肺中に観察される結合組織に対する自己免疫反応が関与する、肺疾患の治療のための分子
多様な態様は、肺のような臓器に観察されるコラーゲンのような結合組織に対する自己免疫応答を含む医学状態を診断する及び治療するための方法を含む。一つの方法において、特発性肺線維症(IPF)のような肺疾患及び障害が、例えば、V型を含む多様な型のコラーゲンに対する自己免疫応答の証拠について、患者から得られた体液又は組織サンプルを分析することにより診断される。V型コラーゲンに対する自己免疫応答の証拠についての一つの型のアッセイは、患者から体液又は組織サンプルを得ること、該サンプルの少なくとも一部と抗V型コラーゲンに対する抗原を接触させること、及び該サンプル中の抗V型コラーゲンの存在を示す変化についてサンプル及び抗原の混合物をモニターすることを含んでなる。別の態様は、V型コラーゲンを含む多様なコラーゲンのエピトープの療法的有効量を投与することにより、IPFのような肺疾患を治療することを含む。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
特許請求の優先権
本出願は、その全体が本明細書に援用される、2006年1月13日に出願された米国仮特許出願番号60/759,195の優先権を主張する。
【0002】
政府資金提供の記載
米国政府は、米国保健研究所(NIH)からの連邦補助金番号HL60797に従って本発明に特定の権利を所有することができる。
【0003】
技術分野
多様な態様は一般に、肺疾患のための試験及び治療に関し、いくつかの側面はV型コラーゲンのような、肺結合組織に対する自己免疫応答の証拠を同定することを含んでおり、さらに他の側面は、コラーゲン及びコラーゲン様分子の治療的に有効量を患者に投与することをにより患者の免疫応答を変調し、例えばV型コラーゲンに対して患者を耐性化することを含んでいる。
【0004】
背景技術
自己免疫応答を含む病態学は周知である。所与のヒト又は動物自身の免疫システムにより組織に生じた傷害が関与する状態には、例えば、1型(若年性)糖尿病、関節リウマチ、多発性硬化症、及び例えば、乾癬を含むいくつかの炎症状態が含まれる。典型的には、動物自身の免疫システムの一部は、動物自身の組織の抗原への攻撃を開始する。前記の自己免疫疾患により例示されるごとく、その結果は、糖尿病のような管理可能ではあるが慢性の状態の生成から、多発性硬化症でしばしば起こるような完全な身体障害及び早死までの範囲の破局的なものでありうる。
【0005】
自己免疫応答に具体的に関係する多様な疾患に加え、他の疾患も誤った免疫応答が関与しうる。従って、患者自身の免疫応答が疾患の進行に果たしうる役割(もしあれば)について決定するため、多様な疾患の病因を試験することに強い関心がある。
【0006】
患者自身の免疫システムによる不可欠な組織に対する攻撃を含む別の病態は、臓器又は組織移植後の同種移植片拒絶である。心臓、腎臓、肝臓及び肺を含む種々の臓器の移植は、しばしば移植された組織を攻撃する移植レシピエントの免疫システムを生じる。同種移植片拒絶を最小化するために、臓器ドナー及びレシピエントを適合させることに大きな注意が払われる。それでも、一卵性双生児間を除けば、完全な適合を行うことは事実上不可能である。その後の同種免疫応答を管理するため、ほとんどの移植レシピエントは、そうしないと移植された臓器及び/又は組織を破壊するであろう自己免疫応答を制御するため、生存期間を通して免疫抑制化合物で処置される。
【0007】
同種移植片拒絶は、お互いに決して完全適合ではない個体間の肺移植において特に問題である。肺移植の分野において、肺移植では他のほとんどの固形臓器の移植よりもより頻繁に拒絶が起こると広く信じられている。実際、肺同種移植片レシピエントにおける死亡の第一位の原因は、閉塞性細気管支炎(bronchiolitis obliterans)(BO)として知られている慢性拒絶である(Trulock, 1997; Westra et al., 1990 )。慢性拒絶の病因はあまりよく理解されていない;しかしながら、慢性拒絶を発生するリスクは、反復した急性拒絶病状発生と相関していると信じられている。
【0008】
閉塞性細気管支炎(BO)は、肺の長期間受容及び同種移植片レシピエントの生存に主要な障害である慢性拒絶の一形態であり、肺移植後5年生存者の少なくとも60%が罹患している。BOの組織病理学は、炎症性及び損傷性応答が、最終共通経路、小気道閉塞に付随する病変の発生に導くことを示唆している。どこにでも存在するドナーHLA抗原が急性拒絶応答の標的及び刺激であると信じられている。しかしながら、より新しい治療薬は急性拒絶の発生を減少させたにもかかわらず、BOの発生は変化せず、組織特異的抗原への薬剤耐性宿主応答が慢性拒絶プロセスに関与しうるを示唆している。
【0009】
臓器拒絶は、多くの場合において、宿主Tリンパ球による同種(ドナー)主要組織適合性複合体(MHC)分子の認識により開始され、上方調節された細胞性及び体液性免疫を導くと考えられている。多様な治療には、移植された臓器への免疫応答の重症度を軽減するために免疫抑制剤を投与することが含まれる。残念ながら、多くの場合において、これらの療法は連続する拒絶病状発生を防止することに失敗し、それ故、免疫寛容として知られている同種移植片のあいまいな受容を誘導する最終目標は分かりにくいままである。
【0010】
同種MHC分子は、拒絶間の免疫応答の刺激及び標的である。それ故、MHC抗原と相同的であることができるMHC由来ペプチド又は合成ペプチドは、同種移植片に対する免疫学的寛容性を誘導することを試みている研究の焦点となってきた(Krensky and Clayberger, 1997; Oluwole et al., 1993)。加えて、ごく最近の研究報告はMHC分子に由来する非多形合成ペプチドによる、インビトロでの複数の同種MHC分子に対する寛容の誘導を報告している(Murphy et al., 1999)。しかしながら、これらのいずれもが、同種移植片拒絶、特に、肺同種移植片拒絶の問題を解決したようには思われない。
【0011】
ドナーMHC分子の多形領域の認識は通常、同種免疫応答についての刺激であり、ドナーMHCに由来するペプチドにより誘導された免疫学的寛容は、ドナーMHC分子のアレルに特異的でありうる。従って、個体間で高度に保存されている、及び複数のMHCアレルにわたって免疫学的寛容も誘導するタンパク質/ペプチドの同定は、同種移植片拒絶に苦しんでいる又は発生するリスクがある患者を治療するための効果的な療法を開発することにおいて非常に重要でありうる。しかしながら、肺同種移植片に対する免疫学的寛容の誘導についてのこうしたタンパク質/ペプチドの使用は十分に評価されていない。さらに、こうした寛容に有用であるタンパク質/ペプチドはごく少数しか同定されていない。
【0012】
さらに、ドナー特異的輸血、ドナー由来APCの胸腺注入、又は移植に先だったドナーMHC分子に由来するペプチドでの全身免疫化(Krensky and Clayberger, 1997)のような固形臓器同種移植片に対する寛容を誘導するための異なった技術の存在にもかかわらず、これらの技術のいずれもが有効であるには、十分な時間(即ち、数週間から数ヶ月)を寛容誘導が発生するのに当てるため、移植に先立った数週間前には特異的ドナーMHC分子が既知でなければならない。しかしながら、典型的なシナリオにおいては、可能性のあるドナーの同定と移植手術の間には数時間のみしかなく、ほとんどの場合、ほとんどの移植片レシピエントに寛容を誘導する十分な時間はない。
【0013】
臓器移植の必要性にそれ自身必然的に伴う、自己免疫疾患をすでに患っている移植片レシピエントは、移植された臓器の破局的な拒絶に対して高められたリスクにさらされる可能性がある。従って、いずれの根底にある自己免疫に基づいた病態も、移植前ではないにしても確実に移植後には、同定する及び多分治療する必要がある。診断する及び治療するのが困難であり、そしてその根底にある原因が未知であり、さらにそれらを診断する及び治療する取り組みを複雑にしている、特発性肺線維症(IPF)のような多様な肺疾患及び障害もある。
【0014】
よって明らかに、IPFのような自己免疫疾患を同定する及びこうした疾患を治療する又は少なくとも管理するために使用することが可能である方法に対する要求がある。本要求は、一つの主要な治療、肺移植がそれ自身存在している病原性自己免疫応答によりひどく危険にさらされている場合に特に深刻である。多様な側面及び態様は、多様な及び特異的な型のコラーゲンのような肺の成分に対する望まれない自己免疫応答により引き起こされる、又は悪化する疾患を診断すること及び治療することに関している。
【0015】
概要
一つの態様は、ヒト又は動物患者においてIPFのような肺疾患又は障害を評価する方法である。一つの態様は、患者から体液又は組織のサンプルを得ること、及び該サンプルを分析して、患者の免疫システムのいずれかの成分が、患者身体の臓器中に見出される結合組織のいずれかの要素に対する免疫応答を開始したかどうかを決定する工程を含んでなる。典型的な結合組織成分は、いずれかの型のコラーゲン及び/又はコラーゲンの抗原性成分を含むことができる。自己免疫応答を惹起することができる多様なコラーゲンには、例えば、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、V型コラーゲン及びVI型コラーゲンが含まれる。これらの患者の肺疾患又は状態を評価するための試験は、患者から体液又は組織のサンプルを得ること、サンプルの少なくとも一部とV型コラーゲンの少なくとも一つの抗原性成分(エピトープ)を接触させること、及びサンプル中の少なくとも一つの抗V型コラーゲン抗体の存在を示すいずれかのシグナルについての試験をモニターすること、の工程を含んでなることができる。こうした試験は、試験を行うために必須又は有益であることができるいずれかの型の、追加の成分の存在を含むことができる。こうした成分には、限定されるわけではないが、抗V型抗体に結合する二次抗体、レポーター分子又は原子、抗原性成分を結合するための表面、緩衝剤、安定剤、抗菌剤などが含まれる。
【0016】
一つの側面は:肺からの体液若しくは組織又は肺と接触していた体液を得ること、サンプルの少なくとも一部とV型コラーゲンの少なくとも一つのエピトープ又は抗V型コラーゲン抗体と優先的に結合するいずれかの他の分子を接触させること、及び抗V型抗体とサンプル中のV型コラーゲンの少なくとも一つのエピトープの結合に付随する変化を検出すること、の工程を含んでなるアッセイである。このアッセイ及びそれらの変法は、IPFなどのような肺疾患、又はV型コラーゲンの少なくとも一部への自己免疫応答を含むいずれか他のタイプの肺疾患又は障害をアッセイするために使用し得る。
【0017】
別の態様は、患者が肺の成分に対する自己免疫を有しているかどうかを決定する方法である。典型的な自己免疫応答は、体液性又は細胞性免疫のいずれか又は両方を含んでもよい。こうした応答には、例えば、遅延型過敏性応答が含まれる。自己免疫特性を有しうる肺疾患には、限定されるわけではないが、特発性肺線維症(Idiopathic Pulmonary Fibrosis)、急性呼吸促迫症候群(Acute Respiratory Distress)、成人呼吸促迫症候群(Adult Respiratory Distress Syndrome)、二次膠原病性脈管疾患(secondary collagen vascular disease)、他の線維性肺疾患(fibrotic lung disease)などが含まれる。
【0018】
一つの態様は、自己免疫特性を有する肺疾患又は状態を発生する増加したリスクを有する特異的患者又は患者の群を同定するため、患者をスクリーニングすることを含む。こうした疾患又は状態には、限定されるわけではないが、特発性肺線維症(IPF)、急性呼吸促迫症候群、成人呼吸窮迫症候群、二次膠原病性脈管疾患、他の線維性肺疾患など、あるいは少なくとも一部はV型コラーゲンのような肺結合組織への自己免疫反応による他の状態が含まれる。これらの患者をスクリーンするための試験は、患者から体液又は組織のサンプルを得ること、サンプルの少なくとも一部とV型コラーゲンの少なくとも一つのエピトープを接触させること、及びサンプル中の少なくとも一つの抗V型コラーゲン抗体の存在を示すいずれかのシグナルについてサンプル及び抗原の混合物をモニターすること、の工程を含んでもよい。
【0019】
さらに別の態様は、患者の肺疾患の進行をモニターすること、又はこうした肺の疾患又は障害を患っている患者を治療するために使用した種々の治療計画をモニターすることを含む。これらの患者をモニターする試験は、患者から体液又は組織のサンプルを得ること、サンプルの少なくとも一部とV型コラーゲンの少なくとも一つのエピトープを接触させること、及びサンプル中の少なくとも一つの抗V型コラーゲン抗体の存在をの指標となるいずれかのシグナルについての試験をモニターすること、の工程を含んでもよい。
【0020】
一つの態様は、IPFのような疾患のための診断試験を含み、いくつかの態様において、本試験は、患者から体液又は組織のサンプルを得ること、サンプルの少なくとも一部とV型コラーゲンの少なくとも一つのエピトープを接触させること、及びサンプル中の少なくとも一つの抗V型コラーゲン抗体の存在を示すいずれかのシグナルについて混合物をモニターすること、の工程を含んでもよい。
【0021】
さらに別の態様は、BOSを発生する増加したリスクを有する候補者、例えば、V型コラーゲンのような、肺中に観察されるコラーゲンへの自己免疫応答について試験陽性の患者を同定するために、肺移植候補者を評価することを含む。これらの候補者を評価する方法は、候補者から体液又は組織のサンプルを得ること、サンプルの少なくとも一部とV型コラーゲンの少なくとも一つのエピトープを接触させること、及びサンプル中の抗V型抗体が抗原に結合した証拠について抗原及びサンプル混合物をモニターすること、の工程を含んでもよい。これらの候補者を評価するための試験は、抗原を固体表面に結合させること、サンプルと抗原を接触させること、抗原がサンプル中に存在する抗原に対する抗体に結合するための時間を見越すこと、及び過剰の抗体及び/又はサンプルを除去するために結合した抗原−抗体複合体を洗浄すること、の工程を含んでもよい。追加の工程は、抗原抗体複合体にレポーター部分を結合させること、及び抗原に結合した抗体の存在の指標となるシグナルの何らかの変化をについてシステムをモニターすることを含んでもよい。いくつかの態様において、試験における抗原は、V型コラーゲンの少なくとも一つのエピトープである。
【0022】
別の態様は、V型コラーゲンのような肺中の結合組織に対する自己免疫応答が関与する肺疾患を同定するための方法を試験することを含む。いくつかの試験する方法は、所与の患者から体液又は組織のサンプルを得ること、及びV型コラーゲンに対する自己免疫応答の証拠についてサンプルの少なくとも一部をアッセイすること、の工程を含んでもよい。一つの態様において、V型コラーゲン又はそれらのエピトープ抗原性類似体に対する遅延型過敏性応答の証拠についてサンプルが分析される。さらに別の態様において、V型コラーゲンに対する抗体又はそれらのエピトープ又は抗原性類似体の存在についてサンプルが分析される。
【0023】
さらに別の態様は、閉塞性細気管支炎(bronchiolitis obliterans syndrome)(BOS)を発生する高められたリスクを有する患者を同定する、及び/又は該症候群の進行又は該症候群を治療するために使用された治療の有効性をモニターする方法である。これらの方法は一般に、患者から血清、血液、間質肺液、痰、粘液又は組織のサンプルを得ること、肺の結合組織の成分に対する自己免疫反応の証拠についてサンプルをアッセイすること、の工程を含む。一つの態様において、患者は肺移植の候補者又はレシピエントであり、該サンプルはV型コラーゲンに対する宿主免疫応答の証拠についてアッセイされる。一つの態様において、該サンプルはV型コラーゲンに対する細胞性免疫についてアッセイされる。さらに別の態様において、該サンプルはV型コラーゲンに対する体液性免疫についてアッセイされる。
【0024】
別の態様は、体液又は組織のサンプルを、V型コラーゲンのエピトープ又はそれらの類似体、一部又は成分に対する免疫の証拠をアッセイすることを含んでなる。
【0025】
さらに別の態様は、V型コラーゲン又はそれらの抗原性部分又は断片に対する自己免疫応答のため、移植された組織を拒絶することについて高められたリスクにある予定肺移植レシピエントを同定する方法である。
【0026】
さらに別の態様は、V型コラーゲン又はそれらのエピトープ又は抗原性断片に対する自己免疫応答による移植された組織を拒絶する継続するリスクを評価するため、肺組織移植受け取りをモニターする方法である。
【0027】
さらに別の態様は、患者の臓器中に見出されるV型コラーゲンのような結合組織に対する自己免疫応答が関与する疾患又は障害を有する患者、あるいは疾患又は障害を発生するリスクのある患者を治療するための方法である。一つの態様において、該方法は、免疫抑制化合物、あるいはV型コラーゲンのような抗原の存在に対して患者を寛容化する化合物を提供すること、及び所与の患者に該化合物の治療的有効量を投与すること、の工程を含んでなる。こうした化合物には、限定されるわけではないが、多様なコラーゲン又はコラーゲンの一部、例えば、V型コラーゲン又はそれらのエピトープ又は抗原性類似体(antigenic analogues)が含まれる。自己免疫応答を誘導することができる典型的結合組織成分には、限定されるわけではないが、いずれかの型のコラーゲン及び/又はコラーゲンの抗原性成分(エピトープ)が含まれる。自己免疫応答を惹起することができる多様なコラーゲンには、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、V型コラーゲン、VI型コラーゲン及びそれらの多様な抗原性成分が含まれる。
【0028】
さらに別の態様は、患者の肺組織中の又は移植された肺の組織中の、コラーゲン又はコラーゲンの抗原性成分に対する患者の自己免疫応答を抑制するためにコラーゲン又はコラーゲンの抗原性成分を提供することによる、特発性肺線維症、成人呼吸窮迫症候群及び他の線維性肺障害、急性呼吸促迫症候群、閉塞性細気管支炎(BOS)などのような肺疾患又は障害の進行を治療する又は防止する方法である。こうした療法は、患者の免疫システムをより良好にコラーゲンを寛容するように条件付け、及びコラーゲンに対する患者の自己免疫応答を少なくとも部分的に抑制すると決定された期間にわたって、患者にコラーゲン又はコラーゲンの成分又はそれらの類似体の安全で及び有効な用量を投与することを含んでもよい。一つの態様において、該コラーゲンはV型コラーゲン又はそれらの抗原性断片又は類似体である。
【0029】
さらに別の態様は、コラーゲン又はコラーゲンの抗原性部分に対するT細胞活性及び遅延型過敏性応答を含んでもよい、自己免疫応答により引き起こされる又は悪化される肺疾患の形態を治療することを含んでなる。一つの態様において、患者に投与されるコラーゲンは、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、V型コラーゲン、VI型コラーゲン及びそれらの多様な抗原性成分から成る群より選択される。これらの化合物は、限定されるわけではないが、肺内滴下注入、経口、吸入、皮下注射、点滴、直接注入などを含む多様な手段により投与することができる。
【0030】
さらに別の態様は、移植された臓器及び組織を拒絶する増加したリスクを有する患者を同定する方法である。典型的には、この方法は、患者から血液、血清、体液、痰又は組織のサンプルを採取すること、及び、患者の免疫システムのいずれかの成分が、患者身体の臓器中にある結合組織のいずれかの要素に対する免疫応答を開始したかどうかを決定するためにサンプルを分析すること、の工程を含んでなる。典型的な臓器には、限定されるわけではないが、肺、心臓、肝臓、腎臓、膵臓及び眼の構成要素が含まれる。典型的な結合組織成分には、いずれかの型のコラーゲン及び/又はコラーゲンの抗原性成分が含まれる。自己免疫応答を惹起することができる多様なコラーゲンには、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、V型コラーゲン、VI型コラーゲンが含まれる。
【0031】
さらに別の態様は、所与の患者に自己免疫に基づいた肺病態を発生するリスクがあるかどうかを決定するための試験を実施するための、又はこうした状態とすでに診断された患者の健康をモニターするためのキットである。一つの態様において、該キットは、コラーゲンに対する細胞性及び/又は体液性自己免疫の証拠を検出するために適した、少なくとも一つのコラーゲンの抗原性成分、例えば、V型コラーゲン又はエピトープ、断片又はそれらの類似体を含む。一つの態様において、該キットはさらに、V型コラーゲンに対する自己免疫応答の指標である少なくとも一つの分子の存在下、シグナルの変化を示す少なくとも一つの原子か又は分子のレポーター部分を含む。さらに別の態様において、該キットはさらに、試験の半減期、感度及び/又は信頼性を増加させるように働く、少なくとも一つの緩衝液、安定剤、保存剤、抗菌化合物、補助剤などを含む。一つの態様において、キットはさらにフロイントアジュバント又は成分又はそれらの類似体を含む。
【0032】
発明の詳細な説明
本発明の原理の理解を進める目的で、ここでそれらの好ましい態様が参照され、及びそれを記述するために特別の専門用語が使用されるであろう。とは言っても、本発明に関連する当業者には普通に生じるであろうような、企図されている本発明の原理のこうした改変、修飾及びさらなる応用には、本発明の範囲の限定は意図されないことが理解されるであろう。
【0033】
多数の説明及び実験が説明として提供されるが、限定ではない。記述、比較、説明又は実施例により提供されていようとなかろうと、本発明がどのように働くかの理論は限定と考えるべきではない。
【0034】
本明細書で開示された及び暗示された組成物及び方法論は、ヒト及び他のより下等動物(例えば、愛玩動物、動物園又は家畜動物)両方への応用に有用である。従って、以下の実施例及び議論はガイダンス及び説明のつもりで示されており、限定ではない。
【0035】
本明細書で使用される用語「評価すること」は、例えば、句「〜について患者を評価すること」で使用される場合、限定されるわけではないが、所与の疾患、障害又は状態などに相関することが示されているいずれかの識別できるパラメータについて診断する、スクリーニングする、評価する、モニターすることなどを含む。本明細書で使用される用語「評価すること」は、限定されるわけではないが、以下の活動の少なくとも一つを含む:特異的又は一般的医学状態を有しているかどうか決定するために患者を診断すること;疾患の進行又は治療計画の有効性を追跡するため、既知の又は疑われる医学状態を有する患者をモニターすること;所与の医学状態を発生するであろう可能性を見積もるために患者をスクリーニングすること;所与の患者が所与の疾患又は医学状態を有する又は発生するリスクがある確率を評価すること;疾患、症候群又は状態を発生する傾向又は感受性の存在を検出すること;及び所与の医学状態、疾患、障害などを発生すること及び/又は回復することについての長期又短期予後を予測すること。
【0036】
本明細書で使用される用語「医学状態」とは、症候群、疾患、状態などを含む。
【0037】
ラット肺移植モデルでの研究は、特異的抗抗V型コラーゲン自己免疫応答が原因で肺が拒絶されることを示した。追加の議論については:その全体が本明細書において援用されるDavid S. Wilkes により2003年9月13日に出願された米国特許出願番号10/243,797 に基く米国特許出願公開番号2003/0078208A 、及びDavic C. Mares et. al., による"Type V Collagen Modulates Alloantigen-Induced Pathology and Immunology in the Lung," Am. J. Respir, Cell Mol. Biol, Vol. 23, pp. 62-70, 2000 、を参照されたい。V型コラーゲン[col(V)]は肺に存在するマイナーなコラーゲンであり(Madri and Furthmayr, 1980)、細気管支周囲結合組織(Madri and Furthmayr, 1979)、肺胞間質(Konomi et al, 1984)及び毛細血管基底膜(Madri and Furthmayr, 1979)に位置する。αl(V)のα−1鎖はXI型コラーゲンα2鎖[α2(XI)]とほとんど76%相同的であり(Cremer et al., 1994)、及びα2(XI)の遺伝子はマウス及びヒトのMHCクラスII座位に位置しており(Hanson et al., 1989)、及びMHCクラスIIとアミノ酸配列を共有している(Wilson et al., 1995)。MHC由来ペプチドは、肺以外の同種移植片において寛容を誘導するために利用されてきた。本発明者は、col(V)におけるMHC「様」配列の存在可能性のため、肺同種移植片における免疫応答を変調するためにcol(V)を選択した。
【0038】
ここで(以下に示されている)実施例1の結果を参照すると、コラーゲンに対して増加した自己免疫応答を有する肺移植患者は、移植拒絶についてより高いリスクであるようである。これら及びその他の観察に従い、一つの態様は、肺移植を待っている又は受けた患者のコラーゲンに対する細胞性か又は体液性自己免疫応答を測定することによる、肺移植拒絶の進行を予測する及び/又は追跡する方法である。一つの態様において、追跡された肺移植拒絶のバイオマーカーは、V型コラーゲン及び/又はV型コラーゲンのエピトープである。
【0039】
ミオシン及び熱ショックタンパク質のような自己抗原は、心臓及び皮膚同種移植片拒絶の間、免疫応答の標的になり得ることが、医学文献に報告されている(Fedoseyeva, et al., 1999; Duquesnoy, et al., 1999; Birk, 1999)。げっ歯類における肺同種移植片拒絶が、組織弾力性及び伸展性に必須であり、肺及び皮膚に観察されるマイナーコラーゲン(Schwarze, et al., 2000)であるV型コラーゲンに対するT細胞応答に関連していることも報告されている(Mares, et al., 2000)。col(V)の断片が肺移植後に気管支肺胞洗浄(BAL)液内に放出され、col(V)特異的T細胞の養子移入が移植された肺同系移植片中で「拒絶様」病態を誘導する(Haque, et al., 2002)。肺移植に先だってラットにcol(V)を摂取させることにより誘導された経口寛容は、急性拒絶及びBOの発生を抑止した(abrogated)(Yasufuku et al., 2001; Yasufuku et al., 2002)。
【0040】
一つの形式的可能性は、肺移植片を受けた患者はcol(V)に対する細胞性及び/又は体液性免疫を発生する可能性があり、及びこの自己免疫応答がBOを発生するリスクを増加させるというものである。(以下に示されている)実施例2の結果のいくつかは、肺移植後のcol(V)免疫反応性の発生と一致しており、閉塞性細気管支炎症候群(BOS)の主要なリスクファクターを代表している。
【0041】
BOの組織病理学は、炎症及び傷害への応答が最終共通経路、移植片不全を導く病変の発生を結果として生じることを示唆している。肺移植環境の外部でこの症候群がまれなことは、自己免疫機構がこのプロセスに中心的役割を果たしていることを示している。しかしながら、急性拒絶及びMHC不適合が必ずしもBOSにつながるわけではないという事実は、他の免疫因子が重要である可能性も示唆している。(以下に示されている)実施例2の結果は、肺移植が自己抗原、V型コラーゲンに対する新自己免疫の発生を誘導しうることを示唆している(Estenne, et al., 2002)。実際、この研究で観察された肺移植後のcol(V)自己免疫により与えられた相対的リスクは、以前にBOSの移植後リスクとして同定された、急性拒絶病状発生のような因子よりもおよそ8〜10倍大きかった(Sharpies, et al., 2002)。
【0042】
肺移植片レシピエントの末梢血中のcol(V)DTH反応性の原因であるT細胞の予備的分析は、col(V)特異的CD8+Tエフェクター細胞の役割は排除できないけれども、大部分はCD4+であることを示している(Burlingham, W., Rodriguez, D. and Jankowska-Gan, E., 未発表)。ラットモデルにおいて、拒絶肺移植片からのインビトロ培養により誘導されたcol(V)特異的MHCクラスII制限CD4+T細胞クローンは、左肺同系移植片において肺拒絶病態を仲介することが可能であり、いくらかの病態は未処理の右肺にも広がっていた(Haque, et al., 2002)。同一のクローンを正常ラット内へ注入した場合、未処理肺への損傷は観察されず、これらの結果は、同系移植片法に伴っている虚血及び再灌流障害が免疫病態を開始するために必要とされたことを示唆している。拒絶同種移植片から単離されたT細胞のすべてのクローンが病原性であるわけではなく、いくつかは保護的であるようであり(D. Wilkes, 未発表)、col(V)又は他の組織抗原に特異的なCD4+T調節細胞は自己免疫病態を制限することにおいて役割を果たすことができることを示唆している。実際、患者L3におけるBOS発生後の移植片損失への急速な進行、及び抗col(V)自己免疫を有する幾人かの患者における機能の安定化(図IB、左パネル及び1C、中央パネル)は、ヒト(VanBuskirk, et al, 1998: Burlingham, et al., 2000, Cai, et al., 2004)及び非ヒト霊長類(Torrealba, et al., 2004)での腎臓移植で以前に記載されている現象である、ドナー抗原への調節されたDTH応答の喪失又は獲得と相関していた(W. Burlingham and E. Jankowska-Gan, 未発表)。
【0043】
HLA DR不適合は臓器移植の早期急性拒絶の周知のリスクファクターである(Ayoub, et al., 1982)。このことは、なぜDR不適合がBOSに関連しているのかを部分的に説明できる(van den Berg, et al., 2001)。ドナー及び自己抗原に向けられる免疫調節の状態を確立することにより、HLA DR適合が肺移植に有益な役割を果たしている可能性が高い(Rodriguez, et al., 2004)。
【0044】
IV型コラーゲンに対するB細胞自己免疫とグッドパスチャー症候群間のよく確立されたつながりがあり(Hudson et al., 2003)、それはトランスビボDTHアッセイを使用したT細胞レベルで本研究において確認された(図3B)。T細胞仲介傷害による腎臓からのコラーゲンIVの放出は、システムを局所B細胞免疫に、及びこの疾患のラットモデルにおける抗糸球体基底膜IgG沈着に傾かせる。同様に、アロ反応性との関係において、虚血損傷肺移植片からのcol(V)の放出は、col(V)特異的エフェクターT細胞を活性化し、局所col(V)特異的B細胞応答及び上皮下マトリックスにおけるC’−固定IgGの沈着を促進する。
【0045】
本明細書に報告されている実施例2の一つの結果は、IPFを有する患者中に、先在するcol(V)特異的自己免疫が存在するという発見である。肺移植後(REF)のこれらの患者の予後不良の理由と同様に、IPFの病因は謎のままである。抗col(V)特異的T細胞が、この肺疾患の根底にある線維性プロセス、又はIPFのための肺移植における早期不良転帰に寄与かどうかまだ決定されていないが、これらのデータは明瞭にこれらの現象間の関連と一致している。
【0046】
実施例2の予期されなかった結果は、移植に先立ってcol(V)に対する自己寛容を回復する又は強化することにより、IPFを有する又は発生するリスクがあると診断された患者を治療することを示唆している。一つの態様は、間質的な肺内への経口療法により(Yasufuku et al, 2001 ; Yasufuku, et al, 2002)、あるいは、限定されるわけではないが、V型コラーゲン及び抗原性成分及びそれらの変異体を含むコラーゲンに対する患者の寛容を増加させるように設計された、服用量計画での他の減感作戦略により、col(v)を投与することによって、IPFを治療する方法である。
【0047】
さらに別の態様は、自己免疫応答を含む疾患を診断する又はモニターするための抗体に基づいたアッセイである。
【0048】
コラーゲンに対する抗体の存在を検出することは、いくつかの態様に従って、ELISA法によるような多数のイムノアッセイ法のいずれかを使用して達成することができる。標準イムノアッセイ教科書を参照することにより見ることができるように、広範囲のイムノアッセイ技術が利用可能であり、これらには、限定されるわけではないが、シングルサイト及び2−サイト、又は非競合型の「サンドイッチ」アッセイ、ならびに慣用的競合結合アッセイが含まれる。
【0049】
サンドイッチアッセイは中でも最も有用で及び通常使用される、抗体に基づいたアッセイ法であり、多様な態様を実施するために使用することができる。サンドイッチアッセイ技術の多数の変法が存在し、すべてが多様な態様に包含されることが意図される。簡単には、サンプル中の抗体を検出するための典型的なアッセイにおいては、非標識抗原を固体表面に固定化し、そして試験されるべきサンプルを結合された抗原分子と接触させる。適したインキュベーション期間後(即ち、抗体−抗原複合体の形成を可能にする十分な時間)、検出可能なシグナルを生成することができるレポーター分子で標識した抗ヒトIgGのような第二抗体を次ぎに加え、抗体−抗原−標識抗体の形成に十分な時間放置する。未反応材料を洗い流し、そしてサンプル中の検出すべき抗体の存在を、レポーター分子により生成されたシグナルの観察により決定する。結果は、例えば、可視シグナルの単純な観察により、定性的であってもよく、あるいは、問題とするサンプルにより発生されたシグナルを検出されるべき抗体を既知の量含有する対照サンプルと比較することにより、定量的であってもよい。このアッセイの変法には、サンプル及び標識抗体の両方が同時に結合された抗原に加えられる、同時アッセイが含まれる。これらの技術は公知であり、当業者には容易に明らかになるであろういずれかのマイナー変法が含まれる。
【0050】
典型的なサンドイッチアッセイにおいて、抗原は固定化されており、例えば、固体表面に共有結合でか又は受動的に結合されている。いくつかの態様において、固体表面は、典型的には、ガラス又はポリマーであり、最も通常に使用されるポリマーはセルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、塩化ポリビニル又はポリプロピレンである。固体支持体はチューブ、ビーズ、ディスク又はマイクロプレートの形態、又はイムノアッセイの実施に適したいずれかの他の表面であってもよい。多様な結合プロセスが当該技術分野において周知であり、一般に所与の表面への抗原の架橋、共有結合又は物理吸着から成っている。固定化抗原は次ぎに、試験サンプルの添加に備えて洗浄される。試験されるべきサンプルのアリコートを次ぎに固定化抗原と接触させ、十分な期間(例えば、2〜40分)、及びサンプル中に存在する、コラーゲンに対するいずれの抗体の結合も可能にするために適した条件下(例えば、25℃)でインキュベートする。接触時間の実際の長さ、緩衝液条件、温度などは容易に調節可能なパラメータであり、所与の試験について典型的には容易に決定される。インキュベーション期間に続いて、いずれかの結合された抗体を含んでいる固定化抗原を洗浄及び乾燥し、結合された抗体に特異的な第二抗体(例えば、抗ヒトIgG)とインキュベートする。第二抗体はレポーター分子に連結されており、それを抗体−固定化抗原複合体への第二抗体の結合を示すために使用する。
【0051】
用語「部分(moiety)」とは、本明細書で使用される場合、分子、原子、化学官能基などを含む。
【0052】
本明細書で使用される用語「レポーター分子」には、それらの化学的性質により、抗原結合抗体の検出を可能にする分析的に同定可能なシグナルを提供する分子が含まれる。検出は定性的あっても、あるいは定量的であってもよい。この型のアッセイにおいて最も普通に使用される分子には、酵素、フルオロフォア又は放射性核種含有分子(即ち、放射性同位元素)、化学発光分子などが含まれる。酵素イムノアッセイ(EIA)の場合において、酵素は第二抗体に、一般にはグルタルアルデヒド又は過ヨウ素酸によりコンジュゲートされている。しかしながら、容易に認識されるであろうように、広範囲の異なったコンジュゲーション技術が存在し、それらは容易に当該技術分野で利用可能であり、及び特定のアッセイ及び試験に至適の又はほぼ至適の条件は、最少の実験法のみで到達し得る。これらの型のアッセイにおいて普通に使用されるレポーター酵素には、限定されるわけではないが、中でも西洋ワサビペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、βガラクトシダーゼ及びアルカリホスファターゼが含まれる。特定の酵素で使用されるべき基質は、レポーター分子又は原子の存在に関連する所与のシグナルの検出可能な変化の産生(対応する酵素による加水分解で)に対して一般に選択される。上記の発色基質というよりむしろ蛍光生成物を生成する蛍光発生基質を用いることも可能である。ほとんどの場合、酵素−標識抗体は第一の抗体−抗原複合体に加えられ、結合させ、次ぎに過剰の試薬を洗い流す。適切な基質を含有する溶液を抗体−抗原−標識抗体の複合体へ加える。基質は第二抗体に連結された酵素と反応し、検出可能な視覚シグナルを産生し、それは通常分光光度計を使用してさらに定量することができ、サンプル中に存在した抗体の量の指標を与える。用語「レポーター分子」はガラス又はラテックスビーズのような細胞凝集又は凝集の阻害を使用することにも拡張される。加えて、レポーターは、その存在が、例えば、シンチレーション計数によって検出される放射性基又は原子でもあり得る。
【0053】
もしくは、フルオレセイン及びローダミンのような蛍光化合物を抗体へ、それらの結合能を有意に変化させることなく化学的に結合させてもよい。特定の波長の光による照明で活性化した場合、蛍光色素標識抗体は光エネルギーを吸収し、分子の励起性の状態を誘導し、続いて特徴的な色の光を放出し、いくつかの態様において、放射されたシグナルは光学顕微鏡で視覚的に検出可能であり、他の態様において、シグナルは可視スペクトルの外側であることもできる。EIAでのように、蛍光標識抗体は一次抗体−抗原複合体に結合させることが可能である。非結合試薬を洗い出した後、残っている三次複合体を次ぎに適切な波長の光に暴露し、観察される蛍光は目的の抗体の存在を示す。免疫蛍光法及びEIA技術は両方とも当該技術分野でよく確立されており、本明細書に開示した多様な態様での使用に容易に適応可能である。加えて、放射性同位元素、化学発光、蛍光色素、又は生物発光分子などのような他のレポーター分子も用いることができる。
【0054】
いくつかの態様を実施するため、純粋な又は部分的に純粋なコラーゲン又はそれらのエピトープ又は抗原性部分を得る必要があろう。これらの材料、例えば、V型コラーゲン又はそれらの抗原部分は、限定されるわけではないが、2〜3例を挙げると動物源、ヒト死体又は組換え手段を含む、多様な手段により容易に得ることができる。追加の方法にはV型コラーゲンのようなコラーゲンの部分的消化が含まれる。
【0055】
一つの側面は、V型コラーゲンのような肺結合組織に対する自己免疫応答の証拠を同定することにより、特発性肺線維症のような疾患を診断することを含んでなる。結合組織の証拠は、V型コラーゲン及びそのエピトープを含むことができる。実施例3で明瞭に示したように、IPFを有する、又はIPF又はBO又はBOSを発生することが高められている患者を同定する及び/又は追跡するために使用し得る一つのアプローチは、患者の体液中の抗V型コラーゲン抗体のレベルを測定することである。
【0056】
別の側面は、V型コラーゲン及びV型コラーゲンの多様な抗原性成分及び/又はそれらの類似体のような化合物の安全で及び療法的に有効量を投与することにより、肺組織中に観察されるコラーゲンの自己免疫拒絶に関連する、医学状態を有すると診断された、又は医学状態を有すると考えられる、又は医学状態を発生する高められたリスクにあると考えられる、患者を治療することを含む。これらの化合物は、経口摂取、肺内滴下注入、吸入、注射などを含む、当該技術分野では公知のいずれかの手段により投与し得る。療法化合物の有効量及び治療の持続は、各患者に依存するであろうが、療法効果、例えば、V型コラーゲン又はそれらのいくつかの断片のようなコラーゲンに対する患者の自己免疫応答の少なくとも部分的な抑制を誘導するために容易に較正し得る。
【0057】
免疫システムに関連する疾患又は医学状態を治療するためにMCHエピトープを使用する療法的意義の追加の議論は、例えば、2005年6月28日にSachs により公布された米国特許第6,911,220 号、及び2003年4月24日に公開された米国特許公開番号2003/0078208 A1(Wilkes)(両方ともその全体が本明細書において援用される)に見ることができる。
【0058】
一つの態様において、自己免疫応答を含む又は自己免疫応答により引き起こされる肺疾患又は障害を有する、又は患っていると考えられた患者は、例えば、シクロスポリンを含む免疫抑制剤で治療することが可能であった。免疫システムに対するいくつかのその効果を含む、シクロスポリンのさらなる一般的議論については、2005年6月25日にDavalian, et al.により公布された米国特許第6,410,696 号及び1999年11月23日にWang により公布された5,990,274 号(両方ともその全体が本明細書において援用される)を読者は参照されたい。
【実施例】
【0059】
実施例1
移植後肺患者はV型コラーゲンが特異的な自己免疫を発生していたかどうかを決定するため、8人の肺移植片レシピエント及び5人の腎臓移植片レシピエント(グッドパスチャー症候群を有する、IV型コラーゲン(col)自己免疫)からの白血球、及び3つの異なったコラーゲンを使用する遅延型過敏性(DTH)アッセイを行った。図3、パネルAに示したように、肺移植片レシピエントからのT細胞はcol(V)に応答したが、col(IV)又はcol(II)には応答せず、一方、グッドパスチャー症候群を有する患者からのT細胞はcol(V)又はcol(II)には応答せずに、col(IV)に対して有意により高いDTH応答を有していた。この鍵となる発見は、肺移植片レシピエントが抗V型コラーゲン自己免疫を有していることを示している。
【0060】
我々は次ぎに、抗V型コラーゲン自己免疫応答が、肺移植を待っているいずれの患者にも観察することができ、それ故特定の患者が低下した肺機能及び拒絶を生じ易くできる先在条件を反映しているかどうかを決定した。肺移植を待っている多様な末期肺疾患を有する23人の患者における抗col(V)DTH応答の解析は、一つの特定の群が抗V型コラーゲン自己免疫応答を有していることを示した。図5に示したように、特発性肺線維症(IPF)の患者が抗col(V)DTH応答を示し、それはいずれか他の疾患を有する患者で観察されたよりも2倍高かった。この鍵となる発見は、IPFがV型コラーゲンに対する自己免疫応答により起こされ得ることを示している。
【0061】
この発見をさらに支持するため、いくつかの異なった原因により肺移植を待っている患者を、col(V)か又はcol(II)に対するかれらの自己免疫応答について試験した。図3、パネルBに示したように、IPF患者からのT細胞のみがV型コラーゲンに特異的である自己免疫応答を示した。University of Wisconsin で移植したIPFを有する患者は有意に低い1年移植片生着(p=0.05)(図3パネルC)を有したことを示したのは興味深く、それは先在するV型コラーゲンへの自己免疫応答がより速い肺機能の喪失及び死を生じ得ることを示唆する。図3及び5に示された結果は、IPFはV型コラーゲンへの自己免疫応答により起こされ得ること、これらの患者はこの自己免疫応答のためより速い速度で肺を拒絶するであろうこと、及びこれことがV型コラーゲンによる経口免疫寛容療法に応答するであろう追加の患者の群を表していることを示している。
【0062】
IPF患者で観察されたような、V型コラーゲンに対する先在する自己免疫応答が肺破壊を生じるであろうという考えを裏付けるため、我々は、我々のラット移植モデルを使用した。WKYラットを何もなしで(図6a)、ニワトリ卵リゾチーム(HEL)(図6b)か又はV型コラーゲン(図6c)で免疫し、同系移植肺を移植した。観察されるように、何もなしで又はHELで免役したラットは正常肺病理を示した。対照的に、V型コラーゲンに対して活性免疫応答を有するラットは30日以内にそれらの同系移植片肺を破壊した。これらのデータはさらにV型コラーゲンへの自己免疫応答と一致しており、V型コラーゲンに対する自己免疫応答を示さない肺移植片レシピエントで予期されるよりも、移植された肺及び肺組織の拒絶のより高いリスクを示している。
【0063】
実施例2
閉塞性細気管支炎(BOS)は、肺移植後の移植片機能損失の主要原因である。肺細胞外マトリックス中のマイナーコラーゲン、V型コラーゲン(col(V))はラット肺同種移植片拒絶の病変形成に結びつけられてきた。ヒト肺移植後のcol(V)に対する自己免疫がBOSの素因となるという仮説を試験するため、我々は末梢血中の遅延型過敏性(DTH)応答及び気管支肺胞洗浄(BAL)中の抗体応答を試験した。
【0064】
1988年から2003年6月まで、University of Wisconsin で実施されたすべての肺移植(n=229)を、BOSの素因となるリスクファクターについて遡及的に分析した。56人のこれらのレシピエント、10人の正常対照及び25人の移植を待っている患者における、col(V)又はcol(II)に対するDTH又は抗体を測定した。
【0065】
すべての対象は、University of Wisconsin 及びIndiana University School of Medicine で、IRB認可インフォームド・コンセント手順を使用することにより同意した。1988年から2003年3月まで、University of Wisconsin Hospital and Clinics で一次肺移植を受けた229人の内、3人は技術的失敗のため分析から除外した。
【0066】
すべての患者は、移植後0.5、1、3、6、9及び12ヶ月、及び臨床的に指示された場合はその後でもプロトコール気管支肺胞洗浄(BAL)及び経気管支生検(TBB)を受けた。TBB組織はサイトメガロウイルス(CMV)封入及び細胞浸潤についてスクリーニングした。col(V)研究患者(n=56)には、2000年に開始された移植後DTH研究プロトコールに登録された29人が含まれており、BALが保存されていた23人の患者が遡及的にcol(V)に対する抗体を試験し、4人の患者は移植後3〜6年から始まったDTHについてのみ試験した。さもなければ、およそ6、12及び18ヶ月目及びその後は毎年、DTHアッセイのために血液サンプルを採取した。非喫煙成人血液ドナー及び気管支鏡検査を受けているボランティア及びBAL液の収集物が、陰性対照として働いた。グッドパスチャー症候群のための腎臓移植後の5人の患者もDTH試験における対照血液ドナーとして採用された。
【0067】
BOSレベルI(一次研究エンドポイント)は、少なくとも移植90日後、最大移植後値の<80%へのFEV1の持続的低下により診断された(9)。
【0068】
IgGは、商業的に調製されたProtein Gセファロースカラム(Pharmacia, Piscataway, NJ)を製造元のプロトコールに従って通過させることにより、患者及び対照のBAL液から親和性精製された。すべての溶出フラクションは使用するまで−80℃で凍結した。
【0069】
col(V)に対する抗体は、検出にヒツジ抗ヒトIgGアイソタイプ特異的抗体を 使用したことを除いて、以前に記載されているウェスタンブロット技術を使用して分析した。ウシcol(II)及びcol(V)(Collaborative Biomedical Products- BectonDickinson, Bedford MA)又はヒト胎盤から抽出した(10)col(V)を標的抗原として使用した。
【0070】
CB−17 SClDマウスはHarlan Sprague Dawley,Inc (Indianapolis, IN)から購入するか、又は近くで繁殖させた。全ての動物はNIHガイドラインに沿って飼育し及び処置した。
【0071】
トランスビボDTHアッセイは、以前に記載されているように(ii)、SOlDマウスの足蹠内にヒトPBMC及び抗原を同時導入することにより実施した。ヒトcol(V)、col(lV)(Fluka, Inc., Buchs, Switzerland)又はウシcol(II)(5μg/注入;Southern Biotech, Birmingham, AL)が試験抗原であった。足蹠厚はダイアル厚さ計を使用し、注射前及び24時間後に測定した。緩衝液を伴ったPBMC単独によるバックグラウンド膨潤を差し引いて、抗原特異的応答を決定した。バックグラウンドを>25x10−4インチ超える膨潤応答を陽性と考えた(12)。
【0072】
BOSフリー生存率はKaplan 及びMeier の方法を使用して見積り、そしてlog-rank test を使用して群間を比較した。陰性col(V)DTH又はAb応答の基準は厳格であった−たとえ全ての他の時点で陰性であっても、ウェスタンブロットでのわずかに陽性の抗col(V)バンド又は最小陽性DTH応答(25x104インチ)を有する患者は陽性と考えた。Coxの比例ハザードモデルを、疑わしいリスクファクター間の関連を評価するために使用し、そのいくつかは時間−変動,及びBOSフリー生存であった。P値<0.05は有意であると考えた。全ての分析はSAS統計ソフトウェアリリース6.12、SAS Institute Inc. (Cary, NC) を使用して実行した。移植前col(V)DTH応答はクラスカル・ワリス検定を使用し、IPF患者サブグループ及び他のグループ間で比較した。
【0073】
ここで表1(図7)を参照すると、ここに要約されているのは、University of WI, Madison での226人の肺移植片レシピエントにおける個体統計及びBOSのの発生率である。BOSは86人の患者(38%)で発生した。両側肺移植(n=93)と比較して片側(n=133)でより多かった。平均経過観察期間は3.7年であった。全体の比率の構成及びcol(V)研究サブセットの構成はBOSの発生率、平均経過観察期間、及び各疾患カテゴリーにおける患者の比率に関して類似していた。
【0074】
我々は以前にIgG2産生が、肺同種移植片拒絶の病状発生の間にBAL液で選択的に増加したことを報告した(10)。図1Aに図解したように、肺移植片患者L3(BOSレベルIII-移植片機能損失)及びL41(BOSなし)のBALから単離されたIgG抗体は、ウェスタンブロットにおいてcol(V)に強く結合したが、col(II)には結合しなかった。ウシ及びヒトcol(V)の両方ともBAL IgGにより等しく認識されるたことは(データは示されていない)、標的エピトープが種を超えて保存されていることを示している。患者L3及びL41とは対照的に、BOSを発生していないL31のBALサンプル中では、col(V)への結合は弱いか又は観察されなかった(図1A);陰性結果は正常ボランティアのBALから単離されたIgGでも観察された(n=10;データは示されていない)。
【0075】
次ぎに、我々は、末梢における(トランスビボDTH試験を使用して)及び局所的に(BAL抗体分析により)、BOSの発生と抗col(V)自己免疫との関係を試験した。同一の3人の患者の臨床経過を図1Bに示した。患者L3は、試験された移植後の最も早い時期に(180日)、強い及び特異的な抗col(V)DTH反応性を有しており、FEV−1は未だ最高レベルであった。強いcol(V)抗体応答はBOSの発生直前にも検出され(黒色矩形)、その時FEV−1の値は最大の80%付近で停滞していた。DTH及びcol(V)に対する抗体応答の両方がBOSの発生の間に検出されたが、450日目のBOS末期(グレードIII)ではDTH反応性は失われた。
【0076】
患者L41は、col(V)に対する強い早期応答を有するが、同種移植片機能の持続的低下がない患者の例である。抗col(V)抗体(2+)が48〜213日目で検出され、及び188〜460日目に得られた全てのPBMCサンプルはcol(V)に対してDTH陽性であった。500日目から抗col(V)DTH応答は変動し、そして一般に減少した。980日目の急性拒絶病状発生後、BOS−1についてのカットオフの直ぐ上の、最大FEV1のおよそ82%で安定化した。
【0077】
患者L31は49日目にcol(V)に対する弱い抗体応答及び400日目に最小陽性抗col(V)DTH応答を有したが、強い自己免疫反応性を発生することはなかった。該患者は優れた移植片機能を>5年維持し、そしてつい最近のPBMCサンプル(1600日目)は抗col(V)DTH応答について陰性のままである。
【0078】
col(V)応答及び同種移植片機能のこれら三つのパターンは、56人の患者の研究サブグループで見られたものを代表している。図1Cは、各カテゴリーにおける4人の追加患者の移植後時間経過を示している。各々の線は単一の患者についての%最大FEVlを表しており、及び各々の赤色記号はcol(V)について陽性試験を表している(BAL中の抗体か又はDTHアッセイにおいて>25の正味足蹠膨潤)。緑色記号は陰性抗col(V)結果を示している。
【0079】
第一のカテゴリー中の4人全ての患者(抗col(V)+、BOS+)は、L3患者と同様に、移植片機能の喪失に先立って陽性DTH又は抗体試験を示した。第三のカテゴリーの患者(抗col(V)−、BOS−)は、col(V)に対する応答をほとんど示さず、そしてすべて3〜6年の経過観察でBOSフリーを続けた。中間のカテゴリーの患者は、抗col(V)応答についての繰り返した陽性試験にもかかわらず、移植後1〜3年優れた移植片機能を何とか維持していたので、最も興味深い。
【0080】
BOSか又は移植片機能損失又はエンドポイントとしてのBOS単独に関連するリスクファクターの遡及的分析の結果は表2(図8)に示されている。全患者集団中で、BOSの有意により高い(p<0.05)リスクの素因となる移植前因子には、ドナーとの2DR不適合を有している(RR=1.64vs.0又は1DR不適合)、及び慢性閉塞性肺疾患、COPD(RR=1.7)又は「他の」(RR=1.9)の疾患カテゴリーを有しているものが含まれる。BOS又は移植片機能損失のより低い発生率の素因となる移植前因子には、嚢胞性線維症(CF)の本来の疾患又は両側肺移植を受けている(この疾患カテゴリーの主な治療)が含まれる(両方ともRR=0.35)。BOSについての移植後リスクファクターも評価した。予期されたように、急性拒絶病状発生の発生率は、BOSの1.4〜1.5倍より高いリスクと関連し、それは極めて有意であった。しかしながら、CMV+ドナー肺のCMV−レシピエントへの移植、又は移植後期間におけるバイオプシ証明CMVはBOSと有意に関連しなかった。
【0081】
図8を再び参照すると、表2は、Cox比例ハザード肺移植モデルを使用し、col(V)への応答について分析された56の肺移植片レシピエントにおける乏しい機能(BOS I又は移植片機能損失)又はBOS I発生の分析を要約している。この患者の下位集団において、急性拒絶は再び乏しい機能についてのリスクであった。乏しい移植片機能についての最も高いRR(12.3)は、BOS発生に近い時点でcol(V)に対して陽性DTHを有する患者で観察された。対照col(II)に対するDTH応答はBOSの発生に相関を示さず(RR=1.0)、col(V)に対するDTH応答はBOSリスクの特異的マーカーであることを示している。2は、col(V)に対するDTH応答とBOSの発生の関係を、如実に示している。移植後370日目(上のパネル)及び760日目(下のパネル)に良好な肺機能(>80%最大FEV1)を有する患者を、抗体及び/又はDTH分析に基づいてcol(V)+対col(V)−応答者に分割し、カプランマイヤー分析を、エンドポイントとしてBOS Iまでの時間で実施した。各時点に先立って抗col(V)反応性を有する患者の半分以上が次の2年以内にBOSを発生し、一方、col(V)に対して陰性応答を有する患者は主にBOSフリーであった。
【0082】
BAL中の抗col(V)抗体のレベルは、何らかの原因によりBOSの発生又は移植片機能損失(RR=2.3)、及びBOS単独のリスク(RR=2.08)と有意に関連した。二つの指標、DTH又はcol(V)に対する抗体が合わさった場合、BOS又は移植片機能損失に対するRRは12.7であり、BOSを発生した全ての患者がいくつかの前の時点で陽性DTHか又はcol(V)に対する抗体応答を有していたので、BOSについては計算することができなかった、表2(図8)。
【0083】
肺移植後患者で見られた抗col(V)応答が、特定の患者に乏しい機能を生じやすくすることができる、前々から存在している状態の単なる反映しているかどうかを決定するため(COPDを有する患者はより高い移植前抗col(V)応答を有し、一方、CFを有する患者はより低い応答を有する)、肺移植を待っている、多様な末期肺疾患を有する23人の患者における抗col(V)DTH応答を分析した。図3、パネルAに示したように、ほとんど末期の肺疾患を有する患者は抗col(V)DTH応答を有しておらず、既知の肺疾患を有していない正常対象で見られたことと著しく異なっている。例外はIPFを有する患者である。これらの患者における抗col(V)DTH応答はいずれか他の疾患を有する患者で見られるもののおよそ2倍であった。興味深いことに、University of Wisconsinで移植したIPFの患者は、有意に低い1年移植片生存率(p=0.05、データは示されていない)、しかし同様の5年生存率及びBOS発生の比率を有していた(表1)。
【0084】
肺移植後患者におけるコラーゲンに対する自己免疫の発生がV型コラーゲンに特異的であったかどうかを決定するため、8人の肺移植レシピエント及びグッドパスチャー症候群(IV型コラーゲン自己免疫)を有する5人の腎臓移植レシピエントに対し、col(II)、col(IV)及びcol(V)を使用してDTHアッセイを実施した。図3、パネルBに示したように、肺移植レシピエントはcol(V)に応答したがcol(IV)又はcol(II)には応答せず、一方、グッドパスチャー症候群を有する患者はcol(V)又はcol(II)への応答なしに、col(IV)に対し有意に高いDTH応答を有していた。
【0085】
実施例3
V型コラーゲンに対する体液性又は抗体仲介免疫応答の検出のためのビーズアッセイ。このアッセイは、V型コラーゲン自己免疫応答を有する患者からの血清及び/又は肺洗浄液中に存在することができるV型コラーゲンに対する抗体を検出するであろう。V型コラーゲン−被覆ビーズならびに他の必要な試薬がこのアッセイのために提供される。末端利用者は、血清及び/又は肺洗浄液、及びアッセイを実行するためのPBSのような通常の試薬(又はこれらの試薬はキット中に組み入れることが可能である)を提供することができる。簡単には、典型的なアッセイは以下のようである:
1)ストレプトアビジン被覆ビーズ(5μm、結合能10〜20μg/lx10/7ビーズ(Polyscience, Warrington, PA ))を滅菌PBSで2回洗浄した。ビーズ(1x10/7)を40μgのヒトV型コラーゲンを含んだ100μlのPBSに懸濁し、4℃で60分インキュベートした。
【0086】
2)ヒトコラーゲンV抗体に対する20μmのウサギ抗体(ビオテン)(Abeam, Cambridge,MA)を使用し、上記1と同一手順で陽性対照を発生させた。
【0087】
3)各アッセイについて、1x106コンジュゲートビーズをPBS中で2回洗浄し、50μlの血清又は肺洗浄液を加えた100μlのPBS中でインキュベートした。室温で30分インキュベート後、ビーズを10%FCS含有PBSで3回洗浄した。
【0088】
4)ビーズを100μlの滅菌PBS+10%FBSに懸濁し、室温で約30分、二次抗体とインキュベートした。典型的には、R−PEにコンジュゲートされた5μlの抗ヒトIgG抗体を使用した(Sigma, Saint Louis)。ビーズを10%FCS含有PBS中で3回洗浄し、300μlのPBS/FCS溶液に懸濁し、フローサイトメーターを使用して分析した。このアッセイの例の結果は図9に要約されている。
【0089】
陽性対照については、既知の量の抗コラーゲン−V抗血清をビーズアッセイに加えた。図9の右側のパネルが図示しているように、抗コラーゲンV抗体の量の増加は、平均蛍光チャンネルの右への著しいシフトを生じる。それ故、この方法は患者の血清中に存在する異なった量の抗体を検出し得る。さらに図9を参照すると、左のパネルは健康なヒト対象から得られた血清サンプルと比較された4人の患者の血清からの抗コラーゲンV抗体の検出を図示している。トレースにより図示されているように、患者#457からのサンプルは右への最も大きなシフトを示し、この患者が抗コラーゲンV抗体の最も高いレベルを有していることを示唆している。患者#458及び420は小さなシフトを示し、患者#457よりも低いレベルの抗体を示し、一方、患者519は、このアッセイで反応する何らの抗体も有していないようである。
【0090】
図9に要約した結果により示されているように、患者457は右への最も大きなシフトを示し、この特定の患者が抗col(V)抗体の最も高いレベルを有することを示唆している。対照的に、患者#458及び#420から集められたサンプルは蛍光ピークに小さなシフトを示し;一方、患者#595はこの特定のサンプル中にいずれの抗体も少しも有していないようである。これらのデータは特発性肺疾患(IPD)又は他の自己免疫に基づいた肺障害又は疾患を検出する、及び/又は肺移植を受けている所与の患者が移植された臓器を拒絶するであろう可能性を評価する方法を説明している。肺疾患を診断する、又はBOSを発生する所与の患者の可能性を評価するこの方法は、一般には、患者から体液(例えば、血清又は間質液)又は組織を集めること、およびV型コラーゲンに対する抗体の存在についてサンプルを分析することを含む。
【0091】
実施例4
試験動物における経口免疫寛容の誘導、コラーゲン又はコラーゲンの抗原性成分に対するヒト又は動物患者の自己免疫応答を変調するためのモデル。利用された病原体フリー、MHC(RTl)不適合雄ラットは:Harlan Sprague Dawley (Indianapolis, Ind.)又は Taconic (Germantown, N.Y.) から購入され、施設のガイドラインに従ってIndiana University School of Medicine (Indianapolis, Ind.)のLaboratory Animal Resource Center に収容した、移植の時点で250〜300gのFischer 344(F344、RTllvl)、Brown Norway (BN、RTln)及び Wistar Kyoto(WKY、RTl1)ラットであった。
【0092】
簡単には、V型コラーゲンは以下のように調製した。精製したヒトV型コラーゲン[col(V)]を0.005M酢酸(0.5mg/ml)に希釈し、アッセイに使用されるまで4℃で貯蔵した。col(V)の量は、サンプル中のヒドロキシプロリン含量の決定により評価した(Woessner, 1961)。
【0093】
この特定の試験において、V型コラーゲンをWKY雄ラットに経口で投与した。動物(180〜200g)には、以前に記載されているように(Stark and Ostrow, 1990)、0.5mlの生理食塩水に溶解した10μgか又は50μgのcol(V)、col(II)又はcol(XI)溶液を、16ゲージボールポイントステンレススチール動物摂取針(Braintree Scientific, Braintree, Mass.)を利用する胃経管栄養により摂取させた。対照として、同様の動物に希釈剤のみを摂取させた。8回又は4回摂取に対し、動物は一日おきに摂取させた。最後の摂取7日後、これらのラットは同所性移植によりF344肺同種移植片を受けた。WKYレシピエント内へ移植されたWKY肺移植片(同種移植片)を対照として使用した。
【0094】
遅延型過敏性(DTH)応答は、Sayegh et al, 1992; Yoshino et al, 1995; 及び Yamagami et al, 1999 、に記載されている方法を改変して決定した。手短に言えば、肺移植2週間後、対照又はcol(V)摂取WKYラットは、26ゲージ注射針を使用する皮下(s.c.)注射により、右耳介内に、107照射(3000ラド)ドナー由来F344又は第三者(BN)脾細胞の30μl PBS溶液を受けた。左耳介は等容積の希釈剤を受け、対照部位として働いた。無処置又は同種移植片レシピエントWKYラットの別々の群が、15μgのcol(V)を30μl容量で右耳介内に、希釈剤を左耳介内に注射されて試験された。無処置WKYラットは陰性対照として使用した。耳の厚さは、注射直前及び24時間後に盲検様式で、マイクロメーターカリパー(Mitutoyo, Field Tool Supply, Chicago, 111.)で測定した。抗原特異的DTH応答は以下の式に従って計算した:特異的耳介膨潤=(右耳厚さ@24時間−右耳厚さ@0時間)−(左耳厚さ@24時間−左耳厚さ@0時間)x10−3mm(Yamagami et al., 1999)。全てのデータは三回の測定の平均として報告されている。
【0095】
左肺同種移植片(WKY→WKY)又は 同種移植(F344→WKY)の同所性移植は(Marck et al., 1983 and Prop et al., 1985)により最初に記載されている手順を利用し、既に報告されているように(Sekine et al., 1997)実施した。発明者の以前の報告(Sekine et al., 1997)と同様に、全ての移植群において生存率は90%を上回った。実験期間の間、いずれの時点でも非免疫抑制療法は与えなかった。
【0096】
移植肺は、移植後1日、6日及び13日目に連続胸部X線検査によりモニターした。画像的変化は以下のように段階付けした:グレード1、正常;グレード2、軽度浸潤;グレード3、中程度浸潤;及びグレード4、重篤な浸潤又は完全不透明化。
【0097】
5移植群を研究した:WKYラットからの肺をWKYレシピエントに(WKY→WKY、対照同系移植片);F344肺を希釈剤摂取WKYレシピエントに移植(F344→WKY、対照同種移植片);F344肺をcol(V)摂取WKYレシピエントに移植(F344→col(V)摂取WKY、col(V)摂取同種移植片);F344肺をcol(II)摂取WKYレシピエントに移植(F344→col(II)摂取WKY、col(II)摂取同種移植片);並びにF344肺をcol(XI)摂取WKYレシピエントに移植(F344→col(XI)摂取WKY、col(XI)摂取同種移植片)。予備的実験は、無摂取WKYラット内に移植された同種移植片と比較して、同種移植病態の発生、気管支肺胞洗浄(BAL)示差的(differential)細胞計数又はDTH応答に何の影響も与えなかった。
【0098】
BAL液は、移植1週及び2週後のケタミン麻酔肺移植片レシピエントから集めた。簡単に言えば、自然の及び移植した肺のBALは、縫合により安全にされた16ゲージカテーテルで、右及び左主気管支の選択的カニューレ挿入により実施した。体側気管支がクランプされている期間中、3mlの滅菌PBS(37℃)を各主気管支内に点滴注入し、吸引した。遠心分離検体から得られた無細胞BAL上清は、使用されるまで−70℃で貯蔵した。BAL液示差的細胞計数は、光学顕微鏡を利用してサイトスピン上の高倍率視野当たり300細胞を計数し、サンプル中のマクロファージ、リンパ球及び多形核(PMN)細胞の量を決定することにより行った。
【0099】
肺における病態の存在を検出するため、各群から移植肺を採取し、4%グルタルアルデヒドの気管内点滴注入により固定し、切片とし、ヘマトキシリン及びエオシンで染色し、光学顕微鏡下で検査し、及び、移植群の予備知識無しに盲検的様式で、Lung Rejection Study Group(Yousem et al, 1996)により確立された組織学的基準に従って段階付けした。
【0100】
BAL液中のPMN及びリンパ球数の統計的分析は、最初にANOVAにより実行し、群間で差違が存在するかどうかを決定した。もし差違が観察されたら、Student-Newman-Keuls 検定を利用する事後解析を実行して、どの群が異なっているのかを決定した。P値<0.05が有意であると決定された。対照同種移植におけるDTH及び異なった抗原が暴露された無処置WKYラットは正常に分布していないことが観察されたので、相互作用を有するrank-sum二方向ANOVAを利用し、群間の差違を決定した。P値<0.05が有意であると決定された。対照同種移植片及びcol(V)摂取同種移植片間の、ドナー同種抗原に対するDTH応答の相違はマンホイットニーU検定を利用して決定した。P値<0.05が有意であると決定された。気道及び脈管病理学的スコア間の相違は、最初にクラスカル・ワリス検定を利用して、続いてマンホイットニーU検定を利用する事後解析により決定した。P値<0.03が有意であると決定された。
【0101】
本発明者らは、col(V)が、マウスにおける肺同種抗原に対する局所免疫応答の標的であることを以前に示した。次ぎに、彼らは肺同種移植片拒絶の間、col(V)が抗原として認識されることを示した。DTH応答は、肺以外の臓器移植の多様なげっ歯類モデルにおいて、拒絶の程度と相関すると報告されてきた(VanBuskirk et al, 1998; Lowry et al, 1985; Joo et al, 1995)。細胞性免疫応答のインビボ試験として、同種抗原への全身DTH応答を実行した。F344肺同種移植片を受けて2週間後のWKYラットにおける、及び無処置非移植WKYラットにおけるF344脾細胞、col(V)及びBN脾細胞(第三者)に対するDTH応答を試験した。図10は、F344同種移植片を受けたWKYラットは、F344脾細胞に対する有意なDTH応答[F344脾細胞か又はcol(V)で試験された無処置WKYラットと比較してp<0.0001]を有していたことを図示している。F344同種移植片を受けたWKYラットは、col(V)に対する有意なDTH応答[F344脾細胞か又はcol(V)で試験された無処置WKYラットと比較してp<0.0001]を有していたことを図示している;図11。統計学的に、F344脾細胞及びcol(V)に対する対照同種移植片のDTH応答間には差違はなかった(p>0.05)。データは、F344同種移植片を受けたWKYラットは第三者同種抗原(BN脾細胞、RT1n)へのDTH応答は有しておらず、F344同種移植片に対する免疫応答は同種特異的であることを示している。加えて、これらのデータは、肺同種移植片拒絶の間に抗原として認識されているcol(V)と一致している。
【0102】
以前の報告は、肺以外の同種移植片の拒絶の間に免疫応答の標的である抗原の経口投与はドナー臓器に対する寛容を誘導することを示している(Ishido et al., 1999)。移植に先だって肺移植片レシピエントへのcol(V)の経口投与がドナー肺に対する免疫学的寛容性を誘導するかどうかを決定するため、WKYレシピエントに、上記のごとく移植に先だってcol(V)を摂取させた。予備的実験では、1日おきに10μgのcol(V)を8回摂取させ(80μgの総用量)、続いて最後の摂取から7日後の左同所性肺移植は、このモデルにおけるBAL細胞計数及び拒絶病態に最も大きな効果を有していた。それ故、この摂取計画を、すべての以下の研究で利用した。Col(V)摂取レシピエントの左肺移植を行い、上記のように実験期間の完了時に採取した。
【0103】
図12は、移植2週間後の対照WKY同系移植片(isograft)レシピエント、対照WKY同種移植片(allograft)レシピエント及びcol(V)摂取WKY同種移植片レシピエント及び正常WKYラットからのBAL液中の示差的細胞計数を図示している。同系移植片肺と比較して正常肺におけるBAL示差的細胞計数で差違はなかった。(Yagyu et al, 1990)と同様に、正常又は同系移植片肺と比較して、対照同種移植片BALにおいてはPMN及びリンパ球が有意に増加した(PMNについてp<0.039、及びリンパ球についてp<0.00001)。対照的に、移植に先立ってcol(V)を摂取させることは、対照同種移植片と比較してBAL中のPMN及びリンパ球に有意な減少を生じた(PMNについてp<0.023、及びリンパ球についてp<0.00001)。急性同種移植片拒絶は通常、同種移植片BAL液中の総細胞数の増加に関係する(Hirt et al., 1999)。しかしながら、移植2週間後では、対照WKY同種移植片肺は重度の拒絶を通常受けており、移植片の破壊により、BAL総細胞数を決定するための十分なBALは確実には実施することが不可能である。対照的に、col(V)摂取同種移植片レシピエントはより軽度の拒絶を示し、それはより容易なBALを可能にし、より高い細胞計数を生じる。これらの理由のため、群間の総細胞数の比較は行われなかった。まとめると、col(V)による経口免疫は、急性拒絶間の同種移植片BAL液におけるより少ないPMN及びリンパ球と関連することをこれらのデータは示している。
【0104】
col(V)摂取が同種抗原に対するDTH応答を減少させるかどうかを決定するため、対照WKY同種移植片レシピエント及びcol(V)摂取同種WKY移植片レシピエントは、右耳介に全同種抗原性(F344)脾細胞を及び左耳介にPBSを暴露した。DTH応答は24時間後測定し、特異的耳介膨潤を決定した。図10に示したように、無処置の対照同種WKY移植片レシピエントは重度の急性拒絶を受け、ドナー抗原暴露後に強いDTH応答を有した。対照的に、より軽度の同種移植片拒絶を有していたcol(V)摂取WKY移植片レシピエントは、ドナー抗原に対するDTH応答の有意な減少も有した。
【0105】
col(V)により誘導された同種抗原に対する損なわれた免疫応答は、広範囲の免疫低応答性であり(Faria and Weiner 1999)、寛容ではない。それ故、col(V)摂取WKYラットが他の抗原に応答できるかどうかを決定するため、これらのラットは気管内(200μg/kg〜1mg/kg)か又は静脈内に(1〜5mg/kg)リポ多糖(LPS)(Sigma, St. Louis, MO.)を受け、それらの用量は注射又は注入24〜48時間後、肺及び全身的に重度の炎症反応を誘発することが知られている用量であった(Delclaux et al. 1999)。ラットはcol(V)の最後の摂取から1週間後に暴露された。誘発された疾患は肺炎及びグラム陰性菌により起こされる敗血症に類似していた。正常WKYラットと同様に、col(V)摂取WKYラット内の肺内へのLPSの点滴注入又はI.V.は重度の病気(波打つ毛皮及び虚脱)及びレシピエント肺の炎症を誘発した。これらのデータは、移植に先立ったcol(V)の摂取は、ドナー抗原への広範囲の免疫低応答性ではなく、寛容性を誘導することにより同種移植片拒絶を防止したことを示している。
【0106】
まとめると、これらのデータは、col(V)は広範囲の免疫低応答性ではなく、経口寛容性の誘導により肺同種移植片拒絶を下方調節するが、col(II)又はcol(XI)はしない、ことを示している。さらに、col(V)により誘導された経口免疫寛容性は、ドナー同種抗原に対するDTH応答を下方調節する。
【0107】
同種移植片BAL液中の減少したPMN及びリンパ球数は、急性肺同種移植片拒絶間のそれほどひどくないX線検査及び組織学的病変と関連する。肺浸潤の進行する速度を決定するため、移植レシピエントを移植後1、6及び13日目に連続胸部X線検査によりモニターし、上記のように段階付けした。対照同系移植片(isograft)は、全てのモニターした時点でいかなる肺浸潤も有していなかった(図12A)。対照同種移植片において、連続X線は移植6日目に左肺に浸潤の漸進的な発生を明らかにし、それは2週目の終わりまでに重篤な浸潤及び完全な不透明化を生じた(図12B)。しかしながら、col(V)摂取同種移植片においては、浸潤の発生は対照と比較してより遅かった。X線は6日目では正常であり、移植2週間後に軽い浸潤のみが存在した(図12C)。
【0108】
ここで図13を参照すると、上段のパネルは、移植2週間後に採取した、自然の及び同系移植片WKY肺、並びに対照同種移植及びcol(V)摂取同種移植ラットからの自然の及び同種移植肺の肉眼的解剖学を示している。図13AはWKYラットレシピエントの同系移植片(左−L)及び自然肺(右−R)は外観が正常であることを示している。対照的に、対照同種移植片群の左同種移植肺は自然肺と比較して暗褐色の色、萎縮及び堅いコンシステンシーであった(図13B)。炎症及び拒絶の結果、対照同種移植片においては体腔壁及び臓側胸膜の融合が通常観察された。col(V)摂取同種移植片レシピエントの移植された左肺(図13C)は自然の(正常)又は同系移植片肺(図13A)の外観を有しており、胸膜癒着はなかった。
【0109】
同種移植片BAL液におけるより少ないPMN及びリンパ球、胸部X線での同種移植片におけるあまりひどくない浸潤、及び保存された肉眼的解剖学は、移植に先立ってcol(V)を摂取させることは、拒絶病態の発生を下方調節することを示唆している。図14の下段のパネルは、移植2週間後の対照同系移植片、対照同種移植片及びcol(V)摂取同種移植片の代表的な組織学を示している。以前の報告(Prop et al, 1985)と同様に、対照同系移植片肺は、拒絶の徴候がない正常組織学を有していた(図14D)。対照同種移植片は、重度の急性拒絶と一致する広範な血管周囲、気管支周囲及び肺胞単核細胞浸潤を明らかにした(図14E)。対照的に、col(V)摂取同種移植片肺においては、軽度から中程度の血管周囲及び気管支周囲のみしか検出されなかった(図14F)。
【0110】
図15中の表3は標準判定基準を使用する移植2週間後での拒絶病態の段階付けを示している。急性血管拒絶は血管周囲単核細胞浸潤の存在及び程度に従って、A0−A4に段階付けされ、及び急性気道拒絶は気道炎症の程度及び強度に従ってB0−B4に段階付けた(Yousem et al. 1996)。全ての同系移植片対照肺は肺の正常構造が明らかにされた(A0±0、B0±0)。対照WKY同種移植片は重度の血管及び気道拒絶を有していた(それぞれA3.8±0.2、B4±0)。対照的に、col(V)摂取WKY同種移植は軽度から中程度の血管及び気道拒絶(それぞれA2.8±0.2、B2.6±0.2)を示した。CoI(II)及びcol(XI)摂取同種移植片は、無処置の同種移植片と同様の拒絶病態を有していた(図15)。これらのデータは、col(V)摂取WKY同種移植片は、他の同種移植片よりも軽度の拒絶病態を有していた(Aスコアについてはp<0.028及びBスコアについてはp<0.009)。
【0111】
これらのデータは、col(V)を摂取させることが、肺同種移植片拒絶を下方調節することを示しており、経口的に寛容化された肺移植片レシピエントは、ドナー同種抗原で再暴露後に減少したDTH応答を有すべきであることを示している。col(V)摂取が同種抗原に対する免疫応答を減少させるかどうかを決定するため、対照同種移植片レシピエント及びcol(V)摂取同種移植片レシピエントは、右耳介に全同種F344脾細胞及び左耳介にPBSを暴露した。DTH応答は24時間後測定し、特異的耳介膨潤を決定した。図14に示したように、無処置の対照同種移植片レシピエントは重度の急性拒絶を受け、ドナー抗原暴露後に強いDTH応答を有した(図10に示された対照同種移植片と同一のデータ)。対照的に、col(V)摂取同種移植片レシピエントはドナー抗原に対する有意に軽減されたDTH応答を有していた(対照同種移植片と比較してp<0.02)。これらのデータは、移植に先立ってcol(V)を摂取することは、ドナー抗原に対する寛容性を誘導することにより同種移植片拒絶を防止したことを示している。
【0112】
重度の拒絶反応(グレード4)の発病の時間である移植2週間後、同種移植片肺は示差的細胞計数の決定及び血清を採取するためBALを受けた。自然の及び移植肺を一括して採取し、固定し、切片とし、染色し、及び標準判定基準(Yousem et al. 1996)を使用して拒絶病態について段階付けした。拒絶病態の全ての説明及び段階付けは肺病理学者であるOscar W. Cummings, M.D.により実施され、以前に報告されているように(Wilkes et al. 1998)、彼は処置群については知らされていない。図14は、移植2週間後に採取された同系移植片WKY肺、及び対照WKY同種移植片及び col(V)摂取WKY同種移植片レシピエントからの自然の及び同種移植片肺の肉眼的解剖学を示している。対照WKY同種移植片動物において、図14Bは移植された(左)肺は自然の肺と比較して色が暗褐色で萎縮していた。対照的に、col(V)摂取WKY同種移植片レシピエントの移植された左肺(図14C)は、自然の(正常)又は同系移植片肺(図14A)の外観を有していた。col(II)又はcol(XI)を摂取させたWKYラット中の同種移植片肺の全体の外観は無処置同種移植片肺と類似していた。予期されるように、同系移植片肺は正常のようにみえた(図14A)。
【0113】
図14は、移植2週間後の対照WKY同系移植片、対照WKY同種移植片、及びcol(V)摂取WKY同種移植片の組織学も図示している。WKY同系移植片肺は正常な組織学を有していた(図14D)。対照WKY同種移植片は、重度の急性拒絶と一致する広範な血管周囲、気管支周囲及び肺胞単核細胞浸潤を明らかにした(図11E)。対照的に、col(V)摂取WKY同種移植片肺においては、軽度から中程度の血管周囲及び気管支周囲のみしか検出されなかった(図14F)。CoI(II)及びcol(XI)を摂取させたWKYラットの同種移植片肺は、無処置の同種移植片と同様の病態を有していた(図15を参照されたい)。
【0114】
経口寛容が、肺以外の臓器におけるアロ反応性の下方調節に有益である(Ishido et al., 1999)と示されていたけれども、肺移植における経口寛容は、2002年9月13日に出願されたWilkes による米国特許出願番号10/243,797 で最初に報告された。肺移植のラットモデルを利用し、本発明のデータは、肺移植に先立った肺同種移植片レシピエントへのcol(V)の経口投与が拒絶反応を下方調節することを示している。対照同種移植片レシピエントと比較されたcol(V)摂取の免疫学的、放射線学的及び組織学的分析は、col(V)を摂取させることが、同種移植片BAL液中の減少したPMN及びリンパ球数、胸部X線での同種移植片におけるあまりひどくない浸潤、及び同種移植片の肉眼的解剖学での保存、及び拒絶病態の減少と相関していることを示した。最後に、経口的に寛容化された同種移植片レシピエントは、ドナー同種抗原に対するDTH応答を減少させた。
【0115】
以前に、マウスにおいてはcol(V)が同種抗原に対する局所免疫応答の標的であることが示されている。V型コラーゲンは肺に存在するマイナーな型のコラーゲンであり、細気管支周囲結合組織、肺胞間質及び毛細血管基底膜に位置する。これらの組織は本発明者のマウスモデルにおいて同種抗原に応答する病理学的病変の部位であることが示されており(Wilkes et al., 1999)、ヒト肺同種移植片レシピエントにおける拒絶活性の部位である(Trulock, 1997)。
【0116】
抗原の経口投与は末梢性T細胞寛容を誘導する有効な方法である。この現象はしばしば経口寛容と称され:脳脊髄炎、ぶどう膜炎、糖尿病、重症筋無力症及び関節炎を含む動物における自己免疫疾患の多様なモデルでよく研究されている。しかしながら、寛容を誘導する機構は完全には理解されていない。クローンアネルギー、クローン除去を含む寛容誘導についての全ての既知の機構、IL−4、IL−10又はTGF−β仲介能動抑制による調節が経口寛容に役割を有することができる(Faria and Weiner, 1999)。一般に、抗原のより高い用量がアネルギー又はクローン除去を誘導すると報告されており(Chen et al., 1995; Whitacre et al., 1991)、一方、低用量はサイトカイン調節及び能動抑制を誘導する(Faria and Weiner, 1999; Chen et al., 1994)。心臓移植の動物モデルにおいて、同種間脾細胞の経口投与は、TH1活性化をバイパスすること、及びIL−4のようなTh−2由来阻害性サイトカインの選択的刺激誘導により寛容誘導に有効であることが示されている(Ishido et al., 1999)。
【0117】
近交系、病原体フリー、MHC(RTl)不適合雄F344(RTllvl)及びWKY (RTl1)ラット(250〜300g)を移植手術に利用した。すべてのラットはHarlan Sprague Dawley(Indianapolis, Ind.) から購入した。左肺同種移植片の同所性移植は既に報告されたように実行し(Sekine et al. 1997)、Marck及び共同研究者(1983)により記述された手順を利用した。ラットはいずれの免疫抑制も受けなかった。拒絶病態は移植後の種々の時点で段階付けした。F344→WKY移植モデルは、移植後第一週の終わりまでに軽度急性拒絶(グレード1)、第二週の終わりまでに中程度から重度の拒絶(グレード2−3)及び第三週の終わりまでに重度−グレード4拒絶の発生が付随した(Matsumura et al. 1995)。加えて、F344→WKYモデルは、再現性よく閉塞性細気管支炎(BO)を発生する、ただ一つの肺移植の動物モデルである(Hirt et al. 1999)。それ故、このモデルは、急性及び慢性拒絶の病因を研究する独特の機会を提供する。
【0118】
経口寛容の誘導における相違を観察するため、異なった摂取計画を試験した。データはより高いcol(V)の用量(50μg)と比較して、より低い用量(10μg)の多数回の摂取は、拒絶病状発生がより抑制的であった。それ故、本明細書で使用した経口寛容のモデルにおいて、Th2サイトカイン(IL−4、IL−10)による調節、又はTGF−βにより仲介される活性化された抑制も、寛容誘導において重要な役割を果たしているように思われる。
【0119】
移植寛容の誘導は移植研究の主たるゴールになってきており、長年にわたって異なった技術が移植寛容を誘導するために利用されてきた。ドナー特異的輸血(Zheng et al., 1999)、骨髄移植(Huang et al., 2000)、同種細胞の胸腺注入(Garrovillo et al., 1999)又はドナーMHC由来ペプチドによる全身免疫(Sayegh and Krensky, 1996)は多様な動物モデルにおいて移植寛容を誘導することが示されている。しかしながら、これらの技術は、寛容誘導に利用されるドナー細胞が移植に先立って寛容を誘導する十分な時間内には利用できないであろうという事実のため、潜在肺移植片レシピエントでは限定的な実用性しか有していないであろう。低用量経口寛容の実験自己免疫モデルにおいて、経口寛容化後の調節細胞は、抗原特異的様式で引き金が引かれるが、抗原非特異的様式で抑制する。それ故、標的自己抗原それ自身を同定する必要はないであろうが、抑制性サイトカインを分泌する調節細胞を誘導することが可能なタンパク質が十分に経口的に投与されるであろう(Faria and Weiner, 1999)。本明細書で使用した肺移植における経口寛容のモデルは、経口的に投与された、ドナー特異的ではないcol(V)はアロ反応性を抑制し、及び移植寛容を誘導することができる。発明者は、移植に先立ったcol(V)による移植片レシピエントの経口治療が、肺移植における拒絶を防止するための、及びV型コラーゲン及び/又はそれらの抗原性成分に対する自己免疫反応により引き起こされることが知られている又は考えられている疾患を治療するための療法を提供するであろうことを想定する。図及びそこに引用されている参照文献を含む、実施例4から10に報告された結果の追加の議論については、その全体が本明細書において援用される、Wilkes により2002年9月13日に出願された米国特許出願10/243,792 (現在米国特許公開番号2003/0078208 Al )を参照されたい。
【0120】
実施例5
同種移植片拒絶の防止、及びコラーゲン及びコラーゲン様分子に対して動物を寛容化するために有用な追加のMHC「様」ペプチド及びコラーゲンの評価
病原体フリー、MHC(RTl)不適合雄ラットを本研究で利用した:Wistar Kyoto (WKY、RT1l)、Fischer 344(F344、RT1lvl)及びBrown Norway(BN、RT1n)ラット(移植の時点で250〜300g)。全てのラットはHarlan Sprague Dawley (Indianapolis, Ind.)から購入し、施設のガイドラインに従ってUniversity School of MedicineのLaboratory Animal Resource Center Indiana (Indianapolis, Ind.)に収容した。
【0121】
実験で使用するためのII型コラーゲン[col(II)]は、以前に報告されているように(Maves et al. 2000)イヌ軟骨から単離されたか、又は Collaborative Biomedical Products, Bedford, Massから購入した。両調製物は0.005M酢酸で可溶化し、透析すると0.5mg/mlの最終濃度を得た。
【0122】
ウシ胎児軟骨からのウシXI型コラーゲン[col(XI)](Morris and Bachinger 1987) はBiogenesis, Sandown, N.H.から購入し、0.005M酢酸(0.5mg/ml)で希釈し、使用されるまで4℃で貯蔵した。
【0123】
ヒト胎盤から抽出し、示差NaCl沈殿(Mares et al. 2000)により精製されたヒトV型コラーゲン[col(V)]は、Dr. Jerome Seyer (VA Hospital, Hampton, Va.)から贈与された。手短に言えば、胎盤組織を細かく切り、洗浄し、0.5M NaClを含有する0.5M酢酸に懸濁し、そして4℃でペプシンにより消化した。上清を遠心した検体から吸引し、ペレットを集め、そして抽出過程を反復した。2つの消化物からの上清を合わせ、そして0.5M酢酸からの示差NaCl沈殿(Maves et al. 2000)により、上清からcol(V)を精製した。使用するまで、無傷のcol(V)は0.005M酢酸(0.5mg/ml)に希釈した。コラーゲンの量は、既に報告されているように(Mares et al. 2000)、サンプル中のヒドロキシプロリン含量の決定により評価した。
【0124】
上記のように調製したコラーゲンはWKYラットに経口で投与した。ラットには、0.5mlの生理食塩水に溶解した10μgのcol(II)、col(V)又はcol(XI)溶液を、16ゲージボールポイントステンレススチール動物摂取針(Braintree Scientific, Braintree, Mass.)を利用する胃経管栄養により摂取させた。対照動物には希釈剤のみを摂取させた。8回摂取に対し、動物は一日おきに摂取させた。最後の摂取7日後、これらのラットは肺同種移植片のレシピエントとして利用した(以下に記載)。
【0125】
左肺同系移植片(WKY→WKY)又は同種移植片(F344→WKY)の同所性移植は、以前に記載されている手順(Prop et al. 1985)を利用し、以前に報告されているように実施した(Sekine et al. 1997)。手短に言えば、ドナーラット(F344又はWKY)をケタミン(40mg/kg)及びキシラジン(5mg/kg)のi.m.注射で麻酔した後、胸部を剃髪し、胸骨切開術を行い、心臓及び肺を一括して除去した。左肺を次ぎに切除し、ヘパリン処置したラクトリンゲル液を肺動脈中に注入した。ドナー肺を生理食塩水で飽和した滅菌ガーゼでラップし、移植するまで無菌ビーカー中の氷上(4℃)に置いた。
【0126】
レシピエントラットをアトロピン(0.05mg/kg)のs.c.注射、続いての2%ハロタンの吸入で麻酔した。気道に14−ゲージテフロンカテーテルでカニューレ挿入し、ラットは100%酸素を利用するげっ歯類ベンチレーター(Analytical Specialties Co., St. Louis, Mo.)を使用して機械的に換気し、麻酔維持のため1.5〜2%イソフルレンを吸入させた。左4肋間腔の開胸術を行ったら、左肺血管及び気管支に止血剤を置き、左肺を切除した。プラスチックカフ及び7−0絹縫合糸(Kono, Chiba, Japan)により、ドナー肺の肺血管をレシピエントに吻合した。ドナー及びレシピエント気管支を、8−0 Prolene 縫合糸(Ethicon, Sommerville, N. J.)を利用してお互いに縫合した。気管支の吻合終了後直ちに止血剤を除去し、換気を回復させた。3−0絹縫合糸(Ethicon)を利用して16ゲージ胸腔チューブ上で左開胸切開を閉じた後、麻酔維持を中断し、動物を回復させた。自発呼吸が再開したら、カニューレを気道から除去し、胸腔チューブをはずした。ドナー肺の虚血時間はおよそ1時間であり、及びドナー肺を摘出する及び移植するための総手術時間はおよそ2時間であった。すべての移植手順は無菌状態の中、手術用顕微鏡(Micro Tech, colorado Springs, CO.)下でK.Y.により実施された。F344→WKY移植モデルには、第1週目の終わりまでの軽度の急性拒絶、及び第二週目の終わりまでの中程度から重度の急性拒絶の発生が付随している(Matsumura et al. 1995)。 全ての移植群において生存率は90%を上回った。実験期間の間、いずれの時点でも非免疫抑制療法は与えなかった。
【0127】
移植肺は、移植後1日、6日及び13日目に連続胸部X線検査によりモニターした。画像的変化は以下のように段階付けした:グレード1、正常;グレード2、軽度浸潤;グレード3、中程度浸潤;及びグレード4、重篤な浸潤又は完全不透明化。
【0128】
5移植群を研究した:WKYレシピエント内に移植されたWKYラットラットからの肺[対照同系移植片];希釈剤摂取WKYレシピエント内に移植されたF344肺[対照同種移植片];col(V)摂取WKYレシピエント内に移植されたF344肺[col(V)摂取同種移植片];col(II)摂取WKYレシピエント内に移植されたF344肺[col(II)摂取同種移植片];及びcol(XI)摂取WKYレシピエント内に移植されたF344肺[col(XI)摂取同種移植片]。
【0129】
気管支肺胞洗浄(BAL)液は、以前に報告されているように(Sekine et al. 1997)、移植2週間後のケタミン麻酔下の肺移植レシピエントから集めた。手短に言えば、自然の及び移植した肺のBALは、縫合により安全にされた16ゲージカテーテルで、右及び左主気管支の選択的カニューレ挿入により実施した。体側気管支がクランプされている間にサンプルを集め、3mlの滅菌PBS(37℃)を各主気管支内に点滴注入し、吸引した。遠心分離検体から得られた無細胞BAL上清は、使用されるまで−70℃で貯蔵した。BAL液示差的細胞計数は、光学顕微鏡を利用してサイトスピン上の高倍率視野当たり300細胞を計数し、サンプル中のマクロファージ、リンパ球及び多形核(PMN)細胞の量を決定することにより行った。
【0130】
遅延型過敏性(DTH)応答は、(Yamagami et al, 1999 )に記載されている方法を改変して決定した。手短に言えば、肺移植2週間後、対照又はcol(V)摂取WKYラットは、26ゲージ注射針を使用するs.c.注射により、右耳介内に、107照射(3000ラド)ドナー由来F344又は第三者(BN)脾細胞の30μl PBS溶液を受けた。左耳介は等容積の希釈剤を受け、対照部位として働いた。無処置又は同種移植片レシピエントWKYラットの別々の群が、15μgのcol(II)、col(V)又はcol(XI)を30μl容量で右耳介内に、希釈剤を左耳介内に注射されて試験された。耳の厚さは、注射直前及び24時間後に盲検様式で、マイクロメーターカリパー(Mitutoyo, Field Tool Supply, Chicago, 111.)で測定した。抗原特異的DTH応答は以下の式に従って計算した:特異的耳介膨潤=(右耳厚さ@24時間−右耳厚さ@0時間)−(左耳厚さ@24時間−左耳厚さ@0時間)x10−3mm(Yamagami et al., 1999)。全てのデータは三回の測定の平均として報告されている。
【0131】
別の実験において、無処置及びcol(V)摂取WKYラットを、100μlのアジュバントの懸濁液(Titermax, CytRx Corp., Norcross, Ga.)に溶解した100μgの低エンドトキシン ウシ血清アルブミン(BSA)(Sigma, St. Louis)で刺激した。各ラットは尾の基部への懸濁液のs.c.で刺激した。7日後、右耳介内へ2%熱凝集BSA溶液及び左耳介内へ希釈剤を接種した(Henningsen et al. 1984)。非刺激ラットがこれらの研究の対照であった。耳厚を注射直前及び24時間後に測定し、特異的耳膨潤を上記のように計算した。
【0132】
DTH部位でのTGF−βの中和は、(Bickerstaff et al. 2000)により記載されている手順を改変して実施した。手短に言えば、肺移植2週間後、col(V)摂取WKYラットは、5μgのポリクローナルニワトリ抗ラットTGF−β Ab又は5μgのポリクローナルヤギ抗ラットIL−4又はIL−10Ab(すべてR&D Systems, Minneapolis, Minn.)と混合された107照射(3000ラド)ドナー由来F344脾細胞の30μl PBS溶液を、26ゲージ注射針を使用したs.c.注射で右耳介内に受けた。左耳介は等容積の希釈剤を受け、対照部位として働いた。陰性対照のため、col(V)摂取同種移植片の別の群が、5μgの対照ニワトリトリ免疫グロブリン又は対照ヤギ免疫グロブリン(R&D Systems, Minneapolis, Minn.)と混合された107照射(3000ラド)ドナー由来F344脾細胞を右耳介内に、及び希釈剤を左耳介内に受けた。特異的耳膨潤は上記のように計算した。対照免疫グロブリンはDTH応答に何の影響も与えなかった。
【0133】
急性肺損傷のモデルとして、リポ多糖(LPS)(Sigma, St. Louis, MO)の肺胞又は静脈内点滴注入を、(O'Learye wheat t al. 1997)により記載されている手順を改変して実施した。手短に言えば、最後の給餌一週間後、正常WKYラット又はcol(V)摂取WKYラットをアトロピン(0.05mg/kg)のs.c.注射、続いての2%ハロタンの吸入で麻酔した。気道に14−ゲージテフロンカテーテルでカニューレ挿入し、ラットは100%酸素を利用するげっ歯類ベンチレーター(Analytical Specialties Co., St. Louis, Mo.)を使用して機械的に換気し、麻酔維持のため1.5〜2%イソフルレンを吸入させた。自発呼吸の消失後、LPS(1mg/mlで1mg/kg)を気道内に点滴注入し、10分間機械的に換気した。麻酔維持を中断し、動物を蘇生させた。自発呼吸が再開したら、カニューレを気道から除去した。別の実験において、ラットはLPS(1mg/mlで4mg/kg)を尾静脈内に静脈内注射された。暴露24時間後、BALを実施し、肺を病理学の評価のために摘出した。
【0134】
実験群の血清中TGF−βレベルは、製造元のプロトコールに従ったTGF−β1免疫アッセイシステム(Promega, Madison, Wis.)を利用するELISAにより定量した。血清中IL−4及びIL−10レベルは、製造元のプロトコールに従ったCytoscreen 免疫アッセイキット(BioSource International, Camarillo, Calif.)を利用するELISAにより定量した。TGF−β、IL−4及びIL−10アッセイの感度はそれぞれ32、2及び5pg/mlであった。
【0135】
病理学は、各群からの自然及び移植肺を試験することにより評価した。肺サンプルを摘出し、固定し、切片化し、染色し、及び標準的判断基準(Yousem et al. 1996)を使用し、以前に報告されているように(Sekine et al. 1997)移植群の予備知識なしの盲検的様式で、病理学者(O. W. C.)により段階付けされた。
【0136】
BAL液中のPMN及びリンパ球数の統計的分析は、最初にANOVAにより実行し、群間で差違が存在するかどうかを決定した。もし差違が観察されたら、Student-Newman-Keuls 検定を利用する事後解析を実行して、どの群が異なっているのかを決定した。P値<0.05が有意であると決定された。対照同種移植におけるDTH及び異なった抗原が暴露された無処置WKYラットは正常に分布していないことが観察されたので、相互作用を有するrank-sum二方向ANOVAを利用し、群間の差違を決定した。P値<0.05が有意であると決定された。対照同種移植片及びcol(V)摂取同種移植片間の、ドナー同種抗原に対するDTH応答の相違はマンホイットニーU検定を利用して決定した。P値<0.05が有意であると決定された。気道及び脈管病理学的スコア間の相違は、最初にクラスカル・ワリス検定を利用して、続いてマンホイットニーU検定を利用する事後解析により決定した。P値<0.03が有意であると決定された。サイトカインの解析のためには、複数の比較のためのスチューデントt検定を利用した。P値<0.05が有意であると決定された。
【0137】
細胞性免疫応答のインビボ試験である、ドナー抗原に対するDTH応答は、肺以外の臓器移植の多様なげっ歯類モデルにおいて、拒絶の程度と相関すると報告されてきた(VanBuskirk et al, 1998; Lowry et al, 1985)。本発明者らは、col(V)が、マウスにおける肺同種抗原に対する局所免疫応答の標的であることを以前に示した(Mares et al. 2000)。それ故、col(V)が肺同種移植片拒絶の間に抗原として認識されるかどうかを決定するため、無処置ラット及び肺同種移植片レシピエントにおいて、全身性DTHが同種抗原に応答することが決定された。肺同種移植片レシピエントがcol(V)に対するDTH応答を発生するかどうかも決定された。F344(ドナー)脾細胞及びcol(V)に対するDTH応答は、F344肺同種移植片を受けて2週間後(重度の急性拒絶が発生し始める時点(Matsumura et al. 1995))のWKYラット及び無処置、非移植WKYラットにおいて試験した。同種抗原及びcol(V)に対するDTH応答の特異性を決定するため、col(II)、col(XI)及び第三者抗原、BN脾細胞に対するDTH応答を決定した。関節軟骨の主要成分であるCoI(II)は肺には存在せず、及びcol(V)とは相同的ではない(Smith et al. 1985)。対照的に、col(XI)はcol(V)と相同性を有するが(Morris and Bachinger 1987)、col(II)と同様に、関節軟骨に観察され、及び肺には存在しない。これらの理由のため、col(II)及びcol(XI)はcol(V)の対照として働く。
【0138】
DTH応答の尺度として特異的耳膨潤を利用し、図10は、対照同種移植片レシピエントが移植2週間後にF344脾細胞及びcol(V)に対する有意なDTH応答を発生したことを示している[F344脾細胞又はcol(V)を暴露した無処置WKYラットと比較して†P<0.0001、及びcol(V)又はF344脾細胞を暴露した無処置WKYラットと比較して†P<0.0001](図10)。対照的に、対照同種移植片は第三者(BN)抗原、col(II)又はcol(XI)に対するDTH応答を有していなかった(図8)。無処置WKYラットはcol(II)又はcol(XI)に対するDTH応答を有していなかった。これらのデータは、DTH応答が同種移植片拒絶間の免疫活性化を示し、それはドナーに特異的ではあるが第三者同種抗原には特異的ではないことを示している他の研究(VanBuskirk et al. 1998)を裏付けている。加えて、col(V)が肺同種抗原に対する免疫応答の標的である(しかしcol(II)又はcol(XI)は標的ではない)という本発明者のマウスでの結果(Mares et al. 2000)を裏付けている。
【0139】
以前の報告は、肺以外の同種移植片の拒絶の間に免疫応答の標的である抗原の経口投与は、ドナー臓器に対する寛容性を誘導することを示した(Ishido et al. 1999)。移植に先立っての、肺同種移植片レシピエントへのコラーゲンの経口投与がドナー肺に対する免疫学的寛容性を誘導するかどうかを決定するため、上記のように移植に先立ってWKYレシピエントにcol(II)、col(V)又はcol(XI)を摂取させ、続いて連続胸部X線、同種移植片BAL示差的細胞計数、病理学的段階付け及びドナー抗原に対するDTH応答を評価した。
【0140】
図12は、重度の急性拒絶が発生し始める時点(Matsumura et al. 1995)である移植2週間後の実験群、及び正常WKYラットにおける、BAL液中の示差的細胞計数を示している。同系移植片肺と比較した正常においては、BAL示差的細胞計数に差違はなかった。以前の報告(Prop et al. 1985; Yagyu et al. 1990)と同様に、正常又は同系移植片肺と比較して、対照同種移植片BALにおいてはPMN及びリンパ球が有意に増加した(正常又は同系移植片肺と比較してリンパ球について*p<0.00001、及びPMNについて†p<0.038)(図12)。対照的に、移植に先立ってcol(V)を摂取させることは、対照同種移植片と比較してBAL中のPMN及びリンパ球に有意な減少を生じた(対照同種移植片と比較してリンパ球について‡p<0.0001、及びPMNについて§p<0.023)(図12)。
【0141】
急性同種移植片拒絶は通常、同種移植片BAL液中の総細胞数の増加に関係する(Matsumura et al. 1995)。しかしながら、移植2週間後では、対照WKY同種移植片肺は重度の拒絶を通常受けており、移植片の破壊により、BAL総細胞数を決定するための十分なBALは確実には実施することが不可能である。対照的に、col(V)摂取同種移植片レシピエントはより軽度の拒絶を示し、それはより容易なBALを可能にし、より高い細胞計数を生じる。これらの理由のため、群間の総細胞数の比較は行われなかった。まとめると、col(V)による経口免疫は、急性拒絶間の同種移植片BAL液におけるより少ないPMN及びリンパ球と関連することをこれらのデータは示している。
【0142】
急性肺同種移植片拒絶において、同種移植片BAL液中の減少したPMN及びリンパ球数は、それほどひどくないX線検査及び組織学的病変と通常関連する。肺浸潤の進行する速度を決定するため、移植レシピエントを移植後1、6及び13日目に連続胸部X線検査によりモニターし、上記のように段階付けした。図13に示したように、対照同系移植片は、全てのモニターした時点でいかなる肺浸潤も有していなかった(グレード1)(図13A)。対照同種移植片において、連続X線は移植6日目に左肺に軽度の浸潤(グレード2)の漸進的な発生を明らかにし(データは示されていない)、それは2週目の終わりまでに重篤な浸潤及び完全な不透明化(グレード4)を生じた(図13B)。しかしながら、col(V)摂取同種移植片においては、浸潤の発生は対照と比較してより遅かった。X線は6日目では正常(グレード1)であり、移植2週間後に軽い浸潤(グレード2)のみが存在した(図13C)。
【0143】
図14の上段のパネルは、移植2週間後に摘出した、自然の及び同種移植片WKY肺、及び対照同種移植及びcol(V)摂取同種移植ラットからの自然の及び同種移植肺の肉眼的解剖学を示している。同系移植片(左−L)及び自然肺(右−R)は外観が正常であった(図14A)。対照同種移植片レシピエント中の移植肺は、自然肺と比較して暗褐色の色、萎縮していた(図14B)。対照的に、col(V)摂取同種移植片レシピエントの移植された左肺(図14C)は自然の(正常)又は同系移植片肺(図14A)の外観を有していた。
【0144】
同種移植片BAL液におけるより少ないPMN及びリンパ球、胸部X線での同種移植片におけるあまりひどくない浸潤、及び保存された肉眼的解剖学は、移植に先立ってcol(V)を摂取させることは、拒絶病態の発生を下方調節することを示唆している。図14の下段のパネルは、移植2週間後の対照同系移植片、対照同種移植片及びcol(V)摂取同種移植片の代表的な組織学を示している。全ての対照同系移植片肺は、拒絶の徴候がない正常組織学を有していた(図14D)。対照同種移植片は、重度の急性拒絶と一致する広範な血管周囲、気管支周囲及び肺胞単核細胞浸潤を明らかにした(図14E)。対照的に、col(V)摂取同種移植片肺においては、軽度から中程度の血管周囲及び気管支周囲のみしか検出されなかった(図14F)。
【0145】
図15のデータは移植2週間後での拒絶病態の段階付けを示している。急性拒絶は血管周囲単核細胞浸潤の存在及び程度に従って、A0−A4に段階付けされ、及び気道炎症の程度及び強度に従ってB0−B4に段階付けた(Yousem et al. 1996)。全ての同系移植片対照肺は肺の正常構造が明らかにされた(A0±0、B0±0)。対照同種移植片は重度の血管及び気道拒絶を有していた(それぞれA3.8±0.2、B4±0)。対照的に、col(V)摂取同種移植片は軽度から中程度の血管及び気道拒絶(それぞれA2.8±0.2、B2.6±0.2)(対照同種移植片と比較してAスコアについては*p<0.028及びBスコアについては†p<0.009)(図15、表3)を示した。実験は、coI(II)及びcol(XI)の摂取が対照同種移植片と比較して同種移植片病態の発生に効果がないことを示している(図15、表3)。これらのデータは、col(V)を摂取させることは急性拒絶病態を下方調節することを示している。
【0146】
col(V)を摂取させることが、肺同種移植片拒絶を下方調節することを示しているデータは、経口的に寛容化された肺移植片レシピエントが、ドナー同種抗原に対する減少したDTH応答を有すべきであることを示している。col(V)摂取が同種抗原に対する免疫応答を減少させるかどうかを決定するため、対照同種移植片レシピエント及びcol(V)摂取同種移植片レシピエントは、右耳介に全同種F344脾細胞及び左耳介にPBSを暴露し、DTH応答を決定した。図16に示したように、及び図10で前に示したように、無処置の対照同種移植片レシピエントは、ドナー抗原暴露後に強いDTH応答を有した。対照的に、対照同種移植片レシピエントと比較してcol(V)摂取同種移植片レシピエントにおいては、ドナー抗原に対するDTH応答は有意に軽減されていた(対照同種移植片と比較して*p<0.02)(図16)。
【0147】
col(V)により誘導された同種抗原に対する損なわれた免疫応答は、広範囲の免疫低応答性であり(Faria and Weiner 1999)、免疫寛容ではない。それ故、col(V)摂取WKYラットが他の抗原に応答できるかどうかを決定するため、これらのラットは気管内(1mg/kg)か又は静脈内に(4mg/kg)LPSを受け、それらの用量は暴露24時間後に、肺及び全身的に重度の炎症反応を誘発することが知られている用量であった(O’Leary et al. 1997)。誘発された疾患は肺炎及びグラム陰性菌により起こされる敗血症に類似していた。正常WKYラットと同様に、col(V)摂取WKYラット内の肺内へのLPSの点滴注入又はi.v.注射はBAL示差的細胞計数及び病態に観察されるような重度の病気(波打つ毛皮及び虚脱)及びPMN及びリンパ球の大量の流入を誘発した(データは示されていない)。
【0148】
col(V)摂取により誘導された損なわれた免疫応答が抗原特異的であったかどうかをさらに調べるため、col(V)を摂取させることが非相関微量抗原、BSA、ラットにおけるTリンパ球依存性抗原(Henningsen et al. 1984)に対するDTH応答に影響するかどうかを決定した。無処置及びcol(V)摂取WKYラットを、100μlのアジュバントに溶解した100μgのBSAで刺激し、7日後、右耳介内へ2%熱凝集BSA溶液及び左耳介内へ希釈剤を接種した。非刺激ラットがこれらの研究の対照であった。図24に示したように、非刺激ラットの耳介内へのBSAの注射は有意な耳膨潤を誘発しなかった。対照的に、無摂取刺激WKYラット内にBSAを注射すると、有意な耳膨潤を誘発した(無刺激無処置WKYラットと比較して*p<0.018)(図19)。しかしながら、col(V)摂取はBSAに対するDTH応答に影響しなかった(刺激WKYラットと比較して†p>0.05)(図24)。まとめると、これらのデータは、肺同種移植片拒絶のcol(V)誘導抑制は、広範な免疫低応答性ではなく免疫寛容により仲介されることを示している。
【0149】
経口寛容において、免疫応答を抑制する原因となるサイトカインとして、TGF−β、IL−4及びIL−10の全身的産生がしばしば引用される(Faria and Weiner 1999)。それ故、次ぎに、col(V)により誘導された経口寛容が肺同種移植片拒絶間のTGF−β、IL−4及びIL−10の上方調節された産生と関係しているかどうかを決定した。市販のELISAを利用し、実験群の血清中のTGF−β、IL−4及びIL−10を定量した。図17は、移植2週間後の正常WKYラット、対照同種移植片及びcol(V)摂取同種移植片における血清TGF−βレベルを示す。予期されるように、低レベルのTGF−βが正常WKYラットの血清中に存在した(Ying and Sanders 1998)。対照同種移植片においてはTGF−βのわずかな増加があった。対照的に、col(V)摂取同種移植片の血清中では、TGF−βレベルは著しく上方調節されていた(対照同種移植片レシピエントと比較して*p<0.05)(図17)。IL−4又はIL−10は、同一ラットの血清中では検出不能であった(データは示されていない)。
【0150】
IL−4又はIL−10は血清中に検出されなかったけれども、このことは、ドナー同種抗原に対して下方制御された細胞性免疫応答における、それらの全身的活性を除外するものではない。TGF−β、IL−4及びIL−10が同種抗原に対する免疫応答の抑制に役割を有しているかどうかを決定するため、ドナー抗原に対するDTHアッセイにおいて、これらのサイトカインの中和抗体を利用した。(Bickerstaff et al. 2000)により報告されている手順の改変を利用し、肺移植2週間後、col(V)摂取WKYラットは、5μgのポリクローナル抗TGF−β Ab又は5μgのポリクローナル抗IL−4又はIL−10Abと混合された107照射(3000ラド)ドナー由来F344脾細胞のPBS溶液を、右耳介内に受けた。左耳介は等容積の希釈剤プラス脾細胞を受け、対照部位として働いた。陰性対照のため、col(V)摂取同種移植片の別の群が、脾細胞とともに対照免疫グロブリンを右耳介内に、及び希釈剤プラス脾細胞を左耳介内に受けた。図18に示したように、及び図10で前に示したように、未処置対照同種移植片レシピエントはドナー抗原の暴露後に強いDTH応答を有したが、それはcol(V)摂取同種移植片レシピエントでは有意に減少していた。しかしながら、col(V)摂取同種移植片は、抗TGF−β抗体がドナー脾細胞と混合され、耳の耳介内に注射された場合、有意にDTH応答を回復した[対照免疫グロブリンと混合した抗原を暴露されたcol(V)摂取同種移植片と比較して*p<0.03](図18)。対照的に、ドナー脾細胞とIL−4又はIL−10の中和抗体を混合することはDTH応答を回復することにあまり有効ではなかった[対照免疫グロブリンと混合した抗原を暴露されたcol(V)摂取同種移植片と比較して†‡p>0.05](図18)。対照同種移植片と比較した、抗TGF−β、抗IL−4及び抗IL−10抗体によるcol(V)摂取同種移植片のDTH応答の回復は、それぞれ75.7%、24.3%及び39.9%であった(図18)。
【0151】
実施例6
急性肺同種移植片拒絶の発生への経口寛容についてのcol(V)の効果は用量依存的である。F344(RTllvl)及びWKY(RTl1)雄ラット(200〜250g)はHarlan Sprague Dawley(Indianapolis, Ind.)から購入した。すべての左肺同種移植片(F344)又は同系移植片(WKY)は、以前に記載されているように(Sekine et al. 1997)、WKYレシピエント内に、正所的に移植した。
【0152】
ここで図25、表4を参照すると、この実施例で集められたデータの要約が含まれている。V型コラーゲンは、正常出産のヒト胎盤か又は肺癌切除時に得られた正常肺組織検体から単離された。コラーゲン生化学に広範な専門知識を有するGerald N. Smith Jr., Ph.D. がこれらの研究のために精製V型コラーゲンを提供した。
【0153】
WKYラットは、予備的データ及び投稿原稿に報告されているように、胃経管栄養法を使用し、移植手術に先立ってコラーゲンで免疫した。全てのラットは、表に記載されているように、4又は8日間、1日おきに摂取させた。予備的データと同様に、1週間の摂取後回復期間の後、F344ラット(同種移植)又はWKYラット(同系移植片)の左肺をWKYレシピエント内に正所的に移植した。この実験のラットは免疫抑制剤を受けていない。各コラーゲン型に対する各摂取群には20匹のラットが含まれている。ここで図25、表4を参照すると、本明細書で報告された実施例で使用された実験群の説明が含まれている。
【0154】
重度の拒絶反応が発生する時点である(Matsumura et al. 1995)、移植2週間の終わりに先立った24時間前、10レシピエントラットのドナー抗原に対するDTH応答について試験し、続いて胸部臓器を摘出した。BALを自然の及び移植片肺に対し、それぞれ右及び左主気管支にカニューレを選択的に挿入することにより実施し、37℃で5mlのPBSを点滴注入した(Sekine et al. 1997)。無細胞BALは遠心分離した検体から得られ、上清を−80℃で貯蔵した。血液は大静脈及び心穿刺により集め、検体を遠心分離して血清を分離し、−80℃で貯蔵した。
【0155】
遅延型過敏性(DTH)応答研究は、予備データ及び原稿(Yasufuku et al. 投稿中)に報告されているように、2週間の術後期間の完了に先立つ24時間前、WKYラットの右耳内への照射ドナー(F344)脾細胞の注射により実施した。データは「特異的耳膨潤」として報告された。予備的研究は、最大DTH応答が耳注射24時間後に起こることを示している他の報告(Yamagami et al. 1999)を確認し、それ故、すべてのDTH測定は耳注射24時間後に実施されるであろう。予備的研究は、DTH試験は全身的細胞性又は体液性応答に影響を及ぼさないことを確認した。コラーゲン摂取WKYラットと比較した同系移植片及び同種移植片対照レシピエントにおけるドナー抗原に対するDTH応答を比較することにより、異なった用量のcol(V)がドナー抗原に対するDTH応答に示差的効果を有するかどうかを決定し得る。
【0156】
安楽死後、胸郭臓器を一括して除去し、組織学的に研究した。手短に言うと、胸郭臓器からのサンプルを4%グルタルアルデヒドの気管内点滴注入により固定し、パラフィンに包埋し、5〜7μmの切片とし、および光学顕微鏡による組織学的研究のためヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色した。組織学的病変はヒト肺同種移植片拒絶についての標準組織学的基準(Yousem et al. 1996)により、盲検的様式(Wilkes et al. 1995)で段階付けした。急性拒絶は、血管周囲及び細気管支周囲単核細胞浸潤の変化する強度により特徴付けた(Yousem et al. 1996)。群間の細胞浸潤の相違が、急性拒絶の認められた基準内で説明されるよりも適していることができるので、Sigma Scan ソフトウェアー(Jandel Scientific, Chicago, III)を利用し、デジタル化H&E染色組織切片(細胞/μm2)上に存在する、血管周囲及び細気管支周囲単核細胞を計数することにより浸潤が定量化されるであろう。デジタル化法は現在我々の実験室で使用されている。
【0157】
細胞傷害性Tリンパ球は肺同種移植片拒絶の病態発生に鍵となる役割を有しており(Trulock 1997)、損なわれた細胞傷害活性は、経口寛容が疾患活性を防止する鍵となる機構であることが示されている(Faria and Weiner 1999; Mayer 2000; Garside and Mowat 1997)。col(V)寛容化肺移植片レシピエントにおける減少した拒絶活性が損なわれた抗ドナー細胞傷害活性と関連するかどうかを決定するため、末梢リンパ節細胞を正常F344(ドナー)ラットから単離し、51Cr(New England Nuclear, Boston, Mass.)を負荷し、完全培地中、96ウエル平底プレート(標的細胞、5x103/ウェル)においた。エフェクター細胞(各群中のレシピエントWKYラットからの脾臓Tリンパ球)を種々の比で標的と37℃で4時間インキュベートした(1:1、5:1、10:1及び100:1のE/T比)。純粋な脾臓T細胞(>95%純度)は、抗CD3磁気ビーズ(Dynal Corp, Lake Success, N.Y.)を利用して単離し、及びフローサイトメトリーにより確認した。細胞傷害性は、負荷標的細胞のみからの放出と比較された、各E/T比のエフェクター細胞により誘発された特異的51Cr放出により決定された。
【0158】
他の研究者は、ラット及びヒトにおける肺同種移植片拒絶が肺胞、血管及び細気管支組織に存在する細胞のアポトーシスと関連していること、及びそのアポトーシスが同種移植片受容の間にまれに検出されることを確認している(Blankenberg, et al. 2000)。同種抗原に対する局所的免疫応答が、マウスの血管内皮及び細気管支上皮内でのアポトーシスの誘導を含んでいることも以前に示されている。加えて、ドナー抗原に対するアネルギーを誘導するcol(V)での免疫化は、このモデルにおいて同種抗原誘導アポトーシスを防止する。肺同種移植片におけるアポトーシスを防止する、col(V)誘導経口寛容の能力を決定するため、TdT仲介dUTP Nick End Labeling (TUNEL)アッセイキット(In Situ Cell Death Detection Kit, Boehringer Mannheim, Indianapolis, Ind.)を利用して、移植2週間後の肺同種移植片組織切片におけるアポトーシスを検出した。血管周囲及び細気管支周囲組織中のアポトーシスを起こした細胞の量は、Sigma Scan ソフトウェアー(Jandel Scientific, Chicago, III)を利用し、デジタル化エオシン対比染色組織切片(細胞/μm2)上で定量した。
【0159】
col(V)により誘導された免疫抑制のすべての可能性のあるメディエーター、IL−4、IL−10、TGF−β、CTGF及び一酸化窒素の産生、ならびに移植後合成の時間経過を決定するため、拒絶病態を防止することに最も有効であるcol(V)の用量を、ラットの別の群を摂取するために使用した。簡単に言えば、同種移植片対照ラット及びcol(V)摂取同種移植片レシピエントを移植後2日、4日、6日、8日、10日、12日及び14日目に屠殺し、製造元のプロトコルによるELISAにより(R&D Systems, Minneapolis, Minn.)、IL−4、IL−10、TGF−βの血清レベルを定量した(n=5 各時点で5ラット)。RNaseプロテクションアッセイ(Pharmingen, San Diego, Calif.)を利用して、末梢リンパ節及び脾細胞におけるこれらサイトカインのmRNAを検出した。対照は、正常WKYラットからの血清、リンパ節及び脾細胞である。
【0160】
対照同種移植片、col(V)摂取同種移植片及び正常ラットの血清中のCTGFレベルは、CTFGの構造及び機能における第一人者であるDr. George Martin, Ph.D., Scientific Director of Fibrogen, San Francisco, Calif. により、ELISAを用いて決定された。Dr. Martinにより提供されたプローブを利用し、末梢リンパ節及び脾臓中のCTGFについてのmRNAを検出するため、ノーザンブロッティングを使用した。タンパク質及びmRNA発現は、IL−4、IL−10及びTGF−βについて記述された同一の時点でアッセイした。
【0161】
血清中の一酸化窒素レベルは、対照同種移植片及びcol(V)摂取同種移植片において上記の種々の時点で、及び上記の移植後の種々の時点で、ならびに正常WKYラットで検出した。安定な代謝亜硝酸塩及び硝酸塩の産生は、血清の分光光度分析を利用するGreiss 反応により決定した(Kallio et al. 1997)。
【0162】
実施例7
慢性肺同種移植片拒絶(閉塞性細気管支炎)の発生における経口寛容についてのCoI(V)用量の効果。病原体フリー、MHC(RTl)不適合雄ラットを本研究に利用した:Fischer 344(F344、RT1lvl)、Brown Norway(BN、RT1n)及びWistar Kyoto(WKY、RTl1)ラット(移植の時点で250−300g)。全てのラットはHarlan Sprague Dawley (Indianapolis, Ind.)から購入し、施設のガイドラインに従ってUniversity School of MedicineのLaboratory Animal Resource Center Indiana (Indianapolis, Ind.)に収容した。
【0163】
II型コラーゲン[col(II)]は、以前に報告されているようにイヌ軟骨から単離した。精製ヒトV型コラーゲン[col(V)]及びXI型コラーゲン[col(XI)]はDr. Jerome Seyer (VA Hospital, Hampton, Va.)から贈与された。コラーゲンは0.005M酢酸(0.5mg/ml)で希釈し、使用されるまで4℃で貯蔵した。
【0164】
WKYラットは、0.5mlの生理食塩水に溶解した10μgのcol(V)溶液を、16ゲージボールポイントステンレススチール動物摂取針(Braintree Scientific, Braintree, Mass.)を利用する胃経管栄養により摂取させた。対照動物には希釈剤のみを摂取させた。8回摂取に対し、動物は一日おきに摂取させた。最後の摂取7日後、これらのラットは肺同種移植片のレシピエントとして利用した。
【0165】
左肺同系移植片(WKY→WKY)又は同種移植片(F344→WKY)の同所性移植は最初に(Marck et al. 1983, 及び Prop et al. 1985)により記述手順を利用し、既に報告されているように実施した。F344→WKY移植モデルは、第二週の終わりまでに重度の拒絶発生が付随した。加えて、このモデルは、再現性よく閉塞性細気管支炎(BO)を発生する、ただ一つの肺移植の動物モデルである。全ての移植群において生存率は90%を上回った。実験期間の間、いずれの時点でも非免疫抑制療法は与えなかった。
【0166】
3つの移植群を研究した:WKYラットからの肺をWKYレシピエントに移植[対照同系移植片];F344肺を希釈剤摂取WKYレシピエントに移植[対照同種移植片];及びF344肺をcol(V)摂取WKYレシピエントに移植[col(V)摂取同種移植片]。レシピエント移植2週及び10週後に屠殺した。
【0167】
遅延型過敏性(DTH)応答は、(Sayegh et al. 1994及び Yamagami et al. 1999)に記載されている方法を改変して決定した。手短に言えば、肺移植10週間後、対照又はcol(V)摂取WKYラットは、26ゲージ注射針を使用するs.c.注射により、右耳介内に、107照射(3000ラド)ドナー由来F344又は第三者(BN)脾細胞の30μlのPBS溶液を受けた。左耳介は等容積の希釈剤を受け、対照部位として働いた。無処置WKYラットは陰性対照であった。無処置又は同種移植片レシピエントWKYラットの別々の群が、15μgのcol(II)、col(V)又はcol(XI)を30μl容量で右耳介内に、希釈剤を左耳介内に注射されて試験された。耳の厚さは、注射直前及び24時間後に盲検様式で、マイクロメーターカリパー(Mitutoyo, Field Tool Supply, Chicago, 111.)で測定した。特異的耳膨潤は以下の式に従って計算した:特異的耳膨潤=(右耳厚さ@24時間−右耳厚さ@0時間)−(左耳厚さ@24時間−左耳厚さ@0時間)x10−3mm。全てのデータは三回の測定の平均として報告されている。
【0168】
DTH部位でのTGF−βの中和は、(Bickerstaff et al. 2000)により記載されている手順を改変して実施した。手短に言えば、肺移植10週間後、col(V)摂取WKYラットは、5μgのポリクローナルニワトリ抗ラットTGF−β Ab(R&D Systems, Minneapolis, Minn.)と混合された107照射(3000ラド)ドナー由来F344脾細胞の30μlのPBS溶液を、右耳介内に受けた。左耳介は等容積の希釈剤を受け、対照部位として働いた。陰性対照のため、col(V)摂取同種移植片の別の群が、5μgの対照ニワトリトリ免疫グロブリン又は対照ヤギ免疫グロブリン(R&D Systems, Minneapolis, Minn.)と混合された107照射(3000ラド)ドナー由来F344脾細胞を右耳介内に、及び希釈剤を左耳介内に受けた。特異的耳膨潤は上記のように計算した。対照免疫グロブリンはDTH応答に何の影響も与えなかった。
【0169】
混合白血球反応は以前に記述されている手順を改変することにより実施した。手短に言えば、抗原提示細胞源(APC)として使用されたF344脾細胞(刺激物質)をマイトマイシンC(Sigma, St. Louis, Mo.)で処理し、種々の比で、WKYラットからのリンパ節T1リンパ球(応答物質)(3x105/ウェル)と、96−ウェル平底マイクロタイタープレート(Costar, Cambridge, Mass.)の200μlの培地(RPMI、2mM L−グルタミン、5x10−5M 2−メルカプトエタノール、100U/mlペニシリン、100μl/mlストレプトマイシン、10%熱不活性化ウシ胎児血清)中で同時培養した。37℃(5%CO2)での5日間のインキュベーションが完了する18時間前、各ウェルに1μCi/mlの3H(Amersham Corp., Arlington Heights, 111.)を加えた。培養物を自動化セルハーベスター(Brandel, Gaithersburg, Md.)で収穫し、液体シンチレーションカウンター(Beckman, Arlington Heights, 111.)で分析した。細胞増殖は、3回の培養での[3H]チミジン取り込みの分当たりのカウントの平均として決定され、刺激指数として報告された。別の実験において、刺激物質として実験群のWKYラットからの脾細胞及び応答物質としてF344ラットからのリンパ節Tリンパ球を使用して同じアッセイを実施した。
【0170】
実験群の血清中のTGF−βレベルは、製造元のプロトコルにより、TGF−β1免疫アッセイシステム(Promega, Madison, Wis.)を利用するELISAにより定量した。血清中のIL−4及びIL−10レベルは、製造元のプロトコルにより、Cytoscreenイムノアッセイキット(BioSource International, Camarillo, Calif.)を利用するELISAにより定量した。TGF−β、IL−4及びIL−10アッセイの感度は、それぞれ32、2及び5pg/mlであった。
【0171】
病理学を評価するため、各群からの自然の及び移植された肺を摘出し、固定し、切片化し、染色し、及び既に報告されたように、移植群の予備知識がない盲検的様式で、病理学者(O. W. C.)による標準的判断基準を使用して拒絶病態について段階付けした。
【0172】
対照同種移植におけるDTH及び異なった抗原が暴露された無処置WKYラットについてのデータは正常に分布していないことが観察されたので、相互作用を有するrank-sum二方向ANOVAを利用し、群間の差違を決定した。対照同種移植片及びcol(V)摂取同種移植片間の、ドナー同種抗原に対するDTH応答の相違はマンホイットニーU検定を利用して決定した。MLR及びサントカインの分析については、複数の比較のためのスチューデントt検定を利用した。P値<0.05が有意であると決定された。
【0173】
急性肺同種移植片拒絶は、ドナー抗原ならびにcol(V)に対する免疫応答と関連することが示されている。しかしながら、最近の研究は、ドナー抗原に対する免疫応答が時間とともに減少できることを示唆した。ドナー抗原及びcol(V)に対する免疫応答が肺移植後長期に存在するかどうかを決定するため、F344(ドナー)脾細胞及びcol(V)に対するDTH応答を、F344肺移植片の移植10週後に、WKYラットにおいて試験した。図19は、対照同種移植片レシピエントが無処置WKYラットと比較して、ドナー抗原(F344脾細胞)及びcol(V)に対する有意なDTH応答を有していることを示している(*p<0.05)。有意に、10週目でのドナー抗原及びcol(V)に対するDTH応答は、急性拒絶の間に(移植2週間後)観察されたものと同じであった。CoI(II)又はcol(XI)(対照)は、いずれの時点でも、肺同種移植片レシピエントにおいてDTH応答を誘導しなかった。
【0174】
ドナー由来抗原を使用する経口寛容誘導は、移植2週間後まではドナー抗原に対する細胞性免疫応答を抑制するのに有効であった。加えて、欠損抗原提示が、寛容が免疫応答を変調する別の機構であると報告されている。col(V)摂取がドナー抗原に対する細胞性免疫応答を長期に下方調節するかどうかを次ぎに決定し、col(V)誘導経口寛容が抗原提示に影響する効果を試験した。上記のように、非摂取及びcol(V)が摂取されたWKYラットは、F344肺同種移植片を受けた。移植2週間(急性拒絶の時間)及び10週間(BO発症の時間)後、ラットを屠殺し、リンパ節リンパ球を単離し、ドナー抗原(F344脾細胞)で刺激した。図19は、正常WKYラットからのリンパ節リンパ球又はF344肺同種移植片の移植後2週又は10週目のWKYラットから単離されたリンパ球が、ドナー抗原に対して匹敵する増殖応答を有していたことを示している。対照的に、正常又は対照同種移植片と比較し、col(V)誘導経口寛容は、両方の時点でドナー抗原に対する増殖応答の有意な減少を起こした(*p<0.05)。加えて、col(V)摂取肺同種移植片レシピエントからのリンパ球に対する増殖応答は、2週と比較して10週ではより低かった(*p<0.05、図20)。
【0175】
我々は次ぎに、col(V)誘導経口寛容が抗原提示に影響するかどうかを決定した。手短に言えば、脾細胞(抗原提示細胞源)は正常WKYラット又はF344肺同種移植片の移植後2週又は10週目のWKYラットから単離され、MLRにおいてF344リンパ節リンパ球が増殖するのを誘導するそれらの能力を試験した。図19は、2週及び10週目にcol(V)摂取同種移植片レシピエントから単離された脾細胞が、正常WKYラットから単離された脾細胞に匹敵する増殖を誘導したことを示している。
【0176】
ドナー抗原に対するDTH応答は、臓器移植の多様なげっ歯類モデルにおける拒絶活性と相関すると報告されている。それ故、10週目のcol(V)摂取肺同種移植片レシピエントにおけるドナー抗原に対する減少したDTH応答を示しているデータは、同種移植片における減少した拒絶病態を示唆している。図21は、移植10週後の、F344肺同種移植片を受けたWKYラット(対照同種移植片)、及びF344肺同種移植片を受けたcol(V)摂取WKYラットから摘出された肺同種移植片の肉眼的解剖学及び組織学を示している。対照同種移植片は暗褐色であり、萎縮し及び硬かった(図21A)。対照的に、col(V)摂取WKYラットからの同種移植片は、わずかに変色しているのみでほとんど正常外観を有していた(図21B)。移植10週後、全ての全対照同種移植片は広範囲の間質単核細胞浸潤、線維症及びBOの病理学的病変である肉芽組織による小気道の閉塞を発生した(n=5、図21C)。対照的に、col(V)摂取ラットから摘出された同種移植片は軽度急性拒絶の病態を記述する間質性炎症がなく、軽度の肺胞性浸潤を有するのみであった(グレードA2、n=5、図21D)。
【0177】
IL−4、IL−10又はTGF−βの全身的産生は、経口寛容誘導免疫抑制の機構としてよく報告されている。移植10週後の3つの実験群におけるTGF−βの血清レベルは、図22に示されている。正常WKYラットは血清中に低レベルのTGF−β、F344肺同種移植片を受けたWKYラットでは、わずかに、しかし有意ではなく増加したTGF−βレベルを有していた(対照同種移植-図22)。しかしながら、肺移植に先だってcol(V)を摂取させることは、有意に増加したTGF−βの血清レベルを生じた(図25、*p<0.05)。肺移植なしでcol(V)を摂取させることのみでは、血清TGF−βレベルは増加しなかった(データは示されていない)。IL−4又はIL−10のいずれも、いかなる群の血清にも検出されなかった。
【0178】
同種抗原に対するリンパ球応答の下方調節、及びインビトロでの同種抗原の無傷の提示を示しているデータは、col(V)誘導経口寛容が、インビボでのドナー抗原に対する抑制されたDTH応答にも関連しているに違いないことを示唆している。予期されるように、図23は、対照同種移植片レシピエントがドナー抗原に対する強いDTH応答を有していることを示している。しかしながら、移植に先だってcol(V)を摂取させることは、ドナー抗原に対するDTH応答を有意に減少させた(図26、*p<0.05)。TGF−βの増加した血清レベルがcol(V)誘導経口寛容に寄与しているかどうかを決定するため、以前に報告されているように、TGF−βへの中和抗体を使用してドナー抗原に対するDTH応答を繰り返した。図23は、TGF−βを中和することは、ドナー抗原に対するDTH応答の有意な回復を生じた(*p<0.05、及びDTH応答の75%が対照同種移植片において観察された)。
【0179】
実施例8
図26を参照すると、表5は実施例8で使用された実験群、CoI(V)のα鎖の臭化シアン消化物中に存在するペプチドが急性拒絶の発生を防止するかどうかの決定をリストしている。手短に言えば、これらの実験群は以下のようである:同種移植片対照無傷col(V)摂取2(V)。V型コラーゲンは、剖検で得られたヒト肺から単離された。肺組織を切り刻み、洗浄し及び0.2M NaClを含有する0.5M酢酸に懸濁させ、そしてペプシンにより消化し、遠心分離した検体から上清を吸引し、ペレットを集め、抽出手順を繰り返した。2つの消化物からの上清を合わせ、−70℃で貯蔵した。V型コラーゲンは0.5M酢酸からの示差NaCl沈殿により上清から精製した(Piez et al. 1963)。SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により決定されるおよそ2のα鎖比αl(V)/α2(V)を有するV型調製物が得られるまで、酢酸での可溶化及びNaCl沈殿のサイクルを繰り返す(Woodburye wheat t al. 1989)。α2(V)からのαl(V)の分離は、DEAE−セルロースでのクロマトグラフィーにより達成される(Chiang et al 1980)。αl(V)及びα2(V)鎖をカラムから溶出し、溶出物液中のヒドロキシプロリン含量の決定により定量する。
【0180】
V型コラーゲンのα鎖はさらに、コラーゲンのメチオニン残基を切断する臭化シアンによる消化により分画化する(Miller et al. 1971)。消化が完了した後、サンプルを50倍に希釈し、凍結乾燥して臭化シアンを除去した。消化の程度はポリアクリルアミドゲルでスクリーニングした。個々のペプチドはイオン交換及び分子ふるいクロマトグラフィーの併用により単離した。
【0181】
20匹のWKYラットは胃経管栄養法により、無傷のcol(V)又はαl(V)又はα2(V)からプールされたペプチドを受けた。本実施例における無傷のcol(V)又はペプチドの用量及び摂取計画は、実施例5で無傷のcol(V)について決定されたものと同じである。移植2週間後、各群のラットを屠殺し、及び肺を回収した。
【0182】
実施例9
ここに示されたデータは、本発明の方法は、ヒト移植片レシピエントにおける急性又は慢性拒絶病状発生を防止する又は軽減するのに有効であろうこと、同一ではないにしても同様の療法は特発性肺疾患、又は肺に観察されるコラーゲンに対する自己免疫応答を含む、いずれか他のタイプの肺疾患又は肺障害のための有効な治療でもあるべきであることを示唆する。ヒト対象が移植を受けるためにリストに載せられた場合、該対象は本明細書に記載されたコラーゲン化合物のような同種免疫応答を抑制する分子の有効用量を受け始めるであろうことも意図される。治療を受けている患者は、経口投与により、好ましくは経口摂取か又はレシピエント内への肺内滴下注入により該化合物を受けるであろう。
【0183】
用量は、当業者には公知である多数の因子により決定されるであろう。該対象が移植リストに載せられた時点から移植の時まで、月当たり少なくとも3用量を受けるであろう。ある場合には、月当たり少なくとも3用量を受けるために、用量が4日の間、隔日で投与されるであろう。他の場合、移植に先立って月当たり5回の総容量について、8日の間、隔日で投与されるであろう。他の場合には、該対象は、移植リストに載せられた時点から移植の時まで、週に1回該化合物を受けるであろう。対象に依存して、該対象が移植リストに載せられた時点から移植の時まで、週当たり少なくとも2回、該化合物を投与することができる。
【0184】
実施例10
自己免疫応答を抑制する分子、好ましくはコラーゲン化合物による、移植を受けた、又はコラーゲン、例えば、V型コラーゲンに対する自己免疫を含む肺疾患又は障害を患っているヒト対象の治療は、該対象における急性又は慢性病態を防止する又は軽減するであろうことがさらに企図される。上記のように、該化合物の投与は、経口摂取による、又はレシピエント(患者)内への肺内又は静脈内点滴注入によることを含む多様な手段で投与し得る。
【0185】
再び、投与量は当業者には公知の多数の因子に基づいて当業者により決定されるであろう。ほとんどの場合、所与の患者は少なくとも2ヶ月の間、又は疾患又は障害の病状が改善されるまで、月当たり少なくとも3用量の化合物を受けるようである。これらの用量は、月当たり3用量について、上記のように、4日の間、隔日で1用量の形態を取ることができる。このやり方を当業者により決定される必要なだけ繰り返すことが可能である。もしくは、該対象は、移植後必要とされる月の間、月当たり総計で5用量について8日の間、隔日で1用量を受けることができる。他の側面において、該対象は、当業者により決定されるように、週毎の増加又は週で2倍の用量などを受けることができる。
【0186】
本発明が図及び前記の説明において詳細に図示され及び記述されてきたが、このことは特質において例示的であり制限的ではないと考えるべきであり、好ましい態様のみが示され記述されてきたこと、及び本発明の精神内にくるすべての変更及び修飾は保護されるべきと望まれることを理解されている。その上、本発明が特定の実施例、理論的根拠、説明、及び例示を使用して例示されてきたが、これらの例示及び付随する議論は本発明を制限しているとして説明されているわけではない。この出願で参照されている、全ての特許、特許出願、及び教科書、科学書、出版物などへの参照は、その全体が本明細書において援用される。
【0187】
参照文献
下記の参照文献は、それらが本明細書に示されているものへの例となる手順又は他の詳細な補完を提供する範囲において、特別に本明細書において援用される。
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【図面の簡単な説明】
【0188】
【図1】肺移植片レシピエントの臨床経過に関連した抗col(V)B及びT細胞自己反応性。
【0189】
パネルA. col(II)又はcol(V)に対して試験された患者L3、L41、L31からのBALサンプルから精製されたIgGのウェスタンブロット分析。
【0190】
パネルB. 同じ3人の患者における抗col(V)自己免疫及び移植片機能の時間経過。FEV1(実線、左軸)は各患者について最大(L3について2.3、L41について2.4及びL31について2.8)の100%に調整された。BOSレベル1は灰色の点線で表されている(最大FEV1の80%)。col(V)(黒いバー、右軸)及びcol(II)(白いバー)に対するDTHは陰を付けた領域で表されている負のDTH応答(<25x10−4インチ)で示されている。ウェスタンブロットの結果(パネルAから)はグラフの頂点近くの矩形により表されている。急性拒絶病状発生は*により表されている。
【0191】
パネルC. パネルBで見られたものと同様の反応性のパターンを有する、4人の追加の対象における臨床経過及び抗col(V)反応性の合成。%最大FEVl(各線は個々の移植片レシピエントを表している)、col(V)に対する陽性Ab及び/又はDTH(所与の対象FEVl線上の黒丸)又はcol(V)に対する陰性Ab及び/又はDTH(FEVl線上の白三角)、ならびに対象の死(+)が示されている。BOS1閾値(80%最大FEVl)は灰色の点線で表されている。
【図2】BOS Iが存在しないことに関して抗col(V)反応性を発生させることの効果を試験しているカプランマイヤー分析。移植後326日(パネルA)又は移植後760日(パネルB)を通して良好な移植片機能を有する患者を、その時間に先立ち、col(V)へのそれらの応答に基づいて分割した。パネルA、陽性抗col(V)応答を有するもの(点線)には抗体/BAL又はDTH/末梢血陽性が含まれ;パネルB、DTH応答は前陽性抗col(V)応答を有する患者を同定するために使用される唯一の判断基準である。両方のパネルにおいて、陰性の前抗col(V)応答を有する患者は実線で示されている。col(V)非反応性群及びcol(V)反応性群間の相違は有意であった(p=0.01、パネルA;p=0.03、パネルB)
【図3】移植後肺患者におけるcol(V)に対するDTH応答は特異的であり、前移植には存在しない。
【0192】
パネルA. 移植後肺患者(n=8、いずれの疾患でも)又はグッドパスチャー(Goodpasture's)症候群を有する腎臓患者(GPS、n=5)をcol(II)(白いバー)、col(IV)(斜線を付けたバー)又はcol(V)(黒いバー)に対するDTH応答について試験し、平均膨潤±S.D.で表されている。種々のコラーゲンに対する肺移植片レシピエントの応答間の差違は有意であり(*p=0.001)、GPSと腎臓移植片レシピエントの間の相違もそうであった。
【0193】
パネルB. 多様な肺疾患を有する非移植片レシピエントをcol(II)(白いバー)、又はcol(V)(黒いバー)に対するDTH応答について試験し、平均膨潤±S.D.で表されている。IPF及びいずれか他の疾患を有する患者においては、col(V)に対する応答の相違は有意であった(*p=0.02)。
【0194】
パネルC. IPF及びいずれか他の疾患の移植前診断を有する患者についての時間と移植片機能損失のカプランマイヤー分析。1年移植片生存率相違は有意であった(p=0.05)。log rank解析による総移植片生存率は、群間で有意に異なっていなかった。
【図4】急性拒絶を受けた肺中の沈着を示しているIgGの免疫化学の写真。経気管支生検(TBB)の凍結切片又は正常肺組織はアセトン中で固定し、以前に記載されているように(Wilkes et al - Journal of Immunology 1995)IgGサブタイプ沈着のために染色した。パネルA、B、C及びDは、移植後100日目に急性拒絶グレード2を受けた肺同種移植片から得られたTBBのIgGl、IgG2、gG3及びIgG4サブクラス免疫染色を示している。細気管支周囲結合組織中のIgG2沈着が気管支上皮(矢印)に下にあることに注意されたい。対照的に、同一サンプル中には、IgGl、IgG3又はIgG4沈着は検出されなかった。上皮下基質中のIgG2沈着は、正常肺中及び静止状態移植片状態を有する同種移植片中には存在しない(データは示されていない)。
【図5】肺移植を待っている患者におけるV型コラーゲンに対する遅延型過敏性応答。DTH応答はT細胞活性化のマーカーであり、我々がラット肺移植モデルで報告したことを反している。IPFを有するが、他の形態の肺疾患ではない患者は、V型コラーゲンに対する有意により大きなDTH応答を有する。このことは、これらの患者がこの自己抗原に対して活性化されたT細胞をすでに有していることを示している。
【図6】未処置のWKYラット(A)、既にニワトリ卵リゾチームで免疫されたWKYラット(B)、又は既にV型コラーゲンで免疫されたWKYラット(C)内に移植された肺同系移植片の病態の効果を示している肺組織株の顕微鏡写真。データはcol(V)(HELではない)からの前感作は、移植後30日目の肺の破壊を生じることを示している。いずれのラットも免疫抑制剤又は他の治療を受けていない。データはHEL及びcol(V)群の各々について6匹のラット、未処置群ではSOラット以上を代表している。
【図7】表1、患者層の要約。これらの条件は多様な手術後病態と相関した肺移植法を受けた患者で診断された。
【図8】表2,BOSと関連する多様な因子を追跡しているデータの要約。因子はBOSと関連する。
【図9A】血清サンプル中の抗コラーゲンV抗体の異なったレベルを検出するために設計された、抗体ビーズに基づいたアッセイを使用して集められたデータのグラフ例示。右へのピークのシフトは抗コラーゲンV抗体の高いレベルを示す。左のパネルは患者から集められたデータを表し、右のパネルは多様なレベルの抗コラーゲンV抗体が血清に加えられた対照を表す。
【図9B】血清サンプル中の抗コラーゲンV抗体の異なったレベルを検出するために設計された、抗体ビーズに基づいたアッセイを使用して集められたデータのグラフ例示。右へのピークのシフトは抗コラーゲンV抗体の高いレベルを示す。左のパネルは患者から集められたデータを表し、右のパネルは多様なレベルの抗コラーゲンV抗体が血清に加えられた対照を表す。
【図9C】血清サンプル中の抗コラーゲンV抗体の異なったレベルを検出するために設計された、抗体ビーズに基づいたアッセイを使用して集められたデータのグラフ例示。右へのピークのシフトは抗コラーゲンV抗体の高いレベルを示す。左のパネルは患者から集められたデータを表し、右のパネルは多様なレベルの抗コラーゲンV抗体が血清に加えられた対照を表す。
【図9D】血清サンプル中の抗コラーゲンV抗体の異なったレベルを検出するために設計された、抗体ビーズに基づいたアッセイを使用して集められたデータのグラフ例示。右へのピークのシフトは抗コラーゲンV抗体の高いレベルを示す。左のパネルは患者から集められたデータを表し、右のパネルは多様なレベルの抗コラーゲンV抗体が血清に加えられた対照を表す。
【図9E】血清サンプル中の抗コラーゲンV抗体の異なったレベルを検出するために設計された、抗体ビーズに基づいたアッセイを使用して集められたデータのグラフ例示。右へのピークのシフトは抗コラーゲンV抗体の高いレベルを示す。左のパネルは患者から集められたデータを表し、右のパネルは多様なレベルの抗コラーゲンV抗体が血清に加えられた対照を表す。
【図9F】血清サンプル中の抗コラーゲンV抗体の異なったレベルを検出するために設計された、抗体ビーズに基づいたアッセイを使用して集められたデータのグラフ例示。右へのピークのシフトは抗コラーゲンV抗体の高いレベルを示す。左のパネルは患者から集められたデータを表し、右のパネルは多様なレベルの抗コラーゲンV抗体が血清に加えられた対照を表す。
【図9G】血清サンプル中の抗コラーゲンV抗体の異なったレベルを検出するために設計された、抗体ビーズに基づいたアッセイを使用して集められたデータのグラフ例示。右へのピークのシフトは抗コラーゲンV抗体の高いレベルを示す。左のパネルは患者から集められたデータを表し、右のパネルは多様なレベルの抗コラーゲンV抗体が血清に加えられた対照を表す。
【図9H】血清サンプル中の抗コラーゲンV抗体の異なったレベルを検出するために設計された、抗体ビーズに基づいたアッセイを使用して集められたデータのグラフ例示。右へのピークのシフトは抗コラーゲンV抗体の高いレベルを示す。左のパネルは患者から集められたデータを表し、右のパネルは多様なレベルの抗コラーゲンV抗体が血清に加えられた対照を表す。
【図9I】血清サンプル中の抗コラーゲンV抗体の異なったレベルを検出するために設計された、抗体ビーズに基づいたアッセイを使用して集められたデータのグラフ例示。右へのピークのシフトは抗コラーゲンV抗体の高いレベルを示す。左のパネルは患者から集められたデータを表し、右のパネルは多様なレベルの抗コラーゲンV抗体が血清に加えられた対照を表す。
【図9J】血清サンプル中の抗コラーゲンV抗体の異なったレベルを検出するために設計された、抗体ビーズに基づいたアッセイを使用して集められたデータのグラフ例示。右へのピークのシフトは抗コラーゲンV抗体の高いレベルを示す。左のパネルは患者から集められたデータを表し、右のパネルは多様なレベルの抗コラーゲンV抗体が血清に加えられた対照を表す。
【図9K】血清サンプル中の抗コラーゲンV抗体の異なったレベルを検出するために設計された、抗体ビーズに基づいたアッセイを使用して集められたデータのグラフ例示。右へのピークのシフトは抗コラーゲンV抗体の高いレベルを示す。左のパネルは患者から集められたデータを表し、右のパネルは多様なレベルの抗コラーゲンV抗体が血清に加えられた対照を表す。
【図10】移植2週間後の対照同種移植片レシピエントにおける、ドナー同種抗原、col(V)、及び第三者同種抗原に対するDTH応答の減少。無処置WKYラットが対照であった。動物は107照射(3000ラド)ドナー由来F344脾細胞、第三者(BN)脾細胞又は15μgのcol(V)を右耳介内に、及び左耳介に等容積の希釈剤を受けた。耳の厚さは、注射直前及び24時間後に盲検様式で、マイクロメーターカリパー(Mitutoyo, Field Tool Supply, Chicago, 111.)で測定した。特異的耳膨潤は方法に記載されているように計算した。データは、各群中4匹のラットのmmx10−3での特異的耳介膨潤の平均±SEMで表されている[F344脾細胞又はcol(V)を暴露された無処置WKYラットと比較して*p<0.0001又はcol(V)又はF344脾細胞を暴露された無処置WKYラットと比較して†p<0.0001]。
【図11】図11A、図11B及び図11C。1.5xl05同種(C57BL/6)BAL細胞単独、col(II)、又はcol(XI)(各50μg)の週4回の点滴注入後、4週の間の週1回、続いて週4回のC57BL/6 BAL細胞の点滴注入したBALB/cマウスの肺組織学。図11Aは、C57BL/6マウスからのBAL細胞の点滴注入を受けたBALB/cマウスの肺における細気管支周囲及び血管周囲単核細胞浸潤を示している。同様の病態病変がcol(II)(図11B)又はCoI(XI)の週1回の点滴注入を受けたBALB/cマウスの肺において観察された。
【図12】正常WKY肺、対照同系移植片肺、対照同種移植片肺及びcol(V)摂取同種移植片肺におけるBAL液示差的細胞計数。移植2週間後、移植された肺にBALを行った。示差的細胞計数は光学顕微鏡を利用し、サイトスピン調製液での300細胞/視野を計数することにより決定した。Mac、マクロファージ;Lym、リンパ球;PMN、多形核細胞。データは4正常WKY肺、4対照同系移植片、5対照同種移植片及び5col(V)摂取同種移植片の平均±SEMで表されている(正常又は同系移植片と比較して、PMNについて*p<0.038及びリンパ球について†p<0.000001、対照同種移植片と比較PMNして#p<0.023及びリンパ球と比較して‡p<0.0001)。
【図13】図13A、図13B及び図13C。移植2週間後の移植片レシピエントの連続胸部X線。左肺視野の短い白線(矢頭)は血管吻合使用されたカフを表している。対照同系移植片レシピエントは図13Aに正常胸部X線を示している。対照同種移植片レシピエントのX線は、重篤な浸潤及び完全な不透明化の同種移植片を明らかにし、重度の拒絶を図13Bに示している。Col(V)摂取同種移植片レシピエントは、図13Cに移植2週間後の軽度の浸潤のみを示している。胸部X線は各群5ラットの代表である。
【図14】図14A、図14B、図14C、図14D、図14E及び図14F。上段パネル:移植2週間後の(後面像)対照同系移植片肺、図14A、対照同種移植片肺、図14B及びcol(V)摂取同種移植片肺、図14Cの肉眼的解剖学。各パネルにおいて、左(L)肺は移植片肺であり、及び右(R)肺は自然肺である。対照同種移植片肺(パネルbの「L」)は、自然肺と比較し、暗褐色の色であり、萎縮し、及び堅いコンシステンシーであった。しかしながら、col(V)摂取同種移植片肺(パネルc中の「L」)は同系移植片肺(パネルa中「L」)の外観を有していた。対照同系移植片肺(図14A)は病態病変を示さず、正常WKY肺と同一であった。写真は各群中の5ラットを代表している。下段パネル:移植2週間後の対照同系移植、図14D、対照同種移植片、図14E、及びcol(V)摂取同種移植片、図14F、の組織学である。対照同系移植片は正常な気道及び血管構造を示す(図14D)。対照同種移植片は、重度の拒絶反応と一致する広範な血管周囲、気管支周囲及び肺胞単核細胞浸潤を示す(図14E)。対照的に、col(V)摂取同種移植片は軽度から中程度のみの血管周囲、気管支周囲及び肺胞単核細胞浸潤を示す(図14F)。顕微鏡写真は各群中の5匹のラットを代表している(100x倍率)。
【図15】表3。拒絶病態を段階付けしており、表は移植拒絶について対照から動物モデルまでのデータを含む表である。
【図16】col(V)の経口投与によるドナー同種抗原に対するDTH応答の減少。移植2週間後の対照同種移植片レシピエント及びcol(V)摂取同種移植片レシピエントの右耳介内に107照射(3000ラド)ドナー由来F344脾細胞を、及び左耳介に等容積の希釈剤を暴露した。耳の厚さは、注射直前及び24時間後に盲検様式で、マイクロメーターカリパー(Mitutoyo, Field Tool Supply, Chicago, 111.)で測定し、特異的耳膨潤を計算した。データは、各群中4匹のラットのmmx10−3での特異的耳介膨潤の平均±SEMで表されている(対照同種移植片と比較して*p<0.02)。
【図17】正常WKYラット、対照同種移植片レシピエント及びcol(V)摂取同種移植片レシピエントの血清中のTGF−βレベル。血清中のTFG−βのレベルはELISAにより決定された。データは、各群中4匹のラットの平均±SEMで表されている(対照同種移植片と比較して*p<0.05)。
【図18】TGF−βの中和は、col(V)摂取同種移植片レシピエントにおいてドナー同種抗原に対するDTH応答を回復する。肺移植2週間後、col(V)摂取WKYラットは、5μgのポリクローナル抗TGF−β Ab又は5μgのポリクローナル抗IL−4又はIL−10Abと混合された107照射(3000ラド)ドナー由来F344脾細胞のPBS溶液を、右耳介内に受けた。左耳介は等容積の希釈剤プラス脾細胞を受け、対照部位として働いた。陰性対照のため、col(V)摂取同種移植片の別の群が、脾細胞とともに対照免疫グロブリンを右耳介内に、及び希釈剤プラス脾細胞を左耳介内に受けた。耳の厚さは、注射直前及び24時間後に盲検様式で、マイクロメーターカリパーで測定し、以下に記載されるように特異的耳膨潤を計算した。SpI、脾細胞。データは、各群中4匹のラットのmmx10−3での特異的耳介膨潤の平均±SEMで表されている[対照免疫グロブリンと混合した抗原を暴露したcol(V)摂取同種移植片と比較して*p<0.03及びT;†。‡p>0.05]。対照同種移植片と比較した、抗TFG−β、抗IL−4及び抗IL−10によるcol(V)摂取同種移植片におけるdTH応答の回復は、それぞれ75.7%、24.3%及び39.9%であった。
【図19】移植10週間後の、対照同種移植片レシピエントにおける、ドナー同種抗原、col(II)、col(V)、col(XI)及び第三者同種抗原に対するDTH応答。動物は、107照射(3000ラド)ドナー由来F344脾細胞、第三者(BN)脾細胞又は15μgのcol(II)、col(V)又はcol(XI)を右耳介内に、希釈剤を左耳介に受けた。耳の厚さは、注射直前及び24時間後に盲検様式で、マイクロメーターカリパーで測定し、以下に記載されるように特異的耳膨潤を計算した。SpI、脾細胞。データは、各群中3匹のラットのmmx10−3での特異的耳介膨潤の平均±SEMで表されている[F344脾細胞又はcol(V)を暴露した無処置WKYラットと比較して*p<0.05]。
【図20】混合白血球反応。種々の比のマイトマイシン−C−処理F344脾細胞(刺激物質)と、col(V)を摂取させたWKYラット(正常)又はWKYラットからの3x105リンパ節Tリンパ球(応答物質)をインキュベートした。5日間のインキュベーションが完了する18時間前、細胞を3Hでパルスラベルし、増殖をチミジン取り込みの計数/分(cpm)により決定した。刺激指数は、リンパ節リンパ球単独での増殖と比較した、種々の量の刺激物質により誘発されるリンパ節リンパ球の増殖の倍数に等しい。データは3回の実験を代表している。
【図21】図21A、図21B、図21C及び図21D。上段パネル:移植10週後の、対照同種移植片肺、図21A、及びcol(V)摂取同種移植片肺、図21B、の肉眼的解剖学。各パネル中、左(L)肺は移植片肺であり、及び右(R)は自然肺である。対照同種移植片肺は、自然肺と比較し、暗褐色の色であり、萎縮し、及び堅いコンシステンシーであった。しかしながら、col(V)摂取同種移植片肺はわずかに変色しているがほとんど正常外観を有していた。下段パネル:移植10週後の対照同種移植、図21C及びcol(V)摂取同種移植、図21D、の組織学。対照同種移植片は広範囲の間質単核細胞浸潤、線維症及びBOの病理学的病変である肉芽組織による小気道の閉塞を発生した。対照的に、col(V)摂取同種移植片は軽度急性拒絶の病態を記述する(グレードA2)間質性炎症がなく、軽度の肺胞性浸潤を有するのみであった。顕微鏡写真は各群中の5匹のラットを代表している。
【図22】移植10週後の、正常WKYラット、対照同種移植片レシピエント及びcol(V)摂取同種移植片レシピエントの血清中のTFG−βレベル。血清中のTFG−βのレベルはELISAにより決定された。データは各群中の3匹のラットの平均±SEMを表している(対照同種移植片と比較して*p<0.05)。
【図23】DTH応答におけるTGF−βの中和。col(V)摂取WKYラットは、5μgのポリクローナルニワトリ抗TGF−β Abと混合された107照射(3000ラド)ドナー由来F344脾細胞を右耳介内に、希釈剤を左耳介に受けた。陰性対照として、col(V)摂取同種移植片の別の群が、5μgの対照ニワトリトリ免疫グロブリン又は対照ヤギ免疫グロブリンと混合された107照射(3000ラド)ドナー由来F344脾細胞を右耳介内に、及び希釈剤を左耳介内に受けた。特異的耳膨潤は上記のように決定した。
【図24】無処置及びcol(V)摂取WKYラットにおけるBSAに対するDTH応答。無処置及びcol(V)摂取WKYラットを、アジュバントに溶解した100μgのBSAのs.c.注射で刺激し、7日後、右耳介内へ2%熱凝集BSA溶液及び左耳介内へ希釈剤を暴露した。耳の厚さは、注射直前及び24時間後に盲検様式で、マイクロメーターカリパーで測定し、上記のように特異的耳膨潤を計算した。非刺激WKYラットが対照として働いた。データは、各群中4匹のラットのmmx10−3での特異的耳介膨潤の平均±SEMで表されている(非刺激無処置WKYラットと比較して*p<0.018、及び刺激WKYラットと比較して†p?0.05)。
【図25】表4は実施例6で使用された実験群の一覧表である。
【図26】表5は実施例8に報告されている実験の結果の要旨である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
特許請求の優先権
本出願は、その全体が本明細書に援用される、2006年1月13日に出願された米国仮特許出願番号60/759,195の優先権を主張する。
【0002】
政府資金提供の記載
米国政府は、米国保健研究所(NIH)からの連邦補助金番号HL60797に従って本発明に特定の権利を所有することができる。
【0003】
技術分野
多様な態様は一般に、肺疾患のための試験及び治療に関し、いくつかの側面はV型コラーゲンのような、肺結合組織に対する自己免疫応答の証拠を同定することを含んでおり、さらに他の側面は、コラーゲン及びコラーゲン様分子の治療的に有効量を患者に投与することをにより患者の免疫応答を変調し、例えばV型コラーゲンに対して患者を耐性化することを含んでいる。
【0004】
背景技術
自己免疫応答を含む病態学は周知である。所与のヒト又は動物自身の免疫システムにより組織に生じた傷害が関与する状態には、例えば、1型(若年性)糖尿病、関節リウマチ、多発性硬化症、及び例えば、乾癬を含むいくつかの炎症状態が含まれる。典型的には、動物自身の免疫システムの一部は、動物自身の組織の抗原への攻撃を開始する。前記の自己免疫疾患により例示されるごとく、その結果は、糖尿病のような管理可能ではあるが慢性の状態の生成から、多発性硬化症でしばしば起こるような完全な身体障害及び早死までの範囲の破局的なものでありうる。
【0005】
自己免疫応答に具体的に関係する多様な疾患に加え、他の疾患も誤った免疫応答が関与しうる。従って、患者自身の免疫応答が疾患の進行に果たしうる役割(もしあれば)について決定するため、多様な疾患の病因を試験することに強い関心がある。
【0006】
患者自身の免疫システムによる不可欠な組織に対する攻撃を含む別の病態は、臓器又は組織移植後の同種移植片拒絶である。心臓、腎臓、肝臓及び肺を含む種々の臓器の移植は、しばしば移植された組織を攻撃する移植レシピエントの免疫システムを生じる。同種移植片拒絶を最小化するために、臓器ドナー及びレシピエントを適合させることに大きな注意が払われる。それでも、一卵性双生児間を除けば、完全な適合を行うことは事実上不可能である。その後の同種免疫応答を管理するため、ほとんどの移植レシピエントは、そうしないと移植された臓器及び/又は組織を破壊するであろう自己免疫応答を制御するため、生存期間を通して免疫抑制化合物で処置される。
【0007】
同種移植片拒絶は、お互いに決して完全適合ではない個体間の肺移植において特に問題である。肺移植の分野において、肺移植では他のほとんどの固形臓器の移植よりもより頻繁に拒絶が起こると広く信じられている。実際、肺同種移植片レシピエントにおける死亡の第一位の原因は、閉塞性細気管支炎(bronchiolitis obliterans)(BO)として知られている慢性拒絶である(Trulock, 1997; Westra et al., 1990 )。慢性拒絶の病因はあまりよく理解されていない;しかしながら、慢性拒絶を発生するリスクは、反復した急性拒絶病状発生と相関していると信じられている。
【0008】
閉塞性細気管支炎(BO)は、肺の長期間受容及び同種移植片レシピエントの生存に主要な障害である慢性拒絶の一形態であり、肺移植後5年生存者の少なくとも60%が罹患している。BOの組織病理学は、炎症性及び損傷性応答が、最終共通経路、小気道閉塞に付随する病変の発生に導くことを示唆している。どこにでも存在するドナーHLA抗原が急性拒絶応答の標的及び刺激であると信じられている。しかしながら、より新しい治療薬は急性拒絶の発生を減少させたにもかかわらず、BOの発生は変化せず、組織特異的抗原への薬剤耐性宿主応答が慢性拒絶プロセスに関与しうるを示唆している。
【0009】
臓器拒絶は、多くの場合において、宿主Tリンパ球による同種(ドナー)主要組織適合性複合体(MHC)分子の認識により開始され、上方調節された細胞性及び体液性免疫を導くと考えられている。多様な治療には、移植された臓器への免疫応答の重症度を軽減するために免疫抑制剤を投与することが含まれる。残念ながら、多くの場合において、これらの療法は連続する拒絶病状発生を防止することに失敗し、それ故、免疫寛容として知られている同種移植片のあいまいな受容を誘導する最終目標は分かりにくいままである。
【0010】
同種MHC分子は、拒絶間の免疫応答の刺激及び標的である。それ故、MHC抗原と相同的であることができるMHC由来ペプチド又は合成ペプチドは、同種移植片に対する免疫学的寛容性を誘導することを試みている研究の焦点となってきた(Krensky and Clayberger, 1997; Oluwole et al., 1993)。加えて、ごく最近の研究報告はMHC分子に由来する非多形合成ペプチドによる、インビトロでの複数の同種MHC分子に対する寛容の誘導を報告している(Murphy et al., 1999)。しかしながら、これらのいずれもが、同種移植片拒絶、特に、肺同種移植片拒絶の問題を解決したようには思われない。
【0011】
ドナーMHC分子の多形領域の認識は通常、同種免疫応答についての刺激であり、ドナーMHCに由来するペプチドにより誘導された免疫学的寛容は、ドナーMHC分子のアレルに特異的でありうる。従って、個体間で高度に保存されている、及び複数のMHCアレルにわたって免疫学的寛容も誘導するタンパク質/ペプチドの同定は、同種移植片拒絶に苦しんでいる又は発生するリスクがある患者を治療するための効果的な療法を開発することにおいて非常に重要でありうる。しかしながら、肺同種移植片に対する免疫学的寛容の誘導についてのこうしたタンパク質/ペプチドの使用は十分に評価されていない。さらに、こうした寛容に有用であるタンパク質/ペプチドはごく少数しか同定されていない。
【0012】
さらに、ドナー特異的輸血、ドナー由来APCの胸腺注入、又は移植に先だったドナーMHC分子に由来するペプチドでの全身免疫化(Krensky and Clayberger, 1997)のような固形臓器同種移植片に対する寛容を誘導するための異なった技術の存在にもかかわらず、これらの技術のいずれもが有効であるには、十分な時間(即ち、数週間から数ヶ月)を寛容誘導が発生するのに当てるため、移植に先立った数週間前には特異的ドナーMHC分子が既知でなければならない。しかしながら、典型的なシナリオにおいては、可能性のあるドナーの同定と移植手術の間には数時間のみしかなく、ほとんどの場合、ほとんどの移植片レシピエントに寛容を誘導する十分な時間はない。
【0013】
臓器移植の必要性にそれ自身必然的に伴う、自己免疫疾患をすでに患っている移植片レシピエントは、移植された臓器の破局的な拒絶に対して高められたリスクにさらされる可能性がある。従って、いずれの根底にある自己免疫に基づいた病態も、移植前ではないにしても確実に移植後には、同定する及び多分治療する必要がある。診断する及び治療するのが困難であり、そしてその根底にある原因が未知であり、さらにそれらを診断する及び治療する取り組みを複雑にしている、特発性肺線維症(IPF)のような多様な肺疾患及び障害もある。
【0014】
よって明らかに、IPFのような自己免疫疾患を同定する及びこうした疾患を治療する又は少なくとも管理するために使用することが可能である方法に対する要求がある。本要求は、一つの主要な治療、肺移植がそれ自身存在している病原性自己免疫応答によりひどく危険にさらされている場合に特に深刻である。多様な側面及び態様は、多様な及び特異的な型のコラーゲンのような肺の成分に対する望まれない自己免疫応答により引き起こされる、又は悪化する疾患を診断すること及び治療することに関している。
【0015】
概要
一つの態様は、ヒト又は動物患者においてIPFのような肺疾患又は障害を評価する方法である。一つの態様は、患者から体液又は組織のサンプルを得ること、及び該サンプルを分析して、患者の免疫システムのいずれかの成分が、患者身体の臓器中に見出される結合組織のいずれかの要素に対する免疫応答を開始したかどうかを決定する工程を含んでなる。典型的な結合組織成分は、いずれかの型のコラーゲン及び/又はコラーゲンの抗原性成分を含むことができる。自己免疫応答を惹起することができる多様なコラーゲンには、例えば、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、V型コラーゲン及びVI型コラーゲンが含まれる。これらの患者の肺疾患又は状態を評価するための試験は、患者から体液又は組織のサンプルを得ること、サンプルの少なくとも一部とV型コラーゲンの少なくとも一つの抗原性成分(エピトープ)を接触させること、及びサンプル中の少なくとも一つの抗V型コラーゲン抗体の存在を示すいずれかのシグナルについての試験をモニターすること、の工程を含んでなることができる。こうした試験は、試験を行うために必須又は有益であることができるいずれかの型の、追加の成分の存在を含むことができる。こうした成分には、限定されるわけではないが、抗V型抗体に結合する二次抗体、レポーター分子又は原子、抗原性成分を結合するための表面、緩衝剤、安定剤、抗菌剤などが含まれる。
【0016】
一つの側面は:肺からの体液若しくは組織又は肺と接触していた体液を得ること、サンプルの少なくとも一部とV型コラーゲンの少なくとも一つのエピトープ又は抗V型コラーゲン抗体と優先的に結合するいずれかの他の分子を接触させること、及び抗V型抗体とサンプル中のV型コラーゲンの少なくとも一つのエピトープの結合に付随する変化を検出すること、の工程を含んでなるアッセイである。このアッセイ及びそれらの変法は、IPFなどのような肺疾患、又はV型コラーゲンの少なくとも一部への自己免疫応答を含むいずれか他のタイプの肺疾患又は障害をアッセイするために使用し得る。
【0017】
別の態様は、患者が肺の成分に対する自己免疫を有しているかどうかを決定する方法である。典型的な自己免疫応答は、体液性又は細胞性免疫のいずれか又は両方を含んでもよい。こうした応答には、例えば、遅延型過敏性応答が含まれる。自己免疫特性を有しうる肺疾患には、限定されるわけではないが、特発性肺線維症(Idiopathic Pulmonary Fibrosis)、急性呼吸促迫症候群(Acute Respiratory Distress)、成人呼吸促迫症候群(Adult Respiratory Distress Syndrome)、二次膠原病性脈管疾患(secondary collagen vascular disease)、他の線維性肺疾患(fibrotic lung disease)などが含まれる。
【0018】
一つの態様は、自己免疫特性を有する肺疾患又は状態を発生する増加したリスクを有する特異的患者又は患者の群を同定するため、患者をスクリーニングすることを含む。こうした疾患又は状態には、限定されるわけではないが、特発性肺線維症(IPF)、急性呼吸促迫症候群、成人呼吸窮迫症候群、二次膠原病性脈管疾患、他の線維性肺疾患など、あるいは少なくとも一部はV型コラーゲンのような肺結合組織への自己免疫反応による他の状態が含まれる。これらの患者をスクリーンするための試験は、患者から体液又は組織のサンプルを得ること、サンプルの少なくとも一部とV型コラーゲンの少なくとも一つのエピトープを接触させること、及びサンプル中の少なくとも一つの抗V型コラーゲン抗体の存在を示すいずれかのシグナルについてサンプル及び抗原の混合物をモニターすること、の工程を含んでもよい。
【0019】
さらに別の態様は、患者の肺疾患の進行をモニターすること、又はこうした肺の疾患又は障害を患っている患者を治療するために使用した種々の治療計画をモニターすることを含む。これらの患者をモニターする試験は、患者から体液又は組織のサンプルを得ること、サンプルの少なくとも一部とV型コラーゲンの少なくとも一つのエピトープを接触させること、及びサンプル中の少なくとも一つの抗V型コラーゲン抗体の存在をの指標となるいずれかのシグナルについての試験をモニターすること、の工程を含んでもよい。
【0020】
一つの態様は、IPFのような疾患のための診断試験を含み、いくつかの態様において、本試験は、患者から体液又は組織のサンプルを得ること、サンプルの少なくとも一部とV型コラーゲンの少なくとも一つのエピトープを接触させること、及びサンプル中の少なくとも一つの抗V型コラーゲン抗体の存在を示すいずれかのシグナルについて混合物をモニターすること、の工程を含んでもよい。
【0021】
さらに別の態様は、BOSを発生する増加したリスクを有する候補者、例えば、V型コラーゲンのような、肺中に観察されるコラーゲンへの自己免疫応答について試験陽性の患者を同定するために、肺移植候補者を評価することを含む。これらの候補者を評価する方法は、候補者から体液又は組織のサンプルを得ること、サンプルの少なくとも一部とV型コラーゲンの少なくとも一つのエピトープを接触させること、及びサンプル中の抗V型抗体が抗原に結合した証拠について抗原及びサンプル混合物をモニターすること、の工程を含んでもよい。これらの候補者を評価するための試験は、抗原を固体表面に結合させること、サンプルと抗原を接触させること、抗原がサンプル中に存在する抗原に対する抗体に結合するための時間を見越すこと、及び過剰の抗体及び/又はサンプルを除去するために結合した抗原−抗体複合体を洗浄すること、の工程を含んでもよい。追加の工程は、抗原抗体複合体にレポーター部分を結合させること、及び抗原に結合した抗体の存在の指標となるシグナルの何らかの変化をについてシステムをモニターすることを含んでもよい。いくつかの態様において、試験における抗原は、V型コラーゲンの少なくとも一つのエピトープである。
【0022】
別の態様は、V型コラーゲンのような肺中の結合組織に対する自己免疫応答が関与する肺疾患を同定するための方法を試験することを含む。いくつかの試験する方法は、所与の患者から体液又は組織のサンプルを得ること、及びV型コラーゲンに対する自己免疫応答の証拠についてサンプルの少なくとも一部をアッセイすること、の工程を含んでもよい。一つの態様において、V型コラーゲン又はそれらのエピトープ抗原性類似体に対する遅延型過敏性応答の証拠についてサンプルが分析される。さらに別の態様において、V型コラーゲンに対する抗体又はそれらのエピトープ又は抗原性類似体の存在についてサンプルが分析される。
【0023】
さらに別の態様は、閉塞性細気管支炎(bronchiolitis obliterans syndrome)(BOS)を発生する高められたリスクを有する患者を同定する、及び/又は該症候群の進行又は該症候群を治療するために使用された治療の有効性をモニターする方法である。これらの方法は一般に、患者から血清、血液、間質肺液、痰、粘液又は組織のサンプルを得ること、肺の結合組織の成分に対する自己免疫反応の証拠についてサンプルをアッセイすること、の工程を含む。一つの態様において、患者は肺移植の候補者又はレシピエントであり、該サンプルはV型コラーゲンに対する宿主免疫応答の証拠についてアッセイされる。一つの態様において、該サンプルはV型コラーゲンに対する細胞性免疫についてアッセイされる。さらに別の態様において、該サンプルはV型コラーゲンに対する体液性免疫についてアッセイされる。
【0024】
別の態様は、体液又は組織のサンプルを、V型コラーゲンのエピトープ又はそれらの類似体、一部又は成分に対する免疫の証拠をアッセイすることを含んでなる。
【0025】
さらに別の態様は、V型コラーゲン又はそれらの抗原性部分又は断片に対する自己免疫応答のため、移植された組織を拒絶することについて高められたリスクにある予定肺移植レシピエントを同定する方法である。
【0026】
さらに別の態様は、V型コラーゲン又はそれらのエピトープ又は抗原性断片に対する自己免疫応答による移植された組織を拒絶する継続するリスクを評価するため、肺組織移植受け取りをモニターする方法である。
【0027】
さらに別の態様は、患者の臓器中に見出されるV型コラーゲンのような結合組織に対する自己免疫応答が関与する疾患又は障害を有する患者、あるいは疾患又は障害を発生するリスクのある患者を治療するための方法である。一つの態様において、該方法は、免疫抑制化合物、あるいはV型コラーゲンのような抗原の存在に対して患者を寛容化する化合物を提供すること、及び所与の患者に該化合物の治療的有効量を投与すること、の工程を含んでなる。こうした化合物には、限定されるわけではないが、多様なコラーゲン又はコラーゲンの一部、例えば、V型コラーゲン又はそれらのエピトープ又は抗原性類似体(antigenic analogues)が含まれる。自己免疫応答を誘導することができる典型的結合組織成分には、限定されるわけではないが、いずれかの型のコラーゲン及び/又はコラーゲンの抗原性成分(エピトープ)が含まれる。自己免疫応答を惹起することができる多様なコラーゲンには、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、V型コラーゲン、VI型コラーゲン及びそれらの多様な抗原性成分が含まれる。
【0028】
さらに別の態様は、患者の肺組織中の又は移植された肺の組織中の、コラーゲン又はコラーゲンの抗原性成分に対する患者の自己免疫応答を抑制するためにコラーゲン又はコラーゲンの抗原性成分を提供することによる、特発性肺線維症、成人呼吸窮迫症候群及び他の線維性肺障害、急性呼吸促迫症候群、閉塞性細気管支炎(BOS)などのような肺疾患又は障害の進行を治療する又は防止する方法である。こうした療法は、患者の免疫システムをより良好にコラーゲンを寛容するように条件付け、及びコラーゲンに対する患者の自己免疫応答を少なくとも部分的に抑制すると決定された期間にわたって、患者にコラーゲン又はコラーゲンの成分又はそれらの類似体の安全で及び有効な用量を投与することを含んでもよい。一つの態様において、該コラーゲンはV型コラーゲン又はそれらの抗原性断片又は類似体である。
【0029】
さらに別の態様は、コラーゲン又はコラーゲンの抗原性部分に対するT細胞活性及び遅延型過敏性応答を含んでもよい、自己免疫応答により引き起こされる又は悪化される肺疾患の形態を治療することを含んでなる。一つの態様において、患者に投与されるコラーゲンは、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、V型コラーゲン、VI型コラーゲン及びそれらの多様な抗原性成分から成る群より選択される。これらの化合物は、限定されるわけではないが、肺内滴下注入、経口、吸入、皮下注射、点滴、直接注入などを含む多様な手段により投与することができる。
【0030】
さらに別の態様は、移植された臓器及び組織を拒絶する増加したリスクを有する患者を同定する方法である。典型的には、この方法は、患者から血液、血清、体液、痰又は組織のサンプルを採取すること、及び、患者の免疫システムのいずれかの成分が、患者身体の臓器中にある結合組織のいずれかの要素に対する免疫応答を開始したかどうかを決定するためにサンプルを分析すること、の工程を含んでなる。典型的な臓器には、限定されるわけではないが、肺、心臓、肝臓、腎臓、膵臓及び眼の構成要素が含まれる。典型的な結合組織成分には、いずれかの型のコラーゲン及び/又はコラーゲンの抗原性成分が含まれる。自己免疫応答を惹起することができる多様なコラーゲンには、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、V型コラーゲン、VI型コラーゲンが含まれる。
【0031】
さらに別の態様は、所与の患者に自己免疫に基づいた肺病態を発生するリスクがあるかどうかを決定するための試験を実施するための、又はこうした状態とすでに診断された患者の健康をモニターするためのキットである。一つの態様において、該キットは、コラーゲンに対する細胞性及び/又は体液性自己免疫の証拠を検出するために適した、少なくとも一つのコラーゲンの抗原性成分、例えば、V型コラーゲン又はエピトープ、断片又はそれらの類似体を含む。一つの態様において、該キットはさらに、V型コラーゲンに対する自己免疫応答の指標である少なくとも一つの分子の存在下、シグナルの変化を示す少なくとも一つの原子か又は分子のレポーター部分を含む。さらに別の態様において、該キットはさらに、試験の半減期、感度及び/又は信頼性を増加させるように働く、少なくとも一つの緩衝液、安定剤、保存剤、抗菌化合物、補助剤などを含む。一つの態様において、キットはさらにフロイントアジュバント又は成分又はそれらの類似体を含む。
【0032】
発明の詳細な説明
本発明の原理の理解を進める目的で、ここでそれらの好ましい態様が参照され、及びそれを記述するために特別の専門用語が使用されるであろう。とは言っても、本発明に関連する当業者には普通に生じるであろうような、企図されている本発明の原理のこうした改変、修飾及びさらなる応用には、本発明の範囲の限定は意図されないことが理解されるであろう。
【0033】
多数の説明及び実験が説明として提供されるが、限定ではない。記述、比較、説明又は実施例により提供されていようとなかろうと、本発明がどのように働くかの理論は限定と考えるべきではない。
【0034】
本明細書で開示された及び暗示された組成物及び方法論は、ヒト及び他のより下等動物(例えば、愛玩動物、動物園又は家畜動物)両方への応用に有用である。従って、以下の実施例及び議論はガイダンス及び説明のつもりで示されており、限定ではない。
【0035】
本明細書で使用される用語「評価すること」は、例えば、句「〜について患者を評価すること」で使用される場合、限定されるわけではないが、所与の疾患、障害又は状態などに相関することが示されているいずれかの識別できるパラメータについて診断する、スクリーニングする、評価する、モニターすることなどを含む。本明細書で使用される用語「評価すること」は、限定されるわけではないが、以下の活動の少なくとも一つを含む:特異的又は一般的医学状態を有しているかどうか決定するために患者を診断すること;疾患の進行又は治療計画の有効性を追跡するため、既知の又は疑われる医学状態を有する患者をモニターすること;所与の医学状態を発生するであろう可能性を見積もるために患者をスクリーニングすること;所与の患者が所与の疾患又は医学状態を有する又は発生するリスクがある確率を評価すること;疾患、症候群又は状態を発生する傾向又は感受性の存在を検出すること;及び所与の医学状態、疾患、障害などを発生すること及び/又は回復することについての長期又短期予後を予測すること。
【0036】
本明細書で使用される用語「医学状態」とは、症候群、疾患、状態などを含む。
【0037】
ラット肺移植モデルでの研究は、特異的抗抗V型コラーゲン自己免疫応答が原因で肺が拒絶されることを示した。追加の議論については:その全体が本明細書において援用されるDavid S. Wilkes により2003年9月13日に出願された米国特許出願番号10/243,797 に基く米国特許出願公開番号2003/0078208A 、及びDavic C. Mares et. al., による"Type V Collagen Modulates Alloantigen-Induced Pathology and Immunology in the Lung," Am. J. Respir, Cell Mol. Biol, Vol. 23, pp. 62-70, 2000 、を参照されたい。V型コラーゲン[col(V)]は肺に存在するマイナーなコラーゲンであり(Madri and Furthmayr, 1980)、細気管支周囲結合組織(Madri and Furthmayr, 1979)、肺胞間質(Konomi et al, 1984)及び毛細血管基底膜(Madri and Furthmayr, 1979)に位置する。αl(V)のα−1鎖はXI型コラーゲンα2鎖[α2(XI)]とほとんど76%相同的であり(Cremer et al., 1994)、及びα2(XI)の遺伝子はマウス及びヒトのMHCクラスII座位に位置しており(Hanson et al., 1989)、及びMHCクラスIIとアミノ酸配列を共有している(Wilson et al., 1995)。MHC由来ペプチドは、肺以外の同種移植片において寛容を誘導するために利用されてきた。本発明者は、col(V)におけるMHC「様」配列の存在可能性のため、肺同種移植片における免疫応答を変調するためにcol(V)を選択した。
【0038】
ここで(以下に示されている)実施例1の結果を参照すると、コラーゲンに対して増加した自己免疫応答を有する肺移植患者は、移植拒絶についてより高いリスクであるようである。これら及びその他の観察に従い、一つの態様は、肺移植を待っている又は受けた患者のコラーゲンに対する細胞性か又は体液性自己免疫応答を測定することによる、肺移植拒絶の進行を予測する及び/又は追跡する方法である。一つの態様において、追跡された肺移植拒絶のバイオマーカーは、V型コラーゲン及び/又はV型コラーゲンのエピトープである。
【0039】
ミオシン及び熱ショックタンパク質のような自己抗原は、心臓及び皮膚同種移植片拒絶の間、免疫応答の標的になり得ることが、医学文献に報告されている(Fedoseyeva, et al., 1999; Duquesnoy, et al., 1999; Birk, 1999)。げっ歯類における肺同種移植片拒絶が、組織弾力性及び伸展性に必須であり、肺及び皮膚に観察されるマイナーコラーゲン(Schwarze, et al., 2000)であるV型コラーゲンに対するT細胞応答に関連していることも報告されている(Mares, et al., 2000)。col(V)の断片が肺移植後に気管支肺胞洗浄(BAL)液内に放出され、col(V)特異的T細胞の養子移入が移植された肺同系移植片中で「拒絶様」病態を誘導する(Haque, et al., 2002)。肺移植に先だってラットにcol(V)を摂取させることにより誘導された経口寛容は、急性拒絶及びBOの発生を抑止した(abrogated)(Yasufuku et al., 2001; Yasufuku et al., 2002)。
【0040】
一つの形式的可能性は、肺移植片を受けた患者はcol(V)に対する細胞性及び/又は体液性免疫を発生する可能性があり、及びこの自己免疫応答がBOを発生するリスクを増加させるというものである。(以下に示されている)実施例2の結果のいくつかは、肺移植後のcol(V)免疫反応性の発生と一致しており、閉塞性細気管支炎症候群(BOS)の主要なリスクファクターを代表している。
【0041】
BOの組織病理学は、炎症及び傷害への応答が最終共通経路、移植片不全を導く病変の発生を結果として生じることを示唆している。肺移植環境の外部でこの症候群がまれなことは、自己免疫機構がこのプロセスに中心的役割を果たしていることを示している。しかしながら、急性拒絶及びMHC不適合が必ずしもBOSにつながるわけではないという事実は、他の免疫因子が重要である可能性も示唆している。(以下に示されている)実施例2の結果は、肺移植が自己抗原、V型コラーゲンに対する新自己免疫の発生を誘導しうることを示唆している(Estenne, et al., 2002)。実際、この研究で観察された肺移植後のcol(V)自己免疫により与えられた相対的リスクは、以前にBOSの移植後リスクとして同定された、急性拒絶病状発生のような因子よりもおよそ8〜10倍大きかった(Sharpies, et al., 2002)。
【0042】
肺移植片レシピエントの末梢血中のcol(V)DTH反応性の原因であるT細胞の予備的分析は、col(V)特異的CD8+Tエフェクター細胞の役割は排除できないけれども、大部分はCD4+であることを示している(Burlingham, W., Rodriguez, D. and Jankowska-Gan, E., 未発表)。ラットモデルにおいて、拒絶肺移植片からのインビトロ培養により誘導されたcol(V)特異的MHCクラスII制限CD4+T細胞クローンは、左肺同系移植片において肺拒絶病態を仲介することが可能であり、いくらかの病態は未処理の右肺にも広がっていた(Haque, et al., 2002)。同一のクローンを正常ラット内へ注入した場合、未処理肺への損傷は観察されず、これらの結果は、同系移植片法に伴っている虚血及び再灌流障害が免疫病態を開始するために必要とされたことを示唆している。拒絶同種移植片から単離されたT細胞のすべてのクローンが病原性であるわけではなく、いくつかは保護的であるようであり(D. Wilkes, 未発表)、col(V)又は他の組織抗原に特異的なCD4+T調節細胞は自己免疫病態を制限することにおいて役割を果たすことができることを示唆している。実際、患者L3におけるBOS発生後の移植片損失への急速な進行、及び抗col(V)自己免疫を有する幾人かの患者における機能の安定化(図IB、左パネル及び1C、中央パネル)は、ヒト(VanBuskirk, et al, 1998: Burlingham, et al., 2000, Cai, et al., 2004)及び非ヒト霊長類(Torrealba, et al., 2004)での腎臓移植で以前に記載されている現象である、ドナー抗原への調節されたDTH応答の喪失又は獲得と相関していた(W. Burlingham and E. Jankowska-Gan, 未発表)。
【0043】
HLA DR不適合は臓器移植の早期急性拒絶の周知のリスクファクターである(Ayoub, et al., 1982)。このことは、なぜDR不適合がBOSに関連しているのかを部分的に説明できる(van den Berg, et al., 2001)。ドナー及び自己抗原に向けられる免疫調節の状態を確立することにより、HLA DR適合が肺移植に有益な役割を果たしている可能性が高い(Rodriguez, et al., 2004)。
【0044】
IV型コラーゲンに対するB細胞自己免疫とグッドパスチャー症候群間のよく確立されたつながりがあり(Hudson et al., 2003)、それはトランスビボDTHアッセイを使用したT細胞レベルで本研究において確認された(図3B)。T細胞仲介傷害による腎臓からのコラーゲンIVの放出は、システムを局所B細胞免疫に、及びこの疾患のラットモデルにおける抗糸球体基底膜IgG沈着に傾かせる。同様に、アロ反応性との関係において、虚血損傷肺移植片からのcol(V)の放出は、col(V)特異的エフェクターT細胞を活性化し、局所col(V)特異的B細胞応答及び上皮下マトリックスにおけるC’−固定IgGの沈着を促進する。
【0045】
本明細書に報告されている実施例2の一つの結果は、IPFを有する患者中に、先在するcol(V)特異的自己免疫が存在するという発見である。肺移植後(REF)のこれらの患者の予後不良の理由と同様に、IPFの病因は謎のままである。抗col(V)特異的T細胞が、この肺疾患の根底にある線維性プロセス、又はIPFのための肺移植における早期不良転帰に寄与かどうかまだ決定されていないが、これらのデータは明瞭にこれらの現象間の関連と一致している。
【0046】
実施例2の予期されなかった結果は、移植に先立ってcol(V)に対する自己寛容を回復する又は強化することにより、IPFを有する又は発生するリスクがあると診断された患者を治療することを示唆している。一つの態様は、間質的な肺内への経口療法により(Yasufuku et al, 2001 ; Yasufuku, et al, 2002)、あるいは、限定されるわけではないが、V型コラーゲン及び抗原性成分及びそれらの変異体を含むコラーゲンに対する患者の寛容を増加させるように設計された、服用量計画での他の減感作戦略により、col(v)を投与することによって、IPFを治療する方法である。
【0047】
さらに別の態様は、自己免疫応答を含む疾患を診断する又はモニターするための抗体に基づいたアッセイである。
【0048】
コラーゲンに対する抗体の存在を検出することは、いくつかの態様に従って、ELISA法によるような多数のイムノアッセイ法のいずれかを使用して達成することができる。標準イムノアッセイ教科書を参照することにより見ることができるように、広範囲のイムノアッセイ技術が利用可能であり、これらには、限定されるわけではないが、シングルサイト及び2−サイト、又は非競合型の「サンドイッチ」アッセイ、ならびに慣用的競合結合アッセイが含まれる。
【0049】
サンドイッチアッセイは中でも最も有用で及び通常使用される、抗体に基づいたアッセイ法であり、多様な態様を実施するために使用することができる。サンドイッチアッセイ技術の多数の変法が存在し、すべてが多様な態様に包含されることが意図される。簡単には、サンプル中の抗体を検出するための典型的なアッセイにおいては、非標識抗原を固体表面に固定化し、そして試験されるべきサンプルを結合された抗原分子と接触させる。適したインキュベーション期間後(即ち、抗体−抗原複合体の形成を可能にする十分な時間)、検出可能なシグナルを生成することができるレポーター分子で標識した抗ヒトIgGのような第二抗体を次ぎに加え、抗体−抗原−標識抗体の形成に十分な時間放置する。未反応材料を洗い流し、そしてサンプル中の検出すべき抗体の存在を、レポーター分子により生成されたシグナルの観察により決定する。結果は、例えば、可視シグナルの単純な観察により、定性的であってもよく、あるいは、問題とするサンプルにより発生されたシグナルを検出されるべき抗体を既知の量含有する対照サンプルと比較することにより、定量的であってもよい。このアッセイの変法には、サンプル及び標識抗体の両方が同時に結合された抗原に加えられる、同時アッセイが含まれる。これらの技術は公知であり、当業者には容易に明らかになるであろういずれかのマイナー変法が含まれる。
【0050】
典型的なサンドイッチアッセイにおいて、抗原は固定化されており、例えば、固体表面に共有結合でか又は受動的に結合されている。いくつかの態様において、固体表面は、典型的には、ガラス又はポリマーであり、最も通常に使用されるポリマーはセルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、塩化ポリビニル又はポリプロピレンである。固体支持体はチューブ、ビーズ、ディスク又はマイクロプレートの形態、又はイムノアッセイの実施に適したいずれかの他の表面であってもよい。多様な結合プロセスが当該技術分野において周知であり、一般に所与の表面への抗原の架橋、共有結合又は物理吸着から成っている。固定化抗原は次ぎに、試験サンプルの添加に備えて洗浄される。試験されるべきサンプルのアリコートを次ぎに固定化抗原と接触させ、十分な期間(例えば、2〜40分)、及びサンプル中に存在する、コラーゲンに対するいずれの抗体の結合も可能にするために適した条件下(例えば、25℃)でインキュベートする。接触時間の実際の長さ、緩衝液条件、温度などは容易に調節可能なパラメータであり、所与の試験について典型的には容易に決定される。インキュベーション期間に続いて、いずれかの結合された抗体を含んでいる固定化抗原を洗浄及び乾燥し、結合された抗体に特異的な第二抗体(例えば、抗ヒトIgG)とインキュベートする。第二抗体はレポーター分子に連結されており、それを抗体−固定化抗原複合体への第二抗体の結合を示すために使用する。
【0051】
用語「部分(moiety)」とは、本明細書で使用される場合、分子、原子、化学官能基などを含む。
【0052】
本明細書で使用される用語「レポーター分子」には、それらの化学的性質により、抗原結合抗体の検出を可能にする分析的に同定可能なシグナルを提供する分子が含まれる。検出は定性的あっても、あるいは定量的であってもよい。この型のアッセイにおいて最も普通に使用される分子には、酵素、フルオロフォア又は放射性核種含有分子(即ち、放射性同位元素)、化学発光分子などが含まれる。酵素イムノアッセイ(EIA)の場合において、酵素は第二抗体に、一般にはグルタルアルデヒド又は過ヨウ素酸によりコンジュゲートされている。しかしながら、容易に認識されるであろうように、広範囲の異なったコンジュゲーション技術が存在し、それらは容易に当該技術分野で利用可能であり、及び特定のアッセイ及び試験に至適の又はほぼ至適の条件は、最少の実験法のみで到達し得る。これらの型のアッセイにおいて普通に使用されるレポーター酵素には、限定されるわけではないが、中でも西洋ワサビペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、βガラクトシダーゼ及びアルカリホスファターゼが含まれる。特定の酵素で使用されるべき基質は、レポーター分子又は原子の存在に関連する所与のシグナルの検出可能な変化の産生(対応する酵素による加水分解で)に対して一般に選択される。上記の発色基質というよりむしろ蛍光生成物を生成する蛍光発生基質を用いることも可能である。ほとんどの場合、酵素−標識抗体は第一の抗体−抗原複合体に加えられ、結合させ、次ぎに過剰の試薬を洗い流す。適切な基質を含有する溶液を抗体−抗原−標識抗体の複合体へ加える。基質は第二抗体に連結された酵素と反応し、検出可能な視覚シグナルを産生し、それは通常分光光度計を使用してさらに定量することができ、サンプル中に存在した抗体の量の指標を与える。用語「レポーター分子」はガラス又はラテックスビーズのような細胞凝集又は凝集の阻害を使用することにも拡張される。加えて、レポーターは、その存在が、例えば、シンチレーション計数によって検出される放射性基又は原子でもあり得る。
【0053】
もしくは、フルオレセイン及びローダミンのような蛍光化合物を抗体へ、それらの結合能を有意に変化させることなく化学的に結合させてもよい。特定の波長の光による照明で活性化した場合、蛍光色素標識抗体は光エネルギーを吸収し、分子の励起性の状態を誘導し、続いて特徴的な色の光を放出し、いくつかの態様において、放射されたシグナルは光学顕微鏡で視覚的に検出可能であり、他の態様において、シグナルは可視スペクトルの外側であることもできる。EIAでのように、蛍光標識抗体は一次抗体−抗原複合体に結合させることが可能である。非結合試薬を洗い出した後、残っている三次複合体を次ぎに適切な波長の光に暴露し、観察される蛍光は目的の抗体の存在を示す。免疫蛍光法及びEIA技術は両方とも当該技術分野でよく確立されており、本明細書に開示した多様な態様での使用に容易に適応可能である。加えて、放射性同位元素、化学発光、蛍光色素、又は生物発光分子などのような他のレポーター分子も用いることができる。
【0054】
いくつかの態様を実施するため、純粋な又は部分的に純粋なコラーゲン又はそれらのエピトープ又は抗原性部分を得る必要があろう。これらの材料、例えば、V型コラーゲン又はそれらの抗原部分は、限定されるわけではないが、2〜3例を挙げると動物源、ヒト死体又は組換え手段を含む、多様な手段により容易に得ることができる。追加の方法にはV型コラーゲンのようなコラーゲンの部分的消化が含まれる。
【0055】
一つの側面は、V型コラーゲンのような肺結合組織に対する自己免疫応答の証拠を同定することにより、特発性肺線維症のような疾患を診断することを含んでなる。結合組織の証拠は、V型コラーゲン及びそのエピトープを含むことができる。実施例3で明瞭に示したように、IPFを有する、又はIPF又はBO又はBOSを発生することが高められている患者を同定する及び/又は追跡するために使用し得る一つのアプローチは、患者の体液中の抗V型コラーゲン抗体のレベルを測定することである。
【0056】
別の側面は、V型コラーゲン及びV型コラーゲンの多様な抗原性成分及び/又はそれらの類似体のような化合物の安全で及び療法的に有効量を投与することにより、肺組織中に観察されるコラーゲンの自己免疫拒絶に関連する、医学状態を有すると診断された、又は医学状態を有すると考えられる、又は医学状態を発生する高められたリスクにあると考えられる、患者を治療することを含む。これらの化合物は、経口摂取、肺内滴下注入、吸入、注射などを含む、当該技術分野では公知のいずれかの手段により投与し得る。療法化合物の有効量及び治療の持続は、各患者に依存するであろうが、療法効果、例えば、V型コラーゲン又はそれらのいくつかの断片のようなコラーゲンに対する患者の自己免疫応答の少なくとも部分的な抑制を誘導するために容易に較正し得る。
【0057】
免疫システムに関連する疾患又は医学状態を治療するためにMCHエピトープを使用する療法的意義の追加の議論は、例えば、2005年6月28日にSachs により公布された米国特許第6,911,220 号、及び2003年4月24日に公開された米国特許公開番号2003/0078208 A1(Wilkes)(両方ともその全体が本明細書において援用される)に見ることができる。
【0058】
一つの態様において、自己免疫応答を含む又は自己免疫応答により引き起こされる肺疾患又は障害を有する、又は患っていると考えられた患者は、例えば、シクロスポリンを含む免疫抑制剤で治療することが可能であった。免疫システムに対するいくつかのその効果を含む、シクロスポリンのさらなる一般的議論については、2005年6月25日にDavalian, et al.により公布された米国特許第6,410,696 号及び1999年11月23日にWang により公布された5,990,274 号(両方ともその全体が本明細書において援用される)を読者は参照されたい。
【実施例】
【0059】
実施例1
移植後肺患者はV型コラーゲンが特異的な自己免疫を発生していたかどうかを決定するため、8人の肺移植片レシピエント及び5人の腎臓移植片レシピエント(グッドパスチャー症候群を有する、IV型コラーゲン(col)自己免疫)からの白血球、及び3つの異なったコラーゲンを使用する遅延型過敏性(DTH)アッセイを行った。図3、パネルAに示したように、肺移植片レシピエントからのT細胞はcol(V)に応答したが、col(IV)又はcol(II)には応答せず、一方、グッドパスチャー症候群を有する患者からのT細胞はcol(V)又はcol(II)には応答せずに、col(IV)に対して有意により高いDTH応答を有していた。この鍵となる発見は、肺移植片レシピエントが抗V型コラーゲン自己免疫を有していることを示している。
【0060】
我々は次ぎに、抗V型コラーゲン自己免疫応答が、肺移植を待っているいずれの患者にも観察することができ、それ故特定の患者が低下した肺機能及び拒絶を生じ易くできる先在条件を反映しているかどうかを決定した。肺移植を待っている多様な末期肺疾患を有する23人の患者における抗col(V)DTH応答の解析は、一つの特定の群が抗V型コラーゲン自己免疫応答を有していることを示した。図5に示したように、特発性肺線維症(IPF)の患者が抗col(V)DTH応答を示し、それはいずれか他の疾患を有する患者で観察されたよりも2倍高かった。この鍵となる発見は、IPFがV型コラーゲンに対する自己免疫応答により起こされ得ることを示している。
【0061】
この発見をさらに支持するため、いくつかの異なった原因により肺移植を待っている患者を、col(V)か又はcol(II)に対するかれらの自己免疫応答について試験した。図3、パネルBに示したように、IPF患者からのT細胞のみがV型コラーゲンに特異的である自己免疫応答を示した。University of Wisconsin で移植したIPFを有する患者は有意に低い1年移植片生着(p=0.05)(図3パネルC)を有したことを示したのは興味深く、それは先在するV型コラーゲンへの自己免疫応答がより速い肺機能の喪失及び死を生じ得ることを示唆する。図3及び5に示された結果は、IPFはV型コラーゲンへの自己免疫応答により起こされ得ること、これらの患者はこの自己免疫応答のためより速い速度で肺を拒絶するであろうこと、及びこれことがV型コラーゲンによる経口免疫寛容療法に応答するであろう追加の患者の群を表していることを示している。
【0062】
IPF患者で観察されたような、V型コラーゲンに対する先在する自己免疫応答が肺破壊を生じるであろうという考えを裏付けるため、我々は、我々のラット移植モデルを使用した。WKYラットを何もなしで(図6a)、ニワトリ卵リゾチーム(HEL)(図6b)か又はV型コラーゲン(図6c)で免疫し、同系移植肺を移植した。観察されるように、何もなしで又はHELで免役したラットは正常肺病理を示した。対照的に、V型コラーゲンに対して活性免疫応答を有するラットは30日以内にそれらの同系移植片肺を破壊した。これらのデータはさらにV型コラーゲンへの自己免疫応答と一致しており、V型コラーゲンに対する自己免疫応答を示さない肺移植片レシピエントで予期されるよりも、移植された肺及び肺組織の拒絶のより高いリスクを示している。
【0063】
実施例2
閉塞性細気管支炎(BOS)は、肺移植後の移植片機能損失の主要原因である。肺細胞外マトリックス中のマイナーコラーゲン、V型コラーゲン(col(V))はラット肺同種移植片拒絶の病変形成に結びつけられてきた。ヒト肺移植後のcol(V)に対する自己免疫がBOSの素因となるという仮説を試験するため、我々は末梢血中の遅延型過敏性(DTH)応答及び気管支肺胞洗浄(BAL)中の抗体応答を試験した。
【0064】
1988年から2003年6月まで、University of Wisconsin で実施されたすべての肺移植(n=229)を、BOSの素因となるリスクファクターについて遡及的に分析した。56人のこれらのレシピエント、10人の正常対照及び25人の移植を待っている患者における、col(V)又はcol(II)に対するDTH又は抗体を測定した。
【0065】
すべての対象は、University of Wisconsin 及びIndiana University School of Medicine で、IRB認可インフォームド・コンセント手順を使用することにより同意した。1988年から2003年3月まで、University of Wisconsin Hospital and Clinics で一次肺移植を受けた229人の内、3人は技術的失敗のため分析から除外した。
【0066】
すべての患者は、移植後0.5、1、3、6、9及び12ヶ月、及び臨床的に指示された場合はその後でもプロトコール気管支肺胞洗浄(BAL)及び経気管支生検(TBB)を受けた。TBB組織はサイトメガロウイルス(CMV)封入及び細胞浸潤についてスクリーニングした。col(V)研究患者(n=56)には、2000年に開始された移植後DTH研究プロトコールに登録された29人が含まれており、BALが保存されていた23人の患者が遡及的にcol(V)に対する抗体を試験し、4人の患者は移植後3〜6年から始まったDTHについてのみ試験した。さもなければ、およそ6、12及び18ヶ月目及びその後は毎年、DTHアッセイのために血液サンプルを採取した。非喫煙成人血液ドナー及び気管支鏡検査を受けているボランティア及びBAL液の収集物が、陰性対照として働いた。グッドパスチャー症候群のための腎臓移植後の5人の患者もDTH試験における対照血液ドナーとして採用された。
【0067】
BOSレベルI(一次研究エンドポイント)は、少なくとも移植90日後、最大移植後値の<80%へのFEV1の持続的低下により診断された(9)。
【0068】
IgGは、商業的に調製されたProtein Gセファロースカラム(Pharmacia, Piscataway, NJ)を製造元のプロトコールに従って通過させることにより、患者及び対照のBAL液から親和性精製された。すべての溶出フラクションは使用するまで−80℃で凍結した。
【0069】
col(V)に対する抗体は、検出にヒツジ抗ヒトIgGアイソタイプ特異的抗体を 使用したことを除いて、以前に記載されているウェスタンブロット技術を使用して分析した。ウシcol(II)及びcol(V)(Collaborative Biomedical Products- BectonDickinson, Bedford MA)又はヒト胎盤から抽出した(10)col(V)を標的抗原として使用した。
【0070】
CB−17 SClDマウスはHarlan Sprague Dawley,Inc (Indianapolis, IN)から購入するか、又は近くで繁殖させた。全ての動物はNIHガイドラインに沿って飼育し及び処置した。
【0071】
トランスビボDTHアッセイは、以前に記載されているように(ii)、SOlDマウスの足蹠内にヒトPBMC及び抗原を同時導入することにより実施した。ヒトcol(V)、col(lV)(Fluka, Inc., Buchs, Switzerland)又はウシcol(II)(5μg/注入;Southern Biotech, Birmingham, AL)が試験抗原であった。足蹠厚はダイアル厚さ計を使用し、注射前及び24時間後に測定した。緩衝液を伴ったPBMC単独によるバックグラウンド膨潤を差し引いて、抗原特異的応答を決定した。バックグラウンドを>25x10−4インチ超える膨潤応答を陽性と考えた(12)。
【0072】
BOSフリー生存率はKaplan 及びMeier の方法を使用して見積り、そしてlog-rank test を使用して群間を比較した。陰性col(V)DTH又はAb応答の基準は厳格であった−たとえ全ての他の時点で陰性であっても、ウェスタンブロットでのわずかに陽性の抗col(V)バンド又は最小陽性DTH応答(25x104インチ)を有する患者は陽性と考えた。Coxの比例ハザードモデルを、疑わしいリスクファクター間の関連を評価するために使用し、そのいくつかは時間−変動,及びBOSフリー生存であった。P値<0.05は有意であると考えた。全ての分析はSAS統計ソフトウェアリリース6.12、SAS Institute Inc. (Cary, NC) を使用して実行した。移植前col(V)DTH応答はクラスカル・ワリス検定を使用し、IPF患者サブグループ及び他のグループ間で比較した。
【0073】
ここで表1(図7)を参照すると、ここに要約されているのは、University of WI, Madison での226人の肺移植片レシピエントにおける個体統計及びBOSのの発生率である。BOSは86人の患者(38%)で発生した。両側肺移植(n=93)と比較して片側(n=133)でより多かった。平均経過観察期間は3.7年であった。全体の比率の構成及びcol(V)研究サブセットの構成はBOSの発生率、平均経過観察期間、及び各疾患カテゴリーにおける患者の比率に関して類似していた。
【0074】
我々は以前にIgG2産生が、肺同種移植片拒絶の病状発生の間にBAL液で選択的に増加したことを報告した(10)。図1Aに図解したように、肺移植片患者L3(BOSレベルIII-移植片機能損失)及びL41(BOSなし)のBALから単離されたIgG抗体は、ウェスタンブロットにおいてcol(V)に強く結合したが、col(II)には結合しなかった。ウシ及びヒトcol(V)の両方ともBAL IgGにより等しく認識されるたことは(データは示されていない)、標的エピトープが種を超えて保存されていることを示している。患者L3及びL41とは対照的に、BOSを発生していないL31のBALサンプル中では、col(V)への結合は弱いか又は観察されなかった(図1A);陰性結果は正常ボランティアのBALから単離されたIgGでも観察された(n=10;データは示されていない)。
【0075】
次ぎに、我々は、末梢における(トランスビボDTH試験を使用して)及び局所的に(BAL抗体分析により)、BOSの発生と抗col(V)自己免疫との関係を試験した。同一の3人の患者の臨床経過を図1Bに示した。患者L3は、試験された移植後の最も早い時期に(180日)、強い及び特異的な抗col(V)DTH反応性を有しており、FEV−1は未だ最高レベルであった。強いcol(V)抗体応答はBOSの発生直前にも検出され(黒色矩形)、その時FEV−1の値は最大の80%付近で停滞していた。DTH及びcol(V)に対する抗体応答の両方がBOSの発生の間に検出されたが、450日目のBOS末期(グレードIII)ではDTH反応性は失われた。
【0076】
患者L41は、col(V)に対する強い早期応答を有するが、同種移植片機能の持続的低下がない患者の例である。抗col(V)抗体(2+)が48〜213日目で検出され、及び188〜460日目に得られた全てのPBMCサンプルはcol(V)に対してDTH陽性であった。500日目から抗col(V)DTH応答は変動し、そして一般に減少した。980日目の急性拒絶病状発生後、BOS−1についてのカットオフの直ぐ上の、最大FEV1のおよそ82%で安定化した。
【0077】
患者L31は49日目にcol(V)に対する弱い抗体応答及び400日目に最小陽性抗col(V)DTH応答を有したが、強い自己免疫反応性を発生することはなかった。該患者は優れた移植片機能を>5年維持し、そしてつい最近のPBMCサンプル(1600日目)は抗col(V)DTH応答について陰性のままである。
【0078】
col(V)応答及び同種移植片機能のこれら三つのパターンは、56人の患者の研究サブグループで見られたものを代表している。図1Cは、各カテゴリーにおける4人の追加患者の移植後時間経過を示している。各々の線は単一の患者についての%最大FEVlを表しており、及び各々の赤色記号はcol(V)について陽性試験を表している(BAL中の抗体か又はDTHアッセイにおいて>25の正味足蹠膨潤)。緑色記号は陰性抗col(V)結果を示している。
【0079】
第一のカテゴリー中の4人全ての患者(抗col(V)+、BOS+)は、L3患者と同様に、移植片機能の喪失に先立って陽性DTH又は抗体試験を示した。第三のカテゴリーの患者(抗col(V)−、BOS−)は、col(V)に対する応答をほとんど示さず、そしてすべて3〜6年の経過観察でBOSフリーを続けた。中間のカテゴリーの患者は、抗col(V)応答についての繰り返した陽性試験にもかかわらず、移植後1〜3年優れた移植片機能を何とか維持していたので、最も興味深い。
【0080】
BOSか又は移植片機能損失又はエンドポイントとしてのBOS単独に関連するリスクファクターの遡及的分析の結果は表2(図8)に示されている。全患者集団中で、BOSの有意により高い(p<0.05)リスクの素因となる移植前因子には、ドナーとの2DR不適合を有している(RR=1.64vs.0又は1DR不適合)、及び慢性閉塞性肺疾患、COPD(RR=1.7)又は「他の」(RR=1.9)の疾患カテゴリーを有しているものが含まれる。BOS又は移植片機能損失のより低い発生率の素因となる移植前因子には、嚢胞性線維症(CF)の本来の疾患又は両側肺移植を受けている(この疾患カテゴリーの主な治療)が含まれる(両方ともRR=0.35)。BOSについての移植後リスクファクターも評価した。予期されたように、急性拒絶病状発生の発生率は、BOSの1.4〜1.5倍より高いリスクと関連し、それは極めて有意であった。しかしながら、CMV+ドナー肺のCMV−レシピエントへの移植、又は移植後期間におけるバイオプシ証明CMVはBOSと有意に関連しなかった。
【0081】
図8を再び参照すると、表2は、Cox比例ハザード肺移植モデルを使用し、col(V)への応答について分析された56の肺移植片レシピエントにおける乏しい機能(BOS I又は移植片機能損失)又はBOS I発生の分析を要約している。この患者の下位集団において、急性拒絶は再び乏しい機能についてのリスクであった。乏しい移植片機能についての最も高いRR(12.3)は、BOS発生に近い時点でcol(V)に対して陽性DTHを有する患者で観察された。対照col(II)に対するDTH応答はBOSの発生に相関を示さず(RR=1.0)、col(V)に対するDTH応答はBOSリスクの特異的マーカーであることを示している。2は、col(V)に対するDTH応答とBOSの発生の関係を、如実に示している。移植後370日目(上のパネル)及び760日目(下のパネル)に良好な肺機能(>80%最大FEV1)を有する患者を、抗体及び/又はDTH分析に基づいてcol(V)+対col(V)−応答者に分割し、カプランマイヤー分析を、エンドポイントとしてBOS Iまでの時間で実施した。各時点に先立って抗col(V)反応性を有する患者の半分以上が次の2年以内にBOSを発生し、一方、col(V)に対して陰性応答を有する患者は主にBOSフリーであった。
【0082】
BAL中の抗col(V)抗体のレベルは、何らかの原因によりBOSの発生又は移植片機能損失(RR=2.3)、及びBOS単独のリスク(RR=2.08)と有意に関連した。二つの指標、DTH又はcol(V)に対する抗体が合わさった場合、BOS又は移植片機能損失に対するRRは12.7であり、BOSを発生した全ての患者がいくつかの前の時点で陽性DTHか又はcol(V)に対する抗体応答を有していたので、BOSについては計算することができなかった、表2(図8)。
【0083】
肺移植後患者で見られた抗col(V)応答が、特定の患者に乏しい機能を生じやすくすることができる、前々から存在している状態の単なる反映しているかどうかを決定するため(COPDを有する患者はより高い移植前抗col(V)応答を有し、一方、CFを有する患者はより低い応答を有する)、肺移植を待っている、多様な末期肺疾患を有する23人の患者における抗col(V)DTH応答を分析した。図3、パネルAに示したように、ほとんど末期の肺疾患を有する患者は抗col(V)DTH応答を有しておらず、既知の肺疾患を有していない正常対象で見られたことと著しく異なっている。例外はIPFを有する患者である。これらの患者における抗col(V)DTH応答はいずれか他の疾患を有する患者で見られるもののおよそ2倍であった。興味深いことに、University of Wisconsinで移植したIPFの患者は、有意に低い1年移植片生存率(p=0.05、データは示されていない)、しかし同様の5年生存率及びBOS発生の比率を有していた(表1)。
【0084】
肺移植後患者におけるコラーゲンに対する自己免疫の発生がV型コラーゲンに特異的であったかどうかを決定するため、8人の肺移植レシピエント及びグッドパスチャー症候群(IV型コラーゲン自己免疫)を有する5人の腎臓移植レシピエントに対し、col(II)、col(IV)及びcol(V)を使用してDTHアッセイを実施した。図3、パネルBに示したように、肺移植レシピエントはcol(V)に応答したがcol(IV)又はcol(II)には応答せず、一方、グッドパスチャー症候群を有する患者はcol(V)又はcol(II)への応答なしに、col(IV)に対し有意に高いDTH応答を有していた。
【0085】
実施例3
V型コラーゲンに対する体液性又は抗体仲介免疫応答の検出のためのビーズアッセイ。このアッセイは、V型コラーゲン自己免疫応答を有する患者からの血清及び/又は肺洗浄液中に存在することができるV型コラーゲンに対する抗体を検出するであろう。V型コラーゲン−被覆ビーズならびに他の必要な試薬がこのアッセイのために提供される。末端利用者は、血清及び/又は肺洗浄液、及びアッセイを実行するためのPBSのような通常の試薬(又はこれらの試薬はキット中に組み入れることが可能である)を提供することができる。簡単には、典型的なアッセイは以下のようである:
1)ストレプトアビジン被覆ビーズ(5μm、結合能10〜20μg/lx10/7ビーズ(Polyscience, Warrington, PA ))を滅菌PBSで2回洗浄した。ビーズ(1x10/7)を40μgのヒトV型コラーゲンを含んだ100μlのPBSに懸濁し、4℃で60分インキュベートした。
【0086】
2)ヒトコラーゲンV抗体に対する20μmのウサギ抗体(ビオテン)(Abeam, Cambridge,MA)を使用し、上記1と同一手順で陽性対照を発生させた。
【0087】
3)各アッセイについて、1x106コンジュゲートビーズをPBS中で2回洗浄し、50μlの血清又は肺洗浄液を加えた100μlのPBS中でインキュベートした。室温で30分インキュベート後、ビーズを10%FCS含有PBSで3回洗浄した。
【0088】
4)ビーズを100μlの滅菌PBS+10%FBSに懸濁し、室温で約30分、二次抗体とインキュベートした。典型的には、R−PEにコンジュゲートされた5μlの抗ヒトIgG抗体を使用した(Sigma, Saint Louis)。ビーズを10%FCS含有PBS中で3回洗浄し、300μlのPBS/FCS溶液に懸濁し、フローサイトメーターを使用して分析した。このアッセイの例の結果は図9に要約されている。
【0089】
陽性対照については、既知の量の抗コラーゲン−V抗血清をビーズアッセイに加えた。図9の右側のパネルが図示しているように、抗コラーゲンV抗体の量の増加は、平均蛍光チャンネルの右への著しいシフトを生じる。それ故、この方法は患者の血清中に存在する異なった量の抗体を検出し得る。さらに図9を参照すると、左のパネルは健康なヒト対象から得られた血清サンプルと比較された4人の患者の血清からの抗コラーゲンV抗体の検出を図示している。トレースにより図示されているように、患者#457からのサンプルは右への最も大きなシフトを示し、この患者が抗コラーゲンV抗体の最も高いレベルを有していることを示唆している。患者#458及び420は小さなシフトを示し、患者#457よりも低いレベルの抗体を示し、一方、患者519は、このアッセイで反応する何らの抗体も有していないようである。
【0090】
図9に要約した結果により示されているように、患者457は右への最も大きなシフトを示し、この特定の患者が抗col(V)抗体の最も高いレベルを有することを示唆している。対照的に、患者#458及び#420から集められたサンプルは蛍光ピークに小さなシフトを示し;一方、患者#595はこの特定のサンプル中にいずれの抗体も少しも有していないようである。これらのデータは特発性肺疾患(IPD)又は他の自己免疫に基づいた肺障害又は疾患を検出する、及び/又は肺移植を受けている所与の患者が移植された臓器を拒絶するであろう可能性を評価する方法を説明している。肺疾患を診断する、又はBOSを発生する所与の患者の可能性を評価するこの方法は、一般には、患者から体液(例えば、血清又は間質液)又は組織を集めること、およびV型コラーゲンに対する抗体の存在についてサンプルを分析することを含む。
【0091】
実施例4
試験動物における経口免疫寛容の誘導、コラーゲン又はコラーゲンの抗原性成分に対するヒト又は動物患者の自己免疫応答を変調するためのモデル。利用された病原体フリー、MHC(RTl)不適合雄ラットは:Harlan Sprague Dawley (Indianapolis, Ind.)又は Taconic (Germantown, N.Y.) から購入され、施設のガイドラインに従ってIndiana University School of Medicine (Indianapolis, Ind.)のLaboratory Animal Resource Center に収容した、移植の時点で250〜300gのFischer 344(F344、RTllvl)、Brown Norway (BN、RTln)及び Wistar Kyoto(WKY、RTl1)ラットであった。
【0092】
簡単には、V型コラーゲンは以下のように調製した。精製したヒトV型コラーゲン[col(V)]を0.005M酢酸(0.5mg/ml)に希釈し、アッセイに使用されるまで4℃で貯蔵した。col(V)の量は、サンプル中のヒドロキシプロリン含量の決定により評価した(Woessner, 1961)。
【0093】
この特定の試験において、V型コラーゲンをWKY雄ラットに経口で投与した。動物(180〜200g)には、以前に記載されているように(Stark and Ostrow, 1990)、0.5mlの生理食塩水に溶解した10μgか又は50μgのcol(V)、col(II)又はcol(XI)溶液を、16ゲージボールポイントステンレススチール動物摂取針(Braintree Scientific, Braintree, Mass.)を利用する胃経管栄養により摂取させた。対照として、同様の動物に希釈剤のみを摂取させた。8回又は4回摂取に対し、動物は一日おきに摂取させた。最後の摂取7日後、これらのラットは同所性移植によりF344肺同種移植片を受けた。WKYレシピエント内へ移植されたWKY肺移植片(同種移植片)を対照として使用した。
【0094】
遅延型過敏性(DTH)応答は、Sayegh et al, 1992; Yoshino et al, 1995; 及び Yamagami et al, 1999 、に記載されている方法を改変して決定した。手短に言えば、肺移植2週間後、対照又はcol(V)摂取WKYラットは、26ゲージ注射針を使用する皮下(s.c.)注射により、右耳介内に、107照射(3000ラド)ドナー由来F344又は第三者(BN)脾細胞の30μl PBS溶液を受けた。左耳介は等容積の希釈剤を受け、対照部位として働いた。無処置又は同種移植片レシピエントWKYラットの別々の群が、15μgのcol(V)を30μl容量で右耳介内に、希釈剤を左耳介内に注射されて試験された。無処置WKYラットは陰性対照として使用した。耳の厚さは、注射直前及び24時間後に盲検様式で、マイクロメーターカリパー(Mitutoyo, Field Tool Supply, Chicago, 111.)で測定した。抗原特異的DTH応答は以下の式に従って計算した:特異的耳介膨潤=(右耳厚さ@24時間−右耳厚さ@0時間)−(左耳厚さ@24時間−左耳厚さ@0時間)x10−3mm(Yamagami et al., 1999)。全てのデータは三回の測定の平均として報告されている。
【0095】
左肺同種移植片(WKY→WKY)又は 同種移植(F344→WKY)の同所性移植は(Marck et al., 1983 and Prop et al., 1985)により最初に記載されている手順を利用し、既に報告されているように(Sekine et al., 1997)実施した。発明者の以前の報告(Sekine et al., 1997)と同様に、全ての移植群において生存率は90%を上回った。実験期間の間、いずれの時点でも非免疫抑制療法は与えなかった。
【0096】
移植肺は、移植後1日、6日及び13日目に連続胸部X線検査によりモニターした。画像的変化は以下のように段階付けした:グレード1、正常;グレード2、軽度浸潤;グレード3、中程度浸潤;及びグレード4、重篤な浸潤又は完全不透明化。
【0097】
5移植群を研究した:WKYラットからの肺をWKYレシピエントに(WKY→WKY、対照同系移植片);F344肺を希釈剤摂取WKYレシピエントに移植(F344→WKY、対照同種移植片);F344肺をcol(V)摂取WKYレシピエントに移植(F344→col(V)摂取WKY、col(V)摂取同種移植片);F344肺をcol(II)摂取WKYレシピエントに移植(F344→col(II)摂取WKY、col(II)摂取同種移植片);並びにF344肺をcol(XI)摂取WKYレシピエントに移植(F344→col(XI)摂取WKY、col(XI)摂取同種移植片)。予備的実験は、無摂取WKYラット内に移植された同種移植片と比較して、同種移植病態の発生、気管支肺胞洗浄(BAL)示差的(differential)細胞計数又はDTH応答に何の影響も与えなかった。
【0098】
BAL液は、移植1週及び2週後のケタミン麻酔肺移植片レシピエントから集めた。簡単に言えば、自然の及び移植した肺のBALは、縫合により安全にされた16ゲージカテーテルで、右及び左主気管支の選択的カニューレ挿入により実施した。体側気管支がクランプされている期間中、3mlの滅菌PBS(37℃)を各主気管支内に点滴注入し、吸引した。遠心分離検体から得られた無細胞BAL上清は、使用されるまで−70℃で貯蔵した。BAL液示差的細胞計数は、光学顕微鏡を利用してサイトスピン上の高倍率視野当たり300細胞を計数し、サンプル中のマクロファージ、リンパ球及び多形核(PMN)細胞の量を決定することにより行った。
【0099】
肺における病態の存在を検出するため、各群から移植肺を採取し、4%グルタルアルデヒドの気管内点滴注入により固定し、切片とし、ヘマトキシリン及びエオシンで染色し、光学顕微鏡下で検査し、及び、移植群の予備知識無しに盲検的様式で、Lung Rejection Study Group(Yousem et al, 1996)により確立された組織学的基準に従って段階付けした。
【0100】
BAL液中のPMN及びリンパ球数の統計的分析は、最初にANOVAにより実行し、群間で差違が存在するかどうかを決定した。もし差違が観察されたら、Student-Newman-Keuls 検定を利用する事後解析を実行して、どの群が異なっているのかを決定した。P値<0.05が有意であると決定された。対照同種移植におけるDTH及び異なった抗原が暴露された無処置WKYラットは正常に分布していないことが観察されたので、相互作用を有するrank-sum二方向ANOVAを利用し、群間の差違を決定した。P値<0.05が有意であると決定された。対照同種移植片及びcol(V)摂取同種移植片間の、ドナー同種抗原に対するDTH応答の相違はマンホイットニーU検定を利用して決定した。P値<0.05が有意であると決定された。気道及び脈管病理学的スコア間の相違は、最初にクラスカル・ワリス検定を利用して、続いてマンホイットニーU検定を利用する事後解析により決定した。P値<0.03が有意であると決定された。
【0101】
本発明者らは、col(V)が、マウスにおける肺同種抗原に対する局所免疫応答の標的であることを以前に示した。次ぎに、彼らは肺同種移植片拒絶の間、col(V)が抗原として認識されることを示した。DTH応答は、肺以外の臓器移植の多様なげっ歯類モデルにおいて、拒絶の程度と相関すると報告されてきた(VanBuskirk et al, 1998; Lowry et al, 1985; Joo et al, 1995)。細胞性免疫応答のインビボ試験として、同種抗原への全身DTH応答を実行した。F344肺同種移植片を受けて2週間後のWKYラットにおける、及び無処置非移植WKYラットにおけるF344脾細胞、col(V)及びBN脾細胞(第三者)に対するDTH応答を試験した。図10は、F344同種移植片を受けたWKYラットは、F344脾細胞に対する有意なDTH応答[F344脾細胞か又はcol(V)で試験された無処置WKYラットと比較してp<0.0001]を有していたことを図示している。F344同種移植片を受けたWKYラットは、col(V)に対する有意なDTH応答[F344脾細胞か又はcol(V)で試験された無処置WKYラットと比較してp<0.0001]を有していたことを図示している;図11。統計学的に、F344脾細胞及びcol(V)に対する対照同種移植片のDTH応答間には差違はなかった(p>0.05)。データは、F344同種移植片を受けたWKYラットは第三者同種抗原(BN脾細胞、RT1n)へのDTH応答は有しておらず、F344同種移植片に対する免疫応答は同種特異的であることを示している。加えて、これらのデータは、肺同種移植片拒絶の間に抗原として認識されているcol(V)と一致している。
【0102】
以前の報告は、肺以外の同種移植片の拒絶の間に免疫応答の標的である抗原の経口投与はドナー臓器に対する寛容を誘導することを示している(Ishido et al., 1999)。移植に先だって肺移植片レシピエントへのcol(V)の経口投与がドナー肺に対する免疫学的寛容性を誘導するかどうかを決定するため、WKYレシピエントに、上記のごとく移植に先だってcol(V)を摂取させた。予備的実験では、1日おきに10μgのcol(V)を8回摂取させ(80μgの総用量)、続いて最後の摂取から7日後の左同所性肺移植は、このモデルにおけるBAL細胞計数及び拒絶病態に最も大きな効果を有していた。それ故、この摂取計画を、すべての以下の研究で利用した。Col(V)摂取レシピエントの左肺移植を行い、上記のように実験期間の完了時に採取した。
【0103】
図12は、移植2週間後の対照WKY同系移植片(isograft)レシピエント、対照WKY同種移植片(allograft)レシピエント及びcol(V)摂取WKY同種移植片レシピエント及び正常WKYラットからのBAL液中の示差的細胞計数を図示している。同系移植片肺と比較して正常肺におけるBAL示差的細胞計数で差違はなかった。(Yagyu et al, 1990)と同様に、正常又は同系移植片肺と比較して、対照同種移植片BALにおいてはPMN及びリンパ球が有意に増加した(PMNについてp<0.039、及びリンパ球についてp<0.00001)。対照的に、移植に先立ってcol(V)を摂取させることは、対照同種移植片と比較してBAL中のPMN及びリンパ球に有意な減少を生じた(PMNについてp<0.023、及びリンパ球についてp<0.00001)。急性同種移植片拒絶は通常、同種移植片BAL液中の総細胞数の増加に関係する(Hirt et al., 1999)。しかしながら、移植2週間後では、対照WKY同種移植片肺は重度の拒絶を通常受けており、移植片の破壊により、BAL総細胞数を決定するための十分なBALは確実には実施することが不可能である。対照的に、col(V)摂取同種移植片レシピエントはより軽度の拒絶を示し、それはより容易なBALを可能にし、より高い細胞計数を生じる。これらの理由のため、群間の総細胞数の比較は行われなかった。まとめると、col(V)による経口免疫は、急性拒絶間の同種移植片BAL液におけるより少ないPMN及びリンパ球と関連することをこれらのデータは示している。
【0104】
col(V)摂取が同種抗原に対するDTH応答を減少させるかどうかを決定するため、対照WKY同種移植片レシピエント及びcol(V)摂取同種WKY移植片レシピエントは、右耳介に全同種抗原性(F344)脾細胞を及び左耳介にPBSを暴露した。DTH応答は24時間後測定し、特異的耳介膨潤を決定した。図10に示したように、無処置の対照同種WKY移植片レシピエントは重度の急性拒絶を受け、ドナー抗原暴露後に強いDTH応答を有した。対照的に、より軽度の同種移植片拒絶を有していたcol(V)摂取WKY移植片レシピエントは、ドナー抗原に対するDTH応答の有意な減少も有した。
【0105】
col(V)により誘導された同種抗原に対する損なわれた免疫応答は、広範囲の免疫低応答性であり(Faria and Weiner 1999)、寛容ではない。それ故、col(V)摂取WKYラットが他の抗原に応答できるかどうかを決定するため、これらのラットは気管内(200μg/kg〜1mg/kg)か又は静脈内に(1〜5mg/kg)リポ多糖(LPS)(Sigma, St. Louis, MO.)を受け、それらの用量は注射又は注入24〜48時間後、肺及び全身的に重度の炎症反応を誘発することが知られている用量であった(Delclaux et al. 1999)。ラットはcol(V)の最後の摂取から1週間後に暴露された。誘発された疾患は肺炎及びグラム陰性菌により起こされる敗血症に類似していた。正常WKYラットと同様に、col(V)摂取WKYラット内の肺内へのLPSの点滴注入又はI.V.は重度の病気(波打つ毛皮及び虚脱)及びレシピエント肺の炎症を誘発した。これらのデータは、移植に先立ったcol(V)の摂取は、ドナー抗原への広範囲の免疫低応答性ではなく、寛容性を誘導することにより同種移植片拒絶を防止したことを示している。
【0106】
まとめると、これらのデータは、col(V)は広範囲の免疫低応答性ではなく、経口寛容性の誘導により肺同種移植片拒絶を下方調節するが、col(II)又はcol(XI)はしない、ことを示している。さらに、col(V)により誘導された経口免疫寛容性は、ドナー同種抗原に対するDTH応答を下方調節する。
【0107】
同種移植片BAL液中の減少したPMN及びリンパ球数は、急性肺同種移植片拒絶間のそれほどひどくないX線検査及び組織学的病変と関連する。肺浸潤の進行する速度を決定するため、移植レシピエントを移植後1、6及び13日目に連続胸部X線検査によりモニターし、上記のように段階付けした。対照同系移植片(isograft)は、全てのモニターした時点でいかなる肺浸潤も有していなかった(図12A)。対照同種移植片において、連続X線は移植6日目に左肺に浸潤の漸進的な発生を明らかにし、それは2週目の終わりまでに重篤な浸潤及び完全な不透明化を生じた(図12B)。しかしながら、col(V)摂取同種移植片においては、浸潤の発生は対照と比較してより遅かった。X線は6日目では正常であり、移植2週間後に軽い浸潤のみが存在した(図12C)。
【0108】
ここで図13を参照すると、上段のパネルは、移植2週間後に採取した、自然の及び同系移植片WKY肺、並びに対照同種移植及びcol(V)摂取同種移植ラットからの自然の及び同種移植肺の肉眼的解剖学を示している。図13AはWKYラットレシピエントの同系移植片(左−L)及び自然肺(右−R)は外観が正常であることを示している。対照的に、対照同種移植片群の左同種移植肺は自然肺と比較して暗褐色の色、萎縮及び堅いコンシステンシーであった(図13B)。炎症及び拒絶の結果、対照同種移植片においては体腔壁及び臓側胸膜の融合が通常観察された。col(V)摂取同種移植片レシピエントの移植された左肺(図13C)は自然の(正常)又は同系移植片肺(図13A)の外観を有しており、胸膜癒着はなかった。
【0109】
同種移植片BAL液におけるより少ないPMN及びリンパ球、胸部X線での同種移植片におけるあまりひどくない浸潤、及び保存された肉眼的解剖学は、移植に先立ってcol(V)を摂取させることは、拒絶病態の発生を下方調節することを示唆している。図14の下段のパネルは、移植2週間後の対照同系移植片、対照同種移植片及びcol(V)摂取同種移植片の代表的な組織学を示している。以前の報告(Prop et al, 1985)と同様に、対照同系移植片肺は、拒絶の徴候がない正常組織学を有していた(図14D)。対照同種移植片は、重度の急性拒絶と一致する広範な血管周囲、気管支周囲及び肺胞単核細胞浸潤を明らかにした(図14E)。対照的に、col(V)摂取同種移植片肺においては、軽度から中程度の血管周囲及び気管支周囲のみしか検出されなかった(図14F)。
【0110】
図15中の表3は標準判定基準を使用する移植2週間後での拒絶病態の段階付けを示している。急性血管拒絶は血管周囲単核細胞浸潤の存在及び程度に従って、A0−A4に段階付けされ、及び急性気道拒絶は気道炎症の程度及び強度に従ってB0−B4に段階付けた(Yousem et al. 1996)。全ての同系移植片対照肺は肺の正常構造が明らかにされた(A0±0、B0±0)。対照WKY同種移植片は重度の血管及び気道拒絶を有していた(それぞれA3.8±0.2、B4±0)。対照的に、col(V)摂取WKY同種移植は軽度から中程度の血管及び気道拒絶(それぞれA2.8±0.2、B2.6±0.2)を示した。CoI(II)及びcol(XI)摂取同種移植片は、無処置の同種移植片と同様の拒絶病態を有していた(図15)。これらのデータは、col(V)摂取WKY同種移植片は、他の同種移植片よりも軽度の拒絶病態を有していた(Aスコアについてはp<0.028及びBスコアについてはp<0.009)。
【0111】
これらのデータは、col(V)を摂取させることが、肺同種移植片拒絶を下方調節することを示しており、経口的に寛容化された肺移植片レシピエントは、ドナー同種抗原で再暴露後に減少したDTH応答を有すべきであることを示している。col(V)摂取が同種抗原に対する免疫応答を減少させるかどうかを決定するため、対照同種移植片レシピエント及びcol(V)摂取同種移植片レシピエントは、右耳介に全同種F344脾細胞及び左耳介にPBSを暴露した。DTH応答は24時間後測定し、特異的耳介膨潤を決定した。図14に示したように、無処置の対照同種移植片レシピエントは重度の急性拒絶を受け、ドナー抗原暴露後に強いDTH応答を有した(図10に示された対照同種移植片と同一のデータ)。対照的に、col(V)摂取同種移植片レシピエントはドナー抗原に対する有意に軽減されたDTH応答を有していた(対照同種移植片と比較してp<0.02)。これらのデータは、移植に先立ってcol(V)を摂取することは、ドナー抗原に対する寛容性を誘導することにより同種移植片拒絶を防止したことを示している。
【0112】
重度の拒絶反応(グレード4)の発病の時間である移植2週間後、同種移植片肺は示差的細胞計数の決定及び血清を採取するためBALを受けた。自然の及び移植肺を一括して採取し、固定し、切片とし、染色し、及び標準判定基準(Yousem et al. 1996)を使用して拒絶病態について段階付けした。拒絶病態の全ての説明及び段階付けは肺病理学者であるOscar W. Cummings, M.D.により実施され、以前に報告されているように(Wilkes et al. 1998)、彼は処置群については知らされていない。図14は、移植2週間後に採取された同系移植片WKY肺、及び対照WKY同種移植片及び col(V)摂取WKY同種移植片レシピエントからの自然の及び同種移植片肺の肉眼的解剖学を示している。対照WKY同種移植片動物において、図14Bは移植された(左)肺は自然の肺と比較して色が暗褐色で萎縮していた。対照的に、col(V)摂取WKY同種移植片レシピエントの移植された左肺(図14C)は、自然の(正常)又は同系移植片肺(図14A)の外観を有していた。col(II)又はcol(XI)を摂取させたWKYラット中の同種移植片肺の全体の外観は無処置同種移植片肺と類似していた。予期されるように、同系移植片肺は正常のようにみえた(図14A)。
【0113】
図14は、移植2週間後の対照WKY同系移植片、対照WKY同種移植片、及びcol(V)摂取WKY同種移植片の組織学も図示している。WKY同系移植片肺は正常な組織学を有していた(図14D)。対照WKY同種移植片は、重度の急性拒絶と一致する広範な血管周囲、気管支周囲及び肺胞単核細胞浸潤を明らかにした(図11E)。対照的に、col(V)摂取WKY同種移植片肺においては、軽度から中程度の血管周囲及び気管支周囲のみしか検出されなかった(図14F)。CoI(II)及びcol(XI)を摂取させたWKYラットの同種移植片肺は、無処置の同種移植片と同様の病態を有していた(図15を参照されたい)。
【0114】
経口寛容が、肺以外の臓器におけるアロ反応性の下方調節に有益である(Ishido et al., 1999)と示されていたけれども、肺移植における経口寛容は、2002年9月13日に出願されたWilkes による米国特許出願番号10/243,797 で最初に報告された。肺移植のラットモデルを利用し、本発明のデータは、肺移植に先立った肺同種移植片レシピエントへのcol(V)の経口投与が拒絶反応を下方調節することを示している。対照同種移植片レシピエントと比較されたcol(V)摂取の免疫学的、放射線学的及び組織学的分析は、col(V)を摂取させることが、同種移植片BAL液中の減少したPMN及びリンパ球数、胸部X線での同種移植片におけるあまりひどくない浸潤、及び同種移植片の肉眼的解剖学での保存、及び拒絶病態の減少と相関していることを示した。最後に、経口的に寛容化された同種移植片レシピエントは、ドナー同種抗原に対するDTH応答を減少させた。
【0115】
以前に、マウスにおいてはcol(V)が同種抗原に対する局所免疫応答の標的であることが示されている。V型コラーゲンは肺に存在するマイナーな型のコラーゲンであり、細気管支周囲結合組織、肺胞間質及び毛細血管基底膜に位置する。これらの組織は本発明者のマウスモデルにおいて同種抗原に応答する病理学的病変の部位であることが示されており(Wilkes et al., 1999)、ヒト肺同種移植片レシピエントにおける拒絶活性の部位である(Trulock, 1997)。
【0116】
抗原の経口投与は末梢性T細胞寛容を誘導する有効な方法である。この現象はしばしば経口寛容と称され:脳脊髄炎、ぶどう膜炎、糖尿病、重症筋無力症及び関節炎を含む動物における自己免疫疾患の多様なモデルでよく研究されている。しかしながら、寛容を誘導する機構は完全には理解されていない。クローンアネルギー、クローン除去を含む寛容誘導についての全ての既知の機構、IL−4、IL−10又はTGF−β仲介能動抑制による調節が経口寛容に役割を有することができる(Faria and Weiner, 1999)。一般に、抗原のより高い用量がアネルギー又はクローン除去を誘導すると報告されており(Chen et al., 1995; Whitacre et al., 1991)、一方、低用量はサイトカイン調節及び能動抑制を誘導する(Faria and Weiner, 1999; Chen et al., 1994)。心臓移植の動物モデルにおいて、同種間脾細胞の経口投与は、TH1活性化をバイパスすること、及びIL−4のようなTh−2由来阻害性サイトカインの選択的刺激誘導により寛容誘導に有効であることが示されている(Ishido et al., 1999)。
【0117】
近交系、病原体フリー、MHC(RTl)不適合雄F344(RTllvl)及びWKY (RTl1)ラット(250〜300g)を移植手術に利用した。すべてのラットはHarlan Sprague Dawley(Indianapolis, Ind.) から購入した。左肺同種移植片の同所性移植は既に報告されたように実行し(Sekine et al. 1997)、Marck及び共同研究者(1983)により記述された手順を利用した。ラットはいずれの免疫抑制も受けなかった。拒絶病態は移植後の種々の時点で段階付けした。F344→WKY移植モデルは、移植後第一週の終わりまでに軽度急性拒絶(グレード1)、第二週の終わりまでに中程度から重度の拒絶(グレード2−3)及び第三週の終わりまでに重度−グレード4拒絶の発生が付随した(Matsumura et al. 1995)。加えて、F344→WKYモデルは、再現性よく閉塞性細気管支炎(BO)を発生する、ただ一つの肺移植の動物モデルである(Hirt et al. 1999)。それ故、このモデルは、急性及び慢性拒絶の病因を研究する独特の機会を提供する。
【0118】
経口寛容の誘導における相違を観察するため、異なった摂取計画を試験した。データはより高いcol(V)の用量(50μg)と比較して、より低い用量(10μg)の多数回の摂取は、拒絶病状発生がより抑制的であった。それ故、本明細書で使用した経口寛容のモデルにおいて、Th2サイトカイン(IL−4、IL−10)による調節、又はTGF−βにより仲介される活性化された抑制も、寛容誘導において重要な役割を果たしているように思われる。
【0119】
移植寛容の誘導は移植研究の主たるゴールになってきており、長年にわたって異なった技術が移植寛容を誘導するために利用されてきた。ドナー特異的輸血(Zheng et al., 1999)、骨髄移植(Huang et al., 2000)、同種細胞の胸腺注入(Garrovillo et al., 1999)又はドナーMHC由来ペプチドによる全身免疫(Sayegh and Krensky, 1996)は多様な動物モデルにおいて移植寛容を誘導することが示されている。しかしながら、これらの技術は、寛容誘導に利用されるドナー細胞が移植に先立って寛容を誘導する十分な時間内には利用できないであろうという事実のため、潜在肺移植片レシピエントでは限定的な実用性しか有していないであろう。低用量経口寛容の実験自己免疫モデルにおいて、経口寛容化後の調節細胞は、抗原特異的様式で引き金が引かれるが、抗原非特異的様式で抑制する。それ故、標的自己抗原それ自身を同定する必要はないであろうが、抑制性サイトカインを分泌する調節細胞を誘導することが可能なタンパク質が十分に経口的に投与されるであろう(Faria and Weiner, 1999)。本明細書で使用した肺移植における経口寛容のモデルは、経口的に投与された、ドナー特異的ではないcol(V)はアロ反応性を抑制し、及び移植寛容を誘導することができる。発明者は、移植に先立ったcol(V)による移植片レシピエントの経口治療が、肺移植における拒絶を防止するための、及びV型コラーゲン及び/又はそれらの抗原性成分に対する自己免疫反応により引き起こされることが知られている又は考えられている疾患を治療するための療法を提供するであろうことを想定する。図及びそこに引用されている参照文献を含む、実施例4から10に報告された結果の追加の議論については、その全体が本明細書において援用される、Wilkes により2002年9月13日に出願された米国特許出願10/243,792 (現在米国特許公開番号2003/0078208 Al )を参照されたい。
【0120】
実施例5
同種移植片拒絶の防止、及びコラーゲン及びコラーゲン様分子に対して動物を寛容化するために有用な追加のMHC「様」ペプチド及びコラーゲンの評価
病原体フリー、MHC(RTl)不適合雄ラットを本研究で利用した:Wistar Kyoto (WKY、RT1l)、Fischer 344(F344、RT1lvl)及びBrown Norway(BN、RT1n)ラット(移植の時点で250〜300g)。全てのラットはHarlan Sprague Dawley (Indianapolis, Ind.)から購入し、施設のガイドラインに従ってUniversity School of MedicineのLaboratory Animal Resource Center Indiana (Indianapolis, Ind.)に収容した。
【0121】
実験で使用するためのII型コラーゲン[col(II)]は、以前に報告されているように(Maves et al. 2000)イヌ軟骨から単離されたか、又は Collaborative Biomedical Products, Bedford, Massから購入した。両調製物は0.005M酢酸で可溶化し、透析すると0.5mg/mlの最終濃度を得た。
【0122】
ウシ胎児軟骨からのウシXI型コラーゲン[col(XI)](Morris and Bachinger 1987) はBiogenesis, Sandown, N.H.から購入し、0.005M酢酸(0.5mg/ml)で希釈し、使用されるまで4℃で貯蔵した。
【0123】
ヒト胎盤から抽出し、示差NaCl沈殿(Mares et al. 2000)により精製されたヒトV型コラーゲン[col(V)]は、Dr. Jerome Seyer (VA Hospital, Hampton, Va.)から贈与された。手短に言えば、胎盤組織を細かく切り、洗浄し、0.5M NaClを含有する0.5M酢酸に懸濁し、そして4℃でペプシンにより消化した。上清を遠心した検体から吸引し、ペレットを集め、そして抽出過程を反復した。2つの消化物からの上清を合わせ、そして0.5M酢酸からの示差NaCl沈殿(Maves et al. 2000)により、上清からcol(V)を精製した。使用するまで、無傷のcol(V)は0.005M酢酸(0.5mg/ml)に希釈した。コラーゲンの量は、既に報告されているように(Mares et al. 2000)、サンプル中のヒドロキシプロリン含量の決定により評価した。
【0124】
上記のように調製したコラーゲンはWKYラットに経口で投与した。ラットには、0.5mlの生理食塩水に溶解した10μgのcol(II)、col(V)又はcol(XI)溶液を、16ゲージボールポイントステンレススチール動物摂取針(Braintree Scientific, Braintree, Mass.)を利用する胃経管栄養により摂取させた。対照動物には希釈剤のみを摂取させた。8回摂取に対し、動物は一日おきに摂取させた。最後の摂取7日後、これらのラットは肺同種移植片のレシピエントとして利用した(以下に記載)。
【0125】
左肺同系移植片(WKY→WKY)又は同種移植片(F344→WKY)の同所性移植は、以前に記載されている手順(Prop et al. 1985)を利用し、以前に報告されているように実施した(Sekine et al. 1997)。手短に言えば、ドナーラット(F344又はWKY)をケタミン(40mg/kg)及びキシラジン(5mg/kg)のi.m.注射で麻酔した後、胸部を剃髪し、胸骨切開術を行い、心臓及び肺を一括して除去した。左肺を次ぎに切除し、ヘパリン処置したラクトリンゲル液を肺動脈中に注入した。ドナー肺を生理食塩水で飽和した滅菌ガーゼでラップし、移植するまで無菌ビーカー中の氷上(4℃)に置いた。
【0126】
レシピエントラットをアトロピン(0.05mg/kg)のs.c.注射、続いての2%ハロタンの吸入で麻酔した。気道に14−ゲージテフロンカテーテルでカニューレ挿入し、ラットは100%酸素を利用するげっ歯類ベンチレーター(Analytical Specialties Co., St. Louis, Mo.)を使用して機械的に換気し、麻酔維持のため1.5〜2%イソフルレンを吸入させた。左4肋間腔の開胸術を行ったら、左肺血管及び気管支に止血剤を置き、左肺を切除した。プラスチックカフ及び7−0絹縫合糸(Kono, Chiba, Japan)により、ドナー肺の肺血管をレシピエントに吻合した。ドナー及びレシピエント気管支を、8−0 Prolene 縫合糸(Ethicon, Sommerville, N. J.)を利用してお互いに縫合した。気管支の吻合終了後直ちに止血剤を除去し、換気を回復させた。3−0絹縫合糸(Ethicon)を利用して16ゲージ胸腔チューブ上で左開胸切開を閉じた後、麻酔維持を中断し、動物を回復させた。自発呼吸が再開したら、カニューレを気道から除去し、胸腔チューブをはずした。ドナー肺の虚血時間はおよそ1時間であり、及びドナー肺を摘出する及び移植するための総手術時間はおよそ2時間であった。すべての移植手順は無菌状態の中、手術用顕微鏡(Micro Tech, colorado Springs, CO.)下でK.Y.により実施された。F344→WKY移植モデルには、第1週目の終わりまでの軽度の急性拒絶、及び第二週目の終わりまでの中程度から重度の急性拒絶の発生が付随している(Matsumura et al. 1995)。 全ての移植群において生存率は90%を上回った。実験期間の間、いずれの時点でも非免疫抑制療法は与えなかった。
【0127】
移植肺は、移植後1日、6日及び13日目に連続胸部X線検査によりモニターした。画像的変化は以下のように段階付けした:グレード1、正常;グレード2、軽度浸潤;グレード3、中程度浸潤;及びグレード4、重篤な浸潤又は完全不透明化。
【0128】
5移植群を研究した:WKYレシピエント内に移植されたWKYラットラットからの肺[対照同系移植片];希釈剤摂取WKYレシピエント内に移植されたF344肺[対照同種移植片];col(V)摂取WKYレシピエント内に移植されたF344肺[col(V)摂取同種移植片];col(II)摂取WKYレシピエント内に移植されたF344肺[col(II)摂取同種移植片];及びcol(XI)摂取WKYレシピエント内に移植されたF344肺[col(XI)摂取同種移植片]。
【0129】
気管支肺胞洗浄(BAL)液は、以前に報告されているように(Sekine et al. 1997)、移植2週間後のケタミン麻酔下の肺移植レシピエントから集めた。手短に言えば、自然の及び移植した肺のBALは、縫合により安全にされた16ゲージカテーテルで、右及び左主気管支の選択的カニューレ挿入により実施した。体側気管支がクランプされている間にサンプルを集め、3mlの滅菌PBS(37℃)を各主気管支内に点滴注入し、吸引した。遠心分離検体から得られた無細胞BAL上清は、使用されるまで−70℃で貯蔵した。BAL液示差的細胞計数は、光学顕微鏡を利用してサイトスピン上の高倍率視野当たり300細胞を計数し、サンプル中のマクロファージ、リンパ球及び多形核(PMN)細胞の量を決定することにより行った。
【0130】
遅延型過敏性(DTH)応答は、(Yamagami et al, 1999 )に記載されている方法を改変して決定した。手短に言えば、肺移植2週間後、対照又はcol(V)摂取WKYラットは、26ゲージ注射針を使用するs.c.注射により、右耳介内に、107照射(3000ラド)ドナー由来F344又は第三者(BN)脾細胞の30μl PBS溶液を受けた。左耳介は等容積の希釈剤を受け、対照部位として働いた。無処置又は同種移植片レシピエントWKYラットの別々の群が、15μgのcol(II)、col(V)又はcol(XI)を30μl容量で右耳介内に、希釈剤を左耳介内に注射されて試験された。耳の厚さは、注射直前及び24時間後に盲検様式で、マイクロメーターカリパー(Mitutoyo, Field Tool Supply, Chicago, 111.)で測定した。抗原特異的DTH応答は以下の式に従って計算した:特異的耳介膨潤=(右耳厚さ@24時間−右耳厚さ@0時間)−(左耳厚さ@24時間−左耳厚さ@0時間)x10−3mm(Yamagami et al., 1999)。全てのデータは三回の測定の平均として報告されている。
【0131】
別の実験において、無処置及びcol(V)摂取WKYラットを、100μlのアジュバントの懸濁液(Titermax, CytRx Corp., Norcross, Ga.)に溶解した100μgの低エンドトキシン ウシ血清アルブミン(BSA)(Sigma, St. Louis)で刺激した。各ラットは尾の基部への懸濁液のs.c.で刺激した。7日後、右耳介内へ2%熱凝集BSA溶液及び左耳介内へ希釈剤を接種した(Henningsen et al. 1984)。非刺激ラットがこれらの研究の対照であった。耳厚を注射直前及び24時間後に測定し、特異的耳膨潤を上記のように計算した。
【0132】
DTH部位でのTGF−βの中和は、(Bickerstaff et al. 2000)により記載されている手順を改変して実施した。手短に言えば、肺移植2週間後、col(V)摂取WKYラットは、5μgのポリクローナルニワトリ抗ラットTGF−β Ab又は5μgのポリクローナルヤギ抗ラットIL−4又はIL−10Ab(すべてR&D Systems, Minneapolis, Minn.)と混合された107照射(3000ラド)ドナー由来F344脾細胞の30μl PBS溶液を、26ゲージ注射針を使用したs.c.注射で右耳介内に受けた。左耳介は等容積の希釈剤を受け、対照部位として働いた。陰性対照のため、col(V)摂取同種移植片の別の群が、5μgの対照ニワトリトリ免疫グロブリン又は対照ヤギ免疫グロブリン(R&D Systems, Minneapolis, Minn.)と混合された107照射(3000ラド)ドナー由来F344脾細胞を右耳介内に、及び希釈剤を左耳介内に受けた。特異的耳膨潤は上記のように計算した。対照免疫グロブリンはDTH応答に何の影響も与えなかった。
【0133】
急性肺損傷のモデルとして、リポ多糖(LPS)(Sigma, St. Louis, MO)の肺胞又は静脈内点滴注入を、(O'Learye wheat t al. 1997)により記載されている手順を改変して実施した。手短に言えば、最後の給餌一週間後、正常WKYラット又はcol(V)摂取WKYラットをアトロピン(0.05mg/kg)のs.c.注射、続いての2%ハロタンの吸入で麻酔した。気道に14−ゲージテフロンカテーテルでカニューレ挿入し、ラットは100%酸素を利用するげっ歯類ベンチレーター(Analytical Specialties Co., St. Louis, Mo.)を使用して機械的に換気し、麻酔維持のため1.5〜2%イソフルレンを吸入させた。自発呼吸の消失後、LPS(1mg/mlで1mg/kg)を気道内に点滴注入し、10分間機械的に換気した。麻酔維持を中断し、動物を蘇生させた。自発呼吸が再開したら、カニューレを気道から除去した。別の実験において、ラットはLPS(1mg/mlで4mg/kg)を尾静脈内に静脈内注射された。暴露24時間後、BALを実施し、肺を病理学の評価のために摘出した。
【0134】
実験群の血清中TGF−βレベルは、製造元のプロトコールに従ったTGF−β1免疫アッセイシステム(Promega, Madison, Wis.)を利用するELISAにより定量した。血清中IL−4及びIL−10レベルは、製造元のプロトコールに従ったCytoscreen 免疫アッセイキット(BioSource International, Camarillo, Calif.)を利用するELISAにより定量した。TGF−β、IL−4及びIL−10アッセイの感度はそれぞれ32、2及び5pg/mlであった。
【0135】
病理学は、各群からの自然及び移植肺を試験することにより評価した。肺サンプルを摘出し、固定し、切片化し、染色し、及び標準的判断基準(Yousem et al. 1996)を使用し、以前に報告されているように(Sekine et al. 1997)移植群の予備知識なしの盲検的様式で、病理学者(O. W. C.)により段階付けされた。
【0136】
BAL液中のPMN及びリンパ球数の統計的分析は、最初にANOVAにより実行し、群間で差違が存在するかどうかを決定した。もし差違が観察されたら、Student-Newman-Keuls 検定を利用する事後解析を実行して、どの群が異なっているのかを決定した。P値<0.05が有意であると決定された。対照同種移植におけるDTH及び異なった抗原が暴露された無処置WKYラットは正常に分布していないことが観察されたので、相互作用を有するrank-sum二方向ANOVAを利用し、群間の差違を決定した。P値<0.05が有意であると決定された。対照同種移植片及びcol(V)摂取同種移植片間の、ドナー同種抗原に対するDTH応答の相違はマンホイットニーU検定を利用して決定した。P値<0.05が有意であると決定された。気道及び脈管病理学的スコア間の相違は、最初にクラスカル・ワリス検定を利用して、続いてマンホイットニーU検定を利用する事後解析により決定した。P値<0.03が有意であると決定された。サイトカインの解析のためには、複数の比較のためのスチューデントt検定を利用した。P値<0.05が有意であると決定された。
【0137】
細胞性免疫応答のインビボ試験である、ドナー抗原に対するDTH応答は、肺以外の臓器移植の多様なげっ歯類モデルにおいて、拒絶の程度と相関すると報告されてきた(VanBuskirk et al, 1998; Lowry et al, 1985)。本発明者らは、col(V)が、マウスにおける肺同種抗原に対する局所免疫応答の標的であることを以前に示した(Mares et al. 2000)。それ故、col(V)が肺同種移植片拒絶の間に抗原として認識されるかどうかを決定するため、無処置ラット及び肺同種移植片レシピエントにおいて、全身性DTHが同種抗原に応答することが決定された。肺同種移植片レシピエントがcol(V)に対するDTH応答を発生するかどうかも決定された。F344(ドナー)脾細胞及びcol(V)に対するDTH応答は、F344肺同種移植片を受けて2週間後(重度の急性拒絶が発生し始める時点(Matsumura et al. 1995))のWKYラット及び無処置、非移植WKYラットにおいて試験した。同種抗原及びcol(V)に対するDTH応答の特異性を決定するため、col(II)、col(XI)及び第三者抗原、BN脾細胞に対するDTH応答を決定した。関節軟骨の主要成分であるCoI(II)は肺には存在せず、及びcol(V)とは相同的ではない(Smith et al. 1985)。対照的に、col(XI)はcol(V)と相同性を有するが(Morris and Bachinger 1987)、col(II)と同様に、関節軟骨に観察され、及び肺には存在しない。これらの理由のため、col(II)及びcol(XI)はcol(V)の対照として働く。
【0138】
DTH応答の尺度として特異的耳膨潤を利用し、図10は、対照同種移植片レシピエントが移植2週間後にF344脾細胞及びcol(V)に対する有意なDTH応答を発生したことを示している[F344脾細胞又はcol(V)を暴露した無処置WKYラットと比較して†P<0.0001、及びcol(V)又はF344脾細胞を暴露した無処置WKYラットと比較して†P<0.0001](図10)。対照的に、対照同種移植片は第三者(BN)抗原、col(II)又はcol(XI)に対するDTH応答を有していなかった(図8)。無処置WKYラットはcol(II)又はcol(XI)に対するDTH応答を有していなかった。これらのデータは、DTH応答が同種移植片拒絶間の免疫活性化を示し、それはドナーに特異的ではあるが第三者同種抗原には特異的ではないことを示している他の研究(VanBuskirk et al. 1998)を裏付けている。加えて、col(V)が肺同種抗原に対する免疫応答の標的である(しかしcol(II)又はcol(XI)は標的ではない)という本発明者のマウスでの結果(Mares et al. 2000)を裏付けている。
【0139】
以前の報告は、肺以外の同種移植片の拒絶の間に免疫応答の標的である抗原の経口投与は、ドナー臓器に対する寛容性を誘導することを示した(Ishido et al. 1999)。移植に先立っての、肺同種移植片レシピエントへのコラーゲンの経口投与がドナー肺に対する免疫学的寛容性を誘導するかどうかを決定するため、上記のように移植に先立ってWKYレシピエントにcol(II)、col(V)又はcol(XI)を摂取させ、続いて連続胸部X線、同種移植片BAL示差的細胞計数、病理学的段階付け及びドナー抗原に対するDTH応答を評価した。
【0140】
図12は、重度の急性拒絶が発生し始める時点(Matsumura et al. 1995)である移植2週間後の実験群、及び正常WKYラットにおける、BAL液中の示差的細胞計数を示している。同系移植片肺と比較した正常においては、BAL示差的細胞計数に差違はなかった。以前の報告(Prop et al. 1985; Yagyu et al. 1990)と同様に、正常又は同系移植片肺と比較して、対照同種移植片BALにおいてはPMN及びリンパ球が有意に増加した(正常又は同系移植片肺と比較してリンパ球について*p<0.00001、及びPMNについて†p<0.038)(図12)。対照的に、移植に先立ってcol(V)を摂取させることは、対照同種移植片と比較してBAL中のPMN及びリンパ球に有意な減少を生じた(対照同種移植片と比較してリンパ球について‡p<0.0001、及びPMNについて§p<0.023)(図12)。
【0141】
急性同種移植片拒絶は通常、同種移植片BAL液中の総細胞数の増加に関係する(Matsumura et al. 1995)。しかしながら、移植2週間後では、対照WKY同種移植片肺は重度の拒絶を通常受けており、移植片の破壊により、BAL総細胞数を決定するための十分なBALは確実には実施することが不可能である。対照的に、col(V)摂取同種移植片レシピエントはより軽度の拒絶を示し、それはより容易なBALを可能にし、より高い細胞計数を生じる。これらの理由のため、群間の総細胞数の比較は行われなかった。まとめると、col(V)による経口免疫は、急性拒絶間の同種移植片BAL液におけるより少ないPMN及びリンパ球と関連することをこれらのデータは示している。
【0142】
急性肺同種移植片拒絶において、同種移植片BAL液中の減少したPMN及びリンパ球数は、それほどひどくないX線検査及び組織学的病変と通常関連する。肺浸潤の進行する速度を決定するため、移植レシピエントを移植後1、6及び13日目に連続胸部X線検査によりモニターし、上記のように段階付けした。図13に示したように、対照同系移植片は、全てのモニターした時点でいかなる肺浸潤も有していなかった(グレード1)(図13A)。対照同種移植片において、連続X線は移植6日目に左肺に軽度の浸潤(グレード2)の漸進的な発生を明らかにし(データは示されていない)、それは2週目の終わりまでに重篤な浸潤及び完全な不透明化(グレード4)を生じた(図13B)。しかしながら、col(V)摂取同種移植片においては、浸潤の発生は対照と比較してより遅かった。X線は6日目では正常(グレード1)であり、移植2週間後に軽い浸潤(グレード2)のみが存在した(図13C)。
【0143】
図14の上段のパネルは、移植2週間後に摘出した、自然の及び同種移植片WKY肺、及び対照同種移植及びcol(V)摂取同種移植ラットからの自然の及び同種移植肺の肉眼的解剖学を示している。同系移植片(左−L)及び自然肺(右−R)は外観が正常であった(図14A)。対照同種移植片レシピエント中の移植肺は、自然肺と比較して暗褐色の色、萎縮していた(図14B)。対照的に、col(V)摂取同種移植片レシピエントの移植された左肺(図14C)は自然の(正常)又は同系移植片肺(図14A)の外観を有していた。
【0144】
同種移植片BAL液におけるより少ないPMN及びリンパ球、胸部X線での同種移植片におけるあまりひどくない浸潤、及び保存された肉眼的解剖学は、移植に先立ってcol(V)を摂取させることは、拒絶病態の発生を下方調節することを示唆している。図14の下段のパネルは、移植2週間後の対照同系移植片、対照同種移植片及びcol(V)摂取同種移植片の代表的な組織学を示している。全ての対照同系移植片肺は、拒絶の徴候がない正常組織学を有していた(図14D)。対照同種移植片は、重度の急性拒絶と一致する広範な血管周囲、気管支周囲及び肺胞単核細胞浸潤を明らかにした(図14E)。対照的に、col(V)摂取同種移植片肺においては、軽度から中程度の血管周囲及び気管支周囲のみしか検出されなかった(図14F)。
【0145】
図15のデータは移植2週間後での拒絶病態の段階付けを示している。急性拒絶は血管周囲単核細胞浸潤の存在及び程度に従って、A0−A4に段階付けされ、及び気道炎症の程度及び強度に従ってB0−B4に段階付けた(Yousem et al. 1996)。全ての同系移植片対照肺は肺の正常構造が明らかにされた(A0±0、B0±0)。対照同種移植片は重度の血管及び気道拒絶を有していた(それぞれA3.8±0.2、B4±0)。対照的に、col(V)摂取同種移植片は軽度から中程度の血管及び気道拒絶(それぞれA2.8±0.2、B2.6±0.2)(対照同種移植片と比較してAスコアについては*p<0.028及びBスコアについては†p<0.009)(図15、表3)を示した。実験は、coI(II)及びcol(XI)の摂取が対照同種移植片と比較して同種移植片病態の発生に効果がないことを示している(図15、表3)。これらのデータは、col(V)を摂取させることは急性拒絶病態を下方調節することを示している。
【0146】
col(V)を摂取させることが、肺同種移植片拒絶を下方調節することを示しているデータは、経口的に寛容化された肺移植片レシピエントが、ドナー同種抗原に対する減少したDTH応答を有すべきであることを示している。col(V)摂取が同種抗原に対する免疫応答を減少させるかどうかを決定するため、対照同種移植片レシピエント及びcol(V)摂取同種移植片レシピエントは、右耳介に全同種F344脾細胞及び左耳介にPBSを暴露し、DTH応答を決定した。図16に示したように、及び図10で前に示したように、無処置の対照同種移植片レシピエントは、ドナー抗原暴露後に強いDTH応答を有した。対照的に、対照同種移植片レシピエントと比較してcol(V)摂取同種移植片レシピエントにおいては、ドナー抗原に対するDTH応答は有意に軽減されていた(対照同種移植片と比較して*p<0.02)(図16)。
【0147】
col(V)により誘導された同種抗原に対する損なわれた免疫応答は、広範囲の免疫低応答性であり(Faria and Weiner 1999)、免疫寛容ではない。それ故、col(V)摂取WKYラットが他の抗原に応答できるかどうかを決定するため、これらのラットは気管内(1mg/kg)か又は静脈内に(4mg/kg)LPSを受け、それらの用量は暴露24時間後に、肺及び全身的に重度の炎症反応を誘発することが知られている用量であった(O’Leary et al. 1997)。誘発された疾患は肺炎及びグラム陰性菌により起こされる敗血症に類似していた。正常WKYラットと同様に、col(V)摂取WKYラット内の肺内へのLPSの点滴注入又はi.v.注射はBAL示差的細胞計数及び病態に観察されるような重度の病気(波打つ毛皮及び虚脱)及びPMN及びリンパ球の大量の流入を誘発した(データは示されていない)。
【0148】
col(V)摂取により誘導された損なわれた免疫応答が抗原特異的であったかどうかをさらに調べるため、col(V)を摂取させることが非相関微量抗原、BSA、ラットにおけるTリンパ球依存性抗原(Henningsen et al. 1984)に対するDTH応答に影響するかどうかを決定した。無処置及びcol(V)摂取WKYラットを、100μlのアジュバントに溶解した100μgのBSAで刺激し、7日後、右耳介内へ2%熱凝集BSA溶液及び左耳介内へ希釈剤を接種した。非刺激ラットがこれらの研究の対照であった。図24に示したように、非刺激ラットの耳介内へのBSAの注射は有意な耳膨潤を誘発しなかった。対照的に、無摂取刺激WKYラット内にBSAを注射すると、有意な耳膨潤を誘発した(無刺激無処置WKYラットと比較して*p<0.018)(図19)。しかしながら、col(V)摂取はBSAに対するDTH応答に影響しなかった(刺激WKYラットと比較して†p>0.05)(図24)。まとめると、これらのデータは、肺同種移植片拒絶のcol(V)誘導抑制は、広範な免疫低応答性ではなく免疫寛容により仲介されることを示している。
【0149】
経口寛容において、免疫応答を抑制する原因となるサイトカインとして、TGF−β、IL−4及びIL−10の全身的産生がしばしば引用される(Faria and Weiner 1999)。それ故、次ぎに、col(V)により誘導された経口寛容が肺同種移植片拒絶間のTGF−β、IL−4及びIL−10の上方調節された産生と関係しているかどうかを決定した。市販のELISAを利用し、実験群の血清中のTGF−β、IL−4及びIL−10を定量した。図17は、移植2週間後の正常WKYラット、対照同種移植片及びcol(V)摂取同種移植片における血清TGF−βレベルを示す。予期されるように、低レベルのTGF−βが正常WKYラットの血清中に存在した(Ying and Sanders 1998)。対照同種移植片においてはTGF−βのわずかな増加があった。対照的に、col(V)摂取同種移植片の血清中では、TGF−βレベルは著しく上方調節されていた(対照同種移植片レシピエントと比較して*p<0.05)(図17)。IL−4又はIL−10は、同一ラットの血清中では検出不能であった(データは示されていない)。
【0150】
IL−4又はIL−10は血清中に検出されなかったけれども、このことは、ドナー同種抗原に対して下方制御された細胞性免疫応答における、それらの全身的活性を除外するものではない。TGF−β、IL−4及びIL−10が同種抗原に対する免疫応答の抑制に役割を有しているかどうかを決定するため、ドナー抗原に対するDTHアッセイにおいて、これらのサイトカインの中和抗体を利用した。(Bickerstaff et al. 2000)により報告されている手順の改変を利用し、肺移植2週間後、col(V)摂取WKYラットは、5μgのポリクローナル抗TGF−β Ab又は5μgのポリクローナル抗IL−4又はIL−10Abと混合された107照射(3000ラド)ドナー由来F344脾細胞のPBS溶液を、右耳介内に受けた。左耳介は等容積の希釈剤プラス脾細胞を受け、対照部位として働いた。陰性対照のため、col(V)摂取同種移植片の別の群が、脾細胞とともに対照免疫グロブリンを右耳介内に、及び希釈剤プラス脾細胞を左耳介内に受けた。図18に示したように、及び図10で前に示したように、未処置対照同種移植片レシピエントはドナー抗原の暴露後に強いDTH応答を有したが、それはcol(V)摂取同種移植片レシピエントでは有意に減少していた。しかしながら、col(V)摂取同種移植片は、抗TGF−β抗体がドナー脾細胞と混合され、耳の耳介内に注射された場合、有意にDTH応答を回復した[対照免疫グロブリンと混合した抗原を暴露されたcol(V)摂取同種移植片と比較して*p<0.03](図18)。対照的に、ドナー脾細胞とIL−4又はIL−10の中和抗体を混合することはDTH応答を回復することにあまり有効ではなかった[対照免疫グロブリンと混合した抗原を暴露されたcol(V)摂取同種移植片と比較して†‡p>0.05](図18)。対照同種移植片と比較した、抗TGF−β、抗IL−4及び抗IL−10抗体によるcol(V)摂取同種移植片のDTH応答の回復は、それぞれ75.7%、24.3%及び39.9%であった(図18)。
【0151】
実施例6
急性肺同種移植片拒絶の発生への経口寛容についてのcol(V)の効果は用量依存的である。F344(RTllvl)及びWKY(RTl1)雄ラット(200〜250g)はHarlan Sprague Dawley(Indianapolis, Ind.)から購入した。すべての左肺同種移植片(F344)又は同系移植片(WKY)は、以前に記載されているように(Sekine et al. 1997)、WKYレシピエント内に、正所的に移植した。
【0152】
ここで図25、表4を参照すると、この実施例で集められたデータの要約が含まれている。V型コラーゲンは、正常出産のヒト胎盤か又は肺癌切除時に得られた正常肺組織検体から単離された。コラーゲン生化学に広範な専門知識を有するGerald N. Smith Jr., Ph.D. がこれらの研究のために精製V型コラーゲンを提供した。
【0153】
WKYラットは、予備的データ及び投稿原稿に報告されているように、胃経管栄養法を使用し、移植手術に先立ってコラーゲンで免疫した。全てのラットは、表に記載されているように、4又は8日間、1日おきに摂取させた。予備的データと同様に、1週間の摂取後回復期間の後、F344ラット(同種移植)又はWKYラット(同系移植片)の左肺をWKYレシピエント内に正所的に移植した。この実験のラットは免疫抑制剤を受けていない。各コラーゲン型に対する各摂取群には20匹のラットが含まれている。ここで図25、表4を参照すると、本明細書で報告された実施例で使用された実験群の説明が含まれている。
【0154】
重度の拒絶反応が発生する時点である(Matsumura et al. 1995)、移植2週間の終わりに先立った24時間前、10レシピエントラットのドナー抗原に対するDTH応答について試験し、続いて胸部臓器を摘出した。BALを自然の及び移植片肺に対し、それぞれ右及び左主気管支にカニューレを選択的に挿入することにより実施し、37℃で5mlのPBSを点滴注入した(Sekine et al. 1997)。無細胞BALは遠心分離した検体から得られ、上清を−80℃で貯蔵した。血液は大静脈及び心穿刺により集め、検体を遠心分離して血清を分離し、−80℃で貯蔵した。
【0155】
遅延型過敏性(DTH)応答研究は、予備データ及び原稿(Yasufuku et al. 投稿中)に報告されているように、2週間の術後期間の完了に先立つ24時間前、WKYラットの右耳内への照射ドナー(F344)脾細胞の注射により実施した。データは「特異的耳膨潤」として報告された。予備的研究は、最大DTH応答が耳注射24時間後に起こることを示している他の報告(Yamagami et al. 1999)を確認し、それ故、すべてのDTH測定は耳注射24時間後に実施されるであろう。予備的研究は、DTH試験は全身的細胞性又は体液性応答に影響を及ぼさないことを確認した。コラーゲン摂取WKYラットと比較した同系移植片及び同種移植片対照レシピエントにおけるドナー抗原に対するDTH応答を比較することにより、異なった用量のcol(V)がドナー抗原に対するDTH応答に示差的効果を有するかどうかを決定し得る。
【0156】
安楽死後、胸郭臓器を一括して除去し、組織学的に研究した。手短に言うと、胸郭臓器からのサンプルを4%グルタルアルデヒドの気管内点滴注入により固定し、パラフィンに包埋し、5〜7μmの切片とし、および光学顕微鏡による組織学的研究のためヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色した。組織学的病変はヒト肺同種移植片拒絶についての標準組織学的基準(Yousem et al. 1996)により、盲検的様式(Wilkes et al. 1995)で段階付けした。急性拒絶は、血管周囲及び細気管支周囲単核細胞浸潤の変化する強度により特徴付けた(Yousem et al. 1996)。群間の細胞浸潤の相違が、急性拒絶の認められた基準内で説明されるよりも適していることができるので、Sigma Scan ソフトウェアー(Jandel Scientific, Chicago, III)を利用し、デジタル化H&E染色組織切片(細胞/μm2)上に存在する、血管周囲及び細気管支周囲単核細胞を計数することにより浸潤が定量化されるであろう。デジタル化法は現在我々の実験室で使用されている。
【0157】
細胞傷害性Tリンパ球は肺同種移植片拒絶の病態発生に鍵となる役割を有しており(Trulock 1997)、損なわれた細胞傷害活性は、経口寛容が疾患活性を防止する鍵となる機構であることが示されている(Faria and Weiner 1999; Mayer 2000; Garside and Mowat 1997)。col(V)寛容化肺移植片レシピエントにおける減少した拒絶活性が損なわれた抗ドナー細胞傷害活性と関連するかどうかを決定するため、末梢リンパ節細胞を正常F344(ドナー)ラットから単離し、51Cr(New England Nuclear, Boston, Mass.)を負荷し、完全培地中、96ウエル平底プレート(標的細胞、5x103/ウェル)においた。エフェクター細胞(各群中のレシピエントWKYラットからの脾臓Tリンパ球)を種々の比で標的と37℃で4時間インキュベートした(1:1、5:1、10:1及び100:1のE/T比)。純粋な脾臓T細胞(>95%純度)は、抗CD3磁気ビーズ(Dynal Corp, Lake Success, N.Y.)を利用して単離し、及びフローサイトメトリーにより確認した。細胞傷害性は、負荷標的細胞のみからの放出と比較された、各E/T比のエフェクター細胞により誘発された特異的51Cr放出により決定された。
【0158】
他の研究者は、ラット及びヒトにおける肺同種移植片拒絶が肺胞、血管及び細気管支組織に存在する細胞のアポトーシスと関連していること、及びそのアポトーシスが同種移植片受容の間にまれに検出されることを確認している(Blankenberg, et al. 2000)。同種抗原に対する局所的免疫応答が、マウスの血管内皮及び細気管支上皮内でのアポトーシスの誘導を含んでいることも以前に示されている。加えて、ドナー抗原に対するアネルギーを誘導するcol(V)での免疫化は、このモデルにおいて同種抗原誘導アポトーシスを防止する。肺同種移植片におけるアポトーシスを防止する、col(V)誘導経口寛容の能力を決定するため、TdT仲介dUTP Nick End Labeling (TUNEL)アッセイキット(In Situ Cell Death Detection Kit, Boehringer Mannheim, Indianapolis, Ind.)を利用して、移植2週間後の肺同種移植片組織切片におけるアポトーシスを検出した。血管周囲及び細気管支周囲組織中のアポトーシスを起こした細胞の量は、Sigma Scan ソフトウェアー(Jandel Scientific, Chicago, III)を利用し、デジタル化エオシン対比染色組織切片(細胞/μm2)上で定量した。
【0159】
col(V)により誘導された免疫抑制のすべての可能性のあるメディエーター、IL−4、IL−10、TGF−β、CTGF及び一酸化窒素の産生、ならびに移植後合成の時間経過を決定するため、拒絶病態を防止することに最も有効であるcol(V)の用量を、ラットの別の群を摂取するために使用した。簡単に言えば、同種移植片対照ラット及びcol(V)摂取同種移植片レシピエントを移植後2日、4日、6日、8日、10日、12日及び14日目に屠殺し、製造元のプロトコルによるELISAにより(R&D Systems, Minneapolis, Minn.)、IL−4、IL−10、TGF−βの血清レベルを定量した(n=5 各時点で5ラット)。RNaseプロテクションアッセイ(Pharmingen, San Diego, Calif.)を利用して、末梢リンパ節及び脾細胞におけるこれらサイトカインのmRNAを検出した。対照は、正常WKYラットからの血清、リンパ節及び脾細胞である。
【0160】
対照同種移植片、col(V)摂取同種移植片及び正常ラットの血清中のCTGFレベルは、CTFGの構造及び機能における第一人者であるDr. George Martin, Ph.D., Scientific Director of Fibrogen, San Francisco, Calif. により、ELISAを用いて決定された。Dr. Martinにより提供されたプローブを利用し、末梢リンパ節及び脾臓中のCTGFについてのmRNAを検出するため、ノーザンブロッティングを使用した。タンパク質及びmRNA発現は、IL−4、IL−10及びTGF−βについて記述された同一の時点でアッセイした。
【0161】
血清中の一酸化窒素レベルは、対照同種移植片及びcol(V)摂取同種移植片において上記の種々の時点で、及び上記の移植後の種々の時点で、ならびに正常WKYラットで検出した。安定な代謝亜硝酸塩及び硝酸塩の産生は、血清の分光光度分析を利用するGreiss 反応により決定した(Kallio et al. 1997)。
【0162】
実施例7
慢性肺同種移植片拒絶(閉塞性細気管支炎)の発生における経口寛容についてのCoI(V)用量の効果。病原体フリー、MHC(RTl)不適合雄ラットを本研究に利用した:Fischer 344(F344、RT1lvl)、Brown Norway(BN、RT1n)及びWistar Kyoto(WKY、RTl1)ラット(移植の時点で250−300g)。全てのラットはHarlan Sprague Dawley (Indianapolis, Ind.)から購入し、施設のガイドラインに従ってUniversity School of MedicineのLaboratory Animal Resource Center Indiana (Indianapolis, Ind.)に収容した。
【0163】
II型コラーゲン[col(II)]は、以前に報告されているようにイヌ軟骨から単離した。精製ヒトV型コラーゲン[col(V)]及びXI型コラーゲン[col(XI)]はDr. Jerome Seyer (VA Hospital, Hampton, Va.)から贈与された。コラーゲンは0.005M酢酸(0.5mg/ml)で希釈し、使用されるまで4℃で貯蔵した。
【0164】
WKYラットは、0.5mlの生理食塩水に溶解した10μgのcol(V)溶液を、16ゲージボールポイントステンレススチール動物摂取針(Braintree Scientific, Braintree, Mass.)を利用する胃経管栄養により摂取させた。対照動物には希釈剤のみを摂取させた。8回摂取に対し、動物は一日おきに摂取させた。最後の摂取7日後、これらのラットは肺同種移植片のレシピエントとして利用した。
【0165】
左肺同系移植片(WKY→WKY)又は同種移植片(F344→WKY)の同所性移植は最初に(Marck et al. 1983, 及び Prop et al. 1985)により記述手順を利用し、既に報告されているように実施した。F344→WKY移植モデルは、第二週の終わりまでに重度の拒絶発生が付随した。加えて、このモデルは、再現性よく閉塞性細気管支炎(BO)を発生する、ただ一つの肺移植の動物モデルである。全ての移植群において生存率は90%を上回った。実験期間の間、いずれの時点でも非免疫抑制療法は与えなかった。
【0166】
3つの移植群を研究した:WKYラットからの肺をWKYレシピエントに移植[対照同系移植片];F344肺を希釈剤摂取WKYレシピエントに移植[対照同種移植片];及びF344肺をcol(V)摂取WKYレシピエントに移植[col(V)摂取同種移植片]。レシピエント移植2週及び10週後に屠殺した。
【0167】
遅延型過敏性(DTH)応答は、(Sayegh et al. 1994及び Yamagami et al. 1999)に記載されている方法を改変して決定した。手短に言えば、肺移植10週間後、対照又はcol(V)摂取WKYラットは、26ゲージ注射針を使用するs.c.注射により、右耳介内に、107照射(3000ラド)ドナー由来F344又は第三者(BN)脾細胞の30μlのPBS溶液を受けた。左耳介は等容積の希釈剤を受け、対照部位として働いた。無処置WKYラットは陰性対照であった。無処置又は同種移植片レシピエントWKYラットの別々の群が、15μgのcol(II)、col(V)又はcol(XI)を30μl容量で右耳介内に、希釈剤を左耳介内に注射されて試験された。耳の厚さは、注射直前及び24時間後に盲検様式で、マイクロメーターカリパー(Mitutoyo, Field Tool Supply, Chicago, 111.)で測定した。特異的耳膨潤は以下の式に従って計算した:特異的耳膨潤=(右耳厚さ@24時間−右耳厚さ@0時間)−(左耳厚さ@24時間−左耳厚さ@0時間)x10−3mm。全てのデータは三回の測定の平均として報告されている。
【0168】
DTH部位でのTGF−βの中和は、(Bickerstaff et al. 2000)により記載されている手順を改変して実施した。手短に言えば、肺移植10週間後、col(V)摂取WKYラットは、5μgのポリクローナルニワトリ抗ラットTGF−β Ab(R&D Systems, Minneapolis, Minn.)と混合された107照射(3000ラド)ドナー由来F344脾細胞の30μlのPBS溶液を、右耳介内に受けた。左耳介は等容積の希釈剤を受け、対照部位として働いた。陰性対照のため、col(V)摂取同種移植片の別の群が、5μgの対照ニワトリトリ免疫グロブリン又は対照ヤギ免疫グロブリン(R&D Systems, Minneapolis, Minn.)と混合された107照射(3000ラド)ドナー由来F344脾細胞を右耳介内に、及び希釈剤を左耳介内に受けた。特異的耳膨潤は上記のように計算した。対照免疫グロブリンはDTH応答に何の影響も与えなかった。
【0169】
混合白血球反応は以前に記述されている手順を改変することにより実施した。手短に言えば、抗原提示細胞源(APC)として使用されたF344脾細胞(刺激物質)をマイトマイシンC(Sigma, St. Louis, Mo.)で処理し、種々の比で、WKYラットからのリンパ節T1リンパ球(応答物質)(3x105/ウェル)と、96−ウェル平底マイクロタイタープレート(Costar, Cambridge, Mass.)の200μlの培地(RPMI、2mM L−グルタミン、5x10−5M 2−メルカプトエタノール、100U/mlペニシリン、100μl/mlストレプトマイシン、10%熱不活性化ウシ胎児血清)中で同時培養した。37℃(5%CO2)での5日間のインキュベーションが完了する18時間前、各ウェルに1μCi/mlの3H(Amersham Corp., Arlington Heights, 111.)を加えた。培養物を自動化セルハーベスター(Brandel, Gaithersburg, Md.)で収穫し、液体シンチレーションカウンター(Beckman, Arlington Heights, 111.)で分析した。細胞増殖は、3回の培養での[3H]チミジン取り込みの分当たりのカウントの平均として決定され、刺激指数として報告された。別の実験において、刺激物質として実験群のWKYラットからの脾細胞及び応答物質としてF344ラットからのリンパ節Tリンパ球を使用して同じアッセイを実施した。
【0170】
実験群の血清中のTGF−βレベルは、製造元のプロトコルにより、TGF−β1免疫アッセイシステム(Promega, Madison, Wis.)を利用するELISAにより定量した。血清中のIL−4及びIL−10レベルは、製造元のプロトコルにより、Cytoscreenイムノアッセイキット(BioSource International, Camarillo, Calif.)を利用するELISAにより定量した。TGF−β、IL−4及びIL−10アッセイの感度は、それぞれ32、2及び5pg/mlであった。
【0171】
病理学を評価するため、各群からの自然の及び移植された肺を摘出し、固定し、切片化し、染色し、及び既に報告されたように、移植群の予備知識がない盲検的様式で、病理学者(O. W. C.)による標準的判断基準を使用して拒絶病態について段階付けした。
【0172】
対照同種移植におけるDTH及び異なった抗原が暴露された無処置WKYラットについてのデータは正常に分布していないことが観察されたので、相互作用を有するrank-sum二方向ANOVAを利用し、群間の差違を決定した。対照同種移植片及びcol(V)摂取同種移植片間の、ドナー同種抗原に対するDTH応答の相違はマンホイットニーU検定を利用して決定した。MLR及びサントカインの分析については、複数の比較のためのスチューデントt検定を利用した。P値<0.05が有意であると決定された。
【0173】
急性肺同種移植片拒絶は、ドナー抗原ならびにcol(V)に対する免疫応答と関連することが示されている。しかしながら、最近の研究は、ドナー抗原に対する免疫応答が時間とともに減少できることを示唆した。ドナー抗原及びcol(V)に対する免疫応答が肺移植後長期に存在するかどうかを決定するため、F344(ドナー)脾細胞及びcol(V)に対するDTH応答を、F344肺移植片の移植10週後に、WKYラットにおいて試験した。図19は、対照同種移植片レシピエントが無処置WKYラットと比較して、ドナー抗原(F344脾細胞)及びcol(V)に対する有意なDTH応答を有していることを示している(*p<0.05)。有意に、10週目でのドナー抗原及びcol(V)に対するDTH応答は、急性拒絶の間に(移植2週間後)観察されたものと同じであった。CoI(II)又はcol(XI)(対照)は、いずれの時点でも、肺同種移植片レシピエントにおいてDTH応答を誘導しなかった。
【0174】
ドナー由来抗原を使用する経口寛容誘導は、移植2週間後まではドナー抗原に対する細胞性免疫応答を抑制するのに有効であった。加えて、欠損抗原提示が、寛容が免疫応答を変調する別の機構であると報告されている。col(V)摂取がドナー抗原に対する細胞性免疫応答を長期に下方調節するかどうかを次ぎに決定し、col(V)誘導経口寛容が抗原提示に影響する効果を試験した。上記のように、非摂取及びcol(V)が摂取されたWKYラットは、F344肺同種移植片を受けた。移植2週間(急性拒絶の時間)及び10週間(BO発症の時間)後、ラットを屠殺し、リンパ節リンパ球を単離し、ドナー抗原(F344脾細胞)で刺激した。図19は、正常WKYラットからのリンパ節リンパ球又はF344肺同種移植片の移植後2週又は10週目のWKYラットから単離されたリンパ球が、ドナー抗原に対して匹敵する増殖応答を有していたことを示している。対照的に、正常又は対照同種移植片と比較し、col(V)誘導経口寛容は、両方の時点でドナー抗原に対する増殖応答の有意な減少を起こした(*p<0.05)。加えて、col(V)摂取肺同種移植片レシピエントからのリンパ球に対する増殖応答は、2週と比較して10週ではより低かった(*p<0.05、図20)。
【0175】
我々は次ぎに、col(V)誘導経口寛容が抗原提示に影響するかどうかを決定した。手短に言えば、脾細胞(抗原提示細胞源)は正常WKYラット又はF344肺同種移植片の移植後2週又は10週目のWKYラットから単離され、MLRにおいてF344リンパ節リンパ球が増殖するのを誘導するそれらの能力を試験した。図19は、2週及び10週目にcol(V)摂取同種移植片レシピエントから単離された脾細胞が、正常WKYラットから単離された脾細胞に匹敵する増殖を誘導したことを示している。
【0176】
ドナー抗原に対するDTH応答は、臓器移植の多様なげっ歯類モデルにおける拒絶活性と相関すると報告されている。それ故、10週目のcol(V)摂取肺同種移植片レシピエントにおけるドナー抗原に対する減少したDTH応答を示しているデータは、同種移植片における減少した拒絶病態を示唆している。図21は、移植10週後の、F344肺同種移植片を受けたWKYラット(対照同種移植片)、及びF344肺同種移植片を受けたcol(V)摂取WKYラットから摘出された肺同種移植片の肉眼的解剖学及び組織学を示している。対照同種移植片は暗褐色であり、萎縮し及び硬かった(図21A)。対照的に、col(V)摂取WKYラットからの同種移植片は、わずかに変色しているのみでほとんど正常外観を有していた(図21B)。移植10週後、全ての全対照同種移植片は広範囲の間質単核細胞浸潤、線維症及びBOの病理学的病変である肉芽組織による小気道の閉塞を発生した(n=5、図21C)。対照的に、col(V)摂取ラットから摘出された同種移植片は軽度急性拒絶の病態を記述する間質性炎症がなく、軽度の肺胞性浸潤を有するのみであった(グレードA2、n=5、図21D)。
【0177】
IL−4、IL−10又はTGF−βの全身的産生は、経口寛容誘導免疫抑制の機構としてよく報告されている。移植10週後の3つの実験群におけるTGF−βの血清レベルは、図22に示されている。正常WKYラットは血清中に低レベルのTGF−β、F344肺同種移植片を受けたWKYラットでは、わずかに、しかし有意ではなく増加したTGF−βレベルを有していた(対照同種移植-図22)。しかしながら、肺移植に先だってcol(V)を摂取させることは、有意に増加したTGF−βの血清レベルを生じた(図25、*p<0.05)。肺移植なしでcol(V)を摂取させることのみでは、血清TGF−βレベルは増加しなかった(データは示されていない)。IL−4又はIL−10のいずれも、いかなる群の血清にも検出されなかった。
【0178】
同種抗原に対するリンパ球応答の下方調節、及びインビトロでの同種抗原の無傷の提示を示しているデータは、col(V)誘導経口寛容が、インビボでのドナー抗原に対する抑制されたDTH応答にも関連しているに違いないことを示唆している。予期されるように、図23は、対照同種移植片レシピエントがドナー抗原に対する強いDTH応答を有していることを示している。しかしながら、移植に先だってcol(V)を摂取させることは、ドナー抗原に対するDTH応答を有意に減少させた(図26、*p<0.05)。TGF−βの増加した血清レベルがcol(V)誘導経口寛容に寄与しているかどうかを決定するため、以前に報告されているように、TGF−βへの中和抗体を使用してドナー抗原に対するDTH応答を繰り返した。図23は、TGF−βを中和することは、ドナー抗原に対するDTH応答の有意な回復を生じた(*p<0.05、及びDTH応答の75%が対照同種移植片において観察された)。
【0179】
実施例8
図26を参照すると、表5は実施例8で使用された実験群、CoI(V)のα鎖の臭化シアン消化物中に存在するペプチドが急性拒絶の発生を防止するかどうかの決定をリストしている。手短に言えば、これらの実験群は以下のようである:同種移植片対照無傷col(V)摂取2(V)。V型コラーゲンは、剖検で得られたヒト肺から単離された。肺組織を切り刻み、洗浄し及び0.2M NaClを含有する0.5M酢酸に懸濁させ、そしてペプシンにより消化し、遠心分離した検体から上清を吸引し、ペレットを集め、抽出手順を繰り返した。2つの消化物からの上清を合わせ、−70℃で貯蔵した。V型コラーゲンは0.5M酢酸からの示差NaCl沈殿により上清から精製した(Piez et al. 1963)。SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により決定されるおよそ2のα鎖比αl(V)/α2(V)を有するV型調製物が得られるまで、酢酸での可溶化及びNaCl沈殿のサイクルを繰り返す(Woodburye wheat t al. 1989)。α2(V)からのαl(V)の分離は、DEAE−セルロースでのクロマトグラフィーにより達成される(Chiang et al 1980)。αl(V)及びα2(V)鎖をカラムから溶出し、溶出物液中のヒドロキシプロリン含量の決定により定量する。
【0180】
V型コラーゲンのα鎖はさらに、コラーゲンのメチオニン残基を切断する臭化シアンによる消化により分画化する(Miller et al. 1971)。消化が完了した後、サンプルを50倍に希釈し、凍結乾燥して臭化シアンを除去した。消化の程度はポリアクリルアミドゲルでスクリーニングした。個々のペプチドはイオン交換及び分子ふるいクロマトグラフィーの併用により単離した。
【0181】
20匹のWKYラットは胃経管栄養法により、無傷のcol(V)又はαl(V)又はα2(V)からプールされたペプチドを受けた。本実施例における無傷のcol(V)又はペプチドの用量及び摂取計画は、実施例5で無傷のcol(V)について決定されたものと同じである。移植2週間後、各群のラットを屠殺し、及び肺を回収した。
【0182】
実施例9
ここに示されたデータは、本発明の方法は、ヒト移植片レシピエントにおける急性又は慢性拒絶病状発生を防止する又は軽減するのに有効であろうこと、同一ではないにしても同様の療法は特発性肺疾患、又は肺に観察されるコラーゲンに対する自己免疫応答を含む、いずれか他のタイプの肺疾患又は肺障害のための有効な治療でもあるべきであることを示唆する。ヒト対象が移植を受けるためにリストに載せられた場合、該対象は本明細書に記載されたコラーゲン化合物のような同種免疫応答を抑制する分子の有効用量を受け始めるであろうことも意図される。治療を受けている患者は、経口投与により、好ましくは経口摂取か又はレシピエント内への肺内滴下注入により該化合物を受けるであろう。
【0183】
用量は、当業者には公知である多数の因子により決定されるであろう。該対象が移植リストに載せられた時点から移植の時まで、月当たり少なくとも3用量を受けるであろう。ある場合には、月当たり少なくとも3用量を受けるために、用量が4日の間、隔日で投与されるであろう。他の場合、移植に先立って月当たり5回の総容量について、8日の間、隔日で投与されるであろう。他の場合には、該対象は、移植リストに載せられた時点から移植の時まで、週に1回該化合物を受けるであろう。対象に依存して、該対象が移植リストに載せられた時点から移植の時まで、週当たり少なくとも2回、該化合物を投与することができる。
【0184】
実施例10
自己免疫応答を抑制する分子、好ましくはコラーゲン化合物による、移植を受けた、又はコラーゲン、例えば、V型コラーゲンに対する自己免疫を含む肺疾患又は障害を患っているヒト対象の治療は、該対象における急性又は慢性病態を防止する又は軽減するであろうことがさらに企図される。上記のように、該化合物の投与は、経口摂取による、又はレシピエント(患者)内への肺内又は静脈内点滴注入によることを含む多様な手段で投与し得る。
【0185】
再び、投与量は当業者には公知の多数の因子に基づいて当業者により決定されるであろう。ほとんどの場合、所与の患者は少なくとも2ヶ月の間、又は疾患又は障害の病状が改善されるまで、月当たり少なくとも3用量の化合物を受けるようである。これらの用量は、月当たり3用量について、上記のように、4日の間、隔日で1用量の形態を取ることができる。このやり方を当業者により決定される必要なだけ繰り返すことが可能である。もしくは、該対象は、移植後必要とされる月の間、月当たり総計で5用量について8日の間、隔日で1用量を受けることができる。他の側面において、該対象は、当業者により決定されるように、週毎の増加又は週で2倍の用量などを受けることができる。
【0186】
本発明が図及び前記の説明において詳細に図示され及び記述されてきたが、このことは特質において例示的であり制限的ではないと考えるべきであり、好ましい態様のみが示され記述されてきたこと、及び本発明の精神内にくるすべての変更及び修飾は保護されるべきと望まれることを理解されている。その上、本発明が特定の実施例、理論的根拠、説明、及び例示を使用して例示されてきたが、これらの例示及び付随する議論は本発明を制限しているとして説明されているわけではない。この出願で参照されている、全ての特許、特許出願、及び教科書、科学書、出版物などへの参照は、その全体が本明細書において援用される。
【0187】
参照文献
下記の参照文献は、それらが本明細書に示されているものへの例となる手順又は他の詳細な補完を提供する範囲において、特別に本明細書において援用される。
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【図面の簡単な説明】
【0188】
【図1】肺移植片レシピエントの臨床経過に関連した抗col(V)B及びT細胞自己反応性。
【0189】
パネルA. col(II)又はcol(V)に対して試験された患者L3、L41、L31からのBALサンプルから精製されたIgGのウェスタンブロット分析。
【0190】
パネルB. 同じ3人の患者における抗col(V)自己免疫及び移植片機能の時間経過。FEV1(実線、左軸)は各患者について最大(L3について2.3、L41について2.4及びL31について2.8)の100%に調整された。BOSレベル1は灰色の点線で表されている(最大FEV1の80%)。col(V)(黒いバー、右軸)及びcol(II)(白いバー)に対するDTHは陰を付けた領域で表されている負のDTH応答(<25x10−4インチ)で示されている。ウェスタンブロットの結果(パネルAから)はグラフの頂点近くの矩形により表されている。急性拒絶病状発生は*により表されている。
【0191】
パネルC. パネルBで見られたものと同様の反応性のパターンを有する、4人の追加の対象における臨床経過及び抗col(V)反応性の合成。%最大FEVl(各線は個々の移植片レシピエントを表している)、col(V)に対する陽性Ab及び/又はDTH(所与の対象FEVl線上の黒丸)又はcol(V)に対する陰性Ab及び/又はDTH(FEVl線上の白三角)、ならびに対象の死(+)が示されている。BOS1閾値(80%最大FEVl)は灰色の点線で表されている。
【図2】BOS Iが存在しないことに関して抗col(V)反応性を発生させることの効果を試験しているカプランマイヤー分析。移植後326日(パネルA)又は移植後760日(パネルB)を通して良好な移植片機能を有する患者を、その時間に先立ち、col(V)へのそれらの応答に基づいて分割した。パネルA、陽性抗col(V)応答を有するもの(点線)には抗体/BAL又はDTH/末梢血陽性が含まれ;パネルB、DTH応答は前陽性抗col(V)応答を有する患者を同定するために使用される唯一の判断基準である。両方のパネルにおいて、陰性の前抗col(V)応答を有する患者は実線で示されている。col(V)非反応性群及びcol(V)反応性群間の相違は有意であった(p=0.01、パネルA;p=0.03、パネルB)
【図3】移植後肺患者におけるcol(V)に対するDTH応答は特異的であり、前移植には存在しない。
【0192】
パネルA. 移植後肺患者(n=8、いずれの疾患でも)又はグッドパスチャー(Goodpasture's)症候群を有する腎臓患者(GPS、n=5)をcol(II)(白いバー)、col(IV)(斜線を付けたバー)又はcol(V)(黒いバー)に対するDTH応答について試験し、平均膨潤±S.D.で表されている。種々のコラーゲンに対する肺移植片レシピエントの応答間の差違は有意であり(*p=0.001)、GPSと腎臓移植片レシピエントの間の相違もそうであった。
【0193】
パネルB. 多様な肺疾患を有する非移植片レシピエントをcol(II)(白いバー)、又はcol(V)(黒いバー)に対するDTH応答について試験し、平均膨潤±S.D.で表されている。IPF及びいずれか他の疾患を有する患者においては、col(V)に対する応答の相違は有意であった(*p=0.02)。
【0194】
パネルC. IPF及びいずれか他の疾患の移植前診断を有する患者についての時間と移植片機能損失のカプランマイヤー分析。1年移植片生存率相違は有意であった(p=0.05)。log rank解析による総移植片生存率は、群間で有意に異なっていなかった。
【図4】急性拒絶を受けた肺中の沈着を示しているIgGの免疫化学の写真。経気管支生検(TBB)の凍結切片又は正常肺組織はアセトン中で固定し、以前に記載されているように(Wilkes et al - Journal of Immunology 1995)IgGサブタイプ沈着のために染色した。パネルA、B、C及びDは、移植後100日目に急性拒絶グレード2を受けた肺同種移植片から得られたTBBのIgGl、IgG2、gG3及びIgG4サブクラス免疫染色を示している。細気管支周囲結合組織中のIgG2沈着が気管支上皮(矢印)に下にあることに注意されたい。対照的に、同一サンプル中には、IgGl、IgG3又はIgG4沈着は検出されなかった。上皮下基質中のIgG2沈着は、正常肺中及び静止状態移植片状態を有する同種移植片中には存在しない(データは示されていない)。
【図5】肺移植を待っている患者におけるV型コラーゲンに対する遅延型過敏性応答。DTH応答はT細胞活性化のマーカーであり、我々がラット肺移植モデルで報告したことを反している。IPFを有するが、他の形態の肺疾患ではない患者は、V型コラーゲンに対する有意により大きなDTH応答を有する。このことは、これらの患者がこの自己抗原に対して活性化されたT細胞をすでに有していることを示している。
【図6】未処置のWKYラット(A)、既にニワトリ卵リゾチームで免疫されたWKYラット(B)、又は既にV型コラーゲンで免疫されたWKYラット(C)内に移植された肺同系移植片の病態の効果を示している肺組織株の顕微鏡写真。データはcol(V)(HELではない)からの前感作は、移植後30日目の肺の破壊を生じることを示している。いずれのラットも免疫抑制剤又は他の治療を受けていない。データはHEL及びcol(V)群の各々について6匹のラット、未処置群ではSOラット以上を代表している。
【図7】表1、患者層の要約。これらの条件は多様な手術後病態と相関した肺移植法を受けた患者で診断された。
【図8】表2,BOSと関連する多様な因子を追跡しているデータの要約。因子はBOSと関連する。
【図9A】血清サンプル中の抗コラーゲンV抗体の異なったレベルを検出するために設計された、抗体ビーズに基づいたアッセイを使用して集められたデータのグラフ例示。右へのピークのシフトは抗コラーゲンV抗体の高いレベルを示す。左のパネルは患者から集められたデータを表し、右のパネルは多様なレベルの抗コラーゲンV抗体が血清に加えられた対照を表す。
【図9B】血清サンプル中の抗コラーゲンV抗体の異なったレベルを検出するために設計された、抗体ビーズに基づいたアッセイを使用して集められたデータのグラフ例示。右へのピークのシフトは抗コラーゲンV抗体の高いレベルを示す。左のパネルは患者から集められたデータを表し、右のパネルは多様なレベルの抗コラーゲンV抗体が血清に加えられた対照を表す。
【図9C】血清サンプル中の抗コラーゲンV抗体の異なったレベルを検出するために設計された、抗体ビーズに基づいたアッセイを使用して集められたデータのグラフ例示。右へのピークのシフトは抗コラーゲンV抗体の高いレベルを示す。左のパネルは患者から集められたデータを表し、右のパネルは多様なレベルの抗コラーゲンV抗体が血清に加えられた対照を表す。
【図9D】血清サンプル中の抗コラーゲンV抗体の異なったレベルを検出するために設計された、抗体ビーズに基づいたアッセイを使用して集められたデータのグラフ例示。右へのピークのシフトは抗コラーゲンV抗体の高いレベルを示す。左のパネルは患者から集められたデータを表し、右のパネルは多様なレベルの抗コラーゲンV抗体が血清に加えられた対照を表す。
【図9E】血清サンプル中の抗コラーゲンV抗体の異なったレベルを検出するために設計された、抗体ビーズに基づいたアッセイを使用して集められたデータのグラフ例示。右へのピークのシフトは抗コラーゲンV抗体の高いレベルを示す。左のパネルは患者から集められたデータを表し、右のパネルは多様なレベルの抗コラーゲンV抗体が血清に加えられた対照を表す。
【図9F】血清サンプル中の抗コラーゲンV抗体の異なったレベルを検出するために設計された、抗体ビーズに基づいたアッセイを使用して集められたデータのグラフ例示。右へのピークのシフトは抗コラーゲンV抗体の高いレベルを示す。左のパネルは患者から集められたデータを表し、右のパネルは多様なレベルの抗コラーゲンV抗体が血清に加えられた対照を表す。
【図9G】血清サンプル中の抗コラーゲンV抗体の異なったレベルを検出するために設計された、抗体ビーズに基づいたアッセイを使用して集められたデータのグラフ例示。右へのピークのシフトは抗コラーゲンV抗体の高いレベルを示す。左のパネルは患者から集められたデータを表し、右のパネルは多様なレベルの抗コラーゲンV抗体が血清に加えられた対照を表す。
【図9H】血清サンプル中の抗コラーゲンV抗体の異なったレベルを検出するために設計された、抗体ビーズに基づいたアッセイを使用して集められたデータのグラフ例示。右へのピークのシフトは抗コラーゲンV抗体の高いレベルを示す。左のパネルは患者から集められたデータを表し、右のパネルは多様なレベルの抗コラーゲンV抗体が血清に加えられた対照を表す。
【図9I】血清サンプル中の抗コラーゲンV抗体の異なったレベルを検出するために設計された、抗体ビーズに基づいたアッセイを使用して集められたデータのグラフ例示。右へのピークのシフトは抗コラーゲンV抗体の高いレベルを示す。左のパネルは患者から集められたデータを表し、右のパネルは多様なレベルの抗コラーゲンV抗体が血清に加えられた対照を表す。
【図9J】血清サンプル中の抗コラーゲンV抗体の異なったレベルを検出するために設計された、抗体ビーズに基づいたアッセイを使用して集められたデータのグラフ例示。右へのピークのシフトは抗コラーゲンV抗体の高いレベルを示す。左のパネルは患者から集められたデータを表し、右のパネルは多様なレベルの抗コラーゲンV抗体が血清に加えられた対照を表す。
【図9K】血清サンプル中の抗コラーゲンV抗体の異なったレベルを検出するために設計された、抗体ビーズに基づいたアッセイを使用して集められたデータのグラフ例示。右へのピークのシフトは抗コラーゲンV抗体の高いレベルを示す。左のパネルは患者から集められたデータを表し、右のパネルは多様なレベルの抗コラーゲンV抗体が血清に加えられた対照を表す。
【図10】移植2週間後の対照同種移植片レシピエントにおける、ドナー同種抗原、col(V)、及び第三者同種抗原に対するDTH応答の減少。無処置WKYラットが対照であった。動物は107照射(3000ラド)ドナー由来F344脾細胞、第三者(BN)脾細胞又は15μgのcol(V)を右耳介内に、及び左耳介に等容積の希釈剤を受けた。耳の厚さは、注射直前及び24時間後に盲検様式で、マイクロメーターカリパー(Mitutoyo, Field Tool Supply, Chicago, 111.)で測定した。特異的耳膨潤は方法に記載されているように計算した。データは、各群中4匹のラットのmmx10−3での特異的耳介膨潤の平均±SEMで表されている[F344脾細胞又はcol(V)を暴露された無処置WKYラットと比較して*p<0.0001又はcol(V)又はF344脾細胞を暴露された無処置WKYラットと比較して†p<0.0001]。
【図11】図11A、図11B及び図11C。1.5xl05同種(C57BL/6)BAL細胞単独、col(II)、又はcol(XI)(各50μg)の週4回の点滴注入後、4週の間の週1回、続いて週4回のC57BL/6 BAL細胞の点滴注入したBALB/cマウスの肺組織学。図11Aは、C57BL/6マウスからのBAL細胞の点滴注入を受けたBALB/cマウスの肺における細気管支周囲及び血管周囲単核細胞浸潤を示している。同様の病態病変がcol(II)(図11B)又はCoI(XI)の週1回の点滴注入を受けたBALB/cマウスの肺において観察された。
【図12】正常WKY肺、対照同系移植片肺、対照同種移植片肺及びcol(V)摂取同種移植片肺におけるBAL液示差的細胞計数。移植2週間後、移植された肺にBALを行った。示差的細胞計数は光学顕微鏡を利用し、サイトスピン調製液での300細胞/視野を計数することにより決定した。Mac、マクロファージ;Lym、リンパ球;PMN、多形核細胞。データは4正常WKY肺、4対照同系移植片、5対照同種移植片及び5col(V)摂取同種移植片の平均±SEMで表されている(正常又は同系移植片と比較して、PMNについて*p<0.038及びリンパ球について†p<0.000001、対照同種移植片と比較PMNして#p<0.023及びリンパ球と比較して‡p<0.0001)。
【図13】図13A、図13B及び図13C。移植2週間後の移植片レシピエントの連続胸部X線。左肺視野の短い白線(矢頭)は血管吻合使用されたカフを表している。対照同系移植片レシピエントは図13Aに正常胸部X線を示している。対照同種移植片レシピエントのX線は、重篤な浸潤及び完全な不透明化の同種移植片を明らかにし、重度の拒絶を図13Bに示している。Col(V)摂取同種移植片レシピエントは、図13Cに移植2週間後の軽度の浸潤のみを示している。胸部X線は各群5ラットの代表である。
【図14】図14A、図14B、図14C、図14D、図14E及び図14F。上段パネル:移植2週間後の(後面像)対照同系移植片肺、図14A、対照同種移植片肺、図14B及びcol(V)摂取同種移植片肺、図14Cの肉眼的解剖学。各パネルにおいて、左(L)肺は移植片肺であり、及び右(R)肺は自然肺である。対照同種移植片肺(パネルbの「L」)は、自然肺と比較し、暗褐色の色であり、萎縮し、及び堅いコンシステンシーであった。しかしながら、col(V)摂取同種移植片肺(パネルc中の「L」)は同系移植片肺(パネルa中「L」)の外観を有していた。対照同系移植片肺(図14A)は病態病変を示さず、正常WKY肺と同一であった。写真は各群中の5ラットを代表している。下段パネル:移植2週間後の対照同系移植、図14D、対照同種移植片、図14E、及びcol(V)摂取同種移植片、図14F、の組織学である。対照同系移植片は正常な気道及び血管構造を示す(図14D)。対照同種移植片は、重度の拒絶反応と一致する広範な血管周囲、気管支周囲及び肺胞単核細胞浸潤を示す(図14E)。対照的に、col(V)摂取同種移植片は軽度から中程度のみの血管周囲、気管支周囲及び肺胞単核細胞浸潤を示す(図14F)。顕微鏡写真は各群中の5匹のラットを代表している(100x倍率)。
【図15】表3。拒絶病態を段階付けしており、表は移植拒絶について対照から動物モデルまでのデータを含む表である。
【図16】col(V)の経口投与によるドナー同種抗原に対するDTH応答の減少。移植2週間後の対照同種移植片レシピエント及びcol(V)摂取同種移植片レシピエントの右耳介内に107照射(3000ラド)ドナー由来F344脾細胞を、及び左耳介に等容積の希釈剤を暴露した。耳の厚さは、注射直前及び24時間後に盲検様式で、マイクロメーターカリパー(Mitutoyo, Field Tool Supply, Chicago, 111.)で測定し、特異的耳膨潤を計算した。データは、各群中4匹のラットのmmx10−3での特異的耳介膨潤の平均±SEMで表されている(対照同種移植片と比較して*p<0.02)。
【図17】正常WKYラット、対照同種移植片レシピエント及びcol(V)摂取同種移植片レシピエントの血清中のTGF−βレベル。血清中のTFG−βのレベルはELISAにより決定された。データは、各群中4匹のラットの平均±SEMで表されている(対照同種移植片と比較して*p<0.05)。
【図18】TGF−βの中和は、col(V)摂取同種移植片レシピエントにおいてドナー同種抗原に対するDTH応答を回復する。肺移植2週間後、col(V)摂取WKYラットは、5μgのポリクローナル抗TGF−β Ab又は5μgのポリクローナル抗IL−4又はIL−10Abと混合された107照射(3000ラド)ドナー由来F344脾細胞のPBS溶液を、右耳介内に受けた。左耳介は等容積の希釈剤プラス脾細胞を受け、対照部位として働いた。陰性対照のため、col(V)摂取同種移植片の別の群が、脾細胞とともに対照免疫グロブリンを右耳介内に、及び希釈剤プラス脾細胞を左耳介内に受けた。耳の厚さは、注射直前及び24時間後に盲検様式で、マイクロメーターカリパーで測定し、以下に記載されるように特異的耳膨潤を計算した。SpI、脾細胞。データは、各群中4匹のラットのmmx10−3での特異的耳介膨潤の平均±SEMで表されている[対照免疫グロブリンと混合した抗原を暴露したcol(V)摂取同種移植片と比較して*p<0.03及びT;†。‡p>0.05]。対照同種移植片と比較した、抗TFG−β、抗IL−4及び抗IL−10によるcol(V)摂取同種移植片におけるdTH応答の回復は、それぞれ75.7%、24.3%及び39.9%であった。
【図19】移植10週間後の、対照同種移植片レシピエントにおける、ドナー同種抗原、col(II)、col(V)、col(XI)及び第三者同種抗原に対するDTH応答。動物は、107照射(3000ラド)ドナー由来F344脾細胞、第三者(BN)脾細胞又は15μgのcol(II)、col(V)又はcol(XI)を右耳介内に、希釈剤を左耳介に受けた。耳の厚さは、注射直前及び24時間後に盲検様式で、マイクロメーターカリパーで測定し、以下に記載されるように特異的耳膨潤を計算した。SpI、脾細胞。データは、各群中3匹のラットのmmx10−3での特異的耳介膨潤の平均±SEMで表されている[F344脾細胞又はcol(V)を暴露した無処置WKYラットと比較して*p<0.05]。
【図20】混合白血球反応。種々の比のマイトマイシン−C−処理F344脾細胞(刺激物質)と、col(V)を摂取させたWKYラット(正常)又はWKYラットからの3x105リンパ節Tリンパ球(応答物質)をインキュベートした。5日間のインキュベーションが完了する18時間前、細胞を3Hでパルスラベルし、増殖をチミジン取り込みの計数/分(cpm)により決定した。刺激指数は、リンパ節リンパ球単独での増殖と比較した、種々の量の刺激物質により誘発されるリンパ節リンパ球の増殖の倍数に等しい。データは3回の実験を代表している。
【図21】図21A、図21B、図21C及び図21D。上段パネル:移植10週後の、対照同種移植片肺、図21A、及びcol(V)摂取同種移植片肺、図21B、の肉眼的解剖学。各パネル中、左(L)肺は移植片肺であり、及び右(R)は自然肺である。対照同種移植片肺は、自然肺と比較し、暗褐色の色であり、萎縮し、及び堅いコンシステンシーであった。しかしながら、col(V)摂取同種移植片肺はわずかに変色しているがほとんど正常外観を有していた。下段パネル:移植10週後の対照同種移植、図21C及びcol(V)摂取同種移植、図21D、の組織学。対照同種移植片は広範囲の間質単核細胞浸潤、線維症及びBOの病理学的病変である肉芽組織による小気道の閉塞を発生した。対照的に、col(V)摂取同種移植片は軽度急性拒絶の病態を記述する(グレードA2)間質性炎症がなく、軽度の肺胞性浸潤を有するのみであった。顕微鏡写真は各群中の5匹のラットを代表している。
【図22】移植10週後の、正常WKYラット、対照同種移植片レシピエント及びcol(V)摂取同種移植片レシピエントの血清中のTFG−βレベル。血清中のTFG−βのレベルはELISAにより決定された。データは各群中の3匹のラットの平均±SEMを表している(対照同種移植片と比較して*p<0.05)。
【図23】DTH応答におけるTGF−βの中和。col(V)摂取WKYラットは、5μgのポリクローナルニワトリ抗TGF−β Abと混合された107照射(3000ラド)ドナー由来F344脾細胞を右耳介内に、希釈剤を左耳介に受けた。陰性対照として、col(V)摂取同種移植片の別の群が、5μgの対照ニワトリトリ免疫グロブリン又は対照ヤギ免疫グロブリンと混合された107照射(3000ラド)ドナー由来F344脾細胞を右耳介内に、及び希釈剤を左耳介内に受けた。特異的耳膨潤は上記のように決定した。
【図24】無処置及びcol(V)摂取WKYラットにおけるBSAに対するDTH応答。無処置及びcol(V)摂取WKYラットを、アジュバントに溶解した100μgのBSAのs.c.注射で刺激し、7日後、右耳介内へ2%熱凝集BSA溶液及び左耳介内へ希釈剤を暴露した。耳の厚さは、注射直前及び24時間後に盲検様式で、マイクロメーターカリパーで測定し、上記のように特異的耳膨潤を計算した。非刺激WKYラットが対照として働いた。データは、各群中4匹のラットのmmx10−3での特異的耳介膨潤の平均±SEMで表されている(非刺激無処置WKYラットと比較して*p<0.018、及び刺激WKYラットと比較して†p?0.05)。
【図25】表4は実施例6で使用された実験群の一覧表である。
【図26】表5は実施例8に報告されている実験の結果の要旨である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺疾患を評価するための方法であって、
患者からサンプルを得ること;及び
前記患者の少なくとも一つの肺中に存在する少なくとも一つの型のコラーゲンに対する自己免疫の証拠について前記サンプルをアッセイすること:
の工程を含んでなる、前記方法。
【請求項2】
前記コラーゲンが、V型コラーゲン、V型コラーゲンの少なくとも一つのエピトープ及びV型コラーゲンの少なくとも一つの抗原性断片から成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記肺疾患が、特発性肺線維症、成人呼吸窮迫症候群、急性呼吸不全症候群、二次膠原病性脈管疾患及び線維性肺疾患のいずれかの形態から成る群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記疾患が閉塞性細気管支炎である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記アッセイする工程が、
V型コラーゲンの少なくとも一つの抗原性成分を提供すること;及び
前記サンプルの少なくとも一部と前記V型コラーゲンの少なくとも一つの抗原性成分to
を接触させること:
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記アッセイする工程がさらに、前記抗原性成分が前記V型コラーゲンの少なくとも一つの抗原性成分に対する少なくとも一つの抗体と相互作用した場合に生成されるシグナルをモニターすることを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
肺疾患を治療する方法であって、
肺中に存在する少なくとも一つの型のコラーゲンに対する自己免疫を有する患者を同定すること;
該自己免疫応答を抑制する少なくとも一つの化合物を提供すること;及び
前記患者に前記化合物の療法的有効量を投与すること:
の工程を含んでなる、前記方法。
【請求項8】
前記コラーゲンが、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン及びVI型コラーゲンから成る群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記コラーゲンがV型コラーゲンである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記疾患が特発性肺線維症、成人呼吸窮迫症候群、急性呼吸促迫症候群、二次膠原病性脈管疾患、線維性肺疾患のいずれかの形態から成る群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記化合物がシクロスポリン、免疫システム調節分子及び免疫システムの成分に対する抗体から成る群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記化合物が、V型コラーゲンの少なくとも一つの抗原性成分である、請求項7に記載の方法
【請求項13】
前記化合物が、肺内点滴注入により患者に投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物が経口摂取により患者に投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
移植された臓器組織を拒絶することについて、増加したリスクがある患者を同定する方法であって、
患者からサンプルを得ること;及び
肺中に存在する少なくとも一つの型のコラーゲンに対する自己免疫の証拠について前記サンプルをアッセイすること:
の工程を含んでなる、前記方法。
【請求項16】
前記サンプルが、血液、血清、間質性肺液、痰、粘液、組織などから成る群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記コラーゲンが、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン及びVI型コラーゲンから成る群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記コラーゲンがV型コラーゲンである、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
閉塞性細気管支炎(BOS)を発生する、増加したリスクがある患者を同定する方法であって、
患者から血液のサンプルを得ること;及び
肺に観察されるコラーゲンの少なくとも一つの型に対する自己免疫反応の証拠について前記血液のサンプルをアッセイすること:
の工程を含んでなる、前記方法。
【請求項20】
前記コラーゲンが、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン及びVI型コラーゲンから成る群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記コラーゲンがV型コラーゲンである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記試験が抗体に基づいたアッセイであり、前記アッセイが、
前記サンプルの少なくとも一部と、コラーゲンの少なくとも一つの抗原性成分に対する抗体に対する抗原とを接触させ;
前記抗原を、前記抗原に対する少なくとも一つの抗体に結合させること、ここで前記抗体は前記サンプル中に存在している;
前記サンプル中の前記抗体の、前記抗原への結合を示す少なくとも一つのシグナルをモニターすること:
の工程を含んでなる、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記抗原が、V型コラーゲン、V型コラーゲンの抗原性成分及びV型コラーゲンの少なくとも一つの抗原性成分の抗原性類似体:から成る群より選択される、請求項19に記載の方法
【請求項24】
肺疾患を評価するためのキットであって、
V型コラーゲンの少なくとも一つの抗原性成分;及び
前記少なくとも一つの抗原性成分が少なくとも一つの抗V型抗体に結合した場合にシグナルを発生する少なくとも一つの部分:
を含んでなるキット。
【請求項25】
前記キットがさらに表面を含み、前記表面は前記少なくとも一つの抗原性成分を結合するために適している、請求項24に記載のキット。
【請求項26】
前記表面が、フィルター、ビーズ、プレート、膜、チップ、スライドなどから成る群より選択される物体の一部である、請求項25に記載のキット。
【請求項27】
前記キットがさらに、レポーター分子、レポーター原子、キット中の抗原に結合された抗体に対する抗体、緩衝液、安定化剤、抗菌剤及びアジュバントから成るリストから選択される化合物の少なくとも一つを含む、請求項24に記載のキット。
【請求項1】
肺疾患を評価するための方法であって、
患者からサンプルを得ること;及び
前記患者の少なくとも一つの肺中に存在する少なくとも一つの型のコラーゲンに対する自己免疫の証拠について前記サンプルをアッセイすること:
の工程を含んでなる、前記方法。
【請求項2】
前記コラーゲンが、V型コラーゲン、V型コラーゲンの少なくとも一つのエピトープ及びV型コラーゲンの少なくとも一つの抗原性断片から成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記肺疾患が、特発性肺線維症、成人呼吸窮迫症候群、急性呼吸不全症候群、二次膠原病性脈管疾患及び線維性肺疾患のいずれかの形態から成る群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記疾患が閉塞性細気管支炎である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記アッセイする工程が、
V型コラーゲンの少なくとも一つの抗原性成分を提供すること;及び
前記サンプルの少なくとも一部と前記V型コラーゲンの少なくとも一つの抗原性成分to
を接触させること:
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記アッセイする工程がさらに、前記抗原性成分が前記V型コラーゲンの少なくとも一つの抗原性成分に対する少なくとも一つの抗体と相互作用した場合に生成されるシグナルをモニターすることを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
肺疾患を治療する方法であって、
肺中に存在する少なくとも一つの型のコラーゲンに対する自己免疫を有する患者を同定すること;
該自己免疫応答を抑制する少なくとも一つの化合物を提供すること;及び
前記患者に前記化合物の療法的有効量を投与すること:
の工程を含んでなる、前記方法。
【請求項8】
前記コラーゲンが、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン及びVI型コラーゲンから成る群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記コラーゲンがV型コラーゲンである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記疾患が特発性肺線維症、成人呼吸窮迫症候群、急性呼吸促迫症候群、二次膠原病性脈管疾患、線維性肺疾患のいずれかの形態から成る群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記化合物がシクロスポリン、免疫システム調節分子及び免疫システムの成分に対する抗体から成る群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記化合物が、V型コラーゲンの少なくとも一つの抗原性成分である、請求項7に記載の方法
【請求項13】
前記化合物が、肺内点滴注入により患者に投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物が経口摂取により患者に投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
移植された臓器組織を拒絶することについて、増加したリスクがある患者を同定する方法であって、
患者からサンプルを得ること;及び
肺中に存在する少なくとも一つの型のコラーゲンに対する自己免疫の証拠について前記サンプルをアッセイすること:
の工程を含んでなる、前記方法。
【請求項16】
前記サンプルが、血液、血清、間質性肺液、痰、粘液、組織などから成る群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記コラーゲンが、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン及びVI型コラーゲンから成る群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記コラーゲンがV型コラーゲンである、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
閉塞性細気管支炎(BOS)を発生する、増加したリスクがある患者を同定する方法であって、
患者から血液のサンプルを得ること;及び
肺に観察されるコラーゲンの少なくとも一つの型に対する自己免疫反応の証拠について前記血液のサンプルをアッセイすること:
の工程を含んでなる、前記方法。
【請求項20】
前記コラーゲンが、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン及びVI型コラーゲンから成る群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記コラーゲンがV型コラーゲンである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記試験が抗体に基づいたアッセイであり、前記アッセイが、
前記サンプルの少なくとも一部と、コラーゲンの少なくとも一つの抗原性成分に対する抗体に対する抗原とを接触させ;
前記抗原を、前記抗原に対する少なくとも一つの抗体に結合させること、ここで前記抗体は前記サンプル中に存在している;
前記サンプル中の前記抗体の、前記抗原への結合を示す少なくとも一つのシグナルをモニターすること:
の工程を含んでなる、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記抗原が、V型コラーゲン、V型コラーゲンの抗原性成分及びV型コラーゲンの少なくとも一つの抗原性成分の抗原性類似体:から成る群より選択される、請求項19に記載の方法
【請求項24】
肺疾患を評価するためのキットであって、
V型コラーゲンの少なくとも一つの抗原性成分;及び
前記少なくとも一つの抗原性成分が少なくとも一つの抗V型抗体に結合した場合にシグナルを発生する少なくとも一つの部分:
を含んでなるキット。
【請求項25】
前記キットがさらに表面を含み、前記表面は前記少なくとも一つの抗原性成分を結合するために適している、請求項24に記載のキット。
【請求項26】
前記表面が、フィルター、ビーズ、プレート、膜、チップ、スライドなどから成る群より選択される物体の一部である、請求項25に記載のキット。
【請求項27】
前記キットがさらに、レポーター分子、レポーター原子、キット中の抗原に結合された抗体に対する抗体、緩衝液、安定化剤、抗菌剤及びアジュバントから成るリストから選択される化合物の少なくとも一つを含む、請求項24に記載のキット。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図9F】
【図9G】
【図9H】
【図9I】
【図9J】
【図9K】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図14E】
【図14F】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【図21D】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図9F】
【図9G】
【図9H】
【図9I】
【図9J】
【図9K】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図14E】
【図14F】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【図21D】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図1】
【公表番号】特表2009−524023(P2009−524023A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550549(P2008−550549)
【出願日】平成19年1月13日(2007.1.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/060533
【国際公開番号】WO2007/120947
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(301046787)インディアナ・ユニバーシティ・リサーチ・アンド・テクノロジー・コーポレーション (24)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月13日(2007.1.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/060533
【国際公開番号】WO2007/120947
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(301046787)インディアナ・ユニバーシティ・リサーチ・アンド・テクノロジー・コーポレーション (24)
【Fターム(参考)】
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