説明

肝癌発生・進展抑制剤

【課題】肝臓癌の発生及び進展を抑制するためのヒト及びその他の動物用の予防・治療剤、医薬組成物、及び保健機能食品の提供。
【解決手段】イソロイシン、ロイシン、及びバリンを有効成分とし、イソロイシン、ロイシン、及びバリンの重量比は1:1.5〜2.5:0.8〜1.7で、一日当たりの投与量が2.0g〜50.0gである肝癌発生・進展抑制剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝臓癌の発生、進展を抑制することを目的とする医薬組成物、とりわけ、肝炎又は肝硬変患者における肝臓癌の発生、進展を抑制することに特徴を有する医薬組成物に関する。また、本発明は、肝炎又は肝硬変患者における肝臓癌の発生、進展を抑制するのに有効な保健機能食品に関する。本発明の医薬組成物及び保健機能食品は、アミノ酸であるイソロイシン、ロイシン、バリンを有効成分とするものである。
【背景技術】
【0002】
肝炎、肝硬変から肝臓癌への移行の機序については未だその全ては明確になっていないが、肝発癌を抑制するには、肝炎、肝硬変の原因を取り除くことが重要であると考えられている。
【0003】
例えば、インターフェロン治療により、肝炎ウィルスを除去すると発癌を有意に抑制することが報告されている(非特許文献1)。肝炎ウィルスを除去する方法としては、抗ウィルス剤を用いた治療法もある(非特許文献2、3)。
【0004】
しかし、いずれの場合においても全ての患者においてウィルスを除去することはできず、肝発癌を完全に予防するには至っていない。
肝庇護薬等により、慢性的な炎症を抑制することにより肝発癌を抑制することも試みられているが、肝発癌を完全に予防できるわけではない(非特許文献4、5)。
【0005】
また、メチオニン欠乏、バリン欠乏、アスパラギン酸欠乏、リジン欠乏、システィン欠乏、あるいはフェニルアラニン欠乏、アルギニン増量投与、グルタミン増量投与のような、特定のアミノ酸の欠乏、または過剰投与による癌治療・抑制も試みられているが、未だ満足できる状況ではない(非特許文献6、7)。
【0006】
ところで、肝硬変患者においては蛋白・アミノ酸の代謝異常による血中のフィッシャー比(分岐鎖アミノ酸 mol(イソロイシン+ロイシン+バリン)/芳香族アミノ酸 mol(フェニルアラニン+チロシン))の低下、血清アルブミン濃度の低下を伴うことがあり、このような症例における血清アルブミン濃度とフィッシャー比は正の相関を示すものとされ(非特許文献8)、血清アルブミン濃度が低くなると生命予後が増悪することが知られている(非特許文献9)。
【0007】
そのため、肝硬変患者におけるこのようなアミノ酸代謝の異常に伴う低アルブミン血症を改善するために、リーバクト(登録商標)という分岐鎖アミノ酸(BCAA)配合剤の投与が行われている。
肝性脳症を伴う慢性肝不全患者の栄養状態改善薬であるアミノレバンEN(登録商標)については、これを含有する飼料を肝化学発癌ラットに投与したところ、通常飼料を与えた対照群との比較において肝発癌を抑制する傾向が認められたとする報告がなされている(非特許文献10)が、同文献には、このような発癌抑制効果が、糖質、蛋白質、脂質に各種ビタミンとミネラルを添加したバランス栄養物であるアミノレバンEN(登録商標)中の、特定の成分と関連することを示唆する記載は一切なされていない。
【0008】
同様に、BCAA添加飼料を自然発癌モデルであるLECラットに長期投与したところ、対照群との比較において癌の発生数には差異がないものの、癌の進展に抑制的に作用したとの報告がなされている(非特許文献11)が、同文献にも、BCAAの種類、配合比等について記載されず、当該作用がBCAA中の特定成分と関連することの示唆もなされていない。
【0009】
前出のリーバクト(登録商標)は、イソロイシン、ロイシン及びバリンの分岐鎖アミノ酸3種からなる製剤であり、分岐鎖アミノ酸を適切な比率で経口補充することにより、フィッシャー比を是正し、血清アルブミン濃度を上昇させ、病態を改善することを目的に開発された薬剤であるが、発癌を抑制する作用については知られていない。低アルブミン血症と癌発生との技術関連性も知られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Ann Intern Med(1998)129:94
【非特許文献2】N Engl J Med(1998)339:1485
【非特許文献3】J Viral Hepatitis (1996)3:211
【非特許文献4】Cancer(1995)76:743
【非特許文献5】Cancer(1997)79:1494
【非特許文献6】JJPEN(1997)19:195−199
【非特許文献7】「栄養−評価と治療」(1992)vol. 9 No.2 p.142−146
【非特許文献8】日本医事新報(1983)3101:3
【非特許文献9】JJPEN(1995)17:208
【非特許文献10】「栄養−評価と治療」(1992)vol. 9 No.2 p.142−146
【非特許文献11】「肝臓」(2002)43 Supplement(2):A359
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、肝臓癌の発生、進展の抑制に有効なヒト及びその他の動物用の医薬組成物、とりわけ肝硬変患者における肝臓癌の発生、進展の抑制効果を有する医薬組成物を提供することにある。さらに本発明の別の目的は新規な肝臓癌の予防・治療方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、イソロイシン、ロイシン、バリンの3種のアミノ酸を有効成分とする組成物に肝臓癌の発生、進展、とりわけ肝硬変患者における肝臓癌の発生、進展の抑制効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明は、以下の項目を包含する。
(1)イソロイシン、ロイシン、及びバリンの3種のアミノ酸からなる肝臓癌発生及び進展を抑制するためのヒト及びその他の動物用の医薬組成物。
(2)前記肝臓癌の発生及び進展が、肝硬変患者における肝臓癌の発生及び進展であることを特徴とする(1)に記載の医薬組成物。
(3)イソロイシン、ロイシン、及びバリンの重量比が1:1.5〜2.5:0.8〜1.7であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の医薬組成物。
(4)一日当たりの投与量が2.0g〜50.0gであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(5)イソロイシン、ロイシン、及びバリンの3種のアミノ酸からなる肝癌発生・進展抑制剤。
(6)前記肝臓癌の発生及び進展が、肝硬変患者における肝臓癌の発生及び進展であることを特徴とする(5)に記載の肝癌発生・進展抑制剤。
(7)イソロイシン、ロイシン、及びバリンの重量比が1:1.5〜2.5:0.8〜1.7であることを特徴とする(5)又は(6)に記載の肝癌発生・進展抑制剤。
(8)一日当たりの投与量が2.0g〜50.0gであることを特徴とする(5)〜(7)のいずれか1項に記載の肝癌発生・進展抑制剤。
(9)イソロイシン、ロイシン、及びバリンの3種のアミノ酸の有効量を患者に投与することを含む肝臓癌の予防・治療方法。
(10)前記肝臓癌の発生及び進展が、肝硬変患者における肝臓癌の発生及び進展であることを特徴とする(9)に記載の方法。
(11)イソロイシン、ロイシン、及びバリンの重量比が1:1.5〜2.5:0.8〜1.7であることを特徴とする(9)又は(10)に記載の方法。
(12)イソロイシン、ロイシン、及びバリンの一日当たりの投与量の合計が2.0g〜50.0gであることを特徴とする(9)〜(11)のいずれか1項に記載の方法。
(13)イソロイシン、ロイシン、及びバリンの3種のアミノ酸からなる肝癌発生・抑制剤を製造するためのイソロイシン、ロイシン及びバリンの使用。
(14)前記肝臓癌の発生及び進展が、肝硬変患者における肝臓癌の発生及び進展であることを特徴とする(13)に記載の使用。
(15)イソロイシン、ロイシン、及びバリンを重量比が1:1.5〜2.5:0.8〜1.7となるように使用することを特徴とする(13)又は(14)に記載の使用。
(16)イソロイシン、ロイシン、及びバリンの3種のアミノ酸からなる肝癌発生・抑制剤の一日当たりの投与量が2.0g〜50.0gであることを特徴とする(13)〜(15)のいずれか1項に記載の使用。
(17)イソロイシン、ロイシン、及びバリンの3種のアミノ酸からなる肝臓癌の発生及び進展を抑制するためのヒト及びその他の動物用の医薬組成物、及び該医薬用途への使用に関する説明を記載した記載物を含む商業的パッケージ。
(18)イソロイシン、ロイシン、及びバリンの3種のアミノ酸からなる肝臓癌の発生・進展の抑制剤、及び該医薬用途への使用に関する説明を記載した記載物を含む商業的パッケージ。
(19)イソロイシン、ロイシン、及びバリンの3種のアミノ酸からなる保健機能食品。
【発明の効果】
【0014】
本発明により提供される、イソロイシン、ロイシン、バリンの3種の分岐鎖アミノ酸からなる肝癌発症・進展抑制剤は、肝臓癌の発生、進展の抑制、とりわけ肝炎、肝硬変患者の肝臓癌の発生、進展を抑制する。
また、本発明の医薬組成物は、アミノ酸を有効成分とすることから、安全性が高く、副作用がほとんどないので、長期にわたって投与可能であることから、肝臓癌発生に至る長期経過において予防・治療に有利に用いることができる。また、保健機能食品としても、長期にわたって摂食可能であり、肝臓癌の発生を未然に防止するのに有効である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、コリン欠乏アミノ酸添加食肝発癌ラットにおける発癌率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
本発明の医薬組成物の投与形態・剤型は、経口投与、非経口投与のいずれでもよく、経口投与剤としては、散剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤、チュアブル剤などの固形剤、溶液剤、シロップ剤などの液剤が、また、非経口投与剤としては、注射剤、スプレー剤などが挙げられる。
【0018】
ヒト以外の動物としては、家畜、家禽類のほか、実験動物が含まれる。ヒト以外の動物への投与形態としては、飼料中への添加であってもよい。
【0019】
本発明の医薬組成物と医薬用途への使用に関する説明を記載した記載物を含むパッケージにおいて、記載物としては、用途・効能や投与方法などに関する説明事項を記載したいわゆる能書などが挙げられる。
【0020】
本発明の保健機能食品としては、香料や甘味料を含む散剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤、チュアブル剤などの固形の形態、あるいは溶液剤、シロップ剤などの液状の形態であってもよく、さらに、キャンディー、クッキー、ケーキなどの菓子類、加工食品へ添加する食品補助剤であってもよい。
【0021】
本発明の医薬組成物が適応される病態としては、肝炎、肝硬変、肝臓癌等の肝疾患が含まれ、発癌のリスクが高い肝炎、肝硬変等の肝疾患における肝発癌の予防、及び従来の肝疾患治療剤では十分な治療効果が得られなかった肝臓癌の進展抑制・治癒に特に有効である。
これらの疾患に対する適用において血清アルブミン値の低下は適用条件ではない。
【0022】
本発明におけるイソロイシン、ロイシン、及びバリンは、D体でもL体でもよいが、L体が好ましい。
【0023】
3種のアミノ酸の配合比は、重量比で1:1.5〜2.5:0.8〜1.7であり、特に1:1.9〜2.2:1.1〜1.3の範囲が好ましい。この範囲をはずれると、有効な作用効果が得難くなる。
【0024】
投与量は、対象患者の年齢・体重・病態、投与方法などによっても異なるが、通常1日量として、イソロイシン0.5〜30.0g、ロイシン1.0〜60.0g、バリン0.5〜30.0gを目安とする。一般の成人の場合、好ましくは、一日量として、イソロイシン2.0〜10.0g、ロイシン3.0〜20.0g、バリン2.0〜10.0g、より好ましくは、イソロイシン2.5〜3.5g、ロイシン5.0〜7.0g、バリン3.0〜4.0gであり、3アミノ酸の全体量としては1日当たり2.0g〜50.0g程度が好ましく、これを1〜6回、好ましくは1〜3回に分割して投与する。
【0025】
本発明の有効成分であるイソロイシン、ロイシン及びバリンは、それぞれが単独で、若しくは任意の組み合わせで製剤に含有されていてもよく、又は全てが1種の製剤中に含有されていてもよい。別途製剤化して投与する場合、それらの投与経路、投与剤形は同一であっても、異なっていてもよく、また各々を投与するタイミングも、同時であっても別々であってもよい。併用する薬剤の種類や効果によって適宜決定する。
【0026】
本発明において、「重量比」とは製剤中のそれぞれの成分の重量の比を示す。例えばイソロイシン、ロイシン及びバリンの各有効成分を1つの製剤中に含めた場合には個々の含有量の比であり、各有効成分のそれぞれを単独でまたは任意の組み合わせで複数製剤中に含めた場合には、各製剤に含められる各有効成分の重量の比である。
【0027】
また本発明において、実際の投与量の比は、投与対象(即ち患者)あたりの各有効成分1回投与量あるいは1日投与量の比である。例えば、イソロイシン、ロイシン及びバリンの各有効成分を1つの製剤中に含め、それを投与対象に投与する場合には、重量比が投与量比に相当する。各有効成分を単独でまたは任意の組み合わせで複数の製剤中に含めて投与する場合には、1回あるいは1日投与した各製剤中の各有効成分の合計量の比が重量比に相当する。
【0028】
イソロイシン、ロイシン、及びバリンは既に、医薬・食品分野において広く用いられていて、安全性は確立しており、例えば、これらのアミノ酸を1:2:1.2の比で含有する本発明の医薬組成物における急性毒性(LD50)は、マウスの経口投与において10g/Kg以上である。
【0029】
本発明の医薬組成物は、通常の方法によって、散剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤、チュアブル剤などの固形剤、溶液剤、シロップ剤などの液剤、または、注射剤、スプレー剤などに製剤化することができる。
【0030】
製剤上の必要に応じて、適宜の薬学的に許容される担体、例えば、賦形剤、結合剤、滑沢剤、溶剤、崩壊剤、溶解補助剤、懸濁化剤、乳化剤、等張化剤、安定化剤、無痛化剤、防腐剤、抗酸化剤、矯味矯臭剤、着色剤などを配合して製剤化される。
【0031】
賦形剤としては、乳糖、ブドウ糖、D−マンニトールなどの糖類、でんぷん類、結晶セルロースなどのセルロース類などの有機系賦形剤、炭酸カルシウム、カオリンなどの無機系賦形剤などが、結合剤としては、α化デンプン、ゼラチン、アラビアゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、D−マンニトール、トレハロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどが、滑沢剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸塩などの脂肪酸塩、タルク、珪酸塩類などが、溶剤としては、精製水、生理的食塩水などが、崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、化学修飾されたセルロースやデンプン類などが、溶解補助剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トレハロース、安息香酸ベンジル、エタノール、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなどが、懸濁化剤あるいは乳化剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、アラビアゴム、ゼラチン、レシチン、モノステアリン酸グリセリン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース類、ポリソルベート類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが、等張化剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、糖類、グリセリン、尿素などが、安定化剤としては、ポリエチレングリコール、デキストラン硫酸ナトリウム、その他のアミノ酸類などが、無痛化剤としては、ブドウ糖、グルコン酸カルシウム、塩酸プロカインなどが、防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸などが、抗酸化剤としては、亜硫酸塩、アスコルビン酸などが、矯味矯臭剤としては、医薬及び食品分野において通常に使用される甘味料、香料などが、着色剤としては、医薬及び食品分野において通常に使用される着色料が挙げられる。
【0032】
本発明の医薬組成物には、他の肝臓疾患治療薬、例えば、インターフェロン、グリチルリチン、ウルソデオキシコール酸、リバビリン、漢方薬小柴胡湯などを配合することができる。
【0033】
これらの製剤は、経口、注射、あるいは局所投与等の任意の投与方法によって投与することができる。
【0034】
本発明において肝臓癌の予防・治療方法とは、肝癌の発生・進展を抑制することを含む。
【0035】
保健機能食品とは、身体の生理学的機能や生物学的活動に影響を与える保健機能成分を含み、食生活において特定の保健の目的で摂取をするものに対し、その摂取により当該保健の目的が期待できる食品である。
保健機能食品は、場合によっては機能性食品、健康食品(栄養サプリメントを含む)などと称されることもある。機能性食品とは食品中に含まれる生体調節成分の機能を生かして作られる食品であり、健康食品とは一般的には健康増進に役立つとされている食品群のことをいう。その中には特定の栄養素を主成分にした栄養サプリメントも含まれる。
【0036】
本発明の保健機能食品は、特定保健用食品及び栄養機能食品を含み、肝炎又は肝硬変に罹患した患者における日常の栄養補助食品として摂食させることによって、肝臓癌の発症及び進展を予防することができる。
保健機能食品の調製は、前記医薬組成物と同様の製剤技術、あるいは一般食品の調製技術によって行うことができる。また、ビタミン類や他のサプリメント類を添加してもよい。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、下記の実施例は本発明についての具体的認識を得る一助とみなすべきものであり、本発明の範囲は下記の実施例により何ら限定されるものではない。
【0038】
実施例1
6週令のFischer344系ラットを対照群:N=30、分岐鎖アミノ酸群:N=28の2群に分け、実験食を自由摂食させた。実験食は対照群にはコリン欠乏アミノ酸添加食+2.0%アミノ酸混合物*を、分岐鎖アミノ酸群にはコリン欠乏アミノ酸添加食+2.5%の分岐鎖アミノ酸**を添加(BCAA群)したものを供与した。
死亡時、又は投与64週時に剖検し、肝発癌の有無を組織学的に検討して発癌率を算出した。結果は図1に示すとおりである。
(コリン欠乏アミノ酸添加食はDyets社から購入。*;添加したアミノ酸混合物の各アミノ酸の比はDyets社のコリン欠乏食のアミノ酸と同じ比。2.0%アミノ酸混合物と2.5%分岐鎖アミノ酸は等窒素量。**;イソロイシン:ロイシン:バリン=1:2:1.2重量比)。
【0039】
図1に示すとおり、コリン欠乏アミノ酸添加食肝発癌ラットにおける発癌率は、分岐鎖アミノ酸群において対照群よりも顕著に低く、本発明の分岐鎖アミノ酸配合が癌の発生抑制に有効であることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソロイシン、ロイシン、及びバリンの3種のアミノ酸からなる肝臓癌発生及び進展を抑制するためのヒト及びその他の動物用の医薬組成物。
【請求項2】
前記肝臓癌の発生及び進展が、肝硬変患者における肝臓癌の発生及び進展であることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
イソロイシン、ロイシン、及びバリンの重量比が1:1.5〜2.5:0.8〜1.7であることを特徴とする請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
一日当たりの投与量が2.0g〜50.0gであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
イソロイシン、ロイシン、及びバリンの3種のアミノ酸からなる肝癌発生・進展抑制剤。
【請求項6】
前記肝臓癌の発生及び進展が、肝硬変患者における肝臓癌の発生及び進展であることを特徴とする請求項5に記載の肝癌発生・進展抑制剤。
【請求項7】
イソロイシン、ロイシン、及びバリンの重量比が1:1.5〜2.5:0.8〜1.7であることを特徴とする請求項5又は6に記載の肝癌発生・進展抑制剤。
【請求項8】
一日当たりの投与量が2.0g〜50.0gであることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の肝癌発生・進展抑制剤。
【請求項9】
イソロイシン、ロイシン、及びバリンの3種のアミノ酸の有効量を患者に投与することを含む肝臓癌の予防・治療方法。
【請求項10】
前記肝臓癌の発生及び進展が、肝硬変患者における肝臓癌の発生及び進展であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
イソロイシン、ロイシン、及びバリンの重量比が1:1.5〜2.5:0.8〜1.7であることを特徴とする請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
イソロイシン、ロイシン、及びバリンの一日当たりの投与量の合計が2.0g〜50.0gであることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
イソロイシン、ロイシン、及びバリンの3種のアミノ酸からなる肝癌発生・抑制剤を製造するためのイソロイシン、ロイシン及びバリンの使用。
【請求項14】
前記肝臓癌の発生及び進展が、肝硬変患者における肝臓癌の発生及び進展であることを特徴とする請求項13に記載の使用。
【請求項15】
イソロイシン、ロイシン、及びバリンを重量比が1:1.5〜2.5:0.8〜1.7となるように使用することを特徴とする請求項13又は14に記載の使用。
【請求項16】
イソロイシン、ロイシン、及びバリンの3種のアミノ酸からなる肝癌発生・抑制剤の一日当たりの投与量が2.0g〜50.0gであることを特徴とする請求項13〜15のいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
イソロイシン、ロイシン、及びバリンの3種のアミノ酸からなる肝臓癌の発生及び進展を抑制するためのヒト及びその他の動物用の医薬組成物、及び該医薬用途への使用に関する説明を記載した記載物を含む商業的パッケージ。
【請求項18】
イソロイシン、ロイシン、及びバリンの3種のアミノ酸からなる肝臓癌の発生・進展の抑制剤、及び該医薬用途への使用に関する説明を記載した記載物を含む商業的パッケージ。
【請求項19】
イソロイシン、ロイシン、及びバリンの3種のアミノ酸からなる保健機能食品。

【図1】
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【公開番号】特開2010−180244(P2010−180244A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108333(P2010−108333)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【分割の表示】特願2004−562873(P2004−562873)の分割
【原出願日】平成15年12月18日(2003.12.18)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】