説明

耐熱鋼溶接部の損傷予測方法

【課題】実際に用いられる耐熱鋼溶接部に則した多軸応力状態にある溶接部の損傷を精度良く予測できる方法を提供することである。
【解決手段】耐熱鋼溶接部に作用する応力の分布を計算し、該計算値から耐熱鋼溶接部の損傷を予測する耐熱鋼溶接部の損傷予測方法において、耐熱鋼溶接部の応力状態を表現するパラメータとして、M=A・σ1・TFB(A,B:係数、σ1:最大主応力、TF:応力多軸度係数)で表されるMを用いることによって、実際に用いられる耐熱鋼溶接部に則した複雑な応力状態にある溶接熱影響部の損傷を精度良く予測することができる。具体的には、パラメータMとクリープボイドの個数密度の増加速度との関係(a)、又はパラメータMとクリープボイドの面積率の増加速度との関係(b)を予め求めておき、この関係(a)又は(b)を用いてクリープボイドの個数密度又はクリープボイドの面積率を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱鋼の損傷予測方法に係り、特に火力発電ボイラなどの火力発電プラントの高温・高圧配管に使用される高クロム鋼溶接継手の溶接部、溶接熱影響部の損傷を予測するのに有効な方法である。
【背景技術】
【0002】
火力発電プラントは高温・高圧環境で運転されるため、設備を構成する機器部材の耐熱鋼には、高温強度に優れた材料が用いられる。しかし、長期間に亘る高温での運転によってクリープ等による損傷が蓄積して材料の寿命に至ることがある。火力発電プラントの設計及び運用においては、耐熱鋼の寿命評価を適確に行い、信頼性を向上させることが重要である。
【0003】
火力発電プラントの機器部材に用いられる耐熱鋼としては、クロム(Cr)を9〜12%(質量%、以下同じ)程度含有した高Cr鋼が用いられるが、高Cr鋼は溶接部のクリープ損傷が選択的に進行することが知られている。火力発電プラントに使用される高Cr鋼には多種多様な溶接部が存在する。図13には、その一例として、配管の軸方向に溶接部のある耐熱鋼(高Cr鋼)配管の斜視図を示す。
【0004】
配管50には軸方向に溶接部51が存在する。図14には、図13の溶接部のD部を拡大した詳細図を示す。母材52は溶接金属53で溶接されており、溶接金属53の両側には溶接熱影響部(HAZ:Heat affected zone)54a,54bが存在する。この溶接熱影響部54は溶接時の温度上昇により母材52が組織変化を起こした部分である。
【0005】
高Cr耐熱鋼の溶接熱影響部54a,54bは、溶接金属53や母材52に比べてクリープ強度が低く、溶接部においては熱影響部に損傷(クリープボイドやき裂の発生)が集中することが知られている。図15には溶接熱影響部54a,54bに発生したクリープボイド57の例を示す。
【0006】
配管50が高温下で応力が作用した状態に長時間さらされると、結晶粒界56上にクリープボイド57と呼ばれる空孔が発生する。この空孔は長時間の使用による損傷の進行と共にその数が増加して、最終的には隣接するクリープボイド57,57同士が合体してき裂となる。
図16には、クリープボイド57,57同士が合体して、き裂58が発生した溶接部51を示す。溶接熱影響部54a,54bに発生したき裂58は徐々に成長し、最終的には板厚方向Sに貫通して、内部流体のリークが発生する。
【0007】
耐熱鋼の寿命評価を行う方法として、溶接部51のクリープボイド57の発生を検査し、この結果に基づいて残余寿命を推定する方法がある。
下記特許文献1(耐熱鋼の寿命評価法)には、クリープボイドの個数密度を複数回測定し、その変化率から残余寿命を推定する方法が開示されている。また、下記特許文献2(クリープ寿命評価方法)には、クリープボイドの結晶粒界占有率のうち最大値を測定してクリープ寿命消費率を推定する方法が開示されている。
【0008】
これらの文献に記載された耐熱鋼の寿命評価方法では、検査対象の耐熱鋼のクリープボイドの個数密度やクリープボイドの結晶粒界占有率を測定しながら、予め求めておいた結果に当てはめることで残余寿命を推定している。したがって、これらの方法の実施の際には、毎回クリープボイドの個数密度やクリープボイドの結晶粒界占有率を検出、測定しなければならず、操作が煩雑であり、もっと簡便で迅速な方法が好ましい。
また、火力発電プラントの機器部材には多種多様のものがあるため、高Cr鋼の溶接部も多種多様であり、その形状によって作用する応力場の影響が異なる。
【0009】
上記特許文献1及び特許文献2では、クリープボイドの個数密度やクリープボイドの結晶粒界占有率を使って損傷を予測するが、これらは応力状態の影響を受けるため、実験室において単軸(単純な応力状態)で求められたクリープボイドの個数密度やクリープボイドの結晶粒界占有率と損傷の関係が、実際の火力発電プラントなどの複雑な応力状態では成り立たない、したがって、これらの方法では、精度良く耐熱鋼の残余寿命を推定することは難しい。
【0010】
そこで、下記特許文献3(耐熱鋼の劣化評価方法及びタービンの劣化評価方法)には、高Cr鋼の溶接部におけるクリープボイドの発生挙動が部材形状の影響、すなわち応力場の影響を受けることを考慮するために、クリープボイドの個数密度を応力多軸度係数で規格化した値を用いて、損傷の予測精度を向上させた劣化評価方法が開示されている。
【0011】
しかし、特許文献3には、クリープボイドの個数密度を応力多軸度係数で規格化するという表現しか記載されておらず、規格化の具体的な内容については開示されていない。規格化の仕方によって耐熱鋼の残余寿命も変わってくるため、精度良く耐熱鋼の残余寿命を推定できるとは限らない。また、上記特許文献1や特許文献2と同様に、方法の実施の際には、毎回クリープボイドを検出してクリープボイドの個数密度を測定しなければならない。
【0012】
火力発電プラントの設備、機器部材には多数の耐熱鋼溶接部が存在するが、それらは保温が施工されていたり、足場がなくアクセスが困難等の理由により、損傷度合いの検査を行うことが難しい。また、検査を実施しても、通常は耐熱鋼の板厚方向内部から損傷が生じる場合が多いため、耐熱鋼の表面からの検出が難しい。このような理由により、耐熱鋼にかかる応力の計算結果と耐熱鋼のメタル温度から損傷を精度良く推定、予測できる方法の開発が望まれている。
【0013】
応力の大きさから損傷を予測する一般的な方法として、単軸丸棒クリープ試験結果(JIS Z 2271の金属材料のクリープ及びクリープ破断試験方法に規定)から耐熱鋼の損傷や寿命を推定する方法がある。
【0014】
図17には、単軸丸棒のクリープ試験片の形状を示す。
丸棒クリープ試験片59は評価対象となる耐熱鋼(高Cr鋼)で構成されており、母材60の中央部に溶接部、すなわち溶接金属61と溶接熱影響部62がある。本試験片を高温下で図中の矢印Y1及び矢印Y2で示した方向に応力σを作用させて、破断するまでの時間を測定し、応力と破断時間との関係を調べる。
【0015】
図18には、この方法で求めたクリープ破断データの例を示す。図19には、火力発電プラントにおける配管軸方向の溶接部に作用する応力を示す。
配管50の溶接金属53、溶接熱影響部54a、54bには、配管の円周方向に応力σC、軸方向に応力σLが作用する。図18の関係を用いて図19の溶接部の損傷を推定する場合には、配管に作用する周方向の応力σCを用いて、図18の関係より破断時間trを推定し、図19の溶接部51の損傷の進行度合いを推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特許第3825378号公報
【特許文献2】特許第3976938号公報
【特許文献3】特開2009−92478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述した従来の方法は、操作が煩雑であったり、耐熱鋼の残余寿命の予測精度が高くないという問題がある。また、予測に用いるクリープ破断データ(図18)は、図17に示す単軸丸棒に応力を作用させた状態の丸棒クリープ試験片から求められたものである。しかし、実際に用いられる耐熱鋼溶接部の溶接継手は、例えば図19に示したような2軸応力状態又は3軸応力状態(径方向に作用する応力を含める)にあり、単軸丸棒のクリープ試験とは応力状態が異なる。応力状態が異なれば溶接部の損傷の進行度合いも異なってくる。したがって、図18に示したクリープ破断データを用いて、図19に示すような溶接継手のクリープ損傷の進行度合いや寿命を精度良く予測することは難しい。
【0018】
本発明の課題は、上記問題を解決し、実際に用いられる耐熱鋼溶接部に則した多軸応力状態にある溶接部の損傷(クリープボイドやき裂の発生)を精度良く予測できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の課題は、耐熱鋼溶接部の局所的な応力状態を最大主応力σ1と応力多軸度係数TFからなる下記式(1)の関数(パラメータ)
M=A・σ1・TFB (1)
で表し(ここで、A,B:係数、σ1:最大主応力、TF:応力多軸度係数)、この局所応力状態Mとクリープボイドの個数密度の増加速度との関係又は局所応力状態Mとクリープボイドの面積率の増加速度との関係を予め求めておき、実際に損傷を予測する際に評価対象となる溶接部の応力解析を行って評価対象部位における局所応力状態Mを求め、このMを用いて耐熱鋼溶接部の損傷を予測することで解決される。
なお、3次元問題では主応力は3つあり、大きい方からσ1,σ2,σ3と表記する。ここでは、一番大きいものを「最大主応力σ1」と表記している。
【0020】
具体的には、予め求めた局所応力状態Mとクリープボイドの個数密度の増加速度との関係又は局所応力状態Mとクリープボイドの面積率の増加速度との関係から評価対象部位のクリープボイドの個数密度の増加又はクリープボイドの面積率の増加を時間の関数として求め、更にこの結果からクリープボイドの個数密度又はクリープボイドの面積率が所定の最大値である限界値に達する時間(寿命)を求めることで、耐熱鋼溶接部の損傷度合いを予測できる。
【0021】
すなわち、本発明の課題は、次の手段により解決することができる。
請求項1記載の発明は、耐熱鋼溶接部に作用する応力の分布を計算し、該計算値から耐熱鋼溶接部の損傷を予測する耐熱鋼溶接部の損傷予測方法において、耐熱鋼溶接部の応力状態を表現するパラメータとして、下記式(1)で表されるMを用いる耐熱鋼溶接部の損傷予測方法である。
M=A・σ1・TFB (1)
ここで、A,B:係数、σ1:最大主応力、TF:応力多軸度係数である。
【0022】
請求項2記載の発明は、耐熱鋼溶接部におけるパラメータMとクリープボイドの個数密度の増加速度との関係(a)、又は耐熱鋼溶接部におけるパラメータMとクリープボイドの面積率の増加速度との関係(b)を予め求めておき、耐熱鋼溶接部の対象部位におけるパラメータMを求めて、該対象部位におけるパラメータMと前記予め求めた関係(a)又は関係(b)から対象部位におけるクリープボイドの個数密度の増加速度又はクリープボイドの面積率の増加速度を求めることで、クリープボイドの個数密度又はクリープボイドの面積率を推定する請求項1記載の耐熱鋼溶接部の損傷予測方法である。
【0023】
請求項3記載の発明は、有限要素法(FEM)によるクリープ解析結果から求められる局所的な応力を用いてパラメータMを計算する請求項1又は2に記載の耐熱鋼溶接部の損傷予測方法である。
【0024】
請求項4記載の発明は、前記クリープボイドの個数密度の増加速度又は前記クリープボイドの面積率の増加速度として、クリープボイドの発生初期からクリープボイドの個数密度又はクリープボイドの面積率が所定の最大値となる末期における平均増加速度を用いることで、クリープボイドの個数密度又はクリープボイドの面積率を推定する請求項2記載の耐熱鋼溶接部の損傷予測方法である。
【0025】
請求項5記載の発明は、前記関係(a)として、耐熱鋼溶接部の溶接熱影響部におけるパラメータMとクリープボイドの個数密度の増加速度との関係、前記関係(b)として、耐熱鋼溶接部の溶接熱影響部におけるパラメータMとクリープボイドの面積率の増加速度との関係を用いると共に、前記耐熱鋼溶接部の対象部位を溶接熱影響部とした請求項2記載の耐熱鋼溶接部の損傷予測方法である。
【0026】
請求項6記載の発明は、耐熱鋼溶接部における所定時間毎のクリープボイドの個数密度の増加速度とクリープボイドの個数密度の平均増加速度との関係(c)、又は耐熱鋼溶接部における所定時間毎のクリープボイドの面積率の増加速度とクリープボイドの面積率の平均増加速度との関係(d)を予め求めておき、前記関係(a)から求められた対象部位におけるクリープボイドの個数密度の平均増加速度と前記関係(c)から、対象部位における所定時間毎のクリープボイドの個数密度の増加速度を求めること、又は前記関係(b)から求められた対象部位におけるクリープボイドの面積率の平均増加速度と前記関係(d)から、対象部位における所定時間毎のクリープボイドの面積率の増加速度を求めることで、クリープボイドの個数密度又はクリープボイドの面積率を推定することを特徴とする請求項4記載の耐熱鋼溶接部の損傷予測方法である。
【0027】
(作用)
耐熱鋼溶接部におけるクリープ損傷(クリープボイドの個数密度の増加挙動又はクリープボイドの面積率の増加挙動)は、応力状態の影響を大きく受ける。特に、一方向の応力ではなく、3方向の応力(応力の3軸状態)の影響を受ける。本発明によれば、溶接熱影響部などの溶接部の評価対象部位における3軸応力状態を考慮し、予め求めた、3軸応力状態とクリープボイドの個数密度の増加挙動との関係又は3軸応力状態とクリープボイドの面積率の増加挙動との関係を用いてクリープボイドの個数密度又はクリープボイドの面積率の増加を予測するため、高精度に溶接熱影響部などの溶接部の損傷挙動を予測することが可能となる。
【0028】
請求項1記載の発明によれば、耐熱鋼溶接部の応力状態を表現するパラメータとして、上記式(1)で表されるMを用いることで、応力解析等の計算によって、簡便で迅速に精度良く損傷(クリープボイドやき裂の発生)を予測できる。
【0029】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の作用に加えて、予め求めておいた関係(a)又は関係(b)と耐熱鋼溶接部の対象部位におけるパラメータMから対象部位におけるクリープボイドの個数密度の増加速度又はクリープボイドの面積率の増加速度を求めることで、クリープボイドの個数密度又はクリープボイドの面積率を推定できるため、その都度クリープボイドを検出してクリープボイドの個数密度や面積率を測定するなどの煩雑な操作をすることなく、より実際に用いられる耐熱鋼溶接部に則した精度の良い予測が可能となる。
【0030】
例えば、以下のように行う。
予め、耐熱鋼溶接部の各評価部位におけるクリープボイドの個数密度又はクリープボイドの面積率を検出してクリープボイドの個数密度の増加速度又はクリープボイドの面積率の増加速度を求めると共に、前記耐熱鋼溶接部の各評価部位におけるパラメータMを求めて、該パラメータMとクリープボイドの個数密度の増加速度との関係(a)、又はパラメータMとクリープボイドの面積率の増加速度との関係(b)を求めておく。
そして、実際に損傷を予測する際に、耐熱鋼溶接部の対象部位の最大主応力σ1及び応力多軸度係数TFを求め、該求めた最大主応力σ1及び応力多軸度係数TFを上記式(1)に当てはめてパラメータMを求め、該求めたパラメータMから前記予め求めた関係(a)又は(b)を用いて、対象部位におけるクリープボイドの個数密度の増加速度又はクリープボイドの面積率の増加速度を求めることで、対象部位におけるクリープボイドの個数密度又はクリープボイドの面積率を推定することが可能である。
【0031】
請求項3記載の発明によれば、上記請求項1又は2に記載の発明の作用に加えて、有限要素法(FEM)によるクリープ解析結果からパラメータMを計算することで、溶接部の形状が複雑であっても適用可能であり、容易に耐熱鋼溶接部の損傷を予測できる。有限要素法(FEM)によるクリープ解析を実施すると、各点における主応力(σ1,σ2,σ3)、ミーゼスの相当応力が求まる。これらを上記式(1)に代入すると応力多軸度係数TFが求まる。
【0032】
請求項4記載の発明によれば、上記請求項2に記載の発明の作用に加えて、関係(a)のクリープボイドの個数密度の増加速度又は関係(b)のクリープボイドの面積率の増加速度として、損傷初期から末期における平均増加速度を用いる。クリープボイドの個数密度やクリープボイドの面積率の増加には、ばらつきがあるが、平均増加速度を用いることで、正確な平均的速度を算出できる。
【0033】
請求項5記載の発明によれば、上記請求項2に記載の発明の作用に加えて、耐熱鋼溶接部の溶接熱影響部におけるクリープボイドの個数密度の増加速度又はクリープボイドの面積率の増加速度が把握できるため、特に溶接による影響が大きい溶接熱影響部による損傷を予測できる。
【0034】
また、耐熱鋼溶接部に発生するクリープボイドの増加速度は、発生し始める初期に比べてクリープボイド同士が合体してき裂となる末期の方が増加する。
したがって、請求項6記載の発明によれば、上記請求項4に記載の発明の作用に加えて、所定時間毎のクリープボイドの個数密度の増加速度とクリープボイドの個数密度の平均増加速度との関係(c)、又は所定時間毎のクリープボイドの面積率の増加速度とクリープボイドの面積率の平均増加速度との関係(d)を予め求めておき、関係(a)と関係(c)、又は関係(b)と関係(d)から所定時間毎のクリープボイドの個数密度の増加速度又は所定時間毎のクリープボイドの面積率の増加速度を求めることで、クリープボイドの個数密度の増加量又はクリープボイドの面積率の増加量を時間の関数として求めることができる。したがって、クリープボイドの個数密度の増加が、より正確に把握できるため、測定時点の対象部位におけるクリープボイドの個数密度又はクリープボイドの面積率を精度良く推定できる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の耐熱鋼溶接部の損傷予測方法によれば、簡便で迅速に、実際に用いられる耐熱鋼溶接部に則した複雑な応力状態にある溶接熱影響部の損傷(クリープボイドやき裂の発生)を精度良く予測することができる。また、詳しい検査が必要な部位を予測することもできる。また、配管の内部流体のリークなどによる過度な損傷を未然に防止することが可能となる。
【0036】
具体的には以下の効果を有する。
請求項1記載の発明によれば、耐熱鋼溶接部の応力状態を表現するパラメータとして、上記式(1)で表されるMを用いることで、応力解析等の計算によって、簡便で迅速に、精度良く耐熱鋼溶接部の損傷を予測できる。
【0037】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、煩雑な操作をすることなく、予め求めた関係から、クリープボイドの個数密度又はクリープボイドの面積率を推定することが可能であると共に、より実際に用いられる耐熱鋼溶接部に則した精度の良い予測が可能となる。
【0038】
請求項3記載の発明によれば、上記請求項1又は2に記載の発明の効果に加えて、有限要素法によるクリープ解析結果からパラメータMを計算することで、溶接部の形状が複雑でも、容易に耐熱鋼溶接部の損傷を予測できる。
【0039】
請求項4記載の発明によれば、上記請求項2に記載の発明の効果に加えて、関係(a)や関係(b)の増加速度に平均増加速度を用いることで、正確な平均的速度を算出でき、精度良く耐熱鋼溶接部の損傷を予測できる。
【0040】
請求項5記載の発明によれば、上記請求項2に記載の発明の効果に加えて、特に溶接による影響が大きい溶接熱影響部による損傷を予測できるため、より実際に用いられる耐熱鋼溶接部に則した損傷の予測が精度良くできる。
【0041】
請求項6記載の発明によれば、上記請求項4に記載の発明の効果に加えて、クリープボイドの個数密度又はクリープボイドの面積率の増加が、より正確に把握できることで、測定時点の対象部位におけるクリープボイドの個数密度又はクリープボイドの面積率を精度良く推定できる。したがって、より実際に用いられる耐熱鋼溶接部に則した、精度の良い損傷の予測が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態の耐熱鋼溶接部の損傷予測方法に用いるクリープボイドの個数密度の平均増加速度と応力パラメータ(M=A・σ1・TFB)との関係を示した図である。
【図2】本発明の一実施形態の耐熱鋼溶接部の損傷予測方法に用いる配管の溶接熱影響部における局所応力を評価した位置を示した側面図である。
【図3】図2の溶接熱影響部における局所応力の分布を示した図である。
【図4】図2の溶接熱影響部における応力多軸度係数TFの分布を示した図である。
【図5】本発明の耐熱鋼溶接部の損傷予測方法の実施例1のフローチャートである。
【図6】本発明の耐熱鋼溶接部の損傷予測方法の実施例1において用いる所定時間毎のクリープボイドの個数密度の増加速度Nvとクリープボイドの個数密度の平均増加速度Nvmとの関係を示した図である。
【図7】本発明の耐熱鋼溶接部の損傷予測方法(実施例1)の精度を確認するために用いた配管の図である。
【図8】図7のB部の詳細図である。
【図9】本発明の耐熱鋼溶接部の損傷予測方法(実施例1)の精度を確認するために用いたFEM応力解析モデルを示した図である。
【図10】本発明の耐熱鋼溶接部の損傷予測方法(実施例1)で予測したクリープボイドの個数密度の変化と実験値との比較を示した図である。
【図11】本発明の耐熱鋼溶接部の損傷予測方法(実施例1)で予測したクリープボイドの個数密度の肉厚方向での分布と実験値との比較を示した図である。
【図12】本発明の耐熱鋼溶接部の損傷予測方法(実施例2)で用いるクリープボイドの面積率の平均増加速度と応力パラメータ(M=A・σ1・TFB)との関係を示した図である。
【図13】配管の軸方向に溶接部のある一般的な耐熱鋼(高Cr鋼)配管の斜視図である。
【図14】図13のD部の詳細図である。
【図15】図13の配管の溶接熱影響部に発生したクリープボイドを示した図である。
【図16】図13の配管の溶接熱影響部に発生したき裂を示した図である。
【図17】従来の耐熱鋼溶接部の損傷予測方法で使用される単軸丸棒のクリープ試験片を示した図である。
【図18】図17の丸棒単軸クリープ試験片を用いて求めたクリープ破断データの例を示した図である。
【図19】図13の配管の軸方向の溶接部に作用する応力を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下に、 耐熱鋼溶接部の損傷の予測原理について説明する。
図1には、本実施形態の損傷予測方法による、損傷の予測に用いるクリープボイドの個数密度(単位面積あたりのクリープボイドの数)の単位時間あたりの増加量(平均増加速度)と応力パラメータ(M=A・σ1・TFB)の関係の一例を示す。
【0044】
図1の求め方は次の通りである。
すなわち、後述する図7に示すような試験体の配管6のクリープ試験を実施する。溶接熱影響部8a〜8dにおいて、肉厚方向の位置によって、最大主応力σ1と応力多軸度係数TFは異なる。肉厚方向の6点について、クリープボイドの成長状況を顕微鏡で観察し、クリープボイドの個数密度の平均増加速度Nvmを測定する。一方、3軸の応力解析により、これら6点の最大主応力σ1と応力多軸度係数TFを求める。これらを両対数グラフにプロットし、直線回帰して、係数A、Bを決める。
【0045】
図1の縦軸に示す平均増加速度Nvmは下記のようにして求める。
すなわち、図7に示すような試験体の配管6のクリープ試験を数本(例えば、5本)用意する。これらを同じ実験条件で実験を開始する。寿命が1000hの場合、1本は1000hまで、残りは200h毎に実験を取りやめ、切断し、配管6の内部のクリープボイド発生状況を観察する。なお、観察部位は全ての溶接熱影響部8a〜8dとする。5本の試験片より、クリープボイドの個数密度Nと時間との関係を求める。この関係の勾配がクリープボイドの個体密度の増加速度Nv(個/mm2/h)となり、これらの平均値が平均増加速度Nvmとなる。
なお、レプリカ法(評価部位の金属組織をレプリカ膜に写しとって走査型電子顕微鏡(SEM)等で観察し、それによって評価する方法)によって、クリープボイドの個数密度を測定することも考えられるが、この場合、測定可能なのは表面のみである。
【0046】
また、配管6の損傷の評価部位を溶接熱影響部8a〜8dに限らず、溶接部7a,7bの溶接金属や母材としても良いが、溶接熱影響部8a〜8dは他の溶接部分に比べてクリープ強度が低く、溶接部においては熱影響部に損傷が集中するため、特に溶接による影響が大きい溶接熱影響部8a〜8dを評価部位とすることが好ましい。
【0047】
そして、この平均増加速度Nvmは、損傷が小さい領域(クリープボイドが発生し始めた領域)から大きな領域(クリープボイド同士が合体してき裂になる領域)までの平均値である。クリープボイドの個数密度やクリープボイドの面積率の増加には、ばらつきがあるが、初期(新材など)から寿命末期の平均として速度を算出することで(考えられる最も長いサンプリング時間で速度を評価)、正確な平均的速度を算出できる。
【0048】
図1の横軸は、次式(1)で表されるパラメータであり、溶接熱影響部4における局所応力の3軸応力状態を表す。
M=A・σ1・TFB (1)
ここで、AとBは係数であり、σ1は主応力であり、TFは応力の3軸度を表す応力多軸度係数TF(Triaxiality Factor)であり、次式(2)で定義される。
TF = (σ1 + σ23)/σm (2)
ここで、σ1,σ2,σ3(大きい方から表記)は、配管の場合はそれぞれ周方向、軸方向、半径方向の主応力である。σmはミーゼスの相当応力である。
【0049】
図2には、本発明の一実施形態の損傷予測方法に用いる配管1の溶接熱影響部4における局所応力を評価した位置を示す側面図を示す。
図2の耐熱鋼配管1の溶接熱影響部4aにおいて、有限要素法によるクリープ解析(図9)を実施し、管の外表面から応力評価線5に沿った応力分布を調べた結果を図3に示す。
【0050】
図3に示した周方向、軸方向、半径方向の応力は、応力評価線5上における局所的な応力である。図3の横軸は、配管1の外表面からの距離xを肉厚tで割り、無次元化した値(x/t)である。配管1には、内圧によって軸方向に応力σL、円周方向にσCの応力が作用しているが、母材2、溶接金属3、溶接熱影響部4a,4bのクリープボイドの変形速度がそれぞれ異なるため、溶接熱影響部4a,4bには複雑な局所応力が生じている。溶接熱影響部4aで言えば肉厚中央部A点の応力が最も大きく、軸方向、周方向、径方向(図示せず)の共に引張りの3軸引張り応力状態になっている。なお、厳密には3軸であるが、径方向の応力は他に比べて小さいため、ほぼ二軸状態と考えても良い。
【0051】
図4には、図2の耐熱鋼配管1の溶接熱影響部4aにおける応力多軸度係数TFの分布を示し、応力評価線5上の応力多軸度係数TFと外表面からの距離(x/t)との関係を示す。この応力多軸度係数TFは、図3の各主応力σ1,σ2,σ3を上記式(2)に当てはめて求めたものである。
前述のように、肉厚中央部A点の応力が大きく3軸状態になるため、応力の3軸度を表すTFは、肉厚中央部のA点で最も大きくなっている。
【0052】
本発明者らは、耐熱鋼の溶接熱影響部におけるクリープボイドの発生、成長挙動の観察結果から、図3及び図4に示した熱影響部の各点(各評価部位)の局所応力と、各評価部位におけるクリープボイドの個数密度の増加挙動又はクリープボイドの面積率の増加挙動には、図1のような関係があること、そして、この関係を用いることにより精度良く溶接熱影響部の損傷を予測できることを見出した。
そして、図1の関係を、予め実測して用意しておくことで、以下に示す実施例1の耐熱鋼溶接部の予測方法に適用する。
【実施例1】
【0053】
(耐熱鋼溶接部の予測方法の具体例)
前述の予測原理を用いて、耐熱鋼溶接部の損傷を予測する方法を具体的に説明する。図5に損傷予測方法の実施例のフローチャートを示す。
【0054】
火力発電ボイラの運転を開始すると、最初に、計算を行う時間ステップ(測定時間間隔)の大きさΔtを決定する。計算の時間ステップΔtは、例えば下記のようにして決める。
10万時間までの計算(損傷進行の予測)を行いたい場合、計算の時間ステップは100分割もあれば十分と考える。したがって、この場合、Δt=10万時間/100=1000hとなる。
【0055】
そして、クリープボイドの個数N及び測定時間tを初期値(ゼロ)に設定する。次に、評価対象部位について、有限要素法によるクリープ解析を実施し、測定時間tにおける応力分布を求める。すなわち、評価対象部位における主応力σ1,σ2,σ3を求める。
【0056】
クリープボイドは火力発電ボイラの運転開始直後からは発生せず、所定の時間が経過後に発生し始めるため、一回目の測定時間tが、予め設定したクリープボイドの発生開始時間以上かどうか確認する。一回目の測定時間tが予め設定したクリープボイドの発生開始時間未満であれば、一回目の測定時間tをΔtだけ進め(新しい測定時間はt+Δtとなる)、新しい測定時間tにおけるクリープ解析を実施する。
【0057】
一方、クリープボイドの発生開始時間が、予め設定したクリープボイドの発生開始時間以上であれば、溶接熱影響部の各評価対象部位において、上記(1)式で表される応力パラメータMの算出に必要となる主応力σ1、応力多軸度係数TFを有限要素法によるクリープ解析(図9)により計算して、これらの値から応力パラメータMを算出する。
【0058】
更に、予め用意しておいた図1の関係を用いて応力パラメータMからクリープボイドの個数密度の平均増加速度Nvmを決定する。図1のNvmは、クリープボイドが発生し始める初期から、クリープボイド同士が合体してき裂となる末期(クリープボイドの個数密度Nが所定の最大値となる時)までの平均値である。
【0059】
図6には、所定時間毎のクリープボイドの個数密度の増加速度Nvとクリープボイドの個数密度の平均増加速度Nvmとの関係を示し、具体的にはクリープボイドの個数密度Nと(所定時間毎のクリープボイドの個数密度の増加速度Nv)/(クリープボイドの個数密度の平均増加速度Nvm)との関係を示す。図6は、クリープボイドの個数密度の増加速度が一定ではなく、加速することを考慮したい場合の、平均増加速度からの補正方法を示したものである。
【0060】
図6の関係は、図1の平均増加速度Nvmを求める際のクリープボイドの個数密度Nとクリープボイドの個体密度の増加速度Nvとの関係から求まる。したがって、図1の平均増加速度Nvmを求める際に、図6の関係も予め求めておく。
図6から分かるように、クリープボイドが発生し始める初期に比べてクリープボイド同士が合体してき裂となる末期の方がその速度、すなわち所定時間毎のクリープボイドの個数密度の増加速度Nvが増加する。
【0061】
したがって、予め用意しておいた図6に示した関係を用いて、クリープボイドの個数密度の平均増加速度Nvmから測定時間tにおけるクリープボイドの個数密度Nに対応するクリープボイドの個数密度の増加速度Nvを求める。例えば、図5の場合はNの初期値が0であるから、N=0のときのNvを求める。そして、この増加速度Nvに時間ステップΔtを乗じたものが、このステップにおけるクリープボイドの個数密度の増加量ΔNとなる。このΔNをNに加えることによって測定時間tにおけるクリープボイドの個数密度Nが算出できる。
【0062】
上記の方法をまとめると以下のようになる。
ある計算ステップ(時間ステップ)において、応力パラメータMからクリープボイドの個数密度の平均増加速度Nvmを求める。このクリープボイドの個数密度の平均増加速度Nvmと前のステップにおけるクリープボイドの個数密度Nを用いて、図6よりこのときのクリープボイドの個数密度の増加速度Nvを求める。クリープボイドの個数密度の増加速度NvにΔtを掛けてΔN(この時間ステップにおけるクリープボイド数の増加量)を求め、前のステップにおけるクリープボイドの個数密度NにΔNを足してこの時間ステップのクリープボイドの個数密度Nとする。
したがって、測定時間tにおける耐熱鋼溶接部の損傷の予測がより精度良くできるようになる。
【0063】
そして、上記手順をクリープボイドの個数密度Nが所定の最大値となる限界値Nc(例えば800個/mm2程度)に達するまで計算を繰り返し行う。なお、限界値Ncはクリープボイド同士が合体してき裂となる末期における値であり、耐熱鋼の種類や評価対象部位によって異なる。この計算によって、時間t(0〜限界値に達する時間まで)におけるクリープボイドの個数密度Nが算出できる。すなわち、図10のような関係が求められる。
【0064】
耐熱鋼溶接部の損傷の予測は、上記の計算から求められた測定時間tにおけるクリープボイドの個数密度Nから行うことができる。そして、クリープボイドの個数密度Nが限界値Ncに達する時間が、その耐熱鋼の寿命であると予測できる。
【0065】
(上記方法の精度確認)
図7には、本実施例の精度を確認するために用いた耐熱鋼配管の図を示し、図8には、図7のB部の詳細図を示す。
【0066】
図1及び図5に示した損傷予測方法の有効性を確認するため、図7に示す試験体の耐熱鋼配管6を用いて本実施例の方法による予測結果と実験結果を比較した。図7の配管6は、軸方向に溶接部7と溶接熱影響部8があり、内圧Pを受ける耐熱鋼配管6である。図8に図7のB部の詳細を示す。溶接熱影響部8aに点線9で示した線に沿って、本実施例の方法及び実験で求めたクリープボイドの個数密度を比較した。
【0067】
図9には、図7の配管6の詳細な応力分布を求めるための有限要素法(FEM)解析モデル10を示す。
この解析モデル10を用いて、図5のフローチャートに従って応力パラメータMを求め、図1の関係からクリープボイドの個数密度の時間変化を予測した。また、実験では、途中で試験を止めて、配管6を切断し、配管6の内部のクリープボイド発生状況(断面)を観察した。
【0068】
図10には、図8のC点におけるクリープボイドの個数密度の時間変化を示す。実線が本実施例の方法による結果を示し、プロット点が実験で求めた結果を示している。図10からも、予測値と実験値の両者は良く一致することが確認された。
【0069】
図11には、図8の点線9に沿ったクリープボイドの個数密度の分布を示す。
図11の横軸は、配管6の外表面からの距離xを肉厚tで割り、無次元化した値(x/t)である。
図11においても、実線で示した予測値とプロット点で示した実験値は良く一致していることが確認された。以上の結果から、本実施例の方法によって、精度良くクリープボイドの個数密度の増加を予測できることが確認された。
【0070】
したがって、本実施例の方法により、実際に用いられる耐熱鋼溶接部に則した複雑な応力状態にある溶接熱影響部の損傷を精度良く予測することができる。そして、このように予め求めた関係と計算値から耐熱鋼溶接部の損傷を予測することが可能となる。
そして、より詳しい検査が必要な部位を予測することもでき、耐熱鋼溶接部の検査や耐熱鋼自体の取替えの必要性を把握できる。例えば、検査として、レプリカ法(これは表面のみに適用可能)や超音波探傷(これは肉厚内部の検査も可能)などがある。
【実施例2】
【0071】
図12には、クリープボイドの面積率の平均増加速度と応力パラメータMとの関係を示す。
クリープボイドの面積率は、レプリカ法でも、上述した平均増加速度Nvmの求め方と同様に実際に切断した断面を用いても良く、顕微鏡写真の面積を測って算出する。クリープボイドの面積率は、図15に示したクリープボイドの占める面積をある一定の観察面積で割った値である。クリープボイドの占める面積を求めることで、クリープボイドの面積率は、クリープボイドの個数密度を求める方法と同様に求めることができる。
【0072】
実施例1では、クリープボイドの個数密度Nの増加から損傷の増加を予測したが、クリープボイドの面積率を耐熱鋼溶接部の損傷評価に用いる場合においても、図12に示す関係を用いれば、実施例1と同様な方法で、クリープボイドの面積率の増加、すなわち耐熱鋼溶接部の損傷の増加を予測することが可能である。
【0073】
図5のフローの「クリープボイドの個数密度」、「クリープボイドの個数密度の増加速度」、「クリープボイドの個数密度の平均増加速度」をそれぞれ「クリープボイドの面積率」、「クリープボイドの面積率の増加速度」、「クリープボイドの面積率の平均増加速度」と置き換えることで実施例1と同様に耐熱鋼溶接部の損傷を予測できる。
そして、本実施例においても実施例1と同様な効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明によれば、火力発電用のプラントに限らず、特に高温・高圧配管に使用される高クロムの溶接部、特に溶接熱影響部の損傷を予測するのに有効な方法である。
【符号の説明】
【0075】
1 配管 2 母材
3 溶接金属 4 溶接熱影響部
5 応力評価線 6 配管(試験体)
7 溶接部 8 溶接熱影響部
9 点線
10 有限要素法解析モデル
50 配管 51 溶接部
52 母材 53 溶接金属
54 溶接熱影響部 56 結晶粒界
57 クリープボイド 58 き裂
59 丸棒クリープ試験片 60 母材
61 溶接金属 62 溶接熱影響部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱鋼溶接部に作用する応力の分布を計算し、該計算値から耐熱鋼溶接部の損傷を予測する耐熱鋼溶接部の損傷予測方法において、
耐熱鋼溶接部の応力状態を表現するパラメータとして、下記式(1)で表されるMを用いることを特徴とする耐熱鋼溶接部の損傷予測方法。
M=A・σ1・TFB (1)
ここで、A,B:係数、σ1:最大主応力、TF:応力多軸度係数である。
【請求項2】
耐熱鋼溶接部におけるパラメータMとクリープボイドの個数密度の増加速度との関係(a)、又は耐熱鋼溶接部におけるパラメータMとクリープボイドの面積率の増加速度との関係(b)を予め求めておき、
耐熱鋼溶接部の対象部位におけるパラメータMを求めて、該対象部位におけるパラメータMと前記予め求めた関係(a)又は関係(b)から対象部位におけるクリープボイドの個数密度の増加速度又はクリープボイドの面積率の増加速度を求めることで、クリープボイドの個数密度又はクリープボイドの面積率を推定することを特徴とする請求項1記載の耐熱鋼溶接部の損傷予測方法。
【請求項3】
有限要素法(FEM)によるクリープ解析結果から求められる局所的な応力を用いてパラメータMを計算することを特徴とする請求項1又は2に記載の耐熱鋼溶接部の損傷予測方法。
【請求項4】
前記クリープボイドの個数密度の増加速度又は前記クリープボイドの面積率の増加速度として、クリープボイドの発生初期からクリープボイドの個数密度又はクリープボイドの面積率が所定の最大値となる末期における平均増加速度を用いることで、クリープボイドの個数密度又はクリープボイドの面積率を推定することを特徴とする請求項2記載の耐熱鋼溶接部の損傷予測方法。
【請求項5】
前記関係(a)として、耐熱鋼溶接部の溶接熱影響部におけるパラメータMとクリープボイドの個数密度の増加速度との関係、前記関係(b)として、耐熱鋼溶接部の溶接熱影響部におけるパラメータMとクリープボイドの面積率の増加速度との関係を用いると共に、
前記耐熱鋼溶接部の対象部位を溶接熱影響部としたことを特徴とする請求項2記載の耐熱鋼溶接部の損傷予測方法。
【請求項6】
耐熱鋼溶接部における所定時間毎のクリープボイドの個数密度の増加速度とクリープボイドの個数密度の平均増加速度との関係(c)、又は耐熱鋼溶接部における所定時間毎のクリープボイドの面積率の増加速度とクリープボイドの面積率の平均増加速度との関係(d)を予め求めておき、
前記関係(a)から求められた対象部位におけるクリープボイドの個数密度の平均増加速度と前記関係(c)から、対象部位における所定時間毎のクリープボイドの個数密度の増加速度を求めること、又は
前記関係(b)から求められた対象部位におけるクリープボイドの面積率の平均増加速度と前記関係(d)から、対象部位における所定時間毎のクリープボイドの面積率の増加速度を求めることで、
クリープボイドの個数密度又はクリープボイドの面積率を推定することを特徴とする請求項4記載の耐熱鋼溶接部の損傷予測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−108051(P2012−108051A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258132(P2010−258132)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】