説明

股部を有する衣類

【課題】 腹部両側から両脇部にかけて贅肉の膨出を抑制する補整パワーを高め、かつ、肉の段差や生地の引き攣れのないスッキリとしたシルエットを形成する。
【解決手段】 ウエスト位置から両脚周り部に達する本体布11と、腹部押さえ用の第一当て布15と、腹部両側押さえ用の第二当て布16と、腹部両側押さえ兼ヒップアップ用の第三当て布17を備える。第一当て布15は本体布11の前部中央部に配置し、第二当て布16は、第一当て布15の上部側の腹部両側から少なくとも脇線に達する位置へ延在し、第三当て布17は、第一当て布15の腹部両側から脇線を越えて本体布11の後部へヒップ外周に沿って円弧状に延在し、該腹部両側から少なくとも脇線に達する位置では本体布11、第二当て布16、第三当て布17の3枚重ねとしている。第二当て布16の下端縁16aと第三当て布17の外側縁17bは本体布11と縫着せず遊離させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガードル、ボディスーツ、パンティ等の股部を有する衣類に関し、特に、腹部、脇部、ヒップの贅肉を押さえるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガードルなどの股部を有する衣類は、主として腹部の贅肉による膨らみやたるみを押さえて体形をスッキリ見せる補整機能を備えているものが多い。この種の衣類としては、腹部から両脇部にかける部位や臀部下部などの気になる部位に比較的伸縮パワーの強い補整布を配して贅肉を押さえたり引っ張り上げる機能を有するものが知られている。
【0003】
例えば、本願出願人は、先の出願に係る特開平9−217206号公報(特許文献1)で図8に示すようなガードル1を提案している。ガードル1は、腹部をカバーする腹部布3と、該腹部布3の腹部中央部近傍脇から上方へ斜行して本体布2の少なくとも脇近傍まで至る長さ方向に伸縮可能でやや広幅の第1ストレッチ性帯状体4と、腹部布3のウエスト位置近傍脇からウエストラインに沿って本体布2の脇近傍に至る少なくとも長さ方向に伸縮可能なやや広幅の第2ストレッチ性帯状体5とを備えている。第1、第2ストレッチ帯状体4、5の下辺は本体布2と縫着せず遊離させている。
【0004】
前記ガードル1は、第1ストレッチ帯状体4が腹部布3を引っ張り上げる作用をするため、腹部の膨出を押さえることができ、かつ、第2ストレッチ帯状体5で両脇の贅肉のたるみを押さえることができる。また、第1、第2ストレッチ帯状体4、5の下辺を本体布2から遊離させておくことにより、第1、第2ストレッチ帯状体4、5の伸縮パワーを本体布2を構成する生地に拘束されることなく十分に発現することが可能となり、引き攣れ等の発生も防止できる。
【0005】
しかしながら、前記第1、第2ストレッチ帯状体4、5はごく一部の狭い領域Aを除いて殆ど重なっておらず、しかも、両帯状体4、5の下辺は本体布2に縫着していないため、腹部側から流れてきた贅肉が集まりやすい両脇部へのパワーがやや不足する。
また、第1ストレッチ帯状体4の下辺側が第2ストレッチ帯状体5と重なっていないため、贅肉の押し戻し力に第1ストレッチ帯状体4が負けて前記遊離した下辺側からタブリやすくなる。このタブリは第1ストレッチ帯状体4が広幅であると一層生じやすく、このタブリによって第1ストレッチ帯状体4の幅が狭くなると十分な伸縮パワーおよび補整機能を発揮できなくなる点にも改良の余地がある。
【0006】
また、他の一例として、実用新案登録第3101799号公報(特許文献2)に示されたガードル6が挙げられる。該ガードル6は、図9(A)(B)に示すように、後中心部近傍からヒップ下部に沿って円弧状に湾曲したのち脇側前方に向かって上向きに斜行する伸縮性の裏打ち布8を備えており、該裏打ち布8は、上端縁8aと下端縁8bを本体布7と縫着しているが、前側円弧辺8cと後側円弧辺8dの少なくとも中央部は本体布7と縫着せずに遊離させている。
【0007】
前記ガードル6は、裏打ち布8と本体布7との縫着部分が多いため、脇部を押さえる補整パワーとヒップ下部を引っ張り上げるヒップアップ補整パワーとを比較的強く発現できると考えられるが、その反面、補整箇所と非補整箇所との境目で肉の段差が現れやすくなる点に課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平09−217206号公報
【特許文献2】実用新案登録第3101799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、腹部、腹部両側から脇部にかける部分、臀部の体型をスッキリと整える機能を備え、押さえ布のタブリや本体布の引き攣れを防ぎ、かつ、特に腹部両側から両脇側部にかけて効果的にパワーを発揮すると共に肉の段差発生も防いでスッキリと体形を整えることができる股部を有する衣類の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、第1の発明として、
本体布と、腹部押さえ用の第一当て布と、腹部両側押さえ用の第二当て布と、腹部両側押さえ用兼ヒップアップ用の第三当て布を備え、
前記本体布は、ウエストラインに位置する上端縁から股部および左右脚周り部に達する前後見頃部を有し、
前記第一当て布は、本体布の前部中央部に配置し、周縁を本体布に縫着し、
前記第二当て布は、前記第一当て布の上部側の腹部両側から少なくとも脇線に達する位置へ延在し、該第二当て布の上端を前記本体布の上端に縫着すると共に、下端は本体布と縫着せずに遊離させ、
前記第三当て布は、前記第二当て布と重ねて第一当て布の腹部両側から脇線を越えて本体布の後部へ延在し、該本体布の後部ではヒップの外周に位置させると共に、外側縁は股部側から前記第一当て布に向けて傾斜させ、該第三当て布の上端の少なくとも一部を前記本体布の上端に縫着すると共に前記外側縁は本体布と縫着せずに遊離させ、
前記第一当て布の上部側の腹部両側から脇線に達する位置では前記本体布、第二当て布及び第三当て布の3枚重ねとしている股部を有する衣類を提供している。
【0011】
前記構成の股部を有する衣類は、第一当て布によって腹部を、第二当て布によって腹部両側から脇部を、第三当て布によって腹部両側から脇線を越えてウエスト後脇部分およびヒップ下部をそれぞれ押さえて体型をスッキリと整えるものである。
【0012】
特に、第一当て布の上部両側から脇部にかけて第二当て布と第三当て布とを3枚重ねとするため、第一当て布により腹部側から脇側へと流れる贅肉を強いパワーで効果的に押さえ込むことができる。かつ、第一当て布を第二当て布および第三当て布により脇側へと引っ張る作用も加わる。よって、腹部押さえ用の当て布だけを取り付けている場合は腹部を押さえることはできるが、本発明では腹部および腹部両側からウエスト後脇部に発生する贅肉を押さえることができ、ウエスト周りの全周をスッキリと整えることができる。
さらに、第二当て布により、第一当て布を脇側へ引っ張ると同時に腹部から腹斜筋にかけて引き上げる作用も有し、腹部全体の下垂を防止することができる。
【0013】
また、第二当て布の下端および第三当て布の外側縁を本体布から遊離させているため、この遊離部分は縫合糸による生地伸度固定の影響をうけずにその伸張性を発現でき、押さえつけた贅肉を適度に分散して逃すことができるため、該第二当て布と第三当て布の端縁の位置で肉の段差が発生することを防ぐことができる。さらに、本体布は第二当て布および第三当て布に引っ張られることなく運動追従性を発現できるため、着崩れや本体布の引き攣れも防ぐことができる。これらにより、腹部から脇線を越えてウエスト後脇部にかけたウエスト周りとヒップ外周部を補整して段差や引き攣れのないスッキリと美しいシルエットを形成することができる。
【0014】
さらにまた、前述のとおり、腹部両側から脇部にかけて本体布と第二当て布と第三当て布とを3枚重ねて配置していることにより、腹部側から脇側に流れてきた贅肉の膨出に対しても強く安定したパワーで、第二当て布の下端遊離部分が贅肉の押し戻し力に負けてタブることを防止できる。
【0015】
なお、前記本体布、第二当て布および第三当て布とを3枚重ねとする領域は、ウエスト全周の25%以上50%未満、かつ、鼠鶏部より上側位置が好ましい。これは、3枚重ねの領域がウエスト全周の25%未満では、強い補整パワーを発現する領域が小さすぎて腹部から脇部にかけての補整機能を十分に発揮できず、50%超では強い補整パワーを発現する領域が大きすぎてウエスト全体への締め付け感が強まり、着用感が悪化することに因る。
また、前記3枚重ね領域を鼠鶏部より上側位置とすることにより、運動時に変形量が大きく、かつリンパが集中する部位でもある鼠鶏部に強い締め付け力が加わることを防ぎ、着用感を良好なものとすることができる。
前記本体布の後部側でヒップの外周に沿って配置する前記第三当て布の内端縁は、ヒップ外周に沿った円弧形状としても良いし、直線状に傾斜させてもよい。
【0016】
前記本体布は前記第一、第二、第三当て布の素材と相違した縦横方向の伸びが大きい素材からなり、
前記第一当て布は横伸びが無い素材または低伸縮性の素材、第二当て布および第三当て布は長さ方向が直交方向よりも伸び率が低い素材を用いていることが好ましい。
【0017】
このように、本体布の縦横方向の伸びを大きくすることにより、着脱が容易になるうえ、着用時の本体布の運動追従性を高めることができ、着崩れや引き攣れをより効果的に防ぐことができる。
【0018】
第一当て布は横伸び無しとしても良いし、縦横方向のいずれも若干の伸びは有するが伸びにくい素材としてもよい。これにより、該第一当て布に対して第二当て布の引っ張り力および引き上げ力を効果的に作用させることができ、腹部の贅肉の膨出を押さえ込む補整機能を効果的に発揮することができる。
さらに、前記のように、ウエストラインに沿って配置される第二当て布の長さ方向(即ち、腹部から脇線部へと延在する横方向)より直交する方向(上下方向)の伸び率を低くしている。前記第三当て布も長さ方向(腹部側から背部へと延在する方向)より直交する方向(上下方向)の伸び率を低くしている。
このように、第二、第三当て布の上下方向の伸び率を低くしているため、ウエスト回りに腹部および後脇部に発生しやすい贅肉の段差を押さえ込むことができ、かつ、第一当て布を無理なく引っ張ると共に引き上げる力を発生させることができる。また、第三当て布によりヒップ外周を持ち上げる力を強めてヒップアップ機能を効果的に発揮させることができる。
【0019】
詳しくは、前記第二当て布は腹部両側から後部側全周に渡って配置し、前部側では前記本体布と前記第一当て布との間に挟んで位置させると共に脇線を越えて本体布の後部側に連続させ、前部側では下端縁を上向き傾斜させて上前腸骨棘、下前腸骨棘、腸骨稜を覆う位置に配置していると共に、後部側では下端縁を上端縁と略平行として上後腸骨棘を覆う位置に配置し、前側端縁は前記本体布および第一当て布と縫着し、
前記第三当て布は前記第二当て布の肌側に重ねて配置し、該第三当て布の後部側の前記内側縁の上部は前記第二当て布と重ね、該第二当て布および本体布と縫着し、該内側縁の下部側は前記第二当て布の下端縁との間に領域をあけ、該領域をヒップの膨出部に位置するようにし、該第三当て布は前記本体布の後部側でクロッチ部の後部上端の少なくとも一部に縫着していることが好ましい。
【0020】
第一当て布、第二当て布、および第三当て布をそれぞれ前記のような形状および配置とすることにより、運動時等に身体挙動の大きい部位や変形量の大きい部位以外の領域にこれら当て布が配置されるため、身体挙動を妨がず良好な運動追従性を確保しながら、腹部、ウエスト回りの腹部の両側からウエスト後脇部の贅肉を押さえ、かつ、ヒップ下部を持ち上げてヒップアップを効果的に発揮させることができる。
【0021】
なお、第三当て布の外側縁の長さは、該外側縁に対応する部分の本体布の長さよりも1cm前後短く設定してもよい。これにより、ヒップアップ効果をより一層高めることができる。
【0022】
また、前記第三当て布の前記内側縁は、本体布と第二当て布との3枚重ね領域のみで縫着し、それより下部側は本体布と縫着せず前記外側縁と同様に遊離させてもよい。その場合は、該第三当て布の幅を広くしてヒップ膨出部の前記領域を小さくすることにより、着用時に着用者が誤って本体布と第三当て布との間の遊離空間に足を入れてしまわないように配慮することが好ましい。また、該内側縁の長さは、該内側縁に対応する部分の本体布の長さよりも1cm前後短く設定して、ヒップアップ効果をより一層高める態様としてもよい。
【0023】
前記第二当て布および第三当て布は端始末不要の素材からなり、前記遊離させる端縁は縫着処理していないことが好ましい。
これにより、第二当て布および第三当て布の輪郭が表地、さらには外衣に響くことを防止できる。
【0024】
また、第2の発明として、前記第一当て布を設けず、本体布の前中央布を伸びが殆どない素材で形成している点を第1の発明と相違させ、本体布の前中央布と前記第一当て布の両方の機能を持たせた股部を有する衣類を提供している。
【0025】
即ち、第2の発明の股部を有する衣類は、前中央布と左右本体布とからなる本体布、腹部両側押さえ用の第二当て布と、腹部両側押さえ用兼ヒップアップ用の第三当て布を備え、
前記本体布の前記前中央布は前記左右本体布より伸びの少ない別素材で形成しており、
前記第二当て布は、前記前中央布の上部側の腹部両側から少なくとも脇線に達する位置へ延在し、該第二当て布の上端を前記本体布の上端に縫着すると共に、下端は本体布と縫着せずに遊離させ、
前記第三当て布は、前記第二当て布と重ねて前記前中央布の腹部両側から脇線を越えて本体布の後部へ延在し、前記左右本体布からなる本体布の後部ではヒップの外周に位置させると共に、外側縁は股部側から前記前中央布に向けて傾斜させ、該第三当て布の上端の少なくとも一部を前記前中央布の上端に縫着すると共に前記外側縁は前記左右本体布と縫着せずに遊離させ、
前記前中央布の上部側の腹部両側から少なくとも脇線に達する位置では前記左右本体布、第二当て布及び第三当て布の3枚重ねとしていることを特徴とする。
なお、他の構成は前記第1の発明の股部を有する衣類と同様としている。
【発明の効果】
【0026】
上述したように、第1の発明では第一当て布、第2の発明では第一当て布を兼ねる本体布の前中央布によって腹部を押さえ、第二当て布と第三当て布とによって腹部両側からウエスト後脇部にかけたウエスト回り全体を、第三当て布によってヒップ外周をそれぞれ押さえてスッキリと整えることができる。特に、ウエストラインに沿った腹部両側からウエスト後脇部にかけた部位では第二当て布と第三当て布と本体布とが3枚重ねとなることにより、該部位の押さえパワーを増強することで、腹部側から脇側へ流れてきた贅肉を効果的に押さえ込むことができる。また、第二当て布の下端と第三当て布の外側縁を本体布と縫着せず遊離させていることにより、この遊離部分では当て布の締め付け力が低減するため、押さえつけた贅肉を該遊離部分で適度に分散して逃すことができ、これら当て布の端縁の位置に贅肉の段差が生じることを防止できる。さらに、本体布は第二当て布および第三当て布に引っ張られることなく身体挙動に追従することができるため、本体布が引き攣れたり着崩れることも防止できる。これらにより、腹部から両脇部にかけたウエスト部とヒップ外周部をスッキリと美しく補整することが可能となる。
さらに、第二当て布により、第一当て布を脇側へ引っ張ると同時に腹部から腹斜筋へと引き上げる力もあり、腹部の下垂を防止できる。
【0027】
また、腹部から流れてきた贅肉が溜まりやすい腹部両側から脇部にかけた広範囲に、本体布と第二当て布のみでなく、さらに第三当て布も裏打ちして3枚重ねて配置しているため、該部位に強く安定したパワーを発揮することができ、ウエストラインに沿って配置された第二当て布が、贅肉の押し戻し力に負けて下端の遊離部分からタブってしまうことを防止できる、
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第一実施形態に係るロングガードルの着用時の状態を示し、(A)は正面側の斜視図、(B)は背面側の斜視図である。
【図2】図1に示すロングガードルの表面側を示し、(A)は正面図、(B)は背面図である。
【図3】図1に示すロングガードルの裏面側を示し、(A)は正面図、(B)は背面図である。
【図4】第一実施形態の第一変形例を示し、ロングガードルの裏面側背面図である。
【図5】第一実施形態の第二変形例を示し、ロングガードルの正面図である。
【図6】第二実施形態に係るショートガードルの着用時の状態を示し、(A)は正面側斜視図、(B)は背面側斜視図である。
【図7】本発明の第三実施形態に係るロングガードルを示し、(A)は正面側の斜視図、(B)は背面図である。
【図8】従来例を示す側面図である。
【図9】(A)(B)は他の従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図3に、第一実施形態に係るロングガードル10−1からなる股部を有する衣類を示す。
【0030】
ロングガードル10−1は、図2および図3に示すように、本体布11と、該本体布11の肌側となる裏面側に取り付けられる第一当て布15、左右一対の第二当て布16および左右一対の第三当て布17と、ウエスト布18とからなる。
【0031】
前記本体布11は、図2(A)(B)に示すように、前中央部に配置される前中央布12と、一対の左右本体布13と、クロッチ布14とからなる。本体布11は、縦横方向に伸縮性を有し、かつ、端始末不要で切り離しできるトリコットで形成している。
なお、本体布11はトリコット以外に、パワーネット、丸編地で形成してもよい。また、前中央布12と左右本体布13とは同一素材に限定されず、異なる素材で形成してもよいが、その場合も縦横方向に伸縮性を有する素材で形成している。
【0032】
前中央布12は、図2(A)に示すように、ウエストライン近傍の上端位置からクロッチ布14の前端に至る位置までに配置され、左右両端を下向きに幅狭となるように傾斜させた逆台形状よりなる。
左右本体布13は、図2(A)(B)に示すようにウエスト近傍の上端位置から下端は大腿部を囲む位置まで達する前身頃部13Aと後身頃部13Bを脇線ラインを越えて連続的に備え、正面側の前端縁のうち股部より上側部分は、前中央布12の左右両端の傾斜に対応するように脇側から股側に向けて下向き傾斜させている。
【0033】
左右本体布13は、図2(B)に示すように、その後端縁を、後部側臀部では後中央の臀裂に沿った位置で互いに縫着し、股部ではクロッチ布14の後端と縫着し、大腿部の内側では左右本体布13の前端縁とそれぞれ縫着して左右一対の筒状部を形成し、脚裾周りは端始末の縫着をしていない。また、左右本体布13の前端縁は、図2(A)に示すように、正面側腹部で前記前中央布12の左右両端縁と縫着し、股部ではクロッチ布14の左右両端縁と縫着している。前記前中央布12の下端は、クロッチ布14の前端縁と縫着している。クロッチ布14は股部を形成し、裏面側に股部当て布21を取り付けている。
【0034】
前記前中央布12の上端縁と左右本体布13の上端縁とを連続してなる本体布11の上端全周には、ウエスト布18を縫着している。このウエスト布18は、本体布11と同一素材からなる表地19と裏地20とからなり、図3(A)(B)に示すように、表地19の上端を裏側に折り返し、該折り返し部の下端と裏地20の上端とを縫着して2枚重ねとしている。該ウエスト布18は、長さ方向の両端を後中央で縫着して連結していると共に、下端を本体布11の上端縁に縫着している。
【0035】
前記第一当て布15は、図3(A)に示すように前中央部に配置される腹部押さえ用の当て布である。前記本体布11の前中央布12と同一形状より、ウエストラインから股部に向けて左右両側を傾斜させている。該第一当て布15は本体布11とは異なる素材で形成し、横方向に伸びのない素材からなる。本実施形態ではパワーネットで形成している。この第一当て布15は、前中央布12の裏面側に重ねて配置され、その周縁を前中央布12の周縁に縫着して固定している。
第一当て布15はパワーネットに限定されず、トリコット、マーキゼット等で形成してもよい。また、第一当て布15の形状は本体布11と同一形状に限定されず、上端はウエストラインに位置させると共に下腹部に当たる位置で三角形状としたベースプレート形状としても良いし、上下に三角形を設けた菱形状としてもよい。第一当て布15を菱形状とする場合は、後述する第二、第三当て布は第一当て布の左右傾斜辺に縫着している。
【0036】
前記左右一対の第二当て布16は、図1(A)(B)および図3(A)(B)に示すように、第一当て布15の上部側の腹部両側から脇線を越えて後部中央まで至る略帯状体よりなる。この左右の第二当て布16を後部中央で縫着して連結して腹部両側から後部側全周に配置している。該第二当て布16は、前部側では下端縁16aを脇側に向かって上向き傾斜させて上前腸骨棘、下前腸棘、腸骨稜を覆うが鼠鶏部にまで至らない位置に配置している。後部側では下端縁16aを上端縁と略平行として上後腸骨棘を覆う位置に配置している。
【0037】
前記第二当て布16は、前側端部を前記前中央布12と第一当て布15との間に挟んで縫着し、後側端縁を後部中央で本体布11と縫着し、かつ上端縁を本体布11の上端縁と縫着している。下端縁16aは本体布11と縫着せずに遊離させている。
なお、第二当て布16は後中央で本体布11と縫着しなくてもよい。また、第二当て
布16は左右一対とせずに後部側で連続させてもよい。
【0038】
前記左右一対の第三当て布17は、図1(A)(B)および図3(A)(B)に示すように、第一当て布15の腹部両側から脇線を越えてヒップ外周に沿いながら本体布11の後部中央へ円弧状に延在させ、腹部両側押さえ用兼ヒップアップ用の当て布としている。 該第三当て布17は、前部側では、上端縁はウエスト近傍に位置し、下端縁は第二当て布16の前端部の下端よりやや上方位置から脇側に向かって下方に傾斜しているが、鼠鶏部には至らない上側に配置している。後部側では、前記上端縁の後端と連続する内側縁17aを、ヒップ外周よりも上方位置(内側位置)を後部中央に向かって円弧状に下方傾斜させ、前記下端縁の後端と連続する外側縁17bを、ヒップ外周に沿って大腿部付け根の内側に向かって円弧状に下方傾斜させている。
【0039】
第三当て布17の内側縁17aの上端は、図1(B)および図3(B)に示すように、脇線よりも後方位置で上端縁と連続させている。また、第二当て布16と第三当て布17と本体布11との3枚重ね領域Sの上端縁の長さは、ガードル10−1の上端縁全周の長さの25%以上50%未満となるように設定している。
【0040】
第三当て布17の内側縁17aの下部側は、図3(B)に示すように、第二当て布16の下端縁16aよりも所要領域をあけて下方に位置し、この第二当て布16にも第三当て布17にも覆われない本体布11の領域をヒップ膨出部22としている。
【0041】
第三当て布17は、図3(A)(B)に示すように、第二当て布16の肌側に重ねて配置し、前端縁を本体布11と第一当て布15と第二当て布16に一体に縫着している。上端縁および内側縁17aの上部側を本体布11と第二当て布16に一体に縫着している。内側縁17aの下部側は本体布11に縫着し、後端縁上部17cは臀裂に沿って本体布11に縫着し、後端縁下部17dをクロッチ布14の後端縁から本体布11の大腿部内側縫着部にかけて一体に縫着している。一方、外側縁17bは本体布11と縫着せずに遊離させている。
【0042】
第三当て布17の外側縁17bの長さは、該外側縁17bと対応する位置の本体布11の長さよりも1cm短く設定している。
【0043】
前記第二当て布16と第三当て布17は、横方向の伸縮性よりも縦方向の伸縮性が低く、かつ、端始末不要な素材を用いている。第二当て布16の下端縁16aと第三当て布17の外側縁17bは端末は縫着処理していない。本実施形態では、この第二当て布16と第三当て布17にパワーネットを用いている。
なお、第二当て布16と第三当て布17とは別素材で形成してもよい。
【0044】
前記ロングガードル10−1の裏面側の後部中央には、図3(B)に示すように、臀裂に沿ってウエスト布18の上端からクロッチ布14の後端まで伸縮テープ23を縫着している。
【0045】
前記構成のロングガードル10−1は、腹部に配置された第一当て布15により腹部の膨らみを押さえる。また、ウエストラインに沿った第一当て布15の両側の腹部両側からウエスト後脇部にかけて、本体布11と第二当て布16と第三当て布17とが3枚重ねで配置されているため、該部分は強いパワーとなり、腹部側から流れてきた贅肉が腹部両側からウエスト後脇部に流れて膨出することを効果的に抑制できる。
【0046】
また、第二当て布16の下端縁16aと第三当て布17の外側縁17bは本体布11と縫着せず遊離しているため、遊離した端縁は締め付け力が緩和され、第二当て布16および第三当て布17で押さえつけた肉を適度に分散することができる。かつ、第二当て布16および第三当て布17は上下方向に伸びにくくしているため、贅肉を押さえる力が大きい。これにより、贅肉が溜まりやすい腹部両側からウエスト後脇部にかけたウエスト回り、およびヒップ外周で、第二当て布16および第三当て布17の端縁の位置に肉の段差ができることを防止できる。
【0047】
さらに、第二当て布16の下端縁16aと第三当て布17の外側縁17bを本体布11と縫着していないことにより、本体布11の縦横両方向の伸縮性を第二当て布16や第三当て布17に妨げられることなく十分に発揮させることができる。これにより、ロングガードル10−1の着脱が容易となるうえ、運動追従性も高まり、着崩れや引き攣れを防ぐことができる。
【0048】
また、腹部両側から脇側後方にかけて、本体布11に第二当て布16のみでなく第三当て布17も重ねていることにより、該部分に強く安定したパワーを発揮でき、第二当て布16が肉の押し戻し力に負けて下端側からタブることも防止できる。
【0049】
また、前記3枚重ね領域Sは、鼠鶏部よりも上側位置とし、かつ、その上端縁の長さをガードル10−1の上端縁全周の長さの25%以上50%未満に設定しているため、腹部両側から脇側にかけての贅肉の膨出を抑制する機能と、圧迫感のない良好な着用感をバランスよく備えることができる。
【0050】
さらに、第一当て布15は横方向に伸びがない、または伸びにくくしているため、第二当て布16による脇側への引き上げ力が効果的に作用し、腹部膨出を抑制する機能を高めることができる。かつ、第一当て布15は第二当て布16により脇側へ引っ張られると同時に腹部から腹斜筋へと引き上げられるため、腹部の下垂も防止できる。
また、第二当て布16と第三当て布17は、横方向よりも縦方向の伸縮性を低くしているため、着用時の締め付け感を緩和することと、第二当て布16による第一当て布15の引き上げ力および第三当て布17によるヒップアップパワーを備えることとをバランスよく両立させている。なお、第三当て布17によるヒップアップ補整パワーは、外側縁17bの長さを、該外側縁17bに対応する部分の本体布11の長さより1cm短く設定していることによっても高められる。
【0051】
さらにまた、第二当て布16と第三当て布17には端始末不要の生地を用い、端始末の縫着を行っていないため、これら当て布の輪郭が表地の本体布11、さらにアウターに響くことを防止できる。
【0052】
これらにより、前記ロングガードル10−1は、腹部、腹部両側から脇部にかけた部分、ヒップ下部の体型を整える機能を備える。特に腹部両側から脇線を越えてウエスト後脇部にかけた部位の贅肉の膨出を押さえる強く安定したパワーを有し、肉の段差や生地の引き攣れも防ぐため、ウエスト全周に沿った部分とヒップ周りをスッキリと美しいシルエットを形成することができる。
【0053】
図4に第一実施形態の第一変形例を示す。
ロングガードル10−1は、第三当て布17の内側縁17aを、第二当て布16と重なる3枚重ね領域でのみ本体布11(および第二当て布16)と縫着し、それよりも下側部分は本体布11と縫着せずに遊離させている。
また、この場合、内側縁17aの長さは、該内側縁17aに対応する部分の本体布11の長さよりも1cm短く設定してもよい。これにより、第三当て布17のヒップアップ効果をより一層高めることができる。
【0054】
図5に第一実施形態の第二変形例を示す。
第二変形例では、第二当て布16の前端縁16fを前部中央まで延在させ、本体布11と縫着し、本体布11と第一当て布15との間に挟みこんでいる。
該構成とすると、腹部上部中央が本体布11、第二当て布16および第一当て布15との3枚重ねとなり、腹部の膨らみを強いパワーで押さえることができる。
【0055】
図6(A)(B)に、本発明の第二実施形態に係るショートガードル10−2を示す。
前記第一実施形態との相違点は、左右本体布13の下端を両脚繰りに沿った位置とし、左右本体布13の下端縁とクロッチ布14の左右両側縁で左右の脚繰り周縁を形成している。その他の構成は前記第一実施形態と同一であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0056】
図7(A)(B)に、本発明の第三実施形態に係るロングガードル10−3を示す。
第三実施形態では、腹部押さえ用の第一当て布を設けず、本体布11を構成する前中央布30を横伸びがない、または縦横の伸びが殆どない素材で形成し、第一当て布を取り付けることなく、腹部押さえ機能を持たせている。本実施形態では、該前中央布30としてパワーネットを用いている。
【0057】
他の構成は前記第一実施形態と同様であり、同一符号を付す。
本体布11は前記前中央布30と、該前中央布30の左右両側縁に縫着する左右両側の左右本体布13とからなる。左右本体布13は前中央布30より伸びやすい素材で形成している。
前記前中央布30の上部側の左右両側に第二当て布16、第三当て布17を備えている。
第二当て布16は前中央布30の上部側の腹部両側から脇線を越えて背面側の全周に延在し、第二当て布16の上端を左右本体布13の上端に縫着すると共に、下端は左右本体布13と縫着せずに遊離させている。
第三当て布17は、第二当て布16と重ねて前中央布30の腹部両側から脇線を越えて左右本体布13の後部へ延在させてヒップの外周に位置させると共に、外側縁はクロッチ布14からなる股部側から前中央布30に向けて傾斜させている。該第三当て布17の上端の少なくとも一部を左右本体布13の上端に縫着すると共に外側縁は左右本体布13と縫着せずに遊離させている。
【0058】
このように、第三実施形態のガードルにおいても、前中央布30の上部側の腹部両側から脇線をこえてウエスト後脇部分が左右本体布13、第二当て布16及び第三当て布17の3枚重ねとしているため、当該部分の贅肉を押さえることができ、ウエスト周りをスッキリとさせることができる。他の機能は第一実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0059】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、第二当て布16は、後部全周を覆うものではなく、第一当て布15の腹部両側から少なくとも脇線に達するものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の股部を有する衣類は、ガードルに限らず、ボディスーツ、パンティ、水着などにも適用できる。
【符号の説明】
【0061】
10−1、10−3 ロングガードル
10−2 ショートガードル
11 本体布
12、30 前中央布
13 左右本体布
15 第一当て布
16 第二当て布
17 第三当て布
17a 内側縁
17b 外側縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体布と、腹部押さえ用の第一当て布と、腹部両側押さえ用の第二当て布と、腹部両側押さえ用兼ヒップアップ用の第三当て布を備え、
前記本体布は、ウエストラインに位置する上端縁から股部および左右脚周り部に達する前後見頃部を有し、
前記第一当て布は、本体布の前部中央部に配置し、周縁を本体布に縫着し、
前記第二当て布は、前記第一当て布の上部側の腹部両側から少なくとも脇線に達する位置へ延在し、該第二当て布の上端を前記本体布の上端に縫着すると共に、下端は本体布と縫着せずに遊離させ、
前記第三当て布は、前記第二当て布と重ねて第一当て布の腹部両側から脇線を越えて本体布の後部へ延在し、該本体布の後部ではヒップの外周に位置させると共に、外側縁は股部側から前記第一当て布に向けて傾斜させ、該第三当て布の上端の少なくとも一部を前記本体布の上端に縫着すると共に前記外側縁は本体布と縫着せずに遊離させ、
前記第一当て布の上部側の腹部両側から脇線に達する位置では前記本体布、第二当て布及び第三当て布の3枚重ねとしている股部を有する衣類。
【請求項2】
前記本体布は前記第一、第二、第三当て布の素材と相違した縦横方向の伸びが大きい素材からなり、
前記第一当て布は横伸びが無い素材または低伸縮性の素材、第二当て布および第三当て布は長さ方向が直交方向よりも伸び率が低い素材からなる請求項1に記載の股部を有する衣類。
【請求項3】
前記第二当て布は腹部両側から後部側全周に渡って配置し、前部側では前記本体布と前記第一当て布との間に挟んで位置させると共に脇線を越えて本体布の後部側に連続させ、前部側では下端縁を上向き傾斜させて上前腸骨棘、下前腸骨棘、腸骨稜を覆う位置に配置していると共に、後部側では下端縁を上端縁と略平行として上後腸骨棘を覆う位置に配置し、前側端縁は前記本体布および第一当て布と縫着し、
前記第三当て布は前記第二当て布の肌側に重ねて配置し、該第三当て布の後部側の前記内側縁の上部は前記第二当て布と重ね、該第二当て布および本体布と縫着し、該内側縁の下部側は前記第二当て布の下端縁との間に領域をあけ、該領域をヒップの膨出部に位置するようにし、該第三当て布は前記本体布の後部側でクロッチ部の後部上端の少なくとも一部に縫着している請求項1または請求項2に記載の股部を有する衣類。
【請求項4】
前記第二当て布および第三当て布は端始末不要の素材からなり、前記遊離させる端縁は縫着処理していない請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の股部を有する衣類。
【請求項5】
前中央布と左右本体布とからなる本体布、腹部両側押さえ用の第二当て布と、腹部両側押さえ用兼ヒップアップ用の第三当て布を備え、
前記本体布の前記前中央布は前記左右本体布より伸びの少ない別素材で形成しており、
前記第二当て布は、前記前中央布の上部側の腹部両側から少なくとも脇線に達する位置へ延在し、該第二当て布の上端を前記本体布の上端に縫着すると共に、下端は本体布と縫着せずに遊離させ、
前記第三当て布は、前記第二当て布と重ねて前記前中央布の腹部両側から脇線を越えて本体布の後部へ延在し、前記左右本体布からなる本体布の後部ではヒップの外周に位置させると共に、外側縁は股部側から前記前中央布に向けて傾斜させ、該第三当て布の上端の少なくとも一部を前記前中央布の上端に縫着すると共に前記外側縁は前記左右本体布と縫着せずに遊離させ、
前記前中央布の上部側の腹部両側から少なくとも脇線に達する位置では前記左右本体布、第二当て布及び第三当て布の3枚重ねとしている股部を有する衣類。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−255148(P2010−255148A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109138(P2009−109138)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(306033379)株式会社ワコール (116)
【Fターム(参考)】