説明

肺癌の治療のための漢方製剤及びその製造方法

本発明は、(a)医薬的に許容される担体と(b)コロハ、オウギ、ホクシャジンおよびテンモンドウを含む原料生薬の有効量の水抽出物あるいは水性有機溶媒抽出物を含有する癌の治療のための組成物を提供する。好ましい組成物はさらにジョテイシ或はセキジョウハクなどの抗癌生薬の抽出物を含有する。本発明は該組成物の製造方法と癌(特に肺癌)の治療のための方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の治療のための医薬製剤に関する。具体的に、コロハエキスを含有する肺癌の治療のための漢方製剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、肺癌に対する治療手段として、化学療法や放射線療法が多いが、治療の過程中に患者はたいへん苦しみ、しかも治療効果は満足なものではない。
【0003】
米国特許4,618,495には、オウギ(Astragali radix)、ケイヒ(Cinnamomi cortex)、ヂオウ(Rehmanniae radix)、シャクヤク(Paeoniae radix)、ジャショウ根(Cnidii rhizoma)、ボウソウジュツ(Atractylodis lanceae rhizoma)、トウキ(Angelicae radix)、ニンジン(Ginseng radix)とカンゾウ(Glycyrrhizae radix)からなる群から選ばれる1種又は多種の原料生薬(crude preparation)から抽出される水抽出物あるいは水性有機溶媒抽出物を含有する癌の治療ではなく、癌の症状を減軽するための製剤が公開されている。
【0004】
米国特許4,613,591には、ミトマイシンC等の薬物の抗癌活性を高め、且つ副作用を減少する組成物が公開されている。その組成物にはオウギ(Astragali radix)、ケイヒ(Cinnamomi cortex)、ヂオウ(Rehmanniae radix)、シャクヤク(Paeoniae radix)、ジャショウ根(Cnidii rhizoma)、ボウソウジュツ(Atractylodis lanceae rhizoma)、トウキ(Angelicae radix)、ニンジン(Ginseng radix)とカンゾウ(Glycyrrhizae radix)などの原料生薬の水抽出物あるいは水性有機溶媒抽出物が含まれている。
【0005】
米国特許6,379,714には、コロハ(fenugreek)を含有する薬物グレードの植物薬が公開されている。当該特許は植物材料を最適に加工して植物の全株又は選ばれる部分の水抽出物あるいは有機抽出物にすることに関する。また、生体材料は全部又は部分的に粉末に加工されてもよい。植物材料の抽出物が、通常、液体の薬物担体に溶解しやすいことから好ましい。しかし、粉末状の植物材料は薬物が固形の形態で投与される(例えば、錠剤やカプセル剤など)多数の用途に適する。
【0006】
米国特許6,495,175には、コロハの種子から有用な物質を得る方法が公開されている。当該特許は、コロハの種子の抽出物を含む食物繊維の重要性、すなわち、それに十分な食物繊維が含まれている食事は発病の防止にも、疾患の治療や調理にも大事だということに関する。繊維不足は例えば、心臓と冠動脈疾患、糖尿病、便秘などの多種の疾患の病因だということが知られている。
【0007】
コロハは既に鼓腸仙痛、赤痢、下痢、慢性咳、糖尿病などの疾患の治療のために用いられている。その種子は強壮・健康食品と思われている。また、分娩後治療や乳母の乳汁分泌の増加にも用いられている。さらに、コロハの種子は脱毛の治療にも用いられていて、それにある国で髪の滋養成分とされている。
【0008】
米国特許6,291,533と6,503,529には、コロハの種子が消化の問題に用いられていることが公開されている。緩下剤として腸を潤滑する効果を発揮する。また、軽度の抗炎症効果を有し、関節炎の症状にも有用である。さらに、当該生薬はコレステロールレベルを下げることもできる。
【0009】
しかしながら、上述の現有技術にはいずれもコロハエキスを薬剤として腫瘍、特に肺癌を治療する用途は公開されていない。
【0010】
以上より、肺癌などの癌を有効に治療する医薬品はまだないため、当該分野で有効的な肺癌の治療及び/又は治療の副作用の減軽が可能な製剤を開発することが切望されている。
(発明の要約)
【0011】
本発明の目的は、有効的に肺癌を治療ことができる製剤及びその製造方法と用途を提供することにある。
【0012】
本発明の第一の目的は、(a)医薬的に許容される担体と(b)コロハ(胡蘆巴)、オウギ(黄蓍)、ホクシャジン(北沙参)とテンモンドウ(天門冬)を含む原料生薬の有効量の水抽出物あるいは水性有機溶媒抽出物を含有する組成物を提供することである。
【0013】
別の好ましい態様において、本発明は該原料生薬がさらにジョテイシ(女貞子)、セキジョウハク(石上柏)或はこれらの組み合わせからなる群から選ばれる抗癌生薬を含有する。
【0014】
別の好ましい態様において、該原料生薬がさらにセキケンセン(石見穿)、ジュウロウ(重楼)、カコソウ(夏枯草)、ビャクカジャゼツソウ(白花蛇舌草)、サンズコン(山豆根)、クジン(苦参)或はこれらの組み合わせからなる群から選ばれる抗癌生薬を含有する。
【0015】
別の好ましい態様において、該原料生薬がさらにバクモンドウ(麦門冬)、コウコラン(絞股藍)、サンシュユ(山茱萸)、インヨウカク(淫羊かく)、ニンジン(人参)、ビャクジュツ(白朮)或はこれらの組み合わせからなる群から選ばれる免疫能力を高める生薬を含有する。
【0016】
別の好ましい態様において、該原料生薬が0.5-5重量部のコロハ、2-20重量部のオウギ、2-10重量部のホクシャジン、1-5重量部のテンモンドウ、0.5-5重量部のジョテイシと1-10重量部のセキジョウハクを含有する。
【0017】
別の好ましい態様において、該原料生薬がさらに1-10重量部のセキケンセン、1-5重量部のジュウロウ、1-5重量部のカコソウ、1-10重量部のビャクカジャゼツソウ、1-5重量部のサンズコン、1-5重量部のクジン或はこれらの組み合わせ、
及び0.5-10重量部のバクモンドウ、0.5-5重量部のコウコラン、0.5-5重量部のサンシュユ、0.5-5重量部のインヨウカク、0.5-5重量部のニンジン、0.5-5重量部のビャクジュツ或はこれらの組み合わせを含有する。
【0018】
別の好ましい態様において、該原料生薬が0.5-5重量部のコロハ、2-20重量部のオウギ、2-10重量部のホクシャジン、1-5重量部のテンモンドウ;
0.5-5重量部のジョテイシ、1-10重量部のセキジョウハク;
1-10重量部のセキケンセン、1-5重量部のジュウロウ;
及び0.5-10重量部のバクモンドウ、0.5-5重量部のコウコラン、0.5-5重量部のサンシュユ、0.5-5重量部のインヨウカクを含有する。
【0019】
別の好ましい態様において、該原料生薬が0.7-3重量部のコロハ、
2.5-10重量部のオウギ、2.5-6重量部のホクシャジン、1.2-3.5重量部のテンモンドウ;
0.7-3重量部のジョテイシ、2.5-6重量部のセキジョウハク;
2-8重量部のセキケンセン、1.2-3.5重量部のジュウロウ;
0.7-5重量部のバクモンドウ、0.7-3重量部のコウコラン、0.7-3重量部のサンシュユ及び0.7-3重量部のインヨウカクを含有する。
【0020】
本発明の第二の目的は、(a)医薬的に許容される担体と(b)コロハ、オウギ、ホクシャジンおよびテンモンドウを含む原料生薬の有効量の水抽出物あるいは水性有機溶媒抽出物を含有する組成物を製造する以下の工程を含む方法を提供することである:
(a)該生薬と水又は30-85%(v/v)のエタノールの水溶液を12-48時間混合して、混合液が得られる;
(b)混合液をろ過してろ過液を得、次いでろ過液のpHが4-8になるように調整し、抽出物が得られる;或は、混合液のpHが4-8になるように調整し、次いで混合液をろ過してろ過液を得、抽出物が得られる;
(c)抽出物が医薬的に許容される担体と混合され、組成物とされる。
【0021】
別の好ましい態様において、工程(b)には得られた抽出物に対する乾燥が含まれている。
【0022】
別の好ましい態様において、該原料生薬がさらにジョテイシ、セキジョウハク或はこれらの組み合わせからなる群から選ばれる生薬;
セキケンセン、ジュウロウ、カコソウ、ビャクカジャゼツソウ、サンズコン、クジン或はこれらの組み合わせからなる群から選ばれる抗癌生薬;
バクモンドウ、コウコラン、サンシュユ、インヨウカク、ニンジン、ビャクジュツ或はこれらの組み合わせからなる群から選ばれる免疫能力を高める生薬を含有する。
【0023】
本発明の第三の目的は、(a)医薬的に許容される担体と(b)コロハを含む原料生薬の有効量の水抽出物あるいは水性有機溶媒抽出物を含有する組成物を治療が必要な対象に投与する腫瘍の治療方法を提供することである。
【0024】
該組成物がさらにオウギ、ホクシャジンおよびテンモンドウを含有することが好ましく、さらにジョテイシとセキジョウハクを含有することがより好ましい。さらに該組成物がセキケンセン、ジュウロウ、カコソウ、ビャクカジャゼツソウ、サンズコン、クジン或はこれらの組み合わせのような抗癌生薬、及びバクモンドウ、コウコラン、サンシュユ、インヨウカク、ニンジン、ビャクジュツ或はこれらの組み合わせのような免疫能力を高める生薬を含有することが最も好ましい。
【0025】
別の好ましい態様において、該有効量は一人一日1-3回、一回にコロハの生薬の乾燥重量で0.5-15g(より好ましくは1-10g)である。
本発明の第四の目的は、本発明の上述組成物とコロハの癌、特に肺癌の治療のための用途を提供する。
(発明の詳細な説明)
【0026】
本発明者らは、コロハ(Semen Trigonellae)の水抽出物あるいは水性有機溶媒抽出物が優れた抗肺癌活性を有し、且つ有効に腫瘍患者の免疫能力を高めることを見出し、これに基づき本発明を完成した。
【0027】
別の好ましい態様において、本発明の抽出物がオウギ(Astragali Radix)、ホクシャジン(Glehniae Radix)、テンモンドウ(Asparagi Radix)、ジョテイシ(Fructus Ligustri Lucidi)、セキジョウハク(Herba Selaginellae Doederleinii)或はこれらの組み合わせからなる原料生薬の水抽出物あるいは水性有機溶媒抽出物を含めてもよい。本発明の抽出物はオウギ、ホクシャジンおよびテンモンドウを含有することがより好ましい。これらの抽出物がより優れた抗肺癌活性を有する。
【0028】
通常、該混合物中の各原料生薬の重量部の値は以下の通りである。

【0029】
別の好ましい態様において、本発明の組成物がさらに他の抗癌生薬の水抽出物あるいは水性有機溶媒抽出物を含んでもよい。適当な抗癌生薬の例はセキケンセン(Herba Salviae Chinensis)、ジュウロウ(Rhizoma Paridis)、カコソウ、ビャクカジャゼツソウ、サンズコン、クジン或はこれらの混合物が含まれるが、これらには限定されてない。
【0030】
通常、これらの別の抗癌生薬の用量は以下の通りである。

【0031】
別の好ましい態様において、本発明の組成物はさらに別の免疫能力を高める生薬の水抽出物あるいは水性有機溶媒抽出物を含んでもよい。適当な抗癌生薬の例はバクモンドウ(Radix Ophiopogonis)、コウコラン(Herba Gynostemmae)、サンシュユ(Fructus Corni)、インヨウカク(Herba Epimedii)、ニンジン(ginseng)、ビャクジュツ(Rhizome of Largehead Atractylodes)或はこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0032】
通常、これらの別の免疫能力を高める生薬の用量は以下の通りである。

【0033】
本発明の抽出物は以下の生薬の混合物で調製することが好ましい。

【0034】
本明細書と請求の範囲で用いられる用語「原料生薬」は以下のとおりに定義されている。
【0035】
コロハ(Semen Trigonellae):マメ科植物のコロハ(Trigonelta foenumgraecum)の乾燥した成熟種子である。
【0036】
オウギ(Astragali Radix或はAstragalus root):マメ科植物のタイツリオウギ(Astragalus membranaceus Bunge)或は他の変種(Leguminosae属)の根である。
【0037】
ホクシャジン(Glehniae Radix):カラカサバナ科植物のハマボウフウ(Glehnia littoralis)の根である。
【0038】
テンモンドウ(Asparagi Radix):ユリ科植物のテンモンドウ(Asparagus cochinchinensis)の根である。
【0039】
ジョテイシ(Fructus Ligustri Lucidi):モクセイ科植物のトウネズミモチ(Ligustrum lucidum Ait)の果実である。
【0040】
セキジョウハク(Herba Selaginellae Doederleinii):イワヒバ科植物のオニクラマゴケ(Selaginella doederleinii Hieron)の全草である。
【0041】
セキケンセン(Herba Salviae Chinensis):クチビルバナ科植物のチュウカサルビア(Salvia chinensis Benth)の全草である。
【0042】
ジュウロウ(Rhizoma Paridis):ユリ科植物のツクバネソウ(Paris polyphylla Smith)或は他の変種の根茎である。
【0043】
バクモンドウ(Radix Ophiopogonis):ユリ科植物のジャノヒゲ(Ophiopogon japonicus Ker-Gawl)の根である。
【0044】
コウコラン(Herba Gynostemmae):ウリ科植物のアマチャヅル(Gynostemma pentaphyllum Makino)の全草である。
【0045】
サンシュユ(Fructus Corni):ミズキ科植物のサンシュユ(Cornus officinalis Seib. et Zucc)の果実の肉である。
【0046】
インヨウカク(Herba Epimedii):メギ科植物のイカリソウ(Epimedium brevicornu Maxim)或は他の変種の地上部分である。
【0047】
カコソウ(Salviae Chinensis Herba):植物のPrunella vulgaris Linn.の蕊或は全草である。
【0048】
ビャクカジャゼツソウ(Herba Hedyotidis Diffusae):植物のHedyotis diffusa Willd.の根を含む全草である。
【0049】
サンズコン(Radix Sophorae Tonkinensis):植物のSophora subprostrata Chun或はその変種の根である。
【0050】
クジン(Radix Sophorae Flavescentis):植物のSophora flavescens Ait.或はその変種の根である。
【0051】
ニンジン(ginseng):植物のPanax ginsengの根である。
【0052】
ビャクジュツ(Rhizome of Largehead Atractylodes):植物のAtractylodes macrocephala Koidzの根茎である。
【0053】
本発明の活性成分(すなわち生薬の抽出物)は、目的の生薬を水又は30-85%(v/v)の適当な水溶性の有機溶媒、例えばアルコール(エタノールが好ましい)を含有する溶媒で抽出し、さらに得られた抽出液をろ過し、次いで限定されるものではないがろ過液を通常の方法(例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥又は濃縮乾燥)で乾燥することにより得られる。本発明の活性成分もそれぞれ抽出した各原料生薬の抽出物を混合することにより、又は抽出生薬の混合物から得られる。
【0054】
抽出は室温で又は加熱条件下で行われるが、4-35℃が好ましく、5-30℃がより好ましい。
【0055】
抽出方法として、以下のパーコレーション法を利用するのが好ましい。
粉末状(平均粒径は200-1000μmであるのが好ましく、250-850μmであるのがより好ましい)の各原料生薬を底部に隔板がある柱状容器(溶媒は上から下へと隔板上の薬粉を流れる)に置き、溶媒(使用量は各生薬の総乾燥重量の4-30倍で、6-20倍が好ましい)として濃度が30-85%(v/v)(40-70%が好ましく、45-65%がより好ましい)であるエタノールの水溶液とする。生薬を溶媒で12-48時間(16-36時間が好ましい)浸漬してからパーコレーションを行ってもよい。パーコレーションの速度として、特に限定されないが、毎分間0.5-10ml/kg生薬であるのが好ましく、毎分間1-5ml/kg生薬であるのがより好ましい。流出液を収集し、そして真空乾燥又は加熱乾燥より濃縮される。通常、濃縮液の重量が生薬の総重量の0.5-1.5倍に、好ましくは0.6-1.2倍になるように濃縮される。濃縮液をろ過し、固形の不純物が除去される。次いで、アルカリでpHが4-8に、好ましくは4.5-7.5になるように調整する。こうして本発明の抽出物(液体)が得られる。
【0056】
別の好ましい態様において、得られた液体の抽出物に香味料(例えば、ショ糖)、防腐剤(例えば、安息香酸ナトリウム)と他の適当な添加剤を加え、本発明の液体の組成物、例え内服液剤などが得られる。
【0057】
また、液体の抽出物を通常の方法(例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥又は濃縮乾燥)で乾燥して、固体の抽出物が得られる。これらの固体の抽出物を製薬分野における適当な助剤と賦形剤とともに混合し、錠剤、カプセル剤、顆粒剤などの剤型としてもよい。
【0058】
通常、本発明の組成物は、本発明の抽出物を適当な担体と混合して得られる。本発明の組成物を調製するための方法として、特に限定されないが、この分野の種々の通常の方法、例えば混合法などが用いられる。
【0059】
本発明の製剤において、活性成分としての上述原料生薬の抽出物及び医薬的に許容される担体又は賦形剤が含有される。
【0060】
本明細書に用いられるように、用語「本発明の組成物」には薬物組成物と健康食品(dietary supplement)が含まれるが、コロハの抽出物が含まれるもの或は基本的にコロハなどの生薬からなるものであればよい。組成物において、本発明のコロハ又はコロハと他の生薬の抽出物は組成物の総重量の0.1-99%、好ましくは1-90%、最も好ましくは5-80%を占める。また、総乾燥生薬として、生薬の乾燥重量で、1gの固形の組成物又は1mL液体の組成物に対して、0.1-10gであるのが好ましく、0.2-5gであるのがより好ましく、0.5-2.5gであるのが最も好ましい。
【0061】
本明細書に用いられるように、用語「医薬的に許容される担体」は治療剤の投与のための担体を表し、各種の賦形剤と希釈剤が含まれる。この用語は自身は必ず必要な活性成分ではなく、且つ投与後の毒性があまりない薬剤の担体を表す。適当な担体は当業者に知られている。Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Pub.Co., N.J.1991)には、医薬的に許容される担体に関する十分な検討がみられる。組成物において、医薬的に許容される担体として、液体、例えば水、塩水、グリセリン、エタノールが含まれてもよい。さらに、これらの担体には補助的な物質、例えば浸潤剤又は乳化剤、pH緩衝物質などが存在してもよい。
【0062】
また、本発明の製剤或は組成物には他の癌の治療又は補助治療のための化合物、例えばシスプラチン(Cisplatin)などが含有されてもよい。本発明の製剤或は組成物は化学療法や放射線療法などの手段と兼用されてもよい。
本発明の組成物には医薬的に許容される添加剤、例えば香味料(例えば、ショ糖、果糖など)、防腐剤(例えば、安息香酸ナトリウムなど)や色素が1種以上含有されてもよい。これらの添加剤はいずれも製薬分野で知られている。
【0063】
本発明の抽出物或は組成物は各種の癌、特に肺癌の治療のために有用である。通常の方法で投与してもよいが、その中に経口投与、筋肉内投与、腹腔内投与、静脈内投与、皮下投与或は局所投与が含まれる(しかし、これらに限定されない)。
薬物組成物を使用する際、安全な有効量のコロハ(或はコロハと他の生薬の混合物)の水抽出物あるいは水性有機溶媒抽出物が哺乳動物に使用される。ここで、当該安全な有効量は通常コロハの生薬の乾燥重量で(生薬混合物を使用する場合、混合物中のコロハで)一人0.1-100g、より好ましくは0.5-50gである。勿論、具体的な投与量は、投与の方法、患者の健康状態等の要素から決められるが、これは熟練した医師の技能の範囲内である。
【0064】
本発明の主な利点は以下の通りである:
(a)コロハエキスの肺癌に対する治療効果が顕著である;
(b)コロハと他の生薬の抽出物を含有する組成物の肺癌に対する治療効果がさらに顕著である。
【0065】
以下、具体的な実施例でさらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するためだけのものであり、本発明の範囲を限定するものではないと理解すべきである。以下の実施例において、具体的な条件が説明されていない実験方法は通常一般の条件に記載された条件やメーカーが薦める条件に従う。
【実施例】
【0066】
製造例1
以下の数量の原料生薬を秤量した。

【0067】
該原料生薬を洗浄し、乾燥し、粉末状(平均粒径は約250-300μm)に粉砕した。粉末を底部に隔板がある柱状容器(溶媒は上から下へと隔板上の薬粉を流れる)に置き、溶媒(使用量は各生薬の総乾燥重量の10倍)として濃度が40%(v/v)であるエタノールの水溶液とした。生薬を溶媒で48時間浸漬してからパーコレーションを行い、パーコレーションの速度は毎分間0.5ml/kg生薬とした。流出液を収集し、そして真空乾燥(0.05MPa未満)により濃縮液の重量が生薬の総重量の0.6倍なるように濃縮した。濃縮液をろ過し、固形の不純物を除去した。次いで、NaOHでpHが5になるように調整して、液体の抽出物を得た。
【0068】
液体の抽出物に最終濃度が5wt%になるようにショ糖を、0.1wt%になるように安息香酸ナトリウムを加えた。得られた内服液剤aは合計1000mLで、1g生薬/1mLであった。
類似の方法でオウギ、ホクシャジン、テンモンドウ、ジョテイシ、サンシュユの抽出物の溶液がそれぞれ得られ、濃度はいずれも1g乾燥生薬/1mLであった。
製造例2
【0069】
以下の数量の原料生薬を秤量した。

製造例2-5
【0070】
下記数量の原料生薬を使用すること以外、製造例1の方法と同様にした。

内服液剤b(実施例2)、c(実施例3)、d(実施例4)、e(実施例5)とf(実施例6)がそれぞれ得られ、ここで、各内服液剤の濃度は1g乾燥生薬/1mL内服液剤であった。
製造例6
【0071】
原料生薬を平均粒径が700-850μmになるように粉砕し、溶媒として濃度が60%(v/v)であるエタノールの水溶液(使用量は各生薬の総乾燥重量の6倍)とすること以外、製造例2の方法と同様にした。生薬を溶媒で20時間浸漬し、内服液剤gを得た。
製造例7
【0072】
パーコレーションの速度は毎分間4ml/kg生薬として、流出液を収集し、そして真空乾燥(0.05MPa未満)により濃縮液の重量を生薬の総重量の1.4倍となるように濃縮すること以外、製造例2の方法と同様にした。濃縮液をろ過し、固形の不純物を除去した。次いで、NaOHでpHが7になるように調整し、液体の抽出物を得た。内服液剤hが得られた。
製造例8
【0073】
生薬混合物にさらに以下のものが含まれること以外、製造例2の方法と同様にした。

内服液剤iが得られた。
製造例9
【0074】
生薬混合物にさらに以下のものが含まれること以外、製造例2の方法と同様にした。

内服液剤jが得られた。
製造例10
【0075】
生薬混合物にさらに以下のものが含まれること以外、製造例2の方法と同様にした。

内服液剤kが得られた。
製造例11
【0076】
生薬混合物の組成を以下の通りとすること以外、製造例2の方法と同様にした。

内服液剤lが得られた。
製造例12
カプセル剤の調製
【0077】
抽出液を真空乾燥(60-70℃)して、固形の抽出物とすること以外、製造例11の方法と同様にした。固形の抽出物を粉砕して、60目篩を通し、デンプンと混合し、カプセルに入れた。当該実施例において、抽出物が組成物の総重量の60%を占めた。
試験例1
コロハの抗癌活性
【0078】
体重18-20g、6-8週齢のC57/BLマウスを用いた(中国江蘇省動物センターから購入)。無菌条件下で、Lewis肺癌細胞とS180肉腫細胞とを1×107/mLの濃度で0.2mL、マウスの右腋に接種した。動物接種の次の日に、ランダムに分けて(10匹/群)、試験群のマウスには毎日実施例1で調製された生薬抽出物を0.4mL(0.4g乾燥生薬に相当)、コントロール群には生理食塩水を0.4mL与えた。14日目に、マウスを屠殺した。通常の方法により、マウスの脾細胞をエフェクターとしてNK細胞の殺傷活性及び腫瘍重量を測定した。
【0079】
その結果、下述の表のように、コロハには優れた腫瘍抑制と免疫能力上昇の効果があることが明らかになった。
【0080】
また、オウギ、ホクシャジン、テンモンドウ、ジョテイシ、サンシュユにも一定の腫瘍抑制及び/或は免疫能力増強の効果がある。

試験例2
組成物の抗癌活性
【0081】
測定を21日目に行い、投与量を毎日0.5mL(各内服液剤の濃度は合計1g乾燥生薬/1mL内服液剤であった)とし、合計0.5gの乾燥生薬に相当すること以外、試験例1と同様の方法で、実施例2-11で調製された各種の抽出物の、腫瘍を有するマウス(Lewis肺癌)に対する抗癌活性において試験した。
【0082】
結果は下述の表に示した。コロハと他の生薬が含有される抽出物にも優れた抗癌効果があることが明らかになった。

試験例3
臨床試験
【0083】
上海中医薬大学龍華医院で臨床試験が行われた。胸部CT或はX線検査及び病理学或は細胞学の検査で原発性肺鱗状細胞癌、肺腺癌又は鱗状細胞腺癌に確認され、まだ手術または放射線療法が行われていない患者から90名のボランティアを選択した。
【0084】
90名の患者をランダムに3群に分けた。下述の表のとおり治療が行われた。

【0085】
結果から、本発明の組成物を使用することにより、顕著に肺癌患者の寿命を延ばす(化学治療群と比べ、p<0.01)とともに、生存質量を高めることができるのが明らかになった。
【0086】
本明細書に記載の全ての文献は本明細書の一部を構成する。また、本発明の上記開示から、当業者は本発明に各種の変更や修飾をすることができ、これらの等価物も同じく本願に添付の請求の範囲に定義された本発明の範囲内にあることが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)医薬的に許容される担体と(b)コロハ、オウギ、ホクシャジンおよびテンモンドウを含む原料生薬の有効量の水抽出物あるいは水性有機溶媒抽出物を含有することを特徴とする組成物。
【請求項2】
該原料生薬がさらにジョテイシ、セキジョウハク或はこれらの組み合わせからなる群から選ばれる抗癌生薬を含有する請求項1記載の組成物。
【請求項3】
該原料生薬がさらにセキケンセン、ジュウロウ、カコソウ、ビャクカジャゼツソウ、サンズコン、クジン或はこれらの組み合わせからなる群から選ばれる抗癌生薬を含有する請求項2記載の組成物。
【請求項4】
該原料生薬がさらにバクモンドウ、コウコラン、サンシュユ、インヨウカク、ニンジン、ビャクジュツ或はこれらの組み合わせからなる群から選ばれる免疫能力を高める生薬を含有する請求項3記載の組成物。
【請求項5】
該原料生薬が0.5-5重量部のコロハ、2-20重量部のオウギ、2-10重量部のホクシャジン、1-5重量部のテンモンドウ、0.5-5重量部のジョテイシと1-10重量部のセキジョウハクを含有する請求項2記載の組成物。
【請求項6】
該原料生薬がさらに1-10重量部のセキケンセン、1-5重量部のジュウロウ、1-5重量部のカコソウ、1-10重量部のビャクカジャゼツソウ、1-5重量部のサンズコン、1-5重量部のクジン或はこれらの組み合わせ;及び
0.5-10重量部のバクモンドウ、0.5-5重量部のコウコラン、0.5-5重量部のサンシュユ、0.5-5重量部のインヨウカク、0.5-5重量部のニンジン、0.5-5重量部のビャクジュツ或はこれらの組み合わせを含有する請求項5記載の組成物。
【請求項7】
該原料生薬が0.5-5重量部のコロハ、2-20重量部のオウギ、2-10重量部のホクシャジン、1-5重量部のテンモンドウ;
0.5-5重量部のジョテイシ、1-10重量部のセキジョウハク;
1-10重量部のセキケンセン、1-5重量部のジュウロウ;及び
0.5-10重量部のバクモンドウ、0.5-5重量部のコウコラン、0.5-5重量部のサンシュユ、0.5-5重量部のインヨウカクを含有する請求項4記載の組成物。
【請求項8】
該原料生薬が0.7-3重量部のコロハ、
2.5-10重量部のオウギ、2.5-6重量部のホクシャジン、1.2-3.5重量部のテンモンドウ;
0.7-3重量部のジョテイシ、2.5-6重量部のセキジョウハク;
2-8重量部のセキケンセン、1.2-3.5重量部のジュウロウ;
0.7-5重量部のバクモンドウ、0.7-3重量部のコウコラン、0.7-3重量部のサンシュユ及び0.7-3重量部のインヨウカクを含有する請求項7記載の組成物。
【請求項9】
(a)医薬的に許容される担体と(b)コロハ、オウギ、ホクシャジンおよびテンモンドウを含む原料生薬の有効量の水抽出物あるいは水性有機溶媒抽出物を含有する組成物を製造する方法において、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
(a)該生薬と水又は30-85%(v/v)のエタノールの水溶液を12-48時間混合して、混合液を得;
(b)混合液をろ過してろ過液を得、次いでろ過液のpHが4-8になるように調整し、抽出物を得るか、或は混合液のpHが4-8になるように調整し、次いで混合液をろ過してろ過液を得て抽出物を得;
(c)抽出物を医薬的に許容される担体と混合し、組成物とする。
【請求項10】
工程(b)で得られた抽出物を乾燥する工程を含む請求項9記載の方法。
【請求項11】
該原料生薬が、さらにジョテイシ、セキジョウハク或はこれらの組み合わせからなる群から選ばれる生薬;
セキケンセン、ジュウロウ、カコソウ、ビャクカジャゼツソウ、サンズコン、クジン或はこれらの組み合わせからなる群から選ばれる抗癌生薬;
バクモンドウ、コウコラン、サンシュユ、インヨウカク、ニンジン、ビャクジュツ或はこれらの組み合わせからなる群から選ばれる免疫能力を高める生薬を含有する請求項9記載の方法。
【請求項12】
(a)医薬的に許容される担体と(b)コロハを含む原料生薬の有効量の水抽出物あるいは水性有機溶媒抽出物を含有する組成物を治療が必要な対象に投与することを特徴とする腫瘍の治療方法。
【請求項13】
該原料生薬がさらにオウギ、ホクシャジン、テンモンドウ、ジョテイシとセキジョウハクを含有する請求項12記載の方法。
【請求項14】
該有効量が一人一日1-3回、一回にコロハの生薬の乾燥重量で0.5-15gである請求項12記載の方法。

【公表番号】特表2007−512219(P2007−512219A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512145(P2005−512145)
【出願日】平成15年12月19日(2003.12.19)
【国際出願番号】PCT/CN2003/001098
【国際公開番号】WO2005/058337
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(506177947)ミン・キ・オンコロジー・チャイニーズ・メディシンズ・インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】MING QI ONCOLOGY CHINESE MEDICINES, INC.
【Fターム(参考)】