説明

肝臓傷害のバイオマーカー

本発明により、肝臓傷害(これには、虚血性肝臓損傷が含まれるが、これに限定されない)の診断およびモニターリングのための新規な、高感度かつ特異的なマーカーが提供される。これには、アルギニン/尿素/一酸化窒素サイクルのいくつかの酵素、硫化酵素およびスペクトリン分解関連生成物を特定することが含まれる。肝臓虚血により誘導される多数の傷害を診断およびモニターリングするための新規な、高感度かつ特異的なマーカーが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、肝臓傷害を診断するためのバイオマーカーのパネルおよび方法に関連する。具体的には、肝臓傷害において特有に産生されるバイオマーカーの高感度な、特異的かつ確実な検出および特定が提供される。
【背景技術】
【0002】
背景
肝臓は極めて重要な器官である。身体の主要な代謝器官として、肝臓は、アミノ酸の脱アミン化および尿素の形成、グリコーゲンの形成による血糖の調節、血漿タンパク質の産生、胆汁の産生および分泌、内臓(腸)循環からの粒状物の食作用、ならびに、内因性毒素および外因性毒素の両方の解毒および除去を含めて、ほとんどすべての生化学的プロセスにおいて何らかの役割を果たしている。
【0003】
肝臓のこれら多くの機能は、循環している血液とのその密接な会合に依存する。それぞれの肝臓細胞が、内臓循環からの静脈血と混合された酸素化動脈血を含有する血液洞様毛細血管に少なくとも1つの面でさらされる。この豊富な血液供給は、肝臓が機能するために必要である。洞様毛細血管からの血液は肝細胞に酸素および栄養分を供給する。肝細胞は、それら自身の代謝的要求のために、また、肝臓の多くの不可欠な生成物を合成するために、それらの両方で栄養分を使用する。血管または脈管構造における異常は、肝臓に対する即時的かつ重大な影響を有し得る。例えば、肝臓細胞は、経口摂取される何らかの毒性化合物(例えば、エチルアルコールなど)の高い濃度にさらされる。摂取された化合物がそれ自体、毒性でない場合でさえ、そのような化合物の肝臓代謝のときに産生される中間の誘導体が肝細胞に損傷を与えることがある。この現象が、例えば、四塩化炭素中毒において生じる。血液は肝洞様毛細血管の中をゆっくり移動するので、肝臓の細胞はまた、血液によって運ばれる感染性病原体(例えば、ウイルスおよび細菌など)による攻撃を極めて受けやすい。さらに、肝血圧における乱れは肝臓組織に損傷を及ぼし得る。右心不全は肝血圧を増大させ、圧迫壊死(肝細胞の死)および線維症を引き起こし得る。左心不全は肝灌流を低下させ、肝細胞の酸素欠乏症および死を引き起こし得る。
【0004】
何らかの起源に由来する肝臓損傷は、傷害のタイプおよび程度ならびに肝臓内でのその場所に依存して、肝臓の再生、壊死(細胞の死)、変性、炎症、線維症、または、これらのプロセスの混合をもたらし得る。肝臓は大きな機能的予備を有しており、しかし、進行性の傷害により、肝臓機能の破壊は、命を脅かす結果を有し得る。肝硬変(これは末期の肝臓疾患の1つのタイプである)は西洋世界における上位10の死因の1つである。
【0005】
肝臓傷害の少数のマーカー(例えば、ALT、LDH)が、肝臓傷害(例えば、虚血/再灌流など)が肝臓損傷の主要な病理学的原因である臨床状態の診断またはモニターリングのために使用されている。これらの状態には、外傷および熱傷、腹部手術、出血性ショックおよび敗血症性ショック、腹部銃創、ならびに、肝臓移植がある。しかしながら、ALT、LDHおよび他の古典的マーカーは高感度でないか、または、特異的でないかのいずれかである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、肝臓の傷害および疾患を診断するバイオマーカーの特異的な、高感度かつ確実な検出がこの分野では求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
要旨
肝臓虚血により誘導される多数の傷害を診断およびモニターリングするための新規な、高感度かつ特異的なマーカーが提供される。具体的には、バイオマーカーの特定は、アルギニン/尿素/一酸化窒素サイクルのいくつかの酵素、硫化酵素およびスペクトリン分解関連生成物を特定することに基づいている。これらには、アルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS)およびアルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、硫化(エストロゲンスルホトランスフェラーゼ(EST)、スクアレンシンターゼ(SQS)、肝臓グリコーゲンホスホリラーゼ(GP)、カルバモイルリン酸シンセターゼ(CPS−1)、α−エノラーゼ1およびグルコース調節タンパク質(GRP)が含まれるが、これらに限定されない。
【0008】
好ましい実施形態において、組成物は、アルギニン/尿素/一酸化窒素サイクルの酵素、硫化酵素およびスペクトリン分解関連生成物を含む。
【0009】
別の好ましい実施形態において、組成物は、アルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS)およびアルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、硫化(エストロゲンスルホトランスフェラーゼ(EST)、スクアレンシンターゼ(SQS)、肝臓グリコーゲンホスホリラーゼ(GP)、カルバモイルリン酸シンセターゼ(CPS−1)、α−エノラーゼ1、グルコース調節タンパク質(GRP)およびスペクトリン分解生成物を含む。
【0010】
別の好ましい実施形態において、肝臓の虚血性傷害を検出する方法は、アルギニン、尿素および/または一酸化窒素サイクルの1つまたは1つよりも多い酵素を検出することを含む。
【0011】
別の好ましい実施形態において、肝臓の虚血性傷害を検出する方法は、アルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS)およびアルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、硫化(エストロゲンスルホトランスフェラーゼ(EST)、スクアレンシンターゼ(SQS)、肝臓グリコーゲンホスホリラーゼ(GP)、カルバモイルリン酸シンセターゼ(CPS−1)、α−エノラーゼ1、グルコース調節タンパク質(GRP)およびスペクトリン分解生成物を含む、肝臓傷害の少なくとも1つのマーカーを検出することを含む。
【0012】
別の好ましい実施形態において、肝臓傷害を検出するためのキットが提供される。好ましくは、キットは、下記マーカーの少なくとも1つを含むバイオマーカーの組成物を提供する:アルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS)およびアルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、硫化(エストロゲンスルホトランスフェラーゼ(EST)、スクアレンシンターゼ(SQS)、肝臓グリコーゲンホスホリラーゼ(GP)、カルバモイルリン酸シンセターゼ(CPS−1)、α−エノラーゼ1、グルコース調節タンパク質(GRP)およびスペクトリン分解生成物。
【0013】
別の好ましい実施形態において、任意の起源の肝臓損傷を、本明細書中に開示される1つまたは1つよりも多いバイオマーカーを検出することによって、また、他の知られている試験(例えば、肝血流量またはプロトロンビン凝固時間の評価など)または血清マーカー(例えば、血清ビリルビン、血清トランスアミナーゼおよび血清アルカリホスファターゼのレベルなど)との併用で診断およびモニターすることができる。検出されたバイオマーカーのレベルは、肝臓損傷のタイプおよび程度を決定することにおいて有用である肝臓組織の組織学的評価;肝臓機能または血清マーカーを測定するインビトロでの生化学的検査、および/または、肝臓の組織生検からの結果と相関させることができる。所望されるならば、バイオマーカーの検出は、生化学的検査、組織生検、患者の病歴、および、肝臓損傷を誘導する手段の評価と組み合わせることができ、また、肝臓損傷の程度を決定する際に使用される。
【0014】
別の好ましい実施形態において、治療方針が、アルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS)およびアルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、硫化(エストロゲンスルホトランスフェラーゼ(EST)の標的化に関連する。
【0015】
別の好ましい実施形態において、ASSの非存在により、肝臓酵素疾患が診断される。例えば、ASSの不足(アルギニノコハク酸シンセターゼ欠損症)は遺伝性疾患(カエデシロップ尿病(MSUD)およびシトルリン血症)である。健康な対照者におけるベースラインレベルが本発明の方法により検出可能であり、そのようなベースラインは、そのような状態に冒されたヒトでは正常値よりも低いことが予想される。
【0016】
好ましい実施形態において、肝臓酵素障害を検出および診断する方法は、被験体サンプルにおける少なくとも1つまたは1つよりも多いバイオマーカーの非存在を決定する工程;および、1つまたは1つよりも多いバイオマーカーの検出または検出の非存在を肝臓酵素障害の診断と相関させる工程であって、相関では、正常な被験体と比較して、それぞれの診断における1つまたは1つよりも多いバイオマーカーの検出または存在の非存在が考慮に入れられ、1つまたは1つよりも多いタンパク質マーカーが、アルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS)、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、硫化(エストロゲンスルホトランスフェラーゼ(EST)、スクアレンシンターゼ(SQS)、肝臓グリコーゲンホスホリラーゼ(GP)、カルバモイルリン酸シンセターゼ(CPS−1)、α−エノラーゼ1、グルコース調節タンパク質(GRP)およびスペクトリン分解生成物から選択される、工程;および、1つまたは1つよりも多いタンパク質バイオマーカーの検出を肝臓酵素障害の診断と相関させる工程であって、相関では、正常な被験体と比較して、それぞれの診断における1つまたは1つよりも多いタンパク質バイオマーカーの非存在または検出が考慮に入れられる、工程を含む。
【0017】
別の好ましい実施形態において、肝臓酵素障害を発症する危険性がある患者を検出する方法は、被験体のサンプルにおける少なくとも1つまたは1つよりも多いバイオマーカーの非存在を決定する工程;および、1つまたは1つよりも多いバイオマーカーの検出または検出の非存在を、肝臓酵素障害を発症する危険性がある患者の診断と相関させる工程であって、相関では、正常な被験体と比較して、それぞれの診断における1つまたは1つよりも多いバイオマーカーの検出または検出の非存在が考慮に入れられ、1つまたは1つよりも多いタンパク質マーカーが、アルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS)、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、硫化(エストロゲンスルホトランスフェラーゼ(EST)、スクアレンシンターゼ(SQS)、肝臓グリコーゲンホスホリラーゼ(GP)、カルバモイルリン酸シンセターゼ(CPS−1)、α−エノラーゼ1、グルコース調節タンパク質(GRP)およびスペクトリン分解生成物から選択される、工程;および、1つまたは1つよりも多いタンパク質バイオマーカーの検出または検出の非存在を、危険性がある肝臓酵素障害患者の診断と相関させる工程であって、相関では、正常な被験体と比較して、それぞれの診断における1つまたは1つよりも多いタンパク質バイオマーカーの検出の非存在が考慮に入れられる、工程を含む。
【0018】
本発明の他の局面が下記に記載される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
詳細な説明
肝臓傷害を診断する高感度かつ特異的なバイオマーカーのパネルが提供される。具体的には、ASS、ASL、SQSおよびESTが、肝臓の虚血/再灌流により誘導される傷害の病理学的に関連したバイオマーカーであることが示される。これらの研究において、肝臓の虚血/再灌流傷害の新規なバイオマーカーを最初に発見するための肝臓プロテミック法が用いられた。ASS、ASL、SQLおよびESTが、実験的な虚血/再灌流により誘導される肝臓傷害の非常に早い段階で血漿および血清に存在し、従って、肝臓移植のモニターリングを含めて、大きい診断的および予後的な価値を有する。
【0020】
定義
本発明を示す前に、本明細書中下記において使用されるいくつかの用語の定義を示すことがその理解に役立ち得る。
【0021】
表現「肝臓傷害」は本明細書中では最も広い意味で使用され、内的要因または外的要因またはそれらの組み合わせから直接的または間接的に生じる任意の構造的または機能的な肝臓傷害を示す。肝臓傷害は、虚血、肝毒性化合物に対する暴露、放射線暴露、機械的な肝臓傷害、遺伝的素因、ウイルス感染、アルコールおよび薬物乱用、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性慢性肝炎など)をはじめとする数多くの要因によって、また、タンパク質(例えば、アクチビンおよびTGF−βなど)の上昇したインビボレベルの結果として誘導され得る。用語「肝臓傷害」には、移植された肝臓の拒絶が含まれる。
【0022】
本発明に関連して使用される用語「防止」には、予測された肝臓損傷の結果を完全または部分的に阻止すること、および、既に生じている肝臓損傷の進行の阻止または緩和化が含まれる。存在している肝臓損傷が完全または部分的に反転し得ることが予想されるとしても、このことはこの定義のもとでの要件ではない。
【0023】
用語「予防効果的な量」は、本明細書中上記で定義されるような防止を達成することにおいて効果的である量を示すために使用される。
【0024】
「肝臓損傷を発症する危険性がある」患者には、肝臓損傷を誘導する可能性を有することが知られている何らかの要因にさらされることが予想されるそのような患者、または、そのような要因にさらされているそのような患者が含まれる。これには、(治療の一部としてであるか、または、偶発的な暴露によるものであるかは問わず)肝毒性化合物にされられること、または、安全であると従来的には見なされていた線量で、もしくは、安全でないと従来的には見なされていた線量で放射線にさらされること、または、肝臓損傷を誘導することが知られている、疾患の処置において有用な何らかの臨床的治療にさらされることが含まれる。この定義にはさらに、鈍的外傷、銃創または手術を含めて、身体的外傷による実際の持続した肝臓傷害または可能性のある持続した肝臓傷害が含まれる。肝臓損傷を発症する危険性がある患者には、代謝の生まれながらの異常を有し、肝臓損傷の誘導に対する遺伝的素因を有するそのような患者、または、遺伝要因、年齢、性別、栄養状態、他の薬物に対する暴露、および、全身性疾患を含む他の危険性因子に起因する肝臓損傷を受けやすいそのような哺乳動物患者が含まれる。肝臓損傷を発症する危険性がある患者にはまた、ウイルス(例えば、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎またはE型肝炎など)または自己免疫性慢性肝炎にさらされることが予想されるそのような患者、あるいは、ウイルス(例えば、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎またはE型肝炎など)または自己免疫性慢性肝炎にさらされているそのような患者が含まれる。
【0025】
「虚血」は、組織への酸素化血液の供給が低下または中断するときに生じる。
【0026】
「マーカー」または「バイオマーカー」は本明細書中では交換可能に使用され、本発明の関連では、対照被験体(例えば、陰性の診断を有する人、正常または健康な被験体)から採取された比較可能なサンプルと比較して、肝臓傷害および/または肝臓障害を有する患者から採取されたサンプルに示差的に存在する(特定の見かけの分子量を有する)ポリペプチドを示す。
【0027】
酵素の「活性」は、一定の温度およびpHにおいて単位時間あたりに生成した生成物の量である。
【0028】
酵素の「比活性」は、1mgのタンパク質について単位時間あたりに生成した生成物の量である。
【0029】
「基質」は、酵素が触媒する標的タンパク質である。国際生化学連合(I.U.B.)は、酵素名が、作用した基質と、触媒される反応のタイプとの両方を示すことを推奨する酵素命名法の基準を提案した。
【0030】
本発明の関連での「相補的」は、1つのバイオマーカーを単独で検出することと比較して、一緒に検出されたときには増大した感度および特異性をもたらす少なくとも2つのバイオマーカーの検出を示す。
【0031】
表現「示差的に存在する」は、対照被験体と比較して、例えば、肝臓障害を有する患者から採取されたサンプルに存在するマーカーの量および/または頻度における差を示す。例えば、マーカーは、対照被験体のサンプルと比較して、肝臓傷害を有する患者のサンプルにおいて上昇したレベルまたは低下したレベルで存在するポリペプチドであり得る。あるいは、マーカーは、対照被験体のサンプルと比較して、患者のサンプルにおいてより大きい頻度またはより低い頻度で検出されるポリペプチドであり得る。マーカーは、量、頻度または両方において示差的に存在し得る。
【0032】
ポリペプチドは、一方のサンプルにおけるポリペプチドの量が他方のサンプルにおけるポリペプチドの量と統計学的に有意に異なるならば、2つのサンプルの間で示差的に存在する。例えば、ポリペプチドが、他方のサンプルに存在するよりも少なくとも約120%多く、少なくとも約130%多く、少なくとも約150%多く、少なくとも約180%多く、少なくとも約200%多く、少なくとも約300%多く、少なくとも約500%多く、少なくとも約700%多く、少なくとも約900%多く、または、少なくとも約1000%多く存在するならば、あるいは、ポリペプチドが一方のサンプルにおいて検出可能であり、他方のサンプルにおいて検出できないならば、ポリペプチドは2つのサンプルの間で示差的に存在する。
【0033】
代替として、または、加えて、肝臓傷害および/または肝臓障害に罹患している患者のサンプルにおいてポリペプチドを検出する頻度が、対照サンプルの場合よりも統計学的に有意に大きいか、または、低いならば、ポリペプチドは2組のサンプルの間で示差的に存在する。例えば、ポリペプチドが、一方の組のサンプルにおいて、もう一方の組のサンプルにおけるよりも、少なくとも約120%、少なくとも約130%、少なくとも約150%、少なくとも約180%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約500%、少なくとも約700%、少なくとも約900%、または、少なくとも約1000%大きい頻度または低い頻度で観測されるならば、ポリペプチドは2組のサンプルの間で示差的に存在する。
【0034】
「診断(的)」は、病理学的状態の存在または性質を特定することを意味する。診断方法はその感度および特異性において異なる。診断アッセイの「感度」は、試験が陽性である疾患個体の百分率である(「真の陽性個体」の割合)。アッセイによって検出されない疾患個体は「偽陰性個体」である。疾患を有さず、かつ、アッセイにおいて試験が陰性である被験体は「真の陰性個体」と呼ばれる。診断アッセイの「特異性」は、1−偽陽性率であり、この場合、「偽陽性」率は、試験が陽性である、疾患を有しない被験体の割合として定義される。特定の診断方法により、状態の確定診断がもたらされないことがあるが、その方法が、診断を助ける陽性の指示をもたらすならば、その診断方法は十分である。
【0035】
マーカーの「試験量」は、試験されているサンプルに存在するマーカーの量を示す。試験量は絶対的な量(例えば、μg/ml)または相対的な量(例えば、シグナルの相対的強度)のどちらでも可能である。
【0036】
マーカーの「診断量」は、肝臓傷害および/または肝臓障害の診断と一致する、被験体のサンプルにおけるマーカーの量を示す。診断量は絶対的な量(例えば、μg/ml)または相対的な量(例えば、シグナルの相対的強度)のどちらでも可能である。
【0037】
マーカーの「対照量」は、マーカーの試験量に対して比較されるべき任意の量またはある範囲の量であり得る。例えば、マーカーの対照量は、肝臓傷害および/または肝臓障害を有しない人におけるマーカーの量が可能である。対照量は絶対的な量(例えば、μg/ml)または相対的な量(例えば、シグナルの相対的強度)のどちらでも可能である。
【0038】
「プローブ」は、気相イオン分光計に取り外し可能に挿入することができるデバイスを示し、検出用マーカーを提示するための表面を有する基材を含む。プローブは1つだけの基材または複数の基材を含むことができる。
【0039】
「基材」または「プローブ基材」は、吸着剤が(例えば、付着、沈積などによって)提供され得る固相を示す。
【0040】
「吸着剤」は、マーカーを吸着することができる任意の物質を示す。用語「吸着剤」は、マーカーがさらされる単一物質(「モノプレクッス吸着剤」)(例えば、化合物または官能基)、および、マーカーがさらされる多数の異なる物質(「マルチプレックス吸着剤」)の両方を示すために本明細書中では使用される。マルチプレックス吸着剤における吸着剤物質は「吸着剤種」として示される。例えば、プローブ基材におけるアドレス指定可能な場所は、異なる結合特性を有する多くの異なる吸着剤種(例えば、アニオン交換物質、金属キレーターまたは抗体)によって特徴づけられるマルチプレックス吸着剤を含むことができる。基材物質自体もまた、マーカーを吸着することに寄与することができ、従って、「吸着剤」の一部であると見なされる場合がある。
【0041】
「吸着」または「保持」は、溶出剤(選択性閾値調節剤)または洗浄液による洗浄の前または後のいずれかでの、吸着剤と、マーカーとの間での検出可能な結合を示す。
【0042】
「溶出剤」または「洗浄液」は、吸着剤へのマーカーの吸着を媒介させるために使用することができる作用因を示す。溶出剤および洗浄液はまた、「選択性閾値調節剤」として示される。溶出剤および洗浄液は、非結合物質をプローブ基材表面から洗浄および除去するために使用することができる。
【0043】
「分割する」、「分割」または「マーカーの分割」は、サンプルにおける少なくとも1つのマーカーを検出することを示す。分割は、分離およびその後の分別検出によってサンプルにおける多数のマーカーを検出することを包含する。分割は、混合物におけるすべての他の生体分子からの1つまたは1つよりも多いマーカーの完全な分離を必要としない。むしろ、少なくとも1つのマーカーと他の生体分子との識別を可能にする任意の分離が十分である。
【0044】
「気相イオン分光計」は、サンプルが気化およびイオン化されるときに形成されたイオンの質量対電荷比に変換することができるパラメーターを測定する装置を示す。一般には、目的とするイオンは単電荷を有しており、質量対電荷比は単に質量として示されることが多い。気相イオン分光計には、例えば、質量分析計、イオン移動度分光計および総イオン電流測定デバイスが含まれる。
【0045】
「質量分析計」は、注入系、イオン化源、イオン光学アセンブリー、質量アナライザーおよび検出器を含む気相イオン分析計を示す。
【0046】
「レーザー脱離質量分析計」は、分析物を脱離、気化およびイオン化するための手段としてレーザーを使用する質量分析計を示す。
【0047】
「検出する」は、検出すべき対象物の存在、非存在または量を特定することを示す。
【0048】
用語「ポリペプチド」、用語「ペプチド」および用語「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを示すために本明細書中では交換可能に使用される。これらの用語は、天然に存在するアミノ酸ポリマーと同様に、1つまたは1つよりも多いアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸のアナログまたは模倣体であるアミノ酸ポリマーに対して適用される。ポリペプチドは、例えば、糖タンパク質を形成するための炭水化物残基の付加によって修飾され得る。用語「ポリペプチド」、用語「ペプチド」および用語「タンパク質」には、糖タンパク質が、非糖タンパク質と同様に含まれる。
【0049】
「検出可能な成分」または「標識」は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的または化学的な手段によって検出可能である組成物を示す。例えば、有用な標識には、32P、35S、蛍光性色素、高電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAにおいて一般に使用されるような酵素)、ビオチン−ストレプトアビジン、ジオキシゲニン、抗血清またはモノクローナル抗体が入手可能であるハプテンおよびタンパク質、または、標的に対して相補的な配列を有する核酸分子が含まれる。検出可能な成分は、多くの場合、サンプルにおける結合した検出可能な成分の量を定量するために使用することができる測定可能なシグナル(例えば、放射能シグナル、発色シグナルまたは蛍光シグナルなど)を生じさせる。シグナルの定量が、例えば、シンチレーション計数、デンシトメトリーまたはフローサイトメトリーによって達成される。
【0050】
「抗体」は、エピトープ(例えば、抗原)と特異的に結合し、また、エピトープ(例えば、抗原)を特異的に認識する、1つまたは1つよりも多い免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされるポリペプチドリガンドまたはその断片を示す。認識されている免疫グロブリン遺伝子には、カッパおよびラムダの軽鎖定常領域遺伝子、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロンおよびミューの重鎖定常領域遺伝子、ならびに、無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。抗体は、例えば、無傷の免疫グロブリンとして、または、様々なペプチダーゼによる消化によって作製される数多くの十分に特徴づけられた断片として存在する。これには、例えば、Fab’断片およびF(ab’)断片が含まれる。本明細書中で使用される用語「抗体」にはまた、完全な抗体の修飾によって作製される抗体断片、または、組換えDNA方法論を使用して新規に合成される抗体が含まれる。用語「抗体」にはまた、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体または単鎖抗体が含まれる。抗体の「Fc」部分は、1つまたは1つよりも多い重鎖定常領域ドメイン(CH、CHおよびCH)を含み、しかし、重鎖可変領域を含まない、免疫グロブリン重鎖のそのような部分を示す。
【0051】
「イムノアッセイ」は、抗原(例えば、マーカー)と特異的に結合させるために抗体を使用するアッセイである。イムノアッセイは、抗原を単離、標的化および/または定量するために特定の抗体の特異的な結合特性を使用することによって特徴づけられる。
【0052】
表現、抗体に「特異的(または選択的)に結合する」、または、「との特異的(または選択的)な免疫反応性を有する」は、タンパク質またはペプチドに関連するとき、タンパク質および他の生物学的物質の不均一な集団におけるタンパク質の存在を決定する結合反応を示す。従って、示されたイムノアッセイ条件のもとでは、指定された抗体はバックグランドの少なくとも2倍で特定のタンパク質に結合し、サンプルに存在する他のタンパク質には著しい量で実質的に結合しない。そのような条件のもとでの抗体に対する特異的な結合は、特定のタンパク質についてのその特異性について選択される抗体を必要とし得る。例えば、特定の種(例えば、ラット、マウスまたはヒトなど)に由来するマーカーのアルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS)に対して惹起されたポリクローナル抗体を、マーカーASSとの特異的な免疫反応性を有し、かつ、マーカーASSの多型変化体および対立遺伝子体を除いて、他のタンパク質との特異的な免疫反応性を有しないそのようなポリクローナル抗体のみを得るために選択することができる。この選択は、マーカーのASS分子と交差反応する抗体を他の化学種から取り出すことによって達成することができる。様々なイムノアッセイ形式を、特定のタンパク質との特異的な免疫反応性を有する抗体を選択するために使用することができる。例えば、固相ELISAイムノアッセイが、タンパク質との特異的な免疫反応性を有する抗体を選択するために日常的に使用される(例えば、特異的な免疫反応性を明らかにするために使用することができるイムノアッセイ形式および条件の説明については、Harlow&Lane、Antibodies,A Laboratory Manual(1988)を参照のこと)。典型的には、特異的または選択的な反応はバックグラウンドシグナルまたはバックグラウンドノイズの少なくとも2倍であり、より典型的にはバックグラウンドの10倍〜100倍を超える。
【0053】
「エネルギー吸収分子」または「EAM」は、エネルギーを質量分光計においてイオン化源から吸収し、それにより、分析物(例えば、マーカー)のプローブ表面からの脱離を助ける分子を示す。分析物のサイズおよび性質に依存して、エネルギー吸収分子は場合に応じて使用することができる。MALDIにおいて使用されるエネルギー吸収分子はしばしば、「マトリックス」と呼ばれる。ケイ皮酸誘導体、シナピン酸(「SPA」)、シアノヒドロキシケイ皮酸(「CHCA」)およびジヒドロ安息香酸がしばしば、生物有機化学分子のレーザー脱離におけるエネルギー吸収分子として使用される。
【0054】
「サンプル」は本明細書中ではその最も広い意味で使用される。ポリヌクレオチド、ポリペプチド、ペプチド、抗体断片およびその誘導体を含むサンプルは、体液;細胞調製物の可溶性分画物、または、細胞が成長した培地;細胞から単離または抽出された染色体、オルガネラまたは膜;溶液中に存在するか、または、基材に結合したゲノムDNA、RNAまたはcDNA、ポリペプチドまたはペプチド;細胞;組織;組織プリント;フィンガープリント、皮膚または毛;それらの断片および誘導体を含むことができる。
【0055】
「実質的に精製された(される)」は、それらの天然の環境から取り出され、また、単離または分離され、かつ、それらが天然において会合する他の成分を少なくとも約60%含まない核酸分子またはタンパク質(好ましくは、約75%含まない核酸分子またはタンパク質、最も好ましくは、約90%含まない核酸分子またはタンパク質)を示す。
【0056】
「基材」は、核酸分子またはタンパク質が結合する任意の硬質支持体または半硬質支持体を示し、メンブラン、フィルター、チップ、スライドガラス、ウエハー、繊維、磁石ビーズまたは非磁石ビーズ、ゲル、毛細管または他の管材、プレート、ポリマー、ならびに、ウェル、溝、ピン、流路および細孔を含む様々な表面形態を有するマイクロ粒子を包含する。
【0057】
本明細書中で使用される用語「断片またはセグメント」は、核酸配列、遺伝子またはポリペプチドに適用される場合、通常、長さが少なくとも5個の連続した核酸塩基(核酸配列または遺伝子の場合)またはアミノ酸(ポリペプチドの場合)であり、典型的には、長さが少なくとも約10個の連続した核酸塩基またはアミノ酸であり、より典型的には、長さが少なくとも約20個の連続した核酸塩基またはアミノ酸であり、通常的には、長さが少なくとも約30個の連続した核酸塩基またはアミノ酸であり、好ましくは、長さが少なくとも約40個の連続した核酸塩基またはアミノ酸であり、より好ましくは、長さが少なくとも約50個の連続した核酸塩基またはアミノ酸であり、一層より好ましくは、長さが少なくとも約60個〜80個またはそれ以上の連続した核酸塩基またはアミノ酸である。本明細書中で使用される「重複する断片」は、核酸またはタンパク質のアミノ末端から始まり、その核酸またはタンパク質のカルボキシル末端で終わる連続した核酸断片またはペプチド断片を示す。それぞれの核酸断片またはペプチド断片は、隣りの核酸断片またはペプチド断片と共通する少なくとも約1つの連続する核酸位置またはアミノ酸位置を有し、より好ましくは、少なくとも約3つの連続する核酸塩基またはアミノ酸位置を共通して有し、最も好ましくは、少なくとも約10の連続する核酸塩基またはアミノ酸位置を共通して有する。
【0058】
核酸の関連での有意な「断片」は少なくとも約17ヌクレオチドの連続したセグメントであり、一般には少なくとも20ヌクレオチド、より一般には少なくとも23ヌクレオチド、通常の場合には少なくとも26ヌクレオチド、より通常の場合には少なくとも29ヌクレオチド、多くの場合には少なくとも32ヌクレオチド、より多くの場合には少なくとも35ヌクレオチド、典型的には少なくとも38ヌクレオチド、より典型的には少なくとも41ヌクレオチド、通常的には少なくとも44ヌクレオチド、より通常的には少なくとも47ヌクレオチド、好ましくは少なくとも50ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも53ヌクレオチドの連続したセグメントであり、特に好ましい実施形態では少なくとも56ヌクレオチドまたはそれ以上である。
【0059】
本明細書中で使用される用語「ポリペプチド」または用語「ペプチド」は、本明細書中に示される全長のタンパク質を含めて、任意の長さであるアミノ酸鎖を包含する。
【0060】
本明細書中で使用される場合、「より長いアミノ配列を有するペプチドまたはエピトープ」は、本明細書中に示される全長のタンパク質を含めて、任意の長さであるアミノ酸鎖を包含する。
【0061】
本明細書中で使用される場合、ポリペプチドの「変化体」または「誘導体」は、1つまたは1つよりも多いアミノ酸残基によって変化させられるアミノ酸配列を示す。変化体は、置換されたアミノ酸が、類似する構造的性質または化学的性質を有する「保存的」変化(例えば、イソロイシンによるロイシンの置換)を有する場合がある。より希にではあるが、変化体は、「非保存的」変化(例えば、トリプトファンによるグリシンの置換)を有する場合がある。類似する小さい変化にはまた、アミノ酸の欠失または挿入またはそれらの両方が含まれる場合がある。どのアミノ酸残基が、生物学的活性を無効にすることなく、置換、挿入または欠失され得るかを決定する際の指針が、この分野では広く知られているコンピュータープログラム(例えば、LASERGENEソフトウエア(DNASTAR))を使用して見出され得る。
【0062】
得られるポリペプチドは一般に、互いに比較して著しいアミノ酸同一性を有する。多型変化体は、所与の種の個体の間での特定の遺伝子のポリヌクレオチド配列における変化である。多型変化体はまた、ポリヌクレオチド配列が1個の塩基によって変化する「一ヌクレオチド多型」(SNP)または一塩基変異を含む場合がある。
【0063】
「ストリンジェンシー」は、二重鎖を解離させる、核酸が受ける条件(例えば、温度、イオン強度、および、添加剤(例えば、ホルムアミドなど)の濃度など)の組み合わせが意味される。二重鎖を解離させる可能性がより大きい条件は、「より大きいストリンジェンシー」と呼ばれる(例えば、より高い温度、より低いイオン強度、および、ホルムアミドのより大きい濃度)。
【0064】
大きい選択性が要求される適用のためには、典型的には、比較的ストリンジェントな条件を、ハイブリッドを形成させるために用いることが望まれる。例えば、比較的低い塩条件および/または高い温度条件(約50℃〜約70℃の温度で約0.02M〜約0.10MのNaClによって提供される条件など)が選択される。
【0065】
特定の適用のためには、より低いストリンジェンシー条件が要求されることが理解される。このような条件のもとでは、たとえ、プローブ鎖および標的鎖の配列が完全に相補的でなく、1つまたは1つよりも多い位置でミスマッチを有するとしても、ハイブリダイゼーションが生じ得る。条件は、塩濃度を増大させ、また、温度を低下することによって、あまりストリンジェントでないようにすることができる。例えば、中程度のストリンジェンシー条件を、約37℃〜約55℃の温度で約0.1M〜約0.25MのNaClによって提供することができ、一方、低いストリンジェンシー条件を、約20℃〜約55℃の範囲での温度で約0.15M〜約0.9Mの塩によって提供することができる。従って、ハイブリダイゼーション条件は、所望する結果に依存して容易に操作することができる。
【0066】
表現「ハイブリダイゼーション条件」およびその文法的同等表現は、維持期間とともに使用されるとき、混合物における反応物および付随する試薬の濃度に関連して、ハイブリダイゼーション反応混合物を、ポリヌクレオチドプローブが標的配列とアニーリングして、典型的には核酸二重鎖を形成することを可能するために十分な時間、温度、pHの条件に供することを示す。ハイブリダイゼーションを達成するために要求されるそのような時間、温度およびpHの条件は、この分野では広く知られているように、ハイブリダイゼーションさせられるポリヌクレオチドプローブの長さ、ポリヌクレオチドプローブと標的との間での相補性の程度、ポリヌクレオチドのグアニジン・シトシン含有量、所望されるハイブリダイゼーションのストリンジェンシー、および、ハイブリダイゼーションの速度論に影響を及ぼし得るようなハイブリダイゼーション反応混合物における塩またはさらなる試薬の存在に依存する。所与のハイブリダイゼーション反応混合物についてハイブリダイゼーション条件を最適化するための様々な方法がこの分野では広く知られている。
【0067】
肝臓のバイオマーカー
好ましい実施形態において、アルギニン/尿素/一酸化窒素サイクルの1つまたは1つよりも多い酵素、硫化酵素およびスペクトリン分解関連生成物の検出により、肝臓傷害が診断される。これらのマーカーの例には、アルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS)およびアルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、硫化(エストロゲンスルホトランスフェラーゼ(EST)、スクアレンシンターゼ(SQS)、肝臓グリコーゲンホスホリラーゼ(GP)、カルバモイルリン酸シンセターゼ(CPS−1)、α−エノラーゼ1、グルコース調節タンパク質(GRP)およびスペクトリン分解生成物が含まれるが、これらに限定されない。
【0068】
別の好ましい実施形態において、1つまたは1つよりも多いバイオマーカーの検出を、肝臓傷害の知られている診断試験と相関させることができる。例には、肝臓機能試験−有機アニオン(例えば、ビリルビン、インドシアニングリーン(ICG)、スルホブロモフタレイン(BSP)および胆汁酸など)の肝クリアランスの評価;ガラクトースクリアランスおよびICGクリアランスの測定による肝血流量の評価;ならびに、アミノピリン呼吸試験およびカフェインクリアランス試験の使用による肝ミクロソーム機能の評価が含まれる。
【0069】
好ましい実施形態において、バイオマーカーの検出により、肝臓傷害が診断される。肝臓傷害は任意の要因の結果である。例えば、肝臓虚血性傷害;薬物の過敏性反応、胆汁うっ滞、および、血管内皮に対する傷害をはじめとする、直接的な細胞毒性を含む肝毒性化合物によって誘導される肝臓損傷(Sinclair他、Textbook of Internal Medicine、569〜575(1992)(編者、Kelley;発行者、J.B.Lippincott Co.)。
【0070】
ある種の治療剤を含めて、数多くの肝毒性化合物が細胞毒性を誘導する。肝毒性化合物は、肝臓の細胞毒性を、直接の化学的攻撃によって、または、毒性代謝産物の産生によって生じさせ得る。肝毒性の正確な機構は不明であるが、還元的代謝の生成物が、細胞の高分子化合物に結合し、脂質の過酸化、ならびに、薬物代謝酵素および他の酵素の不活性化を引き起こす非常に反応性の化学種である。膜の傷害はミトコンドリアおよび滑面小胞体からのカルシウムの放出を引き起こし、カルシウムの細胞質ゾルでの蓄積を正常な場合には防止するカルシウムイオンポンプを妨害するようである。生じたカルシウム蓄積による細胞代謝に対する悪影響、カリウムおよび酵素の細胞質からの喪失、ならびに、ミトコンドリアの傷害から生じる不可欠なエネルギーの喪失はすべてが肝組織の壊死の一因となる。
【0071】
多くの肝毒性化合物が摂取者の小さい割合で肝臓損傷を予測できないほどに生じさせている。一部の患者では、肝臓損傷は過敏性反応と呼ばれ、患者が、発熱、発疹および好酸球増加症を示し、また、その薬物が再投与されたときに症状の再発を有する薬物反応の過敏性反応と似ている。他の状況では、傷害についての機構は不明であり、肝毒性代謝産物の産生または蓄積を許す感受性患者における異常な代謝を表す場合がある。
【0072】
細胞毒性を直接の化学的攻撃によって誘導するそのような薬物には、下記が含まれる:麻酔剤、例えば、エンフルラン、フルロキセン、ハロタンおよびメトキシフルランなど;神経精神作用剤、例えば、コカイン、ヒドラジド系薬剤、メチルフェニダートおよび三環系薬剤など;抗痙攣剤、例えば、フェニトインおよびバルプロ酸など;鎮痛剤、例えば、アセトアミノフェン、クロルゾキサゾン、ダントロレン、ジクロフェナク、イブプロフェン、インドメタシン、サリチル酸系薬剤、トルメチンおよびゾキサゾラミンなど;ホルモン、例えば、アセトヘキサミド、カルブタミド、グリピジド、メタヘキサミド、プロピルチオウラシル、タモキシフェン、ジエチルスチルベストロールなど;抗菌剤、例えば、アンホテリシンB、クリンダマイシン、ケトコナゾール、メベンダゾール、メトロニダゾール、オキサシリン、パラアミノサリチル酸、ペニシリン、リファンピシン、スルホンアミド系薬剤、テトラサイクリンおよびジドブジンなど;心臓血管薬物、例えば、アミオダロン、ジルチアゼム、a−メチルドーパ、メキシレチン、ヒドラザリン、ニコチン酸、パパベリン、ペルへキシリン、プロカインアミド、キニジンおよびトカインアミドなど;ならびに免疫抑制剤および抗新生物剤、例えば、アスパラギナーゼ、シスプラチン、シクロホスファミド、ダカルバジン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、メトトレキサート、ミトラマイシン、6−MP、ニトロソウレア系薬剤、タモキシフェン、チオグアニンおよびビンクリスチンなど;その他の薬物、例えば、ジスルフィラム、ヨージドイオン、オキシフェニサチン、ビタミンAおよびパラアミノ安息香酸など。
【0073】
過敏性反応を肝臓において生じさせるそのような肝毒性化合物には、下記が含まれる:フェニトイン、パラアミノサリチル酸、クロルプロマジン、スルホンアミド系薬剤、エリスロマイシンエストラート、イソニアジド、ハロタン、メチルドーパおよびバルプロ酸など。
【0074】
胆汁うっ滞(胆汁の流れにおける停止)を誘導する肝毒性化合物はいくつかの形態を取ることがある。小葉中心性胆汁うっ滞には門脈の炎症性変化が付随する。胆管の変化がいくつかの薬物(例えば、エリスロマイシンなど)に関して報告されており、一方で、純粋な小管性胆汁うっ滞は他の薬物(例えば、タンパク同化ステロイドなど)に特徴的である。慢性的胆汁うっ滞がメチルテストステロンおよびエストラジオールのような薬物に関係づけられている。
【0075】
胆汁うっ滞性疾患を誘導するそのような肝毒性化合物には、下記が含まれる:避妊ホルモン、アンドロゲン性ステロイド、タンパク同化ステロイド、アセチルサリチル酸、アザチオプリン、ベンゾジアゼピン、ケノデオキシコール酸、クロルジアゼポキシド、エリスロマイシンエストラート、フルフェナジン、フロセミド、グリセオフルビン、ハロペリドール、イミプラミン、6−メルカプトプリン、メチマゾール、メトトレキサート、メチルドーパ、メチレンジアミン、メチルテストステロン、ナプロキセン、ニトロフラントイン、ペニシラミン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、プロマジン、チオベンダゾール、チオリダジン、トルブタミド、トリメトプリムスルファメトキサゾール、ヒ素、銅およびパラコート。
【0076】
いくつかの薬物もまた、主に胆汁うっ滞性ではあるが、肝毒性を生じさせ得るし、従って、それらが引き起こす肝臓傷害は混合型である。混合型の肝臓傷害を引き起こす薬物には、例えば、下記が含まれる:クロルプロマジン、フェニルブタゾン、ハロタン、クロルジアゼポキシド、ジアゼパム、アロプリノール、フェノバルビタール、ナプロキセン、プロピルチオウラシル、クロラムフェニコール、トリメトプリムスルファメトキサズキソール、アムリノン、ヂソピラミド、アザチオプリン、シメチジンおよびラニチジン。
【0077】
肝臓の様々な血管病変(これには、肝静脈の血栓症、肝細静脈の閉塞または静脈閉塞症(VOD)、および、肝臓紫斑病が含まれる)が様々な薬物によって生じ得る。加えて、洞様毛細血管の拡張、洞様毛細血管周囲線維症および肝門脈硬化症を含む様々な病変が生じ得る。中間帯および中心周囲の洞様毛細血管拡張が経口避妊治療の合併症として最初に報告された。肝臓紫斑病は、内皮バリアを通過する赤血球の漏出、それに続く洞様毛細血管周囲線維症から生じる大きな血液充填腔からなる状態である。肝臓紫斑病が、経口避妊薬、タンパク同化ステロイド、アザチオプリンおよびダナゾールを服用する患者で報告されている。中心肝細静脈の傷害および閉塞もまた、ピロリジンアルカロイド(例えば、ブッシュティーなど)の摂取に関連づけられることが知られている。最初の病変は、細静脈内径の進行性低下が付随する中心部壊死である。これらの病変のすべてが、薬物を止めたとき、ほんの部分的に反転可能になることがあるだけであり、肝硬変が発症し得る。
【0078】
いくつかのタイプの良性および悪性の肝新生物が肝毒性化合物の投与から生じ得る。腺腫、すなわち、出産可能年齢の女性に限定される病変が、避妊ステロイドの使用に関係づけられ、その危険性が使用継続期間とともに増大する。肝細胞ガンもまた、再生不良性貧血または下垂体機能低下症のためにアンドロゲン性ホルモンを服用する患者において見られる場合がある。
【0079】
肝病変を引き起こすことが知られている肝毒性化合物には、下記が含まれる:避妊ステロイド、ピロリジンアルカロイド、ウレタン、アザチオプリン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、マイトマイシン、BCNU、ビンクリスチン、アドリアマイシン、静脈注射ビタミンE、タンパク同化アンドロゲン性ステロイド、アザチオプリン、酢酸メドロキシプロゲステロン、硫酸エストロン、タモキシフェン、無機ヒ素化合物、二酸化トリウム、ビタミンA、メトトレキサート、メチルアンフェタミン塩酸塩、ビタミンA、コルチコステロイド、二酸化トリウムおよびラジウム療法。
【0080】
他の要因によって引き起こされる肝臓損傷は通常、類似する形態を取る。様々な肝臓損傷を、その原因が、化合物の肝毒性、放射線治療、遺伝的素因、機械的傷害、または、そのような要因および他の要因の任意の組み合わせのいずれであろうとも、本明細書中に開示されるバイオマーカーによって検出することができる。
【0081】
他の好ましい実施形態において、肝臓傷害(例えば、虚血による傷害など)の診断としてのバイオマーカーの検出は既存の検査と相関させることができる。これらには、アルカリホスファターゼ(AP);5’−ヌクレオチダーゼ(5’−ND);およびa−グルタミルトランスペチダーゼ(G−GT);ロイシンアミノペプチダーゼ(LAP);アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST);アラニントランスアミナーゼ(ALT);フルクトース−1,6−二リン酸アルドラーゼ(ALD);乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH);イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(ICDH);オルニチン−カルバモイルトランスフェラーゼ(OCT);およびソルビトールデヒドロゲナーゼ(SDH);アルギナーゼ;グアナーゼ;クレアチンホスホキナーゼ(CPK);コリンエステラーゼ(ChE);プロコラーゲンIII型ペプチドレベル(PIIIP);肝脳症におけるアンモニア血中レベル;壊死およびヘパトーマにおける様々なレベルでのリガンド;肝内皮細胞損傷によるヒアルロン酸レベル;ヘパトーマを検出するためのα−1−フェトプロテイン(AFP)レベル;肝臓へのガン転移を検出するためのガン胎児性抗原(CEA)レベル;様々な細胞成分(例えば、ミトコンドリアタンパク質、ならびに、核タンパク質および特異的な肝臓膜タンパク質など)に対する抗体の上昇;および、タンパク質(例えば、アルブミン、グロビンなど)、アミノ酸、コレステロールおよび他の脂質の検出が含まれるが、これらに限定されない。また、肝臓生検物から得られる様々な無機物質、代謝産物および酵素の生化学的分析が、遺伝的肝臓障害、後天的肝臓障害および実験的に誘導された肝臓障害におけるさらなるバイオマーカーを特定することにおいて有用であり得る。
【0082】
他の実施形態において、検出されたバイオマーカーの量は、肝臓傷害をさらに評価するために肝臓機能試験に対して相関させることができる。肝臓機能試験には、下記が含まれる:有機アニオン(例えば、ビリルビン、インドシアニングリーン(ICG)、スルホブロモフタレイン(BSP)および胆汁酸など)の肝クリアランスの評価;ガラクトースクリアランスおよびICGクリアランスの測定による肝血流量の評価;および、アミノピリン呼吸試験およびカフェインクリアランス試験の使用による肝ミクロソーム機能の評価。例えば、血清ビリルビンを、実質の肝臓疾患において見られるように、黄疸の存在および重症度を確認するために、また、高ビリルビン血症の程度を明らかにするために測定することができる。アミノトランスフェラーゼ(トランスアミナーゼ)の上昇は活発な肝細胞損傷を反映し、一方、アルカリホスファターゼの上昇が胆汁うっ滞および肝浸潤物とともに見出される(Isselbacher,K.およびPodolsky,D.、Hartison’s Principles of Internal Medicine、第12版、Wilson他編、2:1301〜1308(1991))。
【0083】
酵素欠損症
別の好ましい実施形態において、肝臓酵素(例えば、ASS)の検出がないこと(すなわち、肝臓酵素の非存在)により、肝臓酵素疾患が診断される。例えば、ASSの欠如(アルギニノコハク酸シンセターゼ欠損症)は遺伝的疾患(カエデシロップ尿病(MSUD)およびシトルリン血症)である。健康な対照被験体におけるベースラインレベルが本発明の方法により検出可能であり、健康な対照被験体におけるベースラインレベルは、そのような状態に冒された人では正常値よりも低いことが予想される。1つの実施形態において、本発明の組成物および方法により、危険性のある個体が特定される。この特定は、サンプル(例えば、血液、血清および羊水など)を取り出すことによって、家族、妊婦において決定され得る。このことは、乳幼児または胎児における危険性の特定および/または疾患の診断を可能にする。
【0084】
好ましい実施形態において、アルギニン/尿素/一酸化窒素サイクルの1つまたは1つよりも多い酵素、硫化酵素およびスペクトリン分解関連生成物の非存在の検出により、肝臓酵素欠損に関連する疾患が診断される。これらのマーカーの例には、アルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS)およびアルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、硫化(エストロゲンスルホトランスフェラーゼ(EST)、スクアレンシンターゼ(SQS)、肝臓グリコーゲンホスホリラーゼ(GP)、カルバモイルリン酸シンセターゼ(CPS−1)、α−エノラーゼ1、グルコース調節タンパク質(GRP)およびスペクトリン分解生成物が含まれるが、これらに限定されない。
【0085】
カエデシロップ尿病:カエデシロップ尿病(MSUD)または分枝鎖ケト酸尿症はパネスニック(panethnic)分布の常染色体劣性代謝傷害である。MSUDについての新生児スクリーニングがガスリー細菌阻害アッセイまたはタンデム質量分析法(MS/MS)のいずれかによって行われる。MSUDの世界的発生率は約1:185,000であることが推定されている。MSUDは分枝鎖α−ケト酸デヒドロゲナーゼ(BCKAD)複合体の活性における欠失によって引き起こされる。この代謝遮断により、分枝鎖アミノ酸(BCAA)(例えば、ロイシン、イソロイシンおよびバリンなど)および対応する分枝鎖α−ケト酸(BCKA)の蓄積が生じる。このような幼児は、出生時においては正常に見えるが、数日後、食欲不振を発症し、無感動および嗜眠性になり、その後、神経学的徴候(例えば、正常な反射の喪失など)を現す。アトニー状態および緊張亢進状態の交互した期間が現れ、その後、痙攣および呼吸障害が続く。MSUDはほとんどの場合、尿、汗および耳垢における特徴的な臭気が付随する。処置されないままにされると、この疾患は生後数週間でほとんど常に致命的になる。重症MSUDは、約500マイクロモル/dL以上のロイシン、約100マイクロモル/dL以上のイソロイシンおよび約100マイクロモル/dL以上のバリンの血漿BCAA濃度、ならびに、約60マイクロモル/dL〜460マイクロモル/dLのα−ケトイソカプロン酸、約20マイクロモル/dL〜150マイクロモル/dLのα−ケト−β−メチル吉草酸および約2マイクロモル/dL〜35マイクロモル/dLのα−ケトイソ吉草酸の血清BCKA濃度によって特徴づけられる。患者において重度MSUDを防止することは、本発明の方法を使用して診断され、かつ、その後、直ちに処置され得る患者において、これらのレベルに達しないことを意味する。中程度MSUDは、ほどほどに上昇したBCAAによって、例えば、100マイクロモル/dL以上のロイシンの代わりに約60マイクロモル/dL〜100マイクロモル/dLのロイシンによって特徴づけられる。
【0086】
本発明の方法を使用した、危険性のある患者の決定および/または診断は、知られている試験(BCAAレベルなど)と連係させることができる。
【0087】
尿素サイクル障害:尿素サイクルは一連の5つの生化学的反応からなり、2つの目的を果たす:(1)尿素サイクルは、毒性の含窒素化合物の蓄積を防止するために、廃棄窒素生成物として使用される、正味の生合成目的のために維持されない窒素原子を取り込む;および(2)尿素サイクルは、アルギニンのデノボ生合成および分解のために要求される生化学的反応のいくつかを含む。尿素合成のための代謝経路における中断が、このカスケードにおける特定の段階に関与するいくつかの酵素のいずれか1つの欠如または不活性によって引き起こされる。尿素生成経路における欠陥は2つの結果を有する:アルギニンが必須アミノ酸になり(酵素欠陥がアルギニン分解の不完全をもたらすアルギナーゼ欠損の場合を除く)、また、窒素原子が様々な分子で蓄積し、そのパターンは特定の酵素的欠陥に従って変化し、だが、アンモニアおよびグルタミンの血漿中レベルが、代謝的制御を受けていないすべての尿素サイクル障害において増大する。尿素サイクル障害には、(a)カルバミルリン酸シンセターゼ欠損症(CPSD)、(b)N−アセチルグルタミン酸シンセターゼ欠損症、(c)オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症(OTCD)、(d)アルギニノコハク酸シンセターゼ欠損症(ASD)、(e)アルギニノコハク酸リアーゼ欠損症(ALD)、および(f)アルギナーゼ欠損症が含まれる。
【0088】
X連鎖の遺伝的障害であるオルニチントランスカルバミラーゼ欠損症を除いて、尿素サイクル障害は常染色体劣性様式によって遺伝する。MS/MS技術を使用する新生児スクリーニングでは、アルギニノコハク酸シンセターゼ欠損症(シトルリン血症)、アルギニノコハク酸リアーゼ欠損症(アルギニノコハク酸尿症)、アルギナーゼ欠損症および高アンモニア血症・高オルニチン血症・ホモシトルリン血症症候群(HHH)を検出することができる。
【0089】
好ましい実施形態において、アルギニン/尿素/一酸化窒素サイクルの1つまたは1つよりも多い酵素、硫化酵素およびスペクトリン分解関連生成物の非存在の検出により、尿素サイクル障害が診断される。これらのマーカーの例には、アルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS)およびアルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、硫化(エストロゲンスルホトランスフェラーゼ(EST)、スクアレンシンターゼ(SQS)、肝臓グリコーゲンホスホリラーゼ(GP)、カルバモイルリン酸シンセターゼ(CPS−1)、α−エノラーゼ1、グルコース調節タンパク質(GRP)およびスペクトリン分解生成物が含まれるが、これらに限定されない。
【0090】
いくつかの尿素サイクル障害は約2,000マイクログラム/dL〜約2,500マイクログラム/dLのアンモニアの血漿中アンモニアレベルによって特徴づけられ、患者は、アンモニアの代替代謝の提供に加えて、人工呼吸および血液透析のために医学的緊急処置を必要とする。重度の尿素サイクル障害を防止することは、本発明の方法により処置され、その後、尿素サイクル障害と診断された患者において、これらのレベルに達しないことを意味する。
【0091】
中程度の尿素サイクル障害は約500マイクロモル/dL未満の血漿中アンモニアレベルによって特徴づけられ、そのような積極的治療を必要としない場合がある。従って、高アンモニア血症の検出は早期診断および効果的処置のために非常に重要である。アンモニア発生におけるこの増大には、典型的には、嘔吐、嗜眠、痙攣および異常な肝臓酵素レベルの急性発現が伴う。高レベルの血漿中アンモニアにさらされることは、典型的には、嗜眠、痙攣および昏睡の期間に続いて致死的である。処置された場合でさえ、長引いた重度の高アンモニア血症は精神的および身体的な遅滞を引き起こす。
【0092】
危険性がある胎児については、出生前診断が、それぞれの疾患に対して特有の数多くの方法によって利用可能であり、これらには、羊膜細胞から培養されたフィブロプラストの酵素分析、子宮内肝臓生検およびDNA技術が含まれる。
【0093】
好ましい実施形態において、これらの酵素の非存在により、危険性のある胎児および新生児が、本発明の方法および組成物を使用して診断または特定される。
【0094】
イムノアッセイ
肝臓バイオマーカー(例えば、アルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS)およびアルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、硫化(エストロゲンスルホトランスフェラーゼ(EST)、スクアレンシンターゼ(SQS)、肝臓グリコーゲンホスホリラーゼ(GP)、カルバモイルリン酸シンセターゼ(CPS−1)、α−エノラーゼ1、グルコース調節タンパク質(GRP)およびスペクトリン分解生成物)のいずれか1つに対する抗体を、肝臓傷害疾患を検出および診断するために、本発明によって教示されるように使用することができる。様々な組織学的染色方法(免疫組織化学的染色方法を含む)もまた、本発明の教示に従って効果的に使用することができる。
【0095】
サンプルが、例えば、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)タンパク質、そのペプチドまたは断片を含有するかどうかを明らかにするための1つのスクリーニング方法は、例えば、ASLタンパク質に対する特異的な抗体(モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体)の作製に基づいた、放射イムノアッセイ(RIA)方法論または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)方法論を用いるイムノアッセイを含む。任意のサンプルを使用することができ、しかしながら、肝臓バイオマーカーを含む好ましいサンプルは、血液、血清、血漿である。静脈穿刺(血液)、尿および他の身体分泌物(例えば、汗および涙液など)もまた、生物学的サンプルとして使用することができる。例えば、RIAの1つの形態において、試験中の物質が、放射能標識された抗原の存在下、希釈された抗血清と混合される。この方法では、試験物質の濃度が、特異的な抗体に結合した標識されている抗原の量に対して反比例し、遊離している標識された抗原の量に直接に関係づけられる。他の好適なスクリーニング方法が当業者には容易に明らかである。
【0096】
本発明はまた、サンプルまたは被験体における肝臓バイオマーカータンパク質またはその断片を検出する方法に関連する。例えば、ASLタンパク質について特異的な抗体またはその断片を任意の適切なマーカー(例えば、放射性同位体、酵素、蛍光性標識、常磁性標識またはフリーラジカル)により検出可能に標識することができる。
【0097】
そのような検出可能に標識された抗体またはその機能的断片を作製および検出する様々な方法が当業者には広く知られている。用語「抗体」は、実質的に均一な集団であるモノクローナル抗体、および、不均一な集団であるポリクローナル抗体の両方を示す。ポリクローナル抗体は、抗原で免疫化された動物の血清に由来する。特定の抗原に対するモノクローナル抗体(MAb)を、当業者に知られている方法によって得ることができる。例えば、米国特許第4,376,110号を参照のこと。そのような抗体は、任意の免疫グロブリンクラスのものであり、これには、IgG、IgM、IgE、IgA、IgD、および、それらの任意のサブクラスが含まれる。本発明において有用である抗体のFab断片およびF(ab’)断片ならびに他の断片が、例えば、無傷の抗体と同じ様式で肝臓疾患を検出および診断するために、本明細書中に開示される方法に従って、ASLタンパク質、そのペプチドまたは断片の検出および定量のために使用され得ることが理解される。そのような断片は典型的には、酵素(例えば、パパイン(Fab断片を作製するために)またはペプシン(F(ab’)断片を作製するために)を使用してタンパク質分解的切断によって作製される。
【0098】
抗体は、分子と特異的に反応して、それにより、その分子を抗体に結合させることができるならば、分子と「結合することができる」と言われる。用語「エピトープ」とは、そのような抗体によってもまた認識され得る、抗体が結合することができる任意の分子のそのような部分を示すことが意味される。エピトープ決定基は通常、分子の化学的に活性な表面集団(例えば、アミノ酸または糖側鎖など)からなり、特異的な三次元の構造的特徴、ならびに、特異的な電荷特徴を有する。
【0099】
「抗原」は、そのような抗原のエピトープに結合することができる抗体を産生するように動物をさらに誘導することができる、抗体が結合することができる分子である。抗原は1つまたは2つ以上のエピトープを有することができる。上記で示される特異的な反応とは、抗原が非常に選択的な様式でその対応する抗体と反応し、他の抗原によって惹起され得る多数の他の抗体とは反応しないことを示すことが意味される。本発明において有用な抗体または抗体の断片は、肝臓バイオマーカーを定性的または定量的に検出するために使用することができ、あるいは、例えば、ASLタンパク質およびその断片抗原を含有する細胞の存在を検出するために組織学的染色において使用することができる。従って、本発明において有用な抗体(またはその断片)は、アルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS)、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、硫化(エストロゲンスルホトランスフェラーゼ(EST)、スクアレンシンターゼ(SQS)、肝臓グリコーゲンホスホリラーゼ(GP)、カルバモイルリン酸シンセターゼ(CPS−1)、α−エノラーゼ1、グルコース調節タンパク質(GRP)およびスペクトリン分解生成物のタンパク質、そのペプチドまたは断片の存在を検出または可視化するために組織学的に用いることができる。
【0100】
肝臓バイオマーカーを検出するためのそのようなアッセイは典型的には、そのような状態を有することが疑われる被験体から得られた生物学的サンプルを、バイオマーカーを特定することができる検出可能に標識された結合性分子(例えば、抗体)の存在下でインキュベーションすること、および、サンプルにおける結合する結合性分子を検出することを含む。
【0101】
従って、本発明のこの局面では、生物学的サンプルを、細胞、細胞粒子または可溶性タンパク質を固定化することができるニトロセルロースまたは他の固体支持体により処理することができる。その後、支持体は好適な緩衝液により洗浄することができ、続いて、例えば、検出可能に標識された抗ASL特異的抗体により処理することができる。その後、固相支持体は、結合していない抗体を除くために緩衝液により再び洗浄することができる。その後、前記固体支持体における結合した標識の量を従来の手段によって検出することができる。「固相支持体」によって、抗原または抗体と結合することができる任意の支持体が意図される。広く知られている支持体またはキャリアには、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然セルロースおよび修飾セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、ならびに、マグネタイトが含まれる。キャリアの性質は、本発明の目的のために、ある程度に可溶性であり得るか、または、不溶性であり得るかのいずれかである。支持体材料は、カップリングした分子が抗原または抗体に結合することができる限り、事実上任意の可能な構造的形態を有することができる。従って、支持体の形態は、ビーズでのように球状であり得るか、または、試験管の内側表面でのように円筒状であり得るか、または、棒の外側表面であり得る。あるいは、表面は平坦であり得る(例えば、シート、試験片など)。好ましい支持体には、ポリスチレンビーズが含まれる。当業者は、モノクローナル抗体または抗原と結合させるための多くの他の好適なキャリアを認めるか、あるいは、日常的な実験の使用によってそのような好適なキャリアを確認することができる。
【0102】
肝臓バイオマーカーを含有する生物学的サンプルに対して本発明の診断アッセイを行うための1つの実施形態は、所望のバイオマーカーについて特異的な検出可能に標識された抗体を接触させることを含む。例示目的のために、ASLが非限定的な例として使用される。検出可能に標識された抗ASL特異的抗体が、抗ASL特異的抗体の固定化を行うために固体支持体に結合させられる;ASLまたはその断片を含有することが疑われるサンプルを前記固体支持体において接触させること;検出可能に標識された抗ASL特異的抗体を、固定された抗ASL特異的抗体がASLまたはその断片に結合することを可能にするために十分な期間にわたって支持体とインキュベーションすること。これらの工程の後には、洗浄すること、ならびに、結合した抗体を検出すること、ならびに、それにより、ASLおよびその断片を検出および定量することが続く。
【0103】
あるいは、サンプルにおける標識された抗ASL特異的抗体および/またはASLタンパク質複合体を、複合体を、免疫グロブリンについて特異的である固定された抗体またはタンパク質(例えば、ブドウ球菌のプロテインA、ブドウ球菌のプロテインG、抗IgM抗体または抗IgG抗体)と接触させることによって反応混合物から分離することができる。そのような抗免疫グロブリン抗体はポリクローナルであり得るか、または、好ましくはモノクローナルであり得る。その後、固体支持体は、固定化ASL/標識化された抗ASL特異的抗体の複合体を得るために、好適な緩衝液により洗浄することができる。その後、標識を、ASLタンパク質の測定を行うために検出することができる。検出可能に標識された抗体の具体的な濃度、インキュベーションの温度および時間、ならびに、他のアッセイ条件を、サンプルにおけるタンパク質の濃度、サンプルの性質およびその他を含む様々な要因に従って変化させることができる。抗ASL抗体の所与ロットの結合活性を、広く知られている方法に従って求めることができる。当業者は、日常的な実験を用いることによってそれぞれの測定のための適切かつ最適なアッセイ条件を決定することができる。洗浄、撹拌、振とうおよびろ過などのような他の工程を、特定の状況について慣例的または必要であるように、アッセイに加えることができる。
【0104】
抗ASL特異的抗体を検出可能に標識することができる方法の1つが、抗ASL特異的抗体を酵素に連結することによるものである。この酵素は次に、その基質に後でさらされたとき、例えば、分光光度法的手段、蛍光測定法的手段または視覚的手段によって検出することができる化学的成分を生じさせるような様式で基質と反応する。抗ASL特異的抗体を検出可能に標識するために使用することができる酵素には、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌のヌクレアーゼ、δ−Vステロイドイソメラーゼ、酵母のアルコールデヒドロゲナーゼ、α−グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−VI−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼおよびアセチルコリンエステラーゼが含まれるが、これらに限定されない。
【0105】
検出を、様々なイムノアッセイのいずれかを使用して達成することができる。例えば、抗ASL特異的抗体または抗体断片を放射能標識することによって、ASLタンパク質またはその断片を放射イムノアッセイの使用により検出することが可能である。
【0106】
放射性同位体は、ガンマカウンターもしくはシンチレーションカウンターの使用のような手段によって、または、オートラジオグラフィーによって検出することができる。本発明の目的のために特に有用である同位体は、H、125I、131I、35S、14Cであり、好ましくは125Iである。
【0107】
抗ASL特異的抗体を蛍光性化合物により標識することもまた可能である。蛍光標識された抗体が適切な波長な光にさらされるとき、その存在を蛍光により検出することができる。最も一般に使用される蛍光性の標識化化合物には、フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルアルデヒドおよびフルオレスカミンが含まれる。
【0108】
抗ASL特異的抗体はまた、蛍光放出金属(例えば、ランタニド系列の152Euまたは他の金属など)を使用して検出可能に標識することができる。これらの金属は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)のような金属キレート化基を使用して抗ASL特異的抗体に結合することができる。抗ASL特異的抗体はまた、抗ASL特異的抗体を化学発光化合物にカップリングすることによって検出可能に標識することができる。化学発光性のタグ化された抗ASL特異的抗体の存在が、その後、化学反応の経過期間中に生じる発光の存在を検出することによって明らかにされる。特に有用な化学発光性の標識化化合物の例には、ルミノール、イソルミノール、テロマティック(theromatic)アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルがある。
【0109】
抗ASL特異的抗体はまた、ビオチンで標識し、その後、アビジンと反応させることができる。同様に、生物発光化合物を、本発明の抗ASL特異的抗体を標識するために使用することができる。生物発光は、触媒作用タンパク質が化学発光反応の効率を増大させる生物学的システムにおいて見出される化学発光の1つのタイプである。生物発光タンパク質の存在が、発光の存在を検出することによって明らかにされる。標識化のための重要な生物発光化合物には、ルシフェリン、ルシフェラーゼおよびエクオリンがある。
【0110】
抗ASL特異的抗体の検出を、例えば、検出可能な標識が放射性のガンマ線放射体であるならば、シンチレーションカウンターによって、または、例えば、標識が蛍光性物質であるならば、蛍光計によって達成することができる。酵素標識の場合には、検出を、酵素に対する基質を用いる比色法によって達成することができる。検出はまた、同様に調製された標準物との比較において基質の酵素反応の程度を視覚的に比較することによって達成することができる。
【0111】
本発明の目的のために、このようなアッセイによって検出されるASLタンパク質および/またはその断片が生物学的サンプルに存在し得る。ASLタンパク質またはその断片を含有する任意のサンプルを使用することができる。しかしながら、本発明の診断の利点の1つは、浸襲的な組織切除が回避され得ることである。従って、好ましくは、サンプルは生物学的溶液であり、例えば、血漿、羊水、血液、血清および尿などである。しかしながら、本発明は、これらのサンプルのみを使用するアッセイに限定されず、当業者が、他のサンプルの使用を可能にする好適な条件を決定することが可能である。従って、肝臓傷害および/または肝臓疾患の診断が、正常なレベルよりも大きく増大したASLタンパク質レベルおよび/またはその断片を明らかにする簡便な非浸襲性の血液イムノアッセイによって確立され得る。
【0112】
多くの異なるインビボ標識および標識化方法が当業者には知られている。本発明において使用することができる標識のタイプの例には、放射性同位体および常磁性同位体が含まれる。当業者は、本発明において使用される抗体に結合するための他の好適な標識を理解するか、または、日常的な実験を使用してそのような標識を確認することができる。さらに、抗体に対するこのような標識の結合を、当業者には一般的である標準的な技術を使用して行うことができる。
【0113】
インビボ診断のための放射性核種を選択することにおける重要な要因は、放射性核種の半減期が、標的による最大の取り込みのときにおいて依然として検出可能であるように十分に長く、しかし、宿主に対する有害な放射線が最小限に抑えられるように十分に短いことである。理想的には、インビボ造影のために使用される放射性核種は特定の放射を有さず、しかし、従来のガンマ線カメラによって容易に検出され得る、140keV〜200keVの範囲での光子を非常に多くもたらす。
【0114】
インビボ診断のために、放射性核種は、介在する官能基を使用することによって直接的または間接的にそのいずれでも抗体に結合させることができる。金属イオンとして存在する放射性同位体を免疫グロブリンに結合する際に多くの場合に使用される介在する官能基には、DTPAおよびEDTAがある。免疫グロブリンに結合させることができるイオンの典型的な例には、99mTc、123I、111In、131I、97Ru、67Cu、67Ga、125I、68Ga、72As、89Zrおよび201Tlがある。
【0115】
診断的インビボ造影のためには、利用可能な検出装置のタイプが、所与の放射性核種を選択することにおける大きな要因である。選ばれる放射性核種は、所与タイプの装置について検出可能であるタイプの崩壊を有しなければならない。一般に、診断的造影を可視化するための任意の従来の方法を本発明に従って利用することができる。例えば、PET検出器、ガンマ検出器、ベータ検出器およびMRI検出器を、診断的造影を可視化するために使用することができる。
【0116】
本発明において有用な抗体はまた、インビボ診断の目的のために常磁性同位体により標識することができる。特に有用である元素には、磁気共鳴造影(MRI)でのように、157Gd、55Mn、162Dyおよび56Feが含まれる。
【0117】
本発明において有用な抗体はまた、身体組織、体液(例えば、CSF、血液、血漿または血清など)または細胞抽出物におけるASLタンパク質またはその断片の存在を検出するためのインビトロイムノアッセイでの使用のために特に適する。そのようなイムノアッセイにおいて、抗体は液相において利用することができ、または、好ましくは、上記で記載されたように、固相キャリアに結合させることができる。
【0118】
当業者は、本発明に従って用いることができる様々な他の好適な標識を理解する。抗体またはその断片に対するこれらの標識の結合を、当業者には一般に知られている標準的な技術を使用して達成することができる。下記で述べられるカップリング技術は、グルタルアルデヒド法、過ヨウ素酸法、ジマレイミド法、m−マレイミドベンジル−N−ヒドロキシ−スクシンイミドエステル法であり、そのような方法のすべてが本明細書中に参考として組み込まれる。
【0119】
組織学的標本を患者から切除すること、および、本発明の標識された抗体の組み合わせをそのような標本に提供することにより、インシトゥー検出を達成することができる。抗体は、好ましくは、標識された抗体を生物学的サンプルに加えるか、または重層することによって提供される。そのような手順の使用によって、ASLタンパク質またはその断片の存在だけではなく、試験されている組織におけるASLタンパク質の分布もまた明らかにすることが可能である。本発明を使用して、当業者は、広範囲の様々な組織学的方法(例えば、染色法など)のいずれかが、そのようなインシトゥー検出を達成するために改変され得ることを容易に理解する。
【0120】
本発明の結合性分子は、「二部位」アッセイまたは「サンドイッチ」アッセイとしてもまた知られている免疫測定アッセイにおける利用のために適合化することができる。典型的な免疫測定アッセイでは、一定量の標識されていない抗体(またはその断片)が、試験されている流体(すなわち、血液、血漿または血清)において不溶性である固体支持体に結合させられ、一定量の検出可能に標識された可溶性抗体が、固相の抗体と、抗原と、標識された抗体との間で形成された三元複合体の検出および/または定量を可能にするために加えられる。
【0121】
典型的な免疫測定アッセイには、固相に結合した抗体が、抗原を二元の固相抗体―抗原複合体の形成によってサンプルから取り出すために、試験されているサンプルと最初に接触させられる「フォワード」アッセイが含まれる。好適なインキュベーション期間の後、固体支持体は、存在するならば、反応していない抗原を含めて、流体サンプルの残渣を除くために洗浄され、その後、未知量の標識された抗体(これは「レポーター分子」として機能する)を含有する溶液と接触させられる。標識された抗体が、固体支持体に結合した抗原と、標識されていない抗体を介して複合体形成することを可能にするための2回目のインキュベーション期間の後、固体支持体は、反応していない標識された抗体を除くために再び洗浄される。このタイプのフォワードサンドイッチアッセイは、抗原が存在するかどうかを明らかにするための単純な「yes/no」アッセイであり得るか、または、標識された抗体の測定を、既知量の抗原を含有する標準サンプルについて得られた測定と比較することによって定量的にすることができる。
【0122】
別のタイプの「サンドイッチ」アッセイ(これもまた本発明の抗原に関して有用であり得る)では、いわゆる「同時」アッセイおよび「逆」アッセイが使用される。同時アッセイは、固体支持体に結合した抗体と、標識されている抗体とがともに、試験されているサンプルに同時に加えられるので、1回だけのインキュベーション工程を伴う。インキュベーションが完了した後、固体支持体は、流体サンプルの残渣および複合体を形成していない標識された抗体を除くために洗浄される。その後、固体支持体と会合した標識されている抗体の存在が、従来の「フォワード」サンドイッチアッセイでのように明らかにされる。
【0123】
「逆」アッセイでは、段階的な添加、すなわち、流体サンプルへの標識された抗体の最初の添加、続いて、好適なインキュベーション期間の後で固体支持体に結合した標識されていない抗体の添加が利用される。2回目のインキュベーションの後、固相が、試験されているサンプルの残渣、および、反応していない標識された抗体の溶液を固相から除くために従来の様式で洗浄される。その後、固体支持体と会合した標識されている抗体の決定が、「同時」アッセイおよび「フォワード」アッセイでのように明らかにされる。
【0124】
上記のインビトロ検出法またはインビボ検出法は、組織を切除する必要性を伴うことなく肝臓疾患の検出および診断において使用することができる。そのような検出法は、生物学的サンプルにおけるASLタンパク質またはその断片の濃度を評価および比較することによって肝臓傷害および/または肝臓疾患における肝臓悪化の段階の決定を助けるために使用することができる。
【0125】
新しいマーカーの同定
好ましい実施形態において、生物学的サンプルが肝臓傷害の患者から得られる。他の患者および対照被験体(すなわち、類似する年齢、性別、身体的状態の正常な健康者)からの、バイオマーカーを含む生物学的サンプルが、比較物として使用される。生物学的サンプルは、上記で議論されたように取り出される。好ましくは、サンプルはバイオマーカーの検出に先立って調製される。典型的には、調製では、サンプルの分画化、および、バイオマーカーを含有することが明らかにされる分画物の回収が伴う。予備分画化の方法には、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ヘパリンクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逐次抽出、ゲル電気泳動および液体クロマトグラフィーが含まれる。分析物はまた、検出に先立って修飾される場合がある。これらの方法は、サンプルをさらなる分析のために単純化するために有用である。例えば、存在量が多いタンパク質(例えば、アルブミンなど)を分析前に血液から除くことは有用であり得る。
【0126】
1つの実施形態において、サンプルは、サイズ排除クロマトグラフィーを使用してサンプル中のタンパク質のサイズに従って予備分画化することができる。利用可能なサンプル量が少ない生物学的サンプルについては、好ましくは、サイズ選択スピンカラムが使用される。一般に、カラムから溶出される最初の分画物(「分画物1」)は高分子量タンパク質の割合が最も大きい;分画物2は高分子量タンパク質の割合がより低い;分画物3は高分子量タンパク質の割合が一層より低い;分画物4は大きいタンパク質の量が最も低い;他についても同様である。その後、それぞれの分画物を、マーカーの検出のために、イムノアッセイ、気相イオン分光法、断片およびその誘導体によって分析することができる。
【0127】
別の実施形態において、サンプルはアニオン交換クロマトグラフィーによって予備分画化することができる。アニオン交換クロマトグラフィーは、大雑把にはそれらの電荷特徴に従ってサンプルにおけるタンパク質の予備分画化を可能にする。例えば、Qアニオン交換樹脂を使用することができ(例えば、Q HyperD F、Biosepra)、サンプルが、異なるpHを有する溶出液により連続的に溶出され得る。アニオン交換クロマトグラフィーは、より大きく負に帯電するサンプル中のバイオマーカーを他のタイプのバイオマーカーから分離することを可能にする。高いpHを有する溶出液により溶出されるタンパク質は弱く負に帯電していると考えられ、低いpHを有する溶出液により溶出される分画物は強く負に帯電していると考えられる。従って、サンプルの複雑さを低下させることに加えて、アニオン交換クロマトグラフィーはタンパク質をそれらの結合特性に従って分離する。
【0128】
さらに別の実施形態において、サンプルはヘパリンクロマトグラフィーによって予備分画化することができる。ヘパリンクロマトグラフィーは、ヘパリンとの親和性相互作用および電荷特徴にもまた基づいたサンプル中のマーカーの予備分画化を可能にする。ヘパリン(硫酸化ムコ多糖)は、正荷電成分を有するマーカーと結合し、サンプルが、異なるpHまたは塩濃度を有する溶出液により連続的に溶出され得る。低いpHを有する溶出液により溶出されるマーカーは弱く正に帯電していると考えられる。高いpHを有する溶出液により溶出されるマーカーは強く正に帯電していると考えられる。従って、ヘパリンクロマトグラフィーもまた、サンプルの複雑さを低下させ、かつ、マーカーをそれらの結合特性に従って分離する。
【0129】
さらに別の実施形態において、サンプルは、特定の特徴を有するタンパク質(例えば、グリコシル化されるタンパク質)を単離することによって予備分画化することができる。例えば、ホモジナイズされた肝臓組織サンプル、血清サンプル、血漿サンプル、血液サンプルは、サンプルをレクチンクロマトグラフィーカラム(これは、糖に対する大きい親和性を有する)に通すことによって分画化することができる。グリコシル化されているタンパク質がレクチンカラムに結合し、グリコシル化されていないタンパク質は素通りにより通過する。その後、グリコシル化されているタンパク質が、糖(例えば、N−アセチル−グルコサミン)を含有する溶出液によりレクチンカラムから溶出され、さらなる分析のために利用可能である。
【0130】
従って、多くの方法が、サンプルの複雑さをサンプル中のタンパク質の結合特性またはサンプル中のタンパク質の特徴に基づいて低下させるために存在する。
【0131】
さらに別の実施形態において、サンプルは、逐次抽出プロトコルを使用して分画化することができる。逐次抽出では、サンプルが、異なるタイプのバイオマーカーをサンプルから抽出するための一連の吸着剤にさらされる。例えば、サンプルが、ある種のタンパク質を抽出するための第1の吸着剤に加えられ、吸着していないタンパク質(すなわち、第1の吸着剤に吸着しなかったタンパク質)を含有する溶出液が集めされる。その後、この分画物は第2の吸着剤にさらされる。これにより、様々なタンパク質が分画物からさらに抽出される。この第2の分画物は、その後、第3の吸着剤にさらされる。以下同様である。
【0132】
任意の好適な材料および方法を、サンプルの逐次抽出を行うために使用することができる。例えば、異なる吸着剤を含む一連のスピンカラムを使用することができる。別の例では、異なる吸着剤をその底において含むマルチウェルを使用することができる。別の例では、逐次抽出を、気相イオン分光計での使用のために適合化されたプローブにおいて行うことができ、この場合、プローブ表面が、バイオマーカーと結合するための吸着剤を含む。この実施形態において、サンプルはプローブ上の第1の吸着剤に加えられ、続いて、プローブが溶出液により洗浄される。第1の吸着剤に結合しないマーカーが溶出液により除かれる。分画物に存在するマーカーをプローブ上の第2の吸着剤に加えることができる。以下同様である。逐次抽出を気相イオン分光計のプローブにおいて行うことの利点は、逐次抽出プロトコルのどの段階においても様々な吸着剤に結合するマーカーが、気相イオン分光計を使用して直接に分析され得ることである。
【0133】
さらに別の実施形態において、サンプル中のバイオマーカーは、高分解能の電気泳動によって、例えば、一次元または二次元のゲル電気泳動によって分離することができる。マーカーを含有する分画物を単離し、気相イオン分光法によってさらに分析することができる。好ましくは、二次元ゲル電気泳動が、1つまたは1つよりも多いマーカーを含むバイオマーカーのスポットの二次元配置を生じさせるために使用される。例えば、JungblutおよびThiede、Mass Spectr.Rev.16:145〜162(1997)を参照のこと。
【0134】
二次元ゲル電気泳動を、この分野で知られている方法を使用して行うことができる。例えば、Deutscher編、Methods in Enzymology(第182巻)を参照のこと。典型的には、サンプル中のバイオマーカーは、例えば、サンプル中のバイオマーカーが、それらの正味電荷がゼロであるスポット(すなわち、等電点)に達するまで、pH勾配において分離される等電点フォーカシングによって分離される。この最初の分離工程により、バイオマーカーの一次元配置がもたらされる。一次元配置におけるバイオマーカーはさらに、第1の分離工程で使用された技術とは一般に異なる技術を使用して分離される。例えば、2番目の次元では、等電点フォーカシングによって分離されたバイオマーカーはさらに、ポリアクリルアミドゲル(例えば、ドデシル硫酸ナトリウムの存在下でのポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)など)を使用して分離される。SDS−PAGEゲルは、バイオマーカーの分子量に基づくさらなる分離を可能にする。典型的には、二次元ゲル電気泳動では、複雑な混合物における1000Da〜200,000Daの分子量範囲での化学的に異なるバイオマーカーを分離することができる。
【0135】
二次元配置におけるバイオマーカーは、この分野で知られている任意の好適な方法を使用して検出することができる。例えば、ゲル中のバイオマーカーを標識または染色することができる(例えば、クーマシーブルー染色または銀染色)。ゲル電気泳動が、本発明の1つまたは1つよりも多いマーカーの分子量に対応するスポットを生じさせるならば、そのスポットはさらに、デンシトメトリー分析または気相イオン分光法によって分析することができる。例えば、スポットをゲルから切り出し、気相イオン分光法によって分析することができる。あるいは、バイオマーカーを含有するゲルを、電場を加えることによって不活性なメンブランに転写することができる。その後、マーカーの分子量におおよそ対応するメンブラン上のスポットを気相イオン分光法によって分析することができる。気相イオン分光法において、スポットは、任意の好適な技術(例えば、MALDIまたはSELDIなど)を使用して分析することができる。
【0136】
気相イオン分光法による分析に先立って、スポット上のバイオマーカーを、切断試薬(例えば、プロテアーゼ(例えば、トリプシン)など)を使用してより小さい断片に切断することが望ましい場合がある。小さい断片へのバイオマーカーの消化により、スポットにおけるバイオマーカーの質量フィンガープリントがもたらされ、これは、所望されるならば、マーカーの正体を明らかにするために使用することができる。
【0137】
さらに別の実施形態において、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を、サンプルにおけるバイオマーカーの混合物をそれらの異なる物理的性質(例えば、極性、電荷およびサイズなど)に基づいて分離するために使用することができる。HPLC装置は典型的には、移動相のリザーバー、ポンプ、注入装置、分離カラムおよび検出器からなる。サンプル中のバイオマーカーは、サンプルのアリコットをカラムに注入することによって分離される。混合物における異なるバイオマーカーが、移動する液相と、定常相との間でのそれらの分配挙動における違いにより、異なる速度でカラムを通過する。1つまたは1つよりも多いマーカーの分子量および/または物理的性質に対応する分画物を集めることができる。その後、分画物は、マーカーを検出するために気相イオン分光法によって分析することができる。
【0138】
場合により、マーカーは、その分解能を改善するために、または、その正体を決定するために、分析前に修飾することができる。例えば、マーカーを分析前にタンパク質分解的消化に供することができる。任意のプロテアーゼを使用することができる。マーカーを個々の数多くの断片に切断すると考えられるプロテアーゼ(例えば、トリプシンなど)が特に有用である。消化から生じる断片はマーカーについてのフィンガープリントとして機能し、それにより、それらの検出を間接的に可能にする。問題としているマーカーについて混乱させ得る類似する分子量を有するマーカーが存在するときには、これは特に有用である。また、より小さいマーカーは質量分析法によってより容易に分離されるので、タンパク質分解的断片化は高分子量マーカーについては有用である。別の例では、バイオマーカーは、検出分解能を改善するために修飾することができる。例えば、ノイラミニダーゼを、末端シアル酸残基を糖タンパク質から除いて、アニオン性吸着剤に対する結合を改善し、かつ、検出分解能を改善するために使用することができる。別の例では、マーカーは、分子マーカーに特異的に結合し、それにより、マーカーをさらに区別する特定の分子量のタグを結合することによって修飾することができる。場合により、そのような修飾されたマーカーを検出した後、マーカーの正体を、修飾されたマーカーの物理的特徴および化学的特徴をタンパク質ベータベース(例えば、SwissProt、MASCOT)において一致させることによってさらに明らかにすることができる。
【0139】
調製後、サンプル中のバイオマーカーは典型的には、検出のために基材に捕獲される。従来の基材には、抗体により被覆された96ウェルプレート、または、タンパク質の存在について続いてプローブされるニトロセルロースメンブランが含まれる。好ましくは、バイオマーカーは、上記で記載されたようなイムノアッセイを使用して特定される。しかしながら、好ましい方法にはまた、バイオチップの使用が含まれる。好ましくは、バイオチップは、タンパク質の捕獲および検出のためのタンパク質バイオチップである。多くのタンパク質バイオチップがこの分野では記載される。これらには、例えば、Packard BioScience Company(Meriden、CT)、Zyomyx(Hayward、CA)およびPhylos(Lexington、MA)によって製造されるタンパク質バイオチップが含まれる。一般に、タンパク質バイオチップは、表面を有する基材を含む。捕獲試薬または吸着剤が基材の表面に結合される。頻繁ではあるが、表面は多数のアドレス指定可能な場所を含み、そのような場所のそれぞれが、それに結合した捕獲試薬を有する。捕獲試薬は、他のバイオマーカーを特異的な様式で捕獲する生物学的分子(例えば、ポリペプチドまたは核酸など)が可能である。あるいは、捕獲試薬はクロマトグラフィー物質(例えば、アニオン交換物質または疎水性物質など)が可能である。そのようなタンパク質バイオチップの例が下記の特許または特許出願に記載される:米国特許第6,225,047号(HutchensおよびYip、「差マップを作製するための保持クロマトグラフィーの使用」、2001年5月1日)、国際特許出願公開WO99/51773(KuimelisおよびWagner、「アドレス指定可能なタンパク質アレイ」、1999年10月14日)、国際特許出願公開WO00/04389(Wagner他、「タンパク質捕捉剤のアレイおよびその使用方法」、2000年7月27日)、国際特許出願公開WO00/56934(Englert他、「連続多孔質マトリックスアレイ」、2000年9月28日)。
【0140】
一般に、バイオマーカーを含有するサンプルが、結合を可能にするための十分な期間、バイオチップの活性な表面に置かれる。その後、結合していない分子が、好適な溶出液を使用して表面から洗浄される。一般には、溶出液がストリンジェントであるほど、タンパク質は、洗浄後に保持されるために、より強固に結合しなければならない。保持されているタンパク質バイオマーカーは次に、適切な手段によって検出することができる。
【0141】
タンパク質バイオチップの表面に捕獲された分析物は、この分野で知られている任意の方法によって検出することができる。これには、例えば、質量分析法、蛍光、表面プラズモン共鳴、楕円偏光法および原子間力顕微鏡法が含まれる。質量分光法、特に、SELDI質量分析法が、本発明のバイオマーカーを検出するための特に有用な方法である。
【0142】
好ましくは、レーザー脱離飛行時間型質量分析計が本発明の実施形態では使用される。レーザー脱離質量分析法では、マーカーを含む基材またはプローブが注入系に導入される。マーカーがイオン化源からのレーザーによって脱離させられ、気相の中にイオン化される。生じたイオンがイオン光学アセンブリーによって集められ、その後、飛行時間型質量アナライザーにおいて、イオンが短い高電圧場によって加速され、高真空チャンバーの中に移動させられる。高真空チャンバーの遠端において、加速イオンが異なる時間で高感度検出器の表面に当たる。飛行時間はイオンの質量の関数であるので、イオン形成と、イオンの検出器衝突との間での経過時間を使用して、特定の質量対電荷比のマーカーの存在または非存在を特定することができる。
【0143】
マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析法、すなわち、MALDI−MSは、タンパク質をプローブ表面から無傷のまま脱離させるために、エネルギー吸収分子(これはしばしば、マトリックスと呼ばれる)の使用を伴う質量分析法の1つの方法である。MALDIが、例えば、米国特許第5,118,937号(Hillenkamp他)および米国特許第5,045,694号(BeavisおよびChait)に記載される。MALDI−MSにおいて、サンプルは典型的には、マトリックス物質と混合され、不活性なプローブの表面に置かれる。例示的なエネルギー吸収分子には、ケイ皮酸誘導体、シナピン酸(「SPA」)、シアノヒドロキシケイ皮酸(「CHCA」)およびジヒドロキシ安息香酸が含まれる。他の好適なエネルギー吸収分子が当業者には知られている。マトリックスは乾燥し、これにより、分析物分子を包む結晶を形成する。その後、分析物分子がレーザー脱離/イオン化質量分析法によって検出される。MALDI−MSは、サンプルの複雑さが、上記の調製方法を使用して実質的に低下しているならば、本発明のバイオマーカーを検出するために有用である。
【0144】
表面増強レーザー脱離/イオン化質量分析法、すなわち、SELDI−MSは、複雑な混合物における生体分子(例えば、タンパク質など)の分画化および検出についてMALDIを上回る改善を表す。SELDIは、生体分子(例えば、タンパク質など)が、タンパク質バイオチップの表面に結合する捕獲試薬を使用してタンパク質バイオチップの表面に捕獲される質量分析法の1つの方法である。典型的には、結合していない分子が、問い合わせの前にプローブ表面から洗浄される。SELDIが、例えば、米国特許第5,719,060号(「分析物の脱離およびイオン化のための方法および装置」、HutchensおよびYip、1998年2月17日)、米国特許第6,225,047号(「差マップを生じさせるための保持クロマトグラフィーの使用」、HutchensおよびYip、2001年5月1日)、および、Weinberger他、「飛行時間型質量分析法」、Encyclopedia of Analytical Chemistry(R.A.Meyers編、11915頁〜11918頁、John Wiley&Sons、Chichester、2000)に記載される。
【0145】
基材表面のマーカーを、気相イオン分析法を使用して脱離およびイオン化することができる。基材上のマーカーが分離されることを可能にする限り、任意の好適な気相イオン分光計を使用することができる。好ましくは、気相イオン分光計はマーカーの定量を可能にする。
【0146】
1つの実施形態において、気相イオン分光計は質量分析計である。典型的な質量分析計において、マーカーをその表面に含む基材またはプローブが質量分析計の注入系に導入される。その後、マーカーは、脱離源(例えば、レーザー、高速原子衝撃、高エネルギープラズマ、エレクトロスプレーイオン化、サーマルスプレーイオン化、液体二次イオンMS、電場脱離など)によって脱離させられる。生じた脱離し、気化した化学種は、脱離事象の直接的な結果としてイオン化される事前に形成されたイオンまたは中性種からなる。生じたイオンがイオン光学アセンブリーによって集められ、その後、質量アナライザーにより、通過するイオンが分散させられ、分析される。質量アナライザーを出るイオンが検出器によって検出される。その後、検出器は、検出されたイオンの情報を質量対電荷比に変換する。マーカーまたは他の物質の存在の検出では、典型的には、シグナル強度の検出が伴う。これは次には、基材に結合したマーカーの量および特性を反映させることができる。質量分析計の構成要素のいずれか(例えば、脱離源、質量アナライザー、検出器など)を、本発明の実施形態では、本明細書中に記載される他の好適な構成要素と、または、この分野で知られている他の構成要素と組み合わせることができる。
【0147】
別の実施形態において、イムノアッセイを、サンプルにおけるマーカーを検出および分析するために使用することができる。この方法は、(a)マーカーに特異的に結合する抗体を提供すること;(b)サンプルを抗体と接触させること;および(c)サンプルにおけるマーカーに結合した抗体の複合体の存在を検出することを含む。
【0148】
マーカーに特異的に結合する抗体を調製するために、精製されたマーカーまたはその核酸配列を使用することができる。様々なマーカーについての核酸配列およびアミノ酸配列をこれらのマーカーのさらなる特徴づけによって得ることができる。それぞれのマーカーから得られた消化断片の分子量を、様々な酵素によって生じた消化断片の分子量と一致する配列についてデータベース(例えば、SwissProtデータベースなど)を検索するために使用することができる。この方法を使用して、マーカーの核酸配列およびアミノ酸配列を、これらのマーカーがデータベースにおける既知のタンパク質であるならば、特定することができる。
【0149】
あるいは、タンパク質をタンパク質ラダー配列決定によって配列決定することができる。タンパク質ラダーを、例えば、分子を断片化し、断片を、1個のアミノ酸を断片の末端から逐次的に除く酵素消化または他の方法に供することによって生じさせることができる。タンパク質ラダーを調製する方法が、例えば、国際特許出願公開WO93/24834(Chait他)および米国特許第5,792,664号(Chait他)に記載される。その後、ラダーは質量分析法によって分析される。ラダー断片の質量差により、分子の末端から除かれたアミノ酸が特定される。
【0150】
マーカーがデータベースにおける既知のタンパク質でないならば、核酸配列およびアミノ酸配列を、マーカーのアミノ酸配列の一部分でさえの知識を用いて決定することができる。例えば、縮重プローブをマーカーのN末端アミノ酸配列に基づいて作製することができる。このようなプローブは、その後、マーカーが最初に検出されたサンプルから作製されたゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーをスクリーニングするために使用することができる。陽性のクローンを特定し、増幅することができ、その組換えDNA配列を、広く知られている技術を使用してサブクローン化することができる。例えば、Current Protocols for Molecular Biology(Ausubel他、Green Publishing ASSoc.およびWiley−Interscience、1989)、および、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版(Sambrook他、Cold Spring Harbor Laboratory、NY、2001)を参照のこと。
【0151】
精製されたマーカーまたはその核酸配列を使用して、マーカーに特異的に結合する抗体を、この分野で知られている任意の好適な方法を使用して調製することができる。例えば、Coligan、Current Protocols in Immunology(1991);Harlow&Lane、Antibodies:A Laboratory Manual(1988);Goding、Monoclonal Antibodies:Principles and Practice(第2版、1986);および、Kohler&Milstein、Nature、256:495〜497(1975)を参照のこと。そのような技術には、ファージまたは類似するベクターにおける組換え抗体のライブラリーからの抗体の選択による抗体調製、ならびに、ウサギまたはマウスを免疫化することによるポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の調製が含まれるが、これらに限定されない(例えば、Huse他、Science、246:1275〜1281(1989);Ward他、Nature、341:544〜546(1989)を参照のこと)。
【0152】
抗体が提供された後、マーカーは、この分野で知られている好適な免疫学的結合アッセイのいずれかを使用して検出および/または定量することができる(例えば、米国特許第4,366,241号、同第4,376,110号、同第4,517,288号および同第4,837,168号を参照のこと)。有用なアッセイには、例えば、酵素イムノアッセイ(EIA)(例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射イムノアッセイ(RIA)、ウエスタンブロットアッセイまたはスロットブロットアッセイなど)が含まれる。これらの方法はまた、例えば、Methods in Cell Biology:Antibodies in Cell Biology(第37巻)(Asai編、1993);Basic and Clinical Immunology(Stites&Terr他、第7版、1991);およびHarlow&Lane(上掲)に記載される。
【0153】
一般には、被験体から得られたサンプルを、マーカーに特異的に結合する抗体と接触させることができる。場合により、抗体は、抗体をサンプルと接触させることに先立って、複合体の洗浄およびその後の単離を容易にするために固体支持体に固定処理することができる。固体支持体の例には、例えば、マイクロタイタープレート、スティック、ビーズまたはマイクロビーズの形態でのガラスまたはプラスチックが含まれる。抗体はまた、上記で記載されたプローブ基質またはタンパク質チップアレイに結合させることができる。サンプルは、好ましくは、被験体から採取された生物学的流体サンプルである。生物学的流体サンプルの例には、血液、血清、血漿、肝臓細胞、組織、尿、涙液、唾液などが含まれる。好ましい実施形態において、生物学的流体は血清または血漿を含む。その後、サンプルは、サンプルを抗体に接触させる前に、好適な溶出液により希釈することができる。
【0154】
サンプルを抗体とインキュベーションした後、混合物は洗浄され、形成された抗体−マーカー複合体を検出することができる。これは、洗浄された複合体を検出試薬とインキュベーションすることによって達成することができる。この検出試薬は、例えば、検出可能な標識により標識される二次抗体であり得る。例示的な検出可能な標識には、磁石ビーズ(例えば、DYNABEADS(商標))、蛍光性色素、放射性標識、酵素(例えば、ELISAにおいて一般に使用される西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼおよび他の酵素)、および、比色測定用標識(例えば、コロイド状金または着色されたガラスビーズもしくはプラスチックビーズなど)が含まれる。あるいは、サンプルにおけるマーカーは、間接的なアッセイ(この場合、例えば、第2の標識された抗体が、結合したマーカー特異的抗体を検出するために使用される)を使用して、かつ/または、競合アッセイもしくは阻害アッセイ(この場合、例えば、マーカーの異なったエピトープに結合するモノクローナル抗体が混合物と同時にインキュベーションされる)において検出することができる。
【0155】
アッセイを通して、インキュベーション工程および/または洗浄工程が試薬のそれぞれの組み合わせの後で要求される場合がある。インキュベーション工程は、約5秒から数時間まで、好ましくは、約5分から約24時間まで変化させることができる。しかしながら、インキュベーション時間は、アッセイ形式、マーカー、溶液の体積、断片およびその誘導体の濃度に依存する。通常、アッセイは周囲温度で行われ、だが、所定の温度範囲で、例えば、10℃〜40℃で行うことができる。
【0156】
好ましい実施形態において、イムノアッセイはサンドイッチELISAである。イムノアッセイを使用して、サンプルにおけるマーカーの存在または非存在、ならびに、サンプルにおけるマーカーの量を明らかにすることができる。最初に、サンプルにおけるマーカーの試験量を、上記で記載されるイムノアッセイ方法を使用して検出することができる。マーカーがサンプルに存在するならば、マーカーは、マーカーと特異的に結合する抗体との抗体−マーカー複合体を、上記で記載された好適なインキュベーション条件のもとで形成する。抗体−マーカー複合体の量を、標準物と比較することによって求めることができる。標準物は、例えば、サンプルに存在することが知られている既知の化合物または別のタンパク質が可能である。上記で記されたように、マーカーの試験量は、測定単位が対照に対して比較され得る限り、絶対的な単位で測定される必要はない。
【0157】
サンプルにおけるこれらのマーカーを検出するための方法は多くの適用を有する。例えば、1つまたは1つよりも多いマーカーを、肝臓傷害、肝臓疾患、傷害の程度、アルコールおよび薬物の乱用、妊婦によるアルコールおよび/または薬物の乱用に起因する胎児傷害などの診断を助けるために測定することができる。別の例では、マーカーの検出方法は、処置に対する被験体における応答をモニターするために使用することができる。別の例では、マーカーの検出方法は、これらのマーカーの発現をインビボまたはインビトロで調節する化合物についてアッセイするために、また、そのような化合物を特定するために使用することができる。
【0158】
マーカーの脱離および検出によって得られたデータは、任意の好適な手段を使用して分析することができる。1つの実施形態において、データは、プログラム可能なデジタルコンピューターの使用により分析される。コンピュータープログラムは一般に、コードを保存する読み取り可能な媒体を含む。プローブにおける各特徴の場所、そのような特徴における吸着剤の正体、および、吸着剤を洗浄するために使用された溶出条件を含む特定のコードをメモリーに割り当てることができる。コンピューターはまた、プローブ上の特定のアドレス指定可能な場所から受け取った様々な分子量におけるシグナルの強度に関するデータを入力として受け入れるコードを含む。このデータは、それぞれのマーカーによってもたらされるシグナルの強度を含めて、検出されたマーカーの数を示すことができる。
【0159】
データ分析では、検出されたマーカーのシグナル強度(例えば、ピークの高さ)を決定する工程、および、「異常値」(所定の統計学的分布から外れるデータ)を除く工程を含むことができる。観測されたピークは正規化することができる(何らかの基準に対する各ピークの高さが計算されるプロセス)。例えば、基準は、スケールにおいてゼロとして設定される、装置および化学品(例えば、エネルギー吸収分子)によって生じるバックグラウンドノイズとすることができる。その後、各マーカーまたは他の生体分子について検出されたシグナル強度を所望のスケール(例えば、100)での相対的な強度の形態で表示することができる。あるいは、標準物(例えば、ASLタンパク質)を、標準物からのピークが、検出された各マーカーまたは他のマーカーについて観測されたシグナルの相対的な強度を計算するための基準として使用され得るようにサンプルとともに加えることができる。
【0160】
コンピューターは、得られたデータを、表示するための様々な形式に変換することができる。「スペクト図または保持マップ」と呼ばれる1つの形式では、標準スペクト図を表示することができ、この場合、図は、それぞれの特定の分子量で検出器に到達するマーカーの量を表す。「ピークマップ」と呼ばれる別の形式では、ピーク高さおよび質量情報のみがスペクトル図から保持され、これにより、より明瞭な画像がもたらされ、ほぼ同一の分子量を有するマーカーがより容易に認められることが可能になる。「ゲル図」と呼ばれるさらに別の形式では、ピーク図からのそれぞれの質量を、それぞれのピークの高さに基づいたグレースケール画像に変換することができ、これにより、電気泳動ゲルにおけるバンドに類似する外観がもたらされる。「3Dオーバーレイ」と呼ばれるさらに別の形式では、数個のスペクトルを、相対的なピーク高さにおけるわずかな変化を調べるために重ね合わせることができる。「差マップ図」と呼ばれるさらに別の形式では、2つ以上のスペクトルを比較することができ、これにより、特異なマーカー、および、サンプル間でアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションされるマーカーが都合よく強調される。2つの任意のサンプルからのマーカープロフィル(スペクトル)を視覚的に比較することができる。さらに別の形式では、Spotfire Scatter Plotを使用することができ、この場合、検出されるマーカーがプロットにおいてドットとしてプロットされ、プロットにおいて、プロットの1つの軸が、検出されたマーカーの見かけ分子量を表し、別の軸が、検出されたマーカーのシグナル強度を表す。それぞれのサンプルについて、検出されるマーカー、および、サンプルに存在するマーカーの量をコンピューター読み取り可能な媒体に保存することができる。このデータは、その後、対照(例えば、対照(例えば、肝臓傷害が検出できない正常かつ健康な被験体)において検出されたマーカーのプロフィルまたは量)と比較することができる。
【0161】
キット
本発明のアッセイはまた、キットを調製するために理想的に適する。そのようなキットは、キャリア手段が、イムノアッセイの別個の要素をそれぞれが含む1つまたは1つよりも多い容器手段(例えば、バイアルおよびチューブなど)を収容するために、それにより厳密に限定された状態で区画化されることを含むことができる。例えば、固相支持体に固定された第1の抗体を含有する容器手段、および、第2の検出可能に標識された抗体を溶液で含有するさらなる容器手段が存在し得る。さらなる容器手段は、検出されるべき肝臓バイオマーカーの連続希釈物を含む標準溶液を含有することができる。それぞれの肝臓バイオマーカーの標準溶液は、それぞれの肝臓バイオマーカーの濃度が横軸にプロットされ、検出シグナルが縦軸にプロットされる標準曲線を準備するために使用することができる。肝臓バイオマーカーのいずれか1つを含有するサンプルから得られた結果は、それぞれの検出されたバイオマーカーの濃度を得るためにそのようなプロットから内挿することができる。
【0162】
1つの実施形態において、バイオマーカーのパネルがキットにおいて提供される。これらのバイオマーカーには、アルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS)およびアルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、硫化(エストロゲンスルホトランスフェラーゼ(EST)、スクアレンシンターゼ(SQS)、肝臓グリコーゲンホスホリラーゼ(GP)、カルバモイルリン酸シンセターゼ(CPS−1)、α−エノラーゼ1、グルコース調節タンパク質(GRP)およびスペクトリン分解生成物が含まれるが、これらに限定されない。
【0163】
別の実施形態において、肝臓バイオマーカーのパネルに対する抗体がキットにおいて提供される。抗体には、アルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS)およびアルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、硫化(エストロゲンスルホトランスフェラーゼ(EST)、スクアレンシンターゼ(SQS)、肝臓グリコーゲンホスホリラーゼ(GP)、カルバモイルリン酸シンセターゼ(CPS−1)、α−エノラーゼ1、グルコース調節タンパク質(GRP)およびスペクトリン分解生成物について特異的な抗体が含まれるが、これらに限定されない。抗体はポリクローナルまたはモノクローナルが可能である。
【0164】
キットは、所望されるならば、肝臓バイオマーカーのパネルと、それらの抗体との両方を提供することができる。例えば、アルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS)およびアルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、硫化(エストロゲンスルホトランスフェラーゼ(EST)、スクアレンシンターゼ(SQS)、肝臓グリコーゲンホスホリラーゼ(GP)、カルバモイルリン酸シンセターゼ(CPS−1)、α−エノラーゼ1、グルコース調節タンパク質(GRP)およびスペクトリン分解生成物。
【0165】
下記の実施例は、限定としてではなく、例示として提供される。具体的な実施例が提供されているが、上記の説明は例示的であり、限定的ではない。前記で記載された実施形態の特徴のいずれか1つまたは1つより多くを本発明における任意の他の実施形態の1つまたは1つよりも多い特徴と任意の様式で組み合わせることができる。さらに、本発明の多くの変形が、本明細書を検討したとき、当業者には明らかになる。従って、本発明の範囲は、上記の説明を参照して決定されるべきではなく、代わりに、均等物のそれらの完全な範囲と一緒に、添付されている請求項を参照して決定されなければならない。
【0166】
本明細書において引用されるすべての刊行物および特許文書は、それぞれの個々の刊行物または特許文書がそのように個々に示されていたかのようにそれと同じ程度に、すべての目的のために、適切な部分において参考として組み込まれる。本文書における様々な参考文献のそれらの引用により、本出願人らは、いずれかの特定の参考文献が本出願人らの発明に対する「先行技術」であることを認めていない。
【実施例】
【0167】
材料および方法
虚血/再灌流傷害のラットモデル。
【0168】
成体のオスのSprague Dawleyラットを、ラットが手術レベルの麻酔に達するまで4%イソフルランで麻酔する。ノーズコーンが、麻酔ガスを送達するために続けられる。長さが約3cmの正中切開を行い(腹壁切開)、肝臓を露出させる。門脈、左側葉および中葉の肝動脈および胆管を小さい血管鉗子によって閉塞する。右葉への血液供給を中断させず、門脈血流を、消化管の血管うっ血の所見を伴うことなく、それらにより維持する。30分の正常体温での虚血の後、虚血性肝臓を通過する血液の再循環を、鉗子を除くことによってさらに30分間にわたって達成する。再灌流終了後、動物の安楽死を両側開胸術によって行い、血液を集め、そして、肝臓を、しばらくの間、残留血液を除くために冷PBSにより再灌流し、分析のために取り出す。
【0169】
肝臓組織処理およびサンプル調製。
【0170】
ハイスループットスクリーニング−ウエスタンブロット((HTS−WB)(PowerBlot))分析および従来のウエスタンブロット分析のために、肝臓標本を、切除後、液体窒素で急速凍結する。I/Rラット、実験未使用ラットおよび偽操作ラットからの肝臓サンプルを、0.1mg/mlのPMSF、1mMのオルトバナジン酸ナトリウム、5mMのEDTA、5mMのEGTAおよびプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche,Inc)を含有する、PBS、1%Nonidet P−40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS、1mM DTTからなるRIPA緩衝液において、Polytronを使用して氷上でホモジネートする。インビボでのr−カスパーゼ−3処理およびr−カルパイン−2処理のために、無傷(実験未使用)ラットから得られた肝臓を、プロテアーゼ阻害剤を含まない、PBS、1%Nonidet P−40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS、1mM DTT、5mM EDTA、5mM EGTAからなるRIPA緩衝液においてホモジネートする。ホモジネートを氷上に30分間放置し、4℃において10.000rpmで15分間遠心分離する。上清を取り出し、タンパク質を、ビシンコニン酸(Pierce,Inc)を使用して測定する。無傷肝臓のサンプルをカスパーゼ−3(Chemicon、比活性:1μg/μl)またはカルパイン−2(Calbiochem、0.25μg/μl)によりインビトロで処理する。
【0171】
ハイスループットスクリーニングウエスタンブロット(HTS−WB)分析および従来のウエスタンブロット分析。
【0172】
ゲルは13x10cmの4−15%グラジエントSDS−ポリアクリルアミド(0.5mm厚)(Bio−Rad Criterion IPG)であり、200μgのタンパク質が、ゲルの幅全体にわたる1つの大きなウェルに負荷される。これは、標準的な10ウェルミニゲルでの1レーンあたり約8μgにあたる。ゲルを150ボルトで1.5時間泳動し、タンパク質をImmobilon−Pメンブラン(Millipore)に転写する。メンブランをブロッキング緩衝液で1時間ブロッキング処理する。
【0173】
メンブランを、メンブラン全面で40個の流路を隔てるウエスタンブロッティングマニホールドにより固定する。それぞれの流路において、複合抗体カクテルが加えられ、37℃で1時間ハイブリダイゼーションさせられる。
【0174】
ブロットを取り出し、洗浄し、Alexa680蛍光性色素にコンジュゲート化された二次ヤギ抗マウス(Molecular Probes)により37℃で30分間可視化する。メンブランを洗浄し、乾燥し、Odyssey Infrared Imaging Systemを使用して(モノクローナル抗体標的検出については)700nmで走査する。
【0175】
MW標準物−すべてのブロットのレーン4およびレーン40には、2つの標準化カクテルが負荷される。データ分析−データ分析には、1.5倍を超える変化が示されるそれぞれのブロットからの未処理のシグナル強度データおよび正規化されたシグナル強度データが含まれる。分析の特徴の記載は下記に従う:1.量−規定されたスポットの全体的強度。2.正規化された量−すべてのブロットをブロット上のすべての有効スポットの強度の和に対して正規化し、その後、1,000,000倍する。3/.比率−実験バンドについての正規化された量が、対応する対照のバンドについての正規化された量の比率として表される。この比率は、タンパク質発現における増大または低下を明らかにするために使用される。結果はまた、対照に対する実験サンプルについて、増大または低下のいずれであっても、倍数変化(タンパク質変化の全体的な傾向を表す半定量的な値)として表される。
【0176】
変化が信頼度の順に示される:レベル10が最大の信頼度である。信頼度のレベルは下記のように定義される:a)レベル10−肉眼検査にもまた合格する、良質なシグナルからの4つすべての比較において2倍を超える変化;b)レベル9−肉眼検査にもまた合格する、良質なシグナルからの4つすべての比較において1.5倍〜1.9倍の変化;c)レベル8−肉眼検査に合格する、低いシグナルからの4つすべての比較において2倍を超える変化;d)レベル7−肉眼検査に合格する、良質なシグナルからの4つすべての比較において1.25倍〜1.5倍の変化;e)レベル6−肉眼検査に合格しない、4つすべての比較において2倍を超える変化;f)レベル5−肉眼検査に合格しない、4つすべての比較において1.5倍〜1.9倍の変化。
【0177】
肝臓特異的タンパク質の標的化された分析。
【0178】
表1に示される分析は、様々な供給元から入手可能な抗体を使用してウエスタンブロットによって行われる。典型的には、25μgのタンパク質を、5個のサンプルからなる2つの同一の組とともに負荷し、4−20%ポリアクリルアミドゲルミニスラブにおいて分離し、PVDFメンブランに転写する。メンブランを2つに切り、ブロッキング処理し、2つの異なる抗体によりプローブし、ECL Plus Kit(Pierce,Inc)を使用して可視化し、走査する。メンブランは、剥ぎ取り緩衝液を使用して剥ぎ取り処理され、他の2つの抗体により再プローブされる。バンドをEDCL Plus Kitにより可視化し、走査した後、メンブランは再び剥ぎ取り処理され、αII−スペクトリン抗体によりプローブされ、アルカリホスファターゼ検出法を使用して発色させられる。発色タンパク質の分子量の正確な評価のために、2組のタンパク質標準物が加えられ、同時に発色させられる(Magic Markers、Invitrogen,Inc)。
【0179】
液体クロマトグラフィー、SDS−PAGE、LC/質量分析法。
【0180】
簡単に記載すると、LCシステムを、2つのカラム(S−セファロースおよびQ−セファロース)が直列で操作されるように設定する。サンプルをろ過し、タンパク質(1mg)をサンプルループに負荷し、移動相A(20mM Tris−HCl)および移動相B(1MのNaClを含有する20mM Tris−HCl)のグラジエントを使用して処理する。分画物(1ml)を合計で32個の分画物について集める(1分あたり1つの分画物)。分画物を濃縮し、BioRad Criterionゲル(4−20%、Tris−HCl、18ウェルゲル)でのSDS−PAGEに供する。サンプルを対にして泳動する:偽操作(対照);I/R;インビトロでの非処理(インビトロでの対照);カスパーゼ−3処理および/またはカルパイン−2処理、これらはそれぞれの分画物について互いに隣接する。ゲルをクーマシーR250で染色し、切り出しのためのバンドを選択するために使用する。
【0181】
バンドの切り出し、タンパク質の還元、アルキル化、消化および抽出を、以前に記載されたように行う(Wang、K.K.、Ottens,A.、Haskins,W.、Liu,M.C.、Kobeissy,F.、Denslow,N.、Chen,S.およびHayes,R.L.(2004)、外傷性脳傷害のプロテオミクス研究、Int Rev Neurobiol 61、215〜240)。ペプチドをカラムから溶出するために使用されるLCは3つの相を有する:移動相A―99.6%水、0.4%酢酸;移動相B−有機層−20%水、0.4%酢酸、79.6%メタノール;移動相C−サンプルをチューブからカラムに負荷するために使用され、0.4%酢酸、4%アセトニトリルおよび95.6%水である。質量分析法のために、サンプルを15μLの移動相C溶液において再構成する。
【0182】
MSはLCQ Deca XP(四重極イオントラップ質量分析計)である。ペプチドを逆相カラムに負荷し、有機グラジエントを使用してMSの中に溶出し、エレクトロスプレーイオン化に供する。イオンがMSの内部に入ると、数回の走査が行われる。最初に、全域MS走査−走査時にイオントラップに入ってきたサンプルからのすべての質量対電荷値(m/z)が記録される。それぞれのピークが、親イオンを表す質量対電荷値を表す。質量分析計は3つの最も強い親イオンを選択し、もう一回の走査を行う(MSMS走査)。それぞれの親イオンが、ペプチドに特有なスペクトルを生じさせる生成物イオンに断片化される。従って、それぞれのMS走査について、3つのMSMSスペクトルがもたらされる(それぞれが異なるペプチドを表す可能性がある)。一緒にプロットされたこれらすべての走査の集まりが、BioWorks Browserに送られるクロマトグラムである。サンプルにおけるスペクトルがデータベース内のスペクトルと一致するとき、そのスペクトルにはXcorrが割り当てられる。この値はこれら2つのスペクトルの類似性のレベルを示す。
【0183】
ラット肝臓の虚血/再灌流の経時変化。
【0184】
合計で30分間の完全な正常体温での虚血に続いて、10分、30分および180分の再灌流が行われる。加えて、30分の部分的虚血が、適切な肝動脈、門脈分岐部および総胆管を鉗子により閉じることによって中葉および左肝葉において生じさせられる。この手法は、右葉への門脈分岐部を開通したままにし、腸管の低酸素症を軽減する。180分の再灌流での死亡率が30分の3カ所での完全な肝閉塞の後で大きいならば、部分的虚血(血液供給における約70%)が行われる。
【0185】
肝臓サンプル調製、タンパク質発現の研究および分析。
【0186】
これらを従来のウエスタンブロットによって行う。αII−スペクトリン測定のために使用された抗体は、全長サイズのαII−スペクトリン分子に対する抗体(Affinity,Inc)、カスパーゼ−3により切断された150i断片に対する抗体(Cell Signalling Technologies)、カスパーゼ−3により生じた120kDa断片に対する抗体(本発明者らの研究室(CNPBR−UF)から得られるAb)、および、カルパイン−2により切断される150断片に対する抗体(CNPBR−UF)である。肝バイオマーカーに対する抗体が様々な商業的供給元および非商業的供給元から得られる。
【0187】
血清サンプルおよび血漿サンプルの調製。
【0188】
血液を実験手技終了時にラット心臓から集める。血漿を遠心分離によってK−EDTA保存血から得る。20μlの血漿または血清を180μlのRIPA緩衝液(プロテアーゼ阻害剤を含む)と混合し、激しく撹拌し、氷上で30分間インキュベーションし、遠心分離する。上清を取り出し、アリコットをサンプル緩衝液と混合し(1:1)、加熱し、ゲルに負荷する。
【0189】
血清酵素アッセイ。
【0190】
ALT、LDHおよびγ−GTPの活性を、市販のキットを製造者の説明書に従って用いて速度論的方法を使用して求める。
【0191】
肝臓の免疫組織化学。
【0192】
実験ラットの肝臓標本を組織傷害の分析のために再灌流終了時に採取する。肝臓組織のサンプルを、標準的なプロトコルに従った日常的なH&E染色のために10%中性ホルマリンに入れるか、または、免疫組織化学のためにOCT緩衝液において直ちに凍結する。
【0193】
活性化されたカスパーゼ3およびカルパイン−2の免疫染色。
【0194】
凍結保存された4μmの肝臓凍結切片を、氷冷した4%パラホルムアルデヒド/PBAにおいて、または、−20℃のメタノールにおいて、20分間、氷上で固定処理する。サンプルを、それぞれ3分間、PBSにより3回洗浄し、冷たい0.5%TritonX−100/PBS/0.2%スクロースにより氷上で透過処理し、PBSにより洗浄し、0.1%ホウ水素化ナトリウムにより5分間失活化処理する。サンプルを20%ヤギ血清/PBSにおいて室温(RT)で30分間ブロッキング処理し、活性化カスパーゼ−3(17/19kDaタンパク質)のマウスモノクローナル抗体(Cell Signalling,Inc)または活性化カルパイン−2のマウスモノクローナル抗体(Chemicon,Inc.)と20%ヤギ血清/PBSにおいて一晩インキュベーションする(+40℃)。徹底的な洗浄の後、カバースリップを、蛍光性色素(AlexaGreen488、Molecular Probes)とコンジュゲート化された抗マウスIgGとインキュベーションする。カバースリップを載せ、Optical Camera(Zeiss,Inc)を備えた蛍光顕微鏡を使用して分析する。
【0195】
肝臓組織切片に対するインシトゥーTUNNELアッセイ。
【0196】
TUNNELアッセイを、市販のPROMEGAキットを使用して行う。肝臓サンプルを10%緩衝化ホルマリンにおいて固定処理し、パラフィンに包埋する。組織切片をスライドガラスに載せ、その後、脱パラフィン化し、再水和する。スライドガラスをプロテイナーゼK消化に15分間供する(0.2M Tris/0.5M EDTA、pH8.0、プロテイナーゼK、1mg/ml)。スライドガラスをPBSにより洗浄し、緩衝液と15分間平衡化させ、FITCコンジュゲート化ヌクレオチド混合物およびTdTにより80分間染色する。酵素反応を停止させ、スライドガラスをヨウ化プロピジウム/抗退色DNA溶液により対比染色し、Optical Camera(Zeiss,Inc)を適切なフィルターとともに備えた蛍光顕微鏡を使用して写真撮影する。
【0197】
ASS抗体
ASSのC’末端に対するモノクローナル抗体が市販されている(BD Transduction Laboratories)。さらなるモノクローナル抗体がフロリダ大学でのBiotechnology ProgramでHybridoma Core Laboratotryにおいて製造されつつある。マウスを、特異的な抗ASSポリクローナル抗体をウサギにおいて調製するために使用された同じ物質で免疫化する。所望するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを、その安定性および純度を保証するために2回クローン化する。創始体のクローン化されたハイブリドーマ細胞の、少なくとも100個のアリコットを、抗体の長期供給を保証するために凍結する。
【0198】
抗体分析
すべてのASS抗体の抗原結合親和性を、間接的ELISA、ウエスタンブロットおよびBIAcore3000を使用して分析する。それぞれの特異的なELISAのために、最適な抗原結合性および親和性を与える捕獲抗体および検出抗体の対を選択する。抗体の選択は、大きい親和性を有し、かつ、バイオマーカーにおける異なるエピトープを認識するそのような抗体に基づく。BIAcore3000(Protein Chemistry Core、フロリダ大学)によって明らかにされるような速いon速度および遅いoff速度から構成される大きい親和性定数を有する抗体が選択される。BIAcoreは、タンパク質と、他のタンパク質、ペプチドまたはDNAとの間での相互作用の親和性定数(on速度およびoff速度を含む)の決定を可能にするチップ型デバイスである。この装置では、親和性定数の正確な決定を、外因性標識を加えることなくリアルタイムで可能にする非常に高感度な表面プラズモン共鳴検出システムが使用される。
【0199】
組換えASS抗原の産生およびSW ELISAの有効性確認。
【0200】
ASSのcDNAがATCCから市販されており、これを組換えタンパク質の産生のために使用する。標準曲線アッセイのために、ウェルあたり50ng〜0.001ngの精製タンパク質の連続希釈物を分析する。これにより、血液または血清に存在すると考えら得る濃度を包含して、100倍〜1000倍であることが予想されるアッセイのダイナミックレンジが決定される。SW ELISAのデータは、感度が非常に高感度なECLウエスタンブロット(高pgレベル)よりも大きいことを示している。
【0201】
BIAcore:
PBSTにおける2pmolのバイオマーカータンパク質(50ng)を10mM酢酸塩緩衝液(pH4.5)で希釈した。FC1はCM5チップであり、これを対照として使用し、これに対して、FC2を活性化し、これに5μlのバイオマーカーを10μl/分で注入し、これにより、475のΔRUが得られた。抗体をPBSTにおいて1:10希釈し、20μlを2分間にわたって注入し(kinject)、その後、3分の解離を行った。表面の再生を、5μlのグリシン(10mM、pH1.5)を注入することによって行った。抗体注入および再生が、表面の反応性を失うことなく繰り返された。
【0202】
実施例1:アルギニノコハク酸シンターゼ(ASS)の発現
データは、ASSタンパク質が、成体ラットの組織では肝臓において、また、はるかにより少ない程度ではあるが、腎臓において、また、非常に低いレベルではあるが、精巣において発現されることを示す。(i)ASSおよびそのカスパーゼ−3媒介の分解生成物が肝臓においてアップレギュレーションされ、(ii)ASSが、30分の肝臓虚血、それに続く30分の再灌流の後で血漿に蓄積した。数多くの実験を、固定された30分の虚血期間とともに、異なる再灌流時間に特に重点を置いて、虚血/再灌流のラットモデルを使用して行った。血液におけるASSの蓄積は時間依存的であり、再灌流後3時間で定常状態に達した。血漿中のASSレベルは、肝臓組織の古典的な組織学的分析および活性化カスパーゼ−3による免疫染色によって決定される肝臓損傷の重篤度と強く相関した。
【0203】
実施例2:生物学的流体におけるアルギニノコハク酸シンターゼ(ASS)の特異的かつ定量的な検出のためのサンドイッチELISA
ヒトASSタンパク質の発表された配列(P00966)に基づいて、2つのペプチドを設計し、合成した:N−47−ARKKALKLGAKKV−59−C(配列番号1)およびN−214−AKAPNTPDILEIEFKK−229−C(配列番号2)。現在、これらのペプチドを用いて、ウサギポリクローナル抗体が作製されている。
【0204】
サンドイッチELISAアッセイがヒトにおける肝臓の虚血性傷害のための診断として使用される。これには、肝臓移植、様々な病因の急性肝不全、腹部外傷および多発外傷による敗血症性ショックが含まれる。データは、ラットと同様に、血漿中のASSが対照の健康者では検出されないことを示す。
【0205】
ELISAが、生物学的流体(例えば、血清および血漿など)、および、肝臓を含む組織における既知量のASSの測定値に対して正規化される。標準物のASSが組換えGSTタグ化タンパク質として得られる。ASSモノクローナル抗体が46kDaでのASSを大きい特異性および感度で認識したことが明らかにされた。この抗体は特異的ELISAにおける検出抗体として使用される。ASSについて特異的である作製された2つのウサギポリクローナル抗体が、BIAcoreを使用して調べられ、濃度が、管理された力価測定実験において抗体およびASS標準物の濃度を変化させることによってELISAにおける使用のために最適化される。様々な濃度のタンパク質および抗体が、抗体の特異性および感度を明らかにするために調べられる。最大結合の80%を与えるタンパク質濃度および抗体濃度がサンドイッチELISAのために選ばれる。
【0206】
抗体の反応性および特異性を明らかにするために、組織パネルがウエスタンブロットによってプローブされる。間接的ELISA法が、アッセイで使用される抗体の最適な濃度を決定するために、ELISAプレートに結合させた組換えASSタンパク質とともに使用される。このアッセイでは、抗ASSのロバスト(robust)濃度が、アッセイで使用するために決定される。96ウェルマイクロプレートが50ng/ウェルにより被覆され、ウサギおよびマウスの抗Ass抗体が、アッセイのために使用するための最適な濃度を決定するために、1:250の希釈度から出発して1:10,000まで連続的に希釈される。二次の抗ウサギ(または抗マウス)−西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識の検出抗体およびUltra−TMBが、結果を評価するための検出基質として使用される。
【0207】
抗体の濃度が最大シグナルのために決定されると、それぞれの抗体についての間接的ELISAの最大検出限界が決定される。96ウェルマイクロプレートが、連続的に希釈される50ng/ウェルから、1pg/ウェル未満まで被覆される。検出のために、抗体が、上記で決定された濃度に希釈される。これにより、ASSのELISAアッセイについての感度、ならびに、捕獲および検出のための抗体の選択が提供される。
【0208】
サンドイッチELISAにおけるシグナルを最適化および増強するために、検出抗体は、何らかの交差反応性を避けるために、また、非常に高感度である増幅システムによりシグナルを増強するために、HRPにより直接に標識される。この形式および増幅は、本発明者らの研究室において他のバイオマーカーについて申し分なく機能している。SW ELISAアッセイを組み立てるために、96ウェルプレートのウェルが飽和濃度の精製抗体(250ng/ウェル)により被覆され、ASS抗原の濃度がウェルあたり50ngから1pg未満までの範囲であり、検出抗体は、上記で決定された濃度である。最初に、複合体が、SW ELISA形式を確認するために、HRP標識された二次抗体により検出されるが、検出システムは、HRP標識された検出抗体によって置き換えられる。
【0209】
実施例3:ラット肝臓における変化したタンパク質およびその分解生成物の特定
ラット(Sprague Dawley、オス、225g〜250g)をイソフルランで麻酔し、肝十二指腸間膜を固定し、肝臓の三カ所(門脈、肝動脈および胆管)を、30分の正常体温での虚血、その後の30分の再灌流のために、小さい血管鉗子により閉塞した。終了した時、血液を抜き取り、肝臓を、分析のために、しばらくの間、氷冷PBSで灌流し、切除した。偽操作ラットを、肝臓の三カ所を結紮することなく麻酔に供した。無傷の肝臓組織および血液をラットの麻酔の直後に得た。無傷の肝臓組織を組換えカスパーゼ−3または組換えカルパイン−2によりインビトロで処理した。最初に、I/R傷害のバイオマーカー発見のために、40抗体の特注ミニアレイを設計した。
【0210】
結果が、対照(偽操作)サンプルおよびI/Rサンプル、インビトロでのカスパーゼ−3処理の無傷サンプルおよびカルパイン−2処理サンプルの40抗体ウエスタンブロットミニスクリーニングの画像として示される。
【0211】
実施例4:肝臓傷害の新規な肝バイオマーカーの特徴づけ
肝αII−スペクトリンがI/R肝臓ではカスパーゼ−3およびカルパイン−2の両方により切断され、SBDP(150kDaおよび120kDa)が蓄積した(図3A)。I/R誘導による肝臓傷害の、可能性のあるバイオマーカーとしての3つの肝タンパク質の特徴づけおよび比較では、下記が含まれた:アルギニノコハク酸シンターゼ(AS)、肝臓イソ型のグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST−BB)、また同様に、γ−GTPおよびALT(肝細胞傷害の古典的マーカー)。ASおよびγ−GTPを、カスパーゼ−3および/またはカルパイン−2による可能性のある分解生成物の蓄積に特に重点を置いて、ウエスタンブロット分析を使用して肝臓組織において調べた(図3Bおよび図3C)。
【0212】
図3Cに見られるように、肝臓におけるγ−GTPの主要なバンド(約140kDa)は、90kDaの予測されたM.W.とは異なっており、また、約70kDaの主要でない免疫反応性のさらなる蓄積を伴うカスパーゼ−3処理の肝臓と同様に、I/R肝臓では修飾されるようである。新規な肝バイオマーカーの診断値の予備的な有効性評価を血漿において行った。
【0213】
無傷のASSタンパク質(46kDa)が、30分/30分の虚血/再灌流に供されたラットの血漿に蓄積したこと、しかし、これが、正常なラットまたは偽操作ラット、および、長期アルコール投与のラットから得られた血漿には存在しなかったことが見出されている。驚くべきことに、この時点で肝臓組織において観測されたことに反して、ASSの切断断片がI/R血漿には存在していなかった(図3B)。非常に低いレベルのGST−BB(肝イソ型のGST)が、正常なラットの血漿において、約51kDaのタンパク質(予想M.W.、約23〜25kDa)として検出可能であった。GST−BBが偽操作ラットおよびI/Rラットにおいて消失し、一方、GST−BBにおける著しい増大が、アルコールで長期間処理されたラットにおいて認められた。血漿中のALTレベル(57kDaの予想M.W.)はI/Rラットおよび偽操作ラットでは変化していなかった。対照的に、長期アルコールラットの血漿におけるALTは、免疫反応性バンドのわずかな変化および断片の消失(これらはALTの切断を示し得る)とともに増大していた。
【0214】
実施例5:プロテオミクス分析
プロテオミクス分析がラットIR肝臓に適用される。タンパク質が、ゲル電気泳動と連係した連続するS−セファロースカラムおよびQ−セファロースカラムでの二相イオン交換クロマトグラフィー(CAX−PAGE)によって分離される。タンパク質の示差的な表示がクーマシーブルーによる可視的染色によって達成される(すべてが同じゲルで連続して行われる)。発現または修飾に差があるタンパク質を、HTアナライザー1Dソフトウエア(Nonlinear Dynamics)を使用して特定し、ゲル内トリプシン消化のために取り出す。消化物を、タンデム質量分析法とのオンラインでのナノスプレー液体クロマトグラフィー(ナノLC/MSMS)を使用して分析する。得られたタンデム質量スペクトルを、Sequestアルゴリズムを利用して非冗長型の哺乳動物タンパク質データベースから得られたトリプシン消化ペプチド配列と相関させる。いくつかの可能な相同的タンパク質が通常、この方法を使用して得られる。SDS−PAGEゲルにおけるタンパク質バンドの分子量が、データベースにおいて見出される配列決定されたタンパク質についての予測分子量と比較される。
【0215】
表1.肝臓の虚血/再灌流傷害のバイオマーカー
【0216】
【表1】

サンプルはまた、偽操作の肝臓サンプル(C)およびI/Rサンプル(T)について並行して処理された。発現に差があるタンパク質を、HTアナライザー1Dソフトウエア(Nonlinear Dynamics)を使用して特定し、四角で囲んだ。タンパク質バンドをゲルから切り出し(存在するならば、CバンドおよびTバンド)、トリプシンで消化した。消化物を、タンデム質量分析法とのオンラインでのナノスプレー液体クロマトグラフィー(ナノLC/MSMS)を使用して分析した。得られたタンデム質量スペクトルを、Sequestアルゴリズムを利用して非冗長型の哺乳動物タンパク質データベースから得られたトリプシン消化ペプチド配列と相関させた。スペクトル相関が大きいペプチド一致物のみを、DTASelectソフトウエアによるデータ選別の使用によって集め、IR対偽操作の肝臓プロテオームを、Contrastソフトウエアを使用して比較した。これまでに行われた最も関連性のある肝タンパク質の特定および分析が下記に示される。これらのタンパク質は、偽操作の肝臓と比較して、I/R肝臓組織では著しく低下した(例えば、T7A対C7A)か、または、完全に消失した(例えば、T4対C4)かのいずれかであった。
【0217】
実施例6:肝臓移植患者
図29は6名の肝臓移植患者からのASSの血清値を示す。血清サンプルを、移植が行われる前(ベースライン)、肝臓が取り出されている間(無肝臓)、および、新しい肝臓が患者に移植された後の様々な時点(1分または3分、30分、45分、60分、120分)で肝臓移植患者(n=6)から集めた。血清ASSレベルをASS特異的なSW ELISAによって(ng/ml単位で)測定した。150ng/mlの値はアッセイの感度を超えていた。
【0218】
表2.SDS−PAGEでの示差的表示の後、偽操作肝臓に対してI/R肝臓組織において低下または消失する、タンデム質量分析法を伴うナノスプレー液体クロマトグラフィー(ナノLC/MSMS)によって特定された肝臓タンパク質。
【0219】
【表2】

他の実施形態
本発明がその詳細な記載とともに記載されているが、前記の記載は、本発明の範囲を例示し、本発明の範囲を限定しないことが意図され、本発明の範囲は、添付されている請求項の範囲によって規定されることを理解しなければならない。他の局面、利点および改変が添付の請求項の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0220】
本発明は、添付された請求項において詳細に示される。本発明の上記利点およびさらなる利点が、添付された図面と併せて理解される下記の説明を参照することによってより良く理解され得る。
【図1】アポトーシスおよび壊死を虚血/再灌流後に生じさせる経路の概略的例示である。
【図2】正常な肝臓およびI/R肝臓におけるASSおよびその切断断片の発現を示すブロットである。30/10−30分の虚血、10分の再灌流;30/30−30分の虚血、30分の再灌流。
【図3】図3A〜図3Bは、カスパーゼ−3またはカルパイン−2によりインビトロで処理された、無傷の虚血/再灌流肝臓および無傷の肝臓におけるαII−スペクトリン(A)、アルギニノコハク酸シンターゼ(B)およびγ−GTP(C)の肝臓レベルを示す一連ブロットである。図3Aはα−スペクトリンの検出を示す。図3Bはアルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS)の検出を示す。図3CはγGTPの検出を示す。
【図4】図4Aは、ASSが血漿において検出されるエレクトロケミルミネセント(ECL)染色を示す。図4Bは、血漿中ASSを検出するアルカリホスファターゼ染色を示す。Alc−ラットにおける長期アルコール処理。I/R−肝臓の虚血/再灌流。S−偽操作ラット、門脈結紮なし。C−対照(正常なラット)。M−分子量マーカー。
【図5】肝臓傷害を有するラットの血漿におけるバイオマーカーASSの検出を示す。実験に含まれた肝臓傷害は下記の通りであった:Alc−ラットにおける長期アルコール処理。I/R−肝臓の虚血/再灌流。対照は下記の通りであった:S−偽操作ラット、門脈結紮なし。N−実験未使用の無傷ラット(正常なラット)。RC1−高スクロースのAlc対照。M−分子量マーカー。
【図6】虚血の30分後でのラットの血漿および血清におけるASS蓄積の再灌流経時変化を示すブロットである。
【図7】虚血の30分後での肝臓、血清および血漿におけるEST−1の検出を示すブロットである。
【図8】ECL検出法を使用するラット血漿におけるグルタチオン−S−トランスフェラーゼの検出を示すブロットである。実験に含まれた肝臓傷害は下記の通りであった:Alc−ラットにおける長期アルコール処理。I/R−肝臓の虚血/再灌流。対照は下記の通りであった:S−偽操作ラット、門脈結紮なし。N−実験未使用の無傷ラット(正常なラット)。RC1−高スクロースのAlc対照。M−分子量マーカー。
【図9】ECL検出法を使用するラット血漿におけるγ−GTPの検出を示すブロットである。実験に含まれた肝臓傷害は下記の通りであった:Alc−ラットにおける長期アルコール処理。I/R−肝臓の虚血/再灌流。対照は下記の通りであった:S−偽操作ラット、門脈結紮なし。N−実験未使用の無傷ラット(正常なラット)。RC1−高スクロースのAlc対照。M−分子量マーカー。
【図10】ECL検出法を使用するラット血漿におけるALTの検出を示すブロットである。実験に含まれた肝臓傷害は下記の通りであった:Alc−ラットにおける長期アルコール処理。I/R−肝臓の虚血/再灌流。対照は下記の通りであった:S−偽操作ラット、門脈結紮なし。N−実験未使用の無傷ラット(正常なラット)。RC1−高スクロースのAlc対照。M−分子量マーカー。
【図11】図11A〜図11Dは、特注の40抗体ミニスクリーニングアレイを使用する肝臓サンプルのハイスループット免疫ブロッティング(HTPI)を示す免疫ブロットの走査である。それぞれの実験群において4匹のラットから得られた肝臓組織をプールし、材料および方法において詳しく記載されるように処理した。図11Aは対照ラットの肝臓を示す;図11Bは、30分の正常体温での虚血、その後、30分の再灌流(I/R、30/30)に供されたラットの肝臓を示す;図11Cおよび図11Dは、組換えカスパーゼ−3(図11c)または組換えカルカイン−2(図11D)によりインビトロで処理された対照ラットの肝臓を示す。同一サンプルの2回の実験からの代表的なブロットが示される。赤色の四角は、対照に対して、I/R処理肝臓、カスパーゼ−3処理肝臓およびカルカイン−2処理肝臓においてアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションされたタンパク質を表す。数字はブロットにおけるレーン番号を示す。印が付けられたレーン;#2−一酸化窒素シンターゼ(nNOS);#8−アルギナーゼ−I;#9−スクアレンシンターゼ(SQS);#12−β−カテニン;#13−α−アクチニン;#16−MEK5;#27−ASS;#31−ニンジュリン。
【図12】混合型カチオン−アニオン(CAX)クロマトグラフィーの後で集められたタンパク質分画物の示差的SDS−PAGE表示を示す。対照サンプル(C)およびI/Rサンプル(T)から得られたCAX分画物を対にし、SDS−PAGEに並べて負荷した。発現に差があるタンパク質を、Phoretix 1Dソフトウエアを使用して定量した。数字は対照サンプル(C)またはI/Rサンプルの分画物番号をそれぞれ表す。分画物1〜分画物15を含有する2つのゲルの一部が示される。印が付けられた四角は、RPLC−MSMSによって既に特定されている、差を示したタンパク質を表す。RPLC−MSMSによって決定されたタンパク質の正体が、それぞれの四角の隣りにその名称により示される。印が付けられていない四角は、特定すべきタンパク質を示す。
【図13】図13Aは、10%〜20%で分離された、ASS MAb抗体によりプローブされたラットG1 N1+N2組織パネルのウエスタン免疫ブロットを示す。レーン1−脳;レーン2−横隔膜;レーン3−心臓;レーン4−腎臓;レーン5−肝臓;レーン6−肺;レーン7−骨格;レーン8−皮膚;レーン9−脾臓;レーン10−精巣。ASS(BD#611700)Mabによりスクリーニングされたウエスタンブロット。図13Bは、10%〜20%で分離された、ASS2 PAb抗体(ウサギ)によりプローブされたラット組織パネルのウエスタン免疫ブロットを示す。レーン1−脳;レーン2−横隔膜;レーン3−心臓;レーン4−腎臓;レーン5−肝臓;レーン6−肺;レーン7−骨格;レーン8−皮膚;レーン9−脾臓;レーン1−精巣。
【図14】マウス抗体によりプローブされたEST−1を示すラット組織パネルのウエスタンブロットである。レーン1−脳;レーン2−横隔膜;レーン3−心臓;レーン4−腎臓;レーン5−肝臓;レーン6−肺;レーン7−骨格;レーン8−皮膚;レーン9−脾臓;レーン10。
【図15】ASSの部分ヒト組織パネルを示すウエスタンブロットである(レーンあたり2マイクログラムのタンパク質;BDモノクローナルASS抗体)。
【図16】図16A〜図16Dは、肝臓の虚血/再灌流傷害の後における、細胞骨格αII−スペクトリン、様々な肝臓特異的マーカータンパク質、および、それらの分解生成物の肝臓発現を示すウエスタンブロットである。肝臓サンプルを、無傷の動物、対照(偽操作)、または、10分および30分の再灌流が続く30分の肝虚血(I/R)に供されたラットから得た。無傷の肝臓の組織溶解物を、材料および方法において記載されるように、組換えカスパーゼ−3または組換えカルパイン−2によりインビトロで処理した(図16A)。肝臓タンパク質(25μg)を、非赤芽球性αII−スペクトリンに対する抗体(図16A)、アルギニノコハク酸シンターゼに対する抗体(図16B)、アルギナーゼ−Iに対する抗体(図16C)およびエストロゲンスルホトランスフェラーゼに対する抗体(図16D)を用いたSDS−PAGE/ウエスタンブロッティングによって分析し、ECLを使用して可視化した。図16A:カスパーゼ−3(120kDa)およびカルパイン−2(145kDa)に依存した切断断片に類似する、I/R肝臓におけるαII−スペクトリン分解生成物の蓄積;図16B:再灌流後10分以内でのカスパーゼ−3依存的なASS切断断片の出現;図16Cおよび図16D:10分および30分の再灌流の後におけるアルギナーゼ−IおよびEST−1の肝臓レベル。プールされた無傷の肝臓組織の3つの異なる、カスパーゼ−3およびカルパイン−2による処理からの代表的なウエスタンブロット画像(図16A)、ならびに、I/R傷害の各群における4匹の実験ラットからの代表的なウエスタンブロット画像が示される。
【図17】I/Rラットおよび正常なラットの肝臓組織、ならびに、カスパーゼ−3およびカルパイン−2により処理された正常な肝臓組織におけるγGTPを示すウエスタンブロットである。
【図18】図18A〜図18Bは、肝虚血/再灌流、慢性的アルコール性疾患および急性エンドトキシン肝臓傷害の後での血液における肝臓傷害のバイオマーカーの蓄積を示すウエスタンブロットである。図18A−血液を、実験手順において記載されるように、30分の虚血、それに続く30分の再灌流の後でのラット心臓から、また、慢性的アルコール性ラットから抜き取った。図18B−ラットを、材料および方法において記載されるように、LPS/D−ガラクトサミンまたは生理食塩水で処理した。血清または血漿を集め、等しい体積(10μl)を、材料および方法において詳しく記載されるように処理した。タンパク質をSDS−PAGEによって分離し、ASS、EST−1またはアラニンアミノトランスフェラーゼALTに対する抗体で免疫ブロットした。メンブランをECLによって発色させ、画像を走査した。少なくとも3回の異なる実験を使用して行われた4枚または5枚からの代表的なブロットが示される(図18A)。N−無傷の実験未使用ラット(N1、N2)、S−偽操作ラット(S1、S2);I/R−30分の虚血、その後、30分の再灌流のラット(I/R1、I/R2);A1、A2およびA3−慢性的アルコール性ラット(n=3)。行われた3枚からの代表的なブロットが、それぞれの時点について3匹のラットを使用するLPS/D−Gal処理について示される;I/Rサンプル(30/30)が比較のために含められた(図18B)。
【図19】図19A〜図19Dは、ラットにおけるI/Rの後での血中ASSおよび血中EST−1の時間依存的蓄積を示すウエスタンブロット(図19A、図19B)およびグラフ(図19Cおよび図19D)を示す。血液を、実験手順において記載されるように、30分の虚血、それに続く、異なる時間の再灌流の後でのラット心臓から抜き取った。タンパク質を、ASSに対する抗体(図19A)およびEST−1に対する抗体(図19B)によりSDS−PAGE/ウエスタンブロットによって分離した。ImageJソフトウエアを使用して、画像を保存し、タンパク質バンドを計算した(図19C、図19D)。少なくとも4回の異なる実験を使用して行われた5枚からの代表的なブロットが示される。N−無傷の実験未使用ラット(n=5)、S−偽操作ラット(n=4);I/R−30分の虚血、その後、10分〜180分の再灌流(n=4)。
【図20】ASSに対する抗体による、部分的な60分の虚血/24時間の再灌流のウエスタンブロットを示す。
【図21】サンドイッチELISAにおいて使用された方法の概略図である。
【図22】図22A〜図22Bは、rASSの検出のための検量線(図22A)、および、LPS/D−Gal処理を受けたラットにおけるSW ELISAによって測定された血清中ASSのレベル(図22B)を示すグラフである。
【図23】図23A〜図23Bは、ASS2抗体によりプローブされたラットI/R血清サンプルの結果を示す。図23Aは、サンドイッチELISA(SW−ELISA)からの結果を示すグラフである。捕獲抗体はASS2ウサギである;検出抗体はASS2マウスである(BD−biotrasduction)。アッセイを20μl/ウェルの体積で384ウェルプレートにおいて行った。図23Bはウエスタン免疫ブロットである。反応を5μl/ウェルの体積で行い、ASS2抗ウサギ抗体(1:1000)によりプローブした。
【図24】ヒト移植の一次データのウエスタンブロットである。P#は患者#である;B−ベースライン(手術前)、A−無肝臓状態;3’、30’、60’、120’−移植された肝臓の再灌流後の時間(分)。
【図25】患者におけるASS検出を示すグラフである。
【図26】サンドイッチELISAからの結果を示すグラフである。UFからのASSサンプル(患者1〜患者4)。捕獲抗体:ASS−ウサギ、1000ng/ウェル;AASタンパク質:100ng/第1レーン;血清サンプル:100μl;検出Ab、1:500(BD−mouse)。
【図27】ASS血清サンプル(患者5〜患者6)を用いたサンドイッチELISA(SW−ELISA)からの結果を示すグラフである。
【図28】肝臓サンプルを使用するサンドイッチELISAからのSDBPの検出の結果を示すグラフである。
【図29】6名の肝臓移植患者からのASS血清値を示すグラフである。血清サンプルを、移植が行われる前(ベースライン)、肝臓が取り出されている間(無肝臓)、および、新しい肝臓が患者に入れられた後の様々な時点(1分または3分、30分、45分、60分、120分)で肝臓移植患者(n=6)から集めた。血清中のASSレベルをASS特異的SW ELISAによって(ng/ml単位で)測定した。150ng/mlの値はアッセイの感度を超えていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルギニン/尿素/一酸化窒素サイクルの酵素、硫化酵素およびスペクトリン分解関連生成物を含むバイオマーカーのパネル。
【請求項2】
前記酵素が、アルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS)、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、硫化(エストロゲンスルホトランスフェラーゼ(EST)、スクアレンシンターゼ(SQS)、肝臓グリコーゲンホスホリラーゼ(GP)、カルバモイルリン酸シンセターゼ(CPS−1)、α−エノラーゼ1、グルコース調節タンパク質(GRP)およびスペクトリン分解生成物を含む、請求項1に記載のバイオマーカーのパネル。
【請求項3】
肝臓傷害を検出および診断する方法であって、
被験体サンプルにおける少なくとも1つまたは1つよりも多いバイオマーカーを検出する工程;および、該1つまたは1つよりも多いバイオマーカーの検出を肝臓傷害の診断と相関させる工程であって、該相関では、正常な被験体と比較して、それぞれの診断における1つまたは1つよりも多いバイオマーカーの検出が考慮に入れられ、該1つまたは1つよりも多いタンパク質マーカーが、
アルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS)、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、硫化(エストロゲンスルホトランスフェラーゼ(EST)、スクアレンシンターゼ(SQS)、肝臓グリコーゲンホスホリラーゼ(GP)、カルバモイルリン酸シンセターゼ(CPS−1)、α−エノラーゼ1、グルコース調節タンパク質(GRP)およびスペクトリン分解生成物からなる群から選択される、工程;および
該1つまたは1つよりも多いタンパク質バイオマーカーの検出を肝臓傷害の診断と相関させる工程であって、該相関では、正常な被験体と比較して、それぞれの診断における1つまたは1つよりも多いタンパク質バイオマーカーの検出が考慮に入れられる、工程
を含む、方法。
【請求項4】
複数の前記バイオマーカーが検出される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも2つの前記バイオマーカーが検出される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも3つの前記バイオマーカーが検出される、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも4つの前記バイオマーカーが検出される、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも2つのバイオマーカーの任意の組み合わせが、肝臓傷害および/または肝臓疾患を診断するために使用される、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
複数の前記マーカーが、肝臓傷害および/または肝臓疾患を診断するために組み合わせて使用される、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記サンプルが、血液、血漿、血清、尿、組織、細胞および肝臓からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
1つまたは1つよりも多いバイオマーカーが、肝臓傷害および/または肝臓疾患に罹患しやすい患者、あるいは、肝臓傷害および/または肝臓疾患に罹患している患者から得られるバイオマーカープロフィルを正常な被験体と比較することによって検出される、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
1つまたは1つよりも多いバイオマーカーが、イムノアッセイを使用して検出される、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
1つまたは1つよりも多いバイオマーカーが、バイオチップアレイを使用して検出される、請求項3に記載の方法。
【請求項14】
前記バイオチップアレイがタンパク質チップアレイである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記バイオチップアレイが核酸アレイである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記1つまたは1つよりも多いマーカーがバイオチップアレイに固定される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
固定された1つまたは1つよりも多いマーカーが、マーカーの分子量を検出するためにレーザーイオン化に供される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記1つまたは1つよりも多いマーカーの分子量が、総イオン電流に対して正規化される閾値強度に対して分析される、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
対数変換が、ピーク強度範囲を減少させて、検出されたマーカーの数を制限するために使用される、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
被験体における肝臓傷害および/または肝臓疾患を診断するためのキットであって、
(a)肝臓傷害を有することが疑われるヒト被験体から単離された生物学的サンプルを保持するための基材、
(b)少なくとも1つまたは1つよりも多いバイオマーカーを検出する蛍光原因子、
(c)バイオマーカーのパネル、および
(d)該生物学的サンプルにおける少なくとも1つのマーカーの存在または量を検出するために、該因子を該生物学的サンプルまたは該生物学的サンプルの一部と反応させるための印刷された説明書
を含む、キット。
【請求項21】
前記バイオマーカーのパネルが、アルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS)およびアルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、硫化(エストロゲンスルホトランスフェラーゼ(EST)、スクアレンシンターゼ(SQS)、肝臓グリコーゲンホスホリラーゼ(GP)、カルバモイルリン酸シンセターゼ(CPS−1)、α−エノラーゼ1、グルコース調節タンパク質(GRP)およびスペクトリン分解生成物のいずれか1つまたは1つより多くを含む、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
アルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS)およびアルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、硫化(エストロゲンスルホトランスフェラーゼ(EST)、スクアレンシンターゼ(SQS)、肝臓グリコーゲンホスホリラーゼ(GP)、カルバモイルリン酸シンセターゼ(CPS−1)、α−エノラーゼ1、グルコース調節タンパク質(GRP)およびスペクトリン分解生成物のいずれか1つまたは1つよりも多いバイオマーカーに対して特異的な抗体をさらに含む、請求項20に記載のキット。
【請求項23】
肝臓酵素障害を検出および診断する方法であって、
被験体サンプルにおける少なくとも1つまたは1つよりも多いバイオマーカーの非存在を決定する工程;および1つまたは1つよりも多いバイオマーカーの検出または検出の非存在を肝臓酵素障害の診断と相関させる工程であって、該相関では、正常な被験体と比較して、それぞれの診断における1つまたは1つよりも多いバイオマーカーの検出または検出の非存在が考慮に入れられ、該1つまたは1つよりも多いタンパク質マーカーが、
アルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS)、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、硫化(エストロゲンスルホトランスフェラーゼ(EST)、スクアレンシンターゼ(SQS)、肝臓グリコーゲンホスホリラーゼ(GP)、カルバモイルリン酸シンセターゼ(CPS−1)、α−エノラーゼ1、グルコース調節タンパク質(GRP)およびスペクトリン分解生成物からなる群から選択される、工程;および
1つまたは1つよりも多いタンパク質バイオマーカーの検出を肝臓酵素障害の診断と相関させる工程であって、該相関では、正常な被験体と比較して、それぞれの診断における1つまたは1つよりも多いタンパク質バイオマーカーの検出の非存在が考慮に入れられる、工程
を含む、方法。
【請求項24】
肝臓酵素障害を発症する危険性がある患者を検出する方法であって、
被験体サンプルにおける少なくとも1つまたは1つよりも多いバイオマーカーの非存在を決定する工程;および1つまたは1つよりも多いバイオマーカーの検出または検出の非存在を、肝臓酵素障害を発症する危険性がある患者の診断と相関させる工程であって、該相関では、正常な被験体と比較して、それぞれの診断における1つまたは1つよりも多いバイオマーカーの検出または検出の非存在が考慮に入れられ、該1つまたは1つよりも多いタンパク質マーカーが、
アルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS)、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、硫化(エストロゲンスルホトランスフェラーゼ(EST)、スクアレンシンターゼ(SQS)、肝臓グリコーゲンホスホリラーゼ(GP)、カルバモイルリン酸シンセターゼ(CPS−1)、α−エノラーゼ1、グルコース調節タンパク質(GRP)およびスペクトリン分解生成物からなる群から選択される、工程;および
1つまたは1つよりも多いタンパク質バイオマーカーの検出または検出の非存在を肝臓酵素障害の危険性が高い患者の診断と相関させる工程であって、該相関では、正常な被験体と比較して、それぞれの診断における1つまたは1つよりも多いタンパク質バイオマーカーの検出の非存在が考慮に入れられる、工程
を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公表番号】特表2008−534969(P2008−534969A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504487(P2008−504487)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2006/012253
【国際公開番号】WO2006/107846
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(500360769)ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファウンデーション,インコーポレイティド (16)
【出願人】(507393229)バンヤン バイオマーカーズ, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】