説明

胆管前駆細胞および使用方法

【課題】 別個の前駆細胞集団を単離する能力は現代の生物学で重要な問題であった。そうした単離された分化多能の前駆細胞が、所定の器官での完全に分化された細胞の損失もしくは異常な機能と関連する多様な疾患の治療に非常に有用であり得るであろうことが容易に想像され得る。
【解決手段】 本発明は、生存能力のある胆管前駆細胞の本質的に純粋な集団、およびそうした細胞を単離する方法に関する。本発明はさらに、そうした前駆細胞およびそれらの子孫のある治療的用途に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
胚形成の初期段階の間、細胞は分化全能でありかつ多方向の分化が可能である。発達が進行する際に、分化全能細胞は、所定の分化した細胞タイプに分化することが決定されかつ拘束された(committed)ようになる。最終の分化は分化した細胞機能の獲得を伴う。かように、分化された身体細胞は、おそらくゲノムとその微小環境の間の持続された相互作用ならびに細胞−細胞相互作用により、生物体の寿命を通じてそれらの分化した特徴を維持する(ディベラルディノ(DiBerardino)ら、1984、Science 224:946-952;ウェッツ(Wetts)とフレイザー(Fraser)、1988、Science 239:1142-1144;フィシャー(Fisher)、1984、PNAS 81:4414-4418)。
【0002】
別個の系統に分化する前駆細胞の巨大な能力により、これらの単離された分化多能の前駆細胞の継続的な供給源の必要が常に存在している。分化多能の前駆細胞は、例えばヒトの膵もしくは肝でのような所定の器官での完全に分化された細胞の不十分なもしくは異常な機能により特徴づけられる多様な疾患の治療で極めて有用であり得よう。
【発明の開示】
【0003】
発明の要約
本発明は、生存能力のある前駆細胞の本質的に純粋な調製物、およびそうした細胞を単離する方法に関する。本発明はさらにそうした前駆細胞およびそれらの子孫のある用途に関する。
【0004】
一般に、本発明は、細胞成分として、その前駆細胞が培養培地中で増殖が可能である、生存能力のある胆管前駆細胞の本質的に純粋な集団を包含する細胞組成物を特色にする。好ましい態様において、当該細胞組成物は、約20%より少ない、より好ましくは約10%より少ない、最も好ましくは約5%より少ない、系統に拘束された細胞(lineage committed cell)を有する。
【0005】
一般に、本発明の前駆細胞は、消化管例えば肝、膵、胆嚢、腸などの組織を構成する細胞に分化し得る増殖性の細胞である。すなわち、この前駆細胞は、肝、膵、胆嚢もしくは腸の系統の分化された細胞を生じさせ得る。しかしながら、係争中の実施例で記述されたように、主題の方法が造血幹/前駆細胞の集団を単離するのに使用され得る。好ましい態様においては、主題の前駆細胞は分化多能であり、例えば、当該前駆細胞は2種もしくはそれ以上の別個の系統に分化することが可能である。 一態様において、本発明の前駆細胞は、培養培地中の自己再生および膵系統への分化の能力により特徴づけられる。好ましい態様において、当該前駆細胞は、膵島細胞、例えばβ島細胞、α島細胞、δ島細胞もしくはφ島細胞に分化するよう誘導できる。こうした膵前駆細胞は、ある環境で、STF-1のようなホメオドメインタイプ転写因子、PAX6のようなPAX遺伝子(1種もしくは複数)、PTF-1、hXBP-1、HNF遺伝子(1種もしくは複数)、ビリン、チロシンヒドロキシラーゼ、インスリン、グルカゴン、および/もしくはニューロペプチドYの1種もしくはそれ以上の発現により特徴づけられうる。
【0006】
別の態様において、本発明は、本発明の非肝胆管から得られうるような前駆細胞を特色とする。これは培養系で維持される場合に肝細胞に分化する(例えば誘導により)能力により特徴づけられる。例示的な肝前駆細胞は、肝細胞核因子(HNF)転写因子例えばHNF1α、HNF1β、HNF3β、HNF3γ、および/もしくはHNF4、ATBF1、AFP、Islet-1のようなLIMタイプのホメオボックス遺伝子、fkh-1のような「フォークヘッド」転写因子、C/EBP-βのようなCCAATエンハンサー結合タンパク質(C/EBP)、卵形細胞マーカーOV-6、サイトケラチン(タイプ7もしくは19のような)、ムチンSpan-1、OC.2、OC.3、ならびに/またはγ-グルタミルトランスペプチダーゼの1種もしくはそれ以上の発現により特徴づけられうる。
【0007】
さらに別の態様において、本発明は、赤血球、巨核球、単球、顆粒球、および/もしくは好酸球の1種もしくはそれ以上、ならびにBリンパ球およびTリンパ球のような完全に分化されたリンパ球様細胞に分化しうる造血前駆細胞を特色とする。主題の造血前駆細胞のあるものは、c-kit、CD34および/もしくはCD33、ならびにOV-6、CAM5.2および/またはサイトケラチンタイプ7もしくは18のようなマーカーの発現により特徴づけられうる。
【0008】
さらに別の態様において、本発明は、細胞成分として、その前駆細胞が培養培地中で増殖が可能である生存能力のある胆管前駆細胞の本質的に純粋な集団を包含する製薬学的組成物を特色とする。
【0009】
一般に、好ましい前駆細胞は、哺乳動物起源のもの例えばヒトのような霊長類から、ミニブタから、もしくはトランスジェニック哺乳動物から単離された細胞であることができるか、またはそうした細胞の細胞培養系の子孫である。
【0010】
好ましい態様において、主題の前駆細胞は、最低約7日間、より好ましくは最低約14日間、最も好ましくは最低約21日もしくはより長い間、細胞/組織培養系で維持され得る。
【0011】
別の局面において、本発明は、細胞集団として、最低75%(とはいえより好ましくは最低80、90もしくは95%)の、胆管から単離されかつ培養培地中で自己再生が可能な前駆細胞を含む細胞組成物を特色とする。
【0012】
さらに別の局面において、本発明は、細胞集団として、培養培地中での自己再生ならびに肝、膵および胆嚢の系統の構成員への分化の可能な、生存能力のある非肝管前駆細胞から本質的に成る細胞組成物を特色とする。例えば、ある態様において、前駆細胞は、胆嚢管外植片、膵管外植片、総胆管外植片から単離されるか、もしくはそうした細胞の細胞培養系の子孫である。
【0013】
本発明の別の局面は胆管から前駆細胞を単離する方法を特色とする。一般に、当該方法は、哺乳動物の胆管の微小構造を有する単離された細胞の集団、例えば最初の上皮間葉微小構造が維持される微小器官外植片を培養することを規定する。ここで外植片の寸法(dimension)は、最低24時間培養系で維持可能なように単離された細胞の集団を提供し、そして、その細胞集団中にそうした培養条件下で増殖し得る最低1個の前駆細胞を包含する。培養された細胞集団は、作用物質例えば成長因子のような有糸分裂促進剤と接触される。その作用物質は培養された集団で前駆細胞の増殖を引き起こす。その後、その作用物質に応答して増殖する外植片からの前駆細胞が、外植片の残りから新しく現れる芽の直接の機械的分離による、または、外植片の全部もしくは一部の溶解および前駆細胞集団のその後の単離によるように、単離される。
【0014】
別の好ましい態様において、この作用物質は成長因子であり、例えば、この成長因子は、IGF、TGF、FGF、EGF、HGFもしくはVEGFから成る群から選択される。他の態様において、成長因子は、TGFβスーパーファミリーの、好ましくはDVR(dppおよびvg1に関連している)ファミリーのメンバー例えばBMP2および/もしくはBMP7である。
【0015】
別の好ましい態様において、この細胞集団は生物学的抽出物を欠く、例えば血清を欠く培地中で培養される。
【0016】
好ましい態様においては、胆管は総胆管である。
【0017】
別の局面において、本発明は、(i)哺乳動物の胆管の微小構造を有する単離された細胞の集団、例えば最初の上皮間葉微小構造が維持される微小器官外植片を確立すること。ここで、外植片の寸法は、最低24時間培養系中で維持可能なように単離された細胞の集団を提供しかつその培養系中で増殖する能力を有する最低1個の前駆細胞を包含する、(ii)この細胞集団を試験化合物に接触させること、ならびに(iii)その集団での前駆細胞の成長、増殖および/もしくは分化のひとつを検出すること。ここで、試験化合物の非存在下での成長、増殖および/もしくは分化のひとつの程度に関する、試験化合物の存在下での成長、増殖および/もしくは分化のひとつの程度の統計学的に有意の変化は、成長、増殖および/もしくは分化のひとつを調整する試験化合物の能力を指摘する、を包含する、胆管から得られた前駆細胞の成長、増殖および/もしくは分化のひとつを調整する能力について化合物をスクリーニングする方法を特色とする。
【0018】
別の局面において、本発明は、膵前駆細胞もしくはそれから生じる分化された細胞および製薬学的に許容できる担体を包含する製薬学的組成物を対象に導入することを包含する、対象での不十分なインスリン活性により特徴づけられる疾患を治療する方法を特色とする。
【0019】
好ましい態様においては、対象は哺乳動物、例えば霊長類、例えばヒトである。
【0020】
別の好ましい態様において、疾患はインスリン依存性糖尿病例えばタイプI糖尿病である。
【0021】
さらに別の好ましい態様において、膵前駆細胞は、対象に導入された後に、膵島細胞例えばβ島細胞、α島細胞、δ島細胞、もしくはφ島細胞に分化するように誘導される。好ましくは、膵前駆細胞は、対象への導入に先立ち、培養系中で、膵島、例えばβ島細胞、α島細胞、δ島細胞、もしくはφ島細胞に分化するよう誘導される。
【0022】
別の局面において、本発明は、肝前駆細胞および製薬学的に許容できる担体を包含する製薬学的組成物を対象に導入することを含む、対象での不十分な肝機能により特徴づけられる疾患を治療する方法を特色とする。
【0023】
好ましい態様において、対象は哺乳動物、例えば霊長類、例えばヒトである。
【0024】
別の好ましい態様において、疾患は、肝硬変、B型肝炎、C型肝炎、敗血症もしくはELADから成る群から選択される。さらに別の好ましい態様において、肝前駆細胞は、対象に導入された後に肝細胞に分化するように誘導される。好ましくは、肝前駆細胞は、対象への導入に先立ち、培養系中で肝細胞に分化するよう誘導される。
【0025】
本発明の実際は、別に指摘されない限り、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組み換えDNA、および免疫学の慣習的技術を採用することができる。これらは当該技術分野の技術内にある。こうした技術は文献に記述される。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual、第2版、サンブルック(Sambrook)、フリッチュ(Fritsch)とマニアティス(Maniatis)により編(コールド スプリング ハーバー ラボラトリー プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press): 1989);DNA Cloning、第IおよびII巻(グローヴァー(D.N. Glover)編、1985);Oligonucleotide Synthesis(ゲイト(M.J. Gait)編、1984);マリス(Mullis)ら 米国特許第4,683,195号;Nucleic Acid Hybridization(ヘイムズ(B.D. Hames)とヒギンズ(S.J. Higgins)編、1984);Transcription And Translation(ヘイムズ(B.D. Hames)とヒギンズ(S.J. Higgins)編、1984);Culture of Animal Cells(フレッシュニー(R.I. Freshney)、アラン R.リス インク(Alan R. Liss, Inc.)、1987);Immobilized Cells And Enzymes(IRL プレス(IRL Press)、1986);パーバル(B. Perbal)、A Practical Guide To Molecular Cloning (1984);学術論文、Methods In Enzymology(アカデミック プレス インク(Academic Press, Inc.)、ニューヨーク);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(ミラー(J.H. Miller)とカロス(M.P. Calos)編、1987、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory));Methods In Enzymology、第154および155巻(ウ(Wu)ら編)、Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(メイヤー(Mayer)とウォーカー(Walker)、編、アカデミック プレス(Academic Press)、ロンドン、1987);Handbook Of Experimental Immunology、第I〜IV巻(ワイヤ(D.M. Weir)とブラックウェル(C.C. Blackwell)、編、1986);Manipulating the Mouse Embryo、(コールド スプリング ハーバー ラボラトリー プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク、1986)を参照。
【0026】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳述された記述から、および請求の範囲から明らかであろう。
【0027】
発明の詳細な記述
別個の前駆細胞集団を単離する能力は現代の生物学で重要な問題であった。そうした単離された分化多能の前駆細胞が、所定の器官での完全に分化された細胞の損失もしくは異常な機能と関連する多様な疾患の治療に非常に有用であり得るであろうことが容易に想像され得る。例えば、培養系でか、もしくは対象へ、機能をもつβ島細胞へ導入される場合かのいずれかに、その後の分化の可能な単離された前駆細胞を導入する能力は、インスリン依存性糖尿病の治療に重要な含みを有するであろう。同じ様式で、成熟肝細胞に分化する能力を有する精製された肝前駆細胞を送達させる能力は、肝再生の過程でもしくは不十分な肝機能により特徴づけられる疾患の治療に潜在的に有用であり得るとみられる。本発明以前には、培養系でかもしくは対象に導入される場合かのいずれかで、膵、肝、胆嚢、腸もしくは造血の別個の系統へのさらなる分化が可能な消化管組織からの前駆細胞の精製された集団の明らかに確かな供給源は存在しなかった。
【0028】
従って、本発明のある局面は、膵、肝、胆嚢、腸もしくは造血の別個の系統へのその後の分化が可能な前駆細胞の単離された集団、そうした細胞を単離する方法、およびそうした細胞の治療的用途に関する。
【0029】
便宜性のため、特許明細、実施例および付録としてつけられた請求の範囲で採用されるある用語がここに収集される。
【0030】
「培養培地」という用語は、当該技術分野で認識され、かつ、一般に生存細胞の培養に使用されるいずれかの物質もしくは調製物を指す。従って、「組織培養」は、組織例えば器官原基のもしくは成体器官の外植片の、その構造および機能を保存するようなインビトロでの維持もしくは成長を指す。「細胞培養」はインビトロでの細胞の成長を指す。細胞は増殖するとは言え、それらは組織それら自身に組織化しない。
【0031】
主題の微小器官外植片の組織および細胞の培養系の調製物ならびに増幅された前駆細胞集団は多様な体裁を獲得し得る。例えば、「懸濁培養系」は、細胞が適する培地中に懸濁されている際に増殖する培養系を指す。同様に、「連続フロー培養(continuous flow culture)」は、細胞の成長例えば生存能力を維持するための新しい培地の連続的流れ中での細胞もしくは管外植片の培養を指す。「ならし培地」という用語は、例えば、培養細胞と接触してある時間の後に、細胞により産生されそして培養系に分泌されるあるパラクリンおよび/もしくはオートクリン因子を包含するよう培地が変化されるように生じる、培養された細胞/組織を含まない上清を指す。
【0032】
「外植片」および「微小器官外植片」という用語は、身体から取られかつ人工的培地で成長される器官の一部を指す。
【0033】
「組織」という用語は、ある特定の機能を一緒になって遂行する同様に分化した細胞の群もしくは層を指す。
【0034】
「器官」という用語は、組織の2個もしくはそれ以上の隣接する層を指す。この組織の層は細胞−細胞および/もしくは細胞−マトリックスの相互作用の多少の形態を維持して微小構造を形成する。
【0035】
「系統に拘束された細胞」という用語は、もはや分化多能ではないがしかし特定の細胞タイプ例えば膵、肝もしくは腸の細胞に分化するよう誘導されている前駆細胞を指す。
【0036】
「前駆細胞」という用語は、増殖、および、分化されたもしくは分化可能な娘細胞を順に生じさせ得る多数の母細胞を生み出す能力を有するより多くの前駆細胞を生じさせること、が可能である分化の生じていない1個の細胞を指す。本明細書で使用されるような「前駆細胞」という用語はまた、当該技術分野でときに「幹細胞」と称される細胞を包含することも意図される。好ましい態様において、「前駆細胞」という用語は、その子孫(descendants)(子孫(progeny))が、胚の細胞および組織の漸進的な多様化で発生するように、分化により例えば完全に別個の特徴を獲得することによりしばしば異なる方向に分化させる普遍化された母細胞を指す。「胆管前駆細胞」は、胆管の組織中で生じそして例えば肝、膵、腸、胆嚢もしくは造血の系統のような分化された子孫を生じる前駆細胞を指す。
【0037】
本明細書で使用されるような「胆管」という用語は、管の複雑な系、例えば、一般には、新生期のもしくは成体のいずれかの分泌に使用される管構造を指す。この用語は、肝管、胆嚢管および膵管を包含する。「膵管」という用語は、副膵管、背側膵管、主膵管および腹側膵管を包含する。胆管という用語はまた総胆管も包含する。胆管の主な機能は、胆汁および他の材料をこれらの器官から排出させかつ消化管に入れさせることである。
【0038】
本明細書で使用されるような「総胆管」という用語は、肝の胆小管から始まりそして十二指腸の接合部でファーテル(Vater)の乳頭にまでわたる、成人のもしくは新生期のいずれかの胆管の領域を指す。総胆管は肝管、胆嚢管、およびある膵管と連続する。
【0039】
本明細書で使用されるような「非肝胆管」という用語は、非肝管組織である胆管組織、例えば肝管より後側の総胆管のそれらの部分を指す。加えて、この用語は胆嚢管および膵管を包含する。
【0040】
本明細書で使用されるような、前駆細胞に関して「本質的に純粋な」という用語は、細胞集団全体を構成する前駆細胞に関して、最低約75%、好ましくは最低約85%、より好ましくは最低約90%、そして最も好ましくは最低約95%純粋である前駆細胞集団を指す。言い換えれば、「本質的に純粋な」という用語は、その後の培養および増幅に先立ち、最初の増幅されないかつ単離された集団中に、約20%より少ない、より好ましくは約10%より少ない、最も好ましくは約5%より少ない、系統に拘束された細胞を含有する、本発明の前駆細胞集団を指す。
【0041】
本明細書で使用されるような「細胞組成物」という用語は、その調製物が細胞に加えて細胞培養培地のような非細胞成分例えばタンパク質、アミノ酸、核酸、ヌクレオチド、補酵素、抗酸化剤、金属などを包含しうる細胞の調製物を指す。さらに、この細胞組成物は、細胞組成物の増殖もしくは生存能力に影響しないがしかし特定の体裁で細胞を提供するのに使用される成分を例えば被包化もしくは製薬学的調製物のためのポリマー性マトリックスとして有し得る。
【0042】
本明細書で使用されるような「動物」という用語は哺乳動物、好ましくはヒトのような哺乳動物を指す。同様に、本発明の方法により治療されるべき「患者」もしくは「対象」は、ヒトもしくはヒトでない動物のいずれかを意味し得る。
【0043】
下に、好ましい態様において記述されるように、本発明の前駆細胞は膵もしくは肝の前駆細胞である。「膵」という用語は当該技術で認識され、かつ、一般に、胃の後ろ、脾と十二指腸との間に横切って位置している大きな細長いブドウ状の腺を指す。膵の外分泌性機能例えば外部の分泌は消化酵素の供給源を提供する。実際、「パンクレアチン」は、酵素、主としてアミラーゼ、プロテアーゼおよびリパーゼを含有する膵からの物質を指す。この物質は消化の補助として使用される。外分泌性部分は管腔を取り巻くいくつかの漿膜細胞から成る。これらの細胞は、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、カルボキシペプチダーゼ、リボヌクレアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、トリアシルグリセロールリパーゼ、ホスホリパーゼA2、エラスターゼおよびアミラーゼのような消化酵素を合成しかつ分泌する。
【0044】
膵の内分泌性部分はランゲルハンス島から成る。ランゲルハンス島は外分泌性膵内に埋め込まれた細胞の曲線的なクラスターとして現われる。4種の異なるタイプの細胞、α、β、δおよびφが島で同定されている。α細胞は膵島で見出される細胞の約20%を構成し、かつ、ホルモングルカゴンを産生する。グルカゴンはいくつかの組織に作用して摂食の間の間隔で利用可能なエネルギーを作る。肝では、グルカゴンは、グリコーゲンの分解を引き起こし、かつ、アミノ酸前駆体からの糖新生を促進する。δ細胞はソマトスタチンを産生する。ソマトスタチンは膵で作用してグルカゴン放出を阻害しかつ膵の外分泌性分泌を低下させる。ホルモン膵ポリペプチドはφ細胞で産生される。このホルモンは膵の炭酸塩および酵素の外分泌性分泌を阻害し、胆嚢の弛緩を引き起こし、また、胆汁分泌を減少させる。細胞の60〜80%を構成する、島で最も豊富な細胞はβ細胞であり、これはインスリンを産生する。インスリンは、摂食中およびそのすぐ後に生じる過剰の栄養素の貯蔵を引き起こすことが知られている。インスリンの主要な標的器官は肝、筋、およびエネルギーの貯蔵のために分化した脂肪器官である。
【0045】
「膵前駆細胞」という用語は、膵系統の細胞、例えば膵細胞により通常産生されるホルモンもしくは酵素を産生し得る細胞に分化し得る細胞を指す。例えば、膵前駆細胞は、α、β、δもしくはφ島細胞、または外分泌性の原基(fate)の細胞に、少なくとも部分的に分化することを引き起こされうる。本発明の膵前駆細胞はまた、細胞の増殖および分化を促進する条件下での対象への投与に先立ち培養もされ得るとみられる。これらの条件は、その時点で細胞が偽島様の凝集物もしくはクラスターを形成しかつインスリン、グルカゴンおよびソマトスタチンを分泌するようにされ得る、インビトロでの増殖ならびにコンフルエンスを可能にする細胞を培養することを包含する。
【0046】
「肝」という用語は、右側の腹部の上部分、横隔膜のすぐ下の大きな暗赤色の腺を指す。その多方面にわたる機能は、血液の貯蔵および濾過、胆汁の分泌、糖のグリコーゲンへの変換ならびに多くの他の代謝活動を包含する。
【0047】
肝は胆汁を腸に供給する腺である。成体の脊椎動物において、この機能は小さいほうのものであるが、しかし肝は当初は低級の脊索動物で消化腺として発生した。肝全体で、小さな小管のネットワークが、胆汁、すなわち塩、ビリルビン(赤血球からのヘモグロビンが肝で分解される場合に作られる)および脂肪酸の溶液を収集する。胆汁は胆嚢中に蓄積し、これは管を通って小腸中に注ぐ。胆汁は腸で2個の機能を有する。第一に、それは洗浄剤として作用し、脂肪を消化酵素により攻撃され得る小さな小球体に分解する。第二に、そしてより重要には、胆汁塩は腸からの脂肪の吸収を助ける。胆汁の除去はときたま脂肪吸収で困難を引き起こす。
【0048】
腸から血流中に吸収される消化された食物分子は、肝門脈を通って肝に直接進む。これらの分子が身体の残部中へと通り過ぎる前に、肝はそれらの濃度およびそれらの化学構造さえ変化しうる。肝は、そうでなければ毒性の物質を解毒することにおいて極めて重大な役割を演じる。加えて、それは、腸からそれに到達する食物分子を貯蔵し、それらを生化学的に変換し、そしてそれらを制御された速度で血液中に放出して戻す。例えば、肝はホルモンインスリンの影響下に血液からグルコースを取り出し、そしてそれをグリコーゲンとして貯蔵する。血液中のグルコース濃度が低下する場合には、ホルモングルカゴンは、肝にグリコーゲンを分解させかつグルコースを血液中に放出させる。
【0049】
肝はまた、血液タンパク質(例えばアルブミン)の多くも合成し、そしてそれらが必要とされる場合にそれらを血液中に放出もする。加えて、肝は、窒素を含む廃棄物を腎による排泄のために尿素の形態に変換する。腎とともに、肝は、血液が身体の他の器官全てに到達する場合にそれが含有するものを調節することにおいて極めて重要である。肝はこれらの生化学的調整全てをするための身体の主要な器官であるため、重症の肝の損傷もしくは肝の喪失は迅速に致死的である。
【0050】
本明細書で使用されるような「肝前駆細胞」という用語は、肝の実質細胞例えば肝細胞のような肝系統の細胞に分化し得る細胞を指す。肝細胞は身体の最も融通のきく細胞のいくつかである。肝細胞は内分泌性および外分泌性の双方の機能を有し、そしてある物質を合成しかつ蓄積し、他を解毒し、そして他を分泌して、酵素的、移送、もしくはホルモンの活動を遂行する。肝の細胞の主要な活動は、胆汁の分泌、炭水化物、脂質およびタンパク質の代謝の調節、代謝で重要な物質の貯蔵、ホルモンの分解および分泌、ならびに薬物および毒素の変換および分泌を包含する。本発明の肝前駆細胞はまた、細胞の増殖および分化を促進する条件下で、対象への投与に先立ち培養もされ得る。
【0051】
本明細書の「造血細胞」という用語は、赤血球、巨核球、単球、顆粒球および好酸級のような完全に分化された骨髄様細胞ならびにBリンパ球およびTリンパ球のような完全に分化されたリンパ球様細胞を指す。かように、造血幹/前駆細胞は、BFU−E(burst forming units-erythroid)、CFU−E(colony forming unit-erythroid)、CFU−Meg(colony forming unit-megakaryocyte)、CFU−GM(colony forming unit-granulocyte-monocyte)、CFU−Eo(colony forming unit-eosinophil)、およびCFU−GEMM(colony forming unit-granulocyte-erythrocyte-megakaryocyte-monocyte)のような、それからこれらの分化された細胞が発生する多様な造血前駆細胞を包含する。
【0052】
ある用語が上に述べられたため、本発明の一局面は微小器官の外植片例えば管組織外植片から前駆細胞を単離する方法を特色とすることが言及される。主題の方法の顕著な特徴は、それから別個の前駆細胞集団が増幅され得る供給源としての特定された外植片の使用に関する。例えば、下に記述されるように、先祖の供給源の管組織外植片は、好ましくは、外植片組織が培養系で延長された時間その微小構造および生物学的機能を維持することを可能にする寸法をもって得られる。例えば、外植片の寸法は、正常な組織構造およびインビボで存在する正常な組織機能の少なくとも一部を保存する。そうした組織外植片は、例えば、最小培養培地中で延長された時間(例えば21日もしくはより長い間)維持され得、また、多様な因子と接触され得る。従って、慎重に限定された条件が、組織外植片中の細胞の別個の集団を選択的に活性化するように培養系で獲得され得る。本発明の前駆細胞は増幅され得、そしてその後、例えばその培養系への限定された成長因子もしくは生物学的抽出物の添加に際しての増殖性の応答に基づき、外植片から単離され得る。
【0053】
一般に、本発明の方法は、哺乳動物の胆管の微小構造を有する単離された細胞集団、例えばその中で源を発する管の最初の上皮間葉微小構造が維持され(ここで外植片の寸法は最低24時間培養系中で維持可能なように単離された細胞集団を提供する)かつその細胞集団中にそうした培養条件下で増殖し得る最低1個の前駆細胞を包含する微小器官の外植片、の培養で開始する段階により胆管外植片から前駆細胞を単離するのに使用され得る。この外植片は、作用物質例えば成長因子もしくは他の生物学的抽出物のような有糸分裂促進剤と接触される。この作用物質は培養された集団で前駆細胞の増殖を引き起こす。その後、その作用物質に応答して増殖する外植片からの前駆細胞が、外植片の残部からの直接の機械的分離による、または、外植片の全部もしくは一部の溶解およびその後の前駆細胞集団の単離によるように単離される。
【0054】
例証する一態様において、特定の管外植片の大きさは、主として、
(i)組織の利用性、および(ii)組織中の全細胞への拡散による栄養素の類似の利用性の必要、に依存することができる。好ましい態様において、管組織外植片は、三次元の器官の全ての細胞に十分な栄養素および酸素の拡散を提供するよう選択される。従って、外植片の大きさは、分化した送達構造もしくは合成基質のない各細胞への最小限レベルの到達可能性の必要条件により決定される。
【0055】
本発明による主題の方法で使用される微小器官培養系の顕著な特徴は、管組織に関してインビボで見出される細胞の微小環境を保存する能力である。本発明は、部分的に、ある環境下で同じ外植片で一緒に提供される間質層および上皮層の双方の細胞の成長が各層の細胞の能動的な増殖を持続させることができるという発見に基づく。さらに、外植片それ自身で提供される細胞−細胞および細胞−マトリックスの相互作用は、細胞の恒常性例えば外植片の培養系での細胞の成熟、分化および分離を支持するのに十分であり、それにより延長された時間、外植片の微小構造および機能を持続する。
【0056】
細胞と非細胞性物質(マトリックス)との間の物理的接触の一例は、上皮細胞とその基底膜との間の物理的接触である。一細胞と別の細胞との間の物理的接触の一例は、例えば細隙結合および接着結合のような細胞間の細胞結合により維持される実際の物理的接触を包含する。一細胞と別の細胞との間の機能的接触の例は、細胞間の電気的もしくは化学的伝達を包含する。加えて、多くの細胞は、局所的に拡散する(パラクリンシグナル伝達およびオートクリンシグナル伝達)かもしくはより離れた場所へ管系により運ばれる(内分泌性シグナル伝達)かのいずれかの化学的メッセージ例えばホルモンを介して他の細胞と通信する。
【0057】
いずれかの特定の理論により拘束されることを願わないが、管外植片のこの微小構造は、例えば血清もしくは成長因子の外因性の供給源のない最小培地での外植片の維持に極めて重要であり得る。なぜなら、管外植片は明らかに、サンプル内の特定の細胞性相互作用から生じるパラクリン因子によりそうした最小培地中で持続され得るからである。さらに、ある成長因子が、前駆細胞以外の細胞を活性化することにより間接的に作用して、その後外植片内での前駆細胞の増殖を引き起こす有糸分裂促進因子を産生しうる可能性もまた存在する。従って、この管外植片は、それらが上皮層および間質層の双方を含み、かつ、インビトロで外植片のこれら2成分の間の物理的および/もしくは機能的な相互作用を維持するよう得られる。
【0058】
しかしながら、「インビトロで物理的および/もしくは機能的な相互作用を維持する」という句は、その中で最低1個の細胞が最低1個の細胞との物理的および/もしくは機能的な接触を顕出させる単離された細胞集団、または、それとともにそれがインビボで物理的および/もしくは機能的な接触にない非細胞性物質を除外することを意図されない。こうした発達の一例は、もちろん、単離された細胞集団の最低1個の細胞の増殖である。
【0059】
本出願を通して強調されるように、本発明の前駆細胞を調製するのに使用される微小器官の培養系は、インビトロで存在する正常の組織構造、例えば最初の上皮間葉の構成を保存する。好ましい態様において、管外植片の細胞集団は、一細胞の別の細胞に対する本来の親和性を保存する様式で、例えば外植片中に存在する多様な細胞の層を保存するようにグループ分けされる。そうした連合は細胞間伝達を促進する。多くのタイプの伝達が動物細胞間で起こる。これはとりわけ、誘導がひとつ(誘導する)の組織もしくは細胞と別の(応答する)組織もしくは細胞との間の相互作用と定義される分化する細胞で重要であり、その結果として応答する細胞が分化の方向で変化を受ける。さらに、誘導性相互作用が胚細胞および成体細胞で発生し、そして形態学的パターンを確立しかつ維持し、ならびに分化を誘導するよう作用し得る(ガードン(Gurdon) (1992) Cell 68: 185-199)。従って、本発明の先祖の増幅方法での使用に従って調製される例証的な微小器官培養系が実施例Iに記述され、かつ、各層中および各層間での一細胞の別の細胞に対する本来の親和性および相互作用を保存するように層の複数性状態を包含する様式でグループ分けされた、上皮細胞および間葉細胞を包含する。
【0060】
源を発する管の細胞−細胞のおよび細胞−マトリックスの構造を保持する管外植片を単離することに加え、外植片の寸法が、その中例えばその微小器官培養系が延長された時間例えば7〜21日もしくはより長い間持続されることを意図される細胞の生存能力に重要である。従って、外植片の寸法は、三次元の微小器官外植片での全ての細胞への十分な栄養素および気体(例えば酸素、二酸化炭素、など)の拡散、ならびにその微小器官中の廃棄物の局在による細胞毒性および付随する死を最小限とするような外植片からの細胞性廃棄物の拡散、を提供するよう選択される。かように、上皮および間葉の双方の成分の必要条件に加え、外植片の大きさは、分化した送達構造もしくは合成基質の非存在下での各細胞への到達可能性の最小レベルの必要条件により決定される。本明細書に記述されるように、この到達可能性は、アレフすなわち外植片の厚さおよび幅から算出される指標が、少なくともおよそ1.5mm-1より大きい場合に維持され得る。本明細書で使用されるような、面積に対する表面の指標「アレフ」は、アレフ=1/x+1/a>1.5mm-1で定義される。ここで、x=ミリメートルでの管外植片の半径の厚さ(radial thickness)そしてa=軸方向の長さである。従って、本発明は、組織外植片の体積に対する表面積の指標が選択された範囲内に維持されることを規定する。体積に対する表面積の指標のこの選択された範囲は、細胞に、それからその外植片が生じたインビボの器官の細胞に類似する様式での拡散による栄養素へのおよび廃棄物処理の道(avenue)への到達を提供する。 アレフの例が表Iに提供される。ここで、例えば、0.1mmの厚さ(x)および1mmの幅(a)を有する外植片は11のアレフ指標を有するであろう。別の例で、x=0.3mmかつa=4mmの場合、アレフは3.48mm−1である。さらに例証するため、出願人は、xが変動されかつaが4mmで一定である場合、培養された外植片での細胞の増殖活動が外植片の厚さが増加すると本質的に低下されることを観察している。従って、900μmの厚さでは、微小器官の培養系での増殖する細胞の数は、300μmの厚さを有する類似の供給源からの組織中より約10倍少ないことが見出された。900μmの厚さを有する組織についてのアレフ指標は1.36mm−1で本明細書に記述される最小より下である一方、300μmの厚さを有する組織についてのアレフ指標は3.58mm−1であり、これは十分に本明細書で定義される範囲内である。
【0061】
【表1】



【0062】
再び、いずれかの特定の理論により拘束されることを願わないが、三次元の培養系により提供される多数の因子が、前駆細胞集団を活性化する主題の方法でのその成功に寄与しうる。すなわち、
(a)上のアレフの算出の使用に関する外植片の大きさの適切な選択、三次元マトリックスが、外植片の全細胞への栄養素の十分な拡散、および外植片の全細胞からの細胞性廃棄物の十分な拡散に適切な、体積に対する表面積の比を提供する。
【0063】
(b)マトリックスの三次元性のため、多様な細胞が単層培養系中の細胞と対照的に能動的に成長し続ける。単層培養系はコンフルエントまで成長し、接触阻害を表し、そして成長しかつ分裂することを停止する。外植片の細胞を複製することによる成長因子および調節因子の合成は、部分的に、培養系での細胞の増殖を刺激することおよび分化を調節することの原因である。
【0064】
(c)三次元マトリックスは細胞性要素例えば上皮間葉微小構造の空間的分布を保持する。これはインビボの相対物組織で見出されるものを厳密に近づける。
【0065】
(d)細胞−細胞および細胞−マトリックスの相互作用が細胞の誘導および/もしくは成熟に伝導性の局在化された微小環境の確立を可能にしうる。分化された細胞の表現型の維持が成長/分化因子のみならず適切な細胞の相互作用も必要とすることが認識されている。本発明は微小環境を効果的に模倣する。従って、微小器官は、前駆細胞を支持する細胞、前駆細胞への誘導性シグナルを提供する細胞(ある場合は)、および前駆細胞それ自身を維持するのに必要とされうる相互作用を保存する。 さらに例証するため、付録としてつけられた実施例は、その中で総胆管の最初の上皮間葉微小構造が300μmごとの管の横断する切開により調製される微小器官の外植片が、単純な培地(DMEM)中で数週間維持され得、かつ、ある成長因子との接触に際しての成長誘導により本発明の前駆細胞を単離するのに使用され得ることを立証する。
【0066】
動物からの組織を培養するために存在する多数の組織培養系培地が存在する。これらのいくつかは複雑であり、そしていくつかは単純である。管外植片は複雑な培地中で成長しうることが期待され得る一方、一般に、その外植片は、外植片中のある先祖集団の活性化の終わりまでより正確な制御を遂げるために、ダルベッコ最小必須培地(DMEM)のような単純な培地中で維持されることが好まれることができる。さらに、その培養系は、血清もしくは下垂体抽出物のような他の生物学的抽出物を含有する培地中で成長されうるとは言え、血清もいかなる他の生物学的抽出物もどちらも上の考察により得られた外植片に必要とされないことが立証されている(U.S.S.N. 08/341,409を参照)。さらに、この外植片は、延長された時間、血清の非存在下に維持され得る。本発明の好ましい態様において、成長因子もしくは他の有糸分裂促進物質は、インビトロの培養系の維持のための一次培地に包含されないが、しかし、後に、前駆細胞の別個の集団の増殖を引き起こすのに使用される。添付された実施例を参照。
【0067】
組織外植片は12もしくは24穴のマイクロプレートのようないずれかの適する培養容器中で維持されることができ、また、例えば5%二酸化炭素中37℃のような、同じ動物から単離された細胞に典型的な培養条件下で維持されうる。この培養系は向上された通気のために振とうされることができ、振とうの速度は例えば12rpmである。
【0068】
管外植片から前駆細胞を単離するために、一般に、この外植片を、外植片中の前駆細胞のひとつもしくはそれ以上の集団の増殖を引き起こす作用物質と接触させることが望ましいことができる。例えば、有糸分裂促進物質例えば有糸分裂および細胞形質転換を誘導する物質は、外植片中の前駆細胞集団を検出するため、および、所望の場合は、その集団の増幅を引き起こすために使用され得る。例証するために、成長因子の精製されたもしくは半精製された調製物が培養系に適用され得る。適用された成長因子に応答する前駆細胞の誘導は前駆細胞の増殖により検出され得る。しかしながら、下に記述されるように、その集団の増幅は、応答性集団を単離するためのある技術を使用するために、大きな程度まで生じる必要はない。
【0069】
さらに他の態様において、管外植片および/もしくは増幅された前駆細胞は、支持細胞層、例えば誘導因子もしくは誘導因子を含有する重合層を分泌する支持細胞の層上で培養され得る。例えば、マトリゲル(Matrigel)層が、添付された実施例で記述されるように、造血前駆細胞の伸展を誘導するのに使用され得る。マトリゲル(コラボレイティヴ リサーチ インク(Collaborative Research Inc.)、マサチューセッツ州ベッドフォード)は、マトリックス、および主としてラミニン、コラーゲンIV、ヘパリン硫酸、プロテオグリカンから成るマウス基底膜タンパク質の抽出物として得られる連合した材料の複雑な混合物であり、また、ニドゲンおよびエンタクチンは、クラインマン(Kleinman)ら、"Basement Membrane Complexes with Biological Activity"、Biochemistry、Vol.25(1986)、312-318ページに記述されたようにEHS腫瘍から調製された。ヒューマトリックス(Humatrix)のような他のそうしたマトリックスが供給され得る。同様に、天然のおよび組み換え的に工作された細胞が速成培養系に支持細胞層として供給され得る。
【0070】
細胞増殖を測定する方法は当該技術分野でよく知られており、また、最も普遍的には、細胞複製のDNA合成の特徴を測定することを包含する。DNA合成を測定するために当該技術分野に多数の方法が存在し、そのいずれも本発明により使用されうる。本発明の一態様において、DNA合成は、免疫蛍光による検出のために放射活性ラベル(3H-チミジン)もしくはラベルされたヌクレオチド類似物(BrdU)を使用して測定されている。
【0071】
しかしながら、DNA合成を測定することに加え、形態学的変化が、応答性の前駆細胞集団を単離するための基礎として信頼され得かつ好ましくは信頼されることができる。例えば、添付された実施例に記述されるように、われわれは、ある成長因子が、肉眼もしくは顕微鏡により容易に検出され得る構造を形成するように管外植片中の前駆細胞の増幅を引き起こすことを観察している。例証的一態様において、増殖およびその後の外植片からの異常肥大(outgrowth)、例えば芽もしくはブレブの形成により成長因子に応答する前駆細胞が容易に検出され得る。別の例証する一態様において、他の構造変化例えば増殖する細胞の光学濃度の変化が対照顕微鏡法を介して検出され得る。
【0072】
多様な技術が、処理された外植片の活性化された前駆細胞を単離するのに採用されうる。前駆細胞に好ましい単離処置は可能な限り少ない細胞死をもたらすものである。例えば、活性化された前駆細胞は、機械的手段例えばピペットで機械的に剪断変形されることにより外植片サンプルから取り出され得る。他の例においては、前駆細胞を、例えば外植片の酵素切断により外植片全体もしくはその副部分から分離させ、その後、例えば親和性分離技術もしくは蛍光活性化細胞分類(FACS)を使用する特定の細胞マーカーに基づく活性化された前駆細胞集団の単離が続くことが可能であることができる。
【0073】
さらに例証するため、下の実施例は管外植片が成長因子応答性の前駆細胞タイプを含有することを立証する。多様な成長因子が管組織外植片内の前駆細胞の別個の集団を誘導/増幅して増殖し得ることがさらに立証される。これは、別個の前駆細胞集団の表面上の特定の成長因子レセプターの存在を指摘する。これは、これらのレセプターの発現が目的の前駆細胞集団に印をつけるため、重要である。モノクローナル抗体が、特定の細胞の系統および/もしくは分化の段階に関連するマーカー(表面膜タンパク質例えばレセプター)を同定するのにとりわけ有用である。主題の前駆細胞の分離の手順は、抗体被覆磁気ビーズを使用する磁気的分離、アフィニティークロマトグラフィー、および固体マトリックス例えばプレートに付着された抗体での「えり分け(panning)」、もしくは他の便宜的技術を包含しうる。正確な分離を提供する技術は蛍光活性化細胞分類を包含する。これは変動する複雑化の程度例えば色チャンネルの複数性状態、低い角度および鈍形の(obtuse)光散乱検出チャンネル、インピーダンスチャンネルなどを有し得る。
【0074】
便宜的には、抗体は、直接の分離を可能にする磁気ビーズ、支持体に結合されたアビジンもしくはストレプトアビジンで取り出され得るビオチン、蛍光活性化細胞ソーターで使用され得る蛍光色素など、のようなマーカーと結合されて、特定の細胞タイプの分離の容易さを可能にしうる。細胞の生存能力に過度に有害でないいかなる技術も採用されうる。
【0075】
例証する一態様において、主題の前駆細胞上に存在する成長因子のレセプターの抗体のいくつかは商業的に入手可能であり(例えば、EGFレセプター、FGFレセプターおよび/もしくはTGFレセプターの抗体)、また、他の成長因子のレセプターに関しては、抗体は当業者によく知られた方法により作成され得る。目的の前駆細胞を単離するのに抗体を使用することに加え、当業者はまた、細胞をラベルするのに成長因子それら自身も使用して例えば「えり分け」の過程を可能にし得る。
【0076】
単離に際しては、本発明の前駆細胞は、以下の様式、すなわち、成長因子に対する応答性、特定の遺伝子発現、そうした細胞の表面上の抗原性マーカー、および/もしくは基礎的な形態学でさらに特徴づけられ得る。
【0077】
例えば、成長因子の応答性の程度、例えば成長因子が応答することができるそれらの濃度範囲、最大および最小の応答、ならびにそれらが応答しうる他の成長因子および条件、が、主題の前駆細胞を特徴づけるのに使用され得る。
【0078】
さらに、単離された前駆細胞は、肝、膵、胆嚢および腸に関する発達する細胞(すなわち幹細胞もしくは前駆細胞)に印をつけることが知られている遺伝子の発現により特徴づけられ得る。
【0079】
例証する一態様において、肝細胞核因子(HNF)転写因子ファミリー例えばHNF1−4は、肝および膵の発達の間の多様な時点で多様な細胞タイプで発現されることが知られている。例えば、前駆細胞は、HNF1α、HNF1β、HNF3β、HNF3γ、および/もしくはHNF4のような1種もしくはそれ以上のHNFタンパク質を発現しうる。ATBF1すなわちα-フェトプロテイン(AFP)の遺伝子発現の調節因子(regulator)(AFPは肝発達の初期に発現され、また、多くの肝癌で再発現される)は肝幹細胞の一過性のマーカーであると考えられる。Islet-1のようなLIMタイプのホメオボックス遺伝子もまた肝の発達の間に発現されることが知られている。Glut2は初期の膵および肝の双方の細胞のマーカーである。fkh−1などのような「フォークヘッド」転写因子のあるものは初期の消化管組織のマーカーであることが理解される。同様に、C/EBP-βのようなCCAATエンハンサー結合タンパク質(C/EBP)ファミリーのメンバーは初期の肝の発達のマーカーである。従って、これらの遺伝子の1種もしくはそれ以上の発現は、肝前駆細胞をさらに特徴づけるのに使用され得る。
【0080】
別の例証する一態様において、STF-1(IPF-1、IDX-1もしくはPDXとしてもまた知られる)のようなホメオドメインタイプの転写因子は、最近、発達する膵の多様な集団に印をつけることが示されている。若干のLIM遺伝子もまた、インスリン遺伝子発現を調節することが示されており、かつ、初期分化された(protodifferentiated)β島細胞のマーカーともまたなるであろう。同様に、PAX6のようなPAX遺伝子のあるものは、膵形成の間に発現され、そしてある膵前駆細胞集団を特徴づけるのに使用されうる。膵前駆細胞の他のマーカーは、膵特異的転写因子PTF-1、およびhXBP-1などを包含する。さらに、HNFタンパク質のあるものは初期の膵発達の間に発現され、そして、膵前駆細胞のマーカーとして使用されうる。
【0081】
腸では、消化管にマッピングされている非常に多くの系統特異的転写因子がたとえ存在しないとしても、例外はHoxB(ホメオボックス遺伝子)の遺伝子ファミリー(およびひょっとすると他者)である。これは細胞タイプ特異的よりはむしろ領域タイプのマーカーであるが、しかし、特定の領域例えば消化管から生じる前駆細胞を特徴づけるのに使用され得る。エラスターゼは十二指腸の発達のいずれかの初期のマーカーであることが知られており、そしてこれによって主題の前駆細胞の候補の初期マーカーとなり得る。
【0082】
主題の造血前駆細胞のあるものは、c-kit、CD34および/もしくはCD33ならびにOV-6、CAM5.2および/またはサイトケラチンタイプ7もしくは18のようなマーカーの発現により特徴づけられうる。
【0083】
主題の前駆細胞はまた、細胞表面上で発現されうる特異的抗原性マーカーもしくは他のマーカー例えばインテグリン、レクチン、ガングリオシド、もしくはトランスポーターを基礎として、または、特定の細胞の形態学を基礎としても特徴づけられ得る。これらの技術の全ては当業者に既知でありかつ利用可能である。例えば、主題の肝および管の前駆細胞のあるものは卵形細胞マーカーOV-6を発現しうる。管の微小器官培養系から単離される他の前駆細胞は、付加的にもしくは代替的に、造血マーカー、サイトケラチン(タイプ7もしくは19のような)、ムチンSpan-1、OC.2、OC.3もしくはγ-グルタミルトランスペプチダーゼを包含する1種もしくはそれ以上のマーカーを発現する。膵細胞を生じさせる前駆細胞は、ビリンおよび/もしくはチロシンヒドロキシラーゼのようなマーカーを発現することができ、ならびにインスリン、グルカゴンおよび/もしくはニューロペプチドYのような因子を分泌することができる。
【0084】
単離されかつ特徴づけられれば、主題の前駆細胞は特定の細胞の系統例えば肝、膵、胆嚢、腸、もしくは造血の系統へのさらなる分化を可能にする条件下で培養され得る。これは発達され得る誘導の典型により達成され得る。例えば、主題の前駆細胞は、対応する胚組織が成体細胞を共発達しかつ共分化するよう指図し得るかどうかをみるために、その胚組織で組み換えられ得る。あるいは、前駆細胞は、細胞の分化を誘導し得る1種もしくはそれ以上の成長因子もしくは分化因子と接触され得る。例えば、細胞はDVRサブファミリーメンバーのようなTGFβで処理され得る。
【0085】
さらに、最小培地での体外移植された胆管断片の延長された生存能力から、管外植片を構成する組織はそれら自身である因子例えばパラクリンおよび/もしくはオートクリンを産生していることが明らかになっている。従って、培養系中の外植片により生み出されたそうした条件付けられた培地が、外植片からの単離の後に培養系中の前駆細胞をさらに維持するのに使用され得る。主題の前駆細胞は、対応する胆管外植片と接触して、もしくはそうした外植片により産生された条件付けられた培地中で培養され得る。
【0086】
別の好ましい態様において、主題の前駆細胞は当該技術分野で使用される多数の再生モデルのひとつ、例えば部分的膵切開術もしくは宿主動物のストレプトゾトシン処理、に移植され得る。
【0087】
従って、本発明の別の局面は、主題の前駆細胞の子孫、例えば、最初の外植片培養系の細胞に由来している細胞に関する。こうした子孫は、前駆細胞のその後の世代、ならびに、例えばインビトロで誘導される外植片からの主題の前駆細胞の単離後にそれらの分化を誘導することにより生み出される、系統に拘束された細胞例えば肝、膵もしくは胆嚢の細胞を包含し得る。
【0088】
本発明のさらに別の局面は、細胞成分として主題の前駆細胞もしくはその子孫の本質的に純粋な調製物を包含する細胞組成物に関する。本発明の細胞組成物は、前駆細胞の本質的に純粋な集団を包含するのみならず、細胞培養系の成分例えばアミノ酸、金属、補酵素因子を包含する培養培地、ならびに例えばそのいくつかが本発明の単離された前駆細胞のその後の分化により生じうる非前駆細胞の小さな集団も包含し得る。さらに、他の非細胞成分は、細胞成分を特定の環境下例えば体内移植、例えば連続培養の支持に適するようにするものを包含する。
【0089】
本明細書に詳細に記述される、本発明の前駆細胞の対象とりわけヒト対象への投与の普遍的な方法は、対象の標的部位への細胞の注入もしくは体内移植を包含するため、本発明の細胞は、対象への細胞の注入もしくは体外移植による導入を促進する送達装置中に挿入され得る。こうした送達装置は、細胞および液体をレシピエントの対象の体内に注入するためのチューブ例えばカテーテルを包含する。好ましい態様において、このチューブは、付加的に、針、例えばそれを通って本発明の細胞が所望の場所で対象に導入され得るシリンジを有する。本発明の前駆細胞は多様な形態でそうした送達装置例えばシリンジ中に挿入され得る。例えば、当該細胞は、そうした送達装置に含有される場合は、溶液に懸濁され得るかもしくは支持体マトリックス中に埋め込まれ得る。本明細書で使用されるような「溶液」という用語は、その中で本発明の細胞が生存可能なままである製薬学的に許容できる担体もしくは希釈剤を包含する。製薬学的に許容できる担体および希釈剤は、生理的食塩液、緩衝水溶液、溶媒および/もしくは分散媒を包含する。こうした担体および希釈剤の使用は当該技術分野でよく知られている。溶液は、好ましくは、滅菌でありそして容易な注射可能性が存在する程度まで流動性である。好ましくは、溶液は、製造および貯蔵の条件下で安定であり、かつ、例えばパラベン類、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどの使用により細菌および真菌のような微生物の汚染する作用に対して保護される。本発明の溶液は、本明細書に記述されるような前駆細胞を、製薬学的に許容できる担体もしくは希釈剤、および必要とされる場合は上に列挙された他の材料に組み込み、その後に濾過滅菌が続くことにより調製され得る。
【0090】
前駆細胞が組み込まれ得るもしくは埋め込まれ得る支持体マトリックスは、レシピエント適合性でありかつレシピエントに対し有害でない生成物に分解するマトリックスを包含する。天然のおよび/もしくは合成の生物分解性マトリックスがそうしたマトリックスの例である。天然の生物分解性マトリックスは、例えば哺乳動物由来の血漿凝塊およびコラーゲンマトリックスを包含する。合成の生物分解性マトリックスはポリ酸無水物、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸のような合成ポリマーを包含する。合成ポリマーの他の例およびこれらのマトリックス中に細胞を組み込むもしくは埋め込む方法は当該技術分野で既知である。例えば米国特許第4,298,002号および同第5,308,701号を参照。これらのマトリックスはインビボで壊れやすい前駆細胞の支持および保護を提供し、そして従って、前駆細胞がレシピエント対象に導入される好ましい形態である。
【0091】
本発明はまた、膵もしくは肝の不十分な機能と関連する多様な疾患の治療に治療的に使用され得る本質的に純粋な前駆細胞も提供する。
【0092】
例証するために、主題の前駆細胞は外分泌性および内分泌性双方の多様な膵疾患の治療で使用され得る。例えば、前駆細胞は、部分的膵切開術例えば膵の一部の摘出の後の修復のために分化された膵細胞の集団を生じさせるのに使用され得る。同様に、こうした細胞集団は、膵炎例えばサブスタンス(substance)中への酵素の漏れにより引き起こされる膵組織の自己分解による疾患のような、膵組織崩壊例えば膵組織の破壊による膵組織損失を再生もしくは置換するのに使用され得る。
【0093】
例証的一態様において、主題の前駆細胞はいずれかのインスリン欠乏疾患に罹っている患者に供給され得る。例えば、毎年、728,00例を越える糖尿病の新しい症例が診断され、そして150,000例のアメリカ人がこの疾患およびその合併症で死亡する。米国での年間の総費用は200億ドルを越える(ランガー(Langer)ら (1993) Science 260:920-926)。糖尿病は、グルコース制御の損失につながる膵島の破壊もしくは機能不全により特徴づけられる。糖尿病は慢性的に高められた血中グルコースレベル(高血糖)の存在により定義される代謝性疾患である。インスリン依存性(タイプI)糖尿病(「IDDM」)は、インスリン産生の必然的な損失を伴う膵β細胞の自己免疫媒介性の破壊から生じ、これは高血糖をもたらす。タイプI糖尿病は生存を確実にするのにインスリン置換療法を必要とする。インスリン非依存性(タイプ2)糖尿病(「NIDDM」)は、最初は、正常より高いレベルの血漿インスリンの存在下(高インスリン血症)の高血糖により特徴づけられる。タイプ2糖尿病では、炭水化物の代謝を制御する組織の過程がインスリンに対する感受性を低下させていると考えられる。タイプ2糖尿病状態の進行は上昇する血中グルコース濃度と関係し、また、グルコース誘発性のインスリン分泌の速度の相対的な低下と結びつけられる。
【0094】
双方の形態の糖尿病での治療の主な目的は同じ、すなわち、可能な限り正常近くへの血中グルコースレベルの低下である。タイプ1糖尿病の治療は置換用量のインスリンの投与を必要とする。対照的に、タイプ2糖尿病の治療はしばしばインスリンの投与を必要としない。例えば、タイプ2糖尿病の初期治療は、スルホニル尿素のような経口血糖降下剤での治療により増される食事および生活習慣の変更に基づきうる。インスリン療法は、しかしながら、とりわけこの疾患の後の段階で、島の消耗から生じうるこの疾患の合併症を最小限にする試みにおいて高血糖の制御を生じさせるのに必要とされうる。
【0095】
より最近、治療への組織工学のアプローチは、通常、免疫拒絶を避けるために膜に被包された健全な膵島を移植することに集束している。3種の一般的なアプローチが動物モデルで試験されている。第一では、管膜が島を包含する囲い中に渦巻状に巻かれる。膜は、順に装置を血管に連結するポリマーゼラチンに連結される。この膜の透過性の、膜を通って前後へのグルコースおよびインスリンの自由な拡散を許すがそれにもかかわらず抗体およびリンパ球の通過を遮断するような操作により、正常血糖がこの装置で処理された膵切除された動物で維持された(サリヴァン(Sullivan)ら (1991) Science 252:718)。
【0096】
第二のアプローチでは、島細胞を含有する中空のファイバーが多糖アルギン酸エステル中に固定された。この装置が糖尿病動物に腹腔内に置かれた場合、血中グルコースレベルが低下され、そして良好な組織適合性が観察された(レイシー(Lacey)ら (1991) Science 254:1782)。
【0097】
最後に、島がアルギン酸エステルもしくはポリアクリル酸エステルから成るマイクロカプセル中に置かれている。いくつかの場合には、これらのマイクロカプセルで処理された動物は2年を越えて正常血糖を維持した(リム(Lim)ら (1980) Science 210:908;オシー(O'Shea)ら (1984) Biochim. Biophys. Acta. 840:133;スガモリ(Sugamori)ら (1989) Trans. Am. Soc. Artif. Intern. Organs 35:791;レヴェスク(Levesque)ら (1992) Endocrinology 130:644;およびリム(Lim)ら (1992) Transplantation 53:1180)。しかしながら、これらの移植戦略の全てはドナーの島の大きな信頼できる供給源を必要とする。
【0098】
本発明の膵前駆細胞は糖尿病の治療に使用され得る。なぜなら、それらは膵系統の細胞例えばβ島細胞に分化する能力を有するからである。本発明の前駆細胞は、これらの細胞が成熟した膵細胞に分化するようさらに誘導し得る条件下でインビトロで培養され得るか、もしくは、それらは対象内に導入されればインビボで分化を受け得る。細胞を被包化する多くの方法が当該技術分野で既知である。例えば、インスリンを産生するβ島細胞の供給源が体内移植可能な中空のファイバー中に被包化される。こうしたファイバーは予め紡糸され得、そしてその後β島細胞を負荷され得るか(エビシャー(Aebischer)ら 米国特許第4,892,538号;エビシャー(Aebischer)ら 米国特許第5,106,627号;ホフマン(Hoffman)ら (1990) Expt. Neurobiol. 110:39-44;イェーガー(Jaeger)ら (1990) Prog. Brain Res. 82:41-46;およびエビシャー(Aebischer)ら (1991) J. Biomech. Eng. 113:178-183)、もしくは、β島細胞についてポリマー性被覆を形成するよう作用するポリマーとともに共押出成形され得る(リム(Lim) 米国特許第4,391,909号;セフトン(Sefton) 米国特許第4,353,888号;スガモリ(Sugamori)ら (1989) Trans. Am. Artif. Intern. Organs 25:791-799;セフトン(Sefton)ら (1987) Biotechnol. Bioeng. 29:1135-1143;およびエビシャー(Aebischer)ら (1991) Biomaterials 12:50-55)。
【0099】
さらに、前駆細胞集団もしくはその分化された子孫のいずれかの形態で体内移植可能な細胞の供給源を提供することに加え、主題の細胞は分泌された因子の産生および精製のための膵細胞の培養系を産生するのに使用され得る。例えば、培養された細胞はインスリンの供給源として提供され得る。同様に、外分泌性の培養系がパンクレアチンの供給源として提供され得る。
【0100】
肝は、幅広い多様性の代謝、循環、毒性、微生物および新生物形成の傷害の攻撃を受けやすい器官であり、そして従って体内で最も頻繁に傷害される器官のひとつである。しかしながら、肝の機能は非常に複雑であるため、その機能を合成的に再創製することは実際上不可能である。肝機能を復活させる一方法は器官全体の移植による。全肝移植はしばしば成功するとは言え、それはドナーの希少性により年あたり約2200件の移植で安定水準に達している。従って、代替治療は、肝の最小の機能単位すなわち個々の肝細胞を操作することに集中する。
【0101】
さらに別の態様において、主題の前駆細胞もしくはそれらの子孫は多様な肝疾患の治療で使用され得る。幅広い多様性の代謝、循環、毒性、微生物および新生物形成の傷害の攻撃を受けやすいため、肝は体内で最も頻繁に傷害される器官のひとつである。いくつかの例では、疾患は主として肝の細胞に局在する。例えば、原発性肝疾患は、ギルバート症候群、クリグラー−ナジャー症候群(タイプIもしくはタイプIIのいずれか)、デュービン−ジョンソン症候群、家族性高コレステロール血症(FH)、オルニチントランスカルバモイラーゼ(OTC)欠損、遺伝性気腫および血友病のような遺伝性疾患、A型肝炎、B型肝炎、および非A、非B肝炎のようなウイルス感染症、ならびに肝細胞癌のような肝悪性腫瘍を包含する。ロビンス(Robbins, S.L.)ら (1984) Pathologic Basis of Diseases (W.B.サウンダース カンパニー(W.B. Saunders Company)、フィラデルフィア)pp.884-942。よりしばしば、肝の関与は、心代償不全、播種性癌、アルコール症、および肝外感染症のようなヒトの最も普遍的な疾患のいくつかにしばしば従属する。ロビンス(Robbins, S.L.)ら (1984) Pathologic Basis of Diseases (W.B.サウンダース カンパニー(W.B. Saunders Company)、フィラデルフィア)pp.884-942。
【0102】
多様な肝疾患の現行の療法である全肝移植はFHのある個人でのLDLレセプターを成功して再構成するのに採用されており、それにより血清コレステロールを通常レベルに低下させる。全肝移植は、しかしながら、適するドナーの器官の希少性により制限される。リ(Li, Q.)ら (1993) Human Gene Therapy 4:403-409;ケイ(Kay, M.A.)ら (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. 89:89-93。ドナーの器官を得ることでの困難に加え、処置あたりおよそ20万ドルないし30万ドルに推定される肝移植の費用が、その広まった適用を妨げる。別の未解決の問題は移植片の拒絶である。外来性の肝および肝の細胞はレシピエントにより不十分に耐えられ、そして免疫抑制薬の非存在下では免疫系により迅速に破壊される。リ(Li, Q.)ら (1993) Human Gene Therapy 4:403-409;バムガードナー(Bumgardner, G.L.)ら (1992) Transplantation 53:857-862。免疫抑制薬は拒絶を防止するのに使用されうる一方、それらはまた細菌およびウイルスの感染症に対するもののような所望の免疫応答も阻害し、それによりレシピエントを感染症の危険にさらす。
【0103】
本発明の肝前駆細胞は多くの肝疾患の治療に使用され得る。なぜならそれらは肝系統の細胞例えば肝細胞に分化する能力を有するからである。本発明の前駆細胞は、これらの細胞が成熟した肝細胞に分化するようにさらに誘導し得る条件下でインビトロで培養され得るか、もしくは、それらは対象内に導入されればインビボで分化を受け得る。細胞を被包化する多くの方法は、膵細胞について上で記述されているように当該技術分野で既知である。肝前駆細胞はまた対象に直接導入もされ得る。というのは、それらは肝の再生を誘導する能力を有するからである。
【0104】
本発明のさらに別の局面は、胆管組織からの別個の前駆細胞集団の成長、増殖もしくは分化を調整するそれらの能力について多様な化合物をスクリーニングする方法を提供する。所定の一組の組織の特性をインビボで緊密に模倣する微小器官の外植片は、その中で化合物がそうした組織中の前駆細胞の成長、増殖もしくは分化のひとつを調整するそれらの能力について試験され得るとみられるスクリーニングアッセイで有用性を有するとみられる。スクリーニングのための、再現可能なモデルの必要条件は、微小構造の一貫性、例えば上皮−間葉相互作用、およびインビトロでの栄養環境、ならびに、スクリーニングされている化合物の閾値効果を観察するための24時間を越える培養系の延長された生存能力および増殖を包含するとみられる。このレベルの一貫性は、バッチ間で変動しかつ十分に制御され得ない血清もしくは組織抽出物のような不確定の培地補充物の存在下で達成され得ない。成長因子のような外部の成長補充物へのモデルの依存もまた所望されない。成長因子もしくはホルモンが試験されるべき化合物に包含されうるためである。
【0105】
例証する一態様においては、それらの微小構造を培養系中で維持する、例えばそれらがインビボで存在する正常な上皮−間葉構造を保存する管外植片が、多様な化合物もしくは天然の生成物をスクリーニングするのに使用され得る。こうした外植片は、最小培養培地中で延長された時間(例えば21日もしくはより長い間)維持され得、また、外植片中の前駆細胞の細胞の成長、増殖もしくは分化のひとつに対するそうした化合物の効果を測定するためにいずれかの化合物例えば小さな分子もしくは天然の生成物例えば成長因子と接触され得る。与えられた化合物に応答してのこれらの細胞の成長、増殖もしくは分化の検出および定量化は、与えられた管外植片での成長、増殖もしくは分化のひとつを誘導することでのその化合物の有効性を決定するための尺度を提供する。細胞増殖の測定の方法は当該技術分野でよく知られており、また、最も普遍的には、細胞複製のDNA合成の特徴を測定することを包含する。DNA合成を測定するために当該技術分野に多数の方法が存在し、そのいずれも本発明により使用されうる。本発明の一態様において、DNA合成は、免疫蛍光による検出のための放射活性ラベル(3H-チミジン)もしくはラベルされたヌクレオチド類似物(BrdU)を使用して測定されている。化合物の有効性は、化合物の多様な濃度を使用して得られるデータから用量反応曲線を生じることにより評価され得る。コントロールアッセイもまた、比較のための基本線を提供するため実行され得る。与えられた試験物質に応答して増幅される前駆細胞集団(1個もしくは複数)の同定は、上に記述されるようなそうした表現型でのタイプ分けに従って実施され得る。
【実施例】
【0106】
典型的な具体例
本発明は今や、全般的に記述されたため、単に本発明のある局面および態様の例証の目的のために包含されかつ本発明を制限することを意図されない、以下の実施例を参照すれば、より容易に理解されることができる。
【0107】
総胆管(CBD)はその発達の起源が不十分に理解される構造である。その主機能は、消化過程で食物の乳化で補助するための肝から十二指腸への胆汁酸の送達である。その長さの80%は膵を通って横切り、そして一連の吻合により膵管系に連結される。これらの吻合を通りそしてCBD内へ、外分泌性膵により分泌された消化酵素が流れる。肝および膵との、ならびにその形態学とのCBDの関係は、従って、肝および膵双方の正常な機能に不可欠である。
【0108】
それが膵および肝の双方の機能に寄与するため、CBDは発達の間に主として肝構造として、膵構造として、もしくは双方として生じるのかどうかに関して疑問が生じる。部分的に初期のマーカーならびに興味の欠如のため、過去にはこの論点を解消するためにほとんど何もなされなかった。しかしながら、成体の動物は消化管系内に肝および膵双方の幹細胞を保持するという状況証拠を引用する文献に多数の報告が存在する。 CBDは二重の肝−膵機能を供給するため、それが二重の同一性もまた保有しそしてその後その構造内に膵および肝双方の幹細胞を保持しうることが可能でありうる。この仮説を直接試験するため、われわれはCBDおよびその付随の主管を単離し、そしてそれらをインビトロで無傷の管区分として培養した。この実験の最終目標は、無傷の生理学的ユニットとして管を研究すること、ならびに、固有の幹細胞が活性化されて肝および/もしくは膵の派生物のいずれかを生じさせ得るかどうかを決定することであった。この独特の培養系は、われわれに、他者の単離された培養系よりもむしろ上皮との間葉の相互作用を研究する能力を可能にし、そしてこれ故にインビボの状況をより表わす。
【0109】
われわれの独特の培養系を使用して、われわれは、肝特異的な細胞タイプの形成を誘導された、血清を含まない条件でのマトリゲルおよびIGF-1の組み合わせで成体ラットの総胆管から管断片の培養系を得た。誘導された細胞の肝の同一性は、α-フェトプロテイン(AFP)、アルブミン、および、AFPの発現を調節することが示される転写因子ATBF-1の発現の免疫組織化学的検出により決定された。加えて、赤血球クラスターの形成が観察された。アルブミンおよびAFPに陽性の細胞タイプの誘導はマトリゲル/IGF-1の組み合わせに特異的であり、IGF-1を含むプラスチックもしくはコラーゲン上の培養系はこれらの細胞タイプの外観を誘導することができなかった。同様に、TGFα、EGF、IGF-II、PDGFもしくはFGFβのいずれかでのIGF-1の置き換えは、全て、マトリゲルの存在下でさえ肝形成を導き出せなかった。しかしながら、試みられたマトリゲルの条件の全てで、われわれは赤血球クラスターの形成を観察した。われわれの結果は、CBD系に固有の肝および造血の双方の幹細胞が存在すること、赤血球形成がマトリゲルに存在する因子により刺激され得ること、および、IGF-1とマトリゲルの組み合わせが肝特異的な細胞タイプの形成を誘導し得ることを指摘する。
管外植片の調製
タコニック(Taconic)からの6週齢の雌性シュパグ−ドーレイ(Spague/Dawley)を二酸化炭素により瀉血した。総胆管および連合した膵管を取り出し、そして2mMグルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシン(100単位/ml)を補充された冷ダルベッコ最小必須培地(DMEM)中に置いた。管をその後、連合した膵組織、肝組織、脂肪および血管を取り除いた。清浄なかつ無傷の管を、最初の上皮−間葉微小構造が保持されるようにおよそ250μmの横切る薄片に切り、そして氷上の培地中に置いた。
【0110】
250μlの還元型(reduced)成長因子マトリゲル(コラボレイティヴ リサーチ(Collaborative Research))を、24穴プレートの各穴に添加し、そして37℃で30分間インキュベーションした。このプレートをそれから取り出し、そして室温に15分間置いたままにさせた。CBD微小器官外植片を各穴にマトリゲル上に置き、そして室温に15分間置いて管をマトリゲルに接着させた。成長因子の添加を含むもしくは含まない1mlのDMEM(P/S/L-グルタミン酸)を穴に添加した。下に記述されるこの研究で使用された成長因子(EGF、TGFα、PDGF、FGFβ、FGFα、IGF-1およびIGF-II)は全てプレプロテック(PreproTech)から得た。培養系を5%二酸化炭素雰囲気中37℃でインキュベーションした。培養系は週1回新しい培地を与えた。
免疫組織化学
培養系を4%パラホルムアルデヒド(PFA)中4℃で一夜固定した。培養系は、内因性のペルオキシダーゼ活性を除去する1%過ヨウ素酸の添加に先立ち、リン酸緩衝生理的食塩水(PBS)で各10分間ずつ3回すすいだ。培養系を、PBS/0.1%トリトン X-100(PBST)中3%乳で室温で30分間インキュベーションした。α-フェトプロテインおよびアルブミン(アキュレート(Accurate))に対する一次抗体を250倍希釈で室温で1時間添加した。ATBF-1は1000倍希釈で使用した。組織を2時間の期間にわたってPBSTで3回洗浄した。二次ビオチニル化抗体(ベクター(Vector))を500倍希釈で室温で1時間添加した。組織をその後、PBSTで1時間、3回洗浄し、そして、アビジンに結合されたワサビペルオキシダーゼ(ベクター(Vector))と室温で30分間インキュベーションした。抗体結合をDAB/過酸化水素(ギブコ(Gibco))の添加により検出した。水での比色反応の停止後、PBS中80%グリセロールを添加して、写真撮影の前に培養系を清浄にした。
成長因子
増殖刺激での成長因子の有効性を、応答する細胞によるDNAへのブロモデオキシウリジン(BrdU)の取り込みにより判断した。BrdUに対する抗体を使用して短期間の応答(24〜48時間)を可視化しかつ特徴づけた。
【0111】
長期の応答は、特定の成長因子の添加の結果として細胞培養系中で成長されかつ伸展されるはずであるこれらの集団細胞の能力により判断した。
【0112】
多様な成長因子(EGF、TGF-α、bFGF、aFGF、IGF-I、IGF-II、VEGFおよびHGF)を使用した。下に記述されるEGF、TGF-αおよびbFGFについての結果に加え、IGF-I、IGF-II、VEGFおよびHGFが、管外植片のある亜集団の伸展を引き起こすことが立証された。
1.CBD外植片へのEGFの投与
EGFを3種の異なる用量、1ng/ml、10ng/mlおよび100ng/mlでCBD外植片に投与した。BrdUラベルにより評価されるような増殖の活性化は、10ng/mlの成長因子EGFの投与で24時間の期間内に発生した(第1図および第2図)。10と100ng/mlの用量との間に差異は観察されなかった。CBD組織外植片へのEGFの添加は、外植片内の性質の異なる細胞の増殖をもたらし、また、これらの細胞のクラスター形成をもたらした。
2.CBD外植片へのTGFαの投与
TGFαをEGFと同じ用量で投与した。BrdUラベルにより評価されるような増殖の活性化は、100ng/mlの成長因子TGF-αの投与で24時間の期間内に発生した(第1図および第2図)。EGFと異なり、CBD外植片へのTGF-αの投与は外植片全体で細胞の増殖をもたらした。
3.CBD外植片へのFGFβの投与
FGFβを上に記述された成長因子と同じ用量で投与した。BrdUラベルにより評価されるような増殖の活性化は、10ng/mlの成長因子FGFβの投与で24時間の期間内に発生した(第1図および第2図)。10ng/mlのFGFβの投与は、独特のCBD構造の同時性に分割するようなを誘導もたらし、増殖の能力および応答の組織化された調節を意味する。第3図は、FGFβの投与に応答したCBD外植片のインビトロの成長および伸展、例えば異常肥大、例えばブレブの形成を描写する。
【0113】
予備的な長期成長実験は、最低21日間培養系で維持され得るCBD外植片内に大きな増殖能力が存在することを指摘する。
伸展された前駆細胞集団の特徴づけ
膵および肝の形成の間に発現されることが知られている転写因子を認識する抗体を、CBD中の集団の分布を特徴づけるのに使用した。IPF-1としてもまた知られるSTF-1は膵形成で決定的であることが知られており、Pax-6は膵内分泌性細胞で決定的であることが知られており、Islet-1は初期消化管内胚葉でおよび島組織で発現され、そしてHNF3βは初期消化管内胚葉でおよび内胚葉の肝前駆細胞で発現される。ATBF-1、Lim1/2はCBDで検出されなかった。第1表は20倍の視野すなわちおよそ500μmごとの管長あたりの各マーカーについて陽性の核の平均数を示す。
【0114】
【表2】



【0115】
HNF3βは内胚葉形成の初期マーカーであり、かつ、発達する肝により発現される最も初期のマーカーのひとつである。CBDの薄片を初期内胚葉および肝のマーカーHNF3βについて染色した。総胆管(CBD)はHNF3βについて免疫陽性である細胞を含有する。CBDでのその発現は散発性であるがしかし期待されるように上皮に特異的である。HNF3βは、CBD全体、および、より少なく頻繁にとは言え主膵管でもまた発現される。陽性の細胞は、CBDの主管腔から分岐していた上皮細胞のクラスターでしばしば見出された。HNF3β発現細胞はCBD全体で均一に見出された。胚の発達における初期の内胚葉および肝のマーカーとしてのHNF3βの役割のため、われわれは、これらのHNF3β発現細胞は成体の肝膵管系に固有の肝幹細胞であろうという仮説を立てた。
【0116】
観察されたHNF3β発現細胞が実際に肝の前駆体である場合、その場合は、肝特異的な細胞タイプおよび構造の形成をインビトロで活性化しようと試みるのに管培養系を使用しうるであろう。こうした培養系の構築は、その後、肝の発達のプログラムを誘導するのに必要とされるシグナルおよび相互作用の研究を可能にするとみられる。この目標に、われわれはおよそ250μm幅に横断して切断されていた管断片を培養した。 これらはその後、プラスチック上、コラーゲン、直接に支持細胞(STO、C3H10T1/2)上のもしくはマトリゲル(コラボレイティヴ リサーチ インク(Collaborative Research Inc.)、マサチューセッツ州ベッドフォード)上のいずれかで培養した。マトリゲルは、肝の形成を与えた、試みられた唯一のマトリックス順列であった。さらに、肝構造の形成はIGF-1の添加で唯一生じた。FGFβ、TGFα、EGF、IGF-II、PDGF-AAの添加は全て肝構造の形成を誘導できなかった。
【0117】
管培養系へのIGF-Iの添加は3種の基本的な管のコロニーを生じさせた。すなわち、観察された成長もしくは形態学の変化がほとんど存在しなかった「非応答物」(第4A図)、形態学の劇的な変化を受けて実際に末端の上に末端のある線維芽細胞である神経突起様の突起を生じさせた「N-タイプ」コロニー(第4B図)、そして上皮のブレブおよび赤血球クラスターの形成を伴う肝様の形態学を獲得した「L-タイプ」コロニー(第4C図)である。この肝様の形態学は培養された胚の肝のものに似ている(データは示されない)。全3種のコロニータイプの形成の数および頻度は第5図の表に報告される。
【0118】
われわれのL-タイプコロニーと培養された胚の肝との間の形態学的類似性により、われわれは全3種のコロニータイプで肝特異的マーカーの発現を探すことを決定した。この分析に使用されたマーカーはα-フェトプロテイン(AFP)、アルブミンおよびATBF-1であった。全3種は初期の肝に特異的であることが示されている。検査された全ての場合で、全3種のマーカーについて免疫陽性に染色した唯一の培養系はL-タイプコロニーであった。
【0119】
例えば、培養系を初期の肝マーカーAFPの発現について染色した。AFPは胚での肝形成の24時間以内に発現され、そして、成体の肝組織で失われる。われわれのデータはIGF-1処理された肝断片でのAFPの広範囲の発現を指摘した。われわれはまた、AFPに高度に陽性であった遊離した細胞もみた。これらは直径の大きな細胞である傾向があった。われわれはまた、CBD外植片で生じている管様構造の形成も観察した。これらの管様構造はしばしば高度に陽性のAFP染色細胞により取り巻かれた。管様構造のいくつかは、おそらくAFPが分泌される因子であるという事実により、それ自身AFP陽性であるようである。
【0120】
培養系をまた初期肝マーカーATBF-1についても染色した。ATBF-1は、胚の肝の発達の間、AFPの発現を調節することが示されている。われわれは肝マーカーATBF-1をもつL-タイプコロニーの染色を観察した。
【0121】
上で引用された参考文献および出版物の全てはこれにより引用により組み込まれる。
【0122】
同等物
当業者は、わずかにルーチンの実験を使用して、本明細書に記述される本発明の特定の態様の多くの同等物を認識することができるか、もしくは確かめることが可能であることができる。こうした同等物は以下の請求の範囲により包含されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】第1図は、成長因子の投与後24時間の総胆管外植片のBrdU陽性の核の平均数を描写するグラフである。成長因子EGF、TGF-αおよび塩基性FGF(bFGF)を、3用量すなわち1ng/ml、10ng/mlおよび100ng/mlで投与した。DMEM最小培地をコントロールとして使用した。平均の蛍光強度を陽性の核の数に基づいて測定した。
【図2】第2図は、成長因子の投与後24時間の総胆管外植片のBrdUラベルされた陽性の細胞のパーセンテージを描写するグラフである。成長因子EGF、TGF-αおよびbFGFを投与し、また、DMEM最小培地をコントロールとして使用した。
【図3】第3図は、成長因子bFGFの投与に応答した総胆管外植片内の細胞のインビトロの成長および伸展を描写する顕微鏡写真である。
【図4】第4A−4C図は、IGF-1刺激による胆管微小器官培養系から拡大された細胞のタイプを例証する顕微鏡写真(120×)。100ng/mlでのIGF-1の添加は、少なくとも3タイプの応答、すなわち、成長もしくは形態学での変化なし(第4A図)、コロニーの広がりの軸索様の外観により「Nタイプ」コロニーと称される「棘状」コロニーの外観(第4B図)、ならびに、培養された胎児肝(示されない)と外観で同一であった、上皮のブレブおよび赤血球フォーカス(foci)の形成による肝様の「Lタイプ」コロニーの外観(第4C図)、をもたらした。
【図5】第5図は、マトリゲル上の管の微小器官の培養系が多様なコロニータイプを生じさせ得ることを表示するグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞成分として生存能力のある前駆細胞の本質的に純粋な集団を含んで成る細胞組成物であって、前記前駆細胞は培養培地中で増殖し、HNF3βを発現し、かつ肝臓および膵臓の系統に分化し、そして組成物中の生存可能な細胞の少なくとも80%が前記前駆細胞である、細胞組成物。
【請求項2】
前記前駆細胞が哺乳動物に由来する請求項1の組成物。
【請求項3】
前記哺乳動物がトランスジェニック哺乳動物である請求項2の組成物。
【請求項4】
前記哺乳動物が霊長類である請求項2の組成物。
【請求項5】
前記哺乳動物がヒトである請求項4の組成物。
【請求項6】
前記哺乳動物がミニブタである請求項2の組成物。
【請求項7】
前記前駆細胞が最低約7日間培養中で維持され得る請求項1の組成物。
【請求項8】
細胞集団として培養培地中で自己再生する生存能力のある前駆細胞から本質的に成る細胞組成物であって、前記前駆細胞がHNF3βを発現し且つ肝および膵系統に属する細胞に分化する、細胞組成物。
【請求項9】
前駆細胞が少なくとも80%純粋であり、培養培地中で自己再生し、HNF3βを発現し且つ肝臓および膵臓の系統に分化する、前記前駆細胞を含んで成る細胞組成物。
【請求項10】
前記前駆細胞が膵島細胞へ分化するよう誘導可能である請求項9の組成物。
【請求項11】
前記島細胞が膵β島細胞である請求項10の組成物。
【請求項12】
前記島細胞が膵α島細胞である請求項10の組成物。
【請求項13】
前記島細胞が膵δ島細胞である請求項10の組成物。
【請求項14】
前記島細胞が膵φ島細胞である請求項10の組成物。
【請求項15】
前駆細胞がSTF−1またはPAX6を発現する請求項9の組成物。
【請求項16】
前駆細胞がSTF−1またはPAX遺伝子のうちの1つ以上を発現する請求項1、8または9の組成物。
【請求項17】
前駆細胞がSTF−1の発現により特徴づけられる請求項16の組成物。
【請求項18】
前記前駆細胞が肝管組織から単離もしくは培養されるか又はその子孫である請求項1、8または9の組成物。
【請求項19】
前記前駆細胞が胆嚢管組織から単離もしくは培養されるか又はその子孫である請求項1、8または9の組成物。
【請求項20】
前記前駆細胞が膵管組織から単離もしくは培養されるか又はその子孫である請求項1、8または9の組成物。
【請求項21】
前記前駆細胞が総胆管組織から単離もしくは培養されるか又はその子孫である請求項1、8または9の組成物。
【請求項22】
前記前駆細胞がIGF、EGF、TGF、FGF、HGF、VEGFから選択される1種もしくはそれ以上の成長因子、またはそれらのオーソロガスもしくはパラロガス因子に応答性である請求項1、8または9の組成物。
【請求項23】
請求項1、8または9の細胞組成物を含んで成る製薬組成物。
【請求項24】
胆管から得られた前駆細胞の成長、増殖もしくは分化の1つを調節する能力について化合物をスクリーニングする方法であって、
(a) 胆管細胞の外植片が培養系中で哺乳動物の胆管のもとの上皮間葉微小構造を保持し、外植片の寸法が最低24時間培養系で維持可能なような外植片の細胞を提供し、かつその外植片が培養系中で増殖する能力を有する最低1個の前駆細胞を包含する、胆管細胞の外植片の培養系を提供すること、
(b) その細胞集団を試験化合物と接触させること、そして
(c) 集団中の前駆細胞の成長、増殖もしくは分化の1つもしくはそれ以上を検出すること、
を含み、その中で、試験化合物の非存在下での成長、増殖もしくは分化の程度のうち1つと比較しての、試験化合物の存在下での成長、増殖もしくは分化の程度のうち1つにおける統計学的に有意な変化が、成長、増殖もしくは分化のうち1つを調節する試験化合物の能力の指標となる方法。
【請求項25】
外植片が最低約1.5mm−1の体積指数の表面積を有する請求項24の方法。
【請求項26】
前駆細胞が少なくとも90%純粋である請求項1、8または9の組成物。
【請求項27】
前駆細胞がSTF−1を発現する請求項26の組成物。
【請求項28】
前駆細胞が少なくとも部分的にグルコース応答性である細胞に分化する請求項1、8または9の組成物。
【請求項29】
前駆細胞が少なくとも部分的にインスリンを分泌する細胞に分化する請求項1、8または9の組成物。
【請求項30】
前駆細胞が少なくとも部分的にグルコース応答性である細胞に分化する請求項26の組成物。
【請求項31】
前駆細胞が少なくとも部分的にインスリンを分泌する細胞に分化する請求項30の組成物。
【請求項32】
前駆細胞が少なくとも90%純粋である請求項28または29の組成物。
【請求項33】
前駆細胞が少なくとも部分的にグルコース応答性である細胞に分化する請求項15の組成物。
【請求項34】
前駆細胞が少なくとも部分的にインスリンを分泌する細胞に分化する請求項15の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2004−254706(P2004−254706A)
【公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−159885(P2004−159885)
【出願日】平成16年5月28日(2004.5.28)
【分割の表示】特願平9−501930の分割
【原出願日】平成8年6月7日(1996.6.7)
【出願人】(504207374)キユリス・インコーポレーテツド (1)
【Fターム(参考)】