説明

耐衝撃性の改善された、ポリアミドフィルム

耐衝撃性の改善されたポリアミドから製造したフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件特許出願は、本明細書に参考文献として組み入れる、2003年8月19日付で出願された、U.S.仮特許出願第60/496,011号に係る優先権を主張する。
本発明は、耐衝撃性の改善された、ポリアミド製のフィルムに関するものである。本発明によるフィルムは、単独層として、(1) 芳香族ポリアミドと耐衝撃性改良剤とを含有する、少なくとも一つの層L1、および場合により(2) 脂肪族ポリアミドを含有する、少なくとも一つの層L2を含む。
本発明の付随的な利点並びに他の特徴は、一部には、以下の説明において提示され、また一部は、当業者が以下の記載を検討した際に明らかとなり、あるいは本発明の実施を通して知ることができる。本発明の利点は、特に添付した特許請求の範囲において指摘されているように具体化し、かつ得ることができる。認識されるように、本発明は、他のおよび異なる態様で実現することも可能であり、またその幾つかの細部は、全て本発明から逸脱すること無しに、様々な明らかな点において変更することができる。本説明は、全く例示的なものと考えるべきであり、限定的なものと考えるべきではない。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドフィルム、例えばPA 6、66、11、12およびその他は公知であり、また様々な用途において利用されている。例えば、ポリアミドフィルムは、化学薬品、水および燃料に対するバリア特性を与えるために利用され、あるいは電気的な用途における絶縁成分として利用される。
しかし、ポリアミドフィルムの性能、例えばその機械的特性、水、その他の溶媒および化学薬品に対する耐性、電気絶縁特性等に関して、改善の必要性が残されている。
【発明の開示】
【0003】
本発明は、フィルムを提供するものであり、このフィルムは、単独層として、(1) 芳香族ポリアミドおよび耐衝撃性改良剤を含有する、少なくとも一つの層L1、および場合により(2) 脂肪族ポリアミドを含有する、少なくとも一つの層L2を含む。好ましい態様においては、L1がこのフィルムの該単独層である。他の好ましい態様において、層L1およびL2が、相互に直接接触した状態にあり、しかも本発明のフィルムに含まれる該単独層である。更なる好ましい態様において、該フィルムは、L1/L2/L1なる順序で、3層の連続層を含む。更に別の好ましい態様において、本発明のフィルムは、2層またはそれ以上の連続するL1層を含む。更に好ましい態様において、該フィルムは、単独層として、[(L1)n/(L2)m]x (ここで、xは1またはそれ以上の任意の整数であり、nは1またはそれ以上の任意の整数であり、またmは任意の整数(例えば、0、1、2等)である)なる順序の、任意の数の連続層を含む。別の好ましい態様では、本発明のフィルムは、フルオロポリマー層を含まない。本発明のフィルムが、多層構造を持つ場合、該L1およびL2層各々は、同一であっても、相互に異なっていても良い。
本発明のフィルムは、層L1およびL2を製造するために確認された材料から、望ましいと思われる任意の方法、例えば押出法によって製造することができ、このような製造技術は当業者には周知である。本発明のフィルムのサイズ、形状、壁厚(肉厚)、表面組織等には、何等制限はない。
【0004】
〔発明の詳細な説明〕
3層以上の多層構造に関連して、「内側層(inner layer)」なる用語は、該フィルムの最も内側の層を意味するものと理解される。用語「外側層(outer layer)」とは、該フィルムの最も外側の層を意味するものと理解され、即ちこの外側層と直に隣接する、その外側には、他の層が存在しない。多層フィルム構成は、2層の外側層を持つ。本発明のフィルムが、単一の層で構成される場合、これは、「単層(monolayer)」と呼ばれる。
ポリアミド
ポリアミドは、一般的に言えば、反復するアミド(CONH)官能基を含むポリマーである。典型的に、ポリアミドは、ジアミンおよび二酸モノマー単位の反応によって(例えば、ナイロン6,6)、あるいはアミノカルボン酸またはカプロラクタムを重合することにより(例えば、ナイロン6)生成される。ポリアミドは周知の材料である。本発明において有用なポリアミドは、米国特許第6,531,529号、同第6,359,055号、同第5,665,815号、同第5,436,294号、同第5,447,980号、RE34,447、同第6,524,671号(デュポン(DuPont)社)、同第6,306,951号(BP社(BP Corp.))および同第5,416,189号に記載されているもの、並びにアモデル(AmodelTM)およびイグゼフ(IXEFTM)なる商品名でソルベーアドバンストポリマーズ(Solvay Advanced Polymers)社によって販売されているものを含む。本発明は、芳香族および脂肪族ポリアミド両者に関連する。その芳香族繰返し単位の芳香族性は、重縮合により生成したポリアミドについては、二酸および/またはジアミンに起因するものであり得る。
【0005】
ポリアミド組成物L1
本発明において有用なフィルム用の、上記L1ポリアミド組成物は、芳香族ポリアミドと耐衝撃性改良剤とを含む。
芳香族ポリアミド
芳香族ポリアミドは、該ポリマー中の繰返し単位100モル%を基準として、50モル%を越える「タイプ1」繰返し単位を含むポリマーである。該タイプ1繰返し単位は、該ポリマー鎖中に少なくとも一つのCONH基を持つ。更に、このタイプ1の繰返し単位は、その少なくとも30モル%が、芳香族基を含むことによって特徴付けられる。従って、本発明の芳香族ポリアミドにおける、芳香族基-含有繰返し単位の最低含有率は、該ポリマー中の繰返し単位100モル%を基準として、15モル%を越える。好ましくは、本発明の芳香族ポリアミドは、このポリアミドを構成するモノマー100モル%を基準として、芳香族基を含むモノマーを、少なくとも20モル%含む。必須ではないが、このような芳香族基は、典型的に二酸モノマーに由来しており、またテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等を包含する。好ましい態様において、該芳香族ポリアミドは、このポリアミドを構成するモノマー100モル%を基準として、少なくとも30モル%の芳香族基を含むモノマーを含み、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85モル%等で、該モノマーを含む。
【0006】
一組の好ましい芳香族ポリアミドは、PMXDA、即ち少なくとも1種の脂肪族二酸とメタキシリレンジアミンとの間の重縮合反応によって生成される繰返し単位を、50モル%を越える量で含有する芳香族ポリアミドである。
該脂肪族二酸は、特にアジピン酸であり得る。
適当なPMXDAは、特にソルベーアドバンストポリマーズ社からIXEFTM PMXDAとして入手できるものである。
もう一つの組の好ましい芳香族ポリアミドは、ポリフタルアミド、即ち少なくとも1種のフタル酸と少なくとも1種の脂肪族ジアミンとの間の重縮合反応によって生成される繰返し単位を、50モル%を越える量で含有する芳香族ポリアミドである。
この脂肪族ジアミンは、特にヘキサメチレンジアミン、ノナンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタジアミン、および1,4-ジアミノブタンであり得る。
適当なポリフタルアミドは、特に、ソルベーアドバンストポリマーズ, L.L.C.から、AMODELTMポリフタルアミドとして入手できるものである。
【0007】
ポリフタルアミドとしては、特にポリテレフタルアミドが好ましい。ポリテレフタルアミドは、テレフタル酸と少なくとも1種のジアミンとの重縮合反応によって生成される繰返し単位を、50モル%を越える量で含有する芳香族ポリアミドとして定義される。
一群の好ましいポリテレフタルアミドは、テレフタル酸と少なくとも1種の脂肪族ジアミンとの重縮合反応によって生成される繰返し単位から本質的になる、ポリテレフタルアミドである。この群のポリテレフタルアミドにおいて、該脂肪族ジアミンは、好ましくは3〜9個の炭素原子を含み、また極めて好ましくは、該ジアミンは6個の炭素原子を含む。炭素原子数6の脂肪族ジアミンの例は、ヘキサメチレンジアミンである。
第二の群の好ましいポリテレフタルアミドは、テレフタル酸、イソフタル酸および少なくとも1種の脂肪族ジアミンの重縮合反応によって生成される繰返し単位から本質的になる、ポリテレフタルアミドである。この態様において、テレフタル酸とイソフタル酸との間のモル比は、テレフタル酸については、50〜80(55、60、65、70および75を含む)であり、またイソフタル酸については、10〜40(15、20、25および35を含む)であり得る。他の態様では、このモル比は、テレフタル酸については35〜65であり、またイソフタル酸については20以下であり得る。
【0008】
第三の群の好ましいポリテレフタルアミドは、テレフタル酸、少なくとも1種の脂肪族二酸および少なくとも1種の脂肪族ジアミンの重縮合反応によって生成される繰返し単位から本質的になる、ポリテレフタルアミドである。この態様において、テレフタル酸と脂肪族二酸との間のモル比は、テレフタル酸については、50〜80(55、60、65、70および75を含む)であり、また脂肪族二酸については、25以下(5、10、15、および20を含む)であり得る。他の態様では、このモル比は、テレフタル酸については35〜65であり、また脂肪族二酸については30~60であり得る。
【0009】
第四の群の好ましいポリテレフタルアミドは、テレフタル酸、イソフタル酸、少なくとも1種の脂肪族二酸および少なくとも1種の脂肪族ジアミンの重縮合反応によって生成される繰返し単位から本質的になる、ポリテレフタルアミドである。この態様において、テレフタル酸と脂肪族二酸との間のモル比は、テレフタル酸については、50〜80(55、60、65、70および75を含む)であり、イソフタル酸については、10〜40(15、20、25および35を含む)であり、また脂肪族二酸については、25以下(5、10、15、および20を含む)であり得る。他の態様では、このモル比は、テレフタル酸については35〜65、イソフタル酸については20以下であり、また脂肪族二酸については30〜60であり得る。
【0010】
本発明において有用な、他の好ましい芳香族ポリアミドは、テレフタル酸、アジピン酸、場合によってはイソフタル酸、およびヘキサメチレンジアミンから作られるものである。
もう一つの好ましい態様において、該芳香族ポリアミドは、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸と、少なくとも1種のジアミン、好ましくは脂肪族ジアミンとの重縮合反応により生成される繰返し単位を、少なくとも50モル%であって、100モル%までの量で含むポリルアミドである。この群において、テレフタル酸/イソフタル酸/アジピン酸のモル比は、(50〜80)/(10〜40)/(25以下)であり得る。他の態様では、このモル比:テレフタル酸/イソフタル酸/アジピン酸は、(35〜65)/(20以下)/(30〜60)であり得る。好ましい態様において、これら酸混合物に対する該ジアミン成分は、HMDAである。
【0011】
本発明の幾つかの態様において、該ポリフタルアミドを製造する際に使用する、上記ジカルボン酸成分は、少なくとも約50モル%の芳香族基から、約100%の芳香族基までの範囲内の、芳香族ジカルボン酸基のモル比で含まれる。本発明の好ましい態様において、該ポリフタルアミドポリマーは、約50モル%〜約95モル%なる範囲のヘキサメチレンテレフタルアミド単位、約25モル%〜約0モル%なる範囲のヘキサメチレンイソフタルアミド単位、および約50モル%〜約5モル%なる範囲のヘキサメチレンアジパミド単位を含む。他の有用な芳香族ポリアミドは、テレフタル酸、イソフタル酸およびHMDA等の脂肪族アミンから、例えば70/30なるTA/IA比を用いて製造したものである。本発明において使用するのに特に適したポリフタルアミドは、ソルベーアドバンストポリマーズ, L.L.C.から、AMODELTMA-1000、A-4000、A-5000およびA-6000ポリフタルアミドとして入手できる。発明において使用するのに適したポリフタルアミドは、前に引用した、Poppe等の米国特許第5,436,294号、同第5,447,980号、およびRe34,447に記載されている。
勿論、2種以上の芳香族ポリアミドを、ポリアミド組成物L1において使用することも可能である。
【0012】
耐衝撃性改良剤
本発明において有用な耐衝撃性改良剤は、本発明のL1層の該芳香族ポリアミド成分に、有用な諸特性、例えば降伏点および破断点における十分な引張伸びを付与する限りにおいて、特に制限されない。例えば、0℃未満のガラス転移点を持つ、任意のゴム状低モジュラス官能化ポリオレフィン耐衝撃性改良剤が、本発明にとって適しており、米国特許第5,436,294号および同第5,447,980号に記載されている、官能化耐衝撃性改良剤を含む。有用な耐衝撃性改良剤は、ポリオレフィン、好ましくは官能化ポリオレフィン、および特にエラストマー、例えばSEBSおよびEPDMを含む。
【0013】
有用な官能化ポリオレフィン耐衝撃性改良剤は、販売元から入手可能であり、例えばエクソンモービルケミカル社(Exxon Mobil Chemical Company)から、EXXELORTM POとして入手できるマレイン酸で官能化したポリプロピレンおよびエチレン-プロピレンコポリマー、およびEXXELORTM RTM. VA 1801等の、約0.6質量%のペンダント無水琥珀酸基を含む、無水マレイン酸で官能化したエチレン-プロピレンコポリマーゴム;デュポン社(DuPont Company)からの、SURLYNTM、例えばSURLYNTM 9920として入手できるアクリレート-変性ポリエチレン、メタクリル酸-変性ポリエチレン;およびダウケミカル(Dow Chemical Company)社からの、PRIMACORTM、例えばPRIMACORTM 1410 XT、アクリル酸-変性ポリエチレン;クラトンポリマーズ(Kraton Polymers)社から入手できる、無水マレイン酸-変性スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ブロックコポリマー、例えばKRATONTM FG1901X、ここでSEBSは、約2質量%の無水マレイン酸でグラフトされている;クロンプトンコーポレーション(Crompton Corporation)から入手できる、無水マレイン酸で官能化したエチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)ターポリマーゴム、例えば1%の無水マレイン酸で官能化したEPDMである、ROYALTUFTM 498を包含する。本発明のフィルムは、これら耐衝撃性改良剤を用いて製造したもののみに制限されない。該耐衝撃性改良剤上の適当な官能基は、該ポリアミドの末端基と反応して、高温マトリックスに対して高い接着性を与えることのできる、任意の化学的部分を含む。
【0014】
同様に本発明の実施に際して使用することのできる、他の官能化された耐衝撃性改良剤は、エチレン-高級α-オレフィンポリマーおよびエチレン-高級α-オレフィン-ジエンポリマーを含み、これらは、適当な反応性のカルボン酸またはその誘導体、例えばアクリル酸、メタクリル酸、無水またはレイン酸またはそのエステルをグラフトするか、あるいはこれらと共重合することによって、反応性の官能基が与えられており、またASTM D-638に従って測定した如き、約344MPa(約50,000 psi)までの引張弾性率を持つであろう。適当な高級α-オレフィンは、C3〜C8α-オレフィン、例えばプロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1およびスチレンを包含する。あるいはまた、このような単位を含む構造を持つコポリマーは、重合した1,3-ジエンモノマーの、適当なホモポリマーおよびコポリマーを水素化することによって得ることもできる。例えば、変動するレベルのペンダントビニル単位を含むポリブタジエンは、容易に得られ、またこれらを水素化して、エチレン-ブテンコポリマー構造を与えることができる。同様に、ポリイソプレンの水素化を利用して、等価なエチレン-イソブチレンコポリマーを得ることができる。本発明において使用できる、該官能化されたポリオレフィンは、約0.5〜約200g/10分なる範囲のメルトインデックスを持つものを包含する。
【0015】
エチレン-α-オレフィン-ジエンターポリマーの製造において使用する適当なジエンは、4〜約24個の炭素原子を持つ非-共役ジエンであり、その例は、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンおよびアルキリデンノルボルネン、例えば5-エチリデン-2-ノルボルネンを含む。上記のエチレン-高級α-オレフィンコポリマーゴム中のエチレン単位および高級α-オレフィン単位のモル分率は、一般的に約40:60〜約95:5なる範囲内にある。これらの中には、約50〜約95モル%なる範囲のエチレン単位と、約5〜約50モル%なる範囲のプロピレン単位を含む、エチレン-プロピレンコポリマーが含まれる。重合されたジエンモノマーを含むターポリマーにおいて、そのジエン単位の含有率は、約10モル%までであり、また幾つかの態様においては、この含有率は、約1〜約5モル%なる範囲であり得る。同様に適当なものは、2またはそれ以上のポリマーブロックを含む対応するブロックコポリマーであり、該ブロック各々は、エチレンおよび高級α-オレフィンから選択される1種またはそれ以上のモノマーから生成される。上記の官能化されたポリオレフィンは、一般的に、更に約0.1〜約10質量%なる範囲の官能基を含むであろう。
本発明において有用な他の耐衝撃性改良剤は、米国特許第6,765,062号(チバスペシャルティーケミカルズ社(Ciba Specialty Chemicals Corporation))およびEP 901 507 B1(デュポン(DuPont)社)に記載されているものを含む。
【0016】
更に他の本発明において有用な耐衝撃性改良剤は、パラロイド(ParaloidTM)耐衝撃性改良剤として、ローム&ハース(Rohm & Haas)社により市販されている、アクリル系耐衝撃性改良剤を含む。
該組成物L1内に存在する耐衝撃性改良剤の量は、制限されず、好ましくは十分な降伏点および破断点引張伸びを付与するのに十分な量である。一般的に、該ポリアミド組成物L1は、この組成物L1の全質量を基準として、約2質量%〜約40質量%なる範囲の耐衝撃性改良剤、例えば5、10、15、20、25、30および35質量%の該改良剤を含むであろう。しかし、この耐衝撃性改良剤は、0.1質量%程度の低い量で存在することも可能である。
該耐衝撃性改良剤および芳香族ポリアミドは、任意の方法で一緒に混合することができ、また混合は予め、例えば押出しにより行うことができ、あるいは該材料を、使用する押出機内で混合することも可能である。
勿論、2種以上の耐衝撃性改良剤を、該ポリアミド組成物L1内で使用することも可能である。
【0017】
ポリアミド組成物L2
本発明において有用な上記のポリアミド組成物L2は、本発明のフィルムの随意の層を形成し、また脂肪族ポリアミドを含有する。脂肪族ポリアミドは、このポリマー内の繰返し単位100モル%を基準として、50モル%を越える「タイプ2」の繰返し単位を含むポリマーである。タイプ2の繰返し単位は、該ポリマー鎖中に少なくとも一つのCONH基を持つ。更に、このタイプ2繰返し単位は、その30モル%未満が、芳香族基を含むことを特徴とする。従って、本発明における、芳香族基-含有繰返し単位の、脂肪族ポリアミドにおける最大の含有率は、このポリマー中の繰返し単位100モル%を基準として、15モル%未満である。好ましくは、該脂肪族ポリアミドは、このポリアミドを構成するモノマー100モル%を基準として、85モル%を越え、例えば90%等の量で、脂肪族基を含みかつ芳香族基を含まないモノマーを含む。必須ではないが、このような脂肪族基は、ジアミンモノマーを由来とするものであり得、また4〜12個の炭素原子を含む脂肪族ジアミン、例えばヘキサメチレンジアミン(HMDA)、ノナンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタジアミンおよび1,4-ジアミノブタン等を含むことができる。脂肪族単位の有用な二酸源の一つは、アジピン酸である。本発明の脂肪族L2ポリアミド類の有用な例は、脂肪族ナイロン(例えばPA6、PA6,6、PA6,12、PA4,6、PA11、PA12等)を含む。
【0018】
勿論、1種以上の脂肪族ポリアミドを、該ポリアミド組成物L2において使用することができる。更に、必要ならば、上記の耐衝撃性改良剤を、このポリアミド組成物L2において使用することができる。
添加剤
該ポリアミド組成物L1およびL2は、各々独立に、場合により、更に1種またはそれ以上の添加剤を含むことができる。有用な添加剤は、例えば、押出しを容易にするためのPTFEまたは低密度ポリエチレン(LDPE)等の表面滑剤を含む。適当な粉末化したPTFEは、ソルベーソレクシス(Solvay Solexis)から入手できるPOLYMISTTMF5Aを含む。
【0019】
もう一つの有用な添加剤は、熱安定剤である。適当な熱安定剤は、このポリアミドに可溶性の銅化合物およびアルカリ金属ハライドを含む銅-含有安定剤を含む。より具体的には、幾つかの態様において、この安定剤は、酢酸第一銅、ステアリン酸第一銅、銅アセチルアセトネート等の第一銅有機錯体化合物、ハロゲン化第一銅等の銅(I)塩、およびアルカリ金属ハライドを含む。本発明の幾つかの態様においては、この安定剤は、ヨウ化銅および臭化銅から選択されるハロゲン化銅と、リチウム、ナトリウムおよびカリウムのヨウ化物および臭化物から選択されるアルカリ金属ハライドとを含む。銅(I)ハライド、アルカリ金属ハライドおよびリン化合物を含む処方物も、長時間に渡り約140℃を越える温度に暴露した際の、ポリフタルアミド組成物から製造したフィルムの安定性を改善するために使用できる。使用するこの安定剤の量は、約50ppm〜約1000ppmの銅濃度を与えるのに十分な量であることが好ましい。本発明の好ましい組成物は、アルカリ金属ハライドと銅(I)ハライドとを、約2.5〜約10なる範囲、および最も好ましくは約8〜約10なる範囲の質量比で含む。一般的に、銅およびアルカリ金属ハライド化合物の、安定化されたポリアミド組成物における総質量は、約0.01質量%〜約2.5質量%なる範囲内にある。本発明のフィルムを製造するのに使用される、幾つかの他の安定化されたポリアミド組成物において、該安定剤は、約0.1質量%〜約1.5質量%なる範囲の量で存在する。
【0020】
本発明によるポリアミド組成物にとって特に適した安定剤は、ステアリン酸マグネシウムをバインダとする、ヨウ化カリウムとヨウ化第一銅とを10:1なる質量比で含有する混合物のペレットを含む。このヨウ化カリウム/ヨウ化第一銅熱安定剤は、長期熱老化性、例えばボンネット内での自動車の温度への暴露に対する防御をもたらす。
もう一つの有用な添加剤は、強化フィラー等のフィラー、または構造用繊維である。充填物品および複合製品の製造に際して有用な構造用繊維は、ガラス繊維、炭素繊維またはグラファイト繊維、および炭化珪素、アルミナ、チタニア、ホウ素等から製造した繊維、並びに高温エンジニアリングレジン、例えばポリ(ベンゾチアゾール)、ポリ(ベンズイミダゾール)、ポリアリーレート、ポリ(ベンゾキサゾール)、芳香族ポリアミド、ポリアリールエーテル等から製造した繊維を含み、また2種またはそれ以上のこのような繊維を含有する混合物を含むこともできる。本発明において有用かつ適当な繊維は、ガラス繊維、炭素繊維および芳香族ポリアミド繊維、例えばデュポン社(DuPont Company)からケブラー(KEVLARTM)なる名称の下で市販されている繊維を包含する。
もう一つの有用な添加剤は、酸化防止剤である。有用な酸化防止剤は、ノーガード(Nauguard) 445、フェノール(例えば、チバ(Ciba)社からのイルガノックス(Irganox) 1010、イルガノックス1098)、ホスフィット、ホスホナイト(例えば、チバ社からのイルガフォス(Irgafos) 168、クラリアント(Clariant)またはチバ社からのP-EQP)、チオ相乗剤(thio-synergists)(例えば、グレートレイクス(Great Lakes)社からのロウイノックス(Lowinox) DSTDP)、ヒンダードアミン安定剤(例えば、チバ社からのチマソーブ(Chimasorb) 944)、ヒドロキシアミン、ベンゾフラノン誘導体、アクリロイル変性フェノール等を包含する。
【0021】
本発明によるポリアミド組成物において、同様に使用できる他のフィラーは、帯電防止添加剤、例えば炭素粉末、多重壁炭素ナノチューブおよび単壁ナノチューブ並びにフレーク状、球状および繊維状の粒状フィラー強化材、および成核剤、例えばタルク、マイカ、二酸化チタン、チタン酸カリウム、シリカ、カオリン、チョーク、アルミナ、無機繊維等を含む。これらフィラーおよび構造用繊維は、単独でまたは任意の組合せで使用することができる。
更に有用な添加剤は、制限無しに、顔料、染料、難燃剤等を含み、これらは樹脂の分野において通常使用されている添加剤を含む。これらの添加剤は、必要により、単独でまたは任意の組合せで使用することができる。特別な用途に対しては、該ポリアミド組成物は、また可塑剤、潤滑剤、および離型剤、並びに熱、酸化および光安定剤等を含むこともできる。このような添加剤の濃度は、本明細書の開示に照らして、当業者がもくろんだ特定の用途に応じて決定することができる。
【0022】
方法
本発明のフィルムは、当分野において公知の、あるいは最近開発された任意の方法、特に押出しを含む方法によって製造できる。この点に関連して、当業者は、本明細書の開示に照らして、上記ポリアミド組成物L1およびL2を用いて、ここに記載したようにして、本発明のフィルムを製造することができる。
本発明のフィルムの物理的な寸法に、制限はない。単層フィルムまたは多層フィルムの好ましい厚みは、5μm〜1000μm(0.05〜1mm)なる範囲、より好ましくは15μm〜900μm(0.15mm〜0.9mm)なる範囲内にあり、これらの間のあらゆる値および範囲、特に50、100、200、400、600および800μmを含む。
耐衝撃性の改善されたポリアミド製の本発明のフィルムは、通常の方法、例えば既存のフィルム製造ラインで押出すことができ、また必要ならば、極めて薄いフィルム(例えば、5〜50μm)を与えることも可能である。上で議論したように、本発明のフィルムは、単層または多層フィルムであり得る。これらフィルムの特性は、これを構成する材料の割合を変えることにより、あるいはフィルム製造法を変えることによって、変化させることが可能である。異なるL1またはL1/L2なる構成の2層フィルムは、結合層の必要なしに、製造できる。3層またはそれ以上の層を含むフィルムを製造することもできる。優れた結果は、特に以下のものを使用して得られた:
【0023】
・単独層として、少なくとも1層のL1層を含むフィルム;
・単独層として、1層のL1層を含むフィルム(単層フィルム);
・単独層として、少なくとも2層のL1層を含むフィルム;
・単独層として、少なくとも1層のL1層と、少なくとも1層のL2層とを含むフィルム;
・単独層として2層を含み、その第一の層がL1層であり、かつ他の層がL2層であるフィルム(2層フィルム)、このフィルムにおいて、該層L1は、内側層または外側層の何れであってもよい;
・単独層として、L1/L2/L1からなる3層を含むフィルムであって、ここでL1層は内側および外側層両者であり、かつL2層が中間層である。
【0024】
本発明のフィルムは、高い引張特性および高い衝撃強さを有し、また良好な耐摩耗性を示す。機械的強度、剛性および引裂強さは、二軸延伸によって高められている。このようにして、本発明のフィルムは、ポリアミドフィルムが通常使用されている様々な状況の下で使用することができ、しかも良好な性能を与える。
本発明のフィルムは、従来のポリアミドフィルム(PA 6またはPA66)よりも緩慢に水を吸い上げ、また該従来のフィルムに比してより遅い透過速度を持つ。従って、一態様において、本発明のフィルムは、低透過性およびより高い温度を必要とする、高温水に係る用途において使用することができる。
本発明のフィルムは、またポリアミド12、11、6、または66フィルム等の従来のポリアミドフィルムよりも大幅に低い、燃料およびガスに対する透過率を持つ。従って、他の態様では、本発明のフィルムは、より高温において使用することができ、高温燃料系用途において、特に従来のポリアミドフィルムよりも高い温度にて使用できる。
【0025】
もう一つの態様において、本発明のフィルムは、電動モータおよび他の電子デバイスにおける絶縁デバイスとして使用することができる。PA 12、PA 11、PA 66、またはPA 6等の従来のポリアミドフィルムに比して、高い湿度条件における安定な電気的特性およびこのより高い熱的特性によって、電子的用途における、本発明のフィルムの使用が、更に進められることになる。
他の態様では、本発明のフィルムは、可撓性の印刷回路用の基板およびテープ自動結合積層品(tape automated bonded laminates)として使用することができる。積層品を、該フィルムの両側に結合し、またこの結合を達成するために、既知のアクリル系またはエポキシ系樹脂を使用することができる。
本発明のフィルムは、また工業用変圧器絶縁体および圧縮機モータコイル絶縁体等において使用することができる。
本発明のフィルムは、広範囲に渡る物質、例えばエステル、ケトン、弱酸、脂肪族および芳香族炭化水素類等に対する、優れた耐薬品性を持つ。従来の脂肪族ポリアミド、例えばPA 6または66とは違って、本発明のフィルムは、アルコールに対する良好な耐性を持つ。従って、他の態様では、本発明のフィルムは、化学物質の製造並びに調製における防食性バリアとして使用することができる。
【実施例】
【0026】
以下に実施例を与えるが、これらは本発明を例示するものであり、何等これを限定するものではない。
以下の表1では、2種の組成物を説明する。更に、コントロール組成物C1は、未変性のアモデル(AMODELTM) A-1006 PPAから製造した。
【0027】
【表1】

【0028】
実施例1、2およびC1のフィルムを、押出しにより製造した。これらの例において、該フィルムは、同時押出し/封入により製造した。この工程を実施するための構成を、図1に示す。2機の30mm押出機E1およびE2を使用した。標準的なポリエチレンおよびポリアミドスクリューを使用した。これらの押出機を、フィードブロックを介してT-字型ダイに接続した。
PPAペレットを押出機E1に、また高粘性パイプグレードのポリエチレン(エルテックス(EltexTM) B4922)を押出機E2に入れた。このPPAフィルムは、ポリエチレン間に封入した。このPPAフィルムの、該ポリエチレンフィルムに対する接着は観測されなかった。該HDPE層からの中央部のPPAフィルムの剥離は容易であった。設定した条件を、以下の表2に示す。










【0029】
【表2】

【0030】
該スクリューの速度およびダイの分離に依存して、厚み50〜300μmをもつ実施例1および2およびコントロールC1のフィルムを得ることができた。
ISO 1BA引張試験片を、これらフィルムから打抜いた。これらの試験片を、クロスヘッド速度0.5mm/分にて引伸ばし、ISO 527の条件下でテストした。以下の表3に示すように、耐衝撃性の改善は、未変性のコントロールC1を凌駕する、降伏点および破断点引張伸びの高い平均値を持つ、ポリマー組成物を与える。事実、耐衝撃性改良剤を含む本発明のPPA組成物は、該コントロールの値の2倍を越える、高い降伏点および破断点引張伸びを持つ。この高い降伏点および破断点引張伸びは、本発明のバリア用途および熱成形用途に関する加工パラメータにおける、より大きな寛容度を与える。
【0031】
【表3】

【0032】
封入無しのフィルムの押出
実施例2の配合は、18mmのブラベンダ一軸押出機を用いて行った。T-字型ダイを、100mmのワイドスプリットダイに代えた点を除いて、構成は図1と同一である。標準的なポリアミドスクリューを使用した。後方から前方に至るバレルの設定は、250〜330℃であった。スクリューのRPM、25mmおよびトルク4kNを用い、該ロールの速度に依存して、厚み50-150μmのフィルムを得た。
【0033】
大規模なフィルムの押出
実施例2の処方物を、工業的規模の(径76mm)一軸スクリュー押出装置を用いて加工した。この装置は、圧縮比3:1を持つ、L/D 20:1の装置であった。ロールは、125℃に加熱した。後方から前方に至るバレルの設定は、310〜325℃であった。該アダプタおよびダイは、330℃に設定した。スクリュー速度70rpmを用いて、厚み0.4mmのフィルムを、ヘッドの圧に依存して、2〜7m/分なる範囲の速度にて製造した。
上記フィルムの引張特性は、ASTM D638に従って測定した。
降伏点引張強さ:54.6 MPa;降伏点伸び:5.2%;破断点引張強さ:67.8 MPa;破断点伸び:110%
このことは、明らかに、耐衝撃性の改善されたポリフタルアミドフィルムの製造における、工業的な有用性を立証しており、また得られたフィルムの諸特性は、意図した最終的な用途にとって許容されるものであることを立証している。
【0034】
バリア特性
実施例の組成物、コントロールおよび比較例の組成物について、燃料透過性テストを行った。この燃料透過性テストの結果を、以下の表4に示す。これら燃料透過性テストは、上記表3に掲載したものと同一の試験片由来のフィルムについて行った。
実施例1および2の耐衝撃性の改善された組成物に加えて、PA 12、PA 6、ソレフ(SolefTM) 1010 PVDFおよびC1(アモデル(AmodelTM) A-1006)についても、透過性の測定を行った。
テストした燃料はCTF1、即ち体積比45/45/10のイソオクタン/トルエン/エタノールブレンドである。2000年1月に改定された、標準的SAE J1681を参照のこと。
測定した燃料透過性は、厚み1mmおよび表面積1 m2のシートを、1日の期間内に透過した、透過物質のグラム数で表されている。耐衝撃性の改善されたPPA、即ち実施例1および2のフィルムの透過性は、脂肪族ポリアミド(PA 6およびPA 12)よりもはるかに優れており、またPVDFと同等である。
本発明のPPA組成物へのエラストマーの配合は、一般的にPPAのバリア特性にとって有害であると考えられるという事実にも拘らず、極めて良好なバリア特性が維持されている。
【0035】
【表4】

【0036】
熱成形
厚み0.4mmを持つ実施例2のフィルムが首尾良く熱成形された。フィルムの正方形の1片を、絵画用のキャンバスと同様に、フレームに締付けた。このフレームを、290〜300℃のオーブン内に、15-45秒間送り込む。このフレームを、この成形型上で直接該オーブンから割出しする。所定の位置に配置したら、この成形型を持ち上げ、締めて、該フィルムを、所定の物品に熱成形する。280℃未満の温度では、該フィルムが固すぎて成形できない。305℃を越える温度では、該フィルムのフクレまたは溶融を生じる。
型押し
厚み0.4mmを持つ実施例2のフィルムは、様々な商業用装置を用いて、様々な形状に首尾良く型押しされた。この技術は、エレクトロニクス工業用の、可撓性回路基板の製造にとって有用である。
PA12との、熱老化に関する比較
以下の表5は、2種の熱安定化した組成物(実施例3および実施例4)を示す。

【0037】
【表5】

【0038】
実施例3および実施例4の組成物と、熱安定化されたPA12とを比較した結果を、以下の表6に与える。
【0039】
【表6】

【0040】
理解されるように、PA12は、熱老化後にアイゾッド衝撃強さにおける破滅的な喪失を受ける。結局、部分的に芳香性の、耐衝撃性が改善されたポリアミドの使用は、空気の存在下において、長期間に渡り高温に暴露した後に、耐衝撃性を保持するための、より安全な選択である。
本明細書において説明するように、本発明の幾つかの態様では、該フィルムは、該L1組成物の単層構造を含む。ここで使用する「単層(monolayer)」とは、ポリマー組成物の単一層から形成され、ここで該ポリマー組成物は、この層の厚み全体を横切って実質的に同一である。本発明の幾つかの態様では、この単層の厚みは、約0.05mm〜約1.0mmなる範囲であり得る。本発明の幾つかの態様において、この単層の厚みは、約0.15mm〜約0.9mmなる範囲にある。
【0041】
該フィルムは、荒い、平滑な、波型等の表面を有し、全体を通して一定の厚み、または変動する厚み等を持つ。更に、本発明のフィルムは、内容物を密閉し、または封入するのに使用でき、また該内容物は、広範囲に渡るものであり得る。例えば、本発明のフィルムは、保護系として使用できる。この点に関して、本発明は、また意図した内容物を実際に収容し、あるいは保持するものとして開示されている。
上記本発明の説明は、当業者が本発明のフィルムを製造し、また使用できるように、その製造並びに使用方法を与えており、この可能性は、特に添付した特許請求の範囲の主題として与えられており、該特許請求の範囲は、この説明の一部を構成し、かつ単独層として、(1) 芳香族ポリアミドおよび耐衝撃性改良剤を含有する、少なくとも一つの層L1、および場合により(2) 脂肪族ポリアミドを含有する、少なくとも一つの層L2を含むことを特徴とする中空体を含む。
【0042】
同様に可能な、本発明の好ましい態様は、以下の様なフィルムを含む:該芳香族ポリアミドはポリフタルアミドである;該脂肪族ポリアミドは、脂肪族ナイロンである;該耐衝撃性改良剤はEPDM、SEBS、およびこれらの混合物からなる群から選択される;該芳香族ポリアミドはフタル酸、テレフタル酸、およびイソフタル酸およびこれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種のジカルボン酸と、少なくとも1種の脂肪族ジアミンとの間の重縮合反応によって得られる繰返し単位を少なくとも50モル%含有するポリアミドである;該ポリフタルアミドは、約50モル%〜約95モル%なる範囲のヘキサメチレンテレフタルアミド単位、約25モル%〜約0モル%なる範囲のヘキサメチレンイソフタルアミド単位、および約50モル%〜約5モル%なる範囲のヘキサメチレンアジパミド単位を含む;該耐衝撃性改良剤はゴムである;該ゴムは、官能化されたポリオレフィンを主成分とするゴムである;該官能化されたポリオレフィンを主成分とするゴムは、マレイン酸無水物で官能化されたスチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマーである;該官能化されたポリオレフィンを主成分とするゴムは、マレイン酸無水物で官能化されたエチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴムである;該層は、[(L1)n/(L2)m]x (ここで、xは1またはそれ以上の任意の整数であり、nは1またはそれ以上の任意の整数であり、またmは任意の整数である)なる順序の連続層である;該層L1は更に表面滑剤をも含む;該表面滑剤は、ポリテトラフルオロエチレン、低密度ポリエチレン、およびこれらの混合物からなる群から選択される;該層L1は、更に少なくとも1種の銅(I)塩および少なくとも1種のアルカリ金属ハライドを含有する、熱安定剤をも含む;該熱安定剤は、ヨウ化銅および臭化銅からなる群から選択される少なくとも1種の銅ハライドおよびリチウム、ナトリウム、およびカリウムのヨウ化物および臭化物からなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ金属ハライドを含む;該フィルムは、単独層として、芳香族ポリアミドと耐衝撃性改良剤とを含む単層からなる;
【0043】
また本発明は、単独層として、(1) 芳香族ポリアミドおよび耐衝撃性改良剤を含有する、少なくとも一つの層L1、および場合により(2) 脂肪族ポリアミドを含有する、少なくとも一つの層L2を含む、フィルムの製造方法であって、芳香族ポリアミドおよび耐衝撃性改良剤を押出し、場合により脂肪族ポリアミドを押出すことを特徴とする該方法を提供する。
ここで使用するように、あるポリマーが、1またはそれ以上のモノマー(またはモノマー単位)「から得られる」または「を含む」等として指示されている場合、この記載は、最終的なポリマー材料それ自体、またはこの最終製品を、全体的にまたは部分的に構成する、その中の繰返し単位を説明するものである。当業者は、正確に言えば、ポリマーが個々の、未反応の「モノマー」含まないが、逆に反応したモノマー由来の繰返し単位で構成されるものであることを理解するはずである。
【0044】
本明細書において述べた全ての参考文献、特許、出願、テスト、標準規格、文書、刊行物、パンフレット、テキスト、論文等を、参考として、本明細書に組み入れる。同様に、全ての市販品として入手できる物質に関する、あらゆるパンフレット、技術情報を含むシート等も、参考として、本明細書に組み入れる。数値的限定または範囲が述べられている場合には、その終点をも含む。また、数値的限定または範囲内の全ての値および小領域は、具体的に、明瞭に書き出されているものとして含まれる。
上記説明は、当業者が本発明を理解し、かつその利用を可能とするように、提示されており、特定の用途およびその要件と関連して与えられている。これらの好ましい態様に対する様々な改良は、当業者には容易に理解されるものであり、ここに定義した一般的な原理は、本発明の精神並びに範囲から逸脱すること無しに、他の態様および用途に適用できるものである。従って、本発明は、本明細書に示した態様に限定されるものではなく、ここに記載した原理並びに特徴と一致する最も広い範囲が与えられるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1−A】本発明によるフィルムを押出すのに有用な、押出機の構成を示す図である。
【図1−B】本発明によるフィルムを押出すのに有用な、押出機の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
Z1、Z2、Z3・・・押出機(E1またはE2)の温度制御ゾーン
Z4・・・ダイアダプタの温度制御ゾーン
Zc1、Zc2、Zc3、Zc4・・・ダイ用の温度制御ゾーン
E1、E2・・・押出機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単独層として、
(1) 芳香族ポリアミドおよび耐衝撃性改良剤を含有する、少なくとも一つの層L1、および場合により
(2) 脂肪族ポリアミドを含有する、少なくとも一つの層L2
を含むことを特徴とする、フィルム。
【請求項2】
該芳香族ポリアミドが、ポリフタルアミドである、請求項1記載のフィルム。
【請求項3】
該フィルムが、少なくとも一つの層L2を含み、かつ該脂肪族ポリアミドが、脂肪族ナイロンである、請求項2記載のフィルム。
【請求項4】
該耐衝撃性改良剤が、EPDM、SEBS、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1記載のフィルム。
【請求項5】
該芳香族ポリアミドが、フタル酸、テレフタル酸、およびイソフタル酸からなる群から選択される、少なくとも1種のジカルボン酸と、少なくとも1種の脂肪族ジアミンとの間の重縮合反応によって得られる繰返し単位を、少なくとも50モル%の量で含有するポリアミドである、請求項1記載のフィルム。
【請求項6】
該ポリフタルアミドが、約50モル%〜約95モル%なる範囲のヘキサメチレンテレフタルアミド単位、約25モル%〜約0モル%なる範囲のヘキサメチレンイソフタルアミド単位および約50モル%〜約5モル%なる範囲のヘキサメチレンアジパミド単位を含む、請求項2記載のフィルム。
【請求項7】
該耐衝撃性改良剤がゴムである、請求項1記載のフィルム。
【請求項8】
該ゴムが、官能化されたポリオレフィンを主成分とするゴムである、請求項7記載のフィルム。
【請求項9】
該官能化されたポリオレフィンを主成分とするゴムが、マレイン酸無水物で官能化されたスチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマーである、請求項8記載のフィルム。
【請求項10】
該官能化されたポリオレフィンを主成分とするゴムが、マレイン酸無水物で官能化されたエチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴムである、請求項8記載のフィルム。
【請求項11】
該耐衝撃性改良剤が、マレイン酸無水物で官能化されたエチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム、マレイン酸無水物で官能化されたスチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項6記載のフィルム。
【請求項12】
該層が、[(L1)n/(L2)m]x (ここで、xは1またはそれ以上の任意の整数であり、nは1またはそれ以上の任意の整数であり、またmは任意の整数である)なる順序の連続層である、請求項1記載のフィルム。
【請求項13】
該層L1が、更に表面滑剤をも含む、請求項1記載のフィルム。
【請求項14】
該表面滑剤が、ポリテトラフルオロエチレン、低密度ポリエチレン、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項13記載のフィルム。
【請求項15】
該層L1が、更に少なくとも1種の銅(I)塩および少なくとも1種のアルカリ金属ハライドを含有する、熱安定剤をも含む、請求項1記載のフィルム。
【請求項16】
該熱安定剤が、ヨウ化銅および臭化銅からなる群から選択される少なくとも1種の銅ハライドおよびリチウム、ナトリウム、およびカリウムのヨウ化物および臭化物からなる群から選択される、少なくとも1種のアルカリ金属ハライドを含む、請求項15記載のフィルム。
【請求項17】
単独層として、芳香族ポリアミドと耐衝撃性改良剤とを含む単層からなる、請求項1記載のフィルム。
【請求項18】
該層L1が、更に酸化防止剤をも含む、請求項1記載のフィルム。
【請求項19】
該酸化防止剤が、ヒンダードフェノール、アミンおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項18記載のフィルム。
【請求項20】
単独層として、
(1) 芳香族ポリアミドおよび耐衝撃性改良剤を含有する、少なくとも一つの層L1、および場合により
(2) 脂肪族ポリアミドを含有する、少なくとも一つの層L2
を含む、フィルムの製造方法であって、
芳香族ポリアミドおよび耐衝撃性改良剤を押出し、場合により脂肪族ポリアミドを押出して、単一のフィルムとすることを特徴とする、上記方法。
【請求項21】
単独層として、少なくとも一つの層L1を含む、請求項1記載のフィルム。
【請求項22】
単独層として、一つの層L1を含む、請求項21記載のフィルム。
【請求項23】
単独層として、少なくとも2つのL1層を含む、請求項21記載のフィルム。
【請求項24】
単独層として、少なくとも一つの層L1および少なくとも一つの層L2を含む、請求項1記載のフィルム。
【請求項25】
単独層として2層を含み、その第一層がL1層であり、かつ他方の層がL2層である、請求項24記載のフィルム。
【請求項26】
該層L1が内側層である、請求項25記載のフィルム。
【請求項27】
該層L1が外側層である、請求項25記載のフィルム。
【請求項28】
単独層として、L1/L2/L1の3層を含み、ここで該層L1が、内側および外側層両者であり、かつ該層L2が、中間層である、請求項24記載のフィルム。

【図1−A】
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【図1−B】
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【公表番号】特表2007−502728(P2007−502728A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523972(P2006−523972)
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/026624
【国際公開番号】WO2005/018892
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(502030880)ソルヴェイ アドバンスド ポリマーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー (39)
【Fターム(参考)】