説明

耐震化改良工法における人孔の角型継手設置孔と角型継手装置構造

【課題】既設人孔壁の管路接続部に継手設置空間を確保する為の従来の切断作業において、市販の小型切断機材使用による強度劣化が少ない、既設管路の非開削工事における耐震化改良工法を提供する。
【解決手段】四角形状となる一直線切断法で四角形状に切断で人孔壁面コンクリートの強度劣化を少なく継手設置空間を確保する事が小型切断機材1で切断が可能となり,この下水道管路接続部12に外形が四角形状なる角型継手を継手設置空間に設置施工する耐震化改良工法。四角形状の継手設置空間に専用の角型継手と角型アダプターの介在により継手取り付け部の外部形状を変換する事で円形孔設置仕様継手が設置可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設の下水道管路と人孔壁面との接続部周辺に設けた継手設置空間に耐震継手を設置する事により管路接続部を耐震化構造に改良する耐震化改良工事における、継手設置空間を確保する切断工法とその耐震継手装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
平成7年1月発生の阪神地区の大地震後も能登地区、新潟県中越沖等各地に多発する地震による下水道管路とその接続部の地震被害対策が急務となっている。
従前の図5に示す下水道施工において管路12とマンホール(以下、人孔と言う)の接続
部2aは、モルタル・コンクリート等による剛構造で堅牢な固着接続であるため、地震発
生時において人孔の管路接続部周辺には、埋設地盤の変動より発生した応力が集中する。この集中応力によりコンクリート構造内部の微小なヒビワレから破壊に至る等の損傷を受け、ライフラインとして下水道の本来機能を発揮出来ない事態が起きている。
今後も耐震化対策の下水道工事予算は減少傾向であり、下水道管路の耐震化対策で開削工法により当該部を新資器材に交換・施工する管路耐震化改良工事の場合は工事関連経費の上昇と作業時間、騒音防止等の施工条件及び交通渋滞等の諸事情により使用可能な道路占有面積と施工場所が制限されるなど、更に工事が難しくなる状況にある。
【0003】
新規に掘削する開削工法以外の下水道管路の耐震化工事としては、非開削工法で管路接続該当部に継手を設置する事により耐震化を図る工法が提案・実施されている。人孔壁面の接続管路外周を多角形・環状にチエンソー式コンクリート切断機で突っ込み切断する工法(特許文献1)の実施例が在るが、多角形・環状切断の場合は突っ込み衝撃回数が多くなり、その数多い衝撃に曝されるコンクリート内部においてはヒビワレ・損傷等の強度劣化を誘発する虞があり長期間の安全性が確保し難く、突っ込み切断方式は熟練及び体力を必要とし切断機操作の習熟度により仕上りにバラツキ・変動が発生する。
他に穿孔ドリルで連続して削孔する工法(特許文献2)及び大型のコアードリルを押し当て切削する工法(特許文献3)等が提案・実施されているが、施工機材が大規模で操作電源も三相200ボルトになり施工機材の占有・操作場所が広く必要となる。加えて人孔コンクリート壁への切断突っ込み時の大きな衝撃力と共に衝撃回数も多くなり,工事経過後において人孔壁コンクリート構造の強度低下リスクも憂慮されるなど既存工法で実施可能な施工箇所・条件も限定さている。
【0004】
昭和30年以後の高度成長期に施工・設備された図5に示される古い構造の下水管路・管渠も現在多く供用されており、その後下水道普及率の上昇に伴い古い構造・様式の下水道管路が延長されており経年劣化した管渠が増加傾向にある。然し乍近年の国・地方自治体の財政事情は厳しく、開削工法により既存管渠を新規の資器材に交換・施工する下水道再構築工事予算確保は困難となり施工実績は減少しているが、既存の下水道管路・管渠の必要部分に耐震・補修作業を施して下水道管路・管渠全体の寿命を延長し、既存下水道設備の継続使用を可能とする各種の工事が推奨されている。
【0005】
既存下水道設備の老朽化し損耗した管路内面を樹脂類のライニング、コーテング等で補修・改修する管路更正工事においては個別・単独の更正工事のみで施工されており、管路接続部の耐震化対策を一緒の合同工事としては実施されていない、逆の場合で非開削工法の既設下水道管路の耐震化改良工事においても耐震化工事のみ個別・単独で施工されている現状である。
管路更正工事と管路耐震化工事が継続した合同工事として施工可能ならば、これら個別・単独工事の場合と比較して工事全体として工事期間短縮と施工資機材等の軽減・効率化が図れる事になり、両方の工事が合わせて施工可能な新工法の開発が望まれている。
【0006】
【特許文献1】特開2003-293384号公報
【特許文献2】特開2002-227226号公報
【特許文献3】特開2002-225025号公報
【非特許文献1】(社)日本下水道協会 下水道施設の耐震化対策指針と解説・1997年度版(p35、p48‐p50)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非開削工事によって、既設マンホール(コンクリート製人孔)と下水道管路接続部に耐震可とう継手(以下耐震継手と言う)類を設置し耐震化改良を図るために、耐震継手の設置空間を確保する必要があり、管路を囲む人孔壁面を円形・環状にチエンソー式コンクリート切断機で突っ込み切断する工事工法(特許文献1)が実施されているが、人孔壁部の切断箇所には数十回に及ぶ突っ込み衝撃力が影響を与えコンクリート本体の構造内部損傷・ヒビワレ等の強度劣化を誘発する、チエンソー切断作業は熟練と体力が必要で施工条件の制約もあり、誰でも施工出来る一般工法でない。
他の耐震化工法である穿孔ドリルで連続穿孔し、穿孔空隙にシール樹脂材を装着する工法(特許文献2)及び大型のコアードリルで切削(特許文献3)する工法も実施されているが、このドリル類の突っ込み穿孔等のコンクリート切削方式は,本発明の鋸刃類による直線切断方式の数倍に及ぶ強い押し当て力が必要であり、切削・切断時に発生する大きな突っ込み衝撃力と、衝撃回数が多い等のストレスで人孔の本体コンクリートの内部強度低下・劣化問題及び施工機材が大規模で重くなり、扱いが複雑となり機材搬入・設置・撤去搬出等の時間が増加する。更に路上周辺を占有する施工・作業スペースが広く必要であり、当該工事地区及び近隣地域において渋滞事故の発生等深刻な社会問題となっている。
本発明は、非開削工法で既設下水道管渠(管路と人孔)の耐震化対策を施工する場合において、施工機材占有面積が狭い場所内において小型施工機材で人孔壁部に負担が少ない一直線切断方式で(図2参照)四角形状の継手設置孔を構築し、この設置孔に耐震継手装置(図6参照)を設置する耐震化改良工事工法と、人孔内側より簡便で適切に設置可能なる最適の継手構造を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係わる発明は、人孔と水道管路接続部に耐震継手の設置空間を確保するコンクリート壁の切断・削孔作業にある。従前のコンクリート壁の切断・削孔作業は,切断機・削孔機・穿孔機及び削岩機等により施工されており、切断機器の稼働時に発生する大きな振動・衝撃に繰り返し曝され続ける事でコンクリート組成・構造の内部において強度劣化を誘発するリスクがあり、切断・削孔部周辺部が年数経過する事で劣化が進行しコンクリート表面に至るヒビワレ、破壊等が発現して将来的には当該施工周辺部の修復工事又は再施工が必要な事態に至る虞がある。
従前の切断方式における高頻度の突っ込み切断で繰り返し発生する強度劣化リスクを減少すべく、本発明では人孔壁面における管路接続部外側の切断・削孔形状を図2に示す角型形状として角型形状の各辺を切断開始から連続する一直線となる回転切断を行う事で、切断部へ大きな突っ込み応力・押し込み応力を与えない回転する切断歯の切断力を主体とする切断方式とする事で切断開始回数を最少4回迄減少可能とし従前の突っ込み切断方式より切断開始時と切断作業中に人孔壁面コンクリートに与えられる衝撃応力の質と量及び衝撃回数を大幅に減少可能とした。
今後の耐震化対策は、住宅密集の混雑地域および路地裏等の狭い場所等での工事対象の増加が予想されており、交通渋滞など悪化する施工条件下での人孔管路接続部の非開削耐震化改良工事において効率的で経済的な継手設置空間確保の切断・削孔方法は重要課題であり、当工法は対象となる小型人孔の出入り口11(直径φ60cm)から人力搬入・稼働可能なる家庭用電源駆動の市販小型軽量切断機で施工可能とする工法であり、施工設備・機材のスリム化が図れて狭い施工場所においても経済的・高効率な切断方法となる。
【0009】
請求項2に係わる発明は、耐震改良化工事の角型切断・削孔部分に外形が角型形状の耐震可とう継手装置(以下角型耐震継手と言う)を設置する。角型耐震継手は四角形枠状5の金属製角型フランジ部に管外径より数cm筒径が大きく、筒長さが数cm程度である短い金属筒部を熔接等で接続一体化し、耐震ゴム質スリーブ部材5dを角フランジ筒部側固定用締付け金属バンド5eで固定して角型耐震継手を組み立てる。角型耐震継手の管路との接続は、管路側固定用締付け金属製バンド5fで締めつける作業位置を角型耐震継手の四隅の空間で行う事で良好な作業性が得られる。
角型耐震継手フランジ板の外側にはドーナツ形状なる止水シールゴム質円形部材5aが止水シール押さえ板5bにボルト5jより装備・固定されおり、継手の設置時に継手内側に人孔外部埋設地盤(掘削・埋め戻し土)の泥水および土砂が流入し、累積する事により継手可動範囲が減少して耐震性能が阻害される事を防ぐ流入防止シール構造を備える。加えて継手設置時に地盤崩壊等で埋設土に発生する人孔内へ押し込む方向の地盤圧力による移動防止に角フランジ部四隅空間で上下方向に可動する継手位置固定ガイドピン5cを設け継手の内側への飛び出しを防ぎ,安全に設置・施工が可能なる。(図6参照)
角型継手は人孔出入り口11より人力で搬入され非開削による小型人孔内における接続管路への耐震継手の設置・固着作業を容易とした構造であり、小型人孔の出入り口(φ60cm)を越える継手寸法となる場合は、分解・組み立て可能な角型分解継手を人孔出入り口から人力搬入し、人孔内部において組み立てる事で設置可能である。
【0010】
請求項3に係わる発明は、図2に示す角型形状の切断・削孔部空間又は、現場で構築されるコンクリート製の大型人孔及び貯水槽等地下構造物におけるコンクリート打設時に四角形箱抜き工法による四角形状の孔空間部において市販品で供給量の多い外観が円形である一般継手を設置する場合には円形削孔空間に外側からの取りつける仕様であり、人孔内側からの設置作業は不可能であるが、継手の設置・固定方向を変換する中継装置を介在させる事で内側からの設置作業を可能とした。設置・固定方向を変換する中継装置は図6に示される角型継手構造より耐震ゴム質スリーブ部材5dを撤去した形態の角型金属製部材であり、5dの代用として市販の一般耐震継手を金属製部材である変換装置に組み立て・固定し一体化する事で耐震継手装置と成り得る。
この変換装置(以下、角型アダプターと言う)を介在・中継させる事(図9参照)により一般継手の設置・固定部分の外側形状を、円形から角型形状に変換し設置可能とする継手構造の構成部材である。一般継手に角型アダプターを組み合わせ一体化して継手装置化する事で、継手性能及び作業性等は請求項2記載の角型継手と同様の非開削工法用継手となる。
【発明の効果】
【0011】
従前の耐震化改良類似工法の動力源は工業用電源であり工事現場においては大型発電機(三相・200ボルト)等が必要であったが、本工法は施工機材・部材が軽量コンパクトであり、継手設置空間確保作業が一般家庭用電源(単相・100ボルト)で駆動する小型切断機材(図1参照)で可能となり、軽量機材であり従前工法で用いた機材荷下ろし重機及び大型貨物搬送用車両も必要無く狭い施工占有環境での施工が実施可能である。コンクリート切断・削孔の作業が家庭電源仕様の市販切断機材を使用出来るため器材操作が簡単であり施工経験の浅い業者でも施工可能となり、施工の条件に制約が少なく既設下水道管路の耐震化改良工法を提供できる。
【0012】
管渠の耐震化工事の歴史は開削工法による新設の下水道工事で始まりその後において開削工法では困難な施工場所が発生し始めて、新しく開発された既設管路の耐震化工事においても施工の方法と条件に限定事項が多く、特に非開削の施工実績が増加してない状況であるが、本発明の角型切断工法と角型継手の開発により既設管路の耐震化の耐震継手設置工事は施工可能な工事対象物件が増加し耐震化工法の選択範囲が広がる。
減少する下水道工事の中で微増傾向にある処の老朽化した既設下水道管を補修し管路寿命を延長する従前の管路更正工事においては管路更正工事の単独施工であり、管更正と連続・同時に管路の耐震化改良工事は実施されていない状況である。然し乍、管路更正工事と耐震化改良施工の両方を継続し同時期に施工する事が困難である施工箇所においても、本発明の耐震化工法により管路更正工事と耐震改良工事が継続し同時期施工が可能となる省資源工法であり、土木・建築工事においても課題となる二酸化炭素排出の削減が図れる地球環境に優しい下水道耐震化改良の新しい工法である。
【0013】
新しく地面を掘削せずに地下構築物内部で工事する非開削工事において切断機で切断・削孔された図2に示す人孔の角型継手設置空間又は土木・建築工事等のコンクリート打設における箱抜き工事等で設けられた壁部の四角形孔(管と継手の設置予定空間)においては、人孔外側設置仕様で円形削孔設置用の一般市販継手を設置・固定する場合は四隅の大きな空間が発生し、モルタル等で簡単・確実な設置・固定作業は困難となる。
現在市販・供給されている大部分の耐震継手は人孔壁部の円形削孔空間に外側取りつけ仕様の一般継手であり、経済的価格で供給が容易である処の一般継手を非開削工事に使用する方策としては、一般継手に本発明の角型アダプターを介在・中継させて継手装置とする事が最良であり、角型アダプターを介在させて人孔内側から一般継手を容易に設置・施工可能とする事で管路接続部の耐震化工法を提供出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
非開削による既設管路と人孔接続部の耐震化改良工法について、図面を参照に説明する。既設人孔の管路接続部外側に継手設置計画位置となる図2の四角形を決め、その四隅をコンクリートドリルで人孔壁面に穿孔し切断起点マーカーとする。四隅の穿孔時に地下水位が高く漏水・湧水が判明した場合は、事前に一般工法による止水と地盤安定作業を施工しておく。この止水工事は、セメントなど無機質材料による完全凝結方式でなく有機樹脂材質等による弾力硬化方式が望ましい。工事の事前準備として人孔底部にインバート等がある場合は本作業の妨げとなるので事前に破砕、撤去しておく、また当該施工箇所周辺は不要物があれば除去し掃除・清掃をしておく。
【0015】
下水道管路の耐震化は耐震継手(耐震基準レベル1および、レベル2に対応する性能を有する継手、参考文献1)を設置し、地震時の地盤変動による埋設管路の変位を吸収する構造が一般的である。従前工法で埋設人孔と管路接続部に継手を設置・確保する場合の空間形状は、当該管路外周に沿ってほぼ円形又は環状で、または円に近い多角形で切断、削孔されていた(特許文献1参照)。人孔コンクリート壁を従来工法で切断、削孔する場合、チエンソー式の突っ込み切断開始回数及び、ドリル穿孔突入時衝撃回数が数十回に達する為(特許文献2参照)に、その衝撃回数頻度が人孔壁のコンクリート強度を劣化させる虞があったが、コンクリート強度の劣化を減少させる為に衝撃発生の回数が少ない図2に示す角型(四角形状)の切断を行う。
【0016】
継手設置空間確保の為コンクリート人孔壁の接続管路外側を図2に示す角型に切断除去するが、既存人孔には遠心力鉄筋コンクリート製組み立て人孔製品の壁部材は鉄筋で強度補強されている場合があり、切断機の切断歯は鉄筋とコンクリートの両方を切断出来る市販品が適している。
人孔壁面の角型切断削孔作業は市販の100ボルト仕様で図1に示す如く小型コンクリート切断機等で手持ち切断が可能であり、事前に人孔壁内面の切断位置に合わせ切断線を描いておく事により手持ち切断機器でも簡便で確実な作業性が得られる。切断方式には鋸刃式とチエンソー式があり、切断は乾式でも使用可能であるが、湿式切断仕様が粉塵発生も少なく作業環境は改善されて、切断作業時の湿式・散布水により切断時の摩擦抵抗に因る発熱を抑える事で切断歯の消耗が少なく効率的・経済的作業となる。
【0017】
切断機器の駆動方式は電動式、エンジン式、液圧式のいずれでも施工可能であるが人孔内での操作性と換気等の作業環境を含め、電気モーター駆動方式の切断機器がコンパクト形状であり操作が簡便である。小型人孔で壁厚が10cm〜30cm程度であれば家庭用電源である単相100ボルト仕様の市販の小型コンクリート切断装置が使用可能であり、単相100ボルト電源は電気コードにより容易に供給され狭い作業占有面積で施工出来る工法であり、従来工法で使用していた大型発電機・吊り作業の重機等は使用せず、従前の類似他工法より施工機材・設備の占有面積を減少可能とした。
歯先が超硬チップ付き或はダイヤモンドチップ付きの鋸刃式とチエンソー式に大別さ
れるが、人孔出入り口11から搬入出来る機種の内で、接続人孔の壁厚さが20cm以下であればどのタイプでも施工可能であるが、壁厚が20cmを越える場合は切断長の大きいチエンソー式切断機が切断の作業性が良い。
【0018】
角型設置孔の四辺を連続する一直線の方向に順次切断して、切断上下・左右ライン6の中央部と接続管12の外径部との接近箇所に近接間隔の70%程度の穴径となるドリル穿孔を施す事で、継手設置空間部の除去するコンクリート塊が複数個に破砕・分断され除去が容易となる。接続管路径が大きい場合にはコンクリート塊も大きくなる為、破砕し除去するコンクリート塊の穿孔する箇所・個数を増やして、除去するコンクリート塊の1箇所当たりの重量を小さくする事でコンクリート塊の人力による撤去・搬出作業を容易とする。
コンクリート人孔壁の全厚が完全に貫通切断されなく、壁厚外側の未切断壁部分が20%〜30%程度残る場合でも、撤去するコンクリート部分の補強鉄筋が切断されているか、無筋コンクリート構造であれば、人孔壁部の接続管路外周の固定部周辺コンクリート、モルタルはドリル穿孔作業等の小さな工事振動でも縁切れを起こし容易に分断・分離して除去作業が容易となる。
【0019】
角型継手の設置の概略手順を図4にて説明する。図4(a)に示す人孔コンクリート壁の切断角型四辺部分6と管路外周部分12のゴミ、泥等不要物を除去・清掃する。継手設置空間8に本継手を仮セットし埋設地盤及び人孔壁都の接触の有無を確認し、図4(b)に示す様に継手設置位置を決定し角型継手の設置後、継手ゴムチューブ5d内側の隙間から継手金属枠部外側の既設人孔外部埋設地盤と接続管路外側地盤に余掘り空隙が存在する場合に図4(c)に示す余掘り空隙は地震発生時の管路移動・変位等を吸収する為に必要でありセメントミルクなどの凝固・凝結性の注入剤・充填材は使用せず、地盤崩壊防止用の裏込充填発泡性樹脂類9を充填し地震変位を吸収する。空隙充填の発泡性樹脂は空隙容積にもよるが、少量であれば一液性の水分反応型発泡ウレタン樹脂などのボンベ式市販製品が使用出来る。地盤が乾燥状態である場合、施工気温が低い場合又は空隙容積が大きい場合などは自己発泡性の2液性発泡性樹脂類が有効である。
次に耐震化改良工事において図4(d)に示す汚水管路などの場合で人孔底部にインバード(人孔底部)3aを再度構築する必要のある場合は、地震発生時の管路の地振動変位を吸収する構造が必要となる為、管路屈曲変位と管路軸方向に発生する水平変位(管路の伸縮)・屈曲変位等を複合的に吸収・緩衝する為の発泡性ゴムスポンジ質部材16を設置し地震時の管路水平変位の伸び方向での圧縮ヒビワレ、損傷を防護する。
【0020】
図6に示す継手装置の主要構造は四角形状の角型金属製枠の上・下部部分外側フランジ部は人孔外径に接する直線状であり、内側形状は人孔内径に合わせた円弧状であり、角型金属枠横位置右左フランジ部分は角型金属製枠部上下の両端部を結ぶ直線形状で外観は四角形となる。耐震ゴム質スリーブ部材5dは金属製枠部分の内側に熔接一体化された金属製筒部に金属製バンド5eで接続固着されて地震変動の屈曲角変位と伸縮性を確保する構造とし、その締めつけ作業位置は角型耐震継手の四隅の空間で行う。金属製フランジ外側にドーナツ状の円形シール部材5a設けられ埋設土からの泥水と土砂流入を防止して耐震性能を確保し、耐震ゴム質スリーブ部材5dの止水性能と合わせて止水力も増強される。
【0021】
角型継手の設置作業中に埋設地盤の土圧力による継手の人孔内側への移動し飛び出す事が起きる、特に接続管径が大径となる場合は継手設置孔空間が広くなり人孔の外側部および管路周辺の地盤崩壊などで地盤移動の大きな土圧が発生し当該継手装置が人孔内側に押込まれる事になり、人孔内の作業においては非常に危険な要因となる。
施工時の人孔内側への移動飛び出しを留める構造が必要であり、図6に示す角フランジ部四隅空間内に位置固定ガイドピン5cを備える。位置固定ガイドピン5cは位置固定ガイドパイプ5h内をスライドする構造で人孔壁外側部に固定出来る形状とした事で、ガイドパイプ5h内臓の位置固定ガイド棒5cを上下の4箇所とも外向きに押し広げて角型継手を人孔外壁部に固定し移動防止を図る。当該移動防止装置により狭い作業スペースである人孔内側からでも安全で迅速に継手設置固定作業が出来る構造となる。
【0022】
図7における角型継手の設置方法は接続管12外周部に耐震ゴム質チューブ部材5dの管路側部分を締付け固定する金属バンド5fの締付ける作業はフランジ内側部の四隅空間で行い、角型継手の設置位置が適切である事を確認・調整し、継手フランジ枠板5と人孔壁切断面の隙間8aは通常の下水道工事に使用する樹脂モルタル類で強固・確実に固定する。継手設置部に漏水の虞がある場合は必要により従来工法である地盤改良工事を施すか、軽微な状況であれば止水セメント等を併用し対応しておく。
【0023】
図8に示す角型継手の設置において、人孔コンクリート壁2を切断により角型の切断ライン6に囲まれた継手設置空間を設けて角型金属部部材5を設置し、人孔内面側に位置する接続管12端部外側にリング状発泡性樹脂中空クッション部材5jを設置し地振動変位を吸収する。継手フランジ内側残りの空間は内側耐震吸収発泡ウレタン樹脂を充填し地震時の管路移動変位による継手の移動変位量を確保出来る、樹脂硬化後に樹脂表面に仕上げ代を設けて仕上げ用の樹脂モルタル等で人孔内面形状と人孔のコンクリート色に合わせる等の仕上げ作業を行う。
【0024】
本発明は、継手設置する空間形状(図2参照)を四角形とする為、市販の外側形状が円形の一般耐震継手では設置隙間8の四隅が大きくなる為、コンクリート切断空間面に接する金属フランジ部外側形状を四角とした専用耐震継手(図3・図6参照)として、四角フランジ耐震継手(以下、角型継手と言う)と四角フランジ分解耐震継手(以下、角型分解継手と言う)を開発し,継手設置空間は,切断空間線6は金属継手フランジ部5との設置隙間を数cm程度に調節し施工する。また耐震ゴム質チューブ部材片側は角フランジの内側に設けたチューブ設置筒部と、他方側は管路12外側の円周部分に嵌合し金属バンド等で締め付け固定出来る構造とする。(図3,図6参照)
【0025】
下水道管路耐震化の要である管路用の耐震可とう継手の重要なる耐震性能は地震発生時の地盤振動による下水道管路接続部の屈曲変位と水平(伸縮)変位を複合的に吸収する事(参考文献1)であり、継手材料の変位吸収作用の主要部分は耐震性能が確保出来るゴム質部材の筒型のチューブ形(或はラッパ形状)で成形され、金属バンド等で管路外周に締付けセット固定する事により、継手接続部に耐震性能及び可とう性能を複合的に付加する構造となる。
但し、使用する継手の基本性能の影響は非常に大きい要素であり、耐震可とう継手の場合であれば地振動による屈曲変位と水平変位の両変位を複合的に対応できる(参考文献1)、継手性能が旧来の一般的な可とう継手の場合は、主に地下構築物の設置工事における地盤の不同沈下等の施工条件による屈曲変位に対応する可とう性能のみである。
【0026】
コンクリート製地下貯水槽及び現場打設されたコンクリート大型人孔等の地下構造物壁面に管路接続用孔の四角箱抜きコンクリート打設工事あるいは、本工法の角型削孔を施して管路接続用孔とし場合に、この四角孔に通常の市販の継手を設置すると市販継手外側の円形形状と四角孔の四隅空隙が大きくなり(図2参照)この四角孔は人孔外側の地盤まで貫通しており、管路接続部周辺の地盤崩壊による土砂流入等の大きなリスクが発生し土砂流入防止対策が必要となる他に、施工面積・空間が大きく樹脂モルタル等の充填固定作業が難しくなる為に、型枠を使用するコンクリート打設・固定作業となりコンクリート硬化と強度発現までの工事期間が必要な大掛かりな工事となる。
【0027】
市販管継手の殆どは一般継手であり人孔壁部へ設置する場合は図10に表す、その継手形状は通常の削孔機材の作業性により円形削孔されている為に継手外側の形状は円形に構成・形成されて対応している。また管路耐震化工事用継手として市場に供給されている大部分の市販耐震継手が円形削孔の取り付け仕様で人孔の外部締付け固定方式であり図10(a)・(b)に示す形態で設置されている。
非開削による耐震化工事に市販の一般継手をこのままの形状で使用する場合においては人孔内側よりの設置が前提でない為に、元来人孔内側からの設置が困難となっており、無理に設置しても施工後形態は図10(c)・(d)に示す如く人孔内面に飛び出す事になり継手性能を発揮する事が出来ない事態となる。
【0028】
故に非開削工法の人孔内側設置・施工には、非開削工法用の角型継手等の専用耐震継手が必要となるが、図9で示す角型アダプターを介在・中継させる事で市販一般継手を設置可能とした、因って人孔壁部に設けた四角形の継手設置空間にも低コストで有効・確実に設置出来得る継手構造に変換する事が可能となる。
角型アダプターに設置する市販継手は角型継手のゴム質スリーブ部材の代用として設置されるが、その外観形状・継手特性により幾つかの設置形態に分類されるが代表的設置例を次に示す。
1番目の事例は図9(a)施工対象人孔が無筋コンクリート製又は大型人孔等でコンクリート壁部の厚さが比較的厚い場合における、拡張設置式一般継手と金属性チューブ設置筒部が鍔付き形状である角型アダプターによる実施を示す。
2番目は図9(b)外周締め式一般継手の場合であり、市販継手の中では少ないタイプであるが、と金属製角型枠付き形状である角型アダプターによる実施を示す。
3番目である図9(c)は市販継手で多く供給される外観形状であり、継手のゴム筒部材の寸法が長い場合に対応出来る持ち出し形式の金属製角型枠付き部材がゴム筒寸法より長い処の角型アダプターによる実施を示す。
【0029】
角型継手の金属製フランジ枠板の外部寸法が人孔出入り口11寸法以下であれば角型継手をそのまま搬入し前述手順により設置する耐震化改良施工が行える。角型継手は図5に示す人孔出入り口11より搬入し、小型人孔内(内寸90cm程度)においても接続管路への耐震継手の設置・固着作業を簡便・容易としたが、市販の一般継手で角型アダプターを利用して継手装置とする場合も同様に、人孔内側で継手装置に組み立て作業後に継手設置空間へ設置・固定を行う事で耐震化改良の施工が可能である。継手寸法が小型人孔の出入り口(寸法φ60cm)を越える継手寸法となる場合は、人孔外部で複数分割・分解し金属枠部の分解・組み立て可能な構造の角型分解継手を人孔出入り口11から人孔内部に搬入し、分割された合わせ目部分に接着性樹脂類を充填し止水性を保持し、合わせ目のボルトを締付け設置使用する人孔内部において組み立て一体化された継手装置として設置する方法が採られる(説明図省略)。
【0030】
角型アダプターに一般継手継手を設置した場合の外観は専用の角型継手に類似するが、一般継手継手の大部分の構造は小型円形人孔外側での設置仕様でありゴムスリーブ(ゴム筒)長さが人孔壁厚さより長くなっており、人孔内径に合わせて円弧形状に成形する場合等は全長がより長くなる。角孔専用の角型継手に付属するゴム筒長さと比較すると一般耐震継手ゴム筒の全長は長くなるため、図9(c)に示す如く角型アダプターの金属製枠板部の長さも構造上奥域が深くなり人孔外側に飛び出す構造になり、組み立て人孔等で壁厚の少ない小型人孔の場合は人孔外側の埋設地盤における掘削空間が人孔外側に奥深く必要となる傾向がある。
【0031】
既設下水道管路において単独の耐震対策だけでなく、近年増加傾向する老朽化した下水道管路内面の管路更正工事終了後に管路接続部の耐震化施工を行いその後継続して人孔の内面更正が施工される場合には人孔内面の耐震継手設置箇所のモルタル仕上げ部分は柔軟性樹脂コーテング等の対応が必要である。また管路更正施工後に人孔の内面更正が不用な場合は、本発明工法の耐震化対策を其のまま実施すれば良い。
逆に本発明工法の管路耐震化工事の終了後に管路更正のみ施工する場合は通常施工で問題無く、管路耐震化の後に人孔の内面更正工事も継続して実施される場合には継手設置固定箇所の樹脂モルタル仕上げ部分を柔軟構造とする等の注意が必要である。
耐震施工と内面更正が継続する工事の場合は個別・単独工事の場合と比較して、施工資器材を供用し移動・運搬が不用になる等、工事全体として工事期間短縮と施工資機材等の軽減・効率化が図れる事になり工事費の削減となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】非開削による下水道管路と人孔接続部壁面の切断作業を例示する図面である。
【図2】人孔壁内側の角型切断された孔空間の形状を示す図面である。
【図3】角型継手の平面構造と設置状況を示す図面である。
【図4】角型削孔部の継手設置と施工順序を示す図面である。 (a)管路接続部の角型切断された図2における人孔壁の断面状況を示す。 (b)図3、図8における継手設置と管路固定用金属バンド位置状況を示す。 (c)図3における継手耐震変位吸収の発砲性樹脂類の配置状況を示す。 (d)図3における耐震継手部材と管路水平変位吸収ゴム部材の配置状態を示す。
【図5】地下埋設された下水道設備(人孔と下水道管接続)の一般図面である。
【図6】角型継手の主要構成部材図面である。
【図7】角型継手設置時の部材と副資材の配置図面である。
【図8】角型継手設置後のインバート構築前人孔壁断面状態を示す一般図面である。
【図9】市販一般継手に角型アダプター併用する実施状況を示めす図面である。 (a)拡張設置式一般継手と角型アダプター(鍔付き)併用実施を示す例。 (b)外周締め式一般継手と角型アダプター(枠付き)併用実施を示す例。 (c)ゴム筒部の長い一般継手と角型アダプター(持ち出し式)併用実施を示す例。
【図10】人孔の壁部への市販一般継手の設置例を示す図面である。 (a)正規の人孔外側からの良好な設置を示す平面図の例。 (b)正規の人孔外側からの良好な設置を示す断面図の例。 (c)人孔内側からの逆向き設置で人孔内側に飛び出した平面図の例。 (d)人孔内側からの逆向き設置で人孔内側に飛び出した断万図の例。
【符号の説明】
【0033】
1 …鋸歯回転切断式の小型手持ち切断機の例
2a…管路固定既設モルタル、コンクリート部材
2 …人孔コンクリート壁
3a…人孔底部または、インバート部
5 …角型継手金属部
5a…止水シールゴム質円形部材(継手外部の土砂流入防止用)
5b…止水シール押さえ板(緊結用ボルト穴付き)
5c…位置固定ガイドピン(角フランジ継手外部位置固定ガイドピン)
5d…耐震ゴム質スリーブ部材(耐地振動変位吸収)
5e…角フランジ筒部を締めつけ固定する金属バンド
5f…(耐震ゴム質スリーブ部材5dの)管路側を締めつけ固定する金属バンド
5g…内側耐震吸収発砲ウレタン樹脂
5h…位置固定ガイドパイプ(位置固定ガイドピン5c内臓)
5i…止水シール円板緊結用ボルト(座金・ナット付きセット)
5j…リング状発泡性樹脂中空クッション部材
6 …人孔壁の角型切断ライン(切断線)
7 …継手内側の樹脂類・樹脂モルタルの充填する隙間空間
8 …継手設置空間(切断内側隙間)
8a…継手固定用樹脂類充填隙間
9 …地盤崩壊防止用裏込充填発泡性樹脂
10…継手固定用樹脂モルタル
11…人孔蓋部(マンホール出入り口)
12…既設下水道管路(接続管路)
13…人孔継手設置部の内面仕上げ樹脂モルタル部分
15a…人孔内部飛び出し距離
15b…継手ゴム質スリーブ部材(筒状部分)長さ寸法
16…管路水平変位を吸収する発泡性ゴムスポンジ質部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設マンホール(人孔)壁面の下水道管路の接続部周辺に継手設置空間を設け耐震継手を設置する事により人孔壁面部と接続する管路の耐震化を図る工法において、人孔内側より人孔壁面の継手設置空間を確保する場合において、小型切断装置で四角型形状の各辺を連続した一直線となる切断方式により確保された継手設置空間に耐震性継手を設置・施工する事を特徴とする耐震化改良工法。
【請求項2】
角型継手設置孔に設置する耐震継手装置の構造は、外観形状が角型である金属・硬質樹脂等のフランジ部と柔軟性を持つゴム材質チューブ部を主要なる構成部材として、チューブ部材と連結されたフランジ部外側には止水シールゴム質円形部材を備え持ち、加えてフランジ部上下枠板部に位置固定ガイドピンを併有する耐震継手装置を設置する事を特徴とする請求項1記載の耐震化改良工法で使用する角型耐震継手。
【請求項3】
外側枠部分を4角型形状とし中央箇所に筒部を設けた硬質・剛性素材から成るフランジ部、このフランジ部の人孔外側部埋設地盤側に設けた止水機能部材、及びフランジ部外側部に設けた位置固定機能を有するガイドピン等から成り、当該筒部に他端部を取り付けて外部設置仕様継手に一端を取り付け可能とする事を特徴とする請求項1記載の耐震化工法で使用する角型アダプター。状を円形から角型形状に変換可能とする金属製部材の角型アダプター構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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