説明

肝臓グリコーゲン合成の向上

本発明は、特に、肝臓に貯蔵されているグリコーゲンの不足を補給するためのスポーツ栄養摂取において使用するための、食品又は飲料に関する。特に、本発明は、肝臓に貯蔵されているグリコーゲンの不足を補給するための炭水化物の組合せを含む食品又は飲料の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、食品又は飲料に関する。特に、肝臓に貯蔵されているグリコーゲンの不足を補給するためのスポーツ栄養摂取において使用するための、食品又は飲料に関する。
【0002】
[発明の背景]
運動選手は、技術及び能力を向上させるために高頻度で運動する。しかしながら、激しい運動は、実際、異化作用を起こす:より高強度で長期間であれば、高いエネルギー代謝回転は、筋肉及び肝臓におけるエネルギー貯蔵の枯渇、潜在的な筋肉損傷、低血糖症及び急激な能力の低下をもたらす。運動後の回復の標的は、エネルギー貯蔵の再貯蔵である。
【0003】
グリコーゲンは、中程度から強度の運動中にATP(アデノシン対流圏)恒常性を維持する主なエネルギー源である。長時間の運動後に観察されるグリコーゲンの枯渇は、アデニンヌクレオチド損失速度の加速及び疲労と関連している。したがって、運動後の回復期中のグリコーゲンの再合成は、持久運動能力の回復にとって重要である。
【0004】
しかしながら、肝臓のグリコーゲン枯渇は、回復において直接感知することはできない。それにもかかわらず、肝臓中のグリコーゲン貯蔵物が補給される前に再び練習又は競技しようとする運動選手は、少ない肝臓グリコーゲンがより早く低血糖症及び疲労をもたらし得るため、グリコーゲン貯蔵物の枯渇の影響を感知する。
【0005】
肝グリコーゲン合成は運動後の期間中に重要な役割を果たす可能性があるが、運動後数時間中は肝臓グリコーゲン再合成が優先であること、及び筋グリコーゲン合成はその次であることを示す証拠は限られている。
【0006】
1つの研究により、健康なヒトにおける運動後の期間における肝臓グリコーゲン合成が研究され(Casey 2000)、筋グリコーゲン合成に影響を及ぼすことなく肝臓グリコーゲン合成を開始するためには、1g/kg bmで十分であることが見出された。
【0007】
フルクトースは、フルクトースの低い血糖反応とは独立に、グルコースとはわずかに異なる肝臓グリコーゲン代謝に対する影響を有することが分かっている。経口静脈内又は経口フルクトース負荷量の大部分は、肝臓によって吸収され、グルコースに変換されることが見出された(Nilsson 1974)。
【0008】
ガラクトースは単糖であり、グルコースと同じ化学式を有する。グルコースと同様に、ガラクトースはナトリウムグルコーストランスポータ(SGLT1)によって小腸から能動的に吸収される。
【0009】
肝臓は、ヒトにおけるガラクトース取り込み及び代謝の主要部位である。肝臓において、ガラクトースをグルコースに変換し、その後グリコーゲンとして貯蔵するか、又は循環中に直ちに放出することができる。
【0010】
米国特許第6039987号(Strahl Robert Charlesによって1999年3月29日に出願)は、グルコース、フルクトース及びキニーネを含む製品を開示している。特にこの特許は、運動中に摂取される製品に関し、痙攣を予防することを目的としている。この特許は、運動後の回復において使用される製品に関するものではない。
【0011】
運動中、炭水化物摂取は肝臓において貯蔵されず、したがって、肝臓は運動中から継続的に利用され続けているため、肝臓グリコーゲンレベルは増加しない。運動後の回復において、グリコーゲン分解が停止したために正味の貯蔵が生じ、運動によって飢餓状態になっている枯渇した貯蔵庫が炭水化物を保持する。
【0012】
筋グリコーゲン及び肝臓グリコーゲンの両方が運動中に分解される一方、肝臓(筋肉ではない)グリコーゲンが、安静時及び睡眠中を含めて継続的に使用されることも適切である。したがって、同時に筋グリコーゲンは補給されながら、肝臓グリコーゲンは枯渇状態になることがある。
【0013】
さらに、食物から吸収された炭水化物は、最初、肝臓組織を通過し、必要に応じて肝臓中に取り込まれ、その後、残りの部分はさらに循環して筋肉に到達する(Nuttall&Gannon、2007)。
【0014】
肝グリコーゲン合成に対する炭水化物の種類の影響をよりよく理解することが必要である。さらに、長時間の運動により生じるグリコーゲンの枯渇の後に、肝臓中のグリコーゲン蓄積の補給速度を上げることにより、より早い回復を提供することに向けられた製品が必要である。特に、運動後の回復に向けられた製品が必要である。肝臓グリコーゲン蓄積が少ないとき、例えば、夜の睡眠後に、人の肝臓中のグリコーゲン蓄積の補給速度を上げるための製品もまた必要である。
【0015】
本発明は、上述した問題に取り組むことを試みる。本発明はまた、別の目的、及び特に、本明細書の残りの部分において明らかとなる別の問題の解決を目的とする。
【0016】
[発明の目的及び概要]
本発明は、肝臓に貯蔵されているグリコーゲンの不足を補給するための炭水化物の組合せを含む食品又は飲料の使用に関する。
【0017】
特に、本発明は、
グルコース及び/又はグルコース供与炭水化物、並びに
フルクトース及び/又はフルクトース供与炭水化物
を含む炭水化物の組合せを含む食品又は飲料に関する。好ましくは、グルコース供与炭水化物は、マルトデキストリンである。
【0018】
本発明はまた、
グルコース及び/又はグルコース供与炭水化物、並びに
ガラクトース及び/又はガラクトース供与炭水化物
を含む炭水化物の組合せを含む食品又は飲料の、肝臓に貯蔵されているグリコーゲンの不足を補給するための使用に関する。好ましくは、グルコース供与炭水化物は、マルトデキストリンである。
【0019】
体内のグリコーゲン貯蔵の回復速度を上げることを目的とするグルコースの摂取は、腸のグルコース分子吸収能力の限界(上限)に関連する困難にぶつかる。浸透圧によって水は消化管へ移動するため、そのような高い浸透圧のグルコース負荷に対する腸の不耐性は珍しいことではない。この不耐性は、グルコースをマルトデキストリン(グルコース供与炭水化物ポリマー)で部分的に置き換えることによって避けることができることが見出されている。消化管における浸透圧負荷は低減され、良好な消化耐性をもたらし、迅速なグリコーゲン合成のために必要な大量の炭水化物を提供するという可能性が実現可能となる。
【0020】
炭水化物から生じたグルコースは、通常30〜50%のデンプンを含有する普通の食事をする人において、肝臓グリコーゲン合成のための主要な前駆体である。グリコーゲンは、完全にグルコース単位でできている。したがって、マルトデキストリン及びグルコースを含む炭水化物ブレンド(等カロリーのグルコースと比較して多量の摂取で向上した胃腸耐性を伴うべきである)は、迅速なグリコーゲン回復のための理想的な炭水化物供給原であるだろうと考えられた。下記の実施例から分かるように、これは事実ではないことが判明した。
【0021】
したがって、驚くべきことに、フルクトースとの炭水化物ブレンド及びガラクトースとの炭水化物ブレンドはともに、提案されているマルトデキストリン+グルコースブレンドよりもグリコーゲン合成を刺激するのに2倍効果的であることが観察された。
【0022】
フルクトースは、単独では人によって十分に吸収されないが、グルコースと同時に摂取されると、腸吸収は促進されると考えられる。フルクトースは、肝臓グリコーゲンの前駆体であるが、肝臓において、まずC3化合物に変換される必要がある。
【0023】
さらに、グルコース及び/又はマルトデキストリンのフルクトースとのブレンド又は組合せの摂取が、グルコースベースの回復製品に代わる製品を提供することが判明した。特に、この炭水化物組合せは、肝臓グリコーゲン補給のために特に有効であることが示された。
【0024】
ガラクトースは、人によって十分に吸収されることが知られており、これは肝臓グリコーゲンの好ましい前駆体である。しかしながら、成人の通常の食事においてほんの少量のガラクトースしか消費されず、このことが、ガラクトースがグルコースと同じ能動的な腸のトランスポータ系を共有していることの理由である可能性がある。ガラクトースがグルコースと同時に摂取されるとき、総炭水化物吸収の向上は期待されない。よくても、グルコース及び/又はマルトデキストリンのガラクトースとの炭水化物組合せは、マルトデキストリン+グルコースと同じ肝臓グリコーゲン合成を生じると考えられる。本発明によれば、食物又は飲料製品におけるこの炭水化物組合せが、提案されているマルトデキストリン+グルコース組合せよりも、グリコーゲン合成を刺激するのに2倍効果的であることが実証された。
【0025】
フルクトースとの炭水化物ブレンドと同様に、ガラクトースとの炭水化物ブレンドは、驚くほど高い補給効率を示した。同時に、3つ全ての製品(グルコースとの炭水化物ブレンド、フルクトースとの炭水化物ブレンド、及びガラクトースとの炭水化物ブレンド)の消費は、報告された主観的な胃腸症状から判断して、同程度に十分耐容されることが判明した。したがって、より有効な炭水化物組合せの有害な副作用は存在しなかった。
【0026】
さらなる一態様において、本発明は、
グルコース及び/又はグルコース供与炭水化物、並びに
フルクトース及び/又はフルクトース供与炭水化物
を4:1〜1:1、好ましくは3:1〜2:1の比で含む炭水化物の組合せを含む、肝臓に貯蔵されているグリコーゲンの不足を補給するための運動後の食品又は飲料に関する。
【0027】
本発明はまた、
グルコース及び/又はグルコース供与炭水化物、並びに
ガラクトース及び/又はガラクトース供与炭水化物
を4:1〜1:1、好ましくは3:1〜2:1の比で含む炭水化物の組合せを含む、肝臓に貯蔵されているグリコーゲンの不足を補給するための運動後の食品又は飲料にも関する。
【0028】
[発明の詳細な説明]
本文脈において、用語は以下の意味を有する。
【0029】
パーセントに対する全ての言及は、別途明記されていない限り、(乾燥物質の)質量パーセントである。以下で言及される比もまた、分子の質量で示される。したがって、グルコース供与炭水化物、フルクトース供与炭水化物、及びガラクトース供与炭水化物について、グルコース分子、フルクトース分子又はガラクトース分子の質量のみが、それぞれ比に考慮される。
【0030】
本文脈において、運動後の回復は、休養及び栄養摂取によって運動前の平衡状態に、及び再び同程度に競技することができるように身体を回復させるプロセスとして定義することができる。回復は、それまでの運動の代謝要求及び回復期間中の栄養管理の質に応じて、数時間又は数日継続する場合がある。しかしながら、回復が迅速でなければならない場合、多量であっても十分に耐容され、有効に吸収及び貯蔵される特別な栄養製品は、本発明が提供する明確な利点を有する。
【0031】
グリコーゲンは、筋肉及び肝臓における炭水化物の貯蔵形態であり、食物炭水化物に由来する。
【0032】
グルコース供与炭水化物は、(腸の膜を通して)体内に吸収されるとグルコースを供与する炭水化物である。グルコース供与炭水化物は、スクロース、デキストリン、マルトデキストリン、デンプン、グルコースポリマー、マルトース、ラクトース、高フルクトースコーンシロップ又はこれらの組合せを含む。
【0033】
フルクトース供与炭水化物は、体内に吸収されるとフルクトースを供与する炭水化物である。フルクトース供与炭水化物は、高フルクトースコーンシロップ及びフルクトースポリマー、ハチミツ、イヌリン等を含む。フルクトースは、肝臓に到達した後にのみグルコースに変換される。
【0034】
ガラクトース供与炭水化物は、体内に吸収されるとガラクトースを供与する炭水化物である。ガラクトース供与炭水化物は、ラクトースであってもよい。ガラクトースは、肝臓に到達した後にのみグルコースに変換される。
【0035】
好ましい一実施形態において、本発明は、
1)グルコース及びグルコース供与炭水化物、並びに
2)フルクトース及びフルクトース供与炭水化物
の比が4:1〜1:1である、食品又は飲料の使用、及び食品又は飲料そのものに関する。
好ましくは、この比は3:1〜2:1である。
これらの比は、運動後の肝臓グリコーゲン合成のために最も効果的な炭水化物組合せであることが判明した。より好ましくは、
グルコース供与炭水化物は、炭水化物組合せの少なくとも3分の1を占める必要があり、
消化管においてフルクトース分子は、高いフルクトース負荷という潜在的な吸収問題のため、供給される炭水化物の半分未満であるべきである。驚くべきことに、この炭水化物の組合せを有する食物又は飲料製品は、迅速な運動後の肝臓グリコーゲン合成のために特に効果的であることが判明した。
【0036】
別の好ましい実施形態において、本発明は、
1)グルコース及びグルコース供与炭水化物、並びに
2)ガラクトース及びガラクトース供与炭水化物
の比が4:1〜1:1である、食品又は飲料の使用、及び食品又は飲料そのものに関する。好ましくは、この比は3:1〜2:1である。
本発明のこの実施形態では、これらの比は、運動後の肝臓グリコーゲン合成のために最も効果的な炭水化物組合せであることが判明した。より好ましくは、
グルコース供与炭水化物は、炭水化物組合せの少なくとも3分の1を占める必要があり、
消化管においてガラクトース分子は、グルコースと共有する腸のトランスポータの潜在的な飽和のため、供給される炭水化物の半分未満であるべきである。
【0037】
さらに、フルクトース及びガラクトースは、別個の吸収経路を使用し、またグルコースと比較して異なる生化学的経路をたどる。したがって、これらの影響は、相加的又は相乗的である可能性があると考えられる。本発明による使用のための
1)グルコース及びグルコース供与炭水化物、並びに
2)フルクトース及びフルクトース供与炭水化物、並びに
3)ガラクトース及びガラクトース供与炭水化物
の組合せが好ましいこともある。例えば、グルコース:フルクトース:ガラクトースの組合せを1:1:1の比で有利に使用することもできる。
【0038】
本発明により推奨される使用は、1時間当たり60〜90グラム、好ましくは1時間当たり70〜90グラムの炭水化物の摂取に相当する量の食品又は飲料量の摂取である。
【0039】
上述した本発明の実施形態について、食品又は飲料は、乾燥物質に基づいて1450〜1970kJ/100グラムのエネルギー密度を有することが特に好ましい。
【0040】
本発明の好ましい実施形態において、本発明は、肝臓に貯蔵されているグリコーゲンの不足を補給する速度を増加させるための使用に関する。補給の速度は、本発明による炭水化物の特別な組合せにより得られる。特に、この速度は、肝臓グリコーゲン貯蔵を補給するための運動後の回復のために有用である。
【0041】
本発明は主に運動選手を対象とするが、しかしながら、肝臓グリコーゲン補給を必要としている全ての人が使用することができることが明らかである。例えば、睡眠後の肝臓グリコーゲン貯蔵補給のために使用されてもよい。本発明のさらに好ましい実施形態は、肝臓グリコーゲン貯蔵を補給するための睡眠後の回復における使用に関する。運動選手にとって、胃腸の不快感により妨害されずに効果的かつ迅速に肝臓グリコーゲンを補給することが明確な利点である特定の状況は、2回の激しい運動が、その間にわずか数時間の休養しかなく同じ日に予定されている場合である。したがって、本発明のさらに好ましい実施形態は、このような連続的な運動の初回の後の回復のための栄養摂取に関する。
【0042】
[図面の簡単な説明]
図1は、摂取グルコース、フルクトース、及びガラクトース製品の比較を行う試験の設計である。
図2は、参照製品に対する本発明の製品の摂取による経時的な肝臓中グリコーゲン濃度の回復の増加を示す図である。
【0043】
本発明をその好ましい実施形態を参照して記述してきたが、添付の特許請求の範囲によって定義されている本発明の範囲を逸脱することなく、当業者によって多くの修正及び変更がなされてもよい。
【0044】
本発明による運動後の製品のために好ましい製品組成を、表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
表2〜4は、100mlの液体、例えば水中に溶解させる乾燥粉末製品のための処方例を示す。
【0047】
【表2】

【0048】
【表3】

【0049】
【表4】

【0050】
実施例1
対象及び予備試験
10人の健康な男性で持久性を鍛練されたボランティア(主に自転車便業者)を、試験に含めた(平均±標準偏差:身長184±8、体重74±8kg、年齢29±5歳、VO2max64±3ml/kg/min)、Wmax373±42W)。
【0051】
試験を開始する前に、ボランティアは、健康診断及び身体測定(体重、身長)を受けた。その後、自転車における段階的運動試験によって疲労困憊するまで有酸素能力試験を実施し、最大酸素取り込み、最大能力及び最大心拍数を決定した。
【0052】
ボランティアは、医療対象単位において、自由意志による疲労困憊まで標準的な段階的運動試験を実施し、最大作業負荷(Wmax)及び最大酸素取り込み(VO2max)を決定した。この試験は、電気ブレーキ式自転車エルゴメータ(Lode Excalibur sport)において実施した。
【0053】
試験は100Wの仕事量で開始し、5分後、仕事量を2分毎に30Wずつ、ボランティアが要求されるペダル頻度(>60rpm)を維持できなくなるまで増加させた。心拍数(HR)は、無線遠隔測定心拍数モニター(Polar Vantage NV、Kempele、Finland)によって継続的に記録した。酸素消費及び二酸化炭素生成は、オンライン自動ガス分析装置を使用して、試験の開始から終了まで継続的にモニターした。
【0054】
対象には、初回実験前の2日間、食事及びトレーニング記録を続けてもらい、その後の試験では、この活動及び食事パターンを繰り返してもらった。特に、対象には、各実験の前日、努力を要するトレーニング及びアルコールを控えてもらった。トレーニング及び食事記録は、各実験の後に話し合って不明確な点を明確にした。
【0055】
試験設計
この試験は、二重盲式の無作為化された単一施設臨床試験(スキーム)であった。
各対象は、別々の日に3つの実験セッションを完了した。
ドリンクA:マルトデキストリン+グルコースドリンク
ドリンクB:マルトデキストリン+フルクトースドリンク
ドリンクC:マルトデキストリン+ガラクトースドリンク
ドリンクは、等エネルギー及び等浸透圧であった。
【0056】
【表5】

【0057】
製品
製品は、異なる供給業者から入手し:マルトデキストリン(Glucidex DE12、Roquette Freres、F−62080 Lestrem、フランス)、結晶フルクトース(Fruitose S、Galam Ltd via Sugro AG、CH−4002 Basel、スイス)、D−(+)− ガラクトース(Aldrich Fluka Chemie GmbH、CH−9470 Buchs、スイス)、D−(+)−グルコース(Roferose ST、Roquette Freres、F−62080、Lestrem、フランス)、Nestleによって混合された。
【0058】
NUK Quality Assurance Laboratoryによる最終ブレンド中の炭水化物の分析は、それぞれの単糖に関して、マルトデキストリン:単糖の比が1.9:1(A)、2.0:1(B)及び1.9:1(C)であることを示した。
【0059】
ドリンクは、粉末形態で調製し、個々の小袋中に用意した。小袋に、45gの炭水化物粉末を入れ、A、B又はCというラベルを付けた。これらを盲検法で、すなわちボランティア並びに試験を実施している職員に飲料の種類を知らせずに、提供した。
【0060】
実験全体にわたって、使用直前に小袋を適切な量の水(小袋1つ当たり300ml)に溶解させた。水への溶解後、製品を経口的に投与した。
【0061】
摂取
6時間の回復期間中の炭水化物及び液体摂取の平均速度は、全体に、それぞれ1.25g/min及び600ml/hであった。対象は、基礎MRS測定の後直ちに600ml、その後、次のMRS測定の開始まで45分毎に300mlを投与された。各実験中に提供された炭水化物及び液体の総量は、3lの水及びボランティアの味覚に応じて微量のシトロンジュースに溶解された450gであった。
【0062】
処置及び期間に対する対象の無作為化は、無作為化のためのプログラムによって実施した。
【0063】
試験セッション
図1は、1日(すなわち1つの特定のドリンク)の期間を示す。基礎MR検査の終了とともに、期間をt=0から開始した。疲労困憊までの枯渇期間の継続時間は個々に異なっていたため、t=0までの期間は様々であった。EXCELシートを、開始時間が入力され得るように作成し、当日の正確な期間とともに印刷した。平均して、標的期間からの偏差は、5分より良好であった。
【0064】
グリコーゲンを枯渇させる運動及び炭水化物供給
ボランティアに、一晩の絶食後の朝に実験室に来て、グリコーゲン貯蔵を枯渇させるためにサイクリング運動プロトコルを受けてもらった。
【0065】
プロトコルは、最大出力の50%で10分のウォーミングアップから開始した。その後、参加者に、90%Wmaxで2分を完了できなくなるまで、2分間を90%Wmaxと50%Wmaxで交互に自転車を漕いでもらった。この時点で高強度運動ブロックを80%Wmaxまで低下させ、この強度が維持できなくなるまで交互のプロセスを継続し、その後、高強度ブロックを70%Wmaxまで減少させた。ボランティアが2分間隔で70%と50%を切り替えできなくなった場合、ボランティアには、完全に疲労困憊するまで、それでも許容される(典型的に50%)作業負荷レベルを維持するようにしてもらった。運動プロトコルの間、水は自由に与えられた。このプロトコルは、訓練されたサイクリストにおいて筋グリコーゲン枯渇を誘導するための確立された方法(Kuipers1987)である。プロトコル終了後、参加者には短時間のシャワーを浴びることが認められ、運動プロトコルの停止後約30分以内に実験室に戻ってきてもらった。
【0066】
仰向けで、実験プロトコル中に繰り返される血液採取を可能にするために、テフロンカテーテル(Venflon 20G)を腕の肘正中静脈に挿入した。次に、ボランティアは基礎MR測定を受け、その後、安静時血液試料(7ml)を抽出した。次いで、ボランティアに、試験ドリンクの初回ボーラス(t=0min、600ml、小袋2個)を消費してもらい、その後のドリンクをおおよそ45分毎に投与した(図1)。血漿グルコース及びインスリン濃度の測定のために、追加の血液試料を図1に示す間隔で採取した。採取した血液の総量は、試験1回当たり約80mlであった。
【0067】
摂取されたドリンクは、MD+グルコース、又はMD+フルクトース又はMD+ガラクトースが、初めに、1.5g/min又は1時間当たり90gの平均速度で確実に摂取されるようにした。試験の順序は、上述した通り無作為化した。
【0068】
磁気共鳴分光法測定
試験は、天然に存在する13CNMR分光法を使用した。NMRは、筋肉及び/又は肝臓グリコーゲン濃度のin vivoでの評価を可能にする非侵襲的技術である。
【0069】
13CNMRを開発し、使用して、食事及び運動によるヒトのグリコーゲン代謝についての情報を得た。NMRは非侵襲的であるため、特定の時間経過にわたってより多くのデータ点が利用可能であり、ヒト筋肉の外科的な採取を必要とする化学的分析と比較して時間分解能を劇的に向上する。この向上した時間分解能により、これまでに観察されなかった深刻なグリコーゲン枯渇後のグリコーゲン再合成の微細な記録が可能となる。
【0070】
いくつかの異なるヒト集団において様々な条件下で、筋肉及び肝臓グリコーゲン濃度を追跡した。
【0071】
臨床用MRスキャナーは、肝臓中の13Cシグナルを観察することができる。加えて、専門的な装置を使用してヒト肝臓の13C MRスペクトルを取得する。有益な結果を得るために、シグナルノイズを低く保つことにより、低いシグナル対ノイズ比及び絶対的定量[mM]を可能にすることが重要である。
【0072】
MR画像及びHをデカップルした天然に存在する13C MRスペクトルを、デカップリング及び核オーバーハウザー効果増強のための手製のデカップラーコンソールを備えた、標準的な1.5 Tesla GE SIGNAシステム(General Electric Milwaukee WI)において記録した。測定の実験の詳細は、(Boesch 2001;Fluck 2003)に記述している。
【0073】
全身用コイルを使用して、位置調整のためのMR画像を得て、一方、13Cシグナル励起及び受信には、二核種フレキシブル表面コイル(Medical Advance、Milwaukee WI)を使用した。
【0074】
ボランティアの再現性を数ミリメートル以内に位置調整するために、前述の試験について実施された(Boesch 2001)徹底した位置調整手順を使用した。
【0075】
グリコーゲンシグナルの定量は、2段階で得た。ボランティアは、交差試験設計において自身の対照として役割を果たすため、表面コイルの慎重な位置調整が、1人の特定のボランティアについて全てのセッションにおいて同じ感度分布を得るために役立った。
【0076】
施設上の単位(これは1人のボランティア内では比較可能であるが、コイルと肝臓の間の距離に応じて個々の補正因子を必要とする)を絶対的単位[mM]に換算するために、肝臓型模型中の95mMのグリコーゲン溶液を、コイル中心からボランティアと同じ距離で測定した。これらの距離を、ボランティア及び模型においてMRIによって決定した。
【0077】
胃腸の副作用に関するアンケート調査
このような大量の炭水化物ドリンクを摂取することに対する対象の知覚を評価する質問を、1(全くない)から10(とても、非常に)の尺度を使用して、回復の経過中に間隔をおいて尋ねた。
【0078】
結果
疲労困憊するまでの運動は、(平均±SD)118±8分継続し、59±3%Wmax(交互の強度の平均)で達成された。合計仕事量は、1564±281kJであった。
【0079】
グリコーゲン濃度
回復における3つ全てのドリンクについてのグリコーゲンレベルの比較は、グルコースが、フルクトース及びガラクトースよりも低い傾斜のグリコーゲン補給を有することを示す。図2を参照されたい。
【0080】
図2において、グルコースの補給は、全期間中で別のドリンクよりも低いことが明らかである。全てのドリンクが、第2の期間(初回飲用後2h〜4h30)中に最も高い相対的補給速度をもたらすこともまた注目に値する。
【0081】
全体に、MD+フルクトース(0.39mM/min、P<0.001)及びMD+ガラクトース(0.45mM/min、P<0.001)についての平均6h補給速度は、MD+グルコース(0.20mM/min)と比較して2倍早かった。MD+ガラクトース及びMD+フルクトースは、互いに顕著には異なっていなかった(P=0.664)。
【0082】
発表されている文献から、この試験において供給されたものと同様のグルコース(又はグルコースを生じる炭水化物)の量は、同様の期間中に筋肉中の正味のグリコーゲン貯蔵をもたらすことが知られている。グルコースを生じるマルトデキストリンをフルクトース又はガラクトースのいずれかとブレンドすることは、肝臓中のグリコーゲン補給についての参照よりも効果的であることがここで独自に示されている。したがって、上記のブレンド、又はそれらの組合せの1つを使用することは、別の一般に認められている筋肉負荷方法にとって理想的な相補的技術である。
【0083】
アンケート調査
副作用
回復期間の経過における自然な尿意を除いて、胃及び腸の副作用に関する平均スコアは、「とても弱い」又は本質的に副作用なしと解釈される1.3を超えることはなかった。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】摂取グルコース、フルクトース、及びガラクトース製品の比較を行う試験の設計である。
【図2】参照製品に対する本発明の製品の摂取による経時的な肝臓中グリコーゲン濃度の回復の増加を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭水化物の組合せを含む食品又は飲料の、肝臓に貯蔵されているグリコーゲンの不足を補給するための使用。
【請求項2】
炭水化物の組合せが、
グルコース及び/又はグルコース供与炭水化物、並びに
フルクトース及び/又はフルクトース供与炭水化物
を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
1)グルコース及びグルコース供与炭水化物と、
2)フルクトース及びフルクトース供与炭水化物
の比が4:1〜1:1である、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
組合せが、
ガラクトース及び/又はガラクトース供与炭水化物
をさらに含む、請求項2及び3に記載の使用。
【請求項5】
炭水化物の組合せが、
グルコース及び/又はグルコース供与炭水化物、並びに
ガラクトース及び/又はガラクトース供与炭水化物
を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
1)グルコース及びグルコース供与炭水化物と、
2)ガラクトース及びガラクトース供与炭水化物
の比が4:1〜1:1である、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
食品又は飲料が、肝臓に貯蔵されているグリコーゲンの不足を補給する速度を増加させるために使用される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
運動後の回復における肝臓グリコーゲン貯蔵を補給するための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
睡眠後の回復における肝臓グリコーゲン貯蔵を補給するための、請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
フルクトースが、供給される炭水化物のグラム数の半分未満である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
グルコース供与がマルトデキストリンである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
食品又は飲料が、1時間当たり60〜90グラム、好ましくは1時間当たり70〜90グラムの炭水化物の摂取に相当する量で使用される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
食品又は飲料が、乾燥物質に基づいて1450〜1970kJ/100グラムのエネルギー密度を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
グルコース及び/又はグルコース供与炭水化物、並びに
フルクトース及び/又はフルクトース供与炭水化物
を4:1〜1:1の比で含む炭水化物の組合せを含む、肝臓に貯蔵されているグリコーゲンの不足を補給するための運動後の食品又は飲料。
【請求項15】
組合せが、
ガラクトース及び/又はガラクトース供与炭水化物
をさらに含む、請求項14に記載の運動後の食品又は飲料。
【請求項16】
グルコース及び/又はグルコース供与炭水化物、並びに
ガラクトース及び/又はガラクトース供与炭水化物
を4:1〜1:1の比で含む炭水化物の組合せを含む、肝臓に貯蔵されているグリコーゲンの不足を補給するための運動後の食品又は飲料。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2012−505643(P2012−505643A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531433(P2011−531433)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062529
【国際公開番号】WO2010/043486
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】