説明

肥料散布機

【課題】 トラクタに連結する肥料散布機において、肥料の散布量調節が容易で散布精度が良く、複合作業等も可能で、有機質肥料等の散布ができる。
【解決手段】 肥料を収容するホッパの底部後端側に散布口を設け、トラクタからの動力によりスクリュコンベアを散布口に向けて駆動し、スクリュコンベア上方には、肥料が流下するホッパ側面壁の隙間を変化させて流下量を調節する調節手段と、スクリュコンベア長手方向と直交する方向に揺動して肥料の流下滞留を防止する滞留防止手段を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタに連結して有機質肥料や粉粒体肥料を筋状に散布する肥料散布機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明は、作物の栽培畝に筋状に肥料を施肥しようとするもので、従来このような肥料散布機としては、例えば実公昭55−176707号公報に記載された堆肥散布機が公知である。
【特許文献1】実公昭55−176707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来技術における堆肥散布機の肥料を排出口に繰り出すための繰り出しコンベアの駆動は、接地輪を地面に接地させ、これの駆動力により駆動されるもので、トラクタの走行速度が変化すると、接地輪の回転数も変化し、コンベアの繰出し量も変化することになるが、圃場条件や走行速度条件により接地輪のスリップが発生し、均一な散布量が得られない問題があった。また、単位面積あたりの散布量を変更する場合は、トラクタの走行速度に対しコンベアの繰り出し速度を変更することが有効であるが、接地輪は走行速度に同期しているため、散布量の変更はできない問題があった。
【0004】
また、肥料の繰出し搬送には、ベルトコンベアを使用しているため、有機質肥料等の場合、滞留やスリップにより繰出し量が安定しない問題があった。
また、例えば畝に溝を開けて溝の中に肥料を筋状に散布する場合、別工程で溝を開けておく必要があり、これを一工程で行う場合、散布孔の前方に溝開け装置を装着する必要があるが、散布孔が前端部にあるため、これらの装置の装着スペースが確保できなく、このような複合作業を行う場合不都合が生じていた。
【0005】
このようなことから本発明の目的は、肥料の散布量調節が容易で散布精度が良く、複合作業等も可能で、有機質肥料等の流下性の劣る肥料でも散布可能な肥料散布機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、トラクタに連結する装着部と、肥料を収容するホッパと、肥料を散布する施肥部を有する肥料散布機において、施肥部は、ホッパ底部の後端側に散布口を有し、この散布口に向けてスクリュコンベアを配設し、このスクリュコンベア上方に設けた固定板と、ホッパ側面壁との隙間を変化させる開閉板を固定板に摺動自在に設け肥料の流下量を調節する調節手段を有し、スクリュコンベアはトラクタからの動力で駆動されるように構成した。
【0007】
また、ホッパ内のスクリュコンベア上方に位置し、スクリュコンベア長手方向と直交する方向に揺動してホッパ内の肥料の流下滞留を防止する滞留防止手段を設け、前記スクリュコンベアの駆動と連動して揺動するように構成した。
【発明の効果】
【0008】
以上のように構成することにより、請求項1記載の発明によると、ホッバ底部後端側に散布孔があるため、肥料散布前の溝開け等の複合作業用手段をホッパ下方部のスペースに設けることが可能で、施肥部においては、駆動をトラクタの動力により確実に行い接地輪のスリップ等に影響されることがなく、ホッパ内の肥料の搬送繰出しは、回転軸に螺旋状の羽根を有したスクリュを回転させて搬送するスクリュコンベアで行うため、肥料を強制的に確実に搬送し精度の良い散布量が得られ、少量精密散布にも有効である。
【0009】
また、スクリュコンベア上方に設けた流下量を調節する調節手段により、スクリュコンベアに流下する肥料の量を設定できるため、走行速度に合った散布量を容易に設定できる。
【0010】
肥料をホッパ内に収容して移動する時に、振動等によりホッバ内の肥料の全重量がスクリュコンベア部に作用して固着し、スクリュコンベアを起動する時の抵抗力となり、起動できなかったり、部品の破損を招く不都合を生ずる場合があるが、開閉板を閉じて移動することにより解消することができる。
【0011】
また、請求項2記載の発明によると、スクリュコンベアの上方に、スクリュコンベア長手方向と直交する方向に揺動して、ホッパ内の肥料の流下滞留を防止する滞留防止手段により、有機質肥料等の流下性の劣る肥料でも滞留せずスクリュコンベアへ流下するため、スクリュコンベアで確実に搬送されるのと伴い散布量は安定する。さらにスクリュコンベアの駆動と連動しているため取り扱い性も良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明を実施した肥料散布機の横断面図、図2は本発明を実施した肥料散布機の後面図、図3はホッパ前方部の滞留防止手段と流量調節手段の作動要部説明図、図4はホッパ内の滞留防止手段と流量調節手段の作動要部説明図である。
【0013】
図において、フレーム1の前方には装着部2が設けてあり、ロアピン2aとトップリンク用穴2bにより、図示されていないがトラクタの3点リンク機構に装着される。
【0014】
3はホッパで、上部は肥料を投入しやすいように広く開口してあり、肥料が斜面を流れやすいように下方に向けて傾斜させ萎めた形状に構成していて、底部には施肥部7が設けてあり、これらはフレーム1上に載設されている。
【0015】
施肥部7は、回転軸に螺旋状の羽根を有した繰出しスクリュ4を回転させ、ホッパ3の底部後方に設けた散布口8にホッパ3内の肥料を搬送し落下させ筋状に散布するものである。繰出しスクリュ4のホッパ3内上方には、流量調節手段20が設けてあり、ホッパ3内の肥料が繰出しスクリュ4に流下する流量を調節する。さらに、流量調節手段20の上方には、滞留防止手段9が設けてあり、揺動軸9aを中心に山形に傾斜した揺動板9bが繰出しスクリュ4の長手方向と直交する方向に揺動し、ホッパ3内の肥料の流下滞留を防止する。
【0016】
繰出しスクリュ4は、図示されていないが、トラクタPTO軸と入力軸5とをユニバーサルジョイントで連結しトラクタの動力により駆動され、入力軸5に入った動力は
入力軸スプロケット11aからローラーチェーン10aによりアイドルスプロケット12aに伝達されて減速され、さらに出力スプロケット11bから繰出しスクリュ4に固着された入力スプロケット12bにローラーチェーン10bにより伝達されて減速され繰出しスクリュ4は駆動される。
【0017】
入力軸5の後端部は、入力軸回転中心から軸心をA寸法偏心させたクランク軸となっていて、このクランク軸部には、ベアリングで保持された偏心ボス6が設けてあり、入力軸が回転するとクランク軸部は、上下左右にA寸法偏心して回転し、偏心ボス6から延出した偏心ボスアーム6aの一端は、滞留防止手段9の揺動軸9aに固着した揺動アーム6bと連結してあるため、偏心ボス6は上下左右に揺動し、揺動アーム6bは上下に揺動して滞留防止手段を揺動させる。
【0018】
流量調節手段20は、繰出しスクリュ4の上方に山形に傾斜させた固定板20aを設け、この左右の傾斜面と当接して摺動する開閉板20bを固定板20aの長手方向に回動軸を有したスライドシャフト20cに固着したアーム20gと、開閉板20bの係合ピン20hを係合させて、スライドシャフト20cを回動させることで摺動させ、ホッパ側面壁との隙間Bを変化させ、肥料が繰出しスクリュ4へ流下する流量を調節する。開閉板20bの調節はスライドシャフト20cの前方端に設けたハンドル20eを操作し、ガイド板20fの目盛に対応した位置に固定し調節できる。
【0019】
スライドシャフト20cは、山形に傾斜した固定板20aの左右の開閉板20bを調節できるように平行に二本設けてあり、前方端の双方のギヤ20dの噛合により連動して一本のハンドル20eにより操作できる。開閉板20bを繰出しスクリュ4の回転方向による引き込み側の片側のみに設けた場合は、スライドシャフト20cは一本で良い。
【0020】
車輪13は、肥料を筋状に散布する畝等を跨いで走行できるように左右の延出したフレームに、水平方向に回動自在に設けたキャスターアーム13aにキャスターアーム回動軸とオフセットさせて設けた回転軸で取り付けられていて、肥料散布機を支えている。
【0021】
14はキャスター輪で肥料散布機をトラクタの連結から外し、格納や移動する時に取り付けて使用するものである。
【0022】
ホッパ3下方のフレーム1に取り付けた溝開け板16は、肥料散布する畝や地表面に溝を開けるためのもので、この溝に肥料を散布孔8より落下させて散布することが可能で、散布孔8の後方に設けたディスクロータ15により前記開けた溝を埋め戻して肥料を土中に埋め込むこともできる。
【0023】
ディスクロータ15は、凹状の円板を凹面が斜め前方を向けて取り付けてあり、畝を跨いで左右両側に配置され、平面視で進行方向に逆八字状に後方が萎むように取り付けて、アーム15cによりフレーム1に対し上下に回動可能で、バネ15bにより下方に弾圧されていて、前方へ進行するとディスクロータが自転し、土を後方へ掻き上げて内側に盛り上げる。
溝開け板16およびディスクロータ15は、使用しない時はフレームより取り外しすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】肥料散布機の横断面図
【図2】肥料散布機の後面図
【図3】ホッパ前方部の滞留防止手段と流量調節手段の作動要部説明図
【図4】ホッパ内の滞留防止手段と流量調節手段の作動要部説明図
【符号の説明】
【0025】
1 フレーム
2 装着部
3 ホッパ
4 繰出しスクリュ
5 入力軸
6 偏心ボス
6a 偏心ボスーアーム
6b 揺動アーム
7 施肥部
8 散布口
9 滞留防止手段
9a 揺動軸
9b 揺動板
10a ローラーチェーン
10b ローラーチェーン
11a 入力軸スプロケット
11b 出力スプロケット
12a アイドルスプロケット
12b 入力スプロケット
13 車輪
13a キャスターアーム
14 キャスター輪
15 ディスクロータ
15b バネ
15c アーム
16 溝開け板
20 流量調節手段
20a 固定板
20b 開閉板
20c スライドシャフト
20d ギヤ
20e ハンドル
20f ガイド板
20g アーム
20h 係合ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタに連結する装着部と、肥料を収容するホッパと、肥料を散布する施肥部を有する肥料散布機において、施肥部は、ホッパ底部の後端側に散布口を有し、この散布口に向けてスクリュコンベアを配設し、このスクリュコンベア上方に設けた固定板と、ホッパ側面壁との隙間を変化させる開閉板を固定板に摺動自在に設け肥料の流下量を調節する調節手段を有し、スクリュコンベアはトラクタからの動力で駆動されることを特徴としたトラクタに連結する肥料散布機。
【請求項2】
ホッパ内のスクリュコンベア上方に位置し、スクリュコンベア長手方向と直交する方向に揺動してホッパ内の肥料の流下滞留を防止する滞留防止手段を設け、前記スクリュコンベアの駆動と連動して揺動することを特徴とする請求項1記載のトラクタに連結する肥料散布機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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