説明

肌のハリの評価方法

【課題】 美容効果の高い化粧料を開発する上で有効な手段として用いることができ、さらに化粧料の販売を促進するための手段としても有効な、皮膚のハリの客観的な評価方法を提供すること。
【解決手段】 全顔を正面から、光源部とレンズ部にそれぞれ偏光フィルターを装着したカメラを用いて撮影して得られた画像を、二値化し頬部の白色反射領域を抽出して粒子解析することにより得られる、粒子総面積、中心粒子面積、粒子集合度、Y軸方向の粒子モーメントから選択される1種又は2種以上を用いてハリを評価する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美容効果の高い化粧料を開発する上で有効な手段として用いることができ、さらに化粧料の販売を促進するための手段としても有効な、皮膚のハリの客観的な評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加齢とともに皮膚のハリが失われ、たるんでくることが知られている。通常ハリの評価方法としては、専門評価者による目視でのスコア化が一般的に行われている。しかしこの方法による場合は、熟練した評価者が必要であるとともに、多数の被験者について長期間にわたり評価することは非常に困難である。
【0003】
そこで、皮膚のハリを客観的に評価するべく機器や、画像解析手法を用いた評価方法が検討されている。例えば、機器を使用した評価方法としては、キュートメーターを用いた評価方法が知られている(特許文献1)。また画像解析の手法を用いた評価方法としては、画像解析で得られた13個の測定値を用いてハリを評価を評価する方法(特許文献2)や、高速度カメラを用いて、外力による変化を測定することによりハリを評価する方法(特許文献3)等が知られている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−164822号公報
【特許文献2】特開2003−024306号公報
【特許文献3】特開2006-346020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の機器を用いた測定方法は、高価な測定機器をそろえる必要があり、汎用性に乏しい、画像解析を用いた方法は、解析に要する因子が多すぎて複雑である、高価な専用の画像測定装置が必要であるといった問題点があった。
【0006】
そこで本発明においては、美容効果の高い化粧料を開発する上で有効な手段として用いることができ、さらに化粧料の販売を促進するための手段としても有効な、皮膚のハリの客観的な評価方法を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、全顔を正面から、光源部とレンズ部にそれぞれ偏光フィルターを装着したカメラを用いて撮影して得られた画像を、二値化し頬部の白色反射領域を抽出して粒子解析することにより得られる、粒子総面積、中心粒子面積、粒子集合度、Y軸方向の粒子モーメントから選択される1種又は2種以上を用いてハリを評価する方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のハリの評価方法は、ハリの官能評価結果や、計測機器を用いた測定値と相関関係を有し、皮膚のハリを、非侵襲的に、簡便に評価することが可能となり、美容効果の高い化粧料を開発する上で有効な手段として用いることができ、さらに化粧料の販売を促進するための手段としても有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0010】
本発明においては、被験者の全顔を正面から、光源部とレンズ部にそれぞれ偏光フィルターを装着したカメラを用いて撮影する。偏光フィルターとしては、中性グレー色のフィルム偏光板であれば、特に限定されない。
撮影時ライト若しくはフラッシュの使用は任意であるが、ライト若しくはフラッシュを使用することが好ましい。
撮影時のシャッタースピード、露出は任意であり、撮影時の明るさ、被写体までの距離等の条件により決定される。
撮影時に、標準黒色板、標準白色板、色補正用カラーチャートなどを同時に撮影することにより、画像の明度を一定の基準で調節することができ、画像管理が容易になる。
これらの撮影は、通常の状態で撮影してもよく、また顔写真撮影装置(例:商品名Visia−CR,インテグラル社製)を用いてもよい。
撮影した画像は、画像処理ソフトを用いて明度補正を行った後、二値化処理を行う。この際、反射した部分は高輝度となるため、白色領域の値となる。左右どちらかの頬部の白色領域を抽出し、粒子解析を行うことにより、粒子総面積、中心粒子面積、粒子集合度(中心粒子面積/粒子総面積)を得る。さらに、頬部反射領域を、クロージング処理、穴埋め処理を行うことにより一つの粒子に変換し、この粒子の形状をあらわす指標として、Y軸方向の粒子モーメントを得る。
【0011】
上述の粒子総面積、中心粒子面積、粒子集合度、Y軸方向の粒子モーメントは、専門家による官能評価や、キュートメーターを用いた力学評価と、正の相関関係を有しており、皮膚のハリを客観的に評価することが可能である(図3、4参照)。
【実施例】
【0012】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の
実施例に限定されるものではない。
【0013】
63名の被験者に対し、ハリについて、画像評価、力学評価、官能評価の3種類の評価を行い、その相関関係を調査した。
[画像評価]
(撮影)
被験者の全顔を顔写真撮影装置(商品名Visia−CR,インテグラル社製)を用いて光源と受光レンズに平行になるように偏光フィルターをかけた状態で撮影した。撮影時顎部に、画像補正用カラーチャート(商品名キャスマッチ)を貼付し、同時に撮影した。偏光フィルターとしては、ポラロイド社製のフィルム偏光板HS386を使用した。
(明度補正)
撮影した画像を画像処理ソフト(商品名Ultimafe Pro,Graftek社製)を用いて、明度補正を行った。その際、カラーチャートの白色部分を最高輝度のを255に、黒色部分を0に指定し、補正した。
(二値化処理)
反射した部分は高輝度になるため、所定の閾値以上の部分を白色に、閾値未満の部分を黒色で表現した(図2参照)。
(粒子解析)
右頬部の白色部分(図3参照)を粒子の集合体と見立て、粒子解析を行うことによって、粒子総面積、中心粒子面積、中心粒子面積、粒子集合度を算出した。
(画像処理)
クロージング処理、穴埋め処理を行うことにより、白色部分を一つの粒子に変換し、この粒子の形状をあらわす指標として、Y軸方向の粒子モーメントを得た。
【0014】
[力学評価]
(測定機器および条件)
皮膚粘弾性測定器(商品名CutometerSEM575,Courage&Khazaka electric GmbH社製)
条件:プローブ口径2mm、陰圧400mbr
測定部位:右頬部
(結果の解析)
Ua/Uf(吸引解除後0.1秒後までの皮膚の戻り率)およびUr/Uf(総戻り率)を算出し、力学的ハリ測定値とした。
【0015】
[官能評価]
日常肌測定に従事する専門評価者(4名)はそれぞれ、被験者の顔写真をもとにハリを1(最低)〜5(最高)の5段階に評価し、その平均値を官能評価値とした。
【0016】
[相関関係]
ハリについて、画像評価、力学評価、官能評価の3種類の評価を行い、その相関係数を算出し、スペアマンの順位相関係数検定により評価した。評価結果を表1に示す。[]内は、スペアマンの順位相関係数検定結果で、**は1%有意、*は5%有意を示す。
【0017】
【表1】

【0018】
官能評価と画像評価では、官能評価結果と、粒子総面積、中心粒子面積、Y軸方向の粒子モメントとの間で高い相関関係が得られた。また、力学評価と画像評価では、Ur/UfとY軸方向の粒子モメントとの間で、Ua/Ufと粒子総面積、中心粒子面積、粒子集合度、Y軸方向の粒子モメントとの間で高い相関関係が得られた。特にY軸方向の粒子モーメントは、官能評価、力学評価ともに高い相関関係が得られ、ハリの画像評価に特に有効であることが示された。
【0019】
[画像評価の確認]
20歳代、30歳代、60歳代の女性の顔写真において、ハリの画像指標のみを画像処理ソフト(商品名PHOTO SHOP,アドビシステムス社製)を用いて作為的に変化させた一対の写真を作成し、一般評価者51名に対し、「どちらの写真に、より肌のハリを感じるか」を質問した。その結果、85%以上の確率でハリの画像指標を増加させた写真が選ばれた。従って、本発明による評価方法は、ハリを客観的に評価する方法として有効であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の肌のハリの評価方法は、皮膚のハリを客観的に評価することができ、美容効果の高い化粧料を開発する上で有効な手段として用いることができ、さらに化粧料の販売を促進するための手段としても有効なである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】二値化処理後の全顔の画像である。
【図2】図1の右頬部分の画像である。
【図3】官能評価結果とY軸方向の粒子モメントとの相関関係を表す図である。
【図4】力学評価とY軸方向の粒子モメントとの相関関係を表す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全顔を正面から、光源部とレンズ部にそれぞれ偏光フィルターを装着したカメラを用いて撮影して得られた画像を、二値化し頬部の白色反射領域を抽出して粒子解析することにより得られる、粒子総面積、中心粒子面積、粒子集合度、Y軸方向の粒子モーメントから選択される1種又は2種以上を用いてハリを評価する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−89999(P2009−89999A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265211(P2007−265211)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り SCCJ研究討論会(第60回)講演要旨集
【出願人】(000135324)株式会社ノエビア (258)
【Fターム(参考)】