説明

育苗床及びその製造方法

【課題】育苗床及びその製造方法において、量産が可能で低コストで製造することができ、植え替えの際にそのまま植えることができるため苗の根を傷めることがなく、かつ環境保全に貢献でき、木質材料を活用して用土の使用量を必要最小限としたこと。
【解決手段】育苗床1をトレイ9に2個並べて入れ、開口穴1aにシシトウP1の種及び唐辛子P2の種を入れて腐葉土を被せ、トレイ9の中に液肥を溶かした水溶液10を満たした。多孔質の育苗床1が水溶液10を吸い上げて、シシトウP1の種及び唐辛子P2の種に適度の水分が与えられ、育苗床1は一定量の水溶液10のみを吸い上げるため根腐れ等の心配はなく、トレイ9が空になっても、体積の数倍の水分を保持しているため、1週間程度は水溶液10を追加しなくても水不足となることはない。種を蒔いてから約1ヶ月後には、シシトウP1及び唐辛子P2が育って多数の葉を付け、シシトウP1には花が咲いた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性を有するため植え替えの際に苗の根を傷めることがなく、かつ環境保全に貢献できる育苗床及びその製造方法に関するものであり、特に、木質材料を活用して、用土の使用量を必要最小限とした育苗床及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
花や野菜等の植物の苗を育てながら陳列・販売するために、従来からプラスチック製の育苗鉢(育苗ポット)が使用されている。かかる薄いプラスチックからなる育苗ポットは非常に安価で極めて軽量であるため市場に広く普及しているが、多量の用土を必要とし、またプランターや畑に植え替える際には苗を取り出さなくてはならないため、苗の根を傷め易く、植え替え作業が煩雑であり、更に残ったプラスチック製の育苗ポットが環境負荷物質となるといった問題点を有している。
【0003】
そこで、植物の苗を育てることができ、プランターや畑に植え替える際にもそのまま植えることができて、苗の根を傷めることなく植え替え作業が容易で、また環境負荷物質を生ずることがない生分解性の育苗鉢の開発が行われている。このような生分解性の育苗鉢としては、例えば、特許文献1乃至特許文献4に記載の発明に係るものがある。特許文献1に記載の発明においては、生分解性の素材として紙・木材の細かいチップ・草を粉砕して粒状にしたものを成形してなり、植物の苗の根は通り易いが培養土はこぼれ難い孔・スリットまたは切れ目を形成したものを育苗ポットとしている。
【0004】
また、特許文献2に記載の発明においては、圧搾線維化された竹繊維と、イネ科植物繊維とからなる非木材繊維100重量部に対して、打壊処理されたパーム繊維30〜70重量部と植物性デンプン1〜3重量部とを投入し、更に適量の水を加えて攪拌混練した混練物を加圧して成形し、乾燥させて得たものを植物育成床としている。更に、特許文献3においては、土壌中で分解される繊維を成形してなり、吸水することにより膨潤し、発芽した植物の根を貫通可能に形成した容器本体と、容器本体内に内蔵される植物育成用の床と、この植物育成用の床に含まれる土壌中で分解される繊維からなる充填材とを有する植物育成キットの発明について開示している。
【0005】
また、特許文献4においては、椰子殻繊維・麻繊維等の植物繊維製シートにバインダーを含浸させてバインダー含浸植物繊維製シートを製造し、次いで同シートを金型を用いて加熱・加圧成形して、二重壁構造の壁部を備えた底面のない断面凹型の容器状成形体となし、その後その二重壁内中空部に植物生育用充填材を充填し、しかる後植物繊維シート製の底板を、前記容器状成形体の二重壁の外側の壁の下端周縁部を接合面として接合して前記容器状成形体の下面を封止してなる植物繊維製プランター及びその製造方法の発明について開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−315443号公報
【特許文献2】特開2005−333850号公報
【特許文献3】特許第2991926号公報
【特許文献4】特許第4210842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術は、植え替えの際に、苗を取り出すことなくそのまま畑等に埋めることができる点では、従来のプラスチック製の育苗ポットよりも優れているが、大量の培養土を必要とする点は同じである。また、特許文献2に記載の技術においては、成形条件(プレス圧、加圧時間、充填量)が明らかにされていないため、所定の特性を有する植物育成床を製造することができない。
【0008】
更に、特許文献3及び特許文献4に記載の特許発明においては、構造が複雑で大量生産することができないため、販売価格が高くなってしまい、しかも大量の用土を必要とするという問題点があった。このように大量の用土・培養土を用いることによって、雑草が生えやすくなり、また根切虫等の害虫が繁殖して、植物の苗の生育が妨げられる。したがって、用土・培養土は可能な限り使用しないことが望ましい。
【0009】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべくなされたものであって、極めて量産性に優れ、低コストで製造することができ、植え替えの際にそのまま植えることができるため苗の根を傷めることがなく、かつ環境保全に貢献でき、木質材料を活用して用土の使用量を必要最小限とした育苗床及びその製造方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明に係る育苗床は、微粉砕木粉と、粗粉砕木粉と、腐葉土及び/または籾殻薫炭と、有機合成樹脂バインダーとを含有する育苗床であって、前記微粉砕木粉は平均粒子径が30μm〜500μmの範囲内であり、前記粗粉砕木粉は平均粒子径が1mm〜10mmの範囲内であり、前記微粉砕木粉と前記粗粉砕木粉と前記腐葉土及び/または籾殻薫炭と前記有機合成樹脂バインダーを精密分散混合機で混合した後、常温で30kg/cm2 〜100kg/cm2 の範囲内の圧力を掛けてプレス成形してなるものである。
【0011】
ここで、「平均粒子径」は、微粉砕木粉については、レーザ回折式粒度分布測定装置マイクロトラックによって測定した平均粒子径の値である。また、平均粒子径が1mm〜10mmの範囲内の粗粉砕木粉を得る方法としては、例えば、大鋸屑(おがくず)や間伐材のチップ、小径木、製材端材、樹皮等の木屑を粉砕機で粗粉砕する方法等があり、平均粒子径が30μm〜500μmの範囲内の微粉砕木粉を得る方法としては、例えば、上記粗粉砕木粉を含水率20%以下に乾燥して、粉砕機で微粉砕する方法等がある。なお、粗粉砕木粉の原料として、スギ等の樹皮を混合することが好ましい。
【0012】
また、「有機合成樹脂バインダー」としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリオール樹脂、イソシアネート樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができ、更に、これらの樹脂を二種類以上混合して用いることができる。
【0013】
更に、「精密分散混合機」としては、周速20m/秒〜30m/秒の範囲内の高速攪拌分散機を用いることができる。このような高速攪拌分散機としては、例えば、ホソカワミクロン(株)製の横型タービライザー等がある。
【0014】
請求項2の発明に係る育苗床は、請求項1の構成において、配合割合が、前記微粉砕木粉100重量部に対して、前記粗粉砕木粉が100重量部〜600重量部、前記腐葉土及び/または籾殻薫炭が75重量部〜200重量部、前記有機合成樹脂バインダーが前記微粉砕木粉、前記粗粉砕木粉及び前記腐葉土及び/または籾殻薫炭の合計100重量部に対して、5重量部〜25重量部、より好ましくは15重量部〜25重量部であるものである。
【0015】
請求項3の発明に係る育苗床は、請求項1または請求項2の構成において、前記有機合成樹脂バインダーは、イソシアネート樹脂、またはポリオール樹脂及びイソシアネート樹脂であるものである。
【0016】
請求項4の発明に係る育苗床は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つの構成において、含水率が6%〜20%の範囲内であるものである。
【0017】
請求項5の発明に係る育苗床は、請求項1乃至請求項4のいずれか1つの構成において、一つの面に浅い穴を開けて植物の種または球根を入れて腐葉土及び/または籾殻薫炭及び/または土を被せたものである。
【0018】
請求項6の発明に係る育苗床は、請求項1乃至請求項5のいずれか1つの構成において、前記圧力を掛けた方向の厚さが該方向に垂直な方向の長さの5%〜50%の範囲内、より好ましくは10%〜25%の範囲内であるものである。
【0019】
請求項7の発明に係る育苗床の製造方法は、平均粒子径が30μm〜500μmの範囲内の微粉砕木粉を有機合成樹脂バインダーと混合して木粉混合物とする木粉混合工程と、平均粒子径が1mm〜10mmの範囲内の粗粉砕木粉及び腐葉土及び/または籾殻薫炭を前記木粉混合物と精密分散混合機で混合して原料混合物とする精密分散混合工程と、前記原料混合物をプレス金型に充填して常温で30kg/cm2 〜100kg/cm2 の範囲内の圧力を掛けてプレス成形し、育苗床とするプレス成形工程とを具備するものである。
【0020】
請求項8の発明に係る育苗床の製造方法は、請求項7の構成において、配合割合が、前記微粉砕木粉100重量部に対して、前記粗粉砕木粉が100重量部〜600重量部、前記腐葉土及び/または籾殻薫炭が75重量部〜200重量部、前記有機合成樹脂バインダーが前記微粉砕木粉、前記粗粉砕木粉及び前記腐葉土及び/または籾殻薫炭の合計100重量部に対して、5重量部〜25重量部、より好ましくは15重量部〜25重量部であるものである。
【0021】
請求項9の発明に係る育苗床の製造方法は、請求項7または請求項8の構成において、前記有機合成樹脂バインダーは、イソシアネート樹脂、またはポリオール樹脂及びイソシアネート樹脂であるものである。
【0022】
請求項10の発明に係る育苗床の製造方法は、請求項7乃至請求項9のいずれか1つの構成において、前記プレス金型の内壁面に前記微粉砕木粉の割合の多い原料混合物を充填し、その内側には前記粗粉砕木粉の割合の多い原料混合物を充填するものである。
【発明の効果】
【0023】
請求項1の発明に係る育苗床は、微粉砕木粉と、粗粉砕木粉と、腐葉土及び/または籾殻薫炭と、有機合成樹脂バインダーとを含有する育苗床であって、微粉砕木粉は平均粒子径が30μm〜500μmの範囲内であり、粗粉砕木粉は平均粒子径が1mm〜10mmの範囲内であり、微粉砕木粉と粗粉砕木粉と腐葉土及び/または籾殻薫炭と有機合成樹脂バインダーを精密分散混合機で混合した後、常温で30kg/cm2 〜100kg/cm2 の範囲内の圧力を掛けてプレス成形してなる。
【0024】
ここで、プレス成形の圧力保持時間は30秒〜数分間程度で良く、常温プレスであるため、プレス成形後直ちに製品を取り出して次のプレス成形を行うことができることから、短時間に多数の育苗床の製品を製造することができ、極めて量産性に優れたものとなる。また、微粉砕木粉と粗粉砕木粉と腐葉土及び/または籾殻薫炭とを、有機合成樹脂バインダーで成形固化してなるものであるため、内部は空隙の多い構造となり、体積の数倍の水を吸収することができる保水力に優れたものとなって、通常の植物の苗であれば、一週間に一度程度水やりをするだけで生育させることができる。
【0025】
更に、内部が空隙の多い構造であるとともに、プレス方向に対して垂直な面に沿って層状の構造となって、植物の苗の細い根は内部の全方向に向いて伸びることができ、植物の苗の太い根は層状の面に沿って伸びることができ、生育を妨げることがない。また、原料を全て精密分散混合機で混合していることから、腐葉土中に雑草の種や害虫が含まれていたとしても、精密分散混合機で粉砕されてしまうため、育苗床として使用する際には雑草が生えたり害虫が苗を傷めたりすることもない。更に、微粉砕木粉と粗粉砕木粉に含まれるリグニン・タンニンの除菌作用によっても、害虫やカビ等の繁殖を防ぐことができる。
【0026】
そして、発明者は、鋭意実験研究を重ねた結果、微粉砕木粉としては平均粒子径が30μm〜500μmの範囲内のものが、粗粉砕木粉としては平均粒子径が1mm〜10mmの範囲内のものが適しており、プレス成形の圧力としては30kg/cm2 〜100kg/cm2 の範囲内が適切であることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
【0027】
すなわち、微粉砕木粉の平均粒子径が30μm未満の場合には、細か過ぎて内部が空隙の多い構造とならず、微粉砕木粉の平均粒子径が500μmを超える場合には、粗過ぎて育苗床として強度の足りないものとなってしまう。また、粗粉砕木粉の平均粒子径が1mm未満の場合には、細か過ぎて内部の空隙が小さくなり、粗粉砕木粉の平均粒子径が10mmを超える場合には、粗過ぎて育苗床として強度の足りないものとなってしまう。更に、プレス成形の圧力が30kg/cm2 未満の場合には、低密度過ぎて育苗床として強度の足りないものとなり、プレス成形の圧力が100kg/cm2 を超えた場合には、緻密過ぎて内部の空隙が小さくなってしまう。
【0028】
また、本発明に係る育苗床は常温プレスによって成形できることから、外部からの均一な加熱が不要であるため、極めて厚い成形体を成形することができ、500mmt までの厚さの育苗床を成形することが可能である。更に、加熱機構が不要であることから、プレス成形機及び金型の構造が簡単になるという作用効果が得られ、その結果、1000mm×2000mm程度の広い面積を有する育苗床を成形することも可能となる。
【0029】
そして、本発明に係る育苗床は、微粉砕木粉と粗粉砕木粉と腐葉土及び/または籾殻薫炭とを主体としてなるものであるから、育てた苗をプランターや畑に植え替える場合には、そのまま育苗床ごと植えることによって、微粉砕木粉と粗粉砕木粉が生分解して土に戻るため、植え替えが容易で、苗の根を傷める恐れもない。
【0030】
このようにして、極めて量産性に優れ、低コストで製造することができ、植え替えの際にそのまま植えることができるため苗の根を傷めることがなく、かつ環境保全に貢献でき、木質材料を活用して用土の使用量を必要最小限とした育苗床となる。
【0031】
請求項2の発明に係る育苗床は、配合割合が、微粉砕木粉100重量部に対して、粗粉砕木粉が100重量部〜600重量部、腐葉土及び/または籾殻薫炭が75重量部〜200重量部、有機合成樹脂バインダーが微粉砕木粉、粗粉砕木粉及び腐葉土及び/または籾殻薫炭の合計100重量部に対して、5重量部〜25重量部、より好ましくは15重量部〜25重量部であるから、請求項1に係る発明の効果に加えて、粗粉砕木粉が多く配合されていることによって、内部をより確実に空隙の多い構造とすることができ、体積の数倍の水を吸収することができる保水性に優れたものとなって、通常の植物の苗であれば、一週間に一度程度水やりをするだけで生育させることができる。また、有機合成樹脂バインダーの配合割合が少ないため、育苗床の生分解性を妨げることがない。
【0032】
請求項3の発明に係る育苗床においては、有機合成樹脂バインダーがイソシアネート樹脂、またはポリオール樹脂及びイソシアネート樹脂であることから、請求項1または請求項2に係る発明の効果に加えて、常温で微粉砕木粉及び粗粉砕木粉を多孔質の状態で高強度に接着させることができ、製品として取扱い易い強度を有するとともに保水性に優れた育苗床を、より確実に得ることができる。
【0033】
請求項4の発明に係る育苗床は、含水率が6%〜20%の範囲内であることから、請求項1乃至請求項3に係る発明の効果に加えて、一年以上の長期間保存しても、微粉砕木粉及び粗粉砕木粉の腐葉土化が始まることがないため、保水性及び強度等の特性が変わることなく保存することができ、在庫を多く抱えることができる育苗床となる。
【0034】
請求項5の発明に係る育苗床は、一つの面に浅い穴を開けて植物の種または球根を入れて腐葉土及び/または籾殻薫炭及び/または土を被せたものであることから、請求項1乃至請求項4に係る発明の効果に加えて、消費者が購入して家庭で水の入った容器に移すだけで、育苗床が吸水して植物が発芽するため、植物の生育が容易な植物栽培セットとなる。ここで、育苗床の含水率を6%〜20%の範囲内に保つことによって、長期間保存しても植物の種または球根は発芽せず、また、腐ったりしないことから、植物栽培セットの在庫を多く抱えることができる。
【0035】
請求項6の発明に係る育苗床は、圧力を掛けた方向の厚さが該方向に垂直な方向の長さの5%〜50%の範囲内であることから、請求項1乃至請求項5に係る発明の効果に加えて、厚さが長さの5%に近い側の薄い板状に成形しても、プレス圧力によって、長手方向に微粉砕木粉及び粗粉砕木粉が緻密に接続した構造となり、高強度の薄板状育苗床となる。したがって、例えば、液肥を適切な濃度に溶かした水溶液が満たされた容器の上に、かかる薄板状育苗床を載置することによって、育苗床に植えられた植物の根が薄板状育苗床を突き抜けて水溶液に達して、水耕栽培のように植物を生育させることができる。
【0036】
また、厚さが長さの50%に近い側の厚い板状に成形した場合には、植物を苗の状態にまで育て、その後、田畑等に植え替えるための育苗床として適したものとなる。この場合には、育苗床の容積は小さくても良いため、小育苗床を縦横に並べた小育苗床の集合体を一度に成形することができる。これによって、育苗農家で小育苗床ごとに花等の種を蒔いて苗まで育て、これを小育苗床の集合体のまま、または小育苗床ごとに切り離して、ホームセンター等の苗の小売店に出荷することができる。
【0037】
請求項7の発明に係る育苗床の製造方法においては、木粉混合工程において、平均粒子径が30μm〜500μmの範囲内の微粉砕木粉が有機合成樹脂バインダーと混合されて木粉混合物となり、精密分散混合工程において、木粉混合物と、平均粒子径が1mm〜10mmの範囲内の粗粉砕木粉及び腐葉土及び/または籾殻薫炭とが精密分散混合機で混合されて原料混合物となる。そして、プレス成形工程において、原料混合物がプレス金型に充填されて、常温で30kg/cm2 〜100kg/cm2 の範囲内の圧力を掛けてプレス成形される。
【0038】
このように、まず微粉砕木粉を有機合成樹脂バインダーと均一に混合した後に、粗粉砕木粉及び腐葉土及び/または籾殻薫炭と混合することによって、少ない量の有機合成樹脂バインダーで微粉砕木粉、粗粉砕木粉及び腐葉土及び/または籾殻薫炭を、プレス成形工程において強固に、かつ、多孔質状に成形することができ、保水性に優れ扱い易い強度を有する生分解性の育苗床を製造することができる。また、プレス成形工程が常温プレスであることから、プレス成形後直ちに製品を取り出して次のプレス成形を行うことができ、短時間に多数の育苗床の製品を製造することができて、極めて量産性に優れた製造方法となる。
【0039】
更に、内部が空隙の多い構造であるとともに、プレス方向に対して垂直な面に沿って層状の構造となって、植物の苗の細い根は内部の全方向に向いて伸びることができ、植物の苗の太い根は層状の面に沿って伸びることができ、生育を妨げることがない。また、原料を全て精密分散混合機で混合していることから、腐葉土中に雑草の種や害虫が含まれていたとしても、精密分散混合機で粉砕されてしまうため、育苗床として使用する際には雑草が生えたり害虫が苗を傷めたりすることもない。更に、微粉砕木粉と粗粉砕木粉に含まれるリグニン・タンニンの除菌作用によっても、害虫やカビ等の繁殖を防ぐことができる。
【0040】
そして、発明者は、鋭意実験研究を重ねた結果、微粉砕木粉としては平均粒子径が30μm〜500μmの範囲内のものが、粗粉砕木粉としては平均粒子径が1mm〜10mmの範囲内のものが適しており、プレス成形工程におけるプレス圧力としては30kg/cm2 〜100kg/cm2 の範囲内が適切であることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
【0041】
すなわち、微粉砕木粉の平均粒子径が30μm未満の場合には、細か過ぎて内部が空隙の多い構造とならず、微粉砕木粉の平均粒子径が500μmを超える場合には、粗過ぎて育苗床として強度の足りないものとなってしまう。また、粗粉砕木粉の平均粒子径が1mm未満の場合には、細か過ぎて内部の空隙が小さくなり、粗粉砕木粉の平均粒子径が10mmを超える場合には、粗過ぎて育苗床として強度の足りないものとなってしまう。更に、プレス成形工程におけるプレス圧力が30kg/cm2 未満の場合には、低密度過ぎて育苗床として強度の足りないものとなり、プレス成形工程におけるプレス圧力が100kg/cm2 を超えた場合には、緻密過ぎて内部の空隙が小さくなってしまう。
【0042】
また、本発明に係る育苗床の製造方法においては、常温プレスによってプレス成形していることから、外部からの均一な加熱が不要であるため、極めて厚い成形体を成形することができ、500mmt までの厚さの育苗床を製造することが可能である。更に、加熱機構が不要であることから、プレス成形機及び金型の構造が簡単になるという作用効果が得られ、その結果、1000mm×2000mm程度の広い面積を有する育苗床を製造することも可能となる。
【0043】
このようにして、極めて量産性に優れ、低コストで製造することができ、植え替えの際にそのまま植えることができるため苗の根を傷めることがなく、かつ環境保全に貢献でき、木質材料を活用して用土の使用量を必要最小限とした育苗床の製造方法となる。
【0044】
請求項8の発明に係る育苗床の製造方法は、配合割合が、微粉砕木粉100重量部に対して、粗粉砕木粉が100重量部〜600重量部、腐葉土及び/または籾殻薫炭が75重量部〜200重量部、有機合成樹脂バインダーが微粉砕木粉、粗粉砕木粉及び腐葉土及び/または籾殻薫炭の合計100重量部に対して、5重量部〜25重量部、より好ましくは15重量部〜25重量部であるから、請求項7に係る発明の効果に加えて、粗粉砕木粉が多く配合されていることによって、内部をより確実に空隙の多い構造とすることができ、体積の数倍の水を吸収することができる保水性に優れたものとなって、通常の植物の苗であれば、一週間に一度程度水やりをするだけで生育させることができる。また、有機合成樹脂バインダーの配合割合が少ないため、育苗床の生分解性を妨げることがない。
【0045】
請求項9の発明に係る育苗床の製造方法においては、有機合成樹脂バインダーがイソシアネート樹脂、またはポリオール樹脂及びイソシアネート樹脂であることから、請求項7または請求項8に係る発明の効果に加えて、常温で微粉砕木粉及び粗粉砕木粉を多孔質の状態で高強度に接着させることができ、製品として取扱い易い強度を有するとともに保水性に優れた育苗床を、より確実に得ることができる。
【0046】
請求項10の発明に係る育苗床の製造方法においては、プレス金型の内壁面に微粉砕木粉の割合の多い原料混合物を充填し、その内側には粗粉砕木粉の割合の多い原料混合物を充填することによって、請求項7乃至請求項9に係る発明の効果に加えて、外面が比較的緻密で、内部は空隙の多い構造の育苗床を、容易に製造することができる。これによって、より取扱い易く、かつ吸水性及び保水性に優れた育苗床とすることができる。
【0047】
また、外側(プレス金型の内壁面側)の微粉砕木粉の割合をより多くして、内側の粗粉砕木粉の割合をより多くすることによって、育苗床の外面を更に緻密にして木製の容器のようにし、内側に用土が詰められたような構造のものとすることができる。この場合には、外面から吸水させることが難しくなるため、通常の植木鉢のように上部から水を補給することになる。
【0048】
このように外面を緻密な構造としても、原料は木粉を主体としているため生分解性を有しており、植物の苗が適切な大きさに生育した段階でそのまま土に埋めることによって、育苗床が生分解して土になり、植物は育苗床の大きさ以上に生育することができる。また、植木鉢で育てることができる種類の植物であれば、植え替えることなく、育苗床をそのまま植木鉢のように使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は本発明の実施例1に係る育苗床の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】図2(a)は本発明の実施例1に係る育苗床の製造方法によって製造した育苗床の斜視図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図3】図3は本発明の実施例1に係る育苗床の使用状態を示す斜視図である。
【図4】図4は本発明の実施例2に係る育苗床とその使用方法を示す斜視図である。
【図5】図5(a)は本発明の実施例2に係る育苗床の別の使用方法を示す斜視図、(b)は(a)のB−B断面図である。
【図6】図6(a)は本発明の実施例3に係る育苗床(小育苗床の集合体)を示す斜視図、(b)は実施例3に係る育苗床に植物の種を植えてトレイに入れた状態を示す斜視図、(c)は実施例3に係る育苗床を小育苗床に分離する様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明を実施するに際しては、大鋸屑(おがくず)、間伐材、小径木、樹皮、製材端材等の木屑を、平均粒子径が1mm〜10mmの範囲内の粗粉砕木粉とし、また、平均粒子径が30μm〜500μmの範囲内の微粉砕木粉とする必要がある。ここで、木粉の平均粒子径は、微粉砕木粉についてはレーザ回折式粒度分布測定装置マイクロトラックによって測定した値であり、粗粉砕木粉についてはノギスによって測定した値である。
【0051】
平均粒子径が1mm〜10mmの範囲内の粗粉砕木粉を得る方法として具体的には、大鋸屑、間伐材、小径木、樹皮、製材端材等の木屑を破砕機(木材用クラッシャー)で粗粉砕する方法等があり、平均粒子径が30μm〜500μmの範囲内の微粉砕木粉を得る方法として具体的には、上記粗粉砕木粉を通風乾燥機で含水率20%以下に乾燥して、微粉砕機で微粉砕する方法等がある。
【0052】
ここで、「微粉砕機」としては、周速50m/秒〜80m/秒の範囲内の微粉砕機を用いるのが好ましい。このような微粉砕機としては、例えばホソカワミクロン(株)製のピンミル機や、河本鉄工(株)製のミクロンコロイドミル等がある。また、微粉砕木粉の平均粒子径が50μm〜250μmの範囲内であることが、より好ましい。
【0053】
また、「腐葉土」としては、市販の腐葉土を使用することができるとともに、木の葉、稲藁、麦藁、茶滓、大豆滓、椰子殻等を発酵させて堆肥としたものを用いることもできる。これらの微粉砕木粉、粗粉砕木粉及び腐葉土及び/または籾殻薫炭を有機合成樹脂バインダーと均一に混合するためには、精密分散混合機として、周速20m/秒〜30m/秒の範囲内の高速攪拌分散機を用いるのが好ましい。このような高速攪拌分散機としては、例えばホソカワミクロン(株)製の横型タービライザー等がある。
【0054】
更に、「有機合成樹脂バインダー」としては、イソシアネート樹脂を単体で、またはポリオール樹脂とイソシアネート樹脂を混合して用いることが好ましい。ポリオール樹脂としては、ポリオキシエチレングリセルエーテル、ポリオキシプロピレングリセルエーテル、ポリオキシブチレングリセルエーテル等を用いることができ、イソシアネート樹脂としては、ポリエチレンポリフェニールポリイソシアネート等を用いることができる。
【0055】
ここで、微粉砕木粉、粗粉砕木粉及び腐葉土及び/または籾殻薫炭の混合物の含水率が高い場合には、イソシアネート樹脂を単体で用いることが好ましい。イソシアネート樹脂は、水分の存在下では硬化して接着作用を発揮するからである。一方、微粉砕木粉、粗粉砕木粉及び腐葉土及び/または籾殻薫炭の混合物の含水率が低い場合には、ポリオール樹脂とイソシアネート樹脂を混合して用いることが好ましい。
【0056】
また、混合の順序としては、微粉砕木粉にポリオール樹脂を混合し、更にイソシアネート樹脂を混合した後に、粗粉砕木粉及び腐葉土及び/または籾殻薫炭を精密分散混合機で混合することが好ましい。ここで、微粉砕木粉にポリオール樹脂を混合したものは、そのままでは硬化しないため、長期間保存することができる。
【実施例】
【0057】
実施例1
以下、本発明を具体化した実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。まず、本発明の実施例1に係る育苗床及びその製造方法について、図1乃至図3を参照して説明する。
【0058】
図1は本発明の実施例1に係る育苗床の製造方法を示すフローチャートである。図2(a)は本発明の実施例1に係る育苗床の製造方法によって製造した育苗床の斜視図、(b)は(a)のA−A断面図である。図3は本発明の実施例1に係る育苗床の使用状態を示す斜視図である。
【0059】
まず、本実施例1に係る育苗床の製造方法について、図1を参照して説明する。図1に示されるように、最初に、スギ等の樹木の間伐材・小径木・製材端材・樹皮・大鋸屑等の木屑2を、破砕機(木材用クラッシャー)で粗粉砕した(ステップS10)。これによって得られた粗粉砕木粉3の平均粒子径を、ノギスで測定したところ、平均粒子径は2mmであった。
【0060】
続いて、この粗粉砕木粉3の全量の3分の1を、熱風乾燥機によって水分20重量%以下に熱風乾燥し(ステップS11)、微粉砕機で微粉砕して(ステップS12)、微粉砕木粉4とした。ここで、微粉砕機としては、河本鉄工(株)製のミクロンコロイドミルを使用して、粉砕タービン羽の周速を50m/秒〜80m/秒として、微粉砕を行った。得られた微粉砕木粉4の平均粒子径を、日機装(株)製のレーザ回折式粒度分布測定装置マイクロトラックで測定したところ、平均粒子径は150μmであった。
【0061】
次に、この微粉砕木粉4の100重量部に対して20重量部のポリオール樹脂6を添加して、精密分散混合機(ホソカワミクロン(株)製の横型タービライザーTCX−14)で均一に混合した。ここで、ポリオール樹脂6としては、ポリオキシプロピレングリセルエーテルである三洋化成工業(株)製の「サンニックスGP−400」を使用した。続いて、微粉砕木粉4の100重量部に対して40重量部のイソシアネート樹脂7を添加して、精密分散混合機(TCX−14)で均一に混合し(ステップS13)、更に微粉砕木粉4と同重量の腐葉土(堆肥)5及び残りの粗粉砕木粉3(全量の3分の2)を添加して、均一に混合した(ステップS14)。
【0062】
したがって、本実施例1においては、微粉砕木粉4の100重量部に対して、粗粉砕木粉3を200重量部、腐葉土(堆肥)5を100重量部、有機合成樹脂バインダー6,7を微粉砕木粉4、粗粉砕木粉3及び腐葉土5の合計100重量部に対して15重量部、それぞれ配合している。ここで、イソシアネート樹脂7としては、ポリエチレンポリフェニールポリイソシアネートであるBASE INOAC ポリウレタン(株)製の「ルプラネートM−20S」を使用した。また、微粉砕木粉4及び粗粉砕木粉3には水分が含まれているため、ポリオール樹脂6とイソシアネート樹脂7の混合比は、1:2程度とすることが良好である。
【0063】
こうして製造された最終混合木粉を、プレス成形機の金型の中に充填して(ステップS15)、常温で50kg/cm2 の圧力を1分間掛けてプレス成形した(ステップS16)。これによって、プレス金型の中に充填された最終混合木粉の高さは約3分の1となり、本発明に係る育苗床1が製造された。ここで、プレス成形工程(ステップS16)は常温プレスであるため、製品である育苗床1を取り出した後、直ちに次のプレス成形工程を実施することができ、極めて量産性に優れた製造方法となる。
【0064】
本実施例1においては、育苗床1として、図2(a)に示されるような約90mm角の略立方体のブロック(L1=W1=t1=90mm)を成形したが、常温プレスであり外部からの均一な加熱が不要であるため、厚物成形体としては、500mmt までの厚さのブロックを成形することが可能である。
【0065】
こうして製造された本実施例1に係る育苗床1は、図2(b)に示されるように、内部が空隙の多い構造であるとともに、プレス方向に対して垂直な面に沿って層状の構造となって、植物の苗の細い根は内部の全方向に向いて伸びることができ、植物の苗の太い根は層状の面に沿って伸びることができるため、生育を妨げることがない。
【0066】
また、本実施例1においては、図2(a)に示されるように、育苗床1の上面に植物の種を植えるための開口穴1aを、プレス金型によって成形と同時に設けているが、開口穴がない略立方体の育苗床を製造して、後からドリルや先の尖った金属棒等で開口穴1aを開けるようにすることもできる。
【0067】
これによって、側面にも種を植えるための開口穴1aを設けることができるため、植物の特性によって、より適した位置に種を植えることができる。具体的には、太い根が垂直方向に伸びる植物の場合には側面に開口穴1aを設け、太い根が水平方向に伸びる植物の場合には上下面に開口穴1aを設けるのが好ましい。
【0068】
次に、本実施例1に係る育苗床1の具体的な使用例について、図3を参照して説明する。図3に示されるように、本実施例1に係る育苗床1を、プラスチック製のトレイ9の中に2個並べて入れ、一方の育苗床1の開口穴1aにはシシトウP1の種を入れて腐葉土を被せ、他方の育苗床1の開口穴1aには唐辛子P2の種を入れて腐葉土を被せた。そして、トレイ9の中に、適切な濃度に液肥を溶かした水溶液10を、トレイ9の深さの半分程度まで満たした。
【0069】
これによって、多孔質の育苗床1が水溶液10を吸い上げて、シシトウP1の種及び唐辛子P2の種に適度の水分が与えられる。トレイ9内の水溶液10の量をいくら増やしても、多孔質の育苗床1は一定量の水溶液10のみを吸い上げるため、過度の水分による根腐れ等の心配はない。シシトウP1及び唐辛子P2の苗が育って、育苗床1の水溶液10が吸収されると、育苗床1はその分の水溶液10をトレイ9から吸い上げて補給する。
【0070】
トレイ9の水溶液10が全部吸い上げられて空になっても、育苗床1は体積の数倍の水分を保持しているため、1週間程度は水溶液10を追加しなくても水不足となることはない。したがって、水やりの手間が省けて植物P1,P2の世話が楽にできる。このようにして、トレイ9を室内に置いて、種を蒔いてから約1ヶ月後には、図3に示されるように、シシトウP1及び唐辛子P2が育って多数の葉を付け、シシトウP1には花が咲いた。更に、その後、唐辛子P2にも花が咲き、シシトウP1及び唐辛子P2の双方に実が生った。
【0071】
このように、本実施例1に係る育苗床1においては、約90mm角の略立方体のブロックであるため、シシトウP1及び唐辛子P2を植え替えることなく育成することができ、家庭用、特に室内用の植木鉢の代用品として用いることができる。なお、その後の試験の結果、プチトマト、茄子、オクラについても、同様に植え替えることなく生育して結実することが分かった。なお、本実施例1に係る育苗床1は生分解性を有するため、使用済みの育苗床1は通常の土と同様に廃棄することができる。
【0072】
また、本実施例1に係る育苗床1は、図1に示されるように、製造段階において原料を精密分散混合機で混合しており、更に原料の粗粉砕木粉3及び微粉砕木粉4に含まれるリグニン、タンニンが除菌作用を有することから、図3に示されるように、雑草が生えることがなく、また根切虫等の害虫が植物の生育を妨げることもなく、植物を極めて健康に生育させることができる。
【0073】
なお、本実施例1に係る育苗床1の変形例として、図2に示される開口穴1aにシシトウ・茄子・唐辛子・プチトマト・オクラ・胡瓜等の植物の種または苗・球根等を入れて、腐葉土を被せ、シールして植物名を表示したものを、製品として販売することもできる。この場合には、育苗床1の含水率を20%以下とすることによって、植物の種・球根は発芽せず、苗も成育しないため、長期間店頭に並べておくことができ、在庫として保管することもできる。
【0074】
そして、この製品を購入した消費者は、シールをはがして図3に示されるように水溶液を入れた容器に浸すだけで、育苗床1が水溶液を吸い上げて植物が発芽するため、容易に植物を家庭で栽培することができる。更に、本実施例1に係る育苗床1の他の変形例として、製造段階において固体または液体の肥料を混合してプレス成形することによって、消費者は液肥を溶かした水溶液を用意する必要がなく、水を与えるだけで良いので、より手軽に植物を栽培することができる。なお、本実施例1に係る育苗床1は、必要に応じて、製造段階において農薬を混合してプレス成形することもできる。
【0075】
このようにして、本実施例1に係る育苗床1及びその製造方法においては、極めて量産性に優れ、低コストで製造することができ、植え替えの必要がないため苗の根を傷めることがなく、かつ環境保全に貢献でき、木質材料を活用して用土の使用量を必要最小限として、雑草の発生及び害虫の発生を確実に防ぐことができる。
【0076】
実施例2
次に、本発明の実施例2に係る育苗床及びその製造方法について、図4及び図5を参照して説明する。図4は本発明の実施例2に係る育苗床とその使用方法を示す斜視図である。図5(a)は本発明の実施例2に係る育苗床の別の使用方法を示す斜視図、(b)は(a)のB−B断面図である。
【0077】
まず、本実施例2に係る育苗床の製造方法について、図1を参考にして説明する。本実施例2に係る育苗床11の製造方法は、図1のフローチャートに示される実施例1の育苗床1の製造方法とほぼ同様である。異なるのは、有機合成樹脂バインダー6,7を微粉砕木粉4、粗粉砕木粉3及び腐葉土5の合計100重量部に対して25重量部配合している点と、プレス金型の内部形状が平板状であることによって、図4に示されるように、製造される育苗床11も、長さL2=400mm、幅W2=150mm、厚さt2=20mmの平板状である点である。
【0078】
図4に示されるように、このような薄板状の育苗床11に8個の開口穴11aをあけ、中に青ネギP3の種を入れて腐葉土を被せ、長さと幅とが育苗床11と同程度のトレイ12に液肥を溶かした水溶液13を満たして、その上に育苗床11を載置した。青ネギP3が生育して芽を出し根が伸びると、液肥を溶かした水溶液13の中に根が張って、図4に示されるように、水耕栽培のようにして青ネギP3を育てることができる。
【0079】
図5は、本実施例2の変形例であって、同じく育苗床11を用いるとともに、専用の容器14を使用して、植物としてプチトマトP4を育てた場合を示すものである。
【0080】
容器14は、つる状に生育する植物や重い実を付ける植物を育てるための専用の容器であり、植物のつるまたは茎を支持するための支柱15を取付けることができる支柱用孔14aを、6か所に備えている。本実施例2においては、この容器14は陶磁器製であるが、プラスチック等の他の材質から作ることもできる。また、図5(b)に示されるように、容器14は、育苗床11を水平に支持するための突出部14bをも備えている。
【0081】
図5(a)に示されるように、育苗床11の6か所に開口穴11aをあけ、中にプチトマトP4の種を入れて腐葉土を被せ、図5(b)に示されるように、育苗床11を容器14の突出部14bに載せて、容器14内に液肥を溶かした水溶液13を満たした。プチトマトP4が生育してきたら、支柱用孔14aにそれぞれ支柱15を立て、プチトマトP4の枝が倒れないようにビニル紐等で縛り付ける。これによって、プチトマトP4の枝に実がたくさん生っても枝が折れることがなく、健康に生育させることができる。
【0082】
このようにして、本実施例2に係る育苗床11及びその製造方法においては、極めて量産性に優れ、低コストで製造することができ、植え替えの必要がないため苗の根を傷めることがなく、かつ環境保全に貢献でき、木質材料を活用して用土の使用量を必要最小限として、雑草の発生及び害虫の発生を確実に防ぐことができる。
【0083】
実施例3
次に、本発明の実施例3に係る育苗床について、図6を参照して説明する。図6(a)は本発明の実施例3に係る育苗床(小育苗床の集合体)を示す斜視図、(b)は実施例3に係る育苗床に植物の種を植えてトレイに入れた状態を示す斜視図、(c)は実施例3に係る育苗床を小育苗床に分離する様子を示す斜視図である。
【0084】
図6(a)に示されるように、本実施例3に係る育苗床16は、6×8=48個の小育苗床16Aの集合体である。各小育苗床16Aの大きさは、長さL3=幅W3=40mm、厚さt3=20mmであり、育苗床16の全体の大きさは、長さ=320mm、幅=240mmである。このように、プレス金型の上型の形状を変えるだけで、図1のフローチャートに示される上記実施例1と同様にして、小育苗床16Aの集合体16を一度に製造することができる。
【0085】
本実施例3においては、図6(b)に示されるように、製造した育苗床16を裏返して、小育苗床16Aごとに開口穴16aを開け、開口穴16aの中にはペチュニアP5の種を蒔いて、育苗床16全体を浅いトレイ17に入れ、トレイ17中に液肥を溶かした水溶液18を満たした。やがて、ペチュニアP5が発芽して、苗が適度な大きさにまで生育したら、図6(c)に示されるように、小育苗床16Aごとに分割して、店頭に並べて販売することができる。
【0086】
ペチュニアP5の苗付きの小育苗床16Aを購入した消費者は、家庭のプランターや庭等に小育苗床16Aをそのまま植えるだけで、小育苗床16Aが木粉と腐葉土を主体としたものであるため次第に土に変化し、ペチュニアP5を更に大きく育てることができ、園芸を気軽に楽しむことができる。そして、小育苗床16A及び小育苗床16Aの集合体である育苗床16は、量産することができるため極めて低コストで供給される。更に、小育苗床16Aは、図1のフローチャートに示されるようにして製造されるため、雑草が生えたり害虫が繁殖したりすることがない。
【0087】
このようにして、本実施例3に係る育苗床16及びその製造方法においては、極めて量産性に優れ、低コストで製造することができ、植え替えの際にそのまま植えることができるため苗の根を傷めることがなく、かつ環境保全に貢献でき、木質材料を活用して用土の使用量を必要最小限として、雑草の発生及び害虫の発生を確実に防ぐことができる。
【0088】
上記各実施例においては、微粉砕木粉4の100重量部に対して、粗粉砕木粉3を200重量部、腐葉土(堆肥)5を100重量部、有機合成樹脂バインダー6,7を微粉砕木粉4、粗粉砕木粉3及び腐葉土5の合計100重量部に対して15重量部または25重量部、それぞれ配合した場合について説明したが、各成分の配合比はこれに限られるものではなく、自由に変更することができる。特に、微粉砕木粉4の100重量部に対して、粗粉砕木粉3が100重量部〜600重量部、腐葉土5が75重量部〜200重量部、有機合成樹脂バインダー6,7が微粉砕木粉4、粗粉砕木粉3及び腐葉土5の合計100重量部に対して15重量部〜25重量部であることが好ましい。
【0089】
また、上記各実施例においては、有機合成樹脂バインダーとしてポリオール樹脂6とイソシアネート樹脂7を用いた場合について説明したが、その他の有機合成樹脂バインダーを用いることもできる。特に、粗粉砕木粉3・微粉砕木粉4・腐葉土(堆肥)5の含水率が高い場合には、ポリオール樹脂6を用いる必要はなく、イソシアネート樹脂7のみを有機合成樹脂バインダーとして用いることができる。
【0090】
更に、上記各実施例においては、育苗床1,11,16を適切な濃度の液肥を溶かした水溶液10,13,18に浸す場合について説明したが、育苗床の製造工程において固体または液体の肥料を混合しておくことによって、液肥を溶かした水溶液を必要とせず、ただの水に浸すだけで植物が生育するようにすることもできる。
【0091】
本発明を実施するに際しては、育苗床のその他の部分の構成、形状、数量、材質、大きさ、接続関係、製造方法等についても、育苗床の製造方法のその他の工程についても、上記各実施例に限定されるものではない。なお、本発明の各実施例で挙げている数値は、臨界値を示すものではなく実施に好適な値を示すものであるから、上記数値を若干変更してもその実施を否定するものではない。
【符号の説明】
【0092】
1,11,16 育苗床
1a,11a,16a 開口穴
3 粗粉砕木粉
4 微粉砕木粉
5 腐葉土(堆肥)
6 ポリオール樹脂
7 イソシアネート樹脂
9,12,17 トレイ
10,13,18 水溶液
14 容器
14a 支柱用孔
15 支柱
16A 小育苗床
P1,P2,P3,P4,P5 植物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粉砕木粉と、粗粉砕木粉と、腐葉土及び/または籾殻薫炭と、有機合成樹脂バインダーとを含有する育苗床であって、
前記微粉砕木粉は平均粒子径が30μm〜500μmの範囲内であり、前記粗粉砕木粉は平均粒子径が1mm〜10mmの範囲内であり、
前記微粉砕木粉と前記粗粉砕木粉と前記腐葉土及び/または籾殻薫炭と前記有機合成樹脂バインダーを精密分散混合機で混合した後、常温で30kg/cm2 〜100kg/cm2 の範囲内の圧力を掛けてプレス成形してなることを特徴とする育苗床。
【請求項2】
配合割合が、前記微粉砕木粉100重量部に対して、前記粗粉砕木粉が100重量部〜600重量部、前記腐葉土及び/または籾殻薫炭が75重量部〜200重量部、前記有機合成樹脂バインダーが前記微粉砕木粉、前記粗粉砕木粉及び前記腐葉土及び/または籾殻薫炭の合計100重量部に対して、5重量部〜25重量部であることを特徴とする請求項1に記載の育苗床。
【請求項3】
前記有機合成樹脂バインダーは、イソシアネート樹脂、またはポリオール樹脂及びイソシアネート樹脂であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の育苗床。
【請求項4】
含水率が6%〜20%の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の育苗床。
【請求項5】
一つの面に浅い穴を開けて植物の種または球根を入れて腐葉土及び/または籾殻薫炭及び/または土を被せたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の育苗床。
【請求項6】
前記圧力を掛けた方向の厚さが該方向に垂直な方向の長さの5%〜50%の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の育苗床。
【請求項7】
平均粒子径が30μm〜500μmの範囲内の微粉砕木粉を有機合成樹脂バインダーと混合して木粉混合物とする木粉混合工程と、
平均粒子径が1mm〜10mmの範囲内の粗粉砕木粉及び腐葉土及び/または籾殻薫炭を前記木粉混合物と精密分散混合機で混合して原料混合物とする精密分散混合工程と、
前記原料混合物をプレス金型に充填して常温で30kg/cm2 〜100kg/cm2 の範囲内の圧力を掛けてプレス成形し、育苗床とするプレス成形工程と、
を具備することを特徴とする育苗床の製造方法。
【請求項8】
配合割合が、前記微粉砕木粉100重量部に対して、前記粗粉砕木粉が100重量部〜600重量部、前記腐葉土及び/または籾殻薫炭が75重量部〜200重量部、前記有機合成樹脂バインダーが前記微粉砕木粉、前記粗粉砕木粉及び前記腐葉土及び/または籾殻薫炭の合計100重量部に対して、5重量部〜25重量部であることを特徴とする請求項7に記載の育苗床の製造方法。
【請求項9】
前記有機合成樹脂バインダーは、イソシアネート樹脂、またはポリオール樹脂及びイソシアネート樹脂であることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の育苗床の製造方法。
【請求項10】
前記プレス金型の内壁面に前記微粉砕木粉の割合の多い原料混合物を充填し、その内側には前記粗粉砕木粉の割合の多い原料混合物を充填することを特徴とする請求項7乃至請求項9のいずれか1つに記載の育苗床の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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