肥満及び肥満関連障害の治療用のCB2受容体発現及び/又は活性の選択的阻害剤
本発明は、肥満及び肥満関連障害の治療及び/又は予防を意図した医薬の製造のための、CB2受容体発現の選択的阻害剤の使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肥満及び肥満関連障害の治療及び/又は予防を意図した医薬の製造のためのCB2受容体発現及び/又は活性の選択的阻害剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満は、体脂肪の過剰により特徴づけられる状態である。過体重及び肥満の有病率は、世界中で重要な公衆健康問題と考えられている。凡そ米国成人の3分の2が、過体重又は肥満に分類される。実際、肥満は、冠動脈性疾患(CHD)、心室機能不全、うっ血性心不全、脳卒中、及び不整脈の重大なリスク因子である。さらに、肥満は、2型糖尿病、内臓脂肪症候群及び肝臓障害、例えば非アルコール性脂肪性肝疾患と密接に関連する。
【0003】
2型糖尿病、又は非インスリン依存性糖尿病(NIDDM)は、患者がインスリンを産生し、そして高インスリン血症(非糖尿病患者と比べて、同等又は増大した血漿インスリンレベル)すら示す一方で、同時に高血糖を示すことにより特徴付けられる。2型糖尿病は、しばしば、「インスリン抵抗性」を発達させ、そうして主要なインスリン感受性組織、つまり、筋肉、肝臓、及び脂肪組織において、グルコース及び脂質代謝を刺激するインスリンの効果は減少し、そしてこれらの患者は、心血管の合併症、例えば粥状動脈硬化、冠動脈心疾患、脳卒中、末梢血管疾患、高血圧、腎症、神経障害及び網膜症のリスクを増大させる。
【0004】
インスリン抵抗性を有するが、2型糖尿病を発達させていない多くの患者は、メタボリックシンドロームと呼ばれる徴候を発達させるリスクも有する。メタボリックシンドロームは、インスリン抵抗性により特徴付けられており、腹部肥満、高インスリン血症、高血圧、低いHDL及び高いVLDLを伴う。これらの患者は、顕性糖尿病を発達させるか否かに関わらず、心血管合併症を発達させる高いリスクを有する。
【0005】
さらに、疫学的証拠により、肥満は、肝硬変を増加させることが示唆されている。例えば、剖検において、肝硬変患者の12%において、唯一の疾患リスク因子として同定された(Yang,S. Q.ら;1997)。肝硬変は、一般集合に比べて、肥満の人において約6倍も有病率が高い。肥満の度合いは、脂肪肝(steatosis)の有病率及び重篤度と正に相関し、そしてこれは次に脂肪性肝炎と相関する。
【0006】
こうして、肥満及びNIDDM、メタボリックシンドローム、又は非アルコール性脂肪肝疾患などの肥満関連障害を治療する必要性が存在する。
【0007】
肥満の治療に現在用いられている体重減少薬剤は、限られた効力しか有さず、そして重大な副作用を有する。体重減少薬物療法オーリスタット(Davidson MH. et al. 1999)、デクスフェンフルラミン(Guy-Grand、B. et al. 1989)、シブトラミン(Bray, G.
A. et al. 1999)及びフェンテルミン(Douglas, A. et al. 1983)は、偽薬に比べて、約5%〜10%の体重減少である限られた体重減少が示した。しかしながら、これらの薬剤の副作用は、その使用を制限する。例えば、デクスフェンフルラミンは、心臓弁膜症の疑いのため、市場から排除され;オーリスタットは、胃腸管副作用により制限され;トピラメートの使用は、中枢神経系への作用により制限され;そしてシブトラミンの使用は、死亡報告がされ、そしてイタリアにおいて市場からの排除をもたらしたその心血管に対する副作用により制限される。
【0008】
近年の研究により、カンナビノイド1型受容体(CB1)のアンタゴニストは、肥満及び肥満関連障害の治療に有用である可能性があるということが示唆されている。例えば、国際特許公開WO 2005/046689は、肥満及び肥満関連障害の治療又は予防用のピラゾール由来のCB1アンタゴニストを開示する。より具体的に選択的カンナビノイドCB1受容体アンタゴニストであるリモナバン(SR141716)は、肥満の治療について多くの試験が行われた。6000人を超える過体重及び肥満患者に対する4回の臨床試験(リモナバン−肥満(RIO)プログラム)において、リモナバンは、体重減少及び付随する心臓代謝リスクの低下に関して、一貫性のある有効性を示した(Van Gaal LF. et al. 2005; Despres JP. et al. 2005;Pi-Sunyer FX. et al. 2006)。
【0009】
反対に、2型カンナビノイド受容体(CB2)のアンタゴニストを用いて行われた当該対象について利用可能な唯一の試験により、食物摂取又は自発運動に対する効果がないことに基き、肥満及び肥満関連障害について有利な効果を示すという可能性が除外された(Wiley JL et al. 2005;ウィリアムズ CM. et al. 2002)。
【0010】
国際特許出願WO98/31227は、以前、CB2受容体のモジュレーター(アンタゴニスト又はアゴニスト)であると言及されたピラゾール誘導体を記載した。開示されたモジュレーターは、糖尿病を含む免疫学的に媒介された炎症疾患の治療に有用であることが示唆された。しかしながら、CB2受容体のアンタゴニスト又はアゴニストをその治療に用いるべきか特定されておらず、そして提案された適応は単に推測に過ぎなかった。
【0011】
国際特許出願WO2006/105217により、CB2受容体阻害剤が、糖尿病、脳卒中、及び脳虚血の制御において治療有用性を有することが期待されるということが示唆された。しかしながら、これらの治療適応は、単に推測に過ぎなかった。
【0012】
本出願は、CB2受容体が、肥満、インスリン抵抗性、炎症、及び脂肪肝の発達に主要な役割を果たすことを正式に示す。ゆえに、CB2受容体の発現及び/又は活性を妨害することに関与する肥満及び肥満関連障害の治療及び/又は予防の新たな道筋が提供される。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、肥満及び肥満関連障害の治療及び/又は予防を意図した医薬の製造のためのCB2受容体発現及び/又は活性の選択的阻害剤の使用に関する。
【0014】
1の態様では、本発明は、CB2受容体発現の選択的阻害剤を利用する。
【0015】
好ましい実施態様によると、CB2受容体発現の阻害剤は、アンチセンスRNA又はDNA分子、低分子阻害性RNA(siRNA)及びリボザイムからなる群から選ばれる。
【0016】
本発明の別の態様では、阻害剤は、CB2受容体活性(CB2受容体アンタゴニスト)を選択的に拮抗作用する。
【0017】
好ましい実施態様によると、当該CB2受容体アンタゴニストは、有機低分子、CB2受容体遮断抗体の一部又は全体、又は抗体フラグメント、及びアプタマーからなる群から選ばれる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】高脂肪食餌を与えられたWTマウス及びCB2−/−マウスの体重。野生型マウス(n=22)及びCB2−/−マウス(n=10)に、標準食餌又は抗脂肪食餌(HFD)を与えた。体重を毎週計測した。
【図2】15週間にわたる高脂肪食餌(HFD)を与えられたWTマウス及びCB2−/−マウスの平均食餌摂取。
【図3】高脂肪食餌を与えられた7匹のWT及び5匹のCB2−/−動物において、J Softwareを用いて、3の別個の領域から得た少なくとも30の細胞について、脂肪細胞のサイズを定量した。
【図4】高脂肪食餌を与えられたWTマウス(n=7)及びCB2−/−マウス(n=5)における空腹時血中グルコース濃度。WT 対 CB2−/−HFDマウスについて*p<0.07
【図5】高脂肪食餌を与えられたWTマウス(n=7)及びCB2−/−マウス(n=5)における空腹時血中インスリン濃度。WT 対 CB2−/−HFDマウスについて*p<0.06
【図6】高脂肪食餌を与えられたWTマウス(n=7)及びCB2−/−マウス(n=5)における血清レプチンレベル。WT 対 CB2−/−HFDマウスについて*p<0.05
【図7】図7は、対照食餌を与えられたWTマウス及びCB2−/−マウスにおける血清レプチンレベル。WT 対 CB2−/−HFDマウスについて*p<0.05
【図8】図8は、高脂肪食餌の対照食餌を与えられたWT及びCB2−/−マウスにおいて計測された肝臓トリグリセリドを示す。WT 対 CB2−/−HFDマウスについて*p<0.05
【図9】図9は、高脂肪食餌を与えられたWT(n=7)及びCB2−/−マウス(n=5)において、SREBP−1c mRNAの肝臓における発現を示す。WT 対 CB2−/−HFDマウスについて*p<0.05
【図10】15週間にわたり対照及びHFDの下において、WT(n=7)及びCB2−/−(n=5)マウスの脂肪組織及び肝臓におけるCB1及びCB2受容体mRNA発現の分別制御。CB2−/−マウスは、CB2遺伝子を発現しないが、通常のCB1遺伝子発現を示す。予期されたサイズのCB2受容体PCR産物に対応するバンドのbpを、WTマウスの肝臓で同定したが、CB2−/−マウスの肝臓においては同定しなかった。予期されたサイズのCB1受容体PCR産物に対応するバンドのbpは、WT及びCB2−/−マウスの肝臓において同定された。
【図11】図11は、脂肪組織及び肝臓におけるCB2受容体mRNA発現を示す。WT 対 CB2−/−HFDマウスについて*p<0.05、対照食餌のマウスに対してp<0.05
【図12】図12は、脂肪組織及び肝臓におけるCB1受容体mRNA発現を示す。WT 対 CB2−/−HFDマウスについて*p<0.05、対照食餌のマウスに対してp<0.05
【図13】図13は、HFD−を与えたCB2−/−マウスの精巣上体脂肪組織(EAT)における炎症の低下を示す。HFD又は対照食餌を与えられたWT及びCB2−/−マウスにおけるF4/80、TNF−α、及びMCP−1 mRNA発現。WT 対 CB2−/−HFDマウスについて*p<0.05、対照食餌のマウスに対してp<0.05
【図14】図14は、HFD−を与えたCB2−/−マウスにおける炎症の低下を示す。HFD又は対照食餌を与えられたWT及びCB2−/−マウスにおけるF4/80、TNF−α、及びMCP−1 mRNA発現。WT 対 CB2−/−HFDマウスについて*p<0.05、対照食餌のマウスに対してp<0.05
【図15】図15aは、左側のパネルにおいて、5、6、又は8週齢(n=5/群)のやせ型ob+/ob(n=5)及び肥満ob/obマウスにおいて、精巣上体脂肪組織及び対応する体重におけるCB2受容体mRNAの定量を示す。体重を平衡して計測した。肥満HFD−を与えた野生型マウス及びそのやせ型の対応マウスにおいて(*、#:ob/+マウスに対するob/obについて、p<0.05)対照食餌のマウスに対して*p<0.05 図15aは、右のパネルにおいて、脂肪組織の間質脈管画分、及び脂肪細胞画分におけるCB2受容体mRNA発現を示す。CB2受容体mRNAは、脂肪組織のSVFにおいて発現され、そして脂肪細胞画分において検出されない。CB2mRNAを、ob/ob及びob+/obマウスのSVF画分、及び脂肪細胞画分において、並びに未分化(ND)及び分化済み(D)3T3−L1脂肪細胞株において定量された。 図15bは、左側のパネルにおいて、HFD又は対照食餌を与えられたWT及びCB2−/−マウスの精巣上体脂肪におけるマクロファージ関連(F4/80)mRNA発現の定量を示す。 図15bは、中央のパネルにおいて、F4/80の免疫組織学的検出により、精巣上体脂肪に対するマクロファージの浸潤を示す。 図15bは、右側のパネルにおいて、F4/80の免疫組織学的検出に基づき、F4/80染色された細胞/前細胞の定量を示す。 図15cは、やせ型マウスに対するHFDを与えられたWT及びCB2−/−マウスの精巣上体脂肪におけるMCP−1及びTNF−αmRNA発現を示す。
【図16】図16は、17日の治療の後の、CB2アンタゴニストAM630の、精巣上体脂肪炎症遺伝子発現に対する影響を示す。マクロファージ関連F4/80、TNF−α及びMCP−1mRNA発現を、ビヒクル及びAM630治療ob/obマウスにおいて精巣上体脂肪において定量した。AM630又はSR144528ob/obマウスに対してビヒクルについて*p<0.05
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
「コード配列」、つまりRNA、ポリペプチド、タンパク質、又は酵素などの発現産物を「コードする」配列は、発現された際に、RNA、ポリペプチド、タンパク質、又は酵素の生成物をもたらすヌクレオチド配列である。つまり当該ヌクレオチド配列は、当該ポリペプチド、タンパク質又は酵素のアミノ酸配列をコードする。タンパク質のコード配列は、開始コドン(通常ATG)及び停止コドンを含んでもよい。
【0020】
本明細書に使用される場合に、特定のタンパク質(例えばCB2受容体)に対する言及は、天然のアミノ酸配列を有するポリペプチド、並びに調製法や起源に関わらず、バリアント及び修飾型を含むことがある。天然アミノ酸配列を有するタンパク質は、自然界から得られる配列と同じアミノ酸配列を有するタンパク質(CB2受容体)である。かかる天然配列タンパク質は、自然界から単離することができるか、又は標準的な組換え及び/又は合成方法を用いて調製することができる。天然配列タンパク質は、具体的に、天然切り詰め形態又は可溶性形態、天然バリアント形態(例えばオルタナティブスプライシングされた形態)、天然対立遺伝子バリアント及び翻訳後修飾を含む形態を包含する。天然配列タンパク質は、翻訳後修飾、例えばグリコシル化、又はリン酸化、又はいくつかのアミノ酸残基の他の修飾を含む。
【0021】
バリアントは、天然配列タンパク質に機能的に同等であるタンパク質であって、似たようなアミノ酸配列を有し、そしてある程度、天然タンパク質の1又は複数の活性を保持するタンパク質を指す。バリアントは、活性を維持するフラグメントを含む。バリアントは、天然配列に実質的に同一(例えば、80、85、90、95、97、98、99%の配列同一性を有する)であるタンパク質を含む。このようなバリアントは、欠失、挿入、及び/又は置換などのアミノ酸変更を有するタンパク質を含む。「欠失」とは、関連タンパク質において1又は複数のアミノ酸残基が存在しないことを指す。「挿入」とは、関連タンパク質において1又は複数のアミノ酸を追加することを指す。「置換」とは、ポリペプチドにおいて別のアミノ酸残基により、1又は複数のアミノ酸残基を置き換えることを指す。典型的に、このような変更は性質の点で保存的であり、その結果バリアントタンパク質の活性は、天然配列タンパク質に実質的に類似している(例えば、Creighton (1984) Proteins, W.H. Freeman and Company)。置換の場合、他のアミノ酸を置換するアミノ酸は、通常、同様の構造的性質及び/又は化学的性質を有する。挿入及び欠失は、典型的に、1〜5のアミノ酸の範囲であるが、挿入の位置に左右され、より多くのアミノ酸が挿入又は除去されてもよい。バリエーションは、部位特異的変異誘導(Carterら、1985;Nucl. Acids Res. 13:4331; Zoller et al. 1982)、カセット変異誘導(Wells et al. 1985)、及びPCR変異誘導(Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第3版、Cold Spring Harbor Press N.Y., (2001))などの当該技術分野において知られている方法を用いて作成することができる。
【0022】
2つのアミノ酸配列は、80%超、好ましくは85%超、さらに好ましくは90%超のアミノ酸が同一である場合、「実質的に相同」であるか又は「実質的に類似」であり、或いは約90%超、好ましくは95%超は、全長配列にわたり類似(機能的に同一)である。好ましくは、類似又は相同配列は、例えばGCG(Genetics Computer Group, Program Manual for the GCG package, Version 7, Madison, Wisconsin) パイルアッププログラムを用いて、又はBLAST、FASTAなどの配列比較アルゴリズムのいずれかを用いて配列比較することにより同定される。
【0023】
「受容体」又は「受容体分子」は、リガンドが結合して、受容体-リガンド複合体を形成する1又は複数のドメインを含む可溶性若しくは膜結合性/関連タンパク質又は糖タンパク質である。アゴニスト又はアンタゴニストでありうるリガンドを結合することにより、受容体は活性化されるか又は不活性化され、そしてシグナル経路を開始又は遮断しうる。
【0024】
本明細書に使用される場合に、「CB2受容体発現及び/又は活性の選択的阻害剤」という語句は、CB2受容体発現の選択的阻害剤として、及び/又はCB2受容体活性の選択的阻害剤、つまりCB2受容体アンタゴニストとして作用する天然又は合成化合物を指す。
【0025】
「CB2受容体」という語句は、当該技術分野における一般的意味を有し(Pertwee, R. G. 1999)、そして2型カンナビノイド受容体を指す。当該語句は、天然CB2受容体、及びそのバリアント及び改変形態を含みうる。当該語句は、少なくとも1のCB2活性を保持するCB2由来のドメインが、例えば別のポリペプチドに融合される、融合タンパク質を指すこともある(例えば、Hisタグなどのポリペプチドタグが、当該技術分野において慣用されている)。CB2受容体は、任意のソースから得ることができるが、典型的に、哺乳動物(例えば、ヒト及びヒト以外の霊長類)CB2、特にヒトCB2である。代表的な天然CB2アミノ酸配列は、GenPeptデーターベースにおいて、NP_001832の受託番号で提供され、そして代表的な天然CB2ヌクレオチド配列は、NM_001841の受託番号でGenBankにおいて提供される。
【0026】
「発現」という語句は、遺伝子又は核酸の発現の文脈において使用される場合、遺伝子内に含められた情報を遺伝子産物に変換することを指す。遺伝子産物は、遺伝子の直接的な転写産物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造RNA又は他の任意のタイプのRNA)であることもあるし、又はmRNAの翻訳により産生されるタンパク質であってもよい。遺伝子産物は、キャッピング、ポリアデニル化、メチル化、及び編集などの課程により改変されるメッセンジャーRNA、及び例えばメチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、SUMO化、ADPリボシル化、ミリスチル化、及びグリコシル化により改変されるタンパク質(例えばCB2受容体)も含む。
【0027】
「発現の阻害剤」は、天然又は合成の化合物であって、遺伝子発現を阻害又は有意に低下させる生物学的効果を有する天然又は合成化合物を指す。結果として、「CB2受容体発現の阻害剤」は、CB2受容体遺伝子をコードする遺伝子の発現を阻害又は有意に低下させる生物学的効果を有する天然又は合成化合物を指す。
【0028】
「リガンド」又は「受容体リガンド」は、受容体分子に結合して、受容体リガンド複合体を形成する天然又は合成化合物を意味する。リガンドという語句は、アゴニスト、アンタゴニスト、並びに部分的なアゴニスト/アンタゴニスト作用を有する化合物を含む。
【0029】
「受容体アゴニスト」は、受容体に結合して、受容体−アゴニスト複合体を形成し、当該受容体及び受容体−アゴニスト複合体をそれぞれ活性化することにより、シグナル経路及びさらなる生物学的プロセスを開始させる天然又は合成化合物である。選択的CB2受容体アゴニストの例としてJWH133又はAM1241が挙げられる。CB1/CB2受容体アゴニストの混合体である、DELTA−9−THC、WIN55212−2、及びCP55,940について言及されることもある。
【0030】
「受容体アンタゴニスト」は、受容体アゴニストの生物学的効果とは反対の生物学的効果を有する天然又は合成の化合物を意味する。当該語句は、「真の」アンタゴニスト及び受容体の逆アゴニストを区別なく指すために使用される。真の受容体アンタゴニストは、受容体に結合し、そして受容体の生物的活性化をブロックし、それにより例えば、当該受容体に対するアゴニストと競合することにより受容体アゴニストの作用をブロックする化合物である。逆アゴニストは、アゴニストと同一の受容体に結合するが、逆の効果を発揮する化合物である。逆アゴニストは、アゴニストの不存在下において受容体活性の構成的レベルを低減する能力を有する。
【0031】
「CB2受容体アンタゴニスト」は、本技術分野において現在知られているか、又は将来同定される任意のCB2受容体アンタゴニスト(真のアンタゴニスト又は逆アゴニスト)を指し、そして患者に投与された際に、患者におけるCB2受容体の活性化と関連する生物学的活性、例えば、アンタゴニストがなければその天然リガンドのCB2受容体への結合から生じる下流の任意の生物学的効果、の抑制又は下方制御をもたらす任意の化学物質を含む。かかるCB2受容体アンタゴニストは、CB2受容体活性化の下流の任意の生物学的効果又はCB2受容体活性化を遮断できる任意の薬剤を含む。例えば、かかるCB2受容体アンタゴニストは、CB2受容体のリガンド結合部位又はその一部を占めることにより作用することができ、それによりその天然リガンドが受容体に接近できなくし、その結果通常の生物学的活性が妨げられるか又は低減される。
【0032】
本発明の文脈では、CB2受容体アンタゴニストは、CB1受容体と比較して、CB2受容体に対して選択的である。「選択的」により、CB2受容体に対するアンタゴニストの親和性は、CB1受容体に対する親和性よりも、少なくとも10倍、好ましくは25倍、より好ましくは100倍、さらに好ましくは300倍高い。
【0033】
CB1(又はCB2)受容体に対するアンタゴニストの親和性は、用量応答曲線を作成するために、当該アンタゴニストの濃度範囲の存在下におけるCB1(又はCB2)の活性を計測することにより定量することができる。当該用量応答曲線からは、IC50値が推定される。当該値は、規定濃度のアゴニスト(例えば、CP55,930では3nM又はそれ未満)に対する応答の50%を阻害するために必要なアンタゴニストの濃度を表す。IC50値は、De Leanら(1979)により記載されるように用量−応答プロットを用量応答式に適合させることにより、当業者が容易に測定できる。IC50値は、Cheng and Prusoff(1973)の推定を用いて、親和定数(Ki)に変換することができる。
【0034】
したがって、CB2受容体アンタゴニストは、以下のアッセイのうちの1を用いて計測された場合に、(i)Ki CB1:Ki CB2及び(ii)IC50 CB1:IC50 CB2の比のうちの少なくとも1が、10:1、好ましくは25:1、より好ましくは100:1、さらに好ましくは300:1を超える化合物である。
【0035】
CB1及びCB2に対する化合物のアンタゴニスト活性は、様々な方法を用いて決定されてもよい。例えば、CB1/CB2受容体アゴニスト(DELTA−9−THC、WIN 55212−2又はCP55,940)が、Forskolinにより誘導されるアデニルシクラーゼ活性を阻害できるということが知られている。こうして、CB1及びCB2受容体に対するアンタゴニストの親和性は、cAMP計測アッセイにおいて、CB1/CB2受容体アゴニストの効果をブロックする当該アンタゴニストの能力を決定することにより、アッセイされることもある。
【0036】
具体的に、cAMP蓄積計測アッセイは、Matsudaら(1990)及びRinaldi-Carmonaら(1996)を考慮して、Rinaldi-Carmonaら(1998)において記載された。簡潔に記載すると、CB1又はCB2を安定的に形質転換されたCHO細胞を、コンフルエントになるまで増殖させ、PBSで洗浄し、そして37℃で15分間、3nMのCP 55,940、又はアッセイ対象のアンタゴニスト(例えば、10-9〜10-6M)、又は3nMのCP 55,940+アッセイ対象のアンタゴニスト(例えば10-9〜10-5M)の存在下又は非存在下で1mlのPBS(0.25%アシッドフリーBSA、0.1mM IBMX、0.2mMのRO20−1724を含む)中でインキュベートした。フォルスコリン(Forskolin)(終濃度3μM)を加え、そして細胞をさらに20分間37℃でインキュベートした。アッセイ培地を迅速に吸引し、そして1.5mlの氷冷50mM Tris−HCl(pH8)、4mMのエチレンジアミン四酢酸を加えることにより反応を止めた。ディッシュを5分間氷上に静置し、次に抽出物をガラスチューブに移した。抽出物をボイルし、そして10分間3500gで遠心して、細胞破砕物を除去した。一定量の上清を乾燥させ、そしてcAMP濃度を、任意の適切な方法に従い測定する。当業者は、特に、cAMP計測に利用できる多くの市販キットのうちの1つを利用することもある。ベース活性を、フォルスコリンが存在しない状態で計測する。
【0037】
代わりに、結合アッセイが使用されてもよい。特に、トリチウム化されたCB1/CB2アゴニストを用いた結合アッセイが、ラット前脳膜から調製された膜(CB1)又は凍結マウス脾臓から調製された膜上で行われてもよい。米国特許明細書US2006030563に記載されるアッセイを参照することができる。
【0038】
簡潔に記載すると、CB1及びCB2受容体結合試験に用いる膜は、Doddら(1981)に記載されるように調製される。Devaneら(1988)及びCharalambousら(1992)から、以下の変更点を伴って適合させた以下のプロトコル方法に従って、CB1及びCB2結合アッセイは行われる。-80℃で凍結された膜を氷上で融解させる。3体積のTME(25mM Tris-HCl緩衝液、5mMのMgCl2、及び1mMのEDTA)pH7.3を加える。懸濁液を4℃で30分間インキュベートする。インキュベーションの終わりに、膜をペレット化し、そしてTMEで3回洗浄する。
【0039】
融解した膜を、続いて結合アッセイに用いる:約30μgの膜を滅菌96ウェルマイクロタイタープレートにおいて、0.1%必須脂肪酸フリーウシ血清アルブミン(BSA)、0.8nM[3H]CP−55,940、及び様々な濃度のアンタゴニストを含むTMEと30℃で1時間インキュベートする。Packard Filtermate 196及びWhatman GF/Cフィルタープレートを用いてサンプルをろ過し、そして洗浄緩衝液(0.5%BSAを含有するTME)で洗浄した。放射活性を、任意の適切な方法に従って検出する。非特異的結合を、100nM CP−55,940を用いてアッセイする。集めたデータを、[3H]CP−55,940に対する100%〜0%の特異的結合性で正規化し、緩衝液と100nMnoCP−55,940を用いて測定した。4-パラメーターの非線形ロジスティック方程式を用いて正規化されたデータを分析して、IC50を生成し、Cheng et Prusoff (1973)の推定を用いてKi値に変換する。
【0040】
「有機低分子」という語句は、医薬において一般的に用いられる有機分子に比べて小さいサイズの分子を指す。当該語句は、生体マクロ分子(例えばタンパク質、核酸など)を除外する。好ましい有機低分子は、最大約5000Da、より好ましくは最大2000Da、そして最も好ましくは最大約1000Daのサイズ範囲である。
【0041】
「精製」及び「単離」は、ポリペプチド又はヌクレオチド配列について言及する場合、指定された分子が、同じタイプの他の生体マクロ分子が実質的に存在しない状態で存在することを意味する。本明細書に使用される「精製」という語句は、好ましくは、少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、さらに好ましくは少なくとも95重量%、そして最も好ましくは少なくとも98重量%の同じタイプの生体マクロ分子が存在するということを意味する。特定のポリペプチドをコードする単離された核酸分子は、対象ポリペプチドをコードしていない他の核酸分子が実質的に存在していない核酸分子を指すが;当該分子は、組成物の基本的な特徴に有害な影響を与えないいくらかの追加塩基又は部分を含んでもよい。
【0042】
本明細書において使用される場合に、「対象」という語句は、哺乳動物、例えばげっ歯類、ネコ、イヌ、及び霊長類を指す。好ましくは、本発明に従った対象は、ヒトである。
【0043】
「肥満」という語句は、体脂肪の過剰により特徴付けられる状態を指す。肥満の医療上の定義は、肥満度指数(BMI)に基づいており、これは身長の2乗あたりの体重(kg/m2)として計算される。肥満は、その他の点では健常な対象が、30kg/m2又はそれ以上のBMIを有する状態、又は少なくとも1の並存疾患を有する対象が、27kg/m2又はそれ以上のBMIを有する状態を指す。「肥満対象」は、30kg/m2またはそれ以上のBMIを有するその他の点で健常な対象、又は27kg/m2又はそれ以上のBMIを有する少なくとも1の並存疾患を有する対象である。「肥満のリスクを有する対象」は、25kg/m2〜30kg/m2のBMIを有するその他の点で健常な健常対象、又は25kg/m2〜27kg/m2のBMIを有する少なくとも1の並存疾患を有する対象である。肥満に付随するリスクの増加は、アジア人系の人においてより低いBMIで生じることもある。日本を含むアジア及びアジア太平洋圏では、「肥満」は、少なくとも1の肥満誘導性又は肥満関連の並存疾患であって、体重減少を必要とするか、又は体重減少により改善される並存疾患を患う対象が、25kg/m2又はそれ以上のBMIを有する状態を指す。これらの国々では、「肥満のリスクを有する対象」は、23kg/m2〜25kg/m2のBMIを有する人である。
【0044】
「肥満関連障害」という語句は、肥満に関連する障害、肥満により引き起こされる障害、又は肥満から生じる障害を包含する。肥満関連障害の例として、過食及び過食症、糖尿病、高血圧、血漿インスリン濃度の上昇及びインスリン抵抗性、脂質代謝異常、高脂血症、乳癌、前立腺癌、子宮内膜癌及び結腸癌、心疾患、心血管障害、異常な心臓リズム及び不整脈、心筋梗塞、うっ血性心不全、冠動脈心疾患、狭心症、脳梗塞、脳血栓及び一過性脳虚血発作が挙げられる。他の例として、代謝活性の低下又は合計除脂肪体重の割合としての静止エネルギー消費の低下を示す病理学的条件を含む。肥満関連障害の更なる例として、シンドロームXとして知られているメタボリックシンドローム、インスリン抵抗性症候群、II型糖尿病、空腹時血中ブドウ糖不良、耐糖能障害、炎症、例えば脈管構造の全身性炎症、粥状動脈硬化、高コレステロール血症、高尿酸結晶、並びに肥満の二次的な結果、例えば左室肥大などが挙げられる。肥満関連障害は、脂肪肝又は非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFDL)などの肥満と関連する肝臓異常、肥満及びメタボリックシンドロームに関連する肝硬変の原因の上昇を含む。実際、NAFLDは、単純な脂肪肝として存在するか、又は炎症及び脂肪性肝炎(NASH)に進行することがあり、20年後に肝硬変になる20%のリスクを有する。「脂質代謝異常」は、冠動脈心疾患(CHD)の主要なリスク因子である。通常のレベル又は高いレベルの低密度(LDL)コレステロールと、高密度リポタンパク質(HDL)コレステロール低い血漿レベルは、ヒトにおいて粥状動脈硬化及び付随する冠動脈疾患を発達させるかなりのリスク因子である。脂質代謝異常は、しばしば肥満に随伴する。
【0045】
「メタボリックシンドローム」と云う語句、つまりシンドロームXは、本明細書に使用される際に以下の症状:腹部肥満、高グリセリド血漿、低HDLコレステロール、高血圧、及び高い空腹時血糖値のうちの3つ以上を有する場合に存在する。これらの症状の基準は、the third Report of the National Cholesterol Education Program Expert Panel in Detection, Evaluation and Treatment of High blood Cholesterol in Adults (Ford, ES. et al. 2002)において定義された。
【0046】
「II型糖尿病」という語句、つまり「インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)」は、当該技術分野における一般的な意味を有する。II型糖尿病は、インスリンレベルが通常であるか、又は高く、かつインスリンに対して組織が適切に応答することができないことから生じるようである。多くのII型糖尿病の患者の多くは、肥満体である。
【0047】
「NAFLD」という語句は、非アルコール性脂肪肝疾患を指す。NAFLDは、相当量のアルコールを摂取していない人において生じるアルコール誘導性肝臓疾患の組織的特徴を有する障害である。NAFLDは、単純な脂肪変性(肝臓への脂肪の蓄積として定義される)として存在することもあるし、又は炎症及び脂肪性肝炎(NASH)を発達させることもあり、20年後に、20%の肝硬変リスクを有する。「NASH」という語句は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を指す。NASHは、アルコール性肝炎に似ている肝細胞損傷及び炎症により組織学的に特徴付けられる、病因が未知の肝臓の進行性疾患である。NASHは、線維症、肝硬変、及び肝不全に進行するリスクのため、進行における臨界状態である。高脂血症、肥満及び2型糖尿病の徴候を伴うか、又は伴わない高血糖は、一般的にNAFLDを伴い、そして誘発条件である。近年の報告により、NAFLDが、もともと疑われているよりもより一般的であり、そしてこの障害の典型的リスク因子を有さない個人も罹患しうると言うことが報告された。肥満及び2型糖尿病の有病率が増加しているので、NAFLDの有病率は、増加することが予測され、その結果、この疾患は、新たな公衆問題になってきている(Reid AE.2001)。
【0048】
好ましい肥満関連障害は、特に脂質代謝異常、インスリン非依存性糖尿病、インスリン抵抗性、内臓脂肪症候群、冠動脈心疾患、粥状動脈硬化及び非アルコール性脂肪性肝疾患からなる群から選ばれてもよい。
【0049】
好ましい肥満及び肥満関連疾患は、遺伝的起源ではない。特に、過食、高脂肪食、及び/又は高血糖性の食事により誘導される肥満及び肥満関連疾患が好ましくは考慮される。
【0050】
その最も広い意味で、「治療する」又は「治療」という語句は、このような語句が適用される障害又は状態、又はかかる障害又は状態の1又は複数の徴候の回復、軽減、進行の抑制、又は予防を指す。
【0051】
特に、肥満及び肥満関連障害の「治療」は、肥満対象の体重を低減又は維持するために、本発明の化合物又は組み合わせを投与することを指す。1の治療結果は、本発明の化合物の投与直前の対象の体重に対して、肥満対象の体重を低減することである。別の治療結果は、ダイエット、運動、又は薬物治療の結果としてすでに生じた体重減少の体重のリバウンドを予防することであってもよい。別の治療結果は、肥満関連疾患の発症及び/又は重篤度を低減することであってもよい。別の治療結果は、体重減少を維持することでもある。
【0052】
特に、肥満及び肥満関連障害の「予防」は、肥満のリスクを有する対象の体重を低減又は維持するために、本発明の化合物を投与することである。1の予防結果は、本発明の化合物の投与直前の対象の体重に対して、肥満のリスクを有する対象の体重を低減することであってもよい。予防の別の結果は、ダイエット、運動、又は薬物治療の結果としてすでに生じた体重減少のリバウンドを予防することであってもよい。別の予防結果は、肥満のリスクを有する対象において肥満の開始前に治療が投与される場合に、発症から肥満を予防することであってもよい。予防の別の結果は、治療が肥満のリスクを有する対象において肥満の開始前に投与される場合に、肥満関連障害の発症及び/又は重篤度を低減することであってもよい。別の予防の結果は、体重増加に対する抵抗性を延長することであってもよい。さらに、すでに肥満対象において治療が開始された場合、このような治療は、肥満関連障害の発症、進行、又は重篤化を予防することであってもよい。
【0053】
「医薬として」又は「医薬として許容される」という語句は、哺乳動物、特にヒトに適宜投与された場合に、有害、アレルギー性、又は他の厄介な反応を産生することはない分子実体及び組成物を指す。医薬として許容される担体又は賦形剤は、任意のタイプの非毒性の固体、半固体、又は液体フィラー、充填剤、封入物質又は製剤補助剤を指す。
【0054】
治療法及び用途
本発明は、肥満及び/又は肥満関連障害を治療するための方法及び組成物(例えば、医薬組成物)を提供する。
【0055】
こうして、本発明の対象は、肥満及び/又は肥満関連障害を治療することを意図した医薬の製造のためのCB2受容体発現及び/又は活性の選択的阻害剤の使用である。
【0056】
第一態様によると、本発明は、CB2受容体活性の選択的阻害剤(以後、CB2受容体アンタゴニストと呼ぶ)の使用に関する。
【0057】
1の実施態様では、CB2受容体アンタゴニストは、低分子量アンタゴニスト、例えば有機低分子であってもよい。
【0058】
本発明により使用されうる小さい有機性CB2受容体アンタゴニストは、Barth Fら(1999)において総説されるアンタゴニストにより使用されてもよい。
【0059】
本発明にしたがって使用することができる小さい有機性CB2受容体アンタゴニストの具体的な例は、Hosohata Yら(1997)により記載されたAM630であり、そして以下の式(I):
【化1】
で表される構造を有する。
【0060】
本発明にしたがって使用することができる小さい有機性CB2受容体アンタゴニストの別な例は、Iwamuraら(1997)により記載されたJTE−907であり、そして以下の式(II):
【化2】
で表される構造を有する。
【0061】
CB2受容体に対して親和性及び選択性を有するピラゾール構造を有するさらなる化合物は、略称SR144528(M. Rinaldi-Carmona et al., 1998)で知られている化合物であり、この構造は式(III):
【化3】
で報告されている。
【0062】
国際特許公開WO01/32629号は、CB2受容体アンタゴニスト、その製法、及びそれらを含む医薬組成物を記載する。これらの化合物は、本明細書に援用される。本発明の文脈において使用されうるこれらの化合物は、1−ベンジルピラゾール-3-カルボン酸の三環系誘導体であり、そして以下の一般式(IV):
【化4】
[式中、
Xは、-(CH2)n-基を表し;
nは、1又は2であり;
g2、g3、g4、g5、w2、w3、w4、w5、w6は、同一であるか又は異なっており、そして独立して水素、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、(C1−C4)アルキル、(C1−C4)アルコキシ、(C1−C4)アルキルチオ、ニトロを表し;そして
R1は、(C1−C4)アルキルで1又は数回置換されるか、又は置換されない非芳香族C3−C15カルボン酸ラジカルを表す]
で表される構造を有する。当該化合物の医薬として許容されるその塩又は溶媒和物も含まれる。
【0063】
CB2受容体アンタゴニストの他の具体的な例として、国際特許公開WO 97/21682に記載される化合物が挙げられ、そして当該化合物は本明細書に援用される。これらの化合物は、以下の式(V):
【化5】
[式中、
X1は、−NR1R2基又は-OR基であり;
g2、g3、g4、g5、g6及びw2、w3、w4、w5、w6は同一であるか又は異なっており、そして各々独立して水素、ハロゲン原子、(C1−C4)アルキル、(C1−C4)アルコキシ、トリフルオロメチル、ニトロ、又は(C1−C4)アルキルチオであり、ただし、置換基g2、g3、g4、g5、g6のうちの少なくとも1、及び置換基W2、W3、W4、W5、W6のうちの少なくとも1が、水素以外であり;
R1が、水素又は(C1−C4)アルキルであり;
R2が、置換されないか、ハロゲン原子、(C1−C4)アルキル及び(C1-C4)アルコキシから選ばれる置換基により1置換又は多置換される非芳香族(C3−C15)カルボン酸ラジカルであり;
R3が、水素又は-CH2R6であり;
R4及びR5が、各々独立して水素、(C1−C4)アルキル又はトリフルオロメチルであるか;
又はR4は水素であり、かつR5とw6は一緒にエチレン又はトリメチレンラジカルを構成し;そして
R6は、水素、又は置換基g2、g3、g4、g5及び/又はg6が、(C1−C4)アルキル、R6が水素、(C1−C4)アルキル、フッ素、ヒドロキシル、(C1−C5)アルコキシ、(C1−C5)アルキルチオ、ヒドロキシ(C1−C5)アルコキシ、シアノ、(C1−C5)アルキルスルフィニル、又は(C1−C5)アルキルスルホニルである]
で表される化合物、又はその塩を含む。
【0064】
CB2受容体アンタゴニストは、国際特許公開WO 98/31227に記載された。したがって、使用は、式(VI):
【化6】
[式中、
R1は、OCH3、Br、イソプロピル、又はArであり;
R2は、H、OH、(C1−C5)アルコキシ、(C1−C5)アルキル、N(R5)2、NO2、Br、F、I、Cl、CF3、又はX(C(R5)2)OR5であり;
R3は、水素、(CH2)nXR5、C(O)R5、CO2R5、CON(R5)2、オキサジアゾリル、又はチアジアゾリルである。
複素環の各々は、置換されないか、又は1若しくは2の(C1−C3)アルキル又はフルオロアルキル基により置換され;
R4は、モルフォニル、ピペラジニル、又はピペリジニルであり、各部分は置換されないか、又は1若しくは2の(C1−C5)アルキル、OH、NO2又はN(R5)2基により置換され;
R5は、水素又は(C1−C8)アルキルであり;
XがO又はNR5であり;
Arが、フェニル、アンスラセニル、ナフチル、インドリル、ピリジニル、チオフェニル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イミダゾリル、オキサジアゾリル、ピロリル、フェニル、アンスラセニル、ナフチル、インドリル、ピリジニル、チオフェニル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イミダゾリル、オキサジアゾリル、ピロリル又はピリミジニルであり;各部分は、置換されていないか、又は1若しくは2のZ基により置換され;
Zは、H、OH、CO2R5、(C1−C10)アルコキシ、(C1−C5)アルキル、N(R5)2、NO2、Br、F、I、Cl、CF3、又はX(CH2)nOR5であり;そして
nは1〜6である]
で表される化合物、又は医薬として許容されるその塩から作成されうる。ただし、nが1である場合、X(CH2)nOR5においてR5が水素ではない。
【0065】
CB2受容体アンタゴニストが、式(VI)を有する場合、当該肥満関連障害は、免疫学的に媒介される炎症疾患ではなく、特に糖尿病、具体的にはI型糖尿病ではない。
【0066】
別の実施態様では、CB2受容体アンタゴニストは、抗体若しくは抗体フラグメントであって、部分的又は完全にCB2活性を遮断することができるもの(つまり、CB2受容体遮断性の部分又は完全な抗体又は抗体フラグメント)からなることもある。
【0067】
具体的に、当該抗体は、CB2リガンドの当該受容体への結合を損なう様式であり、CB2受容体アンタゴニストは、CB2受容体に対する抗体からなることもある。
【0068】
CB2受容体に対する抗体は、他のものの中からとりわけ、ブタ、ウシ、ウマ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、及びマウスから選ばれる宿主動物に対して、適切な抗原又はエピトープを投与することにより、既知の方法に従い生じうる。当該技術分野において知られている様々なアジュバントは、抗体産生を高めるために使用することができる。本発明を実施するのに有用な抗体はポリクローナル抗体であってもよいが、モノクローナル抗体が好ましい。CB2受容体に対するモノクローナル抗体又はCB2受容体のリガンドは、培養物中において連続的に細胞株を培養することにより、抗体分子を産生がもたらされる任意の技術を用いて、調製し、そして単離することができる。産生及び単離技術は、Kohler及びMilstein(1975)により初めて記載されたハイブリドーマ技術;ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Cote ら、1983)、EBV−ハイブリドーマ技術(Coleら、1985)を含むがこれらに限られない。或いは、抗CB2、又は抗CB2リガンド一本鎖抗体を産生するために、一本鎖抗体を産生するために記載された技術(例えば米国特許4,946,778号を参照のこと)が適用される。本発明を実施するのに有用であるCB2受容体アンタゴニストは、抗−CB2、抗CB2リガンド抗体フラグメントであって、無傷の抗体分子のペプシン切断により作成することができるF(ab’)2フラグメント、及びF(ab’)2フラグメントのジスルフィド結合を還元することにより作成できるFabフラグメントを含むがこれらに限られるものではないフラグメントを含む。或いは、Fab及び/又はscFv発現ライブラリーは、CB2受容体に対して所望の特異性を有するフラグメントを迅速に同定することを可能にするように構築することができる。
【0069】
ヒト化された抗CB2又は抗CB2リガンド抗体、及びそれから得られる抗体フラグメントは、既知の技術にしたがって製造することができる。「ヒト化抗体」は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含む非ヒト(例えばげっ歯類)キメラ抗体の形態である。多くの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域(CDR)に由来する残基が、非ヒト生物種(ドナー抗体)、例えばマウス、ラット、ウサギ、又はヒト以外の霊長類由来の抗体であって、所望の特異性、親和性、及びキャパシティを有する抗体の超可変領域由来の残基により置換される、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。幾つかの場合、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基により置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体又はドナー抗体中で見られない残基を含んでもよい。これらの改変は、抗体性能を高めるために行われる。一般的に、ヒト化抗体は、少なくとも1、そして典型的には2の可変ドメインの実質的に全てを含み、ここで全て又は実質的に全ての超可変ループは、非ヒト免疫グロブリン及び全部又は実質的に全部のFRは、ヒト免疫グロブリン配列を含みうる。ヒト化抗体は、場合により、典型的には、ヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも1部を含む。ヒト化抗体を製造する方法は、Winter(米国特許第5,225,539号)により、そしてBoss(Celltech、米国特許第4,816,397号)により記載される。
【0070】
さらに別の実施態様では、使用は、アプタマーから作られることもある。
【0071】
アプタマーは、分子認識の点で、抗体の代替物を表す分子のクラスである。アプタマーは、高い親和性及び特異性で、標的分子の任意のクラスを実際に認識する能力を有するオリゴヌクレオチド又はオリゴペプチドである。かかるリガンドは、Tuerk C.及びGold L., 1990に記載されるように、ランダムシーケンスライブラリーの指数濃縮による、リガンドの系統的進化(SELEX)を通して単離されることもある。ランダム配列ライブラリーは、DNAのコンビナトリアル化学合成により得ることができる。このライブラリーでは、各メンバーは、最終的に化学的に改変された固有の配列を有する直鎖オリゴマーである。このクラスの分子の潜在的な改変、使用、及び利点は、Jayasena S.D., 1999に総説された。ペプチドアプタマーは、プロットホームタンパク質、例えばツーハイブリッド法(Colasら、1996)によりコンビナトリアルライブラリーから選ばれるE.ColiチオレドキシンA
、により表示された立体構造的に制約のある抗体可変領域からなる。
【0072】
本発明の別の態様は、CB2受容体発現の選択的阻害剤を使用することに関する。
【0073】
こうして、本発明は、肥満及び肥満関連障害を治療及び/又は予防することを意図された医薬の製造のための、CB2受容体発現の選択的阻害剤を使用することを提供する。
【0074】
CB1受容体配列とCB2受容体配列が低い配列同一性を示す場合、本発明にしたがって使用されうるCB2受容体発現の阻害剤は、有利にCB1受容体発現と比べることにより、CB2受容体発現の選択的阻害を提供する。
【0075】
本発明において使用するためのCB2受容体発現の阻害剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチドコンストラクトに基づいてもよい。アンチセンスRNA分子及びアンチセンスDNA分子を含めたアンチセンスオリゴヌクレオチドは、CB2受容体mRNAに結合することによりCB2受容体mRNAの翻訳を直接遮断し、そうしてタンパク質翻訳を予防し、又はmRNA崩壊を増加させ、そうしてCB2受容体のレベルを低下させるように作用し、そうして細胞において活性を阻害する。例えば、少なくとも約15塩基であり、そしてCB2受容体をコードするmRNA転写配列の固有領域に対して相補的であるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、慣用のホスホジエステル技術により合成され、そして静脈内注射又は輸液により投与される。その配列が当該技術分野において知られている遺伝子の遺伝子発現を特異的に阻害するアンチセンス技術を用いる方法は、周知である(米国特許第6,566,135号;第6,566,131号;第6,365,354号;第6,410,323号;6,107,091号;第6,046,321号;及び第5,981,732号)。
【0076】
低分子阻害性RNA(siRNA)は、本発明において使用するためのCB2受容体発現の阻害剤として機能することができる。CB2受容体発現は、対象又は細胞を、低分子二本鎖RNA(dsRNA)、低分子二本鎖RNAの産生を引き起こすことができるベクター若しくはコンストラクトと接触させることにより低減することができ、その結果CB2受容体発現は、特異的に阻害される(つまり、RNA干渉、つまりRNAi)。適切なdsRNA又はdsRNAをコードするベクターを選択する方法は、その配列が知られている遺伝子について、当該技術分野において周知である(例えば、Tuschi, T et al (1999); Elbashir, S. M. et al. (2001); Hannon, GJ (2002); McManus, MT. Et al. (2002); Brummelkamp, TR. Et al. (2002); 米国特許第6,573,099号及び第6,506,559号;及び国際特許公開第WO 01/36646号、第WO 99/32619号、及びWO01/68836号)。
【0077】
リボザイムは、本発明において使用するCB2受容体発現の阻害剤として機能することができる。リボザイムは、RNAの特異的切断を触媒できる酵素的なRNA分子である。リボザイム作用のメカニズムは、相補的標的RNAに対してリボザイム分子が配列特異的にハイブリダイゼーションし、続いてエンドヌクレアーゼ的に切断することに関する。遺伝子操作されたヘアピン又はハンマーヘッドモチーフのリボザイム分子であって、CB2受容体mRNA配列のエンドヌクレアーゼ的切断を特異的かつ効果的に触媒できる分子は、その結果、本発明の範囲において有用である。任意のRNA標的内にある特異的リボザイム切断部位は、標的分子をリボザイム切断部位についてスキャンすることによりまず同定され、当該切断部位は典型的に、以下の配列:GUA、GUU、及びGUCを含む。ひとたび同定された場合、切断部位を含む標的遺伝子の領域に対応する約15〜20リボヌクレオチド短いRNA配列は、オリゴヌクレオチド配列を不適切なものにしうる予測された構造的特徴、例えば二次構造について評価することができる。候補標的の適切性は、例えばリボヌクレアーゼ保護アッセイを用いることにより相補的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションに対するアクセス容易性を試験することにより評価することができる。
【0078】
CB2受容体発現の阻害剤として有用であるアンチセンスオリゴペプチド及びリボザイムの両方が、既知の方法により調製できる。これらは、固相ホスホールアミダイト化学合成などによる化学合成技術を含む。或いは、アンチセンスRNA分子は、当該RNA分子をコードするDNA配列のin vitro又はin vivo転写により作成することもできる。このようなDNA配列は、T7又はSP6ポリメラーゼプロモーターなどの適切なRNAポリメラーゼプロモーターを包含する様々なベクターに取り込むことができる。本発明のオリゴヌクレオチドに対する様々な改変は、細胞内安定性及び半減期を増加させる手段として誘導することができる。可能な改変として、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドのフランキング配列を、当該分子の5’及び/又は3’末端に添加すること、又はオリゴヌクレオチド骨格内のホスホジエステル結合の代わりにホスホロチオエート又は2’−O−メチルを使用することが挙げられるが、それらに限られるものではない。
【0079】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドsiRNA及びリボザイムは、in vivoで単独でデリバリーされてもよいし、又はベクターと併せてデリバリーされてもよい。最も広い意味で、「ベクター」は、アンチセンスオリゴヌクレオチドsiRNA又はリボザイム核酸を細胞に、そして好ましくはCB2受容体を発現している細胞に輸送することを促進することができる任意のビヒクルである。好ましくは、ベクターは、ベクターが存在しない場合に生じる分解の程度に比べて、低い分解性で、細胞に核酸を輸送する。一般的に、本発明において有用なベクターとして、プラスミド、ファージミド、ウイルス、他のビヒクルであって、アンチセンスオリゴヌクレオチドsiRNA又はリボザイム核酸配列の挿入又は取り込みにより操作されたウイルス又は細菌起源由来の他のビヒクルが挙げられるが、それらに限られるものではない。ウイルスベクターは、好ましいタイプのベクターであり、そして以下のウイルス:レトロウイルス、例えばモロニーマウス白血病ウイルス、ハーベイマウス肉腫ウイルス、マウスの乳房腫瘍ウイルス、及びラウス肉腫ウイルス;アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス;SV40型ウイルス;ポリオーマウイルス;エプスタイン・バーウイルス;パピローマウイルス;ヘルペスウイルス;ワクシニアウイルス;ポリオウイルス;及びRNAウイルス、例えばレトロウイルスが挙げられる。当業者は、名づけられていないが、当該分野に知られている他のベクターを容易に使用することができる。
【0080】
好ましいウイルスベクターは、非必須遺伝子が目的の遺伝子と置き変えられた非細胞変性性の真核ウイルスに基づいている。非細胞変性ウイルスは、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)を含み、そのライフサイクルは、ゲノムウイルスRNAをDNAに逆転写し、続いて宿主細胞DNAにプロウイルス統合することに関する。レトロウイルスは、ヒト遺伝子治療治験で承認されてきている。最も有用なものは、複製欠損であるレトロウイルスである(つまり、所望のタンパク質を直接合成することができるが、感染粒子を製造することができない)。かかる遺伝的に改変されたレトロウイルス発現ベクターは、in vivoにおいて、遺伝子の高頻度形質導入に一般的に有用性を有する。外来性遺伝物質をプラスミドに取り込み、パッケージ細胞株にプラスミドをトランスフェクトし、細胞株をパッケージングすることにより組換えレトロウイルスを産生させ、組織培養培地からウイルス粒子を回収し、そして標的細胞をウイルス粒子で感染させることを含む複製欠損レトロウイルスを生産する標準的なプロトコルが、Kriegler, 1990及びMurry, 1991に提供される。
【0081】
ある適用に用いられる好ましいウイルスは、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルスであり、これらは遺伝子治療においてヒトに使用するために承認された二本鎖DNAウイルスである。アデノ随伴ウイルスは、複製欠損製であるように遺伝子操作され、そして幅広い細胞型及び種に感染できる。当該ウイルスは、熱及び脂質溶媒安定性;様々な細胞株、例えば造血細胞における形質導入頻度;及び重複感染阻害の欠如、こうして、複数回の形質導入を可能にするといった利点をさらに有する。報告によると、アデノ随伴ウイルスは、部位特異的な様式でヒト細胞DNAに組み込むことができ、それにより挿入変異誘導の可能性、及びレトロウイルス感染の挿入された遺伝子発現の特徴である変動性を最小限にすることができる。さらに、野生型アデノ随伴ウイルス感染は、選択圧が存在しない状態で、100回の継代を超えて組織培養がされ、アデノ随伴ウイルスゲノムの組み込みは、比較的安定な事象であることを示唆した。当該アデノ随伴ウイルスは、染色体外の様式でも機能することができる。
【0082】
他のベクターは、プラスミドベクターを含む。プラスミドベクターは、当該技術分野において詳しく記載されてきており、そして当業者に周知である。例えば、Sambrook et al., 1989を参照のこと。ここ数年では、プラスミドベクターが、in vivoで細胞に抗原をコードする遺伝子をデリバリーするためのDNAワクチンとして使用された。これらは、特に、ウイルスベクターの多くが有するものと同じ安全性についての懸念を有しないので、特に有用である。しかしながら、宿主細胞に適合しているプロモーターを有するこれらのプラスミドは、プラスミド内に作用可能なようにエンコードされた遺伝子からペプチドを発現することができる。幾つかの一般的に使用されるプラスミドは、pBR322、pUC18、pUC19、pRC/CMV、SV40、及びpBlueScriptを含む。他のプラスミドも当業者に周知である。さらに、プラスミドは、制限酵素とライゲーション反応を用いて、特定のDNA断片を除去及び添加するようにカスタム設計される場合もある。プラスミドは、様々な非経口、粘膜、及び局所経路によりデリバリーされることもある。例えば、DNAプラスミドは、筋肉内、皮内、皮下、又は他の経路により注射できる。DNAプラスミドは、鼻孔内スプレー又は点鼻、直腸座剤、及び経口的に投与されてもよい。DNAプラスミドは、遺伝子銃を用いて表皮又は粘膜表面に投与されてもよい。プラスミドは、水溶液内に与えられてもよいし、金粒子上に乾燥されるか、又は別のDNAデリバリー系、例えば非限定的にリポソーム、デンドリマー、コクレート(cochleate)及びマイクロ封入と組み合されてもよい。
【0083】
本発明の別の対象は、上に記載されるように、CB2発現及び/又は活性の選択的阻害剤を、それを必要とする対象に投与することを含む、肥満及び/又は肥満関連障害を治療及び/又は予防する方法に関する。
【0084】
CB2受容体活性及び/又は発現の選択的阻害剤は、以下に定義されるように医薬組成物の形態で投与されてもよい。
【0085】
好ましくは、当該阻害剤は、治療有効量で投与される。
【0086】
「治療有効量」という言葉は、任意の医療に適用できる妥当な利益/リスク比で、肥満及び/又は肥満関連障害を治療及び/又は予防するために十分な量のCB2受容体アンタゴニスト又は阻害剤を意味する。
【0087】
本発明の化合物及び組成物の合計1日用量が、超音波診断の担当医(attending physician within the scope of sound medical judgment)により決定されることが理解されたい。任意の特定患者に対する具体的な治療有効量のレベルは、治療される障害及び障害の重篤度、使用される具体的化合物の活性;使用される具体的な組成物、年齢、体重、全般的健康、性別、及び患者の食事;投与器官、投与経路、及び使用される具体的化合物の排出割合;治療期間;使用される特異的ポリペプチドと組み合わせるか又は同時投与で使用される薬剤;及び医薬の分野において周知の因子に依る。例えば、当該技術分野において、所望の治療効果を達成するために必要とされるレベルよりも低いレベルで化合物の用量に左右される。例えば、所望の治療効果を達成するために必要とされるレベルよりも低いレベルで化合物の用量を開始し、そして所望の効果が達成されるまで徐々に用量を増加させることは、当業者に周知である。しかしながら、製品の一日用量は、成人一日あたり0.01〜1000mgの範囲で変わりうる。好ましくは、組成物は、治療される患者に対する用量の症状調節のために、0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100、250、及び500mgの活性成分を含む。典型的に医薬は、約0.01mg〜約500mgの活性成分、好ましくは1mg〜約100mgの活性成分を含む。薬剤の有効量は、通常、1日あたり0.0002mg/kg〜約20mg/kg体重、特に1日あたり約0.001mg/kg〜7mg/kg体重の用量レベルで供給される。
【0088】
スクリーニング法
本発明の阻害剤は、当該技術分野の状態において記載されたスクリーニング法によりさらに同定することができる。本発明のスクリーニング法は、既知の方法に従い行うこともできる。
【0089】
スクリーニング法は、候補化合物の受容体、又は細胞若しくは受容体を有する膜への結合、又はその融合タンパク質を、標識を用いて直接、又は間接的に候補化合物と一緒に計測することができる。あるいは、スクリーニング法は、標識コンペティターを(アンタゴニスト又はアゴニスト)用いて、候補化合物の受容体に対する結合の競合を計測し、又は定性的又は定量的に検出することを含みうる。さらに、スクリーニング法は、受容体を有する細胞に適している検出システムを用いて、当該受容体のアンタゴニストにより作成されるシグナルをもたらすかを試験することができる。アンタゴニストは、既知のアゴニスト(例えば、DELTA−9−THC、WIN 55212−2又はCP55940)の存在下でアッセイすることができるし、そして候補化合物の存在下におけるアゴニストによる活性化の効果が観察される。さらに、スクリーニング法は、CB2を含む溶液と候補化合物を混合して、混合物を形成し、そして混合物中で活性を計測し、そして候補化合物を含まない対象混合物と比較するステップを含むこともある。既知のアゴニスト、例えばDELTA-9-THC、WIN55212−2、又はCP55940を用いた競合結合も適切である。
【0090】
CB2受容体に対する候補化合物のアンタゴニスト活性は、例えば、様々な方法を用いて決定されてもよい。例えば、CB2受容体アゴニスト(DELTA−9−THC、WIN55212−2又はCP55940)は、M.Rinaldi-Carmona et al(1996)に記載されるように、フォルスコリンにより誘導されるアデニルシクラーゼ活性を阻害することができる。こうして、このモデルにおいて、当業者は、CB2受容体アゴニストの効果を遮断する当該化合物の能力を試験することができる。
【0091】
医薬組成物
CB2受容体アンタゴニスト又はCB2受容体発現の阻害剤は、医薬として許容される賦形剤、及び場合により持続放出マトリクス、たとえば生分解性ポリマーと組み合わされて、治療組成物を形成してもよい。
【0092】
経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、経皮、局所又は直腸投与用の本発明の医薬組成物において、単独で、又は他の活性成分と組み合わせて活性成分は、動物及びヒトに対して、慣用される医薬支持体との混合物として、単位投与剤形で投与することができる投与することができる。適切な単位投与剤形は、経口剤形、例えば錠剤、ゲルカプセル、粉末、顆粒、及び経口懸濁液又は溶液、舌下及び口腔投与剤形、エアロゾル、インプラント、皮下、経皮、髄腔内及び鼻孔内投与剤形、及び直腸投与剤形を含む。
【0093】
好ましくは、医薬組成物は、注射できる製剤に医薬として許容されるビヒクルを含む。これらは、特に、等張滅菌生理食塩水(リン酸一ナトリウム又はリン酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム又は塩化マグネシウムなど、又はこのような塩の混合物)中に存在してもよいし、又は乾燥、特に凍結乾燥組成物であって、投与の際に場合に応じて、滅菌水又は生理食塩水により注射溶液が構成される組成物であってもよい。
【0094】
注射使用に適した医薬製剤は、滅菌水溶液又は懸濁液を含み、ごま油、ピーナッツ油、又は水性プロピレングリコールを含む製剤;及び滅菌注射溶液又は懸濁液の即時調製用の滅菌粉末を含む。全ての場合において、当該製剤は、滅菌されていなければならず、そして容易な注射通過性が存在する程度に液状でなければならない。製造及び貯蔵の条件下で安定でなければならず、そして細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。
【0095】
遊離塩基又は医薬として許容される塩として本発明の化合物を含む溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合されて調製することができる。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物中で、並びに油中で調製することもできる。通常の貯蔵条件下及び使用条件化で、これらの製剤は、微生物の増殖を妨げる保存剤を含む。
【0096】
本発明のCB2受容体アンタゴニスト又はCB2受容体発現の阻害剤は、中性形態又は塩形態で組成物中に剤形することができる。医薬として許容される塩は、酸添加塩(タンパク質の遊離アミノ基とともに形成される)であって、例えば塩酸又はリン酸などの無機酸、或いは酢酸、オキサル酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸と形成される酸添加塩を含む。遊離のカルボキシル基と形成される塩は、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、又は水酸化鉄などの無機塩基、並びにイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基に由来することもある。
【0097】
担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、及び植物油を含む溶媒又は懸濁媒体であることもある。適切な流動性は、例えば、レシチンなどの被膜により、懸濁液の場合必要とされる粒子サイズを維持することにより、そして界面活性剤を使用することにより維持することができる。微生物作用の予防は、様々な抗細菌及び抗真菌剤、例えばパラベン類、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによりもたらされる。多くの場合、糖類又は塩化ナトリウムなどの等張剤を含めることが好ましいであろう。注射組成物の長期の吸収は、吸収遅延薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの組成物中で使用することにより、もたらされることもある。
【0098】
滅菌注射用液は、活性ポリペプチドを必要な量で、必要に応じて上に列挙される各種他の成分を伴って適切な溶媒中に取り込み、続いてフィルター滅菌することにより調製される。一般的に、懸濁液は、種々の滅菌活性成分を、塩基性懸濁媒体と、上に列挙されたものから必要とされる他の成分を含む滅菌ビヒクルに取り込むことにより調製される。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製法は、吸引乾燥及び凍結乾燥技術であり、これらは活性成分+以前に滅菌ろ過されたその溶液に由来する任意の所望の追加成分の粉末をもたらす。
【0099】
剤形する際に、溶液は、剤形に適合する様式で、そして治療有効である量で投与される。製剤は、様々な剤形、例えば上に記載される注射溶液のタイプなど、で容易に投与されるが、薬剤放出カプセルなども使用することができる。
【0100】
水溶液中での非経口投与では、例えば、溶液は、必要がある場合適切に緩衝化されるべきであり、そして液体希釈液は、第一に十分な生理食塩水又はグルコースで等張にされる。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、及び腹腔内投与に特に適している。これに関連して、使用することができる滅菌水性媒体は、本開示を踏まえれば当業者に知られるであろう。例えば、1用量は、1mlの等張NaCl溶液に溶解することができるし、そして1000mlの皮下注入液体に加えられるか、又は輸液に適した部位で注入される。治療される対象の状態に応じて、用量の変動は必然的に生じるであろう。いずれにせよ投与責任者は、個々の対象について適切な用量を決定するであろう。
【0101】
本発明のCB2受容体アンタゴニスト又はCB2受容体発現の阻害剤は、治療混合物内に、1用量あたり約0.0001〜1.0mg、又は約0.001〜0.1mg、又は約0.1〜1.0、又はさらに約10mg含めるように剤形されてもよい。
【0102】
静脈内又は筋肉内注射などの非経口投与用に剤形された本発明の化合物に加え、他の医薬として許容される形態として、例えば錠剤又は経口投与用の他の固体;リポソーム製剤;徐放性カプセル;及び現在使用されている任意の他の形態が挙げられる。
【0103】
本発明は、添付の図面及び以下の実施例を参照してさらに例示されよう。
【実施例】
【0104】
実施例1
方法
動物及び実験デザイン: 混合遺伝的背景におけるCB2遺伝子の標的化変異を有するマウスの作成は、以前に記載された(Buckley、N.Eら、2000)。野生型C57BL/6、ob/ob及びob/ob+マウスを、Janvier(France)から取得した。
【0105】
成体雄マウス(7〜10週齢)を、12時間の明/12時間の暗サイクルの下で、温度制御された環境で飼育した。野生型マウス(WT)及びCB2−/−マウスに標準食餌(TD2016、Harlan)又は高脂肪食餌(36%脂肪、TD99249、Harlan)を15週間与えた。体重と食餌摂取量を毎週計測した。一晩の絶食後にマウスを屠殺した。全ての実験プロトコルを、フランス政府ポリシーにしたがい行った(Services veterinaires de la Sante et de la production animale, Ministere francais de I'Agriculture)。
【0106】
屠殺の際に、褐色及び白色(皮下鼠径部(SAT)及び精巣上体(EAT))脂肪組織を摘出し、秤量し、そして液体窒素中で急速凍結させた。肝臓サンプルを幾つかの葉から摘出し、そして緩衝化ホルマリン中で固定するか、又はRNAlater(Qiagen)をいれた液体窒素中で急速凍結した。全てのサンプルを使用するまで-80℃で貯蔵した。
【0107】
組織及び結成分析:
一晩絶食させた後、マウスを屠殺した際に血液を回収した。Accu−Check活性バンド(Roche Diagnostics)により血糖症を計測し、そしてインスリン血症を、Elisa (Ultrasensitive mouse sensitive Elisa, Mercodia)により測定した。レプチンの血清濃度を、市販のELISAアッセイ(Quantikine Elisa Kit, R&D)により測定した。肝臓トリグリセリドを、10mlのイソプロパノールに入れた50mgの肝臓ホモジェネートから抽出し、そしてトリグリセリド測定キット(Sigma)を用いて定量した。
【0108】
RNA調製及びRT−PCR
RNeasy(商標)Lipid Tissue Mini kit (QIAGEN)を用いてトータルRNAを、肝臓及び白色脂肪組織から抽出した。以下に記載されるように定量的RT−PCRを、Light Cycler(Roche Diagnostics)で行った(Julien B et al. 2005)。試験された遺伝子のオリゴヌクレオチドプライマー配列を、表1に載せる。
【0109】
【表1】
PCR増幅された生成物を、2%アガロースゲルで分析し、そしてシーケンスを行った。
【0110】
肝臓及び脂肪組織の組織構造
肝臓標本を、10%ホルマリン及びパラフィン包埋で固定した。そして通常の試験のため、組織部分(4μm)をヘマトキシン-エオシンで染色した。脂肪細胞のサイズを、ヘマトキシリン-エオシンで染色された脂肪組織部分(8μm)に基づいて定量した。Image J ソフトウェアを用いて、HFDを与えられた7匹のWT及び5匹のCB2−/−動物において、3の別個の領域から得た少なくとも30の細胞について定量を行った。
【0111】
統計:
結果を、平均±SEMとして表し、そしてMann Whitney検定、一元配置分散分析又は二元配置分散分析のいずれかの後に、Bonferroni検定することにより分析した。p<0.05を、有意の最小レベルとした。
【0112】
結果:
CB2−/−マウスは、食餌誘導性の肥満に抵抗性である:
野生型及びCB2−/−マウスに15週間にわたり高脂肪食餌(HFD)を与える一方で、それぞれの対照には通常のマウス食餌を与えた。実験の開始時には、平均重量は、WTについて22±0.13g、及びCB2−/−について20.1±0.4gで類似していた。しかしながら、HFDを与えて9週後、CB2−/−マウスの平均重量は、その野生型対応マウスにくらべて有意に軽く、そして研究の終了時では、CB2−/−動物は、似たような食餌摂取量に関わらず(図2)、野生型マウスよりも28%も体重が少なかった(CB2−/−について41.6±1.3g 対 WTについて46.7±1.2g、p<0.05、図1)。
【0113】
試験の終了時において、HFDを与えられたCB2−−マウスの白色及び褐色脂肪組織重量が有意に低下した(表2)。
【0114】
さらに、CB2−−マウスの脂肪症指数(トータル脂肪重量/除内臓体重(eviscerated body weight)×100)は、WTマウスに比べて有意に低かった(表2)。最終的に、HFDを与えたCB2−−マウスの脂肪細胞のサイズは、HFDを与えたWTマウスの脂肪細胞のサイズよりも有意に低かった(図3)。
【0115】
HFDを与えられた野生型マウスは、予期されたホルモン変化及び代謝変化、例えば、高血糖症、(hypermia)、及び高レプチン血症を示した(図4、5、及び6)。対照的に、HFDを与えられたCB2−/−マウスにおいて、インスリン及びグルコース血清レベルは、通常の範囲に留まり(図4及び5)、WTマウスとCB2−/−との間の際は有意には達しなかった。また、血清レプチンレベルは、HFDを与えられたCB2−/−マウスばかりでなく、対照食餌を与えられたCB2−/−マウスにおいても、そのWT対応マウスに比べて有意に低かった(図6)。
【0116】
CB2の無効化は、肥満誘導性の肝脂肪変性を遅らせる
期待されたとおり、脂肪組織切片の組織学的分析により示されるように肥満WTマウスは、脂肪肝を発達させ、そして肝臓のトリグリセリドを増加させた(図8)。対照的に、HFDを与えられたCB2−/−マウスは、肝脂肪変性から保護された(図8)。したがって、SREBP−1c及びACC1の誘導は、HFDを与えられたCB2の肝臓において一貫して低い(図9)。
【0117】
これらの結果をまとめると、高脂肪食餌により誘導される肥満、インスリン抵抗性、及び肝脂肪変性の発症機序においてCB2の新規の役割が明らかにされた。
【0118】
HFDを与えられた野生型マウス及びCB2−−マウスの肝臓及び白色脂肪組織におけるCB受容体発現の制御
期待されたとおり、CB2−/−マウスは、CB2遺伝子を欠失しており、そして通常のCB1遺伝子発現を示す(図10)HFDを与えられたWTマウスでは、CB2受容体発現は、EAT(精巣上体脂肪組織)において、29.8±5.0倍も増加しているが、肝臓では変化していない(図11)。同様の結果は、ob/obマウスにおいて得られており、脂肪組織では6.8±1.9倍のCB2受容体mRNA発現を誘導するが、肝臓では変化が生じていない(図11)。CB1受容体mRNA調節は、WT及びCB2−/−マウスで調べられた。他人により記載されているように(Cota D. et al. 2003; Osei-Hyiaman, D et al. 2005)、CB1受容体mRNA発現は、HFDを与えられたWTマウスのEAT及び肝臓において、それぞれ2.68±0.35及び3.57±0.96倍誘導されている(図12)。対照的に、CB1受容体mRNAは、HFDを与えられたCB2−/−マウスのEAT及び肝臓において誘導された(図12)。
【0119】
これらの結果により、高脂肪食餌は、EATにおいてCB2 mRNA発現を上方制御するが、肝臓では上方制御しないことが示された。さらに、これらにより、CB1受容体mRNA発現が、HFDを与えられている間CB2受容体により制御されると言うことも示された。
【0120】
HFDを与えられたCB2−/−マウスは、EAT及び肝臓において炎症の低下を示した。脂肪組織は、インスリン抵抗性の発達に寄与することがある肥満のあいだにおける軽度の炎症により特徴付けられることが認められている。脂肪細胞は、マクロファージの脂肪組織への浸潤、並びにそれに続くインスリン抵抗性の発達及び肝脂肪変性に寄与する数種のアディポカイン(adipokines)を分泌する。近年のデーターにより、種々の炎症関連タンパク質、例えばTNF−α及びMCP−1の発現は、食事誘導性の肥満のあいだ上方制御され、そしてメタボリックシンドローム及び肥満の肝臓合併症の発症機所において主要な役割を果たすということが示されている。期待されている通り、HFDを与えられた野生型マウスのEATは、TNF−α及びMCP−1mRNA発現の強力な誘導、及びF4/80(成熟マクロファージの特異的マーカー)のmRNA発現によりアッセイされるようにマクロファージの密度の増加(図13)を示した。対照的に、TNF−α、MCP−1、及びF4/80の誘導は、HFDを与えたCB2−/−マウスのEATを有意に低減させる(図13)。
【0121】
HFDを与えられたマウスにおける肝臓炎症のCB2の無効化の結果も調べられた。脂肪組織において観察されるように、HFDを与えられた野生型マウスに比べて、TNFα、MCP−1、及びF4/80mrNAの肝臓誘導は、HFDを与えられたCB2−/−マウスにおいて低かった(図14)。
【0122】
その結果、これらの結果により、CB2受容体は、肥満の発達を引き起こす炎症プロセスにおいて主要な役割を果たすことが示される。
【0123】
要約すると、CB2受容体が、脂肪組織において過発現されるということが示されており、そして肥満、インスリン抵抗性、炎症及び肝脂肪変性の発達において主要な役割を果たすことが示される。
【0124】
【表2】
【0125】
実施例2
方法:
動物及び実験デザイン:
フランス政府ポリシー(Services veterinarires de la Sante et de la production animale, Ministere francais de I'Agriculture)にしたがい実験プロトコルが行われた。動物を、12時間の明期/12時間の暗期サイクルで、温度制御環境で飼育した。CB2アンタゴニストAM630の影響を、6週齢の雄肥満LepOb/LepOb雄マウス(ob/ob)及びやせ型LepOb+/LepOb対応マウス(ob+/ob)において評価した。1mg/kgのAM630(n=10ob/ob及びn=5のob+/ob)又はビヒクル(n=8ob/ob及びn=5ob+/ob)の腹腔内注射を毎日17日間与えた。AM630(Tocris)を、あらたに1滴のTween80を含む0.1mlのジメチルスルホキシド(DMSO)を含むビヒクル溶液に溶解し、ソニケートし、そしてさらにNaCl9‰中に50倍に希釈した。体重及び食餌摂取を毎日計測した。一晩の絶食後にマウスを屠殺した。白色精巣上体脂肪組織を摘出し、重量を計測し、そして緩衝化ホルマリンで固定するか、又は液体窒素で急速凍結させた。全てのサンプルを使用するまで-80℃で貯蔵しておいた。
【0126】
RNA調製及びRT-PCR:
RNeasy(商標)Lipid Tissue Miniキット(QIAGEN)を用いて、トータルRNAを、マウス精巣上体脂肪から抽出した。以前に記載したように、定量的RT-PCRを、Light Cycler(Roche Diagnostics)で行った。試験されたマウス遺伝子のオリゴヌクレオチドプライマー配列を表に載せる。
【0127】
【表3】
【0128】
PCR増幅産物を、2%アガロースゲルで分析し、そしてシーケンスを行った。
【0129】
結果:
多くの試験により、肥満は、脂肪組織における軽度の炎症を伴い、当該炎症は全身のインスリン抵抗性及び脂肪肝の発達に寄与する。マクロファージは、肥満であるあいだ脂肪組織に集積し、そしてこの炎症状態に寄与する。
【0130】
脂肪組織におけるCB2受容体の制御及び分配は、さらに肥満の2つの実験モデルにおいてさらに特徴決定された(図15a)。興味深いことに、HFDを与えられた野生型マウスとob/obマウスは、CB2mRNAの強力な誘導を示し、これは体重増加と相関した(図15a、左側のパネル)。CB2受容体のmRNAは、脂肪組織において検出することができないばかりか、3T3−L1前脂肪細胞においても検出できず、そしてやせ型(ob+/ob−)動物に比べて肥満(ob/ob)マウスから調製された精巣上体脂肪組織の間質脈環フラクション(stromal vascular fraction)において強く誘導されており、CB2受容体のマクロファージ関連発現を示唆する。期待されるように、HFDを与えられた肥満WTマウスの脂肪組織は、マクロファージ関連マーカーF4/80をコードするmRNAの強力な誘導(図15b、左側パネル)により、並びに脂肪組織周囲のクラウンクラスターにおけるF4/80陽性細胞の集積(図15b、右側パネル)により示されるように、マクロファージにより有意に浸潤されている。マクロファージ密度の増加は、TNFα及びMCP−1mRNA発現の顕著な増大と関連し、肥満WT動物における脂肪組織の炎症応答を反映する(図15c)。対照的に、CB2の遺伝的不活性化は、脂肪組織へのマクロファージ蓄積の低い程度に関連しており(図15b)、そしてTNF−α及びMCP−1mRNA発現により評価すると炎症応答の顕著な低下と関連している(図15c)。
【0131】
遺伝欠損CB2−/−マウスにおいて得られるデーターをまとめると、CB2の薬理学的阻害が、6週齢のob/obマウスにCB2アンタゴニストAM630を毎日腹腔内投与(17日間にわたり1mg/kg)することにより誘導された。AM630は、F4/80、TNF−α、及びMCP−1mRNAの低い誘導により示されるように、肥満マウスにおける脂肪炎症応答を低下させた(図16)。
【0132】
まとめとして、これらの結果により、当該動物モデルにおいて、CB2拮抗作用が、脂肪組織における炎症応答の低下と関連し、そしてそれによりインスリン抵抗性及び脂肪症を改善しうることが示される。
【0133】
参考文献
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肥満及び肥満関連障害の治療及び/又は予防を意図した医薬の製造のためのCB2受容体発現及び/又は活性の選択的阻害剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満は、体脂肪の過剰により特徴づけられる状態である。過体重及び肥満の有病率は、世界中で重要な公衆健康問題と考えられている。凡そ米国成人の3分の2が、過体重又は肥満に分類される。実際、肥満は、冠動脈性疾患(CHD)、心室機能不全、うっ血性心不全、脳卒中、及び不整脈の重大なリスク因子である。さらに、肥満は、2型糖尿病、内臓脂肪症候群及び肝臓障害、例えば非アルコール性脂肪性肝疾患と密接に関連する。
【0003】
2型糖尿病、又は非インスリン依存性糖尿病(NIDDM)は、患者がインスリンを産生し、そして高インスリン血症(非糖尿病患者と比べて、同等又は増大した血漿インスリンレベル)すら示す一方で、同時に高血糖を示すことにより特徴付けられる。2型糖尿病は、しばしば、「インスリン抵抗性」を発達させ、そうして主要なインスリン感受性組織、つまり、筋肉、肝臓、及び脂肪組織において、グルコース及び脂質代謝を刺激するインスリンの効果は減少し、そしてこれらの患者は、心血管の合併症、例えば粥状動脈硬化、冠動脈心疾患、脳卒中、末梢血管疾患、高血圧、腎症、神経障害及び網膜症のリスクを増大させる。
【0004】
インスリン抵抗性を有するが、2型糖尿病を発達させていない多くの患者は、メタボリックシンドロームと呼ばれる徴候を発達させるリスクも有する。メタボリックシンドロームは、インスリン抵抗性により特徴付けられており、腹部肥満、高インスリン血症、高血圧、低いHDL及び高いVLDLを伴う。これらの患者は、顕性糖尿病を発達させるか否かに関わらず、心血管合併症を発達させる高いリスクを有する。
【0005】
さらに、疫学的証拠により、肥満は、肝硬変を増加させることが示唆されている。例えば、剖検において、肝硬変患者の12%において、唯一の疾患リスク因子として同定された(Yang,S. Q.ら;1997)。肝硬変は、一般集合に比べて、肥満の人において約6倍も有病率が高い。肥満の度合いは、脂肪肝(steatosis)の有病率及び重篤度と正に相関し、そしてこれは次に脂肪性肝炎と相関する。
【0006】
こうして、肥満及びNIDDM、メタボリックシンドローム、又は非アルコール性脂肪肝疾患などの肥満関連障害を治療する必要性が存在する。
【0007】
肥満の治療に現在用いられている体重減少薬剤は、限られた効力しか有さず、そして重大な副作用を有する。体重減少薬物療法オーリスタット(Davidson MH. et al. 1999)、デクスフェンフルラミン(Guy-Grand、B. et al. 1989)、シブトラミン(Bray, G.
A. et al. 1999)及びフェンテルミン(Douglas, A. et al. 1983)は、偽薬に比べて、約5%〜10%の体重減少である限られた体重減少が示した。しかしながら、これらの薬剤の副作用は、その使用を制限する。例えば、デクスフェンフルラミンは、心臓弁膜症の疑いのため、市場から排除され;オーリスタットは、胃腸管副作用により制限され;トピラメートの使用は、中枢神経系への作用により制限され;そしてシブトラミンの使用は、死亡報告がされ、そしてイタリアにおいて市場からの排除をもたらしたその心血管に対する副作用により制限される。
【0008】
近年の研究により、カンナビノイド1型受容体(CB1)のアンタゴニストは、肥満及び肥満関連障害の治療に有用である可能性があるということが示唆されている。例えば、国際特許公開WO 2005/046689は、肥満及び肥満関連障害の治療又は予防用のピラゾール由来のCB1アンタゴニストを開示する。より具体的に選択的カンナビノイドCB1受容体アンタゴニストであるリモナバン(SR141716)は、肥満の治療について多くの試験が行われた。6000人を超える過体重及び肥満患者に対する4回の臨床試験(リモナバン−肥満(RIO)プログラム)において、リモナバンは、体重減少及び付随する心臓代謝リスクの低下に関して、一貫性のある有効性を示した(Van Gaal LF. et al. 2005; Despres JP. et al. 2005;Pi-Sunyer FX. et al. 2006)。
【0009】
反対に、2型カンナビノイド受容体(CB2)のアンタゴニストを用いて行われた当該対象について利用可能な唯一の試験により、食物摂取又は自発運動に対する効果がないことに基き、肥満及び肥満関連障害について有利な効果を示すという可能性が除外された(Wiley JL et al. 2005;ウィリアムズ CM. et al. 2002)。
【0010】
国際特許出願WO98/31227は、以前、CB2受容体のモジュレーター(アンタゴニスト又はアゴニスト)であると言及されたピラゾール誘導体を記載した。開示されたモジュレーターは、糖尿病を含む免疫学的に媒介された炎症疾患の治療に有用であることが示唆された。しかしながら、CB2受容体のアンタゴニスト又はアゴニストをその治療に用いるべきか特定されておらず、そして提案された適応は単に推測に過ぎなかった。
【0011】
国際特許出願WO2006/105217により、CB2受容体阻害剤が、糖尿病、脳卒中、及び脳虚血の制御において治療有用性を有することが期待されるということが示唆された。しかしながら、これらの治療適応は、単に推測に過ぎなかった。
【0012】
本出願は、CB2受容体が、肥満、インスリン抵抗性、炎症、及び脂肪肝の発達に主要な役割を果たすことを正式に示す。ゆえに、CB2受容体の発現及び/又は活性を妨害することに関与する肥満及び肥満関連障害の治療及び/又は予防の新たな道筋が提供される。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、肥満及び肥満関連障害の治療及び/又は予防を意図した医薬の製造のためのCB2受容体発現及び/又は活性の選択的阻害剤の使用に関する。
【0014】
1の態様では、本発明は、CB2受容体発現の選択的阻害剤を利用する。
【0015】
好ましい実施態様によると、CB2受容体発現の阻害剤は、アンチセンスRNA又はDNA分子、低分子阻害性RNA(siRNA)及びリボザイムからなる群から選ばれる。
【0016】
本発明の別の態様では、阻害剤は、CB2受容体活性(CB2受容体アンタゴニスト)を選択的に拮抗作用する。
【0017】
好ましい実施態様によると、当該CB2受容体アンタゴニストは、有機低分子、CB2受容体遮断抗体の一部又は全体、又は抗体フラグメント、及びアプタマーからなる群から選ばれる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】高脂肪食餌を与えられたWTマウス及びCB2−/−マウスの体重。野生型マウス(n=22)及びCB2−/−マウス(n=10)に、標準食餌又は抗脂肪食餌(HFD)を与えた。体重を毎週計測した。
【図2】15週間にわたる高脂肪食餌(HFD)を与えられたWTマウス及びCB2−/−マウスの平均食餌摂取。
【図3】高脂肪食餌を与えられた7匹のWT及び5匹のCB2−/−動物において、J Softwareを用いて、3の別個の領域から得た少なくとも30の細胞について、脂肪細胞のサイズを定量した。
【図4】高脂肪食餌を与えられたWTマウス(n=7)及びCB2−/−マウス(n=5)における空腹時血中グルコース濃度。WT 対 CB2−/−HFDマウスについて*p<0.07
【図5】高脂肪食餌を与えられたWTマウス(n=7)及びCB2−/−マウス(n=5)における空腹時血中インスリン濃度。WT 対 CB2−/−HFDマウスについて*p<0.06
【図6】高脂肪食餌を与えられたWTマウス(n=7)及びCB2−/−マウス(n=5)における血清レプチンレベル。WT 対 CB2−/−HFDマウスについて*p<0.05
【図7】図7は、対照食餌を与えられたWTマウス及びCB2−/−マウスにおける血清レプチンレベル。WT 対 CB2−/−HFDマウスについて*p<0.05
【図8】図8は、高脂肪食餌の対照食餌を与えられたWT及びCB2−/−マウスにおいて計測された肝臓トリグリセリドを示す。WT 対 CB2−/−HFDマウスについて*p<0.05
【図9】図9は、高脂肪食餌を与えられたWT(n=7)及びCB2−/−マウス(n=5)において、SREBP−1c mRNAの肝臓における発現を示す。WT 対 CB2−/−HFDマウスについて*p<0.05
【図10】15週間にわたり対照及びHFDの下において、WT(n=7)及びCB2−/−(n=5)マウスの脂肪組織及び肝臓におけるCB1及びCB2受容体mRNA発現の分別制御。CB2−/−マウスは、CB2遺伝子を発現しないが、通常のCB1遺伝子発現を示す。予期されたサイズのCB2受容体PCR産物に対応するバンドのbpを、WTマウスの肝臓で同定したが、CB2−/−マウスの肝臓においては同定しなかった。予期されたサイズのCB1受容体PCR産物に対応するバンドのbpは、WT及びCB2−/−マウスの肝臓において同定された。
【図11】図11は、脂肪組織及び肝臓におけるCB2受容体mRNA発現を示す。WT 対 CB2−/−HFDマウスについて*p<0.05、対照食餌のマウスに対してp<0.05
【図12】図12は、脂肪組織及び肝臓におけるCB1受容体mRNA発現を示す。WT 対 CB2−/−HFDマウスについて*p<0.05、対照食餌のマウスに対してp<0.05
【図13】図13は、HFD−を与えたCB2−/−マウスの精巣上体脂肪組織(EAT)における炎症の低下を示す。HFD又は対照食餌を与えられたWT及びCB2−/−マウスにおけるF4/80、TNF−α、及びMCP−1 mRNA発現。WT 対 CB2−/−HFDマウスについて*p<0.05、対照食餌のマウスに対してp<0.05
【図14】図14は、HFD−を与えたCB2−/−マウスにおける炎症の低下を示す。HFD又は対照食餌を与えられたWT及びCB2−/−マウスにおけるF4/80、TNF−α、及びMCP−1 mRNA発現。WT 対 CB2−/−HFDマウスについて*p<0.05、対照食餌のマウスに対してp<0.05
【図15】図15aは、左側のパネルにおいて、5、6、又は8週齢(n=5/群)のやせ型ob+/ob(n=5)及び肥満ob/obマウスにおいて、精巣上体脂肪組織及び対応する体重におけるCB2受容体mRNAの定量を示す。体重を平衡して計測した。肥満HFD−を与えた野生型マウス及びそのやせ型の対応マウスにおいて(*、#:ob/+マウスに対するob/obについて、p<0.05)対照食餌のマウスに対して*p<0.05 図15aは、右のパネルにおいて、脂肪組織の間質脈管画分、及び脂肪細胞画分におけるCB2受容体mRNA発現を示す。CB2受容体mRNAは、脂肪組織のSVFにおいて発現され、そして脂肪細胞画分において検出されない。CB2mRNAを、ob/ob及びob+/obマウスのSVF画分、及び脂肪細胞画分において、並びに未分化(ND)及び分化済み(D)3T3−L1脂肪細胞株において定量された。 図15bは、左側のパネルにおいて、HFD又は対照食餌を与えられたWT及びCB2−/−マウスの精巣上体脂肪におけるマクロファージ関連(F4/80)mRNA発現の定量を示す。 図15bは、中央のパネルにおいて、F4/80の免疫組織学的検出により、精巣上体脂肪に対するマクロファージの浸潤を示す。 図15bは、右側のパネルにおいて、F4/80の免疫組織学的検出に基づき、F4/80染色された細胞/前細胞の定量を示す。 図15cは、やせ型マウスに対するHFDを与えられたWT及びCB2−/−マウスの精巣上体脂肪におけるMCP−1及びTNF−αmRNA発現を示す。
【図16】図16は、17日の治療の後の、CB2アンタゴニストAM630の、精巣上体脂肪炎症遺伝子発現に対する影響を示す。マクロファージ関連F4/80、TNF−α及びMCP−1mRNA発現を、ビヒクル及びAM630治療ob/obマウスにおいて精巣上体脂肪において定量した。AM630又はSR144528ob/obマウスに対してビヒクルについて*p<0.05
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
「コード配列」、つまりRNA、ポリペプチド、タンパク質、又は酵素などの発現産物を「コードする」配列は、発現された際に、RNA、ポリペプチド、タンパク質、又は酵素の生成物をもたらすヌクレオチド配列である。つまり当該ヌクレオチド配列は、当該ポリペプチド、タンパク質又は酵素のアミノ酸配列をコードする。タンパク質のコード配列は、開始コドン(通常ATG)及び停止コドンを含んでもよい。
【0020】
本明細書に使用される場合に、特定のタンパク質(例えばCB2受容体)に対する言及は、天然のアミノ酸配列を有するポリペプチド、並びに調製法や起源に関わらず、バリアント及び修飾型を含むことがある。天然アミノ酸配列を有するタンパク質は、自然界から得られる配列と同じアミノ酸配列を有するタンパク質(CB2受容体)である。かかる天然配列タンパク質は、自然界から単離することができるか、又は標準的な組換え及び/又は合成方法を用いて調製することができる。天然配列タンパク質は、具体的に、天然切り詰め形態又は可溶性形態、天然バリアント形態(例えばオルタナティブスプライシングされた形態)、天然対立遺伝子バリアント及び翻訳後修飾を含む形態を包含する。天然配列タンパク質は、翻訳後修飾、例えばグリコシル化、又はリン酸化、又はいくつかのアミノ酸残基の他の修飾を含む。
【0021】
バリアントは、天然配列タンパク質に機能的に同等であるタンパク質であって、似たようなアミノ酸配列を有し、そしてある程度、天然タンパク質の1又は複数の活性を保持するタンパク質を指す。バリアントは、活性を維持するフラグメントを含む。バリアントは、天然配列に実質的に同一(例えば、80、85、90、95、97、98、99%の配列同一性を有する)であるタンパク質を含む。このようなバリアントは、欠失、挿入、及び/又は置換などのアミノ酸変更を有するタンパク質を含む。「欠失」とは、関連タンパク質において1又は複数のアミノ酸残基が存在しないことを指す。「挿入」とは、関連タンパク質において1又は複数のアミノ酸を追加することを指す。「置換」とは、ポリペプチドにおいて別のアミノ酸残基により、1又は複数のアミノ酸残基を置き換えることを指す。典型的に、このような変更は性質の点で保存的であり、その結果バリアントタンパク質の活性は、天然配列タンパク質に実質的に類似している(例えば、Creighton (1984) Proteins, W.H. Freeman and Company)。置換の場合、他のアミノ酸を置換するアミノ酸は、通常、同様の構造的性質及び/又は化学的性質を有する。挿入及び欠失は、典型的に、1〜5のアミノ酸の範囲であるが、挿入の位置に左右され、より多くのアミノ酸が挿入又は除去されてもよい。バリエーションは、部位特異的変異誘導(Carterら、1985;Nucl. Acids Res. 13:4331; Zoller et al. 1982)、カセット変異誘導(Wells et al. 1985)、及びPCR変異誘導(Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第3版、Cold Spring Harbor Press N.Y., (2001))などの当該技術分野において知られている方法を用いて作成することができる。
【0022】
2つのアミノ酸配列は、80%超、好ましくは85%超、さらに好ましくは90%超のアミノ酸が同一である場合、「実質的に相同」であるか又は「実質的に類似」であり、或いは約90%超、好ましくは95%超は、全長配列にわたり類似(機能的に同一)である。好ましくは、類似又は相同配列は、例えばGCG(Genetics Computer Group, Program Manual for the GCG package, Version 7, Madison, Wisconsin) パイルアッププログラムを用いて、又はBLAST、FASTAなどの配列比較アルゴリズムのいずれかを用いて配列比較することにより同定される。
【0023】
「受容体」又は「受容体分子」は、リガンドが結合して、受容体-リガンド複合体を形成する1又は複数のドメインを含む可溶性若しくは膜結合性/関連タンパク質又は糖タンパク質である。アゴニスト又はアンタゴニストでありうるリガンドを結合することにより、受容体は活性化されるか又は不活性化され、そしてシグナル経路を開始又は遮断しうる。
【0024】
本明細書に使用される場合に、「CB2受容体発現及び/又は活性の選択的阻害剤」という語句は、CB2受容体発現の選択的阻害剤として、及び/又はCB2受容体活性の選択的阻害剤、つまりCB2受容体アンタゴニストとして作用する天然又は合成化合物を指す。
【0025】
「CB2受容体」という語句は、当該技術分野における一般的意味を有し(Pertwee, R. G. 1999)、そして2型カンナビノイド受容体を指す。当該語句は、天然CB2受容体、及びそのバリアント及び改変形態を含みうる。当該語句は、少なくとも1のCB2活性を保持するCB2由来のドメインが、例えば別のポリペプチドに融合される、融合タンパク質を指すこともある(例えば、Hisタグなどのポリペプチドタグが、当該技術分野において慣用されている)。CB2受容体は、任意のソースから得ることができるが、典型的に、哺乳動物(例えば、ヒト及びヒト以外の霊長類)CB2、特にヒトCB2である。代表的な天然CB2アミノ酸配列は、GenPeptデーターベースにおいて、NP_001832の受託番号で提供され、そして代表的な天然CB2ヌクレオチド配列は、NM_001841の受託番号でGenBankにおいて提供される。
【0026】
「発現」という語句は、遺伝子又は核酸の発現の文脈において使用される場合、遺伝子内に含められた情報を遺伝子産物に変換することを指す。遺伝子産物は、遺伝子の直接的な転写産物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造RNA又は他の任意のタイプのRNA)であることもあるし、又はmRNAの翻訳により産生されるタンパク質であってもよい。遺伝子産物は、キャッピング、ポリアデニル化、メチル化、及び編集などの課程により改変されるメッセンジャーRNA、及び例えばメチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、SUMO化、ADPリボシル化、ミリスチル化、及びグリコシル化により改変されるタンパク質(例えばCB2受容体)も含む。
【0027】
「発現の阻害剤」は、天然又は合成の化合物であって、遺伝子発現を阻害又は有意に低下させる生物学的効果を有する天然又は合成化合物を指す。結果として、「CB2受容体発現の阻害剤」は、CB2受容体遺伝子をコードする遺伝子の発現を阻害又は有意に低下させる生物学的効果を有する天然又は合成化合物を指す。
【0028】
「リガンド」又は「受容体リガンド」は、受容体分子に結合して、受容体リガンド複合体を形成する天然又は合成化合物を意味する。リガンドという語句は、アゴニスト、アンタゴニスト、並びに部分的なアゴニスト/アンタゴニスト作用を有する化合物を含む。
【0029】
「受容体アゴニスト」は、受容体に結合して、受容体−アゴニスト複合体を形成し、当該受容体及び受容体−アゴニスト複合体をそれぞれ活性化することにより、シグナル経路及びさらなる生物学的プロセスを開始させる天然又は合成化合物である。選択的CB2受容体アゴニストの例としてJWH133又はAM1241が挙げられる。CB1/CB2受容体アゴニストの混合体である、DELTA−9−THC、WIN55212−2、及びCP55,940について言及されることもある。
【0030】
「受容体アンタゴニスト」は、受容体アゴニストの生物学的効果とは反対の生物学的効果を有する天然又は合成の化合物を意味する。当該語句は、「真の」アンタゴニスト及び受容体の逆アゴニストを区別なく指すために使用される。真の受容体アンタゴニストは、受容体に結合し、そして受容体の生物的活性化をブロックし、それにより例えば、当該受容体に対するアゴニストと競合することにより受容体アゴニストの作用をブロックする化合物である。逆アゴニストは、アゴニストと同一の受容体に結合するが、逆の効果を発揮する化合物である。逆アゴニストは、アゴニストの不存在下において受容体活性の構成的レベルを低減する能力を有する。
【0031】
「CB2受容体アンタゴニスト」は、本技術分野において現在知られているか、又は将来同定される任意のCB2受容体アンタゴニスト(真のアンタゴニスト又は逆アゴニスト)を指し、そして患者に投与された際に、患者におけるCB2受容体の活性化と関連する生物学的活性、例えば、アンタゴニストがなければその天然リガンドのCB2受容体への結合から生じる下流の任意の生物学的効果、の抑制又は下方制御をもたらす任意の化学物質を含む。かかるCB2受容体アンタゴニストは、CB2受容体活性化の下流の任意の生物学的効果又はCB2受容体活性化を遮断できる任意の薬剤を含む。例えば、かかるCB2受容体アンタゴニストは、CB2受容体のリガンド結合部位又はその一部を占めることにより作用することができ、それによりその天然リガンドが受容体に接近できなくし、その結果通常の生物学的活性が妨げられるか又は低減される。
【0032】
本発明の文脈では、CB2受容体アンタゴニストは、CB1受容体と比較して、CB2受容体に対して選択的である。「選択的」により、CB2受容体に対するアンタゴニストの親和性は、CB1受容体に対する親和性よりも、少なくとも10倍、好ましくは25倍、より好ましくは100倍、さらに好ましくは300倍高い。
【0033】
CB1(又はCB2)受容体に対するアンタゴニストの親和性は、用量応答曲線を作成するために、当該アンタゴニストの濃度範囲の存在下におけるCB1(又はCB2)の活性を計測することにより定量することができる。当該用量応答曲線からは、IC50値が推定される。当該値は、規定濃度のアゴニスト(例えば、CP55,930では3nM又はそれ未満)に対する応答の50%を阻害するために必要なアンタゴニストの濃度を表す。IC50値は、De Leanら(1979)により記載されるように用量−応答プロットを用量応答式に適合させることにより、当業者が容易に測定できる。IC50値は、Cheng and Prusoff(1973)の推定を用いて、親和定数(Ki)に変換することができる。
【0034】
したがって、CB2受容体アンタゴニストは、以下のアッセイのうちの1を用いて計測された場合に、(i)Ki CB1:Ki CB2及び(ii)IC50 CB1:IC50 CB2の比のうちの少なくとも1が、10:1、好ましくは25:1、より好ましくは100:1、さらに好ましくは300:1を超える化合物である。
【0035】
CB1及びCB2に対する化合物のアンタゴニスト活性は、様々な方法を用いて決定されてもよい。例えば、CB1/CB2受容体アゴニスト(DELTA−9−THC、WIN 55212−2又はCP55,940)が、Forskolinにより誘導されるアデニルシクラーゼ活性を阻害できるということが知られている。こうして、CB1及びCB2受容体に対するアンタゴニストの親和性は、cAMP計測アッセイにおいて、CB1/CB2受容体アゴニストの効果をブロックする当該アンタゴニストの能力を決定することにより、アッセイされることもある。
【0036】
具体的に、cAMP蓄積計測アッセイは、Matsudaら(1990)及びRinaldi-Carmonaら(1996)を考慮して、Rinaldi-Carmonaら(1998)において記載された。簡潔に記載すると、CB1又はCB2を安定的に形質転換されたCHO細胞を、コンフルエントになるまで増殖させ、PBSで洗浄し、そして37℃で15分間、3nMのCP 55,940、又はアッセイ対象のアンタゴニスト(例えば、10-9〜10-6M)、又は3nMのCP 55,940+アッセイ対象のアンタゴニスト(例えば10-9〜10-5M)の存在下又は非存在下で1mlのPBS(0.25%アシッドフリーBSA、0.1mM IBMX、0.2mMのRO20−1724を含む)中でインキュベートした。フォルスコリン(Forskolin)(終濃度3μM)を加え、そして細胞をさらに20分間37℃でインキュベートした。アッセイ培地を迅速に吸引し、そして1.5mlの氷冷50mM Tris−HCl(pH8)、4mMのエチレンジアミン四酢酸を加えることにより反応を止めた。ディッシュを5分間氷上に静置し、次に抽出物をガラスチューブに移した。抽出物をボイルし、そして10分間3500gで遠心して、細胞破砕物を除去した。一定量の上清を乾燥させ、そしてcAMP濃度を、任意の適切な方法に従い測定する。当業者は、特に、cAMP計測に利用できる多くの市販キットのうちの1つを利用することもある。ベース活性を、フォルスコリンが存在しない状態で計測する。
【0037】
代わりに、結合アッセイが使用されてもよい。特に、トリチウム化されたCB1/CB2アゴニストを用いた結合アッセイが、ラット前脳膜から調製された膜(CB1)又は凍結マウス脾臓から調製された膜上で行われてもよい。米国特許明細書US2006030563に記載されるアッセイを参照することができる。
【0038】
簡潔に記載すると、CB1及びCB2受容体結合試験に用いる膜は、Doddら(1981)に記載されるように調製される。Devaneら(1988)及びCharalambousら(1992)から、以下の変更点を伴って適合させた以下のプロトコル方法に従って、CB1及びCB2結合アッセイは行われる。-80℃で凍結された膜を氷上で融解させる。3体積のTME(25mM Tris-HCl緩衝液、5mMのMgCl2、及び1mMのEDTA)pH7.3を加える。懸濁液を4℃で30分間インキュベートする。インキュベーションの終わりに、膜をペレット化し、そしてTMEで3回洗浄する。
【0039】
融解した膜を、続いて結合アッセイに用いる:約30μgの膜を滅菌96ウェルマイクロタイタープレートにおいて、0.1%必須脂肪酸フリーウシ血清アルブミン(BSA)、0.8nM[3H]CP−55,940、及び様々な濃度のアンタゴニストを含むTMEと30℃で1時間インキュベートする。Packard Filtermate 196及びWhatman GF/Cフィルタープレートを用いてサンプルをろ過し、そして洗浄緩衝液(0.5%BSAを含有するTME)で洗浄した。放射活性を、任意の適切な方法に従って検出する。非特異的結合を、100nM CP−55,940を用いてアッセイする。集めたデータを、[3H]CP−55,940に対する100%〜0%の特異的結合性で正規化し、緩衝液と100nMnoCP−55,940を用いて測定した。4-パラメーターの非線形ロジスティック方程式を用いて正規化されたデータを分析して、IC50を生成し、Cheng et Prusoff (1973)の推定を用いてKi値に変換する。
【0040】
「有機低分子」という語句は、医薬において一般的に用いられる有機分子に比べて小さいサイズの分子を指す。当該語句は、生体マクロ分子(例えばタンパク質、核酸など)を除外する。好ましい有機低分子は、最大約5000Da、より好ましくは最大2000Da、そして最も好ましくは最大約1000Daのサイズ範囲である。
【0041】
「精製」及び「単離」は、ポリペプチド又はヌクレオチド配列について言及する場合、指定された分子が、同じタイプの他の生体マクロ分子が実質的に存在しない状態で存在することを意味する。本明細書に使用される「精製」という語句は、好ましくは、少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、さらに好ましくは少なくとも95重量%、そして最も好ましくは少なくとも98重量%の同じタイプの生体マクロ分子が存在するということを意味する。特定のポリペプチドをコードする単離された核酸分子は、対象ポリペプチドをコードしていない他の核酸分子が実質的に存在していない核酸分子を指すが;当該分子は、組成物の基本的な特徴に有害な影響を与えないいくらかの追加塩基又は部分を含んでもよい。
【0042】
本明細書において使用される場合に、「対象」という語句は、哺乳動物、例えばげっ歯類、ネコ、イヌ、及び霊長類を指す。好ましくは、本発明に従った対象は、ヒトである。
【0043】
「肥満」という語句は、体脂肪の過剰により特徴付けられる状態を指す。肥満の医療上の定義は、肥満度指数(BMI)に基づいており、これは身長の2乗あたりの体重(kg/m2)として計算される。肥満は、その他の点では健常な対象が、30kg/m2又はそれ以上のBMIを有する状態、又は少なくとも1の並存疾患を有する対象が、27kg/m2又はそれ以上のBMIを有する状態を指す。「肥満対象」は、30kg/m2またはそれ以上のBMIを有するその他の点で健常な対象、又は27kg/m2又はそれ以上のBMIを有する少なくとも1の並存疾患を有する対象である。「肥満のリスクを有する対象」は、25kg/m2〜30kg/m2のBMIを有するその他の点で健常な健常対象、又は25kg/m2〜27kg/m2のBMIを有する少なくとも1の並存疾患を有する対象である。肥満に付随するリスクの増加は、アジア人系の人においてより低いBMIで生じることもある。日本を含むアジア及びアジア太平洋圏では、「肥満」は、少なくとも1の肥満誘導性又は肥満関連の並存疾患であって、体重減少を必要とするか、又は体重減少により改善される並存疾患を患う対象が、25kg/m2又はそれ以上のBMIを有する状態を指す。これらの国々では、「肥満のリスクを有する対象」は、23kg/m2〜25kg/m2のBMIを有する人である。
【0044】
「肥満関連障害」という語句は、肥満に関連する障害、肥満により引き起こされる障害、又は肥満から生じる障害を包含する。肥満関連障害の例として、過食及び過食症、糖尿病、高血圧、血漿インスリン濃度の上昇及びインスリン抵抗性、脂質代謝異常、高脂血症、乳癌、前立腺癌、子宮内膜癌及び結腸癌、心疾患、心血管障害、異常な心臓リズム及び不整脈、心筋梗塞、うっ血性心不全、冠動脈心疾患、狭心症、脳梗塞、脳血栓及び一過性脳虚血発作が挙げられる。他の例として、代謝活性の低下又は合計除脂肪体重の割合としての静止エネルギー消費の低下を示す病理学的条件を含む。肥満関連障害の更なる例として、シンドロームXとして知られているメタボリックシンドローム、インスリン抵抗性症候群、II型糖尿病、空腹時血中ブドウ糖不良、耐糖能障害、炎症、例えば脈管構造の全身性炎症、粥状動脈硬化、高コレステロール血症、高尿酸結晶、並びに肥満の二次的な結果、例えば左室肥大などが挙げられる。肥満関連障害は、脂肪肝又は非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFDL)などの肥満と関連する肝臓異常、肥満及びメタボリックシンドロームに関連する肝硬変の原因の上昇を含む。実際、NAFLDは、単純な脂肪肝として存在するか、又は炎症及び脂肪性肝炎(NASH)に進行することがあり、20年後に肝硬変になる20%のリスクを有する。「脂質代謝異常」は、冠動脈心疾患(CHD)の主要なリスク因子である。通常のレベル又は高いレベルの低密度(LDL)コレステロールと、高密度リポタンパク質(HDL)コレステロール低い血漿レベルは、ヒトにおいて粥状動脈硬化及び付随する冠動脈疾患を発達させるかなりのリスク因子である。脂質代謝異常は、しばしば肥満に随伴する。
【0045】
「メタボリックシンドローム」と云う語句、つまりシンドロームXは、本明細書に使用される際に以下の症状:腹部肥満、高グリセリド血漿、低HDLコレステロール、高血圧、及び高い空腹時血糖値のうちの3つ以上を有する場合に存在する。これらの症状の基準は、the third Report of the National Cholesterol Education Program Expert Panel in Detection, Evaluation and Treatment of High blood Cholesterol in Adults (Ford, ES. et al. 2002)において定義された。
【0046】
「II型糖尿病」という語句、つまり「インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)」は、当該技術分野における一般的な意味を有する。II型糖尿病は、インスリンレベルが通常であるか、又は高く、かつインスリンに対して組織が適切に応答することができないことから生じるようである。多くのII型糖尿病の患者の多くは、肥満体である。
【0047】
「NAFLD」という語句は、非アルコール性脂肪肝疾患を指す。NAFLDは、相当量のアルコールを摂取していない人において生じるアルコール誘導性肝臓疾患の組織的特徴を有する障害である。NAFLDは、単純な脂肪変性(肝臓への脂肪の蓄積として定義される)として存在することもあるし、又は炎症及び脂肪性肝炎(NASH)を発達させることもあり、20年後に、20%の肝硬変リスクを有する。「NASH」という語句は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を指す。NASHは、アルコール性肝炎に似ている肝細胞損傷及び炎症により組織学的に特徴付けられる、病因が未知の肝臓の進行性疾患である。NASHは、線維症、肝硬変、及び肝不全に進行するリスクのため、進行における臨界状態である。高脂血症、肥満及び2型糖尿病の徴候を伴うか、又は伴わない高血糖は、一般的にNAFLDを伴い、そして誘発条件である。近年の報告により、NAFLDが、もともと疑われているよりもより一般的であり、そしてこの障害の典型的リスク因子を有さない個人も罹患しうると言うことが報告された。肥満及び2型糖尿病の有病率が増加しているので、NAFLDの有病率は、増加することが予測され、その結果、この疾患は、新たな公衆問題になってきている(Reid AE.2001)。
【0048】
好ましい肥満関連障害は、特に脂質代謝異常、インスリン非依存性糖尿病、インスリン抵抗性、内臓脂肪症候群、冠動脈心疾患、粥状動脈硬化及び非アルコール性脂肪性肝疾患からなる群から選ばれてもよい。
【0049】
好ましい肥満及び肥満関連疾患は、遺伝的起源ではない。特に、過食、高脂肪食、及び/又は高血糖性の食事により誘導される肥満及び肥満関連疾患が好ましくは考慮される。
【0050】
その最も広い意味で、「治療する」又は「治療」という語句は、このような語句が適用される障害又は状態、又はかかる障害又は状態の1又は複数の徴候の回復、軽減、進行の抑制、又は予防を指す。
【0051】
特に、肥満及び肥満関連障害の「治療」は、肥満対象の体重を低減又は維持するために、本発明の化合物又は組み合わせを投与することを指す。1の治療結果は、本発明の化合物の投与直前の対象の体重に対して、肥満対象の体重を低減することである。別の治療結果は、ダイエット、運動、又は薬物治療の結果としてすでに生じた体重減少の体重のリバウンドを予防することであってもよい。別の治療結果は、肥満関連疾患の発症及び/又は重篤度を低減することであってもよい。別の治療結果は、体重減少を維持することでもある。
【0052】
特に、肥満及び肥満関連障害の「予防」は、肥満のリスクを有する対象の体重を低減又は維持するために、本発明の化合物を投与することである。1の予防結果は、本発明の化合物の投与直前の対象の体重に対して、肥満のリスクを有する対象の体重を低減することであってもよい。予防の別の結果は、ダイエット、運動、又は薬物治療の結果としてすでに生じた体重減少のリバウンドを予防することであってもよい。別の予防結果は、肥満のリスクを有する対象において肥満の開始前に治療が投与される場合に、発症から肥満を予防することであってもよい。予防の別の結果は、治療が肥満のリスクを有する対象において肥満の開始前に投与される場合に、肥満関連障害の発症及び/又は重篤度を低減することであってもよい。別の予防の結果は、体重増加に対する抵抗性を延長することであってもよい。さらに、すでに肥満対象において治療が開始された場合、このような治療は、肥満関連障害の発症、進行、又は重篤化を予防することであってもよい。
【0053】
「医薬として」又は「医薬として許容される」という語句は、哺乳動物、特にヒトに適宜投与された場合に、有害、アレルギー性、又は他の厄介な反応を産生することはない分子実体及び組成物を指す。医薬として許容される担体又は賦形剤は、任意のタイプの非毒性の固体、半固体、又は液体フィラー、充填剤、封入物質又は製剤補助剤を指す。
【0054】
治療法及び用途
本発明は、肥満及び/又は肥満関連障害を治療するための方法及び組成物(例えば、医薬組成物)を提供する。
【0055】
こうして、本発明の対象は、肥満及び/又は肥満関連障害を治療することを意図した医薬の製造のためのCB2受容体発現及び/又は活性の選択的阻害剤の使用である。
【0056】
第一態様によると、本発明は、CB2受容体活性の選択的阻害剤(以後、CB2受容体アンタゴニストと呼ぶ)の使用に関する。
【0057】
1の実施態様では、CB2受容体アンタゴニストは、低分子量アンタゴニスト、例えば有機低分子であってもよい。
【0058】
本発明により使用されうる小さい有機性CB2受容体アンタゴニストは、Barth Fら(1999)において総説されるアンタゴニストにより使用されてもよい。
【0059】
本発明にしたがって使用することができる小さい有機性CB2受容体アンタゴニストの具体的な例は、Hosohata Yら(1997)により記載されたAM630であり、そして以下の式(I):
【化1】
で表される構造を有する。
【0060】
本発明にしたがって使用することができる小さい有機性CB2受容体アンタゴニストの別な例は、Iwamuraら(1997)により記載されたJTE−907であり、そして以下の式(II):
【化2】
で表される構造を有する。
【0061】
CB2受容体に対して親和性及び選択性を有するピラゾール構造を有するさらなる化合物は、略称SR144528(M. Rinaldi-Carmona et al., 1998)で知られている化合物であり、この構造は式(III):
【化3】
で報告されている。
【0062】
国際特許公開WO01/32629号は、CB2受容体アンタゴニスト、その製法、及びそれらを含む医薬組成物を記載する。これらの化合物は、本明細書に援用される。本発明の文脈において使用されうるこれらの化合物は、1−ベンジルピラゾール-3-カルボン酸の三環系誘導体であり、そして以下の一般式(IV):
【化4】
[式中、
Xは、-(CH2)n-基を表し;
nは、1又は2であり;
g2、g3、g4、g5、w2、w3、w4、w5、w6は、同一であるか又は異なっており、そして独立して水素、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、(C1−C4)アルキル、(C1−C4)アルコキシ、(C1−C4)アルキルチオ、ニトロを表し;そして
R1は、(C1−C4)アルキルで1又は数回置換されるか、又は置換されない非芳香族C3−C15カルボン酸ラジカルを表す]
で表される構造を有する。当該化合物の医薬として許容されるその塩又は溶媒和物も含まれる。
【0063】
CB2受容体アンタゴニストの他の具体的な例として、国際特許公開WO 97/21682に記載される化合物が挙げられ、そして当該化合物は本明細書に援用される。これらの化合物は、以下の式(V):
【化5】
[式中、
X1は、−NR1R2基又は-OR基であり;
g2、g3、g4、g5、g6及びw2、w3、w4、w5、w6は同一であるか又は異なっており、そして各々独立して水素、ハロゲン原子、(C1−C4)アルキル、(C1−C4)アルコキシ、トリフルオロメチル、ニトロ、又は(C1−C4)アルキルチオであり、ただし、置換基g2、g3、g4、g5、g6のうちの少なくとも1、及び置換基W2、W3、W4、W5、W6のうちの少なくとも1が、水素以外であり;
R1が、水素又は(C1−C4)アルキルであり;
R2が、置換されないか、ハロゲン原子、(C1−C4)アルキル及び(C1-C4)アルコキシから選ばれる置換基により1置換又は多置換される非芳香族(C3−C15)カルボン酸ラジカルであり;
R3が、水素又は-CH2R6であり;
R4及びR5が、各々独立して水素、(C1−C4)アルキル又はトリフルオロメチルであるか;
又はR4は水素であり、かつR5とw6は一緒にエチレン又はトリメチレンラジカルを構成し;そして
R6は、水素、又は置換基g2、g3、g4、g5及び/又はg6が、(C1−C4)アルキル、R6が水素、(C1−C4)アルキル、フッ素、ヒドロキシル、(C1−C5)アルコキシ、(C1−C5)アルキルチオ、ヒドロキシ(C1−C5)アルコキシ、シアノ、(C1−C5)アルキルスルフィニル、又は(C1−C5)アルキルスルホニルである]
で表される化合物、又はその塩を含む。
【0064】
CB2受容体アンタゴニストは、国際特許公開WO 98/31227に記載された。したがって、使用は、式(VI):
【化6】
[式中、
R1は、OCH3、Br、イソプロピル、又はArであり;
R2は、H、OH、(C1−C5)アルコキシ、(C1−C5)アルキル、N(R5)2、NO2、Br、F、I、Cl、CF3、又はX(C(R5)2)OR5であり;
R3は、水素、(CH2)nXR5、C(O)R5、CO2R5、CON(R5)2、オキサジアゾリル、又はチアジアゾリルである。
複素環の各々は、置換されないか、又は1若しくは2の(C1−C3)アルキル又はフルオロアルキル基により置換され;
R4は、モルフォニル、ピペラジニル、又はピペリジニルであり、各部分は置換されないか、又は1若しくは2の(C1−C5)アルキル、OH、NO2又はN(R5)2基により置換され;
R5は、水素又は(C1−C8)アルキルであり;
XがO又はNR5であり;
Arが、フェニル、アンスラセニル、ナフチル、インドリル、ピリジニル、チオフェニル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イミダゾリル、オキサジアゾリル、ピロリル、フェニル、アンスラセニル、ナフチル、インドリル、ピリジニル、チオフェニル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イミダゾリル、オキサジアゾリル、ピロリル又はピリミジニルであり;各部分は、置換されていないか、又は1若しくは2のZ基により置換され;
Zは、H、OH、CO2R5、(C1−C10)アルコキシ、(C1−C5)アルキル、N(R5)2、NO2、Br、F、I、Cl、CF3、又はX(CH2)nOR5であり;そして
nは1〜6である]
で表される化合物、又は医薬として許容されるその塩から作成されうる。ただし、nが1である場合、X(CH2)nOR5においてR5が水素ではない。
【0065】
CB2受容体アンタゴニストが、式(VI)を有する場合、当該肥満関連障害は、免疫学的に媒介される炎症疾患ではなく、特に糖尿病、具体的にはI型糖尿病ではない。
【0066】
別の実施態様では、CB2受容体アンタゴニストは、抗体若しくは抗体フラグメントであって、部分的又は完全にCB2活性を遮断することができるもの(つまり、CB2受容体遮断性の部分又は完全な抗体又は抗体フラグメント)からなることもある。
【0067】
具体的に、当該抗体は、CB2リガンドの当該受容体への結合を損なう様式であり、CB2受容体アンタゴニストは、CB2受容体に対する抗体からなることもある。
【0068】
CB2受容体に対する抗体は、他のものの中からとりわけ、ブタ、ウシ、ウマ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、及びマウスから選ばれる宿主動物に対して、適切な抗原又はエピトープを投与することにより、既知の方法に従い生じうる。当該技術分野において知られている様々なアジュバントは、抗体産生を高めるために使用することができる。本発明を実施するのに有用な抗体はポリクローナル抗体であってもよいが、モノクローナル抗体が好ましい。CB2受容体に対するモノクローナル抗体又はCB2受容体のリガンドは、培養物中において連続的に細胞株を培養することにより、抗体分子を産生がもたらされる任意の技術を用いて、調製し、そして単離することができる。産生及び単離技術は、Kohler及びMilstein(1975)により初めて記載されたハイブリドーマ技術;ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Cote ら、1983)、EBV−ハイブリドーマ技術(Coleら、1985)を含むがこれらに限られない。或いは、抗CB2、又は抗CB2リガンド一本鎖抗体を産生するために、一本鎖抗体を産生するために記載された技術(例えば米国特許4,946,778号を参照のこと)が適用される。本発明を実施するのに有用であるCB2受容体アンタゴニストは、抗−CB2、抗CB2リガンド抗体フラグメントであって、無傷の抗体分子のペプシン切断により作成することができるF(ab’)2フラグメント、及びF(ab’)2フラグメントのジスルフィド結合を還元することにより作成できるFabフラグメントを含むがこれらに限られるものではないフラグメントを含む。或いは、Fab及び/又はscFv発現ライブラリーは、CB2受容体に対して所望の特異性を有するフラグメントを迅速に同定することを可能にするように構築することができる。
【0069】
ヒト化された抗CB2又は抗CB2リガンド抗体、及びそれから得られる抗体フラグメントは、既知の技術にしたがって製造することができる。「ヒト化抗体」は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含む非ヒト(例えばげっ歯類)キメラ抗体の形態である。多くの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域(CDR)に由来する残基が、非ヒト生物種(ドナー抗体)、例えばマウス、ラット、ウサギ、又はヒト以外の霊長類由来の抗体であって、所望の特異性、親和性、及びキャパシティを有する抗体の超可変領域由来の残基により置換される、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。幾つかの場合、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基により置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体又はドナー抗体中で見られない残基を含んでもよい。これらの改変は、抗体性能を高めるために行われる。一般的に、ヒト化抗体は、少なくとも1、そして典型的には2の可変ドメインの実質的に全てを含み、ここで全て又は実質的に全ての超可変ループは、非ヒト免疫グロブリン及び全部又は実質的に全部のFRは、ヒト免疫グロブリン配列を含みうる。ヒト化抗体は、場合により、典型的には、ヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも1部を含む。ヒト化抗体を製造する方法は、Winter(米国特許第5,225,539号)により、そしてBoss(Celltech、米国特許第4,816,397号)により記載される。
【0070】
さらに別の実施態様では、使用は、アプタマーから作られることもある。
【0071】
アプタマーは、分子認識の点で、抗体の代替物を表す分子のクラスである。アプタマーは、高い親和性及び特異性で、標的分子の任意のクラスを実際に認識する能力を有するオリゴヌクレオチド又はオリゴペプチドである。かかるリガンドは、Tuerk C.及びGold L., 1990に記載されるように、ランダムシーケンスライブラリーの指数濃縮による、リガンドの系統的進化(SELEX)を通して単離されることもある。ランダム配列ライブラリーは、DNAのコンビナトリアル化学合成により得ることができる。このライブラリーでは、各メンバーは、最終的に化学的に改変された固有の配列を有する直鎖オリゴマーである。このクラスの分子の潜在的な改変、使用、及び利点は、Jayasena S.D., 1999に総説された。ペプチドアプタマーは、プロットホームタンパク質、例えばツーハイブリッド法(Colasら、1996)によりコンビナトリアルライブラリーから選ばれるE.ColiチオレドキシンA
、により表示された立体構造的に制約のある抗体可変領域からなる。
【0072】
本発明の別の態様は、CB2受容体発現の選択的阻害剤を使用することに関する。
【0073】
こうして、本発明は、肥満及び肥満関連障害を治療及び/又は予防することを意図された医薬の製造のための、CB2受容体発現の選択的阻害剤を使用することを提供する。
【0074】
CB1受容体配列とCB2受容体配列が低い配列同一性を示す場合、本発明にしたがって使用されうるCB2受容体発現の阻害剤は、有利にCB1受容体発現と比べることにより、CB2受容体発現の選択的阻害を提供する。
【0075】
本発明において使用するためのCB2受容体発現の阻害剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチドコンストラクトに基づいてもよい。アンチセンスRNA分子及びアンチセンスDNA分子を含めたアンチセンスオリゴヌクレオチドは、CB2受容体mRNAに結合することによりCB2受容体mRNAの翻訳を直接遮断し、そうしてタンパク質翻訳を予防し、又はmRNA崩壊を増加させ、そうしてCB2受容体のレベルを低下させるように作用し、そうして細胞において活性を阻害する。例えば、少なくとも約15塩基であり、そしてCB2受容体をコードするmRNA転写配列の固有領域に対して相補的であるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、慣用のホスホジエステル技術により合成され、そして静脈内注射又は輸液により投与される。その配列が当該技術分野において知られている遺伝子の遺伝子発現を特異的に阻害するアンチセンス技術を用いる方法は、周知である(米国特許第6,566,135号;第6,566,131号;第6,365,354号;第6,410,323号;6,107,091号;第6,046,321号;及び第5,981,732号)。
【0076】
低分子阻害性RNA(siRNA)は、本発明において使用するためのCB2受容体発現の阻害剤として機能することができる。CB2受容体発現は、対象又は細胞を、低分子二本鎖RNA(dsRNA)、低分子二本鎖RNAの産生を引き起こすことができるベクター若しくはコンストラクトと接触させることにより低減することができ、その結果CB2受容体発現は、特異的に阻害される(つまり、RNA干渉、つまりRNAi)。適切なdsRNA又はdsRNAをコードするベクターを選択する方法は、その配列が知られている遺伝子について、当該技術分野において周知である(例えば、Tuschi, T et al (1999); Elbashir, S. M. et al. (2001); Hannon, GJ (2002); McManus, MT. Et al. (2002); Brummelkamp, TR. Et al. (2002); 米国特許第6,573,099号及び第6,506,559号;及び国際特許公開第WO 01/36646号、第WO 99/32619号、及びWO01/68836号)。
【0077】
リボザイムは、本発明において使用するCB2受容体発現の阻害剤として機能することができる。リボザイムは、RNAの特異的切断を触媒できる酵素的なRNA分子である。リボザイム作用のメカニズムは、相補的標的RNAに対してリボザイム分子が配列特異的にハイブリダイゼーションし、続いてエンドヌクレアーゼ的に切断することに関する。遺伝子操作されたヘアピン又はハンマーヘッドモチーフのリボザイム分子であって、CB2受容体mRNA配列のエンドヌクレアーゼ的切断を特異的かつ効果的に触媒できる分子は、その結果、本発明の範囲において有用である。任意のRNA標的内にある特異的リボザイム切断部位は、標的分子をリボザイム切断部位についてスキャンすることによりまず同定され、当該切断部位は典型的に、以下の配列:GUA、GUU、及びGUCを含む。ひとたび同定された場合、切断部位を含む標的遺伝子の領域に対応する約15〜20リボヌクレオチド短いRNA配列は、オリゴヌクレオチド配列を不適切なものにしうる予測された構造的特徴、例えば二次構造について評価することができる。候補標的の適切性は、例えばリボヌクレアーゼ保護アッセイを用いることにより相補的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションに対するアクセス容易性を試験することにより評価することができる。
【0078】
CB2受容体発現の阻害剤として有用であるアンチセンスオリゴペプチド及びリボザイムの両方が、既知の方法により調製できる。これらは、固相ホスホールアミダイト化学合成などによる化学合成技術を含む。或いは、アンチセンスRNA分子は、当該RNA分子をコードするDNA配列のin vitro又はin vivo転写により作成することもできる。このようなDNA配列は、T7又はSP6ポリメラーゼプロモーターなどの適切なRNAポリメラーゼプロモーターを包含する様々なベクターに取り込むことができる。本発明のオリゴヌクレオチドに対する様々な改変は、細胞内安定性及び半減期を増加させる手段として誘導することができる。可能な改変として、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドのフランキング配列を、当該分子の5’及び/又は3’末端に添加すること、又はオリゴヌクレオチド骨格内のホスホジエステル結合の代わりにホスホロチオエート又は2’−O−メチルを使用することが挙げられるが、それらに限られるものではない。
【0079】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドsiRNA及びリボザイムは、in vivoで単独でデリバリーされてもよいし、又はベクターと併せてデリバリーされてもよい。最も広い意味で、「ベクター」は、アンチセンスオリゴヌクレオチドsiRNA又はリボザイム核酸を細胞に、そして好ましくはCB2受容体を発現している細胞に輸送することを促進することができる任意のビヒクルである。好ましくは、ベクターは、ベクターが存在しない場合に生じる分解の程度に比べて、低い分解性で、細胞に核酸を輸送する。一般的に、本発明において有用なベクターとして、プラスミド、ファージミド、ウイルス、他のビヒクルであって、アンチセンスオリゴヌクレオチドsiRNA又はリボザイム核酸配列の挿入又は取り込みにより操作されたウイルス又は細菌起源由来の他のビヒクルが挙げられるが、それらに限られるものではない。ウイルスベクターは、好ましいタイプのベクターであり、そして以下のウイルス:レトロウイルス、例えばモロニーマウス白血病ウイルス、ハーベイマウス肉腫ウイルス、マウスの乳房腫瘍ウイルス、及びラウス肉腫ウイルス;アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス;SV40型ウイルス;ポリオーマウイルス;エプスタイン・バーウイルス;パピローマウイルス;ヘルペスウイルス;ワクシニアウイルス;ポリオウイルス;及びRNAウイルス、例えばレトロウイルスが挙げられる。当業者は、名づけられていないが、当該分野に知られている他のベクターを容易に使用することができる。
【0080】
好ましいウイルスベクターは、非必須遺伝子が目的の遺伝子と置き変えられた非細胞変性性の真核ウイルスに基づいている。非細胞変性ウイルスは、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)を含み、そのライフサイクルは、ゲノムウイルスRNAをDNAに逆転写し、続いて宿主細胞DNAにプロウイルス統合することに関する。レトロウイルスは、ヒト遺伝子治療治験で承認されてきている。最も有用なものは、複製欠損であるレトロウイルスである(つまり、所望のタンパク質を直接合成することができるが、感染粒子を製造することができない)。かかる遺伝的に改変されたレトロウイルス発現ベクターは、in vivoにおいて、遺伝子の高頻度形質導入に一般的に有用性を有する。外来性遺伝物質をプラスミドに取り込み、パッケージ細胞株にプラスミドをトランスフェクトし、細胞株をパッケージングすることにより組換えレトロウイルスを産生させ、組織培養培地からウイルス粒子を回収し、そして標的細胞をウイルス粒子で感染させることを含む複製欠損レトロウイルスを生産する標準的なプロトコルが、Kriegler, 1990及びMurry, 1991に提供される。
【0081】
ある適用に用いられる好ましいウイルスは、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルスであり、これらは遺伝子治療においてヒトに使用するために承認された二本鎖DNAウイルスである。アデノ随伴ウイルスは、複製欠損製であるように遺伝子操作され、そして幅広い細胞型及び種に感染できる。当該ウイルスは、熱及び脂質溶媒安定性;様々な細胞株、例えば造血細胞における形質導入頻度;及び重複感染阻害の欠如、こうして、複数回の形質導入を可能にするといった利点をさらに有する。報告によると、アデノ随伴ウイルスは、部位特異的な様式でヒト細胞DNAに組み込むことができ、それにより挿入変異誘導の可能性、及びレトロウイルス感染の挿入された遺伝子発現の特徴である変動性を最小限にすることができる。さらに、野生型アデノ随伴ウイルス感染は、選択圧が存在しない状態で、100回の継代を超えて組織培養がされ、アデノ随伴ウイルスゲノムの組み込みは、比較的安定な事象であることを示唆した。当該アデノ随伴ウイルスは、染色体外の様式でも機能することができる。
【0082】
他のベクターは、プラスミドベクターを含む。プラスミドベクターは、当該技術分野において詳しく記載されてきており、そして当業者に周知である。例えば、Sambrook et al., 1989を参照のこと。ここ数年では、プラスミドベクターが、in vivoで細胞に抗原をコードする遺伝子をデリバリーするためのDNAワクチンとして使用された。これらは、特に、ウイルスベクターの多くが有するものと同じ安全性についての懸念を有しないので、特に有用である。しかしながら、宿主細胞に適合しているプロモーターを有するこれらのプラスミドは、プラスミド内に作用可能なようにエンコードされた遺伝子からペプチドを発現することができる。幾つかの一般的に使用されるプラスミドは、pBR322、pUC18、pUC19、pRC/CMV、SV40、及びpBlueScriptを含む。他のプラスミドも当業者に周知である。さらに、プラスミドは、制限酵素とライゲーション反応を用いて、特定のDNA断片を除去及び添加するようにカスタム設計される場合もある。プラスミドは、様々な非経口、粘膜、及び局所経路によりデリバリーされることもある。例えば、DNAプラスミドは、筋肉内、皮内、皮下、又は他の経路により注射できる。DNAプラスミドは、鼻孔内スプレー又は点鼻、直腸座剤、及び経口的に投与されてもよい。DNAプラスミドは、遺伝子銃を用いて表皮又は粘膜表面に投与されてもよい。プラスミドは、水溶液内に与えられてもよいし、金粒子上に乾燥されるか、又は別のDNAデリバリー系、例えば非限定的にリポソーム、デンドリマー、コクレート(cochleate)及びマイクロ封入と組み合されてもよい。
【0083】
本発明の別の対象は、上に記載されるように、CB2発現及び/又は活性の選択的阻害剤を、それを必要とする対象に投与することを含む、肥満及び/又は肥満関連障害を治療及び/又は予防する方法に関する。
【0084】
CB2受容体活性及び/又は発現の選択的阻害剤は、以下に定義されるように医薬組成物の形態で投与されてもよい。
【0085】
好ましくは、当該阻害剤は、治療有効量で投与される。
【0086】
「治療有効量」という言葉は、任意の医療に適用できる妥当な利益/リスク比で、肥満及び/又は肥満関連障害を治療及び/又は予防するために十分な量のCB2受容体アンタゴニスト又は阻害剤を意味する。
【0087】
本発明の化合物及び組成物の合計1日用量が、超音波診断の担当医(attending physician within the scope of sound medical judgment)により決定されることが理解されたい。任意の特定患者に対する具体的な治療有効量のレベルは、治療される障害及び障害の重篤度、使用される具体的化合物の活性;使用される具体的な組成物、年齢、体重、全般的健康、性別、及び患者の食事;投与器官、投与経路、及び使用される具体的化合物の排出割合;治療期間;使用される特異的ポリペプチドと組み合わせるか又は同時投与で使用される薬剤;及び医薬の分野において周知の因子に依る。例えば、当該技術分野において、所望の治療効果を達成するために必要とされるレベルよりも低いレベルで化合物の用量に左右される。例えば、所望の治療効果を達成するために必要とされるレベルよりも低いレベルで化合物の用量を開始し、そして所望の効果が達成されるまで徐々に用量を増加させることは、当業者に周知である。しかしながら、製品の一日用量は、成人一日あたり0.01〜1000mgの範囲で変わりうる。好ましくは、組成物は、治療される患者に対する用量の症状調節のために、0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100、250、及び500mgの活性成分を含む。典型的に医薬は、約0.01mg〜約500mgの活性成分、好ましくは1mg〜約100mgの活性成分を含む。薬剤の有効量は、通常、1日あたり0.0002mg/kg〜約20mg/kg体重、特に1日あたり約0.001mg/kg〜7mg/kg体重の用量レベルで供給される。
【0088】
スクリーニング法
本発明の阻害剤は、当該技術分野の状態において記載されたスクリーニング法によりさらに同定することができる。本発明のスクリーニング法は、既知の方法に従い行うこともできる。
【0089】
スクリーニング法は、候補化合物の受容体、又は細胞若しくは受容体を有する膜への結合、又はその融合タンパク質を、標識を用いて直接、又は間接的に候補化合物と一緒に計測することができる。あるいは、スクリーニング法は、標識コンペティターを(アンタゴニスト又はアゴニスト)用いて、候補化合物の受容体に対する結合の競合を計測し、又は定性的又は定量的に検出することを含みうる。さらに、スクリーニング法は、受容体を有する細胞に適している検出システムを用いて、当該受容体のアンタゴニストにより作成されるシグナルをもたらすかを試験することができる。アンタゴニストは、既知のアゴニスト(例えば、DELTA−9−THC、WIN 55212−2又はCP55940)の存在下でアッセイすることができるし、そして候補化合物の存在下におけるアゴニストによる活性化の効果が観察される。さらに、スクリーニング法は、CB2を含む溶液と候補化合物を混合して、混合物を形成し、そして混合物中で活性を計測し、そして候補化合物を含まない対象混合物と比較するステップを含むこともある。既知のアゴニスト、例えばDELTA-9-THC、WIN55212−2、又はCP55940を用いた競合結合も適切である。
【0090】
CB2受容体に対する候補化合物のアンタゴニスト活性は、例えば、様々な方法を用いて決定されてもよい。例えば、CB2受容体アゴニスト(DELTA−9−THC、WIN55212−2又はCP55940)は、M.Rinaldi-Carmona et al(1996)に記載されるように、フォルスコリンにより誘導されるアデニルシクラーゼ活性を阻害することができる。こうして、このモデルにおいて、当業者は、CB2受容体アゴニストの効果を遮断する当該化合物の能力を試験することができる。
【0091】
医薬組成物
CB2受容体アンタゴニスト又はCB2受容体発現の阻害剤は、医薬として許容される賦形剤、及び場合により持続放出マトリクス、たとえば生分解性ポリマーと組み合わされて、治療組成物を形成してもよい。
【0092】
経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、経皮、局所又は直腸投与用の本発明の医薬組成物において、単独で、又は他の活性成分と組み合わせて活性成分は、動物及びヒトに対して、慣用される医薬支持体との混合物として、単位投与剤形で投与することができる投与することができる。適切な単位投与剤形は、経口剤形、例えば錠剤、ゲルカプセル、粉末、顆粒、及び経口懸濁液又は溶液、舌下及び口腔投与剤形、エアロゾル、インプラント、皮下、経皮、髄腔内及び鼻孔内投与剤形、及び直腸投与剤形を含む。
【0093】
好ましくは、医薬組成物は、注射できる製剤に医薬として許容されるビヒクルを含む。これらは、特に、等張滅菌生理食塩水(リン酸一ナトリウム又はリン酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム又は塩化マグネシウムなど、又はこのような塩の混合物)中に存在してもよいし、又は乾燥、特に凍結乾燥組成物であって、投与の際に場合に応じて、滅菌水又は生理食塩水により注射溶液が構成される組成物であってもよい。
【0094】
注射使用に適した医薬製剤は、滅菌水溶液又は懸濁液を含み、ごま油、ピーナッツ油、又は水性プロピレングリコールを含む製剤;及び滅菌注射溶液又は懸濁液の即時調製用の滅菌粉末を含む。全ての場合において、当該製剤は、滅菌されていなければならず、そして容易な注射通過性が存在する程度に液状でなければならない。製造及び貯蔵の条件下で安定でなければならず、そして細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。
【0095】
遊離塩基又は医薬として許容される塩として本発明の化合物を含む溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合されて調製することができる。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物中で、並びに油中で調製することもできる。通常の貯蔵条件下及び使用条件化で、これらの製剤は、微生物の増殖を妨げる保存剤を含む。
【0096】
本発明のCB2受容体アンタゴニスト又はCB2受容体発現の阻害剤は、中性形態又は塩形態で組成物中に剤形することができる。医薬として許容される塩は、酸添加塩(タンパク質の遊離アミノ基とともに形成される)であって、例えば塩酸又はリン酸などの無機酸、或いは酢酸、オキサル酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸と形成される酸添加塩を含む。遊離のカルボキシル基と形成される塩は、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、又は水酸化鉄などの無機塩基、並びにイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基に由来することもある。
【0097】
担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、及び植物油を含む溶媒又は懸濁媒体であることもある。適切な流動性は、例えば、レシチンなどの被膜により、懸濁液の場合必要とされる粒子サイズを維持することにより、そして界面活性剤を使用することにより維持することができる。微生物作用の予防は、様々な抗細菌及び抗真菌剤、例えばパラベン類、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによりもたらされる。多くの場合、糖類又は塩化ナトリウムなどの等張剤を含めることが好ましいであろう。注射組成物の長期の吸収は、吸収遅延薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの組成物中で使用することにより、もたらされることもある。
【0098】
滅菌注射用液は、活性ポリペプチドを必要な量で、必要に応じて上に列挙される各種他の成分を伴って適切な溶媒中に取り込み、続いてフィルター滅菌することにより調製される。一般的に、懸濁液は、種々の滅菌活性成分を、塩基性懸濁媒体と、上に列挙されたものから必要とされる他の成分を含む滅菌ビヒクルに取り込むことにより調製される。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製法は、吸引乾燥及び凍結乾燥技術であり、これらは活性成分+以前に滅菌ろ過されたその溶液に由来する任意の所望の追加成分の粉末をもたらす。
【0099】
剤形する際に、溶液は、剤形に適合する様式で、そして治療有効である量で投与される。製剤は、様々な剤形、例えば上に記載される注射溶液のタイプなど、で容易に投与されるが、薬剤放出カプセルなども使用することができる。
【0100】
水溶液中での非経口投与では、例えば、溶液は、必要がある場合適切に緩衝化されるべきであり、そして液体希釈液は、第一に十分な生理食塩水又はグルコースで等張にされる。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、及び腹腔内投与に特に適している。これに関連して、使用することができる滅菌水性媒体は、本開示を踏まえれば当業者に知られるであろう。例えば、1用量は、1mlの等張NaCl溶液に溶解することができるし、そして1000mlの皮下注入液体に加えられるか、又は輸液に適した部位で注入される。治療される対象の状態に応じて、用量の変動は必然的に生じるであろう。いずれにせよ投与責任者は、個々の対象について適切な用量を決定するであろう。
【0101】
本発明のCB2受容体アンタゴニスト又はCB2受容体発現の阻害剤は、治療混合物内に、1用量あたり約0.0001〜1.0mg、又は約0.001〜0.1mg、又は約0.1〜1.0、又はさらに約10mg含めるように剤形されてもよい。
【0102】
静脈内又は筋肉内注射などの非経口投与用に剤形された本発明の化合物に加え、他の医薬として許容される形態として、例えば錠剤又は経口投与用の他の固体;リポソーム製剤;徐放性カプセル;及び現在使用されている任意の他の形態が挙げられる。
【0103】
本発明は、添付の図面及び以下の実施例を参照してさらに例示されよう。
【実施例】
【0104】
実施例1
方法
動物及び実験デザイン: 混合遺伝的背景におけるCB2遺伝子の標的化変異を有するマウスの作成は、以前に記載された(Buckley、N.Eら、2000)。野生型C57BL/6、ob/ob及びob/ob+マウスを、Janvier(France)から取得した。
【0105】
成体雄マウス(7〜10週齢)を、12時間の明/12時間の暗サイクルの下で、温度制御された環境で飼育した。野生型マウス(WT)及びCB2−/−マウスに標準食餌(TD2016、Harlan)又は高脂肪食餌(36%脂肪、TD99249、Harlan)を15週間与えた。体重と食餌摂取量を毎週計測した。一晩の絶食後にマウスを屠殺した。全ての実験プロトコルを、フランス政府ポリシーにしたがい行った(Services veterinaires de la Sante et de la production animale, Ministere francais de I'Agriculture)。
【0106】
屠殺の際に、褐色及び白色(皮下鼠径部(SAT)及び精巣上体(EAT))脂肪組織を摘出し、秤量し、そして液体窒素中で急速凍結させた。肝臓サンプルを幾つかの葉から摘出し、そして緩衝化ホルマリン中で固定するか、又はRNAlater(Qiagen)をいれた液体窒素中で急速凍結した。全てのサンプルを使用するまで-80℃で貯蔵した。
【0107】
組織及び結成分析:
一晩絶食させた後、マウスを屠殺した際に血液を回収した。Accu−Check活性バンド(Roche Diagnostics)により血糖症を計測し、そしてインスリン血症を、Elisa (Ultrasensitive mouse sensitive Elisa, Mercodia)により測定した。レプチンの血清濃度を、市販のELISAアッセイ(Quantikine Elisa Kit, R&D)により測定した。肝臓トリグリセリドを、10mlのイソプロパノールに入れた50mgの肝臓ホモジェネートから抽出し、そしてトリグリセリド測定キット(Sigma)を用いて定量した。
【0108】
RNA調製及びRT−PCR
RNeasy(商標)Lipid Tissue Mini kit (QIAGEN)を用いてトータルRNAを、肝臓及び白色脂肪組織から抽出した。以下に記載されるように定量的RT−PCRを、Light Cycler(Roche Diagnostics)で行った(Julien B et al. 2005)。試験された遺伝子のオリゴヌクレオチドプライマー配列を、表1に載せる。
【0109】
【表1】
PCR増幅された生成物を、2%アガロースゲルで分析し、そしてシーケンスを行った。
【0110】
肝臓及び脂肪組織の組織構造
肝臓標本を、10%ホルマリン及びパラフィン包埋で固定した。そして通常の試験のため、組織部分(4μm)をヘマトキシン-エオシンで染色した。脂肪細胞のサイズを、ヘマトキシリン-エオシンで染色された脂肪組織部分(8μm)に基づいて定量した。Image J ソフトウェアを用いて、HFDを与えられた7匹のWT及び5匹のCB2−/−動物において、3の別個の領域から得た少なくとも30の細胞について定量を行った。
【0111】
統計:
結果を、平均±SEMとして表し、そしてMann Whitney検定、一元配置分散分析又は二元配置分散分析のいずれかの後に、Bonferroni検定することにより分析した。p<0.05を、有意の最小レベルとした。
【0112】
結果:
CB2−/−マウスは、食餌誘導性の肥満に抵抗性である:
野生型及びCB2−/−マウスに15週間にわたり高脂肪食餌(HFD)を与える一方で、それぞれの対照には通常のマウス食餌を与えた。実験の開始時には、平均重量は、WTについて22±0.13g、及びCB2−/−について20.1±0.4gで類似していた。しかしながら、HFDを与えて9週後、CB2−/−マウスの平均重量は、その野生型対応マウスにくらべて有意に軽く、そして研究の終了時では、CB2−/−動物は、似たような食餌摂取量に関わらず(図2)、野生型マウスよりも28%も体重が少なかった(CB2−/−について41.6±1.3g 対 WTについて46.7±1.2g、p<0.05、図1)。
【0113】
試験の終了時において、HFDを与えられたCB2−−マウスの白色及び褐色脂肪組織重量が有意に低下した(表2)。
【0114】
さらに、CB2−−マウスの脂肪症指数(トータル脂肪重量/除内臓体重(eviscerated body weight)×100)は、WTマウスに比べて有意に低かった(表2)。最終的に、HFDを与えたCB2−−マウスの脂肪細胞のサイズは、HFDを与えたWTマウスの脂肪細胞のサイズよりも有意に低かった(図3)。
【0115】
HFDを与えられた野生型マウスは、予期されたホルモン変化及び代謝変化、例えば、高血糖症、(hypermia)、及び高レプチン血症を示した(図4、5、及び6)。対照的に、HFDを与えられたCB2−/−マウスにおいて、インスリン及びグルコース血清レベルは、通常の範囲に留まり(図4及び5)、WTマウスとCB2−/−との間の際は有意には達しなかった。また、血清レプチンレベルは、HFDを与えられたCB2−/−マウスばかりでなく、対照食餌を与えられたCB2−/−マウスにおいても、そのWT対応マウスに比べて有意に低かった(図6)。
【0116】
CB2の無効化は、肥満誘導性の肝脂肪変性を遅らせる
期待されたとおり、脂肪組織切片の組織学的分析により示されるように肥満WTマウスは、脂肪肝を発達させ、そして肝臓のトリグリセリドを増加させた(図8)。対照的に、HFDを与えられたCB2−/−マウスは、肝脂肪変性から保護された(図8)。したがって、SREBP−1c及びACC1の誘導は、HFDを与えられたCB2の肝臓において一貫して低い(図9)。
【0117】
これらの結果をまとめると、高脂肪食餌により誘導される肥満、インスリン抵抗性、及び肝脂肪変性の発症機序においてCB2の新規の役割が明らかにされた。
【0118】
HFDを与えられた野生型マウス及びCB2−−マウスの肝臓及び白色脂肪組織におけるCB受容体発現の制御
期待されたとおり、CB2−/−マウスは、CB2遺伝子を欠失しており、そして通常のCB1遺伝子発現を示す(図10)HFDを与えられたWTマウスでは、CB2受容体発現は、EAT(精巣上体脂肪組織)において、29.8±5.0倍も増加しているが、肝臓では変化していない(図11)。同様の結果は、ob/obマウスにおいて得られており、脂肪組織では6.8±1.9倍のCB2受容体mRNA発現を誘導するが、肝臓では変化が生じていない(図11)。CB1受容体mRNA調節は、WT及びCB2−/−マウスで調べられた。他人により記載されているように(Cota D. et al. 2003; Osei-Hyiaman, D et al. 2005)、CB1受容体mRNA発現は、HFDを与えられたWTマウスのEAT及び肝臓において、それぞれ2.68±0.35及び3.57±0.96倍誘導されている(図12)。対照的に、CB1受容体mRNAは、HFDを与えられたCB2−/−マウスのEAT及び肝臓において誘導された(図12)。
【0119】
これらの結果により、高脂肪食餌は、EATにおいてCB2 mRNA発現を上方制御するが、肝臓では上方制御しないことが示された。さらに、これらにより、CB1受容体mRNA発現が、HFDを与えられている間CB2受容体により制御されると言うことも示された。
【0120】
HFDを与えられたCB2−/−マウスは、EAT及び肝臓において炎症の低下を示した。脂肪組織は、インスリン抵抗性の発達に寄与することがある肥満のあいだにおける軽度の炎症により特徴付けられることが認められている。脂肪細胞は、マクロファージの脂肪組織への浸潤、並びにそれに続くインスリン抵抗性の発達及び肝脂肪変性に寄与する数種のアディポカイン(adipokines)を分泌する。近年のデーターにより、種々の炎症関連タンパク質、例えばTNF−α及びMCP−1の発現は、食事誘導性の肥満のあいだ上方制御され、そしてメタボリックシンドローム及び肥満の肝臓合併症の発症機所において主要な役割を果たすということが示されている。期待されている通り、HFDを与えられた野生型マウスのEATは、TNF−α及びMCP−1mRNA発現の強力な誘導、及びF4/80(成熟マクロファージの特異的マーカー)のmRNA発現によりアッセイされるようにマクロファージの密度の増加(図13)を示した。対照的に、TNF−α、MCP−1、及びF4/80の誘導は、HFDを与えたCB2−/−マウスのEATを有意に低減させる(図13)。
【0121】
HFDを与えられたマウスにおける肝臓炎症のCB2の無効化の結果も調べられた。脂肪組織において観察されるように、HFDを与えられた野生型マウスに比べて、TNFα、MCP−1、及びF4/80mrNAの肝臓誘導は、HFDを与えられたCB2−/−マウスにおいて低かった(図14)。
【0122】
その結果、これらの結果により、CB2受容体は、肥満の発達を引き起こす炎症プロセスにおいて主要な役割を果たすことが示される。
【0123】
要約すると、CB2受容体が、脂肪組織において過発現されるということが示されており、そして肥満、インスリン抵抗性、炎症及び肝脂肪変性の発達において主要な役割を果たすことが示される。
【0124】
【表2】
【0125】
実施例2
方法:
動物及び実験デザイン:
フランス政府ポリシー(Services veterinarires de la Sante et de la production animale, Ministere francais de I'Agriculture)にしたがい実験プロトコルが行われた。動物を、12時間の明期/12時間の暗期サイクルで、温度制御環境で飼育した。CB2アンタゴニストAM630の影響を、6週齢の雄肥満LepOb/LepOb雄マウス(ob/ob)及びやせ型LepOb+/LepOb対応マウス(ob+/ob)において評価した。1mg/kgのAM630(n=10ob/ob及びn=5のob+/ob)又はビヒクル(n=8ob/ob及びn=5ob+/ob)の腹腔内注射を毎日17日間与えた。AM630(Tocris)を、あらたに1滴のTween80を含む0.1mlのジメチルスルホキシド(DMSO)を含むビヒクル溶液に溶解し、ソニケートし、そしてさらにNaCl9‰中に50倍に希釈した。体重及び食餌摂取を毎日計測した。一晩の絶食後にマウスを屠殺した。白色精巣上体脂肪組織を摘出し、重量を計測し、そして緩衝化ホルマリンで固定するか、又は液体窒素で急速凍結させた。全てのサンプルを使用するまで-80℃で貯蔵しておいた。
【0126】
RNA調製及びRT-PCR:
RNeasy(商標)Lipid Tissue Miniキット(QIAGEN)を用いて、トータルRNAを、マウス精巣上体脂肪から抽出した。以前に記載したように、定量的RT-PCRを、Light Cycler(Roche Diagnostics)で行った。試験されたマウス遺伝子のオリゴヌクレオチドプライマー配列を表に載せる。
【0127】
【表3】
【0128】
PCR増幅産物を、2%アガロースゲルで分析し、そしてシーケンスを行った。
【0129】
結果:
多くの試験により、肥満は、脂肪組織における軽度の炎症を伴い、当該炎症は全身のインスリン抵抗性及び脂肪肝の発達に寄与する。マクロファージは、肥満であるあいだ脂肪組織に集積し、そしてこの炎症状態に寄与する。
【0130】
脂肪組織におけるCB2受容体の制御及び分配は、さらに肥満の2つの実験モデルにおいてさらに特徴決定された(図15a)。興味深いことに、HFDを与えられた野生型マウスとob/obマウスは、CB2mRNAの強力な誘導を示し、これは体重増加と相関した(図15a、左側のパネル)。CB2受容体のmRNAは、脂肪組織において検出することができないばかりか、3T3−L1前脂肪細胞においても検出できず、そしてやせ型(ob+/ob−)動物に比べて肥満(ob/ob)マウスから調製された精巣上体脂肪組織の間質脈環フラクション(stromal vascular fraction)において強く誘導されており、CB2受容体のマクロファージ関連発現を示唆する。期待されるように、HFDを与えられた肥満WTマウスの脂肪組織は、マクロファージ関連マーカーF4/80をコードするmRNAの強力な誘導(図15b、左側パネル)により、並びに脂肪組織周囲のクラウンクラスターにおけるF4/80陽性細胞の集積(図15b、右側パネル)により示されるように、マクロファージにより有意に浸潤されている。マクロファージ密度の増加は、TNFα及びMCP−1mRNA発現の顕著な増大と関連し、肥満WT動物における脂肪組織の炎症応答を反映する(図15c)。対照的に、CB2の遺伝的不活性化は、脂肪組織へのマクロファージ蓄積の低い程度に関連しており(図15b)、そしてTNF−α及びMCP−1mRNA発現により評価すると炎症応答の顕著な低下と関連している(図15c)。
【0131】
遺伝欠損CB2−/−マウスにおいて得られるデーターをまとめると、CB2の薬理学的阻害が、6週齢のob/obマウスにCB2アンタゴニストAM630を毎日腹腔内投与(17日間にわたり1mg/kg)することにより誘導された。AM630は、F4/80、TNF−α、及びMCP−1mRNAの低い誘導により示されるように、肥満マウスにおける脂肪炎症応答を低下させた(図16)。
【0132】
まとめとして、これらの結果により、当該動物モデルにおいて、CB2拮抗作用が、脂肪組織における炎症応答の低下と関連し、そしてそれによりインスリン抵抗性及び脂肪症を改善しうることが示される。
【0133】
参考文献
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肥満及び肥満関連障害の治療及び/又は予防を意図した医薬の製造のためのCB2受容体発現及び/又は活性の選択的阻害剤の使用。
【請求項2】
CB2受容体発現の選択的阻害剤が使用される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
CB2受容体発現の前記阻害剤が、アンチセンスRNA又はDNA分子、低分子阻害性RNA(siRNA)及びリボザイムからなる群から選ばれる、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記選択的阻害剤が、CB2受容体アンタゴニストである、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記CB2受容体アンタゴニストが、小さな有機分子、CB2受容体遮断抗体又は抗体フラグメントの部分又は全体、及びアプタマーからなる群から選ばれる、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記CB2アンタゴニストが、AM630、JTE−907、及びSR144528からなる群から選ばれる、請求項4又は5に記載の使用。
【請求項7】
前記肥満関連障害が、脂質異常症、非インスリン依存性糖尿病、インスリン抵抗性、メタボリックシンドローム、冠状動脈性心臓病、アテローム性動脈硬化症、及び非アルコール性脂肪肝疾患からなる群から選ばれる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記肥満及び/又は肥満関連障害が、過食、高脂肪食、及び/又は高血糖食により誘導される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項1】
肥満及び肥満関連障害の治療及び/又は予防を意図した医薬の製造のためのCB2受容体発現及び/又は活性の選択的阻害剤の使用。
【請求項2】
CB2受容体発現の選択的阻害剤が使用される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
CB2受容体発現の前記阻害剤が、アンチセンスRNA又はDNA分子、低分子阻害性RNA(siRNA)及びリボザイムからなる群から選ばれる、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記選択的阻害剤が、CB2受容体アンタゴニストである、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記CB2受容体アンタゴニストが、小さな有機分子、CB2受容体遮断抗体又は抗体フラグメントの部分又は全体、及びアプタマーからなる群から選ばれる、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記CB2アンタゴニストが、AM630、JTE−907、及びSR144528からなる群から選ばれる、請求項4又は5に記載の使用。
【請求項7】
前記肥満関連障害が、脂質異常症、非インスリン依存性糖尿病、インスリン抵抗性、メタボリックシンドローム、冠状動脈性心臓病、アテローム性動脈硬化症、及び非アルコール性脂肪肝疾患からなる群から選ばれる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記肥満及び/又は肥満関連障害が、過食、高脂肪食、及び/又は高血糖食により誘導される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2010−523531(P2010−523531A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501528(P2010−501528)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/054109
【国際公開番号】WO2008/122618
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(500248467)アンスティテュ ナシオナル ドゥ ラ サントゥ エ ドゥ ラ ルシェルシェ メディカル(イーエヌエスエーエールエム) (19)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/054109
【国際公開番号】WO2008/122618
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(500248467)アンスティテュ ナシオナル ドゥ ラ サントゥ エ ドゥ ラ ルシェルシェ メディカル(イーエヌエスエーエールエム) (19)
【Fターム(参考)】
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