説明

肥料

【課題】殺菌効果が高い葉面散布剤等の肥料を提供すること。
【解決手段】本発明の肥料は、ギ酸塩と、ギ酸とを含むことを特徴とする。ギ酸塩としては、ギ酸カルシウムが好ましい。本発明の肥料は、果樹や野菜等の農作物の葉面に散布する葉面散布剤として用いることができる。本発明の肥料のpHは、使用時において、1〜6の範囲内であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、農作物、樹木等に使用できる肥料に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な目的のために、農作物等の葉面に散布する葉面散布剤が使用されている。例えば、受粉能力を高め、花振るい(花が咲いても結実しないこと)及び単為結果を予防することを目的とする、ギ酸カルシウムとホウ素化合物とを含有するブドウ用葉面散布剤が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平6−8244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
葉面散布剤には、病気を予防するために、農作物に対する殺菌効果が求められている。従来の葉面散布剤は、農作物に対する殺菌効果の点で不十分であった。本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、殺菌効果が高い葉面散布剤等の肥料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の肥料は、ギ酸塩と、ギ酸とを含むことを特徴とする。本発明の肥料は、ギ酸塩と、ギ酸との両方を含むことにより、殺菌効果が高く、また、農作物の生育促進効果が高い。
【0006】
前記ギ酸塩としては、例えば、ギ酸ナトリウム、ギ酸カルシウム、ギ酸カリウム、ギ酸マグネシウム等が挙げられる、特に、殺菌効果及び生育促進効果の点で、ギ酸カルシウムが好ましい。
【0007】
本発明の肥料は、例えば、農作物の葉面に散布する葉面散布剤として用いることができる。農作物としては、例えば、各種の果樹、各種の野菜等が挙げられる。果樹としては、例えば、リンゴ、ミカン、オウトウ、ブドウ等が挙げられる。また、野菜としては、例えば、トマト、イチゴ、長ネギ、ホウレンソウ等が挙げられる。また、本発明の肥料は、土壌散布剤としても用いることができる。
【0008】
本発明の肥料は、例えば、流通、保管時等には濃縮された状態とし、使用するときに、水で希釈して適切な濃度とすることができる。本発明の肥料に含まれる成分の使用時における濃度は、例えば、以下のようにすることができる。この濃度範囲内とすることにより、殺菌効果や生育促進効果が一層高い。
【0009】
ギ酸塩:0.003〜1g/L
ギ酸:0.02〜2g/L
本発明の肥料におけるpHは、使用時において、1〜6の範囲内が好ましく、2〜4の範囲内が一層好ましく、3.3〜3.7の範囲内が特に好ましい。pHをこの範囲内とすることにより、殺菌効果や生育促進効果が一層高い。
【0010】
本発明の肥料は、例えば、使用時において、100〜1000倍に水で希釈して用いることができる。なお、希釈前のギ酸塩やギ酸の濃度は、上述した、使用時における濃度を100〜1000倍すれば算出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を説明する。
(1)葉面散布剤の原液の調製
以下の成分を混合、攪拌することで、葉面散布剤の原液(希釈前の状態)を調製した。
【0012】
ギ酸カルシウム:40g
ギ酸:200g
水:葉面散布剤の容積が1Lとなる量
(2)葉面散布剤の希釈
前記(1)で調製した葉面散布剤の原液を水で、それぞれ、100倍、200倍、1000倍に希釈して、100倍希釈液、200倍希釈液、1000倍希釈液を調製した。この100倍希釈液を実施例1の葉面散布剤とし、200倍希釈液を実施例2の葉面散布剤とし、1000倍希釈液を実施例3の葉面散布剤とする。
【0013】
実施例1〜3の葉面散布剤におけるギ酸カルシウムの濃度、ギ酸の濃度、pHは表1に示すとおりである。
また、水1Lにギ酸カルシウムのみを表1に示す濃度となるように溶かした比較例1〜3の葉面散布剤、水1Lにギ酸のみを表1に示す濃度となるように溶かした比較例4〜6の葉面散布剤、水1Lにギ酸カルシウム及びホウ酸を表1に示す濃度となるように溶かした比較例7〜9の葉面散布剤を調製した。
【0014】
【表1】

【0015】
(3)葉面散布剤の評価
(3−1)トマトに対し使用した場合の評価
実施例1〜3の葉面散布剤を、それぞれ、公知の防除機により霧状に噴射し、トマトの葉面に散布した。散布は、トマトの生育状態が開花期であるときに行った。また、散布は10日おきに行い、散布の合計回数は3回とした。
【0016】
その後、実施例1〜3の葉面散布剤のそれぞれについて、それを散布したトマトの葉50枚のうち、葉カビ病が発生した割合(発生率(%))を算出した。その結果を上記表1に示す。なお、葉カビ病は、周知のとおり、葉の殺菌が不十分である場合に発生する病気である。葉カビ病は、葉面が白くなる症状を呈するため、目視により、葉カビ病の発生の有無を判断可能である。
【0017】
また、比較例1〜9の葉面散布剤についても、同様の方法でトマトの葉面に散布を行い、葉カビ病の発生率を算出した。また、葉面散布剤を散布しなかったトマトの葉についても、葉カビ病の発生率を算出した。それらの結果を上記表1に示す。
【0018】
表1に示すように、実施例1〜3の葉面散布剤を散布した場合は、葉カビ病の発生率が顕著に低かった。それに対し、比較例1〜3の葉面散布剤(ギ酸カルシウムのみを含むもの)を散布した場合、比較例4〜6の葉面散布剤(ギ酸のみを含むもの)を散布した場合、比較例7〜9の葉面散布剤(ギ酸カルシウムとホウ酸のみを含むもの)を散布した場合、及び無散布の場合は、いずれも、葉カビ病の発生率が顕著に高かった。さらに、比較例7〜8の葉面散布剤を散布した場合は、葉に著しい薬害が認められた。
【0019】
この結果から、実施例1〜3の葉面散布剤は、殺菌効果が顕著に高いことが確認できた。また、実施例1〜3の葉面散布剤は、トマトの生育を促進する効果も認められた。
(3−2)イチゴに対し使用した場合の評価
実施例1〜3の葉面散布剤を、それぞれ、公知の防除機により霧状に噴射し、イチゴの葉面に散布した。散布は、イチゴの生育状態が開花期であるときに行った。また、散布は10日おきに行い、散布の合計回数は3回とした。また、比較例1〜9の葉面散布剤についても、同様の方法で散布を行った。
【0020】
そして、上記「(3−1)トマトに対し使用した場合の評価」と同様に、葉面散布剤の殺菌効果を評価したところ、実施例1〜3の葉面散布剤は、比較例1〜9の葉面散布剤及び無処理に比べて、殺菌効果が顕著に高いことが確認できた。また、実施例1〜3の葉面散布剤は、イチゴの生育を促進する効果も認められた。
【0021】
尚、本発明は前記実施の形態になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
例えば、実施例1〜3の葉面散布剤には、ギ酸及びギ酸カルシウムに加えて、公知の種々の添加剤を添加してもよい。
【0022】
また、実施例1〜3の葉面散布剤におけるギ酸カルシウム、ギ酸の濃度は、例えば、以下の範囲で、農作物の種類や使用状況等に応じて任意に設定できる。
ギ酸カルシウム:0.003〜1g/L
ギ酸:0.02〜2g/L
実施例1〜3の葉面散布剤におけるギ酸カルシウム、ギ酸の濃度は、原液におけるギ酸カルシウム、ギ酸の配合量を変える方法で調整してもよいし、葉面散布剤の希釈倍率を変える方法で調整してもよい。
【0023】
また、実施例1〜3の葉面散布剤において、ギ酸カルシウムの代わりに、あるいは、ギ酸カルシウムに加えて、他のギ酸塩(例えばギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、ギ酸マグネシウム等)を用いてもよい。
【0024】
また、実施例1〜3の葉面散布剤は、上述した試験で用いた農作物以外の農作物に用いてもよいし、樹木(例えば、杉、桧、松、モミ、ブナ等)に用いてもよい。
また、実施例1〜3の葉面散布剤は、農薬と混合して散布してもよい。
【0025】
また、実施例1〜3の葉面散布剤と同様の組成を持つものを、葉面散布剤以外の肥料(例えば土壌散布剤)として用いてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギ酸塩と、ギ酸とを含むことを特徴とする肥料。
【請求項2】
前記ギ酸塩がギ酸カルシウムであることを特徴とする請求項1記載の肥料。
【請求項3】
葉面散布剤として用いられることを特徴とする請求項1又は2記載の肥料。
【請求項4】
使用時におけるpHが1〜6の範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の肥料。

【公開番号】特開2012−140317(P2012−140317A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254163(P2011−254163)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000167897)晃栄化学工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】