミゲラ属に属する菌類を特異的に識別・検出する工程。
本発明の検出方法は、上記1)〜4)の同定・検出工程のうち少なくとも2つの工程を含んでなり、好ましくは上記1)〜4)の同定・検出工程のうち少なくとも3つの工程を含んでなり、より好ましくは上記1)〜4)の同定・検出工程のすべての工程を含んでなるものである。
【0014】
本発明における「耐熱性菌類」とは、ビソクラミス属に属する菌類、タラロマイセス属に属する菌類、ネオサルトリア属に属する菌類、アスペルギルス フミガタス及びハミゲラ属に属する菌類を意味する。これらの菌類はマユハキタケ科(Trichocomaceae)に属する不整子嚢菌類であり、75℃、30分間の加熱処理後であっても生存可能な子のう胞子を形成する耐熱性菌類である。ビソクラミス属に属する菌類の例として、ビソクラミス ファルバ(Byssochlamys fulva)、ビソクラミス ニベア(Byssochlamys nivea)が挙げられる。タラロマイセス属に属する菌類の例として、タラロマイセス フラバス(Talaromyces flavus)、タラロマイセス ルテウス(Talaromyces luteus)、タラロマイセス トラキスペルムス(Talaromyces trachyspermus)、タラロマイセス ウォルトマンニー(Talaromyces wortmannii)、タラロマイセス バシリスポラス(Talaromyces bacillisporus)、タラロマイセス マクロスポラス(Talaromyces macrosporus)が挙げられる。ネオサルトリア属に属する菌類の例として、ネオサルトリア フィシェリ スピノサ(Neosartorya fischeri var. spinosa;以下ネオサルトリア スピノサとする)、ネオサルトリア フィシェリ フィシェリ(Neosartorya fischeri var. fischeri;以下ネオサルトリア フィシェリとする)、ネオサルトリア フィシェリ グラブラ(Neosartorya fischeri var. glabra;以下ネオサルトリア グラブラとする)、ネオサルトリア ヒラツカエ(Neosartorya hiratsukae)、ネオサルトリア パウリステンシス(Neosartorya paulistensis)、ネオサルトリア シュードフィシェリ(Neosartorya peudofischeri)が挙げられる。ハミゲラ属に属する菌類の例として、ハミゲラ アベラネア(Hamigera avellanea)、ハミゲラ ストリアータ(Hamigera striata)が挙げられる。
本発明における「アスペルギルス フミガタス」とは、ネオサルトリア フィシェリのアナモルフ(無性世代)と形態学的に極めて類似しているがテレオモルフ(有性世代)を有さない不完全菌類の一種である。
【0015】
「β−チューブリン」とは微小管を構成する蛋白質であり、「β−チューブリン遺伝子」とは、β−チューブリンをコードする遺伝子である。また、本発明において、「可変領域」とは、β−チューブリン遺伝子中又は28S rDNAのD1/D2領域中で塩基変異が蓄積しやすい領域であり、この領域の塩基配列は真菌の属又は種間で大きく異なる。これらの菌類のβ-チューブリン遺伝子又は28S rDNAのD1/D2領域の可変領域は、これらの菌類固有の塩基配列であるため、他の菌類のものとは明確に区別しうるものである。
【0016】
本発明の検出方法は、下記の(A)〜(K)の塩基配列で表される核酸、すなわち耐熱性菌類のβ−チューブリン遺伝子中又は28S rDNAのD1/D2領域中の特定領域(可変領域)の塩基配列に対応する核酸を用いることを特徴とする。
【0017】
本発明の検出方法において、ビソクラミス属に属する菌類を検出するために下記の(A)の塩基配列で表される核酸、すなわちビソクラミス属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子中の特定領域(可変領域)の塩基配列に対応する核酸を用いる。
(A)配列番号24に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつビソクラミス属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列
発明者らは、ビソクラミス属に属する菌類及びビソクラミス属に属する菌類に近縁な菌類から種々のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列を同定し、ビソクラミス属と近縁な属とビソクラミス属との間、及びビソクラミス属内での遺伝的距離の解析を行った。さらに、決定した各種のβ−チューブリン遺伝子配列の相同性解析をおこなった。その結果、当該配列中にビソクラミス属に属する菌類に固有の塩基配列を有する可変領域を見出した。この可変領域において、ビソクラミス属に属する菌類は固有の塩基配列を有しているため、ビソクラミス属に属する菌類を識別・同定することが可能となる。
【0018】
本発明の検出方法において、タラロマイセス属に属する菌類を検出するために下記の(B)〜(D)のいずれかの塩基配列で表される核酸、すなわちタラロマイセス属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子中及び/又は28S rDNAのD1/D2領域中の特定領域(可変領域)の塩基配列に対応する核酸を用いる。
(B)配列番号25に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列
(C)配列番号26に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列
(D)配列番号27に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列
発明者らは、タラロマイセス属に属する菌類及びタラロマイセス属に属する菌類に近縁な菌類から種々のβ−チューブリン遺伝子及び28S rDNAのD1/D2領域の塩基配列を同定し、タラロマイセス属と近縁な属とタラロマイセス属との間、及びタラロマイセス属内での遺伝的距離の解析を行った。さらに、決定した各種のβチューブリン遺伝子配列及び28S rDNAのD1/D2領域の塩基配列の相同性解析をおこなった。その結果、当該配列中にタラロマイセス属に属する菌類に固有の塩基配列を有する可変領域を見出した。この可変領域において、タラロマイセス属に属する菌類は固有の塩基配列を有しているため、タラロマイセス属に属する菌類を識別・同定することが可能となる。
【0019】
本発明の検出方法において、ネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスを検出するために下記(E)〜(J)のいずれかの塩基配列で表される核酸、すなわちネオサルトリア属に属する菌類又はアスペルギルス フミガタスのβ−チューブリン遺伝子中の特定領域(可変領域)の塩基配列に対応する核酸を用いる。
(E)配列番号28に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列
(F)配列番号29に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列
(G)配列番号30に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列
(H)配列番号31に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列
(I)配列番号32に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列
(J)配列番号33に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列
発明者らは、ネオサルトリア属に属する菌類、アスペルギルス フミガタス及びネオサルトリア属に属する菌類に近縁な菌類から種々のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列を同定し、ネオサルトリア属と近縁な属とネオサルトリア属との間、ネオサルトリア属内及び、ネオサルトリア属と近縁な属やネオサルトリア属とアスペルギルス フミガタスとの間での遺伝的距離の解析を行った。さらに、決定した各種のβチューブリン遺伝子配列の相同性解析をおこなった。その結果、当該配列中にネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスに固有の塩基配列を有する可変領域を見出した。この可変領域において、ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスは固有の塩基配列を有しているため、ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスを識別・同定することが可能となる。
【0020】
本発明の検出方法において、ハミゲラ属に属する菌類を検出するために下記(K)の塩基配列で表される核酸、すなわちハミゲラ属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子中の特定領域(可変領域)の塩基配列に対応する核酸を用いることを特徴とする。
(K)配列番号34に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつハミゲラ属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列
発明者らは、ハミゲラ属に属する菌類及びハミゲラ属に属する菌類に近縁な菌類から種々のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列を同定し、ハミゲラ属と近縁な属とハミゲラ属との間、及びハミゲラ属内での遺伝的距離の解析を行った。さらに、決定した各種のβチューブリン遺伝子配列の相同性解析をおこなった。その結果、当該配列中にハミゲラ属に属する菌類に固有の塩基配列を有する可変領域を見出した。この可変領域において、ハミゲラ属に属する菌類は固有の塩基配列を有しているため、ハミゲラ属に属する菌類を識別・同定することが可能となる。
本発明は、これらの可変領域及び可変領域に由来する核酸、オリゴヌクレオチドをターゲットとしたものである。
【0021】
本発明の検出方法に用いる前記(A)の塩基配列は、ビソクラミス属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列に対応する。
配列番号24に記載の塩基配列及びその相補配列は、ビソクラミス ニベアから単離、同定されたβ−チューブリン遺伝子の可変領域の塩基配列である。当該配列はビソクラミス属に属する菌類に特異的であり、被検体がこの塩基配列を有しているか否かを確認することで、ビソクラミス属に属する菌類を特異的に識別・同定することが可能である。また、配列番号24に記載の塩基配列若しくはその相補配列において、1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつビソクラミス属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列で表される核酸を用いても、同様にビソクラミス属に属する菌類を特異的に識別・同定することが可能である。これらの塩基配列で表される核酸は、特にビソクラミス ニベア及びビソクラミス ファルバを検出するために好適に用いられる。
【0022】
本発明の検出方法に用いる前記(B)又は(C)の塩基配列は、タラロマイセス属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配に対応する。また、前記(D)の塩基配列は、タラロマイセス属に属する菌類の28S rDNAのD1/D2領域の可変領域の塩基配列に対応する。
配列番号25に記載の塩基配列及びその相補配列は、タラロマイセス フラバスから単離、同定されたβ−チューブリン遺伝子の可変領域の塩基配列である。当該配列はタラロマイセス属に属する菌類に特異的であり、被検体がこの塩基配列を有しているか否かを確認することで、タラロマイセス属に属する菌類を特異的に識別・同定することが可能である。また、配列番号25に記載の塩基配列若しくはその相補配において、1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列で表される核酸を用いても、同様にタラロマイセス属に属する菌類を特異的に識別・同定することが可能である。これらの塩基配列で表される核酸は、タラロマイセス フラバス、タラロマイセス トラキスペルムスを検出するために好適に用いられる。
配列番号26に記載の塩基配列及びその相補配列は、タラロマイセス ルテウスから単離、同定されたβ−チューブリン遺伝子の可変領域の塩基配列である。当該配列はタラロマイセス属に属する菌類に特異的であり、被検体がこの塩基配列を有しているか否かを確認することで、タラロマイセス属に属する菌類を特異的に識別・同定することが可能である。また、配列番号26に記載の塩基配列若しくはその相補配において、1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列で表される核酸を用いても、同様にタラロマイセス属に属する菌類を特異的に識別・同定することが可能である。これらの塩基配列で表される核酸は、タラロマイセス ルテウス、タラロマイセス バシリスポラス、タラロマイセス ウォルトマンニーを検出するために好適に用いられる。
配列番号27に記載の塩基配列及びその相補配列は、タラロマイセス ウォルトマンニーから単離、同定された28S rDNAのD1/D2領域中の可変領域の塩基配列である。当該配列はタラロマイセス属に属する菌類に特異的であり、被検体がこの塩基配列を有しているか否かを確認することで、タラロマイセス属に属する菌類を特異的に識別・同定することが可能である。また、配列番号27に記載の塩基配列若しくはその相補配において、1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列で表される核酸を用いても、同様にタラロマイセス属に属する菌類を特異的に識別・同定することが可能である。これらの塩基配列で表される核酸は、タラロマイセス ウォルトマンニー、タラロマイセス フラバス、タラロマイセス トラキスペルムス、タラロマイセス マクロスポラスを検出するために好適に用いられる。
【0023】
本発明の検出方法に用いる前記(E)、(G)〜(J)の塩基配列は、ネオサルトリア属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列に対応する。また、前記(F)の塩基配列は、アスペルギルス フミガタスのβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列に対応する。
配列番号28に記載の塩基配列及びその相補配列は、ネオサルトリア グラブラから単離、同定されたβ−チューブリン遺伝子の可変領域の塩基配列である。配列番号30及び31に記載の塩基配列及びその相補配列は、ネオサルトリア フィシェリから単離、同定されたβ−チューブリン遺伝子の可変領域の部分塩基配列である。配列番号32及び33に記載の塩基配列及びその相補配列は、ネオサルトリア スピノサから単離、同定されたβ−チューブリン遺伝子の可変領域の部分塩基配列である。また、配列番号29に記載の塩基配列及びその相補配列は、アスペルギルス フミガタスから単離、同定されたβ−チューブリン遺伝子の可変領域の塩基配列である。当該配列はネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスに特異的であり、被検体がこの塩基配列を有しているか否かを確認することで、ネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスを特異的に識別・同定することが可能である。また、配列番号28〜33のいずれかに記載の塩基配列若しくはその相補配において、1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列で表される核酸を用いても、同様にネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスを特異的に識別・同定することが可能である。これらの塩基配列で表される核酸は、特にネオサルトリア グラブラ、ネオサルトリア フィシェリ、ネオサルトリア スピノサ、ネオサルトリア ヒラツカエ、ネオサルトリア パウリステンシス、ネオサルトリア シュードフィシェリ及びアスペルギルス フミガタスを検出するために好適に用いられる。
【0024】
本発明の検出方法に用いる前記(K)の塩基配列は、ハミゲラ属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列に対応する。
配列番号34に記載の塩基配列及びその相補配列は、ハミゲラ アベラネアから単離、同定されたβ−チューブリン遺伝子の可変領域の塩基配列である。当該配列はハミゲラ属に属する菌類に特異的であり、被検体がこの塩基配列を有しているか否かを確認することで、ハミゲラ属に属する菌類を特異的に識別・同定することが可能である。また、配列番号34に記載の塩基配列若しくはその相補配において、1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつハミゲラ属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列で表される核酸を用いても、同様にハミゲラ属に属する菌類を特異的に識別・同定することが可能である。これらの塩基配列で表される核酸は、特にハミゲラ アベラネア及びハミゲラ ストリアータを検出するために好適に用いられる。
以下、前記(A)〜(K)のいずれかの塩基配列をまとめて「本発明の可変領域の塩基配列」ともいう。
【0025】
上記本発明の可変領域の塩基配列で表される核酸を用いて耐熱性菌類を同定する方法として特に制限はなく、シークエンシング法、ハイブリダイゼンション法、PCR法など通常用いられる遺伝子工学的手法で行うことができる。
【0026】
本発明の検出方法において、前記本発明の可変領域の塩基配列で表される核酸を用いて耐熱性菌類の同定を行うためには、被検体のβ‐チューブリン遺伝子領域又は28S rDNAのD1/D2領域の塩基配列を決定し、該領域の塩基配列中に前記(A)〜(K)のいずれかの塩基配列が含まれるか否かを確認することが好ましい。
より詳細には、前記本発明の可変領域の塩基配列で表される核酸を用いてビソクラミス属に属する菌類の同定を行うには、被検体のβ−チューブリン遺伝子領域の塩基配列を決定し、該領域の塩基配列中に前記(A)の塩基配列が含まれるか否かを確認することが好ましい。すなわち、本発明の検出方法は、被検体の有するβ−チューブリン遺伝子の塩基配列を解析・決定し、決定した塩基配列と本発明の前記(A)記載のβ−チューブリン遺伝子の可変領域の塩基配列とを比較し、その一致又は相違に基づいてビソクラミス属に属する菌類の同定を行うことを好ましい態様として包含する。
前記本発明の可変領域の塩基配列で表される核酸を用いてタラロマイセス属に属する菌類の同定を行うには、被検体のβ−チューブリン遺伝子領域又は28S rDNAのD1/D2領域の塩基配列を決定し、該領域の塩基配列中に前記(B)〜(D)のいずれかの塩基配列が含まれるか否かを確認することが好ましい。すなわち、本発明の検出方法は、被検体の有するβ−チューブリン遺伝子又は28S rDNAのD1/D2領域の塩基配列を解析・決定し、決定した塩基配列と本発明の前記(B)〜(D)のいずれかに記載のβ−チューブリン遺伝子又は28S rDNAのD1/D2領域の可変領域の塩基配列とを比較し、その一致又は相違に基づいてタラロマイセス属に属する菌類の同定を行うことを好ましい態様として包含する。
前記本発明の可変領域の塩基配列で表される核酸を用いてネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの同定を行うには、被検体のβ−チューブリン遺伝子領域の塩基配列を決定し、該領域の塩基配列中に前記(E)〜(J)のいずれかの塩基配列が含まれるか否かを確認することが好ましい。すなわち、本発明の検出方法は、被検体の有するβ−チューブリン遺伝子の塩基配列を解析・決定し、決定した塩基配列と本発明の前記(E)〜(J)のいずれかに記載のβ−チューブリン遺伝子の可変領域の塩基配列とを比較し、その一致又は相違に基づいてネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの同定を行うことを好ましい態様として包含する。
前記本発明の可変領域の塩基配列で表される核酸を用いてハミゲラ属に属する菌類の同定を行うには、被検体のβ−チューブリン遺伝子領域の塩基配列を決定し、該領域の塩基配列中に前記(K)の塩基配列が含まれるか否かを確認することが好ましい。すなわち、本発明の検出方法は、被検体の有するβ−チューブリン遺伝子の塩基配列を解析・決定し、決定した塩基配列と本発明の前記(K)に記載のβ−チューブリン遺伝子の可変領域の塩基配列とを比較し、その一致又は相違に基づいてハミゲラ属に属する菌類の同定を行うことを好ましい態様として包含する。
塩基配列を解析・決定する方法としては特に限定されず、通常行われているRNA又はDNAシークエンシングの手法を用いることができる。
具体的には、マクサム−ギルバート法、サンガー法等の電気泳動法、質量分析法、ハイブリダイゼーション法等が挙げられる。サンガー法においては、放射線標識法、蛍光標識法等により、プライマー又は、ターミネーターを標識する方法が挙げられる。
【0027】
本発明においては、上記本発明の可変領域の塩基配列で表される核酸を用いて耐熱性菌類の検出・同定を行うために、前記本発明の可変領域の塩基配列、すなわち前記(A)〜(K)のいずれかの塩基配列で表される核酸にハイブリダイズすることができ、かつ耐熱性菌類を特異的に検出するための核酸プローブ又は核酸プライマーとして機能し得る検出用オリゴヌクレオチドを用いることができる。
より詳細には、ビソクラミス属に属する菌類の検出・同定を行うために、前記本発明の可変領域の塩基配列、すなわち前記(A)の塩基配列で表される核酸にハイブリダイズすることができ、かつビソクラミス属に属する菌類を特異的に検出するための核酸プローブ又は核酸プライマーとして機能し得る検出用オリゴヌクレオチドを用いることができる。
タラロマイセス属に属する菌類の検出・同定を行うために、前記本発明の可変領域の塩基配列、すなわち前記(B)〜(D)のいずれかの塩基配列で表される核酸にハイブリダイズすることができ、かつタラロマイセス属に属する菌類を特異的に検出するための核酸プローブ又は核酸プライマーとして機能し得る検出用オリゴヌクレオチドを用いることができる。
ネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出・同定を行うために、前記本発明の可変領域の塩基配列、すなわち前記(E)〜(J)のいずれかの塩基配列で表される核酸にハイブリダイズすることができ、かつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスを特異的に検出するための核酸プローブ又は核酸プライマーとして機能し得る検出用オリゴヌクレオチドを用いることができる。
ハミゲラ属に属する菌類の検出・同定を行うために、前記本発明の可変領域の塩基配列、すなわち前記(K)塩基配列で表される核酸にハイブリダイズすることができ、かつハミゲラ属に属する菌類を特異的に検出するための核酸プローブ又は核酸プライマーとして機能し得る検出用オリゴヌクレオチドを用いることができる。
本発明の検出用オリゴヌクレオチドは、上記耐熱性菌類の検出に使用できるものであればよい。すなわち、耐熱性菌類の検出のための核酸プライマーや核酸プローブとして使用できるものや、ストリンジェントな条件で耐熱性菌類のβ−チューブリン遺伝子又は28S rDNAのD1/D2領域の可変領域の塩基配列にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドであれば良い。なお、ここで、「ストリンジェントな条件」としては、例えば後述の条件が挙げられる。
【0028】
本発明の上記検出用オリゴヌクレオチドとしては、前記本発明のβ−チューブリン遺伝子又は28S rDNAのD1/D2領域の可変領域の塩基配列から選択される領域であって、(1)上記耐熱性菌類に固有の遺伝子の塩基配列が10塩基前後連続して現れる領域を含む、(2)オリゴヌクレオチドのGC含量がおよそ30%〜80%となる、(3)オリゴヌクレオチドの自己アニールの可能性が低い、(4)オリゴヌクレオチドのTm値(融解温度:melting temperature)がおよそ55℃〜65℃となる、の4つの条件を満たす領域にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドが好ましい。
より詳細には、ビソクラミス属に属する菌類を検出する場合、前記(A)の塩基配列で表される核酸中の領域であって、(1)ビソクラミス属に属する菌類に固有の遺伝子の塩基配列が10塩基前後連続して現れる領域を含む、(2)オリゴヌクレオチドのGC含量がおよそ30%〜80%となる、(3)オリゴヌクレオチドの自己アニールの可能性が低い、(4)オリゴヌクレオチドのTm値がおよそ55℃〜65℃となる、の4つの条件を満たす領域にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドが好ましい。
タラロマイセス属に属する菌類を検出する場合、前記(B)〜(D)のいずれかの塩基配列で表される核酸中の領域であって、(1)タラロマイセス属に属する菌類に固有の遺伝子の塩基配列が10塩基前後連続して現れる領域を含む、(2)オリゴヌクレオチドのGC含量がおよそ30%〜80%となる、(3)オリゴヌクレオチドの自己アニールの可能性が低い、(4)オリゴヌクレオチドのTm値がおよそ55℃〜65℃となる、の4つの条件を満たす領域にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドが好ましい。
ネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスを検出する場合、前記(E)〜(J)のいずれかの塩基配列で表される核酸中の領域であって、(1)ネオサルトリア及び/又はアスペルギルス フミガタスに固有の遺伝子の塩基配列が10塩基前後連続して現れる領域を含む、(2)オリゴヌクレオチドのGC含量がおよそ30%〜80%となる、(3)オリゴヌクレオチドの自己アニールの可能性が低い、(4)オリゴヌクレオチドのTm値がおよそ55℃〜65℃となる、の4つの条件を満たす領域にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドが好ましい。
ハミゲラ属に属する菌類を検出する場合、前記(K)の塩基配列で表される核酸中の領域であって、(1)ハミゲラ属に属する菌類に固有の遺伝子の塩基配列が10塩基前後連続して現れる領域を含む、(2)オリゴヌクレオチドのGC含量がおよそ30%〜80%となる、(3)オリゴヌクレオチドの自己アニールの可能性が低い、(4)オリゴヌクレオチドのTm値がおよそ55℃〜65℃となる、の4つの条件を満たす領域にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドが好ましい。
上記(1)において「ビソクラミス属に属する菌類に固有の遺伝子の塩基配列が10塩基前後連続して現れる領域」とは、前記本発明のβ−チューブリン遺伝子の可変領域の中でも、異なる属間での塩基配列の保存性が特に低く(すなわち、ビソクラミス属に属する菌類の特異性が特に高く)、10塩基前後にわたってビソクラミス属に属する菌類に固有の塩基配列が連続して現れる領域を意味する。また、「タラロマイセス属に属する菌類に固有の遺伝子の塩基配列が10塩基前後連続して現れる領域」とは、前記本発明のβ−チューブリン遺伝子又は28S rDNAのD1/D2領域の可変領域の中でも、異なる属間での塩基配列の保存性が特に低く(すなわち、タラロマイセス属に属する菌類の特異性が特に高く)、10塩基前後にわたってタラロマイセス属に属する菌類に固有の塩基配列が連続して現れる領域を意味する。また、「ネオサルトリア属に属する菌類又はアスペルギルス フミガタスに固有の遺伝子の塩基配列が10塩基前後連続して現れる領域」とは、前記本発明のβ−チューブリン遺伝子の可変領域の中でも、異なる属間での塩基配列の保存性が特に低く(すなわち、ネオサルトリア属に属する菌類又はアスペルギルス フミガタスの特異性が特に高く)、10塩基前後にわたってネオサルトリア属に属する菌類又はアスペルギルス フミガタスに固有の塩基配列が連続して現れる領域を意味する。また、「ハミゲラ属に属する菌類に固有の遺伝子の塩基配列が10塩基前後連続して現れる領域」とは、前記本発明のβ−チューブリン遺伝子の可変領域の中でも、異なる属間での塩基配列の保存性が特に低く(すなわち、ハミゲラ属に属する菌類の特異性が特に高く)、10塩基前後にわたってハミゲラ属に属する菌類に固有の塩基配列が連続して現れる領域を意味する。
また、上記(3)において「オリゴヌクレオチドの自己アニールの可能性が低い」とは、プライマーの塩基配列からプライマー同士が結合しないことが予想されることを言う。
本発明の検出用オリゴヌクレオチドの塩基数としては、特に限定されないが、13塩基〜30塩基であることが好ましく、18塩基〜23塩基であることがより好ましい。ハイブリダイズ時のオリゴヌクレオチドのTm値は、55℃〜65℃の範囲内であることが好ましく、59℃〜62℃の範囲内であることがより好ましい。オリゴヌクレオチドのGC含量は、30%〜80%が好ましく、45%〜65%がより好ましく、55%前後であることが最も好ましい。
【0029】
本発明の上記検出用オリゴヌクレオチドとしては、下記の(a)〜(w)のオリゴヌクレオチドがより好ましい。
下記(a)又は(b)で示されるオリゴヌクレオチドを用いることで、ビソクラミス属に属する菌類を検出することができる。
(a)配列番号1に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
【0030】
下記の(c)〜(k)のいずれかで示されるオリゴヌクレオチドを用いることで、タラロマイセス属に属する菌類を検出することができる。
(c)配列番号3に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(d)配列番号4に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(e)配列番号5に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(f)配列番号6に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(g)配列番号7に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(h)配列番号8に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(i)配列番号9に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(j)配列番号10に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(k)配列番号11に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
【0031】
下記の(l)〜(o)のいずれかのオリゴヌクレオチドを用いることで、ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスを検出することができる。
(l)配列番号12に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(m)配列番号13に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(n)配列番号14に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(o)配列番号15に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
さらに、下記の(v)と(w)のいずれかのオリゴヌクレオチドを用いることで、アスペルギルス フミガタスを特異的に検出できる。
(v)配列番号22に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(w)配列番号23に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
【0032】
下記の(p)〜(u)のいずれかのオリゴヌクレオチドを用いることで、ハミゲラ属に属する菌類を検出することができる。
(p)配列番号16に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(q)配列番号17に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(r)配列番号18に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(s)配列番号19に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(t)配列番号20に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(u)配列番号21に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
【0033】
すなわち、本発明の上記検出用オリゴヌクレオチドとしては、配列番号1〜23のいずれかに記載の塩基配列若しくはその相補配列で表されるオリゴヌクレオチド、配列番号1〜23のいずれかに記載の塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有する塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドであって、耐熱性菌類の検出に使用できるものが好ましい。耐熱性菌類の検出に使用できる塩基配列とは、配列番号1〜23のいずれかに記載の塩基配列に対して70%以上の相同性を有し、耐熱性菌類の検出のための核酸プライマーや核酸プローブとして耐熱性菌類の検出に使用できるものや、ストリンジェントな条件で各耐熱性菌類のβ−チューブリン遺伝子やタラロマイセス属に属する菌類の28SrDNAのD1/D2領域にハイブリダイズ可能な塩基配列でもよい。なお、ここで、「ストリンジェントな条件」としては、例えばMolecular Cloning−A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION[Joseph Sambrook, David W. Russell., Cold Spring Harbor Laboratory Press]記載の方法が挙げられ、例えば、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5% SDS、5×デンハート及び100mg/mLニシン精子DNAを含む溶液にプローブとともに65℃で8〜16時間恒温し、ハイブリダイズさせる条件が挙げられる。このような本発明で用いられるオリゴヌクレオチドは、前述するような耐熱性菌類の検出に使用できるものであれば、相同性が75%以上であることがさらに好ましく、相同性が80%以上であることがさらに好ましく、相同性が85%以上であることがさらに好ましく、相同性が90%以上であることがさらに好ましく、相同性が95%以上であることが特に好ましい。
また、本発明の検出用オリゴヌクレオチドには、耐熱性菌類の検出に使用できるものであれば、配列番号1から23のいずれかに記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドに対して、塩基の欠失、挿入あるいは置換といった変異や、修飾が施されたオリゴヌクレオチドも包含される。また、本発明のオリゴヌクレオチドには、配列番号1から23のいずれかに記載の塩基配列に対して、塩基の欠失、挿入あるいは置換といった変異や、修飾が施された塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドであり、耐熱性菌類の検出のためのプライマーやプローブとして耐熱性菌類の検出に使用できるものや、ストリンジェントな条件で各耐熱性菌類のβ−チューブリン遺伝子やタラロマイセス属に属する菌類の28SrDNAのD1/D2領域にハイブリダイズ可能な塩基配列でもよい。なお、ここで、「ストリンジェントな条件」としては、例えばMolecular Cloning−A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION[Joseph Sambrook, David W. Russell., Cold Spring Harbor Laboratory Press]記載の方法が挙げられ、例えば、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M 塩化ナトリウム、0.015M クエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5% SDS、5×デンハート及び100mg/mLニシン精子DNAを含む溶液にプローブとともに65℃で8〜16時間恒温し、ハイブリダイズさせる条件が挙げられる。そのような塩基の欠失、挿入あるいは置換といった変異や、修飾が施されたオリゴヌクレオチドとしては配列番号1から23のいずれかに記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドにおいて1又は数個、好ましくは1から5個、より好ましくは1から4個、さらに好ましくは1から3個、よりさらに好ましくは1から2個、特に好ましくは1個の塩基の欠失、挿入あるいは置換といった変異や、修飾されたオリゴヌクレオチドも包含される。また、配列番号1から23のいずれかに記載の塩基配列に、適当な塩基配列を付加してもよい。塩基配列の相同性については、Lipman−Pearson法(Science,227,1435,1985)等によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx−Win(ソフトウェア開発製)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、パラメーターであるUnit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出することができる。
【0034】
前記(a)及び(b)で示されるオリゴヌクレオチドは、ビソクラミス属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の可変領域と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドである。したがって、前記オリゴヌクレオチドを用いることによって、前記ビソクラミス属に属する菌類を特異的、迅速かつ簡便に検出することができる。
【0035】
配列番号1及び配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドは、β−チューブリン遺伝子領域に存在し、ビソクラミス属に属する菌類に特異的な塩基配列、すなわち可変領域の一部分に相補的なオリゴヌクレオチドである。配列番号1及び配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドは、ビソクラミス属に属する菌類のDNA及びRNAの一部分と特異的にハイブリダイズすることができる。
【0036】
ビソクラミス属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の可変領域をビソクラミス ニベアを例として詳細に説明する。上述のように、ビソクラミス ニベアのβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列は配列番号24で示される。このうち、ビソクラミス属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列の20位から175位までの領域は真菌の属間で塩基配列の保存性が特に低く、属固有の塩基配列を有する領域であることを本発明者らが見い出した。 前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドは、配列番号24に記載の塩基配列のうち、それぞれ33位から52位まで、159位から178位までの領域に対応する。したがって、前記オリゴヌクレオチドをビソクラミス属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子にハイブリダイズさせることによって、ビソクラミス属に属する菌類を特異的に検出することができる。
【0037】
前記(c)から(k)のオリゴヌクレオチドは、タラロマイセス属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子又は28S rDNAのD1/D2領域の可変領域と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドである。したがって、前記オリゴヌクレオチド対を用いることによって、前記タラロマイセス属に属する菌類を特異的、迅速かつ簡便に検出することができる。
【0038】
配列番号3及び配列番号4に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドは、β−チューブリン遺伝子領域に存在し、タラロマイセス属に属する菌類の内タラロマイセス フラバス、タラロマイセス トラキスペルムスに特異的な塩基配列、すなわち可変領域の一部分に相補的なオリゴヌクレオチドである。配列番号5〜6及び配列番号10〜11に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドは、β−チューブリン遺伝子領域に存在し、タラロマイセス属に属する菌類の内タラロマイセス ルテウス、タラロマイセス ウォルトマンニー、タラロマイセス バシリスポラスに特異的な塩基配列、すなわち可変領域の一部分に相補的なオリゴヌクレオチドである。配列番号7〜8及び配列番号9に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドは、28S rDNA中のD1/D2領域に存在し、タラロマイセス属に属する菌類の内タラロマイセス フラバス、タラロマイセス ウォルトマンニー、タラロマイセス トラキスペルムス、タラロマイセス マクロスポラスに特異的な塩基配列、すなわち可変領域中の一部分に相補的なオリゴヌクレオチドである。これらのオリゴヌクレオチドは、タラロマイセス属に属する菌類のDNA及びRNAの一部分に特異的にハイブリダイズすることができる。
【0039】
タラロマイセス属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の可変領域をタラロマイセス フラバス及びタラロマイセス ルテウスを例として詳細に説明する。上述のように、タラロマイセス フラバスのβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列は配列番号25、タラロマイセス ルテウスのβ―チューブリン遺伝子の部分塩基配列は配列番号26で示される。このうち、タラロマイセス フラバスのβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列の可変領域は10位から40位までの領域、及び70位から100位までの領域はタラロマイセス フラバス、タラロマイセス トラキスペルムスと特に保存性が高い配列であり、他の真菌で類似する配列がない領域であることを本発明者らが見出した。さらに、タラロマイセス ルテウスのβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列の可変領域は120から160位までの領域及び295位から325位までの領域は遺伝的に近縁なタラロマイセス ルテウス、タラロマイセス ウォルトマンニー、タラロマイセス バシリスポラスと保存性が高い配列であり、他の真菌で類似する配列がない領域であることを本発明者らが見い出した。
前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドは、配列番号25に記載の塩基配列のうち、それぞれ15位から34位まで、76位から98位までの可変領域に対応する。前記(e)及び(f)及び前記(j)及び(k)のオリゴヌクレオチドは、配列番号26に記載の塩基配列のうち、それぞれ133位から153位まで、304位から325位までの可変領域に対応する。したがって、前記オリゴヌクレオチドをタラロマイセス属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子にハイブリダイズさせることによって、タラロマイセス属に属する菌類を検出することができる。
【0040】
タラロマイセス属に属する菌類の28S rDNAのD1/D2領域の可変領域をタラロマイセス ウォルトマンニーを例として詳細に説明する。上述のように、タラロマイセス ウォルトマンニーの28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列は配列番号27で示される。このうち、タラロマイセス属に属する菌類の28S rDNAのD1/D2領域の部分塩基配列の300位から350位まで、及び450位から510位までの領域はタラロマイセス ウォルトマニー、タラロマイセス トラキスペルムス、タラロマイセス フラバス、タラロマイセス マクロスポラスで特に保存性が高い配列であり、他の真菌で類似する配列がない領域であることを本発明者らが見い出した。
前記(g)、(h)及び(i)で示されるオリゴヌクレオチドは、配列番号27に記載の塩基配列のうち、それぞれ326位から345位まで、460位から478位までの可変領域に対応する。したがって、前記オリゴヌクレオチドをタラロマイセス属に属する菌類の28S rDNAのD1/D2領域にハイブリダイズさせることによって、タラロマイセス属に属する菌類を検出することができる。
【0041】
前記(l)〜(o)のオリゴヌクレオチドは、ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスのβ−チューブリン遺伝子の可変領域と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドである。したがって、前記(l)〜(o)のオリゴヌクレオチドを用いることによって、前記ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスを特異的、迅速かつ簡便に検出することができる。
【0042】
配列番号12〜15に記載の塩基配列で示されたオリゴヌクレオチドは、β−チューブリン遺伝子領域に存在し、ネオサルトリア フィシェリ、ネオサルトリア スピノサ、ネオサルトリア グラブラ、ネオサルトリア ヒラツカエ、ネオサルトリア パウリステンシス、ネオサルトリア シュードフィシェリ等のネオサルトリア属に属する菌類、及びアスペルギルス フミガタスに特異的な塩基配列、すなわち可変領域の一部分に相補的なオリゴヌクレオチドである。これらのオリゴヌクレオチドは、ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスのDNA及びRNAの一部分に特定的にハイブリダイズすることができる。
【0043】
ネオサルトリア属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の可変領域をネオサルトリア グラブラを例として詳細に説明する。上述のように、ネオサルトリア グラブラのβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列は配列番号28で示される。このうち、ネオサルトリア属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列の1位から110位までの領域、140位から210位までの領域、及び350位から380位までの領域は真菌間で塩基配列の保存性が特に低く、属間によって固有の塩基配列を有する領域であることを本発明者らが見い出した。また、アスペルギルス フミガタスのβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列は配列番号29で示される。このうち、アスペルギルス フミガタスのβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列の1位から110位までの領域、140位から210位までの領域、及び350位から380位までの領域は真菌間で塩基配列の保存性が特に低く、種間によって固有の塩基配列を有する領域であることを本発明者らが見い出した。
前記(l)及び(m)で示されるオリゴヌクレオチドは、配列番号28に記載の塩基配列のうち、それぞれ84位から103位まで、169位から188位までの領域、配列番号29に記載の塩基配列のうち、それぞれ83位から102位まで、166位から186位までの領域に対応する。前記(n)及び(o)で示されるオリゴヌクレオチドは、配列番号28に記載の塩基配列のうち、それぞれ144位から163位まで、358位から377位までの領域、配列番号29に記載の塩基配列のうち、それぞれ141位から160位まで、356位から376位までの領域に対応する。したがって、前記オリゴヌクレオチドをネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスのβ−チューブリン遺伝子にハイブリダイズさせることによって、ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスを特異的に検出することができる。
【0044】
前記(v)及び(w)で示されるオリゴヌクレオチドはアスペルギルス フミガタスのβ−チューブリン遺伝子の可変領域と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドである。
配列番号22及び配列番号23に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドは、β−チューブリン遺伝子領域に存在し、アスペルギルス フミガタスに特異的な塩基配列、すなわち可変領域の一部分に相補的なオリゴヌクレオチドである。これらのオリゴヌクレオチドは、アスペルギルス フミガタスのDNA及びRNAの一部分に特定的にハイブリダイズすることができるが、ネオサルトリア属に属する菌類のDNA及びRNAにはハイブリダイズすることができない。
【0045】
アスペルギルス フミガタスのβ−チューブリン遺伝子の別の可変領域について説明する。配列番号29に記載のアスペルギルス フミガタスのβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列の20位から50位までの領域、及び200位から230位までの領域は真菌、特にネオサルトリア属に属する菌類との間で塩基配列の保存性が特に低いことを本発明者らが見い出した。
前記(v)及び(w)で示されるオリゴヌクレオチドは、配列番号29に記載の塩基配列のうち、それぞれ23位から44位まで、200位から222位までの領域に対応する。前記オリゴヌクレオチドはアスペルギルス フミガタスのβ−チューブリン遺伝子にハイブリダイズさせることができるが、ネオサルトリア属に属する菌類のDNA及びRNAにはハイブリダイズさせることができない。これを図1に基づき詳しく説明する。図1は、配列番号29〜33に記載のアスペルギルス フミガタス、ネオサルトリア フィシェリ及びネオサルトリア スピノサのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列の一部を比較した図である。図1に示すように、アスペルギルス フミガタスのβ−チューブリン遺伝子における配列番号22及び23のオリゴヌクレオチドが認識する領域と、この領域に対応するネオサルトリア属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の領域とを比較すると、塩基配列の相同性が他の領域と比べて非常に低いことがわかる。したがって、前記(v)及び/又は(w)で示されるオリゴヌクレオチドを用いることにより、被検体に含まれる菌類がネオサルトリア属に属する菌類かアスペルギルス フミガタスかを識別することができる。
【0046】
例えば、前記(l)〜(o)のオリゴヌクレオチドを用いた検出方法により陽性反応を示した試料において、前記(v)及び/又は(w)のオリゴヌクレオチドを用いることにより、当該試料に含まれる菌種を識別・検出することができる。上述のように、前記(v)及び(w)で示されるオリゴヌクレオチドはアスペルギルス フミガタスのDNA及びRNAの一部分に特定的にハイブリダイズすることができるが、ネオサルトリア属に属する菌類のDNA及びRNAの一部分には、ハイブリダイズすることができない。したがって、被検体に含まれるDNA又はRNAに前記(v)及び/又は(w)で示されるオリゴヌクレオチドがハイブリダイズした場合は被検体に含まれる菌類はアスペルギルス フミガタス、ハイブリダイズしなかった場合は被検体に含まれる菌類はネオサルトリア属の菌類、と識別することができる。
【0047】
さらに本発明では、前記(l)〜(o)のオリゴヌクレオチドを用いた検出方法により陽性反応を示した試料において、ネオサルトリア属に属する菌類とアスペルギルス フミガタスの発育可能温度帯の違いを利用することにより、又は前記(v)及び/又は(w)のオリゴヌクレオチドを用いることにより、当該試料に含まれる菌種を識別・検出することもできる。
【0048】
ネオサルトリア属に属する菌類の発育可能温度の上限は約45℃である。これに対して、アスペルギルス フミガタスは50℃以上でも発育が可能である。この発育可能温度帯の違いを利用して、例えば以下のような操作を行うことで菌種を検出することができる。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明の前記(l)〜(o)のオリゴヌクレオチドを用いた検出方法により陽性反応を示した試料について、単一コロニーから菌糸をPDA培地やPDB培地(ポテトデキストロース液体培地)等に植付け、48〜52℃で培養を行う。1〜2日間培養後、菌糸の伸長を確認する。そして、上記発育可能温度帯の違いに基づき、増殖が確認された場合はアスペルギルス フミガタス、増殖が確認されなかった場合はネオサルトリア属に属する菌類と識別することができる。なお、増殖の確認方法に特に制限はないが、実体顕微鏡による菌糸の伸長、液体培地中での菌糸の伸長、菌塊の形成、分生子の形成が挙げられる。
【0049】
前記(p)〜(u)ので示されるオリゴヌクレオチドは、ハミゲラ属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の可変領域と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドである。したがって、前記オリゴヌクレオチドを用いることによって、前記ハミゲラ属に属する菌類を特異的、迅速かつ簡便に検出することができる。
【0050】
配列番号16〜21に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドは、β−チューブリン遺伝子領域に存在し、ハミゲラ属に属する菌類に特異的な塩基配列、すなわち可変領域の一部分に相補的なオリゴヌクレオチドである。これらのオリゴヌクレオチドは、ハミゲラ属に属する菌類のDNA及びRNAの一部分に特異的にハイブリダイズすることができる。
【0051】
ハミゲラ属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の可変領域をハミゲラ アベラネアを例として詳細に説明する。上述のように、ハミゲラ アベラネアのβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列は配列番号34で示される。このうち、ハミゲラ属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列の350位から480位までの領域、1位から25位までの領域、及び180位から200位までの領域は真菌の属間で塩基配列の保存性が特に低く、属間によって固有の塩基配列を有することを本発明者らが見い出した。
前記(p)及び(q)で示されるオリゴヌクレオチドは、配列番号34に記載の塩基配列のうち、それぞれ358位から377位まで、440位から459位までの領域に対応する。前記(r)及び(s)で示されるオリゴヌクレオチドは、配列番号34に記載の塩基配列のうち、それぞれ2位から22位まで、181位から200位までの領域に対応する。また、前記(t)及び(u)で示されたオリゴヌクレオチドは、配列番号34に記載の塩基配列のうち、それぞれ172位から191位まで、397位から416位までの領域に対応する。したがって、前記オリゴヌクレオチドをハミゲラ属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子にハイブリダイズさせることによって、ハミゲラ属に属する菌類を特異的に検出することができる。
【0052】
なお、図2に示すように、ハミゲラ アベラネアのβ−チューブリン遺伝子の358位から377位まで及び440位から459位までの領域と相同性の高い領域がクラドスポリウム クラドスポロイデス(Cladosporium cladosporioides)等のクラドスポリウム(Cladosporium)属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子にも存在する。しかし、ハミゲラ アベラネアのβ−チューブリン遺伝子の181位から200位までの領域と相同性の高い領域はクラドスポリウム属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子には存在しない。従って、前記(p)〜(u)のオリゴヌクレオチドを組み合わせて用いることで、ハミゲラ属に属する菌類とクラドスポリウム属に属する菌類とを検出することができる。
すなわち、前記(s)、(t)及び(u)のオリゴヌクレオチドは、ハミゲラ属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の可変領域とハイブリダイズすることができるが、クラドスポリウム属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の可変領域とハイブリダイズすることができない。そのため、例えば前記(p)及び(q)のオリゴヌクレオチドを用いた検出方法により陽性反応を示した試料について、前記(r)及び(s)で示されたオリゴヌクレオチド及び/又は前記(t)及び(u)で示されたオリゴヌクレオチドを用いることにより当該試料に含まれる菌種がハミゲラ属かクラドスポリウム属であるかを識別することができる。
【0053】
なお、「クラドスポリウム属に属する菌類」は糸状不完全菌類であり、耐熱性の高い子のう胞子を形成しない。また、住環境や食品工場などに広く分布し、メラニン色素を合成するため、黒色汚れの原因菌である。クラドスポリウム属に属する菌類の例として、クラドスポリウム クラドスポロイデス、クラドスポリウム スファエロスファーマム(Cladosporium sphaerospermum)が挙げられる。
【0054】
本発明の検出方法においては、上記(a)〜(w)の検出用オリゴヌクレオチドの内、下記の(a1)〜(w1)のオリゴヌクレオチドが好ましく、配列番号1〜23に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドがより好ましい。
(a1)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(b1)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(c1)配列番号3に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(d1)配列番号4に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(e1)配列番号5に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(f1)配列番号6に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(g1)配列番号7に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(h1)配列番号8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(i1)配列番号9に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(j1)配列番号10に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(k1)配列番号11に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(l1)配列番号12に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(m1)配列番号13に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(n1)配列番号14に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(o1)配列番号15に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(p1)配列番号16に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(q1)配列番号17に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(r1)配列番号18に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(s1)配列番号19に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(t1)配列番号20に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(u1)配列番号21に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(v1)配列番号22に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(w1)配列番号23に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
【0055】
後述するように、本発明の検出方法において、上記本発明の検出用オリゴヌクレオチドは核酸プローブ又は核酸プライマーとして好適に用いることができる。
上記検出用オリゴヌクレオチドの結合様式は、天然の核酸に存在するホスホジエステル結合だけでなく、例えばホスホロアミデート結合、ホスホロチオエート結合等であってもよい。
【0056】
本発明で用いられる検出用オリゴヌクレオチドは、例えばDNA自動合成機等を用いた化学合成等の通常の合成方法により調製することができる。また、耐熱性菌類の遺伝子から制限酵素等を用いて直接切り出したり、また遺伝子をクローニングして単離精製した後、制限酵素などを用いて切り出して調製することも可能である。操作の容易さ、大量かつ安価に一定品質のオリゴヌクレオチドを得られる点から化学合成により調製するのが好ましい。
【0057】
本発明においては、前記(a)のオリゴヌクレオチドと前記(b)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対をビソクラミス属に属する菌類検出用オリゴヌクレオチド対として用いることができる。なかでも、前記(a1)のオリゴヌクレオチドと前記(b1)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対を用いるのが好ましく、配列番号1及び配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を用いるのがより好ましい。
【0058】
本発明においては、前記(c)のオリゴヌクレオチドと前記(d)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対、(e)のオリゴヌクレオチドと前記(f)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対、前記(g)のオリゴヌクレオチドと前記(h)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対、前記(i)のオリゴヌクレオチドと前記(h)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対、及び前記(j)のオリゴヌクレオチドと前記(k)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対をタラロマイセス属に属する菌類検出用オリゴヌクレオチド対として用いることができる。なかでも、前記(c1)のオリゴヌクレオチドと前記(d1)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対、(e1)のオリゴヌクレオチドと前記(f1)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対、前記(g1)のオリゴヌクレオチドと前記(h1)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対、前記(i1)のオリゴヌクレオチドと前記(h1)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対、又は前記(j1)のオリゴヌクレオチドと前記(k1)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対を用いるのが好ましく、配列番号3及び配列番号4に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、配列番号5及び配列番号6に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、配列番号7及び配列番号8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、配列番号9及び配列番号8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、又は配列番号10及び配列番号11に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を用いるのがより好ましい。
前記(c)及び(d)で示されたオリゴヌクレオチド対を用いることで、タラロマイセス フラバス、タラロマイセス トラキスペルムスを特異的に検出することができる。また、前記(e)及び(f)で示されたオリゴヌクレオチド対又は前記(j)及び(k)で示されたオリゴヌクレオチド対を用いることで、タラロマイセス ルテウス、タラロマイセス ウォルトマンニー、タラロマイセス バシリスポラスを特異的に検出することができる。さらに、前記(g)及び(h)で示されたオリゴヌクレオチド対を用いることで、タラロマイセス フラバス、タラロマイセス ウォルトマンニー、タラロマイセス トラキスペルムス、タラロマイセス マクロスポラスを特異的に検出することができる。また、前記(i)及び(h)で示されたオリゴヌクレオチド対を用いることで、タラロマイセス フラバス、タラロマイセス トラキスペルムス、タラロマイセス マクロスポラスを特異的に検出することができる。
【0059】
本発明においては、前記(l)のオリゴヌクレオチドと前記(m)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対、前記(n)のオリゴヌクレオチドと前記(o)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対、及び前記(v)のオリゴヌクレオチドと前記(w)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対をネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタス検出用オリゴヌクレオチド対として用いることができる。
なかでも、ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスを検出するためには、前記(l)及び(m)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、又は前記(n)及び(o)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を用いるのが好ましく、前記(l1)及び(m1)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、又は前記(n1)及び(o1)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を用いるのがより好ましく、配列番号12及び配列番号13に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、又は配列番号14及び配列番号15に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を用いるのがさらに好ましい。 前記(l)のオリゴヌクレオチドと前記(m)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対及び前記(n)のオリゴヌクレオチドと前記(o)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対は、ネオサルトリア フィシェリ、ネオサルトリア スピノサ、ネオサルトリア グラブラ、ネオサルトリア ヒラツカエ、ネオサルトリア パウリステンシス、ネオサルトリア シュードフィシェリ等のネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスの検出に特に好適に用いられる。
また、アスペルギルス フミガタスを検出するためには、前記(v)及び(w)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を用いるのが好ましく、前記(v1)及び(w1)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を用いるのがより好ましく、配列番号22及び配列番号23に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を用いるのがさらに好ましい。前記(v)のオリゴヌクレオチドと前記(w)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対は、アスペルギルス フミガタスの検出に好適に用いられる。
【0060】
本発明においては、前記(p)のオリゴヌクレオチドと前記(q)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対、前記(r)のオリゴヌクレオチドと前記(s)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対、及び前記(t)のオリゴヌクレオチドと前記(u)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対をハミゲラ属に属する菌類検出用オリゴヌクレオチド対として用いることができる。なかでも、前記(p1)のオリゴヌクレオチドと前記(q1)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対、前記(r1)のオリゴヌクレオチドと前記(s1)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対、又は前記(t1)のオリゴヌクレオチドと前記(u1)のオリゴヌクレオチドとからなるオリゴヌクレオチド対を用いるのが好ましく、配列番号16及び配列番号17に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、配列番号18及び配列番号19に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、又は配列番号20及び配列番号21に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を用いるのがより好ましい。
前記(p)及び(q)で示されたオリゴヌクレオチド対、前記(r)及び(s)で示されたオリゴヌクレオチド対、及び前記(t)及び(u)で示されたオリゴヌクレオチド対は、ハミゲラ アベラネア、ハミゲラ ストリアータの検出に好適に用いられる。
【0061】
本発明の検出方法において、前記本発明の可変領域の塩基配列で表される核酸を用いて耐熱性菌類の同定を行うには、前記(A)〜(K)のいずれかの塩基配列で表される核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする検出用オリゴヌクレオチドを標識化し、得られた検出用オリゴヌクレオチドを検査対象物より抽出した核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズさせ、ハイブリダイズした検出用オリゴヌクレオチドの標識を測定することが好ましい。この場合、前記(A)〜(K)のいずれかの塩基配列で表される核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする検出用オリゴヌクレオチドとしては、上述した本発明の検出用オリゴヌクレオチド及びオリゴヌクレオチド対を用いることができ、好ましい範囲も同様である。
【0062】
本発明で用いられる検出用オリゴヌクレオチド及びオリゴヌクレオチド対は、核酸プローブとして用いることができる。核酸プローブは、前記オリゴヌクレオチドを標識物によって標識化することで調製することができる。前記標識物としては特に制限されず、放射性物質や酵素、蛍光物質、発光物質、抗原、ハプテン、酵素基質、不溶性担体などの通常の標識物を用いることができる。標識方法は、末端標識でも、配列の途中に標識してもよく、また、糖、リン酸基、塩基部分への標識であってもよい。上記核酸プローブは耐熱性菌類のβ−チューブリン遺伝子又は28S rDNAの可変領域の一部と特異的にハイブリダイズするので、被検体中の耐熱性菌類を迅速かつ簡便に検出することができる。かかる標識の検出手段としては、例えば核酸プローブが放射性同位元素で標識されている場合にはオートラジオグラフィー等、蛍光物質で標識されている場合には蛍光顕微鏡等、化学発光物質で標識されている場合には感光フィルムを用いた解析やCCDカメラを用いたデジタル解析等が挙げられる。
このようにして標識化された本発明の検出用オリゴヌクレオチドを、通常の方法により検査対象物から抽出された核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズさせた後、ハイブリダイズした検出用オリゴヌクレオチドの標識を測定することで耐熱性菌類を検出することができる。ここで、ストリンジェントな条件としては、前述した条件を挙げることができる。また、核酸とハイブリダイズした核酸プローブの標識を測定する方法としては、通常の方法(FISH法、ドットブロット法、サザンブロット法、ノーザンブロット法等)を用いることができる。
【0063】
例えば、前記(l)及び/若しくは(m)で示されるオリゴヌクレオチド、前記(n)及び/若しくは(o)で示されるオリゴヌクレオチド又は前記(v)及び/若しくは(w)で示されるオリゴヌクレオチドを標識化して核酸プローブとすることができる。上記前記(l)及び/若しくは(m)で示されるオリゴヌクレオチド又は前記(n)及び/若しくは(o)で示されるオリゴヌクレオチドからなる核酸プローブはネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスのβ−チューブリン遺伝子の可変領域の一部と特異的にハイブリダイズするので、被検体中のネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスを迅速かつ簡便に検出することができる。また、前記(v)及び/又は(w)で示されるオリゴヌクレオチドからなる核酸プローブは、アスペルギルス フミガタスのβ−チューブリン遺伝子の可変領域の一部と特異的にハイブリダイズするが、ネオサルトリア属に属する菌類のDNA及びRNAにはハイブリダイズできない。したがって、これらのオリゴヌクレオチドがハイブリダイズしたかを確認することで、被検体中の菌類がネオサルトリア属に属する菌類であるかアスペルギルス フミガタスであるかを迅速かつ簡便に識別することができる。
【0064】
また、本発明で用いられる検出用オリゴヌクレオチドは、固相担体に結合させて捕捉プローブとして用いることもできる。この場合、捕捉プローブと、標識核酸プローブの組み合わせでサンドイッチアッセイを行うこともできるし、標的核酸を標識して捕捉することもできる。
【0065】
本発明の検出方法において、前記本発明の可変領域の塩基配列で表される核酸を用いて耐熱性菌類の同定を行うには、前記(A)〜(K)のいずれかの塩基配列で表される核酸中の一部又は全部の領域からなる核酸を遺伝子増幅し、増幅産物の有無を確認することも好ましい態様である。この場合、本発明の検出用オリゴヌクレオチド及びオリゴヌクレオチド対を、核酸プライマー及び核酸プライマー対としても用いることができ、好ましい範囲も同様である。なかでも、本発明の検出用オリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いて遺伝子増幅処理を行い、遺伝子の増幅を確認することにより検出することが好ましい。
【0066】
より詳細には、ビソクラミス属に属する菌類の同定を行うには、前記(A)の塩基配列で表される核酸中の一部又は全部の領域からなる核酸を遺伝子増幅し、増幅産物の有無を確認することが好ましい。この場合、前記(A)の塩基配列で表される核酸中の領域であって、(1)ビソクラミス属に属する菌類に固有の遺伝子の塩基配列が10塩基前後連続して現れる領域を含む、(2)オリゴヌクレオチドのGC含量がおよそ30%〜80%となる、(3)オリゴヌクレオチドの自己アニールの可能性が低い、(4)オリゴヌクレオチドのTm値がおよそ55℃〜65℃となる、の4つの条件を満たす領域にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いることが好ましい。なかでも、前記(a)及び/又は(b)のオリゴヌクレオチド及びオリゴヌクレオチド対を、核酸プライマー及び核酸プライマー対として用いることが好ましく、前記(a1)及び/又は(b1)のオリゴヌクレオチド及びオリゴヌクレオチド対を、核酸プライマー及び核酸プライマー対として用いることがより好ましく、配列番号1及び2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドを核酸プライマー及び核酸プライマー対として用いるのがさらに好ましい。
【0067】
タラロマイセス属に属する菌類の同定を行うには、前記(B)〜(D)のいずれかの塩基配列で表される核酸中の一部又は全部の領域からなる核酸を遺伝子増幅し、増幅産物の有無を確認することが好ましい。この場合、前記(B)〜(D)のいずれかの塩基配列で表される核酸中の領域であって、(1)タラロマイセス属に属する菌類に固有の遺伝子の塩基配列が10塩基前後連続して現れる領域を含む、(2)オリゴヌクレオチドのGC含量がおよそ30%〜80%となる、(3)オリゴヌクレオチドの自己アニールの可能性が低い、(4)オリゴヌクレオチドのTm値がおよそ55℃〜65℃となる、の4つの条件を満たす領域にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いることが好ましい。なかでも、前記(c)〜(k)のいずれかのオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いることが好ましく、前記(c1)〜(k1)のいずれかのオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いることがより好ましく、配列番号3〜11に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いるのがさらに好ましい。また、前記(c)及び(d)で示されたオリゴヌクレオチド対、前記(e)及び(f)で示されたオリゴヌクレオチド対、前記(g)及び(h)で示されたオリゴヌクレオチド対、前記(i)及び(h)で示されたオリゴヌクレオチド対、又は前記(j)及び(k)で示されたオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いることが好ましく、前記(c1)及び(d1)で示されたオリゴヌクレオチド対、前記(e1)及び(f1)で示されたオリゴヌクレオチド対、前記(g1)及び(h1)で示されたオリゴヌクレオチド対、前記(i1)及び(h1)で示されたオリゴヌクレオチド対、又は前記(j1)及び(k1)で示されたオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いることがより好ましく、配列番号3及び配列番号4に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、配列番号5及び配列番号6に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、配列番号7及び配列番号8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、配列番号9及び配列番号8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、配列番号10及び配列番号11に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いるのがさらに好ましい。
また、検出特異性及び検出感度の点からは、前記(i)及び(h)で示されたオリゴヌクレオチド対、又は前記(j)及び(k)で示されたオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いることが好ましく、前記(i1)及び(h1)で示されたオリゴヌクレオチド対、又は前記(j1)及び(k1)で示されたオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いることがより好ましく、配列番号9及び配列番号8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、又は配列番号10及び配列番号11に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いることがさらに好ましい。
【0068】
ネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの同定を行うには、前記(E)〜(J)のいずれかの塩基配列で表される核酸中の一部又は全部の領域からなる核酸を遺伝子増幅し、増幅産物の有無を確認することが好ましい。この場合、前記(E)〜(J)のいずれかの塩基配列で表される核酸中の領域であって、(1)ネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスに固有の遺伝子の塩基配列が10塩基前後連続して現れる領域を含む、(2)オリゴヌクレオチドのGC含量がおよそ30%〜80%となる、(3)オリゴヌクレオチドの自己アニールの可能性が低い、(4)オリゴヌクレオチドのTm値がおよそ55℃〜65℃となる、の4つの条件を満たす領域にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いることが好ましい。なかでも、前記(l)〜(o)及び(v)〜(w)のいずれかのオリゴヌクレオチドを、核酸プライマーとして用いることが好ましく、前記(l1)〜(o1)又は(v1)〜(w1)のいずれかのオリゴヌクレオチドを、核酸プライマーとして用いることがより好ましく、配列番号12〜15及び22〜23に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いるのがさらに好ましい。例えば、前記(l)及び(m)のオリゴヌクレオチド又は前記(n)及び(o)のオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いて遺伝子増幅処理を行い、遺伝子の増幅を確認することで、ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスを検出することができる。食品事故で特に問題となるネオサルトリア属に属する菌類を検出するために、前記の方法によりこれらの菌が検出された試料について、さらに(v)及び(w)のオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いて遺伝子増幅処理を行い、遺伝子の増幅を確認することで、ネオサルトリア属に属する菌類かアスペルギルス フミガタスかを識別することができる。
また、前記(l)及び(m)で示されたオリゴヌクレオチド対、前記(n)及び(o)で示されたオリゴヌクレオチド対、又は前記(v)及び(w)で示されたオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いることが好ましく、前記(l1)及び(m1)で示されたオリゴヌクレオチド対、前記(n1)及び(o1)で示されたオリゴヌクレオチド対、又は前記(v1)及び(w1)で示されたオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いることが好ましく、配列番号12及び配列番号13に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、配列番号14及び配列番号15に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、配列番号22及び配列番号23に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いるのがさらに好ましい。
特に、ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスを検出する場合には、検出特異性及び検出感度の点からは、前記(n)及び(o)で示されたオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いることが好ましく、前記(n1)及び(o1)で示されたオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いることがより好ましく、配列番号14及び配列番号15に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いることがさらに好ましい。アスペルギルス フミガタスを検出する場合には、検出特異性及び検出感度の点からは、前記(v)及び(w)で示されたオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いることが好ましく、前記(v1)及び(w1)で示されたオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いることがより好ましく、配列番号22及び配列番号23に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いることがさらに好ましい。
【0069】
ハミゲラ属に属する菌類の同定を行うには、前記(K)の塩基配列で表される核酸中の一部又は全部の領域からなる核酸を遺伝子増幅し、増幅産物の有無を確認することが好ましい。この場合、前記(K)の塩基配列で表される核酸中の領域であって、(1)ハミゲラ属に属する菌類に固有の遺伝子の塩基配列が10塩基前後連続して現れる領域を含む、(2)オリゴヌクレオチドのGC含量がおよそ30%〜80%となる、(3)オリゴヌクレオチドの自己アニールの可能性が低い、(4)オリゴヌクレオチドのTm値がおよそ55℃〜65℃となる、の4つの条件を満たす領域にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いることが好ましい。なかでも、前記(p)〜(u)のいずれかのオリゴヌクレオチドを、核酸プライマー及び核酸プライマー対として用いることが好ましく、前記(p1)〜(u1)のいずれかのオリゴヌクレオチドを、核酸プライマー及び核酸プライマー対として用いることが好ましく、配列番号16〜21に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いるのがさらに好ましい。例えば、前記(p)及び(q)のオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いて遺伝子増幅処理を行い、遺伝子の増幅を確認することでハミゲラ(Hamigera)属に属する菌類及びクラドスポリウム属に属する菌類を検出することができる。食品事故で特に問題となるハミゲラ属に属する菌類を検出するために、前記の方法によりこれらの菌が検出された試料について、さらに前記(r)及び(s)のオリゴヌクレオチド又は前記(t)及び(u)のオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いて遺伝子増幅処理を行い、遺伝子の増幅を確認することで、ハミゲラ属に属する菌類かクラドスポリウム属に属する菌類かを識別することができる。
また、前記(p)及び(q)で示されたオリゴヌクレオチド対、前記(r)及び(s)で示されたオリゴヌクレオチド対、又は前記(t)及び(u)で示されたオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いることが好ましく、前記(p1)及び(q1)で示されたオリゴヌクレオチド対、前記(r1)及び(s1)で示されたオリゴヌクレオチド対、又は前記(t1)及び(u1)で示されたオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いることが好ましく、配列番号16及び配列番号17に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、配列番号18及び配列番号19に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、又は配列番号20及び配列番号21に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を用いるのがさらに好ましい。
特に、検出特異性の点からは、前記(r)及び(s)で示されたオリゴヌクレオチド対、又は前記(t)及び(u)で示されたオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いるのが好ましく、前記(r1)及び(s1)で示されたオリゴヌクレオチド対、又は前記(t1)及び(u1)で示されたオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いるのがより好ましく、配列番号18及び配列番号19に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、又は配列番号20及び配列番号21に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いることがさらに好ましい。検出感度の点からは、前記(t)及び(u)で示されたオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いるのが好ましく、前記(t1)及び(u1)で示されたオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いるのがより好ましく、配列番号20及び配列番号21に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマー対として用いることがさらに好ましい。
【0070】
本発明の核酸プライマーは、前記オリゴヌクレオチドをそのまま核酸プライマーとして用いることもできるし、前記オリゴヌクレオチドを標識物で標識化して核酸プライマーとして用いることができる。標識物及び標識方法の例としては、核酸プローブの場合と同様のものが挙げられる。
【0071】
本発明において、遺伝子増幅処理はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法により行うことが好ましい。PCR反応の条件は、目的のDNA断片を検出可能な程度に増幅することができれば特に制限されない。PCRの反応条件の好ましい一例としては、ビソクラミス属に属する菌類を検出する場合には、例えば、2本鎖DNAを1本鎖にする熱変性反応を95〜98℃で10〜60秒間行い、プライマー対を1本鎖DNAにハイブリダイズさせるアニーリング反応を59〜61℃で約60秒間行い、DNAポリメラーゼを作用させる伸長反応を約72℃で約60秒間行い、これらを1サイクルとしたものを約30〜35サイクル行う。タラロマイセス属に属する菌類を検出する場合には、例えば、2本鎖DNAを1本鎖にする熱変性反応を95〜97℃で約10〜60秒間行い、プライマー対を1本鎖DNAにハイブリダイズさせるアニーリング反応を55〜61℃で約60秒間行い、DNAポリメラーゼを作用させる伸長反応を約72℃で約60秒間行い、これらを1サイクルとしたものを約30〜35サイクル行う。前記(l)及び(m)オリゴヌクレオチド又は前記(n)及び(o)のオリゴヌクレオチドを用いてネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスを検出する場合には、例えば、2本鎖DNAを1本鎖にする熱変性反応を95〜98℃で10〜60秒間行い、プライマー対を1本鎖DNAにハイブリダイズさせるアニーリング反応を59〜61℃で約60秒間行い、DNAポリメラーゼを作用させる伸長反応を約72℃で約60秒間行い、これらを1サイクルとしたものを約30〜35サイクル行う。前記(v)及び(w)のオリゴヌクレオチドを用いてネオサルトリア属に属する菌類かアスペルギルス フミガタスかを検出する場合は、2本鎖DNAを1本鎖にする熱変性反応を95〜98℃で10〜60秒間行い、プライマー対を1本鎖DNAにハイブリダイズさせるアニーリング反応を59〜61℃で約60秒間行い、DNAポリメラーゼを作用させる伸長反応を約72℃で約60秒間行い、これらを1サイクルとしたものを30〜35サイクル行う。前記(p)及び(q)で示されるオリゴヌクレオチドを用いてハミゲラ属に属する菌類を検出する場合には、例えば、2本鎖DNAを1本鎖にする熱変性反応を95〜98℃で10〜60秒間行い、プライマー対を1本鎖DNAにハイブリダイズさせるアニーリング反応を約59〜63℃で約60秒間行い、DNAポリメラーゼを作用させる伸長反応を約72℃で約60秒間行い、これらを1サイクルとしたものを約30〜35サイクル行う。前記(r)及び(s)で示されるオリゴヌクレオチド又は前記(t)及び(u)で示されるオリゴヌクレオチドを用いてハミゲラ属に属する菌類を検出する場合には、例えば、2本鎖DNAを1本鎖にする熱変性反応を95〜98℃で10〜60秒間行い、プライマー対を1本鎖DNAにハイブリダイズさせるアニーリング反応を約59〜63℃で約60秒間行い、DNAポリメラーゼを作用させる伸長反応を約72℃で約60秒間行い、これらを1サイクルとしたものを約30〜35サイクル行う。
【0072】
本発明において、遺伝子断片の増幅の確認は通常の方法で行うことができる。例えば遺伝子増幅反応時に放射性物質などの標識の結合したヌクレオチドを取り込ませる方法、PCR反応産物について電気泳動を行い増幅した遺伝子の大きさに対応するバンドの有無を確認する方法、PCR反応産物の塩基配列を解読する方法、増幅したDNA2本鎖の間に蛍光物質を入り込ませ発光させる方法等が挙げられるが、本発明はこれらの方法に限定されるものではない。本発明においては、遺伝子増幅処理後に電気泳動を行い、増幅した遺伝子の大きさに対応するバンドの有無を確認する方法が好ましい。
【0073】
配列番号24に記載の塩基配列において、33位から178位までの塩基数は146塩基である。したがって、被検体にビソクラミス属に属する菌類が含まれる場合、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド対をプライマーセットとして使用してPCR反応を行い、得られたPCR反応産物について電気泳動を行うと、ビソクラミス属に属する菌類に特異的な約150bpのDNA断片の増幅が認められる。この操作を行うことにより、ビソクラミス属に属する菌類を検出、識別することができる。
【0074】
配列番号25に記載の塩基配列において、15位から98位までの塩基数は83塩基、配列番号26に記載の塩基配列において133位から325位までの塩奇数は192塩基である。また、配列番号27に記載の塩基配列において、326位から478位までの塩基数は152塩基である。したがって、被検体にタラロマイセス フラバス及び/又はタラロマイセス トラキスペルムスが含まれる場合、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対をプライマーセットとして使用してPCR反応を行い、得られたPCR反応産物について電気泳動を行うと、これらの菌類に特異的な約80bpのDNA断片の増幅が認められる。また、被検体にタラロマイセス ルテウス、タラロマイセス ウォルトマンニー及び/又はタラロマイセス バシリスポラスが含まれる場合、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対又は前記(j)及び(k)のオリゴヌクレオチド対をプライマーセットとして使用してPCR反応を行い、得られたPCR反応産物について電気泳動を行うと、これらの菌類に特異的な約200bpのDNA断片の増幅が認められる。さらに、被検体にタラロマイセス マクロスポラス、タラロマイセス ウォルトマンニー、タラロマイセス フラバス及び/又はタラロマイセス トラキスペルムスが含まれる場合、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対をプライマーセットとして使用してPCR反応を行い、得られたPCR反応産物について電気泳動を行うと、これらの菌類に特異的な約150bpのDNA断片の増幅が認められる。被検体にタラロマイセス マクロスポラス、タラロマイセス フラバス及び/又はタラロマイセス トラキスペルムスが含まれる場合、前記(i)及び(h)のオリゴヌクレオチド対をプライマーセットとして使用してPCR反応を行い、得られたPCR反応産物について電気泳動を行うと、これらの菌類に特異的な約150bpのDNA断片の増幅が認められる。この操作を行うことにより、タラロマイセス属に属する菌類を検出、識別することができる。なお、被検体にタラロマイセス ウォルトマンニーが含まれる場合、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対又は前記(j)及び(k)のオリゴヌクレオチド対と、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対とを同時に用いると、約200bpと約150bpの2本のバンドが確認される。
【0075】
被検体にネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスが含まれる場合、前記(l)及び(m)のオリゴヌクレオチド対をプライマーセットとして使用してPCR反応を行い、得られたPCR反応産物について電気泳動を行うと、これらの菌類に特異的な約100bpのDNA断片の増幅が認められる。また、前記(n)及び(o)のオリゴヌクレオチド対をプライマーセットとして使用してPCR反応を行い、得られたPCR反応産物について電気泳動を行うと、これらの菌類に特異的な約200bpのDNA断片の増幅が認められる。この操作を行うことにより、ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスを検出、検出することができる。
さらに、被検体にアスペルギルス フミガタスが含まれる場合、前記(v)及び(w)のオリゴヌクレオチド対をプライマーセットとして使用してPCR反応を行い、得られたPCR反応産物について電気泳動を行うと、これらの菌類に特異的な約200bpのDNA断片の増幅が認められる。しかし、ネオサルトリア属に属する菌類が含まれる場合、前記(v)及び(w)のオリゴヌクレオチド対をプライマーセットとして使用してPCR反応を行っても、DNA断片の増幅が認められない。従って、前記(v)及び(w)のオリゴヌクレオチド対をプライマーセットとして使用してPCR反応を行うことにより、アスペルギルス フミガタスのみを検出することができる。
【0076】
遺伝子増幅の確認について、前記(p)及び(q)で示されたオリゴヌクレオチド対を用いた場合、配列番号34に記載の塩基配列において、358位から459位までの塩基数は約100塩基である。したがって、被検体にハミゲラ属に属する菌類が含まれる場合、前記(p)及び(q)のオリゴヌクレオチド対をプライマーセットとして使用してPCR反応を行い、得られたPCR反応産物について電気泳動を行うと、これらの菌類に特異的な約100bpのDNA断片の増幅が認められる。
配列番号34に記載の塩基配列において、2位から200位までの塩基数は約200塩基である。また、前記(t)及び(u)で示されたオリゴヌクレオチド対を用いた場合、配列番号34に記載の塩基配列において、172位から416位までの塩基数は245塩基である。したがって、被検体にハミゲラ属に属する菌類が含まれる場合、前記(r)及び(s)のオリゴヌクレオチド対又は前記(t)及び(u)のオリゴヌクレオチド対をプライマーセットとして使用してPCR反応を行い、得られたPCR反応産物について電気泳動を行うと、この菌類に特異的な約200bp又は約240bpのDNA断片の増幅が認められる。この操作を行うことにより、ハミゲラ属に属する菌類を検出、検出することができる。
【0077】
本発明の検出方法において、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対、又は前記(i)及び(h)のオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法と、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対又は前記(j)及び(k)のオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法とを同時に用いてタラロマイセス属に属する菌類を検出することも好ましい態様である。複数のオリゴヌクレオチド対を組み合わせて用いることで、タラロマイセス属に属する菌類を網羅的に検出することができる。なかでも、前記(c1)及び(d1)のオリゴヌクレオチド対、前記(g1)及び(h1)のオリゴヌクレオチド対、又は前記(i1)及び(h1)のオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法と、前記(e1)及び(f1)のオリゴヌクレオチド対又は前記(j1)及び(k1)のオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法とを組合わせて用いることがより好ましく、配列番号3及び4に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、配列番号7及び8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、又は配列番号9及び8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法と、配列番号5及び6に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対、又は配列番号10及び11に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法とを組合わせて用いることがさらに好ましい。
具体的には、上述したように前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対を用いることで、タラロマイセス フラバス、タラロマイセス トラキスペルムスを特異的に検出することができる。また、前記(e)及び(f)、又は前記(j)及び(k)のオリゴヌクレオチド対を用いることで、タラロマイセス ウォルトマンニー、タラロマイセス ルテウス、タラロマイセス バシリスポラスを特異的に検出することができる。さらに、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対を用いることで、タラロマイセス フラバス、タラロマイセス トラキスペルムス、タラロマイセス ウォルトマンニー、タラロマイセス マクロスポラスを特異的に検出することができる。また、前記(i)及び(h)のオリゴヌクレオチド対を用いることで、タラロマイセス フラバス、タラロマイセス トラキスペルムス、タラロマイセス マクロスポラスを特異的に検出することができる。したがって、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対、又は前記(i)及び(h)のオリゴヌクレオチド対と、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対又は前記(j)及び(k)のオリゴヌクレオチド対とを組み合わせて用いることにより、食品事故で特に問題となるタラロマイセス属に属する菌類を網羅的に検出することができる。
特に、検出感度の点からは、前記(i)及び(h)のオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法と、前記(j)及び(k)のオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法とを組み合わせて用いることが好ましく、前記(i1)及び(h1)のオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法と前記(j1)及び(k1)のオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法とを組み合わせて用いることがより好ましく、配列番号9及び8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法と、配列番号10及び11に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法とを組合わせて用いることがさらに好ましい。
なお、本発明において、「同時に用いて遺伝子増幅処理工程を行う」とは、2つのオリゴヌクレオチド対を混合し、混合したものを1の反応系にプライマーとして添加して前述のような遺伝子増幅処理工程を行うことを意味する。2つのオリゴヌクレオチド対を同時に用いることで、タラロマイセス属に属する菌類をより迅速かつ網羅的に検出することができる。2つのオリゴヌクレオチド対の混合比は特に制限はないが、1:1〜1:2が好ましい。
【0078】
本発明の検出方法においては、前記(l)及び(m)で示されたオリゴヌクレオチド対並びに/又は前記(n)及び(o)で示されたオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法と、前記(v)及び(w)で示されたオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法とを組合わせて用いることも好ましい態様である。前述したように、前記(l)及び(m)で示されたオリゴヌクレオチド対、前記(n)及び(o)で示されたオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法はネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスを、前記(v)及び(w)で示されたオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法はアスペルギルス フミガタスをそれぞれ検出することができるため、これらの方法を組合わせることにより被検体から検出された菌類がネオサルトリア属に属する菌類かアスペルギルス フミガタスであるかを識別することができる。なかでも、前記(l1)及び(m1)で示されたオリゴヌクレオチド対並びに/又は前記(n1)及び(o1)で示されたオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法と、前記(v1)及び(w1)で示されたオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法とを組合わせて用いることがより好ましく、配列番号12及び13に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対並びに/又は配列番号14及び15に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法と、配列番号22及び23に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法とを組合わせて用いることがさらに好ましい。
特に、検出感度の点からは、前記(n)及び(o)のオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法と、前記(v)及び(w)のオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法とを組み合わせて用いることが好ましく、前記(n1)及び(o1)のオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法と、前記(v1)及び(w1)のオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法とを組み合わせて用いることがより好ましく、配列番号14及び15に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法と、配列番号22及び23に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法とを組合わせて用いることがさらに好ましい。
【0079】
本発明の検出方法においては、前記(p)及び(q)のオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法と、前記(r)及び(s)のオリゴヌクレオチド対又は前記(t)及び(u)で示されたオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法とを組合わせて用いることも好ましい態様である。これらの方法を組合わせることにより被検体からハミゲラ属に属する菌類のみを特異的に検出することができる。すなわち、これらの方法を組合わせることにより被検体から検出された菌類がハミゲラ属かクラドスポリウム属であるかを識別することができる。ハミゲラ属に属する菌類はマイコトキシン(カビ毒)を生産しないので、両属の検出によりマイコトキシンのリスク予測が可能となる。また、両属は耐熱性が異なるため、属の違いを検出することにより、菌体の混入が加熱前なのか否かの予想を立てることができるため、殺菌工程の見直しや容器の機密性の確認など原因解明に生かすことが出来る。なかでも、前記(p1)及び(q1)のオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法と、前記(r1)及び(s1)のオリゴヌクレオチド対又は前記(t1)及び(u1)で示されたオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法とを組合わせて用いることがより好ましく、配列番号16及び17に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法と、配列番号18及び19に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対又は配列番号20及び21に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法とを組合わせて用いることがさらに好ましい。
特に、検出感度の点からは、前記(p)及び(q)のオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法と、前記(t)及び(u)で示されたオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法とを組合わせて用いることが好ましく、前記(p1)及び(q1)のオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法と、前記(t1)及び(u1)で示されたオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法とを組合わせて用いることがより好ましく、配列番号16及び17に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法と、配列番号20及び21に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対を用いた検出方法とを組合わせて用いることがさらに好ましい。
【0080】
次に、本発明の耐熱性菌類の検出方法の一実施態様について具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0081】
1)事故原因菌解析
耐熱性菌により汚染事故を引き起こす可能性がある飲食品としては、糖類や蛋白質を含むために強い条件で殺菌ができない飲食品が挙げられる。このような飲食品としては、果実、果汁等の農産物や乳等の畜産物を原料等する飲食品が挙げられる。
事故を引き起こした飲料等より検出された菌糸からDNAを回収する。その後、耐熱性菌検出用プライマーを用いてPCR反応等の遺伝子増幅処理を行う。例えば、前記(a)及び(b)で示されるオリゴヌクレオチド対、前記(t)及び(u)で示されるオリゴヌクレオチド対、前記(n)及び(o)で示されるオリゴヌクレオチド対、前記(i)及び(h)で示されるオリゴヌクレオチド対並びに、前記(j)及び(k)で示されるオリゴヌクレオチド対を用いてPCR反応等の遺伝子増幅処理を行う。遺伝子増幅処理後電気泳動を行い、反応産物の有無を確認する。これと同時に、回収した菌体の一部をクロラムフェニコール加PDAに接種し、50℃で培養する。
ネオサルトリア属に属する菌類検出用プライマー(前記(n)及び(o)で示されるオリゴヌクレオチド対)を用いた系で反応産物が確認された場合、50℃で培養した菌糸の伸長を確認し、ネオサルトリアであるかアスペルギルス フミガタスであるのかを確認する。又は、ネオサルトリアとアスペルギルス フミガタス検出用オリゴヌクレオチドを用いて検出を行う。例えば、前記(v)及び(w)で示されるオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いてPCR反応を行い、約200bpの反応産物が認められた場合はアスペルギルス フミガタス、反応産物が認められなかった場合はネオサルトリア属に属する菌類が陽性であると判定する。
ビソクラミス属に属する菌類検出用プライマー(前記(a)及び(b)で示されるオリゴヌクレオチド対)を用いた系で反応産物が確認された場合、ビソクラミス属に属する菌類が陽性であると判定する。
ハミゲラ属に属する菌類検出用プライマー(前記(t)及び(u)で示されるオリゴヌクレオチド対)を用いた系で反応産物が確認された場合、ハミゲラ属に属する菌類が陽性であると判定する。
タラロマイセス属に属する菌類検出用プライマー(前記(j)及び(k)で示されるオリゴヌクレオチド対及び/又は前記(i)及び(h)で示されるオリゴヌクレオチド対)を用いた系で反応産物が確認された場合、タラロマイセス属に属する菌類が陽性であると判定する。
耐熱性菌類は熱殺菌条件でも生存することから、原料及び工程より耐熱性菌類が混入した可能性が極めて高い。そのため、耐熱性菌類陽性の場合は、原料及び製造環境の清浄度の精査が必要となる。逆に耐熱性菌類が陰性である場合は、殺菌不良あるいは殺菌後の混入が原因であるので、殺菌工程の見直しや容器の機密性の確認を行う必要がある(原因究明)。
【0082】
2)原料の微生物検査
通常の原料の菌類の検査は、一般菌類(検体をヒートショック処理しない)と耐熱性菌類(検体をヒートショックする)の2つの試験が必要となる。しかしながら、本発明によれば、検体をヒートショック処理する必要がなくなる。すなわち、一般菌類だけの検査を行い、菌糸が確認された場合はその菌糸を用いて上記1)の方法により耐熱性菌類であるか否かの判断を行うことができる。従来の方法では、通常耐熱性菌類検出に7日間程度が必要であったが、本発明によれば、通常3日間程度の菌糸確認後、2日以内での検出が可能であり、2日間検出を早めることが可能となる。また、従来の方法では、熱性菌類検出後菌種の同定に更に約7日間必要とするが、本発明の方法では、検出と同時に属レベルの同定を行うことができる。
【0083】
本発明の耐熱性菌類の検出方法において、被検体としては特に制限はなく、飲食品自体、飲食品の原材料、単離菌体、培養菌体等を用いることができる。
被検体からDNAを調製する方法としては、耐熱性菌類の検出を行うのに十分な精製度及び量のDNAが得られるのであれば特に制限されず、通常の方法や市販の調製用キットを用いることができる。また、被検体中のRNAを逆転写して得られるDNAを用いることもできる。
【0084】
本発明の耐熱性菌類の検出方法によれば、被検体の調製工程から菌類の検出工程までを約5〜12時間という短時間で行うことが可能である。
【0085】
また、本発明の耐熱性菌類識別用キットは、下記の区分(1)〜(4)のオリゴヌクレオチド対から選ばれ、かつ互いに異なる群から選ばれた少なくとも2対のオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして含有するものである。
(1)前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド対
(2)前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対、前記(i)及び(h)のオリゴヌクレオチド対、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対、並びに前記(j)及び(k)のオリゴヌクレオチド対からなる群
(3)前記(l)及び(m)のオリゴヌクレオチド対、前記(n)及び(o)のオリゴヌクレオチド対、並びに前記(v)及び(w)のオリゴヌクレオチド対からなる群
(4)前記(p)及び(q)のオリゴヌクレオチド対、前記(r)及び(s)のオリゴヌクレオチド対、並びに前記(t)及び(u)のオリゴヌクレオチド対からなる群
本発明の耐熱性菌類識別用キットは、前記(1)〜(4)の各区分から選ばれたオリゴヌクレオチド対を、各区分につき少なくとも1対ずつ含有するのが好ましい。また、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対又は前記(i)及び(h)のオリゴヌクレオチド対、並びに前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対又は前記(j)及び(k)のオリゴヌクレオチド対が核酸プライマーとして含まれていることも好ましい態様である。また、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド対、前記(i)及び(h)のオリゴヌクレオチド対、前記(j)及び(k)のオリゴヌクレオチド対、前記(n)及び(o)のオリゴヌクレオチド対、前記(t)及び(u)のオリゴヌクレオチド対、及び前記(v)及び(w)のオリゴヌクレオチド対が核酸プライマーとして含まれていることも好ましい態様である。
このキットは、耐熱性菌類の検出、識別方法に用いることができる。本発明のキットは、前記核酸プライマーの他に、目的に応じ、標識検出物質、緩衝液、核酸合成酵素(DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素等)、酵素基質(dNTP,rNTP等)等、菌類の検出、識別に通常用いられる物質を含有する。このキットには、本発明の検出用オリゴヌクレオチド対によって遺伝子増幅反応が正常に進行することを確認するための陽性対照(ポジティブコントロール)を含んでいてもよい。陽性対照としては、例えば、本発明の検出用オリゴヌクレオチドにより増幅される領域を含んだDNAが挙げられる。
【実施例】
【0086】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0087】
実施例1
(A−1)ビソクラミス属に属する菌類の検出、識別
1.βチューブリン部分長の塩基配列決定
下記の方法によりビソクラミス属各種のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列を決定した。ポテトデキストロース寒天斜面培地にて30℃、7日間、暗所培養したビソクラミス属菌体からGenとるくんTM(タカラバイオ(株)社製)を使用し、DNAを抽出した。目的とする部位のPCR増幅は、PuRe TaqTM Ready-To-Go PCR Beads(GE Health Care UK LTD製)を用いて、プライマーとしてBt2a(5’-GGTAACCAAATCGGTGCTGCTTTC-3’:配列番号35)、Bt2b(5’-ACCCTCAGTGTAGTGACCCTTGGC-3’:配列番号36)(Glass and Donaldson,Appl Environ Microbiol 61:1323−1330,1995)を使用した。増幅条件は、βチューブリン部分長は変性温度95℃、アニーリング温度59℃、伸長温度72℃、35サイクルで実施した。PCR産物は、Auto SegTM G−50(Amersham Pharmacia Biotech社製)を使用し精製した。PCR産物は、BigDye terminator Ver. 1.1(商品名:Applied Biosystems社製)を使用してラベル化し、ABI PRISM 3130 Genetic Analyzer(Applied Biosystems社製)で電気泳動を実施した。電気泳動時の蛍光シグナルからの塩基配列の決定には、ソフトウエアー“ATGC Ver.4”(Genetyx社製)を使用した。
シークエンシング法により決定したビソクラミス ニベアや各種菌類の公知のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列情報をもとに、DNA解析ソフトウエア(商品名:DNAsis pro、日立ソフトウエア社製)を用いてアライメント解析を行い、ビソクラミス属に属する菌類に特異的な塩基配列を含有するβ−チューブリン遺伝子の中の特定領域(配列番号24)を決定した。
【0088】
2.ビソクラミス属に属する菌類の検出及び属レベルでの同定
(1)プライマーの設計
上記で得られたビソクラミス属に属する菌類に特異的な塩基配列領域のうち、3’末端側でタラロマイセス属に属する菌類の特異性が特に高い領域から、1)属固有の塩基配列が数塩基前後存在している、2)GC含量が概ね30%〜80%となる、3)自己アニールの可能性が低い、4)Tm値が概ね55〜65℃程度となる、の4つの条件を満たす部分領域の検討を行った。この塩基配列を基にして1組のプライマー対を設計し、各種菌体から抽出したDNAを鋳型として用いてPCR反応によるビソクラミス属検出及び属同定の有効性を検討した。すなわち、ビソクラミス属DNAを鋳型とした反応では約150bpにDNA増幅反応が認められ、その他のカビのゲノムDNAを鋳型とした反応では増幅産物が認められないことの検討を行った。その結果、ビソクラミス ニベア及びビソクラミス ファルバで特異的に約150bpにDNA増幅が認められ、その他のカビのゲノムDNAを鋳型とした反応では増幅産物が認めらかった。この結果より、ビソクラミス属の網羅的な検出、すなわちビソクラミス属の属レベルでの同定が可能であることを確認した。有効性が確認できたプライマー対は、配列番号1及び2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー対である。なお、使用したプライマーはシグマ アルドリッチ ジャパン社に合成依頼し(脱塩精製品、0.02μmolスケール)、購入した。
【0089】
(2)検体の調製
設計したプライマーの有効性の評価に用いる真菌類、すなわちビソクラミス属とその他の耐熱性カビ及び一般カビとしては、表1及び表2に記載の菌を使用した。これらの菌類は千葉大学医学部真菌医学研究センターが保管し、IFMナンバーなどにより管理されているものを入手し、使用した。
各菌体を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて指摘温度、すなわち一般カビは25℃、耐熱性カビ及びアスペルギルス フミガタスは30℃で7日間培養した。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
(3)ゲノムDNAの調製
各菌体を寒天培地から白金耳を用いて回収した。
ゲノムDNA調製用キット(商品名 PrepMan ultra、アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、回収した菌体からゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は50ng/μlに調製した。
【0093】
(4)PCR反応
DNAテンプレートとして、上記で調製したゲノムDNA溶液1μl、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μl、無菌蒸留水10μlを混合し、配列番号1に記載の塩基配列で表されるプライマー(0.02pmol/μl)0.5μl及び配列番号2に記載の塩基配列で表されるプライマー(0.02pmol/μl)0.5μlを加え、25μlのPCR反応液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)95℃、1分間の熱変性反応、(ii)59℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを35サイクル行った。
【0094】
(5)増幅した遺伝子断片の確認
PCR反応後、PCR反応液から2μlを分取し、2%アガロースゲルで電気泳動を行い、SYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。アガロースゲルの電気泳動図を図3(a)及び図3(b)に示す。なお、図3(a)は表1に示す菌類の試料についての電気泳動図を示し、図3(b)は表2に示す菌類の試料についての電気泳動図を示す。図中の番号は表記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。
その結果、ビソクラミス属に属する菌類のゲノムDNAを含む試料(図3(b)の1〜4レーン)では、150bp程度の遺伝子断片の増幅が確認された。一方、ビソクラミス属に属する菌類のゲノムDNAを含まない試料では、遺伝子断片の増幅は確認されなかった。以上の結果から、本発明ののオリゴヌクレオチドを用いることによって、ビソクラミス属に属する菌類を特異的に検出することができる。
【0095】
(A−2)ビソクラミス属に属する菌類の検出、識別
(1)プライマーの調製
実施例1(A−1)で設計した、配列番号1及び2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマーを使用した。
【0096】
(2)検体の調製
前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドのビソクラミス属に属する菌類に対する検出特異性を確かめるために、図4に示すビソクラミス ファルバの各菌株及び図5に示すビソクラミス ニベアの各菌株を使用した。これらの菌類は独立行政法人製品製品評価技術基盤機構によりNBRC番号で管理されているもの及びThe Centraalbureau voor SchimmelculturesによりCBS番号で管理されているもの等を入手し、使用した。
各菌体を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて30℃で7日間培養した。
【0097】
(3)ゲノムDNAの調製
各菌体を寒天培地から白金耳を用いて回収した。
ゲノムDNA調製用キット(商品名 PrepMan ultra、アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、回収した菌体からゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は50ng/μlに調製した。
【0098】
(4)PCR反応
DNAテンプレートとして、上記で調製したゲノムDNA溶液1μl、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μl、無菌蒸留水10μlを混合し、配列番号1に記載の塩基配列で表されるプライマー(0.02pmol/μl)0.5μl及び配列番号2に記載の塩基配列で表されるプライマー(0.02pmol/μl)0.5μlを加え、25μlのPCR反応液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)95℃、1分間の熱変性反応、(ii)59℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを35サイクル行った。
【0099】
(5)増幅した遺伝子断片の確認
PCR反応後、PCR反応液から4μlを分取し、2%アガロースゲルで電気泳動を行い、SYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。アガロースゲルの電気泳動図を図4及び図5に示す。なお、図4はビソクラミス ファルバの各菌株の試料についての電気泳動図を示し、図5はビソクラミス ニベアの各菌株の試料についての電気泳動図を示す。
その結果、使用したビソクラミス ファルバ及びビソクラミス ニベアの全ての菌株において、特異的な増幅DNA断片が確認された。したがって、本発明のオリゴヌクレオチドを用いることによって、菌株の種類に左右されることなくビソクラミス属に属する菌類を高い精度で特異的に検出することができることがわかる。
【0100】
(B−1)タラロマイセス属に属する菌類の検出、識別
1.タラロマイセス属に属する菌類に特異的な塩基配列の解析
下記の方法によりタラロマイセス属各種のβ−チューブリン遺伝子及び28S rDNAのD1/D2領域の塩基配列を決定した。ポテトデキストロース寒天斜面培地にて25℃、7日間、暗所培養したタラロマイセス属菌体からGenとるくんTM(タカラバイオ(株)社製)を使用し、DNAを抽出した。目的とする部位のPCR増幅は、PuRe TaqTM Ready-To-Go PCR Beads(GE Health Care UK LTD製)を用いて、プライマーとして、βチューブリンの部分長に関してはBt2a(5’-GGTAACCAAATCGGTGCTGCTTTC-3’:配列番号35)、Bt2b(5’-ACCCTCAGTGTAGTGACCCTTGGC-3’:配列番号36)(Glass and Donaldson,Appl Environ Microbiol 61:1323−1330,1995)を使用し、28SrDNAのD1/D2領域はNL1(5’-GCATATCAATAAGCGGAGGAAAAG-3’:配列番号37)とNL4(5’-GGTCCGTGTTTCAAGACGG-3’:配列番号38)(The fungal homorph:Mitotic and plemorphic speciation in fungal systematics.,Wallingford:CAB international.)を用いた。増幅条件は、βチューブリン部分長は変性温度95℃、アニーリング温度59℃、伸長温度72℃、35サイクル、28S rDNAのD1/D2領域は編成温度95℃、アニーリング温度55℃、伸長温度72℃、35サイクルで実施した。PCR産物は、Auto SegTM G−50(Amersham Pharmacia Biotech社製)を使用し精製した。PCR産物は、BigDye terminator Ver. 1.1(商品名:Applied Biosystems社製)を使用してラベル化し、ABI PRISM 3130 Genetic Analyzer(Applied Biosystems社製)で電気泳動を実施した。電気泳動時の蛍光シグナルからの塩基配列の決定には、ソフトウエアー“ATGC Ver.4”(Genetyx社製)を使用した。
シークエンシング法により決定した各種菌類(タラロマイセス フラバス、タラロマイセス ルテウス、タラロマイセス ウォルトマンニー)のβ−チューブリン遺伝子及び28S rDNAのD1/D2領域の塩基配列情報、及び各種菌類の公知のβ−チューブリン遺伝子及び28S rDNAのD1/D2領域の塩基配列情報をもとに、DNA解析ソフトウエア(商品名:DNAsis pro、日立ソフトウエア社製)を用いてアライメント解析を行い、タラロマイセス属に属する菌類に特異的な塩基配列を含有するβ−チューブリン遺伝子及び28S rDNAのD1/D2領域の中の特定領域(配列番号25〜27)を決定した。
【0101】
2.タラロマイセス属に属する菌類の検出及び属レベルでの同定
(1)プライマーの設計
上記で得られたタラロマイセス属に属する菌類に特異的な塩基配列領域(配列番号25〜27)のうち、3’末端側でタラロマイセス属に属する菌類の特異性が特に高い領域から、1)属固有の塩基配列が数塩基前後存在している、2)GC含量が概ね30%〜80%となる、3)自己アニールの可能性が低い、4)Tm値が概ね55〜65℃程度となる、の4つの条件を満たす部分領域の検討を行った。この塩基配列を基にしてβチューブリン遺伝子に関しては5組のプライマー対を、28S rDNAのD1/D2領域に関しては5組のプライマー対を設計し、各種菌体から抽出したDNAを鋳型として用いてPCR反応によるタラロマイセス属検出及び属同定の有効性を検討した。その結果、βチューブリン遺伝子のプライマーのうち5組中1組でタラロマイセス フラバス(Talaromyces flavus)及びタラロマイセス トラキスペルムス(Talaromyces trachyspermus)で特異的に、設計したプライマー対から予想されるサイズにDNA増幅が認められた。有効性が確認できたプライマー対は配列番号3及び4である。
続いて複数のプライマー対を組み合わせることによりタラロマイセス属の網羅的な検出、すなわちタラロマイセス属DNAを鋳型とした反応では設計したプライマー対から予想されるサイズにDNA増幅反応が認められ、その他のカビのゲノムDNAを鋳型とした反応では増幅産物が認められないことの検討を行った。その結果、βチューブリンのプライマー5組中2組のプライマー対と28S rDNAのD1/D2領域のプライマー5組中2組のプライマー対を混合して用いることによりタラロマイセス属の網羅的な検出、すなわちタラロマイセス属の属レベルでの同定が可能であることを確認した。有効性が確認できたプライマー対は、配列番号5〜11に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー対である。なお、使用したプライマーはシグマ アルドリッチ ジャパン社に合成依頼し(脱塩精製品、0.02μmolスケール)、購入した。
【0102】
(2)検体の調製
設計したプライマーの特異性の評価に用いる真菌類、すなわちタラロマイセス属とその他の耐熱性カビ及び一般カビとしては、表3に記載の菌を使用した。これらの菌類は千葉大学医学部真菌医学研究センターが保管し、IFMナンバーなどにより管理されているものを入手し、使用した。
各菌体を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて指摘温度、すなわち一般カビは25℃、耐熱性カビは30℃で7日間培養した。
【0103】
【表3】
【0104】
(3)ゲノムDNAの調製
各菌体を寒天培地から白金耳を用いて回収した。
ゲノムDNA調製用キット(アプライドバイオシステムズ社製PrepMan ultra(商品名))を用いて、回収した菌体からゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は50ng/μlに調製した。
【0105】
(4)PCR反応
DNAテンプレートとして、上記で調製したゲノムDNA溶液1μl、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μl、無菌蒸留水10μlを混合し、配列番号3に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μl及び配列番号4に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μlを加え、25μlのPCR反応液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)95℃、10秒間の熱変性反応、(ii)59℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを30サイクル行った。
【0106】
(5)増幅した遺伝子断片の確認
PCR反応後、PCR反応液から10μlを分取し、2%アガロースゲルで電気泳動を行い、SYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。アガロースゲルの電気泳動図を図6に示す。
その結果、タラロマイセス フラバス及びタラロマイセス トラキスペルムスのゲノムDNAを含む試料(1レーン及び2レーン)では、80bp程度の遺伝子断片の増幅が確認された。一方、タラロマイセス属に属する菌のゲノムDNAを含まない試料では、遺伝子断片の増幅は確認されなかった。以上の結果から、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドを用いることによって、タラロマイセス属に属する菌類を特異的に検出することができる。
【0107】
(B−2)タラロマイセス属に属する菌類の検出、識別
(1)プライマーの調製
実施例1(B−1)で設計した、配列番号5から8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマーを使用した。
【0108】
(2)検体の調製
タラロマイセス属に属する菌類としては、タラロマイセス フラバス(Talaromyces flavus)、タラロマイセス トラキスペルムス(Talaromyces trachyspermus)、タラロマイセス ウォルトマンニー(Talaromyces wortmannii)、及びタラロマイセス ルテウス(Talaromyces luteus)を使用した。前記(e)から(h)のオリゴヌクレオチドのタラロマイセス属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子に対する特異性を確かめるために、表4及び表5に示す菌類も使用した。これらの菌類は千葉大学医学部真菌医学研究センターが保管し、IFMナンバーなどにより管理されているものを入手し、使用した。
各菌体を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて30℃で7日間培養した。
【0109】
【表4】
【0110】
【表5】
【0111】
(3)ゲノムDNAの調製
各菌体を寒天培地から白金耳を用いて回収した。
ゲノムDNA調製用キット(商品名 PrepMan ultra、アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、回収した菌体からゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は50ng/μlに調製した。
【0112】
(4)PCR反応
DNAテンプレートとして、上記で調製したゲノムDNA溶液1μl、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)25μl、無菌蒸留水20μlを混合し、配列番号5に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)1.0μl、配列番号6に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)1.0μl、配列番号7に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)1.0μl、及び配列番号8に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)1.0μlを加え、50μlのPCR反応液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)97℃、10秒間の熱変性反応、(ii)59℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを30サイクル行った。
【0113】
(5)増幅した遺伝子断片の確認
PCR反応後、PCR反応液から2μlを分取し、2%アガロースゲルで電気泳動を行い、SYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。アガロースゲルの電気泳動図を図7(a)、図7(b)及び図8に示す。なお、図7(a)は表4に示す菌類の試料についての電気泳動図を示し、図7(b)は表5に示す菌類の試料についての電気泳動図を示し、図中の番号は表記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。図8はタラロマイセス属に属する菌類の試料のみの電気泳動図を示す。
その結果、タラロマイセス属に属する菌類のうちタラロマイセス フラバス、タラロマイセス トラキスペルムス又はタラロマイセス ウォルトマンニーのゲノムDNAを含む試料(図7(a)の1〜2及び5〜8レーン、並びに図7(b)の1〜2及び5〜8レーン)では、150bp程度の遺伝子断片の増幅が確認された。この遺伝子断片は配列番号7及び配列番号8の塩基配列で表されるプライマーを用いたことで増幅されたものである。また、タラロマイセス ウォルトマンニー又はタラロマイセス ルテウスのゲノムDNAを含む試料(図7(a)の3〜4及び7〜8レーン、並びに図7(b)の3〜4及び7〜8レーン)では、200bp程度の遺伝子断片の増幅が確認された。この遺伝子断片は配列番号5及び配列番号6の塩基配列で表されるプライマーを用いたことで増幅されたものである。一方、タラロマイセス属に属する菌類のゲノムDNAを含まない試料では、遺伝子断片の増幅は確認されなかった。以上の結果から、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド及び前記(g)及び(h)を同時に用いることによって、タラロマイセス属に属する菌類を特異的にかつ網羅的に検出することができる。
【0114】
(B−3)タラロマイセス属に属する菌類の検出、識別
(1)プライマーの調製
実施例1(B−1)で設計した、配列番号8及び9に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマーを使用した。
【0115】
(2)検体の調製
前記(h)及び(i)のオリゴヌクレオチドの検出特異性を確かめるために、表6に示すタラロマイセス属に属する菌類及びその他の菌類を使用した。これらの菌類は独立行政法人製品製品評価技術基盤機構によりNBRC番号で管理されているもの及びThe Centraalbureau voor SchimmelculturesによりCBS番号で管理されているもの等、真菌の供託機関より分譲された株を入手し、使用した。
各菌体を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いてタラロマイセス属を含む耐熱性カビ及びアスペルギルス フミガタスは30℃で7日間、その他の一般カビは25℃で7日間培養した。
【0116】
【表6】
【0117】
(3)ゲノムDNAの調製
各菌体を寒天培地から白金耳を用いて回収した。
ゲノムDNA調製用キット(アプライドバイオシステムズ社製PrepMan ultra(商品名))を用いて、回収した菌体からゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は50ng/μlに調製した。
【0118】
(4)PCR反応
DNAテンプレートとして、上記で調製したゲノムDNA溶液1μl、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μl、無菌蒸留水10μlを混合し、配列番号8に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μl及び配列番号9に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μlを加え、25μlのPCR反応液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)95℃、1分間の熱変性反応、(ii)59℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを30サイクル行った。
【0119】
(5)増幅した遺伝子断片の確認
PCR反応後、PCR反応液から10μlを分取し、2%アガロースゲルで電気泳動を行い、SYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。アガロースゲルの電気泳動図を図9−1に示す。図中の番号は表6記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。
その結果、タラロマイセス属に属する菌類のうち、タラロマイセス フラバス、タラロマイセス マクロスポラス及びタラロマイセス トラキスペルムスのゲノムDNAを含む試料(1〜3レーン)についてのみ、150bp程度の遺伝子断片の増幅が確認された。一方、タラロマイセス属に属する菌のゲノムDNAを含まない試料では、遺伝子断片の増幅は確認されなかった。以上の結果から、本発明のオリゴヌクレオチドを用いることによって、タラロマイセス属に属する菌類のうち、特定の菌種のみを特異的に検出することができることがわかる。
【0120】
(B−4)タラロマイセス属に属する菌類の検出、識別
(1)プライマー
実施例1(B−1)で設計した、配列番号10及び11に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマーを使用した。
【0121】
(2)検体の調製
前記(j)及び(k)のオリゴヌクレオチドの検出特異性を確かめるために、実施例1(B−3)の表6と同様のタラロマイセス属に属する菌類及びその他の菌類を使用した。
各菌体を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いてタラロマイセス属を含む耐熱性カビ及びアスペルギルス フミガタスは30℃で7日間、その他の一般カビは25℃で7日間培養した。
【0122】
(3)ゲノムDNAの調製
各菌体を寒天培地から白金耳を用いて回収した。
ゲノムDNA調製用キット(アプライドバイオシステムズ社製PrepMan ultra(商品名))を用いて、回収した菌体からゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は50ng/μlに調製した。
【0123】
(4)PCR反応
DNAテンプレートとして、上記で調製したゲノムDNA溶液1μl、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μl、無菌蒸留水10μlを混合し、配列番号10に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μl及び配列番号11に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μlを加え、25μlのPCR反応液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)95℃、1分間の熱変性反応、(ii)55℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを35サイクル行った。
【0124】
(5)増幅した遺伝子断片の確認
PCR反応後、PCR反応液から10μlを分取し、2%アガロースゲルで電気泳動を行い、SYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。アガロースゲルの電気泳動図を図9−2に示す。図中の番号は表6記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。
その結果、タラロマイセス属に属する菌類のうち、タラロマイセス バシリスポラス、タラロマイセス ウォルトマンニー及びタラロマイセス ルテウスのゲノムDNAを含む試料(4〜6レーン)についてのみ、200bp程度の遺伝子断片の増幅が確認された。一方、タラロマイセス属に属する菌のゲノムDNAを含まない試料では、遺伝子断片の増幅は確認されなかった。以上の結果から、本発明のオリゴヌクレオチドを用いることによって、タラロマイセス属に属する菌類のうち、特定の菌種のみを特異的に検出することができることがわかる。
【0125】
(B−5)タラロマイセス属に属する菌類の検出、識別
(1)プライマーの調製
実施例1(B−1)で設計した、配列番号7及び8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマーを使用した。
【0126】
(2)検体の調製
前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドのタラロマイセス属に属する菌類に対する検出特異性を確かめるために、図10に示すタラロマイセス フラバスの各菌株及び図11に示すタラロマイセス マクロスポラスの各菌株を使用した。これらの菌類は独立行政法人製品製品評価技術基盤機構によりNBRC番号で管理されているもの及びThe Centraalbureau voor SchimmelculturesによりCBS番号で管理されているものを入手し、使用した。
各菌体を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて25℃で7日間培養した。
【0127】
(3)ゲノムDNAの調製
各菌体を寒天培地から白金耳を用いて回収した。
ゲノムDNA調製用キット(アプライドバイオシステムズ社製PrepMan ultra(商品名))を用いて、回収した菌体からゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は50ng/μlに調製した。
【0128】
(4)PCR反応
DNAテンプレートとして、上記で調製したゲノムDNA溶液1μl、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μl、無菌蒸留水10μlを混合し、配列番号7に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μl及び配列番号8に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μlを加え、25μlのPCR反応液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)95℃、1分間の熱変性反応、(ii)61℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを35サイクル行った。
【0129】
(5)増幅した遺伝子断片の確認
PCR反応後、PCR反応液から4μlを分取し、2%アガロースゲルで電気泳動を行い、SYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。アガロースゲルの電気泳動図を図10及び図11に示す。
その結果、使用したタラロマイセス フラバス及びタラロマイセス マクロスポラスの全ての菌株において、特異的な増幅DNA断片が確認された。したがって、本発明のオリゴヌクレオチドを用いることによって、菌株の種類に左右されることなくタラロマイセス属に属する菌類を高い精度で特異的に検出することができることがわかる。
【0130】
(C−1)ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスの検出、識別
1.βチューブリン部分長の塩基配列決定
下記の方法によりネオサルトリア グラブラ、ネオサルトリア フィシェリ、ネオサルトリア スピノサ及びアスペルギルス フミガタスのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列を決定した。ポテトデキストロース寒天斜面培地にて30℃で7日間、暗所培養した。菌体からGenとるくんTM(タカラバイオ(株)社製)を使用し、DNAを抽出した。目的とする部位のPCR増幅は、PuRe TaqTM Ready-To-Go PCR Beads(GE Health Care UK LTD製)を用いて、プライマーとしてBt2a(5’-GGTAACCAAATCGGTGCTGCTTTC-3’:配列番号35)、Bt2b(5’-ACCCTCAGTGTAGTGACCCTTGGC-3’:配列番号36)(Glass and Donaldson,Appl Environ Microbiol 61:1323−1330,1995)を使用した。増幅条件は、βチューブリン部分長は変性温度95℃、アニーリング温度59℃、伸長温度72℃、35サイクルで実施した。PCR産物は、Auto SegTM G−50(Amersham Pharmacia Biotech社製)を使用し精製した。PCR産物は、BigDye terminator Ver. 1.1(商品名:Applied Biosystems社製)を使用してラベル化し、ABI PRISM 3130 Genetic Analyzer(Applied Biosystems社製)で電気泳動を実施した。電気泳動時の蛍光シグナルからの塩基配列の決定には、ソフトウエアー“ATGC Ver.4”(Genetyx社製)を使用した。
シークエンシング法により決定したネオサルトリア グラブラ、ネオサルトリア フィシェリ、ネオサルトリア スピノサ及びアスペルギルス フミガタスのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列情報、及び各種菌類の公知のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列情報をもとに、DNA解析ソフトウエア(商品名:DNAsis pro、日立ソフトウエア社製)を用いてアライメント解析を行い、ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスに特異的な塩基配列を含有するβ−チューブリン遺伝子の中の特定領域(配列番号28〜33)を決定した。
【0131】
2.ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスの検出
(1)プライマーの設計
上記で得られたネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスに特異的な塩基配列領域のうち、3’末端側で両菌の保存性が特に高い領域から、1)属固有の塩基配列が数塩基前後存在している、2)GC含量が概ね30%〜80%となる、3)自己アニールの可能性が低い、4)Tm値が概ね55〜65℃程度となる、の4つの条件を満たす部分領域の検討を行った。この塩基配列を基にして4組のプライマー対を設計し、各種菌体から抽出したDNAを鋳型として用いてPCR反応によるネオサルトリア属とアスペルギルス フミガタスの一括検出の有効性を検討した。すなわち、ネオサルトリア属及びアスペルギルス フミガタスのDNAを鋳型とした反応では設計したプライマー対から予想されるサイズにDNA増幅反応が認められ、その他のカビのゲノムDNAを鋳型とした反応では増幅産物が認められないことの検討を行った。その結果、2組のプライマー対でネオサルトリア属及びアスペルギルス フミガタスに特異的にDNA増幅が認められ、その他のカビのゲノムDNAを鋳型とした反応では増幅産物が認めらかった。この結果より、2組のプライマー対がネオサルトリア属とアスペルギルス フミガタスの一括検出が可能であることを確認した。有効性が確認できたプライマー対は、配列番号12及び13に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー対及び配列番号14及び15に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー対である。なお、使用したプライマーはシグマ アルドリッチ ジャパン社に合成依頼し(脱塩精製品、0.02μmolスケール)、購入した。
【0132】
(2)検体の調製
ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスとしては、表7に記載の菌類を使用した。前記(l)及び(m)のオリゴヌクレオチドのこれらの菌類のβ−チューブリン遺伝子に対する特異性を確かめるために、表7に示す菌類も使用した。なお、これらの菌株は独立行政法人理化学研究所がJCMナンバーで管理する菌株や東京大学分子細胞生物学研究所がIAMナンバーで管理する菌株及び独立行政法人製品評価技術基盤機構がIFOナンバーで管理する財団法人醗酵研究所菌由来の株を入手し、評価に使用した。
各菌体を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:PDA培地(パールコア ポテトデキストロース寒天培地)、栄研化学株式会社製)を用いて耐熱性カビ及びアスペルギルス フミガタスは30℃、その他一般カビは25℃で7日間培養した。
【0133】
【表7】
【0134】
(3)ゲノムDNAの調製
各菌体を寒天培地から白金耳を用いて回収した。
ゲノムDNA調製用キット(アプライドバイオシステムズ社製PrepMan ultra(商品名))を用いて、回収した菌体からゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は50ng/μlに調製した。
【0135】
(4)PCR反応
DNAテンプレートとして、上記で調製したゲノムDNA溶液1μl、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μl、無菌蒸留水10μlを混合し、配列番号12に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μl及び配列番号13に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μlを加え、25μlのPCR反応液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)98℃、10秒間の熱変性反応、(ii)59℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを30サイクル行った。
【0136】
(5)増幅した遺伝子断片の確認
PCR反応後、PCR反応液から10μlを分取し、2%アガロースゲルで電気泳動を行い、SYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。アガロースゲルの電気泳動図を図12に示す。
その結果、ネオサルトリア属に属する菌類又はアスペルギルス フミガタスのゲノムDNAを含む試料(1、2及び7レーン)では、100bp程度の遺伝子断片の増幅が確認された。一方、ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスのいずれのゲノムDNAを含まない試料では、遺伝子断片の増幅は確認されなかった。以上の結果から、前記(l)及び(m)のオリゴヌクレオチドを用いることによって、ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスを特異的に検出することができる。
【0137】
(6)ネオサルトリア属に属する菌類とアスペルギルス フミガタスの発育温度差を用いた識別
上記方法により遺伝子断片の増幅が確認された検体について、単一コロニーから菌糸をPDA培地(商品名:ポテトデキストロース培地、栄研化学株式会社製)に植菌し、50℃で1日間培養し、実体顕微鏡による菌糸の確認法により観察した。その結果、アスペルギルス フミガタスを植菌した試料では活発な菌糸の成長が認められたが、ネオサルトリア属に属する菌類を植菌した試料では菌糸の成長が認められなかった。この結果から、発育可能温度帯の違いを利用して、ネオサルトリア属に属する菌類とアスペルギルス フミガタスとを識別することができた。
【0138】
(C−2)ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスの検出、識別
(1)プライマーの調製
実施例1(C−1)で設計した、配列番号14及び15に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマーを使用した。
【0139】
(2)検体の調製
ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスとしては、表8及び表9に記載の菌類を使用した。前記(n)及び(o)のオリゴヌクレオチドのネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスのβ−チューブリン遺伝子に対する特異性を確かめるために、表8及び表9に示すその他の菌類も使用した。これらの菌類は千葉大学医学部真菌医学研究センターが保管し、ナンバリングにより管理されているものを入手し、使用した。
各菌体を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて耐熱性カビ及びアスペルギルス フミガタスは30℃、その他一般カビは25℃で7日間培養した。
【0140】
【表8】
【0141】
【表9】
【0142】
(3)ゲノムDNAの調製
各菌体を寒天培地から白金耳を用いて回収した。
ゲノムDNA調製用キット(商品名 PrepMan ultra、アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、回収した菌体からゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は50ng/μlに調製した。
【0143】
(4)PCR反応
DNAテンプレートとして、上記で調製したゲノムDNA溶液1μl、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μl、無菌蒸留水10μlを混合し、配列番号14に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μl及び配列番号15に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μlを加え、25μlのPCR反応液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)97℃、10秒間の熱変性反応、(ii)59℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを30サイクル行った。
【0144】
(5)増幅した遺伝子断片の確認
PCR反応後、PCR反応液から2μlを分取し、2%アガロースゲルで電気泳動を行い、SYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。アガロースゲルの電気泳動図を図13(a)及び図13(b)に示す。なお、図13(a)は表8に示す菌類の試料についての電気泳動図を示し、図13(b)は表9に示す菌類の試料についての電気泳動図を示す。図中の番号は表記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。
その結果、ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスのゲノムDNAを含む試料では、200bp程度の遺伝子断片の増幅が確認された。一方、ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスのいずれのゲノムDNAを含まない試料では、遺伝子断片の増幅は確認されなかった。以上の結果から、前記(n)及び(o)のオリゴヌクレオチドを用いることによって、ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスを特異的に検出することができる。
【0145】
(6)ネオサルトリア属に属する菌類とアスペルギルス フミガタスの発育温度差を用いた識別
上記方法により遺伝子断片の増幅が確認された検体について、単一コロニーから菌糸をPDA培地(商品名:ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)に植菌し、50℃で1日間培養し、実体顕微鏡により菌糸の伸長を観察した。その結果、アスペルギルス フミガタスを植菌した試料では活発な菌糸の成長が認められたが、ネオサルトリア属に属する菌類を植菌した試料では菌糸の成長が認められなかった。この結果から、発育可能温度帯の違いを利用して、ネオサルトリア属に属する菌類とアスペルギルス フミガタスとを識別することができた。
【0146】
(C−3)前記(v)及び(w)のオリゴヌクレオチドを用いたネオサルトリア属に属する菌類とアスペルギルス フミガタスの識別
(1)アスペルギルス フミガタス検出用プライマーの設計
配列番号28〜33に示したネオサルトリア グラブラ、アスペルギルス フミガタス、ネオサルトリア フィシェリ及びネオサルトリア スピノサのβチューブリン遺伝子の塩基配列のアライメント解析(DNAsis Pro)を用いて両種の塩基配列の差が存在する領域を決定した。決定した領域の中でアスペルギルス フミガタスに特異的な塩基配列部位のうち、3’末端側で両菌の保存性が特に高い領域から、1)アスペルギルス フミガタス固有の塩基配列が数塩基前後存在している、2)GC含量が概ね30%〜80%となる、3)自己アニールの可能性が低い、4)Tm値が概ね55〜65℃程度となる、の4つの条件を満たす部分領域の検討を行った。この塩基配列を基にして2組のプライマー対を設計し、各種菌体から抽出したDNAを鋳型として用いてPCR反応によるネオサルトリア属とアスペルギルス フミガタスの識別の有効性を検討した。すなわち、アスペルギルス フミガタスのDNAを鋳型とした反応では設計したプライマー対から予想されるサイズにDNA増幅反応が認められ、ネオサルトリア属のゲノムDNAを鋳型とした反応では増幅産物が認められないことの検討を行った。その結果、1組のプライマー対でアスペルギルス フミガタスに特異的にDNA増幅が認められ、その他の菌類のゲノムDNAを鋳型とした反応では増幅産物が認められなかった。有効性が確認できたプライマー対は、配列番号22及び23に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー対である。なお、使用したプライマーはシグマ アルドリッチ ジャパン社に合成依頼し(脱塩精製品、0.02μmolスケール)、購入した。
【0147】
(2)検体の調製
ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスとしては、表10及び表11に記載の菌類を使用した。また、参考として、表10及び表11に示すネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタス以外の菌類も使用した。菌株は千葉大学真菌医学研究センターが保存し、ナンバリングにより管理をしている株を入手し、試験に用いた。
各菌体を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて耐熱性カビ及びアスペルギルス フミガタスは30℃、その他一般カビは25℃で7日間培養した。
【0148】
【表10】
【0149】
【表11】
【0150】
(3)ゲノムDNAの調製
各菌体を寒天培地から白金耳を用いて回収した。
ゲノムDNA調製用キット(商品名 PrepMan ultra、アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、回収した菌体からゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は50ng/μlに調製した。
【0151】
(4)PCR反応
DNAテンプレートとして、上記で調製したゲノムDNA溶液1μl、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μl、無菌蒸留水10μlを混合し、配列番号22に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μl及び配列番号23に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μlを加え、25μlのPCR反応液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)95℃、1分間の熱変性反応、(ii)59℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを35サイクル行った。
【0152】
(5)増幅した遺伝子断片の確認
PCR反応後、PCR反応液から2.5μlを分取し、2%アガロースゲルで電気泳動を行い、SYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。アガロースゲルの電気泳動図を図14及び図15に示す。なお、図14は表10に示す菌類の試料についての電気泳動図を示し、図15は表11に示す菌類の試料についての電気泳動図を示す。図中の番号は表記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。
図14及び図15で示すように、アスペルギルス フミガタスのゲノムDNAを含む試料でのみ約200bpの増幅断片がはっきりと確認された。これに対して、ネオサルトリア属の菌類を含む他の菌類のゲノムDNAを含む試料では、約200bpの増幅断片は確認されなかった。
この結果から、前記(v)及び(w)のオリゴヌクレオチドを用いて遺伝子増幅処理を行い、増幅産物の有無を確認することにより、アスペルギルス フミガタスを特異的に検出することができる。
【0153】
(C−4)ネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスの検出、識別
(1)プライマーの調製
実施例(C−1)及び(C−3)で設計した、配列番号14〜15及び22〜23に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマーを使用した。
【0154】
(2)検体の調製
前記(n)及び(o)のオリゴヌクレオチドのネオサルトリア属に属する菌類に対する検出特異性、及び前記(v)及び(w)のオリゴヌクレオチドのアスペルギルス フミガタスに対する検出特異性を確かめるために、図16に示すネオサルトリア フィシェリの各菌株、図17に示すネオサルトリア グラブラの各菌株、図18に示すネオサルトリア ヒラツカエの各菌株、図19に示すネオサルトリア パウリステンシスの各菌株、及び図20に示すネオサルトリア スピノサの各菌株を使用した。また、前記(v)及び(w)のオリゴヌクレオチドを用いた反応系のポジティブコントロールとして、アスペルギルス フミガタスを使用した。なお、これらの菌類は独立行政法人製品製品評価技術基盤機構によりNBRC番号で管理されているもの及びThe Centraalbureau voor SchimmelculturesによりCBS番号で管理されているもの等、真菌の供託機関から入手したもの及び千葉大学真菌医学研究センターで保存しIFMナンバーで管理された株等を入手し、供試菌として使用した。
各菌体を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて耐熱性カビ及びアスペルギルス フミガタスは30℃、その他一般カビは25℃で14日間培養した。
【0155】
(3)ゲノムDNAの調製
各菌体を寒天培地から白金耳を用いて回収した。
ゲノムDNA調製用キット(商品名 PrepMan ultra、アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、回収した菌体からゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は50ng/μlに調製した。
【0156】
(4)PCR反応
DNAテンプレートとして、上記で調製したゲノムDNA溶液1μl、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μl、無菌蒸留水10μlを混合し、配列番号14に記載の塩基配列で表されるプライマー(0.02pmol/μl)0.5μl及び配列番号15に記載の塩基配列で表されるプライマー(0.02pmol/μl)0.5μlを加え、25μlのPCR反応液を調製した。同様に、プライマーを配列番号22に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μl及び配列番号23に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μlに変更した以外は上記と同様にしてPCR反応溶液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)95℃、1分間の熱変性反応、(ii)59℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを35サイクル行った。
【0157】
(5)増幅した遺伝子断片の確認
PCR反応後、PCR反応液から4μlを分取し、2%アガロースゲルで電気泳動を行い、SYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。アガロースゲルの電気泳動図を図16〜図20に示す。なお、図16はネオサルトリア フィシェリの各菌株の試料についての電気泳動図を示し、図17はネオサルトリア グラブラの各菌株の試料についての電気泳動図を示し、図18はネオサルトリア ヒラツカエの各菌株の試料についての電気泳動図を示し、図19はネオサルトリア パウリステンシスの各菌株の試料についての電気泳動図を示し、及び図20はネオサルトリア スピノサの各菌株の試料についての電気泳動図を示す。
その結果、配列番号14及び15に記載の塩基配列で表されるプライマーを用いた反応系においては、使用したネオサルトリア フィシェリ、ネオサルトリア グラブラ、ネオサルトリア ヒラツカエ、ネオサルトリア パウリステンシス及びネオサルトリア スピノサの全ての菌株において、特異的な増幅DNA断片が確認された(図16(a)、図17(a)、図18(a)、図19(a)、図20(a))。したがって、本発明のオリゴヌクレオチドを用いることによって、菌株の種類に左右されることなくネオサルトリア属に属する菌類を高い精度で特異的に検出することができることがわかる。
配列番号22及び23に記載の塩基配列で表されるプライマーを用いた反応系においては、アスペルギルス フミガタスのゲノムDNAをテンプレートとして用いた試料のみ特異的な増幅DNA断片が確認された。一方、ネオサルトリア属の各菌株を用いた試料では、いずれもDNA断片の増幅は確認されなかった(図16(b)、図17(b)、図18(b)、図19(b)、図20(b))。したがって、前記(v)及び(w)のオリゴヌクレオチドを用いて遺伝子増幅処理を行い、増幅産物の有無を確認することにより、アスペルギルス フミガタスを特異的に検出することができることがわかる。
【0158】
(D−1)ハミゲラ属に属する菌類の検出、識別
1.βチューブリン部分長の塩基配列決定
下記の方法によりハミゲラ アベラネア及びクラドスポリウム クラドスポロイデスのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列を決定した。ポテトデキストロース寒天斜面培地にてハミゲラ アベラネアは30℃、クラドスポリウム クラドスポロイデスは25℃で7日間、暗所培養した。菌体からGenとるくんTM(タカラバイオ(株)社製)を使用し、DNAを抽出した。目的とする部位のPCR増幅は、PuRe TaqTM Ready-To-Go PCR Beads(GE Health Care UK LTD製)を用いて、プライマーとしてBt2a(5’-GGTAACCAAATCGGTGCTGCTTTC-3’:配列番号35)、Bt2b(5’-ACCCTCAGTGTAGTGACCCTTGGC-3’:配列番号36)(Glass and Donaldson,Appl Environ Microbiol 61:1323−1330,1995)を使用した。増幅条件は、βチューブリン部分長は変性温度95℃、アニーリング温度59℃、伸長温度72℃、35サイクルで実施した。PCR産物は、Auto SegTM G−50(Amersham Pharmacia Biotech社製)を使用し精製した。PCR産物は、BigDye terminator Ver. 1.1(商品名:Applied Biosystems社製)を使用してラベル化し、ABI PRISM 3130 Genetic Analyzer(Applied Biosystems社製)で電気泳動を実施した。電気泳動時の蛍光シグナルからの塩基配列の決定には、ソフトウエアー“ATGC Ver.4”(Genetyx社製)を使用した。
シークエンシング法により決定したハミゲラ アベラネア及びクラドスポリウム クラドスポロイデスのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列情報、及び各種菌類の公知のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列情報をもとに、DNA解析ソフトウエア(商品名:DNAsis pro、日立ソフトウエア社製)を用いてアライメント解析を行い、ハミゲラ属に属するハミゲラ アベラネアに特異的な塩基配列を含有するβ−チューブリン遺伝子の中の特定領域(配列番号34)を決定した。
【0159】
2.ハミゲラ属に属する菌類に属する菌類の検出
(1)プライマーの設計
上記で得られたハミゲラ アベラネアに特異的な塩基配列領域のうち、3’末端側で両菌の保存性が特に高い領域から、1)属固有の塩基配列が数塩基前後存在している、2)GC含量が概ね30%〜80%となる、3)自己アニールの可能性が低い、4)Tm値が概ね55〜65℃程度となる、の4つの条件を満たす部分領域の検討を行った。この塩基配列を基にして5組のプライマー対を設計し、各種菌体から抽出したDNAを鋳型として用いてPCR反応によるハミゲラ属に属する菌類の検出の有効性を検討した。その結果、1対のプライマー対でハミゲラ アベラネア及びクラドスポリウム クラドスポロイデスで特異的にDNA増幅が認められ、その他のカビのゲノムDNAを鋳型とした反応では増幅産物が認められなかった。この結果より、ハミゲラ属の検出が可能であることを確認した。有効性が確認できたプライマー対は、配列番号16及び17に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー対である。なお、使用したプライマーはシグマ アルドリッチ ジャパン社に合成依頼し(脱塩精製品、0.02μmolスケール)、購入した。
【0160】
(2)検体の調製
設計したプライマーの有効性の評価に用いる真菌類、すなわちハミゲラ属とその他の耐熱性カビ及び一般カビとしては、表12に記載の菌を使用した。これらの菌類は千葉大学医学部真菌医学研究センターが保管し、IFMナンバーやTナンバーなどにより管理されているものを入手し、使用した。
各菌体を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて指摘温度、すなわち一般カビは25℃、耐熱性カビは30℃で7日間培養した。
【0161】
【表12】
【0162】
(3)ゲノムDNAの調製
各菌体を寒天培地から白金耳を用いて回収した。
ゲノムDNA調製用キット(アプライドバイオシステムズ社製PrepMan ultra(商品名))を用いて、回収した菌体からゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は50ng/μlに調製した。
【0163】
(4)PCR反応
DNAテンプレートとして、上記で調製したゲノムDNA溶液1μl、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μl、無菌蒸留水10μlを混合し、配列番号16に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μl及び配列番号17に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μlを加え、25μlのPCR反応液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)98℃、10秒間の熱変性反応、(ii)63℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを30サイクル行った。
【0164】
(5)増幅した遺伝子断片の確認
PCR反応後、PCR反応液から10μlを分取し、2%アガロースゲルで電気泳動を行い、SYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。アガロースゲルの電気泳動図を図21に示す。図中の番号は表12記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。
その結果、ハミゲラ属に属する菌類のゲノムDNAを含む試料(1レーン)では、100bp程度の遺伝子断片の増幅が確認された。一方、ハミゲラ属に属する菌類のゲノムDNAを含まない試料では、遺伝子断片の増幅は確認されなかった。以上の結果から、前記(p)及び(q)のオリゴヌクレオチドを用いることによって、ハミゲラ属に属する菌類を特異的に検出することができる。
【0165】
(D−2)ハミゲラ属に属する菌類の検出、識別
(a)プライマーの調製
実施例1(D−1)で設計した、配列番号16及び17に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマーを使用した。
【0166】
(b)検体の調製
ハミゲラ属に属する菌類及びクラドスポリウム属に属する菌類としては、表13に記載のハミゲラ アベラネア(Hamigera avellanea)及びクラドスポリウム クラドスポロイデス(Cladosporium cladosporioides)を使用した。前記(p)及び(q)のオリゴヌクレオチドのハミゲラ属に属する菌類及びクラドスポリウム属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子に対する特異性を示すために、表13に示すその他の菌類も使用した。これらの菌類は千葉大学医学部真菌医学研究センターが保管し、IFMナンバーやTナンバーなどにより管理されているものを入手し、使用した。なお、ポジティブコントロールとして、Hamigera avellanea(菌株名:T34)を鋳型DNAとして用いた。
各菌体を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて至適温度、すなわち一般カビは25℃、耐熱性カビ及びアスペルギルス フミガタスは30℃で7日間培養した。
【0167】
【表13】
【0168】
(c)ゲノムDNAの調製
各菌体を寒天培地から白金耳を用いて回収した。
ゲノムDNA調製用キット(商品名 PrepMan ultra、アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、回収した菌体からゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は50ng/μlに調製した。
【0169】
(d)PCR反応
DNAテンプレートとして、上記で調製したゲノムDNA溶液1μl、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μl、無菌蒸留水10μlを混合し、配列番号16に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μl及び配列番号17に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μlを加え、25μlのPCR反応液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)97℃、10秒間の熱変性反応、(ii)63℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを30サイクル行った。
【0170】
(e)増幅した遺伝子断片の確認
PCR反応後、PCR反応液から2μlを分取し、2%アガロースゲルで電気泳動を行い、SYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。アガロースゲルの電気泳動図を図22に示す。図中の番号は表13記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。
その結果、ハミゲラ属に属する菌類及びクラドスポリウム属に属する菌類のゲノムDNAを含む試料では、100bp程度の遺伝子断片の増幅が確認された。一方、ハミゲラ属に属する菌類及びクラドスポリウム属に属する菌類のいずれのゲノムDNAを含まない試料では、遺伝子断片の増幅は確認されなかった。以上の結果から、前記(p)及び(q)のオリゴヌクレオチドを用いることによって、ハミゲラ属に属する菌類及びクラドスポリウム属に属する菌類を特異的に検出することができる。
【0171】
(D−3)ハミゲラ属に属する菌類の検出、識別
(a)プライマーの調製
配列番号34記載のハミゲラ アベラネア及びクラドスポリウム クラドスポロイデスを含めたその他のカビのβ‐チューブリン塩基配列領域のアライメント解析(DNAsis Pro)を行い、有意な塩基配差の存在する部位を特定した。その部位の中で、3’末端側でハミゲラ アベラネアの特異性が特に高い領域から、1)属固有の塩基配列が数塩基前後存在している、2)GC含量が概ね30%〜80%となる、3)自己アニールの可能性が低い、4)Tm値が概ね55〜65℃程度となる、の4つの条件を満たす部分領域の検討を行った。この塩基配列を基にして7組のプライマー対を設計し、各種菌体から抽出したDNAを鋳型として用いてPCR反応によるハミゲラ属とクラドスポリウム クラドスポロイデスの識別法の有効性を検討した。すなわち、ハミゲラ属のDNAを鋳型とした反応では設計したプライマー対から予想されるサイズにDNA増幅反応が認められ、その他のカビDNAを鋳型とした反応では増幅産物が認められないことの検討を行った。その結果、2対のプライマー対でハミゲラ アベラネアを含むハミゲラ属で特異的にDNA増幅が認められ、その他のカビのゲノムDNAを鋳型とした反応では増幅産物が認めらかった。この結果より、ハミゲラ属とクラドスポリウム クラドスポロイデスの識別が可能であることを確認した。有効性が確認できたプライマー対は、配列番号18及び19に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー対及び配列番号20及び21に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー対である。なお、使用したプライマーはシグマ アルドリッチ ジャパン社に合成依頼し(脱塩精製品、0.02μmolスケール)、購入した。
【0172】
(b)検体の調製
設計したプライマーの有効性の評価に用いる真菌類、すなわちハミゲラ属とその他の耐熱性カビ及び一般カビとしては、表14に記載の菌を使用した。これらの菌類は千葉大学医学部真菌医学研究センターが保管し、IFMナンバーなどにより管理されているものを入手し、使用した。
各菌体を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて至適温度、すなわち一般カビは25℃、耐熱性カビは30℃で7日間培養した。
【0173】
【表14】
【0174】
(c)ゲノムDNAの調製
各菌体を寒天培地から白金耳を用いて回収した。
ゲノムDNA調製用キット(商品名 PrepMan ultra、アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、回収した菌体からゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は50ng/μlに調製した。
【0175】
(d)PCR反応
DNAテンプレートとして、上記で調製したハミゲラ アベラネア及びクラドスポリウム クラドスポロイデスのゲノムDNA溶液1μl、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μl、無菌蒸留水10μlを混合し、配列番号18に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μl及び配列番号19に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μlを加え、25μlのPCR反応液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)97℃、10秒間の熱変性反応、(ii)60℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを30サイクル行った。
【0176】
(e)増幅した遺伝子断片の確認
PCR反応後、PCR反応液から2μlを分取し、2%アガロースゲルで電気泳動を行い、SYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。アガロースゲルの電気泳動図を図23に示す。図中の番号は表14記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。
その結果、ハミゲラ属に属する菌類に属する菌類のゲノムDNAを含む試料(試料番号1〜3)では、200bp程度の遺伝子断片の増幅が確認された。一方、クラドスポリウム属に属する菌類のゲノムDNAを含む試料(試料番号17)及びその他のハミゲラ属に属する菌類のゲノムDNAを含まない試料では、遺伝子断片の増幅は確認されなかった。以上の結果から、前記(r)及び(s)のオリゴヌクレオチドを用いることによって、試料に含まれる菌類がハミゲラ属に属する菌類であるかクラドスポリウム属に属する菌類であるかを識別することができる。
【0177】
(D−4)ハミゲラ属に属する菌類の検出、識別
(a)プライマーの調製
実施例1(D−3)で設計した、配列番号18〜21に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマーを使用した。
【0178】
(b)検体の調製
前記(r)〜(u)のオリゴヌクレオチドのハミゲラ属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子に対する特異性を確認するために、ハミゲラ属に属する菌類として、図24に示すハミゲラ ストリアータ(Hamigera striata)の各菌株を使用した。
各菌体を上述の(D−1)と同様に培養した。
【0179】
(c)ゲノムDNAの調製
上述の(D−1)と同様の方法で、ゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は50ng/μlに調製した。
【0180】
(d)PCR反応
DNAテンプレートとして、上記で調製したゲノムDNA溶液1μl、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μl、無菌蒸留水10μlを混合し、配列番号18に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μl及び配列番号19に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μlを加え、25μlのPCR反応液を調製した。同様に、プライマーを配列番号20に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μl及び配列番号21に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μlに変更した以外は上記と同様にしてPCR反応溶液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)95℃、1分間の熱変性反応、(ii)61〜59℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを35サイクル行った。
【0181】
(e)増幅した遺伝子断片の確認
PCR反応後、PCR反応液から4μlを分取し、2%アガロースゲルで電気泳動を行い、SYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。アガロースゲルの電気泳動図を図24に示す。
その結果、配列番号18及び19に記載の塩基配列で表されるプライマーを用いた反応系及び配列番号20及び21に記載の塩基配列で表されるプライマーを用いた反応系のいずれにおいても、使用したハミゲラ ストリアータの全ての菌株において、特異的な増幅DNA断片が確認された(9〜16レーン)。また、配列番号20及び21に記載の塩基配列で表されるプライマーを用いた反応系の方が、検出されたバンドがより鮮明であった(9〜12レーン)。したがって、本発明のオリゴヌクレオチドを用いることによって、菌株の種類に左右されることなくハミゲラ属に属する菌類を高い精度で特異的に検出することができることがわかる。
【0182】
(D−5)ハミゲラ属に属する菌類の検出、識別
(a)プライマーの調製
実施例1(D−3)で設計した、配列番号18〜21に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマーを使用した。
【0183】
(b)検体の調製
前記(r)〜(u)のオリゴヌクレオチドのハミゲラ属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子に対する特異性を確認するために、ハミゲラ属に属する菌類として、図25に示すハミゲラ アベラネア(Hamigera avellanea)の各菌株を使用した。
各菌体を上述の(D−1)と同様に培養した。
【0184】
(c)ゲノムDNAの調製
上述の(D−1)と同様の方法で、ゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は50ng/μlに調製した。
【0185】
(d)PCR反応
DNAテンプレートとして、上記で調製したゲノムDNA溶液1μl、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μl、無菌蒸留水10μlを混合し、配列番号18に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μl及び配列番号19に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μlを加え、25μlのPCR反応液を調製した。同様に、プライマーを配列番号20に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μl及び配列番号21に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μlに変更した以外は上記と同様にしてPCR反応溶液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)95℃、1分間の熱変性反応、(ii)59℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを35サイクル行った。
【0186】
(e)増幅した遺伝子断片の確認
PCR反応後、PCR反応液から2μlを分取し、2%アガロースゲルで電気泳動を行い、SYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。アガロースゲルの電気泳動図を図25に示す。
その結果、配列番号18及び19に記載の塩基配列で表されるプライマーを用いた反応系及び配列番号20及び21に記載の塩基配列で表されるプライマーを用いた反応系のいずれにおいても、使用したハミゲラ アベラネアの全ての菌株において、特異的な増幅DNA断片が確認された(各1〜8レーン)。したがって、本発明のオリゴヌクレオチドを用いることによって、菌株の種類に左右されることなくハミゲラ属に属する菌類を高い精度で特異的に検出することができることがわかる。
【0187】
(D−6)ハミゲラ属に属する菌類の検出、識別
(a)プライマー
実施例1(D−3)で設計した、配列番号18〜21に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマーを使用した。
【0188】
(b)検体の調製
前記(r)〜(u)のオリゴヌクレオチドのハミゲラ属に対する特異性を確認するためにハミゲラ属に近縁なビソクラミス属の菌類として、図26及び図27に示すビソクラミス ニベア及びビソクラミス フルバの各菌株を使用した。なお、これらの菌類は独立行政法人製品製品評価技術基盤機構によりNBRC番号で管理されているもの及びThe Centraalbureau voor SchimmelculturesによりCBS番号で管理されているもの等を入手し、使用した。
各菌体を実施例1(D−1)と同様に培養した。
【0189】
(c)ゲノムDNAの調製
実施例1(D−1)と同様の方法で、ゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は50ng/μlに調製した。
【0190】
(d)PCR反応
DNAテンプレートとして、上記で調製したゲノムDNA溶液1μl、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μl、無菌蒸留水10μlを混合し、配列番号18に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μl及び配列番号19に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μlを加え、25μlのPCR反応液を調製した。同様に、プライマーを配列番号20に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μl及び配列番号21に記載の塩基配列で表されるプライマー(20pmol/μl)0.5μlに変更した以外は上記と同様にしてPCR反応溶液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)95℃、1分間の熱変性反応、(ii)59℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを35サイクル行った。
【0191】
(e)増幅した遺伝子断片の確認
PCR反応後、PCR反応液から2μlを分取し、2%アガロースゲルで電気泳動を行い、SYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。アガロースゲルの電気泳動図を図26及び図27に示す。
その結果、図26に示すように、配列番号18及び19に記載の塩基配列で表されるプライマーを用いた反応系ではポジティブコントロールのハミゲラ アベラネア以外にもビソクラミス フルバの一部の菌株NBRC31877株及びNBRC31878株(レーン9、10)で200bpのサイズに遺伝子増幅が認められたものの、他のビソクラミス属に属する菌類に関しては遺伝子増幅が認められなかった。なお、NBRC31877株及び31878株で遺伝子増幅が認められた理由は、これらの株が他の株と比較して遺伝学的にハミゲラ属に近縁であるためと推測される。
一方、図27に示すように、配列番号20及び21に記載の塩基配列で表されるプライマーを用いた反応系では、ビソクラミス フルバNBRC31877株及びNBRC31878株では遺伝子増幅が認められなかった。したがって、配列番号20及び21に記載のオリゴヌクレオチドを用いることによって、ビソクラミス属に属する菌類を検出せずハミゲラ属に属する菌類のみを高い精度で特異的に検出することができることがわかる。
【0192】
以上のように、本発明で規定するオリゴヌクレオチドを用いることにより、耐熱性菌類の検出が可能であることがわかった。すなわち、配列番号1及び2のオリゴヌクレオチドを用いることでビソクラミス属に属する菌類を識別することが出来る。配列番号3〜11のオリゴヌクレオチドを用いることでタラロマイセス属に属する菌類を識別することが出来る。配列番号12〜15のオリゴヌクレオチドを用いることでネオサルトリア属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタスを検出することが出来る。なお、本発明によれば、ネオサルトリア属に属する菌類とアスペルギルス フミガタスとを識別することもできる。配列番号16〜21のオリゴヌクレオチドを用いることによりハミゲラ属に属する菌類を検出することが出来る。従って、本発明における特定のオリゴヌクレオチドを用いて耐熱性菌類を検出する工程の少なくとも2つ以上、好ましくはすべての工程、を行うことにより耐熱性菌類を識別することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビソクラミス(Byssochlamys)属、タラロマイセス(Talaromyces)属、ネオサルトリア(Neosartorya)属、アスペルギルス フミガタス(Aspergillus fumigatus)及びハミゲラ(Hamigera)属からなる群から選ばれる少なくとも2つの菌類を検出する方法において、下記1)〜4)からなる群から選ばれる少なくとも2つの工程を含んでなる、耐熱性菌類の検出方法。
1)下記(A)の塩基配列で表される核酸を用いてビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の同定を行う工程、
2)下記(B)〜(D)のいずれかの塩基配列で表される核酸を用いてタラロマイセス(Talaromyces)属に属する菌類の同定を行う工程、
3)下記(E)〜(J)のいずれかの塩基配列で表される核酸を用いてネオサルトリア(Neosartorya)属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタス(Aspergillus fumigatus)の同定を行う工程、
4)下記(K)の塩基配列で表される核酸を用いてハミゲラ(Hamigera)属に属する菌類の同定を行う工程
(A)配列番号24に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつビソクラミス属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列
(B)配列番号25に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列
(C)配列番号26に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列
(D)配列番号27に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列
(E)配列番号28に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列
(F)配列番号29に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列
(G)配列番号30に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列
(H)配列番号31に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列
(I)配列番号32に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列
(J)配列番号33に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列
(K)配列番号34に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつハミゲラ属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列
【請求項2】
同定を行うために、被検菌のβ‐チューブリン遺伝子領域又は28S rDNAのD1/D2領域の塩基配列を決定し、該領域の塩基配列中に前記(A)〜(K)のいずれかの塩基配列が含まれるか否かを確認することを特徴とする請求項1記載の耐熱性菌類の検出方法。
【請求項3】
同定を行うために、前記(A)〜(K)のいずれかの塩基配列で表される核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする検出用オリゴヌクレオチドを標識化し、得られた検出用オリゴヌクレオチドを検査対象物より抽出した核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズさせ、ハイブリダイズした検出用オリゴヌクレオチドの標識を測定することを特徴とする請求項1記載の耐熱性菌類の検出方法。
【請求項4】
同定を行うために、前記(A)〜(K)のいずれかの塩基配列で表される核酸中の一部又は全部の領域からなる核酸を遺伝子増幅し、増幅産物の有無を確認することを特徴とする請求項1記載の耐熱性菌類の検出方法。
【請求項5】
前記増幅反応をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によって行うことを特徴とする請求項4記載の耐熱性菌類の検出方法。
【請求項6】
前記1)〜4)の工程が、それぞれ下記1−1)〜4−1)の工程であること特徴とする請求項5記載の耐熱性菌類の検出方法。
1−1)前記(A)の塩基配列で表される核酸中の領域であって、下記の(1)〜(4)の4つの条件を満たす領域にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドを、核酸プライマーとして用いて遺伝子増幅反応を行う工程、
(1)ビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類に固有の遺伝子の塩基配列が10塩基前後連続して現れる領域を含む
(2)オリゴヌクレオチドのGC含量が30%〜80%となる
(3)オリゴヌクレオチドの自己アニールの可能性が低い
(4)オリゴヌクレオチドのTm値が55℃〜65℃となる
2−1)前記(B)〜(D)のいずれかの塩基配列で表される核酸中の領域であって、下記の(1)〜(4)の4つの条件を満たす領域にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドを、核酸プライマーとして用いて遺伝子増幅反応を行う工程、
(1)タラロマイセス(Talaromyces)属に属する菌類に固有の遺伝子の塩基配列が10塩基前後連続して現れる領域を含む
(2)オリゴヌクレオチドのGC含量が30%〜80%となる
(3)オリゴヌクレオチドの自己アニールの可能性が低い
(4)オリゴヌクレオチドのTm値が55℃〜65℃となる
3−1)前記(E)〜(J)のいずれかの塩基配列で表される核酸中の領域であって、下記の(1)〜(4)の4つの条件を満たす領域にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドを、核酸プライマーとして用いて遺伝子増幅反応を行う工程、
(1)ネオサルトリア(Neosartorya)属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタス(Aspergillus fumigatus)に固有の遺伝子の塩基配列が10塩基前後連続して現れる領域を含む
(2)オリゴヌクレオチドのGC含量が30%〜80%となる
(3)オリゴヌクレオチドの自己アニールの可能性が低い
(4)オリゴヌクレオチドのTm値が55℃〜65℃となる
4−1)前記(K)の塩基配列で表される核酸中の領域であって、下記の(1)〜(4)の4つの条件を満たす領域にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドを、核酸プライマーとして用いて遺伝子増幅反応を行う工程
(1)ハミゲラ(Hamigera)属に属する菌類に固有の遺伝子の塩基配列が10塩基前後連続して現れる領域を含む
(2)オリゴヌクレオチドのGC含量が30%〜80%となる
(3)オリゴヌクレオチドの自己アニールの可能性が低い
(4)オリゴヌクレオチドのTm値が55℃〜65℃となる
【請求項7】
前記1)〜4)の工程が、それぞれ下記1−2)〜4−2)の工程であること特徴とする請求項3〜6のいずれか1項記載の耐熱性菌類の検出方法。
1−2)下記(a)及び/又は(b)の検出用オリゴヌクレオチドを用いてビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の同定を行う工程、
2−2)下記(c)及び/又は(d)の検出用オリゴヌクレオチド、下記(g)及び/又は(h)の検出用オリゴヌクレオチド、下記(i)及び/又は(h)の検出用オリゴヌクレオチド、下記(e)及び/又は(f)の検出用オリゴヌクレオチド、並びに/あるいは下記(j)及び/又は(k)の検出用オリゴヌクレオチドを用いてタラロマイセス(Talaromyces)属に属する菌類の同定を行う工程、
3−2)下記(l)及び/又は(m)の検出用オリゴヌクレオチド、又は下記(n)及び/又は(o)の検出用オリゴヌクレオチドを用いてネオサルトリア(Neosartorya)属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタス(Aspergillus fumigatus)の同定を行う工程、
4−2)下記(p)及び/又は(q)の検出用オリゴヌクレオチド、下記(r)及び/又は(s)の検出用オリゴヌクレオチド、並びに/あるいは下記(t)及び/又は(u)の検出用オリゴヌクレオチドを用いてハミゲラ(Hamigera)属に属する菌類の同定を行う工程
(a)配列番号1に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(c)配列番号3に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(d)配列番号4に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(e)配列番号5に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(f)配列番号6に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(g)配列番号7に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(h)配列番号8に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(i)配列番号9に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(j)配列番号10に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(k)配列番号11に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(l)配列番号12に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(m)配列番号13に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(n)配列番号14に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(o)配列番号15に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(p)配列番号16に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(q)配列番号17に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(r)配列番号18に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(s)配列番号19に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(t)配列番号20に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(u)配列番号21に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
【請求項8】
前記検出用オリゴヌクレオチドを核酸プローブ又は核酸プライマーとして用いることを特徴とする請求項7記載の耐熱性菌類の検出方法。
【請求項9】
耐熱性菌類の検出方法において、発育可能温度帯の違いを利用してネオサルトリア(Neosartorya)属に属する菌類かアスペルギルス フミガタス(Aspergillus fumigatus)かを識別する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項記載の耐熱性菌類の検出方法。
【請求項10】
耐熱性菌類の検出方法において、さらに下記(v)及び/又は(w)の検出用オリゴヌクレオチドを用いてネオサルトリア(Neosartorya)属に属する菌類かアスペルギルス フミガタス(Aspergillus fumigatus)かを識別する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項7又は8記載の耐熱性菌類の検出方法。
(v)配列番号22に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(w)配列番号23に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
【請求項11】
タラロマイセス(Talaromyces)属に属する菌類を検出する工程において、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対、又は前記(i)及び(h)のオリゴヌクレオチド対、並びに前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対又は前記(j)及び(k)のオリゴヌクレオチド対を同時に用いて遺伝子増幅処理工程を行うことを特徴とする、請求項7又は8記載の耐熱性菌類の検出方法。
【請求項12】
前記(p)及び(q)のオリゴヌクレオチド対、又は前記(r)及び(s)のオリゴヌクレオチド対若しくは前記(t)及び(u)のオリゴヌクレオチド対のいずれか一方を用いて遺伝子増幅処理を行い遺伝子の増幅が確認された試料について、他方のオリゴヌクレオチド対を用いて遺伝子増幅処理を行いハミゲラ(Hamigera)属に属する菌類を検出することを特徴とする、請求項7又は8記載の耐熱性菌類の検出方法。
【請求項13】
下記の群(1)〜(4)のオリゴヌクレオチド対から選ばれ、かつ互いに異なる群から選ばれた少なくとも2対のオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして含む耐熱性菌類検出用キット。
(1)下記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド対
(a)配列番号1に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(2)下記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対、下記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対、下記(i)及び(h)のオリゴヌクレオチド対、下記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対、並びに下記(j)及び(k)のオリゴヌクレオチド対からなる群
(c)配列番号3に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(d)配列番号4に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(e)配列番号5に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(f)配列番号6に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(g)配列番号7に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(h)配列番号8に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(i)配列番号9に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(j)配列番号10に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(k)配列番号11に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(3)下記(l)及び(m)のオリゴヌクレオチド対、下記(n)及び(o)のオリゴヌクレオチド対、並びに下記(v)及び(w)のオリゴヌクレオチド対からなる群
(l)配列番号12に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(m)配列番号13に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(n)配列番号14に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(o)配列番号15に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(v)配列番号22に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(w)配列番号23に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(4)下記(p)及び(q)のオリゴヌクレオチド対、下記(r)及び(s)のオリゴヌクレオチド対、並びに下記(t)及び(u)のオリゴヌクレオチド対からなる群
(p)配列番号16に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(q)配列番号17に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(r)配列番号18に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(s)配列番号19に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(t)配列番号20に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(u)配列番号21に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
【請求項14】
前記(1)〜(4)の各群において、各群のオリゴヌクレオチド対を少なくとも各1対ずつ含むことを特徴とする請求項13記載の耐熱性菌類検出用キット。
【請求項15】
前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド対、前記(i)及び(h)のオリゴヌクレオチド対、前記(j)及び(k)のオリゴヌクレオチド対、前記(n)及び(o)のオリゴヌクレオチド対、前記(t)及び(u)のオリゴヌクレオチド対、及び前記(v)及び(w)のオリゴヌクレオチド対を含むことを特徴とする請求項13記載の耐熱性菌類検出用キット。
【請求項16】
ビソクラミス(Byssochlamys)属、タラロマイセス(Talaromyces)属、ネオサルトリア(Neosartorya)属、アスペルギルス フミガタス(Aspergillus fumigatus)及びハミゲラ(Hamigera)属からなる群から選ばれる少なくとも2つの菌類を検出する方法において、下記1−3)〜4−3)からなる群から選ばれる少なくとも2つの工程を含んでなる、耐熱性菌類の検出方法。
1−3)下記(a’)及び/又は(b’)のオリゴヌクレオチドを用いてビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類を検出する工程、
2−3)下記(c’)及び/又は(d’)のオリゴヌクレオチド、下記(g’)及び/又は(h’)のオリゴヌクレオチド、下記(i’)及び/又は(h’)のオリゴヌクレオチド、下記(e’)及び/又は(f’)のオリゴヌクレオチド、並びに/あるいは下記(j’)及び/又は(k’)の検出用オリゴヌクレオチドを用いてタラロマイセス(Talaromyces)属に属する菌類を検出する工程、
3−3)下記(l’)及び/又は(m’)のオリゴヌクレオチド、又は下記(n’)及び/又は(o’)のオリゴヌクレオチドを用いてネオサルトリア(Neosartorya)属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタス(Aspergillus fumigatus)を検出する工程、
4−3)下記(p’)及び/又は(q’)のオリゴヌクレオチド、下記(r’)及び/又は(s’)のオリゴヌクレオチド、並びに/あるいは下記(t’)及び/又は(u’)のオリゴヌクレオチドを用いてハミゲラ(Hamigera)属に属する菌類を検出する工程
(a’)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(b’)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(c’)配列番号3に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(d’)配列番号4に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(e’)配列番号5に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(f’)配列番号6に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(g’)配列番号7に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(h’)配列番号8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(i’)配列番号9に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(j’)配列番号10に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(k’)配列番号11に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(l’)配列番号12に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(m’)配列番号13に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(n’)配列番号14に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(o’)配列番号15に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(p’)配列番号16に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(q’)配列番号17に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(r’)配列番号18に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(s’)配列番号19に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(t’)配列番号20に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(u’)配列番号21に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
【請求項17】
耐熱性菌類の識別方法において、発育可能温度帯の違いを利用してネオサルトリア(Neosartorya)属に属する菌類かアスペルギルス フミガタス(Aspergillus fumigatus)かを検出する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項16記載の耐熱性菌類の検出方法。
【請求項18】
耐熱性菌類の識別方法において、さらに下記(v’)及び/又は(w’)のオリゴヌクレオチドを用いてネオサルトリア(Neosartorya)属に属する菌類かアスペルギルス フミガタス(Aspergillus fumigatus)かを検出する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項16記載の耐熱性菌類の検出方法。
(v’)配列番号22に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(w’)配列番号23に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
【請求項1】
ビソクラミス(Byssochlamys)属、タラロマイセス(Talaromyces)属、ネオサルトリア(Neosartorya)属、アスペルギルス フミガタス(Aspergillus fumigatus)及びハミゲラ(Hamigera)属からなる群から選ばれる少なくとも2つの菌類を検出する方法において、下記1)〜4)からなる群から選ばれる少なくとも2つの工程を含んでなる、耐熱性菌類の検出方法。
1)下記(A)の塩基配列で表される核酸を用いてビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の同定を行う工程、
2)下記(B)〜(D)のいずれかの塩基配列で表される核酸を用いてタラロマイセス(Talaromyces)属に属する菌類の同定を行う工程、
3)下記(E)〜(J)のいずれかの塩基配列で表される核酸を用いてネオサルトリア(Neosartorya)属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタス(Aspergillus fumigatus)の同定を行う工程、
4)下記(K)の塩基配列で表される核酸を用いてハミゲラ(Hamigera)属に属する菌類の同定を行う工程
(A)配列番号24に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつビソクラミス属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列
(B)配列番号25に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列
(C)配列番号26に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列
(D)配列番号27に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列
(E)配列番号28に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列
(F)配列番号29に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列
(G)配列番号30に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列
(H)配列番号31に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列
(I)配列番号32に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列
(J)配列番号33に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつネオサルトリア属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタスの検出に使用できる塩基配列
(K)配列番号34に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつハミゲラ属に属する菌類の検出に使用できる塩基配列
【請求項2】
同定を行うために、被検菌のβ‐チューブリン遺伝子領域又は28S rDNAのD1/D2領域の塩基配列を決定し、該領域の塩基配列中に前記(A)〜(K)のいずれかの塩基配列が含まれるか否かを確認することを特徴とする請求項1記載の耐熱性菌類の検出方法。
【請求項3】
同定を行うために、前記(A)〜(K)のいずれかの塩基配列で表される核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする検出用オリゴヌクレオチドを標識化し、得られた検出用オリゴヌクレオチドを検査対象物より抽出した核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズさせ、ハイブリダイズした検出用オリゴヌクレオチドの標識を測定することを特徴とする請求項1記載の耐熱性菌類の検出方法。
【請求項4】
同定を行うために、前記(A)〜(K)のいずれかの塩基配列で表される核酸中の一部又は全部の領域からなる核酸を遺伝子増幅し、増幅産物の有無を確認することを特徴とする請求項1記載の耐熱性菌類の検出方法。
【請求項5】
前記増幅反応をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によって行うことを特徴とする請求項4記載の耐熱性菌類の検出方法。
【請求項6】
前記1)〜4)の工程が、それぞれ下記1−1)〜4−1)の工程であること特徴とする請求項5記載の耐熱性菌類の検出方法。
1−1)前記(A)の塩基配列で表される核酸中の領域であって、下記の(1)〜(4)の4つの条件を満たす領域にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドを、核酸プライマーとして用いて遺伝子増幅反応を行う工程、
(1)ビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類に固有の遺伝子の塩基配列が10塩基前後連続して現れる領域を含む
(2)オリゴヌクレオチドのGC含量が30%〜80%となる
(3)オリゴヌクレオチドの自己アニールの可能性が低い
(4)オリゴヌクレオチドのTm値が55℃〜65℃となる
2−1)前記(B)〜(D)のいずれかの塩基配列で表される核酸中の領域であって、下記の(1)〜(4)の4つの条件を満たす領域にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドを、核酸プライマーとして用いて遺伝子増幅反応を行う工程、
(1)タラロマイセス(Talaromyces)属に属する菌類に固有の遺伝子の塩基配列が10塩基前後連続して現れる領域を含む
(2)オリゴヌクレオチドのGC含量が30%〜80%となる
(3)オリゴヌクレオチドの自己アニールの可能性が低い
(4)オリゴヌクレオチドのTm値が55℃〜65℃となる
3−1)前記(E)〜(J)のいずれかの塩基配列で表される核酸中の領域であって、下記の(1)〜(4)の4つの条件を満たす領域にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドを、核酸プライマーとして用いて遺伝子増幅反応を行う工程、
(1)ネオサルトリア(Neosartorya)属に属する菌類及び/又はアスペルギルス フミガタス(Aspergillus fumigatus)に固有の遺伝子の塩基配列が10塩基前後連続して現れる領域を含む
(2)オリゴヌクレオチドのGC含量が30%〜80%となる
(3)オリゴヌクレオチドの自己アニールの可能性が低い
(4)オリゴヌクレオチドのTm値が55℃〜65℃となる
4−1)前記(K)の塩基配列で表される核酸中の領域であって、下記の(1)〜(4)の4つの条件を満たす領域にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドを、核酸プライマーとして用いて遺伝子増幅反応を行う工程
(1)ハミゲラ(Hamigera)属に属する菌類に固有の遺伝子の塩基配列が10塩基前後連続して現れる領域を含む
(2)オリゴヌクレオチドのGC含量が30%〜80%となる
(3)オリゴヌクレオチドの自己アニールの可能性が低い
(4)オリゴヌクレオチドのTm値が55℃〜65℃となる
【請求項7】
前記1)〜4)の工程が、それぞれ下記1−2)〜4−2)の工程であること特徴とする請求項3〜6のいずれか1項記載の耐熱性菌類の検出方法。
1−2)下記(a)及び/又は(b)の検出用オリゴヌクレオチドを用いてビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の同定を行う工程、
2−2)下記(c)及び/又は(d)の検出用オリゴヌクレオチド、下記(g)及び/又は(h)の検出用オリゴヌクレオチド、下記(i)及び/又は(h)の検出用オリゴヌクレオチド、下記(e)及び/又は(f)の検出用オリゴヌクレオチド、並びに/あるいは下記(j)及び/又は(k)の検出用オリゴヌクレオチドを用いてタラロマイセス(Talaromyces)属に属する菌類の同定を行う工程、
3−2)下記(l)及び/又は(m)の検出用オリゴヌクレオチド、又は下記(n)及び/又は(o)の検出用オリゴヌクレオチドを用いてネオサルトリア(Neosartorya)属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタス(Aspergillus fumigatus)の同定を行う工程、
4−2)下記(p)及び/又は(q)の検出用オリゴヌクレオチド、下記(r)及び/又は(s)の検出用オリゴヌクレオチド、並びに/あるいは下記(t)及び/又は(u)の検出用オリゴヌクレオチドを用いてハミゲラ(Hamigera)属に属する菌類の同定を行う工程
(a)配列番号1に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(c)配列番号3に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(d)配列番号4に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(e)配列番号5に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(f)配列番号6に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(g)配列番号7に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(h)配列番号8に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(i)配列番号9に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(j)配列番号10に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(k)配列番号11に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(l)配列番号12に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(m)配列番号13に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(n)配列番号14に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(o)配列番号15に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(p)配列番号16に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(q)配列番号17に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(r)配列番号18に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(s)配列番号19に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(t)配列番号20に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(u)配列番号21に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
【請求項8】
前記検出用オリゴヌクレオチドを核酸プローブ又は核酸プライマーとして用いることを特徴とする請求項7記載の耐熱性菌類の検出方法。
【請求項9】
耐熱性菌類の検出方法において、発育可能温度帯の違いを利用してネオサルトリア(Neosartorya)属に属する菌類かアスペルギルス フミガタス(Aspergillus fumigatus)かを識別する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項記載の耐熱性菌類の検出方法。
【請求項10】
耐熱性菌類の検出方法において、さらに下記(v)及び/又は(w)の検出用オリゴヌクレオチドを用いてネオサルトリア(Neosartorya)属に属する菌類かアスペルギルス フミガタス(Aspergillus fumigatus)かを識別する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項7又は8記載の耐熱性菌類の検出方法。
(v)配列番号22に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(w)配列番号23に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
【請求項11】
タラロマイセス(Talaromyces)属に属する菌類を検出する工程において、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対、又は前記(i)及び(h)のオリゴヌクレオチド対、並びに前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対又は前記(j)及び(k)のオリゴヌクレオチド対を同時に用いて遺伝子増幅処理工程を行うことを特徴とする、請求項7又は8記載の耐熱性菌類の検出方法。
【請求項12】
前記(p)及び(q)のオリゴヌクレオチド対、又は前記(r)及び(s)のオリゴヌクレオチド対若しくは前記(t)及び(u)のオリゴヌクレオチド対のいずれか一方を用いて遺伝子増幅処理を行い遺伝子の増幅が確認された試料について、他方のオリゴヌクレオチド対を用いて遺伝子増幅処理を行いハミゲラ(Hamigera)属に属する菌類を検出することを特徴とする、請求項7又は8記載の耐熱性菌類の検出方法。
【請求項13】
下記の群(1)〜(4)のオリゴヌクレオチド対から選ばれ、かつ互いに異なる群から選ばれた少なくとも2対のオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして含む耐熱性菌類検出用キット。
(1)下記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド対
(a)配列番号1に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(2)下記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対、下記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対、下記(i)及び(h)のオリゴヌクレオチド対、下記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対、並びに下記(j)及び(k)のオリゴヌクレオチド対からなる群
(c)配列番号3に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(d)配列番号4に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(e)配列番号5に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(f)配列番号6に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(g)配列番号7に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(h)配列番号8に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(i)配列番号9に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(j)配列番号10に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(k)配列番号11に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(3)下記(l)及び(m)のオリゴヌクレオチド対、下記(n)及び(o)のオリゴヌクレオチド対、並びに下記(v)及び(w)のオリゴヌクレオチド対からなる群
(l)配列番号12に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(m)配列番号13に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(n)配列番号14に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(o)配列番号15に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(v)配列番号22に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(w)配列番号23に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(4)下記(p)及び(q)のオリゴヌクレオチド対、下記(r)及び(s)のオリゴヌクレオチド対、並びに下記(t)及び(u)のオリゴヌクレオチド対からなる群
(p)配列番号16に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(q)配列番号17に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(r)配列番号18に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(s)配列番号19に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(t)配列番号20に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(u)配列番号21に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列に対して70%以上の相同性を有しかつ検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
【請求項14】
前記(1)〜(4)の各群において、各群のオリゴヌクレオチド対を少なくとも各1対ずつ含むことを特徴とする請求項13記載の耐熱性菌類検出用キット。
【請求項15】
前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド対、前記(i)及び(h)のオリゴヌクレオチド対、前記(j)及び(k)のオリゴヌクレオチド対、前記(n)及び(o)のオリゴヌクレオチド対、前記(t)及び(u)のオリゴヌクレオチド対、及び前記(v)及び(w)のオリゴヌクレオチド対を含むことを特徴とする請求項13記載の耐熱性菌類検出用キット。
【請求項16】
ビソクラミス(Byssochlamys)属、タラロマイセス(Talaromyces)属、ネオサルトリア(Neosartorya)属、アスペルギルス フミガタス(Aspergillus fumigatus)及びハミゲラ(Hamigera)属からなる群から選ばれる少なくとも2つの菌類を検出する方法において、下記1−3)〜4−3)からなる群から選ばれる少なくとも2つの工程を含んでなる、耐熱性菌類の検出方法。
1−3)下記(a’)及び/又は(b’)のオリゴヌクレオチドを用いてビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類を検出する工程、
2−3)下記(c’)及び/又は(d’)のオリゴヌクレオチド、下記(g’)及び/又は(h’)のオリゴヌクレオチド、下記(i’)及び/又は(h’)のオリゴヌクレオチド、下記(e’)及び/又は(f’)のオリゴヌクレオチド、並びに/あるいは下記(j’)及び/又は(k’)の検出用オリゴヌクレオチドを用いてタラロマイセス(Talaromyces)属に属する菌類を検出する工程、
3−3)下記(l’)及び/又は(m’)のオリゴヌクレオチド、又は下記(n’)及び/又は(o’)のオリゴヌクレオチドを用いてネオサルトリア(Neosartorya)属に属する菌類及びアスペルギルス フミガタス(Aspergillus fumigatus)を検出する工程、
4−3)下記(p’)及び/又は(q’)のオリゴヌクレオチド、下記(r’)及び/又は(s’)のオリゴヌクレオチド、並びに/あるいは下記(t’)及び/又は(u’)のオリゴヌクレオチドを用いてハミゲラ(Hamigera)属に属する菌類を検出する工程
(a’)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(b’)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(c’)配列番号3に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(d’)配列番号4に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(e’)配列番号5に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(f’)配列番号6に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(g’)配列番号7に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(h’)配列番号8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(i’)配列番号9に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(j’)配列番号10に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(k’)配列番号11に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(l’)配列番号12に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(m’)配列番号13に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(n’)配列番号14に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(o’)配列番号15に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(p’)配列番号16に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(q’)配列番号17に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(r’)配列番号18に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(s’)配列番号19に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(t’)配列番号20に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(u’)配列番号21に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
【請求項17】
耐熱性菌類の識別方法において、発育可能温度帯の違いを利用してネオサルトリア(Neosartorya)属に属する菌類かアスペルギルス フミガタス(Aspergillus fumigatus)かを検出する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項16記載の耐熱性菌類の検出方法。
【請求項18】
耐熱性菌類の識別方法において、さらに下記(v’)及び/又は(w’)のオリゴヌクレオチドを用いてネオサルトリア(Neosartorya)属に属する菌類かアスペルギルス フミガタス(Aspergillus fumigatus)かを検出する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項16記載の耐熱性菌類の検出方法。
(v’)配列番号22に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
(w’)配列番号23に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9−1】
【図9−2】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9−1】
【図9−2】
【図10】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2010−4876(P2010−4876A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129475(P2009−129475)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【Fターム(参考)】
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