説明

耐震構造

【課題】柱梁架構から耐震手段へ確実にせん断力を伝達することができる耐震構造を提供する。
【解決手段】柱18と、柱18と柱梁架構12を構成する梁22と、柱18の第1燃え止まり層32を介した柱心材30、及び梁22の第2燃え止まり層38を介した梁心材36の少なくとも一方に固定されたせん断力伝達手段14A、14Cと、せん断力伝達手段14A、14Cに固定された耐震手段16と、を有する耐震構造10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造の柱と梁とにより構成された柱梁架構に、耐震手段が設けられた耐震構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、木材からなる荷重支持層と、荷重支持層の外側に設けられる燃え止まり層と、燃え止まり層の外側に設けられる燃え代層と、を有する複合木質構造材が開示されている。
【0003】
このような3層構造の複合木質構造材を柱及び梁として用いて柱梁架構を構成し、この柱梁架構に耐震壁やブレース等の耐震手段を設ける場合、耐震手段は、荷重支持層から耐震手段へ確実にせん断力が伝達されるように柱梁架構に設けなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−2189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は係る事実を考慮し、柱梁架構から耐震手段へ確実にせん断力を伝達することができる耐震構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、荷重を支持する木製の柱心材と、前記柱心材の外周を取り囲む第1燃え止まり層と、前記第1燃え止まり層の外周を取り囲む木製の第1燃え代層と、を備えた柱と、荷重を支持する木製の梁心材と、前記梁心材の側面と下面とを取り囲む第2燃え止まり層と、前記第2燃え止まり層の側面と下面とを取り囲む木製の第2燃え代層と、を備え、前記柱と柱梁架構を構成する梁と、前記第1燃え止まり層を介した前記柱心材、及び前記第2燃え止まり層を介した前記梁心材の少なくとも一方に、固定部材により固定されたせん断力伝達手段と、前記せん断力伝達手段に固定された耐震手段と、を有する耐震構造である。
【0007】
請求項1に記載の発明では、せん断力伝達手段は、第1燃え止まり層を介した柱心材、及び第2燃え止まり層を介した梁心材の少なくとも一方に固定されているので、せん断力伝達手段を介して、柱心材及び梁心材の少なくとも一方から耐震手段へ確実にせん断力を伝達することができる。また、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、柱心材及び梁心材の温度上昇を抑制することができる。すなわち、柱梁架構の耐火性を損なうことなく、柱梁架構に耐震手段を設けることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記耐震手段は、耐震壁である。
【0009】
請求項2に記載の発明では、せん断力伝達手段を介して、柱梁架構(柱心材及び梁心材の少なくとも一方)から耐震壁へ確実にせん断力を伝達することができるので、柱梁架構に作用するせん断力に耐震壁が抵抗し、柱梁架構のせん断耐力を向上させることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記せん断力伝達手段は、前記第1燃え止まり層を介した前記柱心材と、前記第2燃え止まり層を介した前記梁心材とに、前記固定部材により固定され、前記耐震手段は、前記柱梁架構の架構内コーナー部に設けられ、該柱梁架構に作用するせん断力に抵抗する補強部材である。
【0011】
請求項3に記載の発明では、せん断力伝達手段を介して、柱梁架構(柱心材及び梁心材)から補強部材へ確実にせん断力を伝達することができるので、柱梁架構に作用するせん断力に補強部材が抵抗し、柱梁架構のせん断耐力を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上記構成としたので、柱梁架構から耐震手段へ確実にせん断力を伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る耐震構造を示す正面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】図1のC−C断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る耐震構造を示す正面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る耐震手段を示す正面断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る耐震手段の利用例を示す正面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る固定部材の変形例を示す平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。まず、本発明の第1の実施形態に係る耐震構造について説明する。
【0015】
図1の正面図に示すように、第1の実施形態の耐震構造10は、柱梁架構12と、せん断力伝達手段としてのせん断力伝達部材14A〜14Dと、耐震手段としての耐震壁16とを有している。
【0016】
柱梁架構12は、左右に配置された柱18、20と、上下に配置された梁22、24とによって構成されている。また、せん断力伝達部材14A〜14Dは、木製の角材であり、耐震壁16は、図1のA−A断面図である図2に示すように、対向する面を略平行にしてせん断力伝達部材14A〜14Dを挟み込むように配置された一対の木製の合板26、28によって構成されている。尚、耐震壁16は、いくつの合板によって構成してもよい。例えば、合板26、28の何れか一方によって耐震壁16を構成してもよいし、3つ以上の合板によって耐震壁16を構成してもよい。
【0017】
図2に示すように、柱18、20は、荷重を支持する木製の柱心材30と、柱心材30の外周を取り囲む第1燃え止まり層32と、第1燃え止まり層32の外周を取り囲む木製の第1燃え代層34とを備えている。
【0018】
図1のB−B断面図である図3、及び図1のC−C断面図である図4に示すように、梁22、24は、荷重を支持する木製の梁心材36と、梁心材36の側面と下面とを取り囲む第2燃え止まり層38と、第2燃え止まり層38の側面と下面とを取り囲む木製の第2燃え代層40とを備えている。
【0019】
柱18、20と、梁22、24とは、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、柱心材30及び梁心材36の温度上昇を抑制する接合構造によって接合されている。すなわち、柱18、20と、梁22、24との接合部には、柱18、20や、梁22、24の単体と同様の耐火性が確保されている。
【0020】
図1に示すように、梁22、24の上面には、鉄筋コンクリート製の床版42、44が設けられている。すなわち、梁22、24を構成する、梁心材36、第2燃え止まり層38、及び第2燃え代層40の上面に、床版42、44が設けられている。これにより、梁心材36の外周は、第2燃え止まり層38及び床版42、44によって取り囲まれている。尚、床版42、44は、鉄筋コンクリート製以外のものであってもよい。例えば、ALC(軽量気泡コンクリート)床版や、穴あきPC(プレストレスト・コンクリート)床版であってもよい。
【0021】
図2に示すように、柱18において、せん断力伝達部材14Aは、柱18の材軸方向へ渡って第1燃え代層34に形成された溝46に挿入され、第1燃え止まり層32の外側の側面に内側の端面が接触するようにして配置されている。
【0022】
また、せん断力伝達部材14A、第1燃え止まり層32、及び柱心材30を略水平に貫通する貫通孔48が、柱心材30の構造断面(水平断面)を略二等分するように形成されており、この貫通孔48に固定部材としてのアンカーボルト50が貫通している。そして、せん断力伝達部材14Aの外側の端面から突出するアンカーボルト50の一方の端部と、第1燃え止まり層32の外側の側面から突出するアンカーボルト50の他方の端部とに、ナット52をねじ込み締め付けることにより、柱心材30にせん断力伝達部材14Aを固定している。
【0023】
貫通孔48は、柱18の材軸方向に対して等間隔に複数形成され、これらの貫通孔48の全てにアンカーボルト50が設けられている。すなわち、せん断力伝達手段としてのせん断力伝達部材14Aは、第1燃え止まり層32を介して固定手段としてのアンカーボルト50により柱18の柱心材30に固定されている。
【0024】
アンカーボルト50の他方の端部側の第1燃え代層34には、ナット52が収容される切り欠き54が形成されており、アンカーボルト50の他方の端部にナット52をねじ込み締め付けた後に、モルタル等の充填材Mによって塞がれている。なお、充填材Mは、切り欠き54を塞ぐことができる材料であればよく、耐火性や熱吸収性を有する材料でなくてもよい。
【0025】
柱20において、せん断力伝達部材14Bは、せん断力伝達部材14Aと同様の方法により柱20の柱心材30に固定されている。すなわち、せん断力伝達手段としてのせん断力伝達部材14Bは、第1燃え止まり層32を介して固定部材としてのアンカーボルト50により柱20の柱心材30に固定されている。
【0026】
図3に示すように、梁22において、せん断力伝達部材14Cは、梁22の材軸方向へ渡って第2燃え代層40に形成された溝56に挿入され、第2燃え止まり層38の下面に上端面が接触するようにして配置されている。
【0027】
また、せん断力伝達部材14C、第2燃え止まり層38、及び梁心材36を略鉛直に貫通する貫通孔58が、梁心材36の構造断面(横断面)を略二等分するように形成されており、この貫通孔58に固定部材としてのアンカーボルト50が貫通している。そして、せん断力伝達部材14Cの下端面から突出するアンカーボルト50の一方の端部と、梁心材36の上面から突出するアンカーボルト50の他方の端部とに、ナット52をねじ込み締め付けることにより、梁心材36にせん断力伝達部材14Cを固定している。
【0028】
貫通孔58は、梁22の材軸方向に対して等間隔に複数形成され、これらの貫通孔58の全てにアンカーボルト50が設けられている。すなわち、せん断力伝達手段としてのせん断力伝達部材14Cは、第2燃え止まり層38を介して固定手段としてのアンカーボルト50により梁22の梁心材36に固定されている。
【0029】
アンカーボルト50の他方の端部側の床版42には、ナット52が収容される切り欠き60が形成されており、アンカーボルト50の他方の端部にナット52をねじ込み締め付けた後に、モルタル等の充填材Mによって塞がれている。なお、充填材Mは、切り欠き60を塞ぐことができ、且つ、熱吸収性を有する材料を用いる。
【0030】
図4に示すように、梁24において、せん断力伝達部材14Dは、床版44の上面に下端面が接触するようにして配置されている。
【0031】
また、せん断力伝達部材14D、床版44、梁心材36、及び第2燃え止まり層38を略鉛直に貫通する貫通孔62が、梁心材36の構造断面(横断面)を略二等分するように形成されており、この貫通孔62に固定部材としてのアンカーボルト50が貫通している。そして、せん断力伝達部材14Dの上端面から突出するアンカーボルト50の一方の端部と、第2燃え止まり層38の下面から突出するアンカーボルト50の他方の端部とに、ナット52をねじ込み締め付けることにより、梁心材36にせん断力伝達部材14Dを固定している。
【0032】
貫通孔62は、梁24の材軸方向に対して等間隔に複数形成され、これらの貫通孔62の全てにアンカーボルト50が設けられている。すなわち、せん断力伝達手段としてのせん断力伝達部材14Dは、床版44を介して固定手段としてのアンカーボルト50により梁24の梁心材36に固定されている。
【0033】
アンカーボルト50の他方の端部側の第2燃え代層40には、ナット52が収容される切り欠き64が形成されており、アンカーボルト50の他方の端部にナット52をねじ込み締め付けた後に、モルタル等の充填材Mによって塞がれている。なお、充填材Mは、切り欠き64を塞ぐことができる材料であればよく、耐火性や熱吸収性を有する材料でなくてもよい。
【0034】
合板26、28は、釘66により、せん断力伝達部材14A〜14Dに固定されている。なお、せん断力伝達部材14A〜14Dから合板26、28へせん断力が確実に伝達できれば、どのようなもので合板26、28をせん断力伝達部材14A〜14Dに固定してもよい。例えば、木ネジ、ボルト、接着剤等により、合板26、28をせん断力伝達部材14A〜14Dに固定してもよい。
【0035】
次に、本発明の第1の実施形態に係る耐震構造の作用と効果について説明する。
【0036】
本発明の第1の実施形態の耐震構造10では、柱18、20においては、図2に示すように、火災が発生したときに火炎が第1燃え代層34に着火し、第1燃え代層34が燃焼する。そして、燃焼した第1燃え代層34は炭化する。よって、柱18、20の外部から柱心材30への熱伝達と酸素供給とを炭化した第1燃え代層34が遮断し、第1燃え止まり層32が吸熱するので、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後における柱心材30の温度上昇を抑制することができる。
【0037】
また、梁22、24においては、図3、4に示すように、火災が発生したときに火炎が第2燃え代層40に着火し、第2燃え代層40が燃焼する。そして、燃焼した第2燃え代層40は炭化する。よって、梁22、24の外部から梁心材36への熱伝達と酸素供給とを、床版42、44と炭化した第2燃え代層40とが遮断し、第2燃え止まり層38が吸熱するので、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後における梁心材36の温度上昇を抑制することができる。
【0038】
これらにより、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、所定時間(例えば、1時間耐火の場合には、1時間)の間、柱心材30及び梁心材36を着火温度未満に抑え、柱心材30及び梁心材36を燃焼させずに燃え止まらせて、構造体として機能させることができる。
【0039】
また、図2〜4に示すように、せん断力伝達部材14A、14Bが、第1燃え止まり層32を介して柱心材30に固定され、せん断力伝達部材14Cが、第2燃え止まり層38を介して梁心材36に固定され、せん断力伝達部材14Dが、床版44を介して梁心材36に固定されているので、せん断力伝達部材14A〜14Dを介して、柱心材30や梁心材36から耐震壁16(合板26、28)へ確実にせん断力を伝達することができる。
【0040】
また、火災により、せん断力伝達部材14A〜14Dが燃えてしまっても、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、柱心材30及び梁心材36の温度上昇を抑制することができる。すなわち、柱梁架構12の耐火性を損なうことなく、柱梁架構12に耐震手段としての耐震壁16を設けることができる。
【0041】
また、せん断力伝達部材14A〜14Dを介して、柱梁架構12(柱心材30及び梁心材36)から耐震壁16(合板26、28)へ確実にせん断力を伝達することができるので、柱梁架構12に作用するせん断力に耐震壁16(合板26、28)が抵抗し、柱梁架構12のせん断耐力を向上させることができる。
【0042】
次に、本発明の第2の実施形態に係る耐震構造について説明する。
【0043】
第2の実施形態の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。図5の正面図に示すように、第2の実施形態の耐震構造68では、耐震手段を補強部材70、72としている。
【0044】
図5の柱梁架構12の架構内コーナー部を拡大した図6の正面断面図に示すように、せん断力伝達部材14A、14B、14Cが、柱梁架構12の架構内コーナー部付近に設けられている。
【0045】
せん断力伝達部材14Aは、図2に示したものと同様の固定構造を用いて、固定手段としてのアンカーボルト50により、第1燃え止まり層32を介して柱18の柱心材30に固定されている。
【0046】
せん断力伝達部材14Bは、図2に示したものと同様の固定構造を用いて、固定手段としてのアンカーボルト50により、第1燃え止まり層32を介して柱20の柱心材30に固定されている。
【0047】
せん断力伝達部材14Cは、図3に示したものと同様の固定構造を用いて、固定手段としてのアンカーボルト50により、第2燃え止まり層38を介して梁22の梁心材36に固定されている。
【0048】
補強部材70、72は、対向する面を略平行にしてせん断力伝達部材14A、14B、14Cを挟み込むように配置された一対の木製の合板74、76によって構成されている。合板74、76の形状は、正面視にて略直角二等辺三角形となっている。
【0049】
合板74、76は、釘66によりせん断力伝達部材14A、14B、14Cに固定されている。なお、せん断力伝達部材14A、14B、14Cから合板74、76へせん断力が確実に伝達できれば、どのようなもので合板74、76をせん断力伝達部材14A、14B、14Cに固定してもよい。例えば、木ネジ、ボルト、接着剤等により、合板74、76をせん断力伝達部材14A、14B、14Cに固定してもよい。
【0050】
すなわち、耐震構造68では、耐震手段としての補強部材70、72が、柱梁架構12の架構内コーナー部に設けられ、柱梁架構12に作用するせん断力に抵抗する。
【0051】
次に、本発明の第2の実施形態に係る耐震構造の作用と効果について説明する。
【0052】
本発明の第2の実施形態の耐震構造68では、せん断力伝達部材14A、14B、14Cを介して、柱梁架構12(柱心材30及び梁心材36)から補強部材70、72(合板74、76)へ確実にせん断力を伝達することができるので、柱梁架構12に作用するせん断力に補強部材70、72(合板74、76)が抵抗し、柱梁架構12のせん断耐力を向上させることができる。
【0053】
以上、本発明の第2の実施形態について説明した。
【0054】
なお、本発明の第2の実施形態の耐震構造68では、柱梁架構12に作用するせん断力に補強部材70、72を抵抗させて、柱梁架構12のせん断耐力を向上させる例を示したが、補強部材70、72を利用して、図7に示すように、梁22を張弦梁にしてもよい。
【0055】
図7では、梁22のスパン略中央に位置する第2燃え止まり層38の下面から下方へ上端部を接触させて、支持部材78が設けられている。また、支持部材78の材軸を中心線にして略線対称になるように、一対の引張材80、82が配置されている。
【0056】
引張材80、82の下端部は、支持部材78の下端部にピン連結され、引張材80、82の上端部は、補強部材70、72の合板74、76にピン連結されている。引張材80、82には、ターンバックル84、86が設けられており、このターンバックル84、86の調整により、引張材80、82の材軸方向の長さを変更することができる。
【0057】
そして、ターンバックル84、86を調整して引張材80、82の材軸方向の長さを短くすることにより、梁22が支持部材78により押し上げられる。これによって、梁22の撓み(鉛直方向の変位)を無くす、又は小さくすることができる。
【0058】
以上、本発明の第1及び第2の実施形態について説明した。
【0059】
なお、本発明の第1及び第2の実施形態で示した、柱心材30、梁心材36、第1燃え代層34、及び第2燃え代層40は、木材によって形成されていればよい。例えば、柱心材30、梁心材36、第1燃え代層34、及び第2燃え代層40は、米松、唐松、檜、杉、あすなろ等の一般の木造建築に用いられる柱材や梁材(以下、「一般木材」とする)によって形成してもよいし、これらの一般木材を角柱状の単材に加工し、この単材を複数集成し単材同士を接着剤により接着して一体化することによって形成してもよい。
【0060】
また、第1燃え止まり層32及び第2燃え止まり層38は、熱の吸収が可能な層であればよい。例えば、第1燃え止まり層32及び第2燃え止まり層38は、一般木材よりも熱容量が大きな材料、一般木材よりも断熱性が高い材料、又は一般木材よりも熱慣性が高い材料によって形成してもよいし、これらの材料と一般木材とを組み合わせて形成してもよい。
【0061】
一般木材よりも熱容量が大きな材料としては、モルタル、石材、ガラス、繊維補強セメント等の無機質材料、各種の金属材料などが挙げられる。一般木材よりも断熱性が高い材料としては、珪酸カルシウム板、ロックウール、グラスウールなどが挙げられる。一般木材よりも熱慣性が高い材料としては、セランガンバツ、ジャラ、ボンゴシ等の木材が挙げられる。
【0062】
また、本発明の第1及び第2の実施形態では、せん断力伝達部材14A〜14Dを木製の角材とした例を示したが、一般的に、耐震壁16や補強部材70、72等の耐震手段は、火災時に有効に機能させる必要がなく、せん断力伝達部材14A〜14Dには、耐火性が要求されない。よって、せん断力伝達部材14A〜14Dは、十分な強度を有するものであれば、木材、鋼材等のどのような材料によって形成してもよい。本発明の第1及び第2の実施形態では、せん断力伝達部材14A、14Bが、第1燃え止まり層32を介して柱心材30に固定され、せん断力伝達部材14Cが、第2燃え止まり層38を介して梁心材36に固定され、せん断力伝達部材14Dが、床版44を介して梁心材36に固定されているので、火災時に燃焼してしまう材料によってせん断力伝達部材14A〜14Dが形成されていても、柱18、20や梁22、24の耐火性が損なわれることがない。すなわち、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後における柱心材30及び梁心材36の温度上昇を抑制することができる。
【0063】
また、本発明の第1及び第2の実施形態では、せん断力伝達手段をせん断力部材14A〜14Dとした例を示したが、せん断力伝達手段は、1つのせん断力伝達部材であってもよいし、複数のせん断力伝達部材によって構成してもよい。例えば、第2の実施形態で示した、せん断力伝達部材14Aとせん断力伝達部材14Cとを(図6を参照のこと)、一体化した1つの部材にしてもよい。
【0064】
また、本発明の第1及び第2の実施形態では、柱18、20の柱心材30と、梁22、24の梁心材36との両方に、せん断力伝達手段としてのせん断力伝達部材14A〜14Dを固定した例を示したが、耐震手段の機能に応じて、柱心材30及び梁心材36の少なくとも一方にせん断力伝達手段を固定部材により固定する。例えば、第1の実施形態で示した耐震壁16(図1を参照のこと)を「間柱形式の耐震壁」にする場合には、せん断力伝達部材14A、14Bが不要になり、せん断力伝達部材14C、14Dのみを梁22、24の梁心材36に固定する。
【0065】
また、本発明の第1及び第2の実施形態では、固定部材をアンカーボルト50とした例を示したが、固定部材は、柱心材30、梁心材36に、せん断力伝達部材14A〜14Dを固定できるものであればよい。例えば、固定部材として釘や木ネジ88(図8の平断面図を参照のこと)を用いてもよい。せん断力伝達部材14A〜14Dが、柱梁架構12の架構内側へ向かって引っ張られたときに効果的に抵抗することができるので、固定部材には、引き抜き抵抗の大きいアンカーボルトやネジ部材を用いるのが好ましい。
【0066】
また、本発明の第1及び第2の実施形態では、第2燃え止まり層38が、梁心材36の側面と下面とを取り囲み、第2燃え代層40が、第2燃え止まり層38の側面と下面とを取り囲み、梁心材36、第2燃え止まり層38、及び第2燃え代層40の上面に、床版42、44を設けた例を示したが、梁22、24を、木製の梁心材36と、梁心材36の外周を取り囲む第2燃え止まり層38と、第2燃え止まり層38の外周を取り囲む第2燃え代層40とによって構成してもよい。
【0067】
また、本発明の第1の実施形態では、耐震手段を耐震壁16とし、本発明の第2の実施形態では、耐震手段を補強部材70、72とした例を示したが、耐震手段を、ブレース等の他の耐震部材、耐震機構、耐震装置等にしてもよい。
【0068】
また、本発明の第1の実施形態の耐震構造10や、本発明の第2の実施形態の耐震構造68は、新築建物及び改修建物の何れにも適用することができる。
【0069】
以上、本発明の第1及び第2の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、第1及び第2の実施形態を組み合わせて用いてもよいし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0070】
10、68 耐震構造
12 柱梁架構
14A、14B、14C、14D せん断力伝達部材(せん断力伝達手段)
16 耐震壁(耐震手段)
18、20 柱
22、24 梁
30 柱心材
32 第1燃え止まり層
34 第1燃え代層
36 梁心材
38 第2燃え止まり層
40 第2燃え代層
50 アンカーボルト(固定部材)
70、72 補強部材(耐震手段)
88 木ネジ(固定部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重を支持する木製の柱心材と、前記柱心材の外周を取り囲む第1燃え止まり層と、前記第1燃え止まり層の外周を取り囲む木製の第1燃え代層と、を備えた柱と、
荷重を支持する木製の梁心材と、前記梁心材の側面と下面とを取り囲む第2燃え止まり層と、前記第2燃え止まり層の側面と下面とを取り囲む木製の第2燃え代層と、を備え、前記柱と柱梁架構を構成する梁と、
前記第1燃え止まり層を介した前記柱心材、及び前記第2燃え止まり層を介した前記梁心材の少なくとも一方に、固定部材により固定されたせん断力伝達手段と、
前記せん断力伝達手段に固定された耐震手段と、
を有する耐震構造。
【請求項2】
前記耐震手段は、耐震壁である請求項1に記載の耐震構造。
【請求項3】
前記せん断力伝達手段は、前記第1燃え止まり層を介した前記柱心材と、前記第2燃え止まり層を介した前記梁心材とに、前記固定部材により固定され、
前記耐震手段は、前記柱梁架構の架構内コーナー部に設けられ、該柱梁架構に作用するせん断力に抵抗する補強部材である請求項1に記載の耐震構造。






























【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate