説明

股付き衣類

【課題】臀溝に本体生地が食い込んでしまうような着崩れを防止し、体型補整機能の向上が図られた股付き衣類を提供すること。
【解決手段】臀溝B周辺の贅肉が付き易い部位である張出容易領域Aに対応する位置を通り、臀裂側へ斜め上方へ延設された第1緊締部11、及び張出容易領域Aに対応する位置を通り、上方へ延在する第2緊締部21を備える構成とする。第1緊締部11によって、張出容易領域Aの肉が臀裂側へ押圧され、第2緊締部21によって、張出容易領域Aの肉が上方へ押圧される。これにより、臀溝Bの左右方向の長さが短くなるように体型を補整し、臀溝Bに本体生地が食い込んでしまうような着崩れを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、股付き衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ガードルなどの股付き衣類において、着用者の体型を補整する機能や筋肉をサポートする機能を実現するために、着用者を覆う本体生地の緊締力よりも強い緊締力を有する帯状の緊締部が設けられているものがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された股付き衣類では、着用した際に着用者の左右の大転子近傍から腰部上部へ相当する位置に凸状に湾曲して、帯状の緊締部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−156153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の股付き衣類では、着用者の動作に伴って着崩れが発生することがあり、例えば、臀部と太股との間に形成される臀溝に本体生地が食い込み横じわが発生する、いわゆる着崩れが生じていた。また、この着崩れにより、臀部下部から脚部に連続する曲線が急峻となることで、脚が短く見えてしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、臀溝に本体生地が食い込んでしまうような着崩れを防止し、体型補整機能の向上が図られた股付き衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、課題の解決のために鋭意研究を重ねる過程で、臀部において、臀溝の左右両端周辺に贅肉(脂肪分の多い肉)が付き易い個所があることを発見し、この贅肉が付き易い個所の一部が、その周辺部よりも張り出しているため、臀部下部のたるみが大きくなり、臀溝に本体生地(身頃)が食い込み易くなり、着崩れが発生しやすくなるとの知見を得た。そして、臀溝の左右両端周辺に位置する上記贅肉の付き易い個所の一部を臀裂側へ押圧するように緊締部を設けることで、臀部の立ち上がり角度を大きなものとすることができること、臀溝に対する本体生地の食い込みを少なくするのに効果的であることを見出した。
【0007】
そこで、本発明による股付き衣類は、少なくとも着用者の臀部を覆う本体部と、本体部の緊締力よりも強い緊締力を有する緊締部とを備える股付き衣類であって、緊締部は、臀裂上端部近傍から、臀溝の左右両端部の上方に位置し贅肉が付着しやすい部分である張出容易領域に対応する位置まで斜め下方へ延設された左右一対の第1緊締部と、左右の前記張出容易領域に対応する位置から上方へ延設された左右一対の第2緊締部と、を備えることを特徴としている。
【0008】
このような股付き衣類は、臀溝周辺の贅肉が付き易い部位である張出容易領域に対応する位置を通り、臀裂側へ斜め上方に延在する第1緊締部を備える構成であるため、贅肉の付き易い個所である張出容易領域を臀裂側へ押圧することができる。これにより、臀溝の左右両端部付近の贅肉が、臀裂側へ寄せられるので、臀溝の左右方向の長さが短くなるように着用者の体型を補整することができる。また、股付き衣類は、臀溝周辺の贅肉が付き易い部位である張出容易領域に対応する位置を通り、上方へ延在する第2緊締部を備える構成であるため、贅肉の付き易い個所である張出容易領域を上方へ押圧することができる。これにより、臀溝の左右両端部付近の贅肉が、腰部の左右両端側へ引き上げられるので、臀溝の左右方向の長さが短くなるように着用者の体型を補整することができる。これらの第1緊締部及び第2緊締部によって、臀溝の左右方向の長さが短くなるように着用者の体型が補整され、臀溝の深さが浅くなること、着崩れが防止され緊締部が正しい位置に保持されることの相乗効果により、緊締部による体型補整機能が更に効果的に発揮される。その結果、臀部の出っ張りが好適に補整され、臀部下部から脚部に連続する曲線が急峻となることを防ぎ、着用者の脚が長く見えるようになる。また、臀部を小さく見せるという効果も生じる。
【0009】
また、第1緊締部の上端部は、臀裂上端部近傍から更に上方へ延在していることが好ましい。これにより、贅肉が付き易い部位である張出容易領域の贅肉を臀裂側へ、斜め上方へさらに寄せることができる。
【0010】
また、第1緊締部の下端部は、張出容易領域に対応する位置から斜め下方外側へ延在していることが好適である。これにより、臀溝の左右両端部付近の贅肉が付着している箇所から臀部の直下方に位置する太股の付根部分を通らないように下方に、第1緊締部が形成されるので、張出容易領域の贅肉を臀裂側へ、斜め上方へさらに寄せることができる。
【0011】
また、第2緊締部の下端部は、張出容易領域に対応する位置から内股側へ臀溝を斜めに跨ぐように延在していることが好ましい。これにより、第2緊締部の下端部が、内股に密着するため、着用者に締め付け力を効果的に感じさせることができ、緊締部による体型補整機能が充分に発揮されていることを着用者に認識させることができる。
【0012】
また、緊締部は、本体部の一部の伸度を変更することで形成されていてもよい。
【0013】
また、緊締部は、本体部に当て布を取り付けて形成するものとしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の股付き衣類によれば、臀溝の左右両端部付近の肉を臀裂側へ寄せて引き上げることで、臀溝の左右方向の長さを短くして、臀溝に本体生地が食い込んでしまう着崩れを防止し、体型補整機能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る股付き衣類を着用状態で示す背面図である。
【図2】図1に示す股付き衣類の斜視図であり、当て布の縫着の有無を示す図である。
【図3】緊締部の配置と、片足挙げ動作時における皮膚の伸展率の高い部位との位置関係を示す図である。
【図4】本実施形態に係るガードルを着用した場合の臀部の立ち上がり角度と、従来のガードルを着用した場合の臀部の立ち上がり角度とを比較するための図である。
【図5】本実施形態に係るガードルを着用した場合の臀溝の左右方向の長さと、従来のガードルを着用した場合の臀溝の左右方向の長さとを比較するための図である。
【図6】実施形態に係る第1変形例の股付き衣類の背面図である。
【図7】実施形態に係る第2変形例の股付き衣類の背面図である。
【図8】実施形態に係る第3変形例の股付き衣類の正面図である。
【図9】実施形態に係る第3変形例の股付き衣類の背面図である。
【図10】実施形態に係る第4変形例の股付き衣類の背面図である。
【図11】実施形態に係る第5変形例の股付き衣類の背面図である。
【図12】実施形態に係る第6変形例の股付き衣類の背面図である。
【図13】実施形態に係る第7変形例の股付き衣類の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明による股付き衣類の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
本実施形態では、股付き衣類として女性用の股付きのガードル(ロングタイプガードル)1を例にとって説明する。ガードル1は、下複部から膝上近傍までを被覆するロングタイプのガードルである。このガードル1は、着用者の下半身を覆う股付きの本体部2を備え、この本体部2は、下半身の正面側を覆う前身頃3と、下半身の背面側を覆う後身頃4とを有する。ガードル1は、左右対称に形成されている。
【0018】
本体部2は、伸縮性を有する本体生地によって構成されている。なお、本体生地は、例えば、ツーウェイラッセル、ツーウェイトリコット、ダブルラッセル、丸編み、レース材等を用いた編地によって形成することが考えられるが、その他の伸縮性を有する素材によって形成するものとしても良い。前身頃3は、下半身の正面側から脇にかけて形成され背面側で、後身頃4と縫合されている。前身頃3と後身頃4との縫合ライン2aは、本体部2の背面側の側部に形成され、上縁2bから裾部(下縁)2cにかけて上下方向に延在している。
【0019】
また、ガードル1は、本体部2の緊締力よりも強い緊締力を有し帯状に形成された緊締部10を備えている。ここで、本発明者は、臀部において、臀溝Bの左右両端周辺に贅肉(余分な肉)が付き易い個所があり、贅肉が付き易い箇所の一部には、周辺よりも出っ張った張出容易領域Aが形成されることを発見した。そして、この張出容易領域Aが周辺よりも出張るため、臀溝Bに本体部2が食い込み易くなり、着崩れが発生しやすくなるという知見を得た。そこで、緊締部10は、張出容易領域Aを臀裂側へ押圧するように設けられている。なお、張出容易領域Aは、図1において、一点鎖線で示されている。
【0020】
例えば、左右の大転子Dを結ぶ直線を第1仮想線L(図5参照)とし、太股の付根の幅方向の中央を通り上下方向に延在する直線を第2仮想線Lとすると、張出容易領域Aは、上下方向において第1仮想線Lと臀溝Bとの間であり、幅方向において第2仮想線Lよりもやや外側に位置している。
【0021】
緊締部10は、臀裂上端部C近傍から左右の張出容易領域Aに対応する位置まで斜め下方へ延設された左右一対の第1緊締部11と、左右の張出容易領域Aに対応する位置から上方へ延設された左右一対の第2緊締部21と、を備えている。第1緊締部11及び第2緊締部21は、帯状を成し、例えば当て布によってそれぞれ形成されている。
【0022】
第1緊締部11は、本体部2の上縁2bから後中心に沿って下方へ、臀裂の上端部C近傍まで延在する上端部12と、臀裂の上端部C近傍から左右の張出容易領域Aに対応する位置まで斜め下方へ延在する傾斜部13と、左右の張出容易領域Aから更に下方へ延在し裾部2c近傍まで形成された下端部14とを有する。上端部12、傾斜部13、及び下端部14は、連続して形成されている。また、第1緊締部11は、張出容易領域Aを覆うように形成されている。また、第1緊締部11の上端部12は、後中心を挟んで連続して形成されている。
【0023】
第1緊締部11の上辺(幅方向の上側の端部)11aは、上縁2bから下方へ延在し、張出容易領域Aの上部近傍へ緩やかに湾曲して形成されている。第1緊締部11の下辺(幅方向の下側の端部)11bは、後中心から斜め下方へ延在し、張出容易領域Aより内側(臀裂側)を通り、裾部2c近傍まで形成されている。第1緊締部11の下辺11bは、緩やかに湾曲し、下方に向かうにつれて、縫合ライン2aに接近するように形成されている。
【0024】
第1緊締部11の上辺11aの下端から屈曲形成された側辺11cは、張出容易領域Aの外側を通り、縫合ライン2aに沿って上下方向に延在し、裾部2cまで達している。第1緊締部11の下端部14の幅は、下方に向かうにつれて先細りの形状となっている。
【0025】
一方、第1緊締部11の下辺11bの上端から、更に上方へ形成された辺11dは、後中心に沿って上下方向に延在し、臀裂の上端C近傍を通り、上縁2bまで達している。
【0026】
第2緊締部21は、両側部において、上縁2bから張出容易領域Aに対応する位置まで上下方向に延在する上下方向部22と、張出容易領域Aから内股側まで、斜め下方へ延在する傾斜部23とを有する。上下方向部22及び傾斜部23は、連続して形成されている。また、第2緊締部21は、張出容易領域Aを覆うように形成されている。
【0027】
第2緊締部21の上辺(幅方向の上側の端部)21aは、上縁2bから下方へ延在し、後中心側へ緩やかに湾曲し、張出容易領域Aより内側を通り、内股側へ形成されている。第2緊締部21の上辺21aの下端部は、内股の正面側までらせん状に形成されている。
【0028】
第2緊締部21の側辺21bは、背面側の側部近傍で上下方向に延在し、上縁2bから張出容易領域A近傍まで形成されている。側辺21bの下端部は、張出容易領域Aより外側を通るように配置されている。側辺21bは、縫合ライン2aに沿って、上縁2bから張出容易領域Aの下部側まで延在している。
【0029】
第2緊締部21の下辺(幅方向の下側の端部)21cは、側辺21bの下端から屈曲形成され、張出容易領域A近傍から斜め下方へ、臀溝Bを跨ぎ内股側へ形成されている。下辺21cの下端部は、内股の正面側までらせん状に形成されている。第2緊締部21の傾斜部23の幅は、略一定とされている。
【0030】
緊締部10は、張出容易領域Aに対応する位置において、第1緊締部11と第2緊締部21とが交差している。例えば、第1緊締部11が本体生地側に配置され、その上に第2緊締部21が配置されている。着用状態においては、第1緊締部11が肌側に配置され、その上に第2緊締部21が配置される。なお、着用者の肌側に第2緊締部が配置されてもよい。張出容易領域Aは、第1緊締部11及び第2緊締部21によって覆われて、2方向へ押圧可能とされている。
【0031】
本実施形態では、張出容易領域A全体を覆うように、第1緊締部11と、第2緊締部21とが設けられている。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、体型補整機能が充分得られる場合には、張出容易領域Aの一部を覆うように第1緊締部11と、第2緊締部21とを設けるものとしても良い。
【0032】
次に、図2を参照して、緊締部10が当て布によって形成されている場合の縫着位置について説明する。図2は、緊締部である当て布の縫着の有無を示す図である。第1緊締部11は、図2において実線で示される上辺11a、側辺11c、及び辺11dが本体生地に縫着され、破線で示される下辺11bが本体生地に縫着されていない。第1緊締部11の下辺11bは、本体生地に対してフリーな状態であり、本体生地に対して接離可能な構成とされている。
【0033】
第2緊締部21は、図2において実線で示される上辺21a、及び側辺21bが本体生地に縫着され、破線で示される下辺21cが本体生地に縫着されていない。第2緊締部21の下辺21cは、本体生地に対してフリーな状態であり、本体生地に対して接離可能な構成とされている。第1緊締部11及び第2緊締部21において、対向する辺のうち、上側(上縁2b側)に配置された辺のみを縫着するようにしてもよい。また、上辺の全長に渡って縫着してもよく、上辺の一部のみを縫着してもよい。
【0034】
次に、図3を参照して、緊締部の配置と、片足挙げ動作時における皮膚の伸展率との関係について説明する。図3では、着用者の臀部を示し、そこに、片足挙げ動作時における皮膚の伸展率を示している。臀部周辺は、他の部位と比較して、皮膚が伸び易いことが分かる。臀溝Bの直下に位置する部位Sは、周辺と比較して特に皮膚の伸展率が高く、150%以上である。部位Sの上下方向に隣接する部位S,Sは、皮膚の伸展率が130%〜150%程度であり、部位Sの上方に隣接する部位Sは、部位S〜Sと比較して、伸展率が低いことが分かる。
【0035】
本実施形態の緊締部10は、それぞれ皮膚が比較的伸び難い位置を通過するように設けられている。緊締部10のうち、張出容易領域Aに対応する位置より上方の部位は、比較的、皮膚が伸び難い位置を通過するように設けられている。このように、皮膚の伸び難い個所を経由するように緊締部10を設けることにより、着崩れの発生を抑制することができる。
【0036】
本実施形態では、部位Sのように、皮膚が伸び易い個所に配置される下辺21cを本体生地に縫着しないように形成することにより、皮膚の伸展に伴って本体生地の臀溝Bに対する食い込みを防止する例を挙げて説明している。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、本体生地の伸縮特性によっては本体生地に下辺21cを縫着しないようにしなくとも臀溝Bに対する食い込みを防止できる場合も考えられる。このような場合には、当て布の下辺21cを本体生地に縫着するものとしても良い。
【0037】
また、緊締部10である当て布を構成する布地の地の目(布地が伸び易い方向)の方向は、当て布が縫着されていない下辺11b,21cの延在方向と並行となるように設けられている。なお、当て布の下辺11b,21cと直交する方向は、地の目と直交するため伸び難いが、下辺側を縫着しないことにより当て布が身頃に引っ張られることが防止される。
【0038】
本実施形態では、当て布の下辺11b、21cを本体生地に縫着しないことにより、当て布が身頃に引っ張られることを防止する例を挙げて説明しているが、本発明はこれに限定されるものでない。例えば、身頃を形成する本体生地の特性によっては、当て布が身頃に引っ張られる力が小さく、実用上問題が無いことも考えられる。このような場合には、当て布の下辺11b、21cを本体生地に縫着するものとしても良い。
【0039】
次に、本実施形態のガードル1の作用について説明する。着用状態においてガードル1は、着用者に密着した状態となる。このとき、臀溝Bの両端部近傍にある張出容易領域Aは、第1緊締部11及び第2緊締部21によって覆われている。第1緊締部11は、張出容易領域Aを覆い、臀溝Bの左右両端近傍から臀裂側へ斜め上方に延在し、張出容易領域Aの肉を臀裂側へ引き寄せる(図2参照)。また、第2緊締部21は、張出容易領域Aを覆い、臀溝Bの左右両端近傍から直上方へ延在し、張出容易領域Aの肉を上方へ引き上げる。これにより、2方向に力を分散して、張出容易領域Aの肉を引き上げることができる。
【0040】
第1緊締部11の上端部12は、臀裂に沿って、臀裂上端Cよりも上方へ延在している。これにより、張出容易領域Aの肉を臀裂側へ引き寄せるための力F1を、増大させることができる。第1緊締部11の下端部14は、太股の側部においてガードル1の下端から上方へ延在し、張出容易領域Aまで延在している。これにより、張出容易領域A近傍の肉を下方から連続して臀裂側へ引き寄せることができる。
【0041】
また、第2緊締部21の傾斜部23は、内股の正面側かららせん状に上方へ延在し、張出容易領域Aまで延在している。これにより、着用者に適度な締め付け感を与えることができる。
【0042】
次に、ガードル1による体型補整機能について説明する。図4は、本実施形態に係るガードルを着用した場合の臀部の立ち上がり角度と、従来のガードルを着用した場合の臀部の立ち上がり角度との比較をするための図である。図4(A),(B)は、従来のガードル51を着用した場合を示し、図4(C),(D)は、本実施形態に係るガードル1を着用した場合を示している。ここで、立ち上がり角度とは、水平方向に延在する基準線Pと、臀部下部の臀裂付近の丸み形状における接線P,Pとの角度である。図4(A),(C)に示すように、本実施形態に係るガードル1を着用した場合の立ち上がり角度は、従来のガードル51を着用した場合の立ち上がり角度よりも大きいことが分かる。
【0043】
また、図4(B),(D)に示すように、本実施形態に係るガードル1を着用した場合の方が、従来のガードル51と比較して臀部の頂点Tが、高い位置に配置されることが分かる。ガードル1,51の裾部2cを基準位置P10として、この基準位置P10からガードル1の頂点Tまでの高さHは、基準位置P10からガードル51の頂点Tまでの高さHより高くなる。従来のガードル51では、臀部の立ち上がり角度が小さくなり、臀部下部から脚部に向かうカーブが急峻になるため、脚が短く見えていた。このため、着用者の臀部が加齢に伴ってたるんでいる場合には、ガードル本来の補整機能を充分に着用者が享受することができないでいた。本実施形態のガードル1では、臀部の頂点Tが高い位置に補整されるため、臀部の立ち上がりがシャープになり、脚が長く見えるようになる。
【0044】
さらに、本実施形態のガードル1では、臀部下部が下方にたるんでいる場合であっても、ガードル本来の体型補整機能を発揮することが可能である。図5は、本実施形態に係るガードルを着用した場合の臀溝Bの左右方向の長さを比較するための図である。図5(A)は、従来のガードル51を着用した場合を示し、図5(B)は、本実施形態に係るガードル1を着用した場合を示している。図5に示すように、従来のガードル51を着用した場合に臀溝Bが臀部の側部まで形成される着用者であっても、本実施形態に係るガードル1を着用した場合には、ガードル本来の体型補整機能が充分に発揮され、臀溝Bの左右の長さが短くなる。また、臀溝Bの左右の長さが短くなるため、本体生地が臀溝Bに食い込まれる着崩れの発生が防止される。
【0045】
このように本実施形態のガードル1によれば、臀溝B周辺の贅肉が付き易い部位である張出容易領域Aに対応する位置を通り、臀裂側へ斜め上方に延在する第1緊締部11を備える構成であるため、贅肉の付き易い個所である張出容易領域Aを臀裂側へ押圧することができる。これにより、臀溝Bの左右両端部付近の贅肉が、臀裂側へ寄せられて、臀溝Bの左右方向の長さが短くなるように着用者の体型を補整することができる。また、ガードル1は、臀溝B周辺の贅肉が付き易い部位である張出容易領域Aに対応する位置を通り、上方へ延在する第2緊締部21を備える構成であるため、贅肉の付き易い個所である張出容易領域Aを上方へ押圧することができる。これにより、臀溝Bの左右両端部付近の贅肉が、腰部の左右両端側へ引き上げられるので、臀溝Bの左右方向の長さが短くなるように着用者の体型を補整することができる。これらの第1緊締部11及び第2緊締部21によって、臀溝Bの左右方向の長さが短くなるように着用者の体型が補整され、臀溝Bの深さが浅くなること、着崩れが防止され緊締部10が正しい位置に配置されることによる相乗効果により、緊締部10による体型補整機能が更に効果的に発揮される。その結果、臀部の出っ張りが好適に補整され、臀部下部から脚部に連続する曲線が急峻となることを防ぎ、着用者の脚が長く見えるようになる。また、臀部を小さく見せるという効果も生じる。
【0046】
上記実施形態では、緊締部10を当て布によって構成する例を挙げているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本体生地の伸度を部分的に切り替えることによって緊締部10を形成するものとしても良い。この場合には、第1緊締部11、第2緊締部21をそれぞれ形成する当て布が重なり合う張出容易領域A周辺部分の伸度が第1緊締部11、第2緊締部21の中で最も低くなるように形成することが好ましい。なお、本体生地の伸度を部分的に切り替えるためには、例えば、本体生地の編地の弾性糸の量を調整することが考えられる。また、本体生地にオパール(抜蝕)加工を施すといったことも考えられる。なお、上記のように、本体生地の伸度を部分的に切り替えて緊締部10を形成する場合には、例えば、特開2009−270214に示すような経編地を本体生地とすることも考えられる。
【0047】
なお、本体生地の編地の伸度を部分的に変更して緊締部10を形成する場合には、緊締部10内の伸度をさらに段階的に切り替えるといったことも考えられる。この場合には、着用者の動作に対する緊締部10の追従性を高め、着崩れをより一層抑制することができる。
【0048】
また、本発明の股付き衣類は、例えば弾性樹脂からなる緊締部を備える構成としてもよい。緊締部における弾性樹脂の配置形状パターンとしては、格子状、面状、ライン状、ドット状などがある。また、これらの配置形状パターンを組み合わせてもよい。
【0049】
また、例えば、当て布によって形成された緊締部、弾性樹脂によって形成された緊締部、伸度が調整された編地によって形成された緊締部を組み合わせて構成してもよい。
【0050】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態では、本発明の股付き衣類をガードルとして説明しているが、本発明の股付き衣類は、ガードルに限定されず、例えば、ショーツ、ボディスーツ、水着、レオタード、レギンス、スパッツ、パンティストッキング、スポーツ用タイツとして実現しても良い。また、本発明の股付き衣類を、上記以外のボトム衣類、例えば、パンツ等のアウターウェアとして実現するものとしても良い。
【0051】
また、上記実施形態では、緊締部の下辺が本体生地に縫着されていない構成としているが、緊締部の下辺が本体生地に縫着されていてもよい。また、当て布は、肌側ではなく、ガードル1の表面側に形成されていてもよい。
【0052】
以下、図6〜図12を参照して、本発明の実施形態に係る変形例の股付き衣類について説明する。図6〜図12に示す変形例のガードル1B〜1Gでは、表裏を反転させた場合の着用状態を示している。
【0053】
(変形例1)
図6は、実施形態に係る第1変形例の股付き衣類の背面図である。図6に示す第1変形例のガードル1Bが図1に示すガードル1と違う点は、第1緊締部11B、第2緊締部21Bの形状が違う点である。第1緊締部11Bの上辺11aは、上縁2b近傍で、緊締部の幅方向の外側へ(後中心から離れる方向へ)湾曲している。第2緊締部21Bの上辺21aは、上縁2b近傍で、緊締部の幅方向の外側へ(後中心へ近づく方向へ)湾曲している。また、上辺21aと対向する側辺21bが幅方向の外側へ湾曲形成されていてもよい。このように、第1緊締部11B、及び第2緊締部21Bの幅を変更するように変形させてもよい。
【0054】
(変形例2)
図7は、実施形態に係る第2変形例の股付き衣類の背面図である。図7に示す第2変形例のガードル1Cが図1に示すガードル1と違う点は、第2緊締部21Cにおいて、張出容易領域Aの下方に、傾斜部23(図1参照)が形成されていない点である。第2変形例のガードル1Cの緊締部10は、例えば、Y字状に形成されている。このように、緊締部10は、後中心に沿って上下方向に延在し、臀裂上端C近傍から、臀溝Bの左右方向の端部へ傾斜し、張出容易領域Aを通り、さらに下方へ延在する第1緊締部11と、張出容易領域Aから上方へ延在する第2緊締部21Cとを備える構成としてもよい。
【0055】
(変形例3)
図8は、実施形態に係る第3変形例の股付き衣類の正面図、図9は、第3変形例の股付き衣類の背面図である。図8及び図9に示す第3変形例のガードル1Dが図1に示すガードル1と違う点は、正面側を覆う前身頃3にも緊締部が設けられている点である。
【0056】
ガードル1Dの第1緊締部11Dは、本体部2の上縁2bから後中心に沿って下方へ、臀裂の上端部C近傍まで延在する上端部12と、臀裂の上端部C近傍から左右の張出容易領域Aに対応する位置まで斜め下方へ延在する傾斜部13と、左右の張出容易領域Aから更に下方へ延在し裾部2c近傍まで形成された下部14Dとを有する。また、第1緊締部11Dの下部14Dは、張出容易領域Aの側部から縫合ライン2aを挟んで正面側まで連続して形成されている。第1緊締部11Dの下部14Dは、着用者の太股正面の外側半分程度を覆うように形成されている。
【0057】
第1緊締部11Dの上辺11aは、上縁2bから下方へ延在し、臀裂上端部C近傍から外側へ湾曲し、張出容易領域Aの上方を通り、図示左右方向に延在し、正面側まで形成されている。第1緊締部11Dの側辺11cは、上辺11aの正面側の端部から下方へ屈曲形成され、上下方向に延在し、裾部2cまで形成されている。
【0058】
ガードル1Dの第2緊締部21Dは、両側部において、上縁2bから張出容易領域Aに対応する位置まで延在する上部22Dと、張出容易領域Aから内股側まで、斜め下方へ延在する傾斜部23とを有する。また、第2緊締部21Dの上部22Dは、張出容易領域Aの側部から縫合ライン2aを挟んで正面側まで連続して形成されている。第2緊締部21Dの上部22Dは、着用者の正面下腹部を覆うように形成されている。
【0059】
第2緊締部21Dの下辺21cは、内股の裾部2c近傍において斜め上方へ延在して臀溝Bを跨ぎ、張出容易領域Aの下方を経由して左右方向へ湾曲し、正面側まで形成されている。正面側において、下辺21cは第1緊締部11Dの上辺11aの下方に配置され、上辺11aと並行に形成されている。第2緊締部21Dの側辺21bは、下辺21cの正面側の端部から上方へ屈曲形成されている。また、第2緊締部21Dの側辺21b及び第1緊締部11Dの側辺11cは、上下方向に連続して形成され、第2緊締部21Dの側辺21bは、前中心へ湾曲している。
【0060】
また、ガードル1Dでは、張出容易領域Aに対応する位置であって、上辺21a、下辺11b、下辺21c、縫合ライン2aによって囲まれる領域の伸度を周囲の領域と比較して、低くなるように形成してもよい。
【0061】
(変形例4)
図10は、実施形態に係る第4変形例の股付き衣類の背面図である。図10に示す第4変形例のガードル1Eが図1に示すガードル1と違う点は、第1緊締部11Eの上端部が上縁2bまで形成されていない点、第1緊締部11Eの下端部が裾部2cまで形成されていない点、第2緊締部21Eの上端部が上縁2bまで形成されていない点、張出容易領域Aの下方に、第2緊締部21Eが形成されていない点である。第4変形例のガードル1Eの緊締部10は、例えば、Y字状に形成されている。また、緊締部10が、裾部2cまで形成されていないガードルの場合には、裾口がめくれ易くなるおそれがあるため、裾口の締め付け力を強くするといった対策を施すことが好ましい。
【0062】
(変形例5)
図11は、実施形態に係る第5変形例の股付き衣類の背面図である。図11に示す第5変形例のガードル1Fが図10に示す第4変形例のガードル1Eと違う点は、第1緊締部11F、第2緊締部21Fが臀溝Bよりも下方に形成されていない点である。第5変形例のガードル1Fの緊締部10は、例えば、V字状に形成されている。
【0063】
(変形例6)
図12は、実施形態に係る第6変形例の股付き衣類の背面図である。図12に示す第6変形例のガードル1Gが図10に示す第4変形例のガードル1Eと違う点は、ガードル1Eと比較して丈が短い点である。このように本発明をショートタイプガードルに適用してもよい。
【0064】
なお、体型補整機能が充分に得られる場合には、図12に示すようなショートタイプガードルよりも、股下の丈をさらに短いものとし、例えば、裾部2cが臀溝B近傍に位置する程度の丈長さとしてもよい。
【0065】
(変形例7)
図13は、実施形態に係る第7変形例の股付き衣類の背面図である。図13に示す第6変形例のガードル1Hが図12に示す第6変形例のガードル1Gと違う点は、ガードル1Gと比較して上縁2bの位置が低い点である。また、上縁2bの位置に合わせて、第1緊締部11Hおよび第2緊締部21Hの長さが短くされている。このように、本発明をローライズタイプガードルに適用しても良い。この場合には、上縁2bよりも上縁2bを幅広とする(図示上下方向の幅を広くする)、あるいは、上縁2bよりも上縁2bの締付け力を大きくするといった方法により本体部2Hのずり下がりを防止することが好ましい。
【符号の説明】
【0066】
1,1B〜1H…ガードル
2,2G,2H…本体部
2a…縫合ライン
2b,2b…上縁
2c…裾部
3…前身頃
4…後身頃
10…緊締部
11,11B,11D,11E,11F,11H…第1緊締部
11a…上辺、
11b…下辺
11c…側辺
11d…辺
12…上端部
13…傾斜部
14…下端部
14D…下部
21,21B,21C,21D,21E,21F,21H…第2緊締部
21a…上辺
21b…側辺
21c…下辺
22…上下方向部
22D…上部
23…傾斜部
51…従来のガードル
A…張出容易領域
B…臀溝
C…臀裂上端部
D…大転子
,H…高さ
…第1仮想線
…第2仮想線
…基準線
,P…接線
10…基準位置
T…臀部の頂点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも着用者の臀部を覆う本体部と、前記本体部の緊締力よりも強い緊締力を有する緊締部とを備える股付き衣類であって、
前記緊締部は、
臀裂上端部近傍から、臀溝の左右両端部の上方に位置し贅肉が付着しやすい部分である張出容易領域に対応する位置まで斜め下方へ延設された左右一対の第1緊締部と、
左右の前記張出容易領域に対応する位置から上方へ延設された左右一対の第2緊締部と、を備えることを特徴とする股付き衣類。
【請求項2】
前記第1緊締部の上端部は、臀裂上端部近傍から更に上方へ延在していることを特徴とする請求項1記載の股付き衣類。
【請求項3】
前記第1緊締部の下端部は、前記張出容易領域に対応する位置から下方へ延在していることを特徴とする請求項1または2記載の股付き衣類。
【請求項4】
前記第2緊締部の下端部は、前記張出容易領域に対応する位置から内股側へ臀溝を斜めに跨ぐように延在していることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の股付き衣類。
【請求項5】
前記緊締部は、前記本体部の一部の伸度を変更することで形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の股付き衣類。
【請求項6】
前記緊締部は、前記本体部に当て布を取り付けて形成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の股付き衣類。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−214188(P2011−214188A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83229(P2010−83229)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(306033379)株式会社ワコール (116)
【Fターム(参考)】