説明

肉を具材として用いる煮込み食品の素

【課題】肉の食感がやわらかい煮込み食品を手間や時間をかけずに作ることができる煮込み食品の素を提供すること。
【解決手段】肉を具材として用いる煮込み食品の素であって、
肉を含む具材を煮込むときに水と共に加える煮込み用調味料と、この煮込み用調味料を加えて具材を煮込んでから加える仕上げ用調味料とを別体として含み、
前記煮込み用調味料が、塩化カリウム及び塩化ナトリウムのうち1種以上と、クエン酸塩及び重炭酸ソーダのうち1種以上と、ソルビトール及びトレハロースのうち1種以上とを含むことを特徴とする煮込み食品の素。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛肉や鶏肉、豚肉を具材として用いる煮込み食品の素、典型的にはシチューやカレーソース、ハヤシソースなどの煮込み食品の素に関するものである。
【背景技術】
【0002】
牛肉や豚肉を具材として用いる煮込み食品の素として、シチューやカレーソースなどを簡便に作ることができるシチュールウやカレールウが広く知られており、このようなシチュールウやカレールウについては、例えば特許文献1〜3に開示されている。これらのシチュールウやカレールウを用いてシチューやカレーソースを作る場合、肉や人参、玉葱などの具材に水を加えて煮込んでから、シチュールウを加えて仕上げる。ここで、通常、具材を煮込む時間は、15分間から60分間程度である。
【特許文献1】特開平10−304852
【特許文献2】特開平10−327824
【特許文献3】特開2006−197884
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようにして肉を熱水中で煮込んでから、シチュールウやカレールウを加えると、熱水の食塩含量が高くなり、これに伴って肉と熱水との間で浸透圧の差が生じ、肉の中から水分が脱水されると共に肉の組織が縮まって肉の食感が硬くなる。
【0004】
本格的なレストランなどでは、肉の食感をやわらかくするために、例えば4時間から24時間かけてじっくり肉を煮込むことが行われている。このようにじっくり煮込んだ肉は、肉の組織がほぐれてやわらかい食感になる。しかし、このようにして肉をじっくり煮込むのは、手間と時間を要する。
【0005】
そこで、本発明の目的は、肉の食感がやわらかい煮込み食品を手間や時間をかけずに作ることができる煮込み食品の素を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる技術的課題は、肉を具材として用いる煮込み食品の素であって、
肉を含む具材を煮込むときに水と共に加える煮込み用調味料と、この煮込み用調味料を加えて具材を煮込んでから加える仕上げ用調味料とを別体として含み、
前記煮込み用調味料が、塩化カリウム及び塩化ナトリウムのうち1種以上と、クエン酸塩及び重炭酸ソーダのうち1種以上と、ソルビトール及びトレハロースのうち1種以上とを含むことを特徴とする煮込み食品の素により達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の煮込み食品の素によれば、仕上げ用調味料を加える前に、煮込み用調味料を加えて肉を煮込むことで、肉の食感がやわらかい煮込み食品を手間や時間をかけずに作ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で対象とする煮込み食品としては、肉を含む具材を煮込んで調理される食品であれば特に制限はないが、具体的には、シチュー、カレーソース、ハヤシソースなどのソース類、スープ類、煮物などが挙げられる。また、肉としては、豚肉、鶏肉、牛肉の何れでもよい。肉以外の具材としては、人参や玉葱、じゃがいもなどの野菜、きのこなど、特に制限なく使用することができる。
【0009】
本発明で用いる煮込み用調味料は、塩化カリウム及び塩化ナトリウムのうち1種以上と、クエン酸塩及び重炭酸ソーダのうち1種以上と、ソルビトール及びトレハロースのうち1種以上とを含む。このうち、塩化カリウム及び塩化ナトリウムのうち1種以上は、煮込み用調味料を加えて肉を煮込むことで、仕上げ用調味料を加える前に肉に浸透して予め肉の浸透圧を高め、特に、仕上げ用調味料を加えたときの肉からの脱水の抑制に寄与していると考えられる。煮込み用調味料には、塩化カリウム及び塩化ナトリウムの何れを含ませてもよいが、特に塩化カリウムを含ませるのが好ましい。煮込み用調味料に含ませる塩化カリウム及び塩化ナトリウムのうち1種以上の量としては、例えば、具材に加える水に対して0.1〜1.5重量%となる量を含ませるとよい。
【0010】
また、クエン酸塩及び重炭酸ソーダのうち1種以上は、煮込み用調味料を加えて肉を煮込むことで、特に、仕上げ用調味料を加えたときの肉組織の収縮の抑制に寄与していると考えられる。クエン酸塩としては、クエン酸ナトリウム、クエン酸3ナトリウムを例示することができる。煮込み用調味料には、クエン酸塩及び重炭酸ソーダの何れを含ませてもよいが、肉の収縮を抑制しつつ風味への影響が少ない点から、クエン酸3ナトリウムを含ませるのが好ましい。煮込み用調味料に含ませるクエン酸塩及び重炭酸ソーダのうち1種以上の量としては、例えば、具材に加える水に対して0.1〜1.5重量%となる量を含ませるとよい。
【0011】
また、ソルビトール及びトレハロースのうち1種以上は、肉の保湿効果を高め、上記の成分と相乗して、肉の食感を柔らかくすることができる。煮込み用調味料には、ソルビトール及びトレハロースの何れを含ませてもよいが、ソルビトールを含ませるのが好ましい。煮込み用調味料に含ませるソルビトール及びトレハロースのうち1種以上の量としては、例えば、具材に加える水に対して0.1〜1.5重量%となる量を含ませるとよい。
【0012】
煮込み用調味料には、上記の成分以外にも、香辛料などの他の材料を含ませてもよい。具体的には、ローレル、クローブ、ナツメグ、胡椒及び桂皮から選ばれる1種以上の香辛料を含ませると、肉の臭みを感じ難くすることができるのでよい。煮込み用調味料は、粉体、顆粒、フレーク、液体、ペーストなど何れの形態であってもよい。煮込み用調味料は、各原料を混合して調製し、仕上げ用調味料とは別体として、例えば包装袋などの包装体に収容すればよい。
【0013】
次に、仕上げ用調味料とは、肉を含む具材に水を加えて煮込んでから加えて、必要により更に煮込んで煮込み食品を仕上げるための調味料である。このような仕上げ用調味料として、典型的には、シチューやカレーソース、ハヤシソースの素であるシチュールウやカレールウ、ハヤシルウなど、澱粉質原料、油脂及び調味料を含む原料を加熱混合して調製されたルウが挙げられる。また、ルウの他にも、例えば煮物を作るための仕上げ用調味料として、食塩及び/又は醤油を含む調味料を挙げることができる。本発明は、仕上げ用調味料を加えることで食塩含量が0.6〜2.0重量%となる煮込み食品に適用する場合、つまり、仕上げ用調味料を加えることで肉と水との間で浸透圧の差が発生しやすい場合に特に有効である。
【0014】
本発明の煮込み食品の素を使用して煮込み食品を調理する例を挙げると、肉を含む具材100重量に対して60〜120重量部の水を加えると共に、煮込み用調味料を加えて5〜60分間煮込む。次いで、これに仕上げ用調味料を加え、必要により更に5〜15分間煮込むことによって煮込み食品に得ることができる。
【実施例】
【0015】
実施例1〜7、比較例1〜5
(1)仕上げ用調味料(シチュールウ)
表1に記載の原料配合物A、B及びCを、それぞれ予め個別に均質混合して調製した。次いで、攪拌羽根を備えた加熱釜内で原料配合物Aを品温が120℃になるように加熱しながら混合した後、品温が70℃となるまで冷却した。その後、ここに原料配合物B及びCを投入して、品温が95℃になるように30分間加熱混合を行った。このように加熱混合して得られた溶融状ルウをトレイ状容器に充填し、冷却固化してシチュールウを調製した。
【0016】
【表1】

【0017】
(2)煮込み食品(シチュー)の素
実施例1〜7及び比較例2〜5について、表2に示す原料を混合して煮込み用調味料を調製し、これらを包装袋に充填密封して包装袋入り煮込み用調味料を得た。そして、実施例1〜7及び比較例2〜5は、包装袋入り煮込み用調味料とシチュールウを一組として煮込み食品の素とし、比較例1はシチュールウだけの煮込み食品の素とした。
【0018】
【表2】

【0019】
(3)煮込み食品(シチュー)の調理及び評価
表2に示す配合により、先ず、具材のうち肉、人参及び玉ねぎを油で炒めた。次いで、これに水と共に煮込み用調味料を加えて煮込み、40分間煮込んだ時点でじゃがいもを加えて更に10分間煮込んでから、シチュールウを加えて更に10分間煮込んでシチューを作った。但し、比較例1だけは煮込み用調味料を加えずにシチューを作った。こうして作った各シチューにおける肉の食感の評価を表2に示している。
【0020】
実施例8、比較例6
(1)煮込み食品の素
実施例8として、表3に示す原料を混合して煮込み用調味料を調製し、包装袋に充填密封して包装袋入り煮込み用調味料を得た。また、これとは別に、表3に示す醤油とみりんを混合して包装袋を充填密封して包装袋入り仕上げ用調味料を得た。そして、両者一組として煮込み食品の素とした。
【0021】
(2)煮込み食品(豚肉の煮物)の調理及び評価
表3に示す配合により、先ず、豚肉を油で炒め、次いで、これに水と共に実施例8の煮込み用調味料を加えて40分間煮込んでから、仕上げ用調味料を加えて更に20分間煮込んで豚肉の煮物を作った。他方、比較例6として、煮込み用調味料を加えないこと以外は実施例8と同様にして豚肉の煮物を作った。こうして作った豚肉の煮物における肉の食感の評価を表3に示している。
【0022】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
肉を具材として用いる煮込み食品の素であって、
肉を含む具材を煮込むときに水と共に加える煮込み用調味料と、この煮込み用調味料を加えて具材を煮込んでから加える仕上げ用調味料とを別体として含み、
前記煮込み用調味料が、塩化カリウム及び塩化ナトリウムのうち1種以上と、クエン酸塩及び重炭酸ソーダのうち1種以上と、ソルビトール及びトレハロースのうち1種以上とを含むことを特徴とする煮込み食品の素。
【請求項2】
前記煮込み用調味料が、ローレル、クローブ、ナツメグ、胡椒及び桂皮から選ばれる1種以上の香辛料を更に含む、請求項1に記載の煮込み食品の素。
【請求項3】
前記仕上げ用調味料が、澱粉質原料、油脂及び調味料を含む原料を加熱混合して調製されたルウである、請求項1又は請求項2に記載の煮込み食品の素。

【公開番号】特開2008−307031(P2008−307031A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−160691(P2007−160691)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(000111487)ハウス食品株式会社 (262)
【Fターム(参考)】