説明

肥料散布機

【課題】肥料の漏れやシャッター板のスライド抵抗が大きくなる不都合が発生せず、簡易な構造で製造コストが嵩むことが無く、部品交換も容易で維持費が嵩むことがないシャッター構造の肥料散布機を提供する。
【解決手段】ホッパーの底板排出口231とシャッター板22の孔の重合部位で形成される開口穴の開度量により散布量を調整する肥料散布機において、ホッパーの底板23とシャッター板22の間にはゴムスポンジ板26とフッ素樹脂板27がサンドイッチ状に挟持され、フッ素樹脂板27がシャッター板22又はホッパーの底板23とのスライド面として機能するように設けられていることを特徴とする肥料散布機による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌改良剤や化学肥料等を圃場に散布する肥料散布機に関するもので、特に肥料等を貯留するホッパー底部から肥料を落下させて散布する肥料散布機のシャッター構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の肥料散布機のシャッター構造は、ホッパーの底板とシャッター板とが直接当接しスライドさせていた。このため、シャッター板をスライドさせたときに底板とシャッター板との間に肥料が入り込んでこれが蓄積されていき、シャッター板のスライド抵抗が大きくなり開閉が困難になることがあった。また、直接当接しているため、お互いの形状の精度が悪いと隙間が発生して肥料の漏れが発生する場合があった。この種の問題を解決するための従来技術として、実公昭59−9713号公報(従来技術1)の「粉粒体散布機におけるシャッター」又は実開平02−116916号公報(従来技術2)の「農用散布機のシャッター」が公知である。
【特許文献1】実公昭59−9713号公報(従来技術1)
【特許文献2】実開平02−116916号公報(従来技術2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術1の「粉粒体散布機におけるシャッター」の構造は、ホッパーの底板とシャッター板との対抗面のいずれかにブラシを植設して、肥料の侵入を防ぐとともにスライド抵抗を低減させようとしたものである。しかし、スライド面に植設されたブラシは長期に使用していると磨耗してくるため、スライド抵抗が徐々に大きくなる問題があった。また、植設は専門設備がないとできないため、植設されていた部品ごとの交換が必要となり維持費が高額になる不都合がある。
【0004】
また、従来技術2の「農用散布機のシャッター」の構造は、ホッパー底部の排出口のそれぞれにシャッター板を設け、シャッターバネとシャッターガイドにて上方へ付勢して構成したものであるが、構造が複雑で製造コストが嵩む不都合があるとともに、シャッター板がそれぞれ独立してシャッターバネで支えられているため、排出口の開度量のばらつき等が発生しやすい。
【0005】
このため本発明の目的は、肥料の漏れやシャッター板のスライド抵抗が大きくなる不都合が発生せず、簡易な構造で製造コストが嵩むことが無く、部品交換も容易で維持費が嵩むことがない構造の肥料散布機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、肥料を収容するホッパーの底板に排出口を設けるとともに、該排出口を開閉するための孔を有するシャッター板をホッパーの底板に対しスライド自在に設け、該ホッパーの底板排出口とシャッター板の孔の重合部位で形成される開口穴の開度量により散布量を調整する肥料散布機において、前記ホッパーの底板とシャッター板の間にはゴムスポンジ板とフッ素樹脂板がサンドイッチ状に挟持され、フッ素樹脂板がシャッター板又はホッパーの底板とのスライド面として機能するように設けられていることを特徴とする肥料散布機を提案する。
【発明の効果】
【0007】
ホッパーの底板とシャッター板の間にはゴムスポンジ板とフッ素樹脂板がサンドイッチ状に挟持され、フッ素樹脂板がシャッター板又はホッパーの底板とのスライド面として機能するように設けられているため、ゴムスポンジ板の弾力によりホッパー底板へのシャッター板の押圧力に柔軟性が付加されてスライド抵抗が低減され安定するとともに、底板とシャッター板との間に肥料が入り込んでもゴムスポンジ板の柔軟性により吸収されスライド抵抗が増加することがない。また、ホッパー底板とシャッター板との形状精度が悪い場合の隙間吸収が行われ、隙間発生による肥料漏れ等の不具合が解消される。
【0008】
さらに、フッ素樹脂板は低摩擦性に優れているため、シャッター板のスライド抵抗をより小さく抑えるとともに、ゴムスポンジ板が直接スライド面とならないため、ゴムスポンジの耐久性を維持することができる。さらにまた、メンテナンス時にはゴムスポンジ板部分のみ現場で交換が可能となり維持費も低く抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明を実施した肥料散布機の正面図、図2は同じく側面図、図3は一部を断面した側面図、図4はホッパーの底板部を断面した要部側面図、図5はシャッター板の作動リンク機構を示した底面図、図6はシャッター板部の要部分解斜視図、図7は別実施例の肥料散布機の側面断面図、図8は別実施例の肥料散布機のシャッター板部の要部断面側面図、図9は別実施例の肥料散布機のシャッター板部の要部分解斜視図を示したものである。
【0010】
図1から図6に示す肥料散布機は、フレーム1前方下部には左右一対のロアリンクピン11が、フレーム1前方上部にはトップブラケット12を備え、図示しない走行車であるトラクタ三点リンク機構にロアリンクピン11とトップブラケット12により装着される。2が散布する肥料を貯留するホッパーで、上面が開口されていて、この上面には開閉蓋3が開閉蓋前方側端部に設けたチョウバン31により前後開閉自在に設けられ、散布する肥料は開閉蓋3を上方に開いて開口部より投入される。
【0011】
ホッパー2内の底部には、左右長手方向の回転軸を有して肥料を攪拌繰出しするアジテータ21があり、トラクタの動力により駆動される。図示されていないが、動力はユニバーサルジョイントでトラクタPTO軸とホッパー2下方前方に突出させた入力軸13と連結され入力される。入力された動力は、入力軸13が設けられている減速機で減速されるとともに入力軸13と直交する方向のアジテータ21に伝達されアジテータ21を回転させる。
【0012】
幅広のホッパー2の底板23面には、肥料を排出するための左右長手方向に数多の底板排出口231が設けてあり、排出口231を開閉するための複数の孔221を有するシャッター板22を底板に当接して設けるとともに、前記排出口231の並び方向である左右方向にスライド自在に設け、該ホッパーの底板排出口231とシャッター板22の孔221の重合部位で形成される開口穴の開度量により散布量を調整して落下散布させる。
【0013】
シャッター板22のスライドは、ホッパー2前方に設けた操作レバー4の操作により可能であり、ホッパー2前方下方に設けたレバー回動支点44を支点に、操作レバー4を前後方向に回動操作すると、操作レバー4下方他端に連結したシャッターロット43が前後方向に作動し、これの他端に連結されて水平方向に回動するシャッターアーム42を介してシャッター板22をホッパー2長手方向にスライドさせる。
【0014】
レバーガイド41に表示されたシャッター開度目盛を目処に、操作レバー4を前後に回動させて希望する位置に合わせると、シャッター板22が開度目盛に比例して開き所定量の肥料が落下散布される。
【0015】
ホッパー2の底板23とシャッター板22との間には、ゴムスポンジ板26とフッ素樹脂板27が挟持され設けてあり、底板23の排出口231はゴムスポンジ板26とフッ素樹脂板27を貫通して設けられているとともに、ゴムスポンジ板26は底板23にフッ素樹脂板27はゴムスポンジ板26にそれぞれ接着されていて、シャッター板22はフッ素樹脂板27と当接し摺動する。フッ素樹脂は低摩擦性に優れているためスライド抵抗をより小さく抑えることができる。
【0016】
シャッター板22の前後の端部は、底板23の外方向に折り曲げられ、ホッパー2底板23に取り付けられたシャッター保持金具24により下方より支えられていて、シャッター板22とシャッター保持金具24との間には合成樹脂材で形成されたガイドレール25がシャッター保持金具24に固着されて設けてある。
【0017】
ガイドレール25のシャッター板22との接触部は、シャッター板22のスライド方向と直交する断面形状が円状の円状面251となっていて、この円状面251が端部の折り曲げ面と本体の湾曲面とに線状に当接し、シャッター板22を左右方向にスライド自在に保持する。当接部が線状となることで、スライド抵抗を最小とすることができる。
【0018】
本実施例の肥料散布機のシャッター板22は、ホッパー2の左右方向で2分割されていて、左右同時に開閉が可能であるとともに、左右何れか片方のみ開閉が可能である。このように構成することで、ホッパー2の幅全部で散布ができるとともに左右何れか片側のみでの散布も可能である。
【0019】
シャッター板22を作動させる操作レバー4は、右操作レバー401と左操作レバー402が左右に2本設けられていて、それぞれの先端の握り部46を同時に操作すると、右シャッター板223と左シャッター板224が同時に作動する。また、右操作レバー401か左操作レバー402のいずれかのみを操作すると、操作した側のシャッター板のみが作動する。
【0020】
右シャッター板223を作動させる場合を説明すると、右操作レバー401を前方に引いてレバー回動支点44を中心に回動させると、右操作レバー401のレバー回動支点44より下方側先端部が後方に回動し、この先端部に一端を回動自在に連結されたシャッターロッド43を後方に移動させる。シャッターロッド43の他端は、フレーム1に固定された垂直方向の回動軸である右シャッターアーム回動軸423を中心に水平方向に回動する右シャッターアーム421の一端と回動自在に連結されていて、右シャッターアーム421を水平方向に回動させる。右シャッターアーム421の右シャッターアーム回動軸423を介した他端には、右シャッター板223に垂直方向に固着された丸棒状のシャッターピン222と係合するU字状の切り欠きが設けてあり、右シャッター板223を右方向に移動させる。この作動により、右シャッター板223の孔221と底板23の排出口231の重合度合いが変化し開口する落下面積が変化して散布量が調整される。
【0021】
左シャッター板224を作動させる場合を説明すると、左操作レバー402を前方に引いてレバー回動支点44を中心に回動させると、左操作レバー402のレバー回動支点44より下方側先端部が後方に回動し、この先端部に一端を回動自在に連結されたシャッターロッド43を後方に移動させる。シャッターロッド43の他端は、フレーム1に固定された垂直方向の回動軸である左シャッターアーム回動軸424を中心に水平方向に回動する左シャッターアーム422の一端と回動自在に連結されていて、左シャッターアーム422を水平方向に回動させる。左シャッターアーム422の左シャッターアーム回動軸424を介した他端には、左シャッター板224に垂直方向に固着された丸棒状のシャッターピン222と係合するU字状の切り欠きが設けてあり、左シャッター板224を右方向に移動させる。この作動により、左シャッター板224の孔221と底板23の排出口231の重合度合いが変化し開口する落下面積が変化して散布量が調整される。
【0022】
右シャッターアーム421と左シャッターアーム422のシャッターピン222側は、連結ロット45により着脱自在に連結されていて、シャッター板を左右同時に作動させる場合は装着して、左右それぞれ作動させる場合は取り外して使用する。
【0023】
本実施例では、ゴムスポンジ板26を底板23に接着したが、シャッター板22にゴムスポンジ板26を接着しフッ素樹脂板27を底板に当接させても同様の効果が得られる。
【0024】
図7から図9は、別実施例の肥料散布機を示したものである。5はフレームで前方部にロワリンクピン11とトップブラケット12を設けて、図示されていないがトラクタ三点リンク機構に装着できるように構成してある。
【0025】
6はホッパーで上方より肥料を投入できるように上方を開口し下方を狭くした逆円錐形状に構成し、フレーム5の上部に着脱自在に固定され、ホッパー6の左右に設けたハンドル50を緩めるとホッパー6を外すことができメンテナンス及び格納に便利である。
【0026】
ホッパー6内の底部には肥料の落下量を調節するシャッター部7が設けられて、シャッターレバー70を操作すると、ロッド701で連結されたシャッター板71が回動し、肥料の落下量を調節できる。落下した肥料は散布部8により散布される。
【0027】
51は入力軸で、図示されていないがトラクタPTO軸とユニバーサルジョイントで連結し、トラクタから回転動力を伝達されるものである。入力軸51より伝達された回転動力はフライホイール52を回転し、ホッパ6の中心部に垂直方向に設けられたヨークシャフト53を揺動させる。
【0028】
ヨークシャフト53は入力軸中心線の延長上に直交して揺動中心線を有し、ヨークシャフト53に固着されたヨークボス54と回転中心線をフライホイール52の回転中心の外周部にオフセットさせ、かつその中心線が入力軸中心線とヨークシャフト53中心線の交点を通るように設けたフォークアーム55でフライホイール52と連結連動させ、フォークアーム55のヨークボス54側は二又に形成させてヨークボス54を水平方向で挟み込む様に構成してある。このため、フライホイール52を回転させると、フォークアーム55のフライホイール52側がフライホイール52とともに回転しヨークシャフト53側は揺動運動する。
【0029】
ヨークシャフト53が揺動すると、落下した肥料を受けるサブホッパー56と散布筒80及びアジテータ81がヨークシャフト53に固着されて揺動し、散布筒80の先端部の散布皿801部分より肥料を投出し散布する。このように散布部を揺動して肥料を散布する方法は公知であり、本発明の範囲に入るものではなく、また、散布部が水平方向に回転する円板に散布羽根を設け、これに肥料を落下させて遠心力で拡散散布する肥料散布機の場合でも本発明の主旨は変わらない。
【0030】
図8,図9において、シャッター部7の構成を説明する。ホッパー6の底部には肥料を掻き出すアジテータ81が設けられ、その下方に落下口である底板落下口72を設けた底板72がフレーム5に固定されて取り付けられている。底板72の下方には落下口であるシャッター落下口711を設けたシャッター板71がヨークシャフト53と同軸で回動するように、底板72の背面側に回動中心部を形成するブッシュ73により支持されている。シャッター板71を回動させ、底板落下口721とシャッター落下口711を重合させ重合度合により肥料の落下量を調節する。底板72とシャッター板71との間には、ゴムスポンジ板260とフッ素樹脂板270が挟持され設けてあり、ゴムスポンジ板260はシャッター板71に、フッ素樹脂板270はゴムスポンジ板260にそれぞれ接着されていて、底板72はフッ素樹脂板270と当接し摺動する。シャッター板71のシャッター落下口711はゴムスポンジ板260とフッ素樹脂板270を貫通して設けられている。フッ素樹脂は低摩擦性に優れているためスライド抵抗をより小さく抑えることができる。また、ゴムスポンジ板260は弾力性があるため、肥料等が挟持部にある程度侵入した場合でもシャッター板71が回動する回動抵抗を大きくすることがない。
【0031】
本発明の肥料散布機のシャッター構造は、肥料を貯留するホッパーの底板部に落下口を設け、これに当接させスライドするシャッター板の落下口の重合度合いにより肥料等の散布量を調整する肥料散布機に利用するとよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明を実施した肥料散布機の正面図。
【図2】本発明を実施した側面図。
【図3】一部を断面した側面図。
【図4】ホッパーの底板部を断面した要部側面図。
【図5】シャッター板の作動リンク機構を示した底面図。
【図6】シャッター板部の要部分解斜視図。
【図7】別実施例の肥料散布機の側面断面図。
【図8】別実施例の肥料散布機のシャッター板部の要部断面側面図。
【図9】別実施例の肥料散布機のシャッター板部の要部分解斜視図。
【符号の説明】
【0033】
1 フレーム
11 ロワリンクピン
12 トップブラケット
13 入力軸
2 ホッパー
21 アジテータ
22 シャッター板
221 孔
222 シャッターピン
223 右シャッター板
224 左シャッター板
23 底板
231 排出口
24 シャッター保持金具
25 ガイドレール
251 円状面
26,260 ゴムスポンジ板
27,270 フッ素樹脂板
3 開閉蓋
31 チョウバン
4 操作レバー
401 右操作レバー
402 左操作レバー
41 レバーガイド
42 シャッターアーム
421 右シャッターアーム
422 左シャッターアーム
423 右シャッターアーム回動軸
424 左シャッターアーム回動軸
43 シャッターロット
44 レバー回動支点
45 連結ロッド
46 握り部
5 フレーム
50 ハンドル
51 入力軸
52 フライホイール
53 ヨークシャフト
54 ヨークボス
55 フォークアーム
56 サブホッパー
6 ホッパー
7 シャッター部
70 シャッターレバー
701 ロッド
71 シャッター板
711 シャッター落下口
72 底板
721 底板落下口
73 ブッシュ
8 散布部
80 散布筒
801 散布皿
81 アジテータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肥料を収容するホッパーの底板に排出口を設けるとともに、該排出口を開閉するための孔を有するシャッター板をホッパーの底板に対しスライド自在に設け、該ホッパーの底板排出口とシャッター板の孔の重合部位で形成される開口穴の開度量により散布量を調整する肥料散布機において、前記ホッパーの底板とシャッター板の間にはゴムスポンジ板とフッ素樹脂板がサンドイッチ状に挟持され、フッ素樹脂板がシャッター板又はホッパーの底板とのスライド面として機能するように設けられていることを特徴とする肥料散布機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate